以下、本開示に係るシリンジポンプの実施形態について図1〜図9を参照して説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
図1は、一実施形態としてのシリンジポンプ1を正面側から見た斜視図である。また、図2は、図1に示すシリンジポンプ1を側面側から見た斜視図である。図3は、シリンジポンプ1の断面図である。図4は、シリンジポンプ1の使用状態の一例を示す図である。また、図5は、シリンジポンプ1に装着可能なシリンジの一例としてのシリンジ200を示す図である。図1〜図4は、シリンジポンプ1に対してシリンジ200が装着されている状態(以下、単に「装着状態」と記載する場合がある。)を示している。換言すれば、図1〜図4は、シリンジポンプ1及びシリンジ200を備える送液システム100を示す図である。図3は、装着状態における、シリンジ200の後述するシリンダ本体201aの軸方向Aと直交する断面を示している。
図1〜図4に示すシリンジポンプ1は、例えば集中治療室等で使用される。また、シリンジポンプ1は、患者に対して、例えば抗がん剤、麻酔剤、化学療法剤、輸血等、栄養剤等の薬液の微量注入処置を、高い精度で比較的長時間行う際に、用いることができる。
また、本実施形態のシリンジポンプ1は、スタンド250に対して着脱可能であり、図4に示すよう、スタンド250に装着された状態で使用することができる。図4に示すスタンド250は、床面上に載置されるベース部250aと、このベース部250aから鉛直方向上方に延在するポール部250bと、このポール部250bから突設され、輸液バッグ等の液体容器を係止可能な容器係止部250cと、を備えている。本実施形態のシリンジポンプ1は、スタンド250のポール部250bに対して、例えばポールクランプ等の固定具を用いて、固定される。また、本実施形態のシリンジポンプ1は、装着状態のシリンジ200の後述するシリンダ本体201aの軸方向Aが水平方向になるように、ポール部250bに対して固定される。更に、スタンド250には、シリンジポンプ1を複数固定可能である。具体的に、シリンジポンプ1は、スタンド250のポール部250bに沿って、鉛直方向に連接して複数固定することができる。複数のシリンジポンプ1を連接して固定する場合には、各シリンジポンプ1をスタンド250に対して取り付ける構成としてもよく、複数のシリンジポンプ1を連接した状態で保持可能は専用の保持部材を介して、スタンド250に対して取り付ける構成としてもよい。
以下、説明の便宜上、図4に示すシリンジポンプ1の上側を単に「上側」と記載し、図4に示すシリンジポンプ1の下側を単に「下側」と記載する。また、説明の便宜上、図4に示すシリンジポンプ1の右側を単に「右側」と記載し、図4に示すシリンジポンプ1の左側を単に「左側」と記載する。
まず、シリンジポンプ1に装着可能なシリンジ200の詳細について説明する。図5に示すように、シリンジ200は、シリンダ部材201と、ピストン部材202と、を備えている。
シリンダ部材201は、円筒状のシリンダ本体201aと、接続部201bと、フランジ部201cと、応答部201dと、を備えている。シリンダ本体201aは、麻酔剤等の薬液を収容可能である。また、シリンダ本体201aの周壁には、外部から視認可能な薬液の目盛201a1が設けられている。接続部201bは、シリンダ本体201aの先端側に連続する筒状部である。接続部201bには、例えばチューブ203などが接続可能である。図5では接続部201bにチューブ203が接続されている状態を示している。フランジ部201cは、シリンダ本体201aの基端側で、シリンダ本体201aの径方向Bの外側に向かって突出している。応答部201dは、電磁波に対して応答する。応答部201dは、例えばNFC(Near Field Communication)のような、到達距離の短い無線通信によって通信を行う応答器により構成することができる。本実施形態で示す応答部は、シリンダ本体201aの外周面に貼着することで取り付けられているRFタグにより構成されている。RFタグは、シリンダ本体201aの周方向Cの全域に亘って取り付けられておらず、周方向Cの一部のみに取り付けられている。
ピストン部材202は、ピストン本体202aと、フランジ部202bと、を備えている。ピストン本体202aは、シリンダ本体201a内に挿入されており、シリンダ本体201a内で、シリンダ本体201aの内周面と摺動しながら、軸方向Aにスライド移動可能である。フランジ部202bは、ピストン本体202aの基端側で径方向Bの外側に向かって突出している。
このようなシリンジ200は、シリンダ部材201のシリンダ本体201a及びフランジ部201c、並びに、ピストン部材202のフランジ部202b、をポンプ本体部2に固定することにより、シリンジポンプ1に対して装着される。本実施形態での、シリンジ200をシリンジポンプ1に固定する機構の詳細については、後述する(図3等参照)。
シリンジ200は、シリンジポンプ1に装着された装着状態(図1〜図4参照)で、以下のように動作する。シリンジポンプ1により、ピストン部材202のピストン本体202aが、軸方向Aの先端側に向かって押圧される。これにより、ピストン本体202aが、シリンダ部材201のシリンダ本体201a内を、軸方向Aの先端側に向かってスライド移動する。ピストン本体202aがシリンダ本体201a内を軸方向Aの先端側にスライド移動すると、シリンダ本体201a内の薬液が圧縮される。シリンダ本体201a内の薬液は、この圧縮力により、シリンダ部材201の接続部201bを通じて排出される。図4に示すシリンジポンプ1の使用状態では、接続部201bにチューブ203が接続されている。また、チューブ203の遠位端には、患者Pに留置される留置針204が接続されている。そのため、シリンダ本体201a内の薬液を、チューブ203及び留置針204を通じて、患者Pの体内へと送液することができる。
