JP6269960B2 - カドミウム含有排水の処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、カドミウムイオンを含有するカドミウム含有排水の処理方法に関する。
銅、ニッケル、鉛や亜鉛など非鉄金属を製錬する工程においては、精錬に伴って発生した排水にカドミウムイオン、鉛イオン、亜鉛イオン及び有機化合物が含まれている場合がある。これらを含有する排水はそのまま海域などに放流することはできず、適切な方法によって排水中のカドミウムイオン、鉛イオン、亜鉛イオン及び有機化合物等の含有物を分離し、一定の基準以下の濃度にまで低減する処理が必要となる。
例えば、カドミウムを分離する方法としては、まず、カドミウムイオンを含有する排水を反応槽に入れ、これに消石灰や水酸化ナトリウムなどのアルカリ剤を加え、pHを上げてカドミウムを含有する殿物を含有するスラリーを得る。そして、このスラリーをシックナー等で静置させることで、含有物の殿物を沈降させて固液分離し、上澄み液を放流する方法が用いられてきている。
具体的には、非特許文献1に記載するように、海域に放流される排水中のカドミウム濃度は0.03mg/lにまで低減することが必要である。そのためには、放流前の排水のpHを11以上に維持することが必要となる。
しかしながら、排水に鉛イオンや亜鉛イオンも含有される場合、これらの元素は両性金属であるため、pHを過度に上昇させるとこれらの殿物が再度溶解することになり、再溶解を防止するためにpHの上限値の管理が必要となる。
具体的には、鉛イオンは、pH8〜11の間が最も沈殿生成に適しており、pHが11を超えると再溶解の傾向が強まる。同様に、亜鉛イオンは、pH8〜11.5が沈殿生成に適しており、pHが11.5を超える再溶解の傾向が強まるため好ましくない。
このように、カドミウムイオン、鉛イオン、亜鉛イオンを含有する排水の場合、すべてを分離するには狭い領域でpHを正確に管理する操業が必要である。
しかしながら、操業度が変化し排水成分も変化しやすい工業的な大量の排水を安定的に処理するのは容易でない。また、近年は、排水規制が更に強化される傾向があるため、カドミウムイオン等の濃度基準が更に低くなり、一層管理が難しくなっている。
特開2006−263699号公報
新・公害防止の技術と法規2013水質編(産業環境管理協会 丸善出版)p444−445
カドミウムを分離する方法としては、pHを調整する前の排水に硫酸第1鉄や塩化第2鉄などの鉄化合物を添加し、その後アルカリ剤を添加してpHを上昇させることで、添加した鉄を水酸化物の殿物として生成し、その際の共沈効果を利用してカドミウムを沈殿分離する方法が行われている。
しかしながら、この方法を用いた場合でも、また特に排水に有機化合物を含有する場合には、上述したようなpH調整のみでカドミウム濃度を安定的に低減することは困難である。これは、硫黄、炭素、窒素、塩化物、リンなどの元素を含む有機化合物もしくはその分解物などがカドミウムなどの重金属と錯形成することで溶解度が上がると考えられる。
また、特許文献1は、重金属類含有水から効率よく、かつ経済性よく重金属類を除去する処理システムを提供するものである。特許文献1に記載の方法は、具体的に、重金属類含有水に還元性鉄化合物を添加して重金属類を沈殿化し、この沈殿を固液分離して重金属類を除去する処理方法である。この処理方法は、重金属類含有水に還元性鉄化合物を添加する工程〔鉄化合物添加工程〕、還元性鉄化合物を添加した重金属類含有水を反応槽に導いて沈殿を生成させる工程〔沈殿化工程〕、生成した沈殿(汚泥)を固液分離する工程〔固液分離工程〕、分離した汚泥の全部または一部をアルカリ性にして反応槽に返送する工程〔汚泥返送工程〕を有する。沈殿化工程において、還元性鉄化合物を添加した排水とアルカリ性汚泥とを混合して、非酸化性雰囲気下、アルカリ性下で反応させて還元性の鉄化合物沈殿を生成させ、殿物に重金属類を取り込んで系外に除去する重金属類含有水の処理方法である。
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、還元性鉄化合物を用い反応槽を密閉することで重金属類の濃度を低減させる方法であり、従来から広く用いられてきた開放系の設備は還元性鉄が酸化してしまうため使えないことから新たな投資が必要となり費用がかさむなどの課題がある。
