実施の形態1.
図1〜図11は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器を示すものである。なお、以下の説明では、特に矛盾が起こらない限り、単に「加熱調理器」と記載する。
図1〜図11において、本実施の形態の加熱調理器1は、例えば流し台付きの厨房家具(「システムキッチン」ともいう)2に組み込まれる、商用電源200Vとする誘導加熱調理器である。2Aは、厨房家具2に形成された設置口である。
前記加熱調理器1は、この設置口2Aの口縁部に載せて支持されている。厨房家具2は、この実施の形態1では図3に示すように、水道の給水口2Dから出る水を一時的に貯めることができる水槽2Cを備えている。2Bは、厨房家具2の所定の位置に形成した前方開口であり、この前方開口は、加熱調理器1を組み込んだ場合、その正面(後述するカバー30側)を前方へ露出させるためのものである。なお、前方開口2Bと設置口2Aの大きさは、キッチンの規格によって定まっているため、所定の寸法に形成されている。
加熱調理器1を厨房家具2に組み込む通常の方法は、図11に示している通りである。この図11は、厨房家具2への組み込み作業の途中段階を示す模式図である。この図のように、後述する本体ケース3の前方側(手前側)が下になるように傾けたまま、前記設置口2Aの中に本体ケース3を入れ、その後、本体ケース3の後方側を下げると、加熱調理器1が厨房家具2の設置口2Aの周縁部に載せられた状態になるので、最後にその状態を固定するため、ネジを締めて本体ケース3(後述する上部ケース3T)の周縁部に設置してある固定金具(図示せず)を移動(回動)させ、当該固定金具を厨房家具2に強く押し当てた状態にして設置が完了する。なお、このような設置方法は既に広く採用されているので、詳しい構造については説明を省略する。なお、本体ケース3は、上部ケース3Tと下部ケース3Uを上下に重ねた状態で、結合されて一体化され、この形態でメーカから出荷されるため、図11の組込作業では、上記ネジで厨房家具2に固定されるのは、上部ケースのみである。この理由については、後で説明する。
加熱調理器1は、その外郭を構成する箱型形状の本体ケース3と、この上部に固定された金属製の額縁状の枠板95(図6参照)と、この外枠の上面の略全体を覆うように、その上面に重ねて取り付けられた耐熱強化ガラス製のトッププレート4とから構成されている。なお、このトッププレート4は、その下面全体は可視光線が透過しない塗装面で覆われることにより、トッププレート4の上方からは、その下方の機能部品、例えば後述する右側誘導加熱コイル8Rが視認できないようになっている。
前記本体ケース3は、図1に示すように、上部ケース3Tを中心とする上部構造体3Xと、下部ケース3Uを中心とする下部構造体3Yとを上下に重ねた状態で、結合されて構成されている。その結合手段は、図1と図6に示す(左右一対の)固定金具119である。2つの金属製の固定金具119は、上部ケース3Tの右側壁面3R1と、左側壁面3L1の外側に、それぞれ溶接等で固定されている。119Aは、その2つの固定金具119の1面に水平方向に一直線に形成された案内溝である。
前記下部ケース3Uは、上面全体が開放された箱型形状に形成されており、底面部3Mから左右側面及び背面までが薄い金属製板を折り曲げて形成されている。72は、その下部ケース3Uの天井面を構成するように固定されている天井板であり、金属製板で形成されている。
前記天井板72は、下部ケース3Uの右側壁面3R2と左側壁面3L2の外側に若干突出しており、その突出部が前記案内溝119Aの中に挿入された形になっている。そして、このように上部ケース3Tと下部ケース3Uが、上下に重なった状態で、両者の連結関係を固定するために金属製の固定ピン130が、下部ケース3Uの内側から固定金具119に形成された貫通孔(図示せず)を貫くように挿入される。なお、図6では、固定ピン130を破線で示している。なお、上記固定ピン130は、厨房家具2の加熱調理器1を設置した後で抜くこともできる(この作業は、安全性を確保するために、一般家庭の使用者が行える訳ではなく、加熱調理器1の販売業者や厨房家具等の設置業者等、専門家だけが行えるようにしてある)。
図7、図8において、3Hは、薄い金属板をプレス装置による折り曲げ加工して形成した前記下部ケース3Uの後面部であり、多数の小さな口径の排気孔3Vが形成されている。
3Jは、前記下部ケース3Uの後面部3Hから下に連続して形成した傾斜面部である。この傾斜面部は、後述するように設置口2Aの中に、加熱調理器1を挿入する場合(図11参照)、後面部3Hが厨房家具2に当たらないように形成したものである。
上部ケース3Tと下部ケース3Uは、1枚の金属製薄板を折り曲げて形成しても良いが、通常は2又は3枚の薄板を溶接やネジ止めによって繋ぎ合せて形成している。
本体ケース3の内部において、後述する収納室21、35が設置できる範囲は、図7に示しているように前方の挿入口22を基準にして所定の長さ3Kの範囲である。3Bは、上部ケース3Tの底面を構成する底板、3Mは、下部ケース3Uの底面を構成する底面部である。3Wは、この底面部3Mに複数個所に点在するように形成された通気孔である。3Fは、底面部3Mの前端部に連結された前板であり、前面上部には後述するシール材45が取り付けてある。
図7において、BS1は、前記後面部3Hと厨房家具2の背面板2Uとの間に形成された空隙である。後述する第2の送風機BM2は、この空隙に向けて、収納室21の内部冷却用の空気の全部を排出しているが、逆にこの空隙BS1から冷却用空気の一部又は全部を吸引するようにしても良い。
同じく図7において、BS2は、後述する収納室21、35の背面と前記後面部3Hとの間に形成された空隙である。
図7において、後述するカバー30の下面と、飾り板(「化粧枠」ともいう)44の上面との間には、カバー30の移動を許容するために2cm〜数ミリメートル(mm)程度の空隙GPUが形成されている。この空隙GPUも前記空隙BS1に連通している。
後述する第2の送風機BM2は、この空隙GPUから冷却用の空気を導入する。
図7において、GPTは、後述するカバー30の最上部にある手掛け部31A天面と、厨房家具2の前方開口2Bの下面との間に、カバー30の移動を許容するために形成される2cm〜数ミリメートル(mm)程度の空隙である。
図7において、5は、前記外枠の後部に固定された後部枠板であり、吸気口6Aと排気口6B(図5、図7参照)がそれぞれ形成されている。なお、図7には、枠板95は図示していない。
図1と図4において、7Aは、前記吸気口6Aの上に置かれた吸気カバーであり、通気性を確保するため、互いに並行な複数の細い貫通孔が形成されている。7Bは、前記排気口6Bの上に置かれた排気カバーであり、通気性を確保するため、互いに並行な複数の細い貫通孔が形成されている。なお、排気口6Bの横幅寸法は、図4に破線で示しているように、排気カバー7Bの一部分だけに限定して対応する長さになっている。また前記吸気口6Aも吸気カバー7Aの一部分だけに対応する範囲に限定して形成されており、後述する第1の送風機BM1の真上だけに形成されている。
図4、図5において、8Rは、トッププレート4上の1つの誘導加熱部(「加熱口」ともいう)に合わせてその下方に設置された右側(誘導)加熱コイル(加熱源)であり、ドーナッツ状形状を有している。なお、この右側加熱コイル8Rの最大火力は3000Wである。最大外形寸法(直径)は168mmである。
8Lは、トッププレート4上の1つの誘導加熱部に合わせてその下方に設置された左側(誘導)加熱コイルであり、ドーナッツ状形状を有している。なお、この左側加熱コイル8Lの最大火力は3000Wである。最大外形寸法(直径)8D(図7参照)は168mmである。
8Mは、同じくトッププレート4上の1つの誘導加熱部に合わせてその下方に設置された中央(誘導)加熱コイルであり、ドーナッツ状形状を有している。なお、これら誘導加熱コイルを総称する場合、「加熱コイル」と呼ぶ場合があり、その場合の符号は8を使用する。また特に8R、8L、8Mを特定する必要がない場合には、「右側」や「左側」という用語を省略する場合がある。なお、この中央加熱コイル8Mの最大火力は1500Wである。最大外形寸法(直径)は130mmである。
3つの加熱コイル8M、8L、8Rは、トッププレート4上の下面との対向間隔が数mm以下となるように、3個全てが同じ水平位置に設置されている。
次に図6を参照しながら、1つの誘導加熱部(加熱口)について説明する。
前記左側加熱コイル8Lと、コイルベース32と、そのコイルベースの下面に取り付けた複数個のフェライト(図示せず)と、コイルベース32の外側を近接して取り囲む形状を有した防磁リング(図示せず)と、を有している。
コイルベース32は、1つの加熱口に対して設けられた1つ又は複数の加熱コイルを一体的に保持している。具体的には、コイルベース32は、中心部に円形の窓32Wを有し、その窓32Wを中心にして放射状に6本〜10本程度の腕32Aを有している。さらにこの腕32Aの相互間は大きな透孔が形成されている。つまり、コイルベース32自体は上下方向に通気性に富む構造である。このようなコイルベース32は、例えば(日本国)実用新案登録第3018751号公報等で提案されている。
コイルベース32は、350℃程度でも変形しない耐熱性、電気絶縁性のプラスチックで一体に形成されている。コイルベース32は、底板3Bから所定の距離だけ離れるように、支柱とバネ(何れも図示せず)により、上方に押された形になっており、このため加熱コイル8がトッププレート4にできるだけ接近する構造になっている。言い換えると、加熱コイル8は、トッププレート4の裏面(下面)に押し付けられた形で支持されている。また、コイルベース32と底板3Bとの間に隙間が確保されているので、後述する第1の送風機BM1から供給される冷却用の空気の流れ(図6に、破線の矢印で示している)を阻害しない。
コイルベース32の中央部は、左側加熱コイル8Lを保持しない部分と、フェライト(図示せず)が設けられていない部分があるが、この部分の中心には窓32Wが形成されている。この窓にも下方から冷却風が通過可能となっている。また、この窓32Wの直下には、調理器具9、10、11等から放射される赤外線を受けて、その被加熱物の温度を非接触で検知する赤外線式温度センサー36(図示せず)が設けてある。この赤外線式温度センサー36の温度検知情報は、後述する温度検出回路63に送られる。なお、図6に、符号VLで示す一点鎖線は、加熱コイル8の垂直中心線を示している。
前記収納室21の上壁面21Tの位置は、左側加熱コイル8Lから磁気的な影響を受けることを低減させるため、所定の間隔HM(図6参照)を保つような構造になっている。これについては後で詳しく述べる。
右側加熱コイル8Rと、中央加熱コイル8Mについても、前記したコイルベース32、フェライト(図示せず)、防磁リング(図示せず)及び赤外線式温度センサー(図示せず)を、それぞれ設けてある。
図1において、8LSは、左側誘導加熱コイル8Lによって誘導加熱できる目安的な位置を表示した円形マークであり、トッププレート4上面に印刷により形成されている。8MSは、中央誘導加熱コイル8Mによって誘導加熱できる目安的な位置を表示した円形マークであり、トッププレート4上面に印刷により形成されている。この他にも、図示していないが、右側誘導加熱コイル8Rによって誘導加熱できる位置を表示した円形マークも、トッププレート4上面に印刷により設けてある。
前記円形マーク8LSの位置と大きさ(直径寸法)は、左側誘導加熱コイル8Lの外径寸法8D(図7参照)に応じて決定される。他の誘導加熱コイルも同様である。なお、図4では3つの加熱コイル8の位置が円で示されているが、実際には前述したように非透過性であるトッププレート4が上にあるため、使用者にはこれら加熱コイル8を目視することはできない。また3つの加熱コイル8の内、1つ又は2つを、ラジエントヒータや赤外線ヒータ等の輻射式電熱源に代えても良い。
図1、図2、図4において、9は、平面形状が楕円形又は長方形の調理器具(第1の調理器具)であり、図9に詳しく示しているように、ステンレスや鉄等の磁性金属製の皿部9Aと、この皿部の上方を覆う透明な耐熱ガラス製の蓋体9Bと、から構成されている。9Cは、使用者が蓋体9Bを持ち運ぶための摘みである。また9Dは、皿部9Aの両端部に一体成型された取っ手である。なお、図4に2点鎖線で示した長方形状は、前記皿部9Aの底面の範囲を示しており、皿部9Aの外郭形状を示していない。言い換えると、皿部9A底面の短径寸法は、図4に符号SSで示している通りである。また、皿部9A底面の長径寸法は、図4に符号LSで示している通りである。この第1の調理器具9は、この加熱調理器1のために(この加熱調理器の製造業者によって)専用に製造されたものである。
調理器具9の外形形状が、皿部9Aの両端部に取っ手9Dを一体に設けたシンプルな構造であるため、後述する挿入口22から左側の収納室21の中に格納する場合、また逆にその挿入口22を介して取り出す場合でも、使用者は皿部9Aと蓋体9Bを一括して持ち運び(移動)でき、便利である。
取っ手9Dは、図1に示しているように皿部9Aの最も上部に設けると、トッププレート4上面からの間隔を大きくできる。つまり、このトッププレート4の下方にある誘導加熱コイル8から遠くなるため、取っ手9Dが誘導加熱されることを抑制できる。取っ手9Dは、皿部9Aの底面(トッププレート4の上面に近接する面)から5cm以上離れた位置にあることが望ましいが、あまり離すと、それだけ皿部9Aの最大高さ寸法が大きくなり、収納室21や挿入口22の高さ寸法を大きくしなければならない。
図4において、10は、平面形状が円形の調理器具(第2の調理器具)であり、一般に市販されている金属製(少なくとも底面部が、磁性金属製)の大径の鍋である。また、11は、平面形状が円形の調理器具(第3の調理器具)であり、一般に市販されている金属製(少なくとも底面部が、磁性金属製)の小径の鍋である。
図4から明らかなように、前記第1の調理器具9の短径寸法SSは、前記左側誘導加熱コイル8Lの外径寸法(直径8Dは図7参照)と同等か、それよりも2〜3cm程度大きい。また、右側誘導加熱コイル8Rの上で誘導加熱することに適している第2の調理器具10は、その底面の直径寸法が、右側誘導加熱コイル8Rの外径寸法と同等か、それより3〜4cm程度大きい。さらに、中央誘導加熱コイル8Mの上で誘導加熱することに適している第3の調理器具11は、その底面の直径寸法が、中央誘導加熱コイル8Mの外径寸法と同等か、それより2〜3cm程度大きい。
図4から明らかなように、トッププレート4の上面において、吸気カバー7Aと排気カバー7Bよりも前方から、後述する操作部12の後端までの広いエリアは、誘導加熱調理に利用される加熱調理エリア13である。この「加熱エリア」13という意味は、その全域で加熱コイル8によって誘導加熱できるという意味ではなく、第1〜第3の調理器具9、10、11等を、加熱調理しない場合に一時的に置いたり、あるいは誘導加熱するために置いたりできるという範囲である。HAは、この加熱調理エリア13の前後方向の長さ、すなわち奥行寸法を示している。
図4から明らかなように、加熱調理エリア13の前後方向中心線CL2の上に、前記右誘導加熱コイル8Rと、左誘導加熱コイル8Lの各中心部が位置している。
一方、中央加熱コイル8Mの中心部は、加熱調理エリア13の左右方向中心線CL1の上に位置している。
図4において、12は、前記トッププレート4の前方側上面に形成された操作部であり、以下述べるように、使用者が指等で軽く触れた時の静電容量の変化を利用して入力できる方式の各種入力キーを、横方向に一直線状に配置している。
操作部12は、右操作部12R、中央操作部12M及び左操作部12Lの3つを含んでいる。
図4において、14は、後述する制御装置56に商用電源60(図10参照)を供給することと遮断することができる主電源スイッチ61の操作ボタン又は操作キー(タッチ入力式)である。
前記右操作部12Rには、3つのタッチ式入力キー15を配置してある。これら入力キー15は、1つ又は複数の入力機能が割り当てられている。例えば、誘導加熱時の火力(消費電力)や、誘導加熱時間、誘導加熱パターン等である。前記右操作部12Rは、右側誘導加熱コイル8Rの動作開始や停止、その他通電条件(時間や火力等)を指令できるためのものである。
図4において、16は、前記中央操作部12Mに配置した3つのタッチ式入力キーである。この前記中央操作部12Mは、中央誘導加熱コイル8Mの動作開始や停止、その他通電条件(時間や火力等)を指令できるためのものである。
