以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態1.
図1は、車両における測距センサの設置位置の例を示す説明図である。図1を参照して、実施の形態1に係る障害物検出装置に用いられる測距センサについて説明する。
図1に示す如く、車両1に複数個の測距センサ2が設けられている。個々の測距センサ2は、超音波、電波又は光などを出射するものである。以下、超音波、電波及び光などを総称して「探索波」という。また、個々の測距センサ2は、車両1の周囲における障害物Oにより探索波SWが反射されたとき、当該反射された探索波(以下「反射波」ということがある。)RWを受信するものである。
より具体的には、車両1の左側部に2個の測距センサ2_1,2_2が設けられている。測距センサ2_1,2_2の各々は、車両1に対する左方の領域(以下「左方領域」という。)に探索波SWを出射するものである。測距センサ2_1,2_2の各々は、左方領域における障害物Oにより探索波SWが反射されたとき、かかる反射波RWを受信するものである。図中Lは、測距センサ2_1,2_2の設置間隔を示している。
また、車両1の右側部に他の2個の測距センサ2_3,2_4が設けられている。測距センサ2_3,2_4の各々は、車両1に対する右方の領域(以下「右方領域」という。)に探索波SWを出射するものである。測距センサ2_3,2_4の各々は、右方領域における障害物Oにより探索波SWが反射されたとき、かかる反射波RWを受信するものである。
以下、左方領域及び右方領域を総称して「側方領域」という。側方領域における障害物Oは、駐車中の他車両を含むものである。
以下、いずれかの測距センサ2が探索波SWを出射した場合において、この測距センサ2が当該出射された探索波SWに対応する反射波RWを受信したとき、当該出射された探索波SW及び当該受信された反射波RWを総称して「直接波」ということがある。また、いずれかの測距センサ2が探索波SWを出射した場合において、他の測距センサ2が当該出射された探索波SWに対応する反射波RWを受信したとき、当該出射された探索波SW及び当該受信された反射波RWを総称して「間接波」ということがある。
図2は、実施の形態1に係る障害物検出装置を用いた駐車支援装置の要部を示すブロック図である。図3は、実施の形態1に係る障害物検出装置における障害物検出部の要部を示すブロック図である。図2及び図3を参照して、実施の形態1に係る障害物検出装置について説明する。また、この障害物検出装置を用いた駐車支援装置について説明する。
なお、障害物検出装置100は、車両1の速度Vを示す情報(以下「車両速度情報」という。)、車両1の周囲における外気温度を示す情報(以下「外気温度情報」という。)、並びに車両1の位置座標及び車両1の向きを示す情報(以下「車両位置情報」という。)などを取得する機能を有している。これらの情報は、例えば、車両1における車載ネットワーク(不図示)から取得される。車載ネットワークは、例えば、CAN(Controller Area Network)により構成されている。
また、障害物検出装置100には、個々の測距センサ2により探索波SWが出射される時間間隔Tを示す情報(以下「送信周期情報」という。)、空気中の探索波SWの伝搬速度vを示す情報(以下「伝搬速度情報」という。)、並びに車両1における個々の測距センサ2の設置位置及び車両1における個々の測距センサ2の設置方向を示す情報(以下「センサ位置情報」という。)などが予め記憶されている。センサ位置情報は、設置間隔Lを示す情報を含むものである。
以下、2個の測距センサ2_1,2_2を用いて、左方領域における障害物Oを検出する例を中心に説明する。
送信制御部11は、個々の測距センサ2により出射される探索波SWに対応する電気信号(以下「送信信号」という。)TSを生成するものである。送信制御部11は、当該生成された送信信号TSを対応する測距センサ2に出力するものである。これにより、送信制御部11は、個々の測距センサ2に探索波SWを出射させる制御(以下「送信制御」という。)を実行するものである。
より具体的には、送信制御部11は、測距センサ2_1により出射される探索波SW_1に対応する送信信号TS_1を生成する。送信制御部11は、当該生成された送信信号TS_1を測距センサ2_1に出力する。これにより、送信制御部11は、測距センサ2_1に探索波SW_1を出射させる。また、送信制御部11は、測距センサ2_2により出射される探索波SW_2に対応する送信信号TS_2を生成する。送信制御部11は、当該生成された送信信号TS_2を測距センサ2_2に出力する。これにより、送信制御部11は、測距センサ2_2に探索波SW_2を出射させる。
ここで、送信制御部11は、車両速度情報及び送信周期情報に基づき、車両1が所定速度(例えば30キロメートル毎時)Vth以下の速度Vにて走行しているとき、所定の時間間隔T_1にて測距センサ2_1に探索波SW_1を出射させるとともに、所定の時間間隔T_2にて測距センサ2_2に探索波SW_2を出射させるようになっている。T_1及びT_2は、互いに同等の値(すなわちT)に設定されている。また、T_1及びT_2の各々は、一定の値(すなわちT)に設定されている。
個々の測距センサ2に出力される送信信号TSは、パルス信号である。当該パルス信号における搬送波は、所定の周波数fを有する正弦波である。当該パルス信号における個々のパルスは、所定周期(例えば8周期、32周期又は64周期)分の正弦波に対応するものである。また、当該パルス信号は、高い自己相関特性を有する符号により変調されたものである。具体的には、例えば、当該パルス信号は、バーカー符号又はPN(Pseudo Noise)符号により変調されたものである。
受信制御部12は、個々の測距センサ2により出力された電気信号(以下「受信信号」という。)RSを取得する制御(以下「受信制御」という。)を実行するものである。ここで、測距センサ2_1が反射波RW_1を受信したとき、測距センサ2_1により出力される受信信号RS_1は、当該受信された反射波RW_1に対応する信号となる。また、測距センサ2_2が反射波RW_2を受信したとき、測距センサ2_2により出力される受信信号RS_2は、当該受信された反射波RW_2に対応する信号となる。
送信制御部11及び受信制御部12により、センサ制御部13が構成されている。
障害物検出部14は、受信制御部12により取得された受信信号RSを用いて、障害物Oを検出するものである。より具体的には、障害物検出部14は、探索波SWが反射された地点(以下「反射点」という。)RPを検出することにより、障害物Oを検出するものである。
図3に示す如く、障害物検出部14は、有無判定部21、距離算出部22及び位置算出部23を有している。有無判定部21は、以下のように反射波RWの受信の有無を判定するものである。距離算出部22は、有無判定部21により反射波RWの受信があると判定されたとき、以下のように距離dを算出するものである。また、位置算出部23は、距離算出部22により算出された距離dを用いて、以下のように反射点RPの位置座標を算出するものである。
すなわち、障害物検出部14は、測距センサ2_1により探索波SW_1が送信された時刻t1_1を示す情報を取得する。この情報は、例えば、送信制御部11から取得される。図2において、送信制御部11と障害物検出部14間の接続線は図示を省略している。
