本明細書において、「縦抱き」状態とは、乳幼児の身体を略垂直に立たせた状態を意味し、乳幼児の頭を上にして乳幼児の足を下にして保持する状態である。縦抱き状態は、おんぶおよびだっこのいずれであってもよい。だっこは、対面だっこおよび前向きだっこのいずれであってもよい。また、「斜め抱き」状態とは、乳幼児の頭が胴体よりも上方に位置するように寝かせた状態を意味し、乳幼児の頭と足が子守帯の着用者の左右方向になるように、着用者の胴部に隣接して支持する状態である。
また、本明細書において、内側とは、子守帯の装着時に着用者側に位置する面を意味する。外側とは、子守帯の装着時に内側とは反対側に位置する面を意味する。
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
<子守帯の特徴について>
本実施の形態の子守帯1は、図1〜図8に示すように、乳幼児を担ぐ着用者(たとえば、親)に装着される親側装着具2を備える。子守帯1は、図9〜図11に示すように、乳幼児の胴部を保持する乳幼児保持具8をさらに備えてもよい。この場合、親側装着具2と乳幼児保持具8とは、分離して設けられ、後述する第3連結部、第4連結部で連結される。本実施の形態の子守帯1は、縦抱きおよび斜め抱きに使用することができる。以下、親側装着具2と乳幼児保持具8について詳細に説明する。
親側装着具2および乳幼児保持具8の詳細な説明に先立ち、図1を参照して、本実施の形態の子守帯の特徴について説明する。
本実施の形態の子守帯は、右前見頃部材および左前身頃部材と、右肩ベルトおよび左肩ベルトと、腰ベルトと、第1連結部とを備える。第1連結部は、右前見頃部材と左前身頃部材とを連結している。縦抱きの場合には、右前身頃部材と左前身頃部材を重ねた状態で、右前身頃部材と着用者の間に乳幼児を保持する。斜め抱きの場合には、右前身頃部材と左前身頃部材の間に乳幼児を保持する。
<実施の形態1>
(親側装着具について)
図2〜図8を参照して、親側装着具2について詳細に説明する。以下の親側装着具2の説明において、左右方向および上下方向は、それぞれ、図2の紙面上の左右方向および上下方向を基準とする。
親側装着具2は、着用者の肩に掛けられるループ状の右肩ベルト30および左肩ベルト40と、右肩ベルト30の両端部に連結される右前身頃部材50と、左肩ベルト40の両端部に連結される左前身頃部材60と、右前身頃部材50および左前身頃部材60の下端部に連結される腰ベルト70と、右前身頃部材50および左前身頃部材60を重ね合わせた状態で連結する第1連結部とを備える。
まず、右前身頃部材50について説明する。右前身頃部材50は、たとえば、布製材料によって構成されている。右前身頃部材50は、装着時において、着用者の胴部の前面、たとえば、着用者の胸部または腹部の前面に位置する。図3に示すように、右前身頃部材50は、上方に位置する幅広部分51と、下方に位置する幅狭部分52とを含む。幅狭部分52の略中央位置には、切欠きが形成されており、その切欠き部分には、メッシュ生地57が縫い付けられている。
図2に示すように、幅広部分51の表面には、右前身頃部材50および左前身頃部材60を重ね合わせた状態で連結する第1連結部が設けられている。具体的には、第1連結部は、幅広部分51の略右上方に位置する第1係合部53と、後述する第1被係合部63である。
図3に示すように、幅広部分51は、左肩ベルト40に向かって張り出す張り出し部510を含む。張り出し部510の先端部には、左肩ベルト40と連結する第2連結部が設けられている。具体的には、第2連結部は、左肩ベルト40を取り囲むループ部材56である。ループ部材56は、たとえば、帯状部材により形成されており、ループ部材56の両端が右前身頃部材50の張り出し部510の先端に連結される。これにより、ループ部材56の孔部と左肩ベルト40との間には隙間が形成され、ループ部材56は第2ベルト42に沿って移動可能となる。
幅狭部分52は、装着時において、乳幼児の臀部または腿部などを保持する部分である。図3に示すように、着用者から見た内側において、幅狭部分52の下方が第3面ファスナ59で形成されている。幅広部分51の下端部には、股幅調節部材100が設けられている。股幅調節部材100は、幅広部分51の下端から腰ベルト70に向かって突出する第1股支持部55を含む。第1股支持部55の腰ベルト70と対向する面には、第1面ファスナ58が設けられている。第1股支持部55と第1面ファスナ58とは、薄い布材で形成される補助布54で連結されている。股幅調節部材100については、後述する。