上述したように、シリンジ200は、電磁波に対して応答する応答部201dを構成するRFタグ、を備えている。RFタグは、記憶部と、制御部と、アンテナ部と、を備えている。アンテナ部は、後述するシリンジポンプ1の第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bと通信可能である。また、制御部は、記憶部からデータを読み出し、アンテナ部から第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bにデータを送信させることができる。シリンジポンプ1の第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bと、シリンジ200の応答部201dを構成するRFタグのアンテナ部と、の間の無線通信は通信可能距離が短い(例えば35mm以内)ため、シリンジ200の応答部201dを構成するRFタグが、第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bから所定の距離以上離れているときは、シリンジポンプ1は、応答部201dを構成するRFタグと通信することができない。
RFタグの記憶部及び制御部は、シリンジポンプ1の後述する第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bから発信される電磁波をRFタグのアンテナ部が受け、ここから動作電力を得ることにより、動作することができる。具体的に、制御部は、シリンジポンプ1の第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bから発信される電磁波に基づく起電力により、RFタグの記憶部内のデータを読み出し、アンテナ部を用いて、そのデータを電磁波に乗せて、第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bに返信(送信)させる。シリンジポンプ1の第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bは、RFタグからの電磁波を受信する。そして、シリンジポンプ1の後述する制御部13は、受信したデータを取り出すことで、RFタグの記憶部に記憶されているデータを取得し、シリンジポンプ1の記憶部19に記憶させる。
応答部201dを構成するRFタグの記憶部には、例えば、シリンジ200に関する、名称、プレフィルドタイプか現場充填タイプかの識別データ、個体ごとの識別データ、シリンダ部材201の寸法データ、ピストン部材202のストロークの寸法データ、などの各種データが記憶されている。
また、シリンジ200がプレフィルドタイプの場合、応答部201dを構成するRFタグの記憶部には、シリンダ本体201aに充填されている薬液を特定する識別データが記憶されている。更に、充填されている薬液に関する、名称、成分、粘度、消費期限などの識別データを記憶していてもよい。
RFタグの記憶部及び制御部は、例えば、不揮発性メモリを含む集積回路(ICチップ)により構成することができる。RFタグのアンテナ部は、例えば、コイル状アンテナを含む構成とすることができる。
次に、シリンジポンプ1について説明する。
図1〜図3に示すように、シリンジポンプ1は、ポンプ本体部2と、固定部3と、支持部4と、を備えている。
[ポンプ本体部2]
ポンプ本体部2は、シリンジ200を受ける受け部10を備えている。具体的に受け部10は、ポンプ本体部2のハウジング11に形成されている。また、ポンプ本体部2は、ハウジング11に対して移動可能であり、受け部10でシリンジ200を受けた状態(以下、単に「受け状態」と記載する。)で、シリンジ200のピストン部材202を押圧して移動させる可動部材12と、この可動部材12の動作を制御可能な制御部13と、を備えている。
本実施形態の受け部10は、シリンジポンプ1の正面(図1等参照)を構成するハウジング11の正面に設けられている。また、ハウジング11には、上述の可動部材12が、軸方向Aに移動可能に取り付けられている。更に、ハウジング11は、上述の制御部13を内部に収容している。
本実施形態のハウジング11は、耐薬品性を有する成型樹脂材料により一体成型されている。これにより、ハウジング11は防沫処理構造を有する。防沫処理構造は、仮にポンプ本体部2に薬剤等がかかっても、ポンプ本体部2の内部に薬剤等が侵入することを抑制することができる。防沫処理構造を有するようにしているのは、シリンダ本体201a内の薬剤がこぼれたり、シリンジポンプ1の上方に配置されている点滴液がこぼれ落ちたり、周辺で用いる消毒液等が飛散して付着したりすることがあるためである。
更に、図1に示すように、本実施形態のポンプ本体部2は、表示部14及び操作パネル部15を備えている。
表示部14は、カラー表示することができる画像表示装置である。表示部14は、例えば、カラー液晶表示装置により構成することができる。表示部14は、日本語表記による情報表記だけでなく、必要に応じて複数の外国語による情報の表示を行うことができる。本実施形態の表示部14は、ハウジング11の正面のうち、受け部10の上側に設けられている。表示部14は、タッチセンサ等の入力デバイスを備え、ユーザからの入力を受け付けてもよい。
操作パネル部15は、ハウジング11の正面の受け部10の上側であって、上述の表示部14の右側に配置されている。操作パネル部15には、電源スイッチ15A、動作インジケータ15H、及び操作スイッチが配置されている。図1等には、操作スイッチの一例として、早送りスイッチ15B、開始スイッチ15C、停止スイッチ15D、表示切替スイッチ15E、戻る/消音スイッチ15F、及び確認スイッチ15Gを示している。
上述の操作パネル部15での操作は、制御部13に入力され、制御部13からの命令により、ポンプ本体部2の各部位によって実行される。
