JP4505264B2 - モリブデン含有廃液の処理方法 - Google Patents
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Description
モリブデン含有廃液の一般的な処理方法としては、酸性域において硫化水素ガスを通ずる方法、第二鉄イオンを添加したのち酸又はアルカリでpHを調整して水酸化第二鉄を生成させ、これにモリブデンを吸着・共沈させて固液分離する方法(特許文献1参照)、モリブデンと銅を含有する溶液に硫化ソーダ等を添加して硫化処理する方法(特許文献2参照)などがある。
そこで本発明は、懸濁物質の凝集性がよく、より着色の少ない処理液が得られ、かつ、原廃液のモリブデン含有濃度に関わらず廃液中のモリブデンを十分な低濃度に除去することができる処理方法を提供することを目的とする。
すなわち本発明は以下の構成を有する。
(1)pH3.0以下のモリブデン含有廃液に酸化剤を添加する第一工程、硫化剤をORP値がマイナスになるまで添加して反応させる第二工程、酸化剤を添加する第三工程、及び消石灰スラリーを添加して廃液のpHを6〜8に調整し固液分離する第四工程を有し、第一工程と第三工程で用いる酸化剤のいずれか一方のみが塩化第二鉄であることを特徴とするモリブデン含有廃液の処理方法。
(2)前記第二工程後の廃液ORP値が−50〜−25mVであり、前記第三工程後のORP値が50〜200mVであることを特徴とする(1)に記載のモリブデン含有廃液の処理方法。
(3)前記第三工程後、固液分離を行ったのちに前記第四工程を行うことを特徴とする(1)又は(2)に記載のモリブデン含有廃液の処理方法。
(4)前記第一工程又は第三工程での塩化第二鉄の添加に代えて、全処理工程後、発生する懸濁物質スラリーの返送を行うことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のモリブデン含有廃液の処理方法。
本発明では第一工程と第三工程で酸化剤を用いるが、本発明における酸化剤とは、pH3.0以下の環境で他の物質を酸化し自らは還元される物質を意味する。具体的には例えば、次亜塩素酸ソーダ、過酸化水素、過酸化ソーダ、ペルオキソ二硫酸ソーダなどをあげることができ、次亜塩素酸ソーダ、過酸化水素が好ましい。
また、本発明においては塩化第二鉄も酸化剤として使用することができ、第一工程及び第三工程のいずれか一方にのみ塩化第二鉄を使用する。第一工程又は第三工程で塩化第二鉄を使用することにより、第二工程で生成した硫化モリブデンの凝集性及び沈降性が大きく向上する。
第一工程における酸化剤の使用量は、廃液のモリブデン含有量及び酸化剤の種類により異なるが、例えば原廃液のモリブデン濃度が500〜1,000mg/Lの場合、38重量%塩化第二鉄溶液なら廃液に対し500〜10,000ppmが好ましく、過酸化水素なら500〜1,000ppmが好ましい。38重量%塩化第二鉄溶液は5,000〜10,000ppmがさらに好ましい。
硫化剤を添加する第二工程の前に酸化剤を添加することで、廃液中のモリブデンを6価にしておく作用があると考えられる。
なお、第一工程又は第三工程での塩化第二鉄の添加の代わりに、後述する固液分離で発生するSSスラリーを返送汚泥として添加することで、塩化第二鉄の使用量を低減することができる。返送汚泥を用いる場合、廃液のpHが上昇するので、硫酸などの鉱酸でpHが3.0以下となるように調整する。
第二工程において行われる反応は次の反応式で表される。
Mo6++3S2- → MoS3
(S2-:硫化剤)
本発明における硫化剤とは、上記第一工程を経た廃液中でS2-を供給するものをいう。
本発明で用いることのできる硫化剤としては、アルカリ金属水硫化物、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属多硫化物、例えば水硫化ソーダ、硫化ソーダ、多硫化ソーダ、硫化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種があげられる。
硫化剤の添加は、処理中の廃液のORP値が確実にマイナスになるまで行う。ORP値が−50〜−25mVになるまで行うのが好ましい。ORP値が低すぎると硫化剤の効果が飽和して経済的に不利であり、高すぎると第三工程での処理性状が悪化したり残存モリブデンが増加したりすることがある。
硫化剤添加後の反応時間は、ORP値が安定するまででよく、例えば5〜10分程度が好ましい。反応時間を長くしても、処理性状や残存モリブデン濃度に影響はない。
酸化剤添加後の反応時間は、ORP値が安定するまででよく、例えば5〜10分程度が好ましい。反応時間を長くしても、処理性状や残存モリブデン濃度に影響はない。
(実施例1、2及び比較例1、2)
表1に示す条件でモリブデン濃度460mg/Lの廃液中のモリブデン除去を行った。実施例1及び比較例1については、処理前の廃液のpH調整は行っていない。
