JP6956576B2 - トルク負荷部材およびトルク伝達装置 - Google Patents
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Description
本発明のトルク負荷部材では、前記被検出面からの深さが7.5μm〜100μmまでの範囲の周方向残留圧縮応力を800MPa以上とすることができる。
特に、本発明のトルク伝達装置では、前記トルク負荷部材が、本発明のトルク負荷部材である。
なお、前記トルクセンサとしては、周囲に交流磁界を発生させるコイルを有し、かつ、該交流磁界の磁束が、前記トルク負荷部材の被検出面の表層部を通過することに基づいて、該表層部の透磁率に応じた検出信号を出力するものを採用することができる。
実施の形態の1例について、図1〜図5を用いて説明する。
図1は、トルク伝達装置を示している。このトルク伝達装置は、回転軸1と、転がり軸受2と、トルクセンサ3とを備える。本例では、回転軸1が、トルク負荷部材に相当する。
なお、本例に関する以下の説明中、トルク伝達装置に関して、軸方向片側は、図1における右側であり、軸方向他側は、図1における左側である。
外輪6は、軸受鋼などの鋼製で、円筒状に構成されている。外輪6は、軸方向両端部に内向鍔部9を有する。また、外輪6は、1対の内向鍔部9に挟まれた軸方向中間部内周面に、円筒状の外輪軌道10を有する。このような外輪6は、自動車のパワートレインを構成するハウジングなどの静止部材に内嵌された状態で、使用時にも回転しない。
複数個のニードル7は、それぞれが軸受鋼などの鋼製で、円柱状に構成されている。これらのニードル7は、外輪軌道10と内輪軌道4との間に転動自在に配置されている。
保持器8は、鋼製または合成樹脂製で、円筒状に構成されている。保持器8は、円周方向複数箇所にポケットを有しており、これらのポケット内にニードル7が1つずつ転動自在に保持されている。
また、トルク負荷部材は、周面に被検出面を有する部材に限らず、たとえば特開2017−96825号公報や特開2017−96826号公報に記載されているような、軸方向側面に被検出面を有する部材とすることもできる。
本発明の対象となるトルク負荷部材を自動車のパワートレインに組み込んで使用する場合、対象となる装置は、特に問わない。たとえば、マニュアルトランスミッション(MT)、オートマチックトランスミッション(AT)、ベルト式無段変速機、トロイダル型無段変速機、オートマチックマニュアルトランスミッション(AMT)、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)などの車側の制御で変速を行うトランスミッション、またはトランスファーを対象とすることができる。また、対象となる車両の駆動方式(FF、FR、MR、RR、4WDなど)も、特に問わない。
本発明の対象となるトルク負荷部材は、自動車のパワートレインを構成する回転軸に限らず、たとえば、風車の回転軸(主軸、増速器の回転軸)、圧延機のロールネック、鉄道車両の回転軸(車軸、減速機の回転軸)、工作機械の回転軸(主軸、送り系の回転軸)、建設機械・農業機械・家庭用電気器具・モータの回転軸等、各種機械装置の回転軸などを採用することができる。
本発明のトルク伝達装置を実施する場合で、トルクセンサが転がり軸受に支持されている構成を採用する場合には、当該転がり軸受は、ニードル軸受に限らず、玉軸受、ころ軸受、円すいころ軸受などの他の形式の転がり軸受であっても良い。
本発明のトルク伝達装置を実施する場合、磁歪式のトルクセンサは、上述した実施の形態のものに限らず、たとえば、特開2017−96825号公報、特開2017−96826号公報などに記載されて従来から知られている各種のものを採用することができる。
本実験では、試料として、複数本の回転軸(実施例1〜7、比較例1〜5)を用意した。これらの回転軸は、外周面の軸方向一部に被検出面を有し、かつ、被検出面の表層部の周方向残留圧縮応力が、互いに異なるものである。そして、これらの回転軸のそれぞれについて、被検出面に対向させた磁歪式のトルクセンサ3(図1および図2参照)により、負荷されたトルクを測定した。
それぞれの回転軸(実施例1〜7、比較例1〜5)についての諸元は、以下の通りである。
軸径D(図1参照):18mm
材質:SCr420H
処理:外周面に熱処理を施した後、被検出面にショットピーニング処理を施した。
熱処理の条件:浸炭(950℃、5時間、カーボンポテンシャル1.25%)
→焼き戻し(175℃、1時間)
→焼き入れ(820℃、1時間)
→焼き戻し(240℃、2時間)
ショットピーニング処理の条件:投射材・・・スチール(球状)
投射材直径・・・0.6mm
投射材硬度・・・Hv700
タンク(エアー)圧・・・0.2MPa
カバレージ・・・300%
