(概要)
歯牙の根管を拡大形成する治療は、根管が湾曲している程度や根管が石灰化して閉塞している状況などが異なっており、非常に難しい治療である。難しい治療となる最大の原因は切削工具の破折の可能性があることである。経験豊かな術者は、根管の拡大形成中に切削工具の上下動を適切に行っている。ここでの切削工具を上下動させる効果としては、切削工具にかかる負担を軽減し、破折の恐れを低減すること、切削工具が根管の形態に沿って進入し易くすること、切削工具が根管壁に食い込みを解除し易くすること、あるいは、切削時間自体を短くすることなどがあげられる。特に、切削工具を歯冠側に引上げ戻す上下動の動作は、臨床的にペッキングモーションと呼ばれている。上記と重複するが、根管の拡大形成において、ペッキングモーションを行うことにより以下の効果が得られる。(1)切削工具の破折を低減して安全な根管の拡大形成が可能、(2)同一の位置に切削工具が長期間とどまらないので、レッジ(ledge)と呼ばれる窪みを生じさせる頻度を低減、(3)切削工具の先端の根管の内壁への拘束、食い込みを解消、(4)根管の拡大形成の時間を低減など。
経験豊かな術者は、根管の拡大形成中のどのタイミングで、切削工具の位置を変更する動作を行えばよいのか分かっており、適切なタイミングで切削工具の位置を変更する動作を行っている。一方、経験の浅い術者は、根管の拡大形成中のどのタイミングで、切削工具の位置を変更する動作を行えばよいのか分かっておらず、根管の拡大形成中に切削工具の位置を変更する動作を、意識的には全く行わないことも多い。
そこで、本発明の実施の形態に係る根管形成器では、術者の動作を促すための示唆情報(例えば、音や光など)を出力することで、根管の拡大形成中に切削工具の位置を変更する動作を促している。つまり、本発明の実施の形態に係る根管形成器では、切削工具を上下動させるペッキングモーションを行うトリガ信号を発生させている。具体的に、本発明の実施の形態に係る根管形成器では、制御ボックスに設けたLED(Light Emitting Diode)やスピーカーから一定の時間間隔のタイミングで光や音をトリガ信号(示唆情報)として出力することで術者の動作を促している。
図1は、本発明の実施の形態に係る根管形成器が出力する示唆情報のタイミングを説明するための図である。図1には、根管形成器が切削工具を駆動する駆動信号、スピーカーから音を出力する音出力信号およびLEDを発光させる光出力信号のそれぞれのタイミングチャートが図示されている。まず、根管形成器の駆動信号がOFF状態からON状態に変更され(タイミングa)、切削工具が切削方向(例えば、時計回り)に駆動を開始する。根管形成器は、切削工具の駆動が開始されるとトリガ信号を出力する処理も開始される。
図1に示す音出力信号は、タイミングaから0.5秒後にOFF状態からON状態に変更され、スピーカーから0.5秒間の音を出力する。その後、音出力信号は、ON状態からOFF状態に変更され、さらに0.5秒経過後にスピーカーから0.5秒間の音を出力する。以降、根管形成器の駆動信号がON状態からOFF状態に変更されるまで、スピーカーからメトロノームのように一定の時間間隔で音を出力させる。術者は、スピーカーから出力される一定の時間間隔の音に合わせて切削工具の位置を変更する動作を行う(たとえば、切削工具を根管口側へ引き上げ、そして引き上げる前の位置まで挿入して切削作業を再開する)ことで、切削工具にかかる負担、特に破折に結び付く応力を低減できる。
同じように、図1に示す光出力信号は、タイミングaから0.5秒後にOFF状態からON状態に変更され、0.5秒間LEDを発光させる。その後、光出力信号は、ON状態からOFF状態に変更され、さらに0.5秒経過後に0.5秒間LEDを発光させる。以降、根管形成器の駆動信号がON状態からOFF状態に変更されるまで、一定の時間間隔でLEDを発光させる。術者は、一定の時間間隔で発光するLEDの光の点滅に合わせて切削工具の位置を変更する動作を行う。なお、図1に示すタイミングでは、音出力信号に基づきスピーカーから音を出力し、光出力信号に基づきLEDを発光させる場合について説明したが、いずれか一方だけでもよい。
次に、本発明の別の実施の形態に係る根管形成器では、制御ボックスに設けたLEDやスピーカーから一定の時間間隔のタイミングで光や音をトリガ信号として出力するのではなく、切削工具の駆動のタイミングに合わせてトリガ信号を出力する。図2は、本発明の別の実施の形態に係る根管形成器が出力するトリガ信号のタイミングを説明するための図である。図2には、根管形成器が切削工具を駆動する駆動信号、スピーカーから音を出力する音出力信号およびLEDを発光させる光出力信号のそれぞれのタイミングチャートが図示されている。まず、根管形成器の駆動信号がOFF状態から切削方向の状態に変更され(タイミングa)、切削工具が切削方向(例えば、時計回り)に駆動を開始する。その後、根管形成器の駆動信号が切削方向の状態から非切削方向の状態に変更され(タイミングb)、切削工具が非切削方向(例えば、反時計回り)に駆動を開始する。以降、根管形成器の駆動信号は、切削方向の状態と非切削方向の状態とを交互に繰り返し、切削工具をツイスト駆動させる。
音出力信号は、タイミングbでOFF状態からON状態に変更され、スピーカーから音を出力する。その後、音出力信号は、一定期間(例えば、0.5秒)ON状態を維持してOFF状態に変更される。さらに、音出力信号は、駆動信号が切削方向の状態から非切削方向の状態に変更される度にON状態に変更され、スピーカーから音を出力する。つまり、根管形成器は、非切削方向に切削工具が回転するタイミングでスピーカーから音を出力する。術者は、スピーカーから出力される音に合わせて切削工具の位置を変更する動作を行うことで、根管の内壁への切削工具の食い込みが解除される非切削方向の駆動のタイミングで切削工具の位置を変更する動作を行うことができ、より切削工具にかかる負担、特に破折に結び付く応力を低減できる。
