JP6953214B2 - 化粧品の製造方法 - Google Patents
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Description
上記のように、スラリー状とした化粧料を充填して化粧品を製造する手法は種々あるが、例えば、所定の充填用ホルダに上記中皿を固定して行うものがある。この充填では、中皿の上側から化粧料を充填する、いわゆるフロント充填と称される充填方式と、中皿の下側から化粧料を充填する、いわゆるバック充填と称される充填方式とが知られているが、品質安定性や製造効率などの理由からバック充填が採用される場合が多い。
よって、上記中皿(以下、容器と称する)について、より低コストのものを使用することが必要となるが、そのような容器は通常、厚さが薄く(肉薄で)軽量であり、剛性も低いものとなる。そのため、充填用ホルダに容器を安定的に固定できず、スラリー状の化粧料を容器に注入するときに、容器の底部が変形し、浮き上がって適正に充填できないという事態が発生する場合があった。その結果として、化粧料の充填不良や周囲汚染などが問題となる。
前記容器を、化粧料充填用ホルダの所定位置にセットした後、前記容器に負圧を作用させて吸引して、前記化粧料充填用ホルダに前記容器を固定する容器固定ステップと、
前記容器の底部の下側から、充填ノズルを用いて前記凹部空間内にスラリー状の化粧料を充填する、化粧料充填ステップとを含み、
前記容器固定ステップでは前記容器の複数の箇所を吸引して前記化粧料充填用ホルダに固定し、その状態を維持して前記化粧料充填ステップを実行する、ことを特徴とする化粧品の製造方法より達成することができる。
また、前記容器固定ステップでは、前記充填ノズルの位置を中心とし、同じ中心角度で、前記中心から前記容器が吸引される前記箇所までの距離を同じにして、前記化粧料充填用ホルダに前記容器を固定するのが好ましい。
図1は化粧品に用いる容器1について示した図であり、(a)は単色の化粧料を充填する化粧品に用いる容器、(b)は多色(例示では3色)の化粧料を充填する化粧品に用いる容器について示している。
上記容器1は真空成形(バキューム成形とも称される)法よって得られた樹脂製品である。ここで真空成形法とは、合成樹脂フィルムを加熱しておき、真空に基づく吸引力をその合成樹脂フィルムに作用させて、予め準備した成形用の型に押し付けることによって、所望立体形状の樹脂構造体を得る製造法である。真空成形法は合成樹脂フィルムを基材とするもので、相対的に薄手(肉薄)の樹脂構造物を得るのに好ましい加工技術として知られている。この真空成形法は、他の射出成形法などを用いて樹脂構造物を得る場合と比較して、製造コストを安価に抑えることができ、しかも外観においては一定レベル以上の存在感がある樹脂構造物を得られるという長所があるものの、外力を受けたときに変形し易いという短所もある。
上記容器1は好ましくはPETを基材とし、この基材11の底部12と基材11上の周囲に環状に設けた周囲枠部13とにより形成される底の浅い凹部空間10を備えた皿形状に成形されている。
よって、図1(a)の容器1は単色の化粧料を充填した化粧品に用いる容器となり、図1(b)の容器1は多色(例示では3色)の化粧料を充填する化粧品に用いる容器となる。
なお、設計、製造上の理由や、充填する化粧料の種類、また容器内における各化粧料の面積占有割合等により、容器1に設ける貫通孔15、15a〜15cを設定する位置(すなわち、化粧料の充填位置)は、適宜に変更、調整される。よって、図1(a)、(b)で示している貫通孔15、15a〜15cの設定位置は単なる例示である。
以下では、説明を簡素化するため、図1(a)で示す容器1を用いる場合について説明する。
化粧料の充填時には、化粧料充填用ホルダ2の下側から、充填ノズル(ここでは図示しない)が上記貫通孔25、15に臨むように配置されて、容器1の凹部空間10内にスラリー状の化粧料が所定圧をもって注入される。
なお、使用する化粧料の詳細について簡単に説明すると、化粧料はスラリー状とされて予め準備されている。スラリー化するために混合される溶剤は、公知のものをいずれも使用でき、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、炭化水素系溶剤、シリコーン油系溶剤、環状シリコーン系溶剤、水、あるいはこれらの混合物が挙げられる。混合する比率は粉体化粧料に応じて適宜調整すればよい。例えば、粉体化粧料がアイシャドウである場合には、60質量部のアイシャドウ、40質量部のイソプロピルアルコールを混合して、固形分濃度60質量%のスラリーとすることができる。
