以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。また本明細書において、「板」、「シート」及び「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて互いから区別されるものではない。例えば「板」という用語は、シートやフィルムと呼ばれうるような部材も含む概念である。また、本明細書において用いられる形状、幾何学的条件、及びそれらの程度を特定する用語(例えば「平行」、「直交」及び「同一」等の用語や長さや角度の値等)は、厳密な意味に縛られず、実質的に同等及び同様の機能を期待しうる程度の範囲を意味しうるものとして解釈される。
図1〜図8は、本発明の一実施の形態を説明するための図である。このうち図1は、調光装置を模式的に示す図である。図2及び図3は、調光セルの概略構成を示す縦断面図であり、図4A及び図4Bは、図2の部分拡大図である。図5〜図8は、調光セルの製造方法の一例を説明するための図である。
図1に示すように、調光装置10は、調光セル20と、調光セル20と電気的に接続した調光コントローラ12と、を有している。調光セル20は、第1樹脂製基材32を含む第1基板30と、第2樹脂製基材42を含む第2基板40と、第1樹脂製基材32および第2樹脂製基材42の間に設けられた複数のスペーサ50と、第1基板30および第2基板40の間に設けられた液晶層55と、を有している。また、第1基板30および第2基板40の少なくとも一方が電極33を含んでいる。この調光装置10では、調光コントローラ12から電極33への電圧印加の程度によって、調光セル20を透過する光の透過率を変化させることができる。
調光装置10の適用対象は特に限定されず、典型的には窓及びドア等に対して調光セル20を適用することができる。とりわけ、スペーサ50を用いて第1基板30及び第2基板40の相対位置を固定することで、振動等の外力が加えられる環境下に調光セル20を設置することも可能となる。したがって、建築物の窓やドアだけでなく、飛行機、船、電車、自動車等の乗り物の窓やドア等にも調光セル20を適用することができる。
以下、調光装置10の各構成要素について説明する。まず、調光セル20以外の構成要素について説明する。
図1に示す例において、調光コントローラ12にはセンサ装置14及びユーザ操作部16が接続されている。調光コントローラ12は、調光セル20の調光状態を制御し、調光セル20による光の遮断及び透過を切り換えたり、調光セル20を透化する光の透過率(透過度)を変えたりすることができる。具体的には、調光コントローラ12は、調光セル20の液晶層55に印加する電圧を調整して液晶層55中の液晶分子の配向を変えることで、調光セル20による光の遮断及び透過を切り換えたり、光の透過度を変えたりすることができる。このような窓やドア等への適用において、調光セルは、ガラス等の透明部材に貼合され、或いは、一対のガラス等の透明部材の間に挟持されて、用いられる。
調光コントローラ12は、任意の手法に基づいて液晶層55に印加する電圧を調整することができる。例えばセンサ装置14の測定結果や、ユーザ操作部16を介してユーザにより入力される指示(コマンド)に応じて、調光コントローラ12は、液晶層55に印加する電圧を調整し、調光セル20による光の遮断及び透過を切り換えたり、光の透過度を変えたりすることができる。したがって、調光コントローラ12は、液晶層55に印加する電圧を、センサ装置14の測定結果に応じて自動的に調整してもよいし、ユーザ操作部16を介したユーザの指示に応じて手動的に調整してもよい。なお、センサ装置14による測定対象は特に限定されず、例えば使用環境の明るさを測定してもよく、この場合、調光セル20による光の遮断及び透過の切り換えや光の透過度の変更が使用環境の明るさに応じて行われる。また調光コントローラ12には、必ずしもセンサ装置14及びユーザ操作部16の両方が接続されている必要はなく、センサ装置14及びユーザ操作部16のうちのいずれか一方のみが接続されていてもよい。
次に、調光セル20について説明する。上述したように、調光セル20は、一対の基板30,40と、一対の基板30,40間に配置された液晶層55と、を有している。一対の基板30,40の少なくとも一方が電極を有している。第1基板30及び第2基板40は、調光コントローラ12からの電圧印加により、液晶層55をなす液晶材料56中に含まれる液晶分子の配向を変化させることを可能とする構成を有している。液晶分子の駆動方式は、特に限定されることなく、例えば、VA(Vertical Alignment)方式、TN(Twisted Nematic)方式、IPS(In Plane Switching)方式、GH(Guest Host)方式、或いはこれらの方式の応用方式を採用することができる。
