JP6950475B2 - 熱式気体流量推定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、応答遅れを補償した気体の流量を推定する熱式気体流量推定装置に関する。
従来、応答遅れのある熱式気体流量検出装置において、応答遅れを一次遅れモデルで表し、この一次遅れモデルを逆変換して求めた逆モデルにより、応答遅れを補償した流量を算出する装置がある(特許文献1参照)。
特開2000−320391号公報
ところで、特許文献1に記載の装置では、装置の検出値から補償前の流量を算出し、補償前の流量を用いて時定数を算出し、算出した時定数を用いて補償後の流量を算出している。このため、装置の検出値にノイズが含まれていた場合は、ノイズの影響が増幅されて補償後の流量が算出されることとなり、応答遅れを正確に補償することができない。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、装置の検出値にノイズが含まれる場合であっても、検出値の応答遅れを正確に補償することのできる熱式気体流量推定装置を提供することを主たる目的とする。
上記課題を解決するための第1の手段は、
応答遅れを補償した気体の流量を推定する熱式気体流量推定装置(14)であって、
熱の移動を利用して前記気体の流量の検出値を検出する検出部(62)と、
前記気体の流量変化に対する応答遅れを時定数により表す遅れモデル(86)と、
前記遅れモデルに基づいて前記流量の推定値を算出する算出部(87)と、
前記算出部により算出された前記推定値、及び前記検出部により検出された前記検出値に基づいて、前記応答遅れを補償した前記流量を推定する状態観測器(88)と、
を備える。
上記構成によれば、検出部により、熱の移動を利用して気体の流量の検出値が検出される。このとき、気体の脈動等により流量が変化すると、気体の流れを受ける部分の熱容量により、流量の検出値に応答遅れが生じる。また、この検出値には、一般にノイズが含まれている。
遅れモデルでは、気体の流量変化に対する応答遅れが時定数により表される。そして、算出部により、遅れモデルに基づいて流量の推定値が算出される。この推定値には、一般に誤差が含まれている。
これに対して、状態観測器によって、算出部により算出された推定値、及び検出部により検出された検出値に基づいて、応答遅れを補償した流量が推定される。状態観測器は、ノイズや誤差を含む値に基づいて、正確な値を推定することができる特性(ノイズ耐性)を有している。すなわち、応答遅れを誤差と捉えることにより、状態観測器の特性を利用して応答遅れを正確に補償することができる。したがって、検出部の検出値にノイズが含まれる場合であっても、応答遅れを補償した流量を正確に推定することができる。
第2の手段では、前記遅れモデルにおいて、前記算出部により算出された前記推定値に基づいて前記時定数を算出する。
上記構成によれば、遅れモデルにおいて、算出部により算出された推定値に基づいて時定数が算出されるため、時定数を正確に算出することができる。
ローパスフィルタにより、検出部による検出値からノイズを除去することが考えられる。しかしながら、気体の脈動の周波数に応じてフィルタ定数を変更しなければ、ノイズ以外の信号も減衰することとなる。このため、ローパスフィルタを用いる場合は、気体の脈動の周波数を外部から取得する必要があり、気体流量推定装置単独で応答遅れを正確に補償することができない。
この点、第3の手段では、前記状態観測器は、カルマンフィルタである。カルマンフィルタは、気体の脈動の周波数を用いない場合であっても、ノイズや誤差を含む値に基づいて、正確な値を推定することができる特性を有している。したがって、気体流量推定装置単独で、応答遅れを正確に補償することができる。
具体的には、第4の手段では、前記カルマンフィルタにより推定する前記応答遅れを補償した前記流量の初期値、及び前記カルマンフィルタにおける誤差共分散行列の初期値を、前記熱式気体流量推定装置を搭載するエンジンの停止状態に基づいて設定する。こうした構成によれば、実際のエンジンの状態に基づいて、応答遅れを補償した流量の初期値、及び誤差共分散行列の初期値を適切に設定することができる。
第5の手段では、計算処理を実行するIC(63)を備え、前記ICは、前記遅れモデル、前記算出部、及び前記状態観測器の機能を実現する。
上記構成によれば、熱式気体流量推定装置は、計算処理を実行するICを備え、ICにより、遅れモデル、算出部、及び状態観測器の機能が実現される。このため、例えばエンジンの制御を実行するエンジンECUは、遅れモデル、算出部、及び状態観測器の機能を実現する必要がなく、熱式気体流量推定装置により推定された応答遅れを補償した流量に基づいて、エンジンの制御を実行することができる。