有無判定部21は、時刻t1_1を始点とする所定時間分の時間窓(以下「受信窓」という。)W_1における受信信号RS_1の強度RSS_1を算出する。有無判定部21は、当該算出された強度RSS_1を所定の閾値RSSthと比較する。受信窓W_1内にて強度RSS_1が閾値RSSthを超えている場合、有無判定部21は、測距センサ2_1による反射波RW_1の受信があると判定する。そうでない場合、有無判定部21は、測距センサ2_1による反射波RW_1の受信がないと判定する。
反射波RW_1の受信があると判定された場合、有無判定部21は、強度RSS_1が閾値RSSthを超えた時刻t2_1を示す情報、すなわち反射波RW_1が受信された時刻t2_1を示す情報を距離算出部22に出力する。距離算出部22は、時刻t1_1と時刻t2_1間の時間Δt_1を算出する。距離算出部22は、当該算出された時間Δt_1の値、及び伝搬速度情報が示す伝搬速度vの値を用いて、以下の式(1)により距離d_1を算出する。このとき、距離算出部22は、外気温度情報が示す外気温度の値に応じて、伝搬速度vの値を補正するものであっても良い。
d_1=(v×Δt_1)/2 (1)
図4Aは、送信信号TS_1の強度TSS_1の例を示している。図4Bは、受信信号RS_1の強度RSS_1の例を示している。また、図4Bは、受信窓W_1の例、時刻t1_1の例、時刻t2_1の例、及び時間Δt_1の例を示している。
反射波RW_1が直接波である場合、すなわち反射波RW_1が探索波SW_1に対応するものである場合、上記式(1)により算出される距離d_1は、探索波SW_1が反射されたタイミングにおける車両1と探索波SW_1が反射された地点(すなわち反射点)RP_1との間の距離d_1に対応している。したがって、この場合、上記式(1)により算出される距離d_1は、このタイミングにおける車両1と障害物O間の距離Dに対応している。
位置算出部23は、車両位置情報及びセンサ位置情報を用いて、探索波SW_1が送信されたタイミング又は反射波RW_1が受信されたタイミングにおける測距センサ2_1の位置座標を算出する。位置算出部23は、当該算出された位置座標及び距離算出部22により算出された距離d_1に基づき、反射点RP_1の位置座標を算出する。
反射点RP_1の位置座標の算出には、公知の種々の技術を用いることができる。例えば、位置算出部23は、車両位置情報及びセンサ位置情報を用いて、探索波SW_1が送信されたタイミング又は反射波RW_1が受信されたタイミングにおける測距センサ2_1の向きを算出する。位置算出部23は、当該算出された向きに対応する向きを有し、かつ、上記算出された測距センサ2_1の位置座標に対応する始点を有し、かつ、上記算出された距離d_1に対応する大きさを有するベクトル(以下「正面ベクトル」という。)を算出することにより、反射点RP_1の位置座標を算出する。
また、障害物検出部14は、測距センサ2_2により探索波SW_2が送信された時刻t1_2を示す情報を取得する。この情報は、例えば、送信制御部11から取得される。
有無判定部21は、時刻t1_2を始点とする所定時間分の時間窓(すなわち受信窓)W_2における受信信号RS_2の強度RSS_2を算出する。有無判定部21は、当該算出された強度RSS_2を閾値RSSthと比較する。受信窓W_2内にて強度RSS_2が閾値RSSthを超えている場合、有無判定部21は、測距センサ2_2による反射波RW_2の受信があると判定する。そうでない場合、有無判定部21は、測距センサ2_2による反射波RW_2の受信がないと判定する。
反射波RW_2の受信があると判定された場合、有無判定部21は、強度RSS_2が閾値RSSthを超えた時刻t2_2を示す情報、すなわち反射波RW_2が受信された時刻t2_2を示す情報を距離算出部22に出力する。距離算出部22は、時刻t1_2と時刻t2_2間の時間Δt_2を算出する。距離算出部22は、当該算出された時間Δt_2の値、及び伝搬速度情報が示す伝搬速度vの値を用いて、以下の式(2)により距離d_2を算出する。このとき、距離算出部22は、外気温度情報が示す外気温度の値に基づき、伝搬速度vの値を補正するものであっても良い。
d_2=(v×Δt_2)/2 (2)
反射波RW_2が直接波である場合、すなわち反射波RW_2が探索波SW_2に対応するものである場合、上記式(2)により算出される距離d_2は、探索波SW_2が反射されたタイミングにおける車両1と探索波SW_2が反射された地点(すなわち反射点)RP_2との間の距離d_2に対応している。したがって、この場合、上記式(2)により算出される距離d_2は、このタイミングにおける車両1と障害物O間の距離Dに対応している。
位置算出部23は、車両位置情報及びセンサ位置情報を用いて、探索波SW_2が送信されたタイミング又は反射波RW_2が受信されたタイミングにおける測距センサ2_2の位置座標を算出する。位置算出部23は、当該算出された位置座標及び距離算出部22により算出された距離d_2に基づき、反射点RP_2の位置座標を算出する。
反射点RP_2の位置座標の算出には、公知の種々の技術を用いることができる。例えば、位置算出部23は、車両位置情報及びセンサ位置情報を用いて、探索波SW_2が送信されたタイミング又は反射波RW_2が受信されたタイミングにおける測距センサ2_2の向きを算出する。位置算出部23は、当該算出された向きに対応する向きを有し、かつ、上記算出された測距センサ2_2の位置座標に対応する始点を有し、かつ、上記算出された距離d_2に対応する大きさを有するベクトル(すなわち正面ベクトル)を算出することにより、反射点RP_2の位置座標を算出する。
このように、障害物検出部14による反射点RPの検出は、反射波RWが直接波であることを前提とするものである。このため、反射波RWが間接波である場合、障害物検出部14により検出される反射点RPは、いわゆる「虚像」となる。間接波による虚像RP’の検出は、測距センサ2_1,2_2による相互干渉の一態様である。
例えば、図5Aに示す如く、測距センサ2_1,2_2が探索波SW_1,SW_2をそれぞれ出射したものとする。そして、障害物Oが探索波SW_1を反射して、測距センサ2_1,2_2が反射波RW_1,RW_2をそれぞれ受信したものとする。
この場合における反射波RW_1は、直接波である。このため、距離算出部22により距離Dと同等の距離d_1が算出されて、位置算出部23により反射点RP_1の位置座標が算出される(図5B参照)。他方、この場合における反射波RW_2は、間接波である。このため、距離算出部22により距離Dよりも大きい距離d_2が算出されて、位置算出部23により虚像RP’の位置座標が算出される(図5B参照)。すなわち、障害物検出部14により虚像RP’が検出される。
図5Bに示す如く、虚像RP’の位置は、障害物Oの位置に対応していない。このため、障害物検出部14による障害物Oの検出精度を向上する観点から、虚像RP’の検出を抑止するのが好適である。換言すれば、測距センサ2_1,2_2による相互干渉を抑止するのが好適である。そこで、障害物検出装置100は、干渉抑止部15を有している。干渉抑止部15は、受信信号RSの波形と送信信号TSの波形との相関値CVに基づき、反射波RWが直接波であるか間接波であるかを識別することにより、測距センサ2_1,2_2による相互干渉を抑止するものである。
