JP6932082B2 - ルシフェリンの安定化方法及び生物発光の測定方法 - Google Patents

ルシフェリンの安定化方法及び生物発光の測定方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6932082B2
JP6932082B2 JP2017543612A JP2017543612A JP6932082B2 JP 6932082 B2 JP6932082 B2 JP 6932082B2 JP 2017543612 A JP2017543612 A JP 2017543612A JP 2017543612 A JP2017543612 A JP 2017543612A JP 6932082 B2 JP6932082 B2 JP 6932082B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
luciferin
acid
boronic acid
luciferase
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017543612A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2017057672A1 (ja
Inventor
利彦 山岡
利彦 山岡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Eiken Chemical Co Ltd
Original Assignee
Eiken Chemical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Eiken Chemical Co Ltd filed Critical Eiken Chemical Co Ltd
Publication of JPWO2017057672A1 publication Critical patent/JPWO2017057672A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6932082B2 publication Critical patent/JP6932082B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q1/00Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
    • C12Q1/66Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving luciferase
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • G01N33/50Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
    • G01N33/53Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor
    • G01N33/531Production of immunochemical test materials
    • G01N33/532Production of labelled immunochemicals

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • Urology & Nephrology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Food Science & Technology (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Investigating Or Analysing Materials By The Use Of Chemical Reactions (AREA)