同じように、光出力信号は、タイミングbでOFF状態からON状態に変更され、LEDを発光させる。その後、光出力信号は、一定期間(例えば、0.5秒)ON状態を維持してOFF状態に変更される。さらに、光出力信号は、駆動信号が切削方向の状態から非切削方向の状態に変更される度にLEDを発光させる。つまり、根管形成器は、非切削方向に切削工具が回転するタイミングでLEDを発光させる。術者は、LEDの発光に合わせて切削工具の位置を変更する動作を行うことで、根管の内壁への切削工具の食い込みが解除される非切削方向の駆動のタイミングで切削工具の位置を変更する動作を行うことができ、より切削工具にかかる負担、特に破折に結び付く応力を低減できる。なお、図2に示すタイミングでは、音出力信号に基づきスピーカーから音を出力し、光出力信号に基づきLEDを発光する場合について説明したが、いずれか一方だけでもよい。
さらに、根管形成器が出力するトリガ信号のタイミングに合わせて術者が切削工具の位置を変更する動作を行うことで切削工具が根管の形態に沿って挿入され易くなり、根管形成後の根管の形態がよくなる。また、当該動作を行うことで同じ位置に切削工具の刃が置かれることがなくなり、根管の変形が少なくなる。あと、当該動作を行うことで切削くずが排出されやすくなる。
また、根管形成器が出力するトリガ信号としてスピーカーから単純に音を出すだけでなく、音のトーン(周波数、大きさ、リズムなど)を変更するなどでもよい。また、根管形成器が出力するトリガ信号としてLEDを単純に発光させるだけでなく、点滅周期を変更する、光のパラメータ(色合い、濃さ)などを変更する、後述する表示部のバックライトのパラメータ(色合い、明るさ)などを変更するなどでもよい。
以上に説明した本発明の実施の形態の概要について、さらに具体的に図面を参照しながら以下に説明する。以下の説明では、術者の動作を促すためのトリガ信号を一定の時間間隔のタイミングや、切削工具の駆動状態に基づくタイミングで出力する場合だけでなく、制御部が駆動部を制御する駆動パターンや駆動シーケンスに基づくタイミングで出力する場合についても説明する。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る歯科用治療装置は、歯科用根管治療のハンドピースを組み込んだ根管拡大及び根管長測定システムを含む根管形成器である。しかし、本発明に係る歯科用治療装置は、根管形成器に限定されるものではなく、同様の構成を有する歯科用治療装置について適用することができる。
[歯科用治療装置の構成]
図3は、本発明の実施の形態1に係る根管形成器の外観の構成を示す概略図である。図4は、本発明の実施の形態1に係る根管形成器の機能の構成を示すブロック図である。図3に示す根管形成器100は、歯科用根管治療のためのハンドピース1、モータユニット6、制御ボックス9を含んでいる。
歯科用根管治療のハンドピース1は、ヘッド部2と、ヘッド部2に連接される細径のネック部3と、該ネック部3に連接され手指によって把持される把持部4とを備えている。そして、把持部4の基部には、ヘッド部2に保持される切削工具5(ファイル或いはリーマなど)を回転駆動させるためのモータユニット6が着脱自在に接続される。ハンドピース1にモータユニット6が連結された状態で歯科用のインスツルメント10を構成する。
モータユニット6は、図4に示すようにマイクロモータ7を内蔵し、該マイクロモータ7へ電源を供給する電源供給用リード線71および、後述する根管長測定回路12へ信号を伝送する信号用リード線8などを内装するホース61を介して、制御ボックス9に連結してある。ここで、信号用リード線8は、モータユニット6及びハンドピース1内を経て切削工具5と電気的に導通し、電気信号を伝達する導電体の一部である。なお、切削工具5は、根管長測定回路12の一方の電極となる。
制御ボックス9は、制御部11、比較回路110、根管長測定回路12、モータドライバ13、設定部14、操作部15、表示部16および報知部17などを備えている。なお、制御ボックス9には、図3に示すように、本体側部にインスツルメント10を不使用時に保持するためのホルダ10aを取付けてある。また、制御ボックス9には、フートコントローラ18を制御部11に連結し、リード線19を根管長測定回路12に連結してある。リード線19は、制御ボックス9から引き出されているが、ホース61の途中から分岐するように引き出してもよい。リード線19の先端には、患者の唇に掛けられる口腔電極19aを電気的に導通する状態で取付けてある。なお、口腔電極19aは、根管長測定回路12の他方の電極となる。
制御部11は、根管拡大及び根管長測定システム全体の制御を行うもので、主要部はマイクロコンピュータで構成されている。制御部11には、比較回路110、根管長測定回路12、モータドライバ13、設定部14、操作部15、表示部16、報知部17およびフートコントローラ18を接続してある。制御部11は、切削対象物を切削する切削工具5の回転方向を制御している。具体的に、制御部11は、切削工具5を時計回り(右回りともいう)方向に回転させる正転駆動、切削工具5を反時計回り(左回りともいう)方向に回転させる逆転駆動、および切削工具5を時計回り方向と反時計回り方向とに交互に回転させるツイスト駆動(レシプロ駆動)のいずれかの制御を行う。ここで、切削工具の回す方向(時計回り方向や反時計回り方向)は、ヘッド部2に取付ける切削工具5の側から切削工具5の先端方向を向いた場合を基準に考えるものとする。さらに、制御部11は、時計回りの回転角度、回転速度、あるいは回転角速度(回転数)、反時計回りの回転角度、回転速度、あるいは回転角速度(回転数)のそれぞれのパラメータを変更して、切削工具5を回転させる駆動の制御を行うことができる。
