従来、実用的な研磨装置が種々市販されており、これらの研磨装置を使用して良好に研磨作業が行われている。しかし、特に、切断、剪断、穴あけなどによって加工材に生じたバリを研磨除去するバリ取り作業は、非常に機械化の遅れた部門である。
特に、前記加工材のバリが生じた箇所(以下、バリ形成箇所という。)だけを的確に研磨する作業、即ち、前記加工材の前記バリ形成箇所だけを研磨し、他の部位は傷付けずにバリだけを的確に除去する作業は、自動化が非常に厄介であり、これが前記バリ取り作業の機械化の遅れの原因となっている。
その為、従来から提案され、市販されている種々のバリ取り装置(以下、従来機という。)においても、以下のような問題点が生ずるものである。
例えば、定テンションのベルトサンダーや平行スピンドル方式を採用した従来機は、前記加工材の加工形成面の形状に関わらず、該加工材に対して平面的に研磨若しくは切削を行う為、バリ形成箇所における前記加工材の加工形成面が平面であった場合には良好にバリを除去することができるが、しかし、前記加工材の前記バリ形成箇所が曲面であった場合には該曲面の面角度毎に前記バリ取り作業を行わなければならず、これが不均一な仕上がりになってしまうなどの欠点を有し、従って、単純形状な加工材にしか良好に採用できないという問題点を有する。
また、例えば、ティーチングなどによる倣い方式を採用した従来機は、前記加工材の前記バリ形成箇所の形状に沿うように該加工材を研磨若しくは切削を行い、即ち、前記加工材のバリ形成箇所だけを的確に検出してバリだけを選択的に研磨若しくは切削などを行うことができ、上述の問題点を解決し得るように思われるが、しかし、このタイプの従来機は、前記ティーチングを行うために時間や手間を要し、それだけ作業性や量産性を損ねるという欠点を有する為、例えば、ペーパーサンドやヤスリなど使用して手動により前記バリ取り作業を行った場合と比して、従来機を用いて作業を機械化したことによる作業の効率化や量産性の向上などの効果が十分に得られない場合がある(特に、前記加工材が多品種少量生産である場合、前記ティーチングに要する作業工程の割合が相対的に大きくなるため、一層作業性や量産性を損ねる原因となる。)などの問題点を有する。
ところで、従来、金属材や木材などの加工材を研磨するロータリーペーパーサンダーが知られている。これは、例えば、砥粒面及び非砥粒面とからなるペーパーサンド(研磨布紙)を自転回転軸に対して放射方向に多数突設し、これらの多数の研磨布紙を前記自転回転軸を軸に回転させて金属材や木材などの加工材の研磨を行うもので、これらの多数の研磨布紙は可撓性を有するが故に前記加工材の表面形状に沿うようして接触しこれを研磨するので、平面形状は勿論、曲面形状や起伏形状など様々な表面形状の加工材に対して均一な表面研磨を施すことを目的とするものである。
従って、例えば、この従来のロータリーペーパーサンダーを用いて前記バリ取り作業を行った場合には、上述のようなティーチングを行わなくとも前記バリ形成箇所の形状に関わりなく簡単且つ良好にバリを研磨除去することができる。
しかし、この従来のロータリーペーパーサンダーを使用してのバリ取り作業は、バリ形成箇所を研磨するだけでなく、他の部位も満遍なく研磨してしまうので、前記バリ形成箇所のみを選択的に研磨するといったことはできず、加工材の端部のバリだけを選択的に研磨除去するというバリ取り作業を機械的に良好に達成できるものではない。
また、例えば、板金塗装などにおいては、加工材の表面を荒らしてから塗装を行うと塗料の密着度が良くなるため、加工材の端部のバリ取り作業を行う際に、加工材の表面も満遍なく均等に研磨して表面を均等に荒らしたい場合もある。即ち、加工材の端部のバリだけを選択的に研磨する必要がなく、加工材の端部も他の部位も満遍なく均一的に研磨したい場合もある。