すなわち、上記のとおり、送信信号TS_1は、高い自己相関特性を有する符号により変調されたものである。そこで、干渉抑止部15には、送信信号TS_1の波形を示す情報が予め記憶されている。干渉抑止部15は、受信制御部12により受信信号RS_1が取得されたとき、当該取得された受信信号RS_1の波形と送信信号TS_1の波形との相互相関演算をすることにより、相関値CV_1を算出する。干渉抑止部15は、当該算出された相関値CV_1が所定値以上である場合、当該取得された受信信号RS_1に対応する反射波RW_1が直接波であると識別する。他方、当該算出された相関値CV_1が所定値未満である場合、干渉抑止部15は、当該取得された受信信号RS_1に対応する反射波RW_1が間接波であると識別する。
また、上記のとおり、送信信号TS_2は、高い自己相関特性を有する符号により変調されたものである。そこで、干渉抑止部15には、送信信号TS_2の波形を示す情報が予め記憶されている。干渉抑止部15は、受信制御部12により受信信号RS_2が取得されたとき、当該取得された受信信号RS_2の波形と送信信号TS_2の波形との相互相関演算をすることにより、相関値CV_2を算出する。干渉抑止部15は、当該算出された相関値CV_2が所定値以上である場合、当該取得された受信信号RS_2に対応する反射波RW_2が直接波であると識別する。他方、当該算出された相関値CV_2が所定値未満である場合、干渉抑止部15は、当該取得された受信信号RS_2に対応する反射波RW_2が間接波であると識別する。
障害物検出部14は、干渉抑止部15による識別結果に基づき、直接波に対応する受信信号RS_1のみを反射点RP_1の検出に用いる。換言すれば、障害物検出部14は、間接波に対応する受信信号RS_1を反射点RP_1の検出から除外する。また、障害物検出部14は、干渉抑止部15による識別結果に基づき、直接波に対応する受信信号RS_2のみを反射点RP_2の検出に用いる。換言すれば、障害物検出部14は、間接波に対応する受信信号RS_2を反射点RP_2の検出から除外する。これにより、虚像RP’の検出が抑止される。
ここで、障害物検出装置100は、変移部16を有している。変移部16は、測距センサ2_1,2_2による探索波SWの出射タイミングを相対的に変移させる制御(以下「変移制御」という。)を実行するものである。具体的には、例えば、変移部16は、測距センサ2_2による探索波SW_2の出射タイミングに対して、測距センサ2_1による探索波SW_1の出射タイミングを遅らせるものである。
図6Aは、変移制御の実行前における測距センサ2_1,2_2による探索波SWの出射タイミングの例を示している。図6Aに示す例において、測距センサ2_1による探索波SW_1の出射タイミング(すなわち時刻t1_1)は、測距センサ2_2による探索波SW_2の出射タイミング(すなわち時刻t1_2)と同一である。
これに対して、図6Bは、変移制御の実行後における測距センサ2_1,2_2による探索波SWの出射タイミングの例を示している。図6Bに示す如く、測距センサ2_1による探索波SW_1の出射タイミング(すなわち時刻t1_1)は、測距センサ2_2による探索波SW_2の出射タイミング(すなわち時刻t1_2)に対して遅れている。図6BにおけるΔTは、時刻t1_2に対する時刻t1_1の遅延量を示している。すなわち、ΔTは、変移部16による変移量を示している。
以下、図7〜図12を参照して、変移量ΔTの設定方法について説明する。また、当該設定された変移量ΔTに基づく変移にる効果について説明する。より具体的には、車両1の進行方向MDに対する空間分解能δが向上する効果について説明する。
図7に示す如く、仮に1個の測距センサ2_1のみが車両1の左側部に設けられているものとする。車両1が速度Vにて走行しているとき、測距センサ2_1が探索波SW_1を複数回出射することにより、複数個の反射点RP_1が検出されたものとする。図中EP_1は、各回の探索波SW_1が出射されたときの測距センサ2_1の位置(以下「出射位置」という。)を示している。このとき、進行方向MDに対する空間分解能δは、以下の式(3)により表される。
δ=V×T (3)
Tは、上記とおり、測距センサ2_1により探索波SW_1が出射される時間間隔T_1に対応している。すなわち、Tは、一定の値である。このため、速度Vが高くなるにつれて、次第に空間分解能δの値が大きくなる。換言すれば、速度Vが高くなるにつれて、次第に空間分解能δが低下する。空間分解能δが低下することにより、障害物Oに対応する反射点RP_1の検出数が減るため、障害物Oの検出精度が低下する。この結果、例えば、障害物Oの外形を正確に検出することが困難となる。また、例えば、障害物Oの端部の位置を正確に検出することが困難となる。
これに対して、2個の測距センサ2_1,2_2が車両1の左側部に設けられていることにより、理論上、空間分解能δを最大2倍に向上することができる(図8参照)。図中EP_2は、各回の探索波SW_2が出射されたときの測距センサ2_2の位置(すなわち出射位置)を示している。空間分解能δが向上することにより、障害物Oに対応する反射点RP_1,RP_2の検出数が増えるため、障害物Oの検出精度が向上する。この結果、例えば、障害物Oの端部の位置が非検出となるのを回避することができる。
しかしながら、速度Vによっては、かかる空間分解能δの向上効果が得られないことがある。例えば、速度Vによっては、図9に示す如く、個々の出射位置EP_1と対応する出射位置EP_2とが互いに重畳配置されることがある。この結果、個々の反射点RP_1と対応する反射点RP_2とが互いに重畳配置される。この場合における空間分解能δ(図9参照)は、仮に1個の測距センサ2_1のみが車両1の左側部に設けられている場合における空間分解能δ(図7参照)と同等の値となる。
図10は、Lの値が固定されており、かつ、Tの値が固定されている場合における、速度Vに対する空間分解能δの例を示している。図中、特性線Iは、1個の測距センサ2_1のみが車両1の左側部に設けられている場合における空間分解能δに対応している。また、特性線IIは、2個の測距センサ2_1が車両1の左側部に設けられている場合における空間分解能δの理論値の最小値に対応している。図10に示す如く、2個の測距センサ2_1が車両1の左側部に設けられている場合における空間分解能δの理論値の最小値は、速度Vにかかわらず、1個の測距センサ2_1のみが車両1の左側部に設けられている場合における空間分解能δに対する2分の1の値となる。
また、特性線IIIは、2個の測距センサ2_1が車両1の左側部に設けられている場合における空間分解能δの実際値に対応している。図10に示す如く、2個の測距センサ2_1が車両1の左側部に設けられている場合における空間分解能δの実際値は、速度Vに対して周期的に変動する値となる。また、かかる実際値は、速度Vによっては、1個の測距センサ2_1のみが車両1の左側部に設けられている場合における空間分解能δと同等の値となる。すなわち、速度Vによっては、空間分解能δの向上効果が得られない。
これに対して、以下のように変移量ΔTの値を設定することにより、速度Vによらずに空間分解能δの向上効果を得ることができる。より具体的には、速度Vにかかわらず、空間分解能δの実際値を空間分解能δの理論値の最小値と同等の値にすることができる。
