以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。尚、ここで記載した実施形態は、あくまでも本発明の実施の一例にすぎず、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら限定されるものではない。本実施形態における複合繊維シート1は、種々の使い捨て繊維製品用の生地材料として適用することができる。複合繊維シート1は後述するような使い捨て繊維製品としてのマスクや手術着の生地材料として好適に用いることができる。複合繊維シート1の使い捨て繊維製品への適用例としては、もとよりマスク、手術着に限定されるものではなく、使い捨て繊維製品としての手袋、レインコート、パンツ、アンダーウエア、靴下、衣類(例えば、作業着等)、パジャマ、寝具類(例えば、シーツ、枕カバー、布団カバー等)、各種カバー(例えば、椅子カバー、ソファーカバー、クッションカバー、座布団カバー、ボックスティッシュカバー、便座カバー、自動車の座席・ハンドルのカバー等)、日用品(例えば、タオル、ハンカチ、マット、エプロン等)、各種商品の包装シート、袋、鞄、カーテン等にも同様に適用できる。
(第1実施形態)
図1は本実施形態の複合繊維シート1の縦断面図であり、図1において、複合繊維シート1は、本体シート2と繊維材料シート4を有し、それらを積層してなる積層シート15により構成される。本体シート2は、メルトブロー不織布又は透湿性フィルムからなり、本体シート2の材料としてはメルトブロー不織布を用いても或いは透湿性フィルムを用いてもよい。メルトブロー不織布、透湿性フィルムのいずれも、気体を通過させる程度の微細空隙部を有している。繊維材料シート4は液拡散性を有する繊維層を構成するシートであり、繊維構造中に繊維空隙を有している。このように、複合繊維シート1は、本体シート2と繊維材料シート4の2層から構成されている。
複合繊維シート1において、本体シート2と繊維材料シート4とは相互に接触しており、この相互接触面において、図1に示すように、本体シート2と繊維材料シート4とは接着剤7により部分的に接合されており、それにより接合領域30とそれらが接合されていない非接合領域8とが形成され、非接合領域8には空間部9が形成されている。このように構成される複合繊維シート4において、空間部9と、本体シート2の微細空隙部と、繊維材料シート4の繊維空隙とが相互に連通した水分蒸散通路が形成されている。
図1に示す複合繊維シート1において、繊維材料シート4における本体シート2接合面とは反対の面に(即ち、繊維材料シート4の外面側に)、通気性を有する繊維シート3を積層してもよい。この態様は図2に示されており、この態様における複合繊維シート11は、本体シート2と繊維材料シート4と、通気性を有する繊維シート3との3層から構成され、これら3層が積層された積層シート25が形成される。繊維シート3は繊維空隙を有している。
繊維材料シート4の外面側に通気性を有する繊維シート3を設ける実施態様(図2)において繊維シート3の接合も部分的な接合となっている。即ち、繊維材料シート4と繊維シート3との相互接触面において、繊維材料シート4と繊維シート3とは接着剤7により部分的に接合されており、それにより繊維材料シート4と繊維シート3とが接合されている接合領域30とそれらが接合されていない非接合領域8とが形成され、非接合領域8には空間部9が形成されている。
そして、このように構成される複合繊維シート11において、本体シート2と繊維材料シート4の相互接触面における非接合領域8に形成される空間部9と、繊維材料シート4と繊維シート3の相互接触面における非接合領域8に形成される空間部9と、本体シート2の微細空隙部と、繊維材料シート4の繊維空隙と、繊維シート3の繊維空隙とが相互に連通した水分蒸散通路が形成されている。
本実施形態における複合繊維シート11には前記した水分蒸散通路が形成されているので、この水分蒸散通路の作用により複合繊維シート11は優れた水分蒸散性を発揮することができる。即ち、複合繊維シート11の一方の面側に生じた水蒸気は水分蒸散通路を通って移動し、複合繊維シート11の他方の面側に導かれ、当該他方の面側から外方に放散される。これにより水蒸気は効率よく速やかに放散され、複合繊維シート11は優れた蒸散性を発揮できる。
本実施形態における複合繊維シート1、11は、使い捨て繊維製品を製造する生地として好適に適用される。図1に示す態様の複合繊維シート1を用いた使い捨て繊維製品において、前記製品を身体に着用したときに、身体から汗等の体液が出た場合、体液は肌面に接する繊維材料シート4側から複合繊維シート1の水分蒸散通路を通り、本体シート2の表面から外方へと蒸散する。この場合の水分蒸散通路は、繊維材料シート4の繊維空隙→非接合領域8における空間部9→本体シート2の微細空隙部という経路により形成される。
また図2に示す態様の複合繊維シート11を用いた使い捨て繊維製品においては、汗等の体液は肌面に接する繊維シート3側から複合繊維シート1の水分蒸散通路を通り、本体シート2の表面から外方へと蒸散する。この場合の水分蒸散通路は、繊維シート3の繊維空隙→非接合領域8における空間部9→繊維材料シート4の繊維空隙→非接合領域8における空間部9→本体シート2の微細空隙部という経路により形成される。尚、複合繊維シート1、11を使い捨て繊維製品に適用するに当たって、図1に示す態様の複合繊維シート1において、前記の如く繊維材料シート4を使用者の肌に接する側(肌面側)とし、本体シート2が外側(外面側)となるように形成してもよいが、反対に本体シート2を使用者の肌に接する側(肌面側)とし、繊維材料シート4が外側(外面側)となるように形成してもよい。同様に、図2に示す態様の複合繊維シート11において、前記の如く繊維シート3を使用者の肌に接する側(肌面側)とし、本体シート2が外側(外面側)となるように形成してもよいが、反対に本体シート2を使用者の肌に接する側(肌面側)とし、繊維シート3を外側(外面側)となるように形成してもよい。上記した体液とは、汗以外に、尿、血液、リンパ液等を含む概念をいう。
このように、複合繊維シート1、11は、水分蒸散通路を有するので優れた水分蒸散性を発揮できるものであり、使い捨て繊維製品を着用したときに、汗等の体液による蒸れ感やべとつき感が生じたりすることはなく、前記製品の使用時の快適さを向上できるものである。そして本体シート2がメルトブロー不織布又は透湿性フィルムから形成されていることにより、早い段階で水分の蒸散が行われ、蒸れ感やべとつき感を早期に解消できるという作用効果が発揮される。
