実施の形態1.
以下、実施の形態に関わる裏面入射型受光素子の製造方法ついて図を用いて説明する。図1は、本実施の形態に関わる裏面入射型アバランシェフォトダイオード200の断面構造を示している。同図において、裏面入射型アバランシェフォトダイオード200は、化合物半導体基板101の表面側に、エピタキシャル成長層110(半導体層)、アノード電極106、カソード電極107、ガードリング溝105を備えている。また、裏面入射型アバランシェフォトダイオード200は、化合物半導体基板101の裏面側に、凸型のレンズ111を備えている。凸型のレンズ111は、レンズ保護膜112(ARコート膜)で表面が覆われている。
化合物半導体基板101の裏面側は、裏面電極115(メタル膜)で保護されている。エピタキシャル成長層110は、InPバッファ層91、AlInAs増倍層92、p型InP電界緩和層93、InGaAs光吸収層94、AlInAs窓層95、InP窓層96、InGaAsコンタクト層97などから構成されている。裏面入射型アバランシェフォトダイオードでは、基板の裏面から入射した光180は、ガードリング溝105で囲まれている内周部を通過し、受光領域104(受光部)で検出される。受光領域104(受光部)は、化合物半導体基板101の表面側に設置され、ガードリング溝105で囲まれている。
凸型のレンズ111は、裏面入射型アバランシェフォトダイオードにおいて、集光性を高める役割を担っている。アノード電極106とカソード電極107は、はんだ等の密着材を介して、サブマウント150と電気的に接続されている。受光領域104(受光部)は、化合物半導体基板101の表面側に形成されている。アノード電極106は、受光領域104(受光部)の上に形成され、この受光領域104と電気的に接続されている。カソード電極107は、ガードリング溝105で、化合物半導体基板101と電気的に接続されている。
図2は、前述した裏面入射型アバランシェフォトダイオードの製造方法を概略的に示しているフローである。ステップS01において、化合物半導体基板101の表面に、InPバッファ層91、AlInAs増倍層92、p型InP電界緩和層93、InGaAs光吸収層94、AlInAs窓層95、InP窓層96、InGaAsコンタクト層97などからなるエピタキシャル成長層110を形成する。エピタキシャル成長は、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)、MBE(Molecular Beam Epitaxy)などを用いて行う。
さらに、受光領域104(受光部)となるpn接合を形成する。受光領域104(pn接合)のp領域は、エピタキシャル成長、または、拡散、イオン注入で形成する。受光部がエピタキシャル成長の場合、受光領域104以外を除去したメサ型のAPD(Avalanche Photo Diode)構造とする。また拡散、イオン注入などで受光部のp領域を形成する場合は、エピタキシャル成長後に、気相拡散もしくは固相拡散で、選択的にp領域を形成して、アバランシェフォトダイオードを作製する。
ステップS02において、化合物半導体基板101の表面側に、ガードリング溝105を形成する(第1の工程)。ガードリング溝105は、レジストパターンを用いて、ドライエッチング、または、ウェットエッチングにより形成する。化合物半導体基板101にn型InPを用いる場合、ドライエッチングでは塩素系ガスまたはメタン/水素系ガスを用いると良い。ウェットエッチングでは、塩酸系のエッチング液または臭化水素系のエッチング液を用いると良い。化合物半導体基板101に達するガードリング溝105は、リーク電流を抑制し、カソード電極引き出し用の役割を果たす。
ステップS03において、化合物半導体基板101の表面側に、アノード電極106と、カソード電極107を形成する。アノード電極106とカソード電極107の材料は、エピタキシャル成長層110とオーミックコンタクトできる材料を選択する。例えば、エピタキシャル成長層110に、InGaAs、InPなどを用いた場合には、電極材料として、Ti/Auを形成すると良い。電極のパターニングは、レジストパターンを用いて、リフトオフ、エッチングなどにより行う。
