詳細な説明
アルファ1アンチトリプシン欠乏症(AATD)
AATDは、SERPINA1遺伝子の変異、あるいはさらに珍しくは欠失により、引き起こされる。SERPINA1遺伝子は、ゲノム座標(GRCh38)のchr14:1,493,319−1,507,264である、14q32.13に位置する。SERPINA1は、5つのエクソンで構成され、全長12.2kbを有する。該遺伝子は、2つのプロモーターを有し、1つはマクロファージにおける発現を調節している。複数の転写変異体が報告されている;しかしながら、それらは全て同じAATタンパク質をコードしている。AATDの約95%が、病的対立遺伝子PI ZまたはPI Sまたはこれらの組み合わせを原因とする。
SERPINA1遺伝子は、プロテアーゼインヒビター(PI)、主な血漿セリンプロテアーゼインヒビターとしても知られる、アルファ1アンチトリプシン(AAT)をコードしている。AATはエラスターゼと優先的に複合体を形成するが、他のセリンプロテアーゼとも複合体を形成する。AATの重要な阻害作用は、細胞壁のエラスチンと様々な組織の他の構造タンパク質とを分解するプロテアーゼである、好中球エラスターゼに対するものである。
治療方法
既知のAATDの形態は、劣性遺伝による単一遺伝子疾患であるため、細胞ごとの変異対立遺伝子の1つを修正することは、AATDの機能の修正および回復または部分的回復に、おそらく十分であろう。1つの対立遺伝子の修正は、元の変異を維持する1コピーと、または、非相同末端結合(NHEJ)により切断および修復され正しく修正されなかった1コピーと、同時に起こり得る。両対立遺伝子の修正もまた、起こり得る。特定の変異のために用い得る様々な編集戦略を、以下に述べる。
変異対立遺伝子の1つ、または、場合により両方の修正は、レンチウイルスによる送達および組み込みによるSERPINA1発現カセットの導入などの、既存の、または、可能性のある治療よりも、重要な改善を提供する。遺伝子編集は、例えば、変異が、NHEJ修復経路により生じる挿入または欠失により修正することができるなどの、正確なゲノムの改変およびより低い有害作用などの利点を有する。患者のSERPINA1遺伝子が挿入または欠失した塩基を有する場合、標的切断は、読み枠を回復させるNHEJ媒介挿入または欠失を生じ得る。ミスセンス変異はまた、1つ以上のガイドRNAを用いて、NHEJ媒介修正により、修正することができる。変異を修正する切断の能力または可能性は、局所的配列およびマイクロホモロジーに基づいて、設計または評価することができる。NHEJはまた、直接、または、いくつかの位置を標的とするgRNA、もしくは、いくつかのgRNAによる切断によるスプライスドナー部位またはスプライスアクセプター部位を改変することにより、遺伝子のセグメントを欠失させるために用いることができる。これは、アミノ酸、ドメインまたはエクソンが変異を含有し、除去または反転し得る場合、あるいはそうでなければ、欠失がタンパク質に機能を回復させる場合に、有用であり得る。ガイド鎖の対が、本発明の欠失または修正に用いられている。
あるいは、HDRによる修正のためのドナーは、アニーリングを可能にするために、小さい、または、大きいフランキング相同アームを有する修正配列を含有する。HDRは、本質的に、DSB修復中に、鋳型として供給された相同なDNA配列を用いる、誤りのないメカニズムである。HDRの割合は、変異と切断部位との間の距離の関数であるため、重複する標的部位、または、近傍の標的部位を選択することが重要である。鋳型は、相同領域に隣接する余分な配列を含むことができ、あるいは、ゲノム配列とは異なる配列を含有することができ、従って、配列の編集が可能である。
NHEJまたはHDRによる変異の修正に加えて、種々の他の選択肢も可能である。小さい、または、大きい欠失、または複数の変異がある場合、影響を受けたエクソンを含むcDNAをノックインすることができる。完全長cDNAは、好適な制御配列の有無にかかわらず、任意の「セーフハーバー」、すなわち、SERPINA1遺伝子自体ではない有害ではない挿入点、にノックインすることができる。この構築物が、SERPINA1調節エレメントの近くにノックインされる場合、正常な遺伝子と同様に、生理的制御を有するべきである。2つ以上の(例えば、一対の)ヌクレアーゼを用いて、変異した遺伝子領域を欠失させることができるが、通常は機能を回復させるためにドナーを提供する必要がある。この場合、2つのgRNAと1つのドナー配列が供給される。
Cas9と1つのsgRNAによる1つの2本鎖切断を誘導することにより、または、2つの適切なsgRNAを用いて変異の周辺に一対の2本鎖切断を誘導することにより、遺伝子内の特定の変異?を修正し、相同配向型修復(HDR)を誘導するためのドナーDNAテンプレートを提供する方法が、提供される。いくつかの態様において、ドナーDNAテンプレートは、短鎖1本鎖オリゴヌクレオチド、短鎖2本鎖オリゴヌクレオチド、長鎖1本鎖DNA分子、または長鎖2本鎖DNA分子であり得る。これらの方法は、SERPINA1変異体のそれぞれに対するgRNAおよびドナーDNA分子を用いる。
対応する遺伝子の遺伝子座に、SERPINA1 cDNAまたはミニ遺伝子(1つ以上のエクソンおよびイントロン、すなわち天然のまたは合成のイントロンから構成される)をノックインする方法が提供される。これらの方法は、SERPINA1遺伝子の第一エクソンおよび/または第一イントロンを標的とする一対のsgRNAを用いる。いくつかの態様において、ドナーDNAは、17q21領域に対する相同アームを有する1本鎖または2本鎖DNAである。
SERPINA1 cDNAまたはミニ遺伝子(1つ以上のエクソンおよびイントロン、すなわち天然のまたは合成のイントロンから構成される)を、ホットスポットの遺伝子座、例えばAlb遺伝子にノックインする方法が提供される。これらの方法は、肝臓のホットスポットに位置する遺伝子の、第一エクソンおよび/または第一イントロンを標的とする一対のsgRNAを用いる。いくつかの態様において、ドナーDNAは、対応する領域に対する相同アームを有する1本鎖または2本鎖DNAである。
1)不正確なNHEJ経路に起因して生じる挿入または欠失により、SERPINA1遺伝子の、または、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部またはその近傍で、1つ以上の変異を修正すること、2)HDRにより、SERPINA1遺伝子の、または、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部またはその近傍で、1つ以上の変異を修正すること、または、3)変異領域を欠失させること、および/または、SERPINA1 cDNAまたはミニ遺伝子(天然のまたは合成のエンハンサーおよびプロモーター、1つ以上のエクソン、並びに、天然のまたは合成のイントロン、並びに、天然のまたは合成の3’UTRおよびポリアデニル化シグナルから成る)を遺伝子座位へノックインすることで、AATタンパク質活性を回復させることにより、ゲノム工学ツールを用いて、ゲノムに永続的な変更を加えるための、細胞の方法、エクスビボ法、およびインビボ法が、提供される。該方法は、永続的に1つ以上のエクソンもしくはその一部を欠失、挿入、編集、修正、もしくは置換する(すなわち、コード配列および/またはスプライシング配列の内部またはその近傍の変異)、または、SERPINA1遺伝子もしくはSERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、ゲノム上の遺伝子座に挿入する、CRISPR関連ヌクレアーゼ(CRISPR/Cas9、Cpf1など)などの、エンドヌクレアーゼを用いる。このように、本開示に記載の実施例は、(患者の生涯に渡って見込みのある治療を提供するのではなく)一回の処置で、SERPINA1遺伝子の読み枠または野生型配列の回復、すなわち言い換えれば修正を助け得る。
AATDの患者を治療するための方法が提供される。該方法のある態様は、エクスビボの細胞ベースの治療である。例えば、患者特異的人工多能性幹細胞(iPSC)を作製する。その後、これらのiPS細胞の染色体DNAを、本明細書に記載の材料および方法を用いて編集する。次に、ゲノム編集したiPSCを、肝細胞へ分化させる。最後に、肝細胞を患者に移植する。
該方法の別の態様は、エクスビボの細胞ベースの治療である。例えば、患者の肝臓の生検を行う。その後、肝臓特異的な前駆細胞または初代肝細胞を、例えば生検により、患者から単離する。次に、これら前駆細胞または初代肝細胞の染色体DNAを、本明細書に記載の材料および方法を用いて編集する。最後に、ゲノム編集した前駆細胞または初代肝細胞を患者に移植する。
該方法のさらに別の態様は、エクスビボの細胞ベースの治療である。例えば、患者の骨髄の生検を行う。その後、間葉系幹細胞を患者から単離するが、例えば生検により患者の骨髄から、または末梢血から単離することができる。次に、これらの間葉系間細胞の染色体DNAを本明細書に記載の材料および方法を用いて編集する。次に、ゲノム編集した間葉系幹細胞を肝細胞へ分化させる。最後に、これらの肝細胞を患者に移植する。
エクスビボの細胞治療手法の1つの利点は、投与前に、治療薬の包括的な解析ができることである。ヌクレアーゼベースの治療薬は全て、あるレベルのオフターゲット効果を有する。エクスビボで遺伝子修正を行うことは、移植前に修正された細胞集団の完全な特徴付けを行うことを可能にする。本発明の局面は、修正された細胞の全ゲノムをシーケンシングして、オフターゲットの切断が、たとえ存在したとしても、患者にとって最小限のリスクに関係するゲノム位置に存在することを確認することを含む。さらに、クローン集団を含む特定の細胞の集団を、移植の前に単離することができる。
エクスビボの細胞治療の別の利点は、他の初代細胞源と比較した、iPSCにおける遺伝子の修正に関する。iPSCは多産(prolific)であるため、細胞ベースの治療に必要とされるであろう多数の細胞を得ることが簡単である。さらに、iPSCは、クローン単離を行うのに、理想的な細胞型である。これにより、生存率の低下を招くことなく、正しいゲノム修正をスクリーニングすることが可能になる。対照的に、初代肝細胞などの他の可能性のある細胞型は、ほんのわずかな継代のみ生存可能であり、クローン的に増やすことが難しい。従って、AATDのiPSCの操作が、はるかに簡単で、所望の遺伝子の修正を行うのに必要な時間を短縮させるであろう。
該方法の別の態様は、インビボベースの治療である。本方法では、患者の体内の細胞の染色体DNAを、本明細書に記載の材料および方法を用いて修正する。
インビボ遺伝子治療の利点は、治療薬の生産と投与が簡単なことである。同じ治療方法および治療が、複数の患者、例えば、同一または同様の遺伝子型または対立遺伝子を有する多数の患者を、処置するために用いられる可能性があるだろう。対照的に、エクスビボの細胞治療は、通常患者自身の細胞を用いる必要があり、細胞を単離、操作して、同一の患者に戻す。
ゲノム編集により細胞内のSERPINA1遺伝子を編集するための細胞の方法もまた提供される。例えば、細胞を患者または動物から単離する。その後、細胞の染色体DNAを本明細書に記載の材料および方法を用いて編集する。
本発明の方法は、細胞の方法であるか、エクスビボ法であるか、インビボ法であるかに関わらず、以下、あるいは以下の組み合わせを包含する:1)不正確なNHEJ経路に起因して生じる挿入または欠失により、SERPINA1遺伝子の、または、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部またはその近傍で、1つ以上の変異を修正すること、2)HDRにより、SERPINA1遺伝子の、または、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部またはその近傍で、1つ以上の変異を修正すること、または、3)変異領域を欠失させること、および/または、SERPINA1 cDNAまたはミニ遺伝子(1つ以上のエクソンもしくはイントロン、または、天然のもしくは合成のイントロンから成る)をノックインさせること、または、外因性のSERPINA1 DNAまたはcDNA配列またはそれらのフラグメントを、ゲノムの該遺伝子の該遺伝子座、または非相同の位置(例えば、セーフハーバー座位、例えば、AAVS1(PPP1R12C)、Alb遺伝子、Angptl3遺伝子、ApoC3遺伝子、ASGR2遺伝子,aCCR5遺伝子,aFIX(F9)遺伝子,aG6PC遺伝子、Gys2遺伝子、HGD遺伝子、Lp(a)遺伝子、Pcsk9遺伝子、SERPINA1遺伝子、TF遺伝子、およびTTR遺伝子を標的とする)に導入すること。cDNAの第一エクソンへのHDR媒介ノックインの効率の評価は、以下の領域、例えばApoC3(chr11:116829908−116833071)、Angptl3(chr1:62,597,487−62,606,305)、Serpina1(chr14:94376747−94390692)、Lp(a)(chr6:160531483−160664259)、Pcsk9(chr1:55,039,475−55,064,852)、FIX(chrX:139,530,736−139,563,458)、ALB(chr4:73,404,254−73,421,411)、TTR(chr18:31,591,766−31,599,023)、TF(chr3:133,661,997−133,779,005)、G6PC(chr17:42,900,796−42,914,432)、Gys2(chr12:21,536,188−21,604,857)、AAVS1(PPP1R12C)(chr19:55,090,912−55,117,599)、HGD(chr3:120,628,167−120,682,570)、CCR5(chr3:46,370,854−46,376,206)、ASGR2(chr17:7,101,322−7,114,310)の1つに対する相同アームを有する1本鎖または2本鎖DNAなどの「セーフハーバー」部位への、cDNAノックインを利用できる。修正およびノックインの両戦略は、相同配向型修復(HDR)において、ドナーDNAテンプレートを利用する。いずれの戦略におけるHDRも、1つ以上のエンドヌクレアーゼを利用することによってゲノムの特異的部位に1つ以上の2本鎖切断(DSB)を生じることで、達成することができる。
例えば、NHEJ修正戦略は、1つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼおよび1つのgRNA(例えば、crRNA+tracrRNA、またはsgRNA)で、目的の遺伝子に1つの1本鎖切断または2本鎖切断を誘導すること、または、2つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼおよび2つ以上のsgRNAで、目的の遺伝子に2つ以上の1本鎖切断または2本鎖切断を誘導することにより、SERPINA1遺伝子の読み枠を回復させることを包含し得る。本手法は、SERPINA1遺伝子のためのsgRNAの開発と最適化を必要とし得る。
例えば、HDR修正戦略は、細胞性DSB応答を相同配向型修復に向かわせるために外因的に導入されたドナーDNAテンプレートの存在下で(ドナーDNAテンプレートは、短鎖1本鎖オリゴヌクレオチド、短鎖2本鎖オリゴヌクレオチド、長鎖1本鎖DNA分子、または長鎖2本鎖DNA分子であり得る)、1つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼとgRNA(例えば、crRNA+tracrRNA、sgRNA)で、目的の遺伝子に1つの2本鎖切断を誘導することにより、または、1つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼおよび2つ以上の適切なsgRNAで、2つ以上の2本鎖切断を誘導することにより、SERPINA1遺伝子の読み枠を回復させることを包含する。本手法は、SERPINA1遺伝子の主な変異体(PI Z)のためのgRNAおよびドナーDNA分子の開発と最適化を必要とする。
例えば、ノックイン戦略は、SERPINA1 cDNAまたはミニ遺伝子(天然のまたは合成のエンハンサーおよびプロモーター、1つ以上のエクソン、並びに、天然のまたは合成のイントロン、並びに、天然のまたは合成の3’UTRおよびポリアデニル化シグナルから成る)を、SERPINA1遺伝子の上流、または、第一エクソンもしくは他のエクソン、および/またはイントロン、または、セーフハーバー部位(AAVS1(PPP1R12C)、ALB、Angptl3、ApoC3、ASGR2、CCR5、FIX(F9)、G6PC、Gys2、HGD、Lp(a)、Pcsk9、Serpina1、TF、および/またはTRなど)を標的とする、gRNA(例えば、crRNA+tracrRNA、またはsgRNA)または一対のsgRNAを用いて、該遺伝子の該遺伝子座にノックインすることを包含する。ドナーDNAは、14q32.13領域に対する相同アームを有する1本鎖または2本鎖DNAであるだろう。
例えば、欠失戦略は、1つ以上のエンドヌクレアーゼおよび2つ以上のgRNAまたはsgRNAを用いて、SERPINA1遺伝子の5つのエクソンのうち1つ以上において、1つ以上の変異を欠失させることを包含する。
上記の戦略(修正およびノックインおよび欠失)の利点は、原則として短期的にも長期的にも有益な臨床的および実験的効果を含んで、同様である。さらに、AAT活性の低いパーセンテージしか、治療効果を提供するために必要でないことがあり得る。全ての戦略の別の利点は、ほとんどの患者が低レベルの遺伝子およびタンパク質活性を有していることであり、従って、例えば遺伝子修正後のさらなるタンパク質発現が、必ずしも標的遺伝子産物に対する免疫応答をもたらさないことを示唆している。ノックイン手法は、修正または欠失の手法よりも1つの利点を提供する−すなわち、患者のサブセットのみを治療するのに対して、全ての患者を治療する能力である。該遺伝子には共通の変異が存在するが、他にも多くの可能性のある変異が存在し、ノックイン方法を用いると、これら全てを治療できる。このように、遺伝子編集の他の問題は、HDRのためのDNAドナーの必要性である。
上記のゲノム編集戦略に加えて、別の戦略は、制御配列における編集により、SERPINA1の発現、機能、または活性を調節することを包含する。
上述の編集の選択肢に加えて、Cas9または同様のタンパク質を用いて、編集のために特定したものと同一の標的部位に対する効果ドメイン、または、効果ドメインの範囲内にあるさらなる標的部位を、標的とすることができる。種々のクロマチン修飾酵素、メチラーゼ、またはデメチラーゼを用いて、標的遺伝子の発現を変更することができる。1つの可能性は、変異が活性の低下につながる場合に、AATタンパク質の発現を増加させることである。これらのタイプのエピジェネティックな調節には、特に、可能なオフターゲット効果に制限があるために、いくつかの利点がある。
多くのタイプのゲノムを標的とする部位が、コード配列およびスプライシング配列の変異に加えて、存在する。
転写および翻訳の調節は、細胞のタンパク質またはヌクレオチドと相互作用する、多くの異なるクラスの部位を示唆している。転写因子または他のタンパク質のDNA結合部位は、遺伝子発現を変化させるために標的とすることもできるが、しばしば、該部位の役割を研究するために変異または欠失の標的とすることができる。部位は、非相同末端結合 (NHEJ)または相同組換え修復(HDR)による直接のゲノム編集により、加えることができる。ゲノム配列決定、RNA発現、および転写因子結合のゲノムワイドな研究の利用の増加は、該部位が、いかにして発達的または時間的遺伝子調節に繋がるかを特定する能力を増大させた。これらのコントロールシステムは、直接的であってもよく、複数のエンハンサー由来の活性の統合を必要とし得る、大規模な協調的調節を包含してもよい。転写因子は、通常、6〜12bpの縮重したDNA配列に結合する。個々の部位が提供する特異性のレベルの低さは、複雑な相互作用および規則が、結合および機能的結果に関与していることを示唆している。縮重の少ない結合部位は、より簡単な調節の手段を提供し得る。人工転写因子は、ゲノム中のより類似性の低い配列を有するより長い配列を特定して、オフターゲット切断の可能性が低いように、設計することができる。これらのタイプの結合部位はいずれも、遺伝子調節または発現を変化させるように、変異、欠失、または作製することさえ可能である(Canver, M.C. et al., Nature (2015))。
これらの特徴を有する遺伝子調節領域の別のクラスは、マイクロRNA(miRNA)結合部位である。miRNAは、転写後遺伝子調節において重要な役割を果たすノンコーディングRNAである。miRNAは、全ての哺乳動物のタンパク質コード遺伝子の30%の発現を調節することができる。2本鎖RNA(RNAi)による特異的かつ強力な遺伝子サイレンシングが発見され、さらに小さなノンコーディングRNAが発見された(Canver, M.C. et al., Nature (2015))。遺伝子サイレンシングに重要なノンコーディングRNAの最大のクラスは、miRNAである。哺乳動物では、miRNAはまず、長い転写物として転写され、これは、別々の転写ユニット、タンパク質のイントロンの一部、または他の転写物であり得る。長い転写物は、miRNA前駆体(pri−miRNA)と呼ばれ、不完全な塩基対を形成したヘアピン構造を含む。これらのpri−miRNAは、Droshaを包含する核内タンパク質複合体である、マイクロプロセッサー(Microprocessor)により、1つ以上の短いmiRNA前駆体(pre−miRNA)に切断される。
miRNA前駆体は、約70ヌクレオチドの長さの短いステムループであり、2ヌクレオチドの3’側突出を有し、核外に輸送され、成熟型の19〜25ヌクレオチドのmiRNA:miRNA*デュプレックス(duplex)となる。低い塩基対形成安定性を有するmiRNA鎖(ガイド鎖)が、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)に取り込まれる。パッセンジャーガイド鎖(*印)は機能的であるが、通常は分解される。成熟型miRNAは、3’非翻訳領域(UTR)内で主に見出される、標的RNA内の相補的配列に部分的にRISCをつなぎ止め、転写後遺伝子サイレンシングを誘導する(Bartel, D.P. Cell 136, 215-233 (2009); Saj, A. & Lai, E.C. Curr Opin Genet Dev 21, 504-510 (2011))。
miRNAは、哺乳動物および他の多細胞生物において、発達、分化、細胞周期および増殖の調節、ならびに実質的に全ての生物学的経路において、重要である。miRNAはまた、細胞周期のコントロール、アポトーシスおよび幹細胞分化、血球新生、低酸素、筋肉発生、神経発生、インスリン分泌、コレステロール代謝、老化、ウイルス複製および免疫応答に関与している。
単一のmiRNAは、数百の異なるmRNA転写物を標的とすることができるが、それぞれの転写物は多くの異なるmiRNAが標的とすることができる。miRBaseの最新リリース(v.21)では、28645を超えるマイクロRNAが注釈されている。いくつかのmiRNAは、複数の遺伝子座によってコードされ、そのいくつかは、タンデムに同時転写されるクラスターから発現される。これらの特徴は、複数の経路およびフィードバック制御を有する、複雑な調節ネットワークを可能にする。miRNAは、これらのフィードバックおよび調節回路の不可欠な部分であり、タンパク質生産を限度内に留めることにより、遺伝子発現の調節を助け得る(Herranz, H. & Cohen, S.M. Genes Dev 24, 1339-1344 (2010); Posadas, D.M. & Carthew, R.W. Curr Opin Genet Dev 27, 1-6 (2014))。
miRNAはまた、異常なmiRNA発現に関連する数多くのヒト疾患において、重要である。本関連性は、miRNA調節経路の重要性を強調している。最近のmiRNA欠失の研究は、miRNAと、免疫応答の調節とを関連づけている(Stern-Ginossar, N. et al., Science 317, 376-381 (2007))。
miRNAはまた、癌と強い関連があり、複数のタイプの癌において役割を果たし得る。miRNAは、多くの腫瘍において、ダウンレギュレートされていることが分かってきている。miRNAは、細胞周期コントロールおよびDNA損傷応答などの、主要な癌関連経路の調節において重要であり、それゆえ、診断において用いられ、臨床的に標的にされている。マイクロRNAは、血管新生のバランスを微妙に調節しており、全てのマイクロRNAを枯渇させる実験では、腫瘍の血管新生を抑制する(Chen, S. et al.,Genes Dev 28, 1054-1067 (2014))。
タンパク質をコードする遺伝子について示されているように、miRNA遺伝子もまた、癌で生じるエピジェネティック変化を受ける。多くのmiRNA座位が、DNAメチル化による調節の機会を増しているCpGアイランドに関連している(Weber, B., Stresemann, C., Brueckner, B. & Lyko, F. Cell Cycle 6, 1001-1005 (2007))。研究の大半が、エピジェネティックにサイレンシングされたmiRNAを明らかにするために、クロマチンリモデリング薬による処理を用いている。
RNAサイレンシングにおける役割に加えて、miRNAは翻訳もまた活性化する(Posadas, D.M. & Carthew, R.W. Curr Opin Genet Dev 27, 1-6 (2014))。これらの部位をノックアウトすることは、標的遺伝子の発現を減少させ得るが、これらの部位を導入することは、発現を増加させ得る。
個々のmiRNAは、結合特異性に重要である、シード配列(マイクロRNAの2〜8塩基)を変異させることにより最も効果的にノックアウトすることができる。本領域の切断と、それに続くNHEJによる誤った修復は、標的部位への結合をブロックすることにより、miRNAの機能を効果的に消滅させることができる。miRNAはまた、パリンドローム配列に隣接する特別なループ領域を特異的に標的とすることによって、阻害され得る。触媒作用が不活性のCas9はまた、shRNAの発現を阻害するために用いることができる(Zhao, Y. et al., Sic Rep 4, 3943 (2014))。miRNAを標的化することに加えて、結合部位を、miRNAによるサイレンシングを防ぐために、標的化および変異させることもできる。
ヒト細胞
本明細書に記載および例示されるように、AATDを寛解させるための、遺伝子編集の主要な標的はヒト細胞である。例えば、エクスビボ法において、ヒト細胞は、記載された技術を用いて改変された後に、肝細胞または前駆細胞を生み出すことができる、体細胞である。例えば、インビボ法において、ヒト細胞は、肝細胞、腎細胞、または他の罹患器官由来の細胞である。
必要な患者に由来しているが故に、該患者にすでに完全に適合している自家細胞において、遺伝子編集を行うことにより、患者に安全に再導入することができる細胞を産生し、患者の疾病に関連する1つ以上の臨床状態を寛解させる上で効果的であろう細胞集団を効率的に生み出すことが可能である。
前駆細胞(本明細書では幹細胞とも呼ばれる)は、増殖およびより多くの前駆細胞を生じることが可能であり、これらは次に、分化した、または分化可能な娘細胞を生じることができる、多数の母細胞を生産する能力を有する。娘細胞それ自体は増殖し、子孫を産生し、続いて1つ以上の成熟細胞型に分化し、親の発生能を有する1つ以上の細胞も保持することができる。「幹細胞」という用語は、特定の状況下で、より特殊化または分化した表現型に分化する能力または可能性を有する細胞を指し、ある状況下では、実質的に分化することなく増殖する能力を保持する。ある態様において、前駆細胞または幹細胞という用語は、子孫が分化により、例えば、完全に個々の特性を獲得することにより、胚細胞および組織の進行性多様化において生じるように、しばしば異なる方向に特殊化する、一般化された母細胞を指す。細胞の分化は、多くの細胞により通常起こる、複雑なプロセスである。分化細胞は、それ自身が多分化能細胞から由来した多分化能細胞に由来することができ、以下同様である。これらの多分化能細胞のそれぞれは、幹細胞と考えられてよいが、それぞれが生じさせる細胞型の範囲はかなり変動する可能性がある。いくつかの分化細胞はまた、より大きな発生能を持つ細胞を生じさせる能力を有する。この能力は、天然であってもよく、人工的に様々なファクターで処理されることにより誘導されてもよい。多くの生物学的な例において、幹細胞は複数の異なる細胞型の子孫を産生することができるために「多分化能」であるが、これは「幹細胞性」には必要ない。
自己複製は幹細胞の別の重要な局面である。理論的には、自己複製は、2つの主なメカニズムのいずれかによって起こり得る。幹細胞は、非対称的に分裂し、一方の娘細胞は幹細胞の状態を保持し、他方の娘細胞はいくつかの異なる特定の機能および表現型を発現する。あるいは、集団中のいくつかの幹細胞は、集団中のいくつかの幹細胞を全体として維持しながら、集団中の他の細胞が分化した子孫のみを生じる間、集団中のいくつかの幹細胞を対称的に2つの幹細胞に分けることができる。一般的に、「前駆細胞」は、より原始的な細胞表現型である(すなわち、完全に分化した細胞よりも発生経路または進化の初期段階にある)。しばしば、前駆細胞はまた、有意な、または、非常に高い、増殖能を有する。前駆細胞は、発生経路および細胞が発生し分化する環境に依存して、複数の異なる分化した細胞型または単一の分化した細胞型を生じさせることができる。
細胞の個体発生の文脈において、「分化した」または「分化する」という形容詞は相対的な用語である。「分化細胞」とは、比較される細胞よりも発達経路をさらに進んだ細胞である。従って、幹細胞は、系列が制限された前駆細胞(例えば、筋細胞前駆細胞)に分化することができ、次に、さらに経路を進んだ他のタイプの前駆体細胞(例えば、筋細胞前駆体)に分化することができ、その後、特定の組織タイプで特徴的な役割を担う、筋細胞などの最終段階の分化細胞に分化することができ、さらに増殖する能力を保持していてもいなくてもよい。
人工多能性幹細胞
いくつかの態様において、本明細書で記載される遺伝子改変ヒト細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)である。iPSCを使用する利点は、細胞が、前駆細胞を投与する同じ対象に由来し得ることである。すなわち、体細胞は、対象から得て、人工多能性幹細胞へ再プログラムさせ、その後、対象へ投与する前駆細胞へ再分化させることができる(例えば、自家細胞)。前駆細胞は、本質的に自家供給源に由来するため、移植拒絶またはアレルギー反応のリスクは、他の対象または対象群由来の細胞の使用と比較して低減される。さらに、iPSCの使用は、胚供給源から得られた細胞の必要性を否定する。従って、ある態様において、開示された方法で用いられる幹細胞は、胚性幹細胞ではない。
分化は一般的に、生理的状況において不可逆であるが、体細胞をiPSCへと再プログラムさせるいくつかの方法が、最近開発されている。例示的な方法は、当業者に周知されており、本明細書の下記に端的に記載する。
「再プログラム」という用語は、分化細胞(例えば体細胞)の分化状態を、変更または逆戻りさせるプロセスを指す。言い換えれば、再プログラムは、細胞の分化を後方に動かし、より未分化の、またはより原始的な細胞型にするプロセスを指す。注目すべきは、多くの初代細胞を培養すると、完全に分化した特性がいくらか欠損する可能性があることである。従って、単に分化細胞という用語に含まれるこのような細胞を培養しても、これらの細胞を非分化細胞(例えば未分化の細胞)または多能性の細胞にすることはできない。分化細胞の多能性への移行には、培養における分化した特性の部分欠損につながる刺激を超える再プログラム刺激が必要である。再プログラムした細胞はまた、一般に、培養において限られた数の分裂のみの能力を有する初代細胞の親細胞と比較して、増殖能力を失うことなく継代を延長させる能力の特性を有する。
再プログラムされるべき細胞は、再プログラムに先立ち、部分的に分化され得るか、あるいは、最終分化され得る。いくつかの態様において、再プログラムは、分化細胞(例えば体細胞)の分化状態から、多能性の状態または多分化能の状態への完全な復帰を包含する。いくつかの態様において、再プログラムは、分化細胞(例えば体細胞)の分化状態から、未分化の細胞(例えば胚様細胞)への、完全な、または、部分的な復帰を包含する。再プログラムは、細胞による特定の遺伝子の発現を生じ、その発現はさらに、再プログラムに寄与する。本明細書に記載される特定の態様において、分化細胞(例えば体細胞)の再プログラムは、分化細胞が未分化状態(例えば、未分化細胞である)をとるようにする。得られた細胞は、「再プログラムした細胞」あるいは「人工多能性幹細胞(iPSCまたはiPS細胞)」と呼ばれる。
再プログラミングは、細胞分化の間に生じる、核酸改変(例えば、メチル化)、染色体凝縮、エピジェネティック変化、ゲノムインプリンティングなどの遺伝的パターンの少なくとも一部の改変、例えば逆転を包含し得る。再プログラミングは、既に多能性である細胞の既存の未分化状態を単に維持するか、またはすでに多能性細胞である細胞(例えば、筋原性幹細胞)の完全に分化していない状態を維持することとは異なる。再プログラムはまた、既に多能性または多分化能である細胞の、自己複製または増殖を促進させこととは異なるが、本明細書に記載の組成物および方法は、いくつかの態様において、これらの目的のためにも使用することができる。
体細胞から多能性肝細胞を産生するために用いることができる多くの方法が、当業界で知られている。体細胞を多能性表現型へ再プログラムさせるこれらのいずれの方法も、本明細書に記載される方法において用いるのに適しているであろう。
転写因子の規定の組み合わせを用いて多能性細胞を産生させるための再プログラムの方法論が、記載されている。Oct4、Sox2、Klf4、およびc−Mycを直接形質導入することにより、マウス体細胞を、発生能が拡大されたES細胞様細胞に変換することができる;Takahashi and Yamanaka, Cell 126(4): 663-76 (2006)を参照されたい。iPSCは、多能性に関連する転写回路(transcriptional circuitry)および多くのエピジェネティックな状況(epigenetic landscape)を回復させるために、ES細胞に似ている。さらに、マウスのiPSCは、多能性のための全ての標準的アッセイを満たす:具体的には、3つの胚葉の細胞型へのインビトロ分化、テラトーマ形成、キメラへの寄与、生殖系列伝達[例えば、Maherali and Hochedlinger、Cell Stem Cell. 3(6):595-605(2008)参照]、および四倍体相補性が挙げられる。
ヒトiPSCは、同様の形質導入方法を用いて得ることができ、3つの転写因子OCT4、SOX2、およびNANOGは、多能性を司る基本的なセットとして確立されている;例えば、Budniatzky and Gepstein, Stem Cells Transl Med. 3(4):448-57 (2014); Barrett et al., Stem Cells Trans Med 3:1-6 sctm.2014-0121 (2014); Focosi et al., Blood Cancer Journal 4: e211 (2014);およびそれらに引用されている参考文献を参照されたい。iPSCの生産は、幹細胞関連遺伝子をコードする核酸配列を、歴史的にウイルスベクターを用いて、成人の体細胞に導入することにより、達成することができる。
iPSCは、最終分化した体細胞、および成体幹細胞または体性幹細胞から、産生または由来することができる。すなわち、非多能性前駆細胞は、再プログラミングによって多能性または多分化能を付与することができる。このような場合、最終分化細胞を再プログラムするのに必要なほど多くの再プログラミング因子を含む必要はない。さらに、再プログラムは、再プログラミング因子の非ウイルス性導入によって、例えばタンパク質自体を導入することによって、または再プログラミング因子をコードする核酸を導入することによって、または翻訳の際に再プログラミング因子を産生するメッセンジャーRNAを導入することによって、誘導することができる(例えば, Warren et al., Cell Stem Cell, 7(5):618-30 (2010)を参照)。再プログラムは、例えば、Oct−4(Oct−3/4またはPouf51としてもまた知られる)、Soxl、Sox2、Sox3、Sox15、Sox18、NANOG、Klfl、Klf2、Klf4、Klf5、NR5A2、c−Myc、1−Myc、n−Myc、Rem2、Tert、およびLIN28を含む幹細胞関連遺伝子をコードする核酸の組み合わせを導入することにより、達成され得る。ある態様において、本明細書に記載される方法および組成物を用いる再プログラムは、さらに、Oct−3/4、Soxファミリーのメンバー、Klfファミリーのメンバー、およびMycファミリーのメンバーの1つ以上を体細胞に導入することを含み得る。ある態様において、本明細書に記載される方法および組成物はさらに、再プログラムのために、Oct−4、Sox2、Nanog、c−MYCおよびKlf4のそれぞれを1つ以上導入することを含む。上述のように、再プログラムに使用される正確な方法は、本明細書に記載の方法および組成物にとって必ずしも重要ではない。しかし、再プログラムされた細胞から分化した細胞を、例えばヒトの治療に使用する場合、ある態様において、再プログラムはゲノムを変更する方法によって影響されない。従って、これらの態様において、再プログラムは、例えばウイルスベクターまたはプラスミドベクターを用いることなく達成される。
出発細胞の集団に由来する再プログラムの効率(すなわち、再プログラムした細胞の数)は、様々な薬剤、例えば、小分子の添加によって増強することができ、Shi et al., Cell-Stem Cell 2:525-528 (2008); Huangfu et al., Nature Biotechnology 26(7):795-797 (2008)およびMarson et al., Cell- Stem Cell 3: 132-135 (2008)によって示されている。従って、人工多能性幹細胞の生産の効率または割合を増強させる薬剤、または薬剤の組み合わせを、患者特異的な、または、疾病特異的なiPSCの生産において用いることができる。再プログラム効率を増強させる薬剤のいくつかの非限定的な例には、可溶性Wnt、Wnt馴化培地、BIX−01294(G9aヒストンメチルトランスフェラーゼ)、PD0325901(MEK阻害剤)、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、バルプロ酸、5−アザシチジン、デキサメタゾン、スベロイルアニリド、ヒドロキサム酸(SAHA)、ビタミンC、およびトリコスタチン(TSA)などが含まれる。
再プログラム増強剤の他の非限定的な例には、以下が含まれる:スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA(例えばMK0683、ボリノスタット)および他のヒドロキサム酸)、BML−210、デプデシン(例えば、(−)−デプデシン)、HC毒素、Nullscript(4−(1,3−ジオキソ−1H、3H−ベンゾ[デ]イソキノリン−2−イル)−N−ヒドロキシブタンアミド)、フェニルブチラート(例えばフェニル酪酸ナトリウム)およびバルプロ酸((VPA)および他の短鎖脂肪酸)、Scriptaid、スラミンナトリウム、トリコスタチンA(TSA)、APHA化合物8、アピシジン、酪酸ナトリウム、ピバロイルオキシメチルブチレート(Pivanex、AN−9)、トラポキシンB、クラミドモニン、デプシペプチド(FR901228またはFK228としても知られる)、ベンズアミド(例えば、CI−994(例えば、N−acetyl dinaline)およびMS−27−275)、MGCD0103、NVP−LAQ−824、CBHA(m−カルボキシシンナミン酸ビスヒドロキサム酸)、JNJ16241199、Tubacin、A−161906、プロキサミド、オキサムフラチン、3−Cl−UCHA(例えば、6−(3−クロロフェニルウレイド)カプロイックヒドロキサム酸)、AOE(2−アミノ−8−オキソ−9、10−エポキシデカン酸)、CHAP31およびCHAP50。他の再プログラム増強剤には、HDACのドミナントネガティブ型(例えば、触媒的に不活性な形態)、HDACのsiRNAインヒビター、およびHDACに特異的に結合する抗体が含まれる。このような阻害剤は、例えば、BIOMOL International、Fukasawa、Merck Biosciences、Novartis、Gloucester Pharmaceuticals、Titan Pharmaceuticals、MethylGeneおよびSigma Aldrichから入手可能である。