通気性を有する繊維シート3を積層してなる3層構成を有する実施形態において、図2には、本体シート2と繊維材料シート4との間に形成される空間部9と、繊維材料シート4と通気性を有する繊維シート3との間に形成される空間部9とが、繊維材料シート4を介して対向する位置に形成した態様が示されている。このように、空間部9をシート表裏方向に対応する位置に形成すれば、効率よく水分蒸散を図ることができ、水分蒸散性の向上効果が大きい。
シート表裏方向の空間部9と空間部9との位置関係は上記した図2に示すものに限定されず、空間部9、9は互いにずれた位置に配置されていてもよい。図3は、空間部9、9が相互に対向せず、横方向にずれている実施形態を示すものである。このように、空間部9、9相互をずらして形成すれば、汗等の体液が繊維材料シート4に留まる時間が長くなり、繊維材料シート4による汗等の体液の吸収が良好に行われる。尚、繊維材料シート4を介して互いに対向する空間部9と、繊維材料シート4を介して互いに対向しない空間部9とが混在するように接着剤を塗布して空間部9を形成するようにしてもよい。
本体シート2は、メルトブロー不織布又は透湿性フィルムから形成される。メルトブロー不織布は、メルトブロー法により製造される不織布であり、例えば次のような方法により製造される。即ち、押出機で溶融した熱可塑性樹脂を、幅方向に多数のノズルを設けたダイに導き、高温、高速の空気流で糸状に吹き出し、この牽引細化させてなる繊維をコンベアー上に堆積する。これによりノーバインダーの自己接着型極細繊維ウエブが形成される。このようにして得られたものがメルトブロー不織布である。
メルトブロー不織布はスパンボンド不織布に比べて繊維径が小さく、例えばフィラメント繊維径が2μm〜4μmの極細繊維として形成することができる。メルトブロー不織布を形成する熱可塑性樹脂としては公知の熱可塑性樹脂を用いることができ、かかる熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレンのうちの1種若しくはそれらの2種以上の混合物等が挙げられる。メルトブロー不織布の坪量(目付)は、例えば、20g/m2〜30g/m2が好ましいが、これに限定されるものではない。
透湿性フィルムは、湿気は通すが水は通さない微多孔質のフィルムであり、例えば次のような方法により製造される。即ち、合成樹脂と無機充填材を含有する樹脂組成物を溶融混練後、押出製膜し、このフィルムを延伸して樹脂と無機充填材との間で界面剥離を発生させ、無数のボイド(微孔)を形成して透湿性、通気性を付与する。前記合成樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン‐酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂を用いることができる。前記ポリオレフィン系樹脂としてポリエチレンを用いることが好ましい。
前記無機充填材として、例えば、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン等の微粒子を用いることができるが、その中で炭酸カルシウム、硫酸バリウムが好適に用いられる。透湿性フィルムの製造方法としては、上記以外の別の製造方法を採用することもできる。透湿性フィルムの坪量(目付)は、例えば、15g/m2〜20g/m2が好ましいが、これに限定されるものではない。
繊維材料シート4として、紙材料を用いることができる。本実施形態において紙材料とは、セルロース系成分を含有する植物繊維或いは植物繊維以外の繊維を膠着するか或いはバインダーにより結着して製造したものをいい、具体的には紙材料として例えば、ティッシュペーパ、クレープ紙、エアレード不織布等が挙げられる。紙材料は繊維素材以外の他の素材が含有されていてもよく、このような添加素材を含有するものも紙材料の概念に含まれる。紙材料を製造するための植物繊維系原料としてパルプが用いられるが、これに限定されない。パルプを原料として用いる場合、原料パルプとしては、木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプ等を用いることができる。また、パルプなどの天然繊維に限られず、レーヨン等の再生繊維等も用いることができる。繊維材料シート4の目付量は一例として10〜50g/m2が好ましく、本体シート2の目付量および繊維シート3の目付量のいずれよりも少ないことが好ましい。一例を挙げれば、繊維材料シート4の目付量は、本体シート2の目付量の5%〜25%少ない目付量とすることが好ましい。同様に、繊維材料シート4の目付量は、繊維シート3の目付量の5%〜25%少ない目付量とすることが好ましい。なお、本実施形態では、繊維材料シート4の目付量を、本体シート2の目付量よりも多くすることを排除するものではない。
また繊維材料シート4として、紙材料を用いる場合には、柔軟性を出すために例えばエ
ンボス加工を施しておくことが好ましい。この紙材料には予め印刷層を形成し各種プリントを施すこともできる。この印刷層の表面には、例えば、ニス引き加工を施したり、バインダーを付与したりすることにより、色落ち防止処理を行うことができる。前記バインダーとしては、PVA、CMC、EVA、アクリル、ラッカー等公知の材料を用いることができる。また、色落ち防止処理がなされているインクを使用することもできる。
通気性を有する繊維シート3として、不織布を用いることができ、この不織布としてスパンポンド不織布を用いることが好ましいが、スパンポンド不織布以外の公知の不織布を用いることもできる。複合繊維シート1に親水性が要求される場合には繊維シート3として親水性の不織布を用いることができる。この場合、繊維シート3に例えば、親水化剤を添加するなどの親水化処理を行えばよい。繊維シート3の目付量は一例として10〜50g/m2が好ましく、製造原価の観点から10〜20g/m2がより好ましいがこれに限定されるものではない。
また、複合繊維シート1に撥水性が要求される場合には、繊維シート3として撥水性の不織布を用いることができる。この場合、繊維シート3に例えば、シリコーン系、フッ素系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロイド系の撥水剤をコーティングした撥水処理を行うことが好ましい。撥水性不織布の目付量は、一例として10〜50g/m2が好ましく、製造原価の観点から10〜20g/m2がより好ましいが、これらに限定されるものではない。
