JP6934097B1 - 水素吸蔵合金 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、上記にように溶出量(例えば、Al溶出量)を測定して、その溶出を低減する合金を作製できたとしても、優れた電池特性(特に、寿命特性)が得られるとは限らない。例えば、充放電によって合金が全く割れず(微粉化せず)、溶出も全く起こらなければ、十分な充放電ができない。合金に水素が出入りし難く、その程度が変化しないかからである。よって良い電池特性を目指すためには、合金が充放電において適度に割れるまでで微粉化が収束することが良い。合金の割れが進み過ぎると、表面積増加による界面からの金属溶出が起こり、電池特性劣化につながる。
言い換えれば、充放電サイクルに対して、微粉化が抑制される一方で、所定量のAl溶出が起こるCaCu5型水素吸蔵合金が、ニッケル水素電池における負極合金として好適であることを見出したのである。
f×(2b+6c+4e)≧2.88
a+b=1,
4.0≦c≦5.0,
0.2≦d≦0.8,
0.2≦e≦0.8,
0<f≦0.15,
5.3≦c+d+e+f≦5.5,
かつ、前記合金を負極に用いたニッケル水素電池の200サイクルの充放電サイクル試験において、平均Al溶出量が0.002(mg/L)/(mol・cycle)以上0.230(mg/L)/(mol・cycle)以下であることを特徴とする水素吸蔵合金。
(2)AlとMnのモル比e/dの値が、0.6以上1.4未満であることを特徴とする(1)に記載の水素吸蔵合金。
(3)前記ニッケル水素電池の充放電サイクル試験において、50サイクル〜100サイクル試験における容量低下率ΔS1と150サイクル〜200サイクルにおける容量低下率ΔS2の関係が、ΔS1−ΔS2≦1.0であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の水素吸蔵合金。
(4)前記ニッケル水素電池の充放電サイクル試験において、200サイクルのサイクル試験前後の水素吸蔵合金の粒子径比率が0.4以上、好ましくは、0.50以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の水素吸蔵合金。
(5)前記水素吸蔵合金の断面について、SEM−EDS(エネルギー分散型X線分析装置)による相分析を行った場合、CaCu5型合金相以外のLaやCeを含まない第二相が存在し、該第二相の平均面積割合が5.5%以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の水素吸蔵合金。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の水素吸蔵合金粉末をニッケル水素二次電池の負極活物質としたことを特徴とする負極。
(7)(6)に記載の負極を用いたことを特徴とするニッケル水素二次電池。
その結果、組成とAl溶出量との間に相関あることを突き止めた。負極に用いたときに寿命特性が良いニッケル水素電池の製造が可能であることを見出した。
本発明の水素吸蔵合金の成分組成は、以下の一般式で表すことができる。
一般式:La a CebNi c MndAleCof
ここで、各成分のモル比を示すa〜fは、次のとおりである。
f×(2b+6c+4e)≧2.88
a+b=1,
4.0≦c≦5.0,
0.2≦d≦0.8,
0.2≦e≦0.8,
0<f≦0.15,
5.3≦c+d+e+f≦5.5,
そして、本発明において、水素吸蔵合金の成分組成を上記のとおり定めた理由は、以下のとおりである。
CaCu5型(AB5型)水素吸蔵合金は、水素を吸蔵する結晶格子を形成するためのA元素と水素の吸脱着反応を促進するB元素から構成される。A元素はLaを主成分とするランタノイド、B元素はNiを主成分とする金属元素である。このうちA元素(a+b)を1とした時のB元素(c+d+e+f)の割合で水素吸蔵量が決まる。
そして、A元素(a+b)に対するB元素(c+d+e+f)の割合を大きくすると、水素吸蔵量が減るが合金が割れにくくなることから、ニッケル水素電池の負極として使用する場合には、水素吸蔵量と合金の割れにくさを両立することが必須となる。
