JP6955234B2 - 肌貼付用フィルム、および、転写シート - Google Patents

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Description

本発明は、肌貼付用フィルム、および、肌貼付用フィルムを備える転写シートに関する。
スキンケアやメイクアップの補助のために肌に貼り付けられるフィルムとして、数nm〜数μm程度の厚さを有する薄膜が有用であることが報告されている。こうした肌貼付用フィルムとして、例えば、特許文献1には、ヒアルロン酸ナトリウムを担持したポリ乳酸薄膜の実施例が記載されている。
国際公開第2014/058060号
薄膜の形成方法としては、一般に、溶融押出法と溶剤キャスト法とが知られている。溶融押出法は、溶融させた材料を押し出して当該材料から薄膜を形成する。溶剤キャスト法は、材料を溶剤に溶かして調整した塗工液を薄膜状に成形した後に溶剤を蒸発させる。これらの方法のうち、溶融押出法は、高速かつ安価な成膜を可能にするが、特に薄い膜の形成に際しては高い歩留まりを得られ難い。そのため、上述した肌に貼り付けられる薄膜の形成には、溶剤キャスト法が適している。
上記特許文献1の実施例においては、ジクロロメタンにポリ乳酸を溶解させ、この溶解液を基材に塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させることによって、ポリ乳酸薄膜を形成している。また、現在まで、大学等の研究においても、ポリ乳酸薄膜の形成のための溶剤としては、ジクロロメタンやクロロホルムといったハロゲン系溶剤を用いることが報告されている。しかしながら、ハロゲン系溶剤は、強い溶解力を有する一方で、人体に対して高い安全性を有しているとは言えない。溶剤キャスト法によって形成された薄膜から溶剤の成分を完全に除去することは困難であるため、肌貼付用フィルムの形成のための溶剤としてハロゲン系溶剤を用いることは好ましくない。
ハロゲン系溶剤よりも高い安全性を有する溶剤を用いるためには、ハロゲン系溶剤ほどの溶解力を有さない溶剤にも溶解可能な材料から肌貼付用フィルムを形成すればよい。しかしながら、単に溶解性が高い材料から肌貼付用フィルムを形成すると、肌に使用される種々の化粧料に対する肌貼付用フィルムの耐性が低くなってしまう。すなわち、肌貼付用フィルムと化粧料との接触によって肌貼付用フィルムに溶解や破れが生じてしまい、使用に際しての肌貼付用フィルムの耐久性が低くなる。
本発明は、ハロゲン系溶剤よりも高い安全性を有する溶剤を用いた製造が可能であって、かつ、化粧料に対する耐性の低下を抑制可能とした肌貼付用フィルム、および、肌貼付用フィルムを備える転写シートを提供することを目的とする。
上記課題を解決する肌貼付用フィルムは、ポリ乳酸層を備える肌貼付用フィルムであって、前記ポリ乳酸層は、10nm以上5000nm以下の厚さを有し、前記ポリ乳酸層は、ポリ-DL-乳酸を含み、前記ポリ-DL-乳酸におけるL-乳酸の含有率は50%以上90%以下であり、前記ポリ-DL-乳酸は、100,000以上の重量平均分子量を有する。
上記構成によれば、ポリ-DL-乳酸におけるL-乳酸の含有率が50%以上90%以下であるため、ポリ乳酸層の製造に用いられる溶剤にハロゲン系溶剤を用いず、ハロゲン系溶剤よりも高い安全性を有するエステル系溶剤を用いることが可能である。また、ポリ-DL-乳酸の重量平均分子量が100,000以上であるため、ポリ乳酸層における化粧料に対する耐性が高められる。
上記構成において、前記ポリ-DL-乳酸の前記重量平均分子量は800,000未満であってもよい。
上記構成によれば、ポリ-DL-乳酸の重量平均分子量が100,000以上、かつ、ポリ-DL-乳酸の量産に適した800,000未満であるため、上述した耐性の向上と、肌貼付用フィルムの生産性の向上との両立が可能である。
上記構成において、肌貼付用フィルムは、ポリ-DL-乳酸を溶解するエステル系溶剤に対して難溶性である水溶性樹脂層をさらに備えてもよい。
上記構成によれば、肌貼付用フィルムにおける化粧料に対する耐性および膜強度が高められる。
上記構成において、肌貼付用フィルムは、ポリ-DL-乳酸を溶解するエステル系溶剤に対して難溶性であるドデカン溶解性樹脂層をさらに備えてもよい。
上記構成によれば、肌貼付用フィルムにおける化粧料に対する耐性および膜強度が高められる。また、肌貼付用フィルムにおける耐水性も向上可能である。
上記構成において、肌貼付用フィルムは、ポリ-DL-乳酸を溶解するエステル系溶剤に対して難溶性である水溶性樹脂層、および、前記エステル系溶剤に対して難溶性であるドデカン溶解性樹脂層をさらに備え、前記ポリ乳酸層は、前記水溶性樹脂層と前記ドデカン溶解性樹脂層との間に挟まれていてもよい。
上記構成によれば、より多くの種類の化粧料に対する肌貼付用フィルムの耐性が高められる。したがって、肌貼付用フィルムの汎用性が高められる。
上記構成において、前記ポリ乳酸層は、水溶性樹脂粒子を含有しており、前記水溶性樹脂粒子は、前記ポリ乳酸層における前記水溶性樹脂層と接する面に露出していてもよい。
上記構成によれば、ポリ乳酸層と水溶性樹脂層との間の密着性が高められる。
上記構成において、前記ポリ乳酸層は、ドデカン溶解性樹脂粒子を含有しており、前記ドデカン溶解性樹脂粒子は、前記ポリ乳酸層における前記ドデカン溶解性樹脂層と接する面に露出していてもよい。
上記構成によれば、ポリ乳酸層とドデカン溶解性樹脂層との間の密着性が高められる。
上記課題を解決する転写シートは、上記肌貼付用フィルムと、前記肌貼付用フィルムを支持する支持基材であって、前記肌貼付用フィルムから剥離可能に構成された前記支持基材と、を備える。
上記構成によれば、極めて薄い肌貼付用フィルムを支持基材に支持された状態で取り扱い、また、肌貼付用フィルムの肌への貼付後に支持基材を剥がすことによって、肌貼付用フィルムのみを肌に貼り付けることができる。したがって、肌貼付用フィルムが取り扱い易くなる。
本発明によれば、肌貼付用フィルムについて、ハロゲン系溶剤よりも高い安全性を有する溶剤を用いた製造が可能であって、かつ、化粧料に対する耐性の低下を抑制することができる。
肌貼付用フィルムの一実施形態について、第1形態の肌貼付用フィルムの断面構造を示す図。 第2形態の肌貼付用フィルムの断面構造を示す図。 第3形態の肌貼付用フィルムの断面構造を示す図。 第4形態の肌貼付用フィルムの断面構造を示す図。 第5形態の肌貼付用フィルムの断面構造を示す図。 一実施形態の転写シートの断面構造を示す図。 一実施形態の転写シートを用いた肌貼付用フィルムの貼付方法を示す図であって、化粧料の塗布された肌を示す図。 一実施形態の転写シートを用いた肌貼付用フィルムの貼付方法を示す図であって、肌に転写シートを配置する工程を示す図。 一実施形態の転写シートを用いた肌貼付用フィルムの貼付方法を示す図であって、肌貼付用フィルムが貼り付けられた肌を示す図。
図面を参照して、肌貼付用フィルムおよび転写シートの一実施形態を説明する。本実施形態の肌貼付用フィルムは、肌に貼り付けられることにより、スキンケアやメイクアップ等の美容用途に用いられる。肌貼付用フィルムは、化粧料が塗布された肌に対して化粧料の上から貼り付けられてもよいし、化粧料が塗布されていない肌に貼り付けられてもよい。また、肌貼付用フィルムが肌に貼り付けられた後に、当該フィルムの上から化粧料が塗布されてもよい。