第1基板30及び第2基板40、並びに、液晶層55は、採用された液晶分子の駆動方式にともなって、適宜選択され得る。例えば、IPS方式が採用された場合、第1基板30及び第2基板40の一方だけが、電極を有するようにすればよい。また、GH方式が採用された場合、液晶層55をなす液晶材料56は、液晶分子とともに二色性色素を含む。さらに、GH方式が採用された場合、第1基板30及び第2基板40の一方或いは両方が、偏光板を含まなくてもよい。
ここで、図2は、VA方式を採用した調光セル20の具体的な構成例を示している。以下、図2に示された例を参照して、調光セル20の具体例について説明する。
図2に示された例において、第1基板30は、液晶層55に離間する側から順に、第1偏光板31、第1樹脂製基材32、第1電極33及び第1配向膜34を有している。同様に、第2基板40は、液晶層55に離間する側から順に、第2偏光板41、第2樹脂製基材42、第2電極43及び第2配向膜44を有している。
このうち、まず、第1偏光板31及び第2偏光板41について説明する。偏光板31,41は、その吸収軸と平行な方向に振動する一方の直線偏光成分を選択的に吸収し且つ吸収軸と直交する透過軸と平行な方向に振動する他方の直線偏光成分を選択的に透過する偏光機能を有した層である。偏光板31,41は、具体的な構成として、偏光子と、偏光子を樹脂製基材32,42に貼合するための粘着層と、を有するようにしてもよい。偏光子は、所望の偏光機能を果たす部材によって構成され、典型的には、ヨウ素化合物がドープされたPVA(ポリビニルアルコール)を延伸することによって作られる。一般に、延伸によって偏光子が作られる場合、当該延伸の方向に応じて偏光子の吸収軸が定まり、同じ方向に延伸された偏光子は相互に同じ方向の吸収軸を持つ。第1偏光板31及び第2偏光板41の配置態様として、第1偏光板31の吸収軸と第2偏光板41の吸収軸とが互いに平行である「パラレルニコル」と呼ばれる態様と、第1偏光板31の吸収軸と第2偏光板41の吸収軸とが互いに垂直である「クロスニコル」と呼ばれる態様とがある。VA方式では、第1偏光板31及び第2偏光板41を「クロスニコル」で配置することにより、非透過状態での透過率をより確実に低下させることができる。
次に、第1樹脂製基材32及び第2樹脂製基材42について説明する。樹脂製基材32,42は、シート状の樹脂からなる。ガラス製基材に代えて樹脂製基材32,42を使用することで、薄型軽量化を実現することができる。また、樹脂製基材32,42を用いることで、調光セル20に柔軟性を付与することができ、調光セル20を二次元曲面状だけでなく三次元曲面状とすることもできる。ここで、二次元曲面とは、単一の軸線を中心として二次元的に曲がった曲面、或いは、互いに平行な複数の軸線を中心として同一又は異なる曲率で二次元的に曲がった曲面のことである。一方、三次元曲面とは、互いに非平行な複数の軸線の各々を中心として、部分的に又は全体的に曲がっている面を意味する。
一具体例として、樹脂製基材32,42は、複数の樹脂層を含むようにしてよい。例えば、樹脂製基材32,42が、一対のハードコート層と、一対のハードコート層間に配置される主樹脂層と、を有するようにしてもよい。各ハードコート層は、隣接する主樹脂層を保護する役割を果たし、可視光線を透過可能な任意の材料によって構成可能である。ハードコート層は、例えばTAC(トリアセチルセルロース(Triacetylcellulose))やアクリルによって構成され、粘着層を介して主樹脂層に貼り付けられてもよい。また主樹脂層の表面上に、例えばシリコーン系の紫外線硬化樹脂を用いて微小粒子(例えば二酸化チタン等)を含む硬化皮膜を形成し、当該硬化皮膜をハードコート層として機能させてもよい。なお第1樹脂製基材32及び第2樹脂製基材42の複数箇所に形成されるハードコート層は、配置位置に応じて異なる材料によって構成されてもよいし、同じ材料によって構成されてもよい。