Description

本発明は、ルシフェリンの安定化方法及びルシフェラーゼとルシフェリンによる生物発光に関する。
酵素免疫測定法による高感度測定系として、ルシフェラーゼとその発光基質であるルシフェリン反応による生物発光酵素免疫測定法が用いられている。ルシフェラーゼとルシフェリンの発光反応の利用法としては、例えば、ルシフェラーゼを標識物質とした微量物質の測定が挙げられる。特に生体内に存在するホルモン等の物質を免疫学的に測定する生物発光酵素免疫測定法では、高感度であることに加えて測定範囲も広いことから、従来の酵素免疫測定法やラジオイムノアッセイに代わるものとして注目されている。
このルシフェラーゼと酵素基質となるルシフェリンは、由来となる生物種によって異なっており、同一の発光生物由来の組合せのみに発光が認められ、その発光強度が強いことから、高感度の測定が要求されるイムノアッセイに利用されている。
しかし、ルシフェリンを溶液の状態で保存すると、基質としての機能が低下し、測定系の発光強度が低下する。
そこで、アデノシンモノフォスフェート、アデノシンジフォスフェート、フェニルフォスフェート等のリン酸供与体をルシフェリン溶液に共存させることにより、ルシフェリン溶液中のルシフェリンを安定化させる方法が提案されている(特許文献1)。
また、ルシフェリン溶液のpHをやや酸性に保持することにより、ルシフェリン溶液中のルシフェリンを安定化させる方法が提案されている(特許文献2)。
さらに、ルシフェリン溶液中の、ホタルルシフェリンをシクロデキストリンに包接させて、ルシフェリン溶液中のホタルルシフェリンを安定化させる方法が提案されている(特許文献3)。
一方、ウミホタルルシフェリンでは、ギ酸、プロピオン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸性溶質を含み、pHを酸性に保持することによる、溶液中のウミホタルルシフェリンを安定化させる方法が提案されている(特許文献4)。
しかしながら、いずれの処方でも、ルシフェリン溶液の状態で長期間保存することにより、ルシフェリンの基質としての機能が低下し、十分な安定性は得られていない。
そこで、ルシフェリン溶液の状態で長期間保存しても、ルシフェリンの基質としての機能を低下させないルシフェリン溶液の組成の確立が期待されている。
また、ルシフェラーゼによる生物発光反応は、時間とともにその発光強度が減衰するため、発光反応の初期に高い発光強度が得られていても、発光強度を測定する時点でその発光強度が減衰し、ルシフェラーゼの生物発光反応を指標とした測定の高感度化の妨げとなっている。
そこで、拮抗的阻害剤であるD−ルシフェリン類似体およびピロリン酸を共存させることにより発光強度を維持することが認められたが、拮抗的阻害剤により発光強度自体が弱く、感度は低下する(特許文献5)。
また、トリポリリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸、ピロリン酸等のポリリン酸化合物またはその塩およびジチオスレイトール、ジチオエリトルトール、β−メルカプトエタノール、2−メルカプトプロパノール、3−メルカプトプロパノール、2,3−ジチオプロパノール、グルタチオン等のスルフヒドリル化合物の共存下で生物発光反応を行うと、発光強度の減衰を抑制し、長時間にわたって高い発光強度を維持することが提案されている(特許文献6)。
さらに、ピロリン酸および/またはピロリン酸塩の存在下で、ルシフェリンと甲虫ルシフェラーゼを反応させると、発光半減期が5分以上の発光を生じることが示されている(特許文献7)。
しかしながら、これらの組成を添加しても、生物発光反応による発光強度は徐々に減衰している。また、試薬の調製後から測定までの時間が長いと、生物発光反応の初期の発光強度自体も低下する。
そこで、試薬の調製後も発光強度の低下が生じず、ルシフェラーゼの生物発光反応における発光強度の減衰が抑制される発光試薬の新たな組成の開発が期待されている。
特開2000−166550号公報 特開2000−253899号公報 特開2000−319280号公報 特開平08−154699号公報 特開昭55−13893号公報 特開平8−47399号公報 国際公開WO2006/013837
本発明は、ルシフェラーゼの基質であるルシフェリンを安定化させることを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ルシフェラーゼの生物発光反応を利用した測定を行うときに用いる、基質であるルシフェリン溶液にボロン酸誘導体又はその塩を組み合わせることにより安定化できることを見出した。また、本発明者は、試薬の組成を見出し、本発明を完成させるに至った。本発明者は、上記新規知見に基づき、ルシフェラーゼの生物発光反応を利用した測定の際の試薬組成等、試行錯誤を重ねた末、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
(1A)ルシフェラーゼの基質であるルシフェリン溶液にボロン酸誘導体又はその塩を共存させることを特徴とする、ルシフェリン溶液の安定化方法。
(2A)前記ボロン酸誘導体又はその塩がほう酸、四ほう酸ナトリウム、および下記式で表されるボロン酸誘導体又はその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、(1A)に記載のルシフェリン溶液の安定化方法。
Figure 0006932082
式中、R1は、置換基としてボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基及びチオール基からなる群より選択される少なくとも一種を有してもよく、二重結合または三重結合を含んでよいC1〜C10のアルキル基を示す。XはN−R7(窒素(N)にR7が結合)、酸素(O)及び硫黄(S)のいずれかひとつを示す。R2、R3、R4、R5、R6、及びR7は、同一又は異なって、H(水素)、ボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、チオール基、(tert−ブトキシカルボニル)アミノ基、または置換基としてボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基及びチオール基からなる群より選択される少なくとも一種を有してもよく、二重結合もしくは三重結合を含んでよいC1〜C10のアルキル基を示す。
(3A)前記ルシフェリンがホタルルシフェリンである、(1A)または(2A)に記載のルシフェリン溶液の安定化方法。
(4A)標識酵素としてルシフェラーゼを用い、ルシフェリンを基質として生物発光反応を測定する免疫学的測定方法において、ボロン酸誘導体又はその塩を共存させてルシフェリン溶液を安定化させる免疫学的測定方法。
(5A)前記ボロン酸誘導体又はその塩がほう酸、四ほう酸ナトリウム、および下記式で表されるボロン酸誘導体又はその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、(4A)に記載の免疫学的測定方法。
Figure 0006932082
式中、R1は、置換基としてボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基及びチオール基からなる群より選択される少なくとも一種を有してもよく、二重結合または三重結合を含んでよいC1〜C10のアルキル基を示す。XはN−R7(窒素(N)にR7が結合)、酸素(O)及び硫黄(S)のいずれかひとつを示す。R2、R3、R4、R5、R6、及びR7は、同一又は異なって、H(水素)、ボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、チオール基、(tert−ブトキシカルボニル)アミノ基、または置換基としてボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基及びチオール基からなる群より選択される少なくとも一種を有してもよく、二重結合もしくは三重結合を含んでよいC1〜C10のアルキル基を示す。
(6A)前記ルシフェラーゼがホタルルシフェラーゼであり、前記ルシフェリンがホタルルシフェリンである、(4A)または(5A)に記載の免疫学的測定方法。
(7A)(4A)〜(6A)のいずれかに記載の免疫学的測定方法に用いる免疫学的測定試薬。
(1B)ルシフェリンを基質としてルシフェラーゼの生物発光反応を行うときに、ピロリン酸塩およびボロン酸誘導体又はその塩を共存させることを特徴とする、生物発光強度の減衰・低下の抑制方法。
(2B)前記ボロン酸誘導体又はその塩が下記式で表されるボロン酸誘導体又はその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、(1B)に記載の生物発光強度の減衰・低下の抑制方法。
Figure 0006932082
式中、R1は、置換基としてボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基及びチオール基からなる群より選択される少なくとも一種を有してもよく、二重結合または三重結合を含んでよいC1〜C10のアルキル基を示す。XはN−R7(窒素(N)にR7が結合)、酸素(O)及び硫黄(S)のいずれかひとつを示す。R2、R3、R4、R5、R6、及びR7は、同一又は異なって、H(水素)、ボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、チオール基、(tert−ブトキシカルボニル)アミノ基、または置換基としてボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基及びチオール基からなる群より選択される少なくとも一種を有してもよく、二重結合もしくは三重結合を含んでよいC1〜C10のアルキル基を示す。
(3B)前記ルシフェリンがホタルルシフェリンである、(1B)または(2B)に記載の生物発光強度の減衰・低下の抑制方法。
(4B)標識物としてルシフェラーゼを用い、ルシフェリンを基質として生物発光反応を測定する免疫学的測定方法において、ピロリン酸塩およびボロン酸誘導体又はその塩を共存させて生物発光強度の減衰・低下を抑制させる免疫学的測定方法。
(5B)前記ボロン酸誘導体又はその塩が下記式で表されるボロン酸誘導体又はその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、(4B)に記載の免疫学的測定方法。
Figure 0006932082