まず、c+d+e+fが5.3よりも小さいと合金が割れやすく、5.5よりも大きいと水素吸蔵量が小さく、ハイブリッド車用のニッケル水素電池の要求を満たすことが難しいので、5.3≦c+d+e+f≦5.5とする。この範囲は、より好ましくは、5.35≦c+d+e+f≦5.45である。
a、bについては合計で1となる範囲内であれば問題ない。
cについては、B元素の主元素であり、4.0≦c≦5.0の範囲である。
d、eについては、B元素の補助元素であり、0.2≦d≦0.8であるが、より好ましくは、0.3≦d≦0.6であり、また、0.2≦e≦0.8である。
fについては、Co組成を示し、値が大きいほど、合金が割れにくくなる半面、資源的制約のため、原料コストが上がる。よって0.15以下が好ましい。より好ましくは、0.12以下である。
その原因は、想定に留まるが、次のように考えている。
一般式:LaaCebNicMndAleCofで表されるCaCu5型水素吸蔵合金では、Co組成を増やすと微粉化・溶出性ともに改善できる。Ce、Ni、Alについては、Ce−Ni−Alは金属間化合物を形成するが、Ce−Ni−Mnは金属間化合物を形成しない。このため、CeはMnよりもAlの方に対してより親和性が高く、さらに金属間化合物CeNi4Al、CeNi2Al3は、同じCaCu5型結晶構造であるため、これら二つの組成を多く含むことでAlの溶出を抑制できると考えている。さらにCoは、前述の通り、含有量が大きいほど合金が割れにくいため、Al溶出も抑制できると考えられる。よってCaCu5型Ce−Ni−Al系金属間化合物による親和性とCo量による相乗効果でAl溶出が抑制できると考えている。そのため、下記の通り、2b+6c+4eにfを乗じた値が重要となる。
よって、請求項1のCaCu5型水素吸蔵合金では、CeNi4Al、CeNi2Al3由来の組成(b+4c+e)+(b+2c+3e)=2b+6c+4eにCoであるf組成を乗じた値が2.88以上である時に、水素吸蔵量を低下させることなく、Al溶出が抑制されるという現象が発現するものと推定される。より好ましいf×(2b+6c+4e)の値は、2.89以上である。
そして、この推論の正しさを、後記実施例にて示す実験結果により確認したのである。
なお、f×(2b+6c+4e)の上限値は、b、c、e、fの上限値に応じて自ずから定まるが、f×(2b+6c+4e)の値が、3.30以下であることが好ましい。
これは、e/dが小さいと、Mn含有量が減ることになるが、MnはB元素であり、A元素の一部を置換することにより、結晶格子が安定化することで、不純物が減少するという作用を有する。
つまり、e/dが0.6よりも小さいと、不純物が生成する可能性がある。一方、e/dが1.4以上になると、MnのA元素置換量を超えてしまい、Mnが余剰となり、合金表面に残り、溶出する可能性がある。
またAlとMnは原子半径がNiよりも大きいため、含有量が多いと結晶格子体積が大きくなる。結晶格子体積は水素吸蔵時の圧力に影響するため、ニッケル水素電池を構成した時の電池特性にも影響を与える。そのため、水素吸蔵圧力を一定にする必要がある。そのため、結晶格子体積に影響を与えるAlやMnは、0.2から0.8の範囲が好ましい。
よって、e/dの値は、0.6以上1.4未満とすることが好ましい。より好ましくは、0.8以上1.2以下である。
充放電サイクルにおける容量減少推移は、指数関数的に起こる。これは序盤で電池活物質と電解液などの反応が起こる。この反応により電池活物質の劣化が起こるが、充放電反応がし易い状態に変わる。よって、良好な電池系では、指数関数的に容量減少が進む。今回の200サイクル試験において、序盤である50−100サイクルの容量減少率ΔS1、終盤である150−200サイクルの容量減少率ΔS2の間にはΔS1>ΔS2という関係になる。さらにΔS1とΔS2の差が小さいほど、良い電池系となる。電池系のうち負極以外は同一材料であるので、ΔS1とΔS2の差が小さいほど、劣化の少ない合金負極となる。
サイクル試験前後の水素吸蔵合金の粒子径比率は、次の通りにして求めることができる。
まず、充放電サイクル試験前の粒子径に対して、図1に示すように割れた後の粒子のうち最大の粒子を選択し、割れる前の粒子径に対する割れた後の粒子径の比を測定する。なお、ここでいう粒子径とは、粒子の対角線の最大長さであると定義する。
