JP6929767B2 - 画像形成装置用転写ベルトおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、特許文献1記載の転写ベルトのように、転写ベルトの表面層にポリウレタン系の水性塗布液を使用すると、ベルト表面の摩擦係数が高いため、十分なトナーの離型性を得ることができない。
以上から、耐擦傷性、滑り性、耐折性の全てを満足する転写ベルトは存在しなかった。
(1)シリコーン・アクリル共重合体樹脂とウレタン樹脂を主成分とする樹脂組成物から形成された表面層を有することを特徴とする画像形成装置用転写ベルト;
(2)前記シリコーン・アクリル共重合体樹脂は、主鎖がアクリル樹脂、側鎖がシリコーン樹脂であるシリコーン・アクリルグラフト共重合体であることを特徴とする(1)記載の画像形成装置用転写ベルト;
(3)前記ウレタン樹脂は、ポリイソシアネートとカーボネート系のポリオールとの反応生成物であるウレタン樹脂であることを特徴とする(1)または(2)のいずれか記載の画像形成装置用転写ベルト;
(4)画像形成装置用転写ベルトは、基材層、表面層から構成されるものであって、前記基材層の引張弾性率が700MPa以上であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか記載の画像形成装置用転写ベルト;
(5)画像形成装置用転写ベルトは、基材層、弾性層、表面層から構成されるものであって、前記基材層の引張弾性率が700MPa以上であり、かつ前記弾性層は、ショアA硬度が80以下の熱可塑性エラストマーを主成分とする樹脂組成物からなることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか記載の画像形成装置用転写ベルト;
(6)画像形成装置用転写ベルト原反の表面に、シリコーン・アクリル共重合体エマルションとウレタン系樹脂エマルションを含有する樹脂エマルションを主成分とする塗工剤を塗布し、加熱することにより表面層を形成することを特徴とする画像形成装置用転写ベルトの製造方法;
を要旨とするものである。
本発明の画像形成装置用転写ベルトは、転写ベルト原反の表面に、上述した塗工液を塗布、硬化させてなる表面層を有するものである。転写ベルト原反は、例えば、基材層あるいは基材層と弾性層の構成を有するチューブ状のベルトである。また、基材層や弾性層が単層構成でも多層構成でもよく、基材層と弾性層以外の他の樹脂層を形成してもよい。本発明の画像形成装置用転写ベルトは、電子写真方式のプリンター、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置に組み込まれて中間転写ベルトや転写搬送ベルトとして使用される。
本発明の表面層は、シリコーン・アクリル共重合体とウレタン樹脂を主成分とする樹脂組成物から形成されることが特徴である。なお、本発明において、「主成分とする」とは、樹脂組成物を構成する樹脂成分のうち、構成比率が50重量%以上であることを意味するものであり、好ましくは60重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上である。
シリコーン・アクリル共重合体の種類としては、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が例示される。シリコーン樹脂とアクリル樹脂の両方が存在するため、シリコーン樹脂が部分的にベルトの最表面に移行し表面層自体の摩擦係数も小さくなる効果を有する。特に、主鎖がアクリル樹脂、側鎖がシリコーン樹脂のアクリル・シリコーングラフト共重合体がより好ましい。その理由は、側鎖がシリコーン樹脂であるため、シリコーン樹脂がベルトの最表面に移行しやすく、表面層自体の摩擦係数がさらに小さくなる。また、ウレタン樹脂と相溶性が高いアクリルを主鎖に有するため、主鎖のアクリル樹脂がウレタン樹脂とよく相溶する。よって、ウレタン樹脂とアクリル・シリコーングラフト共重合体との密着性が向上し、単にシリコーン樹脂を表層に形成しているものに比べ、表面に存在しているシリコーン樹脂が脱落し難いという効果を有する。
本発明の基材層に用いられる材料としては、特に制限はないが、例えば、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂等を挙げることができ、これらを単独で、または2種以上の材料をブレンドして用いても良く、更には、多層にして用いてもよい。基材層の引張弾性率を上げるために、平板状フィラー、ウィスカー等の補強材を添加することもできる。また、基材層の厚みは、50〜300μmが好ましく、70〜200μmがより好ましい。