エンジン制御システムの概略構成を示す図。 エアフローメータの断面図。 流量センサを示す図。 センサチップ上の抵抗体を示す平面図。 ヒータ温度制御部の回路図。 流量検出部の回路図。 抵抗体と温度分布との関係を示す図。 空気流量と温度差依存量との関係を示すグラフ。 デジタル演算部の構成を示すブロック図。 温度依存量に生じる応答遅れ及びノイズの影響を示す図。 応答遅れを補償した流量の真値、従来例による値、本実施形態による値を示すグラフ。
以下、一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、車両用のガソリンエンジンに搭載される熱式気体流量推定装置として具現化している。まず、図1に基づいてエンジン制御システムの概略構成を説明する。
筒内噴射式の多気筒内燃機関であるエンジン10の吸気管12の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側に、吸入空気量(気体の流量)を検出するエアフローメータ14が設けられている。エアフローメータ14(熱式気体流量推定装置)は、熱式流量計であり、その詳細については後述する。このエアフローメータ14の下流側には、モータ15によって開度調節されるスロットルバルブ16と、このスロットルバルブ16の開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサ17とが設けられている。
スロットルバルブ16の下流側にはサージタンク18が設けられ、このサージタンク18に、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ19が設けられている。サージタンク18には、エンジン10の各気筒21に空気を導入する吸気マニホールド20が接続され、エンジン10の各気筒21には、それぞれ筒内に燃料を直接噴射する電磁式の燃料噴射弁30が取り付けられている。エンジン10のシリンダヘッド11Bには、気筒21ごとに点火プラグ22が取り付けられ、各気筒21の点火プラグ22の火花放電によって筒内の混合気に着火される。
エンジン10の排気管23には、排出ガスに基づいて混合気の空燃比又はリッチ/リーン等を検出する排出ガスセンサ24(空燃比センサ、酸素センサ等)が設けられ、この排出ガスセンサ24の下流側に、排出ガスを浄化する三元触媒等の触媒25が設けられている。
エンジン10のシリンダブロック11Aには、冷却水温を検出する冷却水温センサ26や、ノッキングを検出するノックセンサ27が取り付けられている。クランク軸28の外周側には、クランク軸28が所定クランク角回転するごとにパルス信号を出力するクランク角センサ29が取り付けられ、このクランク角センサ29のクランク角信号に基づいてクランク角やエンジン回転速度が検出される。
これら各種センサの出力はECU40に入力される。ECU40は、マイクロコンピュータを主体として構成された電子制御ユニットであり、各種センサの検出信号を用いてエンジン10の各種制御を実施する。ECU40は、エンジン運転状態に応じた燃料噴射量を算出して燃料噴射弁30の燃料噴射を制御するとともに、点火プラグ22の点火時期を制御する。詳しくは、ECU40は、クランク角センサ29により検出されたエンジン回転速度、及びエアフローメータ14により検出された吸入空気量(エンジン負荷)に基づいて、燃料噴射量を算出する。
図2に示すように、エアフローメータ14は、MEMS式の流量計であり、エンジン10の吸気通路に取り付けられるセンサハウジング52と、このセンサハウジング52に組み込まれる流量センサ53(図3参照)とを備える。
センサハウジング52には、吸気通路を上流側(エアクリーナ13側)から下流側(エンジン10側)に向かって流れる空気、つまり、エンジン10に吸入される空気の一部を取り込むバイパス通路が形成されている。このバイパス通路は、図3に示すように、吸気通路の上流側(図示左側)に向かって開口する入口59aと、吸気通路の下流側に向かって開口する出口59bとの間を連通するメイン通路59と、このメイン通路59を流れる空気の一部を取り込むサブ通路60とを有する。
メイン通路59は、入口59aと出口59bとの間が略直線的に形成され、且つ、出口側の流路断面積が出口59bに向かって次第に減少するテーパ形状に形成されている。
