以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るダストシール1の概略構造を示すための軸線xに沿う断面における断面図であり、図2は、図1に示すダストシール1の片側断面を拡大して示す断面図である。本発明の第1の実施の形態に係るダストシール1は、車両において、軸部を介して車輪を支持するナックルを回動可能に支持するキングピンに取り付けられ、キングピンとナックルとの間の環状の空間に、泥水や砂、ダスト等の異物が侵入することを防止する。車両としては、乗用車やトラック、トラクター等の農作業用機械やフォークリフト等がある。以下、説明の便宜上、軸線x方向において矢印a(図1参照)方向(軸線方向において一方)を外側とし、軸線x方向において矢印b(図1参照)方向(軸線方向において他方)を内側とする。より具体的には、外側とは、被取付部としてのキングピンから離れる方向であり、内側とは、キングピンに近づく方向である。また、軸線xに垂直な方向(以下、「径方向」ともいう。)において、軸線xから離れる方向(図1の矢印c方向)を外周側とし、軸線xに近づく方向(図1の矢印d方向)を内周側とする。
図1に示すように、本実施の形態に係るダストシール1は、軸線x周りに環状の支持環10と、支持環10に取り付けられている弾性材料から形成されている軸線x周りに環状の弾性体部20とを備えている。支持環10は、軸線xに沿って延びる筒状の部分である立上がり部11と、立上がり部11の軸線x方向における一方の側(外側)の端部である外側端部11a(図2参照)から外周側に広がる円盤状の部分であるフランジ部12とを有している。弾性体部20は、フランジ部12から軸線x方向における他方の側(内側)に向かって延びる環状のリップであるリップ部21,22・・・を複数有している。リップ部21,22・・・は隣接する他のリップ部21,22・・・に対して間隔を空けて設けられている。以下、ダストシール1の構成について具体的に説明する。
図1,2に示すように、支持環10は、軸線xを中心又は略中心とする環状の金属製の部材であり、軸線xに沿う断面(以下、単に断面ともいう。)の形状が略L字状であり、立上がり部11とフランジ部12とを有している。立上がり部11は、軸線xを中心又は略中心とする円筒状の部分であり、外側の端部である外側端部11aにおいてフランジ部12に接続している。フランジ部12は、軸線xを中心又は略中心とする中空円盤状の部分であり、例えば、外周側が内側に沈んで段差が形成されている。具体的は、図2に示すように、フランジ部12は、立上がり部11に接続している内周側の環状の部分である内周側部12aと、内周側部12aよりも外周側の環状の部分である外周側部12bと、内周側部12aと外周側部12bとの間に段差を形成して接続する環状の部分である段差部12cとを有している。段差部12cにより、外周側部12bは内周側部12aよりも内側に位置しており、内周側部12a及び外周側部12bは軸線xに直交する面に沿って延びている。本実施の形態においては、段差部12cの形成する段差は小さなものとなっており、例えば、図2に示すように、内周側部12aの厚さ(軸線x方向における厚さ)を超えない段差となっている。
立上がり部11は、後述する使用状態において、ボルト等の固定部材が挿通可能に形成さており、また、固定部材がフランジ部12に当接してフランジ部12が固定部材によって内側に押し付けられるように形成されている。例えば、立上がり部11の内周側の面である内周面11bの直径は、固定部材の外周面の直径よりも大きくなっている。立上がり部11の内周面11bの直径は、固定部材の外周面の直径と同じであってもよく、小さくてもよい。
弾性体部20は、図1,2に示すように、支持環10のフランジ部12の外周側の部分に取り付けられており、例えば、フランジ部12の外周側部12b及び段差部12cを超えて内周側部12aの途中までフランジ部12を覆うようにフランジ部12に取り付けられている。具体的には、弾性体部20は、基体部23を有しており、基体部23においてフランジ部12に取り付けられている。リップ部は基体部23から延びている。また、本実施の形態においては、弾性体部20は、内周側リップ部21と外周側リップ部22との2つのリップ部を有している。内周側リップ部21と外周側リップ部22とは、同軸又は略同軸に配置されており、外周側リップ部22は内周側リップ部21よりも外周側に位置している。内周側リップ部21と外周側リップ部22との間には、外側に凹む環状の空間であるリップ間空間24が形成されている。このリップ間空間24にはグリースが塗布されていてもよい。