複合繊維シート1は、使い捨て繊維製品としてのマスクを製造するための生地として好適に用いられる。複合繊維シート1をマスクに適用する場合、本体シート2としてメルトブロー不織布を用いることが好ましい。複合繊維シート1をマスクに適用した例について以下、説明する。本体シート2と繊維材料シート4とを、非接合領域8を形成するようにして接着剤7により積層してなる複合繊維シート1(図1)を用い、複合繊維シート1のみでマスクを製造することもできるが、複合繊維シート1を外装材により被覆してマスクを製造することもできる。複合繊維シート1のみでマスクを製造する場合、繊維材料シート4が内側即ち、顔に接触する側となり、本体シート2が外面側となるようにしてマスクを形成することが好ましい。しかし、反対に本体シート2が内側即ち、顔に接触する側となり、繊維材料シート4が外面側となるように形成してもよい。
複合繊維シート1を外装材502により被覆してなるマスク501の態様は、図4に示されている。複合繊維シート1は、メルトブロー不織布からなる本体シート2と、繊維材料シート4とを積層してなる積層シートからなる。複合繊維シート1を外装材502の内部に挟み込む形でマスク501が形成されている。この場合、外装材502は外装材シート502aと外装材シート502bとからなり、両者間に複合繊維シート1を挟み込み、外装材シート502a、502b相互の周縁部をホットメルト接着剤等の接着剤で接合することにより、外装材502内部に複合繊維シート1が内挿された形のマスクを形成することができる。複合繊維シート1は、外装材502内部に非固定状態で内挿されていてもよく、或いは部分的に固定した状態で内挿されていてもよい。複合繊維シート1を外装材502内部に部分的に固定した状態で内挿する場合、複合繊維シート1の周縁部をホットメルト等の接着剤で接合固定することが好ましいが、複合繊維シート1の四隅部、その他任意の部位を部分的に接着剤で接合固定してもよい。図中、503はマスクの掛け紐を示す。
上記のマスク501は、繊維材料シート4側が内側即ち、顔に接触する側となり、本体シート2側が外面側となるように形成されることが好ましい。しかし、反対に本体シート2側が内面側となり、繊維材料シート4側が外面側となるように形成されていてもよい。また、図1に示す複合繊維シート1を用いてマスク501を形成する場合に限定されず、繊維材料シート4側に繊維シート3を積層してなる図2又は図3に示す複合繊維シート11を用いてマスク501を形成してもよい。
マスク形成材料である複合繊維シート1、11には、上記した水分蒸散通路が形成されていると共に、マスク501はメルトブロー不織布からなる本体シート2を有しているので、マスク501は水分を容易に外方へ蒸散するという作用効果を発揮できるだけでなく、その蒸散の現象が早い段階で現れ、初期蒸散効率が高いという作用効果をも発揮できる。即ち、マスク501の構成材料である積層シート15の吸水速乾性は、ボーケン品質評価試験である蒸散性(ii)試験において、試験開始後5分の蒸散率が14%以上である評価値を有する。試験開始後わずか5分で蒸散率が14%以上になるという早期蒸散性能を備えた本実施形態のマスクによれば、マスク着用時の蒸れ感を解消する効果が極めて大きいものである。
一般に、マスクを着用すると多少の息苦しさを感じると共に、吐く息により蒸れ感を感じるのが常であるが、本実施形態におけるマスク501は上記した如く、早期蒸散性能に優れているので、着用した時点から速やかに水分蒸散が始まり、蒸れ感を早期に解消できるものである。またメルトブロー不織布からなる本体シート2を備えているので、通気性に優れており、マスク特有の着用時の息苦しさも解消できるものである。
また複合繊維シート1は、使い捨て繊維製品としての手術着を製造するための生地として好適に用いられる。複合繊維シート1を手術着に適用する場合、本体シート2として透湿性フィルムを用いることが好ましい。ただし、本体シート2としてメルトブロー不織布を用いることを除外するものではない。複合繊維シート1を手術着に適用した例について以下、説明する。手術着の1つの態様として図5に示す構成を有する生地材料を用いて手術着601が形成される。この手術着形成用生地材料としては、図1に示す複合繊維シート1に、通気性を有する繊維シートを、本体シート2の外面側と繊維材料シート4の外面側のそれぞれに積層してなるものを用いてもよく、或いは図2又は図3に示す複合繊維シート11に、通気性を有する繊維シートを、本体シート2の外面側に積層してなるものを用いてもよい。前者の構成からなる生地材料について説明すると、図5に示すように、図1に示す複合繊維シート1における本体シート2側の外面側に、通気性を有する第1の繊維シート602aを積層し、また複合繊維シート1における繊維材料シート4側の外面側に、通気性を有する第2の繊維シート602bを積層して手術着形成用生地材料が形成されている。
複合繊維シート1における本体シート2側の外面側に、通気性を有する第1の繊維シート602aを積層するに当たり、第1の繊維シート602aの接合も部分的な接合となっている。即ち、本体シート2と第1の繊維シート602aとの相互接触面において、本体シート2と第1の繊維シート602aとは接着剤7により部分的に接合されており、それにより本体シート2と第1の繊維シート602aとが接合されている接合領域30とそれらが接合されていない非接合領域8とが形成され、非接合領域8には空間部9が形成されている。同様に、複合繊維シート1における繊維材料シート4側の外面側に、通気性を有する第2の繊維シート602bを積層するに当たり、第2の繊維シート602bの接合も部分的な接合となっている。即ち、繊維材料シート4と第2の繊維シート602bとの相互接触面において、繊維材料シート4と第2の繊維シート602bとは接着剤7により部分的に接合されており、それにより繊維材料シート4と第2の繊維シート602bとが接合されている接合領域30とそれらが接合されていない非接合領域8とが形成され、非接合領域8には空間部9が形成されている。