上述のように、カドミウムイオン、鉛イオン、亜鉛イオン及び有機化合物が含まれている排水中のカドミウムイオンを排水のpH制御又は鉄化合物等を添加してpH制御することで、カドミウム濃度を低減させてきたが、これらの方法では、カドミウム濃度を十分に低減させることが難しく、排水基準を満たすことが難しくなってきている。
このように、カドミウムイオン、鉛イオン、亜鉛イオン及び有機化合物を含有する排水からカドミウムを効率良く、十分に分離する方法がなく、このような排水からカドミウムを効率良く十分に分離する方法が求められている。
そこで、本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、カドミウムイオン、鉛イオン、亜鉛イオン及び有機化合物が含まれている排水中のカドミウムを低コストで効率良く確実に分離し、排水中のカドミウム濃度を低減することができるカドミウム含有排水の処理方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述の課題を解決するために、カドミウムイオンの他に亜鉛イオン、鉛イオンや有機化合物を含有する排水において、pHを特定範囲に調整後に硫化剤を添加し、生成した硫化沈殿物を分離することでカドミウムイオンを除去すると共に鉛イオン、亜鉛イオンも除去できることを見出した。
上述した目的を達成する本発明に係るカドミウム含有排水の処理方法は、カドミウムイオン、亜鉛イオン、鉛イオン及び有機化合物を含有する排水にケイ酸塩化合物を添加し、排水のpHを10以上12以下の範囲に調整し、次いで、硫化剤を添加し、凝集剤を添加し、生成した硫化沈殿物を分離することを特徴とする。
本発明では、カドミウムイオンの他に亜鉛イオン、鉛イオン、更には有機化合物を含有する排水から、低コストで効率良くカドミウムを分離し、カドミウム含有量を低減した排水を得ることが可能である。
以下に、本発明を適用したカドミウム含有排水の処理方法について詳細に説明する。なお、本発明は、特に限定がない限り、以下の詳細な説明に限定されるものではない。
カドミウム含有排水の処理方法は、カドミウムイオン、鉛イオン、亜鉛イオンなどの重金属類及び有機化合物を含有する排水からカドミウムと共に鉛や亜鉛を同時に除去することができる排水の処理方法である。
カドミウム含有排水の処理方法は、排水のpHを10以上12以下に調整し、次いで硫化剤を添加し、重金属類を沈殿させて、硫化沈殿物を固液分離することで重金属類を除去する処理方法である。
具体的に、カドミウム含有排水の処理方法は、排水のpHを調整する工程(以下、pH調整工程ともいう。)と、硫化剤を添加して重金属類を硫化させる工程(以下、硫化工程ともいう。)と、生成した硫化沈殿物(汚泥)を固液分離する工程(以下、固液分離工程ともいう。)とを有する。更に、カドミウム含有排水の処理方法は、pH調整工程前に、ケイ酸塩を添加する工程(以下、ケイ酸塩添加工程ともいう。)を有していてもよい。また、カドミウム含有排水の処理方法は、硫化工程後であって固液分離工程前に、排水に凝集剤を添加する工程(以下、凝集剤添加工程ともいう。)を有していてもよい。
カドミウム含有排水の処理方法は、pH調整工程で排水のpHを上げて、殿物にカドミウム、亜鉛、鉛等の重金属類を取り込み、液中に残存した重金属類を硫化剤で硫化殿物として取り込むことにより重金属類を除去する処理方法である。このカドミウム含有排水の処理方法は、有機化合物が含有されているため、カドミウムの溶解度が高くなり、カドミウムが溶解しやすくなるが、硫化剤を添加して硫化することで、硫化沈殿物として沈殿させることができる。これにより、このカドミウム含有排水の処理方法は、pH調整後に硫化剤を添加することで、溶解しているカドミウムを沈殿させ、排水からカドミウム、亜鉛、鉛を同時に除去する。