ここで、回転角度は、回転角速度(回転数)を一定にした場合の回転時間(駆動期間ともいう)などで規定してもよい。なお、以下の説明では回転角度を用いて説明するが、回転回数と置き換えてもよい。たとえば、切削工具5の回転回数を2分の1回転とすることと、切削工具5が180度回転することとは同じことである。また、切削工具5の回転速度が120回毎分と一定の場合に切削工具5を0.25秒駆動することと、切削工具5が180度回転することとは同じことである。厳密には切削工具やモータのかかる負荷によって、例えば制御上の回転時間と実際の回転角度とは対応関係を補正しなければならない場合があるが、本発明の実施においては無視することができる。以降の実施の形態では、回転数を用いて切削工具5の回転の速さを表す。なお、回転数の単位には、1分あたりの回転数(rpm:revolutions per minute)を用いる。
比較回路110は、切削工具5に加わる負荷を検出するために必要な構成であり、当該負荷の検出が必要な場合に選択して設けることが可能な構成である。比較回路110は、モータドライバ13により切削工具5を時計回り方向または反時計回り方向に回転させているいずれかの時点で、負荷の比較を行うことが可能である。具体的に、比較回路110は、切削工具5を時計回り方向または反時計回り方向に所定の回転角度(例えば180度)回転させた後に、切削工具5に加わる負荷と基準負荷や所定負荷とを比較することができる。
根管長測定回路12は、切削工具5の先端の根管内での位置を検出するために必要な構成であり、当該位置の検出が必要な場合に選択して設けることが可能な構成である。根管長測定回路12は、歯牙の根管内に挿入した切削工具5を一方の電極、患者の唇に掛けた口腔電極19aを他方の電極として閉回路を構成する。そして、根管長測定回路12は、切削工具5と口腔電極19aとの間に測定電圧を印加し、切削工具5と口腔電極19aとの間のインピーダンスを計測することによって、切削工具5の先端を検出することができる。なお、切削工具5と口腔電極19aとの間のインピーダンスを計測して、根管長を測定する電気的根管長測定方法は公知のものであり、実施の形態1に係る根管形成器100には、公知になっているすべての電気的根管長測定方法を適用することができる。
モータドライバ13は、電源供給用リード線71を介してマイクロモータ7に接続し、制御部11からの制御信号に基づいて、マイクロモータ7に供給する電源を制御している。モータドライバ13は、マイクロモータ7に供給する電源を制御することで、マイクロモータ7の回転方向、回転数および回転角度など、つまり切削工具5の回転方向、回転数および回転角度などを制御することができる。根管形成器100では、少なくともモータドライバ13およびマイクロモータ7で駆動部を構成している。
設定部14は、切削工具5の回転方向、回転数および回転角度などを制御する基準を設定する。また、設定部14は、切削工具5に加わる負荷と比較回路110おいて比較する所定負荷(術者の動作を促すためのトリガ信号を出力する処理を開始するための負荷)、基準負荷(切削工具5の駆動を停止する、または非切削回転方向に切削工具5を回すなど駆動を切替えるための負荷)、タイミングなどを設定する。さらに、設定部14は、根管長測定回路12を用いて予め根尖位置を基準位置、根尖位置から所定距離にある位置を所定位置(術者の動作を促すためのトリガ信号を出力する処理を開始するための位置)としてそれぞれ設定したりすることができる。なお、根管形成器100は、設定部14に予め基準位置を設定しておくことで、切削工具5の先端がこの基準位置に達したとき、切削工具5の回転方向、回転数および回転角度のパラメータを変更することができる。
操作部15は、切削工具5の回転数および回転角度のパラメータを設定する他、根管長測定を行うか否かの選択なども設定することができる。また、操作部15は、正転駆動と逆転駆動との切換えや、正転駆動とツイスト駆動との切換えを手動で行うことができる。
表示部16は、後述するように根管内での切削工具5の先端の位置や切削工具5の回転方向、回転数および回転角度などを表示する。さらに、報知部17が術者に対して報知するための情報を、表示部16に表示することもできる。
報知部17は、現在、制御部11で行っている切削工具5の駆動状態を、光、音や振動などにより報知する。さらに、報知部17は、術者の動作を促すためのトリガ信号を光、音や振動などにより出力することができる。具体的に、報知部17は、切削工具5の駆動状態を報知するために、必要に応じてLED,スピーカーや振動子などを設け、正転方向の駆動と逆転方向の駆動とで発光するLEDの色を変えたり、スピーカーから出力する音を変えたりする。また、報知部17は、例えば一定の時間間隔でLEDを発光させたり、一定の時間間隔で音を出力したりすることで術者の動作を促すためのトリガ信号を出力し、切削工具を上下動する動作(ペッキングモーション)等を術者に促すことができる。もちろん、報知部17は、一定の時間間隔でLEDを発光させるとともに音を出力することで、同様の動作を術者に促してもよい。なお、報知部17は、表示部16で、術者に対して切削工具5の駆動状態を表示することができる場合、LED,スピーカーや振動子など別途設けなくてもよい。また、術者の動作を促すためのトリガ信号を出力するLED,スピーカーや振動子など別途設けずに、表示部16にトリガ信号を出力してもよい。
フートコントローラ18は、マイクロモータ7による切削工具5の駆動制御を足踏操作によって行う操作部である。なお、マイクロモータ7による切削工具5の駆動制御は、フートコントローラ18に限定されるものではなく、ハンドピース1の把持部4に操作スイッチ(図示せず)を設け、この操作スイッチとフートコントローラ18とを併用して切削工具5の駆動制御を行うようにしてもよい。また、たとえば、フートコントローラ18の足踏操作がなされている状態で、さらに切削工具5が根管内に挿入されたことを根管長測定回路12が検出したことで、切削工具5の回転を開始するようにしてもよい。
