以下、図面を参照して本開示に係る実施形態について説明する。なお、図面には、便宜的に、D1軸、D2軸及びD3軸からなる直交座標系を付すことがある。実施形態に係る水晶振動子は、いずれの方向が上方又は下方として用いられてもよい。ただし、以下では、便宜上、D3軸正側を上方として、又は現に説明している図面の紙面上方を上方として、上面又は下面等の用語を用いることがある。
本実施形態における水晶振動子1は、図1〜図3に示されているように、パッケージ110と、パッケージ110の上面に接合された水晶素子120と、パッケージ110の下面に接合された温度センサ130とを含んでいる。パッケージ110は、基板部110aの上面と第一枠部110bの内側面によって囲まれた第一凹部K1が形成されている。また、パッケージ110は、基板部110aの下面と第二枠部110cとの内側面によって囲まれた第二凹部K2が形成されている。第一凹部K1は蓋体140によって気密封止されている。
(パッケージ)
基板部110aは、矩形状であり、上面で実装された水晶素子120及び下面で実装された温度センサ130を支持するための支持部材として機能する。基板部110aの上面には、水晶素子120を接合するための電極パッド111が設けられている。基板部110aの下面には、温度センサ130を接合するための接合パッド115(115a、115b)が設けられている。
基板部110aは、例えばアルミナセラミックス又はガラス−セラミックス等のセラミック材料である絶縁層からなる。基板部110aは、絶縁層を1層用いたものであっても、絶縁層を複数層積層したものであってもよい。基板部110aの表面及び内部には、上面に設けられた電極パッド111と、第二枠部110cの下面に設けられた第一外部接続用電極端子G1とを電気的に接続するための水晶素子用配線パターン113及び第一ビア導体114が設けられている(図4)。また、基板部110aの表面及び内部には、下面に設けられた接合パッド115と、第二枠部110cの下面に設けられた第二外部接続用電極端子G2とを電気的に接続するためのセンサ用配線パターン116及び第二ビア導体117が設けられている(図5)。
第一枠部110bは、基板部110aの上面に配置され、基板部110aの上面に第一凹部K1を形成する。第二枠部110cは、基板部110aの下面に配置され、基板部110aの下面に第二凹部K2を形成する。第一枠部110b及び第二枠部110cは、例えばアルミナセラミックス又はガラス−セラミックス等のセラミック材料からなり、基板部110aと一体的に形成されている。
第一凹部K1が蓋体140によって気密封止されるのに対して、第二凹部K2は外部へ開放された状態とされている。すなわち、第二凹部K2は、蓋体で塞がれてはおらず、また、封止樹脂が充填されてもいない。ただし、第二凹部K2は、図示の例とは異なり、樹脂が充填されるなどして気密封止されてもよい。第二凹部K2は、水晶振動子1が不図示の回路基板に実装された後、水晶振動子1が樹脂封止されることによって気密封止されてもよいし、そのような気密封止がなされなくてもよい。
パッケージ110の各部の寸法は適宜に設定されてよい。例えば、第二枠部110cの厚さは、基板部110a及び第一枠部110bの合計の厚さよりも薄い。もちろん、前者は後者と同等以上であってもよい。パッケージの外形の寸法は、一例を挙げると、長辺の長さ(D1軸方向)が1.5mm以上3.0mm以下、短辺の長さ(D2軸方向)が1.0mm以上2.5mm以下(ただし長辺よりも短い)、厚さ(D3軸方向)が0.4mm以上1.5mm以下(ただし短辺よりも短い)である。
また、第二枠部110cの下面の四隅には、一対の第一外部接続用電極端子G1と一対の第二外部接続用電極端子G2が設けられている。一対の第一外部接続用電極端子G1は、第二枠部110cの下面の対角に位置するように設けられている。また、第二外部接続用電極端子G2は、第一外部接続用電極端子G1が設けられている対角とは異なる第二枠部110cの対角に位置するように設けられている。
電極パッド111は、水晶素子120を実装することに用いられる。電極パッド111は、基板部110aの上面に一対で設けられており、基板部110aの一辺に沿うように隣接して設けられている。電極パッド111は、図4及び図5に示されているように、基板部110aの上面に設けられた水晶素子用配線パターン113と、基板部110a及び第二枠部110cに設けられた第一ビア導体114とを介して、第二枠部110cの下面に設けられた第一外部接続用電極端子G1と電気的に接続されている。
一方の電極パッド111aは、図4に示すように、一方の水晶素子用配線パターン113aの一端と接続されている。また、一方の水晶素子用配線パターン113aの他端は、図4及び図5に示すように、一方の第一ビア導体114aを介して一方の第一外部接続用電極端子G1aと接続されている。よって、一方の電極パッド111aは、一方の第一外部接続用電極端子G1aと電気的に接続されることになる。また、他方の電極パッド111bは、図4に示すように、他方の水晶素子用配線パターン113bの一端と接続されている。また、他方の水晶素子用配線パターン113bの他端は、図4及び図5に示すように、他方の第一ビア導体114bを介して他方の第一外部接続用電極端子G1bと接続されている。よって、他方の電極パッド111bは、他方の第一外部接続用電極端子G1bと電気的に接続されることになる。