本明細書に記載される方法で使用するための多能性幹細胞の誘導を確認するために、単離したクローンに対して、幹細胞マーカーの発現を試験することができる体細胞に由来する細胞におけるこれらの発現により、該細胞が人工多能性幹細胞であると特定される。幹細胞マーカーは、SSEA3、SSEA4、CD9、Nanog、Fbxl5、Ecatl、Esgl、Eras、Gdf3、Fgf4、Cripto、Daxl、Zpf296、Slc2a3、Rexl、Utfl、およびNatlを含む非限定的な群から選択される。ある態様において、Oct4またはNanogを発現する細胞は、多能性であると特定される。これらのマーカーの発現を検出する方法は、例えば、RT−PCRや、ウェスタンブロットまたはフローサイトメトリー解析などの、コードされたポリペプチドの存在を検出する免疫学的な方法を含み得る。いくつかの態様において、検出は、RT−PCRを包含するのみならず、タンパク質マーカーの検出も含む。細胞内マーカーは、RT−PCR、または、免疫細胞化学などのタンパク質検出方法により、最もよく特定され得、一方、細胞表面マーカーは、例えば免疫細胞化学により、容易に特定される。
単離した細胞の多能性幹細胞の特性は、iPSCが、3つの胚葉のそれぞれの細胞に分化する能力を評価する試験により、確認することができる。一例として、ヌードマウスにおけるテラトーマ形成は、単離したクローンの多能性の特性を評価するために、用いることができる。細胞をヌードマウスに導入し、組織学的検査および/または免疫組織化学的検査を、細胞から生じる腫瘍に対して行う。例えば、3つの胚葉全てに由来する細胞を含む腫瘍の成長はさらに、細胞が多能性幹細胞であることを示す。
肝細胞
いくつかの態様において、本明細書に記載される遺伝子改変ヒト細胞は、肝細胞である。肝細胞は肝臓の主な実質組織の細胞である。肝細胞は、肝臓の質量の70〜85%を構成する。肝細胞は、タンパク質合成;タンパク質貯蔵:炭水化物の変換;コレステロール、胆汁酸塩およびリン脂質の合成;外因性物質および内因性物質の解毒、改変および排泄;並びに胆汁の形成および分泌の開始:に関連する。
SERPINA1は、主に肝細胞(肝実質細胞)で発現され、単球および好中球での二次発現を伴う、循環血液中のタンパク質の主な供給源である。それゆえ、肝細胞および肝臓において、SERPINA1の修正が、主に標的とされるのであろう。
患者特異的iPSCの作製
本発明のエクスビボ法の1ステップは、1つの患者特異的iPS細胞、複数の患者特異的iPS細胞、または患者特異的iPS細胞株を作製することを包含する。Takahashi and Yamanaka 2006; Takahashi, Tanabe et al. 2007に記載されているように、患者特異的iPS細胞を作製するための多くの方法が、当業界で確立されている。例えば、該作製ステップは、a)患者由来の皮膚細胞または線維芽細胞などの、体細胞を単離すること;およびb)細胞を多能性幹細胞になるように誘導するために、一連の多能性関連遺伝子を体細胞に導入すること:を含む。いくつかの態様において、一連の多能性関連遺伝子は、OCT4、SOX2、KLF4、Lin28、NANOG、およびcMYCからなる群から選択される1つ以上の遺伝子である。
患者の肝臓または骨髄の、生検または穿刺の実施
生検組織または穿刺液は、生体から得た組織または液体のサンプルである。多くの異なる種類の生検組織または穿刺液が存在する。これらのほぼ全てが、少量の組織を除去するための鋭利なツールを用いることを包含する。生検が皮膚または他の敏感な領域において行われる場合、最初に麻酔薬を投与する。生検または穿刺は、当業界で知られる任意の方法に従い行ってよい。例えば、肝臓の生検において、ニードルを、腹部の皮膚を貫通させて肝臓へ注入し、肝組織を捕らえる。例えば、骨髄穿刺において、太いニードルを用いて骨盤の骨に挿入し、骨髄を回収する。
肝臓特異的な前駆細胞または初代肝細胞の単離
肝臓特異的な前駆細胞および初代肝細胞は、当業界で知られる任意の方法に従い単離することができる。例えば、ヒト肝細胞を、新鮮な外科検体(例えば自家サンプル)から単離する。健常な肝組織を、コラゲナーゼ消化により肝細胞を単離するために用いる。得られた細胞懸濁液を、100mmナイロンメッシュを通して濾過し、50gで5分間遠心分離することにより沈降させ、再懸濁し、冷たい洗浄培地で2〜3回洗浄する。新鮮な肝臓標本から得られた肝細胞を、ストリンジェントな条件で培養することにより、ヒト肝臓幹細胞を得る。肝細胞をコラーゲン被覆プレートに播種し、2週間培養する。2週間後、生存細胞を取り除き、幹細胞マーカーの発現について特徴づける(Herrera et al, STEM CELLS 2006;24: 2840 -2850)。
間葉系幹細胞の単離
間葉系幹細胞は、当業界で知られる任意の方法に従い、例えば患者の骨髄または末梢血から、単離することができる。例えば、骨髄穿刺液を、ヘパリンを含むシリンジに集める。細胞を、パーコール(商標)を用いて洗浄し、遠心分離する。血液細胞、肝細胞、間質細胞、マクロファージ、マスト細胞、および胸腺細胞などの細胞を、パーコール(商標)を用いて分離する。細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(低グルコース)で培養する(Pittinger MF, Mackay AM, Beck SC et al., Science 1999; 284:143-147)。
ゲノム編集
ゲノム編集は、一般的には、ゲノムのヌクレオチド配列を、好ましくは正確な、または予め決められた方法で、改変するプロセスを指す。本明細書に記載されるゲノム編集の方法の例には、部位特異的ヌクレアーゼを用いて、デオキシリボ核酸(DNA)をゲノム上の正確な標的位置で切断し、それによりゲノム内の特定の位置に2本鎖または1本鎖DNA切断を作製する方法が含まれる。これらの切断は、相同配向型修復(HDR)および非相同末端結合(NHEJ)などの、天然の、内因性細胞内プロセスによって、修復され得、また、通常は修復され、最近Cox et al., Nature Medicine 21(2), 121-31 (2015)において概説された。これら2つの主なDNA修復プロセスは、代替経路のファミリーからなる。NHEJは、2本鎖切断で生じたDNA末端を、時にヌクレオチド配列の欠損または付加を伴って、直接的に連結させ、遺伝子発現を破壊または増強し得る。HDRは、規定のDNA配列を切断ポイントに挿入するための鋳型として、相同配列、またはドナー配列を利用する。相同配列は、姉妹染色分体などの、内因性ゲノム内に存在し得る。あるいは、ドナーは、プラスミド、1本鎖オリゴヌクレオチド、2本鎖オリゴヌクレオチド、デュプレックスオリゴヌクレオチドまたはウイルスなどの外因性核酸であってよく、これは、ヌクレアーゼ切断遺伝子座と高い相同性を有する領域を有するが、切断された標的遺伝子座に組み込むことができる欠失を含むさらなる配列または配列の変化もまた含有することができる。第三の修復メカニズムは、「代替的NHEJ」とも呼ばれる、マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)であり、ここでは、小さな欠失および挿入が切断部位で生じ得る点において、遺伝子上の結果がNHEJと同様である。MMEJは、DNA切断部位に隣接する数個の塩基対の相同配列を利用することで、より好ましいDNA末端修復結果を引き起こし、最近の報告では、本プロセスの分子メカニズムをさらに解明している;例えば、Cho and Greenberg, Nature 518, 174-76 (2015); Kent et al. Nature Structural and Molecular Biology, Adv. Online doi:10.1038/nsmb.2961(2015); Mateo's-Gomez et al., Nature 518, 254-57 (2015); Ceccaldi et al., Nature 528, 258-62 (2015)を参照されたい。ある場合には、DNA切断部位での潜在的なマイクロホモロジーの解析に基づき、修復の可能性が高いことを予測することが可能であろう。
これらのゲノム編集メカニズムはそれぞれ、所望のゲノム変化を作製するために用いることができる。ゲノム編集プロセスのあるステップは、意図された変異の部位にできるだけ近い標的遺伝子座において、1つまたは2つのDNA切断を作製することであり、2つのDNA切断は、2本鎖切断として、または2つの1本鎖切断としてである。これは、本明細書に記載および例示されるように、部位特異的ポリペプチドの使用を通じて達成することができる。
DNAエンドヌクレアーゼなどの、部位特異的ポリペプチドは、例えばゲノムDNAなどの核酸に、2本鎖切断または1本鎖切断を導入することができる。2本鎖切断は、細胞の内因性DNA修復経路(例えば、相同性依存修復または非相同末端結合または代替的非相同末端結合(A−NHEJ)またはマイクロホモロジー媒介末端結合)を刺激することができる。NHEJは、相同な鋳型を必要とすることなく、切断された標的核酸を修復できる。これは時に、切断部位において、標的核酸に小さな欠失または挿入を引き起こし得、遺伝子発現の破壊または変更につながり得る。HDRは、相同な修復用鋳型またはドナーが利用可能である場合に、生じ得る。相同なドナー鋳型は、標的核酸切断部位に隣接する配列に相同な配列を含む。姉妹染色分体は、一般的に、修復用鋳型として、細胞に用いられる。しかしながら、ゲノム編集の目的では、修復用鋳型は、プラスミド、デュプレックスオリゴヌクレオチド、1本鎖オリゴヌクレオチド、2本鎖オリゴヌクレオチド、またはウイルスの核酸などの、外因性核酸としてしばしば供給される。外因性ドナー鋳型では、さらなる、または、変更された核酸配列もまた標的遺伝子座に組み込まれるように、ホモロジーの隣接領域の間に、さらなる核酸配列(例えばトランスジーン)または改変(例えば単一または複数の塩基変化または欠失)を導入することが一般的である。MMEJは、小さな欠失および挿入が切断部位で起こり得る点で、NHEJと同様の遺伝子上の結果を生じる。MMEJは、切断部位に隣接する数個の塩基対の相同配列を利用して、好ましい末端結合DNA修復の結果を生み出す。ある場合には、ヌクレアーゼ標的領域において、潜在的なマイクロホモロジーの解析に基づいて、可能性のある修復結果を予測することが可能であり得る。
従って、ある場合において、相同組換えは、外因性ポリヌクレオチド配列を標的核酸切断部位に挿入するために用いられる。外因性ポリヌクレオチド配列は、本明細書において、ドナーポリヌクレオチド(またはドナーまたはドナー配列またはポリヌクレオチドドナー鋳型)と呼ばれる。いくつかの態様において、ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部、ドナーポリヌクレオチドのコピー、またはドナーポリヌクレオチドのコピーの一部が、標的核酸切断部位に挿入される。いくつかの態様において、ドナーポリヌクレオチドは外因性ポリヌクレオチド配列、すなわち、標的核酸切断部位で天然に生じない配列である。
NHEJおよび/またはHDRによる標的DNAの改変は、例えば、変異、欠失、変更、組み込み、遺伝子修正、遺伝子置換、遺伝子タギング、トランスジーン挿入、ヌクレオチド欠失、遺伝子破壊、転座および/または遺伝子変異につながり得る。ゲノムDNAの欠失および非天然核酸のゲノムDNAへの組み込みのプロセスは、ゲノム編集の例である。
CRISPRエンドヌクレアーゼシステム
CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)ゲノム遺伝子座は、多くの原核生物(例えば、細菌(bacteria)または古細菌(古細菌))のゲノムにおいて見つけることができる。原核生物において、CRISPR座位は、ウイルスやファージなどの外来性の侵入者から原核生物を守るのを手助けする、一種の免疫システムとして機能する産物をコードする。CRISPR座位の機能には、3つの段階がある:新規配列のCRISPR座位への組み込み、CRISPR RNA (crRNA)の発現、および外来性の侵入者である核酸のサイレンシングである。5つのタイプのCRISPRシステム(TypeI、TypeII、TypeIII、TypeU、およびTypeV)が特定されている。
CRISPR座位には、「リピート」と呼ばれる、多くの短い反復配列が含まれる。リピートは、発現される際、二次ヘアピン構造(例えばヘアピン)を形成し、かつ/または、非構造の1本鎖配列を含む。リピートは、たいてい、クラスターで生じ、しばしば種間で分枝する。リピートは、「スペーサー」と呼ばれる特有の介在配列が、規則的に間を介しており、リピート−スペーサー−リピート遺伝子座構造を生じる。スペーサーは、既知の外来性の侵入者の配列に、同一であるか、あるいは、高い相同性を有する。スペーサー−リピート単位は、crisprRNA(crRNA)をコードし、成熟型のスペーサー−リピート単位へとプロセシングされる。crRNAは「シード」、すなわち、標的核酸を標的とすることに関連するスペーサー配列を含む(原核生物における天然型では、スペーサー配列は外来性の侵入者の核酸を標的とする)。スペーサー配列は、crRNAの5’または3’末端に位置する。
CRISPR座位はまた、CRISPR関連(CRISPR Associated(Cas))遺伝子をコードするポリヌクレオチド配列を含む。Cas遺伝子は、原核生物において、crRNA機能の生合成および干渉の段階に関連している。いくつかのCas遺伝子は、相同な、二次および/または三次構造を含む。
TypeII CRISPRシステム
天然のTypeII CRISPRシステムにおけるcrRNA生合成は、トランス活性化型CRISPR RNA(tracrRNA)を必要とする。tracrRNAは、内因性RNaseIIIにより改変され、その後、pre−crRNA配列のcrRNAリピートにハイブリダイズする。内因性RNaseIIIは、pre−crRNAの切断に用いられる。切断されたcrRNAは、エキソリボヌクレアーゼトリミングを受け、成熟crRNA形態を生産する(例えば、5’トリミング)。tracrRNAはcrRNAにハイブリダイズしたままであり、tracrRNAおよびcrRNAは部位特異的ポリペプチド(例えば、Cas9)に結合している。crRNA-tracrRNA−Cas9複合体のcrRNAは、該複合体を、crRNAがハイブリダイズできる標的核酸へと導く。crRNAの標的核酸へのハイブリダイゼーションは、標的核酸切断についてCas9を活性化する。TypeII CRISPRシステムにおける標的核酸は、ロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる。実際、PAMは、部位特異的ポリペプチド(例えば、Cas9)の標的核酸への結合を容易にするのに不可欠である。TypeIIシステム(NmeniまたはCASS4とも呼ばれる)は、さらに、TypeII−A(CASS4)およびII−B(CASS4a)に細分される。Jinek et al., Science, 337(6096):816-821 (2012) により、CRISPR/Cas9システムが、RNAプログラム可能なゲノム編集にとって有用であることが示され、また、国際特許出願公開番号WO2013/176772により、部位特異的遺伝子編集のためのCRISPR/Casエンドヌクレアーゼシステムの膨大な数の実施例および応用が提供されている。
TypeV CRISPRシステム
TypeV CRISPRシステムは、TypeIIシステムとの、いくつかの重要な違いを有する。例えば、Cpf1は単一のRNAが誘導するエンドヌクレアーゼであり、TypeIIシステムとは対照的に、tracrRNAを欠く。実際、Cpf1関連CRISPRアレイは、さらなるトランス活性化型tracrRNAを必要とせず、成熟crRNAへとプロセシングされる。TypeV CRISPRアレイは、42−44ヌクレオチドの長さの短い成熟crRNAにプロセシングされ、各成熟crRNAは19ヌクレオチドのダイレクトリピートで始まり、23−25ヌクレオチドのスペーサー配列が続く。対照的に、TypeIIシステムの成熟crRNAは、20−24ヌクレオチドのスペーサー配列で始まり、約22ヌクレオチドのダイレクトリピートが続く。また、Cpf1は、TypeIIシステムの標的DNAに続くGリッチPAMとは対照的な、短いTリッチPAMが先行する標的DNAを、Cpf1−crRNA複合体が効率的に切断するような、Tリッチプロトスペーサー隣接モチーフを利用する。従って、TypeVシステムはPAMから遠い位置で切断するが、TypeIIシステムはPAMに隣接した位置で切断する。さらに、TypeIIシステムとは対照的に、Cpf1は4または5個のヌクレオチドの5’突出を有する、付着DNA2本鎖切断を介して、DNAを切断する。TypeIIシステムは、平滑2本鎖切断を介して、切断する。TypeIIシステムと同様に、Cpf1は、予測されるRuvC様エンドヌクレアーゼドメインを含有するが、TypeIIシステムと対照的に、第二NHNエンドヌクレアーゼドメインを含まない。
Cas遺伝子/ポリペプチドおよびプロトスペーサー隣接モチーフ
代表的なCRISPR/Casポリペプチドには、Fonfara et al., Nucleic Acids Research, 42: 2577-2590 (2014)の図1に記載される、Cas9ポリペプチドが含まれる。CRISPR/Cas遺伝子の命名システムは、Cas遺伝子が発見されて以来、大幅な書き換えを行った。上記のFonfaraの図5は、様々な種のCas9ポリペプチドに対するPAM配列を提供している。
部位特異的ポリペプチド
部位特異的ポリペプチドは、DNAを切断するためにゲノム編集で用いられるヌクレアーゼである。部位特異的ポリペプチドは、1つ以上のポリペプチド、または、ポリペプチドをコードする1つ以上のmRNAのいずれかとして、細胞または患者に投与され得る。
CRISPR/CasまたはCRISPR/Cpf1システムに関連して、部位特異的ポリペプチドは、ガイドRNAに結合することができ、次に、ガイドRNAは、該ポリペプチドが指向する標的DNA中の部位を特定する。本明細書におけるCRISPR/CasまたはCRISPR/Cpf1システムの態様において、部位特異的ポリペプチドは、DNAエンドヌクレアーゼなどのエンドヌクレアーゼである。
いくつかの態様において、部位特異的ポリペプチドは複数の核酸切断(すなわち、ヌクレアーゼ)ドメインを含む。2つ以上の核酸切断ドメインは、リンカーを介して連結することができる。いくつかの態様において、リンカーは可動性リンカーを含む。リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40以上の長さのアミノ酸を含んでよい。
天然の野生型Cas9酵素は、2つのヌクレアーゼドメイン、HNHヌクレアーゼドメイン、およびRuvCドメインを含む。本明細書において、「Cas9」は、天然のCas9と組換え型のCas9との両方を指す。本明細書で企図されるCas9酵素は、HNHもしくはHNH様ヌクレアーゼドメイン、および/またはRuvCもしくはRuvC様ヌクレアーゼドメインを含む。
HNHまたはHNH様ドメインは、McrA様フォールドを含む。HNHまたはHNH様ドメインは、2つの逆平行βストランドおよび1つのαヘリックスを含む。HNHまたはHNH様ドメインは、金属結合部位(例えば、二価カチオン結合部位)を含む。HNHまたはHNH様ドメインは、標的核酸の1本鎖を切断することができる(例えば、crRNA標的鎖の相補鎖)。
RuvCまたはRuvC様ドメインは、RNaseHまたはRNaseH−様フォールドを含む。RuvC/RNaseHドメインは、RNAおよびDNAの両方に作用することを含む、多様な核酸ベースの機能に関与している。RNaseHドメインは、複数のαヘリックスに囲まれた5βストランドを含む。RuvC/RNaseHまたはRuvC/RNaseH様ドメインは、金属結合部位(例えば、二価カチオン結合部位)を含む。RuvC/RNaseHまたはRuvC/RNaseH様ドメインは、標的核酸の1本鎖(例えば、2本鎖標的DNAの非相補鎖)を切断することができる。
部位特異的ポリペプチドは、核酸、例えばゲノムDNAに、1本鎖切断または1本鎖切断を導入することができる。2本鎖切断は、細胞の内因性DNA修復経路を刺激することができる(例えば、相同性依存修復(HDR)または非相同末端結合(NHEJ)または代替的非相同末端結合(A−NHEJ)またはマイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ))。NHEJは、相同な鋳型を必要とすることなく、切断された標的核酸を修復できる。これは、時に、標的核酸の切断部位において、小さな欠失および挿入(インデル)を生じ、遺伝子発現の破壊または変更につながり得る。HDRは、相同な修復用鋳型、つまりドナーが利用可能である場合に、起こり得る。相同なドナー鋳型は、標的核酸切断部位に隣接する配列相同な配列を含む。姉妹染色分体は、一般的に、細胞により、修復用鋳型として用いられる。しかし、ゲノム編集の目的では、修復用鋳型はしばしば、プラスミド、デュプレックスオリゴヌクレオチド、1本鎖オリゴヌクレオチドまたはウイルスの核酸などの、外因性核酸として、供給される。外因性ドナー鋳型では、ホモロジーの隣接領域の間にさらなる核酸配列(導入遺伝子など)または改変(単一または複数の塩基変化または欠失など)を導入して、さらなる核酸配列、または、改変された核酸配列もまた、標的遺伝子座に組み込まれる。MMEJは、小さな欠失および挿入が切断部位で起こり得るという点で、NHEJと同様の遺伝子上の結果を生じる。MMEJは、切断部位に隣接する数個の塩基対の相同配列を利用して、好ましい末端結合DNA修復の結果を生み出す。
ある場合には、ヌクレアーゼ標的領域において、潜在的なマイクロホモロジーの解析に基づいて、可能性のある修復結果を予測することが可能であり得る。
従って、ある場合において、相同組換えは、外因性ポリヌクレオチド配列を標的核酸切断部位に挿入するために用いられる。外因性ポリヌクレオチド配列は、本明細書では、ドナーポリヌクレオチド(またはドナーまたはドナー配列)と呼ばれる。いくつかの態様において、ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部、ドナーポリヌクレオチドのコピー、またはドナーポリヌクレオチドのコピーの一部が、標的核酸切断部位に挿入される。いくつかの態様において、ドナーポリヌクレオチドは、外因性ポリヌクレオチド配列であり、すなわち、標的核酸切断部位にて天然に生じない配列である。
NHEJおよび/またはHDRによる標的DNAの改変は、例えば、変異、欠失、変更、組み込み、遺伝子修正、遺伝子置換、遺伝子タギング、トランスジーン挿入、ヌクレオチド欠失、遺伝子破壊、転座および/または遺伝子変異につながり得る。ゲノムDNAの欠失、および、非天然の核酸のゲノムDNAへの組み込みのプロセスは、ゲノム編集の例である。
いくつかの態様において、部位特異的ポリペプチドは、野生型の代表的な部位特異的ポリペプチド[例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来のCas9、US2014/0068797の配列番号8、またはSapranauskas et al., Nucleic Acids Res, 39(21): 9275-9282 (2011)]、および他の様々な部位特異的ポリペプチドに、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
いくつかの態様において、部位特異的ポリペプチドは、野生型の代表的な部位特異的ポリペプチド(化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来のCas9、上記)のヌクレアーゼドメインに、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
いくつかの態様において、部位特異的ポリペプチドは、野生型部位特異的ポリペプチド(例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来のCas9、上記)に少なくとも70、75、80、85、90、95、97、99、または100%同一性である、10を超える連続アミノ酸を含む。いくつかの態様において、部位特異的ポリペプチドは、野生型部位特異的ポリペプチド(例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来のCas9、上記)に、最大で70、75、80、85、90、95、97、99、または100%同一性である、10を超える連続アミノ酸を含む。いくつかの態様において、部位特異的ポリペプチドは、野生型部位特異的ポリペプチド(例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来のCas9、上記)に、少なくとも70、75、80、85、90、95、97、99、または100%同一性である、10を超える連続アミノ酸を、部位特異的ポリペプチドのHNHヌクレアーゼドメインに含む。いくつかの態様において、部位特異的ポリペプチドは、野生型部位特異的ポリペプチド(例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来のCas9、上記)に、最大で70、75、80、85、90、95、97、99、または100%同一性である、10を超える連続アミノ酸を、部位特異的ポリペプチドのHNHヌクレアーゼドメインに含む。いくつかの態様において、部位特異的ポリペプチドは、野生型部位特異的ポリペプチド(例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来のCas9、上記)に、少なくとも70、75、80、85、90、95、97、99、または100%同一性である、10を超える連続アミノ酸を、部位特異的ポリペプチドのRuvCヌクレアーゼドメインに含む。いくつかの態様において、部位特異的ポリペプチドは、野生型部位特異的ポリペプチド(例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来のCas9、上記)に、最大で70、75、80、85、90、95、97、99、または100%同一性である、10を超える連続アミノ酸を、部位特異的ポリペプチドのRuvCヌクレアーゼドメインに含む。
いくつかの態様において、部位特異的ポリペプチドは、野生型の代表的な部位特異的ポリペプチドの改変型を含む。野生型の代表的な部位特異的ポリペプチドの改変型は、部位特異的ポリペプチドの核酸切断活性を低減させる変異を含む。いくつかの態様において、野生型の代表的な部位特異的ポリペプチドの改変型は、野生型の代表的な部位特異的ポリペプチド(例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来のCas9、上記)の90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満または1%未満の核酸切断活性を有する。部位特異的ポリペプチドの改変型は、実質的な核酸切断活性を有さなことがあり得る。部位特異的ポリペプチドが実質的な核酸切断活性を有さない改変型である場合、本明細書では、「酵素的に不活性」と呼ばれる。
いくつかの態様において、部位特異的ポリペプチドの改変型は、標的核酸上の1本鎖切断(SSB)を誘導することができるような変異を含む(例えば、2本鎖標的核酸の糖−リン酸骨格の1本のみを切断することによる)を含む。いくつかの態様において、変異は、野生型部位特異的ポリペプチド(例えば, 化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来のCas9、上記)の複数の核酸切断ドメインのうち1つ以上において、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満または1%未満の核酸切断活性を生じる。いくつかの態様において、変異は、標的核酸の相補鎖の切断能力を保持するが、標的核酸の非相補鎖の切断能力を減少させる、複数の核酸切断ドメインのうち1つ以上を生じる。いくつかの態様において、変異は、標的核酸の非相補鎖の切断能力を保持するが、標的核酸の相補鎖の切断能力を減少させる、複数の核酸切断ドメインのうち1つ以上を生じる。例えば、野生型代表的な化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9ポリペプチドにおける残基、例えば、Asp10、His840、Asn854およびAsn856を、複数の核酸切断ドメイン(例えば、ヌクレアーゼドメインs)のうち1つ以上を不活性化させるように変異させる。いくつかの態様において、変異させた残基は、野生型代表的な化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9ポリペプチドにおいて、残基Asp10、His840、Asn854およびAsn856に対応している(例えば、配列および/または構造のアラインメントによって決定される)。変異の非限定的な例には、D10A、H840A、N854AまたはN856Aが含まれる。当業者であれば、アラニン置換以外の変異が好適であることを認識するであろう。
いくつかの態様において、D10A変異を、実質的にDNA切断活性を失った部位特異的ポリペプチドを生産するために、H840A、N854A、またはN856A変異のうちの1つ以上と組み合わせる。いくつかの態様において、H840A変異を、実質的にDNA切断活性を失った部位特異的ポリペプチドを生産するために、D10A、N854A、またはN856A変異のうちの1つ以上と組み合わせる。いくつかの態様において、N854A変異を、実質的にDNA切断活性を失った部位特異的ポリペプチドを生産するために、H840A、D10A、またはN856A変異のうちの1つ以上と組み合わせる。いくつかの態様において、N856A変異を、実質的にDNA切断活性を失った部位特異的ポリペプチドを生産するために、H840A、N854A、またはD10A変異のうちの1つ以上と組み合わせる。実質的に不活性のヌクレアーゼドメインを1つ含む部位特異的ポリペプチドは、「ニッカーゼ」と呼ばれる。
RNA誘導エンドヌクレアーゼ(例えばCas9)のニッカーゼ変異体は、CRISPR媒介ゲノム編集の特異性を増加させるために用いることができる。野生型Cas9は、通常、標的配列(例えば、内因性ゲノム遺伝子座)の特定の約20ヌクレオチド配列とハイブリダイズするように設計された単一のガイドRNAによって導かれる。しかし、いくつかのミスマッチが、ガイドRNAと標的遺伝子座との間で許容され得、標的部位における必要なホモロジーの長さを、例えば、わずか13ntのホモロジーまで効果的に減少させ、それにより、標的ゲノムの他の場所のCRISPR/Cas9複合体による結合および2本鎖核酸切断(オフターゲット切断としても知られる)の可能性が上昇する。Cas9のニッカーゼ変異体はそれぞれ1本鎖のみを切断するので、2本鎖切断を作製するためには、一対のニッカーゼが近接して標的核酸の反対鎖に結合して、それにより一対ニックを作製することが必要であり、これは2本鎖切断と同等である。これは、2つの別々のガイドRNA(各ニッカーゼに1つずつ)が、近接して、かつ標的核酸の反対側の鎖に結合することを必要とする。この必要性は、2本鎖切断が起こるのに必要な最小のホモロジーの長さを本質的に2倍にし、2本鎖切断現象がゲノムの他の場所で起こる可能性を減少させ、ゲノムの他の場所では、2つのガイドRNA部位(存在する場合)は、2本鎖切断が形成できるように互いに十分接近している可能性は低い。当業界で記載されるように、ニッカーゼはまたは、NHEJに対してHDRを促進するために用いることができる。HDRは、所望の変化を効果的に媒介する特定のドナー配列の使用を通じて、ゲノム中の標的部位に、選択された変化を導入するために使用することができる。遺伝子編集で使用するための様々なCRISPR/Casシステムの説明をき、例えば、国際特許出願公開番号WO2013/176772、およびNature Biotechnology 32, 347-355 (2014)、およびそれらに引用されている参考文献において、見出すことができる。
企図される変異には、置換、付加、および欠失、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの態様において、変異は、変異されるアミノ酸をアラニンに変換させる。いくつかの態様において、変異は、変異されるアミノ酸を別のアミノ酸(例えば、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リシンまたはアルギニン)に変換させる。いくつかの態様において、変異は、変異されるアミノ酸を非天然アミノ酸(例えば、セレノメチオニン)に変換させる。いくつかの態様において、変異は、変異されるアミノ酸をアミノ酸模倣体(例えば、リン酸模倣体)に変換させる。いくつかの態様において、変異は、保存的変異である。例えば、変異は、変異されるアミノ酸を、サイズ、形状、電荷、極性、コンホーメーションが類似しているアミノ酸、および/または、変異されるアミノ酸の回転異性体に変換することができる(例えば、システイン/セリン変異、リシン/アスパラギン変異、ヒスチジン/フェニルアラニン変異)。いくつかの態様において、変異は、読み枠のシフト、および/または未成熟終止コドンの作製を引き起こす。いくつかの態様において、変異は、1つ以上の遺伝子の発現に影響する、遺伝子または遺伝子座の調節領域に変化を引き起こす。
いくつかの態様において、部位特異的ポリペプチド(例えば、変異体、変異により酵素的に不活性な、および/または、条件的に酵素的に不活性な、部位特異的ポリペプチド)は、核酸を標的とする。いくつかの態様において、部位特異的ポリペプチド(例えば、変異体、変異により酵素的に不活性な、および/または、条件的に酵素的に不活性な、エンドリボヌクレアーゼ)は、DNAを標的とする。いくつかの態様において、部位特異的ポリペプチド(例えば、変異体、変異により酵素的に不活性な、および/または、条件的に酵素的に不活性な、エンドリボヌクレアーゼ)は、RNAを標的とする。
いくつかの態様において、部位特異的ポリペプチドは、1つ以上の非天然の配列を含む(例えば、部位特異的ポリペプチドは融合タンパク質である)。
いくつかの態様において、部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes))由来のCas9に、少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、核酸結合ドメイン、および2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメインおよびRuvCドメイン)を含む。
いくつかの態様において、部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes))由来のCas9に、少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、および2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメインおよびRuvCドメイン)を含む。
いくつかの態様において、部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes))由来のCas9に、少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、および2つの核酸切断ドメインを含み、ここでは、核酸切断ドメインの1つまたは両方が、細菌(例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes))由来のCas9由来のヌクレアーゼドメインに、少なくとも50%のアミノ酸同一性を含む。
いくつかの態様において、部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes))由来のCas9に、少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメインおよびRuvCドメイン)、および非天然の配列(例えば、核移行シグナル)、または、部位特異的ポリペプチドを非天然の配列に連結させるリンカーを含む。
いくつかの態様において、部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes))由来のCas9に、少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、2つの核酸切断ドメイン (すなわち、HNHドメインおよびRuvCドメイン)を含み、ここでは、部位特異的ポリペプチドが、核酸切断ドメインの1つまたは両方に、ヌクレアーゼドメインの切断活性を少なくとも50%低減させる変異を含む、
いくつかの態様において、部位特異的ポリペプチドは、細菌(例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes))由来のCas9に、少なくとも15%のアミノ酸同一性を含むアミノ酸配列、および2つの核酸切断ドメイン(すなわち、HNHドメインおよびRuvCドメイン)を含み、ここでは、ヌクレアーゼドメインの1つがアスパラギン酸10の変異を含み、および/または、ヌクレアーゼドメインの1つがヒスチジン840の変異を含み、および、該変異がヌクレアーゼドメインの切断活性を少なくとも50%低減させる。
本発明のいくつかの態様において、1つ以上の部位特異的ポリペプチド、例えばDNAエンドヌクレアーゼは、ゲノム上の特定の遺伝子座で、1つの2本鎖切断を共にもたらす2つのニッカーゼを含むか、あるいは、ゲノム上の特定の遺伝子座で、2つの2本鎖切断を共にもたらす4つのニッカーゼを含む。あるいは、1つの部位特異的ポリペプチド、例えばDNAエンドヌクレアーゼは、ゲノム上の特定の遺伝子座で、1つの2本鎖切断をもたらす。
ゲノムを標的とする核酸
本開示は、結合したポリペプチド(例えば、部位特異的ポリペプチド)の活性を、標的核酸内の特異的標的配列に指向させることができる、ゲノムを標的とする核酸を提供する。いくつかの態様において、ゲノムを標的とする核酸はRNAである。ゲノムを標的とするRNAは、本明細書において、「ガイドRNA」または「gRNA」と呼ばれる。ガイドRNAは、少なくとも、目的の標的核酸配列にハイブリダイズするスペーサー配列と、CRISPRリピート配列とを含む。TypeIIシステムにおいて、gRNAはまた、tracrRNA配列と呼ばれる第二のRNAを含む。TypeIIガイドRNA(gRNA)において、CRISPRリピート配列とtracrRNA配列は、相互にハイブリダイズして、デュプレックス(デュプレックス)を形成する。TypeVガイドRNA(gRNA)において、crRNAはデュプレックスを形成する。両システムにおいて、デュプレックスは部位特異的ポリペプチドに結合し、その結果ガイドRNAおよび部位特異的ポリペプチドは、複合体を形成する。ゲノムを標的とする核酸は、部位特異的ポリペプチドと結合することにより、複合体に標的特異性を提供する。従って、ゲノムを標的とする核酸は、部位特異的ポリペプチドの活性を方向づける。
代表的なガイドRNAは、配列番号1−68,297、例えば配列番号54,860−68,297におけるスペーサー配列を含み、これらは、その標的配列および結合するCas9またはCpf1の切断部位のゲノム位置と共に示されており、ここでは、ゲノム位置はGRCh38/hg38ヒトゲノムアセンブリに基づいている。当業者であれば理解するように、各ガイドRNAは、そのゲノムを標的とする配列に相補的なスペーサー配列を含むように、設計される。例えば、配列番号1−68,297、例えば、配列番号54,860−68,297における各スペーサー配列は、単一RNAキメラまたはcrRNAに入れることができる(対応するtracrRNAに加えて)。Jinek et al., Science, 337, 816-821 (2012) and Deltcheva et al., Nature, 471, 602-607 (2011) を参照されたい。
いくつかの態様において、ゲノムを標的とする核酸は、二分子ガイドRNAである。いくつかの態様において、ゲノムを標的とする核酸は単分子ガイドRNAである。
二分子ガイドRNAは、2本のRNAの鎖を含む。第一の鎖は、5’から3’の方向に、場合により存在するスペーサー延長配列、スペーサー配列、および最小CRISPRリピート配列を含む。第二の鎖は、最小tracrRNA配列(最小CRISPRリピート配列に相補的な)、3’tracrRNA配列、および、場合により存在するtracrRNA延長配列を含む。
TypeIIシステムの単分子ガイドRNA(sgRNA)は、5’から3’の方向に、場合により存在するスペーサー延長配列、スペーサー配列、最小CRISPRリピート配列、単分子ガイドリンカー、最小tracrRNA配列、3’tracrRNA配列および場合により存在するtracrRNA延長配列を含む。場合により存在するtracrRNA延長配列は、ガイドRNAにさらなる機能性(例えば、安定性)を付与する要素を含み得る。単分子ガイドリンカーは、最小CRISPRリピートと、最小tracrRNA配列とを連結させ、ヘアピン構造を形成する。場合により存在するtracrRNA延長配列は、1つ以上のヘアピンを含む。
TypeVシステムの単分子ガイドRNA(sgRNA)は、5’から3’の方向に、最小CRISPRリピート配列およびスペーサー配列を含む。
