JP6924976B2 - 酸素検知剤及び酸素検知剤の製造方法 - Google Patents
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Description
本実施の形態の酸素検知剤の層構成を図1に模式的に示す。本実施の形態の酸素検知剤は、図1に示すように、基材1上に、水酸化マグネシウムと、結着剤とを含むバインダー層2と、塩基性物質を含む塩基性物質層3と、還元剤と、酸化還元性色素とを含む酸化還元性色素層4とが前記基材1側から当該順序で積層されている。当該酸素検知剤は、食品や医薬品等が収容された容器包装内の雰囲気(以下、「被酸素検知雰囲気」と称する。)中の酸素量の変化を酸化還元性色素の色調変化により視認可能としたものである。本実施の形態の酸素検知剤では、上記塩基性物質層3と、上記酸化還元性色素層4の二層により酸素検知機能を発現させるものとした。しかしながら、本件発明に係る酸素検知剤は基材1上に上記バインダー層2を介して、雰囲気中の酸素の有無によって色調を変化させる酸化還元性色素や、当該還元性色素を還元状態に保つ還元剤などを含む酸素検知組成物からなる酸素検知層が設けられていればよく、本実施の形態のように酸素検知組成物を構成する各成分を複数層に分けて配置してもよいし、酸素検知組成物を構成する全成分を一層に配置してもよく、その具体的な構成は特に限定されるものではない。以下、各層について説明する。なお、以下において、塩基性物質層3と酸化還元性色素層4の二層のことを酸素検知層と称する場合がある。
本件発明において、基材1は特に限定されるものではないが、例えば、紙製基材1、樹脂製基材1等を用いることができ、その形状は特に限定されるものではない。特に、フィルム状、包装袋状、包装容器状等各種形状に成型された紙製容器包装材又は樹脂製容器包装材を基材1とすることが好ましい。当該本件発明に係る酸素検知剤は、基材1の表面に、例えば、上記酸素検知層を形成するためのインキ状組成物を塗布又は印刷により形成することができる。そのため、容器包装材を基材1とすることで、印刷法等により酸素検知機能付容器包装材を簡易に得ることができる。
次に、バインダー層2について説明する。バインダー層2は、水酸化マグネシウムと結着剤とを含む層である。当該バインダー層2は、水酸化マグネシウム微粒子と、結着剤との混合物からなり、結着剤内に水酸化マグネシウム微粒子が分散されてなることが好ましい。微粒子状の水酸化マグネシウムを結着剤に分散させることにより、当該バインダー層2は白色を呈する。基材1上に白色層を設けることにより、酸化還元性色素の色調変化を鮮明に視認可能とすることができる。
本実施の形態の酸素検知剤では、無酸素雰囲気下において酸化還元性色素を還元状態に保持するための還元剤として還元性糖類を用いる。還元性糖類は水溶液中で開環し、還元性基を有するアルデヒドが開環体となる。しかしながら、この開環体は中性水溶液中では酸化還元性色素の還元剤としては作用せず、アルカリ条件下にした場合に酸化還元性色素に対する還元剤として作用する。従って、還元性糖類により酸化還元性色素を還元するには、塩基性物質(アルカリ剤)が必要になる。そこで、本実施の形態の酸素検知剤は、塩基性物質を含む塩基性物質層3を基材1上に設ける。
本実施の形態の酸素検知剤では、酸化還元性色素層4は、還元剤と、酸化還元性色素とを含む。
以上説明した本実施の形態の酸素検知剤は、他の形態として、例えば、図2に示すように、酸化還元性色素層4側を第二の基材5に密着させて使用してもよい。第二の基材5は、上述した基材1と同様のものを用いることができる。第二の基材5として、例えば、脱酸素剤の包装材、食品や医薬品の包装材などを用いることができる。
次に、本件発明に係る酸素検知剤の製造方法の実施の形態を説明する。本件発明に係る酸素検知剤の製造方法は、雰囲気中の酸素の有無を酸化還元性色素の色調変化により検知可能とした酸素検知剤の製造方法であって、基材1上に、水酸化マグネシウムと、結着剤とを含むバインダー層2を形成する工程と、前記バインダー層2上に、雰囲気中の酸素の有無によって色調を変化させる酸化還元性色素を含む酸素検知層を形成する工程とを備えることを特徴とする。
(1)バインダー層2
まず、バインダー層2形成溶液を基材1上に所定の厚みになるようにバーコーター等を用いて塗布、乾燥させる。バインダー層2形成溶液は、溶媒に結着剤を溶解させ、当該溶媒に水酸化マグネシウムを分散させることにより調製することができる。結着剤と、水酸化マグネシウムとの混合比(質量混合比)は、結着剤量(固形分)を100としたとき、水酸化マグネシウムを100〜2000とすることが好ましく、400〜1500とすることがより好ましく、600〜1200とすることがさらに好ましい。結着剤としては、上述したとおり、水溶性樹脂、特にポリビニルアルコールを用いることが好ましい。このとき、溶媒として水を用いることが好ましい。なお、バインダー層2形成溶液の粘度は、基材1上に塗布する際の作業性を鑑みて適宜調整することが好ましい。