式中、R1は、置換基としてボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基及びチオール基からなる群より選択される少なくとも一種を有してもよく、二重結合または三重結合を含んでよいC1〜C10のアルキル基を示す。XはN−R7(窒素(N)にR7が結合)、酸素(O)及び硫黄(S)のいずれかひとつを示す。R2、R3、R4、R5、R6、及びR7は、同一又は異なって、H(水素)、ボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、チオール基、(tert−ブトキシカルボニル)アミノ基、または置換基としてボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基及びチオール基からなる群より選択される少なくとも一種を有してもよく、二重結合もしくは三重結合を含んでよいC1〜C10のアルキル基を示す。
(6B)前記ルシフェリンがホタルシフェリンである(4B)または(5B)に記載の免疫学的測定方法。
(7B)前記ルシフェラーゼがホタルルシフェラーゼであり、前記ルシフェリンがホタルルシフェリンである、(4B)から(6B)に記載の免疫学的測定方法。
(8B)(4B)〜(7B)のいずれかに記載の免疫学的測定方法に用いる免疫学的測定試薬。
本発明は、上記方法によれば、ルシフェラーゼの基質であるルシフェリン溶液の安定化が得られることとなり、ルシフェラーゼの酵素反応に基づく測定系が、長期間にわたって安定な高感度の測定をすることが出来る。また、本発明の好ましい実施形態においては、ルシフェリンを基質としてルシフェラーゼの生物発光反応の際に、ボロン酸誘導体又はその塩にさらにピロリン酸塩を組み合わせることにより、生物発光強度の減衰・低下を抑制することができる。
そして、この測定により得られる結果についても、信頼性が高いものとなることが期待される。
フェニルボロン酸を含まないホタルルシフェリン溶液(対照)を−30℃で一週間保存後のHPLC分析結果 フェニルボロン酸を含まないホタルルシフェリン溶液(対照)を37℃で一週間保存後のHPLC分析結果 20mmol/Lのフェニルボロン酸を含むホタルルシフェリン溶液を37℃で一週間保存後のHPLC分析結果 ピロリン酸塩および/またはブチルボロン酸を添加したときの発光強度の変化 R1および/またはR2にプロピルボロン酸を添加したときの発光強度の変化 発光反応中にプロピルボロン酸を添加したときの発光強度の変化 種々の濃度のプロピルボロン酸を添加したときの発光強度の変化 エチルボロン酸の有無による発光強度の変化 シクロペンチルボロン酸の有無による発光強度の変化 フェニルボロン酸の有無による発光強度の変化 2−クロロフェニルボロン酸の有無による発光強度の変化 3−アミノフェニルボロン酸の有無による発光強度の変化 4−ヒドロキシルフェニルボロン酸の有無による発光強度の変化 4−カルボキシフェニルボロン酸の有無による発光強度の変化 1,4−フェニレンジボロン酸の有無による発光強度の変化 3−フリルボロン酸の有無による発光強度の変化 (トリヒドロキシ)フェニルボロン酸の有無による発光強度の変化 3−チオフェンボロン酸の有無による発光強度の変化 2,5−チオフェンジイルビスボロン酸の有無による発光強度の変化 トリヒドロキシフェニルボロン酸ナトリウムの有無による発光強度の変化
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明において、C1〜C10のアルキル基とは、二重結合又は三重結合を(好ましくは1個又は2個、より好ましくは1個)有してもよく、炭素数が1〜10であり、直鎖状、分枝鎖状又は環状の炭化水素基を示す。かかる二重結合又は三重結合を有してもよく、炭素数が1〜10であり、直鎖状、分枝鎖状又は環状の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基、エチニル基、プロパ−2−イン−1−イル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
本発明において、二重結合を有してもよいC1〜C10のアルキル基とは、二重結合を(好ましくは1個又は2個、より好ましくは1個)有してもよく、炭素数が1〜10であり、直鎖状、分枝鎖状又は環状の炭化水素基を示す。かかる二重結合を有してもよく、炭素数が1〜10であり、直鎖状、分枝鎖状又は環状の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
ハロゲンとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
本発明において、ルシフェリンとしては、ホタルルシフェリン、バクテリアルシフェリン、渦鞭毛藻類ルシフェリン等種々のものを用いることができるが、ホタルルシフェリンが好ましい。
ボロン酸誘導体の塩としては、特に限定されないが、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム等が挙げられ、ナトリウム塩等が好ましい。
本発明において、「置換基としてボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基及びチオール基からなる群より選択される少なくとも一種を有してもよく、二重結合または三重結合を含んでよいC1〜C10のアルキル基」とは、例えば、前述したC1〜C10のアルキル基、ならびに置換基としてボロニル基、前述したハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基及びチオール基からなる群より選択される少なくとも一種を有するC1〜C10のアルキル基が挙げられる。本発明において、C1〜C10のアルキル基が置換基を有する場合、その個数は特に限定されないが、例えば、1〜2個、好ましくは1個が挙げられる。
ルシフェリン溶液の安定化方法
第一の実施形態において、本発明は、ルシフェラーゼの基質であるルシフェリン溶液にボロン酸誘導体又はその塩を共存させることを特徴とする、ルシフェリン溶液の安定化方法を提供する。
当該実施形態において本発明は、ルシフェラーゼの酵素活性を基質であるルシフェリンを用いて測定するとき、調製したルシフェリン溶液を保存するとルシフェリンの機能が低下する現象を、ルシフェリン溶液にボロン酸誘導体又はその塩を共存させることにより抑制することに特徴がある。
本実施形態において本発明に用いられるボロン酸誘導体としては、ほう酸、四ほう酸ナトリウム、および下記式で表されるボロン酸誘導体又はその塩を選択することができる。これらは一種類で使用しても良く、また数種類を混合して使用しても良い。
Figure 0006932082
上記式中、R1は、置換基としてボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基及びチオール基からなる群より選択される少なくとも一種を有してもよく、二重結合または三重結合を含んでよいC1〜C10のアルキル基を示す。XはN−R7(窒素(N)にR7が結合)、酸素(O)及び硫黄(S)のいずれかひとつを示す。R2、R3、R4、R5、R6、及びR7は、同一又は異なって、H(水素)、ボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、チオール基、(tert−ブトキシカルボニル)アミノ基、または置換基としてボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基及びチオール基からなる群より選択される少なくとも一種を有してもよく、二重結合もしくは三重結合を含んでよいC1〜C10のアルキル基を示す。
本発明において、ボロン酸誘導体又はその塩として
Figure 0006932082
を用いる場合、R1は、アルキル基が好ましい。
本発明において、ボロン酸誘導体又はその塩として
Figure 0006932082
を用いる場合、Xは、S又はOが好ましく、R2、R3、R4、R5、およびR6は、同一又は異なって、H、ボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、メチル基、または(tert−ブトキシカルボニル)アミノ基を示すことが好ましい。
ボロン酸誘導体又はその塩としては、ほう酸、四ほう酸ナトリウム、エチルボロン酸、プロピルボロン酸、ブチルボロン酸、ヘキシルボロン酸、1,4−フェニレンジボロン酸、トリヒドロキシフェニルボロン酸ナトリウム、3−チオフェンボロン酸、3−フリルボロン酸、2,5−チオフェンジイルビスボロン酸、フェニルボロン酸、4−フルオロフェニルボロン酸、4−クロロフェニルボロン酸、4−ブロモフェニルボロン酸、4−ヒドロキシフェニルボロン酸、4−カルボキシフェニルボロン酸、4−メチルフェニルボロン酸、3−(tert−ブトキシカルボニル)アミノフェニルボロン酸等が挙げられる。これらのボロン酸誘導体又はその塩は一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態において、ルシフェリン溶液におけるルシフェリン濃度は限定されないが、例えば、0.01〜10mmol/Lが好ましく、0.1〜2.5mmol/Lがより好ましい。
また、ルシフェリン溶液におけるボロン酸誘導体又はその塩の濃度は、0.1〜100mmol/Lが好ましく、0.5〜10mmol/Lがより好ましい。
本発明においてルシフェリン溶液は、任意選択で、公知の安定化剤、発光増強剤等を添加することもできる。安定化剤としてはシクロデキストリン等を用いることができる。また発光増強剤としてはコエンザイムA、ピロリン酸、ジチオスレイトール、AMP等が挙げられる。
本実施形態において、ルシフェリン溶液は、安定剤としてシクロデキストリンをさらに含んでいてもよい。シクロデキストリンとしては、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体等が挙げられる。より具体的には、例えば、メチル−α−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、メチル−γ−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−α−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−γ−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−α−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン等が含まれる。これらのシクロデキストリンは一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