次に、第1電極33及び第2電極43について説明する。電極33,43は、ITO(Indium Tin Oxide(酸化インジウムスズ))等の各種材料によって透明電極として形成される。電極33,43は、例えばFPC等を介して、調光コントローラ12と接続される。第1電極33及び第2電極43の配置態様は特に限定されず、パターニング形成によって所定箇所にのみ電極が配置されてもよいし、ベタ状に電極が配置されてもよい。第1電極33及び第2電極43に印加される電圧に応じて、第1電極33と第2電極43との間に配置される液晶層55に作用する電界が形成され、液晶層55を構成する液晶材料56中の液晶分子の配向が調整される。
次に、第1配向膜34及び第2配向膜44について説明する。配向膜34,44は、液晶層55に隣接する層であって、液晶層55中の液晶分子の配向を制御する。配向膜34,44の製法は、特に限定されない。任意の手法によって液晶配向能を有する第1配向膜34及び第2配向膜44を作ることができる。例えば、ポリイミド等の樹脂層に対してラビング処理を施すことで配向膜34,44が作製されてもよいし、高分子膜に直線偏光紫外線を照射して偏光方向の高分子鎖を選択的に反応させる光配向法に基づいて配向膜34,44が作製されてもよい。このようなラビング処理による配向層、光配向層に代えて、ラビング処理により製造した微細なライン状凹凸形状を賦型処理により製造して配向層を製造してもよい。
第1配向膜34及び第2配向膜44の間には、液晶層55が設けられている。液晶層55は、液晶材料56を含んでいる。図示された例では、VA方式が採用されており、液晶材料56は負の誘電率異方性を有するネマチック液晶を含んでいる。VA方式において、液晶分子の配向は、一対の電極33,43間に電圧が印加されていない状態において、配向膜34,44の配向能によって規制され、垂直配向となる。このとき、液晶層55を透過する光の偏光状態が維持される。一方、一対の電極33,43間に電圧が印加されると、電界に制御されて液晶分子が倒れる。このとき、液晶層55を透過することで一方の直線偏光成分が他方の直線偏光成分となる。すなわち、偏光板31,41をクロスニコルで配置すると、印加状態で透過(白表示)となり、非印加状態で遮光(黒表示、ノーマリーブラック)となる。
次に、スペーサ50について説明する。スペーサ50は、第1基板30の第1樹脂製基材32と第2基板40の第2樹脂製基材42との間に配置されている。スペーサ50は、第1樹脂製基材32と第2樹脂製基材42との間に、スペースを確保する。このスペースに液晶材料56が充填されることで、液晶層55が形成されている。上述した液晶層55は、透過光の位相変調量を制御するものであり、したがって、一対の基板30,40間で或る程度一定の厚さを有している必要がある。また、複数のスペーサ50は、一対の樹脂製基材32,42間となる領域に、離散的に配置されている。各スペーサ50は、各種の樹脂材料によって構成可能であり、錐台(例えば円錐台や角錐台)等の形状を有していてもよいし、球状のビーズ形状を有していてもよい。柱形状のスペーサ50はフォトリソグラフィ技術に基づいて所望箇所に形成可能であり、またビーズ形状のスペーサは予め作られて散布される。
ところで、図2に示された例では、第1基板30において、第1配向膜34は、第1電極33に隣接して、第1電極33に沿って延び広がっている。つまり、第1配向膜34は第1電極33に面状に隣接して設けられている。一方、第2基板40において、スペーサ50が、第2配向膜44と第2電極43との間に設けられている。第2配向膜44は、第2電極43とスペーサ50とに沿って延び広がっている。すなわち、第2配向膜44の液晶層55とは反対側の面は、第2電極43およびスペーサ50のいずれかに接触している。スペーサ50は、一対の樹脂製基材32,42間に位置するものの、一対の基板30,40間ではなく第2基板40内に位置している。
しかしながら、図2の例に限られることなく、例えば図3に示された例のように、スペーサ50が、一対の基板30,40間に配置されるようにしてもよい。図3に示された例では、第1配向膜34と同様に、第2配向膜44は、第2電極43に隣接して第2電極43に沿って延び広がっていてもよい。図2に示された例および図3に示された例のいずれにおいても、一対の基板30,40が撓むことなく平坦面状に延び広がっている場合には、液晶層55の厚さtlは、スペーサ50の高さhsと一致する。
