本発明の複合粉末材料は、ガラス粉末とセラミック粉末とを含有する。ガラス粉末は、融剤として作用し、レーザー封着時に軟化流動して、被封着物同士を気密一体化させる材料である。セラミック粉末は、骨材として作用し、複合粉末材料の熱膨張係数を低下させると共に、封着層の機械的強度を高める材料である。
本発明に係るセラミック粉末は、主結晶相として、β−ユークリプタイト又はβ−石英固溶体が析出しており、それ以外の結晶が析出していないことが好ましいが、本発明の効果を著しく損なわない限り、それ以外の結晶が少量析出していてもよい。
セラミック粉末は、組成として、モル%で、Li2O 16〜30%(好ましくは16〜30%、より好ましくは18〜25)、Al2O3 10〜35%(好ましくは18〜25%)、SiO2 30〜68%(好ましくは40〜68%、より好ましくは48〜64%)を含有することが好ましい。セラミック粉末の組成が上記範囲以外になると、主結晶相として、β−ユークリプタイト又はβ−石英固溶体が析出し難くなると共に、粒子径が小さくなると、負膨張特性を維持し難くなる。なお、上記成分以外にも、焼結助剤等の他の成分を10%以下の範囲で導入してもよい。
セラミック粉末は、組成中にTiO2及び/又はZrO2を含むことが好ましく、その含有量は合量で0.005〜5モル%、特に0.1〜4モル%が好ましく、個別の含有量も0.005〜5モル%、特に0.1〜4モル%が好ましい。TiO2及び/又はZrO2の含有量が少な過ぎる場合、LAS系結晶中のTiO2及び/又はZrO2の固溶量が少なくなる。結果として、セラミック粉末の粒子径が小さくなると、負膨張特性を維持し難くなる。一方、TiO2及び/又はZrO2の含有量が多過ぎると、LAS系結晶中にTiO2及び/又はZrO2のすべてが固溶せずに、酸化物として残存し易くなる。結果として、セラミック粉末の負膨張特性を維持し難くなる。
セラミック粉末の平均粒子径D50は、好ましくは20μm以下、10μm以下、7μm以下、5μm以下、特に1〜3μmである。本発明に係るセラミック粉末は、上記の通り、粒子径が小さくても、負膨張特性を維持することができる。よって、本発明の効果は、セラミック粉末の粒子径が小さい程、負膨張性への寄与の割合が大きくなる。なお、「平均粒子径D50」は、レーザー回折法で測定した値を指し、レーザー回折法で測定した際の体積基準の累積粒度分布曲線において、その積算量が粒子の小さい方から累積して50%である粒子径を表す。
セラミック粉末の最大粒子径Dmaxは、好ましくは50μm以下、30μm以下、20μm以下、15μm以下、特に2〜10μmである。本発明に係るセラミック粉末は、上記の通り、粒子径が小さくても、負膨張特性を維持することができる。よって、本発明の効果は、セラミック粉末の粒子径が小さい程、負膨張特性への寄与の割合が大きくなる。なお、「最大粒子径Dmax」は、レーザー回折法で測定した値を指し、レーザー回折法で測定した際の体積基準の累積粒度分布曲線において、その積算量が粒子の小さい方から累積して99%である粒子径を表す。
セラミック粉末の30〜300℃における熱膨張係数は負(0×10−7/℃未満)であり、好ましくは−1×10−7/℃以下、−3×10−7/℃以下、特に−20×10−7/℃以上、且つ−4×10−7/℃以下である。30〜300℃における熱膨張係数が高過ぎると、封着材料の熱膨張係数を十分に低下させることが困難になる。
本発明の複合粉末材料において、セラミック粉末の含有量は1〜45体積%であり、好ましくは10〜45体積%、15〜40体積%、特に20〜35体積%である。セラミック粉末の含有量が多過ぎると、ガラス粉末の含有量が相対的に少なくなり、所望の流動性及び熱的安定性を確保し難くなる。なお、セラミック粉末の含有量が少な過ぎると、セラミック粉末の添加効果が乏しくなる。