実例として、CRISPR/Casシステムで用いられるガイドRNA、または他のより小さなRNAは、以下に例示され当業界で記載されるように、化学的手段により容易に合成することができる。化学合成手順は絶え間なく拡大しているが、高速液体クロマトグラフィー(PAGEなどのゲルの使用を避けるHPLC)などの手順によるこのようなRNAの精製は、ポリヌクレオチドの長さがおよそ百ヌクレオチドを大幅に超えて増加するにつれてより困難になる傾向がある。より長いRNAを産生するために用いられる1つの手法は、互いに連結された2つ以上の分子を生産することである。Cas9またはCpf1エンドヌクレアーゼをコードするRNAなどの、はるかに長いRNAは、酵素的に、より容易に産生される。当業界で記載されているように、RNAの化学合成および/または酵素的産生の間に、またはその後に、種々のタイプのRNA改変、例えば安定性を増強する、自然免疫応答の可能性または程度を低減する、および/または、他の特性を増強する改変が、導入され得る。
スペーサー延長配列
ゲノムを標的とする核酸のいくつかの態様において、スペーサー延長配列は、安定性を提供することができ、および/または、ゲノムを標的とする核酸の改変の位置を提供することができる。スペーサー延長配列は、オンターゲットまたはオフターゲットの、活性または特異性を改変することができる。いくつかの態様において、スペーサー延長配列が提供される。スペーサー延長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、1000、2000、3000、4000、5000、6000、または7000個以上を超えるヌクレオチドの長さを有してよい。スペーサー延長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000個以上を下回るヌクレオチドの長さを有してよい。いくつかの態様において、スペーサー延長配列は、10個未満のヌクレオチドの長さである。いくつかの態様において、スペーサー延長配列は、10〜30個のヌクレオチドの長さである。いくつかの態様において、スペーサー延長配列は、30〜70個のヌクレオチドの長さである。
いくつかの態様において、スペーサー延長配列は、別の部分(例えば、安定性調節配列、エンドリボヌクレアーゼ結合配列、リボザイム)を含む。いくつかの態様において、該部分は、核酸を標的とする核酸の安定性を減少、または増加させる。いくつかの態様において、該部分は、転写ターミネーターセグメント(すなわち、転写終結配列)である。いくつかの態様において、該部分は、真核細胞で機能する。いくつかの態様において、該部分は、原核細胞で機能する。いくつかの態様において、該部分は、真核細胞および原核細胞の両方で機能する。好適な部分の非限定的な例には、以下が含まれる:5’キャップ(例えば、7−メチルグアニル酸キャップ(m7 G))、リボスイッチ配列(例えば、安定性の制御、および/または、タンパク質およびタンパク質複合体によるアクセシビリティの制御を可能にする)、dsRNAデュプレックス(すなわち、ヘアピン)を形成する配列、細胞内位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体)にRNAを標的化させる配列、トラッキングを提供する改変または配列(例えば、蛍光分子への直接結合、蛍光検出を促進させる部分への結合、蛍光検出を可能にする配列など)、および/またはタンパク質(例えば、転写活性化因子、転写制御因子、DNAメチル化酵素、DNA脱メチル化酵素、ヒストンアセチル化酵素、ヒストン脱アセチル化酵素などを含む、DNAに作用するタンパク質)のための結合部位を提供する改変または配列。
スペーサー配列
スペーサー配列は、目的の標的核酸のある配列にハイブリダイズする。ゲノムを標的とする核酸のスペーサーは、配列特異的方法で、ハイブリダイゼーションを介して(すなわち、塩基対形成)、標的核酸と相互作用する。従って、スペーサーのヌクレオチド配列は、目的の標的核酸の配列によって変化する。
本明細書のCRISPR/Casシステムにおいて、スペーサー配列は、該システムで用いられるCas9酵素のPAMの5’に位置する標的核酸にハイブリダイズするように設計される。スペーサーは、標的配列に完全に適合してもよいし、あるいは、ミスマッチを有してもよい。各Cas9酵素は、標的DNA中で認識する特定のPAM配列を有する。例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)は、標的核酸中で、配列5’-NRG-3’を含むPAMを認識し、ここでは、RはAまたはGのいずれかを含み、Nha任意のヌクレオチドであり、かつ、Nはスペーサー配列が標的とする標的核酸配列の3’に直結している。
いくつかの態様において、標的核酸配列は20ヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、標的核酸は、20個未満のヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、標的核酸は、20個を超えるヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、標的核酸は、少なくとも、5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30個以上のヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、標的核酸は、最大で5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30個以上のヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、標的核酸配列は、PAMの第一ヌクレオチドの5’に直結する20塩基を含む。例えば、5’−NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNRG−3’を含む配列(配列番号68,298)において、標的核酸はNsに対応する配列を含み、ここでは、Nは任意のヌクレオチドであり、下線を引いたNRG配列は化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)のPAMである。
いくつかの態様において、標的核酸にハイブリダイズするスペーサー配列は、少なくとも約6ヌクレオチド(nt)の長さを有する。スペーサー配列は、少なくとも約6nt、少なくとも約10nt、少なくとも約15nt、少なくとも約18nt、少なくとも約19nt、少なくとも約20nt、少なくとも約25nt、少なくとも約30nt、少なくとも約35nt、または少なくとも約40nt、約6nt〜約80nt、約6nt〜約50nt、約6nt〜約45、約6nt〜約40、約6nt〜約35nt、約6nt〜約30nt、約6nt〜約25nt、約6nt〜約20nt、約6nt〜約19nt、約10nt〜約50nt、約10nt〜約45nt、約10nt〜約40nt、約10nt〜約35nt、約10nt〜約30nt、約10nt〜約25nt、約10nt〜約20nt、約10nt〜約19nt、約19nt〜約25nt、約19nt〜約30nt、約19nt〜約35nt、約19nt〜約40nt、約19nt〜約45nt、約19nt〜約50nt、約19nt〜約60nt、約20nt〜約25nt、約20nt〜約30nt、約20nt〜約35nt、約20nt〜約40nt、約20nt〜約45nt、約20nt〜約50nt、または約20nt〜約60ntである。いくつかの態様において、スペーサー配列は20ヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、スペーサーは19ヌクレオチドを含む。
いくつかの態様において、スペーサー配列と標的核酸との間の相補性パーセントは、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%である。いくつかの態様において、スペーサー配列と標的核酸との間の相補性パーセントは、最大約30%、最大約40%、最大約50%、最大約60%、最大約65%、最大約70%、最大約75%、最大約80%、最大約85%、最大約90%、最大約95%、最大約97%、最大約98%、最大約99%、または100%である。いくつかの態様において、スペーサー配列と標的核酸との間の相補性パーセントは、標的核酸の相補鎖の標的配列の、6個の連続する5’末端のヌクレオチドに対して、100%である。いくつかの態様において、スペーサー配列と標的核酸との間の相補性パーセントは、約20個の連続するヌクレオチドに対して、少なくとも60%である。スペーサー配列および標的核酸の長さは、1〜6個のヌクレオチドが異なり得、1つのバルジまたは複数のバルジと考えられ得る。
いくつかの態様において、スペーサー配列は、コンピュータープログラムを用いて設計または選択される。コンピュータープログラムは、例えば、予測される融解温度、二次構造形成、予測されるアニーリング温度、配列同一性、ゲノムの文脈(genomic context)、クロマチンアクセシビリティ、GC%、ゲノム発生の頻度(同一である配列の、あるいは、同様であるがミスマッチ、挿入または欠失の結果、1つ以上のスポットで変化している配列の)、メチル化状態、SNPの存在などの変数を用いることができる。
最小CRISPRリピート配列
いくつかの態様において、最小CRISPRリピート配列は、参照CRISPRリピート配列(例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来のcrRNA)に少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100% 配列同一性を有する配列である。
最小CRISPRリピート配列は、細胞内で最小tracrRNA配列にハイブリダイズできるヌクレオチドを含む。最小CRISPRリピート配列と最小tracrRNA配列とは、デュプレックス、すなわち、塩基対2本鎖構造を形成する。共に、最小CRISPRリピート配列と最小tracrRNA配列とは、部位特異的ポリペプチドに結合する。少なくとも、最小CRISPRリピート配列の一部は、最小tracrRNA配列にハイブリダイズする。いくつかの態様において、少なくとも最小CRISPRリピート配列の一部は、最小tracrRNA配列に対して、少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%相補的な配列を含む。いくつかの態様において、少なくとも最小CRISPRリピート配列の一部は、最小tracrRNA配列に対して、最大約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%相補的な配列を含む。
最小CRISPRリピート配列は、約7ヌクレオチドから約100ヌクレオチドの長さを有し得る。例えば、最小CRISPRリピート配列の長さは、約7ヌクレオチド(nt)〜約50nt、約7nt〜約40nt、約7nt〜約30nt、約7nt〜約25nt、約7nt〜約20nt、約7nt〜約15nt、約8nt〜約40nt、約8nt〜約30nt、約8nt〜約25nt、約8nt〜約20nt、約8nt〜約15nt、約15nt〜約100nt、約15nt〜約80nt、約15nt〜約50nt、約15nt〜約40nt、約15nt〜約30nt、または約15nt〜約25ntである。いくつかの態様において、最小CRISPRリピート配列は、およそ9ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様において、最小CRISPRリピート配列は、およそ12ヌクレオチドの長さである。
いくつかの態様において、最小CRISPRリピート配列は、少なくとも6、7、または8の連続したヌクレオチドに渡って、参照最小CRISPRリピート配列(例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来の野生型crRNA)に、少なくとも約60%同一である。例えば、最小CRISPRリピート配列は、少なくとも6、7、または8の連続したヌクレオチドに渡って、参照最小CRISPRリピート配列に、少なくとも約65%同一、少なくとも約70%同一、少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約98%同一、少なくとも約99%同一または100%同一である。
最小tracrRNA配列
いくつかの態様において、最小tracrRNA配列は、参照tracrRNA配列(例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来の野生型tracrRNA)に、少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%の配列同一性を有する配列である。
最小tracrRNA配列は、細胞内で最小CRISPRリピート配列にハイブリダイズできるヌクレオチドを含む。最小tracrRNA配列と最小CRISPRリピート配列とは、デュプレックス、すなわち、塩基対2本鎖構造を形成する。共に、最小tracrRNA配列と最小CRISPRリピートとは、部位特異的ポリペプチドに結合する。少なくとも、最小tracrRNA配列の一部は、最小CRISPRリピート配列にハイブリダイズすることができる。いくつかの態様において、最小tracrRNA配列は、最小CRISPRリピート配列に、少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%相補的である。
最小tracrRNA配列は、約7ヌクレオチドから約100ヌクレオチドの長さを有し得る。例えば、最小tracrRNA配列は、約7ヌクレオチドs(nt)〜約50nt、約7nt〜約40nt、約7nt〜約30nt、約7nt〜約25nt、約7nt〜約20nt、約7nt〜約15nt、約8nt〜約40nt、約8nt〜約30nt、約8nt〜約25nt、約8nt〜約20nt、約8nt〜約15nt、約15nt〜約100nt、約15nt〜約80nt、約15nt〜約50nt、約15nt〜約40nt、約15nt〜約30nt、または約15nt〜約25ntの長さであり得る。いくつかの態様において、最小tracrRNA配列は、およそ9ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様において、最小tracrRNA配列は、および12ヌクレオチドである。いくつかの態様において、最小tracrRNAは、上記のJinek et al.に記載される、23−48ntのtracrRNAからなる。
いくつかの態様において、最小tracrRNA配列は、少なくとも6、7、または8の連続したヌクレオチドに渡って、参照最小tracrRNA(例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来の野生型tracrRNA)配列に対して、少なくとも約60%同一である。例えば、最小tracrRNA配列は、少なくとも6、7、または8の連続したヌクレオチドに渡って、参照最小tracrRNA配列に対して、少なくとも約65%同一、約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一、約95%同一、約98%同一、約99%同一または100%同一である。
いくつかの態様において、最小CRISPR RNAと最小tracrRNAとの間のデュプレックスは、二重らせんを含む。いくつかの態様において、最小CRISPR RNAと最小tracrRNAとの間のデュプレックスは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上のヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、最小CRISPR RNAと最小tracrRNAとの間のデュプレックスは、最大約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上のヌクレオチドを含む。
いくつかの態様において、デュプレックスはミスマッチ(すなわち、デュプレックスの2本鎖が100%相補的ではない)を含む。いくつかの態様において、デュプレックスは少なくとも約1、2、3、4、または5個以上のミスマッチを含む。いくつかの態様において、デュプレックスは最大約1、2、3、4、または5個以上のミスマッチを含む。いくつかの態様において、デュプレックスはわずか2個のミスマッチを含む。
バルジ
いくつかの態様において、最小CRISPR RNAと最小tracrRNAとの間のデュプレックスには「バルジ」が存在する。バルジは、デュプレックス内の、ヌクレオチドの非対合領域である。いくつかの態様において、バルジはデュプレックスの部位特異的ポリペプチドへの結合に寄与している。バルジは、デュプレックスの一方の側に、非対合5’−XXXY−3’を含み、ここでXは任意のプリンであり、Yは反対鎖上のヌクレオチドとゆらぎ対を形成し得るヌクレオチドを含み、かつ、デュプレックスの他方の側に、非対合ヌクレオチド領域を含む。デュプレックスの両側における非対合ヌクレオチドの数は、異なり得る。
一例として、バルジは、バルジの最小CRISPRリピート鎖上に、非対合プリン(例えば、アデニン)を含む。いくつかの態様において、バルジは、バルジの最小tracrRNA配列鎖の非対合5’−AAGY−3’を含み、ここでYは最小CRISPRリピート上のヌクレオチドとゆらぎ塩基対を形成し得るヌクレオチドを含む。
いくつかの態様において、デュプレックスの最小CRISPRリピート側のバルジは、少なくとも1、2、3、4、または5個以上の非対合ヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、デュプレックスの最小CRISPRリピート側のバルジは、最大1、2、3、4、または5個以上の非対合ヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、デュプレックスの最小CRISPRリピート側のバルジは、1個の非対合ヌクレオチドを含む。
いくつかの態様において、デュプレックスの最小tracrRNA配列側のバルジは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上の非対合ヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、デュプレックスの第二の側のバルジ(例えば、デュプレックスの最小tracrRNA配列側)は、4つの非対合ヌクレオチドを含む。
いくつかの態様において、バルジは少なくとも1つのゆらぎ塩基対形成を含む。いくつかの態様において、バルジは最大1つのゆらぎ塩基対形成を含む。いくつかの態様において、バルジは少なくとも1個のプリンヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、バルジは少なくとも3個のプリンヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、バルジ配列は少なくとも5個のプリンヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、バルジ配列は少なくとも1個のグアニンヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、バルジ配列は少なくとも1つのアデニンヌクレオチドを含む。
ヘアピン
最小tracrRNA
様々な態様において、1つ以上のヘアピンが、3’tracrRNA配列の、最小tracrRNAの3’側に位置している。
いくつかの態様において、ヘアピンは、最小CRISPRリピートと最小tracrRNA配列とのデュプレックスにおける、最後の対のヌクレオチドの3’から、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、または20個以上のヌクレオチドから開始する。いくつかの態様において、ヘアピンは、最小CRISPRリピートと最小tracrRNA配列とのデュプレックスにおける、最後の対のヌクレオチドの3’から、最大約1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個以上のヌクレオチドから開始することができる。
いくつかの態様において、ヘアピンは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、または20個以上の連続したクレオチドを含む。いくつかの態様において、ヘアピンは、最大約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15,以上の連続したヌクレオチドを含む。
いくつかの態様において、ヘアピンは、CCジヌクレオチド(すなわち、2つの連続したシトシンヌクレオチド)を含む。
いくつかの態様において、ヘアピンはデュプレックスのヌクレオチド(例えば、ヘアピン中の、ハイブリダイズして一緒になったヌクレオチド)を含む。例えば、ヘアピンは、3’tracrRNA配列のヘアピンデュプレックス中の、GGジヌクレオチドにハイブリダイズしたCCジヌクレオチドを含む。
1つ以上のヘアピンが、部位特異的ポリペプチドのガイドRNA相互作用領域と、相互作用し得る。
いくつかの態様において、2つ以上のヘアピンが存在し、いくつかの態様において、3つ以上のヘアピンが存在する。
3’tracrRNA配列
いくつかの態様において、3’tracrRNA配列は、参照tracrRNA配列(例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来のtracrRNA)に少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または100%配列同一性を有する配列を含む。
いくつかの態様において、約6ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドの長さを有する。例えば、3’tracrRNA配列は、約6ヌクレオチド(nt)〜約50nt、約6nt〜約40nt、約6nt〜約30nt、約6nt〜約25nt、約6nt〜約20nt、約6nt〜約15nt、約8nt〜約40nt、約8nt〜約30nt、約8nt〜約25nt、約8nt〜約20nt、約8nt〜約15nt、約15nt〜約100nt、約15nt〜約80nt、約15nt〜約50nt、約15nt〜約40nt、約15nt〜約30nt、または約15nt〜約25ntの長さを有し得る。いくつかの態様において、3’tracrRNA配列は、およそ14ヌクレオチドの長さを有する。
いくつかの態様において、3’tracrRNA配列は、少なくとも6、7、または8の連続したヌクレオチドに渡って、参照3’tracrRNA配列(例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来の野生型3’tracrRNA配列)に、少なくとも約60%同一である。例えば、3’tracrRNA配列は、少なくとも6、7、または8の連続したヌクレオチドに渡って、参照3’tracrRNA配列(例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来の野生型3’tracrRNA配列)に、少なくとも約60%同一、約65%同一、約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一、約95%同一、約98%同一、約99%同一、または100%同一である。
いくつかの態様において、3’tracrRNA配列は、2つ以上のデュプレックスの領域(例えば、ヘアピン、ハイブリダイズした領域)を含む。いくつかの態様において、3’tracrRNA配列は、2つのデュプレックスの領域を含む。
いくつかの態様において、3’tracrRNA配列はステムループ構造を含む。いくつかの態様において、3’tracrRNAのステムループ構造は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15または20個以上のヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、3’tracrRNAのステムループ構造は、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個以上のヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、ステムループ構造は、機能性部分を含む。例えば、ステムループ構造は、アプタマー、リボザイム、タンパク質相互作用ヘアピン、CRISPRアレイ、イントロン、またはエクソンを含んでよい。いくつかの態様において、ステムループ構造は、少なくとも約1、2、3、4、または5個以上の機能性部分を含む。いくつかの態様において、ステムループ構造は、最大約1、2、3、4、または5個以上の機能性部分を含む。
いくつかの態様において、3’tracrRNA配列のヘアピンは、Pドメインを含む。いくつかの態様において、Pドメインは、ヘアピン中の2本鎖領域を含む。
tracrRNA延長配列
tracrRNAが単分子ガイドに関連していても、二分子ガイドに関連していても、tracrRNA延長配列は提供され得る。いくつかの態様において、tracrRNA延長配列は、約1ヌクレオチド〜約400ヌクレオチドの長さを有する。いくつかの態様において、tracrRNA延長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、または400ヌクレオチドを超える長さを有する。いくつかの態様において、tracrRNA延長配列は、約20〜約5000以上のヌクレオチドの長さを有する。いくつかの態様において、tracrRNA延長配列は、1000ヌクレオチドを超える長さを有する。いくつかの態様において、tracrRNA延長配列は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400以上のヌクレオチドを下回る長さを有する。いくつかの態様において、tracrRNA延長配列は、1000未満のヌクレオチドの長さを有し得る。いくつかの態様において、tracrRNA延長配列は、10未満のヌクレオチドの長さを含む。いくつかの態様において、tracrRNA延長配列は、10〜30のヌクレオチドの長さである。いくつかの態様において、tracrRNA延長配列は、30〜70のヌクレオチドの長さである。
いくつかの態様において、tracrRNA延長配列は、機能性部分(例えば、安定性調節配列、リボザイム、エンドリボヌクレアーゼ結合配列)を含む。いくつかの態様において、機能性部分は、転写ターミネーターセグメント(すなわち、転写終結配列)を含む。いくつかの態様において、機能性部分は、全長約10ヌクレオチド(nt)〜約100ヌクレオチド、約10nt〜約20nt、約20nt〜約30nt、約30nt〜約40nt、約40nt〜約50nt、約50nt〜約60nt、約60nt〜約70nt、約70nt〜約80nt、約80nt〜約90nt、or約90nt〜約100nt、約15nt〜約80nt、約15nt〜約50nt、約15nt〜約40nt、約15nt〜約30nt、または約15nt〜約25ntを有する。いくつかの態様において、機能性部分は真核細胞で機能する。いくつかの態様において、機能性部分は原核細胞で機能する。いくつかの態様において、機能性部分は、真核細胞および原核細胞の両方で機能する。
tracrRNA延長(配列?)の機能性部分の非限定的な例には、3’ポリアデニル化テイル、リボスイッチ配列(例えば、安定性の制御、および/または、タンパク質およびタンパク質複合体によるアクセシビリティの制御を可能にする)、dsRNAデュプレックス(すなわち、ヘアピン)を形成する配列、細胞内位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体など)にRNAを標的化させる配列、トラッキングを提供する改変または配列(例えば、蛍光分子への直接結合、蛍光検出を促進させる部分への結合、蛍光検出を可能にする配列など)、および/またはタンパク質(例えば、転写活性化因子、転写制御因子、DNAメチル化酵素、DNA脱メチル化酵素、ヒストンアセチル化酵素、ヒストン脱アセチル化酵素などを含む、DNAに作用するタンパク質)のための結合部位を提供する改変または配列)が含まれる。いくつかの態様において、tracrRNA延長配列は、プライマー結合部位、または、分子指標(例えば、バーコード配列)を含む。いくつかの態様において、tracrRNA延長配列は、1個以上の親和性タグを含む。
単分子ガイドリンカー配列
いくつかの態様において、単分子ガイド核酸のリンカー配列は、約3ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドの長さを有する。上記のJinek et al.によって、例えば簡単な4ヌクレオチド「テトラループ」(−GAAA−)が用いられた(Science, 337(6096):816-821 (2012))。例示的なリンカーは、約3ヌクレオチド(nt)〜約90nt、約3nt〜約80nt、約3nt〜約70nt、約3nt〜約60nt、約3nt〜約50nt、約3nt〜約40nt、約3nt〜約30nt、約3nt〜約20nt、約3nt〜約10ntの長さを有する。例えば、リンカーは、約3nt〜約5nt、約5nt〜約10nt、約10nt〜約15nt、約15nt〜約20nt、約20nt〜約25nt、約25nt〜約30nt、約30nt〜約35nt、約35nt〜約40nt、約40nt〜約50nt、約50nt〜約60nt、約60nt〜約70nt、約70nt〜約80nt、約80nt〜約90nt、または約90nt〜約100ntの長さを有し得る。いくつかの態様において、単分子ガイド核酸のリンカーは、4〜40ヌクレオチドである。いくつかの態様において、リンカーは少なくとも約100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、または7000以上のヌクレオチドである。いくつかの態様において、リンカーは最大約100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、または7000以上のヌクレオチドである。
リンカーは、様々な配列のいずれかを含むことができるが、好ましくは、リンカーは、ガイドの他の機能領域を妨害する分子内結合を引き起こし得る、ガイドRNAの他の部分との広範な相同性領域を有する配列を含まない。上述ののJinek et al.において、単純な4ヌクレオチド配列−GAAA−がScience、337(6096):816-821(2012)に使用されたが、より長い配列を含む多くの他の配列も同様に使用することができる。
いくつかの態様において、リンカー配列は機能性部分を含む。例えば、リンカー配列は、アプタマー、リボザイム、タンパク質相互作用ヘアピン、タンパク質結合部位、CRISPRアレイ、イントロン、またはエクソンを含む、1つ以上の特徴を含んでよい。いくつかの態様において、リンカー配列は、少なくとも約1、2、3、4、または5個以上の機能性部分を含む。いくつかの態様において、リンカー配列は、最大約1、2、3、4、または5個以上の機能性部分を含む。
遺伝子内部またはその近傍で、1つ以上の変異またはエクソンの挿入、修正、欠失または置換によって細胞を修正するための、またはSERPINA1cDNAまたはミニ遺伝子を対応する遺伝子の遺伝子座またはセーフハーバー部位にノックインすることによって細胞を修正するための、ゲノム工学戦略
本開示の方法は、変異対立遺伝子の1つまたは両方の修正を包含し得る。変異を修正する遺伝子編集は、正しい発現レベルおよび時間的制御の回復の利点を有する。患者のSERPINA1対立遺伝子を配列決定することにより、特定された変異を最も良く修正するための遺伝子編集戦略の設計が可能になる。
本発明のエクスビボ法のステップは、ゲノム工学を用いて患者特異的iPS細胞を編集/修正することを包含する。あるいは、本発明のエクスビボ法のステップは、前駆細胞、初代肝細胞、間葉系幹細胞、または肝前駆細胞を編集/修正することを包含する。同様に、本発明のインビボ法のステップは、ゲノム工学を用いてAATD患者の細胞を編集/修正することを包含する。同様に、本発明の細胞の方法におけるステップは、ゲノム工学によってヒト細胞中のSERPINA1遺伝子を編集/修正することを包含する。
AATD患者は、SERPINA1遺伝子に1つ以上の変異を持つ。従って、異なる患者は一般的に、異なる修正戦略を必要とする。いずれのCRISPRエンドヌクレアーゼも、本発明の方法に使用することができ、各CRISPRエンドヌクレアーゼは、疾病特異的であってもなくてもよい、それ自身の関連するPAMを有する。例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来のCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼを用いてSERPINA1遺伝子を標的とするためのgRNAスペーサー配列が、配列番号54,860−61,324で特定されている。黄色ブドウ球菌(S.aureus)由来のCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼを用いてSERPINA1遺伝子を標的とするためのgRNAスペーサー配列が、配列番号61、325−61、936で特定されている。S.サーモフィラス(S.thermophilus)由来のCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼを用いてSERPINA1遺伝子を標的とするためのgRNAスペーサー配列が、配列番号61、9347−62、069で特定されている。T.デンティコラ(T.denticola)由来のCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼを用いてSERPINA1遺伝子を標的とするためのgRNAスペーサー配列が、配列番号62、070−62、120で特定されている。髄膜炎菌(N.meningitides)由来のCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼを用いてSERPINA1遺伝子を標的とするためのgRNAスペーサー配列が、配列番号62、121−62、563で特定されている。アシダミノコッカス(Acidominococcus)、クノスピラ科(Lachnospiraceae)、およびフランシセラ・ノビサイダ(Francisella novicida)由来のCRISPR/Cpf1エンドヌクレアーゼを用いてSERPINA1遺伝子を標的とするためのgRNAスペーサー配列が、配列番号62、564−68、297で特定されている。化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来のCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼを用いて、例えば、AVS1(PPP1R12C)、ALB、Angptl3、ApoC3、ASGR2、CCR5、FIX(F9)、G6PC、Gys2、HGD、Lp(a)、Pcsk9、Serpina1、TF、およびTTRのエクソン1−2を標的とするためのgRNAスペーサー配列が、実施例7で特定されている。黄色ブドウ球菌(S.aureus)由来のCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼを用いて、例えばAAVS1(PPP1R12C)、ALB、Angptl3、ApoC3、ASGR2、CCR5、FIX(F9)、G6PC、Gys2、HGD、Lp(a)、Pcsk9、Serpina1、TF、およびTTRのエクソン1−2を標的とするためのgRNAスペーサー配列が、実施例8で特定されている。S.サーモフィラス(S.thermophilus)由来のCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼを用いて、例えば、AAVS1(PPP1R12C)、ALB、Angptl3、ApoC3、ASGR2、CCR5、FIX(F9)、G6PC、Gys2、HGD、Lp(a)、Pcsk9、Serpina1、TF、およびTTRのエクソン1−2を標的とするためのgRNAスペーサー配列が、実施例9で特定されている。T.デンティコラ(T.denticola)由来のCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼを用いて、例えば、AAVS1(PPP1R12C)、ALB、Angptl3、ApoC3、ASGR2、CCR5、FIX(F9)、G6PC、Gys2、HGD、Lp(a)、Pcsk9、Serpina1、TF、およびTTRのエクソン1−2を標的とするためのgRNAスペーサー配列が、実施例10で特定されている。髄膜炎菌(N.meningitides)由来のCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼを用いて、例えば、AAVS1(PPP1R12C)、ALB、Angptl3、ApoC3、ASGR2、CCR5、FIX(F9)、G6PC、Gys2、HGD、Lp(a)、Pcsk9、Serpina1、TF、およびTTRのエクソン1−2を標的とするためのgRNAスペーサー配列が、実施例11で特定されている。アシダミノコッカス(Acidominococcus)、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)、およびフランシセラ・ノビサイダ(Francisella novicida)由来のCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼを用いて、例えば、AAVS1(PPP1R12C)、ALB、Angptl3、ApoC3、ASGR2、CCR5、FIX(F9)、G6PC、Gys2、HGD、Lp(a)、Pcsk9、Serpina1、TF、およびTTRのエクソン1−2を標的とするためのgRNAスペーサー配列が、実施例12で特定されている。
例えば、変異は、不正確なNHEJ修復経路により生じる挿入または欠失により修正することができる。患者のSERPINA1遺伝子が挿入または欠失した塩基を有する場合、標的切断により、読み枠を回復させるNHEJ媒介挿入または欠失を生じ得る。ミスセンス変異はまた、1つ以上のガイドRNAを用いて、NHEJ媒介修正により、修正することができる。変異を修正する切断の能力または可能性は、局所的配列およびマイクロホモロジーに基づいて、設計または評価することができる。NHEJはまた、直接、または、いくつかの位置を標的とするgRNA、もしくは、いくつかのgRNAによる切断によるスプライスドナー部位またはスプライスアクセプター部位を改変することにより、遺伝子のセグメントを欠失させるために用いることができる。これは、アミノ酸、ドメインまたはエクソンが変異を含有し、除去または反転し得る場合、あるいはそうでなければ、欠失がタンパク質に機能を回復させる場合に、有用であり得る。ガイド鎖の対が、本発明の欠失または修正に用いられている。
あるいは、HDRによる修正のためのドナーは、アニーリングを可能にするために、小さい、または、大きいフランキング相同アームを有する修正配列を含有する。HDRは、本質的に、DSB修復中に、鋳型として供給された相同なDNA配列を用いる、誤りのないメカニズムである。相同組換え修復(HDR)の割合は、変異と切断部位との間の距離の関数であるため、重複する標的部位、または、最も近い標的部位を選択することが重要である。鋳型は、相同領域に隣接する余分な配列を含むことができ、あるいは、ゲノム配列とは異なる配列を含有することができ、従って、配列の編集が可能である。
NHEJまたはHDRによる変異の修正に加えて、種々の他の選択肢も可能である。小さい、または、大きい欠失、または複数の変異がある場合、影響を受けたエクソンを含むcDNAをノックインすることができる。完全長cDNAは、任意の「セーフハーバー」にノックインすることができるが、供給された、あるいは、他のプロモーターを用いなければならない。この構築物が、正しい位置にノックインされる場合、正常な遺伝子と同様に、生理的制御を有するであろう。対のヌクレアーゼを用いて、変異した遺伝子領域を欠失させることができるが、通常は機能を回復させるためにドナーを提供する必要がある。この場合、2つのgRNAと1つのドナー配列が供給される。
いくつかのゲノム工学戦略は、相同組換え(HR)としても知られる、相同組換え修復(HDR)による、SERPINA1遺伝子の内部またはその近傍の1つ以上の変異の修正、またはSERPINA1 DNAの変異体の欠失、および/またはSERPINA1 cDNAまたはミニ遺伝子(1つ以上のエクソンおよびイントロン、すなわち天然のまたは合成のイントロンから構成される)の対応する遺伝子の遺伝子座またはセーフハーバー座位へのノックインを包含する。相同組換え修復は、SERPINA1遺伝子の内部またはその近傍に不活性化させる変異を有する患者を治療するための1つの戦略である。これらの戦略は、SERPINA1遺伝子を回復させ、疾病状態を完全に逆転させ、治療し、および/または緩和する。この戦略は、患者の不活性化させる変異の位置に基づいてよりカスタムな手法を必要とする。変異を修正するためのドナーヌクレオチドは小さい(<300bp)。これは、HDR効率がドナー分子のサイズに反比例し得るために、有利である。また、ドナー鋳型は、ドナー鋳型送達の効果的な手段であることが示されているサイズ制限されたウイルスベクター分子、例えばアデノ随伴ウイルス(AAV)分子に適合可能であることが期待される。また、ドナー鋳型は、非限定的な例として、血小板および/またはエキソソームまたは他の微小胞を含む、他のサイズ制限された分子に適合可能であることが期待される。