図4において、17は、前記左操作部12Lに配置した3つのタッチ式入力キーである。この前記左操作部12Lは、左側誘導加熱コイル8Lの動作開始や停止、その他通電条件(時間や火力等)を指令できるためのものである。
図4において、18は、前記制御装置56に対して無線通信を指令するインターネット接続指令用のタッチ式入力キーである。19は、前記制御装置56に対して、前記第1の調理器具9の存在結果を要求する確認指令用のタッチ式入力キーである。これら2つの入力キー18、19の動作については後で詳しく説明する。
図4において、20は、トッププレート4の前方中央部に設けた透明の表示窓に対応して、その近傍で真下に配置された長方形状の表示画面であり、例えば液晶表示画面である。この表示画面には、前記操作部12の操作結果が文字や記号等で表示されたり、あるいは前記制御装置56で検知した各種機能部品の動作状況等が表示されたりする。なお、この表示画面は、前記主電源スイッチ61の操作ボタン又は操作キー14を、ONにした以降、前記制御装置56の指令によって表示動作が開始される。
次に、収納室21、35について説明する。図6に示すように、前記本体ケース3を構成する下部ケース3Uの中に、2つの収納室21、35が区画形成されている。21は左側の収納室、35は右側の収納室である。ここで「区画形成」とは、後で説明する下部空間71の中で、2つの収納室21、35の間が物理的な物(板や壁等をいう。金属又はプラスチック等で形成されている)で仕切られ、空気の流通が設計上では許容されていない状態をいう。
なお、後述する縦方向の第2の隔壁73が、下部ケース3Uの内部空間(下部空間)71に設置され、この第2の隔壁73によって、2つの収納室21、35の間では、空気が自由に流通しないように遮断されている。なお、収納室21、35は、気密性空間である必要はないので、壁面に隙間が形成されても良い。もちろん、前面の挿入口22だけが開放されて筒状に一体成型され、気密性を高めた収納室21、35であっても良い。
図1、図7、図8において、22は、2つの収納室21、35の前面側に、それぞれ形成した開口である。その内、左側の収納室21の挿入口22Lは、前記第1の調理器具9を挿入できる挿入口となる。右側の収納室35の挿入口22Rは、前記挿入口22Lよりも口径が小さいので、前記した前記第1の調理器具9を挿入できないが、その他の調理器具や小物は挿入できる。なお、2つの収納室21、35と特に区別する必要がない場合には、収納室の符号は「21」を使用して説明する。また挿入口22L、22Rも、共通した符号は「22」を使用する。
図7に示すように、前記左側の収納室21の挿入口22L最前縁から、収納室21の背面を構成する後壁面21Bまでの距離(奥行寸法)L2は、例えば30cmである。この奥行寸法L2は、取っ手9Dを含めた第1の調理器具9の最大長さよりも大きく設定されており、第1の調理器具9はこの収納室21の中に、前後方向に挿入されて格納できる。
左側の収納室21に取り出し自在に格納する物品として、第1の調理器具9が最も大きいため、この調理器具9の外形寸法を考慮して挿入口22Lの大きさを決定しているが、この収納室21に格納できる他の物品としては、例えば加熱調理器1に付属している取扱説明書や、調理後に特にトッププレート4の上面や操作部12の表面等の簡単な清掃をする洗剤、あるいは別の調理器具10,11(それらに付属する蓋体があれば、その蓋体も含む)がある。
収納室21の底壁面21Uの上面から上壁面21Tの下面までの距離(高さ寸法)HSは、摘み9Cまでも含めた調理器具9全体の最大高さ寸法よりも十分大きく、例えば10cmである。更に挿入口22Lから奥側までの収納室21の横幅寸法WX(内側の寸法:図6参照)は一定である。挿入口22Lの間口(横幅寸法)は、例えば15cmである。このため左側の収納室21の平面形状は、挿入口22Lから後方に向かって細長い形であり、言い換えると平面視では長方形になっている。
前記左側の収納室21の挿入口22Lの大きさ(横幅と高さ寸法)は、前述した調理器具9の皿部9Aと蓋体9Bとを、重ねた状態のまま挿入できるように設定されているので、使用者が格納する場合、蓋体9Bと皿部9Aを分けたり、方向を変えたりする手間は必要なく、使い勝手が良い。
左側の収納室21の挿入口22Lは、前述した操作部12が位置しているトッププレート4の手前側、すなわち、本体ケース3の前面側が、使用者の作業性の面で望ましいので、実施の形態1では、挿入口22Lを本体ケース3の前面部に設けている。
右側の収納室35は、その挿入口22Rの横幅寸法が、左側の収納室21の横幅寸法よりも小さいが、これ以外は、基本的に左側の収納室21と同様に構成されている。但し、後述する永久磁石50と、磁気感知スイッチ(リードスイッチ)51は、右側の収納室35には設けていない。また全体がプラスチックで一体成型されて形成されている。
図1、図6、図7、図8において、26は、平面形状が長方形の、浅い容器状の受け皿(「トレイ」ともいう)であり、金属製又はプラスチック材料から形成されている。例えばアルミニウム製薄板をプレス成型して皿状に形成している。この受け皿26の内側部分の、奥行寸法L1は、前記2つの収納室21の奥行寸法L2よりも1cm程度小さいので、その収納室21の内部に、完全に格納できる(図7参照)。
受け皿26は、図1に示したように収納室21の中から完全に外へ引き出すことが可能であるが、このように完全に引き出すことができなくとも、図8に示すように、所定範囲LDまで引き出すことができれば良い。この点については後で詳しく説明する。
図1、図5、図7、図8において、30は、左側の収納室21用のカバーであり、正面形状が横長長方形で、全体がプラスチックの一体成型で形成されている。31は、カバー30、44を移動させる際に使用者が指を掛けるハンドルであり、手掛け部31Aを備えている。なお、このハンドル31は、必ずしも必要とせず、例えば、カバー30、44に手掛け部となる穴や貫通孔を形成して代用しても良い。カバー30と前記受け皿26とは、接着材で一体に連結しても良いし、あるいは、連結金具で連結し、使用者が受け皿26の清掃時に、受け皿26とカバー30を分離できるようにしても良い。図7で、符号29は前記接着材であるが、この接着材は図8では図示を省略してある。
図1において、44は、右側の収納室35用のカバーであり、正面形状が正方形を呈し、全体がプラスチックの一体成型で形成されている。この右側のカバーは、前記本体ケース3前面において、前記右側の収納室35の挿入口22Rを覆うものである。このカバーは、前記カバー30と同じ厚みを有し、カバー30の右側に隣接するように本体ケース3(下部ケース3U)の前壁面に前後移動自在に支持されている。つまり、カバー44も前方に移動させることで、前記挿入口22Rを開放できる。
カバー44とカバー30の高さ寸法は同じであり、またそれら両者の表面の色も同じにしてある。なお、図5には、左側のカバー30と右側のカバー44の外形を、破線にて参考的に示している。
図7において、45は、本体ケース3の前面で、前記挿入口22の真上位置に取り付けたシール材である。このシール材は、例えばシリコンゴム製等の弾力性に富む素材から形成されており、カバー30、44で挿入口22L、22Rを閉鎖した場合、その手掛け部31A背面に先端が接触するようになっている。なお、このシール材45は、収納室21の挿入口22側を完全に気密状態に保つものでなくとも良い。すなわち、カバー30が閉じた状態で、収納室21は、挿入口22口縁とカバー30との間に、空気の流通を許容する程度の隙間(例えば数mm程度の空隙)があっても良い。
図7において、30Fは、前記カバー30の前面を示しており、この前面は、厨房家具2の中に加熱調理器1を組み込んだ場合、その下方に隣接して存在する扉又は引出し等の家具表面材40の前面40Fと、面一状態となる。言い換えると、加熱調理器1を組み込んだ場合、そのカバー30の前面30Fは、真上から見ると、家具表面材40の前面40Fと一直線上に並ぶ位置となる。そして家具表面材40と、カバー30とは、厨房家具2を前方から、あるいは斜め前方から見ても、統一された平面になっているような意匠感覚を使用者に呈することができる。なお、右側にあるカバー44の前面44Fの位置も、前記カバー30の前面30Fの位置と合わせてある。
同じく図7において、2Fは、厨房家具2の前面(正面)を示している。厨房家具2の中に加熱調理器1を組み込んだ場合、前記カバー30の前面は、この厨房家具2の前面2Fと合致した位置か、それよりも若干(例えば、数mm程度)後退した位置になるように設計させている。図7では、若干後退した位置にしてある例を示している。
図3において、41は、前記家具表面材40とは別の位置にある家具表面材である。この家具表面材41は、厨房家具2の中に加熱調理器1を組み込んだ場合、その右側方で隣接して存在する扉又は引出し等の構造物である。前記カバー44の前面44Fの位置も、この家具表面材41の前面41Fの位置と合わせてある。これによりカバー30、44の表面と、家具表面材40、41の各前面40F、41Fが、全て同一の垂直面で揃うことになる。
図7、図8において、43は、厨房家具2の内部を上下に複数の部屋に仕切る壁であり、この壁の下方は、例えば、台所用品や食品等の保存庫49として利用する例が多い。
以上説明した構成により、厨房家具2の中に加熱調理器1を組み込んだ場合、厨房家具2の前面全体は、略一つの平面を呈する。使用者が厨房家具2を見た場合、全体に前面(正面)が、すっきりした統一感のあるデザインであると認識できるように設計されている。なお、厨房家具2と、加熱調理器1は、同じ製造業者が設計することを意図しておらず、実際に、厨房家具は、流し台等の厨房家具、住宅設備業者が製造販売し、加熱調理器1は家電機器業者が製造販売している。
前記2種類の家具表面材40、41は同じものであっても良い。またこれら家具表面材は、扉や引き出しのように、前後に移動するものでなくとも良い。例えば厨房家具2の表面に常に固定状態で存在し、全く移動しないものであっても良い。
図1、図2、図3において、前記左側のカバー30と、右側のカバー44のそれぞれの前面30F、44Fの色と表面形態(模様や光沢の有無、凹凸状態等)は、前記家具表面材40、41の前面の色や表面形態と合わせると、更に統一的意匠感が高まる。例えば、家具表面材40、41の正面全体が、単色や木目調で統一されている場合、左側のカバー30の前面30Fと、右側のカバー44の前面44Fも、同じ単色の色や木目調デザインで統一すれば、この前面30F、44Fだけが厨房家具2の中で目立つこともない。
2つの前記カバー30、44と家具表面材40、41の、双方の前面の色や模様を異ならせ、収納室21の挿入口22を覆うカバー30、44の存在感を示しても良い。なお、42は、家具表面材40、41の前面に印刷で表示した枠線であり、家具表面材40、41の前面に物理的な凹凸を形成するものではないが、光沢のある金属製の細い板等を張り付けて、高級感を出したものでも良い。
図2に示した厨房家具2では、加熱調理器1を最も左側に組み込んだため、前記カバー44の右側に前記家具表面材41が隣接した形になったが、厨房家具2の中央部に加熱調理器1を組み込んだ場合には、前記カバー30の左側には、家具表面材41が隣接する一方、カバー44の右側にも家具表面材41が隣接することになる。このような場合でも、前記したように、加熱調理器1の部分だけが前方へ突出するようなことはなく、厨房家具2の前面全体は、略一つの平面を呈する状態にできる。
図8に示しているように、カバー30を前方に引くと、前記受け皿26を収納室21の中から前方に引き出すことが可能であるが、この引き出し量を一定限度に制限した方が好ましい。受け皿26の中には、前記した第1の調理器具9を載せているため、必要以上に引き出すことを防止し、受け皿26の落下を防止する機構を備えているが、具体的には図示していない。しかし、収納室21受け皿26の後部に突起を設ける一方、収納室21の内側には、前記受け皿26をある限界位置まで引き出した際に当るようなストッパーを設けることで簡単に実現できる。
図8において、LDは、カバー30を前方に引いた場合の最大引出し量を示している。この最大引出し量は、前記第1の調理器具9を、受け皿26の上から持ち上げて、収納室21の挿入口22から外へ運び出せる寸法に設定されている。例えば25cmである。また、この図8に示すように、受け皿26を前方に一定限度まで引き出した状態でも、受け皿26は、略水平に支持される構成になっている。これは、受け皿26の左右両側に設けた溝に、収納室21の左右内側壁面から突出する支持ピン等の剛性のある部材が係合しているからである。図8に示しているように、第1の調理器具9の重量とカバー30の重量を受け皿26が支え、その受け皿26の総重量を、前記収納室21の左右壁面が支えるという形になっている。
図7、図8において、50は、収納室21用において、受け皿26の後部垂直壁26Bに取り付けた永久磁石、51は、収納室21の後壁面21Bに設置した磁気感知スイッチ(リードスイッチ)である。受け皿26が収納室21の最も奥の所定位置まで挿入されている場合、加熱調理器1の運転開始準備段階では、前記リードスイッチ51が、永久磁石50の接近を検知するからONを示す信号を出力することとなり、その検出信号は制御装置56に入力されるので、制御装置56では、カバー30が閉鎖されており、加熱調理を開始して良いと判断する。つまり、前記リードスイッチ51は、安全装置SDの一部を構成している。ここでいう「安全装置」は、前記制御装置56とリードスイッチ51の両者によって構成されていることが分かる。
図8に示しているように、前記収納室21は、前記挿入口22を除いた左右側方と上下面、及び後方側が一連の壁面(21B、21L、21R、21T、21U)で囲まれている。
収納室21を構成する各壁面(21B、21L、21R、21T、21U)は、全て錆びにくい金属、例えば亜鉛鋼板や磁性ステンレス鋼板等の金属製薄板で構成され、互いに溶接やネジ止めによって箱形状に組み立てられている。このように収納室21を金属製の板で形成すると、この収納室自体の耐熱温度が向上し、熱いままの第1の調理器具9を万一格納されても、収納室21が焼損や変形するような事態を防止できる。
33は、収納室21の後壁面21Bに複数個点在するように形成した通気孔、34は同じく収納室21の上壁面(天井壁)21Tに、複数個点在するように形成した通気孔である。
次に、前記本体ケース3の内部構造について説明する。
図6に示すように、前記本体ケース3の内部空間は、上部空間70と、下部空間71を備えている。上部空間70は、上部ケース3Tの内部空間である。また下部空間71は、前記下部ケース3Uの内部空間である。
前記下部空間71には、2つの収納室21、35によって、第1の空間(「左空間」ともいう)71Aと、第2の空間(「右空間」ともいう)71Bが形成されている。
73は、前記下部空間71を左右に仕切る縦方向の第2の隔壁であり、金属製の薄板又はプラスチックから形成されている。
図8において、SP1は、前記上部ケース3Tの底板3B下面と、下部ケース3Uの天井面を構成するように固定されている天井板72の上面との間に形成された空隙であり、少なくとも5mm以上に設定されている。空気の自然流通を考慮すると望ましくは10mm以上であるが、この空隙を大きくするとその分、下部構造体3Yの高さ寸法HY1(図7参照)を小さくすることになるので、厨房家具2に設置する加熱調理器1では、これらのバランスを考慮して空隙SP1の大きさを決める。さらに、この空隙SP1は、前記固定金具119の案内溝119Aの位置によって決まる。
図7と図8に示すように、厨房家具2に先に上部構造体3Xを置いた場合、その下方に厨房家具2の前方開口2Bから下部構造体3Yだけを単独で挿入し、設置する場合には、家具構造体の高さ寸法HY1が、設置空間の入口部の最大高さ寸法HY2よりも小さく設定されているので、上部構造体3Xが先に厨房家具2に設置されていれば、その下方に前方開口2Bから挿入して設置作業を行える。また、上部構造体3Xを厨房家具2から取り出さずとも、その厨房家具2の前方開口2Bから取り出す作業を行える。
図6において、SP2は、前記第2の隔壁73の左側面と、収納室21の右壁面21Rとの間に形成された空隙で、30mm〜50mmに設定してある。なお、前記収納室21の上壁面21Tの位置は、この上壁面21Tが左側加熱コイル8Lから磁気的な影響を受けることを低減させるため、左側加熱コイル8Lとの間隔HMが、最低でも50mm、好ましくは60mm以上離れた位置となるように設定されている。実際にこの実施の形態1では、間隔HMは65.9mmである。