セラミック粉末として、本発明に係るセラミック粉末以外に、他のセラミック粉末を導入してもよく、例えば、コーディエライト、ジルコン、アルミナ、ムライト、ウイレマイト、リン酸ジルコニウム、リン酸タングステン酸ジルコニウム、タングステン酸ジルコニウム等から選ばれる一種又は二種以上を含んでもよいが、その含有量は合量で0〜15体積%、特に0〜10体積%未満が好ましい。
本発明の複合粉末材料において、ガラス粉末として、種々のガラス粉末を用いることができる。例えば、Bi2O3系ガラス、V2O5系ガラス、SnO系ガラスが低融点特性の点で好適であり、Bi2O3系ガラスが熱的安定性、耐水性の点で特に好ましい。ここで、「〜系ガラス」とは、明示の成分を必須成分として含有し、且つ明示の成分の合量が25モル%以上、好ましくは30モル%以上、より好ましくは35モル%以上のガラスを指す。なお、ガラス粉末は、環境的観点から、ガラス組成中に実質的にPbOを含まないこと(0.1モル%未満)が好ましい。
Bi2O3系ガラスは、ガラス組成として、モル%で、Bi2O3 28〜60%、B2O3 15〜37%、ZnO 1〜30%含有することが好ましい。各成分の含有範囲を上記のように限定した理由を以下に説明する。なお、ガラス組成範囲の説明において、%表示はモル%を指す。
Bi2O3は、軟化点を低下させるための主要成分であり、その含有量は28〜60%、33〜55%、特に35〜45%が好ましい。Bi2O3の含有量が少な過ぎると、軟化点が高くなり過ぎて、流動性が低下し易くなる。一方、Bi2O3の含有量が多過ぎると、焼成時にガラスが失透し易くなり、この失透に起因して、流動性が低下し易くなる。
B2O3は、ガラス形成成分として必須の成分であり、その含有量は15〜37%、20〜33%、特に25〜30%が好ましい。B2O3の含有量が少な過ぎると、ガラスネットワークが形成され難くなるため、焼成時にガラスが失透し易くなる。一方、B2O3の含有量が多過ぎると、ガラスの粘性が高くなり、流動性が低下し易くなる。
ZnOは、耐失透性を高める成分であり、その含有量は1〜30%、3〜25%、5〜22%、特に9〜20%が好ましい。その含有量が1%より少なく、或いは30%より多いと、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、耐失透性が低下し易くなる。
上記成分以外にも、例えば、以下の成分を添加してもよい。
SiO2は、耐水性を高める成分であるが、軟化点を上昇させる作用を有する。このため、SiO2の含有量は0〜5%、0〜3%、0〜2%、特に0〜1%が好ましい。また、SiO2の含有量が多過ぎると、焼成時にガラスが失透し易くなる。
Al2O3は、耐水性を高める成分であり、その含有量は0〜10%、0〜5%、特に0.1〜2%が好ましい。Al2O3の含有量が多過ぎると、軟化点が不当に上昇する虞がある。
Li2O、Na2O及びK2Oは、耐失透性を低下させる成分である。よって、Li2O、Na2O及びK2Oの含有量は、それぞれ0〜5%、0〜3%、特に0〜1%未満である。
MgO、CaO、SrO及びBaOは、耐失透性を高める成分であるが、軟化点を上昇させる成分である。よって、MgO、CaO、SrO及びBaOの含有量は、それぞれ0〜20%、0〜10%、特に0〜5%である。
Bi2O3系ガラスの軟化点を下げるためには、ガラス組成中にBi2O3を多量に導入する必要があるが、Bi2O3の含有量を増加させると、焼成時にガラスが失透し易くなり、この失透に起因して流動性が低下し易くなる。特に、Bi2O3の含有量が30%以上になると、その傾向が顕著になる。この対策として、CuOを添加すれば、Bi2O3の含有量が30%以上であっても、ガラスの失透を効果的に抑制することができる。更にCuOを添加すれば、レーザー封着時のレーザー吸収特性を高めることができる。CuOの含有量は0〜40%、5〜35%、10〜30%、特に15〜25%が好ましい。CuOの含有量が多過ぎると、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆に耐失透性が低下し易くなる。