なお、図1に示すように、一対の基板30,40間にシール部材51が設けられている。シール部材51は、基板30,40の縁部に沿って周状に延びている。シール部材51は、液晶層55を構成する液晶材料56の一対の基板30,40間からの漏出を防ぐ役割を果たすとともに、第1基板30(第1配向膜34)と第2基板40(第2配向膜44)に接着して両者を相互に固定する役割を果たす。シール部材51は、一般的には熱硬化性のエポキシ樹脂が用いられる。とりわけ、一対の基板30,40間への液晶材料56の充填方式が真空注入方式の場合にはエポキシ樹脂製のシール部材51を好適に用いることができる。なお液晶材料56の充填方式としてODF(One Drop Fill)方式が用いられる場合には、熱硬化性及びUV硬化性(紫外線硬化性)を併せ持つハブリッドタイプの材料をシール部材51として好適に用いることができる。これは、液晶材料56が硬化前のシール部材51に触れることは外観上の不具合を誘発するためである。したがってシール部材51を構成するシール材料52(シール部材51の組成成分)に、例えば紫外線硬化型アクリル樹脂及びエポキシ樹脂が含まれることが好ましい。
次に、図5〜図8を参照して、以上の構成からなる調光セル20の製造方法に一例について説明する。
まず、図5に示すように、第2基板40及びスペーサ50を用意する。第2基板40は、例えば次のようにして作製することができる。まず。第2樹脂製基材42上に第2電極43をスパッタリング等により成膜する。次に、第2配向膜44をなすようになる組成物を第2配向膜44上に塗布し、その後にラビングや光配向等によって配向規制力を塗膜に付与することで、第2配向膜44を作製する。その後、第2偏光板41を第2樹脂製基材42に貼合することで、第2基板40が得られる。スペーサ50は、フォトリソグラフィ技術を用いて作製することができる。図2に示された調光セル20を作製する場合には、第2配向膜44よりも先にスペーサ50を第2電極43上に形成する。図3に示された調光セル20を作製する場合には、スペーサ50よりも先に第2配向膜44を第2電極43上に形成する。
次に、図6に示すように、第2基板40の周縁に沿って、シール材料52を塗布する。シール材料52は、接着性または粘着性を有した材料である。シール材料52は、硬化することでシール部材51を形成するようになる。その後、図7に示すように、シール部材51で取り囲まれた第2基板40上の領域に、液晶分子を含んだ液晶材料56を供給する。
次に、図8に示すように、減圧下で、第1基板30を第2基板40上に積層する。その後、シール材料52が変形および硬化して第1基板30及び第2基板40を接合することで、調光セル20が得られる。なお、第1基板30は、ガラス製基材ではなく樹脂製基材を含むことで、より柔軟となる。したがって、第1基板30及び第2基板40を接合する際、ローラー60等を用いて、第1基板30及び第2基板40の間から気泡を効果的にしごき出すことが可能となる。
このようにして得られた調光セル20では、調光コントローラ12から電極33,43への電圧印加により、液晶層55内の液晶分子の配向を制御することができる。液晶分子の配向の変更により、液晶層55内を透過する際における光の位相変調量が変化する。これにより、第1基板30、液晶層55及び第2基板40を透過する光の透過率を変化させることができる。
ところで、従来の不具合として既に説明したように、従来、調光セルの一対の基板間への気泡が混入してしまうことがあった。本実施の形態では、基板30,40が、ガラス製基材に代えて樹脂製基材32,42を含んでおり、一対の基板30,40間への気泡の滞留を効果的に抑制することができる。しかしながら、本件発明者が、鋭意検討を重ねたところ、基材を樹脂製とすることだけでは、気泡の混入を完全に防止することができなかった。基板30,40間に混入した気泡が、本来存在すべき液晶材料とは異なり、偏光制御能を有さない。このため、気泡が混入した場所では遮光および透過の制御や透過率の制御を十分に行うことができず、したがって、一対の基板間への気泡の混入は、透過率の調節を目的とした調光セルにおいて、重大な欠陥となる。
本件発明者は、さらに検討を更に重ね、一対の基板とシール部材とで囲まれた空間に所定の条件を満たすように液晶材料を封入することで、気泡の混入に対処し得ることを見出した。具体的な構成として、柔軟性を有する樹脂製基材との組み合わせにおいて以下の構成を提案する。
図4Aに示すように、一つのスペーサの高さ(hs1)とこの一つのスペーサに最も近接した他の一つのスペーサの高さ(hs2)との高さ平均(hsave)に対する、一つのスペーサと他の一つのスペーサとの中間点mpにおける液晶層55の厚さ(tlm)の比の値(tlm/hsave)が、0.954以上となっていることが、気泡の混入を防止する上で有効であり、0.983以上であることが、気泡の発生を防止する上で有効である。すなわち、液晶層55をなす液晶材料56の充填量を或る程度以上に確保することが、気泡の発生を防止する上で有効であることが確認された。