更に、本実施形態のポンプ本体部2のハウジング11内には、ポンプ本体部2の各部材を電気的に接続する各種配線、制御部13からの命令を実行するための各種機構、例えばサーバなど、シリンジ200の応答部201d以外の外部装置と無線又は有線による通信が可能な後述の通信部18(図7参照)、薬液の種類別の各種データなど、シリンジポンプ1の動作に必要な各種データ及び各種プログラムを記憶する後述の記憶部19(図7参照)、などが配置されている。
また、詳細は後述するが、ポンプ本体部2は、第2アンテナ部16bを備えている(図3参照)。第2アンテナ部16bは、受け部10でシリンジ200を受けた受け状態で電磁波を発信可能であると共に、発信された電磁波に応答する、シリンジ200の応答部201d、から送信されるデータを受信可能である。図3に示すポンプ本体部2では、説明の便宜上、ハウジング11及び第2アンテナ部16bのみを示している。
次に、本実施形態のポンプ本体部2における受け部10及び可動部材12の詳細について説明する。
図1に示すように、本実施形態の受け部10は、シリンダ部材201を受ける。具体的に、本実施形態の受け部10は、シリンダ部材201のシリンダ本体201aを受けることができる。
より具体的に、受け部10は、シリンダ本体201aの外周面を受ける。本実施形態の受け部10は、シリンダ本体201aの外周面を受けるために、断面がほぼ半円形形状の凹状の湾曲面により構成されている。また、本実施形態の受け部10は、外径などの大きさの異なる複数の種類のシリンダ本体201aを受けることができる。
本実施形態のシリンジポンプ1では、上述した受け部10がシリンダ部材201を受けた状態で、後述する固定部3により、シリンダ部材201の位置を固定可能である。つまり、シリンジポンプ1では、シリンジ200を受けた受け状態で、シリンジ200の位置を固定部3等により固定することで、シリンジ200が装着された装着状態にすることができる。換言すれば、シリンジポンプ1において、シリンジ200が装着された装着状態とは、シリンジ200を受けた受け状態の一態様である。
本実施形態の可動部材12は、受け部10が設けられているハウジング11に対して、軸方向Aに移動可能に取り付けられているスライダにより構成されている。本実施形態のポンプ本体部2は、可動部材12を軸方向Aに移動させる移動機構17を備えている。すなわち、制御部13は、移動機構17を制御することにより、可動部材12の軸方向Aにおける動作を制御している。
本実施形態の可動部材12は、本体部12aと、フランジ固定部12bと、を備える。
本体部12aは、装着状態のシリンジ200のピストン部材202のフランジ部202bに対して、軸方向Aの基端側に配置される。そして、本体部12aを軸方向Aの先端側に移動させることで、フランジ部202bの軸方向Aの基端側の面を、軸方向Aの先端側に押圧することができる。これにより、ピストン部材202を、装着状態のシリンジ200のシリンダ部材201に対して、軸方向Aの先端側に相対的に移動させることができる。
フランジ固定部12bは、ピストン部材202のフランジ部202bを、本体部12aに対して固定する。具体的に、本実施形態のフランジ固定部12bは、本体部12aの軸方向Aの先端側に位置し、本体部12aに対して取り付けられている。シリンジ200の装着状態では、本体部12aとフランジ固定部12bとの間に、フランジ部202bが配置される。これにより、ピストン部材202は、可動部材12の軸方向Aの移動に追従して、軸方向Aに移動可能となる。本実施形態のフランジ固定部12bは、互いの対向距離を変動可能で、ピストン本体202aを挟持する一対の挟持部材により構成されている。一対の挟持部材は、互いが近づくように常時付勢されており、この付勢力に抗して移動させることで、対向距離を大きくすることができる。一対の挟持部材の対向距離を大きくすることにより、本体部12aとフランジ固定部12bとの間に、ピストン部材202のフランジ部202bを引き入れることができる。本体部12aとフランジ固定部12bとの間に、フランジ部202bを引き入れた後で、一対の挟持部材の対向距離を小さくし、ピストン本体202aを挟持する。これにより、フランジ部202bは、本体部12aとフランジ固定部12bとの間から、軸方向Aに抜け出せない。そのため、フランジ部202bを、本体部12aとフランジ固定部12bとの間の位置に保持することができる。シリンジ200の取り外し時は、再度、一対の挟持部材の対向距離を大きくすればよい。これにより、医師や看護師などの医療従事者は、ピストン部材202のフランジ部202bを、本体部12aとフランジ固定部12bとの間から、取り外すことができる。
[固定部3]
固定部3は、受け状態のシリンジ200を、ハウジング11の受け部10に対して固定することができる。
より具体的に、本実施形態の固定部3は、シリンダ部材201のシリンダ本体201aを受け部10に対して固定可能である。
本実施形態の固定部3は、受け状態のシリンジ200のシリンダ部材201のシリンダ本体201aを挟んで、受け部10と対向して配置可能である。そして、固定部3は、受け部10との間で、シリンジ200のシリンダ部材201のシリンダ本体201aを挟み込むことで、シリンダ本体201aを受け部10に対して固定することができる。つまり、本実施形態の受け部10及び固定部3は、シリンダ本体201aの外周面のうち中心軸線O1を挟んで対向する位置を挟み込むことにより、シリンダ本体201aを固定している。換言すれば、固定部3は、受け部10との間でシリンジ200のシリンダ部材201のシリンダ本体201aを挟み込むクランプ部である。
また、詳細は後述するが、固定部3は、第1アンテナ部16aを備えている(図3参照)。第1アンテナ部16aは、受け部10でシリンジ200を受けた受け状態で電磁波を発信可能であると共に、発信された電磁波に応答する、シリンジ200の応答部201d、から送信されるデータを受信可能である。
[支持部4]
支持部4は、ポンプ本体部2から外側に突出し、ポンプ本体部2の外側で固定部3を支持している。具体的に、本実施形態の支持部4は、ポンプ本体部2から、ポンプ本体部2の正面側に向かって突出している。また、本実施形態の支持部4は、その先端部において、固定部3としてのクランプ部を支持している。
