以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
本実施形態に係るタイヤ用突起部材が適用されるタイヤについて説明する。図1は、本実施形態に係るタイヤ用突起部材が適用されるタイヤの一例の子午断面図である。図1に示すタイヤは、空気入りタイヤ1を一例として示している。タイヤは、空気入りタイヤ1に限らず、空気を充填しないものであってもよい。
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸P(図4など参照)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸Pに向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸Pから離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、回転軸Pを中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、回転軸Pと平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸Pに直交するとともに、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。本実施形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
空気入りタイヤ1は、図1に示すように、トレッド部2と、その両側のショルダー部3と、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4およびビード部5とを有している。また、この空気入りタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7と、ベルト補強層8とを備えている。
トレッド部2は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。トレッド部2の外周表面、つまり、走行時に路面と接触する踏面には、トレッド面21が形成されている。トレッド面21は、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線CLと平行なストレート主溝である複数(本実施形態では4本)の主溝22が設けられている。そして、トレッド面21は、これら複数の主溝22により、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線CLと平行なリブ状の陸部23が複数形成されている。また、図には明示しないが、トレッド面21は、各陸部23において、主溝22に交差するラグ溝が設けられている。陸部23は、ラグ溝によってタイヤ周方向で複数に分割されている。また、ラグ溝は、トレッド部2のタイヤ幅方向最外側でタイヤ幅方向外側に開口して形成されている。なお、ラグ溝は、主溝22に連通している形態、または主溝22に連通していない形態の何れであってもよい。
ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部4は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出したものである。また、ビード部5は、ビードコア51とビードフィラー52とを有する。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー52は、カーカス層6のタイヤ幅方向端部がビードコア51の位置で折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア51でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向にある角度を持って複数並設されたカーカスコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。カーカスコードは、有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。このカーカス層6は、少なくとも1層で設けられている。
ベルト層7は、少なくとも2層のベルト71,72を積層した多層構造をなし、トレッド部2においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト71,72は、タイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、20°〜30°)で複数並設されたコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。また、重なり合うベルト71,72は、互いのコードが交差するように配置されている。
ベルト補強層8は、ベルト層7の外周であるタイヤ径方向外側に配置されてベルト層7をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に略平行(±5°)でタイヤ幅方向に複数並設されたコード(図示せず)がコートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。図1で示すベルト補強層8は、ベルト層7のタイヤ幅方向端部を覆うように配置されている。ベルト補強層8の構成は、上記に限らず、図には明示しないが、ベルト層7全体を覆うように配置された構成、または、例えば2層の補強層を有し、タイヤ径方向内側の補強層がベルト層7よりもタイヤ幅方向で大きく形成されてベルト層7全体を覆うように配置され、タイヤ径方向外側の補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されている構成、あるいは、例えば2層の補強層を有し、各補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されている構成であってもよい。すなわち、ベルト補強層8は、ベルト層7の少なくともタイヤ幅方向端部に重なるものである。また、ベルト補強層8は、帯状(例えば幅10[mm])のストリップ材をタイヤ周方向に巻き付けて設けられている。