Fe2O3は、耐失透性とレーザー吸収特性を高める成分であり、その含有量は0〜10%、0.1〜5%、特に0.5〜3%が好ましい。Fe2O3の含有量が多過ぎると、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆に耐失透性が低下し易くなる。
Sb2O3は、耐失透性を高める成分であり、その含有量は0〜5%、特に0〜2%が好ましい。Sb2O3の含有量が多過ぎると、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆に耐失透性が低下し易くなる。
ガラス粉末の平均粒子径D50は15μm未満、0.5〜10μm、特に1〜5μmが好ましい。ガラス粉末の平均粒子径D50が小さい程、ガラス粉末の軟化点が低下する。ここで、「平均粒子径D50」は、レーザー回折法で測定した値を指し、レーザー回折法で測定した際の体積基準の累積粒度分布曲線において、その積算量が粒子の小さい方から累積して50%である粒子径を表す。
本発明の複合粉末材料は、ガラス粉末とセラミック粉末以外にも、他の粉末材料を導入してもよい。例えば、レーザー吸収特性を高めるために、Mn−Fe−Al系酸化物、カーボン、Mn−Fe−Cr系酸化物等のレーザー吸収剤を1〜15体積%含んでいてもよい。またガラスビーズ、スペーサー等を導入してもよい。
本発明の複合粉末材料は、粉末状態で使用に供してもよいが、ビークルと均一に混練し、ペースト化すると取り扱い易くなり、好ましい。ビークルは、通常、溶媒と樹脂を含む。樹脂は、ペーストの粘性を調整する目的で添加される。また、必要に応じて、界面活性剤、増粘剤等を添加することもできる。作製されたペーストは、ディスペンサーやスクリーン印刷機等の塗布機を用いて、被封着物の表面に塗布される。
樹脂としては、アクリル酸エステル(アクリル樹脂)、エチルセルロース、ポリエチレングリコール誘導体、ニトロセルロース、ポリメチルスチレン、ポリエチレンカーボネート、メタクリル酸エステル等が使用可能である。特に、アクリル酸エステル、ニトロセルロースは、熱分解性が良好であるため、好ましい。
溶媒としては、N、N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、α−ターピネオール、高級アルコール、γ−ブチルラクトン(γ−BL)、テトラリン、ブチルカルビトールアセテート、酢酸エチル、酢酸イソアミル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、トルエン、3−メトキシ−3−メチルブタノール、水、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン等が使用可能である。特に、α−ターピネオールは、高粘性であり、樹脂等の溶解性も良好であるため、好ましい。
本発明に係るセラミック粉末は、以下の製造方法で作製されることが好ましい。すなわち、本発明に係るセラミック粉末の製造方法は、原料バッチを焼成して、固相反応により、主結晶相としてβ-ユークリプタイト又はβ-石英固溶体が析出した焼結体を得る工程と、焼結体を粉砕して、セラミック粉末を得る工程と、を有することが好ましい。
本発明に係るセラミック粉末の製造方法は、原料バッチを焼成して、固相反応により焼結体を得る工程を有するが、固相反応で焼結体を作製すると、焼結体にガラス相が残留しなくなる。結果として、封着時にセラミック粉末(特にLi2O)がガラス中に溶け込み難くなるため、ガラスが失透し難くなり、また封着材料の熱膨張係数を維持し易くなる。
Li、Al及びSiの導入原料として、種々の原料を用いることができるが、その中でも、Li、Al及びSiを含む予備焼結体の粉砕物を用いることが好ましい。導入原料の全部又は一部について予備焼結を行うと、析出結晶の均質化が可能になり、セラミック粉末の特性変動を低減することができる。また、Li、Al及びSiを含む予備焼結体の粉砕物以外にも、酸化物原料、水酸化物原料、炭酸塩原料等を用いてもよい。