サブ通路60は、メイン通路59の途中から分岐するサブ入口60aと、センサハウジング52の側面に開口するサブ出口60bとの間を連通している。このサブ通路60は、通路途中に大きな曲がり部が設けられて、メイン通路59より通路長が長く形成されている。
流量センサ53は、後述するヒータ温度制御部61(図5参照)、流量検出部62(図6参照)、および、応答遅れ補償部等の機能を有している。これらの機能は、回路チップ55とセンサチップ64(図3参照)とに設けられている。回路チップ55は、計算処理を実行するIC(Integrated Circuit:集積回路)として構成されている。また、回路チップ55とセンサチップ64は、共通の樹脂ケース65に一体に収容されてセンサアセンブリとして構成されている。
センサチップ64には、図3(b)に示す様に、センサ基板64aの一部にメンブレン66が形成されている。このメンブレン66は、センサ基板64aの表面にスパッタ法あるいはCVD法等により形成される絶縁膜であり、例えば、異方性エッチングにより、センサ基板64aの裏面から絶縁膜との境界面までセンサ基板64aの一部を除去して空洞部64bを設けることにより形成される。
センサチップ64には、図4に示す様に、メンブレン66の表面上にヒータ素子67、傍熱抵抗体68、測温抵抗体69が配置され、メンブレン66から外れた領域には、図5に示す吸気温検出抵抗体70、第1の抵抗体71、第2の抵抗体72が配置されている。 ヒータ素子67は、メンブレン66の略中央部に配置され、ヒータ温度制御部61によって基準温度に制御される。
傍熱抵抗体68は、ヒータ素子67の周囲を囲む様に近接して配置され、ヒータ素子67の温度を検出する。
測温抵抗体69は、図4に示す様に、空気の流れ方向に対してヒータ素子67の上流側(図示左側)に配置される2個の測温抵抗体69(第1測温抵抗体69a、第2測温抵抗体69b)と、ヒータ素子67の下流側に配置される2個の測温抵抗体69(第1測温抵抗体69c、第2測温抵抗体69d)とを有する。
吸気温検出抵抗体70は、空洞部64bが形成されていないセンサ基板64aの厚肉部分に配置されて吸気温度(サブ通路60を流れる空気の温度)を検出する。この吸気温検出抵抗体70は、ヒータ素子67の熱が温度検出に影響を及ぼさないように、ヒータ素子67から所定距離だけ離れた位置に配置される。
第1の抵抗体71と第2の抵抗体72は、吸気温検出抵抗体70と同様に、センサ基板64aの厚肉部分に配置され、ヒータ素子67の熱影響を受けないように、ヒータ素子67から所定距離だけ離れた位置に配置される。なお、第1の抵抗体71と第2の抵抗体72は、どちらか一方あるいは両方を回路チップ55に設けることもできる。
ヒータ素子67、傍熱抵抗体68、測温抵抗体69、吸気温検出抵抗体70、第1の抵抗体71、第2の抵抗体72は、例えば、スパッタあるいは蒸着などの成膜技術により薄膜形成した後、エッチングにより所望の形状にパターニングして形成することができる。抵抗体の材料としては、例えば、信頼性の高い白金を使用することが望ましい。
図5に示すように、ヒータ温度制御部61は、後述するブリッジ回路と、このブリッジ回路の二つの中点端子73、74に接続されるオペアンプ75と、このオペアンプ75の出力に基づいてオン/オフするトランジスタ76より構成され、ヒータ素子67の温度を吸気温より所定温度(例えば200℃)だけ高い基準温度に制御する。
ブリッジ回路は、給電端子77とアース端子78との間に接続される二本のブリッジアームを有し、一方のブリッジアームには、ヒータ素子67の温度を検出する傍熱抵抗体68と第1の抵抗体71とが直列に接続され、他方のブリッジアームには、吸気温度を検出する吸気温検出抵抗体70と第2の抵抗体72とが直列に接続されている。
このヒータ温度制御部61は、例えば、ヒータ素子67の温度、あるいは、吸気温度が変化してブリッジ回路のバランスが崩れると、ヒータ素子67に流れる電流を制御して元のバランス状態に戻すように働く。
具体的に説明すると、例えば、ヒータ素子67の温度が基準温度より低下すると、ヒータ素子67の抵抗値が低下してブリッジ回路の二つの中点端子73、74間に電位差が生じるため、オペアンプ75の出力によりトランジスタ76がオンする。その結果、電源79よりヒータ素子67に電流が流れて、ヒータ素子67の温度が上昇する。その後、ヒータ素子67の温度が基準温度まで上昇すると、二つの中点端子73、74間の電位差がなくなる、つまり、ブリッジ回路の平衡が保たれることにより、トランジスタ76がオフしてヒータ素子67に供給される電流が遮断される。その結果、ヒータ素子67の温度が基準温度に保たれる。