次に、塩基性物質層3形成溶液を、上記と同様にして、バインダー層2上に塗布し、乾燥させる。塩基性物質層3形成溶液において、塩基性物質濃度は0.5質量%〜3.5質量%であることが好ましく、1.0質量%〜3.0質量%であることがより好ましい。なお、塩基性物質濃度等は、酸化還元性色素層4に含まれる還元性糖類の含有量等に応じて適宜適切な値に調整することが好ましい。溶媒として水を用いる。塩基性物質は、上述したとおり、アルカリ金属塩を用いることができ、特に、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩を用いることが好ましい。
次に、酸化還元性色素層4形成溶液を、上記と同様にして、塩基性物質層3上に塗布し、乾燥させる。酸化還元性色素層4形成溶液は、溶媒としての水に、還元剤を溶解させ、酸化還元性色素を溶解又は分散させることにより調製することができる。上述したとおり、還元剤としては、還元性糖類を用いることが好ましく、特に、D−グルコースを用いることが好ましい。
バインダー層形成工程では、バインダー層形成溶液として、平均重合度3500のポリビニルアルコール(1級試薬/和光純薬工業株式会社製 163−16355)を用いて、5質量%の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製した。この5質量%のポリビニルアルコール水溶液に水酸化マグネシウムを添加した。このとき、5質量%のポリビニルアルコール水溶液と、水酸化マグネシウムの混合比が、質量比で7:3になるようにした。なお、ポリビニルアルコール(固形分)と水酸化マグネシウムとの混合比は、質量比で100:857である。
塩基性物質層形成工程では、水10.0gに、炭酸ナトリウムを0.15g溶解させて、炭酸ナトリウム濃度1.48%の塩基性物質層形成液を調製した。この塩基性物質層形成溶液をバインダー層上に、バーコーターを用いて、上記と同様にして塗布した。その後、ドライヤーにより乾燥させて、塩基性物質層とした。
酸化還元性色素層形成工程では、水25.0gに、エタノール5.0gを混合し、水エタノール混合溶媒とした。当該混合溶媒に、酸化還元性色素としてメチレンブルーを0.3g、還元剤としてD−グルコースを5.0g添加して混合した。メチレンブルー濃度は、0.85質量%、D−グルコース濃度は14.16質量%である。この酸化還元性色素層形成溶液を塩基性物質層上に、バーコーターを用いて、上記と同様にして塗布した。その後、ドライヤーにより乾燥させ、酸化還元性色素層とした。
比較例1として、バインダー層を形成する際に、水酸化マグネシウムを用いなかったことを除いて、実施例1と同様にして酸素検知剤を作製した。
比較例2では、バインダー層形成工程において、水酸化マグネシウムに代えて、水酸化アルミニウムを用いた。バインダー層形成溶液における5質量%のポリビニルアルコール水溶液と、水酸化アルミニウムの混合比は8:2とした。なお、ポリビニルアルコール(固形分)と水酸化アルミニウムとの混合比は、質量比で100:500である。また、酸化還元性色素層形成工程において、水10.0gに、エタノール5.0gを混合し、水エタノール混合溶媒とした。当該混合溶媒に、酸化還元性色素としてメチレンブルーを0.1g、還元剤としてD−グルコースを1.0g添加した。また、界面活性剤として、平均重合度が500のポリビニルアルコールを0.05g添加した。これらを混合して、メチレンブルー濃度0.62質量%、D−グルコース濃度は6.19質量%の酸化還元性色素形成液を調製した。これらのバインダー層形成溶液及び酸化還元性色素層形成溶液を用いて、バインダー層及び酸化還元性色素層を形成したことを除いて、実施例1と同様にして、酸素検知剤を作製した。
比較例3では、透明樹脂基材として、実施例2と同じOPPフィルムを用いたことを除いて、比較例2と同様にして酸素検知剤を作製した。
比較例4では、透明樹脂基材として、実施例3と同じOHPフィルムを用いたことを除いて、比較例2と同様にして酸素検知剤を作製した。
1.評価方法
(1)密着性、色ムラ
基材に、バインダー層、塩基性物質層及び酸化還元性色素層を形成した後の状態を目視により確認し、これらの層の基材に対する密着性及び色ムラの有無を確認した。