ステップS04において、化合物半導体基板101を裏面側から研削して基板を薄板化する。化合物半導体基板101の研削は、機械加工、ウェットエッチングなどにより行う。機械加工には、砥石、スラリーなどを用いる。ステップS05において、化合物半導体基板101の裏面に、凸型のレンズ111を形成する。レンズ111を形成するステップS05の詳細は、後述する。
ステップS06において、化合物半導体基板101の裏面に、レンズ保護膜112(ARコート膜)と裏面電極115を形成する。レンズ111の表面を覆うレンズ保護膜112の材料は、メタル膜でも絶縁膜で良い。レンズ111の表面を絶縁膜で覆う事で、光の反射率を調整しても良い。ステップS07では、裏面入射型アバランシェフォトダイオードのアノード電極106およびカソード電極107を、はんだ等の密着材を介してサブマウント150と接続する。
つぎに、図3を参照して、裏面入射型アバランシェフォトダイオードにおける、レンズ111の形成方法を詳細に説明する。なお、図4Aから図4Dは、レンズ111の形成過程を図示している。ステップS051において、化合物半導体基板101の裏面に、メッキ成長防止マスク121(エッチングマスク)を形成する(第2の工程:図4Aを参照)。メッキ成長防止マスク121(エッチングマスク)には、有機樹脂からなるレジスト、または、SiN、SiOなどの絶縁膜を用いる。ガードリング溝105で囲まれている受光領域104の上部に、メッキ成長防止マスク121(エッチングマスク)の開口部121aを配置する。
ステップS052において、触媒毒を含む無電解メッキ液を用いて、化合物半導体基板101の裏面上に、テーパー形状を有するメッキメタルマスク122(テーパードメッキメタルマスク)を形成する(第3の工程:図4Bを参照)。テーパー形状を有するメッキメタルマスク122は、メッキ成長防止マスク121(エッチングマスク)でマスキングされていない場所に形成される。テーパー形状を有するメッキメタルマスク122は、メッキ成長停止面が形成されることにより、四角錐形状または台形形状を有している。テーパー角度θhは、メッキメタルマスク122の傾斜角度を表している。
化合物半導体基板101にInP、GaAsなどを用いる場合は、メッキ反応性が高いため化合物半導体基板101にダイレクトにテーパー形状を有するメタルマスクを形成することができる。この場合、無電解メッキを行う前に、金属イオンを含む活性化液に化合物半導体基板101を浸漬しておく。基板上に金属キャタリストを堆積させておくことで、無電解メッキの成長を安定化することができる。一方、化合物半導体基板101にメッキ反応性の低い材料を用いる場合は、無電解メッキの前に基板上に給電層を設けると良い。
触媒毒は、メッキ膜に吸着することでメッキ成長を抑制する機能がある。メッキ成長防止マスク(エッチングマスク)のパターンの端部では触媒毒濃度が高くなるので、メッキ成長が阻害される。一方、パターンの中央部では触媒毒濃度が低くなるので、メッキ成長が進む。これにより、テーパー形状の端部を有する無電解メッキ膜をテーパードメッキメタルマスクとして形成することができる。無電解メッキ液に含まれる触媒毒は、下記の第1物質〜第5物質のいずれかであることが好ましい。
第1物質は、鉛イオン、ビスマスイオン、アンチモンイオン、テルルイオンおよび銅イオンからなる群から選択される少なくとも1種の金属イオンである。第2物質は、硫黄化合物である。第3物質は、窒素化合物である。第4物質は、ポリエチレングリコールである。第5物質は、アセチレン系アルコール(例えばアセチレングリコール)である。第1物質〜第5物質は、0.1〜40mg/Lだけ触媒毒として無電解メッキ液に含まれていることが望ましい。
図5Aから図5Cは、様々なテーパー形状を有するメッキメタルマスク122の例を示している。テーパー形状を有するメッキメタルマスク122は、底部(化合物半導体基板101)から、上部に向かうほど、幅が狭くなっている。図5Aは、メッキメタルマスク122のテーパー形状が四角錐形状(ピラミッド形状)を有することを示している。図5Bは、メッキメタルマスク122のテーパー形状がドーム形状(半球形状)を有することを示している。図5Cは、メッキメタルマスク122のテーパー形状が台形形状を有することを示している。テーパー形状を有するメッキメタルマスク122のテーパー角度θhは、無電解メッキ液中の触媒毒濃度により調整することができる。