次に、左前身頃部材60について説明する。左前身頃部材60は、右前身頃部材50と略対称に設けられており、右前身頃部材50と重ね合わされている。右前身頃部材50と同様に、左前身頃部材60は、たとえば、布製材料によって構成されている。左前身頃部材60は、装着時において、着用者の胴部の前面、たとえば、着用者の胸部または腹部の前面に位置する。右前身頃部材50は、装着時において、着用者から見て内側に位置する。これに対し、左前身頃部材60は、装着時において、着用者から見て外側に位置する。図2に示すように、左前身頃部材60は、上方に位置する幅広部分61と、下方に位置する幅狭部分62とを含む。幅広部分61の略中央位置には、貫通孔が形成されており、貫通孔には、メッシュ生地67が縫い付けられている。右前身頃部材50のメッシュ生地57と、左前身頃部材60のメッシュ生地67は、着用者から見て内外方向において重なっている。このため、右前身頃部材50と左前身頃部材60とが重なっていても、通気性を確保することができる。
図2に示すように、幅広部分61は、右肩ベルト30に向かって張り出す張り出し部610を含む。張り出し部610の先端部には、右前身頃部材50および左前身頃部材60を重ね合わせた状態で連結する第1連結部としての第1被係合部63が設けられている。具体的には、第1被係合部63は、上述した右前身頃部材50の第1係合部53と係合する。つまり、第1連結部は、右前身頃部材50の張り出し部510の第1係合部53と、左前身頃部材60の第1被係合部63とを連結するものである。
幅狭部分62は、装着時において、乳幼児の臀部または腿部などを保持する部分である。幅広部分61の下端部には、股幅調節部材100が設けられている。図3,4に示すように、股幅調節部材100は、幅広部分61の下端から腰ベルト70に向かって突出する第2股支持部65を含む。第2股支持部65の腰ベルト70と対向する面には、第1面ファスナ68が設けられている。第2股支持部65と幅狭部分62とは、薄い布材で形成される補助布64で連結されている。股幅調節部材100については、後述する。
次に、右肩ベルト30について説明する。図2に示すように、右肩ベルト30は、上方に位置し、親の肩に掛けられる第1ベルト31と、第1ベルト31の下端部に長さ調整可能に連結されている第2ベルト32と、第1ベルト31と右前身頃部材50とを長さ調整可能に連結する長さ調節部34とから構成されている。第1ベルト31は、長さ調節部34を介して、右前身頃部材50の右上端に縫い付けられている。第2ベルト32の下端は、右前身頃部材50の右側端に縫い付けられている。これにより、右肩ベルト30は、ループ状に右前身頃部材50に取り付けられる。
第1ベルト31は、使用時において、着用者の左肩に掛け渡されるため適度な弾性を有する材料によって構成されている。また、第2ベルト32の長さを調整することによって、右肩ベルト30の長さを着用者の体型に適合させることができる。
図5,図6を参照して、長さ調節部34について説明する。左肩ベルト40の長さ調節部34は、連結部340と、覆い部341と、長さ調節ベルト342と、長さ調節フック343とを含む。連結部340は、第1ベルト31と右前身頃部材50とを連結する袋状の部材である。覆い部341は、第1ベルト31と連結部340の連結箇所を外方から覆っている。長さ調節ベルト342は、その下方端が右前身頃部材50に連結されており、連結部340内を貫通している。長さ調節フック343は、固定部344により第1ベルト31に連結されており、上方が覆い部341により覆われているため、下方だけが外方から視認できる。長さ調節ベルト342は、連結部340と第1ベルト31との間の貫通孔345を通り、長さ調節フック343の孔を通っている。
長さ調節ベルト342を、図5(a)に示す状態から図5(b)に示す状態に引っ張ることで、連結部340の長さを短くすることができる。これにより、着用者の胴部の長さに合わせて、右前身頃部材50の高さ位置を調節することができる。また、長さ調節ベルト442が連結部440に覆われているため、連結部440の長さを短くしても、図5(b)に示すように、連結部440にしわができるだけで、子守帯の外観はほとんど変わらないため、子守帯の意匠性も向上させることができる。