各実施例及び各比較例で作製した脱酸素剤と一体化された酸素検知剤を幅150mm、長さ200mmの塩化ビニリデンコートナイロンポリエチレン袋に入れて、密封し、35℃の恒温槽中に12時間保管した。そして、開封後経時に伴う当該酸素検知剤の呈色の変化を目視で確認すると共に、反射スペクトルを測定し、そのピーク強度の変化を確認した。なお、反射スペクトルの測定には、日本分光株式会社製の紫外可視分光光度計 V−570を用いた。
実施例1と同様にして作製した酸素検知剤を、幅150mm、長さ200mmの塩化ビニリデンコートナイロンポリエチレン袋に、脱酸素剤(パウダーテック株式会社製:ワンダーキープ(登録商標)LP−100)と共に入れて、密封し、35℃の恒温槽中に12時間保管した。その後開封し、開封後5分後、10分後、30分後における当該酸素検知剤の呈色の変化を確認した。酸素検知剤の呈色変化がなくなるまで、酸素雰囲気下で放置した酸素検知剤を、再び、新たな脱酸素剤と共に上記袋に入れ、上記と同様の手順で酸素検知剤の呈色変化を確認することを繰り返し行った。繰り返し回数を9回とした。
(1)密着性及び色ムラ
まず、実施例1と比較例1の酸素検知剤について述べる。実施例1の酸素検知剤において、バインダー層はポリビニルアルコールと水酸化マグネシウムとを含む。実施例1の酸素検知剤では、ポリエチレンテレフタレート製基材の表面に、各層を密着性よく形成することができ、酸化還元性色素層の発色も良好で色ムラも観察されなかった。一方、比較例1の酸素検知剤において、バインダー層はポリビニルアルコール水溶液のみを用いて形成した。すなわち、バインダー層には水酸化マグネシウムが含まれない。比較例1の酸素検知剤では、ポリエチレンテレフタレート製基材の表面に、各層を形成することはできたものの、酸化還元性色素層等を均一な厚みで形成することが困難であったのか、或いは、密着性が不足しているのか、脱酸素前において色ムラが観察された。
図3及び図4に、実施例1及び比較例1の酸素検知剤について測定した反射スペクトルを示す。実施例1の酸素検知剤は、脱酸素前、青紫色を呈し、波長588nm及び波長663nmの位置にピークが現れた。密封された袋内で脱酸素剤と共に12時間保管された後、図3fに示すように可視光領域の吸光度は約0.01となり、白色(バインダー層の色)を呈した。一方、脱酸素前の同位置におけるピーク強度は約6.0であった。密封袋を開封後、5分経過後のピーク強度は約1.0であり、脱酸素前のピーク強度の約15%であった。また、開封30分後のピーク強度は約3.0であり、脱酸素前のピーク強度の約50%であった。開封1時間後の同位置のピーク強度は約5.0であり、脱酸素前の約80%であった。雰囲気中の酸素を検知して5分後には目視で分かる程度に発色していることから、良好な変色応答性を確保することができることが確認された。
実施例1の酸素検知剤の呈色変化を9回繰り返し確認したところ、図6に示すように、実施例1の酸素検知剤は9回目においても、恒温漕に12時間保管した後、酸素検知剤は白色を呈し、メチレンブルーが還元型構造を取ることが確認された。また、9回目においても開封後、酸素検知剤が酸素雰囲気下に置かれると、酸素検知剤は経時と共に青色が濃くなっていき、30分経過後の呈色は、1回目のときと同程度になった。このことから、実施例1の酸素検知剤は、複数回繰り返し使用しても、劣化することなく、雰囲気中の酸素の有無を検知することができることが分かった。
Claims (6)
- 基材上に、
水酸化マグネシウムと、結着剤であるポリビニルアルコールとを含むバインダー層と、
雰囲気中の酸素の有無によって色調を変化させる酸化還元性色素を含む酸素検知層と、
が前記基材側から当該順序で積層されたことを特徴とする酸素検知剤。 - 前記酸素検知層は、
塩基性物質を含む塩基性物質層と、
還元剤と、前記酸化還元性色素とを含む酸化還元性色素層と、
が前記バインダー層上に前記基材側から当該順序で積層された二層構造を有する請求項1に記載の酸素検知剤。 - 前記基材は、透明樹脂基材である請求項1又は請求項2に記載の酸素検知剤。
- 前記塩基性物質は、炭酸ナトリウムである請求項2に記載の酸素検知剤。
- 前記還元剤は、還元性糖類である請求項2に記載の酸素検知剤。
- 雰囲気中の酸素の有無を酸化還元性色素の色調変化により検知可能とした酸素検知剤の製造方法であって、
基材上に、水酸化マグネシウムと、結着剤であるポリビニルアルコールとを含むバインダー層を形成する工程と、
前記バインダー層上に、雰囲気中の酸素の有無によって色調を変化させる酸化還元性色素を含む酸素検知層を形成する工程と、
を備えることを特徴とする酸素検知剤の製造方法。
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