JP6938163B2 - 脂質組成物、その用途及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、n−3ドコサペンタエン酸(n−3DPA)を含む脂質組成物、その用途、及びその製造方法に関する。
多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acid, PUFA)はヒト及び動物の栄養において重要な成分である。
PUFAは、炭素鎖中の最初の二重結合の位置によってn−3(又はω−3)PUFA、n−6(又はω−6)PUFA等に分類できる。n−3PUFAとしてはエイコサペンタエン酸(EPA、C20:5n−3)、n−3ドコサペンタエン酸(n−3DPA、C22:5n−3)、ドコサヘキサエン酸(DHA、C22:6n−3)等が知られている。n−6PUFAとしては、アラキドン酸(ARA、C20:4n−6)、n−6ドコサペンタエン酸(n−6DPA、C22:5n−6)等が知られている。
n−3PUFAとn−6PUFAはヒト体内の代謝において相互に変換されることはないため、それぞれを摂取する必要がある。n−3PUFAとn−6PUFAとは約1:4のバランスで摂取することが推奨されている(例えば特許文献1)。しかし今日の日本では、n−3PUFAとn−6PUFAとが約1:15〜1:25の比率で摂取されており望ましいバランスとは言えない。
一方、n−3PUFAの1つであるEPAは抗動脈硬化活性が知られている。ヒト体内に投与されたEPAは血管内壁でn−3DPAに変換されることから、n−3DPAはEPAの抗動脈硬化活性の活性本体であると考えられる(非特許文献1〜3)。
n−3DPAの従来の製造方法として、特許文献2には、哺乳類由来の脂肪酸鎖長延長酵素遺伝子を導入した形質転換体を培養する際の培地にEPAを添加することで、EPAからn−3DPAを製造する方法が開示されている。非特許文献4には、有機化学的合成によりEPAからn−3DPAを合成する方法が開示されている。特許文献3には、腹足類(マキガイ網)等の特定の軟体動物の軟体部又は卵から脂質を抽出しn−3DPAを構成脂肪酸として含む脂質成分を採取することが開示されている。
特許文献4には、実質的に遊離酸の形態の、少なくとも50%(a/a)のEPAと、実質的に遊離酸の形態の、少なくとも15%(a/a)のDHAと、実質的に遊離酸の形態の、少なくとも1%(a/a)のDPA(n−3)とを含む医薬組成物が開示されている。
特許文献5には、ヒト患者において、トリグリセリドレベルをベースラインレベルから低減させる方法であって、160mg/日〜約600mg/日のω−3DPAを含み、任意にDHAを更に含み、DHAを含む場合はDHA:n−3DPAが2:1を超えない組成物を投与する方法が開示されている。
特許文献6には、遺伝子を遺伝子工学的に破壊あるいは発現抑制することにより不飽和脂肪酸酸性能力が向上したストラメノパイルを得る形質転換方法を提供することが開示されている。ストラメノパイルとしてヤブレツボカビ属(Thraustochytrium)等のラビリンチュラ類が例示されている。特許文献6の実施例8−6には、Thraustochytrium aureum ATCC 34304のOrfA破壊株においてΔ4デサチュラーゼ遺伝子を破壊すると、C22:5n−6(n−6DPA)およびC22:6n−3(DHA)がほとんど生合成されなくなり、C22:4n−6(DTA)およびC22:5n−3(n−3DPA)が蓄積したことが開示されており、図64には、生成された脂質の組成として、C22:4n−6(DTA)が11.01%、C22:5n−3(n−3DPA)が15.76%、C22:5n−6(n−6DPA)が0.21%、C22:6n−3(DHA)が0.51%であったことが開示されている。
特許文献7には、n−3系多価不飽和脂肪酸の体内への吸収性に優れ、常温でも油脂結晶が析出せずに加工し易く、風味の良い油脂組成物として、油脂組成物中の構成脂肪酸残基中、n−3系多価不飽和脂肪酸を20〜60重量%、カプリル酸及び/又はカプリン酸を10〜30重量%、パルミチン酸を15〜40重量%含有し、2位に結合するパルミチン酸残基量/パルミチン酸残基総量(重量比)が0.4〜0.95であり、油脂組成物全体中、結合する全ての脂肪酸がカプリル酸及び/又はカプリン酸であるトリグリセリドの含有量が10重量%以下である油脂組成物が開示されている。
特開2014−159576号公報 特開2003−116566号公報 特開2013−40235号公報 US2013/0209556 US8,906,964 WO2012/043826 特開2016−202001号公報
Arterioscl.Thromb.Vas.1994,14(3),471 Am.J.Epidemiol.1995,142(5),469 Prostag.Leucotr.Ess.1996,54(5),319 Lipids,2006,144(2),172 J. Lipid Res. 2012,53(8),1543 J.Clin. Invest. 2015,125(12),4544 Can. J. Biochem. Phys. 1959,37(8),911 Mycoscience, 2007,48,199