シクロデキストリンを用いる場合、その配合量は特に限定されないが、ルシフェリン1モルに対し、シクロデキストリン1〜100モルが好ましく、1〜20モルがより好ましい。
本発明において、ルシフェリン溶液は、上記成分を水又は緩衝液に溶解することにより調製することができる。緩衝液としては、生化学用に一般的に用いられるものであれば特に限定はなく、例えば、りん酸緩衝液、りん酸クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリシン緩衝液、トリス緩衝液、Good's緩衝液等が挙げられる。
ルシフェリン溶液のpHは特に限定されないが、例えば、pH5.0〜7.2、好ましくはpH5.5〜6.8等の範囲で適宜設定することができる。
本発明によれば、かかる構成をとることにより、ルシフェラーゼの基質であるルシフェリン溶液を安定して保存することが可能となる。従って、ルシフェラーゼの酵素反応に基づく測定系が、長期間にわたって安定な高感度の測定をすることが出来る。
免疫学的測定方法1
本発明はまた、標識酵素としてルシフェラーゼを用い、ルシフェリンを基質として生物発光反応を測定する免疫学的測定方法において、ボロン酸誘導体又はその塩を共存させてルシフェリン溶液を安定化させる免疫学的測定方法を提供する。本実施形態においては、免疫学的測定方法に用いるルシフェリンとして、ルシフェリン及びボロン酸誘導体又はその塩を含む溶液を用いることを特徴とする。当該実施形態においては、免疫学的測定方法に用いるルシフェリン溶液にボロン酸誘導体又はその塩を共存させることに起因して、当該測定前のルシフェリン溶液の保存安定性が改善されており、そのため長期間にわたって安定な高感度の測定をすることが出来る。当該実施形態における、ルシフェリンの種類、ルシフェリン溶液、緩衝液、安定剤の組成等は上記「ルシフェリン溶液の安定化方法」と同様である。
また、本発明において、ルシフェラーゼとしては、ルシフェリンを基質として生物発光反応をするものであれば特に限定されない。典型的には、本発明において、ルシフェラーゼには、本発明の属する技術分野において用いられているものを広く使用することができ、野生型ルシフェラーゼだけでなく、遺伝子改変したもの、標識化したもの等の種々の誘導体も含まれる。また、本発明において、「ルシフェラーゼを用いる」とは、ルシフェラーゼタンパク質を用いる場合だけでなく、ルシフェラーゼ遺伝子を用いる(例えば、目的遺伝子の存在下でルシフェラーゼが発現するようプロモータの制御下にルシフェラーゼ遺伝子が配置されたベクターを用いる等)方法も包含する。本発明においてルシフェラーゼとしては種々生物由来のものを用いることができるが、ホタル由来のホタルルシフェラーゼ等が好ましい。
生物発光強度の減衰・低下の抑制方法
また、一実施形態において、本発明は、ピロリン酸塩およびボロン酸誘導体又はその塩の共存下でルシフェリンを基質としてルシフェラーゼの生物発光反応を行う工程を含む、生物発光強度の減衰・低下の抑制方法を提供する。言い換えると、本発明は、ルシフェリンを基質としてルシフェラーゼの生物発光反応を行うときに、ピロリン酸塩およびボロン酸誘導体又はその塩を共存させることを特徴とする、生物発光強度の減衰・低下の抑制方法を提供する。
免疫学的測定方法及び生物発光強度の減衰・低下の抑制方法の実施形態において、本発明に用いられるボロン酸誘導体又はその塩としては、例えば、下記式で表されるボロン酸誘導体又はその塩を選択することができる。これらは一種類で使用しても良く、また数種類を混合して使用しても良い。
Figure 0006932082
式中、R1は、置換基としてボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基及びチオール基からなる群より選択される少なくとも一種を有してもよく、二重結合または三重結合を含んでよいC1〜C10のアルキル基を示す。XはN−R7(窒素(N)にR7が結合)、酸素(O)及び硫黄(S)のいずれかひとつを示す。R2、R3、R4、R5、R6、及びR7は、同一又は異なって、H(水素)、ボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、チオール基、(tert−ブトキシカルボニル)アミノ基、または置換基としてボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基及びチオール基からなる群より選択される少なくとも一種を有してもよく、二重結合もしくは三重結合を含んでよいC1〜C10のアルキル基を示す。本発明において、ボロン酸誘導体又はその塩としてR1−B(OH)を用いる場合、R1は、アルキル基が好ましい。本発明において、上記式で表されるボロン酸誘導体又はその塩を用いる場合、Xは、S又はOが好ましく、R2、R3、R4、R5、およびR6は、同一又は異なって、H、ボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、メチル基、または(tert−ブトキシカルボニル)アミノ基を示すことが好ましい。
ボロン酸誘導体又はその塩としては、エチルボロン酸、プロピルボロン酸、ブチルボロン酸、ヘキシルボロン酸、1,4−フェニレンジボロン酸、トリヒドロキシフェニルボロン酸ナトリウム、3−チオフェンボロン酸、3−フリルボロン酸、2,5−チオフェンジイルビスボロン酸、フェニルボロン酸、4−フルオロフェニルボロン酸、4−クロロフェニルボロン酸、4−ブロモフェニルボロン酸、4−ヒドロキシフェニルボロン酸、4−カルボキシフェニルボロン酸、4−メチルフェニルボロン酸、3−アミノフェニルボロン酸、3−(tert−ブトキシカルボニル)アミノフェニルボロン酸等が挙げられる。これらのボロン酸誘導体又はその塩は一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、ルシフェリンを基質としてルシフェラーゼの生物発光反応を生じさせる方法は特に限定されないが、例えば、被験サンプルに、ルシフェリン、ビオチン化ルシフェラーゼ、ビオチン化抗体、アビジンを添加してビオチン化抗体に特異的に結合する物質を定量測定する方法;被験サンプルに、ルシフェラーゼ、ルシフェリンを添加して被験サンプル中のATPの量、位置等を測定する方法;等が挙げられる。各測定方法は、ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応をピロリン酸塩およびボロン酸誘導体又はその塩の共存下で生じさせる以外、自体公知の方法に基づき行うことができる。
典型的には、生物発光反応を用いた免疫学的測定方法は、以下の手順により行うことができる:
まず、担体固定化抗体(第一抗体)溶液に被験試料を添加する。次に、バッファを分離(洗浄)する。そしてルシフェラーゼ標識抗体(第二抗体)溶液を添加する。次に、バッファを分離(洗浄)する。そして基質を混合(ルシフェリン等)し、発光を測定する。
また、本実施形態において、反応系に添加する前のルシフェリン溶液におけるボロン酸誘導体又はその塩の濃度は、0.1〜300mmol/Lが好ましく、0.5〜50mmol/Lがより好ましく、0.5〜10mmol/Lがさらに好ましい。また、ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応を生じさせている際のボロン酸誘導体又はその塩の濃度は、0.05〜150mmol/Lが好ましく、0.25〜25mmol/Lがより好ましく、0.25〜5mmol/Lがさらに好ましい。
本実施形態においてピロリン酸塩としては、例えば、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸マグネシウム等が挙げられる。本実施形態において、ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応の反応系中のピロリン酸塩の濃度は特に限定されないが、例えば、0.01〜10mmol/Lが好ましく、0.05〜0.5mmol/Lがより好ましい。
本実施形態においてルシフェリン溶液に配合するルシフェリン、ボロン酸誘導体又はその塩以外の成分の組成、pH、ルシフェラーゼの種類等は、「ルシフェリン溶液の安定化方法」と同様である。
本実施形態において、ルシフェリンを基質としたルシフェラーゼの生物発光反応の発光強度を、その測定中、長時間にわたって維持することが出来る。すなわち、生物発光反応を検出するときの測光するタイミングを発光反応のごく初期に設定しなくても十分な発光強度が得られることとなり、容易に高感度の測定が可能となる。
さらに、本発明を用いて作製したルシフェリン基質試薬は、調製した後も基質としての効果が低下することもなく安定であることから、安定した結果が求められる測定試薬の構成成分に用いることが可能となる。
すなわち、ルシフェリンを基質としたルシフェラーゼによる高感度の生物発光反応を利用した測定を行う際に、信頼性が高い測定結果が得られることが期待される。
免疫学的測定方法2
本発明はまた、標識物としてルシフェラーゼを用い、ルシフェリンを基質として生物発光反応を測定する免疫学的測定方法において、ピロリン酸塩およびボロン酸誘導体又はその塩を共存させて生物発光強度の減衰・低下を抑制させる免疫学的測定方法を提供する。当該実施形態においては、免疫学的測定方法に用いるルシフェリン溶液にピロリン酸塩及びボロン酸誘導体又はその塩を共存させることに起因して、免疫学的測定の際の、経時的な生物発光強度の減衰・低下を抑制することができる。当該実施形態における、ボロン酸誘導体の種類、濃度、ルシフェリンの種類、ルシフェリン溶液、緩衝液、安定剤の組成等は上記「生物発光強度の減衰・低下の抑制方法」と同様である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
各種ボロン酸誘導体によるホタルルシフェリンの安定化
ホタルルシフェリン溶液に種々のボロン酸誘導体を溶解し、25℃または37℃で一定期間保存後にホタルルシフェラーゼの活性を測定し、ホタルルシフェリンの安定性を評価した。
(1)試薬の調製
本実施例で用いたホタルルシフェラーゼ活性の至適pHは、pH8.2〜8.3である。一方、基質であるホタルルシフェリンは弱酸性において安定である(特許文献2)。
そこで、ホタルルシフェリンを含む溶液のpHを弱酸性とし、ホタルルシフェラーゼの活性を測定するときには至適pHとなるように、二種類の測定試薬(R1およびR2)を調製し、ホタルルシフェラーゼの活性測定時にR1とR2を混合し、発光強度を測定した。