内周側リップ部21は、内側に向かって外周側に傾いており、例えば図示するように、軸線xを中心又は略中心とする円錐筒状又は略円錐筒状のリップである。図2に示す断面において内周側リップ部21は、真っ直ぐ延びるような形状であってもよく、また、曲がって延びるような形状であってもよい。内周側リップ部21は、フランジ部12の段差部12cの近傍に基体部23を介して取り付けられている。内周側リップ部21と支持環10の立上がり部11との間には、外側に凹む環状の空間であるリップ内周側空間25が形成されている。このリップ内周側空間25にはグリースが塗布されていてもよい。
外周側リップ部22は、内周側リップ部21と同様に、内側に向かって外周側に傾いていており、例えば、軸線xを中心又は略中心とする円錐筒状又は略円錐筒状のリップである。図2に示す断面において外周側リップ部22は、真っ直ぐ延びるような形状であってもよく、また、曲がって延びるような形状であってもよい。外周側リップ部22は、フランジ部12の外周側部12bの先端(先端12d)に基体部23を介して取り付けられている。
内周側リップ部21及び外周側リップ部22の先端部(先端部21a,22a)は、軸線x方向において、同一又は略同一の位置に位置している。本実施の形態においては、内周側リップ部21の先端部21aは、軸線x方向において、外周側リップ部22の先端部22aよりも内側に位置している。内周側リップ部21及び外周側リップ部22は、使用状態において、先端部21a,22aが夫々ナックル等のキングピンが挿入される部材に当接するようになっている。
上述のようにダストシール1においては、支持環10が立上がり部11及びフランジ部12を有しており、断面略L字状となっており、このため、フランジ部12の先端12dよりも内周側の部分にもリップ部を設けることができる。このため、ダストシール1の占めるスペースを外周側に広げることなく、複数のリップ部を設けることができる。
上述のように、支持環10は、立上がり部11及びフランジ部12を有しており、各部分は一体となっており、支持環10は同一の材料から一体に形成されている。また、弾性体部20は、内周側リップ部21、外周側リップ部22、及び基体部23を有しており、各部分は一体となっており、弾性体部20は同一の材料から一体に形成されている。上述のように支持環10は、例えば金属材料から形成されており、この金属材料としては、例えば、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)がある。また、弾性体部20の弾性材料としては、例えば、各種ゴム材がある。各種ゴム材としては、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H−NBR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)等の合成ゴムである。支持環10は、例えばプレス加工や鍛造によって製造され、弾性体部20は成形型を用いて架橋(加硫)成型によって成形される。この架橋成型の際に、支持環10は成形型の中に配置されており、弾性体部20が架橋(加硫)接着により支持環10に接着され、弾性体部20が支持環10と一体的に成形される。
次いで、上述の構成を有するダストシール1の作用について説明する。図3は、ダストシール1の使用状態を示す部分断面図である。上述のように、ダストシール1は、車両において、キングピン100とナックル110との間に、泥水や砂、ダスト等の異物が侵入することを防止している。
図3に示すように、キングピン100は、ナックル110のキングピン軸線に沿って貫通するキングピン孔111に挿通されており、ナックル110はキングピン100周りに回動可能になっている。ナックル110は図示しない軸部を介して車輪を回動可能に支持している。ナックル110がキングピン100周りに回動することにより、車輪の向きが変えられる。図3に示すように、ナックル110のキングピン孔111とキングピン100の外周面101との間には環状の空間が形成されており、この環状の空間にはブッシュ113が嵌め込まれている。このブッシュ113により、ナックル110がキングピン100周りに滑らかに回動するようになっている。また、キングピン100にはその先端面103からキングピン軸線に沿って延びるねじ孔102が形成されており、固定部材としてのボルト120が螺合可能になっている。なお、使用状態において、キングピン軸線に軸線xが重なるように、ダストシール1は取り付けられる。