LAS系結晶中にTiO2及び/又はZrO2を固溶させる場合、Ti及びZrの導入原料として、種々の原料を用いることができるが、例えば、Ti及びZrを含む予備焼結体の粉砕物、酸化物原料、水酸化物原料、炭酸塩原料等を用いることができる。
原料バッチの焼成は、電気炉、ガス炉等で行うことができる。原料バッチの焼成温度は、好ましくは1000〜1450℃、特に1250〜1400℃である。焼成温度が低過ぎると、セラミック粉末の析出結晶量が少なくなり易い。一方、焼成温度が高過ぎると、焼結体の一部がガラス化し、焼結体中にガラス相が残存し易くなる。また焼結体の焼結度が高くなるため、焼結体の粉砕が困難になる。原料バッチの焼成時間は15〜40時間が好ましい。焼成時間が短過ぎると、セラミック粉末の析出結晶量が少なくなり易い。一方、焼成時間が長過ぎると、焼結体の焼結度が高くなるため、焼結体の粉砕が困難になる。
原料バッチは、ボールミル等を用いて、湿式で粉砕混合されることが好ましい。このようにすれば、原料バッチの均質性が向上するため、固相反応を促進することができる。
焼結体の粉砕は、ボールミル、ジョークラッシャー、ジェットミル、ディスクミル、スペクトロミル、グラインダー、ミキサーミル等で行うことができるが、ランニングコスト及び粉砕効率の観点から、ボールミルを用いて、湿式又は乾式で行うことが好ましい。焼結体の粉砕粒度は、析出した結晶粒子のサイズより小さいことが好ましく、また結晶粒子同士の粒界に実質的にマイクロクラックが含まれない程度に調整することが好ましい。このようにすれば、セラミック粉末の粒子径が小さくなるため、封着層の厚みが小さい気密パッケージに好適に適用可能になる。なお、セラミック粉末の平均粒子径D50が10μm未満になると、析出した結晶粒子同士の粒界に実質的にマイクロクラックが含まれない状態になる。
焼結体を粉砕した後、必要に応じて、篩分級又は空気分級を行い、粒子径を調整することが好ましい。
本発明の複合粉末材料は、レーザー封着時の流動性が高く、且つ熱膨張係数が低いため、気密パッケージのパッケージ基体とガラス蓋のレーザー封着に好適に使用可能である。本発明に係る気密パッケージは、パッケージ基体とガラス蓋とが封着層を介して気密封着された気密パッケージにおいて、該封着層が、複合粉末材料の焼結体であり、該複合粉末材料が、上記の複合粉末材料であることを特徴とする。以下、本発明に係る気密パッケージについて、詳細に説明する。
パッケージ基体は、基部と基部上に設けられた枠部とを有することが好ましい。このようにすれば、パッケージ基体の枠部内にセンサー素子等の内部素子を収容し易くなる。パッケージ基体の枠部は、パッケージ基体の外側端縁領域に沿って、額縁状に形成されていることが好ましい。このようにすれば、デバイスとして機能する有効面積を拡大することができる。またセンサー素子等の内部素子をパッケージ基体内の空間に収容し易くなり、且つ配線接合等も行い易くなる。
枠部の頂部における封着層が配される領域の表面の表面粗さRaは1.0μm未満であることが好ましい。この表面の表面粗さRaが大きくなると、レーザー封着の精度が低下し易くなる。ここで、「表面粗さRa」は、例えば、触針式又は非接触式のレーザー膜厚計や表面粗さ計により測定することができる。
枠部の頂部の幅は、好ましくは100〜7000μm、200〜6000μm、特に300〜5000μmである。枠部の頂部の幅が狭過ぎると、封着層と枠部の頂部との位置合わせが困難になる。一方、枠部の頂部の幅が広過ぎると、デバイスとして機能する有効面積が小さくなる。