右肩ベルト30と同様に、左肩ベルト40は、図2に示すように、上方に位置し、親の肩に掛けられる第1ベルト41と、第1ベルト41の下端部に長さ調整可能に連結されている第2ベルト42と、第1ベルト41と左前身頃部材60とを長さ調整可能に連結する長さ調節部44とから構成されている。第1ベルト41は、長さ調節部44を介して、左前身頃部材60の左上端に縫い付けられている。第2ベルト42の下端は、左前身頃部材60の左側端に縫い付けられている。これにより、左肩ベルト40は、ループ状に左前身頃部材60に取り付けられる。
第1ベルト41は、使用時において、着用者の右肩に掛け渡されるため適度な弾性を有する材料によって構成されている。また、第2ベルト42の長さを調整することによって、左肩ベルト40の長さを着用者の体型に適合させることができる。
図5,図6を参照して、長さ調節部44について説明する。左肩ベルト40の長さ調節部44は、右肩ベルト30の長さ調節部34と同様の構成であるため、図5,6において、括弧書きで示している。長さ調節部44は、連結部440と、覆い部441と、長さ調節ベルト442と、長さ調節フック443とを含む。連結部440は、第1ベルト41と左前身頃部材60とを連結する袋状の部材である。覆い部441は、第1ベルト41と連結部440の連結箇所を外方から覆っている。長さ調節ベルト442は、その下方端が左前身頃部材60に連結されており、連結部440内を貫通している。長さ調節フック443は、固定部444により第1ベルト31に連結されており、上方が覆い部441により覆われているため、下方だけが外方から視認できる。長さ調節ベルト442は、連結部440と第1ベルト31との間の貫通孔445を通り、長さ調節フック443の孔を通っている。
長さ調節ベルト442を、図5(a)に示す状態から図5(b)に示す状態に引っ張ることで、連結部440の長さを短くすることができる。これにより、左前身頃部材60の高さ位置を調節することができる。また、長さ調節ベルト442が連結部440に覆われているため、連結部440の長さを短くしても、図5(b)に示すように、連結部440にしわができるだけで、子守帯の外観はほとんど変わらないため、子守帯の意匠性も向上させることができる。
右肩ベルト30と左肩ベルト40との間の距離を適宜に保持し、親の肩から肩ベルト30,40が滑り落ちることを防止するためのブリッジベルト35を有する。図2を参照して、ブリッジベルト35の右端は、右肩ベルト30に取り付けられる帯体352と、帯体352に取り付けられる雌バックル350とを含む。ブリッジベルト35の左端は、左肩ベルト40に取り付けられる帯体353と、帯体353に取り付けられる雄バックル351とを含む。帯体352,353は、第1ベルト31,41の延在方向に対して多少スライド移動可能となるように、第1ベルト31,41にそれぞれ取り付けられている。図8に示すように、ブリッジベルト35は、着用者の背中側において連結される。なお、ブリッジベルト35は、右肩ベルト30と左肩ベルト40に分離可能となるように設けられておらず、右肩ベルト30と左肩ベルト40とが連結されていてもよい。
次に、腰ベルト70について説明する。図2〜図4を参照して、腰ベルト70は、右前身頃部材50および左前身頃部材60の下端部に連結され、着用者の腰に装着される。腰ベルト70は、左右方向に延在し、親の腰に巻かれる第1腰当て部71および第2腰当て部72と、第1腰当て部71および第2腰当て部72を連結した腰帯体75と、第1腰当て部71の端部に設けられた雌バックル73と、第2腰当て部72の端部に設けられた雄バックル74を有する。第1腰当て部71の左右方向中央部の上端が、右前身頃部材50の下端部および左前身頃部材60の下端部に縫い付けられて連結されている。第1腰当て部71および第2腰当て部72は、使用時において、着用者の腰に掛け渡されるため、適度な弾性を有する材料によって構成されている。
図4に示すように、第1腰当て部71には、着用者から見た内側において、一対の第2面ファスナ710,711が設けられている。第2面ファスナ710は、上述した第1股支持部55の第1面ファスナ58と連結し、第2面ファスナ711は、上述した第2股支持部65の第1面ファスナ68と連結する。