図3に示すように、使用状態において、ボルト120は支持環10を貫通してキングピン100のねじ孔102に螺合しており、ダストシール1は、ボルト120のボルトヘッド121とキングピン100の先端面103との間に挟持されて固定されている。具体的には、支持環10のフランジ部12の内周側部12aに外側からボルトヘッド121が当接して、ボルト120が支持環10を内側に押し付けており、また、支持環10の立上がり部11の内側の端部(内側端部11c)がキングピン100の先端面103に押し付けられている。また、支持環10の立上がり部11の内周面11bはボルト120の外周面122に当接しているか、または、立上がり部11の内周面11bとボルト120の外周面122との間には隙間が形成されている。
ボルト120によって固定された状態のダストシール1において、内周側リップ部21の先端部21aがナックル110の摺動面112に接触しており、また、外周側リップ部22の先端部22aがナックル110の摺動面112に接触している。これにより、外周側リップ部22よりも内周側が外周側リップ部22によって密封されており、内周側リップ部21よりも内周側が内周側リップ部21によって密封されている。このように、2つのリップ部21,22によって2重にキングピン100とキングピン孔111との間の空間が密封されており、密封性能が高くなっている。また、ボルト120によるリップ部へ作用する力が2つの内周側リップ部21及び外周側リップ部22に分散されるので、内周側リップ部21及び外周側リップ部22夫々に加わる摺動抵抗は小さくなる。これにより、内周側リップ部21及び外周側リップ部22の摩耗を低減することができる。
また、リップ間空間24及びリップ内周側空間25内にはグリースを充填することができ、このグリースにより、外部からの異物の侵入の防止性能を向上させることができる。また、支持環10は略L字状であるので、リップ間空間24及びリップ内周側空間25を大きくすることができ、これにより多くのグリースを充填することができる。このため、グリースによる作用を長く持続させることができる。また、グリースにより、内周側リップ部21及び外周側リップ部22の摩耗を低減することができる。
上述のように、本発明の第1の実施の形態に係るダストシールによれば、密封性能の低下を抑制することができる。
次いで、本発明の第2の実施の形態に係るダストシール2について説明する。図4は、本発明の第2の実施の形態に係るダストシール2の概略構造を示すための軸線xに沿う断面図であり、図5は、図4に示すダストシール2の片側断面を拡大して示す断面図である。本発明の第2の実施の形態に係るダストシール2は、上述の本発明の第1の実施の形態に係るダストシール1に対して、弾性体部の構造が異なる。以下、本発明の第2の実施の形態に係るダストシール2について、本発明の第1の実施の形態に係るダストシール1と同一又は同様の機能を有する構成については同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成について説明する。
ダストシール2においては、ダストシール1の弾性体部20に対応する弾性体部30が、支持環10のフランジ部12の内周側の端部を覆っている点で上述のダストシール1とは異なる。具体的には、弾性体部30は、基体部23が覆っている支持環10の部分(フランジ部12)の他に、使用状態においてボルト120のボルトヘッド121が当接するフランジ部12の内周側部12aの部分を少なくとも覆っている。