接合パッド115は、温度センサ130を実装することに用いられる。接合パッド115は、基板部110aの下面に一対で設けられており、基板部110aの中央に隣接して設けられている。接合パッド115は、図5(a)に示されているように、基板部110aの下面に設けられたセンサ用配線パターン116と、第二枠部110cの内部に形成された第二ビア導体117とを介して、第二枠部110cの下面に設けられた第二外部接続用電極端子G2と電気的に接続されている。
一方の接合パッド115aは、図5(a)及び図5(b)に示すように一方のセンサ用配線パターン116aの一端と接続されている。また、一方のセンサ用配線パターン116aの他端は、一方の第二ビア導体117aを介して一方の第二外部接続用電極端子G2aと接続されている。よって、一方の接合パッド115aは、一方の第二外部接続用電極端子G2aと電気的に接続されることになる。また、他方の接合パッド115bは、図5(a)及び図5(b)に示すように他方のセンサ用配線パターン116bの一端と接続されている。また、他方のセンサ用配線パターン116bの他端は、他方の第二ビア導体117bを介して他方の第二外部接続用電極端子G2bと接続されている。よって、他方の接合パッド115bは、他方の第二外部接続用電極端子G2bと電気的に接続されることになる。
また、第二凹部K2内底面に露出している一方のセンサ用配線パターン116aの長さと他方のセンサ用配線パターン116bの長さが略等しくなっている。つまり、一対のセンサ用配線パターン116の長さが略等しい長さになっている。第二凹部K2内底面に露出している一対のセンサ用配線パターン116の長さは、約200〜250μmである。ここで、略等しい長さとは、一方のセンサ用配線パターン116aの配線長と、他方のセンサ用配線パターン116bの配線長との差が0〜50μm異なるものを含むものとする。また、配線の長さは、各配線の中心を通る直線の長さを測定したものとする。一方のセンサ用配線パターン116aの配線長と、他方のセンサ用配線パターン116bの配線長とが略等しい長さとなることによって、発生する抵抗値が等しくなり、温度センサ130に付与される負荷抵抗も均一になるため、安定して電圧を出力することが可能となる。
封止用導体パターン112(図1及び図2)は、第一枠部110bと蓋体140とを封止部材141を介して接合する際に、封止部材141の濡れ性をよくする役割を果たしている。封止用導体パターン112は、図4及び図5に示すように、一方の第二ビア導体117aを介して、一方の第二外部接続用電極端子G2aと電気的に接続されている。また、一方の第二外部接続用電極端子G2aは、外部の実装基板上の基準電位であるグランドと接続されている実装パッドと接続されることにより、グランド端子の役割を果たす。従って、封止用導体パターン112に接合された蓋体140がグランド電位に接続される。よって、蓋体140による第一凹部K1内のシールド性が向上する。封止用導体パターン112は、例えばタングステン又はモリブデン等から成る導体パターンの表面にニッケルメッキ及び金メッキを順次施すことによって、例えば10〜25μmの厚みに形成されている。
(蓋体)
蓋体140は、例えば、鉄、ニッケル又はコバルトの少なくともいずれかを含む合金からなる。このような蓋体140は、真空状態にある第一凹部K1又は窒素ガスなどが充填された第一凹部K1を気密的に封止するためのものである。具体的には、蓋体140は、所定雰囲気で、パッケージ110の第一枠部110b上に載置され、第一枠部110bの封止用導体パターン112と蓋体140の封止部材141とが溶接されるように所定電流を印加してシーム溶接を行うことにより、第一枠部110bに接合される。
封止部材141は、パッケージ110の第一枠部110b上面に設けられた封止用導体パターン112に相対する蓋体140の箇所に設けられている。封止部材141は、例えば、銀ロウ又は金錫によって設けられている。銀ロウの場合は、その厚みは、10〜20μmである。例えば、成分比率は、銀が72〜85%、銅が15〜28%のものが使用されている。金錫の場合は、その厚みは、10〜40μmである。例えば、成分比率が、金が78〜82%、錫が18〜22%のものが使用されている。
(水晶素子)
水晶素子120は、図2に示されているように、導電性接着剤150を介して電極パッド111上に接合されている。水晶素子120は、安定した機械振動と圧電効果により、電子装置等の基準信号を発振する役割を果たしている。