本発明は、n−3DPA等のn−3PUFAを含む脂質組成物、前記脂質組成物を含む医薬組成物、食品組成物、又は餌飼料組成物、前記脂質組成物の製造方法、n−3DPA含有脂質の製造方法、及び、前記医薬組成物、前記食品組成物、前記飼料組成物又は前記餌料組成物の製造方法を提供する。
本発明は以下の発明を包含する。
(1)脂質組成物であって、
GC−FID(検出器として水素炎イオン化型検出器を用いたガスクロマトグラフィー)により分析したときに得られるクロマトグラムにおけるピーク面積比として、
脂肪酸成分の全量に対して、
メチルエステル換算で、
10%以上のn−3DPA(n−3ドコサペンタエン酸)と、
30%以上のDHA(ドコサヘキサエン酸)と
を少なくとも含み、
n−6多価不飽和脂肪酸の含有量が合計で15%以下であり、
パルミチン酸の含有量が10%以下であることを特徴とする脂質組成物。
(2)GC−FIDにより分析したときに得られるクロマトグラムにおけるピーク面積比として、メチルエステル換算で、100部のDHAに対して30部以上のn−3DPAを含む、(1)に記載の脂質組成物。
(3)(1)又は(2)に記載の脂質組成物を含有する、医薬組成物、食品組成物、又は餌飼料組成物。
(4)脂肪酸成分としてn−3DPAを含有する脂質組成物の製造方法であって、
オーランチオキトリウム属に属する微生物を培養する培養工程と、
前記培養工程で得られた培養物から脂質組成物を取得する脂質組成物取得工程と
を含み、
前記培養工程が、
開始時に炭素源を0.5質量%以上の濃度で含む培地中で前記微生物を培養して、前記微生物による炭素源の消費により前記培地中の炭素源を0.1質量%以下まで減少させる第1工程と、
炭素源の濃度が0.1質量%以下となった培地中で48時間以上の培養を行う第2工程と含む、
前記方法。
(5)前記第1工程が、炭素源を0.5質量%以上の濃度で含む培地中で前記微生物を培養して、前記微生物により炭素源を消費させ、次いで、炭素源を0.5質量%以上の濃度となるように前記培地中に追加添加し、更に培養を行い前記微生物により炭素源を消費させることを含む、(4)に記載の方法。
(6)前記培養工程に用いる前記培地がアスコルビン酸及びイソアスコルビン酸から成る群から選ばれる一つ以上の成分を含むことを含む、(4)又は(5)に記載の方法。
(7)製造される前記脂質組成物が、(1)又は(2)に記載の脂質組成物である、(4)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)脂肪酸成分としてn−3DPAを含有するn−3DPA含有脂質の製造方法であって、
(4)〜(7)のいずれかに記載の方法により脂質組成物を製造する脂質組成物製造工程と、
製造された前記脂質組成物からn−3DPA含有脂質を分離する分離工程を含むことを特徴とする方法。
(9)脂肪酸成分としてn−3DPAを含有するn−3DPA含有脂質の製造方法であって、
(1)又は(2)に記載の脂質組成物からn−3DPA含有脂質を分離する分離工程を含むことを特徴とする方法。
(10)脂肪酸成分としてn−3DPAを含有する脂質組成物を含有する医薬組成物、食品組成物、又は餌飼料組成物の製造方法であって、
(4)〜(7)のいずれかに記載の方法により脂肪酸成分としてn−3DPAを含有する脂質組成物を製造する脂質組成物製造工程と、
製造された前記脂質組成物を配合する配合工程と
を含むことを特徴とする方法。
(11)脂肪酸成分としてn−3DPAを含有するn−3DPA含有脂質を含有する医薬組成物、食品組成物、又は餌飼料組成物の製造方法であって、
(4)〜(7)のいずれかに記載の方法により脂肪酸成分としてn−3DPAを含有する脂質組成物を製造する脂質組成物製造工程と、
製造された前記脂質組成物からn−3DPA含有脂質を分離する分離工程と、
分離された前記n−3DPA含有脂質を配合する配合工程と
を含むことを特徴とする方法。
(12)D42−16625(受託番号:FERM P−22324)。
本発明によれば、n−3DPA等のn−3PUFAを含む脂質組成物、前記脂質組成物を含む医薬組成物、食品組成物、又は餌飼料組成物、前記脂質組成物の製造方法、n−3DPA含有脂質の製造方法、及び、前記医薬組成物、前記食品組成物、前記飼料組成物又は前記餌料組成物の製造方法が提供される。
<1.脂質及び脂質組成物>
本発明において脂質は、少なくとも脂肪酸成分を含む親油性化合物の総称であり、脂肪酸、脂肪酸トリグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸モノグリセリド、リン脂質等を含む。
本発明において脂質組成物とは、1種以上の脂質を含む組成物を指し、2種以上の脂質を含んでいてもよく、他の成分を更に含んでいてもよい。
<2.脂質組成物の特徴>
本発明の一態様は、
脂肪酸成分の全量を基準として、
メチルエステル換算で、
10%以上のn−3DPAと、
30%以上のDHAと
を少なくとも含み、
n−6PUFAの含有量が合計で15%以下であり、
パルミチン酸の含有量が10%以下であることを特徴とする脂質組成物に関する。以下、この態様に係る脂質組成物を「本発明の脂質組成物」と称する。