例えば、図4,5に示すように、弾性体部30は、基体部23から内周側に延びており、ガスケット部26と嵌合部27とを有している。ガスケット部26は、基体部23よりも内周側においてフランジ部12を外側から覆う部分であり、嵌合部27は、支持環10の立上がり部11を内周側から覆う部分である。また、嵌合部27は、立上がり部11の内側端部11cを内側から覆っている。ガスケット部26は基体部23に接続しており、また、ガスケット部26は嵌合部27に接続している。ガスケット部26は、軸線x方向における厚さが径方向において一定又は略一定となっている。ダストシール2においては、立上がり部11ではなく、弾性体部30の嵌合部27が、使用状態において、ボルト等の固定部材が挿通可能に形成されており、また、固定部材がフランジ部12ではなくガスケット部26に当接してガスケット部26が固定部材によって内側に押し付けられるように形成されている。例えば、嵌合部27の内周側の面である内周面27aの直径は、固定部材の外周面の直径よりも大きくなっている。嵌合部27の内周面27aの直径は、固定部材の外周面の直径と同じであってもよく、小さくてもよい。
次いで、上述の構成を有するダストシール2の作用について説明する。図6は、ダストシール2の使用状態を示す部分断面図である。ダストシール2は、上述のダストシール1と同様に作用し、また、ボルトヘッド121との当接部における密封性能を向上させることができる。具体的には、図6に示すように、ダストシール2の使用状態において、ボルトヘッド121には弾性体のガスケット部26が接触しており、ガスケット部26が軸線x方向に圧縮されている。このため、ダストシール2は、ボルトヘッド121にダストシール1よりも密着して接触することができ、ダストシール2とボルトヘッド121との接触部におけるダストシール2の密封性能を向上させることができる。また、キングピン100の先端面103と弾性体の嵌合部27とが接触しており、嵌合部27が軸線x方向に圧縮されている。このため、ダストシール2は、キングピン100の先端面103にダストシール1よりも密着して接触することができ、ダストシール2とキングピン100との接触部においてもダストシール2の密封性能を向上させることができる。また、使用状態において嵌合部27がボルト120の外周面122に押し付けられる場合は、この部分においても、ダストシール2とボルト120との間を密封することができる。
このように、ダストシール2は、ダストシール1の奏する作用効果に加えて、ダストシール2とボルト120との間の密封性能を向上させることができ、ダストシール2とボルト120との間から異物が侵入することをより防止することができる。
なお、ガスケット部26は、上述のように、基体部23から内周側においてフランジ部12全体を覆っていなくてもよく、ボルトヘッド121と接触する部分のみが形成されていてもよい。また、ダストシール2においては、弾性体部30が嵌合部27を有するとしたが、弾性体部30は嵌合部27を有していなくともよい。この場合は、上述のダストシール1と同様に、支持環10の立上がり部11は、使用状態において、ボルト等の固定部材が立上がり部11を挿通可能に形成されており、また、固定部材がガスケット部26に当接するように形成されている。また、嵌合部27は、支持環10の立上がり部11の内側端部11cのみを覆うように形成されていてもよい。
次いで、本発明の第3の実施の形態に係るダストシール3について説明する。図7は、本発明の第3の実施の形態に係るダストシール3の概略構造を示すための軸線xに沿う断面図である。本発明の第3の実施の形態に係るダストシール3は、上述の本発明の第2の実施の形態に係るダストシール2に対して、カラー部材40を更に備えている点で異なる。以下、本発明の第3の実施の形態に係るダストシール3について、本発明の第2の実施の形態に係るダストシール2と同一又は同様の機能を有する構成については同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成について説明する。
図7に示すように、カラー部材40は、支持環10の立上がり部11の内周側の空間に挿入可能な筒状の部材であり、カラー部材40の軸線方向における長さは、立上がり部11の軸線x方向における長さよりも長くなっている。図7は、ダストシール3においてカラー部材40が組み付けられた状態を示しており、このカラー部材40の組み付け状態において、カラー部材40は、支持環10の立上がり部11の内周側の空間内(弾性体部30の嵌合部27)に挿入されている。図7に示すように、カラー部材70が組み付けられた状態において、カラー部材40の軸線は軸線xに一致又は略一致するようになっている。このため、以下説明の便宜上、カラー部材40の軸線を軸線xとする。