水晶素子120は、図1及び図2に示されているように、水晶素板121の上面及び下面のそれぞれに励振用電極122、接続用電極123及び引き出し電極124を被着させた構造を有している。励振用電極122は、水晶素板121の上面及び下面のそれぞれに金属を所定のパターンで被着・形成したものである。引き出し電極124は、励振用電極122から水晶素板121の短辺に向かって延出されている。接続用電極123は、引き出し電極124と接続されており、水晶素板121の長辺又は短辺に沿った形状で設けられている。
本実施形態においては、電極パッド111と接続されている水晶素子120の一端を基板部110aの上面と接続した固定端とし、他端を基板部110aの上面と間を空けた自由端とした片保持構造にて水晶素子120が基板部110a上に固定されている。
水晶素板121の固定端側の外周縁は、平面視して、基板部110aの一辺と平行であり、第一枠部110bの内周縁に近付くように設けられている。このようにすることにより、水晶素子120の実装位置を視覚的によりわかりやすくすることができるので、水晶振動子の生産性を向上させることが可能となる。
ここで、水晶素子120の動作について説明する。水晶素子120は、外部からの交番電圧が接続用電極123から引き出し電極124及び励振用電極122を介して水晶素板121に印加されると、水晶素板121が所定の振動モード及び周波数で励振を起こすようになっている。
ここで、水晶素子120の作製方法について説明する。まず、水晶素子120は、人工水晶体を所定のカットアングルで切断して水晶素板121を得る。次に、水晶素板121の外周部と比べて水晶素板121の中央部が厚くなるように、水晶素板121の外周の厚みを薄くするベベル加工を行う。そして、水晶素板121の両主面にフォトリソグラフィー技術、蒸着技術又はスパッタリング技術によって、金属膜を被着させることにより、励振用電極122、接続用電極123及び引き出し電極124を形成する。このようにして水晶素子120が作製される。なお、主面は、板状部材の最も広い面(すなわち表面及び裏面)を意味する。以下、同様である。
水晶素子120の基板部110aへの接合方法について説明する。まず、導電性接着剤150は、例えばディスペンサによって電極パッド111上に塗布される。水晶素子120は、導電性接着剤150上に搬送され、導電性接着剤150上に載置される。そして導電性接着剤150は、加熱硬化させることによって、硬化収縮される。水晶素子120は、一対の電極パッド111に接合される。
導電性接着剤150は、シリコーン樹脂等のバインダーの中に導電フィラーとして導電性粉末が含有されているものであり、導電性粉末としては、アルミニウム、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、銀、チタン、ニッケル又は鉄のうちのいずれか、或いはこれらの組み合わせを含むものが用いられている。また、バインダーとしては、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂又はビスマレイミド樹脂が用いられる。
(温度センサ)
温度センサ130は、ダイオードを含むものであり、アノード端子131b及びカソード端子131aを有している。温度センサ130は、アノード端子131bからカソード端子131aへは電流を流すが、カソード端子131aからアノード端子131bへはほとんど電流を流さない順方向特性を有している。温度センサ130の順方向特性は、温度によって大きく変化する。具体的には、温度センサ130に一定電流を流したときの順方向電圧は、温度変化に対して線形的(直線的)に変化する。この電圧を測定することによって、温度情報を得ることができる。温度情報は、例えば、図示しない電子機器等のメインIC(Integrated Circuit)によって、温度変化に起因する水晶振動子の特性変化の補償に利用される。
温度センサ130は、図2及び図3に示すように、パッケージ110の第二凹部K2内に露出した基板部110aに設けられた接合パッド115に半田等の導電性接合材を介して実装されている。また、温度センサ130のカソード端子131aは、一方の接合パッド115aに接続され、アノード端子131bは、他方の接合パッド115bに接続されている。よって、温度センサ130のカソード端子131aは、基準電位が付与される、一方の第二外部接続用電極端子G2aに接続されることになる。別の観点では、温度センサ130の温度に応じた電圧は、他方の第二外部接続用電極端子G2bを介して水晶振動子の外へ出力される。
また、温度センサ130には、1〜200μAの電流が流れるため、電子機器のマザーボード上に配置された回路が高インピーダンスの場合でも、十分な電流が確保できる。その結果、温度センサ130に電流値が小さいことにより生じるノイズが重畳することを低減することができる。また、温度センサ130の順方向電圧を超えない限り、急激に流れる電流量が大きくなることはないため、温度センサ130の発熱量を低減することができ、水晶素子120の実際の温度との読み取り誤差を小さくすることで、高精度の補正が可能となる。よって、水晶振動子は、水晶素子120の発振周波数に関する温度補償の精度を向上させることができる。