このように、加工材の端部だけで無く他の部位も研磨する作業において、従来のロータリーペーパーサンダーを使用した場合には、加工材の端部のバリ取り作業と、他の部位の研磨を同時に行うことができる。しかし、加工材を満遍なく多方向から研磨しようとした場合には、ロータリーペーパーサンダー自体を作業者が手で持って様々な方向から加工材に押し当てて研磨作業を行わなければならず、作業者の手加減によってロータリーペーパーサンダーの加工材への接触圧がバラつき、よって、研磨度合いもバラつき表面粗さが不均一となってしまうという問題を有した。
よって、加工材の端部のバリを研磨除去するのではなく、他の部位も研磨して良い、若しくは他の部位も研磨したい場合においても、従来のロータリーペーパーサンダーでは良好に研磨作業を行えなかった。
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
一方側を砥粒面5,他方側を非砥粒面5aに形成した研磨布紙4を一対、互いの砥粒面5が対向する方向に重合配設して成る研磨体7を、自転回転軸aに対して放射方向に、且つ表面を自転回転軸aの軸方向と対向方向に、且つ自転回転軸aの軸方向に所定間隔を介して多数並設状態に設けた回転研磨体1を、移動装置部Mによって該回転研磨体1の自転回転軸aの軸方向の速度成分が生ずる方向に移動させつつ、該回転研磨体1を前記自転回転軸aを軸に自転回転させると、前記研磨体7が自転回転による遠心力で前記自転回転軸aを中心に放射方向に広がり、更に、前記研磨体7、即ち一対の研磨布紙4は重合状態を解消して先端側ほど離間した略V字状になって回転する。
また、移動装置部Mによって前記回転研磨体1は自転回転軸aの軸方向の速度成分が生ずる方向に移動させられているので、前記の略V字状になって回転する多数の一対の研磨布紙4(研磨体7)も、前記自転回転軸aの軸方向の速度成分を有しながら自転回転することとなる。
この略V字状となって回転する一対の研磨布紙4の長手方向一側縁が金属材や木材などの加工材6に当接すると、加工材6との接触抵抗によって、前記研磨布紙4の片側だけが極端に前記軸方向の速度成分を損ね、回転力が生じ、この回転力によって前記研磨布紙4は先端側を所定の捻れ方向に捻れ曲がることとなる。
即ち、前記加工材6に長手方向一側縁を当接した研磨布紙4は、ランダムな捻れ方向に捻れ曲がるのではなく、一対の研磨布紙4のうちの前記軸方向の速度成分の進行方向へ先行する方の研磨布紙4(軸方向に先行移動する研磨布紙4)は軸方向の進行方向側、即ち、非砥粒面5aを加工材6に向ける捻れ方向に捻れ曲がることとなり、該非砥粒面5aを前記加工材6に接触させることとなり、また、一対の研磨布紙4のうちの前記軸方向の速度成分の進行方向へ後続する方の研磨布紙4(軸方向に遅行移動する研磨布紙4)は軸方向の進行方向側、即ち、砥粒面5を加工材6に向ける捻れ方向に捻れ曲がることとなり、軸方向に先行移動する研磨布紙4に重合することとなる。
この際、これらの一対の研磨布紙4は先端側ほど離間したV字状態で回転していたが故に、軸方向に先行移動する研磨布紙4に重合したもう一方の(軸方向に遅行移動する)研磨布紙4は、位置合致して重合せず、先端側程位置ズレして重合することとなる。
即ち、例えば、一対の研磨布紙4が加工材6の側方から該加工材6の端部に当接した場合には、軸方向に遅行移動する研磨布紙4の先端側の砥粒面5の一部が、軸方向に先行移動する研磨布紙4に重合せずに外側にはみ出し、この位置ズレによって外側に露出した砥粒面5によって前記加工材6の端部を研磨することとなる。
次いで、両研磨布紙4が可撓性によってL字状に撓み、前記加工材6の上部表面に載上した場合には、軸方向に先行移動する前記研磨布紙4に、軸方向に遅行移動する前記研磨布紙4が載上し、接触する互いの砥粒面5の接触抵抗によって、両研磨布紙4は一体となって前記加工材6の上部表面を滑動し、後続の研磨布紙4の砥粒面5の前記加工材6の上部表面への接触(研磨)が阻止されることとなる。(一対の研磨布紙4が加工材6の上方から該加工材6の上部表面に当接した場合も同様である。)。