更に、本実施形態の支持部4は、固定部3としてのクランプ部を、移動可能に支持している。具体的に、本実施形態の支持部4は、ポンプ本体部2の正面側に向かって突出する棒状部材であり、固定部3としてのクランプ部は、支持部4の長手方向(中心軸線O2に平行な方向)に移動可能に、支持部4に支持されている。そのため、固定部3としてのクランプ部を支持部4の長手方向に移動させることにより、固定部3としてのクランプ部と、ハウジング11の正面側に設けられている受け部10と、の対向距離を変化させることができる。これにより、固定部3としてのクランプ部を、挟持位置と非挟持位置との間で移動させることが可能となる。固定部3の挟持位置とは、受け部10との間でシリンダ本体201aを挟み込む位置である。また、固定部3の非挟持位置とは、挟持位置よりも受け部10から遠ざかるように離間し、受け部10との間でシリンダ本体201aを挟み込まない位置である。固定部3としてのクランプ部は、支持部4の長手方向において、受け部10に近づく方向にバネ部材等の付勢部材により常時付勢されているため、固定部3としてのクランプ部を挟持位置から非挟持位置に移動させる場合には、この付勢部材の付勢力に抗して移動させる。
また、固定部3としてのクランプ部は、上述の支持部4の長手方向に加えて、支持部4の中心軸線O2周りの周方向にも移動可能に、支持部4に支持されている。これにより、固定部3としてのクランプ部が支持部4の長手方向に移動しないように、支持部4の長手方向の位置を固定することができる。具体的に、固定部3としてのクランプ部は、受け部10と対向する位置と、受け部10と対向しない位置と、の間で、支持部4の中心軸線O2周りの周方向に回動可能である。この回動動作は、固定部3としてのクランプ部が挟持位置にある場合はできず、固定部3としてのクランプ部が非挟持位置にある場合に実行可能である。固定部3としてのクランプ部を、受け部10と対向しない位置にすることにより、受け部10の受け面にシリンジ200のシリンダ本体201aを配置し易い状態、にすることができる。
次に、図5に示すシリンジ200をシリンジポンプ1に装着する装着作業について説明する。図6は、シリンジポンプ1に対してシリンジ200を装着する際の作業概要を示す概要図である。図6に示すシリンジポンプ1の断面は、図3に示すシリンジポンプ1の断面と同位置の断面である。図6に示すポンプ本体部2においても、説明の便宜上、ハウジング11及び第2アンテナ部16bのみを示している。
図6に示すように、シリンジポンプ1に対してシリンジ200を装着する際は、まず、固定部3としてのクランプ部を、受け部10と対向しない位置にする。次いで、シリンジ200のシリンダ部材201のシリンダ本体201aを受け部10の受け面に配置すると共に、シリンジ200のシリンダ部材201のフランジ部201cを、フランジ挟持部20(図1等参照)が形成するスリットに挿入する。これにより、受け部10がシリンジ200のシリンダ本体201aの外周面を受けた、本実施形態の受け状態にすることができる。
より具体的に、図6に示すように、本実施形態のシリンジポンプ1の受け部10は、ハウジング11の正面の下側の端部に位置している。そして、上述の支持部4は、受け部10よりも下側の位置から外方(図6では右側)に向かって突出している。そのため、本実施形態のシリンジポンプ1では、受け部10がシリンジ200のシリンダ本体201aの外周面を受けた受け状態にするために、シリンジ200を、ハウジング11の正面の上側から、受け部10に向かって移動させる。換言すれば、受け部10は、シリンジ200を、ハウジング11の正面の上側から受け入れ可能である。そして、受け部10は、支持部4の存在により、シリンジ200を、ハウジング11の正面の下側からは受け入れることができない。
次いで、可動部材12を軸方向Aに移動させ、シリンジ200のピストン部材202を、可動部材12に対して固定する(図1等参照)。具体的に、シリンジ200のピストン部材202のフランジ部202bを、可動部材12の本体部12aとフランジ固定部12bの間に配置させる。
最後に、固定部3としてのクランプ部を、支持部4に対して回動させることで、受け部10と対向する位置にすると共に、支持部4の長手方向に移動させることで、受け部10との間でシリンダ本体201aを挟み込む挟持位置にする。
このようにして、シリンジポンプ1に対してシリンジ200を装着することができる。装着状態のシリンジ200を取り外す際は、上述の装着作業と逆の手順を実行すればよい。
次に、図7を参照して、図1に示すシリンジポンプ1の電気的な構成例について説明する。図7は、図1に示すシリンジポンプ1の電気的な構成例を示す図である。図7において、シリンジポンプ1は、全体的な動作の判断及び制御を行う制御部13を有している。この制御部13は、例えばワンチップのマイクロコンピュータである。
制御部13は、電源スイッチ15Aと、スイッチ111と、に接続されている。
電源スイッチ15AがONに設定されると、制御部13は、シリンジポンプ1内の各種機能ブロックを起動させる。電源スイッチ15AがOFFに設定されると、制御部13は、例えば、シリンジ200を動作させる移動機構17の動作を含む各種機能ブロックの電気的な動作を停止させる。この際、制御部13は、電源スイッチ15AがOFFに設定されても、少なくとも所定の条件を満たすまでは演算を継続する。すなわち、電源スイッチ15AがOFFに設定されたことにより、ユーザにとってはシリンジポンプ1の動作が停止したように見えても、制御部13は演算を継続することができる。
スイッチ111は、電源コンバータ部(電源部)112と、例えばリチウムイオン電池のような充電池113とを切り換えることで、電源コンバータ部112及び充電池113のいずれか一方から制御部13に電源を供給する。
電源コンバータ部112は、コンセント114を介して商用交流電源115に接続されている。
図7において、移動機構17は、制御部13に電気的に接続されている。移動機構17は、制御部13からの命令に基づき動作する。