ここで、股幅調節部材100について説明する。図3,図4を参照して、股幅調節部材100は、第1股支持部55と、第2股支持部65と、第1面ファスナ58,68と、第1腰当て部71の第2面ファスナ710,711と、右前身頃部材50の第3面ファスナ59とを含む。
図3に示すように、第1股支持部55の第1面ファスナ58と第1腰当て部71の第2面ファスナ710が連結し、第2股支持部65の第1面ファスナ68と第1腰当て部71の第2面ファスナ711が連結した状態では、股幅寸法L1が大きくなる。これに対し、図4に示すように、第1股支持部55の第1面ファスナ58と右前身頃部材50の第3面ファスナ59が連結し、第2股支持部65の第1面ファスナ68と右前身頃部材50の第3面ファスナ59が連結した状態では、股幅寸法L2が小さくなる。このように、股幅調節部材100を用いることで、第1,2股支持部55,65の連結箇所を変えるだけで股幅寸法を変えることができ、体の小さい乳幼児(乳児)の場合は、股幅寸法を小さくし、斜め抱きの場合、または、体の大きい乳幼児(幼児)の場合は、股幅寸法を大きくすることができる。
(乳幼児保持具について)
次に、図9,図10を用いて、本発明の実施の形態における乳幼児保持具8について説明する。以下の乳幼児保持具8の説明において、左右方向および上下方向は、それぞれ、図9の紙面上の左右方向および上下方向を基準とする。
乳幼児保持具8は、保持する乳幼児の背を背後から支持する背当て部80と、背当て部80の下方に連なり乳幼児の足部を下方から支持する一対の足当て部81と、一対の足当て部81の下方に連なり乳幼児の下腹部を前方から支持する前当て部82とを有する。乳幼児保持具8は、たとえば、布製部材によって構成されている。この布製部材は、クッション材料を内包していてもよい。また、乳幼児保持具8は、広がりを持った薄い形状を有し、自在に屈曲することができる。乳幼児保持具8の中央位置には、貫通孔が設けられており、貫通孔はメッシュ生地89により覆われている。
ここで、図9を特に参照して、背当て部80の上端部について詳しく説明する。背当て部80の上端部は、右方に向かって突出する右上端部802と、左方に向かって突出する左上端部801と、右上端部802から下方に間隔をあけて設けられ、右方に向かって突出する右腕部88と、左上端部801から下方に間隔をあけて設けられ、左方に向かって突出する左腕部87とを有する。右上端部802と右腕部88とは固定部804により固定されており、左上端部801と左腕部87とは、固定部803により固定されている。これにより、背当て部80の上端部において、右腕部88および左腕部87がループすることにより、貫通孔が形成される。
背当て部80の上端部には、左右方向に延びる連結ベルト90が取り付けられている。連結ベルト90は、固定部803,804内を貫通している。連結ベルト90の両端部には、第3連結部が設けられている。具体的には、乳幼児保持具8には、親側装着具2の右肩ベルト30に設けられる第3係合部33と連結する第3被係合部92と、親側装着具2の左肩ベルト40に設けられる第3係合部43と連結する第3被係合部91とが設けられている。第3被係合部91,92は、連結ベルト90に貫通されているため、長さ調節可能である。また、連結ベルト90の中央位置には、親側装着具2と連結する第4連結部が設けられている。具体的には、第4連結部は、斜め抱きの場合において、左前身頃部材60の第1被係合部63と連結する第4係合部93であり、第4係合部93は、連結ベルト90上に取り付けられている。
前当て部82の右下側には、下述する雌バックル86と連結する雄バックル84が、右方へ向けて突出するように設けられている。また、前当て部82の左下側には、下述する雌バックル85と連結する雄バックル83が、左方へ向けて突出するように設けられている。
背当て部80の上下方向中央部の右側側部には、前当て部82の右下側に設けられた雄バックル84と連結する雌バックル86が、右方へ向けて突出するように設けられている。また、背当て部80の上下方向中央部の左側側部には、前当て部82の左下側に設けられた雄バックル83と連結する雌バックル85が、左方へ向けて突出するように設けられている。