手術着の他の態様として図6に示す構成を有する生地材料を用いて手術着601を形成することもできる。図6に示す手術着601は、図5に示す手術着601を形成する積層シート1に、更に繊維材料シートを1層付加して積層した積層シートから形成されるものである。即ち、図6に示すように、本体シート2と第1の繊維シート602aとの間に第2の繊維材料シート4bを設けてなるものである。図中、4aは、本体シート2と第2の繊維シート602bとの間に設けられる第1の繊維材料シートを示す。本体シート2と第1の繊維シート602aとの間に設けられる第2の繊維材料シート4bは、1層とは限らず、2層以上の複数層としてもよい。第2の繊維材料シート4bは本体シート2と第1の繊維シート602aとの間に挟まれた形で接合されるが、第2の繊維材料シート4bと本体シート2との接合及び第2の繊維材料シート4bと第1の繊維シート602aとの接合はいずれも部分的な接合となっている。即ち、接着剤7により部分的に接合され、それにより接合領域30と非接合領域8とが形成され、非接合領域8には空間部9が形成されている。
図6に示す手術着601は、第2の繊維シート602bが内面側、即ち人体側となり、第1の繊維シート602aが外面側となるように形成しても、或いは反対に第1の繊維シート602aが内面側、即ち人体側となり、第2の繊維シート602bが外面側となるように形成してもよい。例えば、第2の繊維シート602bが内面側、即ち人体側となるように形成した場合を例にとると、第1の繊維材料シート4aと第2の繊維材料シート4bのいずれも蒸散性能を発揮できると共に、第2の繊維材料シート4bによる別の作用が発揮される。即ち、手術着601の内面側のみならず外面側にも繊維材料シート(第2の繊維材料シート4b)があることによって、手術中に患者の血液やリンパ液が飛散した場合に、血液やリンパ液は第1の繊維シート602aを通して第2の繊維材料シート4bに吸収されるので、血液やリンパ液が手術着に付着したままで周囲を汚してしまったり、血液やリンパ液が手術着を伝って床に垂れてしまったりすることを防止し、また、第1の繊維材料シート4aによる蒸散性能を損なうことがなく、血液やリンパ液が手術着601に浸透して人体側を汚染する虞もない。
通気性を有する第1の繊維シート602a及び第2の繊維シート602bとして、いずれも不織布を用いることができ、前記不織布としてスパンポンド不織布を用いることが好ましいが、スパンポンド不織布以外の公知の不織布を用いることもできる。手術着601は第2の繊維シート602b側が内面側、即ち人体側となり、第1の繊維シート602aが外面側となるように形成されていることが好ましい。しかし、反対に第1の繊維シート602aが内面側、即ち人体側となり、第2の繊維シート602b側が外面側となるように形成されていてもよい。
手術着形成用生地材料に用いられる複合繊維シート1には、上記した水分蒸散通路が形成されていると共に、手術着601は透湿性フィルムからなる本体シート2を有しているので、手術着601は水分を容易に外方へ蒸散するという作用効果を発揮できるだけでなく、その蒸散の現象が早い段階で現れ、初期蒸散効率が高いという作用効果をも発揮できる。即ち、手術着601の構成材料である積層シート15の吸水速乾性は、ボーケン品質評価試験である蒸散性(ii)試験において、試験開始後5分の蒸散率が11%以上である評価値を有する。試験開始後わずか5分で蒸散率が11%以上になるという早期蒸散性能を備えた本実施形態の手術着によれば、手術着着用時の蒸れ感を解消する効果が極めて大きいものである。
一般に、手術の種類によっては手術に長い時間を要する場合があり、その場合、医師は手術着を長時間着用することになり、手術室の温度管理の関係もあって発汗量が多くなり、蒸れ感が高まるものである。本実施形態における手術着601は上記した如く、早期蒸散性能に優れているので、着用した時点から速やかに水分蒸散が始まり、蒸れ感を早期に解消できるものである。従って、手術中に不快な蒸れ感が続くということもなく、手術着を長時間着用しても発汗による疲れも解消され、手術着として快適に使用できるものである。
上記したマスク501及び手術着601は、いずれもその生地材料中に紙材料からなる繊維材料シート4(4a、4b)を有しているので、人体から発散される水分は繊維材料シート4(4a、4b)に吸収、拡散されると共に、前記した水分蒸散通路を通して高い蒸散率で生地外方に蒸散される。そして、メルトブロー不織布と繊維材料シート4(4a、4b)との組み合わせ或いは透湿性フィルムと繊維材料シート4(4a、4b)との組み合わせにより、早期に高い蒸散率が発揮され、早期蒸散性に優れたものになる。
前記した吸水速乾性に関する蒸散性(ii)試験(ボーケン規格BQE A 028)は以下の方法により行われる。即ち、まず直径約9cmの試験片とシャーレの質量(試験片とシャーレの合計質量)(W)を予め測定する。次いで、シャーレに0.1mlの水を滴下し、その上に試験片を載せ、この状態での質量(Wo)を測定する。標準状態(20℃、湿度65%RH)下に放置し、所定時間ごとの質量(Wt)を測定し、下記式(1)により時間ごとの蒸散率(%)を算出する。
[数1]
蒸散率(%)={(Wo−Wt)/(Wo−W)}×100・・・・(1)
前記蒸散率(%)の評価の目安は以下の通りである。
試験開始後20分の蒸散率(%)
スポーツ用途:織物で50%以上、ニットで40%以上
一般用途:織物で40%以上、ニットで30%以上
またISO17617Method Bに採用された蒸散性(ii)試験は、滴下直後から蒸散率が90%に至るまでの直近の時間に対する蒸散率の回帰直線を求め、乾燥速度(Drying rate)(単位時間当たりの蒸散率の増加)及び乾燥時間(Drying time)(蒸散率が100%に至る時間)を算出することにより行われる。
本実施形態において、繊維材料シート4にエンボス加工による機械的柔軟化処理が施されるが、この機械的柔軟化処理によって繊維材料シート4を手で揉んだような柔軟性を繊維材料シート4に付与できる。その結果、複合繊維シート1全体が柔軟性を帯び、肌触りもソフトな感じとなる。また、エンボスロールによるエンボス加工時に繊維材料シート4に微細な孔を開けることができるが、このように微細な孔を開けたときは、接着剤により本体シート2との接合を行う際、前記孔に接着剤が浸透して、本体シート2と繊維材料シート4との接着性が向上し、本体シート2と繊維材料シート4との接合力が大きくなる。なお、エンボス加工による孔は、エンボスパターンに起因しており、丸形、四角形、六角形、破断形状等、種々の形状が可能である。