図7において、移動機構17には、一対の第1検出センサ120及び第2検出センサ121が含まれている。第1検出センサ120及び第2検出センサ121は、シリンジ200のシリンダ部材201が、適切に配置されているかどうかを検知して、制御部13に通知する。
具体的に、第1検出センサ120は、シリンダ本体201aが、受け部10と固定部3との間で挟持されている状態か否かを検出することができる。このような検出は、例えば、固定部3の位置や、固定部3の受け部10からの距離等を検出することで実行可能である。
第2検出センサ121は、フランジ部201cが、フランジ挟持部20(図1等参照)の間のスリットで挟持されている状態か否かを検出することができる。このような検出は、上述の第1検出センサ120と同様、フランジ挟持部20の位置や距離等を検出することで実行可能である。
移動機構17の駆動部7のモータ133は、制御部13の指令によりモータドライバ134により駆動されると、送りネジ135を回転させて可動部材12を軸方向Aの先端側に移動させる。これにより、可動部材12は、シリンジ200のピストン部材202のフランジ部202bを軸方向Aの先端側に押圧して、シリンダ本体201a内の薬液を、チューブ203(図4参照)を通じて患者Pの体内に、留置針204(図4参照)を通じて送液する。
図7において、早送りスイッチ15B、開始スイッチ15C、停止スイッチ15D、表示切替スイッチ15E、戻る/消音スイッチ15F、及び確認スイッチ15Gは、制御部13に電気的に接続されている。開始スイッチ15Cが押下されると送液開始の制御信号が制御部13に入力される。また、停止スイッチ15Dが押下されると送液停止の制御信号が制御部13に入力される。
図7において、表示部ドライバ130は、制御部13に電気的に接続されている。表示部ドライバ130は、制御部13の指令により表示部14を駆動して種々の情報を表示部14に表示する。
図7において、スピーカ131は、制御部13に電気的に接続されている。スピーカ131は、制御部13の指令により各種の警報内容を音声により告知する。
第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bは、制御部13により制御可能である。この詳細は後述する。
通信部18は、ネットワークを介して外部のサーバなどとデータの送受信を行う。また、通信部18は、例えばデスクトップコンピュータのようなコンピュータとローカルに接続して、データの送受信を行ってもよい。
記憶部19は、例えば半導体メモリ及び磁気メモリ等を用いて構成されてよい。記憶部19は、上述したように、シリンジポンプ1の動作に必要な各種データ及び各種プログラムを記憶する。また、第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bで受信された応答部201dのデータは、制御部13により取得され、記憶部19に格納される。
図7においては、記憶部19が制御部13の外部にある構成としているが、記憶部19の全部又は一部が制御部13に含まれる構成であってもよい。
以下、シリンジポンプ1の特徴部について更に詳細に説明する。
[第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16b]
第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bは、上述したように、ポンプ本体部2の受け部10でシリンジ200を受けた受け状態で電磁波を発信可能であると共に、発信された電磁波に応答する、シリンジ200の応答部201d、から送信されるデータを受信可能である。
第1アンテナ部16aは、受け部10でシリンジ200を受けた受け状態において、シリンジ200を挟んで受け部10と対向して配置され、受け部10に向かって指向性のある電磁波を発信可能である。
また、第2アンテナ部16bは、受け部10でシリンジ200を受けた受け状態において、受け部10及び第1アンテナ部16aの対向方向Dと直交する直交方向Eに向かう電磁波を、受け部10及び第1アンテナ部16aの間の位置に発信可能である。
このように、シリンジポンプ1が、異なる方向に電磁波を発信可能な第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bを備えるため、1つのみのアンテナ部を備える構成と比較して、装着状態のシリンジ200の応答部201dと通信できない可能性を低減することができる。そのため、シリンジ200の応答部201dが保持するデータを、第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bの少なくとも一方のアンテナ部から、より確実に取得することができる。また、第1アンテナ部16aが発信する電磁波を、ハウジング11の受け部10に向かう指向性のある電磁波としていると共に、第2アンテナ部16bが発信する電磁波を、直交方向Eに向かう電磁波としている。これにより、第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bから発信される電磁波が、ハウジング11から外方に向かって発信され難く、シリンジポンプ1に装着されていない別のシリンジ200の応答部201dと誤って通信する可能性を低減することができる。そのため、シリンジポンプ1に装着されていない、装着予定でもない別のシリンジ200の応答部201dが保持するデータを、本来取得すべきシリンジ200の応答部201dが保持するデータと誤って取得することを抑制することができる。
例えば、1つのみのアンテナ部を備える既存のシリンジポンプでは、シリンジ200を装着する際に、シリンジ200に設けられた応答部201dを、アンテナ部の位置に正確に合わせる必要がある。しかしながら、上述のシリンジポンプ1によれば、シリンジ200に設けられた応答部201dを、第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bの少なくとも一方のアンテナ部と通信可能な位置に配置すればよいため、シリンジ200の装着作業が容易になる。