温度センサ130は、平面視して、水晶素子120と重なる箇所に配置されている。例えば、温度センサ130は、水晶素板121の長辺1.0〜1.6mmと短辺0.8〜1.2mmとからなる面積内に配置される。平面視して、温度センサ130の中心(図形重心)は、例えば、パッケージ110の中心(図形重心)及び/又は水晶素子120の中心(図形重心)と概ね一致している。
温度センサ130のアノード端子131bは、平面視して、水晶素子120が実装されている電極パッド111側に配置されている。平面視して、電極パッド111の励振用電極122側を向いている辺と温度センサ130のアノード端子131bが実装される他方の接合パッド115bの電極パッド111側を向いている辺との間隔は、0〜100μmである。また、他方のセンサ用配線パターン116bは、平面視して、一対の電極パッド111の間を通るようにして設けられている。
温度センサ130は、平面視で水晶素子120に設けられる励振用電極122の平面内に位置している。従って、励振用電極122の金属膜によるシールド効果によって温度センサ130を、電子機器を構成するパワーアンプ等の他の半導体部品や電子部品からのノイズから保護できる。よって、温度センサ130は正確に電圧を出力することができる。
温度センサ130のパッケージ110への接合方法について説明する。まず、導電性接合材は、例えばディスペンサによって接合パッド115上に塗布される。温度センサ130は、導電性接合材上に搬送され、導電性接合材上に載置される。そして導電性接合材は、加熱させることによって溶融接合される。温度センサ130は、一対の接合パッド115に接合される。なお、導電性接合材は、接合パッド115に代えて、カソード端子131a及びアノード端子131bに塗布されてもよい。
導電性接合材は、例えば、銀ペースト又は鉛フリー半田により構成されている。また、導電性接合材には、塗布し易い粘度に調整するための添加した溶剤が含有されている。鉛フリー半田の成分比率は、錫が95〜97.5%、銀が2〜4%、銅が0.5〜1.0%のものが使用されている。
(温度センサの具体的構成)
図6(a)は、温度センサ130の外観を示す平面図である。図6(b)は、温度センサ130の半導体基板132の構成を示す平面図である。図6(c)は、図6(a)のVIc−VIc線における断面図である。ただし、便宜上、半導体基板132の断面にハッチングは付していない。
温度センサ130は、半導体基板132の主面132a上にカソード端子131a及びアノード端子131bが設けられて構成されている。すなわち、温度センサ130は、ベアチップであり、半導体基板132を囲むパッケージを有していない。
半導体基板132は、例えば、その全面に亘って概ね一定の厚さを有している。半導体基板132の平面形状は、適宜に設定されてよいが、例えば、概略、矩形(図示の例では長方形)である。カソード端子131a及びアノード端子131bは、矩形の2辺(図示の例では短辺)の互いに対向する方向(D1軸方向)において互いに離間して配置されている。
半導体基板132は、主面132a内に、p型半導体からなるp型領域132p、及びn型半導体からなるn型領域132nを有している。より具体的には、半導体基板132は、n型半導体からなるn型層133nと、n型層133nの一部の領域においてn型層133n上に位置している、p型半導体からなるp型層133pとを有している。そして、p型層133pによってp型領域132pが構成され、n型層133nのうちp型層133pの非配置領域によってn型領域132nが構成されている。
n型層133n及びp型層133pの厚さは適宜に設定されてよい。図示の例では、n型領域132nにおけるn型層133nの厚さは、半導体基板132の厚さとなっている。p型層133pの厚さは、例えば、半導体基板132の厚さの半分以下となっている。
p型層133p及びn型層133nは互いに接しており、pn接合を構成している。p型領域132p上にはアノード端子131bが設けられており、n型領域132n上にはカソード端子131aが設けられている。このようにして、半導体基板132にはダイオード134が構成されている。上記の説明から理解されるように、ダイオード134は、いわゆるプレーナ構造のものである。
このようなダイオード134の製造方法は、寸法等の具体的な条件を除いて公知の種々の製造方法と同様とされてよい。例えば、まず、複数の半導体基板132が多数個取りされるn型半導体ウェハを用意する。n型半導体ウェハは、例えば、リン(P)又はアンチモン(Sb)等を不純物として含むシリコン(Si)ウェハである。次に、p型領域132pとなる領域にマスクを介してホウ素(B)等の不純物を注入する。次に、適宜な薄膜形成法によってアノード端子131b及びカソード端子131aを形成する。その後、半導体ウェハをダイシングして個片化する。