[肌貼付用フィルムおよび転写シートの構造]
図1〜図5を参照して、肌貼付用フィルム10の5つの形態について説明する。
図1は、第1形態の肌貼付用フィルム10Aの構造を示す。肌貼付用フィルム10Aは、ポリ乳酸を主成分とするポリ乳酸層21を備えている。第1形態の肌貼付用フィルム10は、ポリ乳酸層21のみから構成される。
図2は、第2形態の肌貼付用フィルム10Bの構造を示す。肌貼付用フィルム10Bは、ポリ乳酸層21に加えて、水溶性樹脂層22を備えている。水溶性樹脂層22は、ポリ乳酸層21が有する2つの面の一方を覆っている。水溶性樹脂層22は、水溶性の樹脂を主成分とする層であり、肌貼付用フィルム10Bの化粧品に対する耐性を高める機能を有する。
第2形態の肌貼付用フィルム10Bは、ポリ乳酸層21と水溶性樹脂層22との二層構造を有する。肌貼付用フィルム10Bのうち、肌に接する面である貼付面を有する層は、ポリ乳酸層21であってもよいし、水溶性樹脂層22であってもよい。一部の化粧料に対する水溶性樹脂層22の耐性は、ポリ乳酸層21と比べて高い。そのため、肌貼付用フィルム10Bにおける貼付面とその反対側の面とのうち、上記化粧料と接触する面が、水溶性樹脂層22の有する面であることが好ましい。
なお、貼付面を水溶性樹脂層22が有し、肌がその表面に水分を有する場合には、水溶性樹脂層22が水分によって軟化することにより、肌貼付用フィルム10Bが肌に沿いやすくなるため、肌と肌貼付用フィルム10Bとの間の密着性を高める効果が得られる。
図3は、第3形態の肌貼付用フィルム10Cの構造を示す。肌貼付用フィルム10Cは、ポリ乳酸層21に加えて、ドデカン溶解性樹脂層23を備えている。ドデカン溶解性樹脂層23は、ポリ乳酸層21が有する2つの面の一方を覆っている。ドデカン溶解性樹脂層23は、炭化水素系溶剤であるドデカンに可溶な樹脂を主成分とする層であり、肌貼付用フィルム10Cの化粧品に対する耐性を高める機能を有するとともに、肌貼付用フィルム10Cの耐水性を高める機能を有する。
第3形態の肌貼付用フィルム10Cは、ポリ乳酸層21とドデカン溶解性樹脂層23との二層構造を有する。肌貼付用フィルム10Cのうち、貼付面を有する層は、ポリ乳酸層21であってもよいし、ドデカン溶解性樹脂層23であってもよい。一部の化粧料に対するドデカン溶解性樹脂層23の耐性および耐水性は、ポリ乳酸層21と比べて高い。そのため、肌貼付用フィルム10Cにおける貼付面とその反対側の面とのうち、上記化粧料と接触する面、あるいは、水分と接触する面が、ドデカン溶解性樹脂層23の有する面であることが好ましい。
図4は、第4形態の肌貼付用フィルム10Dの構造を示す。肌貼付用フィルム10Dは、ポリ乳酸層21と、水溶性樹脂層22と、ドデカン溶解性樹脂層23とを備えている。ポリ乳酸層21は、水溶性樹脂層22とドデカン溶解性樹脂層23とに挟まれている。換言すれば、ポリ乳酸層21が有する2つの面の一方を水溶性樹脂層22が覆い、他方をドデカン溶解性樹脂層23が覆っている。
第4形態の肌貼付用フィルム10Dは、ポリ乳酸層21と水溶性樹脂層22とドデカン溶解性樹脂層23との三層構造を有する。肌貼付用フィルム10Dのうち、貼付面を有する層は、水溶性樹脂層22であってもよいし、ドデカン溶解性樹脂層23であってもよい。肌貼付用フィルム10Dにおける貼付面とその反対側の面とが接触する化粧料等の種類に応じて、貼付面を有する層が選択されればよい。
なお、上述のように、貼付面を水溶性樹脂層22が有する場合、水溶性樹脂層22は、肌と肌貼付用フィルム10Bとの間の密着性を高める効果を奏し得る。また、ドデカン溶解性樹脂層23は、肌貼付用フィルム10Cの化粧品に対する耐性を高めることに加えて、肌貼付用フィルム10Cの耐水性も高め得る。こうした特性を生かす観点では、水溶性樹脂層22が貼付面を有し、ドデカン溶解性樹脂層23が貼付面と反対側の最外面を有することが好ましい。
図5は、第5形態の肌貼付用フィルム10Eの構造を示す。肌貼付用フィルム10Eは、ポリ乳酸層21と、水溶性樹脂層22と、ドデカン溶解性樹脂層23とを備え、ポリ乳酸層21は、水溶性樹脂層22とドデカン溶解性樹脂層23とに挟まれている。さらに、ポリ乳酸層21は、水溶性樹脂粒子24とドデカン溶解性樹脂粒子25とを含んでいる。
水溶性樹脂粒子24とドデカン溶解性樹脂粒子25との各々は、ポリ乳酸層21におけるこれらの粒子24,25を含んでいない部分の厚さよりも大きい粒径を有する。すなわち、水溶性樹脂粒子24とドデカン溶解性樹脂粒子25との各々は、ポリ乳酸層21の表面に露出している。
水溶性樹脂粒子24は、水溶性の樹脂からなる粒子であり、ポリ乳酸層21と水溶性樹脂層22との間の密着性を高める機能を有する。ドデカン溶解性樹脂粒子25は、ドデカンに可溶な樹脂からなる粒子であり、ポリ乳酸層21とドデカン溶解性樹脂層23との間の密着性を高める機能を有する。
第5形態の肌貼付用フィルム10Eは、ポリ乳酸層21と水溶性樹脂層22とドデカン溶解性樹脂層23との三層構造を有する。肌貼付用フィルム10Eのうち、貼付面を有する層は、水溶性樹脂層22であってもよいし、ドデカン溶解性樹脂層23であってもよい。
なお、図5においては、水溶性樹脂層22が平坦な層であり、ドデカン溶解性樹脂層23が、水溶性樹脂粒子24とドデカン溶解性樹脂粒子25とに起因したポリ乳酸層21の凹凸に沿った膜形状を有する形態を例示した。これに限らず、ドデカン溶解性樹脂層23が平坦な層であって、水溶性樹脂層22が、粒子24,25に起因したポリ乳酸層21の凹凸に沿った膜形状を有していてもよい。あるいは、水溶性樹脂層22とドデカン溶解性樹脂層23との双方が、粒子24,25に起因したポリ乳酸層21の凹凸に沿った膜形状を有していてもよい。いずれの層が凹凸を有するかは、各層の形成順序や製造工程において加えられる圧力の大きさ等によって調整可能である。
上述のように、水溶性樹脂層22とドデカン溶解性樹脂層23との特性を生かす観点では、水溶性樹脂層22が貼付面を有し、ドデカン溶解性樹脂層23が貼付面と反対側の最外面を有することが好ましい。また、貼付面と反対側の上記最外面が凹凸を有していると、肌貼付用フィルム10Eの貼られた領域において肌がテカって、すなわち、脂ぎってまたは光って見えることが抑えられるとともに、肌貼付用フィルム10Eの上からファンデーション等の化粧料を塗布する場合には、肌貼付用フィルム10E上に化粧料が保持されやすくなるため、化粧ノリ、すなわち、化粧料の定着や馴染みの程度が良好となり、化粧が崩れにくくなる。したがって、ドデカン溶解性樹脂層23が上記最外面を有する場合には、少なくともドデカン溶解性樹脂層23が、粒子24,25に沿った凹凸を有していることが好ましい。
図6は、転写シート30の構造を示す。転写シート30は、肌貼付用フィルム10と、肌貼付用フィルム10を支持する支持基材31とを備えている。支持基材31は、肌貼付用フィルム10における貼付面20Fとは反対側の上記最外面である支持面20Rと接している。
支持基材31は肌貼付用フィルム10から剥離可能に構成されており、支持基材31は、肌貼付用フィルム10が肌に貼り付けられた後、肌貼付用フィルム10から剥離される。肌貼付用フィルム10が支持基材31に支持されていることによって、肌への貼り付けに際しての肌貼付用フィルム10の取り扱いが容易になる。