ここで、接着剤の付与量に関し、図2を参照して説明する。本体シート2と繊維材料シート4とを接合する際の接着剤7の量及び繊維シート3と繊維材料シート4とを接合する際の接着剤7の量はそれぞれ適宜決定できるが、接着剤量が多くなると、本体シート2と繊維材料シート4との非接合領域8の面積が小さくなり、且つ、繊維シート3と繊維材料シート4との非接合領域8の面積が小さくなるので、それによりそれぞれの非接合領域8における空間部9の面積も小さくなる。その結果、各非接合領域8,8における空間部9,9と、本体シート2の微細空隙部と、繊維シート3の繊維空隙と、繊維材料シート4の繊維空隙とが相互に連通した水分蒸散通路の面積も全体として小さくなり、水分蒸散性や通気性が低下する。また接着剤量が多くなると、複合繊維シート1の柔らかさが失われてしまい(硬くなってしまい)、複合繊維シート1を使い捨て繊維製品の生地材料として用いた際に着用時の感触が悪いものとなってしまう。本体シート2と繊維材料シート4との接合面積及び繊維シート3と繊維材料シート4との接合面積は、いずれも本体シート2又は繊維シート3の面積の50%〜90%が好ましく、70%〜90%がより好ましい。
上記の点から、1m2の本体シート2と繊維材料シート4とを接合する際の接着剤の塗布量及び1m2の繊維シート3と繊維材料シート4とを接合する際の接着剤の塗布量はいずれも0.8〜5.0g/m2が好ましい。塗布量が0.8g/m2未満では本体シート2と繊維材料シート4との接合強度、及び、繊維シート3と繊維材料シート4との接合強度が小さくなり、各シート間での剥がれが起こりやすくなる。塗布量が5.0g/m2を超えると水分蒸散通路の面積が小さくなり水分蒸散性や通気性が低下し、また複合繊維シート1の柔らかさが失われてしまう。前記接着剤塗布量は、1.0〜3.5g/m2がより好ましい。更に、柔らかさをより向上させた複合繊維シート1を提供するためには、接着剤の塗布量の上限値を1.5g/m2とすることが好ましい。
本体シート2と繊維材料シート4との接合及び繊維シート3と繊維材料シート4との接合は、いずれも接着剤、超音波、ヒートシール等通常用いられる各種の接合方法を採用できる。接着剤を用いる場合には、ホットメルト接着剤、溶剤型接着剤等を用いることができる。
本実施形態における複合繊維シート1の製造方法につき以下説明する。図7は複合繊維シート1の製造装置200を示す略図である。図7に示す製造装置200の各種装置の配置は一例にすぎず、これに限定されるものではない。
(ステップ1:繊維シート3と繊維材料シート4との接合)
シートロール201に巻かれた繊維材料シート4は、図7におけるX方向の負側(水平方向の左方向)に搬送され、一対のエンボスロール202aによりエンボス加工が施され、機械的柔軟化処理が行われる。なお、製造装置200では、後述するエンボスロール202bも用いられるが、エンボスロール202aと202bは同じエンボスロールを用いてもよく、或いはエンボスパターン、大きさ、材質等において異なるエンボスロールを用いてもよい。シートロール201に巻かれた繊維材料シート4に模様を予め印刷しておき、模様が印刷された繊維材料シート4に対して、上述のエンボス加工を施すようにしてもよい。
エンボスロール202aを通過した繊維材料シート4は、接着剤塗布装置203aにより接着剤が塗布される。本実施形態において、接着剤としてホットメルト接着剤を用いることが好ましいが、これに限定されるものではない。
図8は接着剤塗布装置203aを示す略図である。接着剤塗布装置203aは、繊維材料シート4の第1面(繊維シート3との接合面)に接着剤7を塗布する複数のノズル204と、接着剤7を収容するともに、接着剤7を推奨温度に加熱する加熱部を備えた収容部205と、加熱部の加熱温度を制御するコントローラ206とを有している。図8に模式的に繊維材料シート4に接着剤7が塗布された様子をストライブ状に示している。なお、繊維材料シート4における接着剤7が塗布されない部分(即ち、非接合領域8)に後述の機能性物質を塗布すれば、接着剤7と機能性物質とが混ざらなくなるか、或いは混ざるのを低減することができる。接着剤塗布装置203aによる接着剤の塗布量は前述の通りである。
(ステップ2:機能性物質の塗布)
繊維材料シート4には、機能性物質が塗布される。機能性物質として、消臭剤、虫除剤、香料、防水剤、防汚剤、抗菌剤等が挙げられる。本実施形態では、消臭剤、香料及び柔軟剤を機能性物質として塗布する場合について説明するがこれに限定されるものではない。
機能性物質塗布装置150は、ノズルを有し、繊維材料シート4の第1面に機能性物質を塗布(噴霧)するものであるが、繊維材料シート4の第2面(本体シート2との接合面)に塗布するものでもよく、着用者に触れなければ繊維材料シート4以外のシートに塗布してもよい。各機能性物質の数に応じて機能性物質塗布装置150を複数設けてもよく、複数の機能性物質を混ぜて機能性物質塗布装置150により機能性物質を繊維材料シート4に対して塗布してもよい。
機能性物質としての消臭剤としては、カテキン類やタンニン類などの植物からの抽出物であるカテキン、エピガロカテキン、ガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレード、ガロタンニン、エラジタンニンや鉄−アスコルビン酸キレート化合物、ジルコニウムの水酸化物、ランタノイドの水酸化物、Zn、Cu、Fe等の金属塩(例えばZnSO4)、等を利用することができる。本実施形態では、ミョウバン(カリウムミョウバン)もしくはポリフェノールを機能性物質塗布装置150により塗布することが好ましい。ミョウバンなどの機能性物質には、金属を溶解した液体を用いる場合があるので、直接肌に触れない部分(例えば、肌面以外のシート)に塗布するのが好ましい。
機能性物質としての香料としては、例えば、オレンジ、レモン、ライム、ピーチ等の果物、ばらやラベンダー等の花、ミント、白檀等(草木)の精油、等を用いることができ、上記以外の香料を用いることもできる。この香料も機能性物質塗布装置150により塗布(噴霧)される。なお、香料は、性別、大人、子供、地域などに応じて使い分ければよい。
機能性物質としての柔軟剤は、繊維材料シート4を柔軟にするものであり、多価アルコールであるポリオール(例えばグリセリン)を用いることができる。本実施形態においては、繊維シート3と繊維材料シート4とが接合される前に機能性物質を塗布するが、エンボスロール202aの通過後に塗布することが好ましい。エンボスロール202aの通過前に機能性物質(例えばグリセリン)を塗布してしまうと、繊維材料シート4が切れやすくなってしまい、エンボスロール202aに繊維材料シート4の切れ端が付着してしまい、複合繊維シート1の製造に支障をきたす虞があるからである。機能性物質は、繊維シート3と繊維材料シート4との接合後に、繊維材料シート4もしくは繊維シート3に塗布するようにしてもよい。更に、繊維材料シート4の製造段階で事前に機能性物質を塗布するようにしてもよい。