図5に示しているように、中央加熱コイル8Mも、収納室21の真上の位置にあるので、この中央加熱コイル8Mと収納室21の上壁面21Tとの間に形成された間隔HMも、前記左側加熱コイル8Lの場合と同じく、最低でも50mm、好ましくは60mm以上離れた位置となるように設定されている。実際にこの実施の形態では、間隔HMは65.9mmである。
図6において、SP3は、収納室21の上壁面21Tと下部ケース3Uの天井板72との間に形成された空隙である。SP4は、収納室35の上壁面35Tと下部ケース3Uの天井板72との間に形成された空隙である。SP5は、収納室21の左側に形成した空隙、SP6とSP7は、収納室35の左側と右側に形成した空隙である。前記空隙SP3〜SP7は、5mm〜10mmの大きさで確保されている。
図4において、55は、電気絶縁性材料から形成された制御箱(図示せず)の中に設置された3つのインバーター回路基板55である。このインバーター回路基板55の上には、電力制御用電子部品等の多数の回路素子(図示せず)及びそれら電子部品が取り付けられた放熱用フィン(「ヒートシンク」ともいう)等が実装されている。前記3つのインバーター回路基板55は、前記した3つの加熱コイル8に1つずつ割り当てられている。
前記インバーター回路基板55は、図4に破線で示しているように、等間隔で、かつそれぞれが垂直に設置され、各インバーター回路基板55の左右両面に第1の送風機BM1からの冷却風が通過するようになっている。なお、インバーター回路基板55は、水平に複数段に設置しても良い。
図4において、58は、前記第1の送風機BM1からの冷却風を案内する送風ダクトであり、上部空間70の中に複数個所に設置されている。
図5、図7、図8において、77は、前記上部空間70の後部を前後に仕切る仕切り壁、78は、図5に示しているように、仕切り壁77で本体ケース3の内部に前後に区画された空間の内、左側を排気側空間79B、右側を吸気側空間79Aに区画する仕切り板である。77Aは、上部空間70を排気口6Bに連通させるための通気口である。
第1の送風機BM1は、平面視では仕切り壁77の後方にある吸気側空間79Aに空気の吸込み口112(図示せず)が臨んでいる。なお、第1の送風機BM1は、軸流ファン、(多翼式)遠心ファン(シロッコ型、ターボ型)、斜流ファン等の各種タイプのファンが用いられる。
以上の構成であるから、前記第1の送風機BM1は、誘導加熱調理の開始と同時に運転開始され、本体ケース3(上部ケース3T)の外部から前記吸気側空間79Aを経由して新鮮な空気を吸引し、吸引した冷却用の空気をインバーター回路基板55の周囲へ供給する。そして、インバーター回路基板55と、その後は誘導加熱コイル8R、8L、8Mを冷却し、その冷却用の空気は排気側空間79Bを経由し、本体ケース3(上部ケース3T)の外部へ排気口6Bを経由して放出される。
次に、前記下部ケース3Uの内部構造について説明する。
図7、図8に示すように、前記下部ケース3Uの内部空間(下部空間71)の内部には、この空間内に外部から空気を導入するための送風機(第2の送風機BM2)が設置されている。
第2の送風機BM2は、図7、図8に示すように、下部ケース3Uの背後側の壁面(後面部3H)に取り付けてあり、その背後側に形成した多数の排気孔3Vから、下部ケース3Uの外部へ排気する。38は送風機ケースであり、支持ケース39を介して後面部3Hに取り付けてある。この実施の形態1では、第2の送風機BM2は、水平の回転軸をモータで回転させ、後方に排気流を流す軸流ファンが採用されている。なお、第2の送風機BM2は、収納室21の冷却用であり、右側の収納室35の後方には、第2の送風機BM2に相当するものは設置されていない。これは、右側の収納室35は、前記第1の調理器具9のような大型の調理器具が使用後に格納されることがないため、右側の収納室35の壁面自体が金属製ではなく、プラスチック製であり、前記右側加熱コイル8Rの動作時にもその磁気的影響を受けて加熱されることはないこと等の理由からである。
図8において、57は温度センサーであり、これは下部空間71、特に収納室21の上壁面21Tに設置され、第2の送風機BM2から見て冷却風の上流側の気温を検知するようになっている。なお、図7において、USは下部空間であり、底面部3Mと厨房家具2の壁43との間隔によって定まる大きさである。
次に加熱調理器1の制御関係の構成について図10を参照しながら説明する。
61は、使用者によって開閉操作される主電源スイッチで、200Vの商用電源60に電源プラグ(図示せず)介して接続されている。14は使用者によって開閉操作される主電源スイッチ用の操作キー、62は、この主電源スイッチ61を介して電気エネルギーが供給される電源回路、56は、この電源回路から所定の定圧電流が供給され、マイクロコンピューターを中心に構成されている制御装置である。
前記マイクロコンピューターは、入力部と、出力部と、記憶部と、CPU(演算制御部)の4つの部分から構成され、その記憶部には、各種調理メニューに対応した通電制御プログラムが予め記憶(格納)されている。また、前記マイクロコンピューターの記憶部(ROM、RAM)とは別に、異常監視情報を記録する大容量の記憶装置56Rを内蔵している。
誘導加熱調理中は、電気的な異常状態の有無の監視が制御装置56によって実施されている。そのために図示していないが、前記インバーター回路基板55には、複数の電圧計、電流計(電流センサー)等を備えている。さらに制御装置56は、温度検出回路63から温度情報を得て、加熱調理器の主要な部分が異常な高温度になっていないかどうかを監視している。例えば前記表示画面20は、液晶表示基板で構成されているが、比較的熱に弱いので、所定温度(例えば60℃)を超えないように温度検出回路63を通じて監視しており、前記所定温度を超えた時点で「異常予備状態」と制御装置56によって判定される(なお、異常予備状態は、検出温度が60℃〜65℃の範囲にある場合に限る。65℃を超えると危険度高まり、制御装置56は本当の異常状態と認定する)。
この異常予備状態では直ちに加熱動作は停止せず、本体ケース3の内部空間を冷却している第1の送風機BM1の送風能力を上げることで改善する。しかし65℃を超えた時点で異常状態と制御装置56によって判定され、直ちに加熱動作を停止するため、例えば、右側加熱コイル8Rに高周波電力を供給しているインバーター回路55Rの電源供給を遮断する。
そして、少なくともこのような異常予備状態から緊急停止までの期間における加熱調理器1の主要な部分の電気的、物理的(一例として前記した表示画面20の温度)の変化状況を示す(異常監視)情報が、制御装置56の記憶装置56Rの中に格納される。なお、記憶装置56Rに記憶される異常監視情報は、主電源スイッチ61を入れた時点から取得開始され、調理を停止するまでの電気的、物理的変化の履歴が反映されたものとなる。そのため、その後選択した調理メニュー(例えば、「湯沸し」、「煮込み」、「揚げ物」など)や、誘導加熱の火力の情報も、時系列で記録される。途中で異常状態が原因で緊急停止した場合は、その時点まで異常監視情報が前記記憶装置56Rに保存されることになる。
またこの実施の形態1では、より広範囲にわたって加熱調理器1の動作を監視してデータを取得するため、主電源スイッチ61をONにしてから誘導加熱調理を緊急停止するまでの期間の監視情報を制御装置56が取得できるようにしている。
前記3つのインバーター回路基板55の中には、3つのインバーター回路55L、55M、55Rが1つずつ内蔵されている。
インバーター回路55Lは、前記左側の誘導加熱コイル8Lに高周波電流を供給するためのものであり、共振コンデンサー等が接続された周知の共振回路に接続されている。
55Rは、前記右側の誘導加熱コイル8Rに高周波電流を供給するためのインバーター回路である。また55Mは、中央の誘導加熱コイル8Mに高周波電流を供給するためのインバーター回路である。
そしてこれら3つのインバーター回路55L、55M、55Rは、前記制御装置56によって互いに独立して駆動されるようになっている。なお、これらインバーター回路を総称する場合、符号は「55」を使用する。
64は、電子的に作成した音声を合成する音声合成装置であり、使用者に対する操作の案内や、異常発生時の報知などをスピーカー65から音声でその都度報知する。
63は、前記した温度検出回路である。この温度検出回路は、前記した3つの誘導加熱コイル8L、8M、8Rによって加熱されるトッププレート4上の、第1の調理器具9の温度や、そのトッププレート4の温度、上部構造体3Xの内部空間の雰囲気温度、インバーター回路55L、55M、55R、表示画面20等の温度を検知するための複数個の温度センサー(図示せず)から、それぞれ温度検知情報を受け取り、それら温度検出結果を制御装置56に送る。前記温度センサー(図示せず)は赤外線センサーのような非接触型、あるいはサーミスタのような接触型の何れであっても良く、それらを単独で、又は組み合わせて使用している。
66は、リアルタイム・クロックとも呼ばれている時計回路であり、後述する主電源スイッチ61に繋がる電源回路62とは別の専用電源(内蔵電池)BT1から電源が供給され、長期間に亘って駆動されるようになっている。これは例えば電波時計でも良く、常に制御装置56から求めがあれば、現在の日にちと正確な時刻を秒単位で知らせるものであり、この加熱調理器1の製造段階で正しい日時にセットされている。従って、加熱調理器1の主電源を切り、その後再度主電源を投入しても、この時計回路の時刻情報は影響受けず、常に最新の正しい時刻を制御装置56に伝える機能がある。このため、前記制御装置56の記憶装置56Rに記録される異常監視情報も、常に正確な時間が同時に記録されて保存されることになる。
67は、地震発生時の揺れを検知する感振機器であり、所定の震度(加速度)以上を感知した場合、振動感知信号を前記制御装置56に送り、制御装置56ではその信号を受けて地震発生と判断し、使用中の全ての加熱手段の電源を瞬時に遮断する動作を行う。
68は、無線通信手段である。この無線通信手段は、加熱調理器1の本体ケース3に内蔵されたものでも良いし、後述するアダプター形式で加熱調理器1の電源回路62に接続したものでも良いが、この実施の形態1では、アダプター形式を採用している。
前記「アダプター」とは、加熱調理器1のような個々の家電機器とその電源との間に設けられる制御機器をいう。例えばここでいうアダプターとは、特開2011−205821号公報、特開2011−55623号公報に示されるようなアダプターをいい、電源プラグとコンセントを有し、そのコンセントに通電を制御すべき電気機器(この実施の形態1においては、加熱調理器1)を接続する。そして電力指令信号をアダプターが無線通信によって受け取ると、制御すべき家電機器(加熱調理器1)の電源供給を制限し、又は遮断する。このように既存の家電機器(加熱調理器1)にアダプターを接続し、そのアダプターに、家庭内の総電力量を制限する電力制御装置(図示せず)から電力指令信号を送り、その信号によってアダプターが加熱調理器1を制御するので、既存の加熱調理器1にもアダプターを電源側に介在させることで、電力指令装置によって電力を集中制御できる利点が得られる。
図4に示したように、操作部12には入力キー18がある。この入力キー18をタッチ操作すると、前記制御装置56は、無線通信手段68を介して、家庭の外部空間にある広域通信回路網に接続し、情報プロバーダーが設置したサーバー(図示せず)から、前記第1の調理器具9の使用に役立つ情報を取得する。取得した情報は、前記記憶装置56Rに格納される。また表示画面20で表示し、あるいはこの表示に加えて更に、音声合成装置64によってスピーカー65から音声で報知される。
69は、表示画面20を駆動するための駆動回路である。この駆動回路は前記制御装置56と接続されている。なお、この表示部駆動回路69は、図示していないが、表示用メモリー、表示コントローラー、インターフェース、電源回路、コモンドライバー、およびセグメントドライバーを、それぞれ備えている。
図10において、80は、前記第1の送風機BM1を駆動する駆動回路であり、前記制御装置56によって運転が制御される。75は、第1の送風機BM1のモータである。
23Aと23Bは、一対のコネクターであり、一方のコネクター23Aは電源回路62に接続されている。24は、使用者によって開閉操作される電源スイッチで、後述する送風制御回路74に接続されている。送風制御回路74は、温度センサー57の温度検出信号を受けて、所定の温度(例えば35℃)を超えたことが検知された場合、モータ駆動回路59に対して送風指令信号を出し、第2の送風機BM2のモータ75を回転駆動する。
以上の構成であるから、次に加熱調理動作について図10を参照しながら説明する。
まず、使用者が主電源スイッチ61をONすると、この主電源スイッチを介して電気エネルギーが電源回路62に供給される。そしてこの電源回路から所定の(低電圧で)一定電圧の電流が供給され制御装置56が起動される。
制御装置56は、温度検出回路63や、音声合成装置64、表示部駆動回路69を起動し、異常な温度状態が温度検出回路で検出されない場合で、かつ異常な電圧や電流が検出されない場合には、起動時の自己チェック動作を完了する。そして加熱調理開始できる旨を、前記表示画面20で表示し、かつ音声合成装置64でもスピーカーを通じて報知する。
そこで、収納室21のカバー30を手前に引出して、第1の調理器具9を取り出して、例えば図4、図7に示すように、左側加熱コイル8Lの真上位置に置く。なお、第1の調理器具9は、皿部9Aだけでも誘導加熱調理に利用できるが、蓋体9Bを同時に使用した方が、被調理物(例えば、魚や肉等)が飛散せず、また熱気が逃げないので、加熱効率が良くなる。
制御装置56は、起動時の自己チェック動作を完了した後で、前記安全装置SDの一部を構成するリードスイッチ51が開放(OFF)されると、受け皿26が収納室21の最も奥の所定位置から引き出されたものであると判定する。その後、3つの加熱コイル8L、8M、8Rの何れかの上に、金属製の鍋等の被加熱物が置かれたかどうかを、検知する(このような検知方法は既に各種方法が提案されているので詳しい説明は省略する)。
制御装置56は、左側加熱コイル8Lか、又は右側加熱コイル8Rの上に第1の調理器具9があることを検知すると、表示画面20と音声合成装置64によって、加熱調理の条件を操作部12からインプットするように促す。
左側加熱コイル8Lの上に、第1の調理器具9が置かれている場合、左側の左操作部12Lにある、3つの入力キー17を使って、火力や加熱時間等を入力し、その入力キー17の1つで加熱開始の指令を入力すれば、インバーター回路55Lが制御装置56によって駆動され、誘導加熱調理が実行される。
このような誘導加熱調理の実行前でも、また実行中、実行後においても、操作部12にある入力キー18をタッチ操作すると、前記制御装置56は、無線通信手段68を介して、家庭の外部空間にある広域通信回路網に接続し、情報プロバーダーが設置したサーバー(図示せず)から、前記第1の調理器具9の使用に役立つ情報をリアルタイムで取得し、取得した情報は、前記記憶装置56Rに格納される一方、表示画面20で表示し、あるいはこの表示に加えて更に、音声合成装置64によってスピーカー65から音声で報知されるので、使用者は、第1の調理器具9を使用する場合に、外部の有益な情報を利用でき、便利である。例えば、魚を焼く場合には、加熱コイル8Lの火力について知ることができる。
このような誘導加熱調理の実行中、使用者が任意のタイミングで加熱動作を停止できるが、その停止指令は、前記入力キー17の1つで行える。緊急時には、前記主電源スイッチ61の操作キー14を押すことでも簡単に自動停止を行える。
誘導加熱調理を終えた第1の調理器具9は、まず、収納室21のカバー30を手前に引出して、受け皿26を収納室21から前方に引き出し、次に、その受け皿26の上に第1の調理器具9を載せれば良い。仮に第1の調理器具9が、まだ加熱調理の直後であって温度が高くとも、受け皿26は金属や耐熱性のプラスチックで形成されているので、何ら支障はない。
制御装置56は、前記安全装置SDの一部を構成するリードスイッチ51がONされると、受け皿26が収納室21の最も奥の所定位置に戻されたことを検知する。この状態は、カバー30が挿入口22を閉鎖した状態でもある。そこで収納室21は、外部との空気の自然対流がない空間に戻ったことになるので、前記したように、まだ高温度の第1の調理器具9の影響で、収納室21の内部雰囲気の温度が上昇することが想定される。しかし、この実施の形態1では、このような温度上昇も考慮して収納室21を設計してあり、本体ケース3の外郭温度やカバー30の表面温度を所定温度以上に上げることはない。
