以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施形態に限定されない。図面においては、適宜、模式的に表現することや、縮尺を変更して表現することがある。また、部材の位置や方向などを、図1などに示すXYZ直交座標系を参照して説明する。このXYZ直交座標系において、X方向およびY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向(上下方向)である。X方向は前後方向であり、ワークWを送る方向である。Y方向はX方向と直交する左右方向である。また、X方向、Y方向、及びZ方向の方向において、適宜、矢印と同じ側を+側(例、+X側)と称し、矢印と反対側を−側(例、−X側)と称す。
図1は、本実施形態に係るバリ取り装置100の一例を示す図である。図1に示すように、バリ取り装置100は、コンベア10と、支持部20と、旋回部材30と、回転軸40と、研磨部材50とを備える。コンベア10は、ワークWを搬送する。ワークWは、金属等の平板状の板材である。ワークWは、レーザ加工機又はパンチプレス等の工作機械により、一部を切断加工又は打ち抜き加工されており、切断加工部分又は打ち抜き加工部分には加工に伴うバリが生じている。
コンベア10は、例えばベルトコンベア機構である。コンベア10は、図1に示すように、コンベアフレーム11と、一対のローラ12と、無端状のコンベアベルト13と、ローラ駆動部71とを有する。コンベアフレーム11は、本体フレーム60の支持フレーム61上に配置される。支持フレーム61は、本体フレーム60の内部の下方側に、水平方向に設けられている。一対のローラ12は、例えばコンベアフレーム11のX方向の両端部にそれぞれ配置され、それぞれY軸まわりに回転可能に支持される。一対のローラ12の少なくとも一方は、ローラ駆動部71により回転駆動される。ローラ駆動部71は、例えば電動回転モータ等が用いられる。
無端状のコンベアベルト13は、一対のローラ12に掛け渡されて配置される。コンベアベルト13は、ローラ12が回転駆動することにより周回移動する。コンベアベルト13の上面(+Z側の面)はワークWが載置される搬送面13aであり、+X方向に移動する。従って、コンベアベルト13の搬送面13aにワークWを載置した状態で、ローラ駆動部71によりローラ12を回転駆動することにより、搬送面13aが+X方向に移動し、この移動に伴ってワークWが+X方向に搬送される。
コンベアベルト13の搬送面13aは、例えば床面Fと平行になるように(水平面に沿うように)設定されている。これにより、ワークWは、水平に配置された状態を維持しながら+X方向に搬送される。コンベアベルト13は、表裏を貫通する複数の貫通孔(図示せず)が設けられている。また、コンベア10には、ワークWを搬送面13aに吸着させる吸着装置14が設けられている。吸着装置14は、一対のローラ12の間であってコンベアベルト13の上側部分と下側部分との間に配置される。吸着装置14は、コンベアベルト13の貫通孔を介してワークWを吸着する。ワークWは、吸着装置14によりコンベアベルト13の搬送面13aに吸着された状態で搬送される。
なお、コンベア10において、吸着装置14を備えるか否かは任意であり、吸着装置14がなくてもよい。例えば、吸着装置14に代えて、コンベアベルト13の搬送面13aに滑り止め加工等が施されてもよい。また、コンベア10は、ベルトコンベア機構が用いられることに限定されない。例えば、ローラコンベア機構など、ワークWを載置して搬送可能な任意の機構が適用されてもよい。
支持部20は、コンベア10の上方に配置される。支持部20は、本体フレーム60の天井部62に設けられている。支持部20の構成は任意の構成が適用可能である。支持部20は、不図示のZ方向ガイドを有しており、旋回部材30をZ方向(上下方向)に移動可能に支持している。また、支持部20は、不図示のθZ方向ガイドを有しており、旋回部材30をZ方向に平行の旋回軸線AX1の軸まわり方向に回転可能に支持している。旋回軸線AX1は、コンベア10においてワークWを搬送する搬送面13aに直交している。
なお、支持部20は、Y方向ガイドが設けられて、旋回部材30をY方向(左右方向又はコンベアベルト13の幅方向)に移動可能に支持してもよい。支持部駆動部72は、旋回部材30をZ方向に移動させる。支持部駆動部72は、例えば、回転電動モータを用いたボールねじ機構あるいはラックアンドピニオン機構などが用いられる。支持部駆動部72は、本体フレーム60の一部(例えば、天井部62)に設けられてもよいし、旋回部材30と一体に設けられてもよい。