このカドミウム含有排水の処理方法は、排水のpHを10以上12以下とし、カドミウム、亜鉛、鉛をある程度沈殿させた後、硫化剤を添加して溶解しているカドミウム等を沈殿させ、2段階で沈殿処理をすることで、有機化合物が含まれていても、簡易なpHの管理で、且つ低コストでカドミウム等を除去することができる。また、カドミウム含有排水の処理方法は、簡易な方法であるため大量の排水を効率良く処理することができる。更に、カドミウム含有排水の処理方法は、開放系の設備で行うことができるため、従来の開放系設備を利用して行うことができる。
ここでいう排水とは、重金属類を含有する水を含み、広く意味し、自然発生的及び人為的に生じた各種の廃水や排水等を含み、例えば、工場排水や下水、海水、河川水、沼や湖池の水、地表の溜り水、河川等の堰止域の水、地下の流水や溜り水、暗渠の水などであって重金属類を含有するものをいう。
また、重金属類とは、例えば、カドミウム、鉛、亜鉛などの重金属元素や金属元素等をいう。このカドミウム含有排水の処理方法は、排水に含まれるこれらの汚染源となる重金属類の何れか1種以上に対して優れた除去効果を有する。以下に各工程について説明する。
<ケイ酸塩添加工程>
ケイ酸塩添加工程は、必要に応じて、排水のpHを調整する前にケイ酸塩を添加する。ケイ酸塩添加工程では、pH調整工程によりpHが上がることで析出した鉛が再溶解するため、これを抑制する目的でケイ酸塩を添加する。排水にケイ酸塩を添加すると、ケイ酸塩が水に溶けて、ケイ酸イオンとなり、鉛と結合し再溶解を抑制することができる。これにより、カドミウム含有排水の処理方法では、後のpH調整工程において再溶解する鉛量を低減することができる。
ケイ酸塩としては、例えば水ガラス等を用いることができる。ケイ酸塩の添加量は、排水に対して5〜200mg/Lである。ケイ酸塩の添加量が5mg/L未満では、鉛の再溶解を十分に抑制することができない。一方、ケイ酸塩の添加量が200mg/Lよりも多いと、過剰に添加し過ぎることになり、コストが高くなってしまう。
<pH調整工程>
pH調整工程は、排水のpHを10以上12以下に調整する。pH調整工程では、排水に、消石灰、苛性ソーダ、生石灰、石灰石等を添加してpHを調整する。
pHが10以上12以下の範囲内では、カドミウムは溶解度が低く、殆どが沈殿するが、両性金属である亜鉛や鉛は溶解度が十分に低くならず、溶解している亜鉛や鉛が存在している。したがって、排水のpHを10以上12以下に調整することで、カドミウム、亜鉛、鉛の一部が沈殿し、残りが溶解している状態となる。
pHが10未満では、カドミウムの溶解度が高くなり、カドミウムの沈殿量が少なくなってしまう。一方、pHが12より高いと、亜鉛や鉛の溶解度が高くなり過ぎて、亜鉛や鉛の沈殿量が少なくなってしまう。したがって、pHを10以上12以下の範囲内とすることで、カドミウムを沈殿させつつも、両性金属の亜鉛や鉛もある程度沈殿させることができる。
なお、亜鉛や鉛は、pH10以上12以下の範囲内における沈殿で、排水基準を満たすように排水から除去することができる。したがって、亜鉛や鉛は、pHが10以上12以下の範囲では溶解度が十分に低くならないものの、沈殿が生じ、その殿物を除去することで排水基準を満たす場合がある。
<硫化工程>
硫化工程では、pHを10以上12以下の範囲内に調整した排水に硫化剤を添加して、排水中に溶解してしまっているカドミウムを硫化沈殿物として沈殿させることができる。この硫化工程を設けることにより、排水中に有機化合物が含まれていることにより溶解度が上がり溶解しているカドミウムを沈殿させることができる。また、硫化工程では、カドミウムの他にも亜鉛や鉛も硫化沈殿物として沈殿させることができる。
硫化剤の添加量は、排水中のカドミウムイオンに対して2当量以上、70当量以下になるよう添加する。排水中のカドミウムイオンに対して2当量未満では、排水中に溶解しているカドミウム、場合によって亜鉛や鉛を十分に沈殿させることができなくなる。排水中のカドミウムイオンに対して70当量よりも多い場合には、排水中に溶解しているカドミウムイオンに対して過剰に添加し過ぎてカドミウムの沈殿に寄与しない硫化剤が残存するだけであり、コストが高くなる。硫化剤としては、硫化水素塩又は硫化塩を用いることができ、具体的には、水素化硫化ナトリウム(NaSH)、硫化ナトリウム等を用いることができる。
<凝集剤添加工程>