例えば、硫酸ニッケルと次亜リン酸ナトリウムからなる一般的な無電解ニッケルメッキ液中に鉛を入れた場合、テーパー角度θhは、次のようになる。無電解ニッケルメッキ液中に、0.5mg/Lの鉛を入れた場合のテーパー角度θhは、35度である。無電解ニッケルメッキ液中に、1.0mg/Lの鉛を入れた場合のテーパー角度θhは、12度である。無電解ニッケルメッキ液中に、1.5mg/Lの鉛を入れた場合のテーパー角度θhは、6度となる。無電解メッキ液の構成および使用条件を変更することによって、上記と異なるテーパー角度θhに変更することもできる。
無電解ニッケルメッキ液が、触媒毒に加えて、メッキ反応を促進するための反応促進剤を含む場合は、テーパー形状が失われる場合がある。この場合、テーパー形状が保持されるように、触媒毒と反応促進剤の濃度を調整する必要がある。具体的には、触媒毒の濃度を反応促進剤の濃度よりも高くすることが好ましい。なお、実際のメッキメタルマスクのテーパー形状は、マスク端面の各箇所において完全に同一の角度になるわけではない。条件次第では、ドーム形状のように途中で角度を変えることもできる。
ステップS053において、メッキ成長防止マスク121(エッチングマスク)を除去する(第4の工程:図4Cを参照)。メッキ成長防止マスク121(エッチングマスク)がレジストの場合は、有機溶剤を用いてメッキ成長防止マスク121(エッチングマスク)を除去すると良い。メッキ成長防止マスク121(エッチングマスク)に、SiO、SiNなどの絶縁膜を用いる場合は、フッ酸系の水溶液を用いてメッキ成長防止マスク121(エッチングマスク)を除去すると良い。
ステップS054において、ウェットエッチングにより化合物半導体基板101およびメタルマスクをエッチングする(第5の工程:図4Dを参照)。ウェットエッチングでは、メッキメタルマスクをサイドエッチングで減退させながら化合物半導体基板101を掘り込むことで、凸型又はドーム型のレンズを形成することができる。図6Aから図6Dは、ウェットエッチングで、メッキメタルマスクがサイドエッチングされ、減退していく様子を表している図である。
図6Aは、サイドエッチングが初期の段階を表している図である。化合物半導体基板101の裏面もエッチング加工されている。図6Bは、サイドエッチングの第2段階を表している図である。メッキメタルマスクがサイドエッチングされ、減退している。図6Cは、サイドエッチングの第3段階を表している図である。メッキメタルマスクは、わずかではあるが、残っている。図6Dは、サイドエッチングの最終段階を表している図である。メッキメタルマスクは、完全に除去されている。最終的に、凸状又はドーム形状の突起を形成することができる。この突起がレンズ作用を有する。
レンズ111は、光学設計により任意のサイズにして良い。レンズ111は、一般的には、直径50〜200μm、高さ5〜20μmくらいが適切である。レンズの直径は少なくとも受光領域104(受光部)より広くすることが結合トレランスを拡大するために必要である。例えば、直径100μm、高さ10μmのレンズを形成する場合において、メッキメタルマスクのテーパー角度θhが45度の場合を考える。
化合物半導体基板101のエッチングレートをレート1、メッキメタルマスクのエッチングレートをレート2とした場合を想定する。レート1=レート2の場合、レンズの端面角度を45度に加工できる。レート1>レート2の場合は、レンズの端面角度は、45度よりも大きくなる。また、レート1<レート2の場合は、レンズの端面角度は、45度よりも小さくなる。
ウェットエッチング液に関しては、化合物半導体基板101とメッキメタルマスク122の材料に応じて、任意の酸又はアルカリを含むエッチング液を用いれば良いが、2種類の以上の成分を含むエッチング液が望ましい。つまり、化合物半導体基板101に対して高いエッチングレートを有する成分1と、メッキメタルマスクに対して高いエッチングレートを有する成分2とを、含むエッチング液を用いる。成分1と成分2の含有量を調整することで、化合物半導体基板101とメッキメタルマスク122のエッチングレートを調整できるため、所望のレンズ形状を形成しやすい。
例えば、化合物半導体基板101にInPを、メッキメタルマスク122にNiを用いた場合におけるウェットエッチング液に関して説明する。InPは、給電層を形成しなくても、無電解メッキ膜をダイレクトに形成しやすい。InPをエッチングするための成分1として、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などが挙げられる。一方、Niをエッチングするための成分2として、硫酸、硝酸、塩化第二鉄などが挙げられる。
