以下、本開示に係るシリンジポンプの実施形態について図1〜図9を参照して説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
図1は、一実施形態としてのシリンジポンプ1を正面側から見た斜視図である。また、図2は、図1に示すシリンジポンプ1を側面側から見た斜視図である。図3は、シリンジポンプ1の断面図である。図4は、シリンジポンプ1の使用状態の一例を示す図である。また、図5は、シリンジポンプ1に装着可能なシリンジの一例としてのシリンジ200を示す図である。図1〜図4は、シリンジポンプ1に対してシリンジ200が装着されている状態(以下、単に「装着状態」と記載する場合がある。)を示している。換言すれば、図1〜図4は、シリンジポンプ1及びシリンジ200を備える送液システム100を示す図である。図3は、装着状態における、シリンジ200の後述するシリンダ本体201aの軸方向Aと直交する断面を示している。
図1〜図4に示すシリンジポンプ1は、例えば集中治療室等で使用される。また、シリンジポンプ1は、患者に対して、例えば抗がん剤、麻酔剤、化学療法剤、輸血等、栄養剤等の薬液の微量注入処置を、高い精度で比較的長時間行う際に用いることができる。
シリンジポンプ1は、電磁波に対して応答する応答部201dが設けられた、シリンジ200のシリンダ部材201を保持可能な保持空間Xを区画している。また、そして、シリンジポンプ1は、保持空間Xに保持されたシリンダ部材201から薬液等の液体を送液するこができる。シリンジ200の詳細は後述する(図5参照)。
また、本実施形態のシリンジポンプ1は、スタンド250に対して着脱可能であり、図4に示すよう、スタンド250に装着された状態で使用することができる。図4に示すスタンド250は、床面上に載置されるベース部250aと、このベース部250aから鉛直方向上方に延在するポール部250bと、このポール部250bから突設され、輸液バッグ等の液体容器を係止可能な容器係止部250cと、を備えている。本実施形態のシリンジポンプ1は、スタンド250のポール部250bに対して、例えばポールクランプ等の固定具を用いて、固定される。また、本実施形態のシリンジポンプ1は、装着状態のシリンジ200の後述するシリンダ本体201aの軸方向Aが水平方向になるように、ポール部250bに対して固定される。更に、スタンド250には、シリンジポンプ1を複数固定可能である。具体的に、シリンジポンプ1は、スタンド250のポール部250bに沿って、鉛直方向に連接して複数固定することができる。複数のシリンジポンプ1を連接して固定する場合には、各シリンジポンプ1をスタンド250に対して取り付ける構成としてもよく、複数のシリンジポンプ1を連接した状態で保持可能は専用の保持部材を介して、スタンド250に対して取り付ける構成としてもよい。
以下、説明の便宜上、図4に示すシリンジポンプ1の上側を単に「上側」と記載し、図4に示すシリンジポンプ1の下側を単に「下側」と記載する。また、説明の便宜上、図4に示すシリンジポンプ1の右側を単に「右側」と記載し、図4に示すシリンジポンプ1の左側を単に「左側」と記載する。
まず、シリンジポンプ1に装着可能なシリンジ200の詳細について説明する。図5に示すように、シリンジ200は、シリンダ部材201と、ピストン部材202と、を備えている。
シリンダ部材201は、円筒状のシリンダ本体201aと、接続部201bと、フランジ部201cと、応答部201dと、を備えている。シリンダ本体201aは、麻酔剤等の薬液を収容可能である。また、シリンダ本体201aの周壁には、外部から視認可能な薬液の目盛201a1が設けられている。接続部201bは、シリンダ本体201aの先端側に連続する筒状部である。接続部201bには、例えばチューブ203などが接続可能である。図5では接続部201bにチューブ203が接続されている状態を示している。フランジ部201cは、シリンダ本体201aの基端側で、シリンダ本体201aの径方向Bの外側に向かって突出している。応答部201dは、電磁波に対して応答する。応答部201dは、例えばNFC(Near Field Communication)のような、到達距離の短い無線通信によって通信を行う応答器により構成することができる。本実施形態で示す応答部は、シリンダ本体201aの外周面に貼着することで取り付けられているRFタグにより構成されている。RFタグは、シリンダ本体201aの周方向Cの全域に亘って取り付けられておらず、周方向Cの一部のみに取り付けられている。
ピストン部材202は、ピストン本体202aと、フランジ部202bと、を備えている。ピストン本体202aは、シリンダ本体201a内に挿入されており、シリンダ本体201a内で、シリンダ本体201aの内周面と摺動しながら、軸方向Aにスライド移動可能である。フランジ部202bは、ピストン本体202aの基端側で径方向Bの外側に向かって突出している。
このようなシリンジ200は、シリンダ部材201のシリンダ本体201a及びフランジ部201c、並びに、ピストン部材202のフランジ部202b、をポンプ本体部2に固定することにより、シリンジポンプ1に対して装着される。本実施形態での、シリンジ200をシリンジポンプ1に固定する機構の詳細については、後述する(図3等参照)。
シリンジ200は、シリンジポンプ1に装着された装着状態(図1〜図4参照)で、以下のように動作する。シリンジポンプ1により、ピストン部材202のピストン本体202aが、軸方向Aの先端側に向かって押圧される。これにより、ピストン本体202aが、シリンダ部材201のシリンダ本体201a内を、軸方向Aの先端側に向かってスライド移動する。ピストン本体202aがシリンダ本体201a内を軸方向Aの先端側にスライド移動すると、シリンダ本体201a内の薬液が圧縮される。シリンダ本体201a内の薬液は、この圧縮力により、シリンダ部材201の接続部201bを通じて排出される。図4に示すシリンジポンプ1の使用状態では、接続部201bにチューブ203が接続されている。また、チューブ203の遠位端には、患者Pに留置される留置針204が接続されている。そのため、シリンダ本体201a内の薬液を、チューブ203及び留置針204を通じて、患者Pの体内へと送液することができる。
