以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る歯科用治療装置は、歯科用根管治療のハンドピースを組み込んだ根管拡大及び根管長測定システムを含む根管治療器である。しかし、本発明に係る歯科用治療装置は、根管治療器に限定されるものではなく、同様の構成を有する歯科用治療装置について適用することができる。
図1は、本発明の実施の形態1に係る根管治療器の外観の構成を示す概略図である。図2は、本発明の実施の形態1に係る根管治療器の機能の構成を示すブロック図である。図1に示す根管治療器100は、歯科用根管治療のためのハンドピース1、モータユニット6、制御ボックス9を含んでいる。
歯科用根管治療のハンドピース1は、ヘッド部2と、ヘッド部2に連接される細径のネック部3と、該ネック部3に連接され手指によって把持される把持部4とを備えている。そして、把持部4の基部には、ヘッド部2に保持される切削工具5を回転駆動させるためのモータユニット6が着脱自在に接続される。ハンドピース1にモータユニット6が連結された状態で歯科用のインスツルメント10を構成する。
モータユニット6は、図2に示すようにマイクロモータ7を内蔵し、該マイクロモータ7へ電源を供給する電源供給用リード線71および、後述する根管長測定回路12へ信号を伝送する信号用リード線8などを内装するホース61を介して、制御ボックス9に連結してある。ここで、信号用リード線8は、モータユニット6及びハンドピース1内を経て切削工具5と電気的に導通し、電気信号を伝達する導電体の一部である。なお、切削工具5は、根管長測定回路12の一方の電極となる。
制御ボックス9は、制御部11、根管長測定回路12、モータドライバ13、基準設定部14、操作部15、表示部16および報知部17などを備えている。なお、制御ボックス9は、図1に示すように、本体側部にインスツルメント10を不使用時に保持するためホルダ10aを取付けてある。また、制御ボックス9には、フートコントローラ18を制御部11に連結し、リード線19を根管長測定回路12に連結してある。リード線19は、ホース61の途中から分岐する形をとることもある。リード線19の先端には、患者の唇に掛けられる口腔電極19aを電気的に導通する状態で取付けてある。なお、口腔電極19aは、根管長測定回路12の他方の電極となる。
制御部11は、根管拡大及び根管長測定システム全体の制御を行なうもので、主要部はマイクロコンピュータで構成されている。制御部11には、根管長測定回路12、モータドライバ13、基準設定部14、操作部15、表示部16、報知部17およびフートコントローラ18を接続してある。制御部11は、切削工具5が切削対象物を切削する回転方向を正転、正転の逆回転方向を逆転とする場合に、正転と逆転とを繰返して切削工具5を駆動するツイスト駆動を行なうことができる。そして、制御部11は、正転での回転角および回転角速度(回転数)、逆転での回転角および回転角速度のそれぞれのパラメータを変更して、切削工具5を駆動することができる。なお、制御部11は、逆転での回転角または回転角速度を“0”にすることで切削工具5を正転して駆動する正転駆動や、正転での回転角または回転角速度を“0”にすることで切削工具5を逆転して駆動する逆転駆動も可能である。
ここで、回転角速度は、切削工具5の回転の速さを表わす量であり、2πラジアンで割ることで時間あたりの回転数となる。以降の実施の形態では、回転角速度を用いる代わりに、回転数を用いて切削工具5の回転の速さを表わす。なお、回転数の単位には、回毎分(rpm:revolutions per minute))を用いる。
根管長測定回路12は、歯牙の根管内に挿入した切削工具5を一方の電極、患者の唇に掛けた口腔電極19aを他方の電極として閉回路を構成する。そして、根管長測定回路12は、切削工具5と口腔電極19aとの間に電圧を印加し、切削工具5と口腔電極19aとの間のインピーダンスを計測することによって、歯牙の根尖位置から切削工具5の先端までの距離を測定することができる。切削工具5の先端が根尖位置に到達したことを根管長測定回路12が検出したとき、切削工具の挿入量、すなわち根管口から切削工具の先端までの距離を根管長とすることができる。なお、切削工具5と口腔電極19aとの間のインピーダンスを計測して、根管長を測定する電気的根管長測定方法は公知のものであり、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100には、公知になっているすべての電気的根管長測定方法を適用することができる。
モータドライバ13は、電源供給用リード線71を介してマイクロモータ7に接続し、制御部11からの制御信号に基づいて、マイクロモータ7に供給する電源を制御している。モータドライバ13は、マイクロモータ7に供給する電源を制御することで、マイクロモータ7の回転方向、回転数および回転角など、つまり切削工具5の回転方向、回転数および回転角などを制御することができる。
基準設定部14は、切削工具5の回転方向、回転数および回転角などを制御する基準を設定する。たとえば、基準設定部14は、根管長測定回路12を用いて予め根尖位置や根尖位置から所定距離にある位置を基準位置として設定しておき、切削工具5の先端がこの基準位置に達したとき、切削工具5の回転方向、回転数および回転角のパラメータを変更する。また、基準設定部14は、予め切削工具5が許容する負荷を基準負荷として設定しておき、切削工具5の負荷がこの基準負荷以上になったとき、切削工具5の回転方向、回転数および回転角のパラメータを変更する。
操作部15は、切削工具5の回転数および回転角のパラメータを設定する他、根管長測定を行なうか否かの選択なども設定することができる。また、操作部15は、正転駆動と逆転駆動との切換えや、正転駆動とツイスト駆動との切換えを手動で行なうことができる。
表示部16は、後述するように根管内での切削工具5の先端の位置や切削工具5の回転方向、回転数および回転角などを表示する。さらに、報知部17が使用者に対して報知するための情報を、表示部16に表示することもできる。
報知部17は、現在、制御部11で行なっている切削工具5の駆動状態を、光、音や振動などにより報知する。具体的に、報知部17は、切削工具5の駆動状態を報知するために、必要に応じてLED(Light Emitting Diode),スピーカーや振動子などを設け、通常駆動とツイスト駆動とで発光するLEDの色を変えたり、スピーカーから出力する音を変えたりする。なお、報知部17は、表示部16で、使用者に対して切削工具5の駆動状態を表示することができる場合、LED,スピーカーや振動子など別途設けなくてもよい。
フートコントローラ18は、マイクロモータ7による切削工具5の駆動制御を足踏操作によって行なう操作部である。なお、マイクロモータ7による切削工具5の駆動制御は、フートコントローラ18に限定されるものではなく、ハンドピース1の把持部4に操作スイッチ(不図示)を設け、この操作スイッチとフートコントローラ18とを併用して切削工具5の駆動制御を行なうようにしてもよい。また、例えば、フートコントローラ18の足踏操作がなされている状態で、さらに切削工具5が根管内に挿入されたことを根管長測定回路12が検知したことで、切削工具5の回転を開始するようにしてもよい。
なお、根管治療器100の制御ボックス9は、歯科用診療台の側部に設置するトレーテーブルやサイドテーブル上に載置して使用する構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、トレーテーブルやサイドテーブル内に制御ボックス9を組込んだ構成であっても良い。