すなわち、変移部16は、車両速度情報が示すVの値、及び送信周期情報が示すTの値を用いて、以下の式(4)によりδの値を算出する。次いで、変移部16は、当該算出されたδの値を用いて、以下の式(5)によりMの値を算出する。式(5)における「mod」は、剰余演算子を示している。次いで、変移部16は、当該算出されたMの値、及び送信周期情報が示すTの値を用いて、以下の式(6)によりΔTの値を算出する。次いで、変移部16は、変移量ΔTを当該算出された値に設定する。
δ=V*T (4)
M=Lmodδ (5)
ΔT=T*{(M/δ)−(1/2)} (6)
なお、上記式(6)により算出されるΔTは、以下の式(7)に示す条件を満たす値となる。また、上記式(6)により算出されるΔTは、速度Vに対して周期的に変動する値となる。図11は、速度Vに対する変移量ΔTの例を示している。
0≦ΔT≦T (7)
当該設定された変移量ΔTに基づき、変移部16が出射タイミングを変移させることにより、速度Vにかかわらず、複数個の出射位置EPが進行方向MDに対して互いに非重畳に配置される。より具体的には、図8に示す如く、複数個の出射位置EP_1,EP_2が進行方向MDに対して等間隔又は略等間隔に配置される。以下、等間隔及び略等間隔を総称して単に「等間隔」という。
この結果、図12に示す如く、速度Vによらずに、空間分解能δの実際値(図中III)を空間分解能δの理論値の最小値(図中II)と同等の値にすることができる。すなわち、速度Vによらずに、空間分解能δの向上効果を得ることができる。
出力制御部17は、障害物検出部14による検出結果を示す信号(以下「検出結果信号」という。)を出力するものである。検出結果信号は、例えば、個々の反射点RPの位置座標を示す値を含むものである。
センサ制御部13、障害物検出部14、干渉抑止部15、変移部16及び出力制御部17により、制御部3の要部が構成されている。制御部3は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)により構成されている。
車両制御装置4は、制御部3により出力された検出結果信号を用いて、自動駐車を実現するための制御を実行するものである。車両制御装置4は、例えば、ECUにより構成されている。
すなわち、車両制御装置4は、検出結果信号を用いて、車両1の駐車対象となる領域(以下「駐車対象領域」という。)を検出する。車両制御装置4は、車両1のブレーキ、スロットル及びステアリングなどを制御することにより、当該検出された駐車対象領域に車両1を誘導する。駐車対象領域の検出及び車両1の誘導には、公知の種々の技術を用いることができる。これらの技術についての詳細な説明は省略する。
測距センサ2_1,2_2及び制御部3により、障害物検出装置100の要部が構成されている。障害物検出装置100及び車両制御装置4により、駐車支援装置200の要部が構成されている。
次に、図13を参照して、制御部3の要部のハードウェア構成について説明する。
図13に示す如く、制御部3は、処理回路31を有している。センサ制御部13、障害物検出部14、干渉抑止部15、変移部16及び出力制御部17の機能は、専用の処理回路31により実現される。
処理回路31は、1個又は複数個のデジタル回路及び1個又は複数個のアナログ回路により構成されている。すなわち、処理回路31は、1個又は複数個の処理回路により構成されている。個々の処理回路は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field−Programmable Gate Array)、SoC(System−on−a−Chip)又はシステムLSI(Large−Scale Integration)を用いたものである。
次に、図14のフローチャートを参照して、制御部3の動作について、センサ制御部13及び障害物検出部14の動作を中心に説明する。図14に示す処理は、例えば、車両1が所定速度Vth以下の速度Vにて走行しているとき、繰り返し実行される。
まず、送信制御部11が送信制御を実行する(ステップST1)。次いで、受信制御部12が受信制御を実行する(ステップST2)。
次いで、有無判定部21は、ステップST2における反射波RWの受信の有無を判定する。より具体的には、有無判定部21は、測距センサ2_1による反射波RW_1の受信の有無を判定するとともに、測距センサ2_2による反射波RW_2の受信の有無を判定する。反射波RW_1の受信がなく、かつ、反射波RW_2の受信がないと判定された場合(ステップST3“NO”)、制御部3の処理はステップST1に戻る。他方、反射波RW_1又は反射波RW_2のうちの少なくとも一方の受信があると判定された場合(ステップST3“YES”)、制御部3の処理はステップST4に進む。
次いで、距離算出部22は、距離dを算出する(ステップST4)。より具体的には、距離算出部22は、距離d_1又は距離d_2のうちの少なくとも一方を算出する。距離dの算出方法は既に説明したとおりであるため、再度の説明は省略する。
次いで、位置算出部23は、反射点RPの位置座標を算出する(ステップST5)。より具体的には、位置算出部23は、反射点RP_1又は反射点RP_2のうちの少なくとも一方の位置座標を算出する。反射点RPの位置座標の算出方法は既に説明したとおりであるため、再度の説明は省略する。次いで、制御部3の処理はステップST1に戻る。
次に、図15のフローチャートを参照して、制御部3の動作について、干渉抑止部15の動作を中心に説明する。図15に示す処理は、測距センサ2_1又は測距センサ2_2のうちの少なくとも一方により反射波RWが受信される度に実行される。すなわち、図15に示す処理は、ステップST3“YES”と判定される度に実行される。
まず、干渉抑止部15は、相関値CVを算出する(ステップST11)。より具体的には、干渉抑止部15は、相関値CV_1又は相関値CV_2のうちの少なくとも一方を算出する。相関値CVの算出方法は既に説明したとおりであるため、再度の説明は省略する。
次いで、干渉抑止部15は、ステップST11にて算出された相関値CVを所定値と比較する。これにより、干渉抑止部15は、ステップST2にて取得された受信信号RSに対応する反射波RWが直接波であるか間接波であるかを識別する(ステップST12)。
かかる反射波RWが直接波であると判定された場合、かかる受信信号RSは、ステップST4における距離dの算出に用いられる。他方、かかる反射波RWが間接波であると判定された場合、かかる受信信号RSは、ステップST4における距離dの算出から除外される。これにより、上記のとおり、虚像RP’の検出が抑止される。
次に、図16のフローチャートを参照して、制御部3の動作について、変移部16の動作を中心に説明する。図16に示す処理は、例えば、車両1が所定速度Vth以下の速度Vにて走行しているとき、第1回目のステップST1の処理が実行されるよりも先に実行される。また、図16に示す処理は、車両1が所定速度Vth以下の速度Vにて走行しているとき、所定の時間間隔にて実行されるか、又は速度Vが変化する度に実行される。
まず、変移部16は、変移量ΔTを設定する(ステップST21)。変移量ΔTの設定方法は既に説明したとおりであるため、再度の説明は省略する。
次いで、変移部16は、当該設定された変移量ΔTにて、測距センサ2_1,2_2による探索波SWの出射タイミングを相対的に変移させる(ステップST22)。具体的には、例えば、変移部16は、測距センサ2_2による探索波SW_2の出射タイミングに対して、測距センサ2_1による探索波SW_1の出射タイミングを遅らせる。