足当て部81は、外方に向かって延出しており、乳幼児の足部を下方から支持する。足当て部81は、適度な弾性を有する芯材(図示せず)を内部に含む。この芯材によって、使用時に乳幼児の足股にかかる負荷を軽減させ、乳幼児の快適性を向上させることができる。
<子守帯の装着方法について>
(乳幼児保持具の包み込み方法について)
図11は、乳幼児を乳幼児保持具8上に保持した状態を示す外観図である。乳幼児を乳幼児保持具8に包み込む方法を説明する。
図11に示すように、乳幼児を乳幼児保持具8上に寝かせ、乳幼児保持具8の前当て部82を乳幼児のお腹付近に被せる。上下方向中央部の雌バックル85と、下側の雄バックル83とを連結する。さらに、上下方向中央部の雌バックル86と下側の雄バックル84とを連結する。これにより、乳幼児の胴部を乳幼児保持具8で保持することができる。
(縦抱きについて)
図12〜図15を参照して、縦抱きの対面だっこをする方法について説明する。
縦抱きは、たとえば、首すわり後の乳幼児に対して行う。縦抱きする場合には、首すわり後の体の小さい乳幼児(乳児)の場合と、ある程度大きくなった乳幼児(幼児)の場合とでは、親側装着具2を親に装着する前の手順が異なる。乳児の場合は、股幅が小さいため、股幅調節部材100の股幅寸法を小さくする必要がある。具体的には、第1股支持部55の第1面ファスナ58と右前身頃部材50の第3面ファスナ59を連結させ、第2股支持部65の第1面ファスナ68と右前身頃部材50の第3面ファスナ59を連結させる。これにより、股幅調節部材100の股幅寸法を小さくすることができる。幼児の場合については、後述する。
このように、股幅調節部材100の股幅寸法を小さくした状態で、親の腰に腰ベルト70の第1腰当て部71を当て、雌バックル73および雄バックル74を連結して、腰ベルト70を装着する。腰ベルト70以外の親側装着具2は、すべて腰ベルト70の前方から垂れ下がっている状態である。この場合、ブリッジベルト35の雌バックル350と雄バックル351は、連結させておく。
次に、図13に示すように、右肩ベルト30を着用者の左肩に掛けて、右前身頃部材50を着用者の胴部の前面に配置させる。左肩ベルト40は右肩に掛けないで下した状態にしておく。この状態のまま、乳幼児保持具8で包み込んだ乳幼児を抱きかかえる。
図14に示すように、乳幼児保持具8で胴部が保持された乳幼児を、着用者と右前身頃部材50との間に挿入する。この場合、図12に示すように、ループ部材56(第2連結部)は、乳幼児の体の大きさに合わせて第2ベルト42に沿って移動する。さらに、左肩ベルト40が下方に下がったままであるため、着用者と右前身頃部材50との間の空間を広くしやすい。これにより、乳幼児を簡単に着用者と右前身頃部材50との間に挿入することが可能である。乳幼児を着用者と右前身頃部材50との間に挿入した後、左肩ベルト40を着用者の右肩に掛ける。
図15に示すように、乳幼児保持具8の上方部分と、一対の肩ベルト30,40の一方端部分とを第3連結部で連結させる。具体的には、右肩ベルト30に取り付けられる第3係合部33と、乳幼児保持具8の連結ベルト90の先端部に取り付けられる第3被係合部92とを連結させる。長さ調節部34の長さ調節ベルト342(図5)を調節することにより、右前身頃部材50の高さ位置を調整することが可能である。
同様に、左肩ベルト40に取り付けられる第3係合部43と、乳幼児保持具8の左腕部87から延びる連結ベルト90の先端部に取り付けられる第3被係合部91とを連結させる。具体的には、左肩ベルト40に取り付けられる第3係合部43と、乳幼児保持具8の連結ベルト90の先端部に取り付けられる第3被係合部91とを連結させる。長さ調節部44の長さ調節ベルト442(図5)を調節することにより、右前身頃部材50の高さ位置を調整することが可能である。
最後に、右前身頃部材50および左前身頃部材60を重ね合わせた状態で第1連結部を連結する。具体的には、右前身頃部材50の表面に設けられる第1係合部53と、左前身頃部材60の張り出し部610に設けられる第1被係合部63とを連結する。
このような構成により、重ねられた右前身頃部材50および左前身頃部材60と、着用者との間で乳幼児を保持することができるため、乳幼児を確実に保持することができ、安全性を向上させることができる。さらに、乳幼児は、乳幼児保持具8で胴部が保持された状態で、親側装着具2に連結されるため、さらに安全性を向上させることができる。