また、調光セル20で問題となる気泡には、第1基板30及び第2基板40を接合して液晶材料56を封止した際に確認される気泡だけでなく、当初確認されなかったものの調光セル20を使用していくなかで確認されるようになる気泡も含まれる。このような気泡は、耐久気泡とも呼ばれ、例えば調光セル20が設置される環境条件等に起因して生じ易くなる。
この耐久気泡の発生を防止する上で、図4Bに示すように、少なくともいずれかのスペーサ50(図4Bの例では、スペーサ501)と第1樹脂製基材32及び第2樹脂製基材42の一方との間に、液晶層55が残存することが有効であることが確認された。言い換えると、少なくともいずれかのスペーサ50と第1樹脂製基材32及び第2樹脂製基材42の一方との間(図4に示された例ではスペーサ501と第1樹脂製基材32との間)に、液晶材料56が入り込んでいることが好ましい。すなわち、少なくともいずれかのスペーサ50が、その頂部において、一方の基板に当接できない程度に、液晶材料が陽圧で封入されていることが好ましい。このような構成によれば、液晶層55内に耐久気泡が混入することをより効果的に抑制することができる。
また、図4Bに示すように、少なくともいずれかのスペーサ50(図4Bの例では、スペーサ501)に最も近接した他のスペーサ50(図4Bの例では、スペーサ502)と、第1樹脂製基材32及び第2樹脂製基材42の一方(図4Bに示された例では第1樹脂製基材32)との間にも、液晶層55が形成されていることが好ましい。このような構成によれば、耐久気泡の発生をより効果的に回避することができる。
とりわけ、少なくとも一つのスペーサ501と当該一つのスペーサ501に最も近接した他の一つのスペーサ502との中間点mpにおける液晶層55の厚さtlmが、一つのスペーサ501の高さhs1及び他の一つのスペーサ502の高さhs2のいずれよりも高くなっていることが好ましい。このような構成によれば、耐久気泡の発生をさらに効果的に回避することができる。
なお、上述したように、液晶層55への気泡の混入を防止する観点から、比の値(tlm/hsave)は、0.954以上となっていることが好ましい。その一方で、この比の値が大きくなり過ぎると、調光セル20の板面が水平方向と非平行となるように配置されたとき、典型的には、調光セル20が縦置きされたときに不具合が生じ得る。このような配置では、重力により、液晶層55の厚みが下側で厚く、上側で薄くなる。すなわち、液晶層55の厚みが面内で不均一となってしまう。液晶層55の厚さは、透過光に対して及ぼす位相変調量と関連する。したがって、液晶層55の厚さがばらつくと、透過光の偏光状態が面内で変化し、結果として、調光セル20の面内での明るさが不均一となってしまう。このような不具合を回避する上で、上述した比の値(tlm/hsave)は1.063以下となっていることが有効である。比の値(tlm/hsave)は1.063以下となっていれば、調光セル20を縦置きした場合にも、調光セル20の面内での明るさばらつきを効果的に目立たなくさせることができる。
さらに、液晶材料56の漏出や明るさが不均一といった不具合を回避する観点からは、少なくとも一つのスペーサは、第1樹脂製基材32及び第2樹脂製基材42の両方との間に液晶層55を介在させないようにすることが好ましい。
なお、上述した構成、比の値等の数値条件等は、厚さtlmを調整することで、より具体的には、封入される液晶量を調整することで実現され得る。封入される液晶量を調整する方法としては、ODF方式であれば塗布液晶量の調整すること、真空注入方式であれば図8に示すようなローラー60等加圧治具の硬度、押し圧、しごき速度等の調整することが例示され得る。
以上に説明した一実施の形態において、調光セル20は、第1樹脂製基材32を含む第1基板30と、第2樹脂製基材42を含む第2基板40と、第1樹脂製基材32及び第2樹脂製基材42の間に設けられた複数のスペーサ50と、第1基板30および第2基板40の間に設けられた液晶層55と、を有している。第1基板30及び第2基板40の少なくとも一方が電極33,43を含み、当該電極33,43への電圧印加の程度に応じて、すなわち印加電圧量に応じて、第1基板30、液晶層55及び第2基板40を透過する光の透過率を変化させることができる。そして、一つのスペーサの高さ(hs1)と前記一つのスペーサに最も近接した他の一つのスペーサの高さ(hs2)との高さ平均(hsave)に対する、一つのスペーサと他の一つのスペーサとの中間点mpにおける液晶層55の厚さ(tlm)の比の値(tlm/hsave)が、0.954以上となっている。このような調光セル20によれば、調光セルの一対の基板間への気泡の混入を効果的に防止することができる。