カラー部材40は、具体的には、軸線xを中心又は略中心とする円筒状又は略円筒状の部材であり、径方向における厚さは一定又は略一定となっている。また、カラー部材40の外周側の面である外周面41の直径は、弾性体部30の嵌合部27の内周面27aの直径と同じ、または、嵌合部27の内周面27aの直径よりも小さくなっている。つまり、嵌合部27はカラー部材40に対して締め代を有しておらず、カラー部材40を容易に嵌合部27に挿入することができる。なお、カラー部材40の外周面41の直径は、嵌合部27の内周面27aの直径よりも大きくなっていてもよい。この場合、嵌合部27はカラー部材40に対して締め代を有しており、カラー部材40は嵌合部27に圧入される。また、上述のように、カラー部材40の軸線x方向における長さ(長さL1)は、立上がり部11の軸線x方向における長さ(長さL2)よりも大きくなっている。カラー部材40は、樹脂製又は金属製である。
ダストシール3においては、弾性体部30の嵌合部27ではなく、カラー部材40が、使用状態において、ボルト等の固定部材が挿通可能に形成されており、また、固定部材が弾性体部30のガスケット部26に当接してガスケット部26が固定部材によって内側に押し付けられるように形成されている。例えば、カラー部材40の内周側の面である内周面42の直径は、固定部材の外周面の直径よりも大きくなっている。カラー部材40の内周面42の直径は、固定部材の外周面の直径と同じであってもよく、小さくてもよい。
次いで、上述の構成を有するダストシール3の作用について説明する。図8は、ダストシール3の使用状態を示す部分断面図である。ダストシール3は、上述のダストシール2と同様に作用し、また、ボルト120によるダストシール3の潰し代を適切な値にすることができる。具体的には、図8に示すように、ダストシール3の使用状態において、カラー部材40はボルト120とキングピン100との間に挟まれており、ボルトヘッド121は、カラー部材40の外側の端部(外側端部40a)に接触しており、また、キングピン100の先端面103は、カラー部材40の内側の端部(内側端部40b)に接触している。また、この時、カラー部材40の長さL1は、立上がり部11の長さL2よりも大きくなっているため、ボルトヘッド121にはガスケット部26が接触して、ガスケット部26が軸線x方向に圧縮されており、キングピン100の先端面103には嵌合部27が接触して、嵌合部27が軸線x方向に圧縮されている。ボルト120のキングピン100のねじ孔102への進入量は、カラー部材40の長さL1によって制限されており、このため、使用状態におけるガスケット部26及び嵌合部27の潰し代は、カラー部材40の長さL1によって所定の値に制限される。これにより、ボルト120のキングピン100への進入量が過大となり、ガスケット部26及び嵌合部27の潰し代が過大となることを防止することができる。
このように、ダストシール3は、ダストシール2の奏する作用効果に加えて、使用状態におけるボルト120によるガスケット部26及び嵌合部27の潰し代を適切な値に設定することができ、ボルト120によってダストシール3が過剰に潰されることを防止することができる。
なお、ダストシール3においてもダストシール2と同様に、ガスケット部26は、基体部23から内周側においてフランジ部12全体を覆っていなくてもよく、ボルトヘッド121と接触する部分のみが形成されていてもよく、また、弾性体部30は嵌合部27を有していなくともよい。弾性体部30が嵌合部27を有していない場合は、カラー部材40は、嵌合部27にではなく、支持環10の立上がり部11に挿入可能に形成される。また、嵌合部27は、支持環10の立上がり部11の内側端部11cのみを覆うように形成されていてもよい。
次いで、上述の本発明の第1〜3の実施の形態に係るダストシール1〜3の支持環10のフランジ部12及び弾性体部20,30の基体部23の変形例について説明する。図9は、本発明の第1〜3の実施の形態に係るダストシール1〜3の変形例の軸線xに沿う断面の片側を示す断面図である。以下、上述の本発明の第2の実施の形態に係るダストシール2に対する変形例について具体的に説明するが、本変形例は、上述の本発明の第1,3の実施の形態に係るダストシール1,3に対しても同様に適用することができる。