ところが、実際の化粧品製造時にあっては、上記のようにスラリー状の化粧料が圧力をもって注入されるので、その影響を受けて容器1の底部12が変形して浮き上がってしまう場合があり、その時には前述したような不都合が生じる。
この吸引機構は、化粧料充填用ホルダ2の底部に設定されて負圧を発生させる吸引孔21と、外部の負圧発生装置(バキューム装置)24に接続される負圧供給ホース22と、化粧料充填用ホルダ2の内部に設定されて、上記負圧発生装置24からの負圧を上記吸引孔21に供給する負圧管路23とを含んで形成されている。
スラリー状の化粧料が容器1内に注入されているときに、容器1の底部12が変形して浮き上がらないようにするためには、容器1の底部12を複数の箇所(点)で吸引して支持するのが好ましい。上記4つ(複数)の吸引孔21に対向した位置が、前記容器1が吸引される箇所となる。図2では、容器1を4箇所で吸引する場合を示しているが、少なくとも3箇所(3点)で吸引するようにすることで、容器1の底部12を化粧料充填用ホルダ2側に固定できる。
例えば、容器1が平面状で正三角形の場合、容器1のほぼ中央を充填位置とし、3つの角部に対応して吸引する箇所(吸引孔21を配置する箇所)を設定するのが好ましい。この場合、充填位置(充填ノズルの位置)を中心とし、同じ中心角度(120度)で、中心からの各吸引孔21までの距離(ピッチ)も同じとする。このような設定であれば、中心に受ける圧力(すなわち、スラリー状の化粧料の注入圧)を均等に分割して受けることができるので、より確実に容器1を化粧料充填用ホルダに固定できる。容器1が多角形、円形等となる場合でも、上記のような技術的観点に基づいて、充填位置と吸引孔21との関係を設定するのが好ましい。
しかし、充填位置は設計上の理由などで必要に応じて変更される場合もある。例えば、図1(a)で例示した貫通孔15の位置は、底部12の中央であるが、その中心からずれた位置に設定される場合もある。この場合には、充填位置(充填ノズル4および貫通孔15の位置)を中心として、同じ中心角度で、その中心から容器2が吸引される箇所までの距離が同じとなるようにして、化粧料充填用ホルダ2に容器を吸引固定するのが好ましい。すなわち、充填位置を中心として同じ中心角度で、各吸引孔21までの距離(ピッチ)を同じ長さに設定した構造を採用して容器を固定する。少なくとも、このように設定すれば、貫通孔15を介して注入されるスラリー状の化粧料から注入圧を受けたときにも、偏りのない抵抗力を発生させて容器1が化粧料充填用ホルダ2から浮き上がるのを防止できる。
図3では、製造に用いる製造設備を簡略化して示しており、図3(a)において上方に離間配置されている装置は、容器1にスラリー状の化粧料が注入されときに、その上面を規制しつつ、化粧料に含まれる余分な溶剤を吸引除去して、乾燥、固化する吸引機能を備えたプレスヘッド装置3である。このプレスヘッド装置3は、図示しない昇降機構により、下方に配置されている化粧料充填用ホルダ2に当接可能である。
より具体的には、プレスヘッド装置3は化粧料充填用ホルダ2上に固定された容器1内の化粧料にプレス圧をかけながら負圧を付与することが可能である。プレスヘッド装置3の下面には複数の吸引孔31が設けてあり、吸引孔31はホース33を介して外部吸引装置(バキューム装置)32に接続されており、吸引孔31に負圧を発生させることができる。
ここでは、プレスヘッド装置3は容器1の凹部空間10にガタつき無く、丁度、篏合する大きさに設計されており、凹部空間10内に充填される化粧料の充填量に応じて高さ調整も可能である。
なお、化粧料充填用ホルダ2とプレスヘッド装置3との間に、図示したのは、化粧品を製造する際に使用するのが好ましい保護用シート材5である。保護用シート材としては、紙、布、不織布などの多孔性のシートを用いることができ、これらを重ねたり、組合せたりして用いることもできる。ここでは、布51と紙52とを重ねて保護用シート材5を構成する場合を示している。このように異なる材質の多孔性のシートを重ねて用いると、化粧料を確実に保護しつつ、不要な溶剤を除去して、乾燥、固化させた化粧料CSを得ることができる。
この時には、上記容器固定ステップでの操作が維持されており、容器1の貫通孔15の周囲に複数設定された吸引孔21に基づく吸引力が効果的に作用しているので容器1を確実、安定に化粧料充填用ホルダ2側に固定されている。
ここでは、凹部空間10内にスラリー状の化粧料を底部の下側から注入して充填するときに、貫通孔15の周部が浮き上がるなどの不都合が生じることがない。また、化粧料の上側についても、プレスヘッド装置3の下端部が保護用シート材5を介して凹部空間10内に隙間を作らない状態で篏合するので容器1は上下両方から位置決めされた状態になっている。よって、充填ノズルの周辺を汚染することなく、容器1内に化粧料を安定、確実に充填して化粧品を製造できる。