従って、本発明に係る研磨装置は、前記研磨体7、即ち、互いの砥粒面5を対向させて重合した一対の研磨布紙4によって、前記加工材6の端部に側方から当接した場合のみ該加工材6の端部を研磨し、その他の部位は前記砥粒面5の接触による研磨が阻止されることとなり、例えば、切削加工や切欠加工などによって端部にバリが形成された加工材6のバリ取り作業を本発明品を用いて行えば、バリ以外の部位には殆ど傷を付けずに、バリだけを選択的に研磨除去することができ、従来例のように煩雑なバリ取り作業を極めて簡易に、効率良く行うことができる極めて作業性に秀れた画期的で実用性に秀れた研磨装置となる。
また、請求項2記載の発明においては、前記移動装置部Mとして、前記回転研磨体1を、公転軸bを軸に回転する回転基体3に複数設け、各回転研磨体1は、前記回転基体3の回転に伴って前記公転軸bを中心に公転回転した際に各自転回転軸aの軸方向の速度成分が生ずるように、各自転回転軸aの軸方向と前記公転軸bの軸方向とが交差しない位置関係となるように設定した構成の移送装置部Mを採用したので、前記回転基体3を前記公転軸bを軸に回転させるだけで、複数の前記回転研磨体1に確実に各自転回転軸aの軸方向の速度成分を生じさせることができることとなる。
更に、前記公転回転する複数の前記回転研磨体1で前記加工材6を多方向から研磨し得るように各回転研磨体1を前記回転基体3に配設した構成としたから、例えば本実施例に係る研磨装置を、加工材6の端部に形成されたバリを研磨除去するバリ取り作業に使用した場合には、加工材6の端部に形成されたバリを一層満遍なく研磨除去することができることとなる。即ち、前記公転軸bから放射方向に各自転回転軸aの軸方向を設定し、各自転回転軸aの軸方向と前記自転回転軸aの軸方向とが交差する位置関係に設定されていた場合、前記公転軸bから放射状に前記回転研磨体1を複数設けても、前記加工材6に対する研磨方向はパターンが限られ、多方向からの研磨は実現されないが、これに対して、本発明のように複数の前記回転研磨体1を、各自転回転軸aの軸方向と前記公転軸bの軸方向とが交差しない位置関係となるように設定した場合には、複数設けた回転研磨体1によって各個に異なる様々な方向からの研磨を実現可能となる。
従って、本発明においては前記移動装置部Mを、前記回転研磨体1を、公転軸bを軸に回転する回転基体3に複数設け、更に、各自転回転軸aの軸方向と前記公転軸bの軸方向とが交差しない位置関係となるように設定した構成とすることで、前記回転研磨体1を自転回転軸aの軸方向の速度成分が生ずる方向に移動させることと、複数の前記回転研磨体1によって前記加工材6を多方向から研磨し得ることとを同時に実現し得る極めて秀れた構成の移動装置部Mを採用して一層実用性に秀れた研磨装置となる。
また、請求項3記載の発明においては、前記移動装置部Mは、複数の前記回転研磨体1の各自転回転軸aの軸方向を前記公転軸bと直交する平面上に設定した構成とした場合には、前記公転軸bを水平面に対して垂直方向に設定した場合に、当然、前記自転回転軸aは水平方向に設定されることとなり、従って、前記公転軸bを中心に公転回転する複数の前記回転研磨体1を、可及的に水平に保持しつつ水平な前記公転回転を行わせ得る構成が簡易に実現可能となる。
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
本実施例は、一方側を砥粒面5,他方側を非砥粒面5aに形成した研磨布紙4を一対互いの砥粒面5が対向する方向に重合配設して成る研磨体7を、自転回転軸aに対して放射状態に、且つ自転回転軸aの軸方向に所定間隔を介して多数並設状態に設けると共に、各研磨体7の表面を自転回転軸aの軸方向と対向状態に設け、この自転回転軸aを軸に回転してこの自転回転軸aに設けた多数の研磨体7を回転させ金属材や木材などの加工材6を研磨するように構成した回転研磨体1と、この回転研磨体1を前記自転回転軸aの軸方向の速度成分が生ずる方向に移動させつつこの回転研磨体1を前記加工材6に当接させる移動装置部Mとを設けた研磨装置である。