シートロール207に巻かれた繊維シート3は、搬送ロール208aによりZ方向の負側(下方向)に搬送され、押圧ロール209aにより、接着剤7が塗布された繊維材料シート4と接合される。接合された繊維シート3と繊維材料シート4とは搬送ロール208b、208cによりZ方向の正側(上方向)に搬送される。
(ステップ3:本体シート2との接合)
接合された繊維シート3と繊維材料シート4とは、本体シート2との接合のため、繊維材料シート4の第2面に接着剤塗布装置203bにより接着剤7が塗布される。本実施形態では接着剤7としてホットメルトを用いることが好ましいがこれに限定されるものではない。なお、第2接着剤塗布装置203bにより接着剤7は所定温度(例えば60℃〜150℃)まで加熱されており、その塗布量は前述の通りである。
シートロール206に巻かれた本体シート2は、搬送ロール208dによりZ方向の負側(下方向)に搬送される。一対の押圧ロール209bは、本体シート2と、接合された繊維シート3と繊維材料シート4の接合体とを、押圧して接合し、これにより、積層シート15(複合繊維シート11)が製造される。
積層シート15は、上から本体シート2、繊維材料シート4、繊維シート3の順番に積層されている。一対の押圧ロール209bにより、本体シート2、繊維材料シート4、繊維シート3が積層されたときに、本体シート2、繊維材料シート4、繊維シート3が同面積、同形状になっていてもよく、裁断装置221による裁断工程後に、本体シート2、繊維材料シート4、繊維シート3が同面積、同形状になっていてもよい。積層シート15は、一対のエンボスロール202bによりエンボス加工が施され、機械的柔軟化処理が行われる。なお、エンボスロール202bによる積層シート15のエンボス加工は省略してもよい。
エンボスロール202aにより、繊維材料シート4に微細な孔が複数開くような深いエンボスを施した後に積層シート15(複合繊維シート11)とすれば、積層シート15(複合繊維シート1)に皺が発生しにくくなる。更に、エンボスロール202bにより積層シート15(複合繊維シート11)にエンボス加工を施せば、より皺が発生しにくくなる。このため、本実施形態の複合繊維シート1を衣料の生地として用いた場合には、皺取りのアイロンを行う必要がなくなる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。前記した第1実施形態は構成材料中に弾性部材を備えていないが、他の実施形態(第2実施形態)として弾性部材を設けることができる。この第2実施形態は、本体シート302と繊維材料シート304との間に弾性部材305を有し、弾性部材305により積層シート315に伸縮性が付与されてなる構成を有するものである。
図9は第2実施形態に係る複合繊維シート301を示す平面図であり、図10は複合繊維シート301の襞部306を示す図であり、図11は複合繊維シート301の拡大図である。図9において、複合繊維シート301は長さ方向であるx方向に連続するものである。弾性部材305は、複合繊維シート301内部に設けられ、多数の弾性部材305により、多数の凹凸面が形成され、この多数の凹凸面により、図10に示すように、襞部306がx方向に沿って多数繰り返し形成されている。そして、弾性部材305と弾性部材305の間に凹部306bと凸部306aの繰り返しからなる凹凸列310が形成され、複数の凹凸列310によって襞部306の集合体である襞形成部が形成されている。図9,10から明らかなように、弾性部材305は、x方向に沿って設けられており、複合繊維シート301にx方向の弾性力を付与するものである。このような弾性部材305が、幅方向(y方向)に所定間隔隔てて複数設けられている。
弾性部材305としては、線状且つ円柱状(横断面形状が円形)の形態のものが用いられ、弾性部材305の材料としては、ウレタン、シリコーン、ブタジエン若しくは、スチレン・ブタジエンをベースとした合成ゴム又は天然ゴム等の材料からなるものが好ましく、また弾性部材305は、これらの合成ゴム又は天然ゴムのいずれかの素材を適宜組み合わせたものでもよい。尚、弾性部材305は、円柱状に限らず、三角柱状、四角柱状、その他の多角柱状又は楕円柱状でもよい。また、弾性部材305は、複数の線状部材を束ねたり、撚り合わせたりしたものであってもよい。本実施形態においては、弾性部材305として伸縮性を有する線状弾性体305aが好適に用いられ、この線状弾性体305aとして、ウレタン、シリコーンをベースとした合成ゴムや、天然ゴムを用いることができる。格子形状の弾性部材を用いることもでき、この場合には、1つの格子形状にて上述の多数の襞部306を形成することも可能である。また、多数の弾性部材305に代えて、弾性部材として伸縮性フィルムを用いてもよい。伸縮性フィルムとしては、ウレタンフィルム、シリコーンフィルム、エラストマーフィルム等を用いることができる。
図12は複合繊維シート301の図11のA−A線断面図であり、図13は複合繊維シート301の図11のB−B線断面図である。図12、図13に示すように、複合繊維シート301は、本体シート302と、通気性を有する繊維シート303と、本体シート302と繊維シート303との間に介在する液拡散性を有する繊維材料シート304とを有し、本体シート302と、繊維材料シート304と、繊維シート303とを積層してなる積層シート315により形成される。本体シート302は前述した第1実施形態における本体シート2と同一の構成であり、繊維材料シート304は第1実施形態における繊維材料シート4と同一の構成であり、また繊維シート303は第1実施形態における繊維シート3と同一の構成である。図12、図13によれば、積層シート315は、3層から構成されているが、第1実施形態の図1に対応した構成、即ち本体シート302と、繊維材料シート304とからなる2層構成の積層シート315として形成してもよい。
本実施形態において、複合繊維シート301をマスク501及び手術着601にそれぞれ適用する場合には、本体シート302側が使用者の肌に接する側(肌面側)となり、繊維シート303が外側(外面側)となるように形成することが好ましい。しかし、反対に繊維シート303側が使用者の肌に接する側(肌面側)となり、本体シート302が外側(外面側)となるように形成してもよい。