これにより、次回以降のステップST1にて、送信信号TS_1の出力タイミングが送信信号TS_2の出力タイミングに対して遅れた状態となる。この結果、探索波SW_1の出射タイミングが探索波SW_2の出射タイミングに対して遅れた状態となる。このとき、変移量ΔTが上記式(6)に基づく値に設定されていることにより、速度Vによらずに空間分解能δの向上効果を得ることができる。
次に、図17を参照して、障害物検出装置100の変形例について説明する。
障害物検出装置100は、左方領域における障害物Oを検出するのに代えて又は加えて、右方領域における障害物Oを検出するものであっても良い。左方領域における障害物Oの検出には、測距センサ2_1,2_2が用いられる。これに対して、右方領域における障害物Oの検出には、測距センサ2_3,2_4が用いられる(図1参照)。
ただし、車両1における測距センサ2の設置位置及び設置個数は、図1に示す例に限定されるものではない。例えば、図17に示す如く、車両1の左側部に2個の測距センサ2_1,2_2が設けられており、かつ、車両1の右側部に他の2個の測距センサ2_3,2_4が設けられているのに加えて、車両1の後端部に4個の測距センサ2_5,2_6,2_7,2_8が設けられており、かつ、車両1の前端部に他の4個の測距センサ2_9,2_10,2_11,2_12が設けられているものであっても良い。
ここで、左方領域に障害物Oが存在する場合、測距センサ2_1,2_2により出射された探索波SWが障害物Oに照射されるのはもちろんのこと、測距センサ2_5,2_9により出射された探索波SWの一部も障害物Oに照射される。また、右方領域に障害物Oが存在する場合、測距センサ2_3,2_4により出射された探索波SWが障害物Oに照射されるのはもちろんのこと、測距センサ2_8,2_12により出射された探索波SWの一部も障害物Oに照射される。
したがって、障害物検出装置100において、左方領域における障害物Oの検出に用いられる測距センサ2は、車両1の左側部に設けられた測距センサ2_1,2_2に限定されるものはない。当該検出に用いられる測距センサ2は、車両1の後端部の左端部に設けられた測距センサ2_5を含むものであっても良い。また、当該検出に用いられる測距センサ2は、車両1の前端部の左端部に設けられた測距センサ2_9を含むものであっても良い。
同様に、障害物検出装置100において、右方領域における障害物Oの検出に用いられる測距センサ2は、車両1の右側部に設けられた測距センサ2_3,2_4に限定されるものはない。当該検出に用いられる測距センサ2は、車両1の後端部の右端部に設けられた測距センサ2_8を含むものであっても良い。また、当該検出に用いられる測距センサ2は、車両1の前端部の右端部に設けられた測距センサ2_12を含むものであっても良い。
次に、障害物検出装置100の他の変形例について説明する。
変移部16は、車両速度情報が示す速度Vを所定の速度(以下「基準速度」という。)Vrefと比較するものであっても良い。基準速度Vrefは、0よりも大きい値に設定されており、かつ、Vthよりも小さい値に設定されている。変移部16は、速度Vが基準速度Vref以上であるとき、変移制御を実行するものであっても良い。換言すれば、変移部16は、速度Vが基準速度Vref未満であるとき、変移制御の実行をキャンセルするものであっても良い。
図12に示す如く、速度Vが低いときは、速度Vが高いときに比して、速度Vの変動に対する変移量ΔTの変動が大きい。このため、速度Vが低いときは、速度Vが高いときに比して、現在のVの値に応じたΔTの値を正確に算出することが困難である。
他方、図11に示す如く、1個の測距センサ2による空間分解能δ(図中I)と複数個の測距センサ2による空間分解能δの理論値の最小値(図中II)との差分値は、速度Vが高くなるにつれて次第に大きくなる。換言すれば、当該差分値は、速度Vが低くなるにつれて次第に小さくなる。このため、障害物検出装置100に要求される空間分解能δによっては、速度Vが低いとき、変移制御による空間分解能δの向上が不要となることがある。
そこで、変移部16は、速度Vが基準速度Vref未満であるとき、変移制御の実行をキャンセルするのである。これにより、困難な処理による不要な制御が実行されるのを回避することができる。
また、変移部16による変移量ΔTの設定方法は、上記式(6)に基づく設定方法に限定されるものではない。すなわち、変移部16による変移量ΔTの設定方法は、複数個の出射位置EPが進行方向MDに対して等間隔に配置される設定方法に限定されるものではない。変移部16は、少なくとも速度Vに応じて、複数個の出射位置EPが進行方向MDに対して互いに非重畳に配置されるように変移量ΔTを設定するものであれば良い。
ただし、空間分解能δの向上効果を最大化する観点から、変移部16は、上記式(6)に基づき変移量ΔTを設定するのがより好適である。すなわち、変移部16は、複数個の出射位置EPが進行方向MDに対して等間隔に配置されるように変移量ΔTを設定するのがより好適である。
また、位置算出部23による反射点RPの位置座標の算出方法は、正面ベクトルを用いた算出方法に限定されるものではない。位置算出部23は、いわゆる「三角測量」又は「開口合成」により反射点RPの位置座標を算出するものであっても良い。三角測量又は開口合成による位置座標の算出には、公知の種々の技術を用いることができる。
また、障害物検出装置100の用途は、駐車支援装置200に限定されるものではない。また、障害物検出部14による検出対象となる障害物Oは、駐車中の他車両に限定されるものではない。障害物検出部14による検出対象となる障害物Oは、障害物検出装置100の用途に応じたものであれば良い。
例えば、障害物検出装置100は、歩行者検出装置に用いられるものであっても良い。この場合、障害物検出部14による検出対象となる障害物Oは、歩行者を含むものであっても良い。
以上のように、実施の形態1に係る障害物検出装置100は、車両1の側方領域に探索波SWを出射する複数個の測距センサ2と、少なくとも車両1の速度Vに基づき、複数個の測距センサ2による探索波SWの出射タイミングを相対的に変移させる変移部16と、複数個の測距センサ2による相互干渉を抑止する干渉抑止部15と、複数個の測距センサ2により受信された反射波RWに基づき、側方領域における障害物Oを検出する障害物検出部14と、障害物検出部14による検出結果を示す信号(検出結果信号)を出力する出力制御部17と、を備え、変移部16は、複数個の測距センサ2による探索波SWの出射位置EPが車両1の進行方向MDに対して互いに非重畳に配置されるように出射タイミングを変移させる。これにより、複数個の測距センサ2による相互干渉を抑止しつつ、車両1の速度V等によらずに空間分解能δを向上することができる。
また、変移部16は、出射位置EPが進行方向MDに対して等間隔に配置されるように出射タイミングを変移させる。これにより、空間分解能δの向上効果を最大化することができる。
また、変移部16は、速度Vが基準速度Vref以上であるとき、出射タイミングを変移させる。換言すれば、変移部16は、速度Vが基準速度Vref未満であるとき、変移制御の実行をキャンセルする。これにより、困難な処理による不要な制御が実行されるのを回避することができる。
実施の形態2.