具体的には、収納室21の内部雰囲気の温度上昇を抑制する対策の1つとして、収納室21の後壁面21Bに複数個点在するように通気孔33を形成し、また収納室21の上壁面(天井壁)21Tに、複数個点在するように通気孔34を形成してあり、これら通気孔を介して冷却用空気を導入して積極的に空気で冷却する構成になっている。
図7に矢印で示したように、カバー30と挿入口22の間隙から収納室21の内部に空気が導入される。またカバー30の下面と、家具表面材40の上面との間に形成された空隙GPUからも第2の送風機BM2によって空気が導入されるので、このような経路で導入された空気により収納室21は、その内部と外部から冷却される。冷却後の空気は、排気孔3Vから下部ケース3Uの外部へ放出される。収納室21の内部空間の容積に比較して厨房家具2の内部空間の容積は遥かに大きいので、下部ケース3Uの外部に冷却風を放出してもそれによって厨房家具が異常な高温になることはない。
図8に示しているように収納室21の上壁面21Tには温度センサー57が設置されており、第2の送風機BM2から見て冷却風の上流側の気温を検知しているので、この温度センサー57からの検出温度データを受けて送風制御回路74で第2の送風機BM2の運転可否を自動で判定する。このため、加熱調理器1を使用した場合、常に第2の送風機BM2が運転される訳ではない。運転されるのは温度センサー57が所定の温度限界値を超える温度を検出した場合だけである。
以上の説明では、第1の調理器具9を使用して誘導加熱調理をした場合であったが、その他の一般の金属鍋やフライパン等の調理器具、すなわち前記した第2、第3の調理器具10、11でも調理は可能である。
次に、前記制御装置56に対して、前記第1の調理器具9の存在結果を要求する確認指令用のタッチ式入力キー19を操作した場合の制御装置56の動作について説明する。入力キー19を操作されると、収納室21の内部に第1の調理器具9があるかどうかを、制御装置56が検出する。そのために、収納室21には、第1の調理器具9がある場合と、無い場合を判別するセンサー、例えば、受け皿26の上の所定位置に第1の調理器具9があることを、磁気的又は光学的、あるいは重量で検知するセンサーを別途設けている。
前記カバー30が開放され、その後閉鎖されたことを前記リードスイッチ51で検知した場合、その開放前と後の磁気的、光学的又は重量(受け皿26を含めた重量で良い)の変化を判定して、金属製であり、比較的に重量がある(例えば、500g以上はある)第1の調理器具9の存在を検知している。第1の調理器具9がある場合、入力キー19を操作した時から直ぐに、その調理器具9の有無が、表示画面20で表示され、又は音声合成装置64で報知されるので、使用者は、例えば左側の加熱コイル8Lの上で別の加熱調理をしている場合であっても、前記カバー30を前方に引き出さずに、第1の調理器具9の格納状態を直ぐに確認できるため、便利である。
次に、前記第1の送風機BM1による冷却風の流れについて、図4を参照しながら説明する。
例えば、左側誘導加熱コイル8L用のインバーター回路55Lが制御装置56によって駆動され、誘導加熱調理が実行されると、これと同期して制御装置56はモータ駆動回路80を起動し、第1の送風機BM1のモータ76を回転駆動する。
すると、図4に矢印53で示すような吸気流が発生し、本体ケース3の外部の新鮮な空気が、第1の送風機BM1の吸込み口から吸い込まれ、加熱コイル8側へ強制的に送り込まれる。送り込まれた空気流は、上部空間70の内部を、後方から前方に進む過程で、3枚のインバーター回路基板55の表面を流れるから、多数の回路素子や、それらが実装されたアルミニウム製放熱フィン(図示せず)等を冷却しながら、冷却風を案内する送風ダクト58に至り、左方向に向きを変更される。そして図5に矢印54Bで示したように、左側の加熱コイル8Lまで冷却風の一部が流れて、その加熱コイル8Lを冷却し、最終的には、通気口77Aを通過し、図7に矢印54Bで示しているように、排気口6Bから室内空間へ放出される。
なお、右側加熱コイル8Rが駆動されておらず、加熱されていない場合でもこのような冷却風が加熱調理中は加熱コイル8Rの周囲も通過する。
次に上記したような、左側の加熱コイル8Lの駆動中や加熱コイル8Mの駆動中にも、収納室21の温度上昇が抑制されていることを説明する。
誘導加熱コイル8には、前述したように防磁リングという漏洩磁束防止の手段が設けてあるが、左側加熱コイル8Lの直下にある収納室21が、その左側加熱コイル8Lの影響を受けて温度上昇する懸念がある。特に200V電源で、インバーター回路55Lを駆動した場合には、左側加熱コイル8Lの下方にまで高周波磁界の影響を強く受けるので、最も近くにある金属製、例えば鋼板製の上壁面21Tが加熱される懸念もある。
ところで、この実施の形態1においては、下部ケース3Uの底面を構成する底板3Bと、下部ケース3Uの天井面を構成するように固定されている天井板72との間には、第1の空隙SP1が形成されている。この空隙は、上部ケース3Tと下部ケース3Uの設置に伴って形成されたものであり、上部ケース3Tと下部ケース3Uの外部に直接通ずる空隙であるから、図6に破線の矢印で示すように自然に空気が流通することも可能である。
さらにその天井板72と収納室21の上壁面21Tとの間にも、第3の空隙SP3が形成され、冷却用空気が流通するので、温度上昇が抑制される構成である。
この実施の形態1において第1の送風機BM1は、インバーター回路55Lの駆動が制御装置56によって停止された後も、一定時間(例えば数分間から10分間程度)運転が継続されるように制御装置56の制御プログラムが設定されている。またその一定時間を経過して段階でも、温度検出回路63に温度計測結果を伝える複数の温度センサー(図示せず)が、上部空間70の内部の雰囲気温度、排気側空間79Bの内部、トッププレート4の温度等を計測し、所定の温度まで下がった段階になったことを温度検出回路63が判定しないまでは、前記制御装置56は第1の送風機BM1の駆動回路80に駆動指令を出しているので、インバーター回路55L、55M、55Rの駆動が停止された後も、上部空間70の温度が十分に低下するまで第1の送風機BM1による冷却は継続される。なお、第1の送風機BM1は、インバーター回路55L、55M、55Rの駆動停止後は、モータ76の回転数を落として省エネ運転に自動的に切り替わるようにしても良い。
次に、この実施の形態1における天井板72の意義について説明する。前記収納室21には、第1の調理器具9やその他の調理器具等が収容されるので、場合によっては、洗浄した直後の濡れた調理器具や熱い状態の第1の調理器具9が入れられる可能性もある。このような場合、収納室21の内部が一時的に温度と湿度が高い状態になる懸念もあるが、天井板72によって、上部空間70との間は完全に遮断され、下部空間71の冷却用として専用に設けた第2の送風機BM2により冷却されるので、収納室21の内部空間を効果的に冷却できる。
さらに、前記収納室21は、その上壁面21Tが磁性金属製であっても、その上壁面21Tの位置は、この上壁面21Tの真上に位置する前記2つの加熱手段8L、8Mとの間隔HMが、5cm以上離れた位置となるように設定されている構成である。
つまり、上壁面21Tは、その上方に設置された左側加熱コイル8Lと中央加熱コイル8Mからの磁気的な影響を受けることが殆どないような間隔HMが確保されている状態であることから、上壁面21T自体が誘導加熱されるという影響を無くすことができる。これにより、収納室21の上壁面21T自体の過剰な温度上昇が避けられ、収納室21の過熱が防止できる。このため収納室21に収容する物品等の制約が少なくなり、利便性が向上する。
次に、本体ケース3が、この実施の形態1では、上部ケース3Tと下部ケース3Uとの連結構造である意義について説明する。
前記下部ケース3Uは、前記厨房家具2の設置口2Aに設置された上部ケースの真下の所定位置まで、当該厨房家具の前方開口2Bから挿入できる外形寸法を有した構成である。このことは、図11に示すような設置作業を経て図7に示したように設置されていることから明らかである。
そこで、このように上部ケース3Tと下部ケース3Uが、上下に重なった状態で、両者の連結関係を固定している左右両側の固定ピン130を、前記した収納室21、35の内側方向にそれぞれ引き抜くと、下部ケース3Uは、固定金具119に支持させたまま、前方に徐々に引き出すことができる。
そしてある程度引き出した状態で、下部ケース3U側の電源回路62に接続されている前記コネクター23Bを、他方のコネクター23Aから引き離すと、下部ケース3U単独で、前方開口2Bから引き出すことができる。またこの作業を逆に行えば、再び上部ケース3Tの真下の位置まで移動させて、最終的に上部構造体3Xと下部構造体3Yを一体化することができる。このような場面は、例えば下部構造体3Yや上部構造体3Xの内部の点検や修理又は清掃等を行う場合に便利である。
従って、この実施の形態1の加熱調理器等では、従来よりも厨房家具に組み込む(ビルト・インする)作業を容易に行え、また逆に取り出す作業も簡単に行える。
なお、上部構造体3Xと下部構造体3Yを一体化して梱包箱の中に入れて販売のために出荷し、据付業者等がキッチンの現場において上部構造体3Xと下部構造体3Yを分離し、図11に示したような本体ケース3全体を持ち上げながら、厨房家具2の中に挿入するという作業をしないで組み込み作業をすることを選択できる。これによれば、15kg〜20kg程度もある重量物の本体ケース3全体を持ち上げなくて済むので、現場での作業者の負担を大幅に軽減できる。
実施の形態1の総括.
以上の説明から明らかなように、この実施の形態1の加熱調理器1は、以下の特徴的な構成を備えていた。
すなわち、この実施の形態1における加熱調理器1は、
厨房家具2に形成された設置口2Aに上方から挿入し、その設置口の周辺部に支持される平面的な大きさを有した上部構造体3Xと、この上部構造体に連結された下部構造体3Yと、を備え、
前記上部構造体3Xの内部空間には、誘導加熱コイル8と、当該内部空間を冷却する第1の送風機BM1とを格納し、
前記下部構造体3Yには、当該下部構造体3Yの前面側に挿入口22を有した収納室21と、当該収納室21の冷却用空気流を形成する第2の送風機BM2とを備え、
前記第2の送風機BM2は、前記上部構造体を経由せずに直接前記下部構造体3Yの外部から冷却用空気を前記収納室21に導入する構成である。
この構成のため、収納室21の温度上昇を抑制でき、多種類の物品を収納室21に格納できて、加熱調理器1の使用者の利便性を向上させることが期待できる。
この実施の形態1の加熱調理器1は、以下の特徴的な構成を備えていた。
すなわち、この実施の形態1における加熱調理器1は、
厨房家具2に形成された設置口2Aに上方から挿入し、その設置口の周辺部に支持される平面的な大きさを有した上部構造体3Xと、この上部構造体に連結された下部構造体3Yと、を備え、
前記上部構造体3Xの内部空間には、誘導加熱コイル8と、当該内部空間を冷却する第1の送風機BM1とを格納し、
前記下部構造体3Yには、当該下部構造体3Yの前面側に挿入口22を有した収納室21と、当該収納室21の冷却用空気流を形成する第2の送風機BM2とを備え、
前記第2の送風機は、前記上部構造体を経由せずに直接前記下部構造体の外部から冷却用空気を前記収納室に導入し、下部構造体の内部を冷却した後の冷却空気は、下部構造体から前記上部構造体の外側の空間に直接排気する構成である。
この構成のため、収納室21の温度上昇を抑制でき、多種類の物品を収納室21に格納できて、加熱調理器1の使用者の利便性を向上させることが期待できる。
実施の形態1の加熱調理器1は、以下の特徴的な構成を備えていた。
すなわち、実施の形態1の加熱調理器1は、
厨房家具2に形成された設置口2Aに上方から挿入し、その設置口の周辺部に支持される平面的な大きさを有した上部構造体3Xと、前記上部構造体3Xに連結される下部構造体3Yと、を備え、
前記上部構造体3Xの内部空間には、誘導加熱源8と、当該内部空間を冷却する第1の送風機BM1とを格納し、
前記下部構造体3Yには、当該下部構造体3Yの前面側に挿入口22を有した収納室21と、当該収納室21の冷却用空気流を形成する第2の送風機BM2とを備え、
前記第2の送風機BM2は、前記下部構造体3Yの外部から冷却用空気を前記収納室21に導入し、
前記下部構造体3Yは、前記厨房家具2の設置口2Aに設置された前記上部構造体3Xの真下の所定位置まで、当該厨房家具2の前面側にある前方開口2Bから挿入できる外形寸法を有した構成である。
この構成のため、従来よりも簡単な作業で加熱調理器1を厨房家具2に組み込むことができる。
また、前記下部構造体3Yが、厨房家具2の前面側にある前方開口2Bから挿入できるということは、図11に示したような本体ケース3全体を持ち上げながら、厨房家具2の中に挿入するという作業をしないで組み込み作業を完了できることであるため、下部ケース3Uの後面部3Hから下に連続して形成した傾斜面部3Jを廃止できる。これにより下部ケース3Uの内部空間体積が増加するので、収納室21、35の前後方向の大きさも拡大でき、より多くの物品を格納することができるというメリットが生まれる。
この実施の形態1の加熱調理器1によれば、厨房家具2に組み込まれた状態では、加熱調理器1の前面を覆うカバー30は、その左側に隣接する厨房家具2の家具表面材41があっても、その前面41Fと大きな段差を生ずることがない。このため、厨房家具2の外観のデザイン性を損なうこともない。
この実施の形態1の加熱調理器1によれば、厨房家具2に組み込まれた状態では、加熱調理器1の前面を覆うカバー44は、その右側に隣接する厨房家具2の家具表面材41があっても、その前面41Fと大きな段差を生ずることがない。このため、厨房家具2の外観のデザイン性を損なうこともない。
この実施の形態1の加熱調理器1によれば、2つの収納室21、35のカバー30、44は、それぞれの挿入口22を閉じた状態で、その左側又は右側の少なくとも何れか一方に隣接する厨房家具2の前面と合わせた位置に設置されるものである。このため、この加熱調理器1によれば、加熱調理器1前面と厨房家具2の前面との全体に、統一的平面感を持たせることができる。
この実施の形態1の加熱調理器1によれば、カバー30と一体化されている受け皿26よって調理器具9を前方へ引き出すことができ、使用者の操作性を向上させることができる。
さらに、この実施の形態1の加熱調理器1は、制御装置56には、前記カバー30が開いている状態を検知し、当該カバーが開いている状態では前記インバーター回路55L、55M、55Rの動作開始を禁止する安全装置SD(50、51)を設けているものであるため、カバー30が開いている状態では前記インバーター回路55L、55M、55Rの動作開始が自動的に禁止され、安全性を高めることができる。
さらに、この実施の形態1の加熱調理器1は、操作部12に、前記第1の調理器具9を使用する場合に、前記無線通信手段68を介して調理参考情報を取得することを指令するスイッチを備えているので、調理に参考となる情報を外部から無線通信で取得することができ、第1の調理器具9を使う場合の利便性を高めることができる。
さらに、この実施の形態1の加熱調理器1は、
前記収納室21の少なくともその上壁面21Tが磁性金属製であり、かつその上壁面21Tの位置は、この上壁面21Tの真上に位置する前記2つの加熱手段8L、8Mとの間隔HMが、5cm以上離れた位置となるように設定されている構成である。
この構成であるから、上方に設置された左側加熱コイル8Lと中央加熱コイル8Mからの磁気的な影響を受けることが殆どなく、上壁面21T自体が誘導加熱されるという悪影響を無くすことができる。これにより、トッププレート4の上で左側加熱コイル8Lと中央加熱コイル8Mを同時に、又は個別に使用していても、収納室21の温度上昇が抑制され、収納室21の過熱が防止できる。このため収納室21に収容する物品等の制約が少なくなり、利便性が向上する。
なお、実施の形態1の加熱調理器1では、上部構造体3Xから下部構造体3Yの第2の送風機BM2が電源供給を受けるため、コネクター23A、23Bによって、上部構造体3Xに接続する作業が必要であったが、第2の送風機BM2が運転される時間は、加熱調理時間に比較して非常に少なく、また温度センサー57の温度計測も例えば20〜30秒置きというように間欠的で良いので、下部構造体3Y側に電池等の専用電源を内蔵し、コネクター23A、23Bを廃止しても良い。つまり、下部構造体3Yは、上部構造体3Xに依存せずに専用の電源を確保する構成にしても良い。
実施の形態2.