この測定を3個の粒子に対して行い、粒子径比の平均を求める。ただ、割れる前の粒子径の大きさにより、割れ方が変わるため、割れる前の粒子としては、粒子径(対角線)が10−30μmの粒子を対象とする。
微粉化難度と違い、実際の電池反応で割れた粒子の比を求めており、大きい値が好ましく、0.40以上が好ましい。より好ましくは0.50以上である。
ここで、CaCu5型合金相以外の第二相とは、Laを主成分とするA元素がない結晶相である。
つまり、B元素のみで構成されるNi含有のNi−Mn−Al相、Ni−Mn相、Ni−Al相などであり、これらの相は、A元素がなく水素吸蔵反応に関与しないため、少ない方が好ましいことから、5.5面積%以下と定めた。
本発明の水素吸蔵合金粉末は、秤量工程、混合工程、鋳造工程、熱処理工程、冷却工程および粉砕工程を経て製造される。秤量工程では、所望の合金組成となるように水素吸蔵合金の各原料が秤量される。混合工程では、秤量された複数種類の原料が混合される。鋳造工程において、高周波加熱溶解炉に混合原料を投入し、混合原料を溶解させて溶湯となし、この溶湯が例えば鉄鋳型に流し込んで1150℃〜1550℃の範囲の温度(鋳造温度=鋳造開始時の坩堝内溶湯温度)で鋳造する。ここで鋳造温度は、1200℃〜1450℃の範囲が好ましく、1300℃〜1400℃がより好ましく、1340℃〜1360℃の範囲であることが更に好ましい。鋳造後の合金は、熱処理工程において非酸化雰囲気下で950℃〜1200℃の温度で熱処理される。
本実施の形態にかかる水素吸蔵合金において、熱処理温度は1000℃〜1150℃が好ましい。また熱処理時間は、鋳造後のインゴット(水素吸蔵合金片)の大きさにもよるが、数時間から十数時間が好適であり、インゴットの中心部まで所定温度になるように時間設定すれば良い。冷却工程では熱処理された鋳造物が冷却される。冷却方法は、放冷でも空冷であっても良い。冷却速度も特に問わない。粉砕工程では、このようにして得られたインゴットを低酸素濃度中で、粗粉砕、微粉砕により必要な粒度の水素吸蔵合金粉末にする。例えばインゴットを500μmの篩目を通過するサイズまで酸素濃度を調整し粉砕して水素吸蔵合金粉末とすることができる。
PCT(水素圧-組成-等温線図)特性はJIS H 7201「水素吸蔵合金の圧力-等温線(PCT線)の測定法」に準じた市販の評価装置具、例えば、株式会社鈴木商館で販売されているPCT特性測定装置とSUS316製、外形12.7mm、長さ91mmのサンプルホルダーを用い、試料5gの測定からより得られた「保持温度45℃および水素圧力調整1.82MPaの環境下における水素の吸蔵放出サイクル10回後の水素吸蔵合金粉末の粒度」を「水素吸蔵合金粉末の初期粒度」で除した値を、微粉化難度として指標化した。
SEM―EDS(エネルギー分散型X線分析装置)による相分析を行い、LaNi相とその他LaやCeを含まない第二相(B元素のみで構成されるNi含有のNi−Mn−Al相、Ni−Mn相、Ni−Al相など)の面積比率を求め、複数個所で求めた値を平均し、第二相の平均面積割合とした。
観察倍率は、第二相が検出できる倍率であれば問題なく、測定視野は3視野以上の撮影を行ってその平均値を求める。
A元素としてLaとCe、また、B元素として、Ni、Mn、Al、Coの各金属原料を表1に示した合金組成となるように秤量した。それらの原料を溶解炉内のルツボに入れて真空排気した後、アルゴンガス雰囲気とした。次いで高周波加熱装置で加熱溶解し、鋳型に流し込んで鋳造を行い、不活性雰囲気下で1100℃×12時間の熱処理を行って合金インゴットを得た。得られた合金インゴットは、低酸素雰囲気下でクラッシャーにより粗粉砕し、続いてカッティングミルを用いて粉砕し、続いて篩目500μmを通過する粒子サイズ(500μm以下)とした。
まず、粒子サイズ(D50が約12μm)20μm以下の水素吸蔵合金粉末0.5gと、ポリテトラフルオロエチレン(富士フイルム和光純薬(株)製)0.1g、アセチレンブラック(デンカ製、HS−100)0.05g、蒸留水0.6gを混練して活物質ペーストとした。