図18は、実施の形態2に係る障害物検出装置を用いた駐車支援装置の要部を示すブロック図である。図19は、実施の形態2に係る障害物検出装置における障害物検出部の要部を示すブロック図である。図18及び図19を参照して、実施の形態2に係る障害物検出装置について説明する。
なお、図18において、図2に示すブロックと同様のブロックには同一符号を付して説明を省略する。また、図19において、図3に示すブロックと同様のブロックには同一符号を付して説明を省略する。
図18に示す如く、送信制御部11a及び受信制御部12により、センサ制御部13aの要部が構成されている。センサ制御部13a、障害物検出部14a、干渉抑止部15a、変移部16a及び出力制御部17により、制御部3aの要部が構成されている。測距センサ2_1,2_2及び制御部3aにより、障害物検出装置100aの要部が構成されている。障害物検出装置100a及び車両制御装置4により、駐車支援装置200aの要部が構成されている。図19に示す如く、障害物検出部14aは、有無判定部21、距離算出部22及び位置算出部23aを有している。
制御部3aの要部のハードウェア構成は、実施の形態1にて図13を参照して説明したものと同様であるため、図示及び説明を省略する。すなわち、センサ制御部13a、障害物検出部14a、干渉抑止部15a、変移部16a及び出力制御部17の機能は、例えば、専用の処理回路31により実現される。
障害物検出装置100における干渉抑止部15は、相関値CVに基づき反射波RWが直接波であるか間接波であるかを識別することにより、虚像RP’の検出を抑止するものであった。このため、送信制御部11は、高い自己相関特性を有する符号(例えばバーカー符号又はPN符号)により送信信号TSを変調するものであった。
これに対して、障害物検出装置100aにおける干渉抑止部15aは、車両1と障害物O間の距離Dに応じて、変移量ΔTの下限値ΔTminを設定することにより、虚像RP’の検出を抑止するものである。このため、送信制御部11aにおいては、高い自己相関特性を有する符号による送信信号の変調が不要である。
例えば、図5を参照して説明した状態と同様の状態が発生したものとする。すなわち、測距センサ2_1,2_2が探索波SW_1,SW_2をそれぞれ出射して、障害物Oが探索波SW_1を反射して、測距センサ2_1,2_2が反射波RW_1,RW_2をそれぞれ受信したものとする。この場合、反射波RW_1は直接波であり、反射波RW_2は間接波である。
ここで、図20に示す如く、測距センサ2_1が探索波SW_1を出射した時刻t1_1と測距センサ2_1が反射波RW_1(すなわち直接波)を受信した時刻t2_1との間の時間Δt_1は、変移制御が実行されることにより変化しない。他方、測距センサ2_2が探索波SW_2を出射した時刻t1_2と測距センサ2_2が反射波RW_2(すなわち間接波)を受信した時刻t2_2との間の時間Δt_2は、変移制御が実行されることにより変化する。より具体的には、時間Δt_2は、変移制御が実行されることにより延長される。これは、反射波RW_2が探索波SW_2ではなく探索波SW_1に対応しているためである。
時間Δt_2の延長により、距離算出部22により算出される距離d_2が大きくなる。すなわち、車両1と虚像RP’間の距離d_2が大きくなる。図21Aは、仮に時間Δt_2の延長がない場合(すなわち仮に変移制御が実行されない場合)における距離d_2の例を示している。他方、図21Bは、時間Δt_2の延長がある場合(すなわち変移制御が実行される場合)における距離d_2の例を示している。図21BにおけるΔd_2は、時間Δt_2の延長による距離d_2の変化量の例を示している。図21Bに示す例においては、時間Δt_2の延長に応じて距離d_2が大きくなることにより、距離d_2が閾値dthを超えている。
以上の原理を踏まえて、以下のように虚像RP’の検出が抑止される。
まず、障害物検出部14aは、距離算出部22により算出された距離dが距離Dであるとみなして、当該算出された距離Dの値を干渉抑止部15aに出力する。または、障害物検出部14aは、反射点RPの位置座標に基づき距離Dを算出して、当該算出された距離Dの値を干渉抑止部15aに出力する。
干渉抑止部15aは、当該出力された距離Dの値に所定の値(以下「加算値」という。)αを加算することにより、閾値dthを設定する。干渉抑止部15aは、当該設定された閾値dthを障害物検出部14aに出力する。閾値dthは、障害物検出部14aにて、距離d_1,d_2の各々に対する比較対象となるものである。
加算値αは、障害物検出装置100aの用途等に応じた値に設定されている。障害物検出装置100aが駐車支援装置200aに用いられるものである場合、加算値αは、例えば、2メートルに設定されている。この場合において、距離Dが1メートルであるとき、閾値dthは、3メートルに設定される。
通常、間接波の伝搬遅延時間(Δt)は、速度V及び設置間隔Lに応じた値となる。そこで、干渉抑止部15aは、車両速度情報及びセンサ位置情報を用いて、速度V及び設置間隔Lに応じて、車両1と虚像RP’間の距離dが閾値dth以上となるように変移量ΔTの下限値ΔTminを設定する。図22は、距離Dに対する下限値ΔTminの例を示している。干渉抑止部15aは、当該設定された下限値ΔTminを変移部16aに出力する。
障害物検出装置100aには、変移量ΔTの上限値ΔTmaxを示す情報(以下「上限値情報」という。)が記憶されている。上限値ΔTmaxは、個々の測距センサ2により探索波SWが出射される時間間隔Tに対する2分の1の値に設定されている。
変移部16aは、上記式(6)によりΔTの値を算出する。当該算出された値が下限値ΔTmin以上かつ上限値ΔTmax以下である場合、変移部16aは、変移量ΔTを当該算出された値に設定する。当該算出された値が下限値ΔTmin未満である場合、変移部16aは、変移量ΔTを下限値ΔTminと同等の値に設定する。当該算出された値が上限値ΔTmaxよりも大きい場合、変移部16aは、変移量ΔTを上限値ΔTmaxと同等の値に設定する。
すなわち、変移部16aにより設定される変移量ΔTは、以下の式(11)に示す条件を満たす値となる。また、変移部16aにより設定される変移量ΔTは、当該条件を満たす範囲内にて、複数個の出射位置EPの配置間隔(すなわち複数個の出射位置EPのうちの互いに隣接する出射位置EP間の距離)を最大化する値となる。また、変移部16aにより設定される変移量ΔTは、速度Vに対して周期的に変動する値となる。図23は、速度Vに対する変移部16aにより設定される変移量ΔTの例を示している。
ΔTmin≦ΔT≦T/2 (11)