支持部駆動部72を駆動することにより、旋回部材30を上下方向に移動させ、旋回部材30をワークWに対して近接させ、又は離間させることが可能である。旋回部材30の高さ(又は研磨部材50の高さ)は、不図示のセンサ等により計測可能である。このセンサからの出力に基づいて支持部駆動部72を駆動することにより、旋回部材30(又は研磨部材50)を所望の高さに設定することが可能である。なお、旋回部材30をY方向に移動可能とする場合は、支持部駆動部72を駆動することにより、旋回部材30をワークWに対して左右方向に移動(揺動)させることが可能である。
旋回部材30は、支持部20により、上下方向に移動可能、かつ旋回軸線AX1周りに回転可能に支持されている。旋回部材30は、旋回駆動部73を駆動することにより、旋回軸線AX1の軸まわり方向に旋回する。旋回駆動部73は、例えば、回転電動モータ及び減速機などが用いられる。旋回駆動部73は、本体フレーム60の一部(例えば、天井部62)に設けられてもよいし、旋回部材30と一体に設けられてもよい。旋回部材30の下端には、ブラシフレーム47が固定されている。ブラシフレーム47は、旋回部材30の回転により旋回する。ブラシフレーム47の両端には、軸受部45と、サポート部46とがそれぞれ設けられる。軸受部45、サポート部46、及びブラシフレーム47については後述する。
図2は、回転軸40及び研磨部材50の一例を示す平面図である。図3は、回転軸40及び研磨部材50をX方向から見た一例を示す側面図である。図4は、回転軸40及び研磨部材50を図3のA方向から見た図であり、(A)では、サポート部46を取り外した状態の図、(B)では、サポート部46の図である。なお、図4(B)では、サポート部46を図3のA方向から見た状態を示している。
図2から図3に示すように、旋回部材30に取り付けられて旋回軸線AX1の軸まわりに旋回可能である。回転軸40は、円柱状又は棒状に設けられる。回転軸40は、旋回軸線AX1を挟んで平行に一対設けられ、それぞれが回転軸線AX2の軸まわりに回転可能に配置される。一対の回転軸40のそれぞれは、コンベア10における搬送面13aと平行な面(すなわち、旋回軸線AX1に直交する面、あるいはXY面)に沿って、それぞれ回転軸線AX2の方向(例えばY方向)に延びて設けられている。また、一対の回転軸40は、それぞれ旋回軸線AX1からの距離が同一又はほぼ同一である。以下、一対の回転軸40を区別する場合、それぞれ回転軸41、42と表記し、回転軸41の回転軸線AX2を回転軸線AX2aと表記し、回転軸42の回転軸線AX2を回転軸線AX2bと表記する場合がある。回転軸線AX2a、AX2bは、旋回軸線AX1から離間し(図2参照)、かつコンベア10における搬送面13aと平行な面(旋回軸線AX1に直交する面)に沿って延びている(図3及び図4参照)。回転軸線AX2a、AX2bは、互いに平行である(図2参照)。
各回転軸40は、軸受部45及びサポート部46によってブラシフレーム47に回転可能に支持されており、旋回部材30によって旋回可能に支持されている。軸受部45には、回転軸40の一方の端部が挿入される。軸受部45は、回転軸40の一方の端部を挿入して回転可能に支持する不図示の軸受を備えている。サポート部46は、図4(B)に示すように、2つのハンドル46aと、3つのノブ46bと、2つの突起46cと、2つの軸受46dとを備えている。
2つのハンドル46aは、作業者が把持してサポート部46を保持するために用いられる。3つのノブ46bは、それぞれネジ部を有しており、このネジ部がブラシフレーム47に設けられているネジ穴47aとネジ結合可能である。ノブ46bのネジ部がネジ穴47aとネジ結合することにより、サポート部46は、ブラシフレーム47に取り付けられる。2つの突起46cは、それぞれサポート部46の−Y側に突出して設けられており、ブラシフレーム47に設けられている2つの孔部47bのそれぞれに挿入可能である。サポート部46をブラシフレーム47に取り付ける際、突起46cを孔部47bに挿入することにより、サポート部46をブラシフレーム47に位置決めすることができ、ノブ46bのネジ部をネジ穴47aに位置決めして両者のネジ結合を容易に行うことができるようにしている。