図12〜図14は、実施の形態2に係る加熱調理器を示すものである。この実施の形態では、加熱調理器1の収納室21を冷却する風路に工夫を施したところが特徴である。なお、図1〜図11と同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。
図12は、図4と同様な位置で見た場合の平面図であり、トッププレートと後部枠板とを取り外した状態で示している。図12に示すように、この実施の形態2の加熱調理器1では、第2の送風機BM2を、排気側空間79Bの真下の位置に設けたことが特徴である。
図12において、81は、上部ケース3Tの底面を構成する底板3Bに形成した開口であり、この開口の真下には、下部ケース3Uの天井板72の連通口84(図14参照)が形成され、その連通口には、第2の送風機BM2の排気口82(図13参照)が上向きで接続されている。
図13において、83は、第2の送風機BM2の吸込口であり、下部ケース3Uの後部に形成された空隙BS2の上部に臨ませている。
図14において、81は、上部ケース3Tの底面を構成する底板3Bに形成した開口、84は、その開口81に対応する位置で、下部ケース3Uの天井板72に形成された連通口である。
85Aは、弾力性に富むシリコンゴム等で形成された平面形状が環状になっているシール材であり、連通口84を囲むように下部ケース3Uの天井板72に取り付けられている。
85Bは、シール材85Aと対を成す部材であり、弾力性に富むシリコンゴム等で形成された平面形状が環状になっているシール材であり、開口81を囲むように底板3Bの下面に取り付けられている。
前記2つのシール材85A、85Bは、互いに対向する面が傾斜面になっており、下部ケース3Uが真下の位置にない場合には、2つのシール材85A、85Bは離れている。しかし、図14に示すように下部構造体3Y、矢印で示す右の方向(挿入)方向に進行させると、次第に2つのシール材85A、85Bの間隔は接近し、最終的には図14に示すように微小間隔を置いて対向する状態か、あるいは接触した状態になる。
以上のような構成であるから、下部構造体3Yを、前記厨房家具2の設置口2Aに設置された上部構造体3Xの真下の所定位置まで、当該厨房家具2の前面側にある前方開口2Bから挿入する過程では、開口81と連通口84の間は、外部にも連通した開放空間になっているが、最終的に図14に示した位置まで下部構造体3Yを挿入した場合、前記開口81と連通口84の周囲は、シール材85A、85Bによって囲まれ、外部空間から殆ど遮断されるので、排気風54Cを排気口6Bまで安定して導くことができる。
以上のように、実施の形態2に係る加熱調理器1では、第2の送風機BM2からの排気流54Cは、排気口82から真上に流れ、底板3Bの上方空間を水平方向に流れて来た矢印54Bで示す冷却風と合流して排気口6Bから室内空間へ放出される。なお、排気口6Bを2つに区画し、その1つを排気流54Bの排出用に、また1つを第2の送風機BM2からの排気流54Cの放出用に使用することでも良い。
実施の形態2の総括.
以上の説明から明らかなように、この実施の形態2の加熱調理器1は、第1の発明の構成を備えていた。
すなわち、この実施の形態2における加熱調理器1は、
厨房家具2に形成された設置口2Aに上方から挿入し、その設置口の周辺部に支持される平面的な大きさを有した上部構造体3Xと、この上部構造体3Xに連結手段(固定ピン)130を介して着脱可能に連結された下部構造体3Yと、を備え、
前記上部構造体3Xの内部空間には、誘導加熱源8と、当該内部空間を冷却する第1の送風機BM1とを格納し、
前記上部構造体3Xの内部空間には、仕切り壁77で前記誘導加熱源8と区画され、かつ当該上部構造体の上面に開口した排気口6Bに連通する排気側空間79Bを有し、
前記下部構造体3Yには、当該下部構造体3Yの内部に冷却用空気流を形成する第2の送風機BM2を備え、
前記第1の送風機BM1は、前記下部構造体3Yを経由せずに直接前記上部構造体3Xの外部から前記誘導加熱源8の冷却用空気を導入し、当該誘導加熱源8を冷却した後の前記冷却用空気は、前記下部構造体3Yを経由せずに前記排気口6Bに通ずる排気側空間79Bを経由して直接外部へ排気し、
前記第2の送風機BM2は、前記上部構造体を経由せずに前記下部構造体3Yの外部から冷却用空気を導入する。そして、当該下部構造体3Yの内部を冷却した後の前記冷却用空気は、当該下部構造体3Yから前記排気側空間79Bを経由して、外部に排気することを特徴とする構成である。なお、排気口6Bから放出された空気は、加熱調理器1の上方に設置されている換気装置等によって屋外へ排出することができる。
この構成のため、上部構造体3Xの内部空間と下部構造体3Yの内部空間の温度上昇を抑制でき、加熱調理器1の使用者の利便性を向上させることが期待できる。
更に、前記上部構造体3Xの内部空間を冷却した後の冷却用空気が排出される前記排気側空間79Bを利用して、前記下部構造体3Yの内部空間を冷却した後の冷却用空気も、外部に排出されるから、排気口6Bを有効に活用できる。
更に、前記上部構造体3Xと前記下部構造体3Yとを連結する金属製の固定ピン130によって前記下部構造体3Yが、前記上部構造体3Xに支持される構成であった。
このため、前記固定ピン130によって、上部構造体3Xと下部構造体3Yとを分離することができる。
更に、前記下部構造体3Yの底面部3Mに、通気孔3Wを形成し、
前記第2の送風機BM2は、前記通気孔3Wより前記下部構造体3Yのための冷却用空気流を吸引する構成であった。
このため、加熱調理器1の底面部3M下方から厨房家具2の内部にある空気を導入できる。
更に、前記下部構造体3Yは、その底面部3Mの下面と、厨房家具2との間に、下部空間USが形成される大きさであり、
前記通気孔3Wは、前記下部空間USに連通している構成であった。
このため、加熱調理器1の底面部3M下方から厨房家具2の内部にある空気を導入できる。
この実施の形態2の加熱調理器1は、以下の特徴的な構成を備えていた。
すなわち、実施の形態2の加熱調理器1は、
厨房家具2に形成された設置口2Aに上方から挿入し、その設置口の周辺部に支持される平面的な大きさを有した上部構造体3Xと、前記上部構造体3Xに連結される下部構造体3Yと、を備え、
前記上部構造体3Xの内部空間には、誘導加熱源8と、当該内部空間を冷却する第1の送風機BM1とを格納し、
前記下部構造体3Yには、当該下部構造体3Yの前面側に挿入口22を有した収納室21と、当該収納室21の冷却用空気流を形成する第2の送風機BM2とを備え、
前記第2の送風機BM2は、前記下部構造体3Yの外部から冷却用空気を前記収納室21に導入し、
前記下部構造体3Yは、前記厨房家具2の設置口2Aに設置された前記上部構造体3Xの真下の所定位置まで、当該厨房家具2の前面側にある前方開口2Bから挿入できる外形寸法を有した構成である。
この構成のため、従来よりも簡単な作業で加熱調理器1を厨房家具2に組み込むことができる。
また、前記下部構造体3Yが、厨房家具2の前面側にある前方開口2Bから挿入できるということは、実施の形態1(図11)で説明したように、本体ケース3全体を持ち上げながら、厨房家具2の中に挿入するという作業をしないで組み込み作業を完了できることであるため、下部ケース3Uの後面部3Hから下に連続して形成した傾斜面部3Jを廃止できる。これにより下部ケース3Uの内部空間体積が増加するので、収納室21、35の前後方向の大きさも拡大でき、より多くの物品を格納することができるというメリットが生まれる。
なお、実施の形態2では、上部ケース3Tと下部ケース3Uの間には、10mm程度の空隙SP1があるため、シール材85A、85Bを設けていたが、第2の送風機BM2の排気口82が、底板3Bの開口81に上記シール材85A、85B等を介在させて接続されていない場合でも、下部構造体3Yから放出される排気流の温度は低く、また短時間で少量であるため実用上では何ら支障はない。
実施の形態3.
図15と図16は、実施の形態3に係る加熱調理器を示すものである。この実施の形態では、加熱調理器1の収納室21を、上部構造体3X側の送風機の作用で冷却する構成にしたところが特徴である。なお、図1〜図11と同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。
図15は、図4と同様な位置で見た場合の平面図であり、トッププレートと後部枠板とを取り外した状態で示している。図15に示すように、この実施の形態3の加熱調理器1では、上部ケース3Tの中の上部空間70の中に、第1の送風機BM1と、左側加熱コイル8L、右側加熱コイル8Rを配置し、それら2つの加熱コイルのための冷却風を導入する吸込口86L、86Rを設けたところが特徴である。
図16は、図15のX−X線の縦断面図である。
図15と図16に示しているように、左側加熱コイル8Lのための冷却風を導入する吸込口86Lは、その加熱コイル8Lの下方で、かつ近傍の位置となるように、底板3Bに形成している。
また右側加熱コイル8Rのための冷却風を導入する吸込口86Rは、その加熱コイル8Rの下方で、かつ近傍の位置となるように、底板3Bに形成している。
図15において、58A、58Bは、送風ダクト又は案内板である。これは上部空間70の中に必要な風路を区画形成するために複数個設置してある。後方にある案内板58Aは、第1の送風機BM1からの冷却風を、2つのインバーター回路を実装したインバーター回路基板55に向けて案内する。右側にある案内板58Bは、右側加熱コイル8Rのための冷却風を導入する吸込口86Rから上部空間70に導入された冷却風を、左側方向に案内するためのものである。なお、この第1の送風機BM1は、底板3Bに設けた吸込口(図示せず)から直接外部の空気を吸引するようになっており、この点が実施の形態1と大きく異なる。つまり、第1の送風機BM1は、インバーター回路基板55を、矢印54B1で示すような冷却風によって冷却した後、排気口6Bから排気されるもので、途中では加熱コイル8(8L、8R)は冷却しない。
図15、図16において、87Rは右側送風機であり、前記吸込口86Rの真上に設置されている。87Lは左側送風機であり、前記左側吸込口86Lの真上に設置されている。88は、吸込口86L、86Rの真上に送風機87L、87Rを設置するための支持部材であり、細長い橋形状で、吸込口86L、86Rを跨いでいる。なお、図15には、この支持部材は図示していない。なお、この実施の形態3では、2つの収納室21、35の双方の冷却を前記送風機87L、87Rで行える構成である点が実施の形態1と大きく異なる。
図16において、89は天井板72において前記吸込口86L、86Rに対応した位置に設けた開口である。120は、上部構造体3Xをそのまま据置型の加熱調理器1として使用する場合に利用される複数の脚である。この脚は上部ケース3Tの底面の前後・左右に計4個取り付けられている。厨房家具2の上面に、加熱調理器1をそのまま載せて使用する場合、その高さを調節できるように、前記脚120には上下方向に伸びて脚自身の高さを調節できる機構を内蔵していると便利である。なお、脚120の(最大伸長時の)高さは20mm程度あることが望ましいが、あまり高いと安定性を損なうので、この実施の形態では20mmにしてある。
なお、下部構造体3Yには、第2の送風機BM2に相当する構成は存在しないので、上部構造体3Xと電気的に接続する必要がない。このため、上部構造体3Xは、厨房家具2の中に組み込んで使用する場合でも、厨房家具以外の場所に置いて、据置型の加熱調理器1として使用する場合でも、上部構造体3Xは下部構造体3Yと電気的にも、機械的にも接続したり、連結したりする必要がなく、独立して使用できる。従って、この実施の形態3では、実施の形態1で使用した固定金具119や固定ピン130は設けていない。
以上の構成から明らかなように、下部構造体3Yを、前記厨房家具2の設置口2Aに設置された上部構造体3Xの真下の所定位置まで、当該厨房家具2の前面側にある前方開口2Bから挿入した段階では、開口89の真上に送風機87L、87Rの吸込口86L、86Rが位置しているので、収納室21、35の内部やその周囲の空気が強制的に吸込口86L、86Rに吸い込まれるので、収納室21、35の温度上昇が抑制される。
送風機87L、87Rで下部構造体3Yの内部に吸引された冷却風は、図15に矢印54B2に示すように、加熱コイル8L、8Rを冷却した後に後方に流れ、排気口6Bから室内へ放出される。この場合、前記第1の送風機BM1からの冷却風54B1と、送風機87L、87Rからの冷却風54B2とは、排気口6Bの中で干渉しないように、仕切り板等を介して分離してそれぞれ放出させているが、そのような仕切り板を設けず、排気方向が合致しているので合流させてから排出させても良い。
実施の形態3の総括.
以上の説明から明らかなように、この実施の形態3の加熱調理器1は、以下の特徴的な構成を備えていた。
すなわち、この実施の形態3における加熱調理器1は、
厨房家具2に形成された設置口2Aに上方から挿入し、その設置口の周辺部に支持される平面的な大きさを有した上部構造体3Xと、前記上部構造体3Xに連結される下部構造体3Yと、を備え、
前記上部構造体3Xの内部空間には、誘導加熱源8と、当該内部空間を冷却する第1の送風機BM1とを格納し、
前記下部構造体3Yには、当該構造体の前面側に挿入口22を有した収納室21、35を有し、
前記上部構造体3Xの底板3Bと前記下部構造体3Yの天井面(天井板72)との間には所定の空隙SP1を形成し、
前記第1の送風機BM1が前記上部構造体3Xの内部に冷却用空気を導入するための吸気口86L,86Rを、前記空隙SP1に臨んだ位置に設けた構成である。
また、前記吸気口86L,86Rを、前記収納室21、35の内部空間に連通するための、冷却空気を通過させるための開口89と対向する位置に設けた構成である。
この構成のため、下部構造体3Yに専用の送風機を設けなくとも、上部構造体3Xの内部空間を冷却する第1の送風機BM1の運転によって、下部構造体3Yの内部空間も冷却される。これにより、専用の送風機を下部構造体3Yの内部に設置することを省略でき、構造も簡略化でき、またコスト的にも有利となる。
さらに、上部構造体3Xは、実施の形態3で図示したように、厨房家具2の中に設置して使用する以外にも、そのまま据置型の加熱調理器1として使用できるので、利用範囲が拡大するという利点がある。
なお、収納室21を設けたことによる効果は、実施の形態1と同等のものが期待できるので、詳しい説明は省略する。
実施の形態4.