パッケージ基体は、ガラスセラミック、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムの何れか、或いはこれらの複合材料(例えば、窒化アルミニウムとガラスセラミックを一体化したもの)であることが好ましい。ガラスセラミックは、封着層と反応層を形成し易いため、レーザー封着で強固な封着強度を確保することができる。更にサーマルビアを容易に形成し得るため、気密パッケージが過度に温度上昇する事態を適正に防止することができる。窒化アルミニウムと酸化アルミニウムは、放熱性が良好であるため、気密パッケージが過度に温度上昇する事態を適正に防止することができる。
ガラスセラミック、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムは、黒色顔料が分散されている(黒色顔料が分散された状態で焼結されてなる)ことが好ましい。このようにすれば、パッケージ基体が、封着層を透過したレーザー光を吸収することができる。その結果レーザー封着の際にパッケージ基体の封着層と接触する箇所が加熱されるため、封着層とパッケージ基体の界面で反応層の形成を促進することができる。
黒色顔料が分散されているパッケージ基体は、照射すべきレーザー光を吸収する性質を有すること、例えば、厚み0.5mm、照射すべきレーザー光の波長(808nm)における全光線透過率が10%以下(望ましくは5%以下)であることが好ましい。このようにすれば、パッケージ基体と封着層の界面で封着層の温度が上がり易くなる。
パッケージ基体の基部の厚みは0.1〜2.5mm、特に0.2〜1.5mmが好ましい。これにより、気密パッケージの薄型化を図ることができる。
パッケージ基体の枠部の高さ、つまりパッケージ基体から基部の厚みを引いた高さは、好ましくは100〜2500μm、特に200〜1500μmである。このようにすれば、内部素子を適正に収容しつつ、気密パッケージの薄型化を図り易くなる。
ガラス蓋として、種々のガラスが使用可能である。例えば、無アルカリガラス、アルカリホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラスが使用可能である。なお、ガラス蓋は、複数枚のガラス板を貼り合わせた積層ガラスであってもよい。
ガラス蓋の内部素子側の表面に機能膜を形成してもよく、ガラス蓋の外側の表面に機能膜を形成してもよい。特に機能膜として反射防止膜が好ましい。これにより、ガラス蓋の表面で反射する光を低減することができる。
ガラス蓋の厚みは、好ましくは0.1mm以上、0.15〜2.0mm、特に0.2〜1.0mmである。ガラス蓋の厚みが小さいと、気密パッケージの強度が低下し易くなる。一方、ガラス蓋の厚みが大きいと、気密パッケージの薄型化を図り難くなる。
封着層は、レーザー光を吸収することにより軟化変形して、パッケージ基体の表層に反応層を形成し、パッケージ基体とガラス蓋とを気密一体化する機能を有している。
ガラス蓋と封着層の熱膨張係数差は50×10−7/℃未満、40×10−7/℃未満、特に30×10−7/℃以下が好ましい。この熱膨張係数差が大き過ぎると、封着部分に残留する応力が不当に高くなり、気密パッケージの気密信頼性が低下し易くなる。
封着層は、枠部との接触位置が枠部の頂部の内側端縁から離間するように形成されると共に、枠部の頂部の外側端縁から離間するように形成することが好ましく、枠部の頂部の内側端縁から50μm以上、60μm以上、70〜2000μm、特に80〜1000μm離間した位置に形成されることが更に好ましい。枠部の頂部の内側端縁と封着層の離間距離が短過ぎると、レーザー封着の際に、局所加熱で発生した熱が逃げ難くなるため、冷却過程でガラス蓋が破損し易くなる。一方、枠部の頂部の内側端縁と封着層の離間距離が長過ぎると、気密パッケージの小型化が困難になる。また封着層は、枠部の頂部の外側端縁から50μm以上、60μm以上、70〜2000μm、特に80〜1000μm離間した位置に形成されていることが好ましい。枠部の頂部の外側端縁と封着層の離間距離が短過ぎると、レーザー封着の際に、局所加熱で発生した熱が逃げ難くなるため、冷却過程でガラス蓋が破損し易くなる。一方、枠部の頂部の外側端縁と封着層の離間距離が長過ぎると、気密パッケージの小型化が困難になる。