軸受46dは、回転軸40の一方の端部が挿入されて、回転軸40の他方の端部を回転可能に支持する。回転軸40は、軸受部45とサポート部46とで挟まれた状態で支持されている。回転軸40は、軸受部45及びサポート部46の軸受46dにより、回転軸線AX2の軸まわり方向に回転可能である。また、回転軸40には、キー部43が設けられている。キー部43については後述する。
各回転軸40は、回転駆動部74を駆動することにより、駆動伝達部75(図3参照)を介して回転軸線AX2の軸まわり方向に回転する。回転駆動部74は、例えば電動モータ等の不図示の駆動源を有する。回転駆動部74は、例えば、回転電動モータ及び減速機などが用いられる。回転駆動部74は、本体フレーム60の一部(例えば、天井部62)に設けられてもよいし、旋回部材30の内部あるいは軸受部45の内部に設けられてもよい。駆動伝達部75は、回転駆動部74の駆動力を旋回部材30及びブラシフレーム47を介して、軸受部45に支持されている回転軸40の一方の端部に伝達する。
研磨部材50は、各回転軸40と一体で回転軸線AX2の軸まわり方向に回転する。研磨部材50が回転軸40と一体で回転する構成については後述する。研磨部材50は、各回転軸40について、回転軸線AX2の方向にドライブディスク58を挟んで3つ以上連結される。本実施形態では、研磨部材50が、回転軸線AX2の方向に3つ連結されている。すなわち、本実施形態では、研磨部材50が、1つの回転軸40において奇数個配置されている。
なお、研磨部材50の配置数については、3つに限定されず、4つ以上連結されてもよい。この場合、研磨部材50の配置数は、奇数個であってもよいし、偶数個であってもよい。また、研磨部材50の配置数は、一対の回転軸40において互いに異なってもよい。複数の研磨部材50は、それぞれ回転軸40に対して着脱可能に設けられる。このため、研磨部材50が消耗した場合、又はワークWの材質や形状等に応じて研磨部材50を選択する場合に、研磨部材50を容易に交換することができる。
以下、本実施形態において、3つの研磨部材50を区別する場合、それぞれ研磨部材51、52、53と表記する場合がある。この場合において、3つの研磨部材50は、回転軸線AX2の方向における外側の研磨部材50を研磨部材51、53と表記し、この研磨部材51、53の間に配置される内側の研磨部材50を研磨部材52と表記する。
複数の研磨部材50は、それぞれ同一又はほぼ同一の寸法に設けられる。これにより、研磨部材50の寸法を規格化して、研磨部材50の取扱性を向上させることができる。また、回転軸線AX2の方向における外側の研磨部材51、53の間に配置される内側の研磨部材52は、外側の研磨部材51、53に比べてワークWに対する単位時間あたりの研磨能力が小さい。なお、研磨部材52は、旋回軸線AX1に最も近い研磨部材50である。従って、旋回軸線AX1に最も近い研磨部材52は、他の研磨部材51、53に比べてワークWに対する単位時間あたりの研磨能力が小さいともいえる。また、研磨部材52は、回転軸線AX2の方向に並ぶ複数の研磨部材50のうち中央に配置されている。従って、回転軸線AX2の方向の中央に配置される研磨部材52は、外側の研磨部材51、53に比べて、ワークWに対する単位時間あたりの研磨能力が小さいともいえる。
ここで、ワークWに対する単位時間あたりの研磨能力については、例えば、回転軸40を同一の回転条件で回転させた場合に、単位時間内においてワークWの表面を研磨する(削る)能力である。なお、研磨能力が小さいとは、研磨力が小さい、あるいは、摩擦力が小さい、摩擦係数が小さいと表現することができる。
また、研磨部材51、53は、ワークに対する単位時間あたりの研磨能力が同一又はほぼ同一である。この構成により、各研磨部材51、53において、ワークWの表面に対してバランスよく研磨することができる。また、用意する研磨部材50の種類を少なくすることができる。
図5は、回転軸40から研磨部材50を取り外した状態を示す分解図である。図5には、Y方向に見た場合の回転軸40の形状、及びY方向に見た場合のドライブディスク57、58の形状を合わせて示している。図6は、研磨部材50の一例を示し、(A)は端部側から見た図、(B)は側面側から見た図である。各研磨部材50(51、52、53)は、それぞれ筒状部分54と、ブラシ状部分55とを含む。筒状部分54は、回転軸40を貫通する貫通部54aを備えている。研磨部材53の筒状部分54は、貫通部54aの両端の一方にドライブディスク57を嵌め込むための嵌合部54bを有している。また、研磨部材53の筒状部分54は、貫通部54aの両端の他方にドライブディスク58を嵌め込むための嵌合部54cを有している。