図2は、本実施形態に係るタイヤ用突起部材の断面図である。図3は、本実施形態に係るタイヤ用突起部材の取付状態の断面図である。図4は、本実施形態に係るタイヤ用突起部材が適用されたタイヤの側面図である。図5は、本実施形態に係るタイヤ用突起部材の平面図である。図6は、本実施形態に係るタイヤ用突起部材の側面図である。図7は、本実施形態に係るタイヤ用突起部材が適用されたタイヤの他の例の側面図である。図8〜図17は、本実施形態に係るタイヤ用突起部材の他の例の断面図である。図18および図19は、タイヤ用突起部材が適用されていないタイヤの作用の説明図である。図20〜図22は、本実施形態に係るタイヤ用突起部材が適用されたタイヤの作用の説明図である。
以下の説明において、サイド部Sとは、図1に示すように、トレッド部2の接地端Tからタイヤ幅方向外側であってリムチェックラインRからタイヤ径方向外側の範囲で一様に連続する面をいう。また、接地端Tとは、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填するとともに正規荷重の70%をかけたとき、この空気入りタイヤ1のトレッド部2のトレッド面21が路面と接地する領域において、タイヤ幅方向の両最外端をいい、タイヤ周方向に連続する。また、リムチェックラインRとは、タイヤのリム組みが正常に行われているか否かを確認するためのラインであり、一般には、ビード部5の表側面において、リムフランジよりもタイヤ径方向外側であってリムフランジ近傍となる部分に沿ってタイヤ周方向に連続する環状の凸線として示されている。
また、タイヤ最大幅位置Hとは、図1に示すように、タイヤ断面幅HWの端となり、最もタイヤ幅方向の大きい位置である。タイヤ断面幅HWとは、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填した無負荷状態のときに、最もタイヤ幅方向の大きいタイヤ総幅からタイヤ側面の模様・文字などを除いた幅である。なお、リムを保護するリムプロテクトバー(タイヤ周方向に沿って設けられてタイヤ幅方向外側に突出するもの)が設けられたタイヤにおいては、当該リムプロテクトバーが最もタイヤ幅方向の大きい部分となるが、本実施形態で定義するタイヤ断面幅HWは、リムプロテクトバーを除外する。
なお、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
本実施形態のタイヤ用突起部材(以下、突起部材という)9は、図2および図3に示すように、空気入りタイヤ1のサイド部Sの表面のプロファイルであるタイヤサイド面Saに取り付けられる取付面91aを有する取付部91と、取付部91がサイド部Sのタイヤサイド面Saに取り付けられた状態でサイド部Sのタイヤサイド面Saから突出して設けられる突起部92と、を含む。
取付部91は、取付面91aがタイヤサイド面Saのプロファイル形状に沿うような形状に形成されている。または、取付部91は、取付面91aがタイヤサイド面Saのプロファイル形状に沿うように、突起部92と共に撓むように可撓性を有して形成されている。取付部91は、突起部92と一体に形成されて取付面91aとして形成されている。
突起部92は、取付部91と一体に形成されており、すなわち、その一部が取付面91aを有して形成される。突起部92は、図4に示すように、タイヤサイド面Saに取り付けられた取付状態において、サイド部Sのタイヤサイド面Saに沿ってタイヤ周方向およびタイヤ径方向に交差して延在する突条として配置される。図4および図5に示す突起部92は、各端間がC字状に湾曲して形成されている。突起部92は、湾曲に限らず、各端間が直線状に形成されていても、くの字に屈曲して形成されていても、S字状に形成されていても、蛇行して構成されていても、ジグザグ状に形成されていてもよい。どの構成においても延在方向は各端を結ぶ直線とし、当該直線の長さを延在方向の長さLとする。
また、突起部92は、図5および図6に示すように、延在方向における中間部9A、および中間部9Aの延在方向の両側に連続して設けられた各先端部9Bで構成されている。中間部9Aは、突起部92の延在方向の長さLの中央9Cから延在方向の両側に長さLの25%の範囲の部分である。先端部9Bは、中間部9Aの延在方向の両側にさらに延在して設けられ、延在方向の各端9Dから突起部92の延在方向の長さLの5%を除く範囲の部分である。突起部92の延在方向の長さLは、突起部92の各端9D間の最短距離とする。
そして、中間部9Aは、取付状態において、タイヤサイド面Saからの突出高さhの最大位置hHを含む。また、先端部9Bは、タイヤサイド面Saからの突出高さhの最小位置hLを含む。図6では、突起部92の延在方向の突出高さhは、一方の端9Dから中央9Cに向かって徐々に高くなり、中央9Cから他方の端9Dに向かって徐々に低くなっている。この場合、突出高さhの最大位置hHは中央9Cに一致し、最小位置hLは端9Dから長さLの5%の位置であって先端部9Bの端に一致する。なお、図6において、突起部92において、突起部92の延在方向の突出高さhは、円弧状に変化して示しているが、この限りではなく、直線状に変化していてもよい。また、最大位置hHは、中間部9A全体であってもよく、この場合に先端部9Bは中間部9Aから徐々に突出高さhが低くなる。
また、突起部92は、図1、図5、図6に示すように、取付状態で、サイド部Sの範囲において、中間部9Aの突出高さhの最大位置hHが、タイヤ最大幅位置Hからタイヤ径方向内外にタイヤ断面高さWDの20%の範囲FD(=0.2WD×2)に配置される。すなわち、突起部92は、中間部9Aの突出高さhの最大位置hHが上記範囲FDに配置され、先端部9Bは上記範囲FD外に配置される。なお、タイヤ断面高さWDは、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填した無負荷状態のときの、タイヤ外径とリム径との差の1/2をいう。この突起部92は、図4に示すように、タイヤ周方向に多数配置される。
取付状態における突起部92の配置について、図4および図7に示すように、複数の各突起部92がタイヤ周方向で間隔をおいて設けられていてもよく、図には明示しないが、タイヤ周方向で隣接する突起部92がタイヤ径方向で一部重複して設けられていてもよい。各突起部92がタイヤ径方向で一部重複して設けられている場合、重複部位は、中間部9Aを除く部位であって先端部9Bや先端部9Bの端(端9Dから長さLの5%の範囲)とする。また、取付状態における突起部92の配置について、図7に示すように、タイヤ周方向で隣接する突起部92がタイヤ周方向およびタイヤ径方向に対する延在方向の傾きが異なっていてもよい。このようにタイヤ周方向で隣接する突起部92がタイヤ周方向およびタイヤ径方向に対する延在方向の傾きが異なっている場合は、当該タイヤ周方向で隣接する突起部92がタイヤ径方向で一部重複せずタイヤ周方向で間隔をおいて設けられている。