変移量ΔTが上記式(11)に示す条件を満たす値に設定されていることにより、反射波RWが間接波であるときは、距離算出部22により算出される距離dが閾値dth以上となる。他方、反射波RWが直接波であるときは、距離算出部22により算出される距離dが閾値dth未満となる。これにより、例えば、反射波RW_1が直接波であり、かつ、反射波RW_2が間接波であるときは、距離d_1が閾値dth未満の値となり、かつ、距離d_2が閾値dth以上の値となる(図21B参照)。
そこで、位置算出部23aは、距離算出部22により算出された距離d_1が閾値dth以上である場合、当該算出された距離d_1を反射点RP_1の位置座標の算出から除外する。また、位置算出部23aは、距離算出部22により算出された距離d_2が閾値dth以上である場合、当該算出された距離d_2を反射点RP_2の位置座標の算出から除外する。これにより、虚像RP’の検出が抑止される。
ここで、図24に示す如く、変移制御が実行されることにより、空間分解能δの実測値(図中III)は、仮に1個の測距センサ2_1のみが車両1の左側部に設けられている場合における空間分解能δ(図中I)よりも小さくなる。しかしながら、変移量ΔTの上限及び下限が制限されていることに起因して(図23参照)、速度Vによっては、複数個の出射位置EPが等間隔に配置される状態とならないことがある。この結果、図24に示す如く、速度Vによっては、空間分解能δの実測値(図中III)が空間分解能δの理論値の最小値(図中II)よりも大きくなる。このため、空間分解能δを向上する観点からは、障害物検出装置100を用いるのがより好適である。
他方、障害物検出装置100aにおいては、高い自己相関特性を有する符号(例えばバーカー符号又はPN符号)により送信信号TSを変調する処理が不要であり、かつ、相関値CVを算出する処理が不要である。このため、制御部3aにおける演算量は、制御部3における演算量に比して少ない。この結果、制御部3aは、制御部3に比して小さいハードウェア規模にて実現することができる。したがって、ECUのハードウェア規模を低減する観点からは、障害物検出装置100aを用いるのがより好適である。
次に、図25のフローチャートを参照して、制御部3aの動作について、センサ制御部13a及び障害物検出部14aの動作を中心に説明する。なお、図25において、図14に示すステップと同様のステップには同一符号を付して説明を省略する。
まず、送信制御部11aが送信制御を実行する(ステップST1a)。このとき、上記のとおり、高い自己相関特性を有する符号による送信信号TSの変調は不要である。次いで、ステップST2,ST3の処理が実行される。反射波RWの受信がないと判定された場合(ステップST3“NO”)、制御部3aの処理はステップST1aに戻る。他方、反射波RWの受信があると判定された場合(ステップST3“YES”)、制御部3aの処理はステップST4に進む。
次いで、ステップST4の処理が実行される。次いで、位置算出部23aは、反射点RPの位置座標を算出する(ステップST5a)。より具体的には、位置算出部23aは、反射点RP_1又は反射点RP_2のうちの少なくとも一方の位置座標を算出する。反射点RPの位置座標の算出方法は既に説明したとおりであるため、再度の説明は省略する。次いで、制御部3aの処理はステップST1aに戻る。
次に、図26のフローチャートを参照して、制御部3aの動作について、干渉抑止部15aの動作を中心に説明する。図26に示す処理は、例えば、障害物検出部14aにより距離Dの値が出力されたときに実行される。
まず、干渉抑止部15aは、閾値dthを設定する(ステップST31)。閾値dthの設定方法は既に説明したとおりであるため、再度の説明は省略する。次いで、干渉抑止部15aは、変移量ΔTの下限値ΔTminを設定する(ステップST32)。下限値ΔTminの設定方法は既に説明したとおりであるため、再度の説明は省略する。
次に、図27のフローチャートを参照して、制御部3aの動作について、変移部16aの動作を中心に説明する。なお、図27において、図16に示すステップと同様のステップには同一符号を付して説明を省略する。
まず、変移部16aは、変移量ΔTを設定する(ステップST21a)。変移量ΔTの設定方法は既に説明したとおりであるため、再度の説明は省略する。すなわち、ステップST21aの処理は、干渉抑止部15aにより下限値ΔTminが設定された後に実行される。次いで、ステップST22の処理が実行される。
これにより、次回以降のステップST1aにて、送信信号TS_1の出力タイミングが送信信号TS_2の出力タイミングに対して遅れた状態となる。この結果、探索波SW_1の出射タイミングが探索波SW_2の出射タイミングに対して遅れた状態となる。このとき、変移量ΔTが上記のように設定されていることにより、速度Vによらずに空間分解能δの向上効果を得ることができる。
また、次回以降のステップST4にて、車両1と虚像RP’間の距離dが閾値dth以上の値となる。次回以降のステップST5aにて、位置算出部23aは、閾値dth以上の距離dを反射点RPの位置座標の算出から除外する。これにより、虚像RP’の検出が抑止される。
なお、障害物検出装置100aは、実施の形態1にて説明したものと同様の種々の変形例を採用することができる。
以上のように、実施の形態2に係る障害物検出装置100aにおいて、干渉抑止部15aは、車両1と虚像RP’間の距離dが閾値dth以上となるように変移部16aによる変移量ΔTの下限値ΔTminを設定する。これにより、複数個の測距センサ2により出射される探索波SWの波形が同一であり、かつ、複数個の測距センサ2により出射される探索波SWの周波数fが同一であったとしても、これらの測距センサ2による相互干渉を抑止することができる。
より具体的には、変移量ΔTの上限値ΔTmaxは、複数個の測距センサ2の各々により探索波SWが出射される時間間隔Tに対する2分の1の値に設定されており、干渉抑止部15aは、下限値ΔTminを車両1と障害物O間の距離Dに応じた値に設定する。これにより、複数個の測距センサ2により出射される探索波SWの波形が同一であり、かつ、複数個の測距センサ2により出射される探索波SWの周波数fが同一であったとしても、これらの測距センサ2による相互干渉を抑止することができる。
また、変移部16aは、下限値ΔTminと上限値ΔTmax間にて、進行方向MDに対する出射位置EPの配置間隔が最大化されるように変移量ΔTを設定する。これにより、上記式(11)に示す条件を満たす範囲内にて、空間分解能δの向上効果を最大化することができる。
実施の形態3.