本実施例では、前記移動装置部Mとして、前記回転研磨体1を、公転軸bを軸に回転する回転基体3に複数設け、各回転研磨体1は、前記回転基体3の回転に伴って前記公転軸bを中心に公転回転した際に各自転回転軸aの軸方向の速度成分vが生ずるように、各自転回転軸aの軸方向と前記公転軸bの軸方向とが交差しない位置関係となるように設定し、前記公転回転する複数の前記回転研磨体1で前記加工材6を多方向から研磨し得るように各回転研磨体1を前記回転基体3に配設した構成の移動装置部Mを採用している。
回転研磨体1は、前記自転回転軸aと多数の研磨体7とから成る構成である。
本実施例の多数の研磨体7、即ち多数の研磨布紙4は、図1に図示したように、全て細長な長方形状に形成された略同一形状の研磨布紙4である。
また、これらの多数の細長な長方形状の研磨布紙4を、互いの砥粒面5を合わせた方向で重合すると共に前記自転回転軸aの周面に該周面から放射方向に突出するように配設した構成である。
また、これらの多数の研磨体7は、具体的には、図1に図示したように、前記自転回転軸aの軸方向に所定間隔を介した複数の箇所を基点とし、各基点の周囲に、自転回転軸a軸方向視において該自転回転軸aを中心に約15°乃至18°の間隔を介して放射方向に設けた構成である。
尚、これらの多数の研磨体7は、前記自転回転軸aを中心に約15°乃至18°の間隔を介して放射方向に設けた構成としたが、これに限らず、例えば前記自転回転軸aを中心に18°以上の角度間隔を介して放射方向に設けた構成としても良く、また、これら多数の研磨体7は、前記自転回転軸aの軸方向に所定間隔を介した複数の箇所を基点とし、各基点の放射方向に多数の研磨体7設けた構成としたが、これに限らず、前記自転回転軸aの周面を囲繞するように螺旋状に多数の研磨体7を配設した構成としても良く、本実施例の機能を発揮し得るように多数の研磨体7を配設した構成とすれば良い。
また、この回転研磨体1の自転回転軸aに多数配設する研磨体7は、一体づつ前記自転回転軸aの周面に配設した構成としても良いが、本実施例においては、図5に図示したように、一枚の大きな矩形状のサンドペーパーの両端側から中央に向けてスリットを形成し、次いで、このサンドペーパーを砥粒面5が内方に対向状態となるように二つ折りにして(サンドペーパーを二つ折にした後にスリットを形成しても良い。)、互いの砥粒面5を対向状態に一対の研磨布紙4を重合して成る研磨体7を一体に多数成形すると共に、この多数の研磨体7が形成したサンドペーパーを、図5に図示したように、面方向に湾曲することで前記多数の研磨体7が放射方向に配設されるように湾曲して前記自転回転軸aの周面に被嵌配設することで、この一枚の矩形状のサンドペーパーから形成した多数の研磨体7を自転回転軸aに放射状に配設した構成であり、この一枚の矩形状のサンドペーパーから形成した多数の研磨体7を前記自転回転軸aの軸方向に所定の間隔を介して配設して前記回転研磨体1を構成している。尚、この一枚の矩形状のサンドペーパーにスリットを形成して二つ折りとしたうえで前記自転回転軸aの周面に螺旋状に配設することで、前記多数の研磨体7を前記自転回転軸aに螺旋状に配設することで前記多数の研磨体7を自転回転軸aに配設して前記回転研磨体1を構成しても良い。
従って、図5に図示したように、多数の研磨体7を単に一枚の大きな矩形状のサンドペーパーにスリットを入れて二つ折りにして形成する為、回転研磨体1を簡易に生産でき量産性に秀れる。
この回転研磨体1は、前記自転回転軸aを軸に正逆回転自在に構成し、また、前記自転回転軸aを軸として自転回転した際に、該回転研磨体1に多数設けた研磨体7が前記自転回転による遠心力で前記自転回転軸aの周面から放射方向に広がるように、該回転研磨体1の自転回転速度を設定している。