図6に示すように、流量検出部62(検出部)は、4個の測温抵抗体69を各辺に配置して形成されるブリッジ回路と、このブリッジ回路の二つの中点端子80、81に接続されるオペアンプ82とで構成され、上流側の測温抵抗体69(第1測温抵抗体69a、第2測温抵抗体69b)と下流側の測温抵抗体69(第1測温抵抗体69c、第2測温抵抗体69d)との温度差より吸気量を検出する。
流量検出部62のブリッジ回路は、所定の電圧が印加される給電端子83と、アースに接続されるアース端子84との間に二本のブリッジアームを有し、一方のブリッジアームには、ヒータ素子67より上流側の第1測温抵抗体69aと下流側の第1測温抵抗体69cとが直列に接続され、他方のブリッジアームには、ヒータ素子67より下流側の第2測温抵抗体69dと上流側の第2測温抵抗体69bとが直列に接続されている。
ここで、ヒータ素子67からの放熱量と測温抵抗体69の検出温度との関係について、図7を基に説明する。
サブ通路60に空気流れが発生していない時は、図7(a)の破線グラフで示すように、ヒータ素子67を中心として上流側と下流側とで温度分布が対称となり、上流側の測温抵抗体69a、69bと下流側の測温抵抗体69c、69dとの間に温度差は生じない。
これに対し、サブ通路60に順方向の空気流れが発生している場合は、上流側の測温抵抗体69a、69bの方が下流側の測温抵抗体69c、69dより空気流れによる冷却効果が大きいため、図7(a)の実線グラフで示すように、ヒータ素子67の下流側(図示右側)へ偏った温度分布が生じる。つまり、上流側の測温抵抗体69a、69bの方が下流側の測温抵抗体69c、69dより検出温度が低くなる。
一方、サブ通路60に逆方向の空気流れが発生すると、ヒータ素子67の上流側へ偏った温度分布が生じるため、上流側の測温抵抗体69a、69bの方が下流側の測温抵抗体69c、69dより検出温度が高くなる。
上記の様に、サブ通路60に空気の流れが発生すると、空気流量(吸気量)および空気の流れ方向に応じて、上流側の測温抵抗体69a、69bの温度と下流側測の測温抵抗体69c、69dの温度との間に温度差ΔTが生じる。
上流側の測温抵抗体69a、69bの温度と下流側測の測温抵抗体69c、69dの温度との間に温度差ΔTが生じた場合、上流側の測温抵抗体69a、69bの抵抗値と下流側の測温抵抗体69c、69dの抵抗値とがそれぞれ変化する。これにより、ブリッジ回路の二つの中点端子80、81間に電位差が生じ、その電位差がオペアンプ82で増幅されてデジタル演算部63へ出力される。そして、図8に示すように、デジタル演算部63は、増幅された電位差(温度差依存量)に基づいて、吸気量および空気の流れ方向を検出する。すなわち、流量検出部62は、熱の移動を利用して空気の流量を検出する。
デジタル演算部63は、回路チップ55に構成され、図9に示す様に、流量検出部62で検出される吸気量に応じた電圧信号(アナログ値)をデジタル変換するA/D変換器85と、気体の流量変化に対する応答遅れを時定数により表す遅れモデル86とを有している。デジタル演算部63は、遅れモデル86に基づいて流量の推定値を算出する推定値算出部87(算出部)と、推定値算出部87により算出された推定値、及びA/D変換器85により変換された変換値に基づいて、応答遅れを補償した流量を推定して出力するカルマンフィルタ88(状態観測器)とを有している。
図10は、温度依存量に生じる応答遅れ及びノイズの影響を示す図である。
吸気に脈動が生じて流量に変化が生じると、その流量の変化に応じて温度差依存量(詳しくは電位差)が変化する。このとき、吸気の流れを受ける測温抵抗体69a〜69dの熱容量により、破線の真値(実際の値)に対して流量検出部62(センサ)で検出される実線の温度差依存量に応答遅れが生じる。また、この検出された温度差依存量には、一般にノイズが含まれている。このため、温度差依存量と算出流量との関係を表すグラフに基づき算出された実線の算出流量は、破線の真値からずれることとなる。
そこで、本実施形態では、遅れモデル86及びカルマンフィルタ88により、応答遅れを補償した温度差依存量(吸気の流量に対応)を推定する。
遅れモデル86を一次遅れ系で表現すると、以下の更新式(1)が成立する。x1(k)は応答遅れを含む温度差依存量の推定値であり、x2(k)は応答遅れを補償した温度差依存量の推定値である。kはステップを表し、k+1はkの次のステップを表す。
x1(k+1)=a(k)x1(k)+{1−a(k)}x2(k) ・・・(1)
a(k)=exp[−dt/τ{x1(k)}]