なお、根管形成器100の制御ボックス9は、歯科用診療台の側部に設置するトレーテーブルやサイドテーブル上に載置して使用する構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、トレーテーブルやサイドテーブル内に制御ボックス9を組込んだ構成であってもよい。
次に、切削工具5の駆動制御を行う根管形成器100の回路構成について、さらに詳しく説明する。図5は、本発明の実施の形態1に係る根管形成器100の回路構成を示す回路図である。図5に示す根管形成器100には、切削工具5の駆動制御に関わるマイクロモータ7、制御部11、比較回路110、根管長測定回路12、モータドライバ13、および設定部14の部分について図示してある。
さらに、モータドライバ13は、トランジスタスイッチ13a、トランジスタドライバ回路13b、回転方向切換スイッチ13c、および負荷検出用抵抗13dを含んでいる。なお、回転方向切換スイッチ13cは、リレー素子として説明するが、FETなどの半導体のスイッチ素子でモータ駆動回路を構成してもよい。設定部14は、負荷(基準負荷および所定負荷)設定用の可変抵抗14a、デューティ設定用の可変抵抗14b、および位置(基準位置および所定位置)設定用の可変抵抗14cを含んでいる。なお、設定部14には、比較回路110において検出した負荷と基準負荷や所定負荷とを比較するタイミングを示す回転角度(または回転時間)を設定する構成なども含まれるが、当該構成については図5に図示していない。また、図5に示す根管形成器100には、主電源20およびメインスイッチ21に接続してある。切削工具5は、図示していないが適宜の歯車機構等を介してマイクロモータ7に保持してある。
トランジスタドライバ回路13bは、制御部11のポート11aから出力する制御信号で作動し、トランジスタスイッチ13aのオン・オフを制御してマイクロモータ7を駆動する。マイクロモータ7は、回転方向切換スイッチ13cの状態に応じて時計回り方向または反時計回り方向に回転する。制御部11のポート11aから出力する制御信号が、たとえば一定の周期で繰返されるパルス波形である場合、そのパルス波形の幅、すなわちデューティ比は、設定部14のデューティ設定用の可変抵抗14bによって調整される。マイクロモータ7は、このデューティ比に対応した回転数で切削工具5を駆動する。
回転方向切換スイッチ13cは、制御部11のポート11bから出力する制御信号で、切削工具5を時計回り方向に駆動するか、反時計回り方向に駆動するかを切換える。制御部11は、ポート11cに入力される負荷検出用抵抗13dの電流量(または電圧値)に基づき、切削工具5に加わる負荷を検出する。そのため、負荷検出用抵抗13dは、切削工具5に加わる負荷を検出する負荷検出部として機能している。なお、負荷検出部は、負荷検出用抵抗13dの電流量(または電圧値)に基づいて切削工具5に加わる負荷を検出する構成に限定されるものではなく、たとえば切削工具5の駆動部分にトルクセンサを設けて切削工具5に加わる負荷を検出する構成など別の構成であってもよい。検出される負荷は、たとえば切削工具5に加わるトルク値に制御部11で換算され、表示部16に表示される。また、比較回路110では、制御部11で換算されたトルク値と、負荷設定用の可変抵抗14aを用いて設定したトルク値とを比較している。もちろん、比較回路110は、トルク値に換算せずに負荷検出用抵抗13dの電流量(または電圧値)と可変抵抗14aの電流量(または電圧値)とを直接比較する構成でもよい。
さらに、制御部11は、根管長測定回路12で測定した、根管長測定データをポート11dに入力する。そのため、根管長測定回路12は、切削工具5の先端の根管内での位置を検出する位置検出部として機能している。また、制御部11は、負荷検出部で検出した切削工具5に加わる負荷をポート11eから比較回路110へ出力し、比較回路110が基準負荷や所定負荷と比較した比較結果をポート11eから入力する。そのため、比較回路110は、負荷検出部で検出した負荷と基準負荷や所定負荷とを比較する負荷比較部として機能している。なお、制御部11は、上記アナログ回路で説明した構成を、ひとつのマイクロコンピュータにソフトウェアとしてまとめてもよい。
図6は、切削工具5の回転方向を示した模式図である。図6に示す切削工具5の回転方向では、ヘッド部2に取付ける切削工具5の側から切削工具5の先端方向を向いて切削工具5を右回りに回転させる時計回り方向5aの方向の駆動と、左回りに回転させる反時計回り方向5bの方向の駆動とが図示されている。なお、予め定められた回転角度で時計回り方向5aに切削工具5を回転させる駆動と、予め定められた回転角度で反時計回り方向5bに切削工具5を回転させる駆動とを交互に行う駆動が、ツイスト駆動である。
次に、図3に示す表示部16に設ける液晶表示パネルの表示について説明する。図7は、図3に示す表示部16に設ける液晶表示パネルの表示例を示す図である。
図7に示す表示部16は、液晶表示パネルであり、測定した根管長を詳細に表示するための多数の要素を含むドット表示部52と、根管長を複数のゾーンに分けて段階的に表示するためのゾーン表示部54と、各ゾーンの境界を示す境界表示部56と、根尖までの到達率を表示する到達率表示部58とが設けてある。
ドット表示部52は、切削工具5の先端が根尖に近づくにつれ、上から下に向かって要素が順に表示されるようになっている。目盛「APEX」の位置が根尖の位置を表わし、当該目盛まで要素が到達したとき、切削工具5の先端が根尖の位置にほぼ到達したことを示す。
また、表示部16には、負荷検出部(負荷検出用抵抗13d、図5参照)で検出した負荷を表示するための多数の要素を含むドット表示部60と、負荷を複数のゾーンに分けて段階的に表示するためのゾーン表示部62とが設けてある。ドット表示部60は、負荷検出部で検出した負荷が大きくなるに従って、上から下に向かって要素が順に表示される。