また、従来の子守帯は、乳幼児を子守帯で保持する場合、両肩ベルトを肩に掛ける前に乳幼児を抱っこして、子守帯本体と装着者との間に入れた後で、両肩ベルトを肩に掛けなければならず、親の負担が多大なものであった。しかし、本実施の形態では、右前身頃部材50は右肩ベルト30に連結され、左前身頃部材60は左肩ベルト40に連結されている。これにより、乳幼児を子守帯1で保持する場合に、一方の肩ベルトを肩に掛けた状態で、乳幼児をのせおろしすることができるため、わざわざ両肩ベルト30,40を外す必要がなく、親側の負担を軽減することができる。
また、従来の子守帯では、両肩ベルト30,40を装着したあとでなければブリッジベルト35を連結することができず、一人では装着しにくかった。しかし、本実施の形態では、右前身頃部材50は右肩ベルト30に連結され、左前身頃部材60は左肩ベルト40に連結されていることで、肩ベルト30,40が左右に広く開くため、両肩ベルト30,40を装着する前にブリッジベルト35を連結して、両肩ベルト30,40を両肩に掛けることができる。
以上、乳児の場合について説明した。幼児の場合は、乳児よりも股幅寸法が大きいため、股幅調節部材100の股幅寸法を大きくする必要がある。具体的には、図3を参照して、第1股支持部55の第1面ファスナ58と腰ベルト70の第2面ファスナ710を連結させ、第2股支持部65の第1面ファスナ68と腰ベルト70の第2面ファスナ711を連結させる。これにより、股幅調節部材100の股幅寸法を大きくすることができる。
(斜め抱きについて)
図16〜図19を参照して、斜め抱きをする方法について説明する。
斜め抱きは、たとえば、首すわり前の乳幼児に対して行う。斜め抱きの場合は、腰ベルト70と右前身頃部材50および左前身頃部材60の連結部分の横方向の長さを大きくする必要がある。そのため、幼児を縦抱きする場合と同様に、股幅調節部材100の股幅寸法を大きくする必要がある。具体的には、図3を参照して、第1股支持部55の第1面ファスナ58と腰ベルト70の第2面ファスナ710を連結させ、第2股支持部65の第1面ファスナ68と腰ベルト70の第2面ファスナ711を連結させる。これにより、腰ベルト70と右前身頃部材50および左前身頃部材60の連結部分を大きくすることができる。
このように、図16に示すように、腰ベルト70と右前身頃部材50および左前身頃部材60の連結部分を大きくした状態で、親の腰に腰ベルト70の第1腰当て部71を当て、雌バックル73および雄バックル74を連結して、腰ベルト70を装着する。腰ベルト70以外の親側装着具2は、すべて腰ベルト70の前方から垂れ下がっている状態である。
次に、図17に示すように、右肩ベルト30を着用者の左肩に掛けて、左肩ベルト40は右肩に掛ける。この場合、右前身頃部材50の第1係合部53と左前身頃部材60の第1被係合部63(第1連結部)は、連結させないでおく。この状態のまま、乳幼児保持具8で胴部を保持した乳幼児を抱きかかえる。
図18に示すように、乳幼児保持具8で胴部を保持した乳幼児を、右前身頃部材50と左前身頃部材60の間に挿入して、乳幼児の両足を右前身頃部材50と左前身頃部材60の間から左方へ出す。
図19に示すように、乳幼児保持具8の上方部分と、右,左肩ベルト30,40とを第3連結部で連結する。具体的には、右肩ベルト30の第3係合部33と、乳幼児保持具8の連結ベルト90の先端部に取り付けられた第3被係合部92とを連結させる。この場合、長さ調節部34の長さ調節ベルト342(図5)を調節することにより、右前身頃部材50の高さ位置を調整することが可能である。
同様に、左肩ベルト40に取り付けられる第3係合部43と、乳幼児保持具8の連結ベルト90の先端部に取り付けられた第3被係合部91とを連結させる。この場合もまた、長さ調節部44の長さ調節ベルト442(図5)を調節することにより、左前身頃部材60の高さ位置を調整することが可能である。乳幼児保持具8の第3被係合部91は、第3被係合部92よりも外側に位置するため、右肩ベルト30の長さ調節部44の長さを左肩ベルト40の長さ調節部34の長さよりも長くすることが望ましい。
最後に、乳幼児保持具8の背面部分と、左前身頃部材60とを連結する第4連結部で連結する。具体的には、乳幼児保持具8の背面の第4係合部93と、左前身頃部材60の端部に取り付けられる第1被係合部63とを連結させる。