なお、図6では、転写シート30が、第5形態の肌貼付用フィルム10Eを備えた形態を例示しているが、転写シート30が備える肌貼付用フィルム10は、第1形態、第2形態、第3形態、第4形態、第5形態のいずれの形態の肌貼付用フィルムであってもよい。
[肌貼付用フィルムの材料]
上述の各形態において、肌貼付用フィルム10の厚さは、10nm以上5000nm以下である。なお、本実施形態に記載の肌貼付用フィルム10および各層の厚さは、平均厚さであって、電子顕微鏡を用いた断面観察によって、5箇所以上の測定点で測定された膜厚の平均値である。肌貼付用フィルム10の厚さが5000nm以下であれば、肌貼付用フィルム10が十分に薄いため、肌のキメ、すなわち、肌の凹凸への肌貼付用フィルム10の追従性が十分に得られる。そのため、肌と肌貼付用フィルム10との間の距離が小さくなって、これらの間に働くファンデルワールス力が大きくなる。その結果、粘着剤等を用いなくとも、肌と肌貼付用フィルム10との間に十分な密着力が発現する。肌と肌貼付用フィルム10との間の密着性をより高めるためには、肌貼付用フィルム10の厚さは、1000nm以下であることが好ましい。
一方、肌貼付用フィルム10の厚さが10nm以上であれば、肌貼付用フィルム10の強度が実用に耐えうる程度に得られ、取り扱いに際して肌貼付用フィルム10が極端に破れやすくなることが抑えられる。肌貼付用フィルム10の強度をより高めるためには、肌貼付用フィルム10の厚さは、100nm以上であることが好ましい。
肌貼付用フィルム10の材料について説明する。肌貼付用フィルム10は、肌に貼り付けられるため、生体に対して高い安全性を有する材料から構成されることが望ましい。こうした材料としては、例えば、ポリエステル系、セルロース系、シリコーン系の材料が挙げられる。なかでも、ポリ-L-乳酸は、癒着防止膜や縫合糸等のように、生体に適用される医療用品の材料として用いられてきた実績があるため、生体適合性の観点からは好ましい材料と言える。
しかしながら、上述のように、極めて薄い膜の形成には、溶融押出法を用いることは困難であり、溶剤キャスト法を用いる必要がある。ポリ-L-乳酸はハロゲン系溶剤にしか溶解しないため、ポリ-L-乳酸からなる薄膜の形成にはハロゲン系溶剤を使用せざるを得ず、結局のところ、安全性の問題が生じる。
ここで、ポリ-L-乳酸がハロゲン系溶剤にしか溶解しない理由は、ポリ-L-乳酸が結晶性を有しているためである。これに対し、L-乳酸とD-乳酸とのランダム共重合体であるポリ-DL-乳酸は非晶性であり、酢酸エチルや酢酸n-ブチル等のエステル系溶剤に溶解し得る。そこで、本実施形態では、ポリ乳酸層21を構成するポリ乳酸として、ポリ-DL-乳酸を用いている。
エステル系溶剤は、ハロゲン系溶剤と比較して安全な溶剤である。特に、酢酸エチルおよび酢酸n-ブチルは、日本において食品添加物にも指定されており、ジクロロメタンやクロロホルムと比較すると、人体に対して高い安全性を有する。ポリ-DL-乳酸におけるL-乳酸の比率が10%以上90%以下であれば、ポリ-DL-乳酸が酢酸エチルおよび酢酸n-ブチルに可溶となる。
また、L-乳酸とD-乳酸との安全性を比較すると、L-乳酸に比べてD-乳酸の方が乳児における代謝が悪いというデータ(Droese&Stolley,1965)が報告されている。そのため、人体に対する安全性をより高めるためには、ポリ-DL-乳酸においてD-乳酸よりもL-乳酸の割合が高いことが好ましい。したがって、本実施形態では、ポリ乳酸層21を構成するポリ乳酸として、L-乳酸の含有率が50%以上90%以下であるポリ-DL-乳酸を用いている。ポリ-DL-乳酸におけるL-乳酸の比率が高いほど、ポリ乳酸層21の耐薬品性、すなわち、化粧品に対する耐性が高い傾向がある。
しかしながら、上記ポリ-DL-乳酸は、エステル系溶剤に対する溶解性を有する一方で、化粧料に含まれるアルコール系や炭化水素系の溶剤、保湿成分として機能するオイル類、紫外線吸収剤等に対する耐性が低い。そのため、ポリ-DL-乳酸からなる薄膜では、ポリ-L-乳酸からなる薄膜と比較して、化粧料と接触した場合に撚れや破れが生じやすい。こうした問題に対し、本実施形態では、ポリ乳酸層21を構成するポリ-DL-乳酸として、重量平均分子量が100,000以上のポリ-DL-乳酸を用いている。ポリ-DL-乳酸の重量平均分子量が100,000以上であれば、乳液や美容液等の使用頻度の高い一部の化粧料に対するポリ乳酸層21の耐性が、使用上の問題が生じない程度に良好になる。また、ポリ-DL-乳酸の重量平均分子量が100,000以上であれば、ポリ乳酸層21の膜強度が、肌に貼り付ける用途に用いるフィルムの膜強度として良好な大きさとなる。したがって、ポリ乳酸層21が化粧料と接触した場合にポリ乳酸層21に撚れや破れが生じることが抑えられる。
さらに、ポリ乳酸層21を構成するポリ-DL-乳酸の重量平均分子量は、200,000以上であることが好ましい。ポリ-DL-乳酸の重量平均分子量が200,000以上であれば、上述したポリ乳酸層21における化粧品に対する耐性および膜強度がさらに高められる。また、ポリ乳酸層21を構成するポリ-DL-乳酸の重量平均分子量は、800,000未満であることが好ましい。ポリ-DL-乳酸の重合反応は、すなわちエステル合成反応であり、重合だけでなく分解を伴う平衡反応である。ポリマーの原料となる中間体のラクチドに、水分や乳酸等の不純物が多く混ざっていると、重量平均分子量の大きいポリマーの製造が困難である。言い換えれば、重量平均分子量の大きいポリマーの製造のためには、純度の高いラクチドを精製する必要があるため、製造に要するコストが増大する。この点、ポリ-DL-乳酸の重量平均分子量が800,000未満であれば、重量平均分子量が大きくなりすぎないため、製造に要するコストの増大が抑えられ、肌貼付用フィルム10の生産性の向上が可能である。
なお、一般に、体内に配置する医療用品の材料としてポリ乳酸を使用する場合、生体内での分解性や排出性を確保するため、重量平均分子量が10,000以上50,000以下のポリ乳酸を使用することが多い。
本実施形態における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)によって測定した重量平均分子量を示す。すなわち、上記重量平均分子量は、ポリ乳酸をクロロホルムで溶解し、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定したポリスチレン換算値である。
ポリ-DL-乳酸の製造方法は特に限定されず、公知の方法が用いられればよい。一般的には、まず、乳酸2分子を脱水して環状エステルであるラクチドを生成し、ラクチドの開環重合によってポリ乳酸を生成する。出発物質として、L-乳酸のみを使用すれば、結晶性のポリ-L-乳酸が生成され、L-乳酸とD-乳酸とを使用すれば非晶性のポリ-DL-乳酸が生成される。重合触媒としては、例えば、オクチル酸スズが用いられる。分子量の調整のためにアルコールが使用される場合もある。