また、医師や看護師等の医療従事者は、例えば、複数のシリンジポンプ1がスタンド250(図4参照)に連接して取り付けられている場合、複数のシリンジ200を手Hに把持した状態のまま、各シリンジポンプ1に対して対応する1つのシリンジ200を、順次装着していくことがある(図6参照)。更に、シリンジポンプ1の近傍に、装着予定でないシリンジ200が置かれている状況が発生する場合もある。これに対して、上述のシリンジポンプ1では、第1アンテナ部16aが発信する電磁波を、ハウジング11の受け部10に向かう指向性のある電磁波としていると共に、第2アンテナ部16bが発信する電磁波を、直交方向Eに向かう電磁波としている。そのため、例えば医療従事者が別のシリンジポンプ1への装着のために把持しているシリンジ200やシリンジポンプ1の近傍に置かれている別のシリンジ200などの装着予定でないシリンジ200、の応答部201dと通信し易い、受け部10側から第1アンテナ部16a側に向かって発信される電磁波、を低減することができる。これにより、装着予定のないシリンジ200から誤ってデータを取得する可能性を低減できる。
本実施形態の第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bは、導線部としてのコイル状アンテナを含み、HF帯(短波帯、13.56MHz)の周波数帯において電磁波を発信する、所謂「電磁誘導方式」の構成である。第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bのコイル状アンテナから発信される磁束により、応答部201dを構成するRFタグのアンテナ部に設けられたコイル状アンテナに誘導電流を発生させる。
また、第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bの電磁波の発信は、制御部13により制御される。更に、上述したように、第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bで受信された応答部201dのデータは、制御部13により取得され、記憶部19(図7参照)に格納される。換言すれば、本実施形態のシリンジポンプ1では、第1アンテナ部16a、第2アンテナ部16b及び制御部13により、シリンジ200の応答部201dを構成するRFタグ、のリーダが構成されている。但し、制御部13とは別の制御部を設け、この制御部が第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bと共にリーダを構成し、制御部13が、このリーダからデータを取得するようにしてもよい。
本実施形態の第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bは、いずれも指向性を有する電磁波を発信可能である。
具体的に、本実施形態の第1アンテナ部16aは、コイル状アンテナの中心軸線O3と平行な方向を厚み方向とする薄肉のシート状であり、この厚み方向の一方側に向かって指向性を有する電磁波を発信するように構成されている。具体的に、本実施形態の第1アンテナ部16aは、コイル状アンテナに対して厚み方向の他方側に、電磁波の少なくとも一部を遮蔽可能な遮蔽部材としてのフェライトシートを備えている。換言すれば、本実施形態の第1アンテナ部16aのコイル状アンテナのうち、第1アンテナ部16aの厚み方向の他方側は、磁束を遮蔽可能なフェライトシートで覆われている。そのため、本実施形態の第1アンテナ部16aは、厚み方向の一方側に向かって指向性を有する電磁波は発信することができる。
このようにして、第1アンテナ部16aは、受け状態において、シリンジ200を挟んで受け部10と対向する位置で、受け部10に向かって指向性を有する電磁波を発信することができる。本実施形態の第1アンテナ部16aが配置される位置の詳細は後述する。
また、本実施形態の第2アンテナ部16bは、コイル状アンテナの中心軸線O4と平行な方向を厚み方向とする薄肉のシート状であり、この厚み方向の一方側に向かって指向性を有する電磁波を発信するように構成されている。具体的に、本実施形態の第2アンテナ部16bは、第1アンテナ部16aと同様、コイル状アンテナに対して厚み方向の他方側に、電磁波の少なくとも一部を遮蔽可能な遮蔽部材としてのフェライトシートを備えている。換言すれば、本実施形態の第2アンテナ部16bのコイル状アンテナのうち、第2アンテナ部16bの厚み方向の他方側は、磁束を遮蔽可能なフェライトシートで覆われている。そのため、本実施形態の第2アンテナ部16bは、厚み方向の一方側に向かって指向性を有する電磁波は発信することができる。
第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bの遮蔽部材は、電磁波を吸収、反射等して、透過させないようにできればよく、上述のフェライトシートに限られない。
このようにして、第2アンテナ部16bは、直交方向Eのうち、受け状態でのシリンジ200に向かう指向性を有する電磁波を発信することができる。そのため、第2アンテナ部16bが、装着予定のないシリンジ200から誤ったデータを取得する可能性を、より低減できる。本実施形態の第2アンテナ部16bが配置される位置の詳細は後述する。
また、シリンジ200の応答部201dを構成するRFタグも、コイル状アンテナを備える薄肉のシート状である。そして、RFタグは、シリンダ本体201aの周面に沿って取り付けられている。そのため、シート状の第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bは、応答部201dを構成するシート状のRFタグと、厚み方向の面同士が対向するように配置されることが好ましい。そのため、本実施形態の第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bそれぞれは、その厚み方向の一方側の面が、装着状態のシリンジ200のシリンダ本体201aの外周面と、径方向Bに対向するように、配置されている。本実施形態の第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bが配置される位置の詳細は後述する。