集電体(30mm×40mm、t=1.6mm)である発泡ニッケル(住友電工製、セルメット♯7、多孔率=96%)に前記活物質ペーストを均一に充填し、乾燥のため100℃の恒温槽に30分間保持後、100MPaで加圧成型して負極(容量=約180mAh)とした。
正極には水酸化ニッケル(容量=約500mAh)を使用する。
2枚の電極間にセパレーターを介して負極をはさみ、さらに両側面から塩ビ板で圧迫して負極容量規制の電池とした。
試験方法:
(1)負極に平均粒径20μm以下に粒度調整した水素吸蔵合金粉体、正極に水酸化ニッケル、電解液に31wt%水酸化カリウム水溶液、セパレーターに不織布を用いてニッケル水素電池セルを組み立てた。
(2)当該ニッケル水素電池セルに対して、温度45℃で充電:0.6C-100%、放電:0.6C-0.7Vカット、200サイクルを行った。
表3に、容量維持率、ΔS1、ΔS2、ΔS1−ΔS2の値を示す。
(3)ニッケル水素電池セルを解体して、電解液中のAl濃度(mg/L)を測定した。Al濃度(mg/L)を合金組成中のAl組成e及び200で割って規格化し、Al溶出量とした。表2にその値を示す。
次いで、上記充放電試験の終了後に負極合金電極を取り出し、以下の方法で断面観察を行い、粒子の割れの状態を調べた。電極を純水で洗浄、90度真空乾燥を行う。その後、電極をシリコンウェハで挟み、8kV・2hクロスセクションポリッシャにより断面観察用電極とした。
次いで、SEM測定を実施した。観察対象の粒子は、粒子の対角線の最大長さが10〜30μmの粒子とした。サイクル試験後の粒子は、割れる前の粒子の粒子径(対角線の最大長さ)に対して、割れた後の最大粒子の粒子径(対角線の最大長さ)の比を調べた。このようにして合計3個の粒子を選択して平均値を求め、その値を、サイクル試験前後の粒子径比率とした。
表4に粒子径比率を示す。
表5に、その結果を示す。
このことから、本発明の水素吸蔵合金は、微粉化は抑制されるが溶出性に優れることで、ニッケル水素電池用負極に好適な合金であることが確認できた。
Claims (7)
- 一般式:La a CebNi c MndAleCofで表すことができるCaCu5型水素吸蔵合金であり、各成分のモル比を示すa、b、c、d、e、fは、下記の関係を満たし、
f×(2b+6c+4e)≧2.88,
a+b=1,
4.0≦c≦5.0,
0.2≦d≦0.8,
0.2≦e≦0.8,
0<f≦0.15,
5.3≦c+d+e+f≦5.5,
かつ、前記合金を負極に用いたニッケル水素電池の200サイクルの充放電サイクル試験において、平均Al溶出量が0.002(mg/L)/(mol・cycle)以上0.230(mg/L)/(mol・cycle)以下であることを特徴とする水素吸蔵合金。 - AlとMnのモル比e/dの値が、0.6以上1.4未満であることを特徴とする請求項1に記載の水素吸蔵合金。
- 前記ニッケル水素電池の充放電サイクル試験において、50サイクル〜100サイクル試験における容量低下率ΔS1と150サイクル〜200サイクルにおける容量低下率ΔS2の関係が、ΔS1−ΔS2≦1.0であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水素吸蔵合金。
- 前記ニッケル水素電池の充放電サイクル試験において、200サイクルのサイクル試験前後の水素吸蔵合金の粒子径比率が0.40以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水素吸蔵合金。
- 前記水素吸蔵合金の断面について、SEM−EDS(エネルギー分散型X線分析装置)による相分析を行った場合、CaCu5型合金相以外のLaやCeを含まない第二相が存在し、該第二相の平均面積割合が5.5%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水素吸蔵合金。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の水素吸蔵合金の粉末をニッケル水素二次電池の負極活物質としたことを特徴とする負極。
- 請求項6に記載の負極を用いたことを特徴とするニッケル水素二次電池。
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