封着層は、ガラス蓋との接触位置がガラス蓋の端縁から50μm以上、60μm以上、70〜1500μm、特に80〜800μm離間するように形成されていることが好ましい。ガラス蓋の端縁と封着層の離間距離が短過ぎると、レーザー封着の際に、ガラス蓋の端縁領域において、ガラス蓋の内部素子側の表面と外側の表面の表面温度差が大きくなり、ガラス蓋が破損し易くなる。
封着層は、枠部の頂部の幅方向の中心線上に形成されている、つまり枠部の頂部の中央領域に形成されていることが好ましい。このようにすれば、レーザー封着の際に、局所加熱で発生した熱が逃げ易くなるため、ガラス蓋が破損し難くなる。なお、枠部の頂部の幅が充分に大きい場合は、枠部の頂部の幅方向の中心線上に封着層を形成しなくてもよい。
封着層の平均厚みは、好ましくは8.0μm未満、特に1.0μm以上、且つ7.0μm未満である。封着層の平均厚みが小さい程、気密パッケージ内のα線放出率が少なくなるため、内部素子のソフトエラーを防止し易くなる。封着層の平均厚みが小さい程、レーザー封着の精度が向上する。更に封着層とガラス蓋の熱膨張係数が不整合である時に、レーザー封着後に封着部分に残留する応力を低減することもできる。なお、上記のように封着層の平均厚みを規制する方法としては、複合粉末材料ペーストを薄く塗布する方法、封着層の表面を研磨処理する方法が挙げられる。
封着層の最大幅は、好ましくは1μm以上、且つ2000μm以下、特に100μm以上、且つ1500μm以下である。封着層の最大幅を狭くすると、封着層を枠部の端縁から離間させ易くなるため、レーザー封着後に封着部分に残留する応力を低減し易くなる。更にパッケージ基体の枠部の幅を狭くすることができ、デバイスとして機能する有効面積を拡大することができる。一方、封着層の最大幅が狭過ぎると、封着層に大きなせん断応力がかかると、封着層がバルク破壊し易くなる。更にレーザー封着の精度が低下し易くなる。
以下、図面を参照しながら、本発明を説明する。図1は、本発明に係る気密パッケージの一実施形態を説明するための概略断面図である。図1から分かるように、気密パッケージ1は、パッケージ基体10とガラス蓋11とを備えている。また、パッケージ基体10は、基部12と、基部12の外周端縁上に額縁状の枠部13とを有している。そして、パッケージ基体10の枠部13で囲まれた空間には、内部素子14が収容されている。なお、パッケージ基体10内には、内部素子14と外部を電気的に接続する電気配線(図示されていない)が形成されている。
封着層15は、複合粉末材料の焼結体であり、該複合粉末材料は、上記のガラス粉末と上記の耐火性フィラー粉末を含むが、実質的にレーザー吸収材を含んでいない。また、封着層15は、パッケージ基体10の枠部13の頂部とガラス蓋11の内部素子14側の表面との間に、枠部13の頂部の全周に亘って配されている。封着層15の幅は、パッケージ基体10の枠部13の頂部の幅よりも小さく、更にガラス蓋11の端縁から離間している。更に封着層15の平均厚みは8.0μm未満になっている。
上記気密パッケージ1は、次のようにして作製することができる。まず封着層15と枠部13の頂部が接するように、封着層15が予め形成されたガラス蓋11をパッケージ基体10上に載置する。続いて、押圧治具を用いてガラス蓋11を押圧しながら、ガラス蓋11側から封着層15に沿って、レーザー照射装置から出射したレーザー光Lを照射する。これにより、封着層15が軟化流動し、パッケージ基体10の枠部13の頂部の表層と反応することで、パッケージ基体10とガラス蓋11が気密一体化されて、気密パッケージ1の気密構造が形成される。
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例は単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
(予備焼結体の粉砕物の作製)