このような構成により、右前身頃部材50と左前身頃部材60との間で乳幼児を斜め抱きで保持することができるため、乳幼児を確実に保持することができ、安全性を向上させることができる。さらに、乳幼児は、乳幼児保持具8で胴部が保持された状態で、親側装着具2に連結されるため、さらに安全性を向上させることができる。また、乳幼児の頭部が3箇所で連結されるため、頭部がずれることなく安定して保持することができる。
<子守帯の他の部材について>
(補助シートについて)
乳幼児保持具8に取り付けられる部材として、補助シートがある。補助シートは、首すわり前の新生児の場合に使用する部材であり、適度な弾性を有する芯材を内部に含む。補助シートは、使用時に乳幼児の頭部を覆うヘッドサポートと、ヘッドサポートの下方に位置し、乳幼児の背を背後から支持する背中保持部材とを含む。補助シートは、図10に示す乳幼児保持具8の内側に取り付けられる。
(ヘッドレストについて)
両肩ベルト30,40に取り付けられる部材として、ヘッドレストがある。ヘッドレストは、たとえば、薄い布製材料で形成される。ヘッドレストは、その上端が図8に示すホック部36,46に取り付けられ、その下端が乳幼児保持具8の上端に取り付けられる。ヘッドレストは、乳幼児が寝た場合などに装着することができる。
<実施の形態2>
図20〜図23を参照して、実施の形態2に係る親側装着具2Aについて説明する。図20,図21に示すように、実施の形態2における子守帯1Aは、基本的には、図2〜4に示す実施の形態1の親側装着具2と同様の構成を備えているが、股幅調節部材100において異なる。なお、図20,図21において、子守帯1Aの左右方向における中央部を内方、中央部と反対側の方向を外方という。
実施の形態1の股幅調節部材100は、連結箇所を変えることで、股幅寸法を変えていた。これに対し、実施の形態2の股幅調節部材100Aは、連結箇所を変えずに、股幅寸法を変えることができる。
本実施の形態に係る股幅調節部材100Aは、第1股支持部55Aと第2股支持部65Aとを含む。第1股支持部55Aは、右肩ベルト30側に設けられ、右前身頃部材50の幅狭部分52の側縁部に沿って設けられる。第2股支持部65Aは、左肩ベルト40側に設けられ、左前身頃部材60の幅狭部分62の側縁部に沿って設けられる。
第1股支持部55Aは、布製部材によって構成されている。第1股支持部55Aは、たとえば、湾曲した略三角形状である。具体的には、図21を参照して、第1股支持部55Aは、頂点550と、底辺551と、頂点550と底辺551の外方側の端部を結ぶ外辺552と、頂点550と底辺551の内方側の端部を結ぶ内辺553とから囲まれる領域である。内辺553は、幅狭部分52に沿う上内辺553aと、腰ベルト70上に重ねられる下内辺553bとを有する。上内辺553aは、幅狭部分52に縫い付けられている。これに対し、下内辺553bは、腰ベルト70に縫着されていない。底辺551は、腰ベルト70に縫着されている。
さらに、第1股支持部55Aは、幅方向の中央領域において縦方向に延びる折り曲げ線554を含む。折り曲げ線554は、たとえば、縫い目線により形成されている。ここで、縦方向とは、第1股支持部55Aの幅方向に対する縦方向であり、第1股支持部55Aが傾斜している場合は、折り曲げ線554は第1股支持部55Aの縦方向に沿って傾斜する。折り曲げ線554は、その上下端が股幅調節部材100Aの外側縁に交差する湾曲線である。具体的には、折り曲げ線554は、頂点550から底辺551および外辺552の交点に向かって湾曲する形状である。
第1股支持部55Aは、その領域で折り曲げ線554で区切られ、内方に位置する領域を内方領域556、外方に位置する領域を外方領域555とを含む。外方領域555は、たとえば、略三日月形状である。外方領域555は、適度な弾性を有する芯材が内包されている。外方領域555の芯材は、たとえば、発砲ウレタンであることが好ましい。これにより、外方領域555は、内方領域556よりも硬く形成されている。