次に、切削工具5の駆動制御を行なう根管治療器100の回路構成について、さらに詳しく説明する。図3は、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100の回路構成を示す回路図である。図3に示す根管治療器100には、切削工具5の駆動制御に関わるマイクロモータ7、制御部11、根管長測定回路12、モータドライバ13、および基準設定部14の部分について図示してある。
さらに、モータドライバ13は、トランジスタスイッチ13a、トランジスタドライバ回路13b、回転方向切換スイッチ13c、および負荷検出用抵抗13dを含んでいる。基準設定部14は、基準負荷設定用の可変抵抗14a、デューティ設定用の可変抵抗14b、および基準位置設定用の可変抵抗14cを含んでいる。なお、基準設定部14は、根管治療器100の主電源20、およびメインスイッチ21に接続してある。切削工具5は、図示していないが適宜の歯車機構等を介してマイクロモータ7に保持してある。
トランジスタドライバ回路13bは、制御部11のポート11aから出力する制御信号で作動し、トランジスタスイッチ13aのオン・オフを制御してマイクロモータ7を駆動する。マイクロモータ7は、回転方向切換スイッチ13cの状態に応じて正転または逆転する。制御部11のポート11aから出力する制御信号が、たとえば一定の周期で繰返されるパルス波形である場合、そのパルス波形の幅、すなわちデューティ比は、基準設定部14のデューティ設定用の可変抵抗14bによって調整される。マイクロモータ7は、このデューティ比に対応した回転数で切削工具5を駆動する。
回転方向切換スイッチ13cは、制御部11のポート11bから出力する制御信号で、切削工具5を正転して駆動するか、逆転して駆動するかを切換える。制御部11は、負荷検出用抵抗13dの抵抗値をポート11cに入力することで、切削工具5に加わる負荷を検出する。さらに、制御部11は、根管長測定回路12で測定した根管長をポート11dに入力する。負荷検出用抵抗13dおよび根管長測定回路12は、切削工具5の駆動状態を検出する駆動状態検出部として機能している。以上の構成によって、マイクロモータ7及び切削工具5を、正転駆動、逆転駆動、所定角度の正転と逆転を繰返すツイスト駆動といった種々の駆動方法で駆動させる。
図4は、ツイスト駆動する場合の切削工具5の回転方向を示した模式図である。図4に示すツイスト駆動では、切削工具5の先端方向を向いて切削工具5を右回りに回転させる正転と、左回りに回転させる逆転とを交互に行なう。ツイスト駆動では、たとえば、正転方向に回転角90度の回転と、逆転方向に回転角30度の回転とを交互に行なう。
次に、図1に示す表示部16に設ける液晶表示パネルの表示について説明する。図5は、図1に示す表示部16に設ける液晶表示パネルの表示例を示す図である。
図5に示す表示部16は、液晶表示パネルであり、測定した根管長を詳細に表示するための多数の要素を含むドット表示部52と、根管長をゾーン分けして段階的に表示するためのゾーン表示部54と、各ゾーンの境界を示す境界表示部56と、根尖までの到達率を表示する到達率表示部58とが設けてある。
ドット表示部52は、切削工具5の先端が根尖に近づくにつれ、上から下に向かって要素が順に表示されるようになっている。目盛「APEX」の位置が根尖の位置を表わし、当該目盛まで要素が到達したとき、切削工具5の先端が根尖の位置にほぼ到達したことを示す。
また、表示部16には、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷を表示するための多数の要素を含むドット表示部60と、負荷をゾーン分けして段階的に表示するためのゾーン表示部62とが設けてある。ドット表示部60は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が大きくなるに従って、上から下に向かって要素が順に表示される。
たとえば、ドット表示部60には、歯牙を切削しているときに加わる切削工具5の負荷を、斜線で示した要素60aで表示する。なお、ドット表示部60は、表示が頻繁に切換わるのを防ぐため、ピークホールド機能を有し、所定時間内に検出した負荷の最大値を一定時間表示するようにしてもよい。
また、ドット表示部60には、基準負荷設定用の可変抵抗14aで設定した基準負荷に対応する要素60bを表示してもよい。要素60bをドット表示部60に表示することで、基準負荷に対して、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷にどの程度マージンが存在しているのかを視覚化することができる。
さらに、表示部16には、切削工具5の回転数や切削工具5に加わる負荷を数値で表示する数値表示部64と、切削工具5の回転の向き(正転S、逆転R)および切削工具5の回転数の大小を表示する回転表示部68とが設けてある。
次に、本実施の形態1に係る根管治療器100の切削工具5の駆動について説明する。本実施の形態1に係る根管治療器100では、駆動開始時、切削工具5をツイスト駆動ではなく正転駆動で駆動し、切削工具5に加わる負荷が基準負荷A(第2基準負荷)以上になるとツイスト駆動で駆動する。根管治療器100は、ツイスト駆動で駆動後、切削工具5に加わる負荷が基準負荷B以下となるように、負荷が大きくなるにつれて、正転での回転角および回転角速度のうちの少なくとも1つのパラメータが小さくなるように、あるいは逆転での回転角および回転角速度のうちの少なくとも1つのパラメータが大きくなるように変更する。そして、根管治療器100は、切削工具5に加わる負荷が基準負荷C(第1基準負荷)以上になると逆転駆動で駆動、または駆動を停止する。負荷の値は、基準負荷A、基準負荷B、基準負荷Cの順で大きくなる。
図6は、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100の切削工具5の駆動の一例を説明するためのフローチャートである。まず、制御部11は、正転方向の回転角(以下、単に正転回転角ともいう)を90度、逆転方向の回転角(以下、単に逆転回転角ともいう)を0度に設定して、切削工具5を駆動する(ステップS61)。なお、逆転回転角を0度に設定してあるので、根管治療器100は、切削工具5を正転方向に連続して回転して、正転駆動を行なう。また、正転方向の回転数(以下、単に正転回転数ともいう)および逆転方向の回転数(以下、単に逆転回転数ともいう)は、制御部11で設定してある初期値を用い、図6に示すフローチャート内の処理では変更しない。
次に、制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷A以上か否かを判定する(ステップS62)。基準負荷Aは、切削工具5の駆動を正転駆動からツイスト駆動に変更する基準値であり、基準設定部14の基準負荷設定用の可変抵抗14aを用いて予め設定してある。そのため、根管治療器100は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷A未満のとき、切削工具5を正転のみで駆動する。
制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷A以上であると判定した場合(ステップS62:YES)、正転回転角を90度、逆転回転角を30度に設定して、切削工具5を駆動する(ステップS63)。つまり、根管治療器100は、切削工具5に加わる負荷を小さくするように、逆転回転角を0度から30度に大きくして切削工具5をツイスト駆動で駆動する。制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷A未満であると判定した場合(ステップS62:NO)、ステップS61で設定したパラメータを維持して、切削工具5の駆動を継続する。