以上のような構成のダイオード134においてアノード端子131b及びカソード端子131aに順方向電圧が印加されると、アノード端子131b及びカソード端子131aが主面132a上に位置していることから、矢印y1で示すように、電流は、主面132a付近において流れやすい。別の観点では、電流は、平面視における、p型領域132p及びn型領域132nの境界部132b(pn接合面)を超えるように流れやすい。
p型層133pは、n型層133n上に位置しているから、矢印y2で示すように、p型層133pの下面とn型層133nとの境界面133b(pn接合面)を介しても電流は流れることが可能である。ただし、境界面133bが主面132aから離れるほど、アノード端子131bから境界面133bを経由してカソード端子131aへ至る電流の経路は長くなる。ひいては、当該経路の抵抗は増加し、電流は流れにくくなる。
従って、ダイオード134においては、半導体基板132内の種々の部位の温度のうち、主面132aにおける温度がダイオード134の順方向特性に及ぼす影響が大きい。境界面133bの位置の深さによって、境界部132b及び境界面133bが順方向特性に及ぼす相対的な割合は変化するが、主面132aにおける温度が順方向特性に及ぼす影響が大きいという傾向自体に変わりはない。
なお、仮に、p型層133pが半導体基板132の厚さと同等であっても、アノード端子131b及びカソード端子131aが主面132a上に位置していることによって、上記と同様に半導体基板132の下面側(D3軸負側)に流れる電流は小さくなっていくから、主面132aにおける温度が順方向特性に及ぼす影響が大きいという傾向自体に変わりはない。
従って、ダイオード134は、主面132aを構成するp型領域132p上にアノード端子131bが設けられ、主面132aを構成するn型領域132n上にカソード端子131aが設けられていることにより、表面(主面132a)で温度を検出する(主面132aの温度を検出する)構成となっているといえる。
p型層133pが薄いほど、境界部132b及び境界面133bの温度は、主面132aの温度に近くなるから、主面132aの温度を精度良く検出することができる。例えば、p型層133pの厚さは、半導体基板132の厚さの1/2以下又は1/5以下とされてよい。
なお、p型層133pは、半導体基板132の主面132a側の一部にのみ形成されており、アノード端子131b及びカソード端子131aが主面132a上に位置しているから、半導体基板132のうち、主面132a側の一部にダイオード134が構成されていると捉えられてよい。この観点からも、温度センサ130は、表面(主面132a)で温度を検出するセンサであるといってよい。
図示の例では、n型半導体ウェハの一部をp型半導体にする態様を例にとったが、p型半導体ウェハの一部をn型半導体にしてもよい。すなわち、ダイオード134は、p型層の一部の領域においてn型層がp型層上に位置し、これにより、主面132a内にp型領域132p及びn型領域132nが構成されてもよい。
以上のとおり、本実施形態の圧電振動子(水晶振動子1)は、パッケージ110と、蓋体140と、圧電素子(水晶素子120)と、温度センサ130とを有している。パッケージ110は、基板部110aと、基板部110aの上面に位置している第一枠部110bと、基板部110aの下面に位置している第二枠部110cと、を有している。蓋体140は、第一枠部110bの上面に接合されて第一枠部110b内を気密封止している。水晶素子120は、第一枠部110b内に収容されているとともに基板部110aの上面に実装されている。温度センサ130は、第二枠部110c内に収容されているとともに基板部110aの下面に実装されており、基板部110a側の表面(主面132a)で温度を検出する。
ここで、水晶振動子1の外部環境の温度が変化した場合について考える。このような場合、一般に、外部環境の温度変化は、基板部110aを介して水晶素子120へ伝わりやすい。
その理由としては、例えば、以下のものが挙げられる。第一凹部K1内は真空とされており(厳密には減圧されており)、理論上は、外部環境の温度変化は、水晶素子120の周囲の空間を介しては水晶素子120に伝わらない。または、第一凹部K1内に気体が封入されていても、気体及びパッケージ110の熱伝導率は相対的に低いから、外部環境の温度変化は、水晶素子120の周囲の空間を介しては水晶素子120に伝わりにくい。一方で、水晶素子120は、基板部110aの上面に実装されている(導電性接着剤150によって基板部110aに接合されている)から、基板部110aの温度変化の影響を受けやすい。また、一般に、導電体(金属)は、絶縁体よりも熱伝導率が高い。一方で、第一外部接続用電極端子G1から電極パッド111を経由して水晶素子120の励振用電極122まで、導電体の経路が構成されている。これによっても水晶素子120の温度は、電極パッド111(基板部110a)の温度の影響を受けやすい。
一方、基板部110a側の主面132aで温度を検出する温度センサ130を用いることによって、本実施形態とは異なり、温度センサのチップ全体で温度を検出する態様に比較して、検出温度が基板部110aの温度に追従しやすくなる。温度センサ130は、基板部110aの下面に実装(接合)されているから、基板部110aの温度変化が主面132aに伝わりやすく、一層、検出温度は基板部110aの温度に追従しやすくなる。従って、検出温度が水晶素子120の温度に追従しやすくなり、検出温度に基づく温度補償を高精度に行うことができる。