各々の試薬の組成は、R1が30mmol/L MgSO・7HO、4mmol/L ATP・2Na、および0.1mmol/L ピロリン酸カリウム含有100mmol/L Tris緩衝液(pH8.4)、R2が0.5mmol/L ホタルルシフェリンおよび5mmol/L ボロン酸誘導体含有10mmol/L ADA緩衝液(pH6.5)とした。
ボロン酸誘導体として、ほう酸、四ほう酸ナトリウム、エチルボロン酸、プロピルボロン酸、ブチルボロン酸、ヘキシルボロン酸、1,4−フェニレンジボロン酸、トリヒドロキシフェニルボロン酸ナトリウム、3−チオフェンボロン酸、3−フリルボロン酸、2,5−チオフェンジイルビスボロン酸、フェニルボロン酸、4−フルオロフェニルボロン酸、4−クロロフェニルボロン酸、4−ブロモフェニルボロン酸、4−カルボキシフェニルボロン酸、4−メチルフェニルボロン酸、3−(tert−ブトキシカルボニル)アミノフェニルボロン酸を用いた。水に難溶性なボロン酸誘導体は、有機溶媒(水溶性で難溶性ボロン酸誘導体を溶解できるもの)を適宜用いて溶解し、添加した。
試薬を調製した後、R1は−30℃で凍結保存し、R2は−30℃、25℃、および37℃で7日間保存し、試験に用いた。
(2)ルシフェラーゼ活性の測定
7日間保存後、凍結させたものは水浴で融解し、全ての試薬を30℃で予備加温した。
ホタルルシエラーゼ溶液は、1×10−11mol/Lとなるように調製した。
96穴マイクロプレート(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)の各ウエルに10μLのホタルルシフェラーゼ溶液をマニュアルで分注後、発光強度測定装置のCentroLB960(ベルトールド社)を用いてR1を50μLおよびR2を50μL各々吐出し、4.5秒後から5秒間の発光強度を測定した。
結果を表1、2、3、および4に示す。
表1より、R2にボロン酸誘導体を添加しない組成(対照)の発光強度は、R2を−30℃に保存したときの発光強度と比較すると、25℃保存では76%、37℃保存では45%に低下した。この発光強度の低下は、ホタルルシフェリンの分解産生物がホタルルシフェラーゼ活性を阻害したためと考えられる。
一方、R2にほう酸を添加した場合、25℃保存では84%に、37℃保存では52%となり、発光強度の低下が抑制された。また、四ほう酸ナトリウムを添加した場合、各々25℃保存では83%に、37℃保存では55%となり、発光強度の低下が抑制された。これらより、ホウ酸および四ホウ酸ナトリウムがホタルルシフェリンの分解を抑制し、安定化したと考えられる。
また、表2から4より、エチルボロン酸、プロピルボロン酸、ブチルボロン酸、ヘキシルボロン酸、1,4−フェニレンジボロン酸、トリヒドロキシフェニルボロン酸ナトリウム、3−チオフェンボロン酸、3−フリルボロン酸、2,5−チオフェンジイルビスボロン酸、フェニルボロン酸、4−フルオロフェニルボロン酸、4−クロロフェニルボロン酸、4−ブロモフェニルボロン酸、4−カルボキシフェニルボロン酸、4−メチルフェニルボロン酸、3−(tert−ブトキシカルボニル)アミノフェニルボロン酸をR2に添加した場合も、ホタルルシフェリンの分解を抑制し安定化することが明らかになった。
すなわち、ホタルルシフェリンとボロン酸誘導体を共存させることにより、ホタルルシフェリンの機能の低下を抑制することができた。
Figure 0006932082
Figure 0006932082
Figure 0006932082
Figure 0006932082
また、ヘキシルボロン酸、1,4−フェニレンジボロン酸、4−フルオロフェニルボロン酸、4−クロロフェニルボロン酸、4−ブロモフェニルボロン酸、4−メチルフェニルボロン酸、3−(tert−ブトキシカルボニル)アミノフェニルボロン酸等のボロン酸誘導体を5mmol/L添加して使用すると、ホタルルシフェラーゼ活性の阻害が認められた。しかし、これらのボロン酸誘導体がホタルルシフェリンを安定化することは明らかであるので、5mmol/L以下のホタルルシフェラーゼ活性を阻害しない濃度を添加して用いることが可能である。
表2、3、および4の結果から、ボロン酸誘導体又はその塩の置換基の種類がホタルルシフェリンの安定化に影響し、また、ホタルルシフェラーゼ活性にも影響することが明らかになった。
実施例2
ボロン酸誘導体の異性体によるホタルルシフェリンの安定化
(1)試薬の調製
ボロン酸誘導体の異性体によるホタルルシフェリンの安定化に対する効果を検討した。
ボロン酸誘導体としてクロロフェニルボロン酸を用い、その異性体として、2−クロロフェニルボロン酸、3−クロロフェニルボロン酸、および4−クロロフェニルボロン酸を用いた。
また、ボロン酸誘導体としてフリルボロン酸を用い、その異性体として、2−フリルボロン酸および3−フリルボロン酸を用いた。
試薬の調製は、実施例1と同様に行った。なお、クロロフェニルボロン酸は、水に難溶性であるため、有機溶媒(水溶性でクロロフェニルボロン酸を溶解できるもの)を適宜用いて溶解し、添加した。
(2)ルシフェラーゼ活性の測定
実施例1と同様に測定した結果を表5および6に示す。
−30℃での発光強度を比較すると、クロロフェニルボロン酸は4位、3位、および2位の順で発光強度の低下が大きく、ホタルルシフェラーゼの活性を阻害した。一方、ホタルルシフェリンの安定化効果は、4位がよい傾向が認められた。しかし、その差は著しいものではないので、より高感度な測定を行うためには、ホタルルシフェラーゼ活性の阻害が小さい2−クロロフェニルボロン酸を用いることが適当である。
また、フリルボロン酸では2位と3位の異性体で著しい差はないが、2−フリルボロン酸がホタルルシフェリンの安定化効果がやや高い結果であった。
このように、置換基の種類だけでなく、置換基の位置もホタルルシフェリンの安定化にも影響することが明らかになった。
Figure 0006932082
Figure 0006932082
実施例3
ホタルルシフェリンの安定化におけるボロン酸誘導体の濃度の影響(その1)
ボロン酸誘導体として、ブチルボロン酸およびフェニルボロン酸を用い、ボロン酸誘導体の濃度を0.2mmol/L、2mmol/L、および20mmol/Lとしてボロン酸誘導体の濃度の違いによる影響を検討した。
(1)試薬の調製
各々の試薬の組成は、R1が30mmol/L MgSO/7HO、4mmol/L ATP・2Na、および0.1mmol/L ピロリン酸カリウム含有100mmol/L Tris緩衝液(pH8.5)、R2が0.5mmol/L ホタルルシフェリンおよびボロン酸誘導体含有10mmol/L ADA緩衝液(pH6.5)とした。
(2)ルシフェラーゼ活性の測定
実施例1と同様に測定した結果を表7に示す。
ブチルボロン酸、フェニルボロン酸とも濃度に依存してホタルルシフェリンの安定化に対する効果の増強が認められた。
Figure 0006932082
なお、ボロン酸誘導体の濃度を20mmol/Lとしたときには、−30℃保存のR2での発光強度が低く、ホタルルシフェラーゼの酵素活性を抑制した。
実施例4
ホタルルシフェリンの安定化におけるボロン酸誘導体の濃度の影響(その2)
(1)試薬の調製
ボロン酸誘導体として、ほう酸を用い、ほう酸の濃度を1mmol/L、5mmol/L、10mmol/L、15mmol/L、20mmol/L、および25mmol/Lとし、Trisの濃度を200mmol/Lとした他は、実施例3と同様に調製した。
(2)ルシフェラーゼ活性の測定
実施例1と同様に測定した結果を表8に示す。
ほう酸濃度に依存してホタルルシフェリンの安定化に対する効果の増強が認められた。
Figure 0006932082
実施例5
ホタルルシフェリンの安定化におけるボロン酸誘導体の濃度の影響(その3)
(1)試薬の調製
ボロン酸誘導体として、プロピルボロン酸を用い、プロピルボロン酸の濃度を0.01mmol/L、0.05mmol/L、0.1mmol/L、0.5mmol/L、1mmol/L、2.5mmol/L、5mmol/L、10mmol/L、25mmol/L、50mmol/L、および100mmol/Lとし、Trisの濃度を200mmol/Lとした他は、実施例3と同様に調製した。
(2)ルシフェラーゼ活性の測定
実施例1と同様に測定した結果を表9に示す。
ほう酸同様、プロピルボロン酸濃度に依存してホタルルシフェリンの安定化に対する効果の増強が認められた。
Figure 0006932082
実施例6
ボロン酸誘導体とシクロデキストリン誘導体を組み合わせたときのホタルルシフェリンの安定化
ボロン酸誘導体とホタルルシフェリンの安定化に効果が認められたシクロデキストリン誘導体(特許文献3)を組み合わせたときの効果の増大の有無を検討した。
(1)試薬の調製
ボロン酸誘導体として2mmol/L フェニルボロン酸、およびシクロデキストリン誘導体として2.5mmol/L ジメチル−β−シクロデキストリンを用いた他は、実施例1と同様に調製した。
(2)ルシフェラーゼ活性の測定
実施例1と同様に測定した結果を表10に示す。
ボロン酸誘導体またはシクロデキストリン誘導体単独で使用したときに比較して、ボロン酸誘導体とシクロデキストリン誘導体を組み合わせて共存させたときの方が25℃、37℃ともにホタルルシフェラーゼの活性が高く、両者を組み合わせることによりホタルルシフェリンの安定化が高まることが認められた。
Figure 0006932082
実施例7
HPLCによるホタルルシフェリンの分解産生物の分析
(1)試薬の調製
フェニルボロン酸を含まないホタルルシフェリン溶液(対照)および20mmol/L フェニルボロン酸を含むホタルルシフェリン溶液を調製した。なお、フェニルボロン酸の他は、実施例1と同様に調製した。
フェニルボロン酸を含まないホタルルシフェリン溶液(対照)は−30℃および37℃で保存した。また、フェニルボロン酸を含むホタルルシフェリン溶液は37℃で7日間保存した。
(2)HPLCによる分析
HPLCとしてWaters社のUPLC、検出器はPDAを用いて、330nmで測定した。カラムは、CHIRALCEL OD−RH(4.6×15cm)(ダイセル化学工業社)を用いた。移動相はアセトニトリルと0.1%トリフルオロ酢酸を用いて、アセトニトリルを0〜30分間で25%から85%のグラジエント分析(UPLCパラメータ曲線増加8)を用いた。