次に、制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷B以上か否かを判定する(ステップS64)。基準負荷Bは、過剰な切削を行なうことなく安全に根管を切削拡大するために、切削工具5に加えることができる負荷の上限値であり、基準設定部14の基準負荷設定用の可変抵抗14aを用いて予め設定してある。また、基準負荷Bは、図5に示す表示部16において、要素60bとして表示される。
制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷B以上であると判定した場合(ステップS64:YES)、正転回転角を60度、逆転回転角を60度に設定して、切削工具5を駆動する(ステップS65)。つまり、根管治療器100は、切削工具5に加わる負荷を基準負荷Bより小さくするように、正転回転角を90度から60度に小さくし、逆転回転角を30度から60度に大きくして切削工具5をツイスト駆動で駆動する。制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷B未満であると判定した場合(ステップS64:NO)、ステップS63で設定したパラメータを維持して、切削工具5の駆動を継続する。
次に、制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷B以上か否かを判定する(ステップS66)。制御部11は、ステップS65で変更したパラメータを維持して、切削工具5を駆動した後、さらに切削工具5に負荷が加わることがあり、切削工具5に加わる負荷が基準負荷B以上であるか否かを判定する必要がある。
制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷B以上であると判定した場合(ステップS66:YES)、正転回転角を30度、逆転回転角を90度に設定して、切削工具5を駆動する(ステップS67)。つまり、根管治療器100は、切削工具5に加わる負荷を基準負荷Bより小さくするように、正転回転角を60度から30度に小さくし、逆転回転角を60度から90度に大きくして切削工具5をツイスト駆動で駆動する。制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷B未満であると判定した場合(ステップS66:NO)、ステップS65で設定したパラメータを維持して、切削工具5の駆動を継続する。
次に、制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷C以上か否かを判定する(ステップS68)。基準負荷Cは、切削工具5が破損する可能性が高くなる負荷の限界値であり、基準設定部14の基準負荷設定用の可変抵抗14aを用いて予め設定してある。制御部11は、パラメータを変更して切削工具5を駆動しても、切削工具5に加わる負荷が基準負荷C以上となる場合、切削工具5が破損するのを回避する駆動を行なう。
制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷C以上であると判定した場合(ステップS68:YES)、正転回転角を0度、逆転回転角を90度に設定して、切削工具5を駆動する(ステップS69)。正転回転角を0度に設定してあるので、根管治療器100は、切削工具5を逆転方向に連続して回転して、逆転駆動を行なう。つまり、根管治療器100は、切削工具5が破損するのを回避するために切削工具5を逆転駆動で駆動する。なお、根管治療器100は、切削工具5が破損するのを回避するために切削工具5の駆動を停止してもよい。制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷C未満であると判定した場合(ステップS68:NO)、ステップS67で設定したパラメータを維持して、切削工具5の駆動を継続する。
ステップS61〜ステップS69において、根管治療器100は、回転角のパラメータを段階的に変更して切削工具5の駆動する例を示したが、これに限定されるものではなく、切削工具5に加わる負荷に応じて、回転角のパラメータを連続して変更してもよい。たとえば、制御部11は、切削工具5に加わる負荷が基準負荷Aから基準負荷Cまでの変化に応じて、正転回転角または逆転回転角のパラメータを90度から0度まで連続して変更する。また、正転回転角、逆転回転角それぞれの上限値は90度に限定されるものではなく、90度以上の回転角とそれに応じた負荷の設定を行ってもよい。
図6に示すフローチャートでは、制御部11が切削工具5に加わる負荷に応じて、回転角のパラメータを変更する例を説明したが、制御部11が切削工具5に加わる負荷に応じて、回転数のパラメータを変更してもよい。
図7は、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100の切削工具5の駆動の別の一例を説明するためのフローチャートである。まず、制御部11は、正転回転数を400rpm、逆転回転数を0rpmに設定して、切削工具5を駆動する(ステップS71)。なお、逆転回転数を0rpmに設定してあるので、根管治療器100は、切削工具5を正転方向に連続して回転して、正転駆動を行なう。また、正転回転角および逆転回転角は、制御部11で設定してある初期値を用い、図7に示すフローチャート内の処理では変更しない。
次に、制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷A以上か否かを判定する(ステップS72)。根管治療器100は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷A未満のとき、切削工具5を正転のみで駆動する。
制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷A以上であると判定した場合(ステップS72:YES)、正転回転数を400rpm、逆転回転数を100rpmに設定して、切削工具5を駆動する(ステップS73)。つまり、根管治療器100は、切削工具5に加わる負荷を小さくするように、逆転回転数を0rpmから100rpmに大きくして切削工具5をツイスト駆動で駆動する。制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷A未満であると判定した場合(ステップS72:NO)、ステップS71で設定したパラメータを維持して、切削工具5の駆動を継続する。
次に、制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷B以上か否かを判定する(ステップS74)。
制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷B以上であると判定した場合(ステップS74:YES)、正転回転数を200rpm、逆転回転数を200rpmに設定して、切削工具5を駆動する(ステップS75)。つまり、根管治療器100は、切削工具5に加わる負荷を基準負荷Bより小さくするように、正転回転数を400rpmから200rpmに小さくし、逆転回転数を100rpmから200rpmに大きくして切削工具5をツイスト駆動で駆動する。制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷B未満であると判定した場合(ステップS74:NO)、ステップS73で設定したパラメータを維持して、切削工具5の駆動を継続する。
次に、制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷B以上か否かを判定する(ステップS76)。制御部11は、ステップS75で変更したパラメータを維持して、切削工具5を駆動した後、さらに切削工具5に負荷が加わることがあり、切削工具5に加わる負荷が基準負荷B以上であるか否かを判定する必要がある。