上述したように、シリンジ200は、電磁波に対して応答する応答部201dを構成するRFタグ、を備えている。RFタグは、記憶部と、制御部と、アンテナ部と、を備えている。RFタグのアンテナ部は、後述するシリンジポンプ1のアンテナ部16と通信可能である。また、RFタグの制御部は、記憶部からデータを読み出し、RFタグのアンテナ部から、シリンジポンプ1のアンテナ部16にデータを送信させることができる。シリンジポンプ1のアンテナ部16と、シリンジ200の応答部201dを構成するRFタグのアンテナ部と、の間の無線通信は通信可能距離が短い(例えば35mm以内)ため、シリンジ200の応答部201dを構成するRFタグが、アンテナ部16から所定の距離以上離れているときは、シリンジポンプ1は、応答部201dを構成するRFタグと通信することができない。
RFタグの記憶部及び制御部は、シリンジポンプ1の後述するアンテナ部16から発信される電磁波をRFタグのアンテナ部が受け、ここから動作電力を得ることにより、動作することができる。具体的に、制御部は、シリンジポンプ1のアンテナ部16から発信される電磁波に基づく起電力により、RFタグの記憶部内のデータを読み出し、アンテナ部を用いて、そのデータを電磁波に乗せて、シリンジポンプ1のアンテナ部16に返信(送信)させる。シリンジポンプ1のアンテナ部16は、RFタグからの電磁波を受信する。そして、シリンジポンプ1の後述する制御部13は、アンテナ部16が受信したデータを取り出すことで、RFタグの記憶部に記憶されているデータを取得し、シリンジポンプ1の記憶部19に記憶させる。
応答部201dを構成するRFタグの記憶部には、例えば、シリンジ200に関する、名称、プレフィルドタイプか現場充填タイプかの識別データ、個体ごとの識別データ、シリンダ部材201の寸法データ、ピストン部材202のストロークの寸法データ、などの各種データが記憶されている。
また、シリンジ200がプレフィルドタイプの場合、応答部201dを構成するRFタグの記憶部には、シリンダ本体201aに充填されている薬液を特定する識別データが記憶されている。更に、充填されている薬液に関する、名称、成分、粘度、消費期限などの識別データを記憶していてもよい。
RFタグの記憶部及び制御部は、例えば、不揮発性メモリを含む集積回路(ICチップ)により構成することができる。RFタグのアンテナ部は、例えば、コイル状アンテナを含む構成とすることができる。
次に、シリンジポンプ1について説明する。
図1〜図3に示すように、シリンジポンプ1は、ポンプ本体部2と、クランプ部3と、支持部4と、を備えている。
[ポンプ本体部2]
ポンプ本体部2は、シリンジ200を受ける受け部10を備えている。具体的に受け部10は、ポンプ本体部2のハウジング11に形成されている。また、ポンプ本体部2は、ハウジング11に対して移動可能であり、受け部10でシリンジ200を受けた状態(以下、単に「受け状態」と記載する。)で、シリンジ200のピストン部材202を押圧して移動させる可動部材12と、この可動部材12の動作を制御可能な制御部13と、を備えている。
本実施形態の受け部10は、シリンジポンプ1の正面(図1等参照)を構成するハウジング11の正面に設けられている。また、ハウジング11には、上述の可動部材12が、軸方向Aに移動可能に取り付けられている。更に、ハウジング11は、上述の制御部13を内部に収容している。
本実施形態のハウジング11は、耐薬品性を有する成型樹脂材料により一体成型されている。これにより、ハウジング11は防沫処理構造を有する。防沫処理構造は、仮にポンプ本体部2に薬剤等がかかっても、ポンプ本体部2の内部に薬剤等が侵入することを防ぐことができる。防沫処理構造を有するようにしているのは、シリンダ本体201a内の薬剤がこぼれたり、シリンジポンプ1の上方に配置されている点滴液がこぼれ落ちたり、周辺で用いる消毒液等が飛散して付着したりすることがあるためである。
更に、図1に示すように、本実施形態のポンプ本体部2は、表示部14及び操作パネル部15を備えている。
表示部14は、カラー表示することができる画像表示装置である。表示部14は、例えば、カラー液晶表示装置により構成することができる。表示部14は、日本語表記による情報表記だけでなく、必要に応じて複数の外国語による情報の表示を行うことができる。本実施形態の表示部14は、ハウジング11の正面のうち、受け部10の上側に設けられている。表示部14は、タッチセンサ等の入力デバイスを備え、ユーザからの入力を受け付けてもよい。
操作パネル部15は、ハウジング11の正面の受け部10の上側であって、上述の表示部14の右側に配置されている。操作パネル部15には、電源スイッチ15A、動作インジケータ15H、及び操作スイッチが配置されている。図1等には、操作スイッチの一例として、早送りスイッチ15B、開始スイッチ15C、停止スイッチ15D、表示切替スイッチ15E、戻る/消音スイッチ15F、及び確認スイッチ15Gを示している。
上述の操作パネル部15での操作は、制御部13に入力され、制御部13からの命令により、ポンプ本体部2の各部位によって実行される。
更に、本実施形態のポンプ本体部2のハウジング11内には、ポンプ本体部2の各部材を電気的に接続する各種配線、制御部13からの命令を実行するための各種機構、例えばサーバなど、シリンジ200の応答部201d以外の外部装置と無線又は有線による通信が可能な後述の通信部18(図7参照)、薬液の種類別の各種データなど、シリンジポンプ1の動作に必要な各種データ及び各種プログラムを記憶する後述の記憶部19(図7参照)、などが配置されている。
また、詳細は後述するが、ポンプ本体部2には、アンテナ部16が設けられている(図3参照)。アンテナ部16は、後述する保持空間Xで保持されたシリンダ部材201に向かって、電磁波を発信可能である。また、アンテナ部16は、発信された電磁波に応答する、シリンダ部材201の応答部210dから送信されるデータを受信可能である。図3に示すポンプ本体部2では、説明の便宜上、ハウジング11及びアンテナ部16のみを示している。
次に、本実施形態のポンプ本体部2における受け部10及び可動部材12の詳細について説明する。