凝集剤添加工程は、必要に応じて、硫化工程後の排水に凝集剤を添加する。硫化工程後の排水に凝集剤を添加することで、カドミウム、亜鉛、鉛等の重金属類の沈殿を凝集させて、次の固液分離工程で殿物を分離しやすくなる。
凝集剤としては、例えば例えばMTアクアポリマー株式会社製の商品名スミフロック等を使用することができる。凝集剤の添加量は、凝集剤の種類や殿物の量等に応じて適宜決定する。
<固液分離工程>
固液分離工程では、硫化工程後又は凝集剤添加工程後に、殿物を排水から分離する。これにより、排水からカドミウム、亜鉛、鉛を除去することができる。
固液分離には、一般的な固液分離方法を用いて行うことができ、例えば、濾過、遠心分離等を使用することができる。
以上のようなカドミウム含有排水の処理方法では、カドミウムイオン、亜鉛イオン、鉛イオン及び有機化合物を含有する排水のpHを10以上12以下に調整し、カドミウム、亜鉛、鉛を沈殿させ、そして硫化剤を添加することで、有機化合物が含有されていることにより溶解したカドミウムを含めて、排水中に溶解しているカドミウム、場合によっては亜鉛、鉛を硫化沈殿物として沈殿させることができる。このようなカドミウム含有排水の処理方法では、カドミウム以外の亜鉛や鉛、その他の重金属類を同時に沈殿させ、排水から除去することができる。
カドミウム含有排水の処理方法は、pH調整後、硫化剤を添加するという2段階で重金属類を沈殿させるため、確実でかつ簡易な方法で排水中の重金属類を沈殿除去することができ、低コストで効率良く排水中の重金属類の含有量を低減することができる。また、このカドミウム含有排水の処理方法は、簡易な方法であるため、大量の排水であっても低コストで効率良く処理することができる。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、重金属であるカドミウム17mg/L、鉛1.2mg/L、亜鉛670mg/Lを含む排水を用意し、この排水にケイ酸ナトリウムを50mg/L添加後、アルカリ剤には消石灰を用いてpHが10.5となるように調整して殿物を含有するスラリーを得た。
その後、25重量%濃度の水硫化ソーダ溶液を20mg/L添加して、次いで凝集剤であるスミフロックFA−70を10mg/L添加した後、静置して固液分離した。次いで、濾瓶とヌッチェを用いて濾過し、殿物と濾過後液とを得た。
次いで、濾過後液を高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法を用いて分析するとカドミウム濃度は0.01mg/L以下、鉛濃度0.01mg/L、亜鉛濃度0.5mg/Lと排水基準を満足する良好な結果を得た。
(比較例1)
比較例1では、水硫化ソーダを添加しなかった以外は実施例1と同等の方法で処理を行った。得た濾過後液のカドミウム濃度は1.2mg/L、鉛濃度は0.01mg/L、亜鉛濃度は0.6mg/Lと良好な結果を得ることはできなかった。
(比較例2)
比較例2では、pH調整前に25重量%水硫化ソーダを20mg/L添加し、その後、アルカリ剤である消石灰を添加してpHを10.5に調整した以外は、実施例1と同等の方法で処理を行った。しかし、得た濾過後液のカドミウム濃度は0.05mg/Lであり、鉛濃度は0.01mg/L、亜鉛濃度は0.6mg/Lと良好な結果を得ることはできなかった。
以上のように、本発明を適用した実施例1では、排水からカドミウムをほとんど除去することができ、同時に亜鉛や鉛も除去できており、排水基準を満足する処理ができることがわかる。一方、比較例1及び比較例2では、排水からカドミウムを十分に除去できず、排水基準を満足するような処理を行うことができないことがわかる。

Claims (2)

  1. カドミウムイオン、亜鉛イオン、鉛イオン及び有機化合物を含有する排水にケイ酸塩化合物を添加し、上記排水のpHを10以上12以下の範囲に調整し、次いで、硫化剤を添加し、凝集剤を添加し、生成した硫化沈殿物を分離することを特徴とするカドミウム含有排水の処理方法。
  2. 記排水に上記ケイ酸塩化合物を5〜200mg/L添加することを特徴とする請求項に記載のカドミウム含有排水の処理方法。
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