なお、ポリ乳酸層21は、ポリ-DL-乳酸に加えて、他の成分を含有していてもよい。こうした他の成分としては、例えば、オイル等の可塑剤として機能する成分や、膜強度の向上のための、ポリ乳酸と相溶性である樹脂成分や、フィラーなどの粒子等が挙げられる。ポリ乳酸層21に含有させる粒子の例としては、無機フィラーであるシリカ粒子、マイカ粒子、アルミナ粒子、硫酸バリウム粒子、炭酸カルシウム粒子、有機フィラーであるポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子、テトラフルオロエチレン粒子などが挙げられる。ポリ乳酸層21に含有させる粒子のレーザー回折散乱法による体積平均粒径は、例えば、50nm以上10μm以下であればよい。さらに、上記体積平均粒径は、溶剤キャスト法によるポリ乳酸層21の形成工程において粒子の凝集を抑える観点から500nm以上が好ましく、また、上記形成工程において粒子の沈降を抑える観点から5μm以下が好ましい。
本実施形態において、ポリ乳酸層21の主成分とは、ポリ乳酸層21を構成する物質の中で最も含有量(質量%)が高い物質である。ポリ乳酸層21におけるポリ-DL-乳酸の含有量は、60質量%以上であることが好ましい。
ポリ乳酸層21の厚さは10nm以上5000nm以下である。肌との密着性を高める観点では、ポリ乳酸層21における粒子を含まない部分の厚さは、1000nm以下であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましい。ポリ乳酸層21は、溶剤キャスト法によって形成される。すなわち、ポリ-DL-乳酸を含むポリ乳酸層21の材料を溶剤に溶解させた後、この溶解液を基材に塗布して塗膜を乾燥し、当該膜を固化する。その後、基材から固化した膜を剥がすことによって、薄膜であるポリ乳酸層21が得られる。基材に溶解液を塗布する方法としては、例えば、ダイレクトグラビア、リバースグラビア、小径リバースグラビア、マイヤーコート、ダイ、カーテン、スプレー、スピンコート、スクリーン印刷、コンマ、ナイフ、グラビアオフセット、ロールコート等の公知のコーティング方法が使用できる。ポリ乳酸層21の厚さは、溶解液に含まれる固形分の割合と塗布方法とによって制御される。
上述のように、ポリ乳酸層21の主成分として、重量平均分子量が100,000以上のポリ-DL-乳酸を用いることによって、一部の化粧料に対して良好な耐性を得られる。一方で、例えばサンオイルやサンスクリーンには、非晶性のポリ乳酸を溶解する成分が含まれることが多いため、ポリ乳酸層21のみからなる肌貼付用フィルム10の汎用性は、高いとは言えない。上記一部の化粧料と組み合わされて肌貼付用フィルム10が販売される場合等には、ポリ乳酸層21のみからなる第1形態の肌貼付用フィルム10Aであっても、十分に使用に耐え得る。ただし、肌貼付用フィルム10としての汎用性を高めるためには、肌貼付用フィルム10が、幅広い種類の化粧料に対して耐性を有することが好ましく、また、日中における長時間の使用、具体的には8時間程度に渡っての使用が可能であることが好ましい。
そこで、第2〜第5形態の肌貼付用フィルム10においては、水溶性樹脂層22やドデカン溶解性樹脂層23でポリ乳酸層21を保護することによって、肌貼付用フィルム10の化粧料に対する耐性を高めるとともに、肌貼付用フィルム10の膜強度を高めている。水溶性樹脂層22およびドデカン溶解性樹脂層23の各々の厚さは5.0μmよりも小さい。さらに、水溶性樹脂層22およびドデカン溶解性樹脂層23の各々の厚さは1.0μmよりも小さいことが好ましい。
水溶性樹脂層22の主成分である樹脂は、水溶性の樹脂であればよく、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒアルロン酸、澱粉、サクラン等の多糖類が用いられる。水溶性樹脂はエステル系溶剤に難溶であり、すなわち、水溶性樹脂層22は、ポリ-DL-乳酸を溶解するエステル系溶剤に対して難溶性である。したがって、ポリ乳酸層21に水溶性樹脂層22が積層されていることによって、ポリ乳酸層21を溶解する成分を含む化粧料が肌貼付用フィルム10に接触した場合に、肌貼付用フィルム10に撚れや破れが生じることが抑えられる。なお、本実施形態において、「ポリ-DL-乳酸を溶解するエステル系溶剤に対して難溶性」とは、エステル系溶剤である溶媒100gに溶質1.0gを投入し、常圧で沸点を超えない温度まで加温および24時間攪拌した場合に、ポリ乳酸層21を構成するポリ-DL-乳酸を同様の方法で溶解させた場合よりも溶け残りが多いことを示す。
水溶性樹脂層22は、高級脂肪酸や高級脂肪酸エステルや高級アルコール等の可塑剤、アクリル粒子やウレタン粒子やシリカ粒子等のフィラー等、目的に応じた各種の添加剤を含有していてもよい。水溶性樹脂層22に添加される粒子のレーザー回折散乱法による体積平均粒径は、例えば、50nm以上10μm以下であればよい。さらに、上記体積平均粒径は、溶剤キャスト法による水溶性樹脂層22の形成工程において粒子の凝集を抑える観点から500nm以上が好ましく、また、上記形成工程において粒子の沈降を抑える観点から5μm以下が好ましい。本実施形態において、水溶性樹脂層22の主成分とは、水溶性樹脂層22を構成する物質の中で最も含有量(質量%)が高い物質である。
ドデカン溶解性樹脂層23の主成分である樹脂は、ドデカンに可溶な樹脂であればよい。こうしたドデカン溶解性樹脂は、皮膜形成材料として使用されている樹脂が多く、また、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂やオレフィン系樹脂とのコポリマー類が多い。ドデカン溶解性樹脂は、ドデカンに溶解した場合と比較して溶解後の溶液粘度は異なるものの、ドデカン以外の炭化水素系溶剤に可溶であることが多い。炭化水素系溶剤は、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族系炭化水素に大別され、代表的な溶剤としては、ノルマルヘキサン、イソドデカン、シクロヘキサン、トルエン等が挙げられる。
ドデカン溶解性樹脂の極性の大きさは、ポリ乳酸のそれとは全く異なるため、ドデカン溶解性樹脂はエステル系溶剤に難溶である。すなわち、ドデカン溶解性樹脂層23は、ポリ-DL-乳酸を溶解するエステル系溶剤に対して難溶性である。したがって、ポリ乳酸層21にドデカン溶解性樹脂層23が積層されていることによって、ポリ乳酸層21を溶解する成分を含む化粧料が肌貼付用フィルム10に接触した場合に、肌貼付用フィルム10に撚れや破れが生じることが抑えられる。
また、ドデカン溶解性樹脂には、水との極性の違いに起因して、水に対して溶解あるいは分解し難い樹脂が多い。耐水性のドデカン溶解性樹脂からドデカン溶解性樹脂層23を構成することによって、水分が肌貼付用フィルム10に接触した場合に、ポリ乳酸が加水分解されてポリ乳酸層21が崩れることが抑えられる。
ドデカン溶解性樹脂層23は、高級脂肪酸や高級脂肪酸エステルや高級アルコール等の可塑剤、アクリル粒子やウレタン粒子やシリカ粒子等のフィラー等、目的に応じた各種の添加剤を含有していてもよい。ドデカン溶解性樹脂層23に添加される粒子のレーザー回折散乱法による体積平均粒径は、例えば、50nm以上10μm以下であればよい。さらに、上記体積平均粒径は、溶剤キャスト法によるドデカン溶解性樹脂層23の形成工程において粒子の凝集を抑える観点から500nm以上が好ましく、また、上記形成工程において粒子の沈降を抑える観点から5μm以下が好ましい。本実施形態において、ドデカン溶解性樹脂層23の主成分とは、ドデカン溶解性樹脂層23を構成する物質の中で最も含有量(質量%)が高い物質である。