図1に示すように、本実施形態の受け部10は、シリンダ部材201を受ける。具体的に、本実施形態の受け部10は、シリンダ部材201のシリンダ本体201aを受けることができる。
より具体的に、受け部10は、シリンダ本体201aの外周面を受ける。本実施形態の受け部10は、シリンダ本体201aの外周面を受けるために、断面がほぼ半円形形状の凹状の湾曲面により構成されている。また、本実施形態の受け部10は、外径などの大きさの異なる複数の種類のシリンダ本体201aを受けることができる。
本実施形態のシリンジポンプ1では、上述した受け部10がシリンダ部材201を受けた状態で、後述するクランプ部3により、シリンダ部材201の位置を固定可能である。つまり、シリンジポンプ1では、シリンジ200を受けた受け状態で、シリンジ200の位置をクランプ部3等により固定することで、シリンジ200が装着された装着状態にすることができる。換言すれば、シリンジポンプ1において、シリンジ200が装着された装着状態とは、シリンジ200を受けた受け状態の一態様である。
本実施形態の可動部材12は、受け部10が設けられているハウジング11に対して、軸方向Aに移動可能に取り付けられているスライダにより構成されている。本実施形態のポンプ本体部2は、可動部材12を軸方向Aに移動させる移動機構17を備えている。すなわち、制御部13は、移動機構17を制御することにより、可動部材12の軸方向Aにおける動作を制御している。
本実施形態の可動部材12は、本体部12aと、フランジ固定部12bと、を備える。
本体部12aは、装着状態のシリンジ200のピストン部材202のフランジ部202bに対して、軸方向Aの基端側に配置される。そして、本体部12aを軸方向Aの先端側に移動させることで、フランジ部202bの軸方向Aの基端側の面を、軸方向Aの先端側に押圧することができる。これにより、ピストン部材202を、装着状態のシリンジ200のシリンダ部材201に対して、軸方向Aの先端側に相対的に移動させることができる。
フランジ固定部12bは、ピストン部材202のフランジ部202bを、本体部12aに対して固定する。具体的に、本実施形態のフランジ固定部12bは、本体部12aの軸方向Aの先端側に位置し、本体部12aに対して取り付けられている。シリンジ200の装着状態では、本体部12aとフランジ固定部12bとの間に、フランジ部202bが配置される。これにより、ピストン部材202は、可動部材12の軸方向Aの移動に追従して、軸方向Aに移動可能となる。本実施形態のフランジ固定部12bは、互いの対向距離を変動可能で、ピストン本体202aを挟持する一対の挟持部材により構成されている。一対の挟持部材は、互いが近づくように常時付勢されており、この付勢力に抗して移動させることで、対向距離を大きくすることができる。一対の挟持部材の対向距離を大きくすることにより、本体部12aとフランジ固定部12bとの間に、ピストン部材202のフランジ部202bを引き入れることができる。本体部12aとフランジ固定部12bとの間に、フランジ部202bを引き入れた後で、一対の挟持部材の対向距離を小さくし、ピストン本体202aを挟持する。これにより、フランジ部202bは、本体部12aとフランジ固定部12bとの間から、軸方向Aに抜け出せない。そのため、フランジ部202bを、本体部12aとフランジ固定部12bとの間の位置に保持することができる。シリンジ200の取り外し時は、再度、一対の挟持部材の対向距離を大きくすればよい。これにより、医師や看護師などの医療従事者は、ピストン部材202のフランジ部202bを、本体部12aとフランジ固定部12bとの間から、取り外すことができる。
[クランプ部3]
固定部としてのクランプ部3は、受け状態のシリンジ200を、ハウジング11の受け部10に対して挟持することで固定することができる。
具体的に、本実施形態のクランプ部3は、受け部10からの距離を変動可能に移動し、受け部10との間に区画されている後述する保持空間Xで、受け部10と共にシリンダ部材201のシリンダ本体201aを挟持可能である。
より具体的に、本実施形態の受け部10及びクランプ部3は、シリンダ本体201aの外周面のうち中心軸線O1を挟んで対向する位置を挟み込むことにより、シリンダ本体201aを固定している。
[支持部4]
支持部4は、ポンプ本体部2から外側に突出し、ポンプ本体部2の外側で固定部3を支持している。具体的に、本実施形態の支持部4は、ポンプ本体部2から、ポンプ本体部2の正面側に向かって突出している。また、本実施形態の支持部4は、その先端部において、クランプ部3を支持している。
更に、本実施形態の支持部4は、クランプ部3を、移動可能に支持している。具体的に、本実施形態の支持部4は、ポンプ本体部2の正面側に向かって突出する棒状部材であり、クランプ部3は、支持部4の長手方向に移動可能に、支持部4に支持されている。そのため、クランプ部3を支持部4の長手方向に移動させることにより、クランプ部3と、ハウジング11の正面側に設けられている受け部10と、の対向距離を変化させることができる。これにより、クランプ部3を、挟持位置と非挟持位置との間で移動させることが可能となる。クランプ部3の挟持位置とは、受け部10との間でシリンダ本体201aを挟み込む位置である。また、クランプ部3の非挟持位置とは、挟持位置よりも受け部10から遠ざかるように離間し、受け部10との間でシリンダ本体201aを挟み込まない位置である。クランプ部3は、支持部4の長手方向において、受け部10に近づく方向にバネ部材等の付勢部材により常時付勢されているため、クランプ部3を挟持位置から非挟持位置に移動させる場合には、この付勢部材の付勢力に抗して移動させる。
また、クランプ部3は、上述の支持部4の長手方向に加えて、支持部4の中心軸線O2周りの周方向にも移動可能に、支持部4に支持されている。これにより、クランプ部3が支持部4の長手方向に移動しないように、支持部4の長手方向の位置を固定することができる。具体的に、クランプ部3は、受け部10と対向する位置と、受け部10と対向しない位置と、の間で、支持部4の中心軸線O2周りの周方向に回動可能である。この回動動作は、クランプ部3が挟持位置にある場合はできず、クランプ部3が非挟持位置にある場合に実行可能である。クランプ部3を、受け部10と対向しない位置にすることにより、受け部10の受け面にシリンジ200のシリンダ本体201aを配置し易い状態、にすることができる。