dt:処理間隔、τ(x1):時定数
時定数τ(x1)は、応答遅れを含む温度差依存量の推定値x1(k)の関数になっている。すなわち、デジタル演算部63は、遅れモデル86において、時定数τ(x1)を、応答遅れを含む温度差依存量の推定値x1(k)に基づいて算出する。
ここで、未知のパラメータの推定に用いられる以下の疑似更新式(2)を立てて、カルマンフィルタ88を適用する。
Figure 0006950475
Figure 0006950475
v(k):ホワイトノイズ、w(k):ホワイトノイズ。y(k)は、ノイズを含む流量検出部62による温度依存量の検出値である。
上記式(2),(3)に含まれる行列を以下のように定義する。
Figure 0006950475
ここで、カルマンフィルタ88によるx(k)の推定値をx3(k)とする。x3(k)の初期値x3(1)は、エンジン10の停止状態における値を設定する。
そして、デジタル演算部63は、以下の手順で、応答遅れを補償した温度差依存量を推定する。
まず、カルマンフィルタ88による前回の推定値x3(k)から、事前推定値x3_(k+1)を算出する。この処理が、推定値算出部87としての処理に相当する。
x3_(k+1)≡Ax3(k) ・・・(4)
続いて、事前誤差分散行例を計算する。Aは、Aの転置行例を表す。
P_(k+1)≡AP(k)A+BQB
Figure 0006950475
上記式(4)において、P(k)には前回ステップにおいて後述する式(5)により求めた結果を用いる。定数Qは、適合パラメータであり、実験による実データに適合するように算出することが望ましい。なお、定数Qが大きいと、応答遅れを補償した温度差依存量の追従性が高くなるが、ノイズ耐性が低くなる。定数Qが小さいと、応答遅れを補償した温度差依存量の追従性が低くなるが、ノイズ耐性が高くなる。
続いて、カルマンゲインG(k+1)を算出する。
Figure 0006950475
定数Rは、ホワイトノイズw(k)の標準偏差であり、実験による実データから求めることが望ましい。
続いて、事前推定値x3_(k+1)と、流量検出部62による温度依存量の今回の検出値y(k+1)とから、カルマンフィルタ88により今回の推定値x3(k+1)を推定する。
x3(k+1)=x3_(k+1)+G(k+1){y(k+1)−Cx3_(k+1)}
ここで、今回の推定値x3(k+1)は、応答遅れを補償した温度差依存量x2(k+1)を含んでいる。
続いて、誤差共分散行列を計算する。
Figure 0006950475
P(k)の初期値P(1)は、エンジン10の停止状態における値を設定する。
その後、再び式(4)から算出を繰り返す。デジタル演算部63は、応答遅れを補償した流量として温度差依存量x2(k+1)をECU40へ出力してもよいし、温度差依存量と算出流量との関係を表すグラフに温度差依存量x2(k+1)を適用して推定した応答遅れを補償した流量をECU40へ出力してもよい。
図11は、応答遅れを補償した流量の真値、従来例による値、本実施形態による値を示すグラフである。同図に示すように、逆モデルを用いた一点鎖線で示す従来例では、検出値に含まれるノイズの影響が増幅されるため、応答遅れを補償して推定した流量値が破線で示す真値に対してばらつく。これに対して、実線で示す本実施形態では、ノイズ耐性を有するカルマンフィルタ88を用いているため、応答遅れを補償して推定した流量値が破線で示す真値に近い値となる。
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
・状態観測器としてのカルマンフィルタ88によって、推定値算出部87により算出された事前推定値x3_(k+1)、及び流量検出部62により検出された温度依存量の今回の検出値y(k+1)に基づいて、応答遅れを補償した温度差依存量x2(k+1)(すなわち流量)が推定される。カルマンフィルタ88は、ノイズや誤差を含む値に基づいて、正確な値を推定することができる特性(ノイズ耐性)を有している。すなわち、応答遅れを誤差と捉えることにより、カルマンフィルタ88の特性を利用して応答遅れを正確に補償することができる。したがって、流量検出部62の検出値y(k+1)にノイズが含まれる場合であっても、応答遅れを補償した流量を正確に推定することができる。
・デジタル演算部63により算出された応答遅れを含む温度差依存量の推定値x1(k)に基づいて時定数τが算出されるため、時定数τを正確に算出することができる。