制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷B以上であると判定した場合(ステップS76:YES)、正転回転数を100rpm、逆転回転数を400rpmに設定して、切削工具5を駆動する(ステップS77)。つまり、根管治療器100は、切削工具5に加わる負荷を基準負荷Bより小さくするように、正転回転数を200rpmから100rpmに小さくし、逆転回転数を200rpmから400rpmに大きくして切削工具5をツイスト駆動で駆動する。制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷B未満であると判定した場合(ステップS76:NO)、ステップS75で設定したパラメータを維持して、切削工具5の駆動を継続する。
次に、制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷C以上か否かを判定する(ステップS78)。制御部11は、パラメータを変更して切削工具5を駆動しても、切削工具5に加わる負荷が基準負荷C以上となる場合、切削工具5が破損するのを回避する駆動を行なう。
制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷C以上であると判定した場合(ステップS78:YES)、正転回転数を0rpm、逆転回転数を400rpmに設定して、切削工具5を駆動する(ステップS79)。正転回転数を0rpmに設定してあるので、根管治療器100は、切削工具5を逆転方向に連続して回転して、逆転駆動を行なう。つまり、根管治療器100は、切削工具5が破損するのを回避するために切削工具5を逆転駆動で駆動する。なお、根管治療器100は、切削工具5が破損するのを回避するために切削工具5の駆動を停止してもよい。制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷C未満であると判定した場合(ステップS78:NO)、ステップS77で設定したパラメータを維持して、切削工具5の駆動を継続する。
ステップS71〜ステップS79において、根管治療器100は、回転数のパラメータを段階的に変更して切削工具5の駆動する例を示したが、これに限定されるものではなく、切削工具5に加わる負荷に応じて、回転数のパラメータを連続して変更してもよい。たとえば、制御部11は、切削工具5に加わる負荷が基準負荷Aから基準負荷Cまでの変化に応じて、正転回転数または逆転回転数のパラメータを400rpmから0rpmまで連続して変更する。また、正転回転数、逆転回転数それぞれの上限値は400rpmに限定されるものではなく、400rpm以上の回転角とそれに応じた負荷の設定を行なってもよい。
図6に示すフローチャートでは、制御部11が切削工具5に加わる負荷に応じて、回転角のパラメータのみを変更する例を、図7に示すフローチャートでは、制御部11が切削工具5に加わる負荷に応じて、回転数のパラメータのみを変更する例をそれぞれ説明したが、制御部11が切削工具5に加わる負荷に応じて、回転角および回転数のパラメータをともに変更してもよい。
図8は、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100の切削工具5の駆動のさらに別の一例を説明するためのフローチャートである。まず、制御部11は、正転回転角を90度、逆転回転角を0度、正転回転数を400rpm、逆転回転数を0rpmに設定して、切削工具5を駆動する(ステップS81)。なお、逆転回転角を0度および逆転回転数を0rpmに設定してあるので、根管治療器100は、切削工具5を正転方向に連続して回転して、正転駆動を行なう。
次に、制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷A以上か否かを判定する(ステップS82)。根管治療器100は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷A未満のとき、切削工具5を正転のみで駆動する。
制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷A以上であると判定した場合(ステップS82:YES)、正転回転角を90度、逆転回転角を30度、正転回転数を400rpm、逆転回転数を100rpmに設定して、切削工具5を駆動する(ステップS83)。つまり、根管治療器100は、切削工具5に加わる負荷を小さくするように、逆転回転角を0度から30度に大きくし、逆転回転数を0rpmから100rpmに大きくして切削工具5をツイスト駆動で駆動する。制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷A未満であると判定した場合(ステップS82:NO)、ステップS81で設定したパラメータを維持して、切削工具5の駆動を継続する。
次に、制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷B以上か否かを判定する(ステップS84)。
制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷B以上であると判定した場合(ステップS84:YES)、正転回転角を60度、逆転回転角を60度、正転回転数を200rpm、逆転回転数を200rpmに設定して、切削工具5を駆動する(ステップS85)。つまり、根管治療器100は、切削工具5に加わる負荷を基準負荷Bより小さくするように、正転回転角を90度から60度に小さくし、正転回転数を400rpmから200rpmに小さくし、逆転回転角を30度から60度に大きくし、逆転回転数を100rpmから200rpmに大きくして切削工具5をツイスト駆動で駆動する。制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷B未満であると判定した場合(ステップS84:NO)、ステップS83で設定したパラメータを維持して、切削工具5の駆動を継続する。
次に、制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷B以上か否かを判定する(ステップS86)。制御部11は、ステップS85で変更したパラメータを維持して、切削工具5を駆動した後、さらに切削工具5に負荷が加わることがあり、切削工具5に加わる負荷が基準負荷B以上であるか否かを判定する必要がある。
制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷B以上であると判定した場合(ステップS86:YES)、正転回転角を30度、逆転回転角を90度、正転回転数を100rpm、逆転回転数を400rpmに設定して、切削工具5を駆動する(ステップS87)。つまり、根管治療器100は、切削工具5に加わる負荷を基準負荷Bより小さくするように、正転回転角を60度から30度に小さくし、正転回転数を200rpmから100rpmに小さくし、逆転回転角を60度から90度に大きくし、逆転回転数を200rpmから400rpmに大きくして切削工具5をツイスト駆動で駆動する。制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷B未満であると判定した場合(ステップS86:NO)、ステップS85で設定したパラメータを維持して、切削工具5の駆動を継続する。
次に、制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷C以上か否かを判定する(ステップS88)。制御部11は、パラメータを変更して切削工具5を駆動しても、切削工具5に加わる負荷が基準負荷C以上となる場合、切削工具5が破損するのを回避する駆動を行なう。