次に、図5に示すシリンジ200をシリンジポンプ1に装着する装着作業について説明する。図6は、シリンジポンプ1に対してシリンジ200を装着する際の作業概要を示す概要図である。図6に示すシリンジポンプ1の断面は、図3に示すシリンジポンプ1の断面と同位置の断面である。
図6に示すように、シリンジポンプ1に対してシリンジ200を装着する際は、まず、クランプ部3を、受け部10と対向しない位置にする。次いで、シリンジ200のシリンダ部材201のシリンダ本体201aを受け部10の受け面に配置すると共に、シリンジ200のシリンダ部材201のフランジ部201cを、フランジ挟持部20(図1等参照)が形成するスリットに挿入する。これにより、受け部10がシリンジ200のシリンダ本体201aの外周面を受けた、本実施形態の受け状態にすることができる。
より具体的に、図6に示すように、本実施形態のシリンジポンプ1の受け部10は、ハウジング11の正面の下側の端部に位置している。そして、上述の支持部4は、受け部10よりも下側の位置から外方(図6では右側)に向かって突出している。そのため、本実施形態のシリンジポンプ1では、受け部10がシリンジ200のシリンダ本体201aの外周面を受けた受け状態にするために、シリンジ200を、ハウジング11の正面の上側から、受け部10に向かって移動させる。換言すれば、受け部10は、シリンジ200を、ハウジング11の正面の上側から受け入れ可能である。そして、受け部10は、支持部4の存在により、シリンジ200を、ハウジング11の正面の下側からは受け入れることができない。
次いで、可動部材12を軸方向Aに移動させ、シリンジ200のピストン部材202を、可動部材12に対して固定する(図1等参照)。具体的に、シリンジ200のピストン部材202のフランジ部202bを、可動部材12の本体部12aとフランジ固定部12bの間に配置させる。
最後に、クランプ部3を、支持部4に対して回動させることで、受け部10と対向する位置にすると共に、支持部4の長手方向に移動させることで、受け部10との間でシリンダ本体201aを挟み込む挟持位置にする。
このようにして、シリンジポンプ1に対してシリンジ200を装着することができる。装着状態のシリンジ200を取り外す際は、上述の装着作業と逆の手順を実行すればよい。
次に、図7を参照して、図1に示すシリンジポンプ1の電気的な構成例について説明する。図7は、図1に示すシリンジポンプ1の電気的な構成例を示す図である。図7において、シリンジポンプ1は、全体的な動作の判断及び制御を行う制御部13を有している。この制御部13は、例えばワンチップのマイクロコンピュータである。
制御部13は、電源スイッチ15Aと、スイッチ111と、に接続されている。
電源スイッチ15AがONに設定されると、制御部13は、シリンジポンプ1内の各種機能ブロックを起動させる。電源スイッチ15AがOFFに設定されると、制御部13は、例えば、シリンジ200を動作させる移動機構17の動作を含む各種機能ブロックの電気的な動作を停止させる。この際、制御部13は、電源スイッチ15AがOFFに設定されても、少なくとも所定の条件を満たすまでは演算を継続する。すなわち、電源スイッチ15AがOFFに設定されたことにより、ユーザにとってはシリンジポンプ1の動作が停止したように見えても、制御部13は演算を継続することができる。
スイッチ111は、電源コンバータ部(電源部)112と、例えばリチウムイオン電池のような充電池113とを切り換えることで、電源コンバータ部112及び充電池113のいずれか一方から制御部13に電源を供給する。
電源コンバータ部112は、コンセント114を介して商用交流電源115に接続されている。
図7において、移動機構17は、制御部13に電気的に接続されている。移動機構17は、制御部13からの命令に基づき動作する。
図7において、移動機構17には、一対の第1検出センサ120及び第2検出センサ121が含まれている。第1検出センサ120及び第2検出センサ121は、シリンジ200のシリンダ部材201が、適切に配置されているかどうかを検知して、制御部13に通知する。
具体的に、第1検出センサ120は、シリンダ本体201aが、受け部10とクランプ部3との間で挟持されている状態か否かを検出することができる。このような検出は、例えば、クランプ部3の位置や、クランプ部3の受け部10からの距離等を検出することで実行可能である。
第2検出センサ121は、フランジ部201cが、フランジ挟持部20(図1等参照)の間のスリットで挟持されている状態か否かを検出することができる。このような検出は、上述の第1検出センサ120と同様、フランジ挟持部20の位置や距離等を検出することで実行可能である。
移動機構17の駆動部7のモータ133は、制御部13の指令によりモータドライバ134により駆動されると、送りネジ135を回転させて可動部材12を軸方向Aの先端側に移動させる。これにより、可動部材12は、シリンジ200のピストン部材202のフランジ部202bを軸方向Aの先端側に押圧して、シリンダ本体201a内の薬液を、チューブ203(図4参照)を通じて患者Pの体内に、留置針204(図4参照)を通じて送液する。
図7において、早送りスイッチ15B、開始スイッチ15C、停止スイッチ15D、表示切替スイッチ15E、戻る/消音スイッチ15F、及び確認スイッチ15Gは、制御部13に電気的に接続されている。開始スイッチ15Cが押下されると送液開始の制御信号が制御部13に入力される。また、停止スイッチ15Dが押下されると送液停止の制御信号が制御部13に入力される。
図7において、表示部ドライバ130は、制御部13に電気的に接続されている。表示部ドライバ130は、制御部13の指令により表示部14を駆動して種々の情報を表示部14に表示する。
図7において、スピーカ131は、制御部13に電気的に接続されている。スピーカ131は、制御部13の指令により各種の警報内容を音声により告知する。
アンテナ部16は、制御部13により制御可能である。この詳細は後述する。
通信部18は、ネットワークを介して外部のサーバなどとデータの送受信を行う。また、通信部18は、例えばデスクトップコンピュータのようなコンピュータとローカルに接続して、データの送受信を行ってもよい。