本明細書において、本発明の脂質組成物における脂肪酸の割合(%)は、特に明示しない限り、脂質組成物の脂肪酸をメチルエステル化して得た試料をGC−FID(検出器として水素炎イオン化型検出器を用いたガスクロマトグラフィー)により分析したときに得られるクロマトグラムにおけるピーク面積比としての、メチルエステル換算での、脂肪酸成分の全量に対する所定の脂肪酸の割合を意味する。脂質組成物中の脂肪酸組成の分析は次の方法で行うことができる:培養液を遠心分離により集菌し、破砕を行った後Bligh&Dyer法(非特許文献7)により抽出する。抽出された脂質組成物をメチルエステルに変換して得た試料を、GC−FIDにより脂肪酸組成を分析する。GC−FIDの具体的な条件としては、実施例に記載の条件が例示できる。
本発明の脂質組成物で「n−6PUFAの含有量が合計で15%以下」とは、n−6PUFAが含まれていない、又は、含まれていた場合であってもその含有量が15%以下であることを意味する。
同様に本発明の脂質組成物で「パルミチン酸の含有量が10%以下」とは、パルミチン酸が含まれていない、又は、含まれていた場合であってもその含有量が10%以下であることを意味する。
本明細書では同様に、ある成分の含有量が所定の上限値以下であることのみを規定する場合、その成分が含まれていない、又は、含まれていた場合であってもその含有量が上限値以下であることを意味する。
本発明の脂質組成物は、n−3PUFAとして、10%以上のn−3DPAと、30%以上のDHAとを少なくとも含むことから、少なくとも40%以上のn−3PUFAを含む。n−6PUFAの含有量は合計で15%以下である。すなわち本発明の脂質組成物はn−3PUFAをn−6PUFAの2.6倍以上の量で含む。本発明の脂質組成物を摂取することで、n−6PUFAに偏りがちなn−3PUFAとn−6PUFAとのバランスを是正することができる。また、本発明の脂質組成物を摂取することで、有益な生理作用が知られているn−3DPAとDHAを効率的に摂取することができる。このため本発明の脂質組成物は医薬組成物、食品組成物、又は餌飼料組成物に配合する成分として有用である。
本発明の脂質組成物では、n−3DPAの含有量がより好ましくは15%以上であり、より好ましくは20%以上であり、より好ましくは24%以上である。本発明の脂質組成物においてn−3DPAの含有量がこの範囲である場合、本発明の脂質組成物を摂取することにより効率的にn−3DPA及びn−3PUFAを摂取することができる。メチルエステル換算でのn−3DPAの含有量の上限は特に限定されないが、通常は50%以下、48%以下、又は、46%以下である。
本発明の脂質組成物では、DHAの含有量がより好ましくは35%以上であり、より好ましくは40%以上である。本発明の脂質組成物においてDHAの含有量がこの範囲である場合、より効率的にDHA及びn−3PUFAを摂取することができる。メチルエステル換算でのDHAの含有量の上限は特に限定されないが、通常は65%以下、60%以下、又は、55%以下である。
本発明の脂質組成物は、GC−FIDにより分析したときに得られるクロマトグラムにおけるピーク面積比として、メチルエステル換算で、100部のDHAに対して好ましくは30部以上、より好ましくは40部以上、より好ましくは50部以上のn−3DPAを含む。DHAに対するn−3DPAの含有量がこの範囲である脂質組成物は、n−3DPAが持つ抗動脈硬化活性等の有利な生理活性を効果的に奏することができる。
本発明の脂質組成物において、n−6PUFAの含有量は合計で15%以下であり、n−6PUFAが含まれていなくてもよい。n−6PUFAは、n−6ドコサペンタエン酸(n−6DPA)等の、炭素数が16〜24であり不飽和結合が2〜6個のn−6PUFAであり、具体的には、リノール酸(LA、18:2)、γ−リノレン酸(GLA、18:3)、カレンド酸(18:3(GLAの12位幾何異性体))、n−6エイコサジエン酸(EDA,20:2)、ジホモ−γ−リノレン酸(DGLA、20:3)、アラキドン酸(ARA、20:4)、n−6ドコサジエン酸(DDA,22:2)、アドレン酸(22:4)、n−6DPA(22:5)、n−6テトラコサテトラエン酸(24:4)、テトラコサペンタエン酸(24:5)の11種を含む。n−6PUFAの含有量が上記の範囲であることにより、本発明の脂質組成物にはn−3PUFAがn−6PUFAの2.6倍以上含まれることとなるため好ましい。n−6PUFAの個別の脂肪酸の含有量は特に限定されないが、例えば、本発明の脂質組成物におけるn−6DPAの含有量が15%以下、又は12%以下であることができる。
本発明の脂質組成物は、典型的には、n−6PUFAの一種であるアラキドン酸(ARA)、リノール酸(LA)、γ−リノレン酸(GLA)を含有しない。
本発明の脂質組成物において、パルミチン酸の含有量は10%以下であり、パルミチン酸が含まれていなくてもよい。パルミチン酸の含有量はより好ましくは8%以下であり、より好ましくは6%以下である。本発明の脂質組成物は、パルミチン酸の含有量がこの範囲であることにより、飽和脂肪酸により誘導される小胞体ストレスが原因となる血管石灰化を予防することができる(非特許文献5、6)。本発明の脂質組成物では、より好ましくは、パルミチン酸を含む飽和脂肪酸の含有量が合計で16%以下であり、飽和脂肪酸が含まれていなくてもよい。