制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷C以上であると判定した場合(ステップS88:YES)、正転回転角を0度、逆転回転角を90度、正転回転数を0rpm、逆転回転数を400rpmに設定して、切削工具5を駆動する(ステップS89)。正転回転角を0度および正転回転数を0rpmに設定してあるので、根管治療器100は、切削工具5を逆転方向に連続して回転して、逆転駆動を行なう。つまり、根管治療器100は、切削工具5が破損するのを回避するために切削工具5を逆転駆動で駆動する。なお、根管治療器100は、切削工具5が破損するのを回避するために切削工具5の駆動を停止してもよい。制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷C未満であると判定した場合(ステップS88:NO)、ステップS87で設定したパラメータを維持して、切削工具5の駆動を継続する。
ステップS81〜ステップS89において、根管治療器100は、回転角および回転数のパラメータを段階的に変更して切削工具5の駆動する例を示したが、これに限定されるものではなく、切削工具5に加わる負荷に応じて、回転角および回転数のパラメータを連続して変更してもよい。たとえば、制御部11は、切削工具5に加わる負荷が基準負荷Aから基準負荷Cまでの変化に応じて、正転回転角または逆転回転角のパラメータを90度から0度まで、正転回転数または逆転回転数のパラメータを400rpmから0rpmまでそれぞれ連続して変更する。また、正転回転角、逆転回転角それぞれの上限値は90度に限定されるものではなく、正転回点数、逆転回転数それぞれの上限値も400rpmに限定されるものではない。
図6〜図8に示すフローチャートでは、切削工具5に加わる負荷に応じて、回転角のパラメータのみを変更する場合、回転数のパラメータのみを変更する場合、回転角および回転数のパラメータをともに変更する場合について説明したが、これに限定されるものではない。
図9は、切削工具5に加わる負荷に応じて、変更するパラメータの組合わせを示した図である。図9に示す設定1では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角のみ小さくする。設定2では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転数のみ小さくする。設定3では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角および正回転数を小さくする。
設定4では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、逆転回転角のみ大きくする。設定5では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、逆転回転数のみ大きくする。設定6では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、逆転回転角および逆回転数を大きくする。
設定7(図6に示すフローチャートの場合)では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角のみ小さくし、逆転回転角のみ大きくする。設定8では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角のみ小さくし、逆転回転数のみ大きくする。設定9では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角のみ小さくし、逆転回転角および逆回転数を大きくする。
設定10では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転数のみ小さくし、逆転回転角のみ大きくする。設定11(図7に示すフローチャートの場合)では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転数のみ小さくし、逆転回転数のみ大きくする。設定12では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転数のみ小さくし、逆転回転角および逆転回転数を大きくする。
設定13では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角および正転回転数を小さくし、逆転回転角のみ大きくする。設定14では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角および正転回転数を小さくし、逆転回転数のみ大きくする。設定15(図8に示すフローチャートの場合)では、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角および正転回転数を小さくし、逆転回転角および逆転回転数を大きくする。
前述の説明では、制御部11は、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角および正転回転数のうちの少なくとも1つのパラメータが小さくなるように、あるいは逆転回転角および逆転回転数のうちの少なくとも1つのパラメータが大きくなるように変更すると説明した。
しかし、制御部11は、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角に対して逆転回転角が大きくなるように、および/または正転回転数に対して逆転回転数が大きくなるように、正転回転角および正転回転数、逆転回転角および逆転回転数のうちの少なくとも1つのパラメータを変更してもよい。つまり、制御部11は、図6に示したステップS67、図7に示したステップS77のようにパラメータを変更することで、切削工具5に加わる負荷を小さくすることができる。
図10は、切削工具5に加わる負荷に応じて、変更するパラメータの関係を示した図である。図10に示す設定Aでは、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角に対して逆転回転角が大きくなるように、正転回転角および逆転回転角のうちの少なくとも1つのパラメータを変更する。たとえば、制御部11は、正転回転角が60度、逆転回転角が30度で切削工具5を駆動している場合、正転回転角に対して逆転回転角が大きくなれば、正転回転角を20度に変更しても、逆転回転角を70度に変更しても、正転回転角を30度および逆転回転角を70度に変更してもよい。
設定Bでは、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転数に対して逆転回転数が大きくなるように、正転回転数および逆転回転数のうちの少なくとも1つのパラメータを変更する。たとえば、制御部11は、正転回転数が200rpm、逆転回転数が100rpmで切削工具5を駆動している場合、正転回転数に対して逆転回転数が大きくなれば、正転回転数を100rpmに変更しても、逆転回転数を300rpmに変更しても、正転回転数を100rpmおよび逆転回転数を300rpmに変更してもよい。
設定Cでは、制御部11が、切削工具5に加わる負荷が大きくなるにつれて、正転回転角に対して逆転回転角が大きくなるように、および正転回転数に対して逆転回転数が大きくなるように、正転回転角および逆転回転角、正転回転数および逆転回転数のうちの少なくとも1つのパラメータを変更する。たとえば、制御部11は、正転回転角が60度、逆転回転角が30度、正転回転数が200rpm、逆転回転数が100rpmで切削工具5を駆動している場合、正転回転角に対して逆転回転角が大きくなり、および正転回転数に対して逆転回転数が大きくなれば、正転回転角を20度および正転回転数を100rpmに変更しても、逆転回転角を70度および逆転回転数を300rpmに変更しても、正転回転角を30度および逆転回転角を70度、正転回転数を100rpmおよび逆転回転数を300rpmに変更してもよい。