研磨部材51、52の筒状部分54は、貫通部54aの両端にドライブディスク58を嵌め込むための嵌合部54b、54cをそれぞれ有している。なお、研磨部材51〜53において、嵌合部54b、54cは、同一又はほぼ同一の形状である。
嵌合部54b、54cの内周形状は、対向する円形部分と、円形部分をつなぐ直線部分とを備える形状に設けられている。また、ドライブディスク57、58の外周形状は、嵌合部54b、54cの内周形状と同様に、対向する円形部分と、円形部分をつなぐ直線部分とを備える形状に設けられている。従って、ドライブディスク57、58が嵌合部54b、54cにはめ込まれた状態では、ドライブディスク57、58と嵌合部54b、54cとは、相対的な回転が規制された状態となり、回転軸線AX2の軸まわり方向に一体となって回転することになる。
ドライブディスク57は、研磨部材53の軸受部45側に配置される。ドライブディスク57は、回転軸40を貫通させる貫通部57aを有する。貫通部57aは、回転軸40の外径の形状に対応して円形に形成されている。ドライブディスク57は、回転軸40に固定するための不図示のボルトとネジ結合するネジ穴57bを備えている。
ドライブディスク58は、研磨部材51と研磨部材52との間、研磨部材52と研磨部材53との間、及び研磨部材51のサポート部46側にそれぞれ配置される。ドライブディスク58は、回転軸40を貫通させる貫通部58aを有する。貫通部58aは、回転軸40のキー部43の形状に対応して、対向する円形部分と、円形部分をつなぐ直線部分とを備える形状に設けられている。貫通部58aの直線部分が、回転軸40のキー部43の形状に対応する。キー部43は、図5に示すように、回転軸40の+Y側の端部から、ドライブディスク58を配置する箇所を含んで設けられている。
ドライブディスク58の貫通部58aに回転軸40を挿入した状態では、キー部43が貫通部58aの直線部分に対向することにより、回転軸40とドライブディスク58とは、相対的な回転が規制された状態となり、回転軸線AX2の軸まわり方向に一体となって回転することになる。なお、ドライブディスク57は、不図示のボルトにより回転軸40に固定されており、回転軸線AX2の軸まわり方向に一体となって回転する。このように、ドライブディスク57、58が回転軸40と一体となって回転することにより、研磨部材50(51、52、53)の筒状部分54は、回転軸40と一体となって回転軸線AX2の軸まわり方向に回転する。
従って、回転軸40を回転駆動部74により回転させることにより、各研磨部材51、52、53は、回転軸線AX2の軸まわり方向に一体となって回転する。なお、回転軸40の−Y側ではドライブディスク57が不図示のボルトにより回転軸40に固定され、さらに回転軸40の+Y側ではサポート部46で+Y側のドライブディスク58を押さえている。これにより、3つの研磨部材51、52、53は、回転軸線AX2方向への移動が規制され、研磨部材51、52、53の嵌合部54b、54cからドライブディスク57、58が外れるのを防止している。
回転軸40に各研磨部材51、52、53を装着する手順について説明する。先ず、回転軸40の解放端(+Y側の端部)からドライブディスク57を挿入し、軸受部45の+Y側にドライブディスク57をボルトで回転軸40に固定する。続いて、回転軸40の解放端から研磨部材53を挿入して、嵌合部54bにドライブディスク57を嵌め入れる。続いて、回転軸40の解放端からドライブディスク58を挿入し、研磨部材53の嵌合部54cにドライブディスク58を嵌め入れる。続いて、回転軸40の解放端から研磨部材52を挿入して、嵌合部54bにドライブディスク58を嵌め入れる。
続いて、回転軸40の解放端からドライブディスク58を挿入し、研磨部材52の嵌合部54cにドライブディスク58を嵌め入れる。続いて、回転軸40の解放端から研磨部材51を挿入して、嵌合部54bにドライブディスク58を嵌め入れる。続いて、回転軸40の解放端からドライブディスク58を挿入し、研磨部材51の嵌合部54cにドライブディスク58を嵌め入れる。この状態で、ブラシフレーム47にサポート部46が取り付けられることにより、回転軸40への研磨部材51、52、53の装着が完了する。なお、回転軸40から研磨部材51、52、53を取り外す場合は、上記と逆の手順により行う。