記憶部19は、例えば半導体メモリ及び磁気メモリ等を用いて構成されてよい。記憶部19は、上述したように、シリンジポンプ1の動作に必要な各種データ及び各種プログラムを記憶する。また、アンテナ部16で受信された応答部201dのデータは、制御部13により取得され、記憶部19に格納される。
図7においては、記憶部19が制御部13の外部にある構成としているが、記憶部19の全部又は一部が制御部13に含まれる構成であってもよい。
以下、シリンジポンプ1の特徴部について更に詳細に説明する。
[保持空間X]
図3に示すように、シリンジポンプ1は、上述したように、電磁波に対して応答する応答部201dが設けられた、シリンジ200のシリンダ部材201を保持可能な保持空間Xを区画している。
より具体的に、本実施形態のシリンジポンプ1の保持空間Xは、受け部10とクランプ部3と、の間に区画されている。
[アンテナ部16の距離可変機構]
アンテナ部16は、上述したように、保持空間Xで保持されたシリンダ部材201に向かって、電磁波を発信可能である。また、アンテナ部16は、発信された電磁波に応答する、シリンダ部材201の応答部210d、から送信されるデータを受信可能である。
シリンジポンプ1は、アンテナ部16の保持空間Xからの距離を変動可能な距離可変機構を備えている(図3、図6参照)。図8は、シリンジポンプ1におけるアンテナ部16の距離可変機構を示す図である。図8では、説明の便宜上、装着状態でのシリンジ200のシリンダ部材201におけるシリンダ本体201a及び応答部201dの位置を、二点鎖線により示している。
図8に示すように、本実施形態の距離可変機構は、ハウジング11に対して取り付けられている軸部材40と、この軸部材40を中心に回動可能な回動部材41と、を備えている。
軸部材40は、ハウジング11に対して固定されている円柱状又は円筒状の部材である。回動部材41は、軸部材40に対して回動可能に取り付けられている棒状部材である。また、回動部材41は、軸部材40の位置から一方側に延在する第1延在部41aと、軸部材40の位置から他方側に延在する第2延在部41bと、を備えている。
第1延在部41aは、クランプ部3に対して、直接的又は間接的に連結されている。また、第2延在部41bは、アンテナ部16に対して、直接的又は間接的に連結されている。そのため、回動部材41が軸部材40に対して回動すると、クランプ部3、及び、アンテナ部16、を同時に移動させることができる。
また、第1延在部41aとクランプ部3とは、互いに回動可能に、直接的又は間接的に、連結されている。更に、第2延在部41bとアンテナ部16とは、互いに回動可能に、直接的又は間接的に、連結されている。
クランプ部3は、上述したように、支持部4の長手方向(中心軸線O2に平行な方向)に移動可能である。また、アンテナ部16は、軸方向Aの両側に配置された、支持部4の長手方向に延在するガイド壁部42に沿って、支持部4の長手方向に移動可能である。回動部材41を、軸部材40を中心に回動させることで、クランプ部3、及び、アンテナ部16、を支持部4の長手方向に移動させることができる。
本実施形態のクランプ部3は、上述したように、挟持位置と非挟持位置との間を、支持部4の長手方向に移動することができる(図8の二点鎖線矢印参照)。また、アンテナ部16は、上述したガイド壁部42に沿って、保持空間Xに最も近づく第1位置(図3の実線の位置及び図6の二点鎖線の位置を参照)と保持空間Xから最も遠ざかる第2位置(図3の二点鎖線の位置及び図6の実線の位置を参照)との間を、支持部4の長手方向に移動することができる(図3、図6、図8の二点鎖線矢印参照)。
したがって、図8に示す本実施形態の距離可変機構では、クランプ部3を、挟持位置から非挟持位置に向かって支持部4の長手方向に移動させるように、回動部材41を、軸部材40周りに回動させると、アンテナ部16は、ガイド壁部42に沿って、第1位置から第2位置へと移動し、保持空間Xから遠ざかる。つまり、本実施形態の距離可変機構は、クランプ部3が受け部10から遠ざかる動作(本実施形態では挟持位置から非挟持位置への移動動作)に連動して、アンテナ部16を保持空間Xから遠ざける方向に、ポンプ本体部2内に向かって後退させる。
逆に、図8に示す本実施形態の距離可変機構では、クランプ部3を、非挟持位置から挟持位置に向かって支持部4の長手方向に移動させるように、回動部材41を、軸部材40周りに回動させると、アンテナ部16は、ガイド壁部42に沿って、第2位置から第1位置へと移動し、保持空間Xに近づく。つまり、本実施形態の距離可変機構は、クランプ部3が受け部10に近づく動作(本実施形態では非挟持位置から挟持位置への移動動作)に連動して、アンテナ部16を保持空間Xに近づける。
図8では、回動部材41は、ハウジング11内に位置し、ハウジング11に固定された軸部材40を中心に回動可能な構成としているが、この構成に限られない。回動部材41自体が軸部を備え、この軸部がハウジング11に回動可能に支持される構成であってもよい。つまり、回動部材41とは別体の軸部材40が無くてもよい。
また、第1延在部41aとクランプ部3とは、互いに回動可能に連結されているが、この具体的な連結構成についても、一方が他方に対して回動可能であれば、特に限定されない。例えば、第1延在部41aに軸部41a1が設けられ、クランプ部3が、軸部41a1に対して回動可能に取り付けられている構成とすることができる。
更に、第2延在部41bとアンテナ部16とは、互いに回動可能に連結されているが、この具体的な連結構成についても、一方が他方に対して回動可能であれば、特に限定されない。例えば、第2延在部41bに軸部41b1が設けられ、アンテナ部16が、軸部41b1に対して回動可能に、軸部41b1に直接的又は間接的に取り付けられている構成とすることができる。
図8に示すように、本実施形態のクランプ部3には、クランプ部の支持部4の長手方向の移動に追従して移動し、回動部材41の第1延在部41aに連結されている継手部材43が固定されている。継手部材43は、支持部4の内部を通り、ポンプ本体部2のハウジング11の内部まで延在している。クランプ部3が、支持部4の長手方向に移動すると、継手部材43は、クランプ部3の移動に追従し、支持部4の内部を長手方向に移動する。そして、回動部材41の第1延在部41aは、ポンプ本体部2のハウジング11内で、継手部材43に対して、回動可能に取り付けられている。つまり、本実施形態の回動部材41の第1延在部41aは、継手部材43を介して、クランプ部3に、間接的に取り付けられている。