HPLCの分析結果を図1〜図3に示す。対照のホタルルシフェリン溶液の−30℃保存(図1)および37℃保存(図2)を比較すると、37℃で保存することにより14.5分、19.4分、および21.3分にピークの上昇が認められ、これらがホタルルシフェリンの主な分解産生物と考えられた。なお、16.6分がホタルルシフェリンである。ホタルルシフェリンは37℃7日間後98%残存しており、2%が分解したと考えられた。
14.5分のピークはL−ルシフェリン、19.4分のピークはデヒドロルシフェリンと考えられ、21.3分のピークは不明であった。これらのピークを分取し、ホタルルシフェラーゼ活性への影響を評価したところ、全てのピークがホタルルシフェラーゼ活性を阻害することを確認した。
一方、フェニルボロン酸を含むホタルルシフェリン溶液(図3)では、14.5分のピークはやや上昇したが、19.4分および21.3分のピークの上昇が顕著に抑制された。
デヒドロルシフェリンはホタルルシフェラーゼに対する親和性が非常に大きいため、ホタルルシフェラーゼを強く阻害することが知られている。フェニルボロン酸は19.4分(デヒドロルシフェリン)および21.3分の分解産生を抑制することにより、ホタルルシフェリン溶液を安定化しているものと考えられた。
実施例8
ルシフェリン溶液にピロリン酸塩および/またはブチルボロン酸を共存させたときの発光の減衰・低下の抑制
ホタルルシフェリン溶液にピロリン酸塩および/またはブチルボロン酸を添加して、ルシフェラーゼによる発光反応を経時的に測定し、発光強度の減衰・低下の抑制効果を評価した。
(1)試薬の調製
本実施例のルシフェラーゼは遺伝子変異で得られたホタルルシフェラーゼを用いた。この酵素の至適pHは、pH8.2〜8.3である。一方、基質であるホタルルシフェリンは弱酸性において安定である。
そこで、ホタルルシフェリンを含む溶液のpHを弱酸性とし、ホタルルシフェラーゼの活性測定時には至適pHとなるように、二種類の測定試薬(R1およびR2)を調製し、ホタルルシフェラーゼの活性測定時にR1とR2を混合し、発光強度を測定した。
各々の試薬の組成は、R1が30mmol/L MgSO・7HO、および4mmol/L ATP・2Na含有100mmol/L Tris緩衝液(pH8.5)、R2が0.5mmol/L ホタルルシフェリン含有10mmol/L ADA緩衝液(pH6.5)とし(対照)、試験区にはさらに、0.1mmol/L ピロリン酸カリウムおよび/または2mmol/L ブチルボロン酸となるようにR2に添加した。
(2)ホタルルシフェラーゼ溶液
ホタルルシフェラーゼ溶液は、1×10−11mol/Lとなるように調製した。
(3)ルシフェラーゼの活性測定
96穴マイクロプレート(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)の各ウエルに10μLのホタルルシフェラーゼ溶液をマニュアルで分注した。また、全ての試薬を30℃で予備加温した。発光強度測定装置CentroLB960(ベルトールド社)を用いてR1を50μLおよびR2を50μL各々吐出し、0秒後から30秒後までの発光強度を連続的に測定した。
結果を図4に示すが、対照(ピロリン酸とブチルボロン酸を含まない場合)はフラッシュ発光であり、発光強度が速やかに低下した。これに対し、発光反応時にピロリン酸及びブチルボロン酸を共存させた場合は、ピロリン酸のみを共存させた場合に比べて、発光強度の減衰・低下が抑制された。
実施例9
プロピルボロン酸をR1またはR2に添加したときの発光の減衰・低下の抑制
ボロン酸誘導体としてプロピルボロン酸を用い、より高い効果を得るためには、いずれの試薬にボロン酸誘導体を添加した方が良いか、検討した。
(1)試薬の調製
各々の試薬の組成は、R1が30mmol/L MgSO・7HO、4mmol/L ATP・2Na、および0.1mmol/L ピロリン酸カリウム含有 100mmol/L Tris緩衝液(pH8.4)、R2が0.5mmol/L ホタルルシフェリン含有 10mmol/L ADA緩衝液(pH6.5)とし(対照)、試験区にはさらにR1またはR2に5mmol/L プロピルボロン酸を添加した。
(2)ルシフェラーゼの活性測定
実施例8と同様にホタルルシフェラーゼ溶液を調製し、測定を60秒後まで行った他は実施例8と同様の測定を実施した。
結果を図5に示すが、R1にプロピルボロン酸を添加したとき、R2にプロピルボロン酸を添加したとき、およびR1とR2の両方にプロピルボロン酸を添加したときのいずれも同等で、プロピルボロン酸を添加しない対照に比べて発光強度の減衰・低下が小さくなった。従って、プロピルボロン酸はR1、R2のどちらか一方の試薬に添加してもよく、またはR1、R2の両方に添加してもよいことが分かった。
実施例10
プロピルボロン酸を反応中に添加したときの発光の減衰低下の抑制
ボロン酸誘導体としてプロピルボロン酸を用い、発光反応中にボロン酸誘導体を添加したときの発光の減衰・低下の抑制効果を検討した。
(1)試薬の調製
各々の試薬の組成は、R1が30mmol/L MgSO・7HO、4mmol/L ATP・2Na、および0.1mmol/L ピロリン酸カリウム含有 100mmol/L Tris緩衝液(pH8.4)、R2が0.5mmol/L ホタルルシフェリン含有10mmol/L ADA緩衝液(pH6.5)とし、さらにR3として7.5mmol/L プロピルボロン酸溶液を調製した。
(2)ルシフェラーゼの活性測定
実施例8と同様にホタルルシフェラーゼ溶液を調製した。
96穴マイクロプレートの各ウエルに10μLのホタルルシフェラーゼ溶液をマニュアルで分注後、発光強度測定装置CentroLB960を用いてR1を50μLおよびR2を50μL各々吐出し、0秒後から15秒後までの発光強度を連続的に測定し、その後R3を50μL吐出し、さらに60秒後まで連続的に測定した。対照のR3は精製水50μLとした。
結果を図6に示すが、ルシフェラーゼの発光反応中にプロピルボロン酸を添加しても、対照に比べて、発光強度の減衰・低下の抑制効果が改善された。従って、ボロン酸誘導体は構成試薬のどこに含まれてもよく、ルシフェラーゼ発光の反応時にボロン酸誘導体が存在すればよいことが分かった。
実施例11
ボロン酸誘導体の濃度による影響
添加するボロン酸誘導体の濃度を変えてルシフェラーゼによる発光反応を経時的に測定し、ボロン酸誘導体の濃度の違いによる発光強度の減衰・低下の抑制効果を評価した。
(1)試薬の調製
各々の試薬の組成は、R1が30mmol/L MgSO・7HO、および4mmol/L ATP・2Na含有100mmol/L Tris緩衝液(pH8.4)、R2が0.5mmol/L ホタルルシフェリン、0.1mmol/L ピロリン酸カリウム含有10mmol/L ADA緩衝液(pH6.5)とし、さらに、R2にプロピルボロン酸が0、0.5、1、5、10、25、50、および100mmol/Lとなるように添加した。
(2)ルシフェラーゼの活性測定
実施例8と同様にホタルルシフェラーゼ溶液を調製し、実施例9と同様の測定を実施した。
結果を図7に示すが、プロピルボロン酸を何れの濃度で添加しても、発光強度の減衰・低下の抑制が認められた。またプロピルボロン酸濃度を50mmol/L以上添加すると発光強度は低下するが、長時間にわたり発光強度を維持することができることが分かった。
実施例12
種々のボロン酸誘導体の効果
ボロン酸誘導体として、エチルボロン酸、シクロペンチルボロン酸、フェニルボロン酸、2−クロロフェニルボロン酸、3−アミノフェニルボロン酸、4−ヒドロキシフェニルボロン酸、4−カルボキシフェニルボロン酸、1,4−フェニレンジボロン酸、3−フリルボロン酸、(トリヒドロキシ)フェニルボロン酸、3−チオフェンボロン酸、および2,5−チオフェンジイルビスボロン酸を用い、発光強度の減衰・低下の抑制効果を評価した。
(1)試薬の調製
各々の試薬の組成は、R1が30mmol/L MgSO・7HO、4mmol/L ATP・2Na、および0.1mmol/L ピロリン酸含有100mmol/L Tris緩衝液(pH8.4)、R2が0.5mmol/L ホタルルシフェリン含有10mmol/L ADA緩衝液(pH6.5)とし(対照)、試験区にはさらに、ボロン酸誘導体をR2に1〜5mmol/Lとなるように添加した。
(2)ルシフェラーゼの活性測定
実施例8と同様にホタルルシフェラーゼ溶液を調製し、実施例9と同様の測定を実施した。
結果を図8〜図19に示すが、何れのボロン酸誘導体を用いても、発光強度の減衰・低下が抑制されることが分かった。
なお、実施例12においてボロン酸誘導体として2,5−チオフェンジイルビスボロン酸を添加したときの発光開始55〜60秒間の積算値を表1に示すが、発光強度の積算値が対照に比べて1.4倍であった。従って、ルシフェラーゼによる発光反応の場にボロン酸誘導体を共存させることにより、発光強度の減衰・低下が抑制されるので、高感度に発光強度を測定することができることが分かった。
Figure 0006932082
発光強度の減衰・低下抑制効果の長時間での評価
ボロン酸誘導体としてトリヒドロキシフェニルボロン酸ナトリウムを10mmol/Lで使用し、ATP濃度を2mmol/Lとし、発光強度の測定時間を60分とする以外、実施例8と同様にして、蛍光強度減衰・低下に対するピロリン酸カリウム(PPi)及びボロン酸誘導体の影響を評価した。具体的には、マイクロプレートに検体を分注後、R1、R2をルミノメーターCentro LB960で添加し、添加2分後から2分間隔で60分までの発光強度を測定した。結果を図20に示す。図20に示すように、ピロリン酸とボロン酸誘導体を含まない場合(対照)はフラッシュ発光であり、発光強度は急激に減衰低下し2分以内に定常状態になった。ピロリン酸が存在すると、発光の減衰は緩やかではあるが、15〜20分で減衰し、定常状態になる。ピロリン酸とボロン酸誘導体が存在すると60分後も強い発光強度を測定することができた。
本発明は、ボロン酸誘導体又はその塩をルシフェリン溶液に共存させることにより、ルシフェリン溶液の保存安定性を高める方法である。ルシフェリン溶液は分解産生物を生じ、このためルシフェラーゼの発光強度が経時的に低下する。それゆえ、ルシフェラーゼの活性を指標とした高感度な測定系を構築するとき、発光強度が経時的に低下するため、安定した値を得ることができない。本発明により、より安定なルシフェリン溶液を提供することができるので、より長期間にわたり安定に測定することができる。また、一実施形態において、本発明は、ボロン酸誘導体又はその塩をルシフェリン溶液に共存させることにより、ピロリン酸塩による発光反応の減衰・低下の抑制効果をさらに高めることを可能とする方法である。本発明により、ルシフェラーゼの発光反応の発光強度が安定することにより、高感度で安定した測定結果を得ることが可能となる。