図17は、本発明の実施の形態4に係る加熱調理器と、調理器用支持装置と、これらの両者から構成される調理器セットとを示すものである。
この実施の形態4では、加熱調理器1に特徴がある。またその加熱調理器1を載置するための調理器用支持装置にも特徴がある。なお、図1〜図11と同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
図17において、この実施の形態4の加熱調理器は、実施の形態1とは異なり、テーブル等の上面に置かれて使用される据置型専用の調理器として設計されたものである。
この種の据置型専用の加熱調理器では、従来はそのまま加熱調理器を厨房家具2の上に置いただけでは、隣接する厨房家具、例えば流し台の周縁部の高さと、加熱調理器1の上面との間で大きな段差(例えば、150mm〜200mm)を生ずることが起こる。
そこで従来では、テーブル状の支持装置を使用し、その上に加熱調理器1を載せて使用するという方法が採用されているが、単なる台としての機能しかないため、使用者の利便性の面で満足すべきものではなかった。
この実施の形態4は、前述のような課題を解決し、使用者の利便性を向上させた加熱調理器、加熱調理器の支持装置、加熱調理器とのセットを提案することを目的としている。
この加熱調理器1は、本体の外郭を形成する外郭ケース90を備えている。この外郭ケース90は、例えば金属製のケースから構成されている。外郭ケース90の前方(図17の左側)下部には本体内部に冷却風を取り込むための吸気口91が設けられており、外郭ケース90の後方(図17の右側)上部には、外郭ケース90内部に取り込んだ冷却風を外部に排出するための排気口92が設けられている。この吸気口91がある外郭ケース90の前壁面は、斜めになっているため、吸気口91も図17に示すように上方が前方に位置し、下方縁が後方(図17の右側)に位置している。
外郭ケース90は、複数の金属製薄板を相互に結合して上面が開放された有底箱状に形成されており、その底面を構成する底板90Aは正方形又は前後方向に少し長い長方形を呈している。
外郭ケース90の上方には、調理物を載置するための耐熱ガラス製のトッププレート93が設けられている。
また、外郭ケース90の内部には、様々な電気部品を保持するための樹脂ケース(図示せず)があり、底板90Aの上に載置されている。そして、この樹脂ケースには、吸気口91から吸気して外郭ケース90内部に冷却風を送風するための送風機94が設置されている。94Aは、その送風機94のファンを内蔵するファンケースである。
トッププレート93の外周側には、金属製の額縁状枠板95が設けられ、トッププレート93と枠板95とは、シリコン接着材109にて接着されている。外郭ケース90内の後方には冷却風の一部がシリコン接着材109に当たるようにするために傾斜板96が設けられており、冷却風は傾斜板96により斜め上方に導かれて排気口92に向かう。
送風機94の後方にはインバーター回路を実装した制御基板106が設けられており、これは樹脂ケースの上に例えばネジにて締結されている。
前記制御基板106の後方には、調理物を加熱するための誘導加熱部となる2つの誘導加熱コイル108L、108Rを配置し、またそれら加熱コイルをトッププレート93方向に付勢するためのバネ98の軸芯となる支持板99が配置されている。支持板99は、誘導加熱部の外周に沿って複数個設けられており、バネ98は、支持板99にそれぞれ嵌挿され、上方には絶縁用キャップ100が載置される。絶縁用キャップ100は、その下部が径方向に拡大した部位を備えており、その部位に、誘導加熱源107の外郭を構成する外郭板金101と連結された取付板金102が載置されている。
次に、上記の誘導加熱部の構成について説明する。
誘導加熱部は、上記のように、その外郭を構成する外郭板金101を備えており、この外郭板金101は、電気的な絶縁機能を持った絶縁部材103を収納している。絶縁部材103は、その外周部分がトッププレート93側に突出し、全体が円盤状の形を呈している。なお、この絶縁部材103は、例えば複数の絶縁材から構成されている例が図示されているが、1個の絶縁材だけで全体を構成するようにしてもよい。何れの場合であっても、この絶縁部材103の底部には外周方向に沿って段差104が形成されている。このため、この絶縁部材103を収納している外郭板金101にも段差105が形成されている。
絶縁部材103の上には、調理物を加熱するための加熱源である誘導加熱コイル108L、108Rがそれぞれ載置されている。加熱コイル108L、108Rと前記制御基板106はリード線(図示せず)により接続され、制御基板106の指令により、誘導加熱コイル108L、108Rへの電力供給が制御される。また、外郭板金101の段差105には、複数の取付板金102がネジで締結されており、取付板金102のそれぞれが上記のように絶縁用キャップ100の上に載せられている。
この加熱調理器1は、本体の外郭を形成する外郭ケース90の前後方向の最大長さLTが、500mm、左右方向の横幅が650mm、厚さは(トッププレート93の厚みを含まず)70mmである。なお、前記最大長さLTは、前記額縁状枠板95の外形寸法によって定まる。
次に、調理器用支持装置110について説明する。
この調理器用支持装置110(以下、「支持装置」という)は、前述したような据置型の加熱調理器1を厨房家具2の上面において使用する場合に利用される。例えば、ガスバーナを備えたガステーブル(「ガスコンロ」ともいう)の使用を止め、その使用場所に実施の形態4のような、据置型の加熱調理器1を置いて使用する場合、隣接する設備や器具等との位置関係を保つために、この支持装置110を使用すると便利である。
支持装置110は、前面に大きな開口を備えた箱形状の収納庫111と、この収納庫の前方の開口を開閉自在に覆うカバー(扉体)30とによって構成されている。
前記収納庫111の内部空間が、実施の形態1でいう収納室21に相当する。また前面開口は挿入口22に相当する。
収納庫111全体は、プラスチックの一体成型で形成しても良く、あるいは数枚の金属製の薄板をネジや溶接等で結合して形成しても良い。
113は、収納庫111の天井面111T(21T)を上方向から下方に凹ませた凹部であり、加熱調理器1を実質的に支持する支持部である。この凹部の平面的な大きさ(縦・横寸法)は、加熱調理器1の底板90Aの縦・横寸法よりも若干大きく形成されている。なお、支持部113の深さは、加熱調理器1の底部に実施の形態3で示したような高さ20mm程度の脚120があることも考慮し、少なくとも20mm程度に形成しておけば、厨房家具2の設置面2Pを基準にした最大設置高さH2を高くせずに済む。
図17では、底板90Aと天井面111Tとの間に空隙SP8が形成されているように図示されているが、この空隙は必須ではなく、底板90Aが天井面111Tに密着しても良い。GP1は、後述するカバー30の上端面と、加熱調理器1の枠板95下面との間に確保される空隙である。
図17において、GP2は、後述するカバー30の内側面と、加熱調理器1の枠板95直下の外郭ケース90の最も前方側の正面壁との間に形成される空隙である。GP3は、同じくカバー30の内側面と収納庫111の最も前方の正面壁との間に形成される空隙である。前記2つの空隙GP2、GP3は、必須ではない。例えば、後述するカバー30の内側の面が収納庫111(収納室21)の挿入口22の口縁部に前方から接触した状態になることで、挿入口22を閉鎖する構成にする場合、前記空隙GP3を、実質的にゼロにすることになる。
図17に示すように、底板90A下面に突出する複数の脚117を設けて、加熱調理器1を支持させる構成にしている場合には、そのような脚117の位置を前提にして、収納庫111の天井面111Tには、前記脚117が入る受け部118を一体成型、または別部材で形成して固定しておき、この受け部118の穴118Aに前記脚117が入ることにより、脚117の水平方向(前後方向、左右方向など)の移動を受け部118で阻止するようにしても良い。このようにすれば加熱調理器1が不用意に、あるいは地震等で水平方向に移動することを防止できる。また前記脚117や受け部118により、加熱調理器1は収納庫111の上面に密着することなく載置しておける。なお、図17では、脚117と受け部118は、1個所分しか図示していないが、離れた複数個所に設けると良い。
114は、カバー30の下端部を開閉自在に軸支するヒンジ金具であり、収納庫111に固定されている。115は、ヒンジ金具114に設けた軸であり、カバー30の回動中心となる。116は、収納庫111の底面に取り付けた複数個の脚である。2Pは、前述したように厨房家具2の設置面である。
前記空隙GP1は、前記軸115の位置によって定まる。空隙GP1は、前記カバー30の上端面と、加熱調理器1の枠板95下面との間に一定(例えば数mm)程度の確保されるため、カバー30の開閉は、前記枠板95と接触することなく円滑に行える。言い換えると、この空隙GP1は、前記カバー30が開放動作することを可能にする空隙である。なお、この空隙GP1の大きさは、カバー30が前後方向に水平のまま移動して収納室21を開放する形態である場合には、数mm未満、例えば1mm程度まで狭めることは可能であるが、軸115を中心に回動する場合には、カバー30の最上面が図17に示したような平面であると、回動を許容するため、一定の限界がある。何れにしても、前記空隙GP1は、正面から見た場合、加熱調理器1と支持装置110の間で目立つ存在ではなく、厨房家具2の上で美観を損なう存在にはならない。
図17に示しているように、前記カバー30の高さ寸法H1は、前記挿入口22を覆うだけではなく、その挿入口22を閉鎖した状態で、加熱調理器1の外郭ケース90の前方側も覆うような大きさにしてある。
言い換えると、前記カバー30は、外郭ケース90の前面全体を覆うよう、その外郭ケース90の前面の投影面積より僅かに大きく、あるいは略同等な大きさにしてある。これにより、厨房家具2の前方側にて調理する使用者等から見て、前記挿入口22が通常(カバー30を開放していない状態)では目視できない状態にすることができる。これにより前記カバー30の存在により、加熱調理器1の前方側の意匠的な外観イメージを向上させることが期待できる。
図17に示しているように、カバー30の内側と、外郭ケース90の前方にある吸気口91との間には、外郭ケース90の左右側面方向に連通した空隙SP9が確保されている。従って、前記カバー30が挿入口22を閉鎖した状態であっても、前記吸気口91が塞がれることはなく、常に吸気風路が確保される構造である。
図17に示しているように、支持装置110は、内部の収納庫111の開口(挿入口)22を開閉自在に覆うカバー(扉体)30を含めた前後方向の最大長さLPが、加熱調理器1の本体の外郭を形成する外郭ケース90の前後方向の最大長さLT(500mm)と同等か、それよりも小さくなるように設計されている。このため、この支持装置110の前後方向の最大長さが大きすぎて、厨房家具2の上に設置できず、結局加熱調理器1を置けないという事態が避けられる。
さらに、この図17に示しているように、支持装置110の前後方向の最大長さLPが、加熱調理器1の本体の外郭を形成する外郭ケース90の前後方向の最大長さLTと同等か、それよりも小さくなるように設計されていることは、輸送上も利点がある。すなわち、加熱調理器1を単体で販売する場合に備えて、加熱調理器1を1つの外装箱に入れて販売し、使用者の居宅まで配送することを想定し、段ボール製の外装箱の中に加熱調理器1を入れ、発泡スチロール等のクッション材で上下・左右を保護するような形態を採用する。また支持装置110も単独で販売することを想定し、同様に専用の外装箱の中に梱包するが、これら両者の最大長さが同等であると、外装箱の手配や輸送、物流倉庫での保管等において、同様に取り扱えるため、便利である。
また、加熱調理器1と支持装置110をセットにして(組にして)1つの外装箱に梱包する場合も、それら両者の長さが同等であると、外装箱の設計やクッション材等の選定も共通化でき、コスト面でも有利となる。
なお、図17に示した収納庫111には、実施の形態1で説明した受け皿26に相当するものが図示されていないが、当然ながらそのような受け皿26に相当する部材を設けても良い。また収納庫111の内部空間を、例えば仕切り板や網板等で上限に複数段に仕切ったり、左右方向に複数の部屋に仕切ったりしても良い。
実施の形態4の総括.
以上の説明から明らかなように、この実施の形態4の加熱調理器1と支持装置110は、以下の特徴的な構成を備えていた。
すなわち、この実施の形態4の調理器セットは、
外郭ケース90に冷却用空気の導入口(吸気口)91と排気口92を備えた加熱調理器1と、
前記加熱調理器1を支える支持装置110と、を備え、
前記支持装置110は、上面に前記加熱調理器1を載置する上面を有した支持部(凹部)113を備え、内部空間に収納室21を形成した箱型形状の収納庫111と、前記収納庫111の前面側にある挿入口22を開閉自在に覆うカバー30と、を具備し、
前記カバー30は、前記挿入口22前方を覆った状態で同時に外郭ケース90の前面側を覆う大きさを有している構成である。
この構成のため、収納庫111の支持部113の上に加熱調理器1を載置した状態では、収納庫111のカバー30が加熱調理器1の外郭ケース90の前方を覆い、吸気口91等の存在を前方から直接見えない状態にできるから、使用状態での外観イメージを向上させることができる。
なお、収納室21を設けたことによる効果は、実施の形態1と同等のものが期待できるので、詳しい説明は省略する。
この実施の形態4の加熱調理器1と支持装置110は、以下の特徴的な構成を備えていた。
すなわち、この実施の形態4の調理器セットは、
外郭ケース90に冷却用空気の導入口(吸気口)91と排気口92を備えた加熱調理器1と、
前記加熱調理器1を支える支持装置110と、を備え、
前記支持装置110は、上面に前記加熱調理器1を載置する支持部(凹部)113を備え、内部空間に収納室21を形成した箱型形状の収納庫111と、前記収納室21の前面側にある挿入口22を開閉自在に覆うカバー30と、を備え、
前記加熱調理器1の導入口(吸気口)91は、前記挿入口22前方を覆った状態の前記カバー30と、前記外郭ケース90前面との間に形成された空隙SP9に臨ませている構成である。
この構成のため、収納庫111の上に加熱調理器1を載置した状態では、収納庫111のカバー30が加熱調理器1の外郭ケース90の前方を覆い、吸気口91等の存在を前方から直接見えない状態にできるから、使用状態での外観イメージを向上させることができる。
また導入口(吸気口)91の前方には、空隙SP1が確保されるので、加熱調理器1の吸気風路を確保できる。
なお、収納室21を設けたことによる効果は、実施の形態1と同等のものが期待できるので、詳しい説明は省略する。
この実施の形態4の支持装置110は、以下の特徴的な構成を備えていた。
すなわち、この実施の形態4の支持装置110は、
上面に加熱調理器1を載置する支持部(凹部)113を備え、内部空間に収納室21を形成した箱型形状の収納庫111と、
前記収納庫111の前面側にある挿入口22を開閉自在に覆うカバー30と、を備え、
前記カバー30は、前記挿入口22前方を覆った状態で同時に前記加熱調理器1の外郭ケース90の前面側を覆う大きさを有している構成である。
この構成のため、収納庫111の上に加熱調理器1を載置した状態では、収納庫111のカバー30が加熱調理器1の外郭ケース90の前方を覆い、吸気口91等の存在を前方から直接見えない状態にできるから、使用状態での外観イメージを向上させることができる。
なお、収納室21を設けたことによる効果は、実施の形態1と同等のものが期待できるので、詳しい説明は省略する。
この実施の形態4の支持装置110は、以下の特徴的な構成を備えていた。
すなわち、この実施の形態4の支持装置110は、
上面に加熱調理器1を載置する支持部(凹部)113を備え、内部空間に収納室21を形成した収納庫111と、
前記収納庫111の前面側にある挿入口22を開閉自在に覆うカバー30と、を備え、
前記カバー30は、前記挿入口22前方を覆った状態で同時に前記加熱調理器1の外郭ケース90の前面側を覆う大きさを有し、
前記収納庫111は、前記加熱調理器1の最後縁よりも突出しないよう、前記カバー30を含めた前後方向の最大長さLPが、加熱調理器1の本体の外郭を形成する外郭ケース90の前後方向の最大長さLT(500mm)と同等か、それよりも小さくなるように設定されている。
この構成のため、収納庫111の上に加熱調理器1を載置した状態では、収納庫111のカバー30が加熱調理器1の外郭ケース90の前方を覆い、吸気口91等の存在を前方から見えない状態にできるから、使用状態での外観イメージを向上させることができる。
また加熱調理器1を置くスペースが狭くとも、収納庫111が、加熱調理器1の設置の障害となることはなく、加熱調理器1の使用者の利便性を向上させることができる。
なお、収納室21を設けたことによる効果は、実施の形態1と同等のものが期待できるので、詳しい説明は省略する。また、支持部113は、加熱調理器1が載置される上面が、周縁部を除いて全体が一段凹んだ凹部形状であったが、上面全体が平坦な面であっても良い。
実施の形態5.