本発明の脂質組成物は、n−3DPA及びDHA以外の他のn−3PUFAを含んでいてもよい。他のn−3PUFAとしてはEPA(エイコサペンタエン酸)が例示できる。本発明の脂質組成物におけるEPAの含有量としては、例えば10%以下、8%以下、6%以下、又は5%以下であることができる。
本発明の脂質組成物は、より好ましくは、
脂肪酸成分の全量を基準として、
メチルエステル換算で、
10%以上50%以下のn−3DPAと、
30%以上65%以下のDHAと
を少なくとも含み、
n−6PUFAの含有量が合計で15%以下であり、
パルミチン酸の含有量が10%以下であり、
EPAの含有量が10%以下である。
各脂肪酸の更に好ましい範囲は、各脂肪酸について上記した範囲にそれぞれ限定することができる。
例えば、本発明の脂質組成物は、
脂肪酸成分の全量を基準として、
メチルエステル換算で、
20%以上50%以下のn−3DPAと、
35%以上60%以下のDHAと
を少なくとも含み、
n−6PUFAの含有量が合計で15%以下であり、
パルミチン酸の含有量が8%以下であり、
EPAの含有量が6%以下であることができる。
<3.医薬組成物、食品組成物、又は餌飼料組成物>
本発明の他の一態様は、
上記の本発明の脂質組成物を含有する、医薬組成物、食品組成物、又は餌飼料組成物に関する。
本発明の医薬組成物は、上記の本発明の脂質組成物と、医薬として許容される1以上の他の成分とを配合して調製することができる。本発明の医薬組成物は固体状、液体状、半固体状等の任意の形態であってよい。本発明の医薬組成物は好ましくは経口摂取される形態の医薬組成物である。本発明の医薬組成物における、本発明の脂質組成物の配合量は特に限定されないが、例えば、本発明の脂質組成物を、n−3DPAをメチルエステル換算で1〜50質量%含むように配合することができる。
本発明の食品組成物は、上記の本発明の脂質組成物と、食品として許容される1以上の他の成分とを配合して調製することができる。本発明の食品組成物は固体状、液体状、半固体状等の任意の形態であってよい。本発明の食品組成物は栄養補助食品として利用することができる。本発明の食品組成物における、本発明の脂質組成物の配合量は特に限定されないが、例えば、本発明の脂質組成物を、n−3DPAをメチルエステル換算で1〜50質量%含むように配合することができる。
本発明の餌飼料組成物は、上記の本発明の脂質組成物と、非ヒト動物用の餌飼料として許容される1以上の他の成分とを配合して調製することができる。本発明の餌飼料組成物は固体状、液体状、半固体状等の任意の形態であってよい。本発明の餌飼料組成物における、本発明の脂質組成物の配合量は特に限定されないが、例えば、本発明の脂質組成物を、n−3DPAをメチルエステル換算で1〜50質量%含むように配合することができる。
<4.脂質組成物の製造方法>
本発明の他の一態様は、
脂肪酸成分としてn−3DPAを含有する脂質組成物の製造方法であって、
オーランチオキトリウム属に属する微生物を培養する培養工程と、
前記培養工程で得られた培養物から脂質組成物を取得する脂質組成物取得工程と
を含み、
前記培養工程が、
開始時に炭素源を0.5質量%以上の濃度で含む培地中で前記微生物を培養して、前記微生物による炭素源の消費により前記培地中の炭素源を0.1質量%以下まで減少させる第1工程と、
炭素源の濃度が0.1質量%以下となった培地中で48時間以上の培養を行う第2工程とを含む、
前記方法に関する。
本発明者らは、オーランチオキトリウム属に属する微生物は、通常の培養条件では生成する脂質に占めるn−3DPA含有脂質の割合は小さいのに対して、炭素源の飢餓ストレスを与える条件にて培養を行う場合にはn−3DPA含有脂質の割合が顕著に高まるという驚くべき知見に基づき、本発明のn−3DPA含有脂質組成物製造方法を完成させるに至った。
本発明のn−3DPA含有脂質組成物製造方法に用いる、オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)属に属する微生物は、前記培養工程を行ったときに、前記第1工程において、培地中の炭素源の濃度が0.1質量%となった時点での前記微生物体中の脂質組成物における脂肪酸成分に占めるn−3DPAの含有率(メチルエステル換算でのGC−FID分析でのクロマトグラムにおけるピーク面積比を指す。以下同じ)と比較して、前記第2工程終了時点での前記微生物体中の脂質組成物における脂肪酸成分に占めるn−3DPAの含有率が高くなる性質を示す微生物であればよく、より好ましくは、前記第1工程において、培地中の炭素源の濃度が0.1質量%となった時点での前記微生物体中の脂質組成物における脂肪酸成分に占めるn−3DPAの含有率と比較して、前記第2工程終了時点での前記微生物体中の脂質組成物における脂肪酸成分に占めるn−3DPAの含有率が5倍以上、より好ましくは10倍以上となる微生物であり、より好ましくは、前記第2工程終了時点での前記微生物体中の脂質組成物として、メチルエステル換算で10%以上のn−3DPAを脂肪酸成分として含有する脂質組成物を生産する能力を有する微生物である。