Claims (10)

  1. ルシフェラーゼの基質であるルシフェリン溶液にボロン酸誘導体又はその塩を共存させることを特徴とする、ルシフェリン溶液の安定化方法であって、
    前記ボロン酸誘導体又はその塩がほう酸、四ほう酸ナトリウム、および下記式で表されるボロン酸誘導体又はその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、方法。
    Figure 0006932082
    [式中、R1は、C1〜C10のアルキル基を示す。Xは酸素(O)及び硫黄(S)のいずれかひとつを示す。R2、R3、R4、R5、及びR6は、同一又は異なって、H(水素)、ボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基(tert−ブトキシカルボニル)アミノ基、またはメチル基を示す。]。
  2. ルシフェリン溶液の安定化剤であって、ほう酸、四ほう酸ナトリウム、および下記式で表されるボロン酸誘導体又はその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、ルシフェリン溶液の安定化剤。
    Figure 0006932082
    [式中、R1は、C1〜C10のアルキル基を示す。Xは酸素(O)及び硫黄(S)のいずれかひとつを示す。R2、R3、R4、R5、及び6は、同一又は異なって、H(水素)、ボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基(tert−ブトキシカルボニル)アミノ基、またはメチル基を示す。]
  3. ほう酸、四ほう酸ナトリウム、および下記式で表されるボロン酸誘導体又はその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、ルシフェリン溶液。
    Figure 0006932082
    [式中、R1は、C1〜C10のアルキル基を示す。Xは酸素(O)及び硫黄(S)のいずれかひとつを示す。R2、R3、R4、R5、及び6は、同一又は異なって、H(水素)、ボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基(tert−ブトキシカルボニル)アミノ基、またはメチル基を示す。]
  4. 請求項3に記載のルシフェリン溶液を含む、生物発光反応試薬キット。
  5. ルシフェリンを基質としてルシフェラーゼの生物発光反応を行うときに、ピロリン酸塩およびボロン酸誘導体又はその塩を共存させることを特徴とする、生物発光強度の減衰・低下の抑制方法であって、
    前記ボロン酸誘導体又はその塩がほう酸、四ほう酸ナトリウム、および下記式で表されるボロン酸誘導体又はその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、方法。
    Figure 0006932082
    [式中、R1は、C1〜C10のアルキル基を示す。Xは酸素(O)及び硫黄(S)のいずれかひとつを示す。R2、R3、R4、R5、及び6は、同一又は異なって、H(水素)、ボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基(tert−ブトキシカルボニル)アミノ基、またはメチル基を示す。]
  6. ほう酸、四ほう酸ナトリウム、および下記式で表されるボロン酸誘導体又はその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種及びピロリン酸塩の存在下でルシフェリンを基質とするルシフェラーゼの生物発光反応を行う方法。
    Figure 0006932082
    [式中、R1は、C1〜C10のアルキル基を示す。Xは酸素(O)及び硫黄(S)のいずれかひとつを示す。R2、R3、R4、R5、及び6は、同一又は異なって、H(水素)、ボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基(tert−ブトキシカルボニル)アミノ基、またはメチル基を示す。]
  7. ほう酸、四ほう酸ナトリウム、および下記式で表されるボロン酸誘導体又はその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種及びピロリン酸塩を含む、ルシフェリンを基質とするルシフェラーゼの生物発光反応における生物発光強度の減衰・低下の抑制剤。
    Figure 0006932082
    [式中、R1は、C1〜C10のアルキル基を示す。Xは酸素(O)及び硫黄(S)のいずれかひとつを示す。R2、R3、R4、R5、及びR6は、同一又は異なって、H(水素)、ボロニル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基(tert−ブトキシカルボニル)アミノ基、またはメチル基を示す。]
  8. 請求項4に記載の生物発光反応試薬キットであって、前記ルシフェリン溶液中にピロリン酸を含むか、及び/又は前記ルシフェリン溶液に加え、さらにピロリン酸を含む、生物発光反応試薬キット。
  9. 前記ルシフェリンがホタルルシフェリンである、請求項1、5及び6のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記ルシフェリンがホタルルシフェリンである、請求項2〜4、7〜8のいずれか1項に記載の安定化剤、ルシフェリン溶液、試薬キット又は抑制剤。
JP2017543612A 2015-09-30 2016-09-30 ルシフェリンの安定化方法及び生物発光の測定方法 Active JP6932082B2 (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015192367 2015-09-30
JP2015192367 2015-09-30
JP2016077437 2016-04-07
JP2016077437 2016-04-07
PCT/JP2016/079006 WO2017057672A1 (ja) 2015-09-30 2016-09-30 ルシフェリンの安定化方法及び生物発光の測定方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2017057672A1 JPWO2017057672A1 (ja) 2018-07-26
JP6932082B2 true JP6932082B2 (ja) 2021-09-08