回転基体3は、図1に図示したように、水平面に対して垂直な公転軸bを中心とした長方体形状に形成し、前記公転軸bを軸に水平方向に正逆方向に回転可能な構成である。
また、この回転基体3の周囲に、前記公転軸bの軸方向と交差しないように自転回転軸aの軸方向を設定した前記回転研磨体1を複数配設している。
具体的には、回転基体3に配設した複数の前記回転研磨体1によって加工材6を可及的に多方向から研磨し得るように、平面視において前記公転軸bを中心として想定されるX−Y平面上の第一象限乃至第四象限の各象限内に前記回転研磨体1が配されるように、図1に図示したように、前記回転基体3の長手方向両側面の両端側、即ち、四箇所に前記回転研磨体1を配設している。尚、本実施例では、回転基体3に前記回転研磨体1を四体設けた構成であるが、これに限らず、回転基体3に前記回転研磨体1を三対設けた構成、若しくは六体設けた構成など、適宜に複数体設けた構成とすれば良い。
また、これら複数の回転研磨体1は、各自転回転軸aの軸方向を前記公転軸bと直交する平面上(水平面上)に設定し、また、これらの回転研磨体1の各自転回転軸aの軸方向を同一平面上に設定しており、更に、これらの回転研磨体1のうちの、前記回転基体3を介して左右に配設された回転研磨体1同士は各自転回転軸aを同一直線上に設定し、また前記回転基体3の長手方向に前後に配設された回転研磨体1同士は各自転回転軸aを互いに平行となるように設定している。
また、前記回転基体3の公転軸bを軸とした回転に伴って複数の前記回転研磨体1が公転軸bを中心に公転回転した際、各回転研磨体1に前記自転回転軸aの軸方向の速度成分vが生ずるように、前記公転軸b軸方向視において前記自転回転軸aと公転軸bとは、十分に離間した位置関係に設定している。
また、前記自転回転軸aを軸に自転回転すると共に公転軸bを中心に公転回転する前記回転研磨体1の研磨体7(略V字状になって回転する一対の研磨布紙4a,4b)が加工材6に当接した際に、各研磨体7に、一定の捻れ方向へと捻れ曲がらせる捻れ作用(回転作用)が生じるように、前記回転基体3の前記公転軸bを軸とした回転速度、即ち、前記回転研磨体aの前記公転軸bを中心とした公転回転速度を設定している。
本実施例は、上述のように構成したから、複数の前記回転研磨体1を自転回転軸aを軸に自転回転させると共に、前記公転軸bを軸に公転回転させると、回転研磨体1の前記自転回転軸aに対して放射方向に突出するように多数設けた研磨体7、即ち、一対の研磨布紙4a,4bが、自転回転による遠心力によって前記自転回転軸aから放射状に広がり、更に、先端側程離間した略V字状になって回転する。
この回転研磨体1の下方に加工材6を配し、この加工材6の端部に前記一対の研磨布紙4a,4bの各長手方向一側縁が当接すると、図2(a)〜(c)に図示したように、前記一対の研磨布紙4a,4bによって、該加工材6の端部が研磨されることとなる。
具体的には、前記一対の研磨布紙4a,4bのうちの前記軸方向の速度成分vの進行方向へ先行する研磨布紙4a(以下、軸方向に先行移動する研磨布紙4a)は、先ず、図2(a)に図示したように、一方(図2中、手前右側)の長手方向一側縁が前記加工材6の端部と当接し、この加工材6と当接した片側縁だけが極端に前記軸方向の速度成分vを損ね、その結果、回転作用が生じ、図2(b)に図示したように、前記の回転作用によって非砥粒面5aが前記加工材6の端部と接触するような捻れ方向に捻れ曲がることとなる。
また、前記一対の研磨布紙4a,4bのうちの前記軸方向の速度成分vの進行方向へ後続する研磨布紙4b(以下、軸方向に遅行移動する研磨布紙4b)は、先ず、図2(a)に図示したように、一方(図2中、手前右側)の長手方向一側縁が前記加工材6の端部と当接し、この加工材6と当接した片側縁だけが極端に前記軸方向の速度成分vを損ね、その結果、回転作用が生じ、図2(b)に図示したように、前記の回転作用によって砥粒面5が前記加工材6の端部と接触するような捻れ方向に先端側が捻れ曲がると共に、軸方向に先行移動する研磨布紙4aに重合することとなる。