図13に示すように、本実施形態においては、本体シート302と繊維材料シート304とは、弾性部材305の周面に塗布された接着剤307により接合されており、この接着剤307の塗布部に接合領域330が形成されている。一方、弾性部材305が存在しない部分における本体シート302と繊維材料シート304の相互接触面には接着剤307が存在しないので、本体シート302と繊維材料シート304とが接合されていない非接合領域308が形成され、この非接合領域308に空間部309が形成されている。このように本体シート302と繊維材料シート304との接合は、弾性部材5の配置箇所で接合されている部分接合となっている。尚、弾性部材305が存在しない部分においても部分的に接合されていてもよい。また繊維材料シート304と繊維シート303との相互接触面は接着剤307により部分的に接合されており、接合領域330と非接合領域308が形成され、非接合領域308には空間部309が形成されている。この繊維材料シート304と繊維シート303との間に形成される非接合領域308及び空間部309については、図13において図示省略してある。
上記の如く構成される複合繊維シート301において、本体シート302と繊維材料シート304の相互接触面における非接合領域308に形成される空間部309と、繊維シート303と繊維材料シート304の相互接触面における非接合領域308に形成される空間部309と、本体シート302の微細空隙部と、繊維シート303の繊維空隙と、繊維材料シート304の繊維空隙とが相互に連通した水分蒸散通路が形成されている。
本実施形態における複合繊維シート301は、紙材料からなる繊維材料シート304を有しており、且つ、複合繊維シート301には前記した水分蒸散通路が形成されているので、複合繊維シート301は優れた水分蒸散性を発揮することができる。また本体シート302はメルトブロー不織布又は透湿性フィルムからなるので、メルトブロー不織布と繊維材料シート304との組み合わせ或いは透湿性フィルムと繊維材料シート304との組み合わせにより、早期に高い蒸散率が発揮され、早期蒸散性に優れたものになる。本実施形態においては、弾性部材305の伸縮力により凸部306aと凹部306bとからなる襞部306が形成されるため表面積が大きくなり、それにより蒸散性が一段と高まり且つ早期蒸散性も更に向上する。そのため、本実施形態における複合繊維シート301を前記したマスクや手術着の生地材料として用いた場合は、蒸れ感や不快感を解消する上で顕著な作用効果を発揮するものである。
複合繊維シート301に形成される襞部306について詳しく説明すると、図10、図11、図12に示すように、凸部306aと凹部306bとが連続して形成されることにより多数の襞部306が形成される。凸部306aと凹部306bとからなる襞部306を形成する方法として前述したように複合繊維シート301の内部に弾性部材305が配置されている。上記の如く、弾性部材305として伸縮性を有する線状弾性体305aが用いられ、この線状弾性体305aとして、例えばポリウレタンが用いられる。
図9、図10に示すように、線状弾性体305aはその線の延びる方向が長さ方向(図9、図10においてx方向)と同一の方向に配置され、且つ、所定間隔を置いて多数の線状弾性体305aが平行して配置されている。即ち、線状弾性体305aは、y方向に間隔を設けて多数配置されており、線状弾性体列が形成されている。線状弾性体305aをy方向に設ける間隔は、ほぼ均等な間隔でもよく、異なる間隔でもよい。また、線状弾性体305aの弾性力を全て同じとしてもよく、全て又は一部異ならせるようにしてもよい。
線状弾性体305aは、前述したように、本体シート302と繊維材料シート304との間に設けられる。襞部306は、図9及び図10におけるx方向に所定間隔を置いて多数列形成されている。単位面積当たりの線状弾性体305aの本数は任意に設定できるが、線状弾性体305aの本数を多くして線状弾性体305a相互の間隔を小さくすれば、一列の凹凸列310における凸部306aと凹部306bを均一な形状に形成し且つその形状を保持することができる。それによって襞部306の型崩れがなく、複合繊維シート301の柔軟性及び水分蒸散性を増大する観点から好ましいものとなる。このような趣旨から、1つの凹凸列310における凸部306a相互間のピッチ間隔は、2.00mm〜7.00mmが好ましく、3.00mm〜6.25mmがより好ましい。凸部306a相互間のピッチ間隔を狭くすることにより、きめの細かな襞ができるので外観が美しくなり、また1つの襞当たりの肌との接触面積は小さくなるので肌触りがよくなり、更に表面積が大きくなるので汗等の体液の吸収性が向上する。一方、凸部306a相互間のピッチ間隔を広くすることにより、線状弾性体305aの弾性力を適度に抑えることができ、製造コストを低減することができる。
積層シート315は長尺寸法であるため、積層シート315の長さ方向(図9、図10においてx方向)における長さ寸法を所定の長さにするための裁断が行われる。この裁断において、本体シート302、繊維材料シート304、繊維シート303及び弾性部材305が切断される。弾性部材305の切断により、引っ張り状態にあった弾性部材305は引っ張り力から解放されて復元力により収縮する。このときの収縮応力により、積層シート315は長さが短くなる方向に力を受けるため、積層シート315に複数の凹凸列310が形成され、それにより襞部306の集合体である襞形成部が形成される。このようにして、弾性部材305の復元力により積層シート315は非引っ張り状態になり、この非引っ張り状態にある積層シート315に襞部306が形成され、積層シート315に凹凸列がパターン形成され、襞部306を有する複合繊維シート301が製造される。尚、裁断前に、複合繊維シート301を搬送する搬送ロール(図示せず)の搬送速度を遅くすることにより、複合繊維シート301が伸長した状態から収縮した状態となるようにしてもよい。
積層シート315の内部に配置された弾性部材5により、積層シート315には弾性力が付与されている。従って、複合繊維シート301を図9、図10においてx方向に引っ張ると、弾性部材305が伸びることによって複合繊維シート301も伸びて広がり、またこの状態を解除すると、弾性部材305はその復元力により収縮し、それにより複合繊維シート301も元の寸法状態に復帰する。このように複合繊維シート301は伸縮性を有するので、複合繊維シート301を使い捨て衣料として用いた場合に身体に対するフィット感に優れたものとなる。また、複合繊維シート301は、弾性部材305の復元力により収縮した寸法で使い捨て衣料としての寸法が決められるため、単位体積当たりの表面積を大きくすることができる。