第1股支持部55Aと同様に、第2股支持部65Aは、布製部材によって構成されている。第2股支持部65Aは、たとえば、湾曲した略三角形状である。具体的には、第2股支持部65Aは、頂点650と、底辺651と、底辺651の外方側の端部と頂点650とを結ぶ外辺652と、底辺651の内方側の端部と頂点650とを結ぶ内辺653とから囲まれる領域である。内辺653は、幅狭部分62に沿う上内辺653aと、腰ベルト70上に重ねられる下内辺653bとを有する。上内辺653aは、幅狭部分62に縫い付けられている。これに対し、下内辺653bは、腰ベルト70に縫着されていない。底辺651は、腰ベルト70に傾斜して縫着されている。
さらに、第2股支持部65Aは、幅方向の中央領域において縦方向に延びる折り曲げ線654を含む。折り曲げ線654は、たとえば、縫い付けられることにより形成されている。ここで、縦方向とは、第2股支持部65Aの幅方向に対する縦方向であり、第2股支持部65Aが傾斜している場合は、折り曲げ線654は第2股支持部65Aの縦方向に沿って傾斜する。折り曲げ線654は、その上下端が股幅調節部材の外側縁に交差する湾曲線である。具体的には、折り曲げ線654は、頂点650から底辺651および外辺652の交点に向かって湾曲する形状である。
第2股支持部65Aは、その領域で折り曲げ線654で区切られ、内方に位置する領域を内方領域656、外方に位置する領域を外方領域655とを含む。外方領域655は、たとえば、略三日月形状である。具体的には、外方領域655は、適度な弾性を有する芯材が内包されている。外方領域655の芯材は、たとえば、発砲ウレタンであることが好ましい。これにより、外方領域655は、内方領域656よりも硬く形成されている。
また、左前身頃部材60の中央位置には、右前身頃部材50のメッシュ生地67と重なる位置に貫通孔が形成されており、貫通孔には、メッシュ生地57Aが縫い付けられている。
図22,23を参照して、親側装着具2Aを着用者に着用した場合について説明する。図22,23において、乳幼児を破線で示している。
図22に示すように、第1股支持部55Aおよび第2股支持部65Aを折り曲げ線554,654で折り曲げずにそのままの状態で着用者に着用すると、股幅調節部材100Aの股幅寸法L3は大きくなる。これに対し、図23に示すように、着用者に親側装着具2を着用した状態で、外方領域555,655を内側に押し込むと、折り曲げ線554,654を境界に折れ曲がり、股幅調節部材100Aの股幅寸法L4が小さくなる。
このように、本実施の形態の股幅調節部材100Aは、連結箇所を変えずに、折り曲げ線554,654で折り曲げるだけでよいため、簡単に股幅寸法を変えることができる。乳幼児の体が小さい場合は、股幅寸法を小さくし、斜め抱きの場合、または、乳幼児の体が大きくなった場合は、股幅寸法を大きくすることができる。
また、上述のように、外方領域555,655には、適度な弾性を有する芯材が内包されている。図22に示すように、外方領域555,655を折り曲げずに使用する場合、芯材を内包する外方領域555,655が、乳幼児の臀部または太腿等を下方から支えることになるため、第1股支持部55Aおよび第2股支持部65Aを広げた状態が崩れず、弾力性を有した状態で保持することができる。また、図23に示すように、外方領域555,655を折り曲げ線554,654で折り曲げた場合、芯材が内包されていない内方領域556,656のみが折れ曲がり、芯材を内包する外方領域555,655の形状は変化しないため、股幅調節部材100Aを折り畳んだ状態で容易に保持することができる。
なお、実施の形態1,2において、子守帯は、乳幼児保持具8を備えるとして説明したが、必ずしも乳幼児保持具8を備えている必要はない。子守帯は、少なくとも親側装着具2、2Aを備えていればよく、乳幼児は直接、親側装着具2,2Aに保持されていればよい。
また、実施の形態2において、親側装着具2,2Aは、右前身頃部材50と左前身頃部材60とを備えているとした。しかし、右前身頃部材50および左前身頃部材60に代えて、乳幼児を包み込む子守帯本体が設けられていればよい。その場合、股幅調節部材100は、子守帯本体の下方部分の両側縁部および腰ベルト70に接続されていればよい。
また、実施の形態1,2において、右前身頃部材50が着用者側に設けられ、左前身頃部材60が外側に設けられるとしたが、その形状に限定されない。すなわち、左前身頃部材60が着用者から見て内側に設けられ、右前身頃部材50が着用者から見て外側に設けられてもよい。
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。