相同組換え修復は、2本鎖切断(DSB)を修復するための細胞メカニズムである。最も一般的な形態は相同組換えである。HDRには、1本鎖アニーリングや代替HDRなどを含む、さらなる経路が存在する。ゲノム工学ツールは、研究者がゲノムへの部位特異的な改変を作製するために細胞相同組換え経路を操作することを可能にする。細胞は、トランスで提供される合成ドナー分子を用いて2本鎖切断を修復することができることが見出されている。したがって、特定の変異の近くに2本鎖切断を導入し、適切なドナーを提供することによって、標的とする変化をゲノムにおいて作製することができる。特異的切断は、相同なドナー単独を投与された106個の細胞中の1個の割合を、1,000倍を超えて上回って、HDRの割合を増加させる。特定のヌクレオチドでの相同組換え修復(HDR)の割合は、切断部位までの距離の関数であるため、重複または最も近い標的部位を選択することが重要である。遺伝子編集は、その位置で編集するのでゲノムの残りの部分は影響を受けず、遺伝子の付加よりも利点を提供する。
HDRによる編集のために供給されるドナーは著しく様々であるが、一般的に、ゲノムDNAへのアニーリングを可能にするために、小さな、または、大きな隣接する相同アームを有する、意図された配列を含む。導入された遺伝的変化に隣接する相同性領域は、30bp以下であってよく、またはプロモーター、cDNAなどを含むことができる数キロベースのカセットと同じくらい大きくてもよい。1本鎖および2本鎖のオリゴヌクレオチドドナーの両方が使用されている。これらのオリゴヌクレオチドの大きさは100nt未満から数kbを超えるまでであるが、より長いssDNAも生成して使用することができる。PCR増幅産物、プラスミドおよびミニサークルを含む2本鎖ドナーがしばしば使用される。一般的に、AAVベクターは、個々のドナーのパッケージング限度が<5kbであるにもかかわらず、ドナー鋳型の送達の非常に有効な手段であることが見出されている。ドナーの能動的転写はHDRを3倍に増加させ、プロモーターの包含が変換を増加させることを示した。逆に、ドナーのCpGメチル化は遺伝子発現およびHDRを減少させた。
Cas9なとの野生型エンドヌクレアーゼに加えて、一方または他方のヌクレアーゼドメインが不活性化されているニッカーゼ変異体が存在し、その結果わずか1本のDNA鎖切断が生じる。HDRは、個々のCasニッカーゼから指向させることができ、または標的領域に隣接する一対のニッカーゼを使用することができる。ドナーは、1本鎖、ニック、またはdsDNAであり得る。
ドナーDNAはヌクレアーゼと共に、または例えば遺伝子導入、ナノ粒子、マイクロインジェクションまたはウイルス形質導入などの様々な異なる方法によって独立して供給することができる。HDRに対するドナーの利用可能性を高めるために、種々の連結(tethering)オプションが提案されている。例には、ドナーをヌクレアーゼに結合させること、近くに結合するDNA結合タンパク質に結合させること、またはDNA末端結合または修復に関与するタンパク質に結合させることが含まれる。
修復経路の選択は、細胞周期に影響を及ぼす培養条件などの、多くの培養条件によって、またはDNA修復および関連タンパク質を標的とすることによって、導くことができる。例えば、HDRを増加させるために、KU70、KU80またはDNAリガーゼIVなどの重要なNHEJ分子を抑制することができる。
ドナーが存在しない場合、DNA切断由来の末端または異なる切断由来の末端は、DNA末端が接合部でほとんどまたは全く塩基対合で結合されていない、いくつかの非相同修復経路を用いて結合され得る。標準的なNHEJに加えて、alt−NHEJなどの同様の修復メカニズムがある。2つの切断がある場合、介在するセグメントを欠失または反転させることができる。NHEJ修復経路は、結合部における挿入、欠失または変異に繋がり得る。
NHEJは、ヌクレアーゼ切断後に、ヒト細胞株で、15kbの誘導性の遺伝子発現カセットを規定の遺伝子座に挿入するために、用いられた。Maresca, M., Lin, V.G., Guo, N. & Yang, Y., Genome Res 23, 539-546 (2013)参照。
NHEJまたはHDRによるゲノム編集に加えて、NHEJ経路およびHRの両方を用いる部位特異的遺伝子挿入が行われている。組み合わせの手法は、場合によりイントロン/エクソン境界を含む、ある状況下で適用可能であり得る。NHEJはイントロンにおけるライゲーションに効果的であり得、誤りのないHDRはコード領域において、より適し得る。
既に述べたように、SERPINA1遺伝子は5個のエクソンを含有する。変異を修正して、不活性のAATタンパク質を回復させるために、5個のエクソンまたはその近傍のイントロンのうち任意の1つ以上が修復され得る。あるいは、AATDに関連する様々な変異が存在し、これらは、AATを不活性化させる共通の作用を有する、ミスセンス、なンセンス、フレームシフトおよび他の変異の組み合わせである。不活性のAATを回復させるために、変異のうち任意の1つ以上が修復され得る。例えば、以下の病的変異のうち1つ以上が修正され得る:rs764325655、rs121912713、rs28929474、rs17580、rs121912714、rs764220898、rs199422211、rs751235320、rs199422210、rs267606950、rs55819880、rs28931570(表1参照)。これらの変異体は、欠失、挿入、および一塩基多型を含む。さらなる代替として、SERPINA1cDNAまたはミニ遺伝子(天然のまたは合成のエンハンサーおよびプロモーター、1つ以上のエクソンおよび天然のまたは合成のイントロン、並びに天然のまたは合成の3’UTRおよびポリアデニル化シグナル)が、対応する遺伝子の遺伝子座にノックインされてもよく、あるいは、AAVS1(PPP1R12C)、ALB、Angptl3、ApoC3、ASGR2、CCR5、FIX(F9)、G6PC、Gys2、HGD、Lp(a)、Pcsk9、Serpina1、TF、および/またはTRなどのセーフハーバー部位にノックインされてもよい。セーフハーバー座位は、AAVS1(PPP1R12C)のエクソン1−2、ALBのエクソン1−2、Angptl3のエクソン1−2、ApoC3のエクソン1−2、ASGR2のエクソン1−2、CCR5のエクソン1−2、FIX(F9)のエクソン1−2、G6PCのエクソン1−2、Gys2のエクソン1−2、HGDのエクソン1−2、Lp(a)のエクソン1−2、Pcsk9のエクソン1−2、Serpina1のエクソン1−2、TFのエクソン1−2,およびTTRのエクソン1−2からなる群から選択することができる。いくつかの態様において、本方法は、ポリヌクレオチドドナー鋳型由来の新規配列を組み込んで、1つ以上の変異を修正するか、あるいは、SERPINA1遺伝子またはcDNA全体の一部をノックインすることを容易にするために用いることができる、1つのgRNAまたは一対のgRNAを提供する。
本方法のいくつかの態様は、遺伝子を2回切断することにより欠失を生じさせるgRNAペアを提供し、一方のgRNA切断は1つ以上の変異の5’末端で生じ、他方のgRNA切断は1つ以上の変異の3’末端で生じ、これにより、ポリヌクレオチドドナー鋳型からの新しい配列の挿入を促進させて1つ以上の変異を置換するか、あるいは、欠失は、変異アミノ酸またはそれに隣接するアミノ酸(例えば、未成熟終止コドン)を除外して、機能タンパク質の発現を導くか、もしくは、オープンリーディングフレームを回復させてもよい。切断は、ゲノム上にDSBをそれぞれ生じる一対のDNAエンドヌクレアーゼによって、あるいは、ゲノム上にDSBを共に生じる複数のニッカーゼによって、達成され得る。
あるいは、本方法のいくつかの態様は、1つ以上の変異の周辺に1つの2本鎖切断を生じる1つのgRNAを提供し、これにより、ポリヌクレオチドドナー鋳型からの新しい配列の挿入を促進させて1つ以上の変異を置換する。2本鎖切断は、単一のDNAエンドヌクレアーゼ、または、共にゲノム上にDSBを生じる複数ニッカーゼにより生じてよく、あるいは、単一のgRNAは、欠失を導き(MMEJ)、変異アミノ酸(例えば、未成熟終止コドン)を除外して、機能タンパク質の発現を導くか、もしくは、オープンリーディングフレームを回復させてもよい。
SERPINA1遺伝子内の例示的な改変には、例えば特定の変異の3kb未満、2kb未満、1kb未満、0.5kb未満上流、または下流の領域内などの、上述した変異の内部または近傍(近位の)の置換を含む。SERPINA1遺伝子の変異のバリエーションが比較的広範囲にわたる場合、上述の置換の多数のバリエーション(より大きい欠損およびより小さい欠損を含むが、これらに限定されない)によりAATタンパク質活性の回復が生じることが期待されることは、理解されるであろう。
これらの変異体は、問題の特定の変異よりも、5’および/もしくは3’方向に大きい、または、いずれかの方向に小さい置換を含む。従って、特定の置換に関して「近傍」または「近位の」とは、所望の置換の境界(本明細書ではまたエンドポイントと呼ぶ)に関連するSSBまたはDSB遺伝子座が、注目した参照遺伝子座から、約3kb未満である領域内であり得ることを意図している。いくつかの態様において、DSB遺伝子座は、より近位であり、2kb以内、1kb以内、0.5kb以内、または0.1kb以内である。小さな置換の場合、所望のエンドポイントは、参照遺伝子座に、またはそれに「隣接して」存在し、これは、エンドポイントが参照遺伝子座から100bp以内、50bp以内、25bp以内、または約10bp〜5bp未満に存在することを意図している。
より大きなまたはより小さな置換を含む態様は、AATタンパク質活性が回復する限り、同一の利益を提供することが期待される。従って、本明細書に記載および例示される置換の多くのバリエーションが、AATDを寛解させるために有効であることが期待される。
別のゲノム工学戦略には、エクソン欠失が包含される。特定のエクソンの標的欠失は、単一の治療用カクテルで、大きなサブセットの患者を治療するには、魅力的な戦略である。欠失は、単一のエクソン欠失、あるいは、複数のエクソン欠失のいずれかであり得る。複数のエクソン欠失は、大多数の患者に有効であり得るが、欠失が大きい場合、欠失の大きさが大きいほど、欠失の効率は大幅に下がる。従って、欠失は、40〜10,000塩基対(bp)の大きさの範囲であり得る。例えば、欠失は、40〜100;100〜300;300〜500;500〜1,000;1,000〜2,000;2,000〜3,000;3,000〜5,000;または5,000〜10,000塩基対の大きさの範囲であってよい。
欠失は、遺伝子発現の発現増加につながるエンハンサー、プロモーター、第一イントロン、および/または3’UTRにおいて、並びに/または調節エレメントの欠失を介して起こり得る。
既に述べたように、AAT遺伝子は5つのエクソンを含有する。5つのエクソンのうち任意の1つ以上、または、異常なイントロンのスプライスアクセプター部位もしくはスプライスドナー部位を、AAT読み枠を回復させるために、欠失させてよい。いくつかの態様において、本方法は、エクソン1、2、3、4、または5、またはこれらの任意の組み合わせを欠失させるために用いることができるgRNAペアを提供する。
エクソン欠失に引き続き、プレmRNAが適切にプロセシングされることを保証するために、周辺のスプライシングシグナルを欠失させることができる。スプライシングドナーおよびアクセプターは、一般的に、隣接するイントロンの100塩基対内に存在する。従って、いくつかの例において、本方法は、目的のエクソン/イントロン結合部のそれぞれに関して、およそ+/−100〜3100bpを切断する全てのgRNAを提供することができる。
いずれのゲノム編集戦略に対しても、遺伝子編集は、配列決定またはPCR解析により、確認することができる。
標的配列の選択
本明細書でさらに説明および図示されているように、特定の参照遺伝子座と比較した、5’境界および/または3’境界の位置のシフトは、遺伝子編集のために選択されたエンドヌクレアーゼシステムに部分的に依存する、遺伝子編集の特定の適用を容易にするか、または増強するために使用される。
これらの標的配列の選択の第一の、非限定的な例として、多くのエンドヌクレアーゼシステムは、例えばCRISPR TypeIIまたはTypeVエンドヌクレアーゼの場合、DNA切断部位に隣接する特定の位置におけるPAM配列モチーフを必要とするなど、切断の潜在的な標的部位の最初の選択を導く規則または基準を有する。
標的配列の選択または最適化の別の非限定的な例として、標的配列と遺伝子編集エンドヌクレアーゼとの特定の組み合わせに対する「オフターゲット」活性の頻度(すなわち、選択した標的配列以外の部位で生じるDSBの頻度)を、オンターゲット活性の頻度と比較して評価する。ある場合において、所望の遺伝子座で正しく編集された細胞は、他の細胞と比較して、選択上の利点を有し得る。例示的であるが非限定的な選択上の利点の例としては、複製速度、持続性、特定の条件に対する耐性、患者への導入後のインビボでの成功した生着または持続性の割合の上昇などの属性の獲得、またはそれらの細胞の維持、または数または生存率の増加に関連する他の属性の獲得が含まれる。他の場合において、所望の遺伝子座で正しく編集された細胞は、正しく編集された細胞を同定、ソート、または選択するために用いられる1つ以上のスクリーニング方法で正の選択を受けることができる。選択上の利点の方法および方向を持った選択の方法は共に、修正に関連する表現型を利用してよい。いくつかの態様において、細胞は、対象とする細胞集団を選択または純化するために用いられる新しい表現型を作製する第二の改変を作製するために、2回以上編集されてもよい。この第二の改変は、選択可能な、またはスクリーニング可能なマーカーのために、第二のgRNAを加えることにより、作製することができる。ある場合において、細胞は、cDNAおよび選択マーカーもまた含有するDNAフラグメントを用いて、所望の遺伝子座で正しく編集することができる。
任意の選択上の利点が適用可能であろうと、任意の方向を持った選択が特定の場合に適用されようと、標的配列の選択はまた、適用の有効性を増強するために、および/または、所望の標的以外の部位での、望まない変更の可能性を減らすために、オフターゲットの頻度を考慮することにより導かれる。本明細書および当業界でさらに記載され、例示されるように、オフターゲット活性の出現は、標的部位と様々な非標的部位との間の類似点および相違点、並びに用いられる特定のエンドヌクレアーゼを含む多くのファクターによって影響を受ける。オフターゲット活性の予測において、手助けとなるバイオインフォマティクスツールが利用可能であり、しばしばこれらのツールはまた、オフターゲット活性の可能性が最も高い部位を特定するために用いることができ、これらの部位はその後、オンターゲット活性に対するオフターゲット活性の相対頻度を調べる実験的な条件で評価することができ、それにより、より高い相対的オンターゲット活性を有する配列を選択できる。これらの技術の例示的な例が本明細書において提供され、他の例は当業界で知られている。
標的配列の選択の別の局面は、相同組換え現象に関する。相同領域を有する配列は、介在配列の欠失をもたらす相同的組換え現象の中心として働くことができる。これらの組換え現象は、染色体および他のDNA配列の正常な複製プロセスの間に、および、DNA配列が合成されている他の時(例えば、正常な細胞複製周期における定型的な塩基上で起こる2本鎖切断(DSB)の修復の場合)にも起こるが、様々な現象(UV光およびDNA切断の他の誘導因子)の出現、または特定の薬剤(種々の化学誘導因子など)の存在によっても増強され得る。これらの多くの誘導因子により、DSBがゲノム内で無差別に起こり、DSBは正常細胞において定期的に誘導および修復される。修復の間、元の配列は、完全な忠実度で再構築され得るが、ある場合において、小さな挿入または欠失(「インデル」と呼ばれる)が、DSB部位に導入される。
選択された染色体上の位置で、方向を持った、または、優先的な遺伝子改変現象を引き起こすために使用され得る、本明細書に記載のエンドヌクレアーゼシステムの場合のように、特定の位置でDSBを特異的に誘導することもできる。相同配列がDNA修復(および複製)に関連して組換えを受ける傾向は、多くの状況において利用され得、CRISPRなどの遺伝子編集システムの1つの適用の基礎であり、ここで、相同組換え修復は、「ドナー」ポリヌクレオチドの使用によって提供される目的の配列を、所望の染色体上の位置に挿入するために使用される。
わずか10塩基対以下を含み得る「マイクロホモロジー」の小領域であり得る、特定の配列間の相同領域も、所望の欠失をもたらすために使用することができる。例えば、単一のDSBは、近傍の配列を有するマイクロホモロジーを示す部位に導入される。これらのDSBの修復の通常のプロセスの間に、組換えがDSBおよび付随する細胞修復プロセスによって促進される結果として、介在配列の欠失が、高い頻度で生じる。
しかしながら、状況によっては、相同領域内での標的配列の選択はまた、(欠失がコード領域に存在する場合)遺伝子融合を含むはるかに大きな欠失を生じ得、これは特定の状況では望ましいかもしれないし、望ましくないかもしれない。
本明細書で提供される実施例は、さらに、AATタンパク質活性の回復を生じる置換を誘導するように設計されたDSBを作製するための様々な標的領域の選択と、並びに、オンターゲット現象と比較したオフターゲット現象を最小限にするよう設計された標的領域内の特異的標的配列の選択とを例示する。
核酸改変
いくつかの態様において、本明細書にさらに記載され当業界に知られているように、細胞に導入されるポリヌクレオチドは、個々に、または組み合わせて使うことできる1つ以上の改変であって、例えば、活性、安定性、もしくは特異性を増強させるための、送達を変更するための、ホスト細胞での自然免疫応答を減らすための、または、他の増強のための改変を含むことができる。
特定の態様において、改変型ポリヌクレオチドは、CRISPR/Cas9/Cpf1システムで用いられ、その場合、細胞に導入されるガイドRNA(単分子ガイドもしくは二分子ガイドのいずれか)、および/または、CasもしくはCpf1エンドヌクレアーゼをコードするDNAもしくはRNAは、以下に記載および例示されるように、改変することができる。これらの改変型ポリヌクレオチドは、任意の1つ以上のゲノム遺伝子座を編集するために、CRISPR/Cas9/Cpf1システムにおいて、用いることができる。
これらの使用の非限定的な例示を目的としてCRISPR/Cas9/Cpf1システムを用いる際に、ガイドRNA(単分子ガイドであっても二分子であってもよい)およびCasまたはCpf1エンドヌクレアーゼを含むCRISPR/Cas9/Cpf1ゲノム編集複合体の形成または安定性の増強のために、ガイドRNAの改変を用いることができる。ガイドRNAの改変はまた、あるいは代わりに、ゲノム編集複合体と、ゲノム上の標的配列との相互作用の開始、安定性、または動態の増強のために、用いることができ、例えば、オンターゲット活性を増強するために、用いることができる。ガイドRNAの改変はまた、あるいは代わりに、特異性、例えば他の(オフターゲット)部位での作用と比較した、オンターゲット部位でのゲノム編集の相対的割合を増強するために、用いることができる。
改変はまた、あるいは代わりに、例えば、細胞に存在するリボヌクレアーゼ(RNase)による分解に対する耐性を増すことで、細胞における半減期の増大を引き起こすことにより、ガイドRNAの安定性を増すために用いることができる。ガイドRNAの半減期を増強する改変は、エンドヌクレアーゼを産生するために翻訳される必要があるRNAを介して、CasまたはCpf1エンドヌクレアーゼが編集される細胞に導入される態様において特に有用であり得る。なぜなら、エンドヌクレアーゼをコードするRNAと同時に導入されたガードRNAの半減期を長くすることにより、ガードRNAとコードされたCasまたはCpf1エンドヌクレアーゼが細胞内に共存する時間を増加させることができるからである。
改変はまた、あるいは代わりに、細胞に導入されたRNAが自然免疫応答を誘発する可能性または程度を減らすために、用いることができる。これらの応答は、下記および当業界で記載されるように、低分子干渉RNA(siRNA)を含む、RNA干渉(RNAi)に関連してよく特徴づけられているが、RNAの半減期の減少、および/または、サイトカインまたは免疫応答に関連する他のファクターの誘発に関連する傾向がある。
1つ以上のタイプの改変はまた、細胞に導入されるエンドヌクレアーゼをコードするRNAに対して行うことができ、RNAの安定性を増強する改変(例えば、細胞に存在するRNAseによる分解への耐性を増すことによる)、得られた産物(すなわちエンドヌクレアーゼ)の翻訳を増強する改変、および/または細胞に導入されたRNAが自然免疫応答を誘発する可能性または程度を減らす改変を含むが、これらに限定されない。
前述および他のものなどの、改変の組み合わせは、同様に用いることができる。例えば、CRISPR/Cas9/Cpf1の場合において、1つ以上のタイプの改変を、ガイドRNA(上記に例示したものを含む)に対して行うことができ、および/または、1つ以上のタイプの改変を、CasエンドヌクレアーゼをコードするRNA(上記に例示したものを含む)に対して行うことができる。
実例として、CRISPR/Cas9/Cpf1システムで用いられるガイドRNA、あるいは、他のより小さなRNAは、以下に例示され当業界で記載されるように、化学的手段により容易に合成することができ、それにより、多くの改変を容易に組み込むことができる。化学合成手順は絶えず発展しているが、これらのRNAの高速液体クロマトグラフィー(PAGEなどのゲルを使用しない、HPLC)などの手順による精製は、ポリヌクレオチドの長さがおよそ100ヌクレオチドを有意に超えて増加するにつれて、より困難になる傾向がある。より長い化学改変型RNAを産生するために用いられる1つの手法は、共に連結する2つ以上の分子を生産することである。Cas9エンドヌクレアーゼをコードするRNAなどの、はるかに長いRNAは、酵素的により容易に生産される。酵素的に生産されたRNAには、一般的に利用可能な改変のタイプはより少ないが、下記および当業界でさらに記載されるように、例えば、安定性を増強するため、自然免疫応答の可能性または程度を減少させるため、および/または他の特性を増強させるために用いることができる改変が依然として存在し、また、新しいタイプの改変が定期的に開発されている。
様々なタイプの改変の実例として、特により小さな化学合成RNAでしばしば用いられるが、改変は糖の第2位で改変された1つ以上のヌクレオチドを含み得、いくつかの態様において2’−O−アルキル、2’−O−アルキル−O−アルキル、または2’−フルオロ改変ヌクレオチドである。いくつかの態様において、RNA改変は、ピリミジンのリボースにおける2’−フルオロ、2’−アミノまたは2’O−メチル改変、脱塩基の残基、またはRNAの3’末端での逆位の塩基を含む。これらの改変はルーチン的にオリゴヌクレオチドに組み込まれ、これらのオリゴヌクレオチドは、所与の標的に対して、2’−デオキシオリゴヌクレオチドよりも高いTm(すなわち、より高い標的結合親和性)を有することが示されている。
多くのヌクレオチドおよびヌクレオシド改変により、それらが組み込まれたオリゴヌクレオチドが、ヌクレアーゼ消化に対して天然のオリゴヌクレオチドよりも、より耐性をもつことが示されている;これらの改変オリゴは、非改変オリゴヌクレオチドよりも長時間、無傷で生き残る。改変オリゴヌクレオチドの特定の例には、改変骨格を含むもの、例えば、ホスホロチオエート、ホスホトリエステル、メチルホスホナート、短鎖アルキルもしくはシクロアルキル糖間結合、または、短鎖ヘテロ原子もしくは複素環糖間結合が含まれる。いくつかのオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート骨格を有するオリゴヌクレオチドおよびヘテロ原子骨格を有するオリゴヌクレオチドであり、特にCH2−NH−O−CH2、CH、〜N(CH3)〜O〜CH2(メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として知られる)、CH2−−O−−N(CH3)−CH2、CH2−N(CH3)−N(CH3)−CH2およびO−N(CH3)−CH2−CH2骨格、ここで天然のホスホジエステル骨格はO−P−−O−CHと表す;アミド骨格[De Mesmaeker et al., Ace. Chem. Res., 28:366-374 (1995) 参照];モルフォリノ骨格構造(Summerton and Weller, 米国特許第5,034,506号参照);ペプチド核酸(PNA)骨格(ここでオリゴヌクレオチドのホスホジエステル骨格は、ポリアミド骨格で置換され、ヌクレオチドはポリアミド骨格のアザ窒素原子に、直接または間接に結合している、Nielsen et al., Science 1991, 254, 1497参照)である。リン含有結合には、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含むメチルホスホネートおよび他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’−アミノホスホラミデートおよびアミノアルキルホスホラミデートを含むホスホラミデート、チオホスホラミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、および通常の3’−5’結合を有するボラノホスフェート、これらの2’−5’結合類似体、および逆極性を有するものが含まれるが、これらに限定されず、ここで、隣接するヌクレオシドユニットの対は、3’−5’から5’−3’、または2’−5’から5’−2’に連結している;米国特許第3,687,808号;第4,469,863号;第4,476,301号;第5,023,243号;第5,177,196号;第5,188,897号;第5,264,423号;第5,276,019号;第5,278,302号;第5,286,717号;第5,321,131号;第5,399,676号;第5,405,939号;第5,453,496号;第5,455,233号;第5,466,677号;第5,476,925号;第5,519,126号;第5,536,821号;第5,541,306号;第5,550,111号;第5,563,253号;第5,571,799号;第5,587,361号;および第5,625,050号を参照されたい。
モルフォリノベースのオリゴマー化合物が、Braasch and David Corey, Biochemistry, 41(14): 4503-4510 (2002);Genesis, Volume 30, Issue 3, (2001); Heasman, Dev. Biol., 243: 209-214 (2002); Nasevicius et al., Nat.Genet., 26:216-220 (2000); Lacerra et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 97: 9591-9596 (2000); および1991年7月23日発行の米国特許第5,034,506号に記載されている。
シクロヘキセニル核酸オリゴヌクレオチド類似体が、Wang et al., J. Am. Chem. Soc., 122: 8595-8602 (2000) に記載されている。
リン原子を含まない改変オリゴヌクレオチド骨格は、短鎖アルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、ヘテロ原子とアルキルまたはシクロアルキルの混合ヌクレオシド間結合、または1つ以上の短鎖ヘテロ原子または複素環ヌクレオシド間結合により形成される骨格を有する。これらは、モルフォリノ結合(ヌクレオシドの糖部分から一部形成される);シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホネートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;および混合したN、O、S、およびCH2構成成分を有する他の骨格を有するものを含む;米国特許第5,034,506号;5,166,315号;5,185,444号;5,214,134号;5,216,141号;5,235,033号;5,264,562号;5,264,564号;5,405,938号;5,434,257号;5,466,677号;5,470,967号;5,489,677号;5,541,307号;5,561,225号;5,596,086号;5,602,240号;5,610,289号;5,602,240号;5,608,046号;5,610,289号;5,618,704号;5,623,070号;5,663,312号;5,633,360号;5,677,437号;および5,677,439号(これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
1つ以上の置換された糖部分が含まれていてもよく、例えば、2’位に以下のうち1つが含まれていてもよい:OH、SH、SCH3、F、OCN、OCH3 OCH3、OCH3 O(CH2)n CH3、O(CH2)n NH2、またはO(CH2)n CH3であり、ここでnは1〜約10であり;C1〜C10低級アルキル、アルコキシアルコキシ、置換された低級アルキル、アルカリルまたはアラルキルであり;Cl;Br;CN;CF3;OCF3;O−、S−またはN−アルキルであり;O−、S−またはN−アルケニルであり;SOCH3;SO2 CH3;ONO2;NO2;N3;NH2;ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリル;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換されたシリル;RNA切断基;レポーター基;インターカレーター;オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善するための基;オリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善するための基、および類似の特性を有する他の置換基である。いくつかの態様において、改変は、2’−O−(2−メトキシエチル)としても知られる2’−メトキシエトキシ(2’−O−CH2CH2OCH3)を含む(Martin et al, HeIv. Chim. Acta, 1995, 78, 486)。他の改変には、2’−メトキシ(2’−O−CH3)、2’−プロポキシ(2’−OCH2 CH2CH3)および2’−フルオロ(2’−F)が含まれる。オリゴヌクレオチド上の他の位置、特に3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位および5’末端ヌクレオチドの5’位で同様の改変を行うこともできる。オリゴヌクレオチドはまた、ペントフラノシル基の代わりにシクロブチルなどの糖類似体を有していてもよい。
いくつかの態様において、ヌクレオチド単位の糖結合およびヌクレオシド間結合(すなわち、主鎖)の両方が新規な基で置換される。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。これらのオリゴマー化合物の1つである、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているオリゴヌクレオチド類自体は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖骨格は、骨格を含むアミノ酸で置換されている(例えば、アミノエチルグリシン骨格)。核酸塩基は保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的または間接的に結合している。PNA化合物の調製を教示する代表的な米国特許には、第5,539,082号;第5,714,331号;および第5,719,262号が含まれるが、これらに限定されない。PNA化合物のさらなる教示は、Nielsen et al, Science, 254: 1497-1500 (1991)に見ることができる。
ガイドRNAはまた、核酸塩基(しばしば当業界では単に「塩基」と呼ばれる)の改変または置換を、さらに含むか、または、代替として含むことができる。本明細書中で使用される場合、「非改変」または「天然」核酸塩基は、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を含む。改変核酸塩基には、天然の核酸においてまれにまたは一時的にしか見出されない核酸塩基、例えば、ヒポキサンチン、6−メチルアデニン、5−Meピリミジン、特に5−メチルシトシン(5−メチル−2’−デオキシシトシンとも呼ばれ、しばしば当業界で5−Me−Cと呼ばれる)、5−ヒドロキシメチルシトシン(HMC)、グリコシルHMC、およびゲントビオシル(gentobiosyl)HMCなどが含まれ、並びに、合成核酸塩基、例えば、2−アミノアデニン、2―(メチルアミノ)アデニン、2―(イミダゾリルアルキル)アデニン、2―(アミノアルキルアミノ(aminoalklyamino))アデニンまたは他のヘテロ置換アルキルアデニン、2―チオウラシル、2―チオチミン、5―ブロモウラシル、5―ヒドロキシメチルウラシル、8―アザグアニン、7―デアザグアニン、N6(6―アミノヘキシル)アデニン、および2、6―ジアミノプリンが含まれる。Kornberg, A., DNA Replication, W. H. Freeman & Co., San Francisco, pp75-77 (1980); Gebeyehu et al., Nucl. Acids Res. 15:4513 (1997)を参照のこと。当業界で知られる「ユニバーサル」塩基、例えば、イノシンも含められ得る。5―Me―C置換は、核酸デュプレックスの安定性を0.6〜1.2℃高めることが示されており(Sanghvi, Y. S., in Crooke, S. T. and Lebleu, B., eds., Antisense Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993, pp. 276-278)、塩基置換の態様である。
改変核酸塩基には、他の合成および天然の核酸塩基(例えば、5―メチルシトシン(5―me―C)、5―ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2―アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6―メチル誘導体および他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2―プロピル誘導体および他のアルキル誘導体、2―チオウラシル、2―チオチミンおよび2―チオシトシン、5―ハロウラシルおよび5―ハロシトシン、5―プロピニルウラシルおよび5―プロピニルシトシン、6―アゾウラシル、6―アゾシトシンおよび6―アゾチミン、5―ウラシル(シュードウラシル)、4―チオウラシル、8―ハロアデニン、8―アミノアデニン、8―チオールアデニン、8―チオアルキルアデニン、8―ヒドロキシルアデニンおよび他の8―置換アデニン、8―ハログアニン、8―アミノグアニン、8―チオールグアニン、8―チオアルキルグアニン、8―ヒドロキシルグアニンおよび他の8―置換グアニン、5―ハロウラシル、特に、5―ブロモウラシル、5―トリフルオロメチルウラシルおよび他の5―置換ウラシル、5―ハロシトシン、特に、5―ブロモシトシン、5―トリフルオロメチルシトシンおよび他の5―置換シトシン、7―メチルグアニン(methylquanine)および7―メチルアデニン、8―アザグアニンおよび8―アザアデニン、7―デアザグアニンおよび7―デアザアデニンならびに3―デアザグアニンおよび3―デアザアデニンが含まれる。
さらに、核酸塩基は、米国特許第3,687,808号で開示されたもの、‘The Concise Encyclopedia of Polymer Science And Engineering’, pages 858-859, Kroschwitz, J.I., ed. John Wiley & Sons, 1990で開示されたもの、Englisch et al., Angewandle Chemie, International Edition', 1991, 30, page 613で開示されたもの、および、Sanghvi, Y. S., Chapter 15, Antisense Research and Applications’, pages 289- 302, Crooke, S.T. and Lebleu, B. ea., CRC Press, 1993で開示されたものを含む。これらの核酸塩基のいくつかは、特に、本発明のオリゴマー化合物の結合親和性を増すのに有用である。これらには、2―アミノプロピルアデニン、5―プロピニルウラシルおよび5―プロピニルシトシンを含む、5―置換ピリミジン、6―アザピリミジンならびにN―2、N―6および0―6置換プリンが含まれる。5―メチルシトシン置換は、核酸デュプレックスの安定性を0.6〜1.2℃高めることが示されており(Sanghvi, Y.S., Crooke, S.T. and Lebleu, B., eds, ‘Antisense Research and Applications’, CRC Press, Boca Raton, 1993, pp. 276-278)、より詳細には2’―O―メトキシエチル糖改変と組み合わされるときの、塩基置換の態様である。改変核酸塩基は、米国特許第3,687,808号、並びに第4,845,205号;第5,130,302号;第5,134,066号;第5,175,273号;第5,367,066号;第5,432,272号;第5,457,187号;第5,459,255号;第5,484,908号;第5,502,177号;第5,525,711号;第5,552,540号;第5,587,469号;第5,596,091号;第5,614,617号;第5,681,941号;第5,750,692号;第5,763,588号;第5,830,653号;第6,005,096号;および米国特許出願公開第2003/0158403号に記載されている。
従って、「改変」という用語は、ガイドRNA、エンドヌクレアーゼ、またはガイドRNAとエンドヌクレアーゼの両方に組み込まれた、非天然の糖、リン酸、または塩基を指す。所与のオリゴヌクレオチドの全ての位置が、一様に改変される必要はないが、実際、上述の複数の改変が、単一オリゴヌクレオチド、または、オリゴヌクレオチド内の単一ヌクレオシドにも、組み込まれ得る。
いくつかの態様において、ガイドRNAおよび/またはエンドヌクレアーゼをコードするmRNA(あるいはDNA)は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞内分布、または細胞内への取り込みを増強する1つ以上の部分またはコンジュゲートに化学的に連結している。これらの部分には、脂質部分、例えば、コレステロール部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86: 6553-6556 (1989))、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 4: 1053-1060 (1994))、チオエーテル、例えば、ヘキシル―S―トリチルチオール(Manoharan et al, Ann. N. Y. Acad. Sci., 660: 306-309 (1992) and Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 3: 2765-2770 (1993))、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 20: 533-538 (1992))、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基(Kabanov et al., FEBS Lett., 259: 327-330 (1990) and Svinarchuk et al., Biochimie, 75: 49- 54 (1993))、リン脂質、例えば、ジ―ヘキサデシル―rac―グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2―ジ―O―ヘキサデシル―rac―グリセロ―3―H―ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 36: 3651-3654 (1995) and Shea et al., Nucl. Acids Res., 18: 3777-3783 (1990))、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖(Mancharan et al., ヌクレオシドs & ヌクレオチドs, 14: 969-973 (1995))、アダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 36: 3651-3654 (1995))、パルミチル部分((Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1264: 229-237 (1995))、あるいはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ―カルボニル―tオキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 277: 923-937 (1996))が含まれるが、これらに限定されない。米国特許第4,828,979号;第4,948,882号;第5,218,105号;第5,525,465号;第5,541,313号;第5,545,730号;第5,552,538号;第5,578,717,5,580,731号;第5,580,731号;第5,591,584号;第5,109,124号;第5,118,802号;第5,138,045号;第5,414,077号;第5,486,603号;第5,512,439号;第5,578,718号;第5,608,046号;第4,587,044号;第4,605,735号;第4,667,025号;第4,762,779号;第4,789,737号;第4,824,941号;第4,835,263号;第4,876,335号;第4,904,582号;第4,958,013号;第5,082,830号;第5,112,963号;第5,214,136号;第5,082,830号;第5,112,963号;第5,214,136号;第5,245,022号;第5,254,469号;第5,258,506号;第5,262,536号;第5,272,250号;第5,292,873号;第5,317,098号;第5,371,241,5,391,723号;第5,416,203,5,451,463号;第5,510,475号;第5,512,667号;第5,514,785号;第5,565,552号;第5,567,810号;第5,574,142号;第5,585,481号;第5,587,371号;第5,595,726号;第5,597,696号;第5,599,923号;第5,599,928号および第5,688,941号もまた、参照されたい。