本実施形態の複合繊維シートは、使い捨て繊維製品の製造用生地材料として用いることができ、ここにおいて、早期蒸散性に優れているので、特に使い捨て繊維製品としてのマスクや手術着に適用した場合は蒸れ感や不快感を迅速に解消できることから、その実益性が極めて大きいものである。もとより複合繊維シートは、マスク、手術着に適用されることに限定されるものではなく、使い捨て繊維製品としてのシーツ、手袋、レインコート、パンツ、アンダーウエア、靴下、衣類等にも同様に適用できるものである。そしてこのような使い捨て繊維製品は、使い捨てタイプでありながら数回の洗濯に耐えることができるので、経済的であり、また省資源に寄与でき環境にも配慮することができる。
以下に、本発明の実施形態に係る複合繊維シートの具体的な実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
本体シートとしてメルトブロー不織布(目付量22g/m2)を用い、繊維材料シートとして、パルプ100%の紙(ティッシュペーパ用の紙シート:目付量13g/m2)をそのまま印刷せずに用いた。前記メルトブロー不織布からなるシートと前記紙シートをホットメルト接着剤(ホットメルト接着剤の総目付量1.2g/m2)により、接合領域と非接合領域が形成されるように部分的に接着して総目付量36.2g/m2の積層シートを得た。
(実施例2)
本体シートとして透湿性フィルム(乳白フィルム:目付量18g/m2)を用い、繊維材料シートとして、パルプ100%の紙(ティッシュペーパ用の紙シート:目付量13g/m2)をそのまま印刷せずに用いた。前記透湿性フィルムからなるシートと前記紙シートをホットメルト接着剤(ホットメルト接着剤の総目付量1.2g/m2)により、接合領域と非接合領域が形成されるように部分的に接着して総目付量32.2g/m2の積層シートを得た。
(実施例3)
本体シートとして透湿性フィルム(乳白フィルム:目付量18g/m2)を用い、繊維材料シートとして、パルプ100%の紙(ティッシュペーパ用の紙シート:目付量13g/m2)をそのまま印刷せずに用いた。また、通気性を有する繊維シートとして撥水性のスパンボンド不織布(目付量15g/m2)を用いた。前記透湿性フィルムからなるシートを前記紙シートの一方の面に、ホットメルト接着剤(ホットメルト接着剤の総目付量1.2g/m2)により、接合領域と非接合領域が形成されるように部分的に接着し、次いでこの接合体における紙シートの他方の面に、ホットメルト接着剤(ホットメルト接着剤の総目付量1.2g/m2)により、接合領域と非接合領域が形成されるように部分的に接着して総目付量48.4g/m2の積層シートを得た。
(比較例1)
メルトブロー不織布(目付量15g/m2)の単体シートを比較例1とした。
(比較例2)
透湿性フィルム(乳白フィルム:目付量18g/m2)の単体シートを比較例2とした。
前記した実施例1から3及び比較例1、2の各シートについて吸水速乾性(蒸散率)を評価した。吸水速乾性(蒸散性)を評価するに当たり、前述した蒸散性(ii)試験(ボーケン規格BQE A 028)を行った。同試験において、吸水性と速乾性との両方を総合的に評価した。実施例1から3及び比較例1、2の各シートについてそれぞれ直径約9cmの試験片を作製し、各試験片とシャーレの質量(試験片とシャーレの合計質量)(W)を測定した。次にシャーレ上に水0.1mlを滴下し、その上に試験片を載せ、この状態での質量(Wo)を測定した。これを標準状態(20℃、湿度65%RH)下に放置して、所定時間(5分、10分、以下10毎に60分迄)経過毎の質量(Wt)を測定した。測定された質量W、W0、Wtから、前述した蒸散率(%)を求める上式(1)を用いて、所定時間経過毎の蒸散率(%)を算出した。
結果を表1に示す。
表1に示す蒸散率の結果から明らかなように、実施例1〜3では、試験開始して10分経過後に蒸散率が20%以上となり、20分経過後に蒸散率が45%以上となり、その後、30分経過後に蒸散率が70%以上となり、40分経過後に蒸散率が85%以上となり、50分経過後には蒸散率が94%以上となり、60分経過後には蒸散率が97%以上となることが分かる。これに対し、比較例1では60分経過しても蒸散率が18%にとどまっている。
ボーケン規格BQE A 028においては、評価の目安として、試験開始後20分の蒸散率が、スポーツ用途の場合、織物で50%以上、ニットで40%以上であることが好ましく、一般用途の場合、織物で40%以上、ニットで30%以上であることが好ましいとされている。実施例1〜3のシート素材は、試験開始後20分の蒸散率は40%以上となっているので、スポーツ用途としてもまた、一般の用途としても、快適に着用することができるといえる。以上から、実施例1〜3の積層シートからなる本実施例の複合繊維シートは、極めて高い吸水速乾性(蒸散率)を持つことが分かる。
また表1によれば、実施例1〜3では、試験開始して5分経過後の蒸散率が10%以上であり、10分経過後の蒸散率が20%以上であることが分かる。これに対し比較例1、2は5分経過後の蒸散率がいずれも2未満であり、また10分経過後の蒸散率がいずれも7未満である。比較例2は60分経過後の蒸散率が95.2%という高い蒸散率を示しているが、5分経過後の蒸散率が1.5%、また10分経過後の蒸散率が6.8%という低い蒸散率にとどまっている。このように、実施例1〜3では試験開始後早い段階で蒸散が進み、早期蒸散率が高いという結果を示していることが分かる。
またISO17617Method Bに採用された蒸散性(ii)試験に基づき、滴下直後から蒸散率が90%に至るまでの直近の時間に対する蒸散率の回帰直線を求め、乾燥速度(Drying rate)(単位時間当たりの蒸散率の増加)及び乾燥時間(Drying time)(蒸散率が100%に至る時間)を算出した。結果を表2に示す。
表2に示す結果から、実施例1〜3はいずれも乾燥速度が大きく、これに対し比較例1、2はいずれも乾燥速度が小さいことが分かる。また、実施例1〜3はいずれも乾燥時間が短いが、比較例1、2はいずれも乾燥時間が長いことが分かる。
以上、本実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、種々の変更や、適宜の組み合わせが可能であることはいうまでもない。本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、種々の変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。