以上、本発明を図示する一実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上述の一実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形が加えられた各種態様も含み得るものであり、本発明によって奏される効果も上述の事項に限定されない。したがって、本発明の技術的思想及び趣旨を逸脱しない範囲で、特許請求の範囲及び明細書に記載される各要素に対して種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
図5〜図8を参照して説明した製造方法により、図2に示された構成を有したVA駆動方式の調光セルのサンプル1〜9を実際に作製した。サンプルの平面形状は、100〔mm〕×100〔mm〕とした。サンプル1〜9は、一対の基板とシール部材とによって区画されるスペースに充填した液晶材料の体積を変化させたが、その他は同一の材料を用いて作製した。表1の「封入量」の欄に、一対の基板とシール部材とによって区画されるスペースの容積に対する、当該スペースに充填した液晶材料の体積の割合(液晶材料の体積〔μm3〕/スペースの容積〔μm3〕)を示す。また、各サンプルについて、当該サンプル内の各スペーサの高さhs1〔μm〕、当該一つのスペーサに最も近接する他のスペーサの高さhs2〔μm〕、当該一つのスペーサの高さhs1と当該一つのスペーサに最も近接した他の一つのスペーサの高さhs2との高さ平均hsave(=(hs1+hs2)/2)〔μm〕、当該一つのスペーサと当該スペーサに最も近接する他のスペーサとの中間点における液晶層の厚さtlm〔μm〕、比の値(tlm/hsave)を、測定及び測定値から算出した。セルの大部分を占める外観上均一な正常領域での測定値及び算出値のうち、「tlm〔μm〕」の値が最も大きかった測定についての値を、各サンプルでの測定値として、表1に示す。また、いずれかのスペーサと第1基板との間に液晶A(図4B参照)が形成されているか否か、並びに、当該いずれかのスペーサに最も近接する他のスペーサと第1基板との間に液晶B(図4B参照)が形成されているか否かを調査し、調査結果を表2に示した。さらに、表1では、次の条件1〜3を満たすサンプルに対して○を付し、満たさないサンプルに対して×を付した。
・条件1:0.954≦(tlm/hsave)
・条件2:液晶Aが存在する
・条件3:(tlm/hsave)≦1.063
各サンプルを遮光状態および透過状態で観察し、気泡に起因した輝点又は欠点の有無を確認した。輝点又は欠点の有無は、以下に説明する評価2での輝点又は欠点の確認と同様とし、具体的には、各サンプルの電極に電圧印加を操作することで、サンプルを遮光(黒表示)とした際に輝点の有無を確認し、また、サンプルを透過(白表示)とした際に欠点の有無を確認した。輝点又は欠点が確認されたサンプルについて、表1の「評価1」に×を付した。通常の観察において輝点又は欠点が確認されなかったサンプルについて、表1の「評価1」に○を付した。
また、各サンプルを耐久気泡が生じ易い状況に置き、耐久気泡の発生の有無を確認した。具体的には、各サンプルを、80℃の環境および−40℃の環境に、3時間ずつ、計10ずつ交互に配置し、その後、気泡に起因した輝点又は欠点の有無を確認した。輝点又は欠点が確認されたサンプルについて、表1の「評価2」に×を付した。通常の観察において輝点又は欠点が確認されなかったサンプルについて、表1の「評価2」に○を付した。
さらに、各サンプルについて、立てた状態での使用を想定し外観変化を確認した。具体的には、サンプルの対向する一対の辺が水平方向に延び且つ他の対向する一対の辺が鉛直方向に延びるようにして各サンプルを100時間吊るした後、各サンプルの外観を確認した。具体的には、各サンプルの電極への電圧印加を透過(白表示)と遮光(黒表示)との中間程度となるように調整した状態で、あらゆる方向から目視することで確認した。主にサンプル下方4分の1程度の領域で発生する水平方向のスジ状の明暗ムラが発生したサンプルについて、表1の「評価3」に×を付した。明暗ムラが発生しなかったサンプルについては○を付した。