また、InPがエピタキシャル成長されている場合、エッチング液によってはエッチングレートに結晶面方位依存性を持つ。この場合、エッチング後のレンズ形状が意図しない形になるため、結晶面方位依存性を低減させる必要がある。結晶面方位依存性を低減する方法としては、ウェットエッチング液に酸化剤(過酸化水素水、臭素など)を加えることが挙げられる。
また、ウェットエッチング液に有機物質を加えれば、基板の表面張力を低減することができるため、より均一なエッチング形状を得る事ができる。有機物質には、イソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール、グリセリン、N-メチル-2-ピロリドンなどが適している。このようにして、ステップS051からステップS054を経て、化合物半導体基板101の裏面上に、凸型又はドーム型のレンズ111を形成できる。
本願に開示される裏面入射型受光素子の製造方法では、裏面入射型アバランシェフォトダイオードの裏面側(基板面側)にメッキ成長防止マスク121(エッチングマスク)を形成し、触媒毒含有無電解メッキで四角錐形状のメッキメタルマスク122を形成し、それをマスクとして、ウェットエッチングで凸型のレンズ111を形成する。触媒毒の量を調整することで四角錐形状のメッキメタルマスク122を形成することができる。メッキメタルマスク122と化合物半導体基板101を同時にエッチングできるエッチング液を用いることで、凸状又はドーム形状の突起(レンズ111)を形成することができる。
本実施の形態の効果について説明する。凸型のレンズ111をウェットエッチングで形成するため、メッキメタルマスク122が消失するまでエッチングすることで、凸型のレンズ111に丸みを持たせることができる。さらに、触媒毒の量により、メッキメタルマスク122のテーパー角度が変えられるため、マスクとなるメッキ自体の形状を丸みのある形状にすることができる。さらに、このモノリシックレンズを搭載することで、高速応答の可能な安価な裏面入射型受光素子の製造方法を提供することが可能になる。
すなわち、本願に開示される裏面入射型受光素子の製造方法は、化合物半導体基板の表面側に受光領域を囲むガードリング溝を形成する第1の工程と、前記ガードリング溝が形成されている化合物半導体基板の裏面に、エッチングマスクを形成する第2の工程と、前記エッチングマスクが形成されている化合物半導体基板の裏面に無電解メッキ液を用いて無電解メッキを行い、メッキメタルマスクを形成する第3の工程と、前記メッキメタルマスクが形成された化合物半導体基板の裏面から、前記エッチングマスクを除去する第4の工程と、前記エッチングマスクが除去された化合物半導体基板の裏面をウェットエッチングする第5の工程と、を備えていることを特徴とするものである。
実施の形態2.
以下、実施の形態について図を用いて説明する。図7は、本実施の形態に関わる裏面入射型受光素子の製造方法を用いて形成した裏面入射型アバランシェフォトダイオード200の断面構造を示している。本実施の形態に関わる、裏面入射型アバランシェフォトダイオードのレンズ111は、化合物半導体基板101の裏面(裏面電極115)よりも低い位置に形成されている。同図において、裏面入射型アバランシェフォトダイオード200は、化合物半導体基板101の表面側にエピタキシャル成長層110(半導体層)、アノード電極106、カソード電極107、ガードリング溝105を備えている。また、裏面入射型アバランシェフォトダイオード200は、化合物半導体基板101の裏面側に、凸型のレンズ111を備えている。凸型のレンズ111は、レンズ保護膜112(ARコート膜)で表面が覆われている。
化合物半導体基板101の裏面側は、裏面電極115(メタル膜)で保護されている。エピタキシャル成長層110は、InPバッファ層91、AlInAs増倍層92、p型InP電界緩和層93、InGaAs光吸収層94、AlInAs窓層95、InP窓層96、InGaAsコンタクト層97などから構成されている。裏面入射型アバランシェフォトダイオードでは、基板の裏面から入射した光180は、ガードリング溝105で囲まれている内周部を通過し、受光領域104(受光部)で検出される。受光領域104(受光部)は、化合物半導体基板101の表面側に設置され、ガードリング溝105で囲まれている。