図2に示すように、研磨部材51と研磨部材52との間、及び研磨部材52と研磨部材53との間にはそれぞれドライブディスク58が配置されており、このドライブディスク58は、研磨部材51及び研磨部材52の嵌合部54c、研磨部材52及び研磨部材53の嵌合部54cにそれぞれ嵌まり込んだ状態となっている。従って、回転軸40の回転によりドライブディスク58が回転すると、1つのドライブディスク58が2つの研磨部材51、52(又は研磨部材52、53)に対して回転軸40が回転を伝達することになる。すなわち、1つのドライブディスク58は、2つの研磨部材51、52(又は研磨部材52、53)で共用されている。
研磨部材51、53の間に配置される研磨部材52は、研磨部材51、53に比べて、ブラシ状部分55において、ワークWに対する単位時間あたりの研磨能力が小さい。ブラシ状部分55は、例えば、布やすり、紙やすり等の可撓性を有する短冊状のやすり片を有する。図7は、研磨部材50のブラシ状部分55の使用状態を示し、(A)は砥粒56Aが大きい場合の図、(B)は砥粒56Bが小さい場合の図である。図7(A)は、例えば、研磨部材51、53に設けられるブラシ状部分55の一例を示している。図7(B)は、例えば、研磨部材52に設けられるブラシ状部分55の一例を示している。
ブラシ状部分55は、図7(A)及び(B)に示すように、砥粒56A、56Bを備えている。砥粒56A、56Bは、短冊状の両面に設けられている。従って、研磨部材50が回転軸線AX2の軸まわり方向に回転した場合に、ブラシ状部分55のうち砥粒56A、56BがワークWの表面に当接してバリを除去する。なお、砥粒56A、56Bは、短冊状の両面のうち一方(回転により当たる面)のみに設けられてもよい。図7(A)に示すように、研磨部材51、53に用いられる砥粒56Aは平均粒径が大きい。一方、図7(B)に示すように、研磨部材52に用いられる砥粒56Bは平均粒径が小さい。これにより、研磨部材52は、ワークWに対する単位時間あたりに研磨能力が研磨部材51、53に比べて小さくなっている。
なお、研磨部材50は、砥粒56A、56Bを用いる構成に限定されない。例えば、研磨部材50は、金属ブラシが用いられてもよい。この場合、研磨部材51、53は、ブラシ状部分55の剛性が高く、研磨部材52は、ブラシ状部分55の剛性が研磨部材51、53のブラシ状部分55の剛性より低く設定される。ブラシ状部分55が金属ブラシの場合は、ワークWに対する単位時間あたりに研磨能力はブラシに用いられる金属細線の材質、あるいは直径によって剛性を設定することができる。例えば、研磨部材51、53のブラシ状部分55に用いられる金属ブラシは、硬い材質あるいは太い直径の金属細線が用いられ、研磨部材52のブラシ状部分55に用いられる金属ブラシは、柔らかい材質あるいは細い直径の金属細線が用いられる。
また、研磨部材50は、ブラシ状部分55を持つ構成に限定されない。例えば、円柱状の表面に砥粒等が設けられ、この円柱状の部分が回転しながらワークWの表面に接触するような構成が適用されてもよい。いずれの構成であっても、研磨部材52は、研磨部材51、53に比べて、ワークWに対する単位時間あたりの研磨能力が小さくなるように設定される。
図8は、旋回部材30を旋回させた場合に研磨部材50がワークWに接触する部分の軌跡を示し、(A)は旋回軌跡の全体を示す図、(B)は旋回軌跡の旋回中心付近を示す図である。図8(A)は、一対の回転軸40に装着された6つの研磨部材50の全体の軌跡を示している。図8(B)は、6つの研磨部材50のうちそれぞれの回転軸40の回転軸線AX2の方向の中央の研磨部材52についての軌跡を示している。なお、図8では、回転軸40の記載を省略している。
図8(A)に示すように、研磨部材50を回転軸線AX2の軸線まわりに回転させつつ、旋回部材30を旋回軸線AX1の軸線まわりに旋回させると、6つの研磨部材50がワークWに接触する領域である旋回軌跡Qは、円環状の領域となる。この場合、一方の回転軸40に装着された3つの研磨部材50についての軌跡と、他方の回転軸40に装着された3つの研磨部材50についての軌跡とは、同一の軌跡となる。