以上のように、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100は、負荷検出用抵抗13dで検出した切削工具5に加わる負荷に応じて、正転回転角および正転回転数、逆転回転角および逆転回転数のうち少なくとも1つのパラメータを変更する。そのため、根管治療器100は、ツイスト駆動で切削工具5を駆動する場合であっても、通常駆動で切削工具5を駆動する場合と同じように、切削工具5に加わる負荷が適切な範囲となるように当該負荷を小さくすることができ、切削工具5の破損や過剰な切削を防止して、安全に切削することができる。
なお、図6〜図8に示すフローチャートにおいて、根管治療器100は、駆動開始時に切削工具5を正転駆動で駆動し、その後ツイスト駆動に駆動を切換える場合について説明したが、これに限定されるものではなく、駆動開始時から切削工具5をツイスト駆動で駆動してもよい。
また、制御部11は、切削工具5に加わる応力を適切な範囲に抑えることができるのであれば、切削工具5に加わる負荷が小さくなる場合、正転回転角および正転回転数のうちの少なくとも1つのパラメータが大きくなるように、あるいは逆転回転角および逆転回転数のうちの少なくとも1つのパラメータが小さくなるように変更してもよい。
(実施の形態2)
実施の形態1では、負荷検出用抵抗13dで検出した切削工具5に加わる負荷に応じて、正転回転角および正転回転数、逆転回転角および逆転回転数のうち少なくとも1つのパラメータを変更する根管治療器100について説明した。しかし、正転回転角などのパラメータを変更するために参照する切削工具の駆動状態は、切削工具5に加わる負荷に限定されるものではなく、根管長測定回路12で得られる切削工具5の先端の根管内での位置(以下、単に切削工具5の位置ともいう)であってもよい。本実施の形態2に係る根管治療器は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置に応じて、正転回転角および正転回転数、逆転回転角および逆転回転数のうち少なくとも1つのパラメータを変更する。
なお、実施の形態2に係る根管治療器は、図1〜図3に示した実施の形態1に係る根管治療器100と同じ構成を用いるため、同じ符号を用いて詳しい説明を繰返さない。
次に、本実施の形態2に係る根管治療器100の切削工具5の駆動について説明する。本実施の形態2に係る根管治療器100では、駆動開始時、切削工具5をツイスト駆動ではなく正転駆動で駆動し、切削工具5の位置が基準位置A(第2基準位置)に達するとツイスト駆動で駆動する。根管治療器100は、ツイスト駆動で駆動後、切削工具5の位置が基準位置B,Cと変化するにつれて、正転での回転角および回転角速度のうちの少なくとも1つのパラメータが小さくなるように、あるいは逆転での回転角および回転角速度のうちの少なくとも1つのパラメータが大きくなるように変更する。そして、根管治療器100は、切削工具5の位置が基準位置D(第1基準位置)に達すると逆転駆動で駆動、または駆動を停止する。切削工具5の位置は、手前から根尖の方向に、基準位置A、基準位置B、基準位置C、基準位置Dの順で並んでいる。
図11は、本発明の実施の形態2に係る根管治療器100の切削工具5の駆動の一例を説明するためのフローチャートである。まず、制御部11は、正転回転角を90度、逆転回転角を0度、正転回転数を400rpm、逆転回転数を0rpmに設定して、切削工具5を駆動する(ステップS111)。なお、逆転回転角を0度および逆転回転数を0rpmに設定してあるので、根管治療器100は、切削工具5を正転方向に連続して回転して、正転駆動を行なう。
次に、制御部11は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置が基準位置Aに達したか否かを判定する(ステップS112)。根管治療器100は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置が基準位置Aに達していないとき、切削工具5を正転のみで駆動を行なう。
制御部11は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置が基準位置Aに達したと判定した場合(ステップS112:YES)、正転回転角を90度、逆転回転角を30度、正転回転数を400rpm、逆転回転数を100rpmに設定して、切削工具5を駆動する(ステップS113)。つまり、根管治療器100は、切削工具5の位置に応じて切削工具5に加わる負荷が適切な範囲となるように、逆転回転角を0度から30度に大きくし、逆転回転数を0rpmから100rpmに大きくして切削工具5をツイスト駆動で駆動する。制御部11は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置が基準位置Aに達していないと判定した場合(ステップS112:NO)、ステップS111で設定したパラメータを維持して、切削工具5の駆動を継続する。
次に、制御部11は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置が基準位置Bに達したか否かを判定する(ステップS114)。基準位置Bは、基準位置Aよりも根尖に近い位置であり、基準位置Aで切削工具5に加わる負荷よりも、当該位置で切削工具5に加わる負荷の方が大きくなる。
制御部11は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置が基準位置Bに達したと判定した場合(ステップS114:YES)、正転回転角を60度、逆転回転角を60度、正転回転数を200rpm、逆転回転数を200rpmに設定して、切削工具5を駆動する(ステップS115)。つまり、根管治療器100は、切削工具5の位置に応じて切削工具5に加わる負荷が適切な範囲となるように、正転回転角を90度から60度に小さくし、正転回転数を400rpmから200rpmに小さくし、逆転回転角を30度から60度に大きくし、逆転回転数を100rpmから200rpmに大きくして切削工具5をツイスト駆動で駆動する。制御部11は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置が基準位置Bに達していないと判定した場合(ステップS114:NO)、ステップS113で設定したパラメータを維持して、切削工具5の駆動を継続する。
次に、制御部11は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置が基準位置Cに達したか否かを判定する(ステップS116)。基準位置Cは、基準位置Bよりも根尖に近い位置であり、基準位置Bで切削工具5に加わる負荷よりも、当該位置で切削工具5に加わる負荷の方が大きくなる。
制御部11は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置が基準位置Cに達したと判定した場合(ステップS116:YES)、正転回転角を30度、逆転回転角を90度、正転回転数を100rpm、逆転回転数を400rpmに設定して、切削工具5を駆動する(ステップS117)。つまり、根管治療器100は、切削工具5の位置に応じて切削工具5に加わる負荷が適切な範囲となるように、正転回転角を60度から30度に小さくし、正転回転数を200rpmから100rpmに小さくし、逆転回転角を60度から90度に大きくし、逆転回転数を200rpmから400rpmに大きくして切削工具5をツイスト駆動で駆動する。制御部11は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置が基準位置Cに達していないと判定した場合(ステップS116:NO)、ステップS115で設定したパラメータを維持して、切削工具5の駆動を継続する。