更に、第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bは、シリンダ本体201aの中心軸線O1を挟んで対向した位置に配置されていない。換言すれば、図3に示すように、軸方向Aと直交する断面視において、シリンダ本体201aの中心軸線O1と第1アンテナ部16aの延在方向F1の中央位置Q1とを通る第1直線L1(本実施形態では中心軸線O3と一致)は、シリンダ本体201aの中心軸線O1と第2アンテナ部16bの延在方向F2の中央位置Q2とを通る第2直線L2(本実施形態では中心軸線O4と一致)と、平行ではなく、交差角度θ(180°未満)で交差している。この交差角度θは、シリンダ本体201aの周壁に設けられた応答部201dが、装着状態で、シリンジポンプ1のいかなる位置に対向するように配置されても、第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bの少なくとも一方で応答部201dが保持するデータを受信できるように設定されることが望ましい。換言すれば、この交差角度θは、シリンダ本体201aの周壁に設けられたシート状のRFタグの厚み方向の面が、装着状態で、シリンジポンプ1のいかなる位置に対向するように配置されても、シート状の第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bの少なくとも一方の厚み方向の面が、RFタグの厚み方向の面と直交しないように設定されることが好ましく、対向するように設定されることが特に望ましい。
そのため、交差角度θとしては、30°〜150°とすることが好ましく、60°〜120°とすることがより好ましく、80°〜100°とすることが更に好ましく、90°とすることが特に好ましい。このようにすれば、シリンジ200の応答部201dのデータが第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bの少なくとも一方のアンテナ部によって取得される可能性を、より高めることができる。
また、軸方向Aと直交する断面視(図3参照)において、第1アンテナ部16aの延在方向F1の幅、及び、第2アンテナ部16bの延在方向F2の幅は、シリンダ本体201aの外径の1/2以上とすることが好ましい。このようにすれば、シリンジ200の応答部201dのデータが第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bの少なくとも一方のアンテナ部によって取得される可能性を、より高めることができる。ここで、「シリンダ本体201aの外径」とは、シリンジポンプ1に装着可能なシリンジ200のうち最大の外径を有するシリンダ本体201aの外径を意味する。シリンジポンプ1に装着可能なシリンジ200のうち、最大の外径を有するシリンダ本体201aを備えるシリンジ200は、通常は50mLシリンジであり、取り扱い説明書等により特定することができる。ISO11040−6で規定されている50mLシリンジのシリンダ本体201aの外径は、31.5mm〜32.3mmで±0.2mmである。
次に、第1アンテナ部16aが配置される位置について説明する。
本実施形態の第1アンテナ部16aは、受け部10にシリンジ200を固定する固定部3に設けられている。このような構成とすれば、シリンジポンプ1が備えるシリンジ200を固定するための固定部3を、第1アンテナ部16aの保持部として利用することができる。そのため、シリンジ200を固定する固定部3とは別の位置に、第1アンテナ部16aを保持する保持部を設けなくてもよく、シリンジポンプ1の構成がより複雑化することを抑制することができる。
また、本実施形態の第1アンテナ部16aは、受け部10との間でシリンジ200のシリンダ部材201のシリンダ本体201aを挟み込む、固定部3としてのクランプ部に設けられている。このように、第1アンテナ部16aを、シリンダ部材201を挟み込むクランプ部に設けることで、シリンダ部材201のうちクランプ部により挟み込まれる部分の近傍にある応答部201dとの通信性能を高めることができ、このような応答部201dから、より確実にデータを取得することができる。本実施形態において、第1アンテナ部16aは、固定部3としてのクランプ部が区画する中空部に収容されているが、固定部3としてのクランプ部の外面に露出するように配置されていてもよい。
次に、第2アンテナ部16bが配置される位置について説明する。
本実施形態の第2アンテナ部16bは、ポンプ本体部2に設けられている。より具体的に、本実施形態の第2アンテナ部16bは、ハウジング11に設けられている。本実施形態の第2アンテナ部16bは、ハウジング11の内部に位置し、ハウジング11の内壁に取り付けられている。第2アンテナ部16bから発信される電磁波は、ハウジング11を透過し、受け状態でのシリンジ200の応答部201dに作用する。
特に、本実施形態では、第2アンテナ部16bが、受け部10の位置に設けられている。より具体的に、本実施形態の第2アンテナ部16bは、ハウジング11の内壁のうち、受け部10の裏側の位置に取り付けられている。第2アンテナ部16bを受け部10の位置に設ければ、受け部10でシリンダ本体201aの外周面を受けた状態で、第2アンテナ部16bと、シリンダ本体201aの周壁に設けられた応答部201dと、を近づけることができる(例えば対向距離が35mm以内)。そのため、受け部10でシリンダ本体201aの外周面を受けた状態で、第2アンテナ部16bがシリンダ本体201aの周壁に設けられた応答部201dが保持するデータを取得できる可能性を、より高めることができる。第2アンテナ部16bをハウジング11に設ける場合、第2アンテナ部16bは、本実施形態のようにハウジング11の内壁に取り付けられていてもよく、ハウジング11の外面に露出するようにハウジング11に取り付けられていてもよい。