図1(b)で示すように、容器1に3個の貫通孔15a〜15cが形成されている場合、この容器がセットされる化粧料充填用ホルダについても各貫通孔15a〜15c(充填位置)の周囲を確実に吸引するように吸引孔が適宜に設計されることになる。一例を示せば次の通りである。
図4で、左右2個の貫通孔15aと15cの周囲については、図2と同様に4箇所を吸引して、容器1の底部が変形して浮き上がるのを防止している。一方、中央の貫通孔15bについては、両側の貫通孔15aおよび15c用の吸引箇所の片側を併用するように設計してある。このようにすれば、吸引箇所を12箇所とせず、8箇所とすることができる。図示は省略するが、図2で例示した化粧料充填用ホルダ2については、3個の貫通孔25a〜25cを設けると共に、上記8個の吸引箇所に対応する位置に8個の吸引穴21を設けるという修正を行うことになる。
なお、3個の貫通孔15a〜15cのいずれについても、4箇所ずつの吸引する箇所を設定して、計12個で容器1を化粧料充填用ホルダ2側に吸引固定するようにしても勿論よい。
ただし、多色化粧品の場合は、色の数に応じて、複数の充填ノズルそれぞれから異なる化粧料が容器1内に充填される。また、充填される化粧料同士が接触して、混ざり合わないように、上記凹部空間10内に化粧料仕切り冶具(仕切りプレート)を配置して、上記プレスヘッド装置3によりプレス、吸引しながら化粧料充填ステップを実行するのが好ましい。
前述した実施例の説明では、容器1の貫通孔15の周囲に少なくとも3個の吸引箇所(吸引孔21に対向して吸引される箇所)を設定する場合について説明をしたが、これに限らない。例えば図5で示すように、容器1に設ける貫通孔15が周囲枠部13の付近である場合、この周囲枠部13と2個(複数)の吸引箇所との協働により貫通孔15の周囲を化粧料充填用ホルダ2側に固定する構成としてもよい。図3で示しているように、周囲枠部13下の化粧料充填用ホルダ2の表面は容器1の形状に対応した凹凸に形成してあるので確りと篏合している。これにより周囲枠部13の周辺は変形し難い構造が確保されている。よって、この周囲枠部13を活用して、吸引箇所(×印で示す)を2個とすることができる。すなわち、周囲枠部13と2個の吸引箇所により囲まれる領域に、容器1の貫通孔15を設定してもよい。このような構成も本発明の範疇に含まれるものである。
2 化粧料充填用ホルダ
3 プレスヘッド装置
4 充填ノズル
5 保護用シート材
10 凹部空間
15、15a〜15c 貫通孔
21 吸引孔
25 貫通孔
CS 化粧料
Claims (6)
- 化粧料収納用の凹部空間を備えている皿形状の真空成形容器に、化粧料を前記容器の下側から充填して化粧品を製造する方法であって、
前記容器を、化粧料充填用ホルダの所定位置にセットした後、前記容器に負圧を作用させて吸引して、前記化粧料充填用ホルダに前記容器を固定する容器固定ステップと、
前記容器の底部の下側から、充填ノズルを用いて前記凹部空間内にスラリー状の化粧料を充填する、化粧料充填ステップとを含み、
前記容器固定ステップでは前記容器の複数の箇所を吸引して前記化粧料充填用ホルダに固定し、その状態を維持して前記化粧料充填ステップを実行する、ことを特徴とする化粧品の製造方法。 - 前記容器固定ステップでは、前記容器の少なくとも3箇所を吸引して、前記化粧料充填用ホルダに固定する、ことを特徴とする請求項1に記載の化粧品の製造方法。
- 前記容器固定ステップでは、前記充填ノズルの位置を中心とし、同じ中心角度で、前記中心から前記容器が吸引される前記箇所までの距離を同じにして、前記化粧料充填用ホルダに前記容器を固定する、ことを特徴とする請求項2に記載の化粧品の製造方法。
- 前記容器固定ステップでは、前記充填ノズルの位置が、前記容器を吸引する前記少なくとも3箇所を結んだ直線によって画定される平面内にあるようにして、前記化粧料充填用ホルダに前記容器を固定する、ことを特徴とする請求項2に記載の化粧品の製造方法。
- 前記化粧料充填ステップでは、同時に、前記凹部空間内の前記化粧料に負圧を作用させて溶剤を除去することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の化粧品の製造方法。
- 前記化粧料充填ステップでは、前記充填ノズルを複数用いて、前記凹部空間内に複数の化粧料を充填して多色の化粧料を保持した化粧品を製造する、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の化粧品の製造方法。
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