次に、制御部11は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置が基準位置Dに達したか否かを判定する(ステップS118)。基準位置Dは、根尖の位置を表わし、図5に示す目盛「APEX」の位置である。制御部11は、根尖の位置に達した場合、根尖方向に引き込まれる力を軽減してそれ以上根管を切削拡大しないように、切削工具5の駆動を行なう。
制御部11は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置が基準位置Dに達したと判定した場合(ステップS118:YES)、正転回転角を0度、逆転回転角を90度、正転回転数を0rpm、逆転回転数を400rpmに設定して、切削工具5を駆動する(ステップS119)。正転回転角を0度および正転回転数を0rpmに設定してあるので、根管治療器100は、切削工具5を逆転方向に連続して回転して、逆転駆動を行なう。つまり、根管治療器100は、それ以上根管を切削拡大しないように切削工具5を逆転駆動で駆動する。なお、根管治療器100は、それ以上根管を切削拡大しないように切削工具5の駆動を停止してもよい。制御部11は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置が基準位置Dに達していないと判定した場合(ステップS118:NO)、ステップS117で設定したパラメータを維持して、切削工具5の駆動を継続する。
ステップS111〜ステップS119において、根管治療器100は、回転角および回転数のパラメータを段階的に変更して切削工具5の駆動する例を示したが、これに限定されるものではなく、切削工具5の位置に応じて、回転角および回転数のパラメータを連続して変更してもよい。たとえば、制御部11は、切削工具5の位置が基準位置Aから基準位置Cまでの変化に応じて、正転回転角または逆転回転角のパラメータを90度から0度まで、正転回転数または逆転回転数のパラメータを400rpmから0rpmまでそれぞれ連続して変更する。また、正転回転角、逆転回転角それぞれの上限値は90度に限定されるものではなく、正転回点数、逆転回転数それぞれの上限値も400rpmに限定されるものではない。
図11に示すフローチャートでは、切削工具5の位置に応じて、回転角および回転数のパラメータをともに変更する場合について説明したが、これに限定されるものではない。実施の形態1と同様、本実施の形態2に係る根管治療器100でも、切削工具5の位置に応じて、図9、図10に示すようにパラメータを変更してもよい。
以上のように、本発明の実施の形態2に係る根管治療器100は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置に応じて、正転回転角および正転回転数、逆転回転角および逆転回転数のうち少なくとも1つのパラメータを変更する。そのため、本発明の実施の形態2に係る根管治療器100は、ツイスト駆動で切削工具5を駆動する場合であっても、通常駆動で切削工具5を駆動する場合と同じように、切削工具5に加わる負荷が適切な範囲となるように当該負荷を小さくすることができ、切削工具5の破損や過剰な切削を防止することができる。さらに、本発明の実施の形態2に係る根管治療器100は、根尖に近づくにつれて、根尖方向に引き込まれる力を軽減して安全に切削することができる。
(実施の形態3)
正転回転角などのパラメータを変更するために参照する切削工具の駆動状態は、切削工具5に加わる負荷と、切削工具5の位置とを組合せてもよい。本実施の形態3に係る根管治療器は、負荷検出用抵抗13dで検出した切削工具5に加わる負荷、および根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置に応じて、正転回転角および正転回転数、逆転回転角および逆転回転数のうち少なくとも1つのパラメータを変更する。
なお、実施の形態3に係る根管治療器は、図1〜図3に示した実施の形態1に係る根管治療器100と同じ構成を用いるため、同じ符号を用いて詳しい説明を繰返さない。
次に、本実施の形態3に係る根管治療器100の切削工具5の駆動について説明する。本実施の形態3に係る根管治療器100では、駆動開始時、切削工具5をツイスト駆動ではなく正転駆動で駆動し、切削工具5に加わる負荷が基準負荷A(第2基準負荷)以上、または切削工具5の位置が基準位置A(第2基準位置)に達するとツイスト駆動で駆動する。根管治療器100は、ツイスト駆動で駆動後、切削工具5に加わる負荷が基準負荷B以下となるように、負荷が大きくなるにつれて、正転での回転角および回転角速度のうちの少なくとも1つのパラメータが小さくなるように、あるいは逆転での回転角および回転角速度のうちの少なくとも1つのパラメータが大きくなるように変更する。そして、根管治療器100は、切削工具5に加わる負荷が基準負荷C(第1基準負荷)以上、または切削工具5の位置が基準位置D(第1基準位置)に達すると逆転駆動で駆動、または駆動を停止する。
図12は、本発明の実施の形態3に係る根管治療器100の切削工具5の駆動の一例を説明するためのフローチャートである。まず、制御部11は、正転回転角を90度、逆転回転角を0度、正転回転数を400rpm、逆転回転数を0rpmに設定して、切削工具5を駆動する(ステップS121)。なお、逆転回転角を0度および逆転回転数を0rpmに設定してあるので、根管治療器100は、切削工具5を正転方向に連続して回転して、正転駆動を行なう。
次に、制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷A以上か否かを判定する(ステップS122)。
制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷A以上であると判定した場合(ステップS122:YES)、正転回転角を90度、逆転回転角を30度、正転回転数を400rpm、逆転回転数を100rpmに設定して、切削工具5を駆動する(ステップS124)。つまり、根管治療器100は、切削工具5に加わる負荷が適切な範囲となるように、逆転回転角を0度から30度に大きくし、逆転回転数を0rpmから100rpmに大きくして切削工具5をツイスト駆動で駆動する。
制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷A未満であると判定した場合(ステップS122:NO)、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置が基準位置Aに達したか否かを判定する(ステップS123)。
制御部11は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置が基準位置Aに達したと判定した場合(ステップS123:YES)、正転回転角を90度、逆転回転角を30度、正転回転数を400rpm、逆転回転数を100rpmに設定して、切削工具5を駆動する(ステップS124)。制御部11は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置が基準位置Aに達していないと判定した場合(ステップS123:NO)、ステップS121で設定したパラメータを維持して、切削工具5の駆動を継続する。
次に、制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷B以上か否かを判定する(ステップS125)。