第2〜第5形態の肌貼付用フィルム10においては、水溶性樹脂層22およびドデカン溶解性樹脂層23の少なくとも一方がポリ乳酸層21を覆っているため、化粧料に対する肌貼付用フィルム10の耐性が高められる。また、肌貼付用フィルム10が薄膜の積層体であるため、肌貼付用フィルム10の膜強度が高められる。肌貼付用フィルム10の膜強度が高いと、肌貼付用フィルム10が破れにくくなる。例えば、肌に貼り付ける際に肌貼付用フィルム10が破れることが抑えられるとともに、肌貼付用フィルム10が肌に貼り付けられた後に、手等の接触によって肌貼付用フィルム10の表面が擦れた場合にも、肌貼付用フィルム10が破れることが抑えられる。したがって、肌貼付用フィルム10の耐久性が高められるため、長時間の使用に対する肌貼付用フィルム10の適性が高められる。
そして、第4形態および第5形態の肌貼付用フィルム10では、水溶性樹脂層22とドデカン溶解性樹脂層23との間にポリ乳酸層21が挟まれているため、より多くの種類の化粧料に対する肌貼付用フィルム10の耐性を高めることができる。
ここで、水溶性樹脂層22とポリ乳酸層21との極性の違いに起因して、水溶性樹脂層22とポリ乳酸層21との間の密着性が低くなる場合がある。同様に、ドデカン溶解性樹脂層23とポリ乳酸層21との極性の違いに起因して、ドデカン溶解性樹脂層23とポリ乳酸層21との間の密着性が低くなる場合がある。こうした層間の密着性の向上を目的として、第5形態の肌貼付用フィルム10Eのポリ乳酸層21は、水溶性樹脂粒子24およびドデカン溶解性樹脂粒子25を含有している。
水溶性樹脂粒子24がポリ乳酸層21の表面に露出しているため、ポリ乳酸層21を覆う水溶性樹脂層22は、水溶性樹脂粒子24の位置する部分において、水溶性樹脂粒子24と接する。ポリ乳酸に対する水溶性樹脂の親和性と比較して、水溶性樹脂に対する水溶性樹脂の親和性は高い。したがって、ポリ乳酸層21が水溶性樹脂粒子24を含む構成であれば、水溶性樹脂層22がその全面においてポリ乳酸から構成される部分と接する場合と比較して、水溶性樹脂層22とポリ乳酸層21との間の密着性を高めることができる。
同様に、ドデカン溶解性樹脂粒子25がポリ乳酸層21の表面に露出しているため、ポリ乳酸層21を覆うドデカン溶解性樹脂層23は、ドデカン溶解性樹脂粒子25の位置する部分において、ドデカン溶解性樹脂粒子25と接する。ポリ乳酸に対するドデカン溶解性樹脂の親和性と比較して、ドデカン溶解性樹脂に対するドデカン溶解性樹脂の親和性は高い。したがって、ポリ乳酸層21がドデカン溶解性樹脂粒子25を含む構成であれば、ドデカン溶解性樹脂層23がその全面においてポリ乳酸から構成される部分と接する場合と比較して、ドデカン溶解性樹脂層23とポリ乳酸層21との間の密着性を高めることができる。
水溶性樹脂粒子24を構成する水溶性樹脂としては、例えば、上記水溶性樹脂層22の材料として例示した樹脂が用いられる。水溶性樹脂粒子24と水溶性樹脂層22とは、同じ水溶性樹脂から構成されていてもよいし、互いに異なる水溶性樹脂から構成されていてもよい。水溶性樹脂層22とポリ乳酸層21との間の密着性をより高めるためには、水溶性樹脂粒子24を構成する水溶性樹脂と、水溶性樹脂層22を構成する水溶性樹脂とは、一致していることが好ましい。また、ポリ乳酸層21が含有する水溶性樹脂粒子24のレーザー回折散乱法による体積平均粒径は、例えば、100nm以上10μm以下であればよい。さらに、上記体積平均粒径は、溶剤キャスト法によるポリ乳酸層21の形成工程において粒子の凝集を抑える観点から500nm以上が好ましく、また、上記形成工程において粒子の沈降を抑える観点から5μm以下が好ましい。
ドデカン溶解性樹脂粒子25を構成するドデカン溶解性樹脂としては、例えば、上記ドデカン溶解性樹脂層23の材料として例示した樹脂が用いられる。ドデカン溶解性樹脂粒子25とドデカン溶解性樹脂層23とは、同じドデカン溶解性樹脂から構成されていてもよいし、互いに異なるドデカン溶解性樹脂から構成されていてもよい。ドデカン溶解性樹脂層23とポリ乳酸層21との間の密着性をより高めるためには、ドデカン溶解性樹脂粒子25を構成するドデカン溶解性樹脂と、ドデカン溶解性樹脂層23を構成するドデカン溶解性樹脂とは、一致していることが好ましい。また、ポリ乳酸層21が含有するドデカン溶解性樹脂粒子25のレーザー回折散乱法による体積平均粒径は、例えば、100nm以上10μm以下であればよい。さらに、上記体積平均粒径は、溶剤キャスト法によるポリ乳酸層21の形成工程において粒子の凝集を抑える観点から500nm以上が好ましく、また、上記形成工程において粒子の沈降を抑える観点から5μm以下が好ましい。
続いて、転写シート30を構成する支持基材31について説明する。支持基材31は、肌貼付用フィルム10を支持することで、肌貼付用フィルム10を保護する。肌貼付用フィルム10は極めて薄いため、一般的な包装材等に使用されるフィルムと比較すると肌貼付用フィルム10の膜強度は弱い。したがって、肌に貼付されるまでの間、肌貼付用フィルム10が支持基材31に支持された状態で取り扱われることによって、肌貼付用フィルム10に傷や破れが生じることが抑えられる。
支持基材31としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ナイロン等からなるフィルム、不織布、紙等が好適に用いられる。支持基材31は、こうした材料からなる層の表面に、肌貼付用フィルム10から支持基材31を剥離しやすくするための層として、シリコーン、フッ素樹脂、オレフィン、ワックス、皮膜形成材、水溶性樹脂等から構成される層を備えていてもよい。特に、シリコーンやオレフィンのような離型性樹脂からなる層を表面に有する支持基材31、あるいは、不織布や紙のように水等の液体によって容易に膨潤して肌貼付用フィルム10からの離型性が高まる支持基材31は、肌貼付用フィルム10からの剥離が容易であるため好ましい。なお、肌貼付用フィルム10と支持基材31とは、弱粘着剤や弱接着剤を用いて剥離可能に固定されていてもよい。また、肌貼付用フィルム10と支持基材31との固定のために、これらの加熱および加圧が行われてもよい。
[肌貼付用フィルムの貼付方法]
図7〜図9を参照して、転写シート30を用いた肌貼付用フィルム10の貼付方法を説明する。以下では、例として、第1形態の肌貼付用フィルム10Aを備える転写シート30を用いて、化粧料の塗布された肌に肌貼付用フィルム10を貼り付ける場合について説明する。
図7が示すように、まず、肌SKに、化粧水等の化粧料40が塗布される。化粧料40に代えて、水が塗布されてもよい。
図8が示すように、続いて、肌貼付用フィルム10の貼付面20Fが、化粧料40の塗布された肌SKに接するように、転写シート30が肌SKに押し当てられる。そして、支持基材31が肌貼付用フィルム10から剥離される。
これにより、図9が示すように、肌貼付用フィルム10が転写シート30から肌SKに転写されて、肌SKに肌貼付用フィルム10が貼り付けられる。肌貼付用フィルム10は極めて薄いため、肌SKの凹凸に追従して肌SKに密着する。肌貼付用フィルム10は、肌SKに対して、自然に剥がれることがない程度の密着力を有する。