Family

ID=58423706

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017543612A Active JP6932082B2 (ja) 2015-09-30 2016-09-30 ルシフェリンの安定化方法及び生物発光の測定方法

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP6932082B2 (ja)
WO (1) WO2017057672A1 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2019028272A1 (en) 2017-08-04 2019-02-07 Promega Corporation COMPOSITIONS AND METHODS FOR STABILIZING LUCIFERIN BENZOTHIAZOLE ANALOGS
JPWO2021162123A1 (ja) * 2020-02-14 2021-08-19

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0847399A (ja) * 1994-08-08 1996-02-20 Eiken Chem Co Ltd 生物発光の測定方法
JPH10210999A (ja) * 1997-01-29 1998-08-11 Eiken Chem Co Ltd エステル加水分解酵素活性の阻害方法
US6060261A (en) * 1997-09-01 2000-05-09 Toyo Ink Mfg. Co., Ltd. Luminescence method for luciferin/luciferase system and luminescent reagent
JP4478231B2 (ja) * 1998-12-09 2010-06-09 栄研化学株式会社 生物発光試薬の安定化方法
JP4379644B2 (ja) * 1999-03-08 2009-12-09 栄研化学株式会社 ホタルルシフェリンの安定化方法
JP4503724B2 (ja) * 1999-05-10 2010-07-14 栄研化学株式会社 ホタルルシフェリンの安定化方法
JP4849540B2 (ja) * 2006-10-16 2012-01-11 独立行政法人産業技術総合研究所 2つの分泌ルシフェラーゼ
JP6075723B2 (ja) * 2012-08-21 2017-02-08 栄研化学株式会社 N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸を用いる発光増強方法

Also Published As

Publication number Publication date
WO2017057672A1 (ja) 2017-04-06
JPWO2017057672A1 (ja) 2018-07-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Timmers et al. Ionization and divalent cation dissociation constants of nalidixic and oxolinic acids
JP2009502844A5 (ja)
da Silva et al. Kinetics of inhibition of firefly luciferase by dehydroluciferyl-coenzyme A, dehydroluciferin and L-luciferin
CA2614792A1 (en) Stable nad/nadh derivatives
JP6932082B2 (ja) ルシフェリンの安定化方法及び生物発光の測定方法
JP2007054052A5 (ja)
Phillips et al. Spectroscopic investigation of ligand interaction with hepatic phenylalanine hydroxylase: evidence for a conformational change associated with activation
JPS585678B2 (ja) クレアチンキナ−ゼを測定する方法
Fraga et al. Identification of luciferyl adenylate and luciferyl coenzyme a synthesized by firefly luciferase
Rink et al. Next generation luminol derivative as powerful benchmark probe for chemiluminescence assays
JP4723311B2 (ja) クレアチンキナーゼ活性測定用試薬
ES2350507T3 (es) Método colorimétrico y reactivo que se utiliza para el mismo.
US7718389B2 (en) Stabilizing composition and stabilizing method of coelenterazine solution for high-throughput measurement of luciferase activity
JP4781742B2 (ja) クレアチンキナーゼ活性測定用試薬
JP6641297B2 (ja) 発光源基質を安定させる組成物及び方法
CA2448370A1 (en) Luciferin hydrazides
JPH0354302B2 (ja)
JP4761150B2 (ja) ハイスループット発光活性測定のためのセレンテラジン(ウミシイタケルシフェリン)溶液の安定化組成物および安定化法
Silva Neto et al. Pyrearinus termitilluminans larval click beetle luciferase: active site properties, structure and function relationships and comparison with other beetle luciferases
JPH10513063A (ja) 安定化された補酵素溶液、並びにアルカリ性環境下でのデヒドロゲナーゼ及び基質の測定のためのその使用
JPH0847399A (ja) 生物発光の測定方法
Cabodevilla et al. Design of specific inhibitors of quinolinate synthase based on [4Fe–4S] cluster coordination
Biemann et al. Oxidation of 2-thioflavins by peroxides. Formation of flavin 2-S-oxides.
JP2009072137A (ja) 総分岐鎖アミノ酸測定用液状試薬
JP2018203721A (ja) ホタルルシフェリンの安定化方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190911

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200901

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20201026

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20210309

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210604

C60 Trial request (containing other claim documents, opposition documents)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C60

Effective date: 20210604

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20210611

C21 Notice of transfer of a case for reconsideration by examiners before appeal proceedings

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C21

Effective date: 20210615

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210803

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210817

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6932082

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250