突起部92の延在方向に直交する短手方向の断面形状について、図3に示す突起部92は、短手方向の断面形状が三角形状とされている。図8に示す突起部92は、短手方向の断面形状が四角形状とされている。図9に示す突起部92は、短手方向の断面形状が台形状とされている。
また、突起部92の短手方向の断面形状は、曲線を基にした外形であってもよい。図10に示す突起部92は、短手方向の断面形状が半円形状とされている。その他、図には明示しないが、突起部92の短手方向の断面形状は、例えば、半楕円形状であったり、半長円形状であったりする様々な円弧に基づく形状であってもよい。
また、突起部92の短手方向の断面形状は、直線および曲線を組み合わせた外形であってもよい。図11に示す突起部92は、短手方向の断面形状が四角形状の角を曲線とされている。図12に示す突起部92は、短手方向の断面形状が三角形状の角を曲線とされている。また、突起部92の短手方向の断面形状は、図11〜図13に示すように、サイド部Sから突出する根元部分を曲線とした形状とされていてもよい。
また、突起部92の短手方向の断面形状は、様々な形状の組み合わせであってもよい。図14に示す突起部92は、四角形状の頂部が複数(図14では2つ)の三角形状でジグザグ状とされている。図15に示す突起部92は、四角形状の頂部が1つの三角形状で尖って形成されている。図16に示す突起部92は、四角形状の頂部が四角形状に凹んで形成されている。図17に示す突起部92は、四角形状の頂部が四角形に凹んで形成され、凹みの両側が突出高さを変えて形成されている。その他、図には明示しないが、突起部92の短手方向の断面形状は、四角形状の頂部が波形であったりする様々な形状であってもよい。
そして、上述したような突起部92の短手方向の断面形状において、本実施形態では、取付状態において、中間部9Aにおける突出高さhの最大位置hHで断面積が最も大きく、先端部9Bにおける突出高さhの最小位置hLで断面積が小さい。そして、短手方向の幅Wは、突出高さhの変化に合わせて最大位置hHで最も大きく、最小位置hLで小さくなるように変化しても、変化しなくてもよい。
突起部材9を適用した空気入りタイヤ1の作用について説明する。まず、突起部材9を有さない空気入りタイヤ11は、図18に示すように、リム50に組み込んで車両100に装着することで車両100のタイヤハウス101内に配置される。この状態において、空気入りタイヤ11が回転方向Y1で回転すると、車両100は方向Y2に向かって走行する。この車両100の走行時に、空気入りタイヤ11の周辺において空気の流れがよどむことになる。すると、図19に示すように、このよどみにより空気入りタイヤ11の進行方向の後側において、タイヤハウス101から発生する大きな渦流により車両100の側面102に沿う空気の圧力変動が大きくなって車両100の側面102に沿う空気が大きく乱れることから車外騒音すなわち通過音が過大となる。
このような現象に対し、突起部材9を適用した空気入りタイヤ1は、図20に示すように、同様にリム50に組み込んで車両100に装着することで車両100のタイヤハウス101内に配置される。この状態において、空気入りタイヤ1が回転方向Y1で回転すると、車両100は方向Y2に向かって走行する。この車両100の走行時に、方向Y1に回転移動する突起部92が、その周辺の空気を乱流化させて上述した空気の流れのよどみを改善する。すると、図21に示すように、このよどみの改善により空気入りタイヤ1の進行方向の後側において、タイヤハウス101から発生する渦流が細分化されることにより車両100の側面102に沿う空気の圧力変動が小さくなり車両100の側面102に沿う空気が整流化されることから車外騒音すなわち通過音が低減される。このような作用は、図22に示すように、タイヤ周方向およびタイヤ径方向に対する突起部材9の傾きが図20とは逆に反転しても得ることが可能である。
ところで、突起部材9を有さない空気入りタイヤ11では、空気入りタイヤ11の周辺において空気の流れのよどみを避けるようにタイヤハウス101内の下方から上方に向かう空気の流れが生じることで、車両100が上方に持ち上げられる力であるリフトが発生する。一方で、よどみを避けるように、タイヤハウス101の外側で車両100から離れる空気の膨らみが生じることで、空気抵抗となる。
このような現象に対し、本実施形態の突起部材9を適用した空気入りタイヤ1によれば、車両100の走行時に、方向Y1に回転移動する突起部材9が、その周辺の空気を乱流化させて上述した空気の流れのよどみを改善する。具体的に、空気入りタイヤ1の回転時の下部(回転軸Pより下側)では、車両100の底部を流れる空気流速を増加することで、タイヤハウス101内で下方から上方に向かう空気の流れが低減され、上方への空気の圧力が抑制される。この結果、リフトを抑制することができる。このリフトの抑制(リフト低減性能)は、ダウンフォースを増加させることになり、空気入りタイヤ1の接地性を向上させ、車両100の走行性能である操縦安定性能の向上に寄与する。一方、空気入りタイヤ1の回転時の上部(回転軸Pより上側)では、乱流境界層が発生し、空気入りタイヤ1における空気の流れが促進される。この結果、通過する空気の広がりが抑えられ、空気入りタイヤ1の空気抵抗を低減することができる。この空気抵抗の低減は、車両100の燃費の向上に寄与する。このような作用は、図22に示すように、タイヤ周方向およびタイヤ径方向に対する突起部材9の傾きが図20とは逆に反転しても得ることが可能である。
従って、本実施形態の突起部材9を図4、図7、図20、図22に示すような取付状態とすることで、通過音を低減することができ、かつ空気抵抗を低減することができる。
また、本実施形態の突起部材9では、突起部92において、中間部9Aの突出高さhの最大位置hHが、タイヤ最大幅位置Hからタイヤ径方向内外にタイヤ断面高さWDの10%の範囲に配置されることが好ましい。
この突起部材9によれば、取付状態の突起部92において、中間部9Aの突出高さhの最大位置hHが、タイヤ最大幅位置Hのより近傍に配置されることで、周辺の空気を乱流化させて上述した空気の流れのよどみを改善する作用が顕著となる。この結果、通過音を低減する効果や、リフトを低減する効果をより顕著に得ることができる。
また、本実施形態の突起部材9では、突起部92において、中間部9Aの突出高さhが2mm以上10mm以下であることが好ましい。