図28は、実施の形態3に係る障害物検出装置を用いた駐車支援装置の要部を示すブロック図である。図29は、実施の形態3に係る障害物検出装置における障害物検出部の要部を示すブロック図である。図28及び図29を参照して、実施の形態3に係る障害物検出装置について説明する。
なお、図28において、図18に示すブロックと同様のブロックには同一符号を付して説明を省略する。また、図29において、図19に示すブロックと同様のブロックには同一符号を付して説明を省略する。
図28に示す如く、送信制御部11a及び受信制御部12により、センサ制御部13aが構成されている。センサ制御部13a、障害物検出部14b、干渉抑止部15a、変移部16a及び出力制御部17により、制御部3bの要部が構成されている。測距センサ2_1,2_2及び制御部3bにより、障害物検出装置100bの要部か構成されている。障害物検出装置100b及び車両制御装置4により、駐車支援装置200bの要部が構成されている。図29に示す如く、障害物検出部14bは、有無判定部21、距離算出部22及び位置算出部23bを有している。
制御部3bの要部のハードウェア構成は、実施の形態1にて図13を参照して説明したものと同様であるため、図示及び説明を省略する。すなわち、センサ制御部13a、障害物検出部14b、干渉抑止部15a、変移部16a及び出力制御部17の機能は、例えば、専用の処理回路31により実現される。
障害物検出装置100aにおける位置算出部23aは、距離算出部22により閾値dth以上の距離dが算出されたとき、当該算出された距離dを反射点RPの位置座標の算出から除外するものであった。これに対して、障害物検出装置100bにおける位置算出部23bは、距離算出部22により閾値dth以上の距離dが算出されたとき、当該算出された距離dを用いて開口合成により反射点RPの位置座標を算出する処理(以下「開口合成処理」という。)を実行するものである。換言すれば、位置算出部23bは、虚像RP’に対応する反射波RWが間接波であるとみなして開口合成処理を実行するものである。
例えば、図30Aに示す如く、距離算出部22により閾値dth未満の距離d_1が算出されたものとする。また、距離算出部22により閾値dth以上の距離d_2が算出されたものとする。
この場合、位置算出部23bは、距離d_1に対応する反射波RW_1が直接波であるとみなして、位置算出部23による算出方法と同様の算出方法により反射点RP_1の位置座標を算出する。また、位置算出部23bは、距離d_2に対応する反射波RW_2が間接波であるとみなして、開口合成により反射点RP_2の位置座標を算出する。
すなわち、位置算出部23bは、変移量ΔTに基づき、Δd_2の値を算出する。次いで、位置算出部23bは、距離d_2からΔd_2を減算してなる値(d_2−Δd_2)を算出する。
次いで、位置算出部23bは、車両位置情報及びセンサ位置情報を用いて、探索波SW_1が送信されたタイミング又は反射波RW_2が受信されたタイミングにおける測距センサ2_1の位置座標を算出する。位置算出部23bは、当該算出された位置座標に対応する中心を有し、かつ、上記算出された値(d_2−Δd_2)に対応する半径を有する円弧CA_1を求める。
また、位置算出部23bは、車両位置情報及びセンサ位置情報を用いて、探索波SW_1が送信されたタイミング又は反射波RW_2が受信されたタイミングにおける測距センサ2_2の位置座標を算出する。位置算出部23bは、当該算出された位置座標に対応する中心を有し、かつ、上記算出された値(d_2−Δd_2)に対応する半径を有する円弧CA_2を求める。
次いで、位置算出部23bは、円弧CA_1,CA_2の交点の位置座標を算出することにより、反射点RP_2の位置座標を算出する。図30Bは、円弧CA_1の例、円弧CA_2の例、及び反射点RP_2の例を示している。
このように、直接波及び間接波の両方を反射点RPの検出に用いることにより、直接波のみを反射点RPの検出に用いる場合に比して、障害物Oに対応する反射点RPの検出数を増やすことができる。これにより、空間分解能δを更に向上することができる。この結果、障害物Oの検出精度を更に向上することができる。
次に、図31のフローチャートを参照して、制御部3bの動作について、センサ制御部13a及び障害物検出部14bの動作を中心に説明する。なお、図31において、図25におけるステップと同様のステップには同一符号を付して説明を省略する。
まず、ステップST1a,ST2,ST3の処理が実行される。反射波RWの受信がないと判定された場合(ステップST3“NO”)、制御部3bの処理はステップST1aに戻る。他方、反射波RWの受信があると判定された場合(ステップST3“YES”)、制御部3bの処理はステップST4に進む。
次いで、ステップST4の処理が実行される。次いで、位置算出部23bは、反射点RPの位置座標を算出する(ステップST5b)。位置算出部23bによる位置座標の算出方法は既に説明したとおりであるため、再度の説明は省略する。次いで、制御部3bの処理はステップST1aに戻る。
なお、障害物検出装置100bは、実施の形態1にて説明したものと同様の種々の変形例を採用することができる。
以上のように、実施の形態3に係る障害物検出装置100bにおいて、障害物検出部14bは、反射波RWのうちの虚像RP’に対応する反射波RWが間接波であるとみなして開口合成処理を実行する。間接波を用いることにより、反射点RPの検出数を増やすことができる。この結果、空間分解能δを更に向上することができる。
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。