この際、この軸方向に遅行移動する研磨布紙4bは、軸方向に先行移動する研磨布紙4aと丁度位置合致して重合せずに、先端側程位置ズレして重合することとなるので、この位置ズレによって横方向にはみ出した研磨布紙4bの砥粒面5が、図2(b)に図示したように前記加工材6の端部に接触することとなり、この加工材6の端部の研磨が行われることとなる。即ち、加工材6に当接するまでこれらの一対の研磨布紙4a,4bは先端側ほど離間したV字状になって回転していたため、前記の位置ズレが生ずるものである。
次いで、一対の研磨布紙4a,4bは前記加工材6の上部表面に載上し、この際、軸方向に先行移動する研磨布紙4aは図2(c)に図示したように、略L字状に歪曲して該加工材6の上部表面に載上し、軸方向に遅行移動する研磨布紙4bも同様に略L字状に歪曲すると共に、軸方向に先行移動する研磨布紙4aの上に載った状態となり、向かい合う互いの砥粒面5同士の接触抵抗によって係止され、この軸方向に先行移動する研磨布紙4a上に軸方向に遅行移動する研磨布紙4bが保持されることとなり、図2(c)に図示したように、前記加工材6の上部表面を一体滑動することとなる。即ち、軸方向に先行移動する研磨布紙4aの非砥粒面5aのみが前記加工材6の上部表面に接触し、軸方向に後続移動する研磨布紙4bの砥粒面5が前記加工材6の上部表面に接触することが阻止される。
また、一対の研磨布紙4a,4bが前記加工材6の上方から該加工材6の上部表面に当接した場合も、軸方向の速度成分vによって、軸方向に先行移動する研磨布紙4aは加工材6の上部表面に非砥粒面5aを接触させる方向に捻れ曲がりL字状に歪曲し、この上にL字状に歪曲した軸方向に先行移動する研磨布紙4bが保持され、砥粒面5が前記加工材6の上部表面に接触することが阻止される。
即ち、本実施例は、前記回転研磨体1を単に自転回転軸aを軸に自転回転させるだけでなく、移動装置部Mによって、この回転研磨体1に自転回転軸aの軸方向の速度成分vが生ずる方向に該回転研磨体1を移動させつつ研磨を行う構成としたことによって、研磨体7が加工材6の端部に側方から当接した場合にのみ該加工材6の端部を研磨し、加工材6の上部表面に接触した場合には非砥粒面5aしか接触し得ない構成としたものである。
また、本実施例は、前記回転研磨体1に自転回転軸aの軸方向の速度成分vが生ずる方向に該回転研磨体1を移動させるために、公転軸bを軸に回転する回転基体3に前記回転研磨体1を複数設け、各回転研磨体1の自転回転軸aの軸方向と前記公転軸bの軸方向とが交差しない位置関係となるように設定した構成の移動装置部Mを採用しているが、この移動装置部Mの構成により、回転研磨体1に軸方向の速度成分vが良好に生ずることとなるのは勿論、更に、多数の回転研磨体1によって加工材6を多方向から満遍なく研磨し得る構成も同時に実現し得ることとなる。
即ち、仮に前記移動装置部Mを、従来のロータリーペーパーサンダーの移動装置部Mに置き換えた構成(複数の回転研磨体1の各自転回転軸aの軸方向と、公転軸bの軸方向とが交差する位置関係となるように設定した構成)とした場合、図6に図示したように、各回転研磨体1に自転回転軸aの軸方向の速度成分vが生じないのは勿論、仮に該速度成分vが生じていたと仮定しても、下方に配した加工材6に対する各回転研磨体1の研磨体7の当接方向dの変化(バリエーション)が少なく、その為、加工材6の端部の一部しか研磨し得ない構成となってしまう(研磨体7が加工材6の端部に側方から当接した場合にしか研磨を行わない本実施例の構成においては、加工材6に対して多方向から前記研磨体7を当接させ得る構成は必須である。)。