凸型のレンズ111は、裏面入射型アバランシェフォトダイオードにおいて、集光性を高める役割を担っている。アノード電極106とカソード電極107は、はんだ等の密着材を介して、サブマウント150と電気的に接続されている。受光領域104(受光部)は、化合物半導体基板101の上側(表面側)に形成されている。アノード電極106は、受光領域104(受光部)の上に形成され、この受光領域104と電気的に接続されている。カソード電極107は、ガードリング溝105で、化合物半導体基板101と電気的に接続されている。
先ず、前述した裏面入射型アバランシェフォトダイオードの製造方法を概略的に説明する(図2を参照)。ステップS01において、化合物半導体基板101の表面に、InPバッファ層91、AlInAs増倍層92、p型InP電界緩和層93、InGaAs光吸収層94、AlInAs窓層95、InP窓層96、InGaAsコンタクト層97などからなるエピタキシャル成長層110を形成する。エピタキシャル成長は、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)、MBE(Molecular Beam Epitaxy)などを用いて行う。
さらに、受光領域104(受光部)となるpn接合を形成する。受光領域104(pn接合)のp領域は、エピタキシャル成長、または、拡散、イオン注入で形成する。受光部がエピタキシャル成長の場合、受光領域104以外を除去したメサ型のAPD(Avalanche Photo Diode)構造とする。また拡散、イオン注入などで受光部のp領域を形成する場合は、エピタキシャル成長後に、気相拡散もしくは固相拡散で、選択的にp領域を形成して、アバランシェフォトダイオードを作製する。
ステップS02において、化合物半導体基板101の表面側に、ガードリング溝105を形成する(第1の工程)。ガードリング溝105は、レジストパターンを用いて、ドライエッチング、または、ウェットエッチングにより形成する。化合物半導体基板101にn型InPを用いる場合、ドライエッチングでは塩素系ガスまたはメタン/水素系ガスを用いると良い。ウェットエッチングでは、塩酸系のエッチング液または臭化水素系のエッチング液を用いると良い。化合物半導体基板101に達するガードリング溝105は、リーク電流を抑制し、カソード電極引き出し用の役割を果たす。
ステップS03において、化合物半導体基板101の表面に、アノード電極106と、カソード電極107を形成する。アノード電極106とカソード電極107の材料は、エピタキシャル成長層110とオーミックコンタクトできる材料を選択する。例えば、エピタキシャル成長層110に、InGaAs、InPなどを用いた場合には、電極材料として、Ti/Auを形成すると良い。電極のパターニングは、レジストパターンを用いて、リフトオフ、エッチングなどにより行う。
ステップS04において、化合物半導体基板101を裏面側から研削して基板を薄板化する。化合物半導体基板101の研削は、機械加工、ウェットエッチングなどにより行う。機械加工には、砥石、スラリーなどを用いる。ステップS05において、化合物半導体基板101の裏面に、凸型のレンズ111を形成する。レンズ111を形成するステップS05の詳細は、後述する。
ステップS06において、化合物半導体基板101の裏面に、レンズ保護膜112(ARコート膜)と裏面電極115を形成する。レンズ111の表面を覆うレンズ保護膜112の材料は、メタル膜でも絶縁膜で良い。レンズ111の表面を絶縁膜で覆う事で、光の反射率を調整しても良い。ステップS07では、裏面入射型アバランシェフォトダイオードのアノード電極106およびカソード電極107を、はんだ等の密着材を介してサブマウント150と接続する。
次に、図8を参照して、本実施の形態に関わる凸型のレンズ111の形成方法を詳細に説明する。なお、図9Aから図9Dは、本実施の形態に関わるレンズ111の形成過程を図示している。ステップS051において、化合物半導体基板101の裏面に、メッキ成長防止マスク121(エッチングマスク)を形成する(第2の工程:図9Aを参照)。メッキ成長防止マスク121(エッチングマスク)には、有機樹脂からなるレジスト、または、SiN、SiOなどの絶縁膜を用いる。ガードリング溝105で囲まれている受光領域104の上部に、メッキ成長防止マスク121(エッチングマスク)の開口部121aを配置する。