本発明で用いるオーランチオキトリウム属に属し、n−3DPAを含有する脂質組成物を生産する能力を有する微生物の好ましい具体例としては、オーランチオキトリウム sp.(Aurantiochytrium sp.)に分類される微生物株D42−16625(受託番号:FERM P−22324)が例示できる。
本発明において、前記微生物株は、その変異株であって、n−3DPAを含有する脂質組成物を生産する能力を有する変異株も包含する概念である。前記微生物株の変異株は、前記微生物株に変異誘発処理を施して得られる変異株である。変異誘発処理は任意の適当な変異原を用いて行われ得る。ここで「変異原」なる語は、例えば変異原効果を有する薬剤のみならずUV照射のごとき変異原効果を有する処理をも含むものと理解すべきである。適当な変異原の例としてエチルメタンスルホネート、UV照射、N−メチル−N′−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、ブロモウラシルのようなヌクレオチド塩基類似体及びアクリジン類が挙げられるが、適切であれば、他の変異原も使用され得る。
微生物がオーランチオキトリウム属に属することは以下の指標によって判断することができる:顕微鏡観察により細胞壁が薄く、球状で橙色の形状をしており、外質ネットが未発達である、色素としてアスタキサンチン、フェニコキサンチンを含み、ドコサヘキサエン酸(DHA)を主な脂肪酸成分として含むトリグリセリドを油滴として蓄積する(非特許文献8)。より具体的には、栄養豊富な培地で培養した時、脂肪酸成分としてメチルエステル換算でDHAを約40%、パルミチン酸を約30%、n−6DPAを約5%含む脂質を細胞内に油滴として蓄積する微生物である。
前記第1工程では、開始時に炭素源を0.5質量%以上の濃度で含む培地中で前記微生物を培養して、前記微生物による炭素源の消費により前記培地中の炭素源を0.1質量%以下まで減少させる。
このとき、培地としては炭素源を少なくとも含む液体培地または固体培地(寒天培地等)を使用することができる。
第1工程の開始時における炭素源の濃度は培地中0.5質量%以上であれば特に限定されず、例えば0.5〜20質量%、又は、1.0〜10質量%が適当である。また、炭素源としてはグルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース等の糖類、グリセロール等のアルコール類を用いることができる。これらの炭素源は2種以上組み合わせて用いてもよい。
第1工程では、前記微生物により炭素源を消費させて培地中の炭素源を減少させる。このとき培地中の炭素源の濃度を0.1質量%以下まで減少させる。
第2工程では、第1工程により炭素源の濃度が0.1質量%以下となった状態で更に48時間以上、より好ましくは72時間以上、より好ましくは96時間以上、より好ましくは120時間以上、培養する。
第1工程及び第2工程を含む培養工程の時間は初期炭素源濃度に依存するが、全体で11日間以下、例えば4〜11日間が適当である。培養工程において、培養温度は16〜37℃が適当である。培地の初期pHは3.0〜12.0、好ましくは3.0〜10.0、更に好ましくは6.0〜9.5が適当である。培養は静置で行ってもよく、振盪培養、撹拌を行ってもよい。
前記培地は窒素源を更に含むことが好ましい。窒素源としては、ペプトン、ポリペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、肉エキス、カザミノ酸、コーンスティープリカー、大豆かす等の天然窒素源、グルタミン酸ナトリウム、尿素等の有機窒素源、並びに、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の無機窒素源から選択される1種以上を使用できるが、これらに限られるものではない。
培地は更に天然海水塩又は人工海水塩を含むことが好ましい。天然海水塩又は人工海水塩を培地中に含む場合、その濃度は特に限定されないが、例えば塩化ナトリウム濃度が0.5%〜4.1%となる量の天然海水塩又は人工海水塩を含む培地が例示できる。
前記培地は更に必要に応じて、硫酸鉄、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸銅、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム等のリン酸塩、並びにビタミン類から選択される1種以上の他の栄養成分を含有してもよい。
本発明の方法では、より好ましくは、前記第1工程が、炭素源を0.5質量%以上の濃度で含む培地中で前記微生物を培養して、前記微生物により炭素源を消費させ、次いで、炭素源を0.5質量%以上の濃度となるように前記培地中に追加添加し、更に培養を行い前記微生物により炭素源を消費させることを含む。追加添加を行うことにより、n−3DPAを含む本発明の脂質組成物の生成量を高めることができる。
ここで「炭素源を0.5質量%以上の濃度で含む培地」は、第1工程の開始時の培地であってもよいし、炭素源の追加添加を複数回行う場合には、前回の追加添加で炭素源が添加された培地であってもよい。追加添加はN回(ここでNは1以上の整数)行うことができ、Nが2以上の場合は、第(n−1)回(nは2〜N)の炭素源の追加添加の後、前記微生物により炭素源を消費させてから、第n回の追加添加を行い、更に前記微生物により炭素源を消費させる。