制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷B以上であると判定した場合(ステップS125:YES)、正転回転角を30度、逆転回転角を90度、正転回転数を100rpm、逆転回転数を400rpmに設定して、切削工具5を駆動する(ステップS127)。つまり、根管治療器100は、切削工具5に加わる負荷が適切な範囲となるように、正転回転角を90度から30度に小さくし、正転回転数を400rpmから100rpmに小さくし、逆転回転角を30度から90度に大きくし、逆転回転数を100rpmから400rpmに大きくして切削工具5をツイスト駆動で駆動する。
制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷B未満であると判定した場合(ステップS125:NO)、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置が基準位置Dに達したか否かを判定する(ステップS126)。
制御部11は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置が基準位置Dに達したと判定した場合(ステップS126:YES)、正転回転角を0度、逆転回転角を90度、正転回転数を0rpm、逆転回転数を400rpmに設定して、切削工具5を駆動する(ステップS130)。正転回転角を0度および正転回転数を0rpmに設定してあるので、根管治療器100は、切削工具5を逆転方向に連続して駆動し、逆転駆動を行なう。つまり、根管治療器100は、それ以上根管を切削拡大しないように切削工具5の駆動を逆転駆動で駆動する。なお、根管治療器100は、それ以上根管を切削拡大しないように切削工具5の駆動を停止してもよい。制御部11は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置が基準位置Dに達していないと判定した場合(ステップS126:NO)、ステップS124で設定したパラメータを維持して、切削工具5の駆動を継続する。
制御部11が、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷B以上であると判定し(ステップS125:YES)、正転回転角を30度、逆転回転角を90度、正転回転数を100rpm、逆転回転数を400rpmに設定した(ステップS127)後に、制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷C以上か否かを判定する(ステップS128)。制御部11は、パラメータを変更して切削工具5を駆動しても、切削工具5に加わる負荷が基準負荷C以上となる場合、切削工具5が破損するのを回避する駆動を行なう。
制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷C以上であると判定した場合(ステップS128:YES)、正転回転角を0度、逆転回転角を90度、正転回転数を0rpm、逆転回転数を400rpmに設定して、切削工具5を駆動する(ステップS130)。制御部11は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷が基準負荷C未満であると判定した場合(ステップS128:NO)、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置が基準位置Dに達したか否かを判定する(ステップS129)。
制御部11は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置が基準位置Dに達したと判定した場合(ステップS129:YES)、正転回転角を0度、逆転回転角を90度、正転回転数を0rpm、逆転回転数を400rpmに設定して、切削工具5を駆動する(ステップS130)。制御部11は、根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置が基準位置Dに達していないと判定した場合(ステップS129:NO)、ステップS127で設定したパラメータを維持して、切削工具5の駆動を継続する。
ステップS121〜ステップS130において、根管治療器100は、回転角および回転数のパラメータを段階的に変更して切削工具5の駆動する例を示したが、これに限定されるものではなく、切削工具5の位置に応じて、回転角および回転数のパラメータを連続して変更してもよい。たとえば、制御部11は、切削工具5に加わる負荷が基準負荷Aから基準負荷Cまで、または切削工具5の位置が基準位置Aから基準位置Dまでの変化に応じて、正転回転角または逆転回転角のパラメータを90度から0度まで、正転回転数または逆転回転数のパラメータを400rpmから0rpmまでそれぞれ連続して変更する。また、正転回転角、逆転回転角それぞれの上限値は90度に限定されるものではなく、正転回点数、逆転回転数それぞれの上限値も400rpmに限定されるものではない。
図12に示すフローチャートでは、切削工具5に加わる負荷、または切削工具5の位置に応じて、回転角および回転数のパラメータをともに変更する場合について説明したが、これに限定されるものではない。実施の形態1と同様、本実施の形態3に係る根管治療器100でも、切削工具5に加わる負荷、または切削工具5の位置に応じて、図9、図10に示すようにパラメータを変更してもよい。
以上のように、本発明の実施の形態3に係る根管治療器100は、負荷検出用抵抗13dで検出した負荷、または根管長測定回路12で得られる切削工具5の位置に応じて、正転回転角および正転回転数、逆転回転角および逆転回転数のうち少なくとも1つのパラメータを変更する。そのため、本発明の実施の形態3に係る根管治療器100は、ツイスト駆動で切削工具5を駆動する場合であっても、通常駆動で切削工具5を駆動する場合と同じように、切削工具5に加わる負荷が適切な範囲となるように当該負荷を小さくすることができ、切削工具5の破損や過剰な切削を防止することができる。さらに、本発明の実施の形態3に係る根管治療器100は、根尖に近づくにつれて、根尖方向に引き込まれる力を軽減して安全に切削することができる。
なお、実施の形態1〜3に係る根管治療器100では、ハンドピース1が、ホース61を介して、制御ボックス9に連結されている構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、コードレスタイプの根管治療器として構成しても良い。図13は、コードレスタイプの根管治療器の構成を示す概略図である。図13に示すコードレスタイプの根管治療器は、ハンドピース1の把持部4にバッテリーパック、マイクロモータ及び制御ボックスに相当する制御系を組み込み、各種操作部を把持部4の表面に設けてある。さらに、コードレスタイプの根管治療器には、把持部4に表示部16が設けてある。そのため、使用者は、視線を大きく変えることなく、切削工具5を通常駆動で駆動しているのか、ツイスト駆動で駆動しているのか、現在の切削工具5の位置はどの程度か、切削工具5に加わっている負荷はどの程度か、回転数はいくらか、といった情報を確認することができる。図示していないが、口腔電極19a用のリード線19を把持部4より導出するよう構成してもよい。
また、実施の形態1〜3に係る根管治療器100では、切削工具5を駆動する動力源にマイクロモータ7を用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、エアタービンなどの別の駆動源であってもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。