肌貼付用フィルム10が肌SKを覆うことによって、皮脂や汗の蒸散が抑制されるため、保湿効果が得られる。また、肌貼付用フィルム10の上からファンデーション等の化粧料を塗布すると、肌に直接に化粧料を塗布した場合と比較して、化粧ノリがよくなる。また、肌SKが、有害な菌や物質と接触することを抑えることもできる。このように、肌貼付用フィルム10は、スキンケアの補助材やメイクアップの下地材として機能する。
[実施例]
上述した肌貼付用フィルムおよび転写シートについて、具体的な実施例および比較例を用いて説明する。
(実施例1)
<ポリ乳酸の精製>
ラクチドの開環重合法を用いて、ポリ乳酸を生成した。具体的には、L-ラクチドとD-ラクチドとを、L-ラクチド:D-ラクチド=50:50の重量比率で混合し、触媒としてオクチル酸スズを用い、重合開始剤および分子量調整剤としてラウリルアルコールを用いて、重合した。ガスクロマトグラフィーによって未反応のラクチド量を測定したところ、生成物におけるラクチドの含有量は5%であった。生成物を再結晶法で精製して、未反応のラクチドの含有量を0.1%とした。得られたポリ乳酸をクロロホルムで溶解し、GPCによって分子量を測定したところ、重量平均分子量は10万であった。
<転写シートの作製>
上述の方法で精製したポリ-DL-乳酸(L-乳酸比率50%)を、60℃に加温しながら酢酸エチルに溶解させた。得られた溶解液を、マイクログラビアコーティングを利用して離型基材に塗布し、塗膜を乾燥して、乾燥後の厚さが200nmのポリ乳酸層を形成した。離型基材上のポリ乳酸層に、支持基材として不織布を積層し、端部から離型基材を剥離した。これにより、ポリ乳酸層のみから構成される肌貼付用フィルムが支持基材に支持された実施例1の転写シートを得た。
(実施例2)
<ポリ乳酸の精製>
ラクチドの開環重合法を用いて、ポリ乳酸を生成した。まず、重量平均分子量の大きいポリ乳酸を生成するために、L-ラクチドおよびD-ラクチドを再結晶法によって精製した。得られたL-ラクチドとD-ラクチドとを、L-ラクチド:D-ラクチド=50:50の重量比率で混合し、触媒としてオクチル酸スズを用い、重合開始剤および分子量調整剤としてラウリルアルコールを用いて、重合した。ガスクロマトグラフィーによって未反応のラクチド量を測定したところ、生成物におけるラクチドの含有量は5%であった。得られたポリ乳酸をクロロホルムで溶解し、GPCによって分子量を測定したところ、重量平均分子量は40万であった。
<転写シートの作製>
上述の方法で精製したポリ-DL-乳酸(L-乳酸比率50%)を用いて、実施例1と同様の方法でポリ乳酸層を形成し、さらに、実施例1と同様の方法で転写シートを形成した。これにより、ポリ乳酸層のみから構成される肌貼付用フィルムが支持基材に支持された実施例2の転写シートを得た。
(実施例3)
<ポリ乳酸の精製>
ラクチドの開環重合法を用いて、ポリ乳酸を生成した。具体的には、L-ラクチドとD-ラクチドとを、L-ラクチド:D-ラクチド=90:10の重量比率で混合し、触媒としてオクチル酸スズを用い、重合開始剤および分子量調整剤としてラウリルアルコールを用いて、重合した。ガスクロマトグラフィーによって未反応のラクチド量を測定したところ、生成物におけるラクチドの含有量は5%であった。得られたポリ乳酸をクロロホルムで溶解し、GPCによって分子量を測定したところ、重量平均分子量は10万であった。
<転写シートの作製>
上述の方法で精製したポリ-DL-乳酸(L-乳酸比率90%)を用いて、実施例1と同様の方法でポリ乳酸層を形成し、さらに、実施例1と同様の方法で転写シートを形成した。これにより、ポリ乳酸層のみから構成される肌貼付用フィルムが支持基材に支持された実施例3の転写シートを得た。
(実施例4)
<ポリ乳酸の精製>
ラクチドの開環重合法を用いて、ポリ乳酸を生成した。具体的には、L-ラクチドとD-ラクチドとを、L-ラクチド:D-ラクチド=80:20の重量比率で混合し、触媒としてオクチル酸スズを用い、重合開始剤および分子量調整剤としてラウリルアルコールを用いて、重合した。ガスクロマトグラフィーによって未反応のラクチド量を測定したところ、生成物におけるラクチドの含有量は5%であった。得られたポリ乳酸をクロロホルムで溶解し、GPCによって分子量を測定したところ、重量平均分子量は20万であった。
<転写シートの作製>
上述の方法で精製したポリ-DL-乳酸(L-乳酸比率80%)を用いて、実施例1と同様の方法でポリ乳酸層を形成し、さらに、実施例1と同様の方法で転写シートを形成した。これにより、ポリ乳酸層のみから構成される肌貼付用フィルムが支持基材に支持された実施例4の転写シートを得た。
(実施例5)
<ポリ乳酸の精製>
ラクチドの開環重合法を用いて、ポリ乳酸を生成した。具体的には、L-ラクチドとD-ラクチドとを、L-ラクチド:D-ラクチド=50:50の重量比率で混合し、触媒としてオクチル酸スズを用い、重合開始剤および分子量調整剤としてラウリルアルコールを用いて、重合した。ガスクロマトグラフィーによって未反応のラクチド量を測定したところ、生成物におけるラクチドの含有量は5%であった。得られたポリ乳酸をクロロホルムで溶解し、GPCによって分子量を測定したところ、重量平均分子量は20万であった。
<転写シートの作製>
スイゼンジノリからの抽出物であるサクランを水に溶解させ、得られた溶解液を、マイクログラビアコーティングを利用して離型基材に塗布した。塗膜を乾燥して、乾燥後の厚さが400nmの水溶性樹脂層を形成した。
続いて、上述の方法で精製したポリ-DL-乳酸(L-乳酸比率50%)を、60℃に加温しながら酢酸エチルに溶解させ、得られた溶解液を、マイクログラビアコーティングを利用して水溶性樹脂層上に塗布した。塗膜を乾燥して、乾燥後の厚さが400nmのポリ乳酸層を形成した。これによって、厚さが800nmである肌貼付用フィルムが形成された。離型基材上のポリ乳酸層に、支持基材として不織布を積層し、端部から離型基材を剥離した。これにより、ポリ乳酸層および水溶性樹脂層から構成される肌貼付用フィルムが支持基材に支持された実施例5の転写シートを得た。
(実施例6)
<ポリ乳酸の精製>
ラクチドの開環重合法を用いて、ポリ乳酸を生成した。具体的には、L-ラクチドとD-ラクチドとを、L-ラクチド:D-ラクチド=50:50の重量比率で混合し、触媒としてオクチル酸スズを用い、重合開始剤および分子量調整剤としてラウリルアルコールを用いて、重合した。ガスクロマトグラフィーによって未反応のラクチド量を測定したところ、生成物におけるラクチドの含有量は5%であった。得られたポリ乳酸をクロロホルムで溶解し、GPCによって分子量を測定したところ、重量平均分子量は20万であった。
<水溶性樹脂粒子およびドデカン溶解性樹脂粒子の生成>
ポリビニルアルコールを水に溶解した後、イソプロピルアルコールおよび酢酸エチルの混合溶媒を用いて晶析させ、析出物をろ過および乾燥して、水溶性樹脂粒子を作製した。また、イソドデカンに溶解している(アクリレーツ/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシ)コポリマー(東レ・ダウコーニング社製)を酢酸エチル溶媒を用いて晶析させ、析出物をろ過および乾燥して、ドデカン溶解性樹脂粒子を作製した。
<転写シートの作製>