最後の第N回の追加添加の後、前記微生物による炭素源の消費により前記培地中の炭素源を0.1質量%以下まで減少させ、炭素源の濃度が0.1質量%以下となった培地中で更に、第2工程として、好ましくは48時間以上、より好ましくは72時間以上、より好ましくは96時間以上、より好ましくは120時間以上、培養する。追加添加を行う場合も、第1工程及び第2工程を含む培養工程の時間は全体で11日間以下、例えば4〜11日間が適当であり、培養温度は16〜37℃が適当である。培地の初期pHは3.0〜12.0、好ましくは3.0〜10.0、更に好ましくは6.0〜9.5が適当である。培養は静置で行ってもよく、振盪培養、撹拌を行ってもよい。
炭素源の第1回〜第N回の追加添加では、直前の培地中の炭素源の濃度は特に限定されないが、好ましくは0.1質量%以下である。
第1回〜第N回の追加添加での、炭素源の添加量は特に限定されないが、好ましくは、培地中の炭素源が0.5質量%以上の濃度となるように添加し、より好ましくは、培地中の炭素源が0.5〜20質量%、又は、1.0〜10質量%の濃度となるように添加する。追加添加する炭素源の種類は、培養開始時の培地中の炭素源と同様の範囲から選択することができる。
第1工程及び第2工程を含む培養工程では培地に更にアスコルビン酸かイソアスコルビン酸を配合することが好ましい。本発明者らはアスコルビン酸かイソアスコルビン酸の存在下において培養工程を行うと、前記微生物により生成される脂質組成物中におけるn−3DPAの含有率が顕著に向上するという驚くべき効果を見出した。アスコルビン酸、イソアスコルビン酸の濃度としては、培地中0.5〜1.5質量%が適当である。アスコルビン酸、イソアスコルビン酸の形態は特に限定されず、遊離体でもよいしナトリウム等のアルカリ金属との塩でもよい。
脂質組成物取得工程では、培養工程で得られた培養物から脂質組成物を取得する。
ここで培養物とは、培養により得られた、微生物体と培地との混合物である。培養物は殺菌処理されたものであってもよいし、殺菌処理されていないものであってもよい。
培養物から脂質組成物を取得する方法は特に限定されない。典型的には、前記培養物を遠心分離、濾過等の固液分離手段により分離して微生物体を採取し、採取した微生物体から脂質組成物を取得する。採取した微生物体は更に水洗、乾燥及び破砕から選択される1以上の処理を施してもよい。微生物体の乾燥は凍結乾燥、風乾等によって行うことができる。微生物体の破砕は、ミルによる処理(例えばガラスビーズを用いたビーズミルによる処理)、超音波処理等によって行うことができる。
採取した微生物体から脂質組成物を取得する方法は特に限定されないが、好ましくは、前記微生物体から、脂質組成物を有機溶媒によって抽出する。有機溶媒を用いた抽出方法としては、Bligh&Dyer法が例示できる(非特許文献7)。使用できる有機溶媒としては、Bligh&Dyer法で用いるクロロホルム又はクロロホルム/メタノール混合溶媒や、ノルマルヘキサンが例示できる。抽出物から減圧下で溶媒を留去することにより、高濃度の脂質組成物が得られる。
また、前記培養工程で得られた培養物から脂質組成物を分離することは必須ではなく、脂質組成物を含む前記培養物自体やその処理物(乾燥物、濃縮物、破砕物等)を、脂質組成物の用途に利用してもよい。
本発明のn−3DPA含有脂質組成物製造方法で製造される脂質組成物は、脂肪酸成分としてn−3DPAを少なくとも含有し、好ましくはDHAを更に含有する。より好ましくは、本発明のn−3DPA含有脂質組成物製造方法で製造される脂質組成物は、上記の本発明の脂質組成物である。
<5.n−3DPA含有脂質の製造方法>
本発明の他の一態様は、
脂肪酸成分としてn−3DPAを含有するn−3DPA含有脂質の製造方法であって、
脂肪酸成分としてn−3DPAを含有する脂質組成物から、n−3DPA含有脂質を分離する分離工程を含むことを特徴とする方法に関する。
n−3DPA含有脂質は、n−3DPA成分を分子内に含む脂質化合物であり、遊離脂肪酸のn−3DPA、アシル鎖としてn−3DPA成分を1つ以上含む脂肪酸トリグリセリド、アシル鎖としてn−3DPA成分を1つ以上含む脂肪酸ジグリセリド、アシル鎖としてn−3DPA成分を含む脂肪酸モノグリセリド、アシル鎖としてn−3DPA成分を1つ以上含むリン脂質、n−3DPAの低級アルコールエステル等を包含する。
脂肪酸成分としてn−3DPAを含有する脂質組成物から、n−3DPA含有脂質を分離する方法は特に限定されない。例えば、脂肪酸成分としてn−3DPAを含有する脂質組成物を、脂肪酸メチルエステル、脂肪酸エチルエステル等のように、脂質組成物中の脂肪酸成分をアルコールによりエステル化し、得られた脂肪酸エステルからn−3DPAエステルをクロマトグラフィー又は蒸留により分離する方法が使用できる。
分離工程により得られたn−3DPA含有脂質は、他の成分と配合して、医薬組成物、食品組成物、又は餌飼料組成物の形態とすることができる。
製造される医薬組成物は固体状、液体状、半固体状等の任意の形態であってよく、n−3DPA含有脂質の配合量は特に限定されないが、例えば、n−3DPAをメチルエステル換算で1〜50質量%含むように配合することができる。