図9に示すように、ダストシール4は、支持環50を有しており、支持環50は、ダストシール2の支持環10のフランジ部12とは異なるフランジ部51を有している。フランジ部51は、軸線xを中心又は略中心とする中空円盤状の部分であり、内周側部12aと、内周側部12aよりも外周側の環状の部分である外周側部52と、内周側部12aと外周側部52との間に段差を形成して接続する環状の部分である段差部53とを有している。段差部53により、外周側部52は内周側部12aよりも内側に位置しており、内周側部12a及び外周側部52は軸線xに直交する面に沿って延びている。段差部53の形成する段差は、上述のダストシール2の段差部12cの形成する段差よりも大きく、内周側部12aの厚さを超えており、例えば図9に示すように、支持環50の立上がり部11の軸線x方向における中央又は略中央の位置まで達している。なお、段差部53の形成する段差の大きさは、これに限られない。
また、フランジ部51の外周側部52は、外周側に位置する外周側リップ部22のフランジ部51への取り付け部分よりも外周側に延びている。具体的には、後述する弾性体部31の基体部32への外周側リップ部22の接続部分である外周側リップ部22の根元部22bよりも外周側に外周側部52は延びており、外周側部52の外周側の端である先端52aは、外周側リップ部22の根元部22bよりも外周側に位置している。例えば、図9に示すように、フランジ部51の外周側部52は、外周側リップ部22の先端部22aよりも外周側まで延びている。
また、図9に示すように、ダストシール4は、弾性体部31を有しており、弾性体部31は、ダストシール2の弾性体部30とは異なる基体部32を有している。基体部32は、フランジ部51の外周側部52及び段差部53を超えて内周側部12aの途中までフランジ部51を覆うようにフランジ部51に取り付けられている。内周側リップ部21及び外周側リップ部22は、基体部32から延びており、基体部32のフランジ部51の外周側部52を覆う部分の内側から延びている。
変形例に係るダストシール4は、上述の構成を有しており、フランジ部51の外周側部52が、外周側の外周側リップ部22の根元部22bよりも外周側に延びており、外側において内周側リップ部21及び外周側リップ部22を覆っている。このため、外周側リップ部22への異物の到達を抑制することができる。フランジ部51の外周側部52が、より外周側に延びている程、外周側リップ部22への異物の到達をより抑制することができる。また、ダストシール4においては、フランジ部51の段差部53の形成する段差が大きくなっているので、リップ内周側空間25を大きくすることができ、グリースの充填量を多くすることができる。
上述のように変形例に係るダストシール4の構造は、上述のダストシール1にも適用することができる。この場合、弾性体部31は、ガスケット部26及び嵌合部27を有していない。この場合、また、弾性体部31の基体部32は、フランジ部51の外周側部52のみを覆っていてもよく、または、フランジ部51の外周側部52及び、段差部53の全部又は段差部53の途中までを覆っていてもよい。また、ダストシール1のフランジ部12については、本変形例のフランジ部51の外周側部52のみを適用してもよい。この場合、フランジ部は、図9に示すような大きな段差部53ではなく、図1,2に示す小さな段差部12cを有する。
本変形例に係るダストシール4は、上述の本発明の第1〜3の実施の形態に係るダストシール1〜3と同様に作用し、同様の効果を奏することができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に係るダストシール1〜3に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
また、上述の本実施の形態に係るダストシール1〜3においては、使用状態においてダストシール1〜3はボルト120とキングピン100との間に固定されるとしたが、本発明に係るダストシールの使用形態及び適用対象はこれに限られない。例えば、キングピンがボルト状のものであり、これがナックル支持部材にナックルを回動可能に取り付ける構成を有する適用対象においては、ナックル支持部材とナックルとの間にダストシール1〜3が固定されて使用されてもよい。また、他の使用形態であってもよい。