表1の処理後の結果から明らかなとおり、第三工程の酸化剤添加を行わなかった比較例1、2に比べ、実施例1、2のほうがはるかに高い割合でモリブデンが除去されている。
表2に示す条件でモリブデン濃度460mg/Lの廃液中のモリブデン除去を行った。
表2の処理後の結果から明らかなとおり、第二工程の硫化剤の添加は、ORP値がマイナスになるまで行わないと、十分にモリブデンが除去されない。
表3に示す条件でモリブデン濃度460mg/Lの廃液中のモリブデン除去を行った。比較のため、実施例4も併せて表3に示した。
表3の処理後の結果から明らかなとおり、第三工程後のORP値は50〜200mVが好ましく、100mVで最も良い結果が得られている。
表4に示す条件でモリブデン濃度460mg/Lの廃液中のモリブデン除去を行った。比較のため、実施例1及び実施例4も併せて表4に示した。
表4の処理後の結果から明らかなとおり、塩化第二鉄の使用量により、モリブデン除去率に大きな差が出ることがわかった。塩化第二鉄を全く使用しない比較例4ではろ液が茶褐色、1,000ppm使用した実施例4ではオレンジ色になった。5,000ppm以上の実施例ではほぼ透明(薄い黄色)で、SSの凝集性も良好であった。
第三工程後に一度固液分離を行い、さらに第四工程でも固液分離を行った以外は実施例8と全く同条件でモリブデン含有廃液の処理を行ったところ、処理後のモリブデン濃度は0.43mg/L、モリブデン除去率は99.9%に向上した(実施例9)。同様に、実施例1と同条件で、固液分離を2回にしたところ、処理後のモリブデン濃度は0.1mg/L未満で除去率はほぼ100%となった(実施例10)。
モリブデン濃度1,050mg/Lの廃液を処理した以外は上記実施例8、1、9、10と同条件でモリブデン除去を行ったところ、処理後のモリブデン濃度はそれぞれ108mg/L、21.4mg/L、22.9mg/L、0.1mg/L未満となり、除去率はそれぞれ89.7%、98.0%、97.8%、100%であった(実施例11〜14)。
この結果より、固液分離を2回行うことでモリブデン除去率をさらに向上しうることがわかる。特に塩化第二鉄を10,000ppm使用した実施例10及び実施例14では残存濃度を0.1mg/L未満まで処理することができた。処理液はいずれの場合もほぼ透明で、SSの凝集性も良好であった。
第一工程で38重量%塩化第二鉄に代えてSSスラリー(返送汚泥)を原廃液の10重量%もしくは30重量%添加し、硫酸を用いてpHを1以下に調整した以外は実施例1と同条件でモリブデン含有廃液の処理を行った。処理後のモリブデン濃度はそれぞれ9.78mg/L、1.40mg/Lであり、モリブデン除去率は97.9%、99.7%であった。処理液は返送汚泥が10重量%のときに薄い黄色、30重量%のときにほぼ透明になった。返送汚泥を10重量%用いると38重量%塩化第二鉄1,000ppm使用したのと同程度の処理が行え、30重量%使用では38重量%塩化第二鉄5,000ppm使用と同程度の処理が行えた。
実施例1〜16、比較例1〜4の第三工程の酸化剤に次亜塩素酸ソーダを用いた以外はそれぞれ同条件でモリブデン含有廃液の処理を行った。処理条件と結果を表5〜8に示す。
表9に示す条件でモリブデン濃度460mg/Lの廃液中のモリブデン除去を行った。
表9の処理後の結果から明らかなとおり、塩化第二鉄を第一工程または第二工程のいずれか一方のみに使用することにより、モリブデン除去率が大きく向上することがわかった。なお、表9には比較のため実施例4の結果も併せて示した。
Claims (4)
- pH3.0以下のモリブデン含有廃液に酸化剤を添加する第一工程、硫化剤をORP値がマイナスになるまで添加して反応させる第二工程、酸化剤を添加する第三工程、及び消石灰スラリーを添加して廃液のpHを6〜8に調整し固液分離する第四工程を有し、第一工程と第三工程で用いる酸化剤のいずれか一方のみが塩化第二鉄であることを特徴とするモリブデン含有廃液の処理方法。
- 前記第二工程後の廃液のORP値が−50〜−25mVであり、前記第三工程後のORP値が50〜200mVであることを特徴とする請求項1に記載のモリブデン含有廃液の処理方法。
- 前記第三工程後、固液分離を行ったのちに前記第四工程を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のモリブデン含有廃液の処理方法。
- 前記第一工程又は第三工程での塩化第二鉄の添加に代えて、全処理工程後、発生する懸濁物質スラリーの返送を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のモリブデン含有廃液の処理方法。
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