また、上述したように、本実施形態の第2アンテナ部16bは、薄肉のシート状であり、その厚み方向の一方側に向かって指向性を有する電磁波を発信する。また、応答部201dは、シリンダ本体201aの周壁に設けられている。そのため、第2アンテナ部16bは、受け状態でのシリンジ200のシリンダ本体201aの外周面と対向するように配置することが好ましい。第2アンテナ部16bを受け部10の位置に設ければ、第2アンテナ部16bを、受け状態でのシリンジ200のシリンダ本体201aの外周面と対向するように配置し易い。
以上のように、本実施形態の第2アンテナ部16bは、ポンプ本体部2のハウジング11の受け部10に設けられているが、例えば、図8に示すように、第2アンテナ部16bを支持部4に設けるようにしてもよい。第2アンテナ部16bを支持部4に設ける場合に、第2アンテナ部16bは、支持部4内に収容する構成としてもよく、支持部4の外面に露出する構成としてもよい。
上述したように、本実施形態のシリンジポンプ1の受け部10は、ハウジング11の正面の、直交方向Eの一端側としての下側の端部に形成されており、シリンジ200を、ハウジング11の正面の、直交方向Eの他端側としての上側から受け入れ可能である。そして、第2アンテナ部16bは、第1アンテナ部16aよりも下側で、上側に向かう電磁波を発信可能に配置されている。このような構成とすれば、シリンジポンプ1に対して実際に装着されるシリンジ200に向かって電磁波を発信することができる。そのため、シリンジポンプ1に対して実際に装着されるシリンジ200の応答部201dとの通信性能を高めることができる。
更に、本実施形態の第2アンテナ部16bは、上側に向かう指向性を有する電磁波を発信する構成である。つまり、受け部10がシリンジ200を受けた受け状態において、第2アンテナ部16bは、受け部10と第1アンテナ部16aとの間に、下側から上側に向かう指向性を有する電磁波を発信する。そのため、第2アンテナ部16bが、シリンジポンプ1に対して装着予定でない別のシリンジ200の応答部201dと通信することを抑制することができる。これにより、第2アンテナ部16bが、誤ったデータを取得することを抑制することができる。
最後に、応答部201dのデータの読み込み制御について説明する。図9は、制御部13が実行する応答部201dのデータの読み込み制御の一例を示すフローチャートである。図9に示す読み込み制御は、第1アンテナ部16aから電磁波を発信する第1発信ステップS1と、第2アンテナ部16bから電磁波を発信する第2発信ステップS2と、を含む。つまり、制御部13は、第1アンテナ部16aからの電磁波の発信と、第2アンテナ部16bからの電磁波の発信と、を別々に実行可能である。
また、図9に示すように、制御部13は、第1アンテナ部16aからの電磁波による応答部201dとの通信状況に基づいて、第2アンテナ部16bからの電磁波の発信を制御する。具体的に、制御部13は、まず、第1発信ステップS1を実行する。つまり、第1アンテナ部16aから電磁波を発信し、シリンジ200の応答部201dとの交信を試みる。ここで、第1アンテナ部16aからの電磁波により、応答部201dが応答し、第1アンテナ部16aが応答部201dからデータを受信した場合、制御部13は、第2発信ステップS2を実行しない。これに対して、制御部13は、第1発信ステップS1において、第1アンテナ部16aが応答部201dからデータを受信できなかった場合、第2発信ステップS2を実行する。第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bから同時に電磁波を発信してもよいが、本実施形態のように、第1アンテナ部16aからの電磁波の発信と、第2アンテナ部16bからの電磁波の発信と、を別々に実行することにより、第1アンテナ部16aから発信される電磁波と、第2アンテナ部16bから発信される電磁波と、が干渉し、ノイズによって読み込み精度が低下することを抑制することができる。
本実施形態では、第1発信ステップS1で、第1アンテナ部16aから電磁波を発信し、第2発信ステップS2で、第2アンテナ部16bから電磁波を発信しているが、順序を逆にしてもよい。つまり、制御部13は、第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bの一方のアンテナ部からの電磁波による応答部201dとの通信状況に基づいて、他方のアンテナ部からの電磁波の発信を制御するようにすればよい。また、制御部13は、例えば、第1検出センサ120(図7参照)、第2検出センサ121(図7参照)等によるセット検知に基づいて、第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bの一方のアンテナ部からの電磁波の発信を実行するようにしてもよい。
本開示に係るシリンジポンプは、上述した具体的構成に限られるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限り、種々の変形、変更が可能である。例えば、上述のシリンジポンプ1は、アンテナ部として、第1アンテナ部16a及び第2アンテナ部16bのみを備える構成であるが、3つ以上のアンテナ部を備える構成としてもよい。また、上述のシリンジポンプ1では、第1アンテナ部16a自体、及び、第2アンテナ部16b自体が、所定の方向に指向性のある電磁波を発信可能な構成であるが、「指向性のある電磁波を発信可能なアンテナ部」とは、この構成に限らず、例えば、アンテナ部自体は所定の方向に指向性のある電磁波を発信可能ではなく、アンテナ部以外の別の部材(例えばフェライトシート)を用いて、所定の方向に指向性のある電磁波を発信可能な構成であってもよい。