本発明の画像形成装置用転写ベルトは、基材層と表面層の間に弾性層を設けても良い。弾性層は、ショアA硬度が80以下の材料であるものが好ましい。弾性層に用いることができる材料としては、熱可塑性エラストマー、ゴム等上記特性を満たせば、必要に応じて適宜選択することができる。
弾性層に用いられる熱可塑性エラストマーとしては、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ジエン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、熱可塑性樹脂とゴムとの混合物等が例示できる。これらの熱可塑性エラストマーは、単独でも、必要に応じて2種以上を混合使用してもよい。
本発明の画像形成装置用弾性層付き転写ベルトを電子写真方式のプリンター、コピー機等の中間転写ベルト、転写搬送ベルト、搬送ベルトとして用いるには、その体積抵抗率を半導電性領域(1×105〜1×1013Ω・cm)にすることが求められる。体積抵抗率が1×105Ω・cm未満の転写ベルトの場合、転写ベルトの片面から電圧を印加してベルトを帯電させてもベルト上の電荷が直ちに放電してしまい、電荷によって用紙やトナーを吸着するという転写ベルトとしての機能を発揮できない。また、体積抵抗率が1×1013Ω・cmを超える転写ベルトの場合、ベルト上に発生させた電荷がいつまでもベルト上に残留し、用紙やトナーを吸着し続けるので用紙やトナーを脱着するという転写ベルトとしての機能を発揮できない。
本発明の転写ベルトは、体積抵抗率が1×107〜1×1012Ω・cmであることが好ましい。特に転写ベルトの体積抵抗率を上記の範囲に制御するために、本発明の目的を妨げない範囲で基材層及び/又は弾性層に導電性物質を配合することができる。導電性物質には、電子導電性物質とイオン導電性物質があり、電子導電性物質としては、例えばカーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ等のカーボン系材料、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン等の導電性高分子、導電性無機粒子が挙げられる。
以下に、本発明の画像形成装置用転写ベルトの製造方法を説明する。
まず、画像形成装置用転写ベルト原反は、例えば、押出成形法、遠心成形法等で製造することができる。押出成形法について具体的に説明すると、環状ダイを装着した押出機を用い、基材層用の樹脂組成物をチューブ状に押出した後、得られたチューブを所定長さにカットすることにより画像形成装置用転写ベルト原反を得ることができる。また、基材層と弾性層を積層した画像形成装置用転写ベルト原反の場合は、2台以上の押出機に多層の環状ダイを装着し、基材層を形成する樹脂組成物と弾性層を形成する樹脂組成物とを、基材層を最内層としてチューブ状に共押出し、得られたチューブを所定長さにカットすることにより画像形成装置用転写ベルト原反を得ることができる。
そして、得られた上記画像形成装置用転写ベルト原反の表面に、上述した塗工剤をロールコート、バーコート、ディップコート、スプレーコート等、好ましくはロールコート、スプレーコートにより塗布し、加熱硬化させることにより表面層を形成する。
(1) 滑り性
転写ベルトの滑り性は、転写ベルトの表面層側の摩擦係数で示した。
摩擦係数は、新東科学社製のポータブル摩擦計トライボギアミューズ94i−IIを用いて、同一転写ベルト内で周方向に等間隔で6分割した領域内で任意の1点を選び、合計6点測定し、その平均値を摩擦係数とした。
(2)耐折性
転写ベルトを表面層面へ10回、90°屈曲させ、表面層のシワ・割れの発生度合いを以下の基準で示した。
○ ・・・シワ・割れなし
△ ・・・屈曲時のみシワが発生
× ・・・屈曲時にシワが発生し、元に戻してもシワが残る
××・・・割れが発生
(3)耐擦傷性
転写ベルトの耐擦傷性は、転写ベルトの表面層側の鉛筆硬度で示した。
鉛筆硬度の評価は、JIS K 5600−5−4に準拠し、各種硬度の鉛筆を45°の角度で表面層側にあて、荷重750gfをかけて引っ掻き試験を行い、傷がつかない最も硬い鉛筆の硬さとした。
(4)樹脂エマルションの伸度