また、図8に示すように、本実施形態のアンテナ部16は支持部材44により支持されている。回動部材41の第2延在部41bは、ポンプ本体部2のハウジング11内で、支持部材44に対して、回動可能に取り付けられている。つまり、本実施形態の回動部材41の第2延在部41bは、支持部材44を介して、アンテナ部16に、間接的に取り付けられている。
シリンジポンプ1がアンテナ部16の距離可変機構を備えることで、例えば、シリンダ部材201が保持空間Xに配置される前は、アンテナ部16を保持空間Xから遠ざけておくことができる。これにより、アンテナ部16が保持空間Xに配置されていないシリンダ部材201の応答部201dと通信することを、抑制することができる。そのため、シリンジポンプ1に装着されないシリンジ200の応答部201dから、誤ってデータを取得する可能性を低減することができる。
また、シリンジポンプ1がアンテナ部16の距離可変機構を備えることで、例えば、シリンダ部材201が保持空間Xに配置された状態で、アンテナ部16を保持空間Xに近づけておくことができる。これにより、アンテナ部16が保持空間Xに配置されたシリンダ部材201の応答部201dと通信する可能性を、高めることができる。そのため、シリンジポンプ1に装着されたシリンジ200の応答部201dから、より確実にデータを取得することができる。
更に、本実施形態のシリンジポンプ1では、上述したように、距離可変機構が、クランプ部3が受け部10から遠ざかる動作に連動して、アンテナ部16を保持空間Xから遠ざける。このような構成とすれば、クランプ部3が保持空間Xから遠ざかる動作、すなわち、保持空間Xにシリンダ部材201を受け入れ可能とするための1つの動作によって、アンテナ部16を、保持空間Xから遠ざけることができる。
医師や看護師等の医療従事者は、例えば、複数のシリンジポンプ1がスタンド250(図4参照)に連接して取り付けられている場合、複数のシリンジ200を手Hに把持した状態のまま、各シリンジポンプ1に対して対応する1つのシリンジ200を、順次装着していくことがある(図6参照)。つまり、クランプ部3が保持空間Xから遠ざかると、保持空間Xへのシリンジ200の装着や取り替え等に際し、装着予定のないシリンジ200が保持空間X近傍を通過する可能性が高まる。そのため、本実施形態では、クランプ部3が保持空間Xから遠ざかる動作によって、アンテナ部16を保持空間Xから遠ざけ、装着予定のないシリンジ200が保持空間X近傍を通過した場合にそのシリンジ200の応答部201dが保持するデータを誤って取得する可能性を、低減することができる。
また、本実施形態のシリンジポンプ1では、上述したように、距離可変機構が、クランプ部3が受け部10に近づく動作に連動して、アンテナ部16を保持空間Xに近づける。このような構成とすれば、クランプ部3が保持空間Xに近づく動作、すなわち、保持空間Xにシリンダ部材201が配置されたことを示す1つの動作によって、アンテナ部16を、保持空間Xに近づけることができる。そのため、保持空間Xに配置されたシリンジ200の応答部201dが保持するデータを、より確実に取得することができる。
このように、本実施形態のシリンジポンプ1における距離可変機構は、クランプ部3の動作に連動して、アンテナ部16の保持空間Xからの距離を変動しているが、シリンジポンプ1の別の形態変化に連動して、アンテナ部16の保持空間Xからの距離を変動させてもよい。
例えば、シリンジポンプ1を、保持空間Xにシリンダ部材201を受け入れ可能な第1形態と、保持空間Xにシリンダ部材201を受け入れ不能な第2形態と、に形態変化可能な構成として、距離可変機構が、第2形態から第1形態への形態変化に連動し、アンテナ部16を保持空間Xから遠ざけるようにしてもよい。この場合、第1形態及び第2形態の違いは、本実施形態のクランプ部3の位置に限らず、別の部材・部位の形状や位置等であってもよい。このようにすれば、装着予定のないシリンジ200が保持空間X近傍を通過した場合にそのシリンジ200の応答部201dが保持するデータを誤って取得する可能性を、低減することができる。また、距離可変機構は、第1形態から第2形態への形態変化に連動して、アンテナ部16を保持空間Xに近づけることが好ましい。このようにすれば、保持空間Xに配置されたシリンジ200の応答部201dが保持するデータを、より確実に取得することができる。
更に、図8では、クランプ部3の移動に対して機械的な機構により連動して移動するアンテナ部16を示しているが、この構成に限らず、ソレノイド等を利用して電気的な機構によりアンテナ部16を連動させてもよい。但し、図8に示すような機械的な機構を用いれば、アンテナ部16を、より簡易な構成で、クランプ部3の移動に連動させることができる。
また、シリンジポンプ1の部材・部位の移動や形態の変化に連動しない距離可変機構としてもよい。すなわち、医療従事者が、任意に、機械的又は電気的な機構を利用して、アンテナ部16の保持空間Xからの距離を変動できる構成としてもよい。但し、本実施形態のように、シリンジポンプ1の部材・部位の移動や形態の変化に連動する距離可変機構とすれば、医療従事者の操作工程を減らすことができ、操作の手間を軽減できる。特に、クランプ部3の移動は、シリンジ200を保持空間Xに装着する作業、シリンジ200を保持空間Xから取り外す作業、シリンジ200を取り替える作業、に関係する可能性が高い。そのため、クランプ部3が移動した場合は、アンテナ部16が装着予定のないシリンジ200の応答部201dから誤ってデータを取得し易い状況になるおそれがある。これに対して、クランプ部3の移動に連動する距離可変機構とすれば、このような状況になった場合に装着予定のないシリンジ200の応答部201dから誤ったデータを取得する可能性を、低減することができる。