ステップS0511では、化合物半導体基板101の裏面に形成されているメッキ成長防止マスク121(エッチングマスク)をマスクとして、化合物半導体基板101をウェットエッチングもしくはドライ エッチングで、凹状に溝をエッチング加工する(第3の工程:図9Bを参照)。化合物半導体基板101とメッキ成長防止マスク121(エッチングマスク)を同時にエッチング加工することで凹部分131(溝)が形成できる。この作業を、テーパー形状を有するメッキメタルマスク122を形成するステップS052の前に実行する。凹部分131(溝)の深さは、凸型又はドーム型のレンズ111を形成するので、テーパー形状を有するメッキメタルマスク122の高さの半分以上の深さとする。
ステップS052において、触媒毒を含む無電解メッキ液を用いて、化合物半導体基板101の裏面上に、テーパー形状を有するメッキメタルマスク122を形成する(第4の工程:図9Cを参照)。テーパー形状を有するメッキメタルマスク122は、メッキ成長防止マスク121(エッチングマスク)でマスキングされていない凹部分131に形成される。テーパー形状を有するメッキメタルマスク122は、メッキ成長停止面が形成されることにより、四角錐形状または台形形状を有している。
ステップS054において、ウェットエッチングにより化合物半導体基板101およびメッキメタルマスク122をエッチング加工する(第5の工程:図9Dを参照)。テーパー形状を有するメッキメタルマスク122は、化合物半導体基板101の裏面に加工された凹部分131に形成されている。ウェットエッチングでは、メタルマスクをサイドエッチングで減退させながら化合物半導体基板101を掘り込むことで、凹部分131の中に、凸型又はドーム型のレンズ111を形成することができる。
以上の説明では、メッキ成長防止マスク121(エッチングマスク)を、凹部分131の加工とテーパー形状を有するメッキメタルマスク122の形成の両方に使用したが、凹部分131の加工とテーパー形状を有するメッキメタルマスク122の形成に異なるマスクを使用してもよい。その場合、工程数が増加するが、凹部分の形状を保持した状態で凹部分131の中に凸型又はドーム型のレンズ111を形成できる。
図10を参照して、本実施の形態における、別形態に関わる凸型のレンズ111の形成方法を詳細に説明する。なお、図11Aから図11Dは、レンズ111の形成過程を図示している。ステップS050において、化合物半導体基板101の裏面に、第1のエッチングマスク123(メッキ成長防止マスク121で代用可)を形成する(第2の工程:図11Aを参照)。エッチングマスク123には、有機樹脂からなるレジスト、または、SiN、SiOなどの絶縁膜を用いる。ガードリング溝105で囲まれている受光領域104の上部に、エッチングマスク123の開口部123aを配置する。
ステップS0505では、化合物半導体基板101の裏面に形成されているエッチングマスク123をマスクとして、化合物半導体基板101をウェットエッチングもしくはドライエッチングで、凹状に溝をエッチング加工する(第3の工程:図11Bを参照)。化合物半導体基板101とエッチングマスク123を同時にエッチング加工することで凹部分131(溝)が形成できる。凹部分131(溝)の深さは、凸型又はドーム型のレンズ111を形成するので、テーパー形状を有するメッキメタルマスク122の高さの半分以上の深さとする。
エッチングマスク123が残っているようであれば、除去する。エッチングマスク123がレジストの場合は、有機溶剤を用いてエッチングマスク123を除去すると良い。エッチングマスク123に、SiO、SiNなどの絶縁膜を用いる場合は、フッ酸系の水溶液を用いてエッチングマスク123を除去すると良い。その後、ステップS051でメッキ成長防止マスク121(第2のエッチングマスク)を形成する(第6の工程)。メッキ成長防止マスク121(第2のエッチングマスク)には、有機樹脂からなるレジスト、または、SiN、SiOなどの絶縁膜を用いる。エッチングマスク123が多少残っていても、その上に、メッキ成長防止マスク121を形成してもよい。