樹脂エマルションの膜厚500μmの乾燥皮膜を作成し、試料幅10mm、チャック間100mm、引張速度50mm/minで伸度(%)を測定した。
<基材層の原料>
原料1−1:
二軸混練機を用いて、ポリフッ化ビニリデン96重量%に対し、ポリエチレンオキシド3.5重量%、過塩素酸リチウム0.5重量%を溶融混練して原料1−1とした。
原料1−1から得た基材層の引張弾性率は1400MPaであった。
原料2−1:
二軸混練機を用いて、エステル系の熱可塑性ポリウレタン(ショアA硬度:60)99重量%に対し、ポリエチレンオキシド0.9重量%、過塩素酸リチウム0.1重量%を溶融混練して原料2−1とした。
原料3−1:シリコーン・アクリルグラフト共重合体樹脂エマルション(固形分濃度:45重量%、Si含有量:19.6質量%)
原料3−2:シリコーン・ウレタンブロック共重合体樹脂エマルション(固形分濃度:35重量%、Si含有量:2.7質量%)
原料3−3:シリコーン樹脂エマルションとエステル系ウレタン樹脂エマルションのブレンド物(固形分濃度:30重量%、Si含有量:1.4質量%)
原料3−4:エーテル系ウレタン樹脂エマルション(第一工業製薬社製、スーパーフレックスSFE−4800、固形分濃度:40重量%、伸度:720%)
原料3−5:エステル系ウレタン樹脂エマルション(第一工業製薬社製、スーパーフレックスSF210、固形分濃度:35重量%、伸度:5%)
原料3−6:エステル・エーテル系ウレタン樹脂エマルション(第一工業製薬社製、スーパーフレックスSF170、固形分濃度:33重量%、伸度:50%)
原料3−7:カーボネート系ウレタン樹脂エマルション(第一工業製薬社製、スーパーフレックスSF460、固形分濃度:38重量%、伸度:750%)
原料3−8:フッ素系樹脂エマルション(明成化学工業社製、アサヒガードAG−E550D、固形分濃度:30重量%)
なお、Si含有量は、SEM−EDS分析装置(日本電子社のJSM−6510LV)を用いて確認した。
シリンダー径50mmの押出機2台の先端に2層の環状ダイを装着した装置を用い、基材層を形成する原料(原料1−1)と弾性層を形成する原料(原料2−1)を、弾性層が外側、基材層が内側に形成されるように別々の押出機に供給し、環状ダイスにより共押出して、チューブ状に成形後、長さ400mmにカットし、内層である基材層の厚さ120μm、弾性層の厚さ270μm、周長850mm、幅400mmの転写ベルト原反を得た。
次いで、転写ベルト原反の弾性層表面に塗工剤を塗布し、加熱乾燥させることにより厚さ3μmの表面層を形成した。なお、表面層の材料については、下記表1に示す。
Claims (6)
- シリコーン・アクリル共重合体樹脂とウレタン樹脂を主成分とする樹脂組成物から形成された表面層を有することを特徴とする画像形成装置用転写ベルト。
- 前記シリコーン・アクリル共重合体樹脂は、主鎖がアクリル樹脂、側鎖がシリコーン樹脂であるシリコーン・アクリルグラフト共重合体であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置用転写ベルト。
- 前記ウレタン樹脂は、ポリイソシアネートとカーボネート系のポリオールとの反応生成物であるウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1または2のいずれか記載の画像形成装置用転写ベルト。
- 画像形成装置用転写ベルトは、基材層、表面層から構成されるものであって、前記基材層の引張弾性率が700MPa以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の画像形成装置用転写ベルト。
- 画像形成装置用転写ベルトは、基材層、弾性層、表面層から構成されるものであって、前記基材層の引張弾性率が700MPa以上であり、かつ前記弾性層は、ショアA硬度が80以下の熱可塑性エラストマーを主成分とする樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の画像形成装置用転写ベルト。
- 画像形成装置用転写ベルト原反の表面に、シリコーン・アクリル共重合体エマルションとウレタン系樹脂エマルションを含有する樹脂エマルションを主成分とする塗工剤を塗布し、加熱することにより表面層を形成することを特徴とする画像形成装置用転写ベルトの製造方法。
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