たとえば、ドット表示部60には、歯牙を切削しているときに加わる切削工具5の負荷を、斜線で示した要素60aで表示する。
また、ドット表示部60には、設定部14(図5参照)で設定した基準負荷や所定負荷に対応する要素60bを表示してもよい。要素60bをドット表示部60に表示することで、基準負荷や所定負荷に対して、負荷検出部で検出した負荷にどの程度マージンが存在しているのかを視覚化することができる。
さらに、表示部16には、切削工具5の回転数や切削工具5に加わる負荷を数値で表示する数値表示部64と、切削工具5の回転の向き(時計回り方向、反時計回り方向)および切削工具5の回転数の大小を表示する回転表示部68とが設けてある。
実施の形態1に係る根管形成器100では、術者の動作を促すためのトリガ信号を図1で示したように一定の時間間隔のタイミングで出力しても、図2で示したように切削工具の駆動状態に基づくタイミング(例えば、非切削方向に前記切削工具が回転するタイミング)で出力してもよい。さらに、実施の形態1に係る根管形成器100では、術者の動作を促すためのトリガ信号を制御部11がモータドライバ13を制御する駆動パターンや駆動シーケンスに基づくタイミングで出力してもよい。
まず、切削工具5の駆動は、以下に説明する5つの基本的な駆動パターンに分類することができる。具体的に、図8は、本発明の実施の形態1に係る根管形成器100に用いる基本的な駆動パターンを説明するための図である。図8に示す矢印は、切削工具5の回転方向を示している。図8においては、ヘッド部2に取付ける切削工具5の側から切削工具5の先端方向を向いた場合を基準に回転方向が記載されている。なお、通常の切削工具5は、時計回り方向に回転させると歯牙の根管を切削することができるが、反時計回り方向に回転させると歯牙の根管を切削することができない或いは切削効率が低下する。そのため、以下、時計回り方向の方向を切削方向、反時計回り方向を非切削方向とし、時計回り方向の回転角度を切削方向の回転角度、反時計回り方向の回転角度を非切削方向の回転角度として定義する。
図8(a)に示す基本的な駆動パターンは、切削方向に180度回転、非切削方向に90度回転する。根管形成器100は、図8(a)に示す基本的な駆動パターンで切削工具5を駆動する場合、非切削方向に90度回転する駆動を開始するタイミング(図中の丸印)でトリガ信号である音(例えば、0.5秒の音)をスピーカーから出力する。そして非切削方向の回転が終了した時点で、スピーカーからの出力を停止する。ここで、トリガ信号を出力するタイミングには、非切削方向に回転している期間、トリガ信号を出力し続ける場合と、駆動の方向が非切削方向に切り替わった瞬間の短い期間に、トリガ信号を出力する場合とを含んでいる。非切削方向に回転している期間、トリガ信号を出力し続ける場合、トリガ信号が出力されている期間中に、術者がペッキングモーションを行う。駆動の方向が非切削方向に切り替わった瞬間の短い期間に、トリガ信号を出力する場合、トリガ信号が出力されれば、直ぐに術者がペッキングモーションを行う。当該タイミングは、以下、同様である。
図8(b)に示す基本的な駆動パターンは、切削方向に90度回転、非切削方向に180度回転する。根管形成器100は、図8(b)に示す基本的な駆動パターンで切削工具5を駆動する場合、非切削方向に180度回転する駆動を開始するタイミング(図中の丸印)でトリガ信号である音をスピーカーから出力する。そして非切削方向の回転が終了した時点で、スピーカーからの出力を停止する。
図8(c)に示す基本的な駆動パターンは、切削方向に180度回転、非切削方向に180度回転する。根管形成器100は、図8(c)に示す基本的な駆動パターンで切削工具5を駆動する場合、非切削方向に180度回転する駆動を開始するタイミング(図中の丸印)でトリガ信号である音をスピーカーから出力する。そして非切削方向の回転が終了した時点で、スピーカーからの出力を停止する。
図8(d)に示す基本的な駆動パターンは、切削方向には回転せず非切削方向に360度回転する。根管形成器100は、図8(d)に示す基本的な駆動パターンで切削工具5を駆動する場合、駆動パターンに応じてはトリガ信号である音をスピーカーから出力しない。図8(d)の場合、根管形成器100は、あらかじめ決定されたタイミングにより、トリガ信号である音をスピーカーから出力する。
図8に示す基本的な駆動パターンで記載された回転角度は例示であって、図8(a)に示す基本的な駆動パターンは、少なくとも切削方向の回転角度が非切削方向の回転角度より大きければよい。また、図8(b)に示す基本的な駆動パターンは、少なくとも切削方向の回転角度が非切削方向の回転角度より小さければよい。図8(c)に示す基本的な駆動パターンは、切削方向の回転角度と非切削方向の回転角度とが同じであればよい。
切削工具5は、図8で示した駆動パターンを組み合わせた駆動シーケンスに基づき駆動される。根管形成器100は、駆動シーケンスに含まれる複数の駆動パターンのうち、非切削方向に切削工具5を回転する駆動を有する駆動パターン(図8(a)〜(c))を少なくとも1つ含む。そして、根管形成器100は、非切削方向に切削工具5を回転する駆動を有する駆動パターンが実行されている期間のいずれかのタイミングでトリガ信号である音をスピーカーから出力する。図8(a)〜(c)に示す図では、非切削方向への回転を開始するタイミングでトリガ信号である音をスピーカーから出力する例を示している。もちろん、トリガ信号である音をスピーカーから出力するタイミングは、非切削方向への回転を開始するタイミングに限らず、切削工具5を非切削方向へ駆動する途中や終了するタイミングでもよい。スピーカーからの音出力を停止するタイミングも同様である。