中間部9Aの突出高さhが2mm未満であると、周辺の空気を乱流化させて上述した空気の流れのよどみを改善する作用が得難くなる。一方、中間部9Aの突出高さhが10mmを超えると、突起部92に衝突する空気の流れが増加することで空気抵抗が増加する傾向となる。このため、通過音を低減すると共に空気抵抗を低減する効果を顕著に得るうえで、中間部9Aの突出高さhを2mm以上10mm以下とすることが好ましい。
図23および図24は、本実施形態に係るタイヤ用突起部材が適用された他の例のタイヤの側面図である。図25および図26は、他の例のタイヤの作用の説明図である。
図23および図24に示すように、突起部材9は、サイド部Sの範囲において、タイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向外側に配置される。突起部材9は、タイヤ周方向に所定間隔をおいて多数配置されている。
取付状態における突起部92の配置について、図23に示すように、タイヤ周方向およびタイヤ径方向に対して同方向に傾斜して設けられていてもよく、図24に示すように、タイヤ周方向で隣接するもの同士で、タイヤ周方向およびタイヤ径方向に対する延在方向の傾きが異なっていてもよい。また、タイヤ周方向における突起部材9の数に限定はない。
突起部材9を適用した空気入りタイヤ1の作用について、図25に示すように、空気入りタイヤ1は、リム50に組み込んで車両100に装着した場合、車両100のタイヤハウス101内に配置される。この状態において、空気入りタイヤ1が回転方向Y1で回転すると、車両100は方向Y2に向かって走行する。この車両100の走行時に、空気入りタイヤ1の周辺において空気の流れがよどむことになる。そして、このよどみを避けるようにタイヤハウス101内の下方から上方に向かう空気の流れが生じることで、車両100が上方に持ち上げられる力であるリフトが発生する。一方で、よどみを避けるように、タイヤハウス101の外側で車両100から離れる空気の膨らみが生じることで、空気抵抗となる。
このような現象に対し、突起部材9を適用した空気入りタイヤ1によれば、車両100の走行時に、方向Y1に回転移動する突起部92が、その周辺の空気を乱流化させて上述した空気の流れのよどみを改善する。具体的に、空気入りタイヤ1の回転時の下部(回転軸Pより下側)では、車両100の底部を流れる空気流速を増加することで、タイヤハウス101内で下方から上方に向かう空気の流れが低減され、上方への空気の圧力が抑制される。この結果、リフトを抑制することができる。このリフトの抑制(リフト低減性能)は、ダウンフォースを増加させることになり、空気入りタイヤ1の接地性を向上させ、車両100の走行性能である操縦安定性能の向上に寄与する。一方、空気入りタイヤ1の回転時の上部(回転軸Pより上側)では、乱流境界層が発生し、空気入りタイヤ1における空気の流れが促進される。この結果、通過する空気の広がりが抑えられ、空気入りタイヤ1の空気抵抗を低減することができる。この空気抵抗の低減は、車両100の燃費の向上に寄与する。このような作用は、図26に示すように、タイヤ周方向およびタイヤ径方向に対する突起部材9の傾きが図25とは逆に反転しても得ることが可能である。
しかも、突起部材9を適用した空気入りタイヤ1によれば、突起部92は、突出高さhの最大位置hHを含む中間部9Aがタイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向外側にのみ配置されるため、最もタイヤ幅方向に張り出して空気抵抗が大きくなるタイヤ最大幅位置Hでの空気抵抗が低減されるので、空気抵抗をより低減することができる。
従って、本実施形態の突起部材9を図23および図24に示すような取付状態とすることで、リフト低減効果を得ることができ、かつ空気抵抗を低減することができる。
また、突起部材9を適用した空気入りタイヤ1では、突起部材9は、タイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向外側に中間部9Aおよび先端部9Bが配置されていることが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、先端部9Bがタイヤ最大幅位置Hを超えないため、最もタイヤ幅方向に張り出して空気抵抗が大きくなるタイヤ最大幅位置Hでの空気抵抗が低減されるので、空気抵抗を低減する効果を顕著に得ることができる。
なお、突起部材9は、図には明示しないが、突起部92の一部がタイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向内側に延在してもよい。この場合、中間部9Aは、タイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向外側に配置され、少なくとも一方の先端部9B(または端9Dから長さLの5%の範囲)がタイヤ最大幅位置Hを超えてタイヤ径方向内側に延在する。また、突起部材9は、多数の全ての突起部92または多数のうちの一部がタイヤ最大幅位置Hを超えてタイヤ径方向内側に延在してもよい。
また、突起部材9は、中間部9Aの突出高さhが1mm以上10mm以下であることが好ましい。
中間部9Aの突出高さhが1mm未満であると、車両100の底部を流れる空気流速を増加させたり、乱流境界層を発生させたりする作用が得難くなる。一方、中間部9Aの突出高さhが10mmを超えると、突起部92に衝突する空気の流れが増加することで空気抵抗が増加する傾向となる。このため、リフトを低減すると共に空気抵抗を低減する効果を顕著に得るうえで、中間部9Aの突出高さhを1mm以上10mm以下とすることが好ましい。
また、突起部材9では、突起部92は、正規リムに組み込んで正規内圧を充填した場合の無負荷状態の子午断面において、図1に示すように、タイヤ最大幅位置Hにおけるタイヤ断面幅HWからタイヤ幅方向外側に5mm以下の範囲で突出して設けられていることが好ましい。言い換えると、タイヤ最大幅位置Hでのタイヤサイド面Saを基準としたタイヤ径方向に延在する基準線HLからタイヤ幅方向外側への突起部92の突出寸法が5mm以下であることが好ましい。
タイヤ最大幅位置Hにおけるタイヤ断面幅HWからタイヤ幅方向外側に5mmの範囲を超えて突起部92が設けられると、突起部92に衝突する空気の流れが増加することから、突起部92が空気抵抗となり易い。従って、突起部92のタイヤ最大幅位置Hにおけるタイヤ断面幅HWからタイヤ幅方向外側への配置範囲を規定することで、突起部92に起因する空気抵抗の増加を抑えつつ、突起部92による空気の流れのよどみを改善する効果を顕著に得ることができる。この効果を顕著に得るため、タイヤ最大幅位置Hにおけるタイヤ断面幅HWからタイヤ幅方向外側へ突出しないことが好ましく、0mm以下であってもよい。