これに対して、本実施例においては、複数の回転研磨体1の各自転回転字軸aの軸方向と、公転軸bの軸方向が互いに交差しない位置関係となるように設定した構成としたことによって、図3に図示したように、各回転研磨体1に自転回転軸aの軸方向の速度成分vが良好に生ずることとなるのは勿論、下方に配した加工材6に対する各回転研磨体1の研磨体7の当接方向dのバリエーションが多く、四体の回転研磨体1によって加工材6の端部を隈なく均一に研磨することが可能である。
従って、本実施例においては、他の部位は殆ど傷を付けずに、加工材6の端部だけを選択的に研磨することができ、しかも、多方向から満遍なく該加工材6を研磨し得るから、例えば、切削加工や切欠加工などにより端部にバリが形成された加工材6を本実施例に係る研磨装置で研磨した場合には、本実施例に係る研磨装置は、端部に形成されたバリだけを選択的に研磨し除去できる秀れたバリ取り装置となる。
よって、本実施例は、ただ加工材6を回転研磨体1の下方に配するだけで、この加工材6の端部のみを選択的に研磨することができるので、従来例のように、加工材6のバリ形成箇所をティーチングによって研磨装置に認識させたり加工材6のバリ形成箇所の曲面形状に合わせて所定角度毎に何度も研磨作業を行うなどの必要がなく、極めて簡単に、バリが形成された端部のみを満遍なく均一に研磨でき、作業効率が悪く厄介なバリ取り作業を簡単且つ効率良く行うことができ、作業性に秀れた画期的で商品価値の高い研磨装置である。
しかも、加工材6の端部のみを選択的に研磨し得る構成と、加工材6に対して多方向から研磨し得る構成とを、同時に実現できる移動装置部Mを採用したことにより、それだけ機能効率が良く機構の大幅な簡素化が実現できるが故に、秀れた生産性と低コスト化を実現し得、作業性だけでなく実用性も極めて秀れた商品価値の高い研磨装置である。
また、本実施例では、前記回転基体3の周囲に、平面視において前記公転軸bを中心として想定されるX−Y平面上の第一象限乃至第四象限の各象限内に回転研磨体1を配しており、図3に図示したとおり、前記回転基体3を前記公転軸bを軸に一回転させた際に、下方に配した加工材6に対して平面視において略全方向から研磨し得る構成となるから、前記加工材6の端部に形成されたバリを研磨除去した際に、確実に前記加工材6を満遍なく均一にバリ取りすることができる。また、本実施例では、前記回転基体3及び回転研磨体1を正逆回転自在に構成したが、仮に一方向にしか回転できない構成とした場合にも、図3に図示した通り、前記加工材6に対して多方向から研磨できるので、秀れた研磨機能を保持したまま前記回転基体3及び回転研磨体1を一方向にしか回転できない構成とすることも可能で、この場合には一層機構を簡素化し得、それだけコスト安となり、一層生産性に秀れる。
また、本実施例では、複数設けた前記回転研磨体1の各自転回転軸aの軸方向を、前記公転軸bと直交する同一平面上に、本実施例では同一水平面上に設定したので、複数の回転研磨体1同士に高低差がなく、下方に配した加工材6に対して各研磨体1が均一に研磨を行うので、加工材6に対して一層均一な研磨を行うことができ作業性に秀れ、また、各回転研磨体1同士に高低差が生じないので、当然、各回転研磨体1を同一形状に形成できるなど、実用性に秀れる。
また、本実施例では、多数の研磨体7は、一対の研磨布紙4a,4bが前記自転回転の遠心力によって先端側ほど離間して略V字状となって回転するように、これら一対の研磨布紙4a,4bは各表面が前記自転回転軸aの軸方向と直交する方向となるように配設しており、仮に前記自転回転軸aの軸方向に沿って平行な表面となるように一対の研磨布紙4a,4bを配設した場合に比して腰が強く、上述の通り前記回転研磨体4bの砥粒面5が加工材6の端部に接触する際にそれだけ強く接触し、良好に研磨し得ることとなるなど、作業性に秀れる。