さらに、実施の形態1に係る根管形成器100に用いる駆動シーケンスの例を説明する。図9は、本発明の実施の形態1に係る根管形成器100に用いる駆動シーケンスの一例を説明するための図である。図9に示す実線の矢印は、切削工具の回転方向を示し、破線の矢印は駆動パターンを組み合わせたSET(後述)の繰返しを示している。図9においても、ヘッド部に取付ける切削工具の側から切削工具の先端方向を向いた場合を基準に回転方向が記載されている。そのため、時計回り方向の矢印が切削工具の切削方向の回転を、反時計回り方向の矢印が切削工具の非切削方向の回転をそれぞれ示している。
図9に示す駆動シーケンスは、SET1とSET2とで構成され、SET1が実行された後SET2が実行され、さらにSET2が実行された後SET1に戻り、その後交互に繰返し実行される。SET1は、図8(a)に示す基本的な駆動パターンを4回繰返すことで構成されている。SET2は、図8(b)に示す基本的な駆動パターンを4回繰返すことで構成されている。根管形成器100は、SET2が実行されている期間に、トリガ信号である音を出力し、SET1が実行されている期間にはトリガ信号である音を出力しない。SET2が実行されている期間は、非切削方向の駆動による回転角度が切削方向の駆動による回転角度より大きい駆動パターンが実行されている期間である。さらに、SET2が実行されている期間は、切削方向の駆動による回転角度と非切削方向の駆動による回転角度との差分を累積した累積差分値が、非切削方向の回転角度となる期間である。そのため、当該期間は、切削工具5が根管の内壁に食い込んでおらず、術者が切削工具5の上下動の動作を行いやすい期間である。
SET2が実行されている期間に音を出力するタイミングは、例えば、SET2で切削工具5の駆動を開始するタイミング(図中の丸印)である。これにより、根管形成器100は、SET2が実行されている期間に切り替わったことを示唆することができる。術者は、そのトリガ信号に従って切削工具5の上下動を行えばよい。なお、SET2が実行されている期間に音を出力するタイミングは、SET2が実行されている全期間であってもよい。つまり、SET2が実行されている期間は音を出し続け、SET1が実行されている期間は、音を出力しない(消音)。術者は音が出ている期間のいずれかのタイミングで切削工具5の上下動を行えばよい。SET2が実行されている期間に出力するトリガ信号は、音の出力ではなく、LEDの発光でもよい。
なお、根管形成器100は、SET2で切削工具5を駆動する場合、最初に非切削方向に180度回転する駆動を開始するタイミングでトリガ信号である音をスピーカーから出力する場合に限られない。根管形成器100は、SET2で切削工具5を駆動する場合、2回目以降の非切削方向に180度回転する駆動を開始するタイミングから選択してトリガ信号である音をスピーカーから出力してもよい。
以上のように、根管形成器100は、駆動パターンごとに切削方向の駆動による回転角度と非切削方向の駆動による回転角度との差分を累積した累積差分値が、非切削方向の回転角度となる駆動パターンが実行されている期間(SET2が実行されている期間)のいずれかのタイミングでトリガ信号である音をスピーカーから出力する。図9に示す図では、SET2の駆動が行われる期間が開始するタイミングでトリガ信号である音をスピーカーから出力する例を示している。そして、SET2が実行されている期間が終了するとともに、音出力は停止される。もちろん、トリガ信号である音をスピーカーから出力するタイミングは、SET2の駆動が行われる期間が開始するタイミングに限らず、SET2が実行されている全期間、当該期間の途中や終了するタイミングでもよい。
また、根管形成器100は、術者の動作を促すためのトリガ信号を駆動シーケンスに限定されず予め定められたタイミングに従い出力する構成も可能である。具体的に、根管形成器100は、一定の時間間隔のタイミングでトリガ信号を出力したり、非切削方向に切削工具が回転するタイミングでトリガ信号を出力したりするので、根管の拡大形成中に切削工具にかかる負担を軽減する術者の動作を行うタイミングを知らせることができる。
なお、術者の動作は、根管の拡大形成中に切削工具5にかかる負担を軽減する動作だけでなく、根管の拡大形成を安全に行うための動作や、根管の拡大形成を促進するための動作でもよい。具体的に、術者の動作は、切削工具5の位置を変更する動作だけでなく、切削工具5の駆動を変更する動作などであってもよい。さらに、切削工具5の位置を変更する動作は、切削工具5を歯冠側に引上げ戻す上下動の動作だけでなく、切削工具5を歯冠側に引上げるだけの動作、切削工具5を根尖側に押込む動作、切削工具5を左右に動かす動作などであってもよい。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態1で説明した、切削工具5の駆動中に術者の動作(例えば、ペッキングモーション)を促すためのトリガ信号(示唆情報)を出力する制御に加えて、切削工具5に加わる負荷に基づく制御を組み合わせた場合について説明する。なお、実施の形態2に係る根管形成器100は、図3〜図5に示した実施の形態1に係る根管形成器100と同じ構成を用いるため、同じ符号を用いて詳しい説明を繰返さない。
図10は、本発明の実施の形態2に係る根管形成器100において、切削工具5に加わる負荷に基づく制御を説明するためのフローチャートである。まず、制御部11は、予め設定されている駆動シーケンスを読込み、読込んだ駆動シーケンスのSET1で採用した駆動パターンから順に切削工具5を駆動する(ステップS101)。例えば、制御部11は、図9に示す駆動シーケンスが予め設定されており、駆動シーケンスのSET1およびSET2で採用した駆動パターンに従い切削工具5を駆動する。具体的に、制御部11は、駆動シーケンスにおいてSET1の駆動の結果として切削方向に180度×4回=360度、切削工具5を回転する。