図27および図28は、本実施形態に係るタイヤ用突起部材が適用された他の例のタイヤの側面図である。図29および図30は、他の例のタイヤの作用の説明図である。
図27および図28に示すように、突起部材9は、サイド部Sの範囲において、タイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向内側に配置される。突起部材9は、タイヤ周方向に所定間隔をおいて多数配置されている。
取付状態における突起部92の配置について、図27に示すように、タイヤ周方向およびタイヤ径方向に対して同方向に傾斜して設けられていてもよく、図28に示すように、タイヤ周方向で隣接するもの同士で、タイヤ周方向およびタイヤ径方向に対する延在方向の傾きが異なっていてもよい。また、タイヤ周方向における突起部材9の数に限定はない。
突起部材9を適用した空気入りタイヤ1の作用について、図29に示すように、空気入りタイヤ1は、リム50に組み込んで車両100に装着した場合、車両100のタイヤハウス101内に配置される。この状態において、空気入りタイヤ1が回転方向Y1で回転すると、車両100は方向Y2に向かって走行する。この車両100の走行時に、空気入りタイヤ1の周辺において空気の流れがよどむことになる。そして、このよどみを避けるようにタイヤハウス101内の下方から上方に向かう空気の流れが生じることで、車両100が上方に持ち上げられる力であるリフトが発生する。一方で、よどみを避けるように、タイヤハウス101の外側で車両100から離れる空気の膨らみが生じることで、空気抵抗となる。
このような現象に対し、突起部材9を適用した空気入りタイヤ1によれば、車両100の走行時に、方向Y1に回転移動する突起部92が、その周辺の空気を乱流化させて上述した空気の流れのよどみを改善する。具体的に、空気入りタイヤ1の回転時の下部(回転軸Pより下側)では、車両100の底部を流れる空気流速を増加することで、タイヤハウス101内で下方から上方に向かう空気の流れが低減され、上方への空気の圧力が抑制される。この結果、リフトを抑制することができる。このリフトの抑制(リフト低減性能)は、ダウンフォースを増加させることになり、空気入りタイヤ1の接地性を向上させ、車両100の走行性能である操縦安定性能の向上に寄与する。一方、空気入りタイヤ1の回転時の上部(回転軸Pより上側)では、乱流境界層が発生し、空気入りタイヤ1における空気の流れが促進される。この結果、通過する空気の広がりが抑えられ、空気入りタイヤ1の空気抵抗を低減することができる。この空気抵抗の低減は、車両100の燃費の向上に寄与する。このような作用は、図29に示すように、タイヤ周方向およびタイヤ径方向に対する突起部材9の傾きが図30とは逆に反転しても得ることが可能である。
しかも、突起部材9を適用した空気入りタイヤ1によれば、突起部92は、突出高さhの最大位置hHを含む中間部9Aがタイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向内側にのみ配置されるため、最もタイヤ幅方向に張り出して空気抵抗が大きくなるタイヤ最大幅位置Hでの空気抵抗が低減されるので、空気抵抗をより低減することができる。
従って、本実施形態の突起部材9を図27および図28に示すような取付状態とすることで、リフト低減効果を得ることができ、かつ空気抵抗を低減することができる。
また、突起部材9を適用した空気入りタイヤ1では、突起部材9は、タイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向内側に中間部9Aおよび先端部9Bが配置されていることが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、先端部9Bがタイヤ最大幅位置Hを超えないため、最もタイヤ幅方向に張り出して空気抵抗が大きくなるタイヤ最大幅位置Hでの空気抵抗が低減されるので、空気抵抗を低減する効果を顕著に得ることができる。
なお、突起部材9は、図には明示しないが、突起部92の一部がタイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向外側に延在してもよい。この場合、中間部9Aは、タイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向内側に配置され、少なくとも一方の先端部9B(または端9Dから長さLの5%の範囲)がタイヤ最大幅位置Hを超えてタイヤ径方向外側に延在する。また、突起部材9は、多数の全ての突起部92または多数のうちの一部がタイヤ最大幅位置Hを超えてタイヤ径方向外側に延在してもよい。
また、突起部材9は、中間部9Aの突出高さhが1mm以上10mm以下であることが好ましい。
中間部9Aの突出高さhが1mm未満であると、車両100の底部を流れる空気流速を増加させたり、乱流境界層を発生させたりする作用が得難くなる。一方、中間部9Aの突出高さhが10mmを超えると、突起部92に衝突する空気の流れが増加することで空気抵抗が増加する傾向となる。このため、リフトを低減すると共に空気抵抗を低減する効果を顕著に得るうえで、中間部9Aの突出高さhを1mm以上10mm以下とすることが好ましい。
また、突起部材9では、突起部92は、正規リムに組み込んで正規内圧を充填した場合の無負荷状態の子午断面において、図1に示すように、タイヤ最大幅位置Hにおけるタイヤ断面幅HWからタイヤ幅方向外側に5mm以下の範囲で突出して設けられていることが好ましい。言い換えると、タイヤ最大幅位置Hでのタイヤサイド面Saを基準としたタイヤ径方向に延在する基準線HLからタイヤ幅方向外側への突起部92の突出寸法が5mm以下であることが好ましい。
タイヤ最大幅位置Hにおけるタイヤ断面幅HWからタイヤ幅方向外側に5mmの範囲を超えて突起部92が設けられると、突起部92に衝突する空気の流れが増加することから、突起部92が空気抵抗となり易い。従って、突起部92のタイヤ最大幅位置Hにおけるタイヤ断面幅HWからタイヤ幅方向外側への配置範囲を規定することで、突起部92に起因する空気抵抗の増加を抑えつつ、突起部92による空気の流れのよどみを改善する効果を顕著に得ることができる。この効果を顕著に得るため、タイヤ最大幅位置Hにおけるタイヤ断面幅HWからタイヤ幅方向外側へ突出しないことが好ましく、0mm以下であってもよい。