糖および他の部分は、タンパク質、および、陽イオン性のポリソームおよびリポソームなどの、ヌクレオチドを含む複合体を、特定の部位に向かわせるために用いられ得る。例えば、幹細胞が指示する移送は、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)を介して媒介され得る:例えば、Hu, et al., Protein Pept Lett. 21(10):1025-30 (2014)を参照されたい。当業界で知られ、定期的に開発される他のシステムは、本願で用いられる生体分子および/またはその複合体を、目的の特定の標的細胞に向かわせるために、用いられ得る。
これらの標的部分またはコンジュゲートは、第1級または第2級ヒドロキシル基などの官能基に共有結合したコンジュゲート基を含むことができる。本発明のコンジュゲート基には、インターカレーター、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学的特性を高める基、およびオリゴマーの薬物動態特性を高める基が含まれる。典型的なコンジュゲート基には、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸塩、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、および色素が含まれる。本発明の文脈において、薬力学的特性を増強する基には、取り込みを改善し、分解に対する耐性を増強し、および/または標的核酸との配列特異的ハイブリダイゼーションを強化する基が含まれる。本発明の文脈において、薬物動態特性を増強する基には、本発明の化合物の取り込み、分布、代謝または排泄を改善する基が含まれる。代表的なコンジュゲート基が、1992年10月23日に出願された国際特許出願PCT/US92/09196、および米国特許第6,287,860号に開示されており、参照により本明細書に組み込まれる。コンジュゲート部分には、コレステロール部分などの脂質部分、コール酸、チオエーテル、例えばヘキシル-5-トリチルチオール、チオコレステロール、脂肪族鎖、例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基、リン脂質、例えばジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖、またはアダマンタン酢酸、パルミチル部分、またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分が含まれるが、これらに限定されない。例えば、米国特許第4,828,979号;第4,948,882号;第5,218,105号;第5,525,465号;第5,541,313号;第5,545,730号;第5,552,538号;第5,578,717,5,580,731号;第5,580,731号;第5,591,584号;第5,109,124号;第5,118,802号;第5,138,045号;第5,414,077号;第5,486,603号;第5,512,439号;第5,578,718号;第5,608,046号;第4,587,044号;第4,605,735号;第4,667,025号;第4,762,779号;第4,789,737号;第4,824,941号;第4,835,263号;第4,876,335号;第4,904,582号;第4,958,013号;第5,082,830号;第5,112,963号;第5,214,136号;第5,082,830号;第5,112,963号;第5,214,136号;第5,245,022号;第5,254,469号;第5,258,506号;第5,262,536号;第5,272,250号;第5,292,873号;第5,317,098号;第5,371,241,5,391,723号;第5,416,203,5,451,463号;第5,510,475号;第5,512,667号;第5,514,785号;第5,565,552号;第5,567,810号;第5,574,142号;第5,585,481号;第5,587,371号;第5,595,726号;第5,597,696号;第5,599,923号;第5,599,928号および第5,688,941号を参照されたい。
化学合成の影響を受けにくく、通常酵素合成により生産される、より長いポリヌクレオチドはまた、様々な手段で改変することができる。これらの改変には、例えば、いくつかのヌクレオチドアナログの導入、分子の5’または3’末端での特定の配列または他の部分の組み込み、およびその他の改変が含まれ得る。実例として、Cas9をコードするmRNAは、およそ4kbの長さであり、インビトロ転写により合成することができる。例えば、mRNAに対する改変は、(例えば、細胞での分解への耐性を増すことにより)翻訳または安定性を増すために、あるいは、外因性RNA、特にCas9をコードするようなより長いRNAの導入後に細胞でしばしば観察される自然免疫応答を、RNAが誘発する傾向を減らすために、適用され得る。
多数のこれらの改変は、当業界で記載されており、例えば、ポリAテイル、5’キャップアナログ(例えば、Anti Reverse Cap Analog(ARCA)またはm7G(5’ppp(5’)G(mCAP))、改変された5’または3’非翻訳領域(UTR)、改変された塩基の使用(シュード−UTP、2−チオ−UTP、5−メチルシチジン−5’三リン酸(5−メチル−CTP)またはN6−Methyl−ATPなど)、または5’末端リン酸を除去するためのホスファターゼ処理が挙げられる。これらおよび他の改変は当業界で知られており、RNAの新しい改変は、定期的に開発されている。
莫大な数の、改変型RNAの商業的供給元が存在し、例えば、TriLink Biotech, AxoLabs, Bio-Synthesis Inc., Dharmaconおよびその他の多くを含む。例えば、TriLinkにより記載されている通り、5−メチル−CTPは、ヌクレアーゼ安定性の増加、翻訳の増加、または自然免疫受容体とインビトロ転写RNAとの相互作用の減少などの、所望の特性を与えるために、用いることができる。Kormann et al.により刊行物で例示され、Warren et al.が以下で言及しているように、5−メチルシチジン−5’三リン酸(5−メチル−CTP)、N6−Methyl−ATP、並びにシュード−UTPおよび2−チオ−UTPもまた、自然免疫刺激を減らす一方、翻訳を増強すること示されている
インビボで送達される化学的に改変されたmRNAは、治療効果の改善を達成するために用いることができることが示されている;例えば、Kormann et al., Nature Biotechnology 29, 154-157 (2011)を参照されたい。これらの改変は、例えば、RNA分子の安定性を増し、および/または、その免疫原性を低減させるために、用いることができる。シュード−U、N6−メチル−A、2−チオ−Uおよび5−メチル−Cなどの化学的改変を用いることで、マウスにおいて、ウリジンおよびシチジン残基のちょうど4分の1が、それぞれ2−チオ−Uおよび5−メチル−Cに置換され、Toll様受容体(TLR)が媒介するmRNAの認識の顕著な減少をもたらすことが見出された。これらの改変は、自然免疫システムの活性化を低減させることによってインビボでのmRNAの安定性および寿命を効果的に増加させるために、用いることができる;例えば、上記のKormann et al.を参照されたい。
自然の抗ウイルス応答を迂回するように設計された改変を組み込んだ合成メッセンジャーRNAは、分化したヒト細胞を、多能性への再プログラムすることができることもまた、示されている。例えば、Warren, et al., Cell Stem Cell, 7(5):618-30 (2010)を参照されたい。主要な再プログラムタンパク質として働く、これらの改変mRNAは、複数のヒト細胞タイプを再プログラムする、有効な手段であり得る。これらの細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)と呼ばれ、5−メチル−CTP、シュード−UTPおよびAnti Reverse Cap Analog(ARCA)を組み込んだ酵素合成されたRNAを、効果的に細胞の抗ウイルス応答を逃れるために用いることができることが発見された;例えば、上述のWarren et al.を参照されたい。
当業界で記載されるポリヌクレオチドの他の改変には、例えば、ポリAテイルの使用、5’キャップアナログ(例えばm7G(5’)ppp(5’)G(mCAP))の付加、5’または3’非翻訳領域(UTR)の改変、または5’末端リン酸を除去するためのホスファターゼによる処理が含まれ、新しいアプローチが定期的に開発されている。
本明細書で用いられる改変型RNAの産生に適用可能な多くの組成物および技術が、低分子干渉RNA(siRNA)を含むRNA干渉(RNAi)の改変に関連して開発されている。mRNA干渉を介した遺伝子サイレンシングに対するそれらの影響は、一般的に一過性であり、反復投与を必要とするため、siRNAは、インビボで特定の課題を提示している。さらに、siRNAは2本鎖RNA(dsRNA)であり、哺乳動物細胞は、しばしばウイルス感染の副産物であるdsRNAを検出して中和するよう進化した免疫応答を有する。従って、dsRNAに対する細胞応答を媒介することができる、PKR(dsRNA−応答性キナーゼ)、および潜在的なレチオニン酸誘導性遺伝子I(RIG−I)などの哺乳動物の酵素、並びに、これらの分子に応答してサイトカイン誘導の引き金を引くToll様受容体(TLR3、TLR7およびTLR8など)が存在する。例えば、Angart et al., Pharmaceuticals (Basel) 6(4): 440-468 (2013); Kanasty et al., Molecular Therapy 20(3): 513-524 (2012); Burnett et al., Biotechnol J. 6(9):1130-46 (2011); Judge and MacLachlan, Hum Gene Ther 19(2):111-24 (2008)によるレビュー;およびそれらに引用されている参考文献を参照されたい。
本明細書に記載されるように、RNA安定性の増強、自然免疫応答の減少、および/またはヒト細胞へのポリヌクレオチドの導入と関連して役立ち得る他の利益の達成ために、多種多様な改変が、開発され適用されている。例えば、Whitehead KA et al., Annual Review of Chemical and Biomolecular Engineering, 2: 77-96 (2011); Gaglione and Messere, Mini Rev Med Chem, 10(7):578-95 (2010); Chernolovskaya et al, Curr Opin Mol Ther., 12(2):158-67 (2010); Deleavey et al., Curr Protoc Nucleic Acid Chem Chapter 16: Unit 16.3 (2009); Behlke, Oligonucleotides 18(4):305-19 (2008); Fucini et al., Nucleic Acid Ther 22(3): 205-210 (2012); Bremsen et al., Front Genet 3:154 (2012) によるレビューを参照されたい。
上述のように、改変型RNAの多くの商業的供給元が存在し、これらの多くは、siRNAの有効性を改善するように設計した改変を専門としている。様々な手法が、文献で報告された様々な発見に基づき、提案されている。例えば、Dharmacon社は、Kole, Nature Reviews Drug Discovery 11:125-140 (2012)により報告されているように、非架橋酸素の硫黄による置換(ホスホロチオエート、PS)が、siRNAのヌクレアーゼ耐性を改善するために、広く使われていると述べている。リボースの第2位の改変は、デュプレックス安定性(Tm)を増しながら、ヌクレオチド間リン酸結合のヌクレアーゼ耐性を改善させることが報告されており、免疫活性化からの保護を提供することもまた示されている。Soutschek et al. Nature 432:173-178 (2004) により報告されているように、中程度のPS骨格改変と、小さな、よく許容される2’置換(2’−O−メチル、2’−フルオロ、2’−ヒドロ)との組み合わせは、インビボに適用される高度に安定なsiRNAと関連している;また、Volkov, Oligonucleotides 19:191-202 (2009) により報告されているように、2’−O−メチル改変は安定性を改善する上で有効であることが報告されている。自然免疫応答の融合を減少させることに関して、特定の配列を2’−O−メチル、2’−フルオロ、2’−ヒドロで改変することは、一般的にサイレンシング活性を保ちながら、TLR7/TLR8相互作用を低減させることが報告されている;例えば、Judge et al., Mol. Ther. 13:494-505 (2006); およびCekaite et al., J. Mol. Biol. 365:90-108 (2007) を参照されたい。2−チオウラシル、シュードウラシル、5−メチルシトシン、5−メチルウラシル、およびN6−メチルアデノシンなどのさらなる改変もまた、TLR3、TLR7、およびTLR8により媒介される免疫効果を最小限にすることが示されている:例えば、Kariko, K. et al., Immunity 23:165-175 (2005)を参照されたい。
当業界においても知られ市販されている、多くのコンジュゲートは、RNAなどの、本明細書で用いられるポリヌクレオチドに適用することができ、それらの送達および/または細胞による取り込みを増強することができる。これらのコンジュゲートは、例えば、コレステロール、トコフェロールおよび葉酸、脂質、ペプチド、ポリマー、リンカーおよびアプタマーを含む;例えば、Winkler, Ther. Deliv. 4:791-809によるレビューおよびそれに引用されている参考文献を参照されたい。
コドン最適化
部位特異的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、目的の標的DNAを含有する細胞において発現させるために、当業界で標準的な方法に従い、コドン最適化される。例えば、目的の標的核酸がヒト細胞内にある場合、Cas9をコードするヒトコドン最適化ポリヌクレオチドが、Cas9ポリヌクレオチドの生産のために用いられることが企図される。
ゲノムを標的とする核酸と、部位特異的ポリペプチドとの複合体
ゲノムを標的とする核酸は、部位特異的ポリペプチド(例えば、Cas9などの核酸ガイドヌクレアーゼ)と相互作用し、それにより複合体を形成する。ゲノムを標的とする核酸は、部位特異的ポリペプチドを標的核酸へと導く。
RNP
既に述べたように、部位特異的ポリペプチドとゲノムを標的とする核酸とは、それぞれ、細胞または患者に、別々に投与されてよい。一方で、部位特異的ポリペプチドは、1つ以上のガイドRNA、または、1つ以上のtracrRNAを伴うcrRNAと、予め複合化されていてよい。予め複合化された物質は、次に、細胞または患者に投与されてよい。該予め複合化された物質は、リボ核タンパク質粒子(RNP)として知られる。
システム構成成分をコードする核酸
別の局面において、本開示は、本開示のゲノムを標的とする核酸、本開示の部位特異的ポリペプチド、および/または本開示の方法の態様を実行するのに必要な任意の核酸またはタンパク質性分子をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
いくつかの態様において、本開示のゲノムを標的とする核酸、本開示の部位特異的ポリペプチド、および/または本開示の方法の態様を実行するのに必要な任意の核酸またはタンパク質性分子をコード掏る核酸は、ベクターを含む(例えば、組換え発現ベクター)。
「ベクター」という用語は、連結されている別の核酸を移送することができる核酸分子を指す。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、さらなる核酸セグメントが連結され得る環状2本鎖DNAループのことを指す。ベクターの別のタイプはウイルスベクターであり、ここではさらなる核酸セグメントがウイルスゲノムに連結され得る。いつくかのベクターは、それらが導入された宿主細胞において自律複製することができる(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクターおよび、エピソームの哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソームの哺乳動物ベクター)は、宿主細胞のゲノムに、宿主細胞への導入の際に組み込まれ、それにより宿主ゲノムと共に複製される。
いくつかの態様において、ベクターは、それらが作動可能に連結されている核酸の発現を指示することができる。これらのベクターは、本明細書において、「組換え発現ベクター」、あるいはさらに単純に「発現ベクター」と呼ばれ、同等の機能を果たす。
「作動可能に連結した」という用語は、目的のヌクレオチド配列が、該ヌクレオチド配列の発現を可能にするように、制御配列と連結していることを意味する。「制御配列」という用語は、例えば、プロモーター、エンハンサー、および他の発現調節エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図されている。これらの制御配列は、当業界でよく知られ、記載されており、例えばGoeddel;Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)において記載されている。制御配列は、多くのタイプの宿主細胞において、ヌクレオチド配列の恒常的な発現を指示するもの、および、ある種の宿主細胞においてのみ、ヌクレオチド配列の発現を指示するもの(例えば組織特異的制御配列)を含む。発現ベクターの設計は、標的細胞の選択、所望の発現レベルなどのファクターに依存し得ることは、当業者に理解されるであろう。
企図される発現ベクターには、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、レトロウイルス(例えば、マウス白血病ウイルス、脾壊死ウイルス、およびラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス(myeloproliferativesarcomavirus)、および乳癌ウイルス(mammarytumorvirus)など)のウイルスベクター、および、他の組換えベクターが含まれるが、これらに限定されない。真核生物の標的細胞に対して企図される他のベクターには、ベクターpXT1、pSG5、pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVLSV40(Pharmacia)が含まれるが、これらに限定されない。真核生物の標的細胞に対して企図されるさらなるベクターには、ベクターpCTx−1、pCTx−2、およびpCTx−3(図1A〜1Cに記載されている)が含まれるが、これらに限定されない。他のベクターは、宿主細胞に適合する限り、使用されてよい。
いくつかの態様において、ベクターは、1つ以上の転写および/または翻訳調節エレメントを含む。利用するホスト/ベクターシステムに応じて、構成的および誘導型プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含む、多くの好適な転写および翻訳調節エレメントのいずれかが、発現ベクターにおいて用いられてよい。いくつかの態様において、ベクターは、ウイルス配列、または、CRISPR機構の構成成分、または他のエレメントのいずれかを不活性化させる、自己不活性化ベクターである。
好適な真核生物のプロモーター(すなわち、真核細胞において機能するプロモーター)の非限定的な例には、サイトメガロウイルス(CMV)前初期、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルス由来の末端反復配列(LTR)、ヒト伸長因子1プロモーター(EF1)、トリβアクチンプロモーター(CAG)と融合したサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーを含むハイブリッド構築物、マウス幹細胞ウイルス(murine stem cell virus)プロモーター(MSCV)、ホスホグリセリン酸キナーゼ−1遺伝子座プロモーター(PGK)、およびマウスメタロチオネイン−I由来のプロモーターが含まれる。
Casエンドヌクレアーゼに関連して用いられるガイドRNAを含む、低分子RNAを発現させるために、例えば、U6およびH1を含む、RNAポリメラーゼIIIプロモーターなどの様々なプロモーターが、有利であり得る。これらのプロモーターの使用を増強させる記載およびパラメーターは、当業界で知られており、さらなる情報および手法が定期的に記載されている;例えば、Ma, H. et al., Molecular Therapy - Nucleic Acids 3, e161 (2014) doi:10.1038/mtna.2014.12を参照されたい。
発現ベクターはまた、翻訳開始のためのリボソーム結合部位、および、転写ターミネーターを含有してよい。発現ベクターはまた、発現を増幅させるための適切な配列を含んでよい。発現ベクターはまた、部位特異的ポリペプチドに融合して、その結果融合タンパク質を生じる非天然のタグ(例えば、ヒスチジンタグ、ヘマグルチニンタグ、緑色蛍光タンパク質など)をコードするヌクレオチド配列を含んでよい。
いくつかの態様において、プロモーターは、誘導型の(inducible)プロモーター(例えば、ヒートショックプロモーター、テトラサイクリン調節プロモーター、ステロイド調節プロモーター、金属調節プロモーター、エストロゲンレセプター調節プロモーターなど)である。いくつかの態様において、プロモーターは、構成的(constitutive)プロモーター(例えば、CMVプロモーター、UBCプロモーター)である。いくつかの態様において、プロモーターは、空間的に制限されたプロモーターおよび/または時間的に制限されたプロモーター(例えば、組織特異的なプロモーター、細胞型特異的なプロモーターなど)である。
いくつかの態様において、本開示のゲノムを標的とする核酸および/または部位特異的ポリペプチドをコードする核酸は、細胞に送達するための送達媒体の内部、または表面にパッケージされる。企図される送達媒体には、ナノスフェア(nanosphere)、リポソーム、量子ドット、ナノ粒子(nanoparticle)、ポリエチレングリコール粒子、ハイドロゲル、およびミセルが含まれるが、これらに限定されない。当業界で記載されるように、様々な標的部分が、これらの媒体と、所望の細胞型または位置との優先的な相互作用を増強するために、用いられ得る。
本開示の複合体、ポリペプチド、および核酸の細胞への導入は、ウイルスにより起こるか、あるいは、バクテリオファージ感染、遺伝子導入、接合(conjugation)、プロトプラスト融合、リポフェクション、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション(nucleofection)、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介遺伝子導入、DEAE−デキストラン媒介遺伝子導入、リポソーム媒介遺伝子導入、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション、ナノ粒子媒介核酸送達などにより起こり得る。
送達
ガイドRNAポリヌクレオチド(RNAまたはDNA)および/またはエンドヌクレアーゼポリヌクレオチド(RNAまたはDNA)は、当業界で知られている、ウイルス性または非ウイルス性の送達媒体で、送達され得る。あるいは、エンドヌクレアーゼポリペプチドは、エレクトロポレーションまたは脂質ナノ粒子などの、当業界で知られている非ウイルス性の送達媒体により、送達されてもよい。いくつかの態様において、DNAエンドヌクレアーゼは、1つ以上のポリペプチドとして、単独で、あるいは、1つ以上のガイドRNAと、もしくは、1つ以上のtracrRNAを伴うcrRNAと予め複合化されて、送達されてもよい。
ポリヌクレオチドは、ナノ粒子、リポソーム、リボ核タンパク質、正電荷を持つペプチド、小分子RNA−コンジュゲート、アプタマー−RNAキメラ、およびRNA−融合タンパク質複合体を含むが、これらに限定されない、非ウイルス性の送達媒体により、送達されてもよい。いくつかの体表的な非ウイルス性の送達媒体は、Peer and Lieberman, Gene Therapy, 18: 1127-1133 (2011) (本文献は、他のポリヌクレオチドにとっても有用であるsiRNAのための非ウイルス性送達媒体に着目している)に記載されている。
ガイドRNA、sgRNA、およびエンドヌクレアーゼをコードするmRNAなどのポリヌクレオチドは、脂質ナノ粒子(LNP)により、細胞または患者に送達されてもよい。
LNPは、1000nm、500nm、250nm、200nm、150nm、100nm、75nm、50nm、または25nm未満の直径を有する任意の粒子を指す。あるいは、ナノ粒子は、1〜1000nm、1〜500nm、1〜250nm、25〜200nm、25〜100nm、35〜75nm、または25〜60nmの範囲のサイズであってよい。
LNPは、陽イオン性、陰イオン性、または中性の脂質から作られてよい。膜融合のリン脂質DOPEまたは膜構成成分コレステロールなどの、中性の脂質は、遺伝子導入活性およびナノ粒子安定性を増強するために、「ヘルパー脂質」としてLNPに含まれてよい。陽イオン性の脂質の欠点には、安定性に乏しいことと、クリアランスが速いことによる効率の低さ、並びに、炎症性または抗炎症性応答の産生が含まれる。
LNPはまた、疎水性脂質、親水性脂質、または疎水性脂質と親水性脂質の両方で、構成されてもよい。
当業界で知られている、任意の脂質または脂質の組み合わせが、LNPを生産するために用いられてよい。LNPを生産するために用いられる脂質の例は、DOTMA、DOSPA、DOTAP、DMRIE、DC−コレステロール、DOTAP−コレステロール、GAP−DMORIE-DPyPE、およびGL67A−DOPE−DMPE−ポリエチレングリコール(PEG)である。陽イオン脂質の例は、98N12−5、C12−200、DLin−KC2−DMA(KC2)、DLin−MC3−DMA(MC3)、XTC、MD1、および7C1である。中性の脂質の例は、DPSC、DPPC、POPC、DOPE、およびSMである。PEG修飾脂質の例は、PEG−DMG、PEG−CerC14、およびPEG−CerC20である。
脂質は、LNPを生産するために、任意のモル比で組み合わせてよい。さらに、ポリヌクレオチドは、LNPを生産するために、広範囲のモル比で脂質と組み合わせてよい。
既に述べたように、部位特異的ポリペプチドおよびゲノムを標的とする核酸は、それぞれ、細胞または患者に、別々に投与されてよい。一方で、部位特異的ポリペプチドは、1つ以上のガイドRNA、または、1つ以上のtracrRNAを伴うcrRNAと、予め複合化されていてよい。予め複合化された物質は、次に、細胞または患者に投与されてよい。該予め複合化された物質は、リボ核タンパク質粒子(RNP)として知られる。
RNAは、RNAまたはDNAと、特異的な相互作用を形成することができる。該特性は、多くの生物学的プロセスで活用されているが、核酸リッチの細胞環境においては、乱雑な相互作用の危険性も伴う。この問題への1つの解決策は、RNAがエンドヌクレアーゼと予め複合化されている、リボ核タンパク質粒子(RNP)の形成である。RNPの別の利点は、RNAを分解から保護することである。
RNP内のエンドヌクレアーゼは、改変されていても、改変されていなくてもよい。同様に、gRNA、crRNA、tracrRNA、またはsgRNAは、改変されていても、改変されていなくてもよい。多数の改変が当業界で知られており、用いられ得る。
エンドヌクレアーゼおよびsgRNAは、一般的に、1:1のモル比で組み合わせられる。あるいは、エンドヌクレアーゼ、crRNAおよびtracrRNAは、一般的に、1:1:1のモル比で組み合わせられる。しかしながら、広範囲のモル比が、RNPの生産のために用いられてよい。
組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが、送達のために用いられてよい。送達されるポリヌクレオチド、repおよびcap遺伝子を含むようにAAVゲノムがパッケージされ、ヘルパーウイルス機能が細胞に提供されたrAAV粒子を生産する技術は、当業界ではスタンダードである。rAAVの生産は、以下の構成成分が単一の細胞(本明細書ではパッケージング細胞として示される)に存在することを必要とする:rAAVゲノム、rAAVゲノムから離れた(すなわち、rAAVゲノムに存在しない)AAVrepおよびcap遺伝子、およびヘルパーウイルス機能。AAVrepおよびcap遺伝子は、組換え体ウイルスが由来し得る任意のAAV血清型由来であってよく、また、rAAVゲノム末端逆位配列(ITR)とは異なるAAV血清型由来であってよく、これらのAAV血清型は、AAV血清型AAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5、AAV−6、AAV−7、AAV−8、AAV−9、AAV−10、AAV−11、AAV−12、AAV−13およびAAVrh.74を含むがこれらに限定されない。シュードタイプ化したrAAVは、例えば、国際特許出願公開番号WO01/83692に開示されている。表2を参照されたい。
パッケージング細胞を産生する方法には、AAV粒子生産に必要な全ての構成成分を安定的に発現する細胞株を作製することを包含する。例えば、AAVrepおよびcap遺伝子を欠いたrAAVゲノム、rAAVゲノムから離れたAAVrepおよびcap遺伝子、および、ネオマイシン耐性遺伝子などの選択マーカーを含む1個のプラスミド(または複数のプラスミド)を、細胞のゲノムに組み込む。AAVゲノムは、GCテーリング(GC tailing)(Samulski et al., 1982, Proc. Natl. Acad. S6. USA, 79:2077-2081)、制限エンドヌクレアーゼ切断部を含有する合成リンカーの付与(Laughlin et al., 1983, Gene, 23:65-73)などの手順、または直接の平滑末端のライゲーション(Senapathy & Carter, 1984, J. Biol. Chem., 259:4661-4666)により、細菌のプラスミドに導入した。パッケージング細胞株はその後、アデノウイルスなどのヘルパーウイルスに感染させる。本方法の利点は、細胞が選択可能であり、rAAVのラージスケールでの生産に好適であることである。他の好適な方法の例では、プラスミドよりもアデノウイルスまたはバキュロウイルスを用いて、rAAVゲノムおよび/またはrepおよびcap遺伝子をパッケージング細胞に導入する。
rAAV生産の一般的原理は、例えば、Carter, 1992, Current Opinions in Biotechnology, 1533-539;およびMuzyczka, 1992, Curr. Topics in Microbial. and Immunol., 158:97-129に概説されている。様々な手法が、Ratschin et al., Mol. Cell. Biol. 4:2072 (1984); Hermonat et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6466 (1984); Tratschin et al., Mo1. Cell. Biol. 5:3251 (1985); McLaughlin et al., J. Virol., 62:1963 (1988); および Lebkowski et al., 1988 Mol. Cell. Biol., 7:349 (1988)、Samulski et al. (1989, J. Virol., 63:3822-3828); 米国特許第5,173,414号;WO95/13365および対応する米国特許第5,658.776号;WO95/13392;WO96/17947;PCT/US98/18600;WO97/09441(PCT/US96/14423);WO97/08298(PCT/US96/13872);WO97/21825(PCT/US96/20777);WO97/06243(PCT/FR96/01064);WO99/11764; Perrin et al. (1995) Vaccine 13:1244-1250; Paul et al. (1993) Human Gene Therapy 4:609-615; Clark et al. (1996) Gene Therapy 3:1124-1132; 米国特許第5,786,211号;米国特許第5,871,982号;および米国特許第6,258,595号に記載されている。
AAVベクター血清型は、標的細胞型に適合し得る。例えば、以下の代表的な細胞型は、とりわけ示されたAAV型によって形質導入され得る。
アデノ随伴ウイルスベクターに加えて、他のウイルスベクターを用いることができる。これらのウイルスベクターには、レンチウイルス、アルファウイルス、エンテロウイルス、ペスチウイルス,バキュロウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、パポーバウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、および単純ヘルペスウイルスが含まれるが、これらに限定されない。
いくつかの態様において、Cas9 mRNA、SERPINA1遺伝子内の1つまたは2つの座位を標的とするsgRNA、およびドナーDNAは、それぞれ別々に脂質ナノ粒子に含まれているか、あるいは、全て共に1つの脂質ナノ粒子に含まれているか、あるいは、共に2つ以上の脂質ナノ粒子に含まれている。
いくつかの態様において、Cas9 mRNAは脂質ナノ粒子に含まれているが、sgRNAおよびドナーDNAはAAVベクターで送達される。いくつかの態様において、Cas9 mRNAおよびsgRNAは共に脂質ナノ粒子に含まれているが、ドナーDNAはAAVベクターで送達される。
Cas9ヌクレアーゼをDNAプラスミドとして、mRNAとして、またはタンパク質として送達する選択肢が利用可能である。ガイドRNAは同一のDNAから発現することができ、あるいは、RNAとしてもまた送達することができる。RNAはその半減期を変更もしくは改善するために、または、免疫応答の可能性もしくは程度を減少させるために、化学的に改変することができる。エンドヌクレアーゼタンパク質は、送達に先立ち、gRNAと複合体を形成することができる。ウイルスベクターは、効率的な送達を可能にする;HDRのドナーと同様に、Ca9の分割バージョンおよびCas9のより小さなオーソログをAAVにパーケージすることができる。これらの構成成分をそれぞれ送達できる種々の非ウイルス性の送達方法もまた存在し、あるいは、非ウイルス性の方法とウイルス性の方法とを、並行して用いることができる。例えば、ナノ粒子を、タンパク質およびガイドRNAを送達するために用いることができ、一方でAAVを、ドナーDNAを送達するために用いることができる。
エキソソーム
エキソソームは、リン脂質二重層に囲まれた一種の微小胞であり、特定の組織に核酸を送達するために用いられ得る。体内の多くの異なるタイプの細胞が、エキソソームを天然に分泌している。エキソソームは、エンドソームが陥入して多胞性エンドソーム(MVE)を形成する際に、細胞質内に形成される。MVEが細胞膜と融合すると、エキソソームは細胞外空間に分泌される。直径30〜120nmの範囲の大きさであるエキソソームは、細胞間コミュニケーションの形で、ある細胞から別の細胞へ様々な分子をやりとりすることができる。マスト細胞などの、天然にエキソソームを生産する細胞は、遺伝的に変化させて特定の組織を標的とする表面タンパク質を有するエキソソームを生産することができ、また、エキソソームは血流から単離することができる。特定の核酸は、エレクトロポレーションで、改変されたエキソソーム内に入れることができる。エキソソームは、全身に導入すると、核酸を特定の標的組織に送達することができる。
遺伝的に改変された細胞
「遺伝的に改変された細胞」という用語は、ゲノム編集により(例えば、CRISPR/Casシステムを用いて)導入された、少なくとも1つの遺伝的改変を含む細胞を指す。本明細書のいくつかのエクスビボの態様において、遺伝的に改変された細胞は、遺伝的に改変された前駆細胞である。本明細書のいくつかのインビボの態様において、遺伝的に改変された細胞は、遺伝的に改変された肝細胞である。外因性のゲノムを標的とする核酸および/またはゲノムを標的とする核酸をコードする外因性核酸を含む、遺伝的に改変された細胞が、本明細書において企図される。
「コントロール処理集団」という用語は、ゲノム編集構成成分の付与を除いて、同一の培地、ウイルス誘導、核酸配列、温度、培養密度、フラスコサイズ、pHなどで処理された細胞集団を表す。例えば、AATタンパク質のウェスタンブロット解析、あるいは、SERPINA1 mRNAの定量などの、当業界で知られる方法はいずれも、SERPINA1遺伝子またはタンパク質の発現または活性の回復を測定するために用いることができる。
「単離した細胞」という用語は、元々発見された生物から取り出された細胞、またはその細胞の子孫を指す。場合により、該細胞はインビトロで、例えば、規定の条件で、あるいは、他の細胞の存在下で、培養されている。場合により、該細胞はその後第二の生物に導入されるか、あるいは、該細胞(あるいは、該細胞が由来する細胞)が単離された生物に再導入される。
単離した細胞集団に関する「単離した集団」という用語は、混合の、または、不均一な細胞集団から、取り出して分離された細胞集団のことを指す。いくつかの態様において、単離した集団は、該細胞が単離または濃縮された不均一な集団と比較して、実質的に純粋な細胞集団である。いくつかの態様において、単離した集団は、ヒト前駆細胞の単離した集団であり、例えば、ヒト前駆細胞および該ヒト前駆細胞が由来する細胞を含む、不均一な細胞集団と比較して、実質的に純粋なヒト前駆細胞の集団である。
特定の細胞集団に関する「大幅に増強された」という用語は、特定の細胞型の出現が、既存または参照のレベルと比較して、例えば、AATDを寛解させるためのこれらの細胞の所望のレベルに応じて、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9,少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも400倍、少なくとも1000倍、少なくとも5000倍、少なくとも20000倍、少なくとも100000倍以上、増加している細胞集団を指す。
特定の細胞集団に関する「実質的に濃縮された」という用語は、細胞集団全体を構成する細胞に関して少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%以上である細胞集団を指す。