次に、制御部11は、負荷検出部で検出した切削工具5に加わる負荷を取得する(ステップS102)。具体的に、制御部11は、切削工具5を切削方向に回して駆動したときに加わる負荷を負荷検出部で検出し、検出した負荷を取得する。次に、比較回路110は、取得した負荷と、設定部14で設定した所定負荷とを比較する(ステップS103)。これにより、駆動シーケンスでの駆動が、必要以上の負荷が切削工具5に加わっていることが検出できる。ここで、所定負荷は、切削工具5の種類によってそれぞれ設定され、切削工具5の破損を防ぐ目的を達成することができる値に設定される。
取得した負荷が所定負荷以上となると判断した場合(ステップS103:YES)、制御部11は、当該負荷を軽減するため、術者に切削工具の位置を変更する動作を促すための音(トリガ信号)を出力する制御を開始する(ステップS104)。つまり、実施の形態2に係る根管形成器100では、切削工具5の駆動を開始しても直ちに術者の動作を促すためのトリガ信号を出力する制御を開始するのではなく、切削工具5に所定負荷以上の負荷が加わった場合に術者の動作を促すためのトリガ信号を出力する制御を開始する。そのため、実施の形態2に係る根管形成器100では、切削工具にかかる負担を軽減する必要のある場合に、術者の動作を促すためのトリガ信号を出力することができる。ステップS104の処理で開始する音(トリガ信号)の出力は、図9で示したSET2の動作を開始するタイミング(図中の丸印)で行っても、図1および図2で示したタイミングで行ってもよい。
取得した負荷が所定負荷未満となると判断した場合(ステップS103:NO)、制御部11は、術者に切削工具の位置を変更する動作を促すための音(トリガ信号)を出力する制御を停止する(ステップS105)。なお、制御部11は、ステップS105の処理を行う前に音(トリガ信号)を出力する制御が停止している場合、ステップS115の処理で停止状態を継続する。
次に、制御部11は、駆動を終了する操作が操作部15から入力されているか否かを判断する(ステップS106)。駆動を終了する操作が操作部15から入力されている場合(ステップS106:YES)、制御部11は駆動および音出力を停止する(ステップS107)。駆動を終了する操作が操作部15から入力されていない場合(ステップS106:NO)、制御部11は、ステップS102の処理に進む。
以上のように、根管形成器100は、切削工具5に加わる負荷を検出する負荷検出部(負荷検出用抵抗13d)をさらに備え、負荷検出部で検出する負荷が所定負荷以上になる場合に、トリガ信号(例えば、音や光など)の出力を開始する。そのため、本実施の形態2に係る根管形成器100は、切削工具5に加わる負荷に応じて術者の動作を促すためのトリガ信号を出力することができ、切削工具5に加わる負荷を低減することが必要な場合にトリガ信号を適切に出力することができる。
なお、根管形成器100は、負荷検出部で検出する負荷が所定負荷以上になる場合に、トリガ信号(例えば、音や光など)の出力を開始するのではなく、出力するトリガ信号の種類を変更してもよい。例えば、根管形成器100は、負荷検出部で検出する負荷が所定負荷以上になる場合、音の種類(例えば、長さやトーンなど)を変更したり、一定の時間間隔のタイミングで出力していた音を駆動シーケンスに基づくタイミングで出力したりしてもよい。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態1で説明した、切削工具5の駆動中に術者の動作(例えば、ペッキングモーション)を促すためのトリガ信号(示唆情報)を出力する制御に加えて、根管長測定回路12から取得した切削工具5の位置(根管長測定回路12で得られる切削工具5の先端の根管内での位置(根尖位置からの位置))に基づく制御を組み合わせた場合について説明する。なお、本実施の形態3に係る根管形成器100は、図3〜図5に示した実施の形態1に係る根管形成器100と同じ構成を用いるため、同じ符号を用いて詳しい説明を繰返さない。
図11は、本発明の実施の形態3に係る根管形成器100において、切削工具5の位置に応じた制御を説明するためのフローチャートである。まず、制御部11は、予め設定されている駆動シーケンスを読込み、読込んだ第1駆動シーケンスのSET1で採用した駆動パターンから順に切削工具5を駆動する(ステップS111)。例えば、制御部11は、図9に示す駆動シーケンスが予め設定されており、駆動シーケンスのSET1およびSET2で採用した駆動パターンに従い切削工具5を駆動する。具体的に、制御部11は、駆動シーケンスにおいてSET1の駆動の結果として切削方向に180度×4回=360度、切削工具5を回転する。
次に、制御部11は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置(根尖位置からの位置)を取得する(ステップS112)。制御部11は、根管長測定回路12から取得した切削工具5の位置が所定位置に到達したか否かを判断する(ステップS113)。ここで、所定位置は、切削工具5の破損を防ぐ目的を達成することができる値に設定され、例えば根管の湾曲が始まる位置などで必要以上の負荷が切削工具5に加わる位置である。
取得した切削工具5の位置が所定位置に到達したと判断した場合(ステップS113:YES)、制御部11は、術者に切削工具の位置を変更する動作を促すための音(トリガ信号)を出力する制御を開始する(ステップS114)。つまり、実施の形態3に係る根管形成器100では、切削工具5の駆動を開始しても直ちに術者の動作を促すためのトリガ信号を出力する制御を開始するのではなく、切削工具5の位置が所定位置に到達した場合に術者の動作を促すためのトリガ信号を出力する制御を開始する。そのため、実施の形態3に係る根管形成器100では、切削工具にかかる負担を軽減する必要のあると思われる位置に切削工具5が到達した場合に、術者の動作を促すためのトリガ信号を出力することができる。ステップS114の処理で開始する音(トリガ信号)の出力は、図9で示したSET2の駆動を開始するタイミング(図中の丸印)で行っても、図1および図2で示したタイミングで行ってもよい。