また、本実施形態のアンテナ部16はハウジング11に移動可能に取り付けられており、クランプ部3の移動方向と略平行に移動可能である。より具体的に、本実施形態のクランプ部3及びアンテナ部16は、受け部10とクランプ部3との対向方向Dに略平行に移動可能である。換言すれば、受け部10とクランプ部3との間に保持空間Xがあり、この保持空間Xから対向方向Dの一方側の位置で、クランプ部3が対向方向Dに移動可能である。また、保持空間Xから対向方向Dの他方側の位置で、アンテナ部16が対向方向Dに移動可能である。
つまり、アンテナ部16は、保持空間Xに対して受け部10側で、保持空間Xとの距離を変動可能である。そして、クランプ部3は、保持空間Xに対して受け部10側とは反対側で、保持空間Xとの距離を変動可能である。そして、クランプ部3が保持空間Xに近づくように対向方向Dに移動すると、アンテナ部16も保持空間Xに近づくように対向方向Dに移動する。逆に、クランプ部3が保持空間Xから遠ざかるように対向方向Dに移動すると、アンテナ部16も保持空間Xから遠ざかるように対向方向Dに移動する。このように、クランプ部3及びアンテナ部16が略平行に移動する構成とすれば、距離可変機構をより簡易な機構により実現し易くなる。
そして、本実施形態の距離可変機構は、クランプ部3が受け部10から遠ざかる動作に連動して、アンテナ部16を保持空間Xから遠ざける方向に、ポンプ本体部2内に向かって後退させる。このように、アンテナ部16を保持空間Xから遠ざける際に、ポンプ本体部2内に向かって後退させれば、アンテナ部16から発信される電磁波が、保持空間Xに到達し難くなることに加えて、ポンプ本体部2内の各種金属部材等の構成要素により、保持空間X以外のポンプ本体部2の外側にも漏れ難くなる。
図8では、アンテナ部16が、対向方向Dに直線状に移動する構成を示したが、アンテナ部16と保持空間Xとの距離が変動できればよく、この構成に限られない。したがって、アンテナ部を、例えば、支点の周りを円弧状に回動する構成とし、保持空間Xからの距離をアンテナ部が回動することで可変可能としてもよい。
[アンテナ部16]
本実施形態のアンテナ部16は、導線部としてのコイル状アンテナを含み、HF帯(短波帯、13.56MHz)の周波数帯において電磁波を発信する、所謂「電磁誘導方式」の構成である。アンテナ部16のコイル状アンテナから発信される磁束により、応答部201dを構成するRFタグのアンテナ部に設けられたコイル状アンテナに誘導電流を発生させる。
また、アンテナ部16の電磁波の発信は、制御部13により制御される。更に、上述したように、アンテナ部16で受信された応答部201dのデータは、制御部13により取得され、記憶部19(図7参照)に格納される。換言すれば、本実施形態のシリンジポンプ1では、アンテナ部16及び制御部13により、シリンジ200の応答部201dを構成するRFタグ、のリーダが構成されている。但し、制御部13とは別の制御部を設け、この制御部がアンテナ部16と共にリーダを構成し、制御部13が、このリーダからデータを取得するようにしてもよい。
本実施形態のアンテナ部16は、保持空間Xに対向して配置されており、保持空間Xに向かって指向性のある電磁波を発信可能である。具体的に、本実施形態のアンテナ部16は、コイル状アンテナの中心軸線O3と平行な方向を厚み方向とする薄肉のシート状であり、この厚み方向の一方側に向かって指向性を有する電磁波を発信するように構成されている。より具体的に、本実施形態のアンテナ部16は、コイル状アンテナに対して厚み方向の他方側に、電磁波の少なくとも一部を遮蔽可能な遮蔽部材としてのフェライトシートを備えている。換言すれば、本実施形態のアンテナ部16のコイル状アンテナのうち、アンテナ部16の厚み方向の他方側は、磁束を遮蔽可能なフェライトシートで覆われている。そのため、本実施形態のアンテナ部16は、厚み方向の一方側に向かって指向性を有する電磁波は発信することができる。アンテナ部16の遮蔽部材は、電磁波を吸収、反射等して、透過させないようにできればよく、上述のフェライトシートに限られない。
このようにして、本実施形態のアンテナ部16は、保持空間Xに向かって指向性を有する電磁波を発信することができる。
また、シリンジ200の応答部201dを構成するRFタグも、コイル状アンテナを備える薄肉のシート状である。そして、RFタグは、シリンダ本体201aの周面に沿って取り付けられている。そのため、シート状のアンテナ部16は、応答部201dを構成するシート状のRFタグと、厚み方向の面同士が対向するように配置されることが好ましい。そのため、本実施形態のアンテナ部16は、その厚み方向の一方側の面が、装着状態のシリンジ200のシリンダ本体201aの外周面と、径方向Bに対向するように、配置されている。
軸方向Aと直交する断面視(図3参照)において、アンテナ部16の延在方向Fの幅は、シリンダ本体201aの外径の1/2以上とすることが好ましい。このようにすれば、シリンジ200の応答部201dのデータがアンテナ部16によって取得される可能性を、より高めることができる。ここで、「シリンダ本体201aの外径」とは、シリンジポンプ1に装着可能なシリンジ200のうち最大の外径を有するシリンダ本体201aの外径を意味する。シリンジポンプ1に装着可能なシリンジ200のうち、最大の外径を有するシリンダ本体201aを備えるシリンジ200は、通常は50mLシリンジであり、取り扱い説明書等により特定することができる。ISO11040−6で規定されている50mLシリンジのシリンダ本体201aの外径は、31.5mm〜32.3mmで±0.2mmである。
次に、アンテナ部16が配置される位置について説明する。
本実施形態のアンテナ部16は、上述したように、ポンプ本体部2に設けられている。より具体的に、本実施形態のアンテナ部16は、ハウジング11内でハウジング11の内壁に、移動可能に取り付けられている。アンテナ部16から発信される電磁波は、ハウジング11を透過し、保持空間Xに保持されているシリンジ200の応答部201dに作用する。