・ローパスフィルタにより、流量検出部62による検出値からノイズを除去することが考えられる。しかしながら、空気の脈動の周波数に応じてフィルタ定数を変更しなければ、ノイズ以外の信号も減衰することとなる。このため、ローパスフィルタを用いる場合は、空気の脈動の周波数を外部から取得する必要があり、エアフローメータ14単独で応答遅れを正確に補償することができない。
この点、エアフローメータ14は、状態観測器として、カルマンフィルタ88採用している。カルマンフィルタ88は、空気の脈動の周波数を用いない場合であっても、ノイズや誤差を含む値に基づいて、正確な値を推定することができる特性を有している。したがって、エアフローメータ14単独で、応答遅れを正確に補償することができる。
・カルマンフィルタ88により推定する応答遅れを補償した温度差依存量x2(k)の初期値x2(1)、及びカルマンフィルタ88における誤差共分散行列P(k)の初期値P(1)を、エアフローメータ14を搭載するエンジン10の停止状態に基づいて設定している。こうした構成によれば、実際のエンジン10の状態に基づいて、応答遅れを補償した温度差依存量x2(k)の初期値x2(1)、及び誤差共分散行列P(k)の初期値P(1)を適切に設定することができる。
・エアフローメータ14は、計算処理を実行するデジタル演算部63を備え、デジタル演算部63により、遅れモデル86、推定値算出部87、及びカルマンフィルタ88の機能が実現される。このため、エンジン10の制御を実行するECU40は、遅れモデル86、推定値算出部87、及びカルマンフィルタ88の機能を実現する必要がなく、エアフローメータ14により推定された応答遅れを補償した温度差依存量x2(k)、すなわち流量に基づいて、エンジン10の制御を実行することができる。
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
・カルマンフィルタ88により推定する応答遅れを補償した温度差依存量x2(k)の初期値x2(1)、及びカルマンフィルタ88における誤差共分散行列P(k)の初期値P(1)を、予め実験等に基づき算出した標準値に設定してもよい。
・時定数τを、予め実験等に基づいて算出しておくこともできる。
・状態観測器として、例えばノイズを考慮しない状態観測器等、カルマンフィルタ88以外の状態観測器を用いることもできる。
・デジタル演算部63の機能の一部を、ECU40が実現してもよい。また、エアフローメータ14がデジタル演算部63を備えておらず、デジタル演算部63の機能をECU40が実現してもよい。
・エアフローメータ14として、MEMS式の流量計に限らず、熱線式の流量計等を採用することもできる。その場合は、空気(気体)の流量に相関する値として、温度差依存量に代えて、供給電流(熱線の放熱量)を用いればよい。すなわち、エアフローメータ14は、熱の移動を利用して気体の流量の検出値を検出する流量計であればよい。
14…エアフローメータ、62…流量検出部、86…遅れモデル、87…推定値算出部、88…カルマンフィルタ。

Claims (5)

  1. 応答遅れを補償した気体の流量を推定する熱式気体流量推定装置(14)であって、
    熱の移動を利用して前記気体の流量の検出値を検出する検出部(62)と、
    前記気体の流量変化に対する応答遅れを時定数により表す遅れモデル(86)と、
    前記遅れモデルに基づいて前記流量の推定値を算出する算出部(87)と、
    前記算出部により算出された前記推定値、及び前記検出部により検出された前記検出値に基づいて、前記応答遅れを補償した前記流量を推定する状態観測器(88)と、
    を備える熱式気体流量推定装置。
  2. 前記遅れモデルにおいて、前記算出部により算出された前記推定値に基づいて前記時定数を算出する、請求項1に記載の熱式気体流量推定装置。
  3. 前記状態観測器は、カルマンフィルタである、請求項1又は2に記載の熱式気体流量推定装置。
  4. 前記カルマンフィルタにより推定する前記応答遅れを補償した前記流量の初期値、及び前記カルマンフィルタにおける誤差共分散行列の初期値を、前記熱式気体流量推定装置を搭載するエンジン(10)の停止状態に基づいて設定する、請求項3に記載の熱式気体流量推定装置。
  5. 計算処理を実行するIC(63)を備え、
    前記ICは、前記遅れモデル、前記算出部、及び前記状態観測器の機能を実現する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱式気体流量推定装置。
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