図31〜図33は、本実施形態に係るタイヤ用突起部材が適用された他の例のタイヤの側面図である。図34および図35は、他の例のタイヤの作用の説明図である。
図31〜図33に示すように、突起部材9は、サイド部Sの範囲において、タイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向外側およびタイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向内側に配置される。突起部材9は、タイヤ周方向に所定間隔をおいて多数配置されている。
取付状態における突起部92の配置について、図31に示すように、タイヤ周方向およびタイヤ径方向に対して同方向に傾斜して設けられていてもよく、図32に示すように、タイヤ周方向で隣接するもの同士で、タイヤ周方向およびタイヤ径方向に対する延在方向の傾きが異なっていてもよく、図33に示すように、タイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向の一方(図33では外側)がタイヤ周方向およびタイヤ径方向に対して同方向に傾斜し、タイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向の他方(図33では内側)がタイヤ周方向で隣接するもの同士で、タイヤ周方向およびタイヤ径方向に対する延在方向の傾きが異なっていてもよい。また、タイヤ周方向における突起部材9の数に限定はない。
突起部材9を適用した空気入りタイヤ1の作用について、図34に示すように、空気入りタイヤ1は、リム50に組み込んで車両100に装着した場合、車両100のタイヤハウス101内に配置される。この状態において、空気入りタイヤ1が回転方向Y1で回転すると、車両100は方向Y2に向かって走行する。この車両100の走行時に、空気入りタイヤ1の周辺において空気の流れがよどむことになる。そして、このよどみを避けるようにタイヤハウス101内の下方から上方に向かう空気の流れが生じることで、車両100が上方に持ち上げられる力であるリフトが発生する。一方で、よどみを避けるように、タイヤハウス101の外側で車両100から離れる空気の膨らみが生じることで、空気抵抗となる。
このような現象に対し、突起部材9を適用した空気入りタイヤ1によれば、車両100の走行時に、方向Y1に回転移動する突起部92が、その周辺の空気を乱流化させて上述した空気の流れのよどみを改善する。具体的に、空気入りタイヤ1の回転時の下部(回転軸Pより下側)では、車両100の底部を流れる空気流速を増加することで、タイヤハウス101内で下方から上方に向かう空気の流れが低減され、上方への空気の圧力が抑制される。この結果、リフトを抑制することができる。このリフトの抑制(リフト低減性能)は、ダウンフォースを増加させることになり、空気入りタイヤ1の接地性を向上させ、車両100の走行性能である操縦安定性能の向上に寄与する。一方、空気入りタイヤ1の回転時の上部(回転軸Pより上側)では、乱流境界層が発生し、空気入りタイヤ1における空気の流れが促進される。この結果、通過する空気の広がりが抑えられ、空気入りタイヤ1の空気抵抗を低減することができる。この空気抵抗の低減は、車両100の燃費の向上に寄与する。このような作用は、図35に示すように、タイヤ周方向およびタイヤ径方向に対する突起部材9の傾きが図34とは逆に反転しても得ることが可能である。
しかも、突起部材9を適用した空気入りタイヤ1によれば、突起部92は、突出高さhの最大位置hHを含む中間部9Aがタイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向外側に配置され、かつ突出高さhの最大位置hHを含む中間部9Aがタイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向内側に配置されているため、最もタイヤ幅方向に張り出して空気抵抗が大きくなるタイヤ最大幅位置Hでの空気抵抗が低減されるので、空気抵抗をより低減することができる。
従って、本実施形態の突起部材9を図31〜図33に示すような取付状態とすることで、リフト低減効果を得ることができ、かつ空気抵抗を低減することができる。
また、突起部材9を適用した空気入りタイヤ1では、タイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向外側に設けられた突起部材9は、タイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向外側に中間部9Aおよび先端部9Bが配置されていることが好ましい。また、タイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向内側に設けられた突起部材9は、タイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向内側に中間部9Aおよび先端部9Bが配置されていることが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、先端部9Bがタイヤ最大幅位置Hを超えないため、最もタイヤ幅方向に張り出して空気抵抗が大きくなるタイヤ最大幅位置Hでの空気抵抗が低減されるので、空気抵抗を低減する効果を顕著に得ることができる。
なお、タイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向外側に設けられた突起部材9は、図には明示しないが、突起部92の一部がタイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向内側に延在してもよい。この場合、中間部9Aは、タイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向外側に配置され、少なくとも一方の先端部9B(または端9Dから長さLの5%の範囲)がタイヤ最大幅位置Hを超えてタイヤ径方向内側に延在する。また、突起部材9は、多数の全ての突起部92または多数のうちの一部がタイヤ最大幅位置Hを超えてタイヤ径方向内側に延在してもよい。また、タイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向内側に設けられた突起部材9は、図には明示しないが、突起部92の一部がタイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向外側に延在してもよい。この場合、中間部9Aは、タイヤ最大幅位置Hよりタイヤ径方向内側に配置され、少なくとも一方の先端部9B(または端9Dから長さLの5%の範囲)がタイヤ最大幅位置Hを超えてタイヤ径方向外側に延在する。また、突起部材9は、多数の全ての突起部92または多数のうちの一部がタイヤ最大幅位置Hを超えてタイヤ径方向外側に延在してもよい。