特定の細胞集団に関する「実質的に濃縮された」または「実質的に純粋な」という用語は、細胞集団全体を構成する細胞に関して少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%純粋である細胞集団を指す。すなわち、前駆細胞集団に関する「実質的に純粋な」または「本質的に精製された」という用語は、本明細書において用語で規定された前駆細胞ではない細胞を、約20%、約15%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、または1%未満より少ない割合で含有する細胞集団を指す。
ゲノム編集したiPSCの肝細胞への分化
本発明のエクスビボ法の別のステップは、ゲノム編集したiPSCを肝細胞へ分化させることを包含する。分化ステップは、当業界で知られる任意の方法に従い行ってよい。例えば、hiPSCは、アクチビンおよびB27サプリメント(Life Technology)を含む様々な処理を用いて、胚体内胚葉に分化させる。胚体内胚葉はさらに、以下を含む処理を用いて、肝細胞に分化させる:FGF4、HGF、BMP2、BMP4、オンコスタチンM、デキサメタゾンなど(Duan et al, STEM CELLS; 2010;28:674-686, Ma et al, STEM CELLS TRANSLATIONAL MEDICINE 2013;2:409-419 )。
ゲノム編集した間葉系幹細胞の肝細胞への分化
本発明のエクスビボ法の別のステップは、ゲノム編集した間葉系幹細胞を肝細胞へ分化させることを包含する。分化ステップは、当業界で知られる任意の方法に従い行ってよい。例えば、hMSCは、インスリン、トランスフェリン、FGF4、HGF、胆汁酸を含む、様々な因子およびホルモンで処理される(Sawitza I et al, Sci Rep. 2015; 5: 13320)。
患者への細胞の移植
本発明のエクスビボ法の別のステップは、患者への肝細胞の移植を包含する。本移植ステップは、当業界で知られる任意の移植方法を用いて達成されてよい。例えば、遺伝的に改変された細胞を患者の肝臓に直接注入してもよく、あるいは、患者に投与してもよい。
本発明のエクスビボ法の別のステップは、患者への前駆細胞または初代肝細胞の移植を包含する。本移植ステップは、当業界で知られる任意の移植方法を用いて達成されてよい。例えば、遺伝的に改変された細胞を患者の肝臓に直接注入してもよく、あるいは、患者に投与してもよい。遺伝的に改変された細胞は、選択マーカーを用いてエクスビボで精製されてよい。
医薬上許容される担体
本明細書で企図される、対象に前駆細胞を投与するエクスビボ法は、前駆細胞を含む治療用組成物の使用を包含する。
治療用組成物は、細胞組成物と共に、および場合により、有効成分としてその中に溶解または分散された、本明細書に記載の少なくとも1つのさらなる生物活性剤とともに生理学的に許容される担体を含有する。いくつかの態様において、望まれない限り、治療用組成物は、治療目的で哺乳動物またはヒト患者に投与される場合、実質的に免疫原性ではない。
一般的に、本明細書に記載される前駆細胞は、医薬上許容される担体との懸濁液として投与される。当業者であれば、細胞組成物で用いられる医薬上許容される担体は、緩衝剤、化合物、凍結保存剤、保存剤または他の薬剤を、対象に送達される細胞の生存率を実質的に阻害する量では含まないことを理解するであろう。細胞を含む製剤は、例えば、細胞膜の完全性を維持できようにする浸透圧緩衝剤を含み得、また、投与の際の細胞の生存率を維持するか、あるいは生着を強化する栄養分を、場合により含み得る。これらの製剤および懸濁液は、当業者に知られており、かつ/または、本明細書に記載されるように、通例の実験法を用いて、前駆細胞との使用に適合させることができる。
細胞組成物はまた、乳化手順が細胞生存率に悪影響を与えないならば、乳化させるか、あるいは、リポソーム組成物として提示することができる。細胞および他の任意の有効成分は、医薬上許容でき、かつ、有効成分と互換できる賦形剤と混合することができ、本明細書に記載の治療方法での使用に好適な量であり得る。
細胞組成物に含まれるさらなる薬剤は、細胞組成物の構成成分の医薬上許容できる塩を含むことができる。医薬上許容できる塩は、無機酸(例えば、塩酸もしくはリン酸)または有機酸(例えば、酢酸、酒石酸、マンデル酸など)で形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基で形成される)を含む。遊離のカルボキシル基で形成された塩はまた、無機塩基(例えば、など)および有機塩基(など)に由来し得る。遊離カルボキシル基で形成される塩はまた、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩または水酸化第二鉄などの無機塩基、および、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導することができる。
生理学的に許容される担体は、当業界でよく知られている。代表的な液体担体は、有効成分および水を含有するが、金属は含有しない滅菌水溶液、または、生理的pHのリン酸ナトリウム、生理食塩水、またはその両方(例えばリン酸緩衝食塩水)などのバッファーを含有する。さらに、水性担体は、複数の緩衝塩、並びに、塩化ナトリウムおよび塩化カリウム、ブドウ糖、ポリエチレングリコールおよび他の溶質などの塩を含有し得る。液体組成物はまた、水に加えて、および、水を除いて、液相を含有し得る。これらのさらなる液相の代表的な液相は、グリセリン、綿実油などの植物油、および水−油エマルションである。特定の疾患または症状の治療において有効な、細胞組成物で用いられる活性化合物の量は、疾患または症状の性質によるであろうし、標準的な臨床技術により決定することができる。
投与および有効性
「投与」、「導入」および「移植」という用語は、細胞の配置に関連して、互換的に用いられ、例えば、前駆細胞を、対象に、損傷または修復部位などの所望の部位での導入細胞の少なくとも部分的な局在を生じる方法または経路で、所望の効果が生まれるように、配置する場合に用いられる。細胞、例えば前駆細胞またはそれらの分化した子孫は、適切な任意の経路で投与することができ、それにより対象の所望の位置への送達を生じ、ここでは、少なくとも移植細胞の一部または該細胞の構成成分は、生存している。対象に投与した後の細胞の生存期間は、数時間もの短さであることができ、例えば、24時間、数日まで、数年もの長さまで、あるいはさらに患者の一生(すなわち長期生着)であることができる。例えば、本明細書に記載されるいくつかの態様において、筋原性前駆細胞の有効量は、腹腔内または静脈内経路などの、全身の投与経路により、投与される。
「個体」、「対象」、「宿主」、および「患者」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、診断、処理、または治療が望まれる任意の対象のことを指す。いくつかの態様において、対象は哺乳動物である。いくつかの態様において、対象はヒトである。
予防的に提供される場合、本明細書に記載の前駆細胞は、AATDの任意の症状に先立ち、例えば、肺気腫、気流閉塞、慢性気管支炎、または肝臓病の発症に先立ち、対象に投与することができる。従って、肝前駆細胞集団の予防的投与は、AATDの予防に役立つ。
治療的に提供される場合、肝前駆細胞は、AATDの症状または徴候の発生時点(またはその後)、例えば肺の病気または肝臓病の発症時点で提供される。
本明細書に記載されるいくつかの態様において、本明細書に記載の方法に従い投与される肝前駆細胞集団は、1つ以上のドナーから得られたアロジェニックな肝前駆細胞を含む。「アロジェニック」とは、1つ以上の座位において遺伝子が同一でない同じ種の1つ以上の異なるドナーから得た、肝前駆細胞、または肝前駆細胞を含む生体試料、または生体試料を指す。例えば、対象に投与される肝前駆細胞集団は、1つ以上の血縁でないドナー対象、または、1つ以上の非同一の同胞に由来し得る。いくつかの態様において、同一遺伝子の肝前駆細胞集団を用いることができ、例えば、遺伝的に同一の動物、または同一の双子から得られたものを用いることができる。他の態様において、肝前駆細胞は自家細胞である;すなわち、肝前駆細胞は、自家細胞である;すなわち、肝前駆細胞は対象から得られ、または、単離され、同じ対象に投与される、すなわち、ドナーとレシピエントが同一である。
ある態様において、「有効量」という用語は、少なくとも1つ以上のAATDの徴候または症状を予防または緩和するのに必要な、前駆細胞またはその子孫の集団の量のことを指し、例えば、AATDを有する対象を治療することなどの、所望の効果を提供するのに十分な組成物の量に関係する。「治療的に有効な量」という用語は、それゆえ、AATDを有するか、または、そのリスクがある対象などの、典型的な対象に投与された場合に特定の効果を促進するのに十分な、前駆細胞または前駆細胞を含む組成物の量を指す。有効量はまた、疾病の症状の発症を予防または遅延させるか、疾病の症状のプロセスを変える(限定されるものではないが、例えば、疾患の症状の進行を遅らせる)か、あるいは、疾病の症状を逆転させるのに十分な量を含むであろう。いかなる場合でも、適切な「有効量」は、当業者により、通例の実験を用いて決定され得ることは、理解される。
本明細書に記載の様々な態様における使用のための、前駆細胞の有効量は、少なくとも102前駆細胞、少なくとも5×102前駆細胞、少なくとも103前駆細胞、少なくとも5×103前駆細胞、少なくとも104前駆細胞、少なくとも5×104前駆細胞、少なくとも105前駆細胞、少なくとも2×105前駆細胞、少なくとも3×105前駆細胞、少なくとも4×105前駆細胞、少なくとも5×105前駆細胞、少なくとも6×105前駆細胞、少なくとも7×105前駆細胞、少なくとも8×105前駆細胞、少なくとも9×105前駆細胞、少なくとも1×106前駆細胞、少なくとも2×106前駆細胞、少なくとも3×106前駆細胞、少なくとも4×106前駆細胞、少なくとも5×106前駆細胞、少なくとも6×106前駆細胞、少なくとも7×106前駆細胞、少なくとも8×106前駆細胞、少なくとも9×106前駆細胞、またはその倍数を含む。前駆細胞は1つ以上のドナーに由来するか、あるいは、自家供給源から得られる。本明細書に記載されるいくつかの態様において、前駆細胞は、それを必要とする対象に投与される前に、培養で増やされている。
AATDを有する患者の細胞で発現される機能的AATのレベルの、穏やかで漸進的な増加は、該疾病の1つ以上の症状を寛解させるため、長期生存率を増加させるため、および/または、他の治療に関連する副作用を減少させるために有益である。これらの細胞のヒト患者への投与の際、機能的AATのレベルの増加を生み出す肝臓前駆細胞の存在は、有益である。いくつかの態様において、対象の効果的な治療は、治療対象のAAT全体と比較して、少なくとも約3%、5%、または7%の機能的AATを生じる。いくつかの態様において、機能的AATは、AAT全体の少なくとも約10%であろう。いくつかの態様において、機能的AATは、AAT全体の少なくとも約20%〜30%であろう。いくつかの状況において、正常な細胞は、疾病細胞と比較して、選択上の利点を有するが故に、同様に、有意に上昇したレベルの機能的AATを有する細胞の比較的限られた亜集団の導入でさえ、様々な患者において有益であり得る。しかしながら、機能的AATレベルが上昇した肝臓前駆細胞の適度なレベルでさえ、患者におけるAATDの1つ以上の局面を寛解させるのに有益であり得る。いくつかの態様において、肝臓前駆細胞が投与される患者において、肝臓前駆細胞の、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%以上が、機能的AATのレベルの増加を生み出す。
「投与される」は、所望の部位で細胞組成物の少なくとも部分的な局在を生じる方法または経路により、前駆細胞組成物を対象に送達することを指す。細胞組成物は、対象において効果的な治療をもたらす、任意の適切な経路により投与することができる、すなわち、投与は少なくとも組成物の一部が送達される対象において、所望の位置への送達をもたらす、すなわち、一定期間に所望の部位に少なくとも1×104細胞が送達される。投与の方法には、注射、注入、滴下、または経口摂取が含まれる。「注射」には、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、脳室内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、脊髄内腔、および胸骨内の注射および注入が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、経路は静脈内である。細胞の送達のために、注射または注入による投与を行うことができる。
ある態様において、細胞は全身投与される。「全身投与」、「全身投与される」、「末梢投与」、および「末梢投与される」という言い回しは、対象の循環系に入り、代謝および他の同様のプロセスを受けるような、直接的な標的の部位、組織、または器官への投与以外の、前駆細胞集団の投与を指す。
AATDの治療のための組成物を含む治療の有効性は、熟練した臨床医により決定され得る。しかし、ある例として、機能的AATのレベルが有益な様式(例えば、少なくとも10%の増加)で変化した場合に、または他の臨床的に許容される症状または疾病のマーカーが改善または寛解した場合に、治療は「有効な治療」とみなされる。有効性はまた、入院または医療介入の必要性によって評価されるように、個体が悪化しない(例えば、慢性閉塞性肺疾患、または該疾患の進行が、停止するか、または少なくとも遅くなる)ことによっても測定できる。これらの指標を測定する方法は、当業者に知られ、および/または、本明細書に記載されている。治療は、個体または動物(いくつかの非限定的な例は、ヒトまたは哺乳動物を含む)における疾病の任意の治療を含み、(1)疾病を抑えること、例えば、症状の進行を停止させること、もしくは、遅延させること;または(2)疾病を緩和させること、例えば、症状の回復(regression);および(3)症状の発症を予防すること、あるいは、発症の可能性を減らすことを含む。
本発明による治療は、個体の機能的AATの量を増加させることにより、AATDに関する1つ以上の症状を寛解させる。通常AATDと関連する初期の徴候には、例えば、肺気腫、気流閉塞、慢性気管支炎、または肝臓病(幼少期における閉塞性黄疸およびアミノトランスフェラーゼの増加、並びに、小児期の肝臓合併症の病歴がない線維症および肝硬変)が含まれる。
キット
本開示は、本発明の方法を実行するためのキットを提供する。キットは、ゲノムを標的
とする核酸、ゲノムを標的とする核酸をコードするポリヌクレオチド、部位特異的ポリペプチド、部位特異的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/または、本発明の方法の態様を実行するのに必要な任意の核酸またはタンパク質性分子、またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。
いくつかの態様において、キットは、(1)ゲノムを標的とする核酸をコードするヌクレオチド配列を含むベクター、並びに(2)部位特異的ポリペプチド、または、部位特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチドを含むベクター、並びに(3)ベクターおよび/またはポリペプチドの再構成および/または希釈のための試薬を含む。
いくつかの態様において、キットは、(1)(i)ゲノムを標的とする核酸をコードするヌクレオチド配列、および(ii)部位特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、並びに(2)ベクターの再構成および/または希釈のための試薬を含む。
任意の上述のキットのいくつかの態様において、キットは、単分子ガイドのゲノムを標的とする核酸を含む。任意の上述のキットのいくつかの態様において、キットは二分子のゲノムを標的とする核酸を含む。任意の上述のキットのいくつかの態様において、キットは、2つ以上の二分子ガイドまたは単分子ガイドを含む。いくつかの態様において、キットは、核酸を標的とする核酸をコードするベクターを含む。
任意の上述のキットのいくつかの態様において、キットはさらに、所望の遺伝的改変をもたらすように挿入されたポリヌクレオチドを含む。
キットの構成成分は、別々の容器に入っていてよく、または、単一の容器で混合されていてもよい。
いくつかの態様において、上記に記載されるキットはさらに、1つ以上のさらなる試薬を含み、ここでこれらのさらなる試薬は、バッファー、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを細胞に導入するためのバッファー、洗浄バッファー、コントロール試薬、コントロールベクター、コントロールRNAポリヌクレオチド、DNAからポリペプチドをインビトロで生産するための試薬、配列決定のアダプターなどから選択される。バッファーは、安定化バッファー、再構成バッファー、希釈バッファー、または同様のものであり得る。いくつかの態様において、キットはまた、エンドヌクレアーゼによるオンターゲット結合またはDNA切断を促進または増強させるために、あるいは、ターゲティングの特異性を改善させるために用いられ得る、1つ以上の構成成分を含む。
上述の構成成分に加えて、キットはさらに、本方法を実施するためのキットの構成成分を用いるための説明書を含み得る。本方法を実施するための説明書は、一般的に好適な記録媒体に記録されている。例えば、説明書は、紙またはプラスチックなどの基材(substrate)に印刷されていてよい。説明書は、添付文書としてキットに存在してよく、キットまたはその構成成分の容器のラベルなどに(すなわち、パッケージングまたはサブパッケージングに関連して)存在してもよい。説明書は、好適なコンピューター可読記憶媒体、例えば、CD−ROM、ディスケット、フラッシュドライブなどに存在する、電子記憶データファイルとして存在してもよい。場合によっては、実際の説明書はキット内に存在しないが、リモート・ソースから(例えば、インターネットにより)説明書を取得するための手段が提供され得る。本態様の一例としては、説明書が閲覧可能なウェブアドレス、および/または、説明書がダウンロード可能なウェブアドレスを含むキットがある。説明書と同様に、説明書を取得するための該手段は、好適な基材に記録され得る。
ガイドRNA製剤
本発明のガイドRNAは、特定の投与方法および剤形に応じて、担体、溶媒、安定剤、アジュバント、希釈剤などの、医薬上許容できる賦形剤と共に製剤化される。ガイドRNA組成物は一般的に、生理的に適合するpHを達成するように製剤化され、製剤化および投与経路に応じて、約pH3〜約pH11、約pH3〜約pH7の範囲である。いくつかの態様において、pHは約pH5.0〜約pH8の範囲になるように調整される。いくつかの態様において、該組成物は、本明細書に記載される少なくとも1つの化合物の治療的に有効な量を、1つ以上の医薬上許容できる賦形剤と共に含む。場合により、該組成物は、本明細書に記載される化合物の組み合わせを含むか、あるいは、細菌の増殖の治療または予防において有用な第二有効成分(例えば、抗細菌薬または抗菌薬であるが、これらに限定されない)を含んでよく、あるいは、本発明の試薬の組み合わせを含んでよい。
好適な賦形剤は、例えば、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸共重合体、および不活性のウイルス粒子などの、大きくてゆっくりと代謝される巨大分子を含む、担体分子を含む。他の代表的な賦形剤は、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸であるが、これに限定されない)、キレート剤(例えばEDTAであるが、これに限定されない)、糖(例えばデキストリン、ヒドロキシアルキルセルロース、 aおよびヒドロキシアルキルメチルセルロースであるが、これらに限定されない)、ステアリン酸、液体(例えば油、水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールであるが、これらに限定されない)、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などを含む。
他の可能な治療方法
遺伝子編集は、特定の配列を標的とするように操作したヌクレアーゼを用いて、行うことができる。今日までに、4つの主要なタイプのヌクレアーゼが存在する:メガヌクレアーゼおよびその誘導体、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、およびCRISPR−Cas9ヌクレアーゼシステムである。特に、RNA−DNA相互作用は主としてCas9を導くが、ZFNおよびTALENの特異性はタンパク質−DNA相互作用によるものであるため、ヌクレアーゼプラットフォームは、設計、標的とする密度、および作用様式の難しさが様々である。Cas9切断はまた、隣接モチーフ、PAMを必要とし、PAMは異なるCRISPRシステム間で異なる。化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)由来Cas9は、NRG PAMを用いて切断し、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来CRISPRは、NNNNGATT、NNNNNGTTTおよびNNNNGCTTを含むPAMを有する部位で切断することができる。多くの他のCas9オーソログは、別のPAMに隣接するプロトスペーサーを標的とする。
Cas9などのCRISPRエンドヌクレアーゼは、本発明の方法において用いることができる。しかしながら、治療的標的部位などの、本明細書に記載される教示は、エンドヌクレアーゼの他の形態、例えば、ZFN、TALEN、HE、またはMegaTAL、または、ヌクレアーゼの組み合わせの使用に適用することができるであろう。しかしながら、本発明の教示をこれらのエンドヌクレアーゼに適用させるためには、とりわけ、タンパク質を操作して特定の標的部位に向かわせる必要があるだろう。
さらなる結合ドメインを、Cas9タンパク質に融合させて、特異性を増加させることができる。これらの構築物の標的部位は、特定のgRNA特異的部位に位置するであろうが、例えばジンクフィンガードメインに対するような、さらなる結合モチーフを必要とするであろう。Mega−TALの場合、メガヌクレアーゼはTALE DNA結合ドメインと融合させることができる。メガヌクレアーゼドメインは、特異性を増加させ、切断を提供することができる。同様に、不活性型Cas9、すなわちdead Cas9(dCas9)は、切断ドメインと融合させることができ、sgRNA/Cas9標的部位と、融合したDNA結合ドメインのための、隣接する結合部位を必要とする。このことは、さらなる結合部位によらない結合を減らすために、触媒作用の失活に加えて、dCas9の何らかのタンパク質操作を必要とするであろう。
ジンクフィンガーヌクレアーゼ
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、TypeIIエンドヌクレアーゼFokIの触媒ドメインに連結した、操作されたジンクフィンガーDNA結合ドメインから成る調節タンパク質である。FokIは二量体としてのみ機能するため、一対のZFNは、反対のDNA鎖に存在する同種の標的「ハーフサイト(half−site)」配列に結合するように、かつ、それらの配列間に正確なスペーシングを有して触媒活性のあるFokI二量体を形成するように、操作されなければならない。FolkIドメインは、それ自体は配列特異性を有さないが、二量体化の際に、ゲノム編集の開始ステップとして、DNA2本鎖切断がZFNハーフサイト間に生まれる。
各ZFNのDNA結合ドメインは、通常、豊富なCys2−His2構造の3〜6個のジンクフィンガーから成り、各フィンガーは主に標的DNA配列の1本鎖上の3塩基のヌクレオチドを認識するが、第4のヌクレオチドとのクロスストランド相互作用もまた重要であり得る。DNAとの重要な接点を作る位置での、1つのフィンガーのアミノ酸の変更は、所与のフィンガーの配列特異性を変更する。従って、4つのフィンガーのジンクフィンガータンパク質は、選択的に12bpの標的配列を認識するであろうし、ここで、選好された3塩基は隣接するフィンガーにより様々な程度に影響され得るが、標的配列は各フィンガーにより与えられる選好された3塩基の複合体である。ZFNの重要な局面は、うまく行うには、かなりの専門知識が必要であるが、個々のフィンガーを改変するだけでほとんど全てのゲノムアドレスに容易に再ターゲティングできることである。ZFNのほとんどの適用において、4〜6個のフィンガーのタンパク質が用いられ、それぞれ12〜18bpを認識する。故に、一対のZFNは通常、24〜36bpの標的配列の組み合わせを認識し、これらはハーフサイト間の5〜7bpのスペーサーを含まない。結合部位は、15〜17bpを含む、より大きなスペーサーでさらに分断され得る。設計プロセス中に、反復配列または遺伝子ホモログが排除されると仮定すると、この長さの標的配列は、おそらくヒトゲノムに特有である可能性が高い。それにもかかわらず、ZFNタンパク質−DNA相互作用はその特異性において絶対的ではないので、2つのZFNのヘテロ二量体として、あるいは、1つのZFN若しくは他のZFNのホモ二量体として、オフターゲットの結合および切断現象が起こる。後者の可能性は、FokIの二量体化の接点を操作して「+」および「−」変異体(絶対ヘテロ二量体変異体としても知られる)を作製することにより、効果的に排除されており、これは、互いに二量体化することのみ可能であり、それぞれが二量体化することは不可能である。絶対ヘテロ二量体を強制することで、ホモ二量体の形成を予防する。このことは、ZFN、および、これらのFokI変異体を採用する他の任意のヌクレアーゼの特異性を大幅に増強した。
様々なZFNベースシステムが当業界で記載されており、その改変が定期的に報告されており、かつ、多数の参考文献がZFNの設計を導くために用いるルールおよびパラメーターについて記載している;例えば、Segal et al., Proc Natl Acad Sci USA 96(6):2758-63 (1999); Dreier B et al., J Mol Biol. 303(4):489-502 (2000); Liu Q et al., J Biol Chem. 277(6):3850-6 (2002); Dreier et al., J Biol Chem 280(42):35588-97 (2005);および Dreier et al., J Biol Chem. 276(31):29466-78 (2001)を参照されたい。
転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)
TALENは、ZFNと同様に、操作されたDNA結合ドメインがFokIヌクレアーゼドメインに連結され、一対のTALENが一列に作用して標的DNA切断を達成するモジュラーヌクレアーゼの別のフォーマットを表す。ZFNとの主な違いは、DNA結合ドメインの性質および関連する標的DNA配列の認識特性である。TALENのDNA結合ドメインは、TALEタンパク質に由来し、これは元々植物病原Xanthomonas属細菌に記載されている。TALENは33〜35個のアミノ酸リピートの縦列配列から成り、それぞれのリピートは通常最大20bpまでの長さである標的DNA配列中の1つの塩基対を認識し、合計で最大40bpまでの長さの標的配列を与える。各リピートのヌクレオチド特異性は、12番目と13番目の2つのアミノ酸のみを含むrepeat variable diresidue(RVD)により決定される。グアニン、アデニン、シトシン、およびチミンの塩基が、4つの塩基:それぞれAsn−Asn、Asn−Ile、His−AspおよびAsn−Glyにより、主に認識される。これは、ジンクフィンガーよりもはるかに単純な認識コードを構成しており、従って、ヌクレアーゼ設計の後者よりも優れている。それにもかかわらず、TALENのタンパク質−DNA相互作用は、ZFNと同様に、その特異性において絶対的ではなく、TALENもまた、オフターゲット活性の減少のためにFokIの絶対ヘテロ二量体変異体の使用から恩恵を被っている。
FokIドメインのさらなる変異体は、触媒機能が失活するように作製されている。一対のTALENまたは一対のZFNのいずれかの片方が不活性のFokIドメインを含む場合、標的部位において、DSBではなく、1本鎖のみのDNA切断(ニッキング)が起こるであろう。結果は、Cas9切断ドメインの一つが失活したCRISPR/Cas9「ニッカーゼ」変異体の使用と同等である。DNAニックは、HDRによるゲノム編集を引き起こすために用いることができるが、DSBよりも効率が低い。主な利点は、NHEJ媒介の誤った修復が起こりがちなDSBと異なり、オフターゲットのニックが、迅速かつ正確に修復されることである。
様々なTALENベースシステムが当業界で記載されており、その改変が定期的に報告されている:例えば、Boch, Science 326(5959):1509-12 (2009); Mak et al., Science 335(6069):716-9 (2012);および Moscou et al., Science 326(5959):1501 (2009)を参照されたい。「ゴールデンゲート」プラットフォームに基づくTALENの使用、またはクローニングスキームが、複数のグループにより記載されている;例えば、Cermak et al., Nucleic Acids Res. 39(12):e82 (2011); Li et al., Nucleic Acids Res. 39(14):6315-25(2011); Weber et al., PLoS One. 6(2):e16765 (2011); Wang et al., J Genet Genomics 41(6):339-47, Epub 2014 May 17 (2014); およびCermak T et al., Methods Mol Biol. 1239:133-59 (2015) を参照されたい。
ホーミングエンドヌクレアーゼ
ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)は、長い認識配列(14〜44塩基対)を有する配列特異的エンドヌクレアーゼであり、しばしばゲノム内の珍しい部位にて高い特異性でDNAを切断する。構造により分類される、少なくとも6つの既知のHEが存在し、LAGLIDADG(配列番号68,299)、GIY−YIG、His−Cis box、H−N−H、PD−(D/E)xK、およびVsr−likeを含み、これらは真核生物、原生生物,真正細菌(bacteria)、古細菌、藍藻およびファージを含む、広い範囲の宿主に由来している。ZFNおよびTALENと同様に、HEはゲノム編集の開始ステップとして、標的遺伝子座でDSBを作製するために用いることができる。さらに、いくつかの天然の、および、操作されたHEは、DNAの1本鎖のみを切断するため、部位特異的ニッカーゼとして機能する。HEの大きな標的配列と、それが提供する特異性により、HEは、部位特異的DSBを作製する魅力的な候補となっている。
様々なHEベースのシステムが当業界で記載されており、それらの改変が定期的に報告されている;例えば、Steentoft et al., Glycobiology 24(8):663-80 (2014); Belfort and Bonocora, Methods Mol Biol. 1123:1-26 (2014); Hafez and Hausner, Genome 55(8):553-69 (2012)によるレビュー;およびそれらに引用されている参考文献を参照されたい。
MegaTAL/Tev−mTALEN/MegaTev
ハイブリッドヌクレアーゼのさらなる例として、MegaTALプラットフォームおよびTev−mTALENプラットフォームは、TALE DNA結合ドメインと、触媒活性のあるHEとの融合を用い、TALEの調節可能なDNA結合と特異性の両方、および、HEの切断配列特異性を利用する;例えば、Boissel et al., NAR 42: 2591-2601 (2014); Kleinstiver et al., G3 4:1155-65 (2014); およびBoissel and Scharenberg, Methods Mol. Biol. 1239: 171-96 (2015) を参照されたい。
さらなるバリエーションにおいて、MegaTev構造は、メガヌクレアーゼ(Mega)と、GIY−YIGホーミングエンドヌクレアーゼI−TevI(Tev)由来のヌクレアーゼドメインとの融合である。2つの活性部位は、DNA基質上に30bp以内の間隔で位置し、非対応の付着末端を有する2つのDSBを産生する;例えば、Wolfs et al., NAR 42, 8816-29 (2014)を参照されたい。既存のヌクレアーゼベースの手法の他の組み合わせが進化して、本明細書に記載される標的ゲノム改変を達成する上で有用となることが、予測される。
dCas9−FokIおよび他のヌクレアーゼ
上記のヌクレアーゼプラットフォームの構造的および機能的特性を組み合わせることで、いくつかの固有の欠点を克服できる可能性がある、ゲノム編集ためのさらなる手法が提供される。一例として、CRISPRゲノム編集システムは通常、1つのCas9エンドヌクレアーゼを用いてDSBを作製する。ターゲティングの特異性は、標的DNAとワトソン−クリック塩基対を形成するガイドRNA中の20または22個のヌクレオチド配列(化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来のCas9の場合、隣接するNAGまたはNGGのPAM配列においてさらなる2塩基が追加される)により引き起こされる。これらの配列は、ヒトゲノムにおいて特有であるのに十分な長さであるが、RNA/DNA相互作用の特異性は絶対的ではなく、特に標的配列の5’側半分において、時に重要な無差別性(promiscuity)が許容され、特異性を引き起こす塩基の数を効果的に減らしている。この1つの解決策は、Cas9触媒機能を完全に失活させることであり(RNA誘導DNA結合機能のみを保持する)、代わりにFokIドメインを失活したCas9に融合させることであった;例えば、Tsai et al., Nature Biotech 32: 569-76 (2014);および Guilinger et al., Nature Biotech. 32: 577-82 (2014)を参照されたい。FokIが触媒活性を有するようになるには二量体化する必要があるため、二量体を形成してDNAを切断するように、2つのCas9−FokI融合体をごく近接してつなぐための2つのガイドRNAが必要である。このことにより、結合した標的部位における塩基の数が本質的に2倍になり、それによってCRISPRベースシステムによる標的化のストリンジェンシーが増加する。
さらなる例としては、TALE DNA結合ドメインと、I−TevIなどの触媒活性のあるHEとの融合は、TALEの調節可能なDNA結合と特異性の両方、および、I−TevIの切断配列特異性を利用するものであり、オフターゲットの切断がさらに減少し得ることを見込んでいる。
本発明の方法および組成物
従って、本開示は、特に、以下の非限定的な発明に関する:第1の方法、方法1において、本開示は、ゲノム編集によりヒト細胞のSERPINA1遺伝子を編集する方法であって、ヒト細胞に1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入し、SERPINA1遺伝子またはSERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の内部またはその近傍に1つ以上の1本鎖切断(SSB)または2本鎖切断(DSB)をもたらし、その結果、SERPINA1遺伝子またはSERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の内部またはその近傍での1つ以上の変異もしくはエクソンの、永続的な欠失、挿入、または、その発現もしくは機能の修正もしくは調節を生じるか、または、SERPINA1遺伝子またはSERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の発現もしくは機能に影響を与え、アルファ1アンチトリプシン(AAT)タンパク質活性を回復させるステップを含む方法を提供する。
別の方法、方法2において、本開示は、ゲノム編集によりヒト細胞にSERPINA1遺伝子を挿入する方法であって、ヒト細胞に1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入し、セーフハーバー座位の内部またはその近傍に、1つ以上の1本鎖切断(SSB)または2本鎖切断(DSB)をもたらすことにより、SERPINA1遺伝子またはミニ遺伝子の永続的な挿入と、AAT活性の回復とを生じることを含む方法を提供する。
別の方法、方法3において、本開示は、アルファ1アンチトリプシン欠乏症の患者を治療するためのエクスビボ法であって、i)患者特異的人工多能性幹細胞(iPSC)を作製すること;ii)iPSCの、SERPINA1遺伝子の、または、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部またはその近傍で、あるいは、iPSCの、セーフハーバー座位の内部またはその近傍で編集すること;iii)ゲノム編集したiPSCを肝細胞へ分化させること;およびiv)肝細胞を患者に移植すること:のステップを含む方法を提供する。
別の方法、方法4において、本開示は、作製ステップが、a)患者から体細胞を単離すること;およびb)体細胞に、一連の多能性関連遺伝子を導入することにより、体細胞を多能性幹細胞に誘導すること:を含む、請求項3に記載の方法を提供する。
別の方法、方法5において、本開示は、体細胞が線維芽細胞である、方法4に記載の方法を提供する。
別の方法、方法6において、本開示は、一連の多能性関連遺伝子が、OCT4、SOX2、KLF4、Lin28、NANOGおよびcMYCからなる群から選択される1つ以上の遺伝子である、方法4に記載の方法を提供する。
別の方法、方法7において、本開示は、編集ステップが、iPSCに1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入し、SERPINA1遺伝子またはSERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の内部またはその近傍に1つ以上の1本鎖切断(SSB)または2本鎖切断(DSB)をもたらし、その結果、SERPINA1遺伝子またはSERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の内部またはその近傍での1つ以上の変異もしくはエクソンの、永続的な欠失、挿入、または、その発現もしくは機能の修正もしくは調節を生じるか、または、SERPINA1遺伝子またはSERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の発現もしくは機能に影響を与え、あるいは、セーフハーバー座位の内部またはその近傍に1つ以上のSSBまたはDSBをもたらし、その結果、SERPINA1遺伝子またはミニ遺伝子の永続的な挿入を生じて、ルファ1アンチトリプシン(AAT)タンパク質活性を回復させることを含む方法であって、方法3〜6のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法8において、本開示は、セーフハーバー座位が、AAVS1(PPP1R12C)、ALB、Angptl3、ApoC3、ASGR2、CCR5、FIX(F9)、G6PC、Gys2、HGD、Lp(a)、Pcsk9、Serpina1、TF、およびTTRからなる群から選択される、方法7に記載の方法を提供する。
別の方法、方法9において、本開示は、分化ステップが、ゲノム編集したiPSCを肝細胞へ分化させる以下のステップのうち1つ以上を含む、方法3〜8のいずれかに記載の方法を提供する:ゲノム編集したiPSCを、アクチビン、B27サプリメント、FGF4、HGF、BMP2、BMP4、オンコスタチンM、デキサメタゾンの1つ以上と接触させること。
別の方法、方法10において、本開示は、移植ステップが、該幹細胞を、移植、局所注射、または全身注入、またはこれらの組み合わせにより、患者に移植することを含む、方法3〜9のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法である方法11において、本開示は、アルファ1アンチトリプシン欠乏症の患者を治療するためのエクスビボ法であって、i)患者の肝臓の生検を行うこと;ii)肝臓特異的な前駆細胞または初代肝細胞を単離すること;iii)前駆細胞または初代肝細胞の、SERPINA1遺伝子の、または、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部またはその近傍で編集すること、あるいは、前駆細胞または初代肝細胞の、セーフハーバー座位の内部またはその近傍で編集すること;およびiv)ゲノム編集した前駆細胞または初代肝細胞を患者に移植すること:のステップを含む方法を提供する。
別の方法、方法12において、本開示は、単離ステップが、消化酵素による新鮮な肝臓組織の灌流、細胞の分画遠心、細胞培養、およびこれらの組み合わせを含む、方法11に記載の方法を提供する。