また、図8(B)に示すように、各回転軸40において、回転軸線AX2の方向の中央に配置される研磨部材52がワークWに当接する最小内径領域Qaは、6つの研磨部材50の旋回軌跡Qの円環状の領域のうち旋回中心付近の領域である。最小内径領域Qaは、旋回部材30を旋回させる場合に研磨部材50が密にワークWに当接する。本実施形態では、内側の研磨部材52が、外側の研磨部材51、53に比べてワークWに対する単位時間あたりの研磨能力が小さいので、最小内径領域QaにおいてワークWに対する単位時間あたりに研磨量が少なくなっている。これにより、最小内径領域Qaにおいて研磨部材50によりワークWの表面Wbに傷がつくことが抑制される。また、6つの研磨部材50の旋回軌跡Qの全体において、ワークWの表面Wbに対する研磨部材50の粗密が低減されており、ワークWの表面Wbに生じているバリをバランスよく除去することが可能となる。
次に、上記のように構成されたバリ取り装置100の動作を説明する。図9及び図10は、バリ取り装置100によりワークWの表面Wbに生じているバリをとる動作の一例を示す図である。ワークWは、レーザ加工機又はパンチプレス等の工作機械によって一部を切断加工又は打ち抜き加工され、加工部分Wa(図9及び図10参照)が形成された状態で、コンベア10により搬送される。ワークWを加工することにより、このような加工部分Waにバリが生じることがある。バリ取り装置100は、加工部分Waに沿って生じているバリをワークWから除去する。
先ず、支持部駆動部72(図1等参照)を駆動して研磨部材50の高さ(Z方向の位置)を調整し、ブラシ状部分55の下端が適度にワークWに当接する高さに調整する。研磨部材50の高さの調整は、ワークWの厚さ等によって予め設定された高さに、不図示の制御部等により支持部駆動部72が制御されて自動で設定されてもよいし、作業者が手動で設定してもよい。
続いて、コンベア10によるワークWの搬送に先だって、回転駆動部74により回転軸40(研磨部材50)を回転軸線AX2の軸まわり方向に回転させ、かつ、旋回駆動部73により旋回部材30を旋回軸線AX1の軸まわり方向に旋回させる。回転駆動部74による回転軸40の単位時間あたりの回転数(rpm)、及び旋回駆動部73による旋回部材30の単位時間あたりの回転数(rpm)は、不図示の制御部等により制御されてもよいし、作業者が手動で設定されてもよい。なお、図4に示すように、一対の回転軸40(41、42)は、回転軸線AX2a、AX2bの軸方向まわりに同一方向に回転させてもよいし、互いに異なる方向に回転させてもよい。
続いて、回転軸40の回転、及び旋回部材30の旋回が安定した段階で、コンベア10によりワークWを搬送させる。なお、6つの研磨部材50は、ブラシ状部分55によって旋回軌跡Qを形成した状態となっている。この状態でコンベア10によりワークを+X方向に搬送することにより、研磨部材50のブラシ状部分55(砥粒56A、56B)がワークWの表面Wbに接触する。ワークWの加工部分Waに沿って生じているバリは、ブラシ状部分55(砥粒56A、56B)に接触して削り取られることにより、表面Wbから除去される。
ワークWは、図9に示すように、Y方向の寸法L1が旋回軌跡Qにおける外径の寸法L2よりも小さい。従って、コンベア10によりワークWを+X方向に搬送するだけで、ワークWが旋回軌跡Qを通過することによりワークWの表面Wbの全面からバリが除去される。なお、ワークWが旋回軌跡Qを+X方向に通過する過程において、旋回軌跡Qのうち最小内径領域QaではワークWに対する単位時間あたりの研磨能力が小さくなっている。これにより、ワークWの表面Wbに傷がつくことが抑制され、また、ワークWが旋回軌跡Qを通過した後に、最小内径領域Qaを通過した跡が帯状に残って製品価値を低下させることを抑制する。
また、図10に示すように、ワークWのY方向の寸法L3が旋回軌跡Qにおける外径の寸法L2よりも大きい場合、旋回部材30を旋回軸線AX1の軸方向まわりに旋回させつつ、Y方向に往復移動させて対応する。旋回部材30のY方向への移動は、支持部駆動部72(図1等参照)を駆動することにより行う。図10に示す場合では、回転駆動部74により回転軸40(研磨部材50)を回転軸線AX2の軸まわり方向に回転させ、かつ、旋回駆動部73により旋回部材30を旋回軸線AX1の軸まわり方向に旋回させる。さらに、支持部駆動部72により旋回部材30をY方向に往復移動させる。