また、突起部材9は、中間部9Aの突出高さhが1mm以上10mm以下であることが好ましい。
中間部9Aの突出高さhが1mm未満であると、車両100の底部を流れる空気流速を増加させたり、乱流境界層を発生させたりする作用が得難くなる。一方、中間部9Aの突出高さhが10mmを超えると、突起部92に衝突する空気の流れが増加することで空気抵抗が増加する傾向となる。このため、リフトを低減すると共に空気抵抗を低減する効果を顕著に得るうえで、中間部9Aの突出高さhを1mm以上10mm以下とすることが好ましい。
また、突起部材9では、突起部92は、正規リムに組み込んで正規内圧を充填した場合の無負荷状態の子午断面において、図1に示すように、タイヤ最大幅位置Hにおけるタイヤ断面幅HWからタイヤ幅方向外側に5mm以下の範囲で突出して設けられていることが好ましい。言い換えると、タイヤ最大幅位置Hでのタイヤサイド面Saを基準としたタイヤ径方向に延在する基準線HLからタイヤ幅方向外側への突起部92の突出寸法が5mm以下であることが好ましい。
タイヤ最大幅位置Hにおけるタイヤ断面幅HWからタイヤ幅方向外側に5mmの範囲を超えて突起部92が設けられると、突起部92に衝突する空気の流れが増加することから、突起部92が空気抵抗となり易い。従って、突起部92のタイヤ最大幅位置Hにおけるタイヤ断面幅HWからタイヤ幅方向外側への配置範囲を規定することで、突起部92に起因する空気抵抗の増加を抑えつつ、突起部92による空気の流れのよどみを改善する効果を顕著に得ることができる。この効果を顕著に得るため、タイヤ最大幅位置Hにおけるタイヤ断面幅HWからタイヤ幅方向外側へ突出しないことが好ましく、0mm以下であってもよい。
図36は、溝が形成されたタイヤ用突起部材の平面図である。図37は、図36におけるA−A断面図である。図38は、溝が形成されたタイヤ用突起部材の他の例の平面図である。図39は、凹部が形成されたタイヤ用突起部材の平面図である。図40は、図39におけるB−B断面図である。図41は、溝および凹部が形成されたタイヤ用突起部材の平面図である。
本実施形態の突起部材9では、図36〜図38に示すように、突起部92の表面に溝9Eを形成することが好ましい。
この突起部材9によれば、溝9Eが形成されていることにより、突起部92の剛性が低下するため、突起部92によりサイド部Sが剛構造となることによる乗り心地性の低下を抑えることができる。しかも、溝9Eが形成されていることにより、突起部92の質量が低下するため、突起部92によるサイド部Sの質量増加に伴うユニフォミティの低下を抑えることができる。
なお、溝9Eは、図36に示すように、突起部92の延在方向に交差するように長さLに対して所定間隔で複数設けられている。また、溝9Eは、突起部92の延在方向に対して交差する角度βは特に規定がないが、各溝9Eで同じくすることが、突起部92の延在方向での極度の質量変化を抑える上で好ましい。また、溝9Eは、図38に示すように、突起部92の短手方向の中央を通過する中心線SLの接線GLに対して同じ角度θ(例えば、θ=90°)とすることが、突起部92の延在方向での極度の質量変化を抑える上で好ましい。また、溝9Eは、溝幅が2mm以下とされていることが、空力的な影響、すなわち、周辺の空気を乱流化させて空気の流れのよどみを改善させたり、車両100の底部を流れる空気流速を増加させたり、乱流境界層を発生させたりする作用に影響が少なく好ましい。また、溝9Eは、図37に示すように、溝深さd1が、突起部92の突出高さh以下であることが、突起部92を途中で分断せずに、周辺の空気を乱流化させて空気の流れのよどみを改善させたり、車両100の底部を流れる空気流速を増加させたり、乱流境界層を発生させたりする作用を得るうえで好ましい。溝9Eの溝深さd1は、例えば、突起部92の突出高さhの90%以下であることが好ましい。なお、図37における突起部92の短手方向の断面の三角形状は一例である。
また、本実施形態の突起部材9では、図39および図40に示すように、突起部92の表面に凹部9Fを形成することが好ましい。
この突起部材9によれば、凹部9Fが形成されていることにより、突起部92の剛性が低下するため、突起部92によりサイド部Sが剛構造となることによる乗り心地性の低下を抑えることができる。しかも、凹部9Fが形成されていることにより、突起部92の質量が低下するため、突起部92によるサイド部Sの質量増加に伴うユニフォミティの低下を抑えることができる。
なお、凹部9Fは、図39に示すように、突起部92の延在方向に沿って所定間隔で複数設けられている。また、凹部9Fは、突起部92の幅Wが延在方向で変化する場合、幅Wの変化に応じて大きさを変化することが、突起部92の延在方向での極度の質量変化を抑える上で好ましい。また、凹部9Fは、開口径が2mm以下とされていることが、空力的な影響、すなわち、周辺の空気を乱流化させて空気の流れのよどみを改善させたり、車両100の底部を流れる空気流速を増加させたり、乱流境界層を発生させたりする作用に影響が少なく好ましい。また、凹部9Fは、図40に示すように、溝深さd2が、突起部92の突出高さh以下であることが、突起部92を途中で分断せずに、周辺の空気を乱流化させて空気の流れのよどみを改善させたり、車両100の底部を流れる空気流速を増加させたり、乱流境界層を発生させたりする作用を得るうえで好ましい。凹部9Fの溝深さd2は、例えば、突起部92の突出高さhの90%以下であることが好ましい。なお、図40における突起部92の短手方向の断面の三角形状は一例である。また、凹部9Fを設ける位置は、突起部92の頂部に限らず側部であってもよい。また、凹部9Fの開口形状や深さ形状は、円形状に限らず、様々な形状であってもよい。ただし、円弧で開口縁や底部が形成されているほうが、突起部92へのクラックの発生する要素を除くことができる。
また、本実施形態の突起部材9では、図41に示すように、突起部92の表面に溝9Eおよび凹部9Fを形成することが好ましい。