サクランを水に溶解し、得られた溶解液を、マイクログラビアコーティングを利用して離型基材に塗布した。塗膜を乾燥して、乾燥後の厚さが200nmの水溶性樹脂層を形成した。
続いて、上述の方法で精製したポリ-DL-乳酸(L-乳酸比率50%)を、60℃に加温しながら酢酸エチルに溶解させ、溶解液を生成した。得られたポリ乳酸の溶解液に、水溶性樹脂粒子およびドデカン溶解性樹脂粒子の各々を1.0質量%の割合で添加して撹拌し、塗工液を生成した。そして、塗工液を、マイクログラビアコーティングを利用して水溶性樹脂層上に塗布した。塗膜を乾燥して、乾燥後の厚さが300nmのポリ乳酸層を形成した。
続いて、イソドデカンに溶解している(アクリレーツ/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシ)コポリマー(東レ・ダウコーニング社製)の溶液を、マイクログラビアコーティングを利用してポリ乳酸層上に塗布した。塗膜を乾燥して、乾燥後の厚さが200nmのドデカン溶解性樹脂層を形成した。
以上の工程によって、厚さが700nmである肌貼付用フィルムが形成された。離型基材上のドデカン溶解性樹脂層に、支持基材として不織布を積層し、端部から離型基材を剥離した。これにより、ポリ乳酸層と水溶性樹脂層とドデカン溶解性樹脂層とから構成される肌貼付用フィルムが支持基材に支持された実施例6の転写シートを得た。
(比較例1)
<ポリ乳酸の精製>
ラクチドの開環重合法を用いて、ポリ乳酸を生成した。具体的には、L-ラクチドとD-ラクチドとを、L-ラクチド:D-ラクチド=95:5の重量比率で混合し、触媒としてオクチル酸スズを用い、重合開始剤および分子量調整剤としてラウリルアルコールを用いて、重合した。ガスクロマトグラフィーによって未反応のラクチド量を測定したところ、生成物におけるラクチドの含有量は5%であった。得られたポリ乳酸をクロロホルムで溶解し、GPCによって分子量を測定したところ、重量平均分子量は10万であった。
<転写シートの作製>
上述の方法で精製したポリ-DL-乳酸(L-乳酸比率95%)を、60℃に加温して酢酸エチルへの溶解を試みた。しかし、ポリ-DL-乳酸は溶解しなかった。そのため、比較例1においては、肌貼付用フィルムおよび転写シートが形成できなかった。
(比較例2)
<ポリ乳酸の精製>
ラクチドの開環重合法を用いて、ポリ乳酸を生成した。具体的には、L-ラクチドとD-ラクチドとを、L-ラクチド:D-ラクチド=50:50の重量比率で混合し、触媒としてオクチル酸スズを用い、重合開始剤および分子量調整剤としてラウリルアルコールを用いて、重合した。ガスクロマトグラフィーによって未反応のラクチド量を測定したところ、生成物におけるラクチドの含有量は5%であった。生成物を再結晶法で精製して、未反応のラクチドの含有量を0.1%とした。得られたポリ乳酸をクロロホルムで溶解し、GPCによって分子量を測定したところ、重量平均分子量は5万であった。
<転写シートの作製>
上述の方法で精製したポリ-DL-乳酸(L-乳酸比率50%)を用いて、実施例1と同様の方法でポリ乳酸層を形成し、さらに、実施例1と同様の方法で転写シートを形成した。これにより、ポリ乳酸層のみから構成される肌貼付用フィルムが支持基材に支持された比較例2の転写シートを得た。
(評価方法)
<溶剤への溶解性>
各実施例および各比較例にて得られたポリ-DL-乳酸を酢酸エチルに溶解させて、その溶解性を評価した。ポリ-DL-乳酸10gに対して酢酸エチル100gを容器へ投入し、分速100回で容器ごと回転させた際に、1時間以内にポリ-DL-乳酸が完全に溶解した場合を「溶解性が高い」とした。さらに60℃の加温および長時間(24時間以内)の撹拌の少なくとも一方によってポリ-DL-乳酸が完全に溶解した場合を「溶解性が中程度」とし、60℃の加温および長時間(24時間以内)の撹拌でもポリ-DL-乳酸が完全には溶解しなかった場合を「溶解性が低い」とした。溶解性が高い場合を「◎」、溶解性が中程度である場合を「〇」、溶解性が低い場合を「×」とした。
<化粧品に対する耐性>
人工皮革(イデアテックスジャパン社製:サプラーレ)の表面に化粧水を滴下した後、人工皮革の表面と各実施例および比較例2の転写シートにおける肌貼付用フィルムの貼付面とを貼り合わせ、支持基材のみを剥がして、人工皮革上に肌貼付用フィルムを転写した。続いて、液状紫外線吸収剤(メトキシケイ皮酸エチルヘキシル)を含有するサンスクリーンを綿棒に浸み込ませ、この綿棒で肌貼付用フィルムの上面を10回擦るラビングテストを行った。ラビングテスト後の肌貼付用フィルムを目視により観察し、破れがない場合を「◎」、目立たない程度の微小な領域に破れが生じている場合を「〇」、破れが顕著である場合を「×」とした。
<膜強度>
各実施例および比較例2の肌貼付用フィルムから15mm幅の帯状の試験片を形成して、卓上圧縮・引張試験機(島津製作所社製:EZ−Test)を用いて引張試験を行い、試験片が破断したときの荷重を測定した。この測定値である膜強度が30mN/15mm以上であれば、肌への貼付用のフィルムとして膜強度が良好な大きさであると言える。したがって、膜強度が30mN/15mm未満の場合を膜強度が不足していると規定し、膜強度が、100mN/15mm以上の場合を「◎」、30mN/15mm以上100mN/15mm未満の場合を「〇」、30mN/15mm未満の場合を「×」とした。
(評価結果)
表1は、各実施例および各比較例について、肌貼付用フィルムの構成、ポリ-DL-乳酸におけるL-乳酸の含有率、ポリ-DL-乳酸の重量平均分子量、および、上記評価方法による評価結果を示す。
Figure 0006955234
表1が示すように、ポリ-DL-乳酸におけるL-乳酸の含有率が90%以下である実施例1〜6、比較例2では、酢酸エチルに対するポリ-DL-乳酸の溶解性が良好であった。一方、L-乳酸の含有率が90%を超えている比較例1では、ポリ-DL-乳酸が酢酸エチルに溶解しなかった。これにより、L-乳酸の含有率が90%以下のポリ-DL-乳酸を用いることで、ハロゲン系溶剤よりも安全性の高いエステル系溶剤を用いてポリ乳酸層の形成が可能であることが示された。
また、肌貼付用フィルムがポリ乳酸層のみからなる実施例および比較例のうち、ポリ-DL-乳酸の重量平均分子量が100,000以上である実施例1〜4では、化粧品に対する耐性が良好であるとともに、膜強度も良好であった。一方、ポリ-DL-乳酸の重量平均分子量が100,000未満である比較例2では、化粧品に対する耐性、および、膜強度のいずれもが不十分であった。これにより、重量平均分子量が100,000以上のポリ-DL-乳酸を用いることで、化粧料に対する耐性の高められたポリ乳酸層が得られることが示された。
実施例1と実施例2を比較すると、ポリ-DL-乳酸の重量平均分子量が大きいほど、化粧品に対する耐性が向上することが示唆される。また、実施例1と実施例3を比較すると、L-乳酸の含有率が大きいほど、化粧品に対する耐性が向上することが示唆される。また、実施例1と実施例2を比較すると、ポリ-DL-乳酸の重量平均分子量が大きいほど、膜強度が向上することが示唆される。
また、実施例5および実施例6のように、肌貼付用フィルムを、ポリ乳酸層と水溶性樹脂層やドデカン溶解性樹脂層との積層体とすることによって、重量平均分子量が比較的小さいポリ-DL-乳酸を用いた場合であっても、肌貼付用フィルムの化粧品に対する耐性、および、膜強度の双方を高めることができることが示唆される。