これにより、旋回軌跡QはY方向に揺動することになる。旋回軌跡QがY方向に揺動する際のY方向の寸法L4は、ワークWのY方向の寸法L3より大きくなっている。従って、ワークWのY方向の寸法L3が旋回軌跡Qにおける外径の寸法L2よりも大きい場合であっても、ワークWを+X方向に1回通過させることにより、ワークWの表面Wbの全面に研磨部材50を接触させることができる。なお、旋回部材30をY方向に往復移動させる周期は、不図示の制御部により制御されてもよいし、作業者が手動で設定されてもよい。
ワークWは、Y方向に揺動する旋回軌跡Qを+X方向に通過することにより、図9に示す場合と同様に、ワークWの表面Wbの全面からバリが除去される。なお、ワークWが旋回軌跡Qを+X方向に通過する過程において、旋回軌跡Qのうち最小内径領域QaではワークWに対する単位時間あたりの研磨能力が小さくなっているので、ワークWの表面Wbに傷がつくことが抑制される。
上記した実施形態では、1つの回転軸40に研磨部材50が3つ配置される構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。図11は、回転軸40の他の例をX方向から見た側面図である。また、以下の説明において、上記した実施形態と同一または同等の構成部分については同一符号を付けて説明を省略または簡略化する。
図11に示す回転軸40Aには、研磨部材50が4つ配置される。4つの研磨部材50のうち、回転軸線AX2の方向における外側の研磨部材50の間に配置される2つの研磨部材50は、旋回軸線AX1から等しい距離に配置される。従って、この場合、旋回軸線AX1に最も近い研磨部材50は、回転軸線AX2の方向における外側の研磨部材50の間に配置される2つの研磨部材50である。この2つの内側の研磨部材50は、外側の研磨部材50に比べて、ワークWに対する単位時間あたりの研磨能力が小さくなるように設定される。
図11に示す構成であっても、最小内径領域QaにおいてワークWの表面Wbに傷がつくことが抑制され、また、ワークWの表面Wbに対する研磨部材50の粗密を低減するので、ワークWに対するキズの発生を抑制し、ワークWの表面において均一にバリを取ることができる。
以上のように、本実施形態によれば、回転軸線AX2の方向における外側の研磨部材51、53の間に配置される研磨部材52が、研磨部材51、53に比べてワークWに対する単位時間あたりの研磨能力が小さいので、研磨部材52が接触する最小内径領域QaにおいてワークWの表面Wbに傷がつくことを抑制できる。また、研磨部材50の旋回軌跡Qにおいて、ワークWの表面Wbに対する研磨部材50の粗密を低減するので、ワークWの表面Wbにおいて均一にバリを取ることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は、上記した実施形態あるいは変形例に限定されない。また、上記した実施形態あるいは変形例で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。例えば、上記した実施形態では、回転軸線AX2の方向における外側の研磨部材51、53は、ワークWに対する単位時間あたりの研磨能力が同一又はほぼ同一である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、研磨部材51、53は、ワークWに対する単位時間あたりの研磨能力が互いに異なってもよい。
また、上記した実施形態では、回転軸40が旋回部材30に一対設けられる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、回転軸40が1つだけ設けられる構成であってもよいし、3つ以上設けられる構成であってもよい。
また、上記した実施形態では、回転軸40が一対設けられ、一対の回転軸40が旋回軸線AX1を挟んで配置される構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、複数の回転軸40が旋回軸線AX1を挟まずに、旋回軸線AX1に対して片側に配置される構成であってもよい。また、例えば、複数の回転軸40のうち1つの回転軸40が旋回軸線AX1上に配置されてもよい。
また、上記した実施形態では、一対の回転軸40のそれぞれが、旋回軸線AX1からの距離が同一又はほぼ同一である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、一対の回転軸40において、それぞれ旋回軸線AX1からの距離が異なるように配置される構成であってもよい。