表1に記載の原料を内容積3.6Lのアルミナ製ポットに入れて、湿式で12時間粉砕混合し、原料バッチを作製した。なお、粉砕混合に当たり、粉砕ボールとしてφ3.0mm、3000gのジルコニア、分散媒として600mlのアルコールを使用した。
次に、原料バッチを乾燥、解砕し、電気炉にて800℃で8時間保持した後、1350℃で16時間焼成した。なお、室温から800℃までの昇温速度を5℃/分、800℃から1350℃までの昇温速度を1℃/分、1350℃からの降温速度を1℃/分とした。
更に、乾式粉砕及び湿式粉砕にて、得られた焼結体を平均粒子径D50=1.0μmになるまで粉砕し、予備焼結体の粉砕物を作製した。
(セラミック粉末の作製)
表2に記載の原料バッチを内容積3.6Lのアルミナ製ポットに入れて、湿式で12時間粉砕混合した。なお、粉砕混合に当たり、粉砕ボールとしてφ3.0mm、3000gのジルコニア、分散媒として600mlのアルコールを使用した。
次に、原料バッチを乾燥、解砕し、電気炉にて800℃で8時間保持した後、1350℃で16時間焼成した。なお、室温から800℃までの昇温速度を5℃/分、800℃から1350℃までの昇温速度を1℃/分、1350℃からの降温速度を1℃/分とした。
更に、乾式粉砕及び湿式粉砕にて、得られた焼結体を平均粒子径D50=1.0μmになるまで粉砕し、試料No.1〜3を得た。試料No.1〜3の組成を表3に示す。なお、試料No.1、2の主結晶はβ-ユークリプタイトであり、試料No.3の主結晶はβ-スポジュメン固溶体であった。
(Bi2O3系ガラス粉末の作製)
ガラス組成として、モル%で、Bi2O3 38%、B2O3 27%、ZnO 5%、BaO 4%、CuO 24%、Fe2O3 1%、Al2O3 1%を含有するガラス粉末が得られるように、各種酸化物、炭酸塩等の原料を調合したガラスバッチを準備し、これを白金坩堝に入れて1000〜1100℃で2時間溶融した。次に、得られた溶融ガラスを水冷ローラーにより薄片状に成形した。最後に、薄片状のガラスをボールミルにて粉砕後、空気分級し、Bi2O3系ガラス粉末を得た。なお、Bi2O3系ガラス粉末の平均粒子径D50は2.5μm、最大粒子径Dmaxは10μm、30〜300℃における熱膨張係数は104×10−7/℃であった。
(複合粉末材料の作製)
上記Bi2O3系ガラス粉末と表3に記載のセラミック粉末を体積比で75:25になるように混合し、複合粉末材料(封着材料)を得た。
得られた複合粉末材料を500℃で焼成することにより、緻密な焼成体を得た後、この焼成体を所定形状に加工して、TMA(押棒式熱膨張係数測定)用の測定試料を作製した。この測定試料を用いて、30〜300℃の温度範囲でTMAを行った。得られた複合粉末材料の熱膨張係数に基づき、表3に記載のセラミック粉末の熱膨張係数αを算出した。
図2は、表2、3に記載の試料No.1(粉砕前)の電子顕微鏡写真である。図3は、表2、3に記載の試料No.1(粉砕後)の電子顕微鏡写真である。図4は、表2、3に記載の試料No.2(粉砕前)の電子顕微鏡写真である。図5は、表2、3に記載の試料No.2(粉砕後)の電子顕微鏡写真である。図2〜5を見ると、試料No.1、2の粉砕前の結晶粒子のサイズは10μm程度であり、粉砕により、試料No.1、2の粒子径は結晶粒子のサイズより小さくなっていることが分かる。そして、試料No.1、2の結晶粒子同士の粒界にマイクロクラックが実質的に含まれないことも分かる。
表3から分かるように、試料No.1、2は、粒子径が小さいものの、負膨張であった。よって、試料No.1、2を用いた複合粉末材料は、熱膨張係数が低いため、封着厚みが小さい場合でも被封着物の熱膨張係数に整合し易いと考えられる。一方、試料No.3は、正膨張であった。よって、試料No.3を用いた複合粉末材料は、熱膨張係数が高いため、封着厚みが小さい場合に被封着物の熱膨張係数に整合し難いと考えられる。
上記No.1、2で示された効果は、表4に示すBi2O3系ガラスとの組み合わせでも認められるものと考えられる。