以上、実施形態および実施例にて説明したように、上記肌貼付用フィルムおよび転写シートによれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)ポリ乳酸層21を構成するポリ-DL-乳酸におけるL-乳酸の含有率が50%以上90%以下、かつ、重量平均分子量が100,000以上である。ポリ-DL-乳酸におけるL-乳酸の含有率が50%以上90%以下であることにより、ハロゲン系溶剤よりも安全性の高いエステル系溶剤を用いてポリ乳酸層21の製造が可能である。また、ポリ-DL-乳酸の重量平均分子量が100,000以上であることにより、ポリ乳酸層21における化粧料に対する耐性が高められる。したがって、肌貼付用フィルム10において、ハロゲン系溶剤よりも安全性の高い溶剤を用いた製造が可能でありつつも、化粧料に対する耐性の低下を抑えることができる。
(2)上記ポリ-DL-乳酸の重量平均分子量が100,000以上、かつ、ポリ-DL-乳酸の量産に適した800,000未満であることにより、肌貼付用フィルム10の生産性の向上ができる。
(3)肌貼付用フィルム10が水溶性樹脂層22を備える構成であれば、肌貼付用フィルム10における化粧料に対する耐性および膜強度が高められる。
(4)肌貼付用フィルム10がドデカン溶解性樹脂層23を備える構成であれば、肌貼付用フィルム10における化粧料に対する耐性および膜強度が高められる。また、肌貼付用フィルム10における耐水性も向上可能である。
(5)ポリ乳酸層21が、水溶性樹脂層22とドデカン溶解性樹脂層23との間に挟まれている構成であれば、より多くの種類の化粧料に対する肌貼付用フィルム10の耐性が高められる。
(6)ポリ乳酸層21が水溶性樹脂粒子24を含有し、水溶性樹脂粒子24がポリ乳酸層21における水溶性樹脂層22と接する面に露出している構成であれば、ポリ乳酸層21と水溶性樹脂層22との間の密着性が高められる。
(7)ポリ乳酸層21がドデカン溶解性樹脂粒子25を含有し、ドデカン溶解性樹脂粒子25がポリ乳酸層21におけるドデカン溶解性樹脂層23と接する面に露出している構成であれば、ポリ乳酸層21とドデカン溶解性樹脂層23との間の密着性が高められる。
(8)転写シート30において、肌貼付用フィルム10が、肌貼付用フィルム10から剥離可能に構成された支持基材31に支持されるため、肌貼付用フィルム10が取り扱い易くなる。
[変形例]
上記実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。
・第2形態のポリ乳酸層21と水溶性樹脂層22との二層構造を有する肌貼付用フィルム10Bにおいて、ポリ乳酸層21は水溶性樹脂粒子24を含有していてもよい。こうした構成によれば、ポリ乳酸層21と水溶性樹脂層22との間の密着性が高められる。
・第3形態のポリ乳酸層21とドデカン溶解性樹脂層23との二層構造を有する肌貼付用フィルム10Cにおいて、ポリ乳酸層21はドデカン溶解性樹脂粒子25を含有していてもよい。こうした構成によれば、ポリ乳酸層21とドデカン溶解性樹脂層23との間の密着性が高められる。
・第5形態の肌貼付用フィルム10Eにおいて、ポリ乳酸層21は水溶性樹脂粒子24とドデカン溶解性樹脂粒子25とのいずれか一方のみを含有していてもよい。ポリ乳酸層21が水溶性樹脂粒子24を含有する場合には、ポリ乳酸層21と水溶性樹脂層22との間の密着性が高められ、ポリ乳酸層21がドデカン溶解性樹脂粒子25を含有する場合には、ポリ乳酸層21とドデカン溶解性樹脂層23との間の密着性が高められる。水溶性樹脂層22とドデカン溶解性樹脂層23とでは、ドデカン溶解性樹脂層23の方がポリ乳酸に対する密着性が低い。そのため、ポリ乳酸層21が水溶性樹脂粒子24とドデカン溶解性樹脂粒子25とのいずれか一方のみを含有する場合には、ポリ乳酸層21はドデカン溶解性樹脂粒子25を含有することが好ましい。
・肌貼付用フィルム10は、少なくともポリ乳酸層21を備えていればよく、肌貼付用フィルム10の層構成は、第1〜第5形態とは異なっていてもよい。例えば、肌貼付用フィルム10において、2つの水溶性樹脂層22の間にポリ乳酸層21が挟まれていてもよいし、2つのドデカン溶解性樹脂層23の間にポリ乳酸層21が挟まれていてもよい。また、肌貼付用フィルム10がポリ乳酸層21と水溶性樹脂層22とドデカン溶解性樹脂層23とを備える場合にも、ポリ乳酸層21を中央の層とする積層順序とは異なる順序でこれらの層が積層されていてもよい。あるいは、肌貼付用フィルム10は、水溶性樹脂層22およびドデカン溶解性樹脂層23とは異なる層を備えていてもよい。
・ポリ乳酸層21は、ポリ-DL-乳酸を含む複数の層から構成されてもよい。
10,10A,10B,10C,10D,10E…肌貼付用フィルム、20F…貼付面、20R…支持面、21…ポリ乳酸層、22…水溶性樹脂層、23…ドデカン溶解性樹脂層、24…水溶性樹脂粒子、25…ドデカン溶解性樹脂粒子、30…転写シート、31…支持基材。

Claims (8)

  1. ポリ乳酸層を備える肌貼付用フィルムであって、
    前記ポリ乳酸層は、10nm以上5000nm以下の厚さを有し、
    前記ポリ乳酸層は、ポリ-DL-乳酸を含み、
    前記ポリ-DL-乳酸におけるL-乳酸の含有率は50%以上90%以下であり、
    前記ポリ-DL-乳酸は、100,000以上の重量平均分子量を有する
    肌貼付用フィルム。
  2. 前記ポリ-DL-乳酸の前記重量平均分子量は800,000未満である
    請求項1に記載の肌貼付用フィルム。
  3. ポリ-DL-乳酸を溶解するエステル系溶剤に対して難溶性である水溶性樹脂層をさらに備える
    請求項1または2に記載の肌貼付用フィルム。
  4. ポリ-DL-乳酸を溶解するエステル系溶剤に対して難溶性であるドデカン溶解性樹脂層をさらに備える
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の肌貼付用フィルム。
  5. ポリ-DL-乳酸を溶解するエステル系溶剤に対して難溶性である水溶性樹脂層、および、前記エステル系溶剤に対して難溶性であるドデカン溶解性樹脂層をさらに備え、
    前記ポリ乳酸層は、前記水溶性樹脂層と前記ドデカン溶解性樹脂層との間に挟まれている
    請求項1または2に記載の肌貼付用フィルム。
  6. 前記ポリ乳酸層は、水溶性樹脂粒子を含有しており、
    前記水溶性樹脂粒子は、前記ポリ乳酸層における前記水溶性樹脂層と接する面に露出している
    請求項3または5に記載の肌貼付用フィルム。
  7. 前記ポリ乳酸層は、ドデカン溶解性樹脂粒子を含有しており、
    前記ドデカン溶解性樹脂粒子は、前記ポリ乳酸層における前記ドデカン溶解性樹脂層と接する面に露出している
    請求項4または5に記載の肌貼付用フィルム。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の肌貼付用フィルムと、
    前記肌貼付用フィルムを支持する支持基材であって、前記肌貼付用フィルムから剥離可能に構成された前記支持基材と、を備える
    転写シート。
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