また、本実施例では、前記多数の研磨体7は、前記自転回転軸aの周面に放射状に突出状態に設けた構成としたので、前記自転回転軸aを回転させることで、必然的に前記研磨体7も回転させることができ、前記研磨体7を前記自転回転軸aを軸に回転させるための特別な構成は必要なく、簡易構成にして生産性に秀れる。
また、本実施例においては、前記回転研磨体1及び前記回転基体3を正逆回転自在な構成としたので、加工材6に対して一層適宜な当接方向dから研磨体7を当接させ得るなど、一層作業性に秀れる。
尚、本実施例においては、加工材6の端部のバリだけを選択的に研磨除去して他の部位は傷つけない(研磨しない)ように構成しているが、例えば、加工材6の端部のバリを研磨する際に他の部位も研磨して良い場合には、若しくは加工材6の端部のバリを研磨する際に他の部位も研磨したい場合には、前記回転研磨体1の研磨体7の一対の研磨布紙4の重合向きはいずれの向きでも構わない。
例えば、図4に図示したように、この研磨体7の一対の研磨布紙4を互いに砥粒面5を前記回転研磨体1の自転回転軸aの軸方向の進行方向に向けて配設した場合には、図4(a)に図示したように、研磨体7が加工材6の端部から当接した際に一対の研磨布紙4の長手方向一側縁が加工材6の端部に強く当接してこの研磨布紙4の側縁により加工材6の端部を良好に研磨すると共に、この一対の研磨布紙4がいずれも各砥粒面5を加工材6の端部に向けて捻れ曲がることとなる(図4(b)参照)為、更に良好にこの加工材6を砥粒面5で確実に、且つ効率的に研磨することとなる。また、加工材6の端部のバリの研磨除去を良好に行うことができることは勿論、図4(c)に図示したように、この研磨体7の一対の研磨布紙4が加工材6上に載上した際には、この研磨体7の一対の研磨布紙4が重合した状態で、この一対の研磨布紙4のいずれの研磨布紙4の砥粒面5も加工材6の上部表面に沿って平行に接触しながら適度な接触圧で当接して良好に研磨を行うこととなる為、従来例のように、加工材6に対しての研磨布紙4の接触圧がバラついて研磨度合いがバラついてしまったりせず、加工材6の表面を万遍無く均一的に研磨できる。
また、研磨体7はたった一枚の研磨布紙4から成る構成ではなく、一対の研磨布紙4を重合配設して成る構成としているので、それだけ研磨体7を加工材6に強く接触させて研磨でき、よって、それだけ効率的に研磨できる構成としたり、各研磨布紙4の厚みを薄く構成して加工材6の細かい箇所にも良好に研磨布紙4を入り込ませて研磨でき細部まで隈なく研磨できる構成としたりできる。また、仮に研磨体7を三枚以上の複数の研磨布紙4を重合配設して成る構成とした場合には、加工材6に対して研磨体7を接触した際の研磨量がその時々によって非常にバラついてしまう(複数の研磨布紙4のうちの何枚の研磨布紙4の各砥粒面5が加工材6に接触するかがその時々によってランダムに決まってしまうので研磨量がバラつき均一的な研磨が困難となってしまう。)。即ち、研磨体7を一枚の研磨布紙4から成る構成とするのでなく、また、研磨体7を三枚以上の研磨布紙4を重合配設して成る構成とするのでもなく、上記の通り研磨体7を二枚の研磨布紙4を互いの非砥粒面5aを対向状態に重合配設して成る構成とすることにより上記の秀れた研磨機能を有することとなり、従って、研磨体7の一対の研磨布紙4を互いの砥粒面5を対向状態に重合するのではなく、各研磨布紙4の砥粒面5を回転研磨体1の自転回転軸aの軸方向の進行方向に向けて配設して研磨体7を構成した場合においては、加工材6の端部のバリを満遍なく効率的に除去し得ると共にこの加工材6の端部以外の部位も均一的に満遍なく研磨し得ることとなり、よって、例えば、表面を荒らして塗料の密着度を良くする作業を行う板金塗装作業時などのように加工材6の端部のバリ取り作業だけでなく他の部位も満遍なく均一に研磨したい場合に用いる研磨装置としての高い実用価値を有するものとなる。
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。