ステップS052において、触媒毒を含む無電解メッキ液を用いて、化合物半導体基板101の裏面上に、テーパー形状を有するメッキメタルマスク122を形成する(第4の工程:図11Dを参照)。テーパー形状を有するメッキメタルマスク122は、メッキ成長防止マスク121(第2のエッチングマスク)でマスキングされていない凹部分131に形成される。テーパー形状を有するメッキメタルマスク122は、メッキ成長停止面が形成されることにより、四角錐形状または台形形状を有している。
ステップS054において、ウェットエッチングにより化合物半導体基板101およびメッキメタルマスク122をエッチング加工する(第5の工程:図11Dを参照)。テーパー形状を有するメッキメタルマスク122は、化合物半導体基板101の裏面に加工された凹部分131に形成されている。ウェットエッチングでは、メタルマスクをサイドエッチングで減退させながら化合物半導体基板101を掘り込むことで、凹部分131の中に、凸型又はドーム型のレンズ111を形成することができる。
本実施の形態に開示される裏面入射型受光素子の製造方法によれば、化合物半導体基板101の裏面より低い位置に凸型又はドーム型のレンズ111を形成できることから、レンズ部分に外的要因でキズが付きにくい。また、ウェットエッチングで形成しているため、面精度の高いレンズを形成できる。その結果、高い結合効率を有する裏面入射型受光素子が得られる。さらには、受光領域を小さくすることが出来るため、より高速動作が可能となる。
したがって、本願に開示される別形態の裏面入射型受光素子の製造方法は、化合物半導体基板の表面側に受光領域を囲むガードリング溝を形成する第1の工程と、前記ガードリング溝が形成されている化合物半導体基板の裏面に、第1のエッチングマスクを形成する第2の工程と、前記第1のエッチングマスクが形成されている化合物半導体基板の裏面をエッチング加工して、前記化合物半導体基板の裏面に溝を形成する第3の工程と、前記溝が形成されている化合物半導体基板の裏面に無電解メッキ液を用いて無電解メッキを行い、メッキメタルマスクを形成する第4の工程と、前記メッキメタルマスクが形成された化合物半導体基板の裏面をウェットエッチングする第5の工程と、を備えていることを特徴とするものである。
また、本願に開示される裏面入射型受光素子の製造方法は、化合物半導体基板と、前記化合物半導体基板の表面上に形成された受光部と、前記受光部の上に形成され、前記受光部と電気的に接続された電極と、ガードリング溝で基板と電気的に接続された電極と、化合物半導体基板裏面にレンズを備えた裏面入射型受光素子の製造方法であって、前記レンズは、触媒毒含有無電解メッキをマスクとして、ウェットエッチングで形成することを特徴とするものである。
また、本願に開示される裏面入射型受光素子の製造方法は、化合物半導体基板裏面に形成された凹部分に、触媒毒含有無電解メッキを形成することを特徴とする裏面入射型受光素子の製造方法に関わるものである。また、本願に開示される裏面入射型受光素子の製造方法は、触媒毒含有無電解メッキの無電解メッキ液に含まれる触媒毒は、第1〜第5物質のいずれかを含むことを特徴とする裏面入射型受光素子の製造方法に関わるものである。第1物質は、鉛、ビスマス、アンチモン、テルルおよび銅イオンからなる群から選択される少なくとも1種の金属イオン、第2物質は、硫黄化合物、第3物質は、窒素化合物、第4物質は、ポリエチレングリコール、第5物質は、アセチレン系アルコールである。
また、本願に開示される裏面入射型受光素子の製造方法は、ウェットエッチング液は酸又はアルカリを含むエッチング液で、2種類の以上の成分を含むエッチング液であることを特徴とする裏面入射型受光素子の製造方法に関わるものである。また、本願に開示される裏面入射型受光素子の製造方法は、触媒毒含有無電解メッキの形状は四角錐もしくはドーム形状のテーパー形状を特徴とする裏面入射型受光素子の製造方法に関わるものである。また、本願に開示される裏面入射型受光素子の製造方法は、化合物半導体基板裏面に形成された凹部分の深さは、触媒毒含有無電解メッキの高さの半分以上の深さであることを特徴とする裏面入射型受光素子の製造方法に関わるものである。
なお、本願の明細書に開示された技術は、上記の各実施の形態1〜4に限定されるものではなく、これらの実施の形態の可能な組み合わせを全て含むことは言うまでもない。また、本願の明細書に開示された技術は、開示された技術思想の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。