ショットピーニング処理におけるタンク圧を0.3MPaとしたこと以外は、実施例1と同様である。
ショットピーニング処理におけるタンク圧を0.5MPaとしたこと以外は、実施例1と同様である。
浸炭処理におけるカーボンポテンシャルを0.70%、焼き戻し温度を175℃、および、ショットピーニング処理におけるタンク圧を0.5MPaとしたこと以外は、実施例1と同様である。
焼き戻し温度を175℃としたこと以外は、実施例1と同様である。
焼き戻し温度を175℃としたこと、および、ショットピーニング処理におけるタンク圧を0.3MPaとしたこと以外は、実施例1と同様である。
焼き戻し温度を175℃としたこと、および、ショットピーニング処理におけるタンク圧を0.5MPaとしたこと以外は、実施例1と同様である。
ショットピーニング処理を省略したこと以外は、実施例1と同様である。
ショットピーニング処理における投射材直径を0.05mmとしたこと以外は、実施例3と同様である。
ショットピーニング処理を省略したこと以外は、実施例4と同様である。
ショットピーニング処理を省略したこと以外は、実施例5と同様である。
ショットピーニング処理における投射材直径を0.05mmとしたこと以外は、実施例7と同様である。
なお、図6のグラフ(および後述する図8のグラフ)では、実施例1を「実1」と略記し、比較例1を「比1」と略記している。その他の実施例および比較例についても同様である。
また、周方向残留応力σRの符号が負であることは、周方向残留応力σRが周方向残留圧縮応力であることを意味する。
それぞれの回転軸(実施例1〜7、比較例1〜5)について、負荷されたトルクを、被検出面に対向させた磁歪式のトルクセンサ3により測定した。
具体的には、図5に示した発振器24により、ブリッジ回路23のA点とB点と間に交流電圧を印加することで、第一〜第四コイル層15〜18の周囲に交流磁界を発生させ、この交流磁界の磁束が、被検出面の表層部(被検出面から深さDまでの範囲)を通過する状態とした(一般的な表皮効果の計算によると、この際の深さDは、約300μm〜500μmであった)。そして、この状態で、回転軸に負荷するトルクを、正負の定格トルク(T1、T2)間で往復変化させながら、トルク測定を行い、図7に示すような、トルク測定に関する特性データを得た。そして、この特性データから、トルク測定の感度およびヒステリシスを求めた。なお、感度およびヒステリシスは、次のように定義した。
感度(mV)=α/γ=|A1−A2|/|T1−T2|
ヒステリシス(%FS)=β/γ=|a1−a2|/|T1−T2|
表2および図8に、それぞれの回転軸(実施例1〜7、比較例1〜5)についての、トルク測定の感度およびヒステリシスを示す。
特に、被検出面からの深さが7.5μm〜50μmまでの範囲の周方向残留圧縮応力が800MPa以上になっている例(実施例1〜実施例7)では、トルク測定のヒステリシスを抑えつつ(2.0%FS程度以下に留めつつ)、トルク測定の感度を効果的に向上させることができる点が認められる。
さらに、被検出面からの深さが7.5μm〜100μmまでの範囲の周方向残留圧縮応力が800MPa以上になっている例(実施例2、3、4、7)では、トルク測定のヒステリシスをより抑えつつ、トルク測定の感度をより効果的に向上させることができる点が認められる。
2 転がり軸受
3 トルクセンサ
4 内輪軌道
5 被検出面
6 外輪
7 ニードル
8 保持器
9 内向鍔部
10 外輪軌道
11 センサホルダ
12 嵌合筒部
13 バックヨーク
14 検出部
15 第一コイル層
16 第二コイル層
17 第三コイル層
18 第四コイル層
19 第一検出コイル
20 第二検出コイル
21 第三検出コイル
22 第四検出コイル
23 ブリッジ回路
24 発振器
25 ロックイン増幅器
Claims (4)
- 磁歪式のトルクセンサを対向させる被検出面を有し、該被検出面からの深さが7.5μm〜50μmまでの範囲の周方向残留圧縮応力が800MPa以上になっているトルク負荷部材。
- 前記被検出面からの深さが7.5μm〜100μmまでの範囲の周方向残留圧縮応力が800MPa以上になっている、請求項1に記載のトルク負荷部材。
- 被検出面を有するトルク負荷部材と、
前記被検出面に対向させた磁歪式のトルクセンサと、を備え、
前記トルク負荷部材が、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載のトルク負荷部材である、
トルク伝達装置。 - 使用時にも回転しない部分に対して前記トルク負荷部材を回転可能に支持する転がり軸受をさらに備え、かつ、前記トルクセンサが前記転がり軸受に支持されている、
請求項3に記載のトルク伝達装置。
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