図18は、本発明の実施の形態5に係る加熱調理器と、調理器用支持装置と、これらの両者から構成される調理器セットとを示すものである。図19は、その縦断面図である。図20は、図18の誘導加熱調理器と調理器支持装置を厨房家具の上に設置した例を示す斜視図である。
この実施の形態5では、加熱調理器1に特徴がある。またその加熱調理器1を載置するための調理器用支持装置にも特徴がある。なお、図1〜図11と同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
図18において、この実施の形態5の加熱調理器は、実施の形態1とは異なり、テーブル等の上面に置かれて使用される据置型専用の調理器として設計されたものである。誘導加熱部を左右2個所に備えた2口タイプの調理器である。
この実施の形態5も、実施の形態4と同様な課題を解決するものであり、使用者の利便性を向上させた加熱調理器、加熱調理器の支持装置、加熱調理器とのセットを提案することを目的としている。
この加熱調理器1は、本体の外郭を形成する外郭ケース90を備えている。この外郭ケース90は、例えば金属製のケースから構成されている。外郭ケース90の底面を構成する底板90Aの前方(図19では左側)には本体内部に冷却風を取り込むための吸気口91L、91Rが、左右に離れて2個所設けられており、外郭ケース90の後方(図19では右側)の後面(背面)には、外郭ケース90内部に取り込んだ冷却風を外部に排出するための排気口92L、92Rが、左右に離れて2個所設けられている。
前記吸気口91L、91Rと排気口92R、92Lは、それぞれが使用者の指先等が入らないように細いスリット状、又は細かい網目状に形成されている。以下、吸気口91R、91Lを総称する場合、統一符号は「91」を用い、また排気口92L、92Rを総称する場合、統一符号は「92」を用いる。
外郭ケース90は、複数の金属製薄板を相互に結合して上面が開放された有底箱状に形成されており、その底面を構成する底板90Aは正方形又は前後方向に少し長い長方形を呈している。奥行寸法LTは500mm、横幅寸法WYは650mm程度である。また厚さHT1(図19参照)は70mmである。前記横幅寸法WYは、図20で説明する厨房家具2の設置面2Pの最大横幅寸法XWよりも狭い。
外郭ケース90の上方には、調理物を載置するための耐熱ガラス製のトッププレート93が設けられている。外郭ケース90の内部には、前記吸気口91R、91Lの真上の位置に、その吸気口91L、91Rからそれぞれ吸気して外郭ケース90内部に冷却風を送風するための第1の送風機94が2つ設置されている。94Rは右側の送風機、94Lは左側に設置された送風機である。以下、送風機94L、94Rを総称する場合、統一符号は「94」を用いる。
94Mは、その2つの送風機のモータであり、それぞれがプラスチック製の支持部材88に支持されている。この支持部材は、送風機94の風の流れを妨げないように、縦断面形状が逆U字形の1本の柱であり、その両端部が前記底板90Aに固定されている。なお、図18では、支持部材88は図示していない。
トッププレート93の外周側には、金属製の額縁状枠板95が設けられ、トッププレート93と枠板95とは、シリコン接着材(図示せず)にて接着されている。送風機94の直ぐ横には、この周囲を平面的にみて半周程度囲むように案内板58Aが設けられている。なお、図18では、左側に設置された送風機94Lのための案内板58Aは図示していない。58Bと58Cは、前記案内板58Aと連続するように形成された案内板であり、これら3つの案内板により、右側の送風機94Rと左側の送風機94Lの周囲には、個別の送風路が区画形成されている。
前記送風機94L、94Rから排気口92の間は、途中で合流しないような別個の(並列関係の)冷却風路となっており、案内板58B、58Cの後端縁は、前記排気口92のある外郭ケース90の背面壁に接触するように設置されている。送風機94から排気口92に至る途中(外郭ケース90の内部空間)に、誘導加熱コイル8L、8Rと、コイルベース32と、そのコイルベースの下面に取り付けた複数個のフェライト121と、コイルベース32の外側を近接して取り囲む形状を有した防磁リング(図示せず)とを備えた誘導加熱部が、それぞれ設置されている。
前記2つの冷却風路の中には、前記誘導加熱コイル8に対して高周波電力を供給するインバーター回路を実装した制御基板106が水平に設けられている。この制御基板の上面側と下面側の双方に、送風機94からの冷却風が通過し、制御基板上の各種発熱部品(例えば、高周波電力制御用の半導体スイッチング素子)が冷却される。
コイルベース32は、電気絶縁性で耐熱性の高いプラスチック製の支柱(図示せず)で支持されており、コイル8がトッププレート93に出来るだけ接近するように、圧縮バネ(図示せず)によってコイルベース32は常に押し上げられている。
122は、前記トッププレート93の前方側上面に形成された操作部であり、使用者が指等で軽く触れた時の静電容量の変化を利用して入力できる方式の各種入力キー131L、131Rを、横方向に一直線状に配置している。123は、その操作部用の各種電子部品で、支持基板124の上に配置されている。132は、主電源スイッチの操作ボタン又は操作キーである。
この加熱調理器1は、本体の外郭を形成する外郭ケース90の前後方向の最大長さLTが、500mm、左右方向の横幅が650mm、厚さHT1は(トッププレート93の厚みを含めて)70mmである。
図19において、HMは、実施の形態1で説明したように、加熱コイル108R(8R)から収納室21の上壁面(天井面)21Tまでの間隔である。この間隔は、加熱コイル8から磁気的な影響を受けることを低減させるために設けてあり、最低でも50mm、好ましくは60mm以上離れた位置となるように設定されている。実際にこの実施の形態5では、間隔HMは65.9mmである。なお、上述したように、この加熱調理器1では、外郭ケース90の厚さHT1は(トッププレート93の厚みを含めて)70mmであり、加熱コイル108Rから底板90Aまでの間隔は60mmであるため、底板90Aの下面に収納室21(後述する収納庫111)が密着しても、上記した最低条件は満たされる。後述する空隙SP8の大きさも約10mmであるため、この図19の実施形態では、間隔HMを上記のように65.9mm確保できている。
次に、調理器用支持装置110について説明する。
この調理器用支持装置110は、前述したような据置型の加熱調理器1を図19に示したような厨房家具2の上面において使用する場合に利用される。
支持装置110は、前面に大きな開口を備えた箱形状の収納庫111と、この収納庫の前方の開口を開閉自在に覆うカバー(扉体)30とによって構成させている。
前記収納庫111の内部空間が、実施の形態1でいう収納室21に相当する。また前面開口は挿入口22に相当する。なお、この実施の形態5では、収納庫111は1つだけ設けてある。
収納庫111全体は、プラスチックの一体成型で形成しても良く、あるいは数枚の金属製の薄板をネジや溶接等で結合して形成しても良い。
収納庫111の横幅寸法は、前記外郭ケース90の横幅寸法WY(650mm程度)と同等である。後述するカバー30の横幅寸法も、この外郭ケース90の横幅寸法WYと同等に設定されている。
底板90A下面には、実施の形態4で説明したものと同様に複数の脚117を設けてある。なお、この脚117の高さは調節できないものであり、例えば脚117の高さは10mmに統一されている。そのため、空隙SP8の大きさも約10mmである。
前記カバー30は、実施の形態4で示したようなヒンジ金具114(図示せず)と軸115とにより、収納庫111の前方部に開閉自在に支持されている。このカバー30の高さ寸法H1は、挿入口22を覆うだけではなく、その挿入口22を閉鎖した状態で、加熱調理器1の外郭ケース90の前方側も全面的に覆うような大きさにしてある(図19参照)。
前記カバー30の横幅寸法は、加熱調理器1を正面から見た場合の横幅全体と略同じにしてある。言い換えると、加熱調理器1を正面(図19においては、左側)から投影した場合、その投影の範囲を全てカバーする形状と大きさを有している(図20参照)。
図19に示しているように、支持装置110は、内部の収納庫111の開口(挿入口)22を開閉自在に覆うカバー(扉体)30を含めた前後方向の最大長さLPが、加熱調理器1の本体の外郭を形成する外郭ケース90の前後方向の最大長さLT(500mm)と同等か、それよりも小さくなるように設計されている。前記最大長さLPは、標準的な厨房家具2の設置面2Pの奥行寸法(前後方向の最大長さ)XTを考慮し、それよりも小さくなるようにしている。なお、前記設置面2Pの奥行寸法XTは550mm〜600mm程度である。
また支持装置110は、脚116と受け部118を除いた最大高さ寸法HT2が120mm程度である。従って脚116を除いた最大高さ寸法HT3が、200mm程度である。日本の一般家庭用では180mm〜200mm程度に設定しておくと、多くの家庭のキッチンの中で違和感なく設置して使用できる。例えば、図20に示しているように、厨房家具2では設置面2Pの隣に水槽2C等を配置している関係で、高さ寸法XHの垂直壁2Wを備えている。なお、垂直壁2Wの高さ寸法XHは、例えば200mmである。
125は、収納室21の上壁面(天井壁)に形成した2つの排気孔であり、それぞれが使用者の指先等が入らないように細いスリット状、又は細かい網目状に形成されている。この2つの排気孔の位置は、加熱調理器1の2つの吸気口91L、91Rに向かい合うよう、2個所に設定されている。なお、この排気孔125を設けた範囲は、前記吸気口91の範囲に対応している。
126は、収納室21の中を上下2段に区切る仕切り板であり、金属又はプラスチック製であり、全体的に多数の通気孔126Aが形成されている。127は、同様に収納室21の後壁面21Bに複数形成した通気孔である。仕切り板126は、調理器具9〜11や、その他の物品を載せる棚として使用できる。
前記仕切り板126は、カバー30と連結され、カバー30の開放動作に伴って収納室21から前方に引き出される構成にしてあるが、このように引き出されず、常に収納室21の所定位置にあるものでも良い。
128は、前記カバー30の内側から下面に向けて連続した連通孔であり、カバー30の外側の空間から収納室21の内部へ空気が導入される通路となる。
図19において129は、誘導加熱源107を構成する誘導加熱コイル108R(8R)、108L(8L)からの磁気的影響を極力軽減するための磁気シールド板であり、収納庫111の天井面111Tの内側(下面)に設置されている。図19では、この磁気シールド板129は、破線で示しているが、誘導加熱コイル108R(8R)、108L(8L)の真下の位置を含み、可能なかぎりその周辺までも含むような平面積を有することが望ましい。なお、磁気シールド板129は、収納庫111の天井部分に、例えば金属製スプーンやその他磁性金属製の物品が収納された場合、そのようなスプーンやその他物品が誘導加熱コイル108R等で加熱されることがないように設けたものである。磁気シールド板129は、収納庫111の中の物品収納構造や前記仕切り板126の位置等によっては、省略しても良い。
前記磁気シールド板129は、例えば金属製板(アルミニウム製板や磁性金属製板など)、導電性を有したゴム、導電性のあるプラスチック板等から構成されている。
図18、図19に示した収納庫111には、実施の形態1で説明した受け皿26に相当するものが図示されていないが、当然ながらそのような受け皿26に相当する部材を設けても良い。また収納庫111の内部空間を、例えば左右方向に複数の部屋に仕切る構成にしても良い。
図19において、GP2は、カバー30の内側面と、加熱調理器1の枠板95前面又は外郭ケース90の前面との間に形成された空隙である。この図19では、空隙GP2は一定の大きさで形成されているように図示されているが、この空隙は必須ではなく、カバー30を加熱調理器1の枠板95前面や外郭ケース90前面に接触させることで実質的にゼロにすることは可能である。
前記空隙GP2は、カバー30が図17に示したようなヒンジ金具114と軸115とによって収納庫111側に支持され、回動する形態であっても、または前後方向にレール等に支持されて移動する形態であっても、数mm未満の狭い空隙にすることは可能である。一般的に、使用者がキッチンで加熱調理器1を見る場合の視線は、図19に矢印VPで示しているように、空隙GP1の真上方向からではなく、斜め上方からであるため、前記空隙GP2は、使用者の目線で見た場合でも、加熱調理器1と支持装置110の間で目立つ存在ではなく、厨房家具2の上で美観を損なう存在にはならない。
加熱調理器1の正面方向(図19では左方向)から加熱調理器1と支持装置110を見た場合には、カバー30が加熱調理器1の正面全体まで覆う存在であり、厨房家具2の上方で最大設置高さH2まで一連に覆っているので、加熱調理器1と支持装置110まで含めた平面感を損なうことがないデザインを実現できる。
実施の形態5は、以上の構成であるため、加熱調理器1を運転中に、第1の送風機94が運転されると、外郭ケース90の内部空間に、矢印で示すような冷却風の流れが発生する。これに伴って、収納庫111の収納室21の中の空気が外郭ケース90側に吸引される。すると収納室21でも連通孔128を介してカバー30の外側から新鮮な空気が次々に導入され、また通気孔126A、127からも室内の新鮮な空気が導入される。これにより、収納室21は、仮にその一部又は全部が磁性金属製であっても、その温度上昇が抑制される。
以上のように、この実施の形態5では、支持装置110である収納庫111に専用の送風機を設けなくとも、加熱調理器1の内部空間を冷却する第1の送風機94の運転によって、収納庫111の収納室21内部も冷却される。これにより、専用の送風機を収納庫111に設置することを省略でき、構造も簡略化でき、またコスト的にも有利となる。
さらに、加熱調理器1は、実施の形態3で図示したように、厨房家具2の設置面2Pの上に置かれた支持装置110の上で使用できるので、利用範囲が拡大するという利点がある。
なお、収納室21を設けたことによる効果は、実施の形態1と同等のものが期待できるので、詳しい説明は省略する。
なお、2つの送風機94L、94Rは、常に同時に運転されるものではなく、その近傍にある加熱コイル8R又は8Lの駆動時に運転開始され、またそのコイルの駆動が終了しても、まだそのコイルは高温の状態であるから、少なくとも数分間は空冷のための運転が継続される。
さらに、この実施の形態5では、実施の形態4(図17)に示したものと同様に、支持装置110の前後方向の最大長さLPが、加熱調理器1の本体の外郭を形成する外郭ケース90の前後方向の最大長さLTと同等か、それよりも小さくなるように設計されているため、輸送・保管上でも、製造でも利点がある。すなわち、加熱調理器1を単体で販売する場合に備えて、加熱調理器1を1つの外装箱に入れて販売することを想定し、段ボール製の外装箱の中に加熱調理器1を入れて梱包する場合でも、加熱調理器1と支持装置110をセットにして(組にして)1つの外装箱に梱包する場合でも、それら両者の長さが同等であると、外装箱の設計やクッション材等の選定も共通化でき、コスト面でも有利となる。なお、実施の形態5では、横幅寸法も同等であるので、上記した効果的は大きい。なお、このような梱包の面での利点を享受するには、「同等」(寸法)とは、加熱調理器1の外形寸法から見て、プラス・マイナス3cmが好ましい。例えば、加熱調理器1と支持装置110の前後方向の最大長さの差は、最大で6cm以下が好ましい。支持装置110の前後方向の最大長さLPを過大にすると、厨房家具2の設置面2Pの範囲に収まらず、厨房家具2の手前(使用者側)に突出することになるので、好ましくない。
実施の形態5の総括.