取得した切削工具5の位置が所定位置に到達していない、あるいは通過したと判断した場合(ステップS113:NO)、制御部11は、術者に切削工具の位置を変更する動作を促すための音(トリガ信号)を出力する制御を停止する(ステップS115)。なお、制御部11は、ステップS115の処理を行う前に音(トリガ信号)を出力する制御が停止している場合、ステップS115の処理で停止状態を継続する。
次に、制御部11は、駆動を終了する操作が操作部15から入力されているか否かを判断する(ステップS116)。駆動を終了する操作が操作部15から入力されている場合(ステップS116:YES)、制御部11は駆動および音出力を停止する(ステップS117)。駆動を終了する操作が操作部15から入力されていない場合(ステップS116:NO)、制御部11は、ステップS112の処理に進む。
以上のように、根管形成器100は、切削工具5の先端の根管内での位置を検出する根管長測定回路12をさらに備え、根管長測定回路12で検出した位置が、術者が予め設定した所定位置に達した場合に、トリガ信号(例えば、音や光など)の出力を開始する。そのため、本実施の形態3に係る根管形成器100は、切削工具5の位置に応じて術者の動作を促すためのトリガ信号を出力することができ、切削工具5に加わる負荷を低減することが必要な位置でトリガ信号を適切に出力することができる。
なお、根管形成器100は、根管長測定回路12で検出した位置が所定位置に達した場合に、トリガ信号(例えば、音や光など)の出力を開始するのではなく、出力するトリガ信号の種類を変更してもよい。例えば、根管形成器100は、根管長測定回路12で検出した位置が所定位置に達した場合、音の種類(例えば、長さやトーンなど)を変更したり、一定の時間間隔のタイミングで出力していた音を駆動シーケンスに基づくタイミングで出力したりしてもよい。
(変形例)
さらに、実施の形態1〜3に係る根管形成器100では、ハンドピース1が、ホース61を介して、制御ボックス9に連結されている構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、コードレスタイプの根管形成器として構成してもよい。図12は、コードレスタイプの根管形成器の構成を示す概略図である。図12に示すコードレスタイプの根管形成器は、ハンドピース1の把持部4にバッテリーパック、マイクロモータ及び制御ボックスに相当する制御系を組み込み、各種操作部を把持部4の表面に設けてある。さらに、コードレスタイプの根管形成器には、把持部4に表示部16および図示していない報知部が設けてある。そのため、術者は、視線を大きく変えることなく、切削工具5を切削方向に駆動しているのか、非切削方向に駆動しているのか、現在の切削工具5の位置はどの程度か、切削工具5にかかっている負荷はどの程度か、回転数はいくらか、といった情報を表示部16で確認することができる。また、コードレスタイプの根管形成器であっても、報知部(例えば、スピーカー)から術者の動作を促すためのトリガ信号(示唆情報)を出力することができる。さらに、表示部16の色を変化させることなどで、術者の動作を促すためのトリガ信号を出力してもよい。図示していないが、口腔電極19a用のリード線19を把持部4より導出するよう構成してもよい。
また、実施の形態1〜3に係る根管形成器100では、切削工具5を駆動する動力源にマイクロモータ7を用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、エアモータなどの別の駆動源であってもよい。
実施の形態1〜3に係る根管形成器100では、駆動シーケンス、所定負荷、所定位置、基準負荷、および基準位置などの設定値を記憶したレシピのうちから少なくとも1つの設定値を図4に示す設定部14で設定する構成でもよい。例えば、設定部14は、患者の性別や身長などを選択することで予め定められたレシピから駆動シーケンスなどの設定値を自動的に設定する構成でもよい。また、設定部14は、術者の好みの駆動シーケンスなどの設定値を予めレシピとして記憶させたり、患者毎に最適な駆動シーケンスなどの設定値を予めレシピとして記憶させたりする構成でもよい。
さらに、実施の形態1〜3に係る根管形成器100では、ヘッド部2に保持する切削工具5の種類に応じて、駆動シーケンス、所定負荷、所定位置、基準負荷、および基準位置などの設定値を予めレシピとして設定部14に記憶させておき、術者がヘッド部2に保持させた切削工具5の種類に基づき記憶させてあるレシピを設定部14から読出すことで、駆動シーケンスなどの設定値を設定する構成でもよい。もちろん、設定部14は、ヘッド部2に切削工具5の種類を識別することができるセンサを設け、当該センサからの検出結果に基づき記憶させてあるレシピを読出すことで、駆動シーケンスなどの設定値を設定する構成でもよい。
また、実施の形態1〜3に係る根管形成器100の構成を適宜組み合わせて構成してもよい。例えば、実施の形態2と実施の形態3とを組み合わせた根管形成器100では、負荷検出部で検出した切削工具5に加わる負荷および根管長測定回路12で検出した切削工具5の位置に応じて、術者の動作を促すためのトリガ信号を出力する制御を開始してもよい。
さらに、実施の形態1〜3に係る根管形成器100では、術者の動作を促すためのトリガ信号(示唆情報)を出力するタイミングを、非切削方向に切削工具5の駆動を開始するタイミングであると説明したが、これに限定されない。例えば、根管形成器100は、術者の動作を促すためのトリガ信号を出力するタイミングを、切削工具5を非切削方向へ駆動する途中や終了するタイミングでもよい。また、根管形成器100は、術者の動作を促すためのトリガ信号を出力するタイミングを、切削方向に切削工具5の駆動を開始するタイミング、切削工具5を切削方向へ駆動する途中や終了するタイミングでもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。