この突起部材9によれば、溝9Eおよび凹部9Fが形成されていることにより、突起部92の剛性が低下するため、突起部92によりサイド部Sが剛構造となることによる乗り心地性の低下を抑えることができる。しかも、溝9Eおよび凹部9Fが形成されていることにより、突起部92の質量が低下するため、突起部92によるサイド部Sの質量増加に伴うユニフォミティの低下を抑えることができる。
溝9Eおよび凹部9Fは、図41において突起部92の延在方向に沿って交互に設けられているが、これに限らず、適宜混在して配置してもよい。
なお、実施形態の突起部材9では、突起部92の短手方向の幅Wが、0.5mm以上10.0mm以下とされていることが好ましい。突起部92の短手方向の幅Wが上記範囲未満であると、突起部92が空気の流れに接触する範囲が小さいことから、突起部92による空気の流れのよどみを改善する効果が得難くなる。一方、突起部92の短手方向の幅Wが上記範囲を超えると、突起部92が空気の流れに接触する範囲が大きいことから、突起部92が空気抵抗の増加の原因となったり、タイヤ重量の増加の原因になったりし得る。従って、突起部92の短手方向の幅Wを適正化することで、突起部92による空気の流れのよどみを改善する効果を顕著に得ることができる。
従って、上述したように、本実施形態の突起部材9は、空気入りタイヤ1のサイド部Sの表面(タイヤサイド面Sa)に取り付けられる取付面91aを有する取付部91と、取付部91がサイド部Sの表面に取り付けられた状態でサイド部Sの表面から突出して設けられる突起部92と、を含む。
この突起部材9によれば、上述したように空気入りタイヤ1のサイド部Sの表面に取り付けることで、空気入りタイヤ1においてリフト低減効果や空気抵抗の低減効果や通過音の低減効果を簡便に得ることができる。
また、本実施形態の突起部材9では、ゴム状物により形成されていることが好ましい。
ゴム状物とは、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ジエン系ゴム、非ジエン系ゴム、熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系エラストマーなどを含み、可撓性を有するものである。従って、この突起部材9によれば、ゴム状物により形成されて可撓性を有することで、取り付けた空気入りタイヤ1のサイド部Sの表面の変形に追従して変形することができ、容易に外れることを防止することができる。
なお、可撓性を有する指標として、突起部材9は、JIA−A硬度が20以上90以下であることが好ましい。JIA−A硬度は、JISK6253−3:2012に準拠し、タイプAデュロメータで測定した値である。
また、本実施形態の突起部材9では、図42に示すように、取付部91は、突起部92の周囲の外側に突き出る突片91bを有することが好ましい。突片91bは、取付面91aを有する。
この突起部材9によれば、取付部91に突片91bを有することで、取付面91aを拡大することができ、サイド部Sのタイヤサイド面Saとの接触面積を増大させることから、サイド部Sへの取り付けを強固にすることができる。
また、本実施形態の突起部材9では、図43に示すように、複数の突起部92が繋がって設けられていてもよい。
具体的に、突起部92は、図43に示すように、取付部91の突片91bを介して繋がっている。この突起部材9によれば、複数の突起部92を纏めて取り扱い、個々に切り取ってサイド部Sの表面に取り付けたり、複数の突起部92を並べてサイド部Sの表面に配置したりすることができる。なお、複数の突起部92は、取付部91の突片91bを介さず、突起部92同士が直接繋がっていてもよい。
また、本実施形態の突起部材9では、図44に示すように、取付部91の取付面91a(突片91bにおける取付面91aも含む)に接着層93が設けられていてもよい。
接着層93は、サイド部Sのタイヤサイド面Saに接着される接着材からなり、接着前ではシート(図示せず)が貼られて接着効果の低下が防がれており、サイド部Sのタイヤサイド面Saに接着時にシートを剥がす。この突起部材9によれば、サイド部Sのタイヤサイド面Saへの接着を簡便に行うことができる。
また、本実施形態の突起部材9では、図45に示すように、反射体94を有していてもよい。
反射体94は、少なくともサイド部Sに現れる突起部92の表面に設けられている。また、取付部91に突片91bが設けられている場合は突片91bの表面に反射体94が設けられていてもよい。また、反射体94は、突起部材9そのものを形成するものであってもよい。この突起部材9によれば、視認性を向上することができる。
また、本実施形態の突起部材9では、蛍光体を有していてもよい。
蛍光体は、上述した反射体94に代えて少なくともサイド部Sに現れる突起部92の表面に層状に設けられている。また、取付部91に突片91bが設けられている場合は突片91bの表面に蛍光体が設けられていてもよい。また、蛍光体は、突起部材9そのものを形成するものであってもよい。この突起部材9によれば、視認性を向上することができる。
また、本実施形態の突起部材9では、透明体により形成されていてもよい。
透明体は、突起部材9そのものを形成する。この突起部材9によれば、視認性を向上することができる。
ところで、上述したように、空気入りタイヤ1のサイド部Sの表面(タイヤサイド面Sa)に取り付けられる取付面91aを有する取付部91と、取付部91がサイド部Sの表面に取り付けられた状態でサイド部Sの表面から突出して設けられる突起部92と、を含む突起部材9を空気入りタイヤ1のサイド部Sの表面に取り付ける突起部材9の取付方法は、加硫後の空気入りタイヤ1のサイド部Sの表面に、取付部91の取付面91aを取り付ける。
すなわち、突起部材9は、空気入りタイヤ1の成形時に共に加硫して設けられるものではなく、成形された加硫後の空気入りタイヤ1に別途取り付けられるものである。この突起部材9の取付方法によれば、突起部材9を有していない空気入りタイヤ1に対し、突起部材9の効果を簡便に付与することができる。
具体的に、本実施形態の突起部材9の取付方法では、加硫後の空気入りタイヤ1のサイド部Sの表面に、取付部91の取付面91aを接着材により取り付けてもよい。また、本実施形態の突起部材9の取付方法では、加硫後の空気入りタイヤ1のサイド部Sの表面に、取付部91の取付面91aを溶着により取り付けてもよい。また、本実施形態の突起部材9の取付方法では、加硫後の空気入りタイヤ1のサイド部Sの表面に、突起部材9を加硫して取り付けてもよい。このように、様々な方法により突起部材9を加硫後の空気入りタイヤ1のサイド部Sの表面に取り付けることができる。