特に、本実施形態では、アンテナ部16が、受け部10の位置に設けられている。より具体的に、本実施形態のアンテナ部16は、ハウジング11の内壁のうち、受け部10の裏側の位置に、移動可能に取り付けられている。アンテナ部16を受け部10の位置に設ければ、アンテナ部16を、保持空間Xに保持されたシリンダ本体201aの周壁に設けられた応答部201dに、近づけることができる(例えば対向距離が35mm以内)。そのため、アンテナ部16が、保持空間Xで保持されたシリンダ本体201aの周壁に設けられた応答部201dが保持するデータを取得できる可能性を、より高めることができる。アンテナ部16は、保持空間Xとの距離を変動できるようにハウジング11に取り付けられていればよい。したがって、アンテナ部16は、本実施形態のようにハウジング11の内壁に取り付けられ、ハウジング11の外面に露出しない構成であってもよい。また、アンテナ部16は、ハウジング11の外面又は内面に取り付けられ、外面に露出する構成としてもよい。
また、上述したように、本実施形態のアンテナ部16は、薄肉のシート状であり、その厚み方向の一方側に向かって指向性を有する電磁波を発信する。また、応答部201dは、シリンダ本体201aの周壁に設けられている。そのため、アンテナ部16は、受け状態でのシリンジ200のシリンダ本体201aの外周面と対向するように配置することが好ましい。アンテナ部16を受け部10の位置に設ければ、アンテナ部16を、保持空間Xに保持されたシリンダ本体201aの外周面と対向するように配置し易い。つまり、アンテナ部16とシリンジ200の応答部201dとが対向する可能性を高めることができる。
図9は、別の実施形態としてのシリンジポンプ50を示す図である。上述したシリンジポンプ1が距離可変機構を備えるのに対して、本実施形態のシリンジポンプ50は、距離可変機構に代えて、アンテナ部16の姿勢可変機構を備える点で相違している。その他の構成は共通であるため、ここでは説明を省略する。
図9に示す姿勢可変機構は、アンテナ部16が保持空間Xに対向する第1姿勢(図9の実線参照)と、アンテナ部16が第1姿勢よりも保持空間Xに対向しない第2姿勢(図9の二点鎖線参照)と、の間で、アンテナ部16の保持空間Xに対する向きを変動可能である。
具体的に、図9に示すように、アンテナ部16は、第1姿勢と第2姿勢との間で、回動することにより向きを変動可能である(図9の二点鎖線矢印参照)。より具体的に、本実施形態のアンテナ部16は、軸方向Aに延びる回動中心軸線O4の周りを回動可能であり、回動中心軸線O4の周りを回動することで、保持空間Xに対向する向きを変動可能である。回動中心軸線O4は、例えば、ハウジング11に固定された軸部材により構成可能である。
図9に示すシリンジポンプ50は、保持空間Xにシリンダ部材201を受け入れ可能な第1形態と、保持空間Xにシリンダ部材201を受け入れ不能な第2形態と、に形態変化可能である。そして、図9に示すシリンジポンプ50の姿勢可変機構は、第2形態から第1形態への形態変化に連動し、アンテナ部16の向きを、第1姿勢から第2姿勢へと変動させる。このようにすれば、装着予定のないシリンジ200が保持空間X近傍を通過した場合にそのシリンジ200の応答部201dが保持するデータを誤って取得する可能性を、低減することができる。また、距離可変機構は、第1形態から第2形態への形態変化に連動して、アンテナ部16を保持空間Xに対向させる、すなわち、第2姿勢から第1姿勢へと変動させることが好ましい。このようにすれば、保持空間Xに配置されたシリンジ200の応答部201dが保持するデータを、より確実に取得することができる。
例えば、上述したシリンジポンプ1と同様、姿勢可変機構は、クランプ部3が受け部10から遠ざかる動作に連動して、アンテナ部16の向きを、第1姿勢から第2姿勢へと変動させることができる。このようすれば、クランプ部3が保持空間Xから遠ざかる動作によって、アンテナ部16を、第1姿勢よりも保持空間Xに対向しない第2姿勢に変動でき、その結果、装着予定のないシリンジ200が保持空間X近傍を通過した場合にそのシリンジ200の応答部201dが保持するデータを誤って取得する可能性を、低減することができる。
また、本実施形態のシリンジポンプ50では、姿勢可変機構が、クランプ部3が受け部10に近づく動作に連動して、アンテナ部16を第2姿勢から第1姿勢に変動させる。このような構成とすれば、クランプ部3が保持空間Xに近づく動作、すなわち、保持空間Xにシリンダ部材201が配置されたことを示す1つの動作によって、アンテナ部16を、保持空間Xに対向させた状態に近づけることができる。そのため、保持空間Xに配置されたシリンジ200の応答部201dが保持するデータを、より確実に取得することができる。
このように、本実施形態のシリンジポンプ50における姿勢可変機構は、クランプ部3の動作に連動して、アンテナ部16の保持空間Xに対する向きを変動している。
また、シリンジポンプ1の部材・部位の移動や形態の変化に連動しない姿勢可変機構としてもよい。すなわち、医療従事者が、任意に、機械的又は電気的な機構を利用して、アンテナ部16の保持空間Xに対する向きを変動できる構成としてもよい。
上述したように、応答部201dを構成するRFタグは、シリンダ本体201aの外周面の一部のみに取り付けられている。そのため、シリンダ本体201aは、アンテナ部16と応答部201dとが対向するように、保持空間Xに保持されることが好ましい。しかしながら、医師や看護師などの医療従事者によっては、シリンダ本体201aを、アンテナ部16と応答部201dとが対向するように、保持空間Xに設置しない場合がある。これに対して、本実施形態の姿勢可変機構によれば、例えば制御部13により、アンテナ部16の角度を変動させて、シリンダ本体201aとの対向状態を変化できる。そのため、アンテナ部16の角度を、応答部201dからデータを取得し易い角度に調整することができる。
本開示に係るシリンジポンプは、上述した具体的構成に限られるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限り、種々の変形、変更が可能である。例えば、上述のシリンジポンプ1は、アンテナ部16のみを備える構成であるが、2つ以上のアンテナ部を備える構成としてもよい。また、上述のシリンジポンプ1では、アンテナ部16自体が、所定の方向に指向性のある電磁波を発信可能な構成であるが、この構成に限らず、例えば、アンテナ部自体は所定の方向に指向性のある電磁波を発信可能ではなく、アンテナ部以外の別の部材(例えばフェライトシート)を用いて、所定の方向に指向性のある電磁波を発信可能な構成であってもよい。