別の方法、方法13において、本開示は、編集ステップが、前駆細胞または初代肝細胞に1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入し、SERPINA1遺伝子またはSERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の内部またはその近傍に1つ以上の1本鎖切断(SSB)または2本鎖切断(DSB)をもたらし、その結果、SERPINA1遺伝子またはSERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の内部またはその近傍での1つ以上の変異もしくはエクソンの永続的な欠失、挿入、修正、または、その発現もしくは機能の調節を生じるか、または、SERPINA1遺伝子またはSERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の発現もしくは機能に影響を与え、あるいは、セーフハーバー座位の内部またはその近傍に1つ以上のSSBまたは1つ以上のDSBをもたらし、その結果、SERPINA1遺伝子またはミニ遺伝子の永続的な挿入を生じて、アルファ1アンチトリプシン(AAT)タンパク質活性を回復させることを含む方法であって、方法11または12に記載の方法を提供する。
別の方法、方法14において、本開示は、セーフハーバー座位が、AAVS1(PPP1R12C)、ALB、Angptl3、ApoC3、ASGR2、CCR5、FIX(F9)、G6PC、Gys2、HGD、Lp(a)、Pcsk9、Serpina1、TF、およびTTRからなる群から選択される、方法13に記載の方法を提供する。
別の方法、方法15において、本開示は、移植ステップが、移植、局所注射、または全身注入、またはこれらの組み合わせによりゲノム編集した前駆細胞または初代肝細胞を患者に移植することを含む、方法11〜14のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法16において、本開示は、アルファ1アンチトリプシン欠乏症の患者を治療するためのエクスビボ法であって、i)患者の骨髄の生検を行うこと;ii)患者から間葉系幹細胞を単離すること;iii)間葉系幹細胞のSERPINA1遺伝子の、もしくは、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部またはその近傍で編集すること、または間葉系幹細胞のセーフハーバー座位の内部またはその近傍で編集すること;iv)ゲノム編集した間葉系幹細胞を肝細胞へ分化させること;およびv)肝細胞を患者に移植すること:のステップを含む方法を提供する。
別の方法、方法17において、本開示は、間葉系幹細胞が、患者の骨髄または末梢血から単離される、方法16に記載の方法を提供する。
別の方法、方法18において、本開示は、単離ステップが、骨髄の吸引、およびパーコール(商標)を用いた密度遠心分離による間葉系細胞の単離を含む、方法16に記載の方法を提供する。
別の方法、方法19において、本開示は、編集ステップが、間葉系幹細胞に1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入し、SERPINA1遺伝子またはSERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の内部またはその近傍に1つ以上の1本鎖切断(SSB)または2本鎖切断(DSB)をもたらし、その結果、SERPINA1遺伝子またはSERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の内部またはその近傍での1つ以上の変異もしくはエクソンの永続的な欠失、挿入、修正、または、その発現もしくは機能の調節を生じるか、または、SERPINA1遺伝子またはSERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の発現もしくは機能に影響を与え、あるいは、セーフハーバー座位の内部またはその近傍に1つ以上のSSBまたは1つ以上のDSBをもたらし、その結果、SERPINA1遺伝子またはミニ遺伝子の永続的な挿入を生じて、アルファ1アンチトリプシン(AAT)タンパク質活性を回復させることを含む方法であって、方法16〜18のいずれかに記載を提供する。
別の方法、方法20において、本開示は、セーフハーバー座位が、AAVS1(PPP1R12C)、ALB、Angptl3、ApoC3、ASGR2、CCR5、FIX(F9)、G6PC、Gys2、HGD、Lp(a)、Pcsk9、Serpina1、TF、およびTTRからなる群から選択される、方法19に記載の方法を提供する。
別の方法、方法21において、本開示は、分化ステップが、ゲノム編集した幹細胞を肝細胞へ分化させる以下のステップのうち1つ以上を含む、方法16〜19のいずれかに記載の方法を提供する:ゲノム編集した間葉系幹細胞を、インスリン、トランスフェリン、FGF4、HGF、または胆汁酸のうち1つ以上と接触させること。
別の方法、方法22において、本開示は、移植ステップが、該幹細胞を、移植、局所注射、または全身注入、またはこれらの組み合わせにより、患者に移植することを含む、方法16〜21のいずれか一項に記載の方法を提供する。
別の方法、方法23において、本開示は、アルファ1アンチトリプシン欠乏症の患者を治療するためのインビボ法であって、患者の細胞内のSERPINA1遺伝子、またはSERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列を編集すること、あるいは、患者の細胞内のセーフハーバー座位の内部またはその近傍で編集することのステップを含む方法を提供する。
別の方法、方法24において、本開示は、編集ステップが、細胞に1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入し、SERPINA1遺伝子またはSERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の内部またはその近傍に1つ以上の1本鎖切断(SSB)または2本鎖切断(DSB)をもたらし、その結果、SERPINA1遺伝子またはSERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の内部またはその近傍での1つ以上の変異もしくはエクソンの永続的な欠失、挿入、または、修正もしくは調節を生じて、あるいは、セーフハーバー座位の内部またはその近傍に1つ以上のSSBまたは1つ以上のDSBをもたらし、その結果、SERPINA1遺伝子またはミニ遺伝子の永続的な挿入を生じて、アルファ1アンチトリプシン(AAT)タンパク質活性を回復させることを含む方法であって、方法23に記載の方法を提供する。
別の方法、方法25において、本開示は、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼが、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても知られる)、Cas100、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、またはCpf1エンドヌクレアーゼ;または、それらのホモログ、天然分子の遺伝子組換え、それらのコドン最適化バージョン、または改変バージョン、およびこれらの組み合わせである、方法1、2、7、13、19、または24のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法26において、本開示は、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを細胞へ導入することを含む、方法25に記載の方法を提供する。
別の方法、方法27において、本開示は、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼをコードする1つ以上のリボ核酸(RNA)を、細胞に導入することを含む、方法27に記載の方法を提供する。
別の方法、方法28において、本開示は、1つ以上のポリヌクレオチドまたは1つ以上のRNAが、1つ以上の改変型ポリヌクレオチドまたは1つ以上の改変型RNAである、方法26または27に記載の方法を提供する。
別の方法、方法29において、本開示は、DNAエンドヌクレアーゼがタンパク質またはポリペプチドである、方法26に記載の方法を提供する。
別の方法、方法30において、本開示は、さらに、1つ以上のガイドリボ核酸(gRNA)を細胞に導入することを含む、方法1〜29のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法31において、本開示は、1つ以上のgRNAが単分子ガイドRNA(sgRNA)である、方法30に記載の方法を提供する。
別の方法、方法32において、本開示は、1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAが、1つ以上の改変型gRNAまたは1つ以上の改変sgRNAである、方法30または31に記載の方法を提供する。
別の方法、方法33において、本開示は、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼが、1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAと予め複合化されている、方法30〜32のいずれか一項に記載の方法を提供する。
別の方法、方法34において、本開示は、さらに、野生型SERPINA1遺伝子またはミニ遺伝子またはcDNAの少なくとも一部を含む、ポリヌクレオチドドナー鋳型を細胞へ導入することを含む、方法1〜33のいずれかに記載の方法の提供する。
別の方法、方法35において、本開示は、野生型SERPINA1遺伝子またはミニ遺伝子またはcDNAの少なくとも一部が、SERPINA1遺伝子、ミニ遺伝子、またはcDNAの、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、イントロン領域、それらのフラグメントまたは組み合わせ、SERPINA1遺伝子全体、野生型調節エレメントをコードするDNA配列である、方法34に記載の方法を提供する。
別の方法、方法36において、本開示は、ドナー鋳型が、1本鎖ポリヌクレオチドまたは2本鎖ポリヌクレオチドのいずれかである、方法34または35に記載の方法を提供する。
別の方法、方法37において、本開示は、ドナー鋳型が、14q32.13領域に対する相同アームを有する方法34〜36のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法38において、本開示は、細胞に、1つのガイドリボ核酸(gRNA)と、野生型SERPINA1遺伝子の少なくとも一部を含むポリヌクレオチドドナー鋳型とを、導入することをさらに含み、かつ、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼが、SERPINA1遺伝子の、もしくは、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部もしくはその近傍で、または、セーフハーバー座位の内部もしくはその近傍で、DSB遺伝子座において、1つの2本鎖切断(DSB)をもたらす1つ以上のCas9エンドヌクレアーゼであり、これは、該遺伝子座またはセーフハーバー座位における、染色体DNAへのポリヌクレオチドドナー鋳型由来の新規配列の挿入を促進させ、SERPINA1遺伝子の、または、該遺伝子座またはセーフハーバー座位に近位の、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、染色体DNAの一部の永続的な挿入または修正を生じて、AATタンパク質活性を回復させ、かつ、gRNAが、該遺伝子座またはセーフハーバー座位のセグメントに相補的なスペーサー配列を含む方法であって、方法1、2、7、13、19、または24のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法39において、本開示は、近位が、遺伝子座またはセーフハーバー座位の上流および下流の両方のヌクレオチドを意味する方法38に記載の方法を提供する。
別の方法、方法40において、本開示は、細胞に、2つのガイドリボ核酸(gRNA)と、野生型SERPINA1遺伝子の少なくとも一部を含むポリヌクレオチドドナー鋳型とを、導入することをさらに含み、かつ、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼが、SERPINA1遺伝子の、もしくは、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部もしくはその近傍で、または、セーフハーバー座位の内部もしくはその近傍で、DSB遺伝子座において一対の2本鎖切断(DSB)(第一は5’DSB遺伝子座で、第二は3’DSB遺伝子座で)をもたらす2つ以上のCas9エンドヌクレアーゼであり、これは、5’DSB遺伝子座と3’DSB遺伝子座の間での、染色体DNAへのポリヌクレオチドドナー鋳型由来の新規配列の挿入を促進させ、SERPINA1遺伝子の、もしくは、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部もしくはその近傍で、または、セーフハーバー座位の内部もしくはその近傍で、5’DSB遺伝子座と3’DSB遺伝子座の間に染色体DNAの永続的な挿入または修正を生じて、AATタンパク質活性を回復させ、かつ、第一のガイドRNAが5’DSB遺伝子座のセグメントに相補的なスペーサー配列を含み、第二のガイドRNAが3’DSB遺伝子座のセグメントに相補的なスペーサー配列を含む方法であって、方法1、2、7、13、19、または24のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法41において、本開示は、1つまたは2つのgRNAが、1つまたは2つの単分子ガイドRNA(sgRNA)である、方法38〜40のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法42において、本開示は、1つもしくは2つのgRNA、または、1つもしくは2つのsgRNAが、1つもしくは2つの改変型gRNA、または、1つもしくは2つの改変sgRNAである、方法38〜41のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法43において、本開示は、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼが、1つもしくは2つのgRNA、または、1つもしくは2つのsgRNAと予め複合化されている、方法38〜42のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法44において、本開示は、野生型SERPINA1遺伝子またはミニ遺伝子またはcDNAの少なくとも一部が、SERPINA1遺伝子、ミニ遺伝子、またはcDNAの、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、イントロン領域、それらのフラグメントまたは組み合わせ、SERPINA1遺伝子全体、野生型調節エレメントをコードするDNA配列である、方法38〜43のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法45において、本開示は、ドナー鋳型が、1本鎖ポリヌクレオチドまたは2本鎖ポリヌクレオチドのいずれかである、方法38〜44のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法46において、本開示は、ドナー鋳型が、14q32.13領域に対する相同アームを有する、方法38〜45のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法47において、本開示は、DSB、または、5’DSBおよび3’DSBが、SERPINA1遺伝子の、第一、第二、第三、第四、第五エクソンまたはイントロンに存在する、方法44に記載の方法。
別の方法、方法48において、本開示は、gRNAまたはsgRNAが以下の病的変異のうち1つ以上を指向する、方法1、2、7、13、19、24、30−33、または38−41のいずれかに記載の方法を提供する:rs764325655、rs121912713、rs28929474、rs17580、rs121912714、rs764220898、rs199422211、rs751235320、rs199422210、rs267606950、rs55819880、rs28931570。
別の方法、方法49において、本開示は、挿入または修正が相同組換え修復(HDR)による方法1、2、7、13、19、または2448のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法50において、本開示は、細胞に、2つのガイドリボ核酸(gRNA)を導入することをさらに含み、かつ、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼが、SERPINA1遺伝子の内部もしくはその近傍で、一対の2本鎖切断(DSB)(第一は5’DSB遺伝子座で、第二は3’DSB遺伝子座で)をもたらす2つ以上のCas9エンドヌクレアーゼであり、これは、5’DSB遺伝子座と3’DSB遺伝子座の間での、染色体DNAの欠失を引き起こし、SERPINA1遺伝子の内部またはその近傍で、5’DSB遺伝子座と3’DSB遺伝子座の間に染色体DNAの永続的な欠失を生じて、AATタンパク質活性を回復させ、かつ、第一のガイドRNAが5’DSB遺伝子座のセグメントに相補的なスペーサー配列を含み、第二のガイドRNAが3’DSB遺伝子座のセグメントに相補的なスペーサー配列を含む方法であって、方法1、2、7、13、19、または24のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法51において、本開示は、2つのgRNAが、2つの単分子ガイドRNA(sgRNA)である、方法50に記載の方法を提供する。
別の方法、方法52において、本開示は、2つのgRNAまたは2つのsgRNAが、2つの改変型gRNAまたは2つの改変sgRNAである、方法50または51に記載の方法を提供する。
別の方法、方法53において、本開示は、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼが、1つもしくは2つのgRNA、または、1つもしくは2つのsgRNAと予め複合化されている、方法50〜52のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法54において、本開示は、5’DSBおよび3’DSBの両方が、SERPINA1遺伝子の第一エクソン、第二エクソン、第三エクソン、第四エクソンまたは第五エクソンのいずれかまたはその近傍に存在する、方法50〜53のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法55において、本開示は、欠失が、1kb以下の欠失である、方法50〜54のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法56において、本開示は、Cas9またはCpf1 mRNA、gRNA、およびドナー鋳型が、それぞれ別々の脂質ナノ粒子に含まれているか、あるいは、全て共に脂質ナノ粒子に含まれている、方法1、2、7、13、または19〜55のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法57において、本開示は、Cas9またはCpf1 mRNA、gRNA、およびドナー鋳型が、それぞれ別々の脂質ナノ粒子に含まれているか、あるいは、全て共に脂質ナノ粒子に含まれている、方法1、6、11、15または19〜55のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法58において、本開示は、ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)である、方法57に記載の方法を提供する。
別の方法、方法59において、本開示は、AAVベクターが、AAV6ベクターである、方法58に記載の方法を提供する。
別の方法、方法60において、本開示は、Cas9またはCpf1 mRNA、gRNAおよびドナー鋳型がそれぞれ別のエキソソームに含まれているか、あるいは、全て共に1つのエキソソームに含まれている、方法1、2、7、13、19または24〜55のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法61において、本開示は、Cas9またはCpf1 mRNAが1つの脂質ナノ粒子に含まれており、gRNAがエレクトロポレーションにより細胞に送達され、かつ、ドナー鋳型が1つのウイルスベクターで細胞に送達される、方法1、2、7、13、19または24〜55のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法62において、本開示は、ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、方法61に記載の方法を提供する。
別の方法、方法63において、本開示は、AAVベクターが、AAV6ベクターである、方法62に記載の方法を提供する。
別の方法、方法64において、本開示は、SERPINA1遺伝子が、14番染色体:1,493,319−1,507,264(ゲノムリファレンスコンソーシアム−GRCh38/hg38)に位置している方法1〜63のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法65において、本開示は、AATタンパク質活性の回復を、野生型の、または正常なAATのタンパク質活性と比較する、方法1、2、7、13、19または24〜55のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法66において、本開示は、ヒト細胞が肝細胞である、方法1に記載の方法を提供する。
別の方法、方法67において、本開示は、細胞が肝細胞である、方法23に記載の方法を提供する。
別の方法、方法68において、本開示は、SERPINA1遺伝子が、SERPINA1遺伝子の発現を開始させる外来性プロモーターと作動可能に連結している、方法1、2、7、13、19または24〜55のいずれかに記載の方法を提供する。
別の方法、方法69において、本開示は、1つ以上のDSBが、内在性プロモーター遺伝子座の3’末端に直結する位置で生じる、方法1、2、7、13、19または24〜55のいずれかに記載の方法を提供する
本開示はまた、アルファ1アンチトリプシン欠乏症の患者由来の細胞内のSERPINA1遺伝子を編集するための1つ以上のガイドリボ核酸(gRNA)であって、アルファ1アンチトリプシン欠乏症の患者由来の細胞内のSERPINA1遺伝子を編集するための、配列番号54,860〜68,297の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む、1つ以上のgRNAの組成物、組成物1を提供する。
別の組成物、組成物2において、本開示は、1つ以上のgRNAが1つ以上の単分子ガイドRNA(sgRNA)である、組成物1に記載の組成物を提供する。
別の組成物、組成物3において、本開示は、1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAが、1つ以上の改変型gRNAまたは1つ以上の改変sgRNAである、組成物1または組成物2に記載の組成物を提供する。
別の組成物、組成物4において、本開示は、細胞が肝細胞である、組成物1または組成物2に記載の組成物を提供する。
本開示はまた、アルファ1アンチトリプシン欠乏症の患者由来の細胞中のセーフハーバー座位を編集するための1つ以上のガイドリボ核酸(gRNA)であって、アルファ1アンチトリプシン欠乏症の患者由来の細胞中のセーフハーバー座位を編集するための、配列番号1〜54,859の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む、1つ以上のgRNAの組成物、組成物5を提供し、ここでは、セーフハーバー座位が、AAVS1(PPP1R12C)、ALB、Angptl3、ApoC3、ASGR2、CCR5、FIX(F9)、G6PC、Gys2、HGD、Lp(a)、Pcsk9、Serpina1、TF、およびTTRからなる群から選択される。
別の組成物、組成物6において、本開示は、1つ以上のgRNAが1つ以上の単分子ガイドRNA(sgRNA)である、組成物5に記載の組成物を提供する。
別の組成物、組成物7において、本開示は、1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAが、1つ以上の改変型gRNAまたは1つ以上の改変sgRNAである、組成物5または組成物6に記載の組成物を提供する。
別の組成物、組成物8において、本開示は、細胞が肝細胞である、組成物5または組成物6または組成物7に記載の組成物を提供する。
定義
「含む(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、本発明に必要不可欠であり、さらに必要不可欠であるかどうかに関わらず、不特定の要素を含むことができる、組成物、方法、およびそれらの個々の構成成分に関して用いられる。
「本質的になる」という用語は、所与の態様に必要なこれらの要素を指す。該用語は、本発明の該態様の、基本的および新規の、または機能的な特性に実質的に影響を与えないさらなる要素の存在を認める。
「からなる」という用語は、本明細書に記載された、組成物、方法、およびそれらの各構成成分を指し、本態様のその記載に列挙されていないいかなる要素も排除するものである。
単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の言及を含む。
本明細書に提示される特定の数値は、「約」という用語が先行する。「約」という用語は、「約」という用語が先行する数値の文字通りのサポートを提供するために用いられ、およそその数値である数値であり、すなわち、それが提示されている文脈において、列挙されていない近似する数値が、特に列挙された数値と実質的に同等であり得るということである。「約」という用語は列挙された数値の±10%以内の数値を意味する。
数値の範囲が本明細書で提示される場合、その範囲の下限および上限の間に介在する各値、その範囲の上限値および下限値、およびその範囲で指定した全ての値が、本開示内に包含されることを企図している。その範囲の上限および下限内の、全ての可能な小さな範囲もまた、本開示により企図される。
本発明は、本発明の、例示的で非限定的な態様を提供する、以下の実施例を参照することにより、より完全に理解されるであろう。
本実施例は、SERPINA1遺伝子に、本明細書において「ゲノム改変」と呼ばれる、規定の治療的なゲノム置換を作製し、その結果、ゲノム遺伝子座における変異の永続的な修正、あるいは、非相同の遺伝子座での発現をもたらし、AATタンパク質活性を回復させる、例示的なゲノム編集技術としてのCRISPRシステムの使用について記載している。規定の治療的改変の導入は、本明細書に記載および例示されるように、AATDの可能性のある寛解のための、新規の治療戦略となる。
実施例1−SERPINA1遺伝子のCRISPR/SpCas9標的部位(セーフハーバー座位としてではなく)
SERPINA1遺伝子の領域に対して、標的部位をスキャンした。各エリアに対して、配列NRGを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)をスキャンした。配列番号54,860−61,324に示すように、PAMに対応するgRNAの20bpスペーサー配列を特定した。
実施例2−SERPINA1遺伝子のCRISPR/SaCas9標的部位(セーフハーバー座位としてではなく)
SERPINA1遺伝子の領域に対して、標的部位をスキャンした。各エリアに対して、配列NNGRRTを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)をスキャンした。配列番号61,324−61,936に示すように、PAMに対応するgRNAの20bpスペーサー配列を特定した。
実施例3−SERPINA1遺伝子のCRISPR/StCas9標的部位(セーフハーバー座位としてではなく)
SERPINA1遺伝子の領域に対して、標的部位をスキャンした。各エリアに対して、配列NNAGAAWを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)をスキャンした。配列番号61,937−62,069に示すように、PAMに対応するgRNAの20bpスペーサー配列を特定した。
実施例4−SERPINA1遺伝子のCRISPR/TdCas9標的部位(セーフハーバー座位としてではなく)
SERPINA1遺伝子の領域に対して、標的部位をスキャンした。各エリアに対して、配列NAAAACを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)をスキャンした。配列番号69,070−62,120に示すように、PAMに対応するgRNAの20bpスペーサー配列を特定した。
実施例5−SERPINA1遺伝子のCRISPR/NmCas9標的部位(セーフハーバー座位としてではなく)
SERPINA1遺伝子の領域に対して、標的部位をスキャンした。各エリアに対して、配列NNNNGHTTを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)をスキャンした。配列番号62,121−62,563に示すように、PAMに対応するgRNAの20bpスペーサー配列を特定した。
実施例6−SERPINA1遺伝子のCRISPR/Cpf1標的部位(セーフハーバー座位としてではなく)
SERPINA1遺伝子の領域に対して、標的部位をスキャンした。各エリアに対して、配列YTNを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)をスキャンした。配列番号62,564−68,297に示すように、PAMに対応するgRNAの22bpスペーサー配列を特定した。
実施例7−セーフハーバー座位のCRISPR/SpCas9標的部位
以下のセーフハーバー座位に対して、標的部位をスキャンした:AAVS1(PPP1R12C)のエクソン1−2、ALBのエクソン1−2、Angptl3のエクソン1−2、ApoC3のエクソン1−2、ASGR2のエクソン1−2、CCR5のエクソン1−2、FIX(F9)のエクソン1−2、G6PCのエクソン1−2、Gys2のエクソン1−2、HGDのエクソン1−2、Lp(a)のエクソン1−2、Pcsk9のエクソン1−2、Serpina1のエクソン1−2、TFのエクソン1−2、およびTTRのエクソン1−2。各エリアに対して、配列NRGを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)をスキャンした。以下の配列に示すように、PAMに対応するgRNAの20bpスペーサー配列を特定した:AAVS1(PPP1R12C):配列番号1−2,032;ALB:配列番号3,482−3,649;Angptl3:配列番号4,104−4,448;ApoC3:配列番号5,432−5,834;ASGR2:配列番号6,109−7,876;CCR5:配列番号9,642−9,844;FIX(F9):配列番号10,221−11,686;G6PC:配列番号14,230−15,245;Gys2:配列番号16,581−22,073;HGD:配列番号32,254−33,946;Lp(a):配列番号36,789−40,583;Pcsk9:配列番号46,154−48,173;Serpina1:配列番号50,345−51,482;TF:配列番号52,446−53,277;およびTTR:配列番号54,063−54,362。
実施例8−セーフハーバー座位のCRISPR/SaCas9標的部位
以下のセーフハーバー座位に対して、標的部位をスキャンした:AAVS1(PPP1R12C)のエクソン1−2、ALBのエクソン1−2、Angptl3のエクソン1−2、ApoC3のエクソン1−2、ASGR2のエクソン1−2、CCR5のエクソン1−2、FIX(F9)のエクソン1−2、G6PCのエクソン1−2、Gys2のエクソン1−2、HGDのエクソン1−2、Lp(a)のエクソン1−2、Pcsk9のエクソン1−2、Serpina1のエクソン1−2、TFのエクソン1−2、およびTTRのエクソン1−2。各エリアに対して、配列NNGRRTを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)をスキャンした。以下の配列に示すように、PAMに対応するgRNAの20bpスペーサー配列を特定した:AAVS1(PPP1R12C):配列番号2,033−2,203;ALB:配列番号3,650−3,677;Angptl3:配列番号4,449−4,484;ApoC3:配列番号5,835−5,859;ASGR2:配列番号7,877−8,082;CCR5:配列番号9,845−9,876;FIX(F9):配列番号11,687−11,849;G6PC:配列番号15,246−15,362;Gys2:配列番号22,074−22,749;HGD:配列番号33,947−34,160;Lp(a):配列番号40,584−40,993;Pcsk9:配列番号48,174−48,360;Serpina1:配列番号51,483−51,575;TF:配列番号53,278−53,363;およびTTR:配列番号54,363−54,403。
実施例9−セーフハーバー座位のCRISPR/StCas9標的部位
以下のセーフハーバー座位に対して、標的部位をスキャンした:AAVS1(PPP1R12C)のエクソン1−2、ALBのエクソン1−2、Angptl3のエクソン1−2、ApoC3のエクソン1−2、ASGR2のエクソン1−2、CCR5のエクソン1−2、FIX(F9)のエクソン1−2、G6PCのエクソン1−2、Gys2のエクソン1−2、HGDのエクソン1−2、Lp(a)のエクソン1−2、Pcsk9のエクソン1−2、Serpina1のエクソン1−2、TFのエクソン1−2、およびTTRのエクソン1−2。各エリアに対して、配列NNAGAAWを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)をスキャンした。以下の配列に示すように、PAMに対応するgRNAの20bpスペーサー配列を特定した:AAVS1(PPP1R12C):配列番号2,204−2,221;ALB:配列番号3,678−3,695;Angptl3:配列番号4,485−4,507;ApoC3:配列番号5,860−5,862;ASGR2:配列番号8,083−8,106;CCR5:配列番号9,877−9,890;FIX(F9):配列番号11,850−11,910;G6PC:配列番号15,363−15,386;Gys2:配列番号22,750−20,327;HGD:配列番号34,161−34,243;Lp(a):配列番号40,994−41,129;Pcsk9:配列番号48,361−48,396;Serpina1:配列番号51,576−51,587;TF:配列番号53,364−53,375;およびTTR:配列番号54,404−54,420。
実施例10−セーフハーバー座位のCRISPR/TdCas9標的部位
以下のセーフハーバー座位に対して、標的部位をスキャンした:AAVS1(PPP1R12C)のエクソン1−2、ALBのエクソン1−2、Angptl3のエクソン1−2、ApoC3のエクソン1−2、ASGR2のエクソン1−2、CCR5のエクソン1−2、FIX(F9)のエクソン1−2、G6PCのエクソン1−2、Gys2のエクソン1−2、HGDのエクソン1−2、Lp(a)のエクソン1−2、Pcsk9のエクソン1−2、Serpina1のエクソン1−2、TFのエクソン1−2、およびTTRのエクソン1−2。各エリアに対して、配列NAAAACを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)をスキャンした。以下の配列に示すように、PAMに対応するgRNAの20bpスペーサー配列を特定した:AAVS1(PPP1R12C):配列番号2,222−2,230;ALB:配列番号3,696−3,700;Angptl3:配列番号4,508−4,520;ApoC3:配列番号5,863−5,864;ASGR2:配列番号8,107−8,118;CCR5:配列番号9,891−9,892;FIX(F9):配列番号11,911−11,935;G6PC:配列番号15,387−15,395;Gys2:配列番号23,028−23,141;HGD:配列番号34,244−34,262;Lp(a):配列番号41,130−41,164;Pcsk9:配列番号48,397−48,410;Serpina1:配列番号51,588−51,590;TF:配列番号53,376−53,382;およびTTR:配列番号54,421−54,422。
実施例11−セーフハーバー座位のCRISPR/NmCas9標的部位
以下のセーフハーバー座位に対して、標的部位をスキャンした:AAVS1(PPP1R12C)のエクソン1−2、ALBのエクソン1−2、Angptl3のエクソン1−2、ApoC3のエクソン1−2、ASGR2のエクソン1−2、CCR5のエクソン1−2、FIX(F9)のエクソン1−2、G6PCのエクソン1−2、Gys2のエクソン1−2、HGDのエクソン1−2、Lp(a)のエクソン1−2、Pcsk9のエクソン1−2、Serpina1のエクソン1−2、TFのエクソン1−2、およびTTRのエクソン1−2。各エリアに対して、配列NNNNGHTTを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)をスキャンした。以下の配列に示すように、PAMに対応するgRNAの20bpスペーサー配列を特定した:AAVS1(PPP1R12C):配列番号2,231−2,305;ALB:配列番号3,701−3,724;Angptl3:配列番号4,521−4,583;ApoC3:配列番号5,865−5,876;ASGR2:配列番号8,119−8,201;CCR5:配列番号9,893−9,920;FIX(F9):配列番号11,936−12,088;G6PC:配列番号15,396−15,485;Gys2:配列番号23,142−23,821;HGD:配列番号34,263−34,463;Lp(a):配列番号41,165−41,532;Pcsk9:配列番号48,411−48,550;Serpina1:配列番号51,591−51,641;TF:配列番号53,383−53,426;およびTTR:配列番号54,423−54,457。
実施例12−セーフハーバー座位のCRISPR/Cpf1標的部位
AAVS1(PPP1R12C)遺伝子のエクソン1−2に対して、標的部位をスキャンした。以下のセーフハーバー座位に対して、標的部位をスキャンした:AAVS1(PPP1R12C)のエクソン1−2、ALBのエクソン1−2、Angptl3のエクソン1−2、ApoC3のエクソン1−2、ASGR2のエクソン1−2、CCR5のエクソン1−2、FIX(F9)のエクソン1−2、G6PCのエクソン1−2、Gys2のエクソン1−2、HGDのエクソン1−2、Lp(a)のエクソン1−2、Pcsk9のエクソン1−2、Serpina1のエクソン1−2、TFのエクソン1−2、およびTTRのエクソン1−2。各エリアに対して、配列YTNを有するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)をスキャンした。以下の配列に示すように、PAMに対応するgRNAの22bpスペーサー配列を特定した:AAVS1(PPP1R12C):配列番号2,306−3,481;ALB:配列番号3,725−4,103;Angptl3:配列番号4,584−5,431;ApoC3:配列番号5,877−6,108;ASGR2:配列番号8,202−9,641;CCR5:配列番号9,921−10,220;FIX(F9):配列番号12,089−14,229;G6PC:配列番号15,486−16,580;Gys2:配列番号23,822−32,253;HGD:配列番号34,464−36,788;Lp(a):配列番号41,533−46,153;Pcsk9:配列番号48,551−50,344;Serpina1:配列番号51,642−52,445;TF:配列番号53,427−54,062;およびTTR:配列番号54,458−54,859。
実施例13−ガイド鎖のバイオインフォマティクス解析
候補ガイドは、理論的結合と実験的に評価された活性の両方を包含する多段階プロセスにおいて、スクリーニングおよび選択されるであろう。実例として、隣接するPAMを有する、SERPINA1遺伝子内の部位などの特定のオンターゲット部位と適合する配列を有する候補ガイドは、同様の配列を有するオフターゲット部位で切断する能力を、オフターゲット結合を評価するために利用可能な様々なバイオインフォマティクスツール(以下により詳細に記載および例示される)を1つ以上用いて、意図されたものではない染色体上の位置での効果の可能性を評価する目的で、評価できる、オフターゲット活性の可能性が相対的に低いと予測された候補は、その後、様々な部位でのオンターゲット活性を、続いてオフターゲット活性を測定するために、実験的に評価することができる。好ましいガイドは、選択された遺伝子座での所望のレベルの遺伝子編集を達成するために十分高いオンターゲット活性を有し、かつ、他の染色体上の遺伝子座での変更の可能性を減らすために相対的に低いオフターゲット活性を有するオフターゲット活性に対するオンターゲット活性の割合は、しばしばガイドの「特異性(specificity)」と呼ばれる。