図示の例では、平面視して、接合パッド115b(アノード端子131b)と電極パッド111との距離は比較的小さく(例えば接合パッド115bの最小幅以下である)、また、センサ用配線パターン116bは平面視して1対の電極パッド111の間を通る。このような構成それぞれは、検出温度を電極パッド111の温度に追従させやすくすることに寄与する。
また、別の観点では、水晶素子120を収容する第一凹部K1内の空間は、上記のように外部環境の温度の影響を受けにくい。一方、温度センサ130を収容する第二凹部K2内の空間は、第二凹部K2が開放されていることなどから外部環境の温度の影響を受けやすい。しかし、温度センサ130が基板部110a側の表面で温度を検出するものであることによって、その検出温度は、第二凹部K2内の空間(基板部110aと温度センサ130との隙間以外の空間)の温度変化の影響が低減されたものとなる。その結果、温度センサ130は、水晶素子120の温度変化と同様の温度変化を検出することができることになる。ひいては、検出温度が水晶素子120の温度に追従しやすくなり、検出温度に基づく温度補償を高精度に行うことができる。
また、本実施形態では、温度センサ130は、基板部110aの下面に対向して表面実装されているセンサ基板(半導体基板132)と、半導体基板132の基板部110a側に位置している、電気的特性が温度に応じて変化する測温部(ダイオード134)と、を有している。
別の観点では、温度センサ130は、基板部110aの下面に対向して表面実装されている半導体基板132を有している。半導体基板132の基板部110a側の主面132aは、ダイオード134を構成しているp型領域132p及びn型領域132nを含んでいる。
すなわち、温度センサ130は、ベアチップ又はWLP(ウェハレベルパッケージ)式のチップ等である。従って、例えば、水晶振動子1の小型化を図ることができる。また、例えば、パッケージが設けられている場合に比較して、ダイオード134(測温部)は、基板部110aの温度の影響を直接的に受けることになり、温度センサ130の感度が向上する。
また、本実施形態では、水晶素子120は、基板部110aの上面に平行な第一方向(D1軸方向)の一端側においてのみ支持されている。半導体基板132は、一部の領域がp型領域132p及びn型領域132nの一方(図示の例ではn型領域132n)を構成する第一層(n型層133n)と、前記一部の領域とは異なる領域において第一層上に位置することによってp型領域及びn型領域の他方(図示の例ではp型領域132p)を構成している第二層(p型層133p)と、を有している。第二層の少なくとも一部(本実施形態では全部)は、水晶素子120の支持位置(電極パッド111)よりも第一方向の一方側又は他方側に位置している。
ここで、基板部110aは、水晶素子120の一端側のみを保持することから、電極パッド111は、D1軸方向の一方側のみに位置している。すなわち、第一外部接続用電極端子G1を介して外部環境の温度変化の影響を受けやすい導体の面積がD1軸方向の一方側のみに確保されることになる。従って、基板部110aの温度変化は、電極パッド111側から進行しやすい。
仮に、本実施形態とは異なり、p型層133pの厚さが半導体基板132の厚さと同等であり、pn接合面がD1軸に概ね直交する面(境界部132b)だけだと仮定する(このような態様も本開示に係る技術に含まれる。)。この場合、基板部110aの温度変化がD1軸方向に沿って進行していくと、温度変化が境界部132bに到達したときに順方向特性の変化が現れ、ひいては、比較的急激に検出温度が変化することになる。この検出温度の変化は、水晶素子120の温度変化を必ずしも反映しているとはいえないおそれがある。
しかし、n型層133n上にp型層133pが位置していると、境界面133bがD1軸方向に広がっていることになる。そして、境界面133bにおける順方向特性の変化は、基板部110aの温度変化が境界面133b上をD1軸方向に進行していく過程で、少しずつ現れることになる。ひいては、急激な検出温度の変化が緩和される。なお、既に述べたように、境界面133bが主面132a(カソード端子131a及びアノード端子131b)から離れた位置にあると、境界面133bを超える電流は小さくなる。従って、p型層133p(第二層)が薄いほど当該効果は向上する。
また、本実施形態では、第二枠部110cの厚さは、第一枠部110b及び基板部110aの合計厚さの半分よりも薄い。