この実施の形態5の加熱調理器1と支持装置110は、以下の特徴的な構成を備えていた。
すなわち、実施の形態5の調理器セットは、
冷却用空気の吸気口91と排気口92を備えた加熱調理器1と、
前記加熱調理器1を支える収納庫111(支持装置110)と、を備え、
前記収納庫111は、上面に前記加熱調理器1を載置する支持部113を備え、内部空間に収納室21を形成した外郭ケースと、前記外郭ケースの前面側にある挿入口22を開閉自在に覆うカバー30と、を備え、
前記加熱調理器1の吸気口91は、前記収納庫111の上壁面21Tに設けた排気孔125と対応した位置に設定している構成である。
以上の構成であるため、支持装置の収納庫111に専用の送風機を設けなくとも、加熱調理器1の内部空間を冷却する第1の送風機94の運転によって、収納庫111の収納室21内部も冷却される。これにより、専用の送風機を収納庫111に設置することを省略でき、構造も簡略化でき、またコスト的にも有利となる。
さらに、加熱調理器1は、実施の形態3で図示したように、厨房家具2の上面の上に置かれた支持装置の上で使用できるので、利用範囲が拡大するという利点がある。
実施の形態5の変形例1.
実施の形態4と5に示したような、収納庫111の上に加熱調理器1を載せて使用するタイプの場合、加熱調理器1の運転時に、前記送風機94のファンの回転振動が中空の箱型形状の収納庫111に伝達されて振動音、異音を発生する懸念があるが、前記脚117や受け部118を、ゴム等の弾力性に富む材料(防振材)で形成すれが、そのような懸念を解消できる。また前記脚117や受け部118に加えて、又はそれに代えて、収納庫111の天井面にゴム等の弾力性に富む材料(防振材、緩衝材ともいう。以下、「防振材」と呼ぶ)の薄い板を貼りつけても良い。
図21は、上記のような防振材を設ける方法を採用した実施の形態5の変形例1を示したものである。
図21において、この変形例は、収納庫111の天井面111T(21T)の上を防振材で覆ったものである。数mm以下の厚さの防振材のシートを収納庫111に貼りつけている。
133Aは、通気口であり、前記排気孔125と対応した位置に同様な大きさで形成している構成である。なお、脚117と受け部118は全く設けていない。
この構成であるため、加熱調理器1を収納庫111の上に載せた場合、その底板90Aは、加熱調理器1の重量によって防振材のシートの上面に密着状態となる。
以上の構成であるため、支持装置の収納庫111に専用の送風機を設けなくとも、加熱調理器1の内部空間を冷却する第1の送風機94の運転によって、収納庫111の収納室21内部も冷却される。これにより、専用の送風機を収納庫111に設置することを省略でき、構造も簡略化でき、またコスト的にも有利となる。
また、加熱調理器1の吸気口91と前記排気孔125との間に、空隙SP8が殆ど存在しない状態で、連通するので、吸気口91に吸引される空気は、殆ど全てが収納庫111の排気孔125から吸引された空気となるため、収納庫111の内部の空気が、より効果的に加熱調理器1に導かれ、新鮮な外気が収納庫111に導入されることになる。つまり、実施の形態5のものに比較して外部からの空気導入性能、冷却性能が向上するという効果が期待できる。
実施の形態5の変形例2.
図22は、収納庫111の上壁面21Tの上に加熱調理器1を載せて使用する場合の変形例2を示すものである。この変形例2は、加熱調理器1の設置位置を確実に固定するため、収納庫111と連結具(固定用の金具等)で連結するところに特徴がある。
図22において、135は、プラスチックで形成された加熱調理器1の外郭ケース90の内側に一体に形成された固定座であり、十分な強度を確保するために、少なくとも縦横ともに数mm以上の大きさで、側壁面の厚さと比較して厚肉に形成されている。この固定座は、外郭ケース90の左右の側壁の内側位置に、少なくとも合計で2カ所設けてある。なお、外郭ケース90を、金属製薄板から形成した場合には、前記固定座135は溶接で外郭ケース90の内側に固定しておけば良い。
136は、前記底板90Aにおいて、前記固定座のある個所に対応して1つずつ形成した挿通孔であり、後述する固定用ネジ(固定用ナット)139が貫通するためのものである。
137は、前記固定座135の中心部に垂直方向に、インサート成型された金属製のネジ受け部である。このネジ受け部137の位置は、図22に示すように外郭ケース90の右側壁面から所定の間隔YNだけ離してある。この間隔YNは、使用者や設置業者等が固定用ネジ(固定用ナット)139のナット頭139Aを指先で持って、それを回転させることができるように考慮して設定してある。
138は、収納庫111の上壁面(天井壁)21Tに、前記挿通孔136に対応して形成した孔、139は、金属製の固定用ネジ(固定用ナット)であり、先端部を除いてその途中からナット頭139Aに近い部分の周面には、前記ネジ受け部137に螺合するネジ山が形成されている。なお、ナット頭は高さ10mm程度である。
140は、厚みは2mm程度の金属製座金であり、前記孔138よりも大きな外径を有したリング状に形成されており、前記固定用ネジ139に嵌めてある。なお、この座金は1枚だけではなく複数枚を重ねて使用しても良く、またバネ座金であっても良い。
図示していないが、外郭ケース90の左側壁面から所定の間隔YNだけ離した位置にも、上述したようなネジ受け部137や孔138が形成されている。また変形例1に示したように、底板90Aと収納庫111の上壁面(天井壁)21Tとの間に、緩衝材133を介在させても良い。
以上の構成であるため、収納庫111の上壁面(天井壁)21Tの上に加熱調理器1の外郭ケース90を適切な位置に置いた場合、図22に示しているように孔138と挿通孔136が垂直方向で向い合う。そこでその孔138に向けて固定用ネジ(固定用ナット)139を収納庫111の内側から上方向へ挿入すれば良い。このとき、外郭ケース90の右側壁面(又は左側壁面)から所定の間隔YNだけ離してあるため、使用者や設置業者等が固定用ネジ(固定用ナット)139のナット頭139Aを指先で持って、孔138や挿通孔136に挿入する場合に、その外郭ケース90の右側壁面又は左側壁面がガイドの役目を果たし、作業が容易に行える。つまり、孔138や挿通孔136は、使用者や設置業者は直接目視できないが、固定用ネジ(固定用ナット)139の先端部を挿入しやすい。
上記設置作業に際に、座金140が外郭ケース90の右側壁面又は左側壁面に軽く当るようにすると、固定用ネジ(固定用ナット)139の位置が、略前記間隔YNだけ離れた所定位置になる。なお、収納庫111の中に、実施の形態1で示したような受け皿(トレイ)26を挿入して使用する場合でも、そのような受け皿の設置や動作に支障はない。つまり、固定用ネジ(固定用ナット)139は、収納庫111の上に加熱調理器1の外郭ケース90を固定した状態では、ナット頭139Aと座金140が収納庫111の上壁面(天井壁)21Tの下に、最大で12mm程度突出するだけだからである。
以上の構成であるため、支持装置の収納庫111に専用の送風機を設けなくとも、加熱調理器1の内部空間を冷却する第1の送風機94の運転によって、収納庫111の収納室21内部も冷却される。これにより、専用の送風機を収納庫111に設置することを省略でき、構造も簡略化でき、またコスト的にも有利となる。
また、加熱調理器1の吸気口91と前記排気孔125との間に、空隙SP8が殆ど存在しない状態で、連通するので、吸気口91に吸引される空気は、殆ど全てが収納庫111の排気孔125から吸引された空気となるため、収納庫111の内部の空気が、より効果的に加熱調理器1に導かれ、新鮮な外気が収納庫111に導入されることになる。つまり、実施の形態5のものに比較して冷却性能が向上するという効果が期待できる。
さらに、加熱調理器1が支持装置110を構成する収納庫111に強固に固定されるため、加熱調理器1を所定の位置に固定したまま使用でき、安定性が増す。また、固定座135は外郭ケース90の内側にあり、また固定用ネジ(固定用ナット)139も、収納庫111の内側空間にあるため、これらが外郭ケース90や収納庫111の外側に露出しない。このため、加熱調理器1の設置場所に接近して隣り合うように、他の厨房家具2がある場合でも、そのような厨房家具2に固定用ネジ139や固定座135が当たる心配もないので、加熱調理器1の設置等によって他の厨房家具の表面を傷付けたりするおそれもない。
固定用ネジ(固定用ナット)139で、加熱調理器1を固定する位置は、収納室21の挿入口22から近い位置で良い。このようにすれば、使用者や設置業者が挿入口22から手を差し込んで固定用ネジ139の締め付け作業を容易にできる。なお、固定用ネジ(固定用ナット)139は、工具を用いず、使用者が指先で回すことで締め付け作業ができるもので良い。そのため、ナット頭139Aの形状を、使用者が指先で摘まめるように、例えば扁平な摘み形状にしても良い。
実施の形態5の変形例3.
図23は、実施の形態5の変形例2を示す要部拡大縦断面図である。図22と同じ部分において、収納庫111側を破線で示している。なお、加熱調理器1の内部の構成部品は、一部図示を省略しており、送風機94も図示していない。
この変形例3は、加熱調理器1側からの排気口92の位置を考慮して収納庫111側の構造を変更したものである。
図23において、92Rは、排気口であり、外郭ケース90の背面(後面)から底板90Aの後部に亘り、一連に形成した排気口である。図17に示したように左側の加熱コイル8Lに対応して排気口92Lがある場合には、その排気口92Lも、このように外郭ケース90の後方の隅角部に形成する。排気口92R(92L)が、何らかの原因で塞がれると、十分な排気量が確保できず、結果的に加熱調理器1の外郭ケース90の内部空間を異常な高温度にしてしまうおそれがある。そこで、この図23のように、外郭ケース90の異なる2つの壁面に排気口92Rを形成することは有効な対策となり得る。
111Sは、収納庫111の天井面111T後部から背面に亘り形成した傾斜部である。この傾斜部は、天井面111Tの横幅全体に形成しても良いが、少なくとも排気口92R(92L)の真下の位置に形成することで良い。
141は、実施の形態5で示した通気孔127と同様に収納室21に複数形成した通気孔である。この通気孔は、収納庫111の前方側底面に形成している。つまり、この通気孔141の位置は、図23に示すように収納庫111の前後方向の中心点OPから見て、前記傾斜部111Sから反対側で、遠い位置である。
以上の構成であるため、支持装置の収納庫111に専用の送風機を設けなくとも、加熱調理器1の内部空間を冷却する第1の送風機94の運転によって、収納庫111の収納室21内部も冷却される。これにより、専用の送風機を収納庫111に設置することを省略でき、構造も簡略化でき、またコスト的にも有利となる。
また、加熱調理器1の吸気口91と前記排気孔125との間に、空隙SP8が殆ど存在しない状態で、連通するので、吸気口91に吸引される空気は、殆ど全てが収納庫111の排気孔125から吸引された空気となるため、収納庫111の内部の空気が、より効果的に加熱調理器1に導かれ、新鮮な外気が収納庫111に導入されることになる。つまり、実施の形態5のものに比較して冷却性能が向上するという効果が期待できる。
さらに、収納室21に形成した通気孔141の位置は、加熱調理器1の排気口92Rから離れるように、収納庫111の背面には形成せず、前方の底部に形成しているので、図22に矢印で示すように排気口92Rから加熱調理器1内部を冷却し、温度上昇した空気が排出されても、その排気流が通気孔141に直ぐに吸引されるということはない。このため、収納庫111の内部には、図23に矢印で示すように、収納庫111の前方下部の空気や、空隙GP2から導入された室内の新鮮な空気が収納庫111の内部へ次々に導入され、加熱調理器1側に供給される。
また、加熱調理器1の排気口92Rが、図23に示すように底板90Aにあっても、傾斜部111Sによって、その排気口92Rとの間隔を大きく確保でき、加熱調理器1からの排気風路が十分に確保されるので、排気流を妨げることがないという利点もある。
加熱調理器1の排気口92Rの直下を避けるように、収納庫111の前後方向長さLPを、加熱調理器1の前後方向の最大長さLTよりも、例えば数cmだけ短くする方法もあるが、そのようにすると収納庫111の内部空間、言い換えると収納室21全体の実質的な前後方向長さ(奥行寸法)も短くなってしまう。
これに対し、上述したように傾斜部111Sを形成する方法によれば、収納庫111の最も奥側の天井面111Tの高さが部分的に小さくなるだけであり、収容する物品の長さが、図19に示した実施形態に比較して制約されるという影響も殆どない。
その他の実施の形態.
実施の形態1では、カバー30、44が、下部ケース3Uに取り付けられると説明したが、これは、加熱調理器1をメーカが出荷する時点で、下部ケース3Uに必ず取り付けてあるという意味ではない。厨房家具2への設置作業が円滑にできるように、また設置作業の過程でカバー等の装飾部品が厨房家具2に当って破損したり、傷が付いたりしないようするため、例えば下部ケース3Uや上部ケース3Tの少なくとも前面には、廃棄して良いような「保護シート」や「保護パネル」という緩衝材、保護部材を取り付けて出荷しても良い。そして、加熱調理器1の販売店や設置会社の作業者が、図11に示したような厨房家具2の中へ、加熱調理器1を水平に挿入した後で、上記のような「保護シート」や「保護パネル」を取り外し、その後でカバー30、44を取り付けることが良い。そのため、本発明の実施の形態1においても、上記のようなカバー30、44を、加熱調理器1を格納する梱包箱に、一緒に入れて出荷すれば良い。
また、実施の形態4、5で示したような加熱調理器1と支持装置110が、必ずしもセットで必要ない場合には、加熱調理器1の販売と支持装置110の販売は別個になり、支持装置は例えばオプション品で設定される。このような場合には、例えば、加熱調理器1と支持装置110のセットの梱包と、支持装置110又は加熱調理器1の梱包形態を別に設定しておけば、購入者の利便性を損なうことがない。
実施の形態1では、収納室21が下部ケース3Uの中央から左側に位置していたが、これを左右逆にし、右側に設けても良い。また収納室21の内部空間を、2つ以上に仕切れるようにし、その全ての前方側挿入口を1枚のカバー30で開閉するようにすれば、1枚のカバー30の開放で、全ての収納室21の内部が前方に開放でき、調理器具9やその他調味料、食料品、雑貨等の格納と取り出しが更に容易になる。
また収納室21は、その内部を複数に区画する場合、仕切板や通気性のある網や枠で2つ以上に分けて使うようにしても良い。つまり、この収納室21は、例えば第1の調理器具9を収納できれば良いので、余った空間を他の調理器具や調理用の小物備品等の収納に利用して良い。
実施の形態1では、第1の調理器具9が、ステンレスや鉄等の磁性金属製の皿部9Aと、この皿部の上方を覆う耐熱ガラス製の蓋体9Bと、から構成されていたが、この構成を変更しても良い。例えば、1つの皿部9Aに、ガラス製の蓋体9Bと、鋳物等の金属製蓋体とを用意しておき、加熱調理の種類に応じて使用者が使い分けるものでも良い。金属製の蓋体は、例えば炊飯のような加熱調理に伴う圧力上昇によって蓋体が簡単に持ち上がってしまう場合に使用する。つまり、蓋体自体が重いので、炊飯中に不用意に開いてしまうことがない。
また皿部9Aに蓋体9Bをロックできるように、皿部を支点として回動する掛け金を設けて、調理中は、蓋体9Bを開かないように固定する構造でも良い。
また必ずしも調理器具9には、蓋体9Bが無いものであっても良い。また、収納室21に調理器具9を収容する場合、皿部9Aに蓋体9Bを(調理時と同じ向きで)載せて格納できなくとも良い。例えば、蓋体9Bを逆さ(裏返し)にして、その状態で収納しても良い。このようにした方が、調理器具9の全体の高さが低くなり、狭い収納室21でも収容できることになる場合があるが、それは蓋体9Bと皿部9Aの大きさや形状に依存する。
第1の調理器具9の金属製皿部9Aの表面全体に、黒色のセラミックコーティングを施しても良い。そのようなセラミックコーティングによって遠赤外線効果が期待できるので、炊飯やその他調理を更に内部まで加熱することができ、美味しい料理を作ることができる。
以上の説明では、加熱調理器1の代表例として、誘導加熱調理器の場合で説明したが、赤外線ヒータやラジエントヒータ等の各種電気ヒータで鍋を加熱する加熱調理器や、ガス燃焼の炎で加熱するガス調理器具等でも良い。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の実質的な範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図されている。