製造される食品組成物は固体状、液体状、半固体状等の任意の形態であってよく、n−3DPA含有脂質の配合量は特に限定されないが、例えば、n−3DPAをメチルエステル換算で1〜50質量%含むように配合することができる。
製造される餌飼料組成物は固体状、液体状、半固体状等の任意の形態であってよく、n−3DPA含有脂質の配合量は特に限定されないが、例えば、n−3DPAをメチルエステル換算で1〜50質量%含むように配合することができる。
<1.オーランチオキトリウム属微生物>
後述する実験ではオーランチオキトリウム属に属する微生物の株として、「D42−16625」を用いた。本株は、18SrRNAをコードする塩基配列に基づいてオーランチオキトリウム属微生物に分類された微生物株に由来する変異株であり、形態及び代謝産物の特徴から、オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)属に分類される。
また、本株を、表1に示す組成の液体培地中で、28℃の温度条件下、300rpmの振盪速度で48時間振盪培養を行った。培養された微生物体の凍結乾燥物の脂質を、後述する方法でメチルエステルに変換しガスクロマトグラフィーにより分析したところ、クロマトグラフにおけるピーク面積比(3回の培養物からの平均値)は表2のようになった。本株は、脂肪酸としてドコサヘキサエン酸(DHA)を約40%、パルミチン酸を約30%、n−6DPAを約5%生産することから、オーランチオキトリウム属微生物であることが裏付けられた。
Figure 0006938163
Figure 0006938163
本株は、オーランチオキトリウム sp.(Aurantiochytrium sp.)に分類され、識別の表示「D42−16625」として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許生物寄託センター(郵便番号292−0818日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託され、受託番号:FERM P−22324が付与されている(受託日:平成29年(2017年)1月6日)。
<2.培養と脂質抽出>
(1)培養
上記の表1に示す液体培地を調製し、試験管に分注して、オートクレーブ滅菌(121℃、20分間)を施した。
各試験管内の前記液体培地に本株を植菌し、28℃の温度条件下、300rpmの振盪速度で振盪培養を行った。
前記液体培地は、培養開始時には1.9質量%の炭素源(グルコース)を含む。
培養時間は最長で168時間とした。
一部の実験では、前記液体培地に、培養開始から48時間後又は72時間後の時点で炭素源(グルコース又はグリセロール)を添加し、更に培養を続けた。
一部の実験では、培養開始前の前記液体培地中に、1質量%のアスコルビン酸ナトリウム又はイソアスコルビン酸ナトリウムを更に添加したものを液体培地として用いた。
試験1〜7の試験条件は以下の通り。
Figure 0006938163
(2)脂質抽出
所定時間経過後の培養液を遠心分離し、上清を除去して微生物体を単離した。
単離した前記微生物体を、ガラスビーズを用いたビーズミルによる粉砕処理により粉砕した。
微生物粉砕物から、Bligh&Dyer法(非特許文献7)により脂質を抽出した。
(3)脂質分析
上記の脂質のBligh&Dyer法による抽出液を濃縮乾固し、メタノールと1規定水酸化ナトリウム水溶液を加えて脂肪酸成分をメチルエステルへと変換した。1規定塩酸により中和した後、クロロホルムにより脂肪酸メチルエステルを抽出し、下記条件の、検出器として水素炎イオン化型検出器を用いたガスクロマトグラフィー(GC−FID)により分析した。また、ガスクロマトグラフィーで分離した成分中の脂肪酸の分析のために、必要に応じて更に質量分析(MS)を行った。
Figure 0006938163
上記条件で得られるGC−FIDのクロマトグラムにおける、検出された全成分(全て脂肪酸メチルエステルと推定される)のピーク面積の合計に対する、各脂肪酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を求めた。
各脂肪酸メチルエステルの同定は、市販の既知試料との対比及び質量分析(MS)のパターンと公知情報との対比により行った。
試験1〜3では、培養開始168時間後の脂質組成を上記手順により分析した。
試験4、5では培養開始72時間後と、培養開始72時間後でのグルコース追加後更に96時間培養後の脂質組成を上記手順により分析した。
試験6では培養開始48時間後、72時間後、168時間後の脂質組成を上記手順により分析した。
試験7では培養開始48時間後と、培養開始48時間後でのグルコース追加後更に24時間、48時間、96時間培養後の脂質組成を上記手順により分析した。
更に、試験4、5、6、7では、トリコサンを内部標準物質として培養終了後の培養物中のn−3DPA(メチルエステル換算)の濃度を求めた。
(4)分析結果
試験1〜5の分析結果を表5に示す。
試験6、7の分析結果を表6に示す。