第二枠部110cを薄くすると、温度センサが第二枠部110cの開口を介して外部環境に近づく。従って、本実施形態とは異なり、温度センサがチップ全体で温度を検出するものである場合、外部環境の温度変化が基板部110aを介さずに検出温度に及ぼす影響が相対的に大きくなる。その結果、外部環境の温度変化の影響を基板部110aを介して受ける水晶素子120の温度から検出温度が乖離してしまうおそれがある。しかし、本実施形態では、温度センサ130は、基板部110a側の主面132aで温度を検出することから、基板部110a側以外からの温度変化の影響を受けにくい。従って、検出精度の低下を抑制しつつ、パッケージ110の小型化を図ることができる。
なお、以上の実施形態において、水晶振動子1は圧電振動子の一例である。水晶素子120は圧電素子の一例である。半導体基板132はセンサ基板の一例である。ダイオード134は測温部の一例である。D1軸方向は第1方向の一例である。n型層133nは第一層の一例である。p型層133pは第二層の一例である。
(変形例)
以下、種々の変形例について説明する。なお、以下の変形例の説明では、上記の実施形態の構成と共通または類似する構成について、実施形態の構成に付した符号を用い、また、図示や説明を省略することがある。なお、実施形態の構成と対応(類似)する構成については、実施形態の構成と異なる符号を付した場合においても、特に断りがない点は、実施形態の構成と同様とされてよい。
(温度センサの配置位置に係る変形例)
図7(a)は、変形例に係る水晶振動子201の要部構成を示す平面図である。
水晶振動子201は、基本的に、温度センサ130の位置のみが実施形態と相違する。なお、温度センサ130の位置の相違に伴って、接合パッド115の配置及びセンサ用配線パターン116の形状も実施形態と相違する。また、第二凹部K2の位置及び/又は形状も実施形態と相違してよい。ただし、これらの構成は実施形態の説明から実施可能な程度に類推可能であることから、その説明は省略する。
温度センサ130の配置は、まず、平面視における向きが実施形態と90°異なっている。すなわち、水晶素子120は、基板部110aの上面に平行な第一方向(D1軸方向)の一端側においてのみ支持されているところ、半導体基板132の平面視において、p型領域132p及びn型領域132nの境界部132bの少なくとも一部(図示の例では全部。)は、水晶素子120の支持位置(電極パッド111)よりも第一方向の一方側又は他方側に位置しているとともに第一方向に沿って延びている。
実施形態の説明では、基板部110aの温度変化が電極パッド111側から進行していくときに、温度変化が境界部132bに到達すると、急激な検出温度の変化が生じるおそれがあることについて述べた。一方、本変形例の水晶振動子201では、境界部132bがD1軸に沿っていることから、D1軸方向の温度変化の進行に伴って、順方向特性の変化は徐々に生じることになり、急激な検出温度の変化が緩和される。
なお、境界部132bが第一方向に沿って延びているという場合、境界部132bは、必ずしも第一方向に平行である必要はない。例えば、境界部132bは、10°以下の角度で第一方向に傾斜していてもよい。
また、本変形例では、基板部110aの平面視において、温度センサ130の中心CP2(図形重心)は、基板部110aの中心CP1(図形重心。中心線CL1と中心線CL2との交点)よりもD1軸方向の電極パッド111側に位置している。
これまでの説明からも理解されるように、外部環境の温度が変化した場合、水晶素子120の温度は、電極パッド111の温度の影響を受けやすい。従って、上記のように電極パッド111側に温度センサ130が位置することによって、検出温度を電極パッド111側の温度に追従させやすくなる。電極パッド111に温度変化が生じてからその温度変化が水晶素板121に伝わるまでには時間遅れが存在するが、その時間遅れの長さ及び温度センサ130の感度によっては、このように構成することによって、検出温度を水晶素板121の温度に近づけることができる。
なお、この電極パッド111側へ温度センサ130を寄せる構成は、実施形態のようにp型領域132p及びn型領域132nの並び方向がD1軸方向又は更に他の方向である場合にも適用されてよい。
(温度センサの構成に係る変形例)
以下では、温度センサの構成に係る変形例を示す。なお、便宜上、D1軸及びD2軸に対する温度センサの向きは実施形態と同様とするが、図7(a)の変形例と同様とされてもよい。
既に述べたように、実施形態のn型半導体とp型半導体との上下及び/又は左右の位置関係は逆とされてもよい。図7(b)に示す変形例に係る温度センサ203は、そのような変形がなされている。すなわち、この変形例では、p型層133pの一部の領域においてn型層133nが設けられている。なお、以下に説明する種々の変形例においても、n型半導体とp型半導体との上下及び/又は左右の位置関係は逆とされてよい。
また、図7(b)の変形例では、平面視において、n型領域132nとp型領域132pとの境界部132bは、n型領域132nを囲むように形成されている。なお、この境界部132bのうちD1軸方向に沿う部分は、例えば、図7(a)の境界部132bと同様に、基板部110aの温度変化がD1軸方向に進行するときに、検出温度の急激な変化を抑制する効果を奏し得る。