予測されたオフターゲット活性の最初のスクリーニングのために、最も可能性の高いオフターゲット部位を予測するために用いることができる、既知の、公的に利用可能な多くのバイオインフォマティクスツールがある;また、CRISPR/Cas9/Cpf1 ヌクレアーゼシステム内の標的部位への結合は、相補的配列間のワトソン−クリック塩基対形成により引き起こされるために、相違の程度(これにより、オフターゲット結合の可能性が減少する)は、基本的に一次配列の違いに関連している:一次配列の違いとは、標的部位と比較した潜在的オフターゲット部位におけるミスマッチおよびバルジ、すなわち非相補的塩基に変化した塩基、および塩基の挿入または欠失である。COSMID(ミスマッチ、挿入、および欠失を有する、CRISPRオフターゲット部位(CRISPR Off-target Sites with Mismatches, Insertions and Deletions))(ウェブでcrispr.bme.gatech.eduから入手可能)と呼ばれる代表的なバイオインフォマティクスツールは、これらの類似点を収集(compile)する。他のバイオインフォマティクスツールには、GUIDO、autoCOSMID、およびCCtopが含まれるが、これらに限定されない。
バイオインフォマティクスは、変異や染色体再編による有害な影響を減少させる目的で、オフターゲットの切断を最小限にするために用いられた。CRISPR/Cas9システムについての研究は、塩基対ミスマッチおよび/またはバルジ(特に、PAM領域から遠位での)を有するDNA配列への、ガイド鎖の非特異的ハイブリダイゼーションによる、高いオフターゲット活性の可能性を示唆した。従って、塩基対ミスマッチに加えて、RNAガイド鎖とゲノム配列との間に挿入および/または欠失を有する、潜在的なオフターゲット部位を特定できるバイオインフォマティクスツールを有することが重要である。従って、バイオインフォマティクスベースのツール、COSMID(ミスマッチ、挿入、および欠失を有する、CRISPRオフターゲット部位)を、潜在的なCRISPRオフターゲット部位についてゲノムを検索するために用いた(ウェブでcrispr.bme.gatech.eduから入手可能)。COSMIDは、ミスマッチの数と位置に基づき、潜在的オフターゲット部位のランク付けされたリストを出力することで、より多くの情報を得た標的部位の選択を可能にし、かつ、オフターゲットの切断を伴う可能性のより高い部位の使用を回避させた。
領域内のgRNA標的部位の、推定されるオンターゲット活性および/またはオフターゲット活性を比較するさらなるバイオインフォマティクスパイプラインを採用した。活性を予測するために用いてよい他の特徴には、問題の細胞型、DNAアクセシビリティ、クロマチンの状態、転写因子結合部位、転シーケンス(CHIP−seq)データ写因子結合データ、および他のクロマチン免疫沈降についての情報が含まれる。編集効率を予測するさらなるファクター、例えば、対となるgRNAの相対的位置および方向、局所的配列特徴、並びにマイクロホモロジーが比較される。
実施例14−オンターゲット活性についての、細胞における好ましいガイドの試験
最低のオフターゲット活性を有することが示されたgRNAはその後、Huh−7細胞などのモデル細胞株において、オンターゲット活性について試験され、TIDEまたは次世代シーケンシングを用いて、インデル頻度について評価されるであろう。TIDEは、ガイドRNA(gRNAまたはsgRNA)により決定される標的遺伝子座のCRISPR−Cas9によるゲノム編集を、迅速に評価するための、ウェブツールである。2つの標準的なキャピラリーシーケンシング反応からの定量的な配列トレースデータに基づき、TIDEソフトウェアは、標的細胞プールのDNAにおいて、編集効率を定量し、挿入および欠失(インデル)の優勢なタイプを特定する。詳細な説明および例は、Brinkman et al, Nucl. Acids Res. (2014) を参照されたい。ハイスループットシーケンシングとしても知られる次世代シーケンシング(NGS)は、多くの様々な最新の配列決定技術を説明するために用いられる包括的な用語であり、Illumina(Solexa)シーケンシング、Roche454シーケンシング、Iontorrent:Proton/PGMシーケンシング、およびSOLiDシーケンシングが含まれる。これらの最近の技術は、以前に用いられていたSangerシーケンシングよりも、はるかに迅速かつ安価にDNAおよびRNAを配列決定することを可能にし、そのため、ゲノミクスおよび分子生物学の得研究に革命をもたらしている。
組織培養細胞の遺伝子導入は、様々な構築物のスクリーニング、並びに、活性および特異性を試験する頑強な手段を可能にする。Huh−7細胞などの組織培養細胞株は、容易に遺伝子導入され、高い活性をもたらす。これら細胞株または他の細胞株は、最良のサロゲート(surrogate)を提供する細胞株を決定するために、調べられるであろう。これらの細胞はその後、多くの初期段階試験に用いられるであろう。例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9のための個々のgRNAは、例えば、ヒト細胞での発現に好適な、図1A〜1Cに記載されたCTx−1、CTx−2、またはCTx−3などのプラスミドを用いて、細胞に遺伝子導入されるであろう。数日後、ゲノムDNAを回収して、PCRにより標的部位を増幅する。切断活性は、フリーのDNA末端のNHEJ修復により導入された挿入、欠失、および変異の割合により、測定することができる。本方法は、切断されていないDNAから、正確に修復された配列を区別することができないが、誤った修復の量によって切断のレベルを計測することができる。オフターゲット活性は、特定された推定上のオフターゲット部位を増幅して、切断を検出する同様の方法を用いることにより、観察することができる。特定の切断および転座が起こるかどうかを決定するために、切断部位に隣接するプライマーを用いて、転座を評価することもできる。非ガイドアッセイが開発され、ガイド配列を含むオフターゲット切断の相補的試験が可能となった。その後、顕著な活性を有するgRNAまたはgRNAの対は、SERPINA1変異の修正を測定するために、培養細胞中で経過観察することができる。オフターゲットの現象も、再度確認することができる。これらの実験は、ヌクレアーゼおよびドナーの、設計および送達の最適化を可能にする。
実施例15−オフターゲット活性についての、細胞における好ましいガイドの試験
上述の実施例におけるTIDEおよび次世代シーケンシング研究から得られた最高のオンターゲット活性を有するgRNAはその後、全ゲノム配列解析を用いて、オフターゲット活性について試験されるであろう。
実施例16−HDR遺伝子編集についての様々な手法の試験
オンターゲット活性およびオフターゲット活性の両方についてgRNAを試験した後、変異の修正およびノックインの戦略が、HDR遺伝子編集について試験されるであろう。
変異の修正の手法については、ドナーDNAテンプレートは、短鎖1本鎖オリゴヌクレオチド、短鎖2本鎖オリゴヌクレオチド(インタクトなPAM配列/変異PAM配列)、長鎖1本鎖DNA分子(インタクトなPAM配列/変異PAM配列)または長鎖2本鎖DNA分子(インタクトなPAM配列/変異PAM配列)として提供されるであろう。さらに、ドナーDNAテンプレートは、AAVにより送達されるであろう。
cDNAノックインの手法については、14q32.13領域に対する相同アームを有する1本鎖または2本鎖DNAは、SERPINA1遺伝子の第一エクソン(最初のコーディングエクソン)のうち40を超えるヌクレオチド、SERPINA1遺伝子の完全なCDSおよびSERPINA1遺伝子の3’UTR、並びに、以下のイントロンのうち少なくとも40ヌクレオチドを含んでよい。14q32.13領域に対する相同アームを有する1本鎖または2本鎖DNAであって、SERPINA1遺伝子の第一エクソンのうち80を超えるヌクレオチド、SERPINA1遺伝子の完全なCDSおよびSERPINA1遺伝子の3’UTR、並びに、以下のイントロンのうち少なくとも80個のヌクレオチドを含む。14q32.13領域に対する相同アームを有する1本鎖または2本鎖DNAは、SERPINA1遺伝子の第一エクソンのうち100を超えるヌクレオチド、SERPINA1遺伝子の完全なCDSおよびSERPINA1遺伝子の3’UTR、並びに、以下のイントロンのうち少なくとも100ヌクレオチドを含んでよい。14q32.13領域に対する相同アームを有する1本鎖または2本鎖DNAは、SERPINA1遺伝子の第一エクソンのうち150を超えるヌクレオチド、SERPINA1遺伝子の完全なCDSおよびSERPINA1遺伝子の3’UTR、並びに、以下のイントロンのうち少なくとも150ヌクレオチドを含んでよい。14q32.13領域に対する相同アームを有する1本鎖または2本鎖DNAは、SERPINA1遺伝子の第一エクソンのうち300を超えるヌクレオチド、SERPINA1遺伝子の完全なCDSおよびSERPINA1遺伝子の3’UTR、並びに、以下のイントロンのうち少なくとも300ヌクレオチドを含んでよい。14q32.13領域に対する相同アームを有する1本鎖または2本鎖DNAは、SERPINA1遺伝子の第一エクソンの400を超えるヌクレオチド、SERPINA1遺伝子の完全なCDSおよびSERPINA1遺伝子の3’UTR、および以下の第一イントロンのうち少なくとも400ヌクレオチドを含んでよい。また、DNAテンプレートはAAVにより送達されるであろう。
cDNAまたはミニ遺伝子のノックイン手法については、14q32.13に対する相同アームを有する1本鎖または2本鎖DNAであって、SERPINA1遺伝子の第二エクソン(最初のコーディングエクソン)のうち80を超えるヌクレオチド、SERPINA1遺伝子の完全なCDSおよびSERPINA1遺伝子の3’UTR、並びに、以下のイントロンのうち少なくとも80ヌクレオチドである。また、DNAテンプレートはAAVにより送達されるであろう。
次に、SERPINA1のPI Z対立遺伝子の一般的な変異のHDR媒介修正、および、cDNAミニ遺伝子(天然のまたは合成のエンハンサーおよびプロモーター、1つ以上のエクソン、並びに、天然のまたは合成のイントロン、並びに、天然のまたは合成の3’UTRおよびポリアデニル化シグナルから成る)の第二エクソンへのノックインの効率が、評価されるであろう。
実施例17−主なCRISPR−Cas9/DNAドナーの組み合わせの再評価
HDR遺伝子編集のための様々な戦略を試験した後、主なCRISPR−Cas9/DNAドナーの組み合わせを、欠失、組換えの効率、およびオフターゲットの特異性について、初代培養ヒト肝細胞で評価した。Cas9mRNAまたはRNPは送達のために脂質ナノ粒子に製剤化されるであろうし、sgRNAはナノ粒子に製剤化されるかAAVとして送達されるであろうし、かつ、ドナーDNAはナノ粒子に製剤化されるかAAVとして送達されるであろう。
実施例18−関連するマウスモデルにおけるインビボ試験
CRISPR−Cas9/DNAドナーの組み合わせを再評価した後、主な製剤が、動物モデルにおいてインビボで試験されるであろう。好適な動物モデルには、非限定的な例として、ヒト肝細胞またはiPSC由来肝細胞(正常またはAAT欠損)で再増殖した肝臓を有するFGRマウスモデルが含まれる。
ヒト細胞における培養は、上述のように、ヒト標的およびバックグラウンドヒトゲノムに対する直接的な試験を可能にする。
前臨床の有効性および安全性評価は、FGRマウスにおける、改変された、マウス肝細胞またはヒト肝細胞の生着により、観察することができる。改変された細胞は、生着後、数ヶ月間観察することができる。
実施例19−gRNAのスクリーニング
SERPINA1 DNA標的領域を編集できる広範囲のgRNAの対を同定するために、インビトロ転写(IVT)gRNAスクリーニングを行った。SERPINA1ゲノム配列を、gRNA設計ソフトウェアを用いた解析のために提供した。得られたgRNAのリストを、配列の独自性(ゲノム上の他のどこかと完全に一致することのないgRNAのみを選択した)および、最小限の予測されたオフターゲットに基づき、約200個のgRNAまで絞り込んだ。gRNAの本セットを、インビトロで転写し、メッセンジャーMaxを用いて恒常的にCas9を発現するHEK293T細胞に遺伝子導入した。遺伝子導入後48時間で、細胞を回収し、ゲノムDNAを単離して、TIDE解析を用いて切断効率を調べた。gRNAの切断効率(インデル%)を表4に挙げる。
試験したgRNAの約14%が、70%を超える切断効率を誘導することが判明した(図3)。
例示的な態様に関する注記
本開示は、本発明の様々な局面、および/または、可能性のある適用を例示することを目的として、様々な具体的な態様の説明を提供しているが、変化や改変が生じるであろうことは、当業者に理解される。従って、本明細書に記載される本発明は、少なくとも特許請求の範囲に記載されたものと同程度広義に理解されるべきであり、本明細書により提供される特定の例示的な態様によってより狭義に規定されるものではない。
本明細書で特定された特許、刊行物または他の開示資料は、特に断りのない限り、その全体が参照により本明細書に組み込まれるが、組み込まれる資料が、本明細書で明示的に記載された既存の説明、定義、記述または他の開示資料と矛盾しない範囲内においてのみ組み込まれる。従って、必要に応じて、本明細書に記載される明示的開示は、参照により組み込まれた矛盾するいずれの資料よりも優先する。本明細書に参照により組み込まれると述べているが、本明細書に記載される既存の定義、記述、または他の開示資料と矛盾するいずれの資料、またはその一部も、組み込まれる資料と、既存の開示資料との間に矛盾が生じない範囲でのみ組み込まれる。出願人は、本明細書に参照により組み込まれる、いずれの対象事項またはその一部も明示的に引用するために、本明細書を補正する権利を留保する。
本開示は、例えば、以下に関する。
[1]
ゲノム編集によりヒト細胞のSERPINA1遺伝子を編集する方法であって、ヒト細胞に、1つ以上の1本鎖切断(SSB)または2本鎖切断(DSB)をもたらす1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを、SERPINA1遺伝子の、または、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部またはその近傍で導入し、SERPINA1遺伝子の、または、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部またはその近傍で、1つ以上の変異もしくはエクソンの、永続的な欠失、挿入、または、発現もしくは機能の修正もしくは調節、または、SERPINA1遺伝子またはSERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の発現もしくは機能への影響を生じて、アルファ1アンチトリプシン(AAT)タンパク質活性を回復させるステップを含む方法。
[2]
ゲノム編集によりヒト細胞にSERPINA1遺伝子を挿入する方法であって、ヒト細胞に1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを導入し、セーフハーバー座位の内部またはその近傍に、1つ以上の1本鎖切断(SSB)または2本鎖切断(DSB)をもたらすことにより、SERPINA1遺伝子またはミニ遺伝子の永続的な挿入と、AAT活性の回復とを生じることを含む方法。
[3]
アルファ1アンチトリプシン欠乏症の患者を治療するためのエクスビボ法であって、
i)患者特異的人工多能性幹細胞(iPSC)を作製すること;
ii)iPSCの、SERPINA1遺伝子の、または、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部またはその近傍で、あるいは、iPSCの、セーフハーバー座位の内部またはその近傍で編集すること;
iii)ゲノム編集したiPSCを肝細胞へ分化させること;および
iv)肝細胞を患者に移植すること:
のステップを含む方法。
[4]
作製ステップが、
a)患者から体細胞を単離すること;および
b)体細胞に、一連の多能性関連遺伝子を導入することにより、体細胞を多能性幹細胞に誘導すること:
を含む、前記[3]に記載の方法。
[5]
体細胞が線維芽細胞である、前記[4]に記載の方法。
[6]
一連の多能性関連遺伝子が、OCT4、SOX2、KLF4、Lin28、NANOGおよびcMYCからなる群から選択される1つ以上の遺伝子である、前記[4]に記載の方法。
[7]
編集ステップが、iPSCに、1つ以上の1本鎖切断(SSB)または2本鎖切断(DSB)をもたらす1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを、SERPINA1遺伝子の、または、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部またはその近傍で導入し、SERPINA1遺伝子の、または、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部またはその近傍で、1つ以上の変異もしくはエクソンの、永続的な欠失、挿入、または、発現もしくは機能の修正もしくは調節、または、SERPINA1遺伝子またはSERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の発現もしくは機能への影響を生じて、あるいは、セーフハーバー座位の内部またはその近傍で導入し、SERPINA1遺伝子またはミニ遺伝子の永続的な挿入を生じて、アルファ1アンチトリプシン(AAT)タンパク質活性を回復させることを含む、前記[3]〜[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8]
セーフハーバー座位が、AAVS1(PPP1R12C)、ALB、Angptl3、ApoC3、ASGR2、CCR5、FIX(F9)、G6PC、Gys2、HGD、Lp(a)、Pcsk9、Serpina1、TF、およびTTRからなる群から選択される、前記[7]に記載の方法。
[9]
分化ステップが、ゲノム編集したiPSCを肝細胞へ分化させる以下のステップのうち1つ以上を含む、前記[3]〜[8]のいずれか一項に記載の方法:ゲノム編集したiPSCを、アクチビン、B27サプリメント、FGF4、HGF、BMP2、BMP4、オンコスタチンM、デキサメタゾンの1つ以上と接触させること。
[10]
移植ステップが、該幹細胞を、移植、局所注射、または全身注入、またはこれらの組み合わせにより、患者に移植することを含む、前記[3]〜[9]のいずれか一項に記載の方法。
[11]
アルファ1アンチトリプシン欠乏症の患者を治療するためのエクスビボ法であって、
i)患者の肝臓の生検を行うこと;
ii)肝臓特異的な前駆細胞または初代肝細胞を単離すること;
iii)前駆細胞または初代肝細胞の、SERPINA1遺伝子の、または、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部またはその近傍で編集すること、あるいは、前駆細胞または初代肝細胞の、セーフハーバー座位の内部またはその近傍で編集すること;および
iv)ゲノム編集した前駆細胞または初代肝細胞を患者に移植すること:
のステップを含む方法。
[12]
単離ステップが、消化酵素による新鮮な肝臓組織の灌流、細胞の分画遠心、細胞培養、およびこれらの組み合わせを含む、前記[11]に記載の方法。
[13]
編集ステップが、前駆細胞または初代肝細胞に、1つ以上の1本鎖切断(SSB)または2本鎖切断(DSB)をもたらす1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを、SERPINA1遺伝子の、または、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部またはその近傍で導入し、SERPINA1遺伝子の、または、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部またはその近傍で、1つ以上の変異もしくはエクソンの、永続的な欠失、挿入、修正、または、発現もしくは機能の調節、または、SERPINA1遺伝子またはSERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の発現もしくは機能への影響を生じて、あるいは、セーフハーバー座位の内部またはその近傍で導入し、SERPINA1遺伝子またはミニ遺伝子の永続的な挿入を生じて、アルファ1アンチトリプシン(AAT)タンパク質活性を回復させることを含む、前記[11]または[12]に記載の方法。
[14]
セーフハーバー座位が、AAVS1(PPP1R12C)、ALB、Angptl3、ApoC3、ASGR2、CCR5、FIX(F9)、G6PC、Gys2、HGD、Lp(a)、Pcsk9、Serpina1、TF、およびTTRからなる群から選択される、前記[13]に記載の方法。
[15]
移植ステップが、移植、局所注射、または全身注入、またはこれらの組み合わせによりゲノム編集した前駆細胞または初代肝細胞を患者に移植することを含む、前記[11]〜[14]のいずれか一項に記載の方法。
[16]
アルファ1アンチトリプシン欠乏症の患者を治療するためのエクスビボ法であって、
i)患者の骨髄の生検を行うこと;
ii)患者から間葉系幹細胞を単離すること;
iii)間葉系幹細胞のSERPINA1遺伝子の、もしくは、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部またはその近傍で編集すること、または、間葉系幹細胞のセーフハーバー座位の内部またはその近傍で編集すること;
iv)ゲノム編集した間葉系幹細胞を肝細胞へ分化させること;および
v)肝細胞を患者に移植すること:
のステップを含む方法。
[17]
間葉系幹細胞が、患者の骨髄または末梢血から単離される、前記[16]に記載の方法。
[18]
単離ステップが、骨髄の吸引、およびパーコール(商標)を用いた密度遠心分離による間葉系細胞の単離を含む、前記[16]に記載の方法。
[19]
編集ステップが、間葉系幹細胞に、1つ以上の1本鎖切断(SSB)または2本鎖切断(DSB)をもたらす1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを、SERPINA1遺伝子の、または、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部またはその近傍で導入し、SERPINA1遺伝子の、または、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部またはその近傍で、1つ以上の変異もしくはエクソンの、永続的な欠失、挿入、修正、または、発現もしくは機能の調節、または、SERPINA1遺伝子またはSERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の発現もしくは機能への影響を生じて、あるいは、セーフハーバー座位の内部またはその近傍で導入し、SERPINA1遺伝子またはミニ遺伝子の永続的な挿入を生じて、アルファ1アンチトリプシン(AAT)タンパク質活性を回復させることを含む、前記[16]〜[18]のいずれか一項に記載の方法。
[20]
セーフハーバー座位が、AAVS1(PPP1R12C)、ALB、Angptl3、ApoC3、ASGR2、CCR5、FIX(F9)、G6PC、Gys2、HGD、Lp(a)、Pcsk9、Serpina1、TF、およびTTRからなる群から選択される、前記[19]に記載の方法。
[21]
分化ステップが、ゲノム編集した幹細胞を肝細胞へ分化させる以下のステップのうち1つ以上を含む、前記[16]〜[19]のいずれか一項に記載の方法:ゲノム編集した間葉系幹細胞をインスリン、トランスフェリン、FGF4、HGF、または胆汁酸のうち1つ以上と接触させること。
[22]
移植ステップが、該幹細胞を、移植、局所注射、または全身注入、またはこれらの組み合わせにより、患者に移植することを含む、前記[16]〜[21]のいずれか一項に記載の方法。
[23]
アルファ1アンチトリプシン欠乏症の患者を治療するためのインビボ法であって、患者の細胞内のSERPINA1遺伝子、またはSERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列を編集すること、あるいは、患者の細胞内のセーフハーバー座位の内部またはその近傍で編集することのステップを含む方法。
[24]
細胞に、1つ以上の1本鎖切断(SSB)または2本鎖切断(DSB)をもたらす1つ以上のデオキシリボ核酸(DNA)エンドヌクレアーゼを、SERPINA1遺伝子の、または、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部またはその近傍で導入し、SERPINA1遺伝子の、または、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部またはその近傍で、1つ以上の変異もしくはエクソンの、永続的な欠失、挿入、または、修正もしくは調節を生じて、あるいは、セーフハーバー座位の内部またはその近傍で導入し、SERPINA1遺伝子またはミニ遺伝子の永続的な挿入を生じて、アルファ1アンチトリプシン(AAT)タンパク質活性を回復させることを含む、前記[23]に記載の方法。
[25]
1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼが、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても知られる)、Cas100、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、またはCpf1エンドヌクレアーゼ;または、それらのホモログ、天然分子の遺伝子組換え、それらのコドン最適化バージョン、または改変バージョン、およびこれらの組み合わせである、前記[1]、[2]、[7]、[13]、[19]または[24]のいずれか一項に記載の方法。
[26]
1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを、細胞に導入することを含む、前記[25]に記載の方法。
[27]
1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼをコードする1つ以上のリボ核酸(RNA)を、細胞に導入すること含む、前記[25]に記載の方法。
[28]
1つ以上のポリヌクレオチドまたは1つ以上のRNAが、1つ以上の改変型ポリヌクレオチドまたは1つ以上の改変型RNAである、前記[26]または[27]に記載の方法。
[29]
DNAエンドヌクレアーゼがタンパク質またはポリペプチドである、前記[26]に記載の方法。
[30]
1つ以上のガイドリボ核酸(gRNA)を細胞に導入することをさらに含む、前記[1]〜[29]のいずれか一項に記載の方法。
[31]
1つ以上のgRNAが単分子ガイドRNA(sgRNA)である、前記[30]に記載の方法。
[32]
1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAが、1つ以上の改変型gRNAまたは1つ以上の改変sgRNAである、前記[30]または[31]に記載の方法。
[33]
1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼが、1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAと予め複合化されている、前記[30]〜[32]のいずれか一項に記載の方法。
[34]
さらに、野生型SERPINA1遺伝子またはミニ遺伝子またはcDNAの少なくとも一部を含む、ポリヌクレオチドドナー鋳型を細胞へ導入することを含む、前記[1]〜[33]のいずれか一項に記載の方法。
[35]
野生型SERPINA1遺伝子またはミニ遺伝子またはcDNAの少なくとも一部が、SERPINA1遺伝子、ミニ遺伝子、またはcDNAの、SERPINA1遺伝子、ミニ遺伝子、またはcDNAの、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、イントロン領域、それらのフラグメントまたは組み合わせ、SERPINA1遺伝子全体、野生型調節エレメントをコードするDNA配列である、前記[34]に記載の方法。
[36]
ドナー鋳型が、1本鎖ポリヌクレオチドまたは2本鎖ポリヌクレオチドのいずれかである、前記[34]または[35]に記載の方法。
[37]
ドナー鋳型が、14q32.13領域に対する相同アームを有する、前記[34]〜[36]のいずれか一項に記載の方法。
[38]
細胞に、1つのガイドリボ核酸(gRNA)と、野生型SERPINA1遺伝子の少なくとも一部を含むポリヌクレオチドドナー鋳型とを、導入することをさらに含み、かつ、
1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼが、SERPINA1遺伝子の、もしくは、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部もしくはその近傍で、または、セーフハーバー座位の内部もしくはその近傍で、DSB遺伝子座において1つの2本鎖切断(DSB)をもたらす1つ以上のCas9エンドヌクレアーゼであり、これは、該遺伝子座またはセーフハーバー座位における、染色体DNAへのポリヌクレオチドドナー鋳型由来の新規配列の挿入を促進させ、SERPINA1遺伝子の、または、該遺伝子座またはセーフハーバー座位に近位の、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、染色体DNAの一部の永続的な挿入または修正を生じて、AATタンパク質活性を回復させ、かつ、gRNAが、該遺伝子座またはセーフハーバー座位のセグメントに相補的なスペーサー配列を含む、前記[1]、[2]、[7]、[13]、[19]または[24]のいずれか一項に記載の方法。
[39]
近位が、遺伝子座またはセーフハーバー座位の上流および下流の両方のヌクレオチドを意味する、前記[38]に記載の方法。
[40]
細胞に、2つのガイドリボ核酸(gRNA)と、野生型SERPINA1遺伝子の少なくとも一部を含むポリヌクレオチドドナー鋳型とを、導入することをさらに含み、かつ、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼが、SERPINA1遺伝子の、もしくは、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部もしくはその近傍で、または、セーフハーバー座位の内部もしくはその近傍で、DSB遺伝子座において一対の2本鎖切断(DSB)(第一は5’DSB遺伝子座で、第二は3’DSB遺伝子座で)をもたらす2つ以上のCas9エンドヌクレアーゼであり、これは、5’DSB遺伝子座と3’DSB遺伝子座の間での、染色体DNAへのポリヌクレオチドドナー鋳型由来の新規配列の挿入を促進させ、SERPINA1遺伝子の、もしくは、SERPINA1遺伝子の調節エレメントをコードする他のDNA配列の、内部もしくはその近傍で、または、セーフハーバー座位の内部もしくはその近傍で、5’DSB遺伝子座と3’DSB遺伝子座の間に染色体DNAの永続的な挿入または修正を生じて、AATタンパク質活性を回復させ、かつ、第一のガイドRNAが5’DSB遺伝子座のセグメントに相補的なスペーサー配列を含み、第二のガイドRNAが3’DSB遺伝子座のセグメントに相補的なスペーサー配列を含む、前記[1]、[2]、[7]、[13]、[19]または[24]のいずれか一項に記載の方法。
[41]
1つまたは2つのgRNAが、1つまたは2つの単分子ガイドRNA(sgRNA)である、前記[38]〜[40]のいずれか一項に記載の方法。
[42]
1つもしくは2つのgRNA、または、1つもしくは2つのsgRNAが、1つもしくは2つの改変型gRNA、または、1つもしくは2つの改変sgRNAである、前記[38]〜[41]のいずれか一項に記載の方法。
[43]
1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼが、1つもしくは2つのgRNA、または、1つもしくは2つのsgRNAと予め複合化されている、前記[38]〜[42]のいずれか一項に記載の方法。
[44]
野生型SERPINA1遺伝子またはミニ遺伝子またはcDNAの少なくとも一部が、SERPINA1遺伝子、ミニ遺伝子、またはcDNAの、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、イントロン領域、それらのフラグメントまたは組み合わせ、SERPINA1遺伝子全体、野生型調節エレメントをコードするDNA配列である、前記[38]〜[43]のいずれか一項に記載の方法。
[45]
ドナー鋳型が、1本鎖ポリヌクレオチドまたは2本鎖ポリヌクレオチドのいずれかである、前記[38]〜[44]のいずれか一項に記載の方法。
[46]
ドナー鋳型が、14q32.13領域に対する相同アームを有する、前記[38]〜[45]のいずれか一項に記載に方法。
[47]
DSB、または、5’DSBおよび3’DSBが、SERPINA1遺伝子の、第一、第二、第三、第四、第五エクソンまたはイントロン、に存在する、前記[44]に記載の方法。
[48]
gRNAまたはsgRNAが、以下の病的変異のうち1つ以上を指向する、前記[1]、[2]、[7]、[13]、[19]、[24]、[30]〜[33]、または[38]〜[41]のいずれか一項に記載の方法:rs764325655、rs121912713、rs28929474、rs17580、rs121912714、rs764220898、rs199422211、rs751235320、rs199422210、rs267606950、rs55819880、rs28931570。
[49]
挿入または修正が相同組換え修復(HDR)による、前記[1]、[2]、[7]、[13]、[19]、または[24]〜[48]のいずれか一項に記載の方法。
[50]
細胞に、2つのガイドリボ核酸(gRNA)を導入することをさらに含み、かつ、1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼが、SERPINA1遺伝子の内部もしくはその近傍で、一対の2本鎖切断(DSB)(第一は5’DSB遺伝子座で、第二は3’DSB遺伝子座で)をもたらす2つ以上のCas9エンドヌクレアーゼであり、これは、5’DSB遺伝子座と3’DSB遺伝子座の間での、染色体DNAの欠失を引き起こし、SERPINA1遺伝子の内部またはその近傍で、5’DSB遺伝子座と3’DSB遺伝子座の間に染色体DNAの永続的な欠失を生じて、AATタンパク質活性を回復させ、かつ、第一のガイドRNAが5’DSB遺伝子座のセグメントに相補的なスペーサー配列を含み、第二のガイドRNAが3’DSB遺伝子座のセグメントに相補的なスペーサー配列を含む、前記[1]、[2]、[7]、[13]、[19]または[24]のいずれか一項に記載の方法。
[51]
2つのgRNAが、2つの単分子ガイドRNA(sgRNA)である、前記[50]に記載の方法。
[52]
2つのgRNAまたは2つのsgRNAが、2つの改変型gRNAまたは2つの改変sgRNAである、前記[50]または[51]に記載の方法。
[53]
1つ以上のDNAエンドヌクレアーゼが、1つもしくは2つのgRNA、または、1つもしくは2つのsgRNAと予め複合化されている、前記[50]〜[52]のいずれか一項に記載の方法。
[54]
5’DSBおよび3’DSBの両方が、SERPINA1遺伝子の第一エクソン、第二エクソン、第三エクソン、第四エクソンまたは第五エクソンのいずれかまたはその近傍に存在する、前記[50]〜[53]のいずれか一項に記載の方法。
[55]
欠失が、1kb以下の欠失である、前記[50]〜[54]のいずれか一項に記載の方法。
[56]
Cas9またはCpf1 mRNA、gRNA、およびドナー鋳型が、それぞれ別々の脂質ナノ粒子に含まれているか、あるいは、全て共に脂質ナノ粒子に含まれている、前記[1]、[2]、[7]、[13]または[19]〜[55]のいずれか一項に記載の方法。
[57]
Cas9またはCpf1 mRNA、gRNA、およびドナー鋳型が、それぞれ別々の脂質ナノ粒子に含まれているか、あるいは、全て共に脂質ナノ粒子に含まれている、前記[1]、[6]、[11]、[15]または[19]〜[55]のいずれかに記載の方法。
[58]
ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、前記[57]に記載の方法。
[59]
AAVベクターがAAV6ベクターである、前記[58]に記載の方法。
[60]
ドナー鋳型がそれぞれ別のエキソソームに含まれているか、あるいは、全て共に1つのエキソソームに含まれている、前記[1]、[2]、[7]、[13]、[19]または[24]〜[55]のいずれかに記載の方法。
[61]
Cas9またはCpf1 mRNAが1つの脂質ナノ粒子に含まれており、gRNAがエレクトロポレーションにより細胞に送達され、かつ、ドナー鋳型が1つのウイルスベクターで細胞に送達される、前記[1]、[2]、[7]、[13]、[19]または[24]〜[55]のいずれかに記載の方法。
[62]
ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、前記[61]に記載の方法。
[63]
AAVベクターが、AAV6ベクターである、前記[62]に記載の方法。
[64]
SERPINA1遺伝子が、14番染色体:1,493,319−1,507,264(ゲノムリファレンスコンソーシアム−GRCh38/hg38)に位置している、前記[1]〜[63]のいずれか一項に記載の方法。
[65]
AATタンパク質活性の回復を、野生型の、または正常なAATのタンパク質活性と比較する、前記[1]、[2]、[7]、[13]、[19]または[24]〜[55]のいずれか一項に記載の方法。
[66]
ヒト細胞が肝細胞である、前記[1]に記載の方法。
[67]
細胞が肝細胞である、前記[23]に記載の方法。
[68]
SERPINA1遺伝子が、SERPINA1遺伝子の発現を開始させる外来性プロモーターと作動可能に連結している、前記[1]、[2]、[7]、[13]、[19]または[24]〜[55]のいずれか一項に記載の方法。
[69]
1つ以上のDSBが、内在性プロモーター遺伝子座の3’末端に直結する位置で生じる、前記[1]、[2]、[7]、[13]、[19]または[24]〜[55]のいずれか一項に記載の方法。
[70]
アルファ1アンチトリプシン欠乏症(AATD)の患者由来の細胞内のSERPINA1遺伝子を編集するための1つ以上のガイドリボ核酸(gRNA)であって、アルファ1アンチトリプシン欠乏症の患者由来の細胞内のSERPINA1遺伝子を編集するための、配列番号54,860〜68,297の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む、1つ以上のgRNA。
[71]
1つ以上のgRNAが1つ以上の単分子ガイドRNA(sgRNA)である、前記[70]に記載の1つ以上のgRNA。
[72]
1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAが、1つ以上の改変型gRNAまたは1つ以上の改変sgRNAである、前記[70]または[71]に記載の1つ以上のgRNAまたはsgRNA。
[73]
細胞が肝細胞である、前記[70]〜[72]のいずれか一項に記載の1つ以上のgRNAまたはsgRNA。
[74]
アルファ1アンチトリプシン欠乏症(AATD)の患者由来の細胞中のセーフハーバー座位を編集するための1つ以上のガイドリボ核酸(gRNA)であって、アルファ1アンチトリプシン欠乏症の患者由来の細胞中のセーフハーバー座位を編集するための、配列番号1〜54,859の核酸配列からなる群から選択されるスペーサー配列を含む1つ以上のgRNAであり、ここでは、セーフハーバー座位が、AAVS1(PPP1R12C)、ALB、Angptl3、ApoC3、ASGR2、CCR5、FIX(F9)、G6PC、Gys2、HGD、Lp(a)、Pcsk9、Serpina1、TF、およびTTRからなる群から選択される、1つ以上のgRNA。
[75]
1つ以上のgRNAが1つ以上の単分子ガイドRNA(sgRNA)である、前記[74]に記載の1つ以上のgRNA。
[76]
1つ以上のgRNAまたは1つ以上のsgRNAが、1つ以上の改変型gRNAまたは1つ以上の改変sgRNAである、前記[74]または[75]に記載の1つ以上のgRNAまたはsgRNA。
[77]
細胞が肝細胞である、前記[74]〜[76]のいずれか一項に記載の1つ以上のgRNAまたはsgRNA。