表5、6において、各脂肪酸メチルエステルの割合(%)は、検出された全成分(全て脂肪酸メチルエステルと推定される)のピーク面積の合計に対する割合である。表5、6では、脂肪酸メチルエステルの割合の数値の見た目の合計が100%でない場合があるが、これは各数値を四捨五入して示している結果である。
なお、抽出された脂質は、既述の11種のn−6PUFAのうち、n−6DPA及びアドレン酸を表5、6に示す比率で含むこと、並びに、アラキドン酸、リノール酸、γ−リノレン酸を含まないことが確認された。また表5、6において「その他、n−3, n−7」は、標準物質や公知情報との対比から、n−3PUFA又はn−7PUFAであることが特定された成分であり、「その他、飽和」は、標準物質や公知情報との対比から、飽和脂肪酸であることが特定された成分である。
Figure 0006938163
Figure 0006938163
(5)炭素源濃度の分析
試験1〜7において培地中のグルコース濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC、検出波長UV505nm)で測定した。なお、培養開始時の培地中のグルコース濃度は上記の通り1.9質量%である。
試験1〜7では、培養開始24時間後の培地中のグルコース濃度は1.2〜1.9質量%の範囲であり、かなりばらつきがあるものの、培養開始24時間後ではグルコースは枯渇しておらず十分量存在することが分かる。一方、培養開始48時間後の培地中のグルコース濃度は、試験1〜7のいずれでも、0.1質量%以下であった。このことから、本株の培養開始から48時間でグルコースは枯渇することが分かる。
試験1〜3は、初期のグルコースが枯渇したと考えられる培養開始48時間後から更に120時間(合計で168時間)培養した例であり、表5に示す通り、n−3DPA比が顕著に高い脂質組成物を生じた。
試験4、5は、本株の培養開始72時間後に炭素源を追加添加し、追加添加後更に96時間(合計で168時間)培養した例であり、表5に示す通り、n−3DPA比が顕著に高い脂質組成物を生じた。また、培養物中のn−3DPAの濃度が顕著に高い値であった。
168時間培養した試験1、2におけるn−3DPA比が24.4%、45.2%であったのに対して、48時間培養した場合は表2に示すようにn−3DPA比が1.5%であった。このことから、本株を飢餓条件下で継続して培養することにより脂質中のn−3DPA比が顕著に上昇することが示された。
試験6、7はともに、培地中のグルコース濃度が培養開始48時間後に0.1質量%以下であった例である。
表6に示すように、試験6では、グルコースが枯渇したと考えられる培養開始48時間後から更に24時間(合計72時間)培養した時にn−3DPA比の上昇が認められ、培養開始48時間後から更に120時間(合計168時間)培養したときに、n−3DPA比が顕著に上昇することが確認できた。
試験7では、グルコース濃度が0.1質量%以下となり枯渇した培養開始48時間後に、培地に対し2.0質量%のグルコースを追加添加し、更に24時間培養した時点で、培地中のグルコース濃度が再び0.1質量%以下となった。すなわち、追加添加したグルコースは、24時間で枯渇したと考えられる。表6に示すように、試験7では、追加添加したグルコースが枯渇したと考えられるグルコース追加添加後24時間(合計で48+24時間)から更に24時間(合計で48+48時間)培養した時にn−3DPA比の上昇が認められ、グルコース追加添加後24時間(合計で48+24時間)から更に72時間(合計で48+96時間)培養したときに、n−3DPA比が顕著に上昇することが確認できた。
以上の通り、試験6、7から、本株を、飢餓条件下で継続して培養することによりn−3DPA比が顕著に上昇したことが示された。
本発明で提供される脂質組成物は、医薬、食品、餌飼料等の分野において利用可能である。

Claims (3)

  1. 脂質組成物であって、
    GC−FID(検出器として水素炎イオン化型検出器を用いたガスクロマトグラフィー)により分析したときに得られるクロマトグラムにおけるピーク面積比として、
    メチルエステル換算で、脂肪酸成分の全量に対して、
    10%以上のn−3DPA(n−3ドコサペンタエン酸)と、
    30%以上のDHA(ドコサヘキサエン酸)と
    を少なくとも含み、
    n−6多価不飽和脂肪酸の含有量が合計で15%以下であり、
    パルミチン酸の含有量が10%以下であり、
    エイコサペンタエン酸の含有量が5%以下であり、
    GC−FIDにより分析したときに得られるクロマトグラムにおけるピーク面積比として、メチルエステル換算で、100部のDHAに対して30部以上のn−3DPAを含み、
    脂質として脂肪酸トリグリセリドを含む
    ことを特徴とする脂質組成物。
  2. オーランチオキトリウム属に属する微生物に由来する、請求項1に記載の脂質組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の脂質組成物を含有する、医薬組成物、食品組成物、又は餌飼料組成物。
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