ただし、上記の効果は、図7(a)の変形例のように、pn接合面のうちダイオードとしての機能に果たす影響が大きい部分がD1軸に沿っている方が大きい。このような態様としては、例えば、図7(a)に示すように、半導体基板132の平面視において、pn接合面のうち第一方向(D1軸方向)に沿っている部分(境界部132b)に対して、及び/又は第一方向(D1軸方向)に平行な半導体基板132の中心線CL1に対して、p型領域132pの8割以上が第一方向に直交する方向(D2軸方向)の一方側に位置しており、n型領域132nの8割以上が第一方向に直交する方向(D2軸方向)の他方側に位置している態様を挙げることができる。
図7(c)の変形例に係る温度センサ205は、いわゆるウェルを有している。図示の例では、p型の半導体基板207にn型のウェル209が形成され、ウェル209内にp型の層210が形成されている。なお、ウェル209は、第一層の一例となっており、層210は第二層の一例となっている。このようなウェルを設ける変形は、実施形態及び他の変形例のいずれに適用されてもよい。
図8(a)は、変形例に係る温度センサ211の断面図である。図8(b)は、温度センサ211の半導体基板の構成を示す平面図である。
温度センサ211は、実施形態と同様に、ダイオード215を含む半導体基板213を有し、半導体基板213が基板部110aに表面実装される構成である。ただし、温度センサ211は、ベアチップではなく、いわゆるWLP型のチップとして構成されている。
すなわち、温度センサ211は、半導体基板213、アノード端子131b及びカソード端子131a上に再配線層217を有している。再配線層217は、特に符号を付さないが、例えば、絶縁層と導体層とが適宜な数で積層されて構成されており、最上部には端子が露出している。端子上には半田バンプ等が設けられていてもよい。
このように再配線層217を設ければ、例えば、アノード端子131b及びカソード端子131aの温度センサ130内における配置位置(ひいてはn型領域132n及びp型領域132pの配置位置)、基板部110aに接合される端子の温度センサ130内における配置位置、並びにこれらの位置関係の設計の自由度が向上する。
従って、例えば、半導体基板132(n型領域132n)の中心にアノード端子131b(p型領域132p)を位置させつつ、半導体基板213の両端を基板部110aに対して接合してよい。
本開示に係る技術は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
例えば、表面で温度を検出する温度センサはダイオードを有するものに限定されない。また、パッケージの基板部に実装されるセンサ基板と、センサ基板の基板部側に位置する測温部とを有する温度センサ(ベアチップ、WLP型チップ又はこれらに類するチップ)も、ダイオードを有するものに限定されない。例えば、温度センサは、適宜な絶縁基板と、絶縁基板の基板部側の主面上に配置された抵抗体とを有し、温度変化に対する抵抗の変化を利用するものであってもよい。
ベアチップ、WLP型チップ又はこれらに類するチップにおいて、センサ基板は、側面及び裏面(測温部とは反対側)に絶縁層及び/又は導体層が設けられていてもよい。換言すれば、半導体基板は、必ずしも一部が露出していなくてもよい。
温度センサがダイオードを含むものである場合において、温度センサは、パッケージングされたものであってもよい。この場合でも、例えば、封止部材内で半導体基板を基板部側に寄せたり、ダイオードが形成された面を基板部側に向けるように封止部材内で半導体基板が配置されたり、封止部材のうち半導体基板と基板部との間に位置する部分の熱伝導率を高くしたりして、表面で温度を検出しているといえる構成を実現することは可能である。また、実施形態では、温度センサは、ダイオードを1つのみ含んでいた。ただし、温度センサは、互いに接続された複数のダイオードを含んでいてもよい。
ダイオードとして、pn接合を有するものを例示したが、ダイオードは、PINダイオードのようにpn接合以外の接合面(境界部、境界面)を有するものであってもよい。なお、PINダイオードにおいては、p型領域及びn型領域の境界部(第一層及び第二層の境界面)はi型領域(i型層)である。
ダイオードは、他の素子として機能可能な構成であっても構わない。例えば、温度センサは、トランジスタを含み、温度センサの配線又はパッケージの配線によってベースとコレクタとが短絡されることなどにより、トランジスタの一部がダイオードとして機能してもよい。
ダイオードは、半導体基板の主面にp型領域及びn型領域が形成されるプレーナ構造に限定されず、p型層とn型層とが積層され、その積層方向に電流が流れる構造のものであってもよい。この場合であっても、ダイオードが温度センサ内で基板部側の表面に偏って設けられていれば、基板部側の表面で温度を検出しているといえる。
また、ダイオードは、実施形態に示した以外に、適宜な層等を有していてよい。例えば、半導体基板上に位置する酸化膜(例えばSiO2膜)、ゲートリング及びパッシベーション膜等を適宜に有していてもよい。