JP6924976B2 - 酸素検知剤及び酸素検知剤の製造方法 - Google Patents

酸素検知剤及び酸素検知剤の製造方法 Download PDF

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Description

本件発明は、雰囲気中の酸素量の変化を色調の変化によって視認可能とする酸素検知剤及び酸素検知剤の製造方法に関し、詳しくは、積層構造を有する酸素検知剤及びその酸素検知剤の製造方法に関する。
食品や医薬品等の保存に際し、雰囲気中の酸素は食品や医薬品等を酸化させ、食品や医薬品等の品質を低下させる。そこで、保存時の品質低下を防止するために、食品や医薬品等を脱酸素剤と共に容器包装内に入れて密閉包装し、脱酸素剤等により容器包装内の酸素を吸収させて、脱酸素状態(酸素濃度0.1%以下の状態を指す)で食品や医薬品等を保存することが行われている。
近年、容器包装内に脱酸素剤と共に酸素検知剤を封入し、酸素検知剤により容器包装内の酸素の有無を検知することが行われている。酸素検知剤は、色調の変化によって、密閉容器包装内の酸素の有無を視認可能としたものである。使用者は、酸素検知剤が呈する色調に基づき、食品や医薬品等が脱酸素状態で保存されているか否かを容易に確認することができる。
この種の酸素検知剤は、一般に、還元剤と、塩基性物質と、酸化状態と還元状態とでは呈色の異なる酸化還元性色素とを含んで構成されている。還元剤は、雰囲気が脱酸素状態のときに酸化還元性色素を還元状態に保持するために用いられる。この様に、酸素検知剤は、還元状態に保持された酸化還元性色素が雰囲気中の酸素によって酸化されて色調が変化する仕組みを利用して、酸素を検知するものである。従って、酸素検知剤には、雰囲気中の酸素量の変化に伴う鮮明な色調変化と良好な変色応答性とが要求される。
従来、このような酸素検知剤として、錠剤状に成形された錠剤タイプの酸素検知剤や紙等のシート状の担体に酸素検知組成物溶液を含浸させたシートタイプの酸素検知剤等が使用されてきた。このような、従来の酸素検知剤では、錠剤状或いはシート状の酸素検知剤を個包装する必要があるため、酸素検知剤の製造工程が複雑であるという課題がある。また、酸素検知剤を使用する際は、脱酸素剤と共に酸素検知剤を容器包装内に封入する必要があり、その手間を要する。そこで、脱酸素剤の包装材の表面に個包装された酸素検知剤を貼付することなどにより、脱酸素剤と酸素検知剤とを一体化した製品なども提案されている。しかしながら、この場合、当該製品の製造工程が非常に煩雑化するという課題がある。
これに対して、近年では、いわゆる印刷タイプの酸素検知剤が提案されるようになってきている(例えば、特許文献1参照)。印刷タイプの酸素検知剤は、例えば、食品や薬品等の容器包装材自体に酸素検知組成物を塗布又は印刷することによっても実現できる可能性があるため、酸素検知剤の個包装が不要になる他、容器包装内に酸素検知剤を封入する工程を削減することができる。また、脱酸素剤の包装材に酸素検知剤組成物を塗布又は印刷することによっても実現できるため、脱酸素剤と酸素検知剤とを一体化した製品の製造工程を大幅に簡略化することができる。
特開2016−75546号公報
ここで、酸化還元性色素の酸化還元反応に伴う色調変化は、水を媒体とした系で行われる。そのため、酸素検知剤組成物は水分を含む。特許文献1に記載の酸素検知剤は、紙製の基材を用いているため、酸素検知剤組成物は基材に含浸される。しかしながら、プラスチックフィルム等の吸水性を有さない基材を用いると、酸素検知剤組成物中の水分含有量が多くなると、基材の表面に酸素検知剤組成物を塗布又は印刷することが困難になり、基材と密着性のよい印刷タイプの酸素検知剤を製造することが困難になる。
本件発明の課題は、鮮明な色調変化と良好な変色応答性を確保しつつ、疎水性基材の表面であっても密着性のよい酸素検知剤及び当該酸素検知剤の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本件発明に係る酸素検知剤は、基材上に、水酸化マグネシウムと、結着剤であるポリビニルアルコールとを含むバインダー層と、雰囲気中の酸素の有無によって色調を変化させる酸化還元性色素を含む酸素検知層とが前記基材側から当該順序で積層されたことを特徴とする。
本件発明に係る酸素検知剤において、前記酸素検知層は、塩基性物質を含む塩基性物質層と、還元剤と、前記酸化還元性色素とを含む酸化還元性色素層とが前記バインダー層上に前記基材側から当該順序で積層された二層構造を有することが好ましい。
本件発明に係る酸素検知剤において、前記基材は透明樹脂基材であることが好ましい。
件発明に係る酸素検知剤において、前記塩基性物質は炭酸ナトリウムであることが好ましい。
本件発明に係る酸素検知剤において、前記還元剤は、還元性糖類であることが好ましい。
上記課題を解決するため、本件発明に係る酸素検知剤の製造方法は、雰囲気中の酸素の有無を酸化還元性色素の色調変化により検知可能とした酸素検知剤の製造方法であって、基材上に、水酸化マグネシウムと、結着剤であるポリビニルアルコールとを含むバインダー層を形成する工程と、前記バインダー層上に、雰囲気中の酸素の有無によって色調を変化させる酸化還元性色素を含む酸素検知層を形成する工程とを備えることを特徴とする。
本件発明によれば、鮮明な色調変化と良好な変色応答性を確保しつつ、疎水性基材の表面であっても密着性のよい酸素検知剤及び当該酸素検知剤の製造方法を提供することができる。
本件発明の実施の形態の酸素検知剤の層構成を示す模式図である。 本件発明の他の形態の酸素検知剤の層構成を示す模式図である。 実施例1の酸素検知剤を脱酸素状態から有酸素状態においたときの反射スペクトルの経時変化を示す図である。 比較例1の酸素検知剤を脱酸素状態から有酸素状態においたときの反射スペクトルの経時変化を示す図である。 比較例2の酸素検知剤を脱酸素状態から有酸素状態においたときの反射スペクトルの経時変化を示す図である。 実施例1の酸素検知剤を繰り返し使用したときの呈色変化を示す図である。
以下、本件発明に係る酸素検知剤及び酸素検知剤の製造方法の好ましい実施の形態を説明する。
1.酸素検知剤
本実施の形態の酸素検知剤の層構成を図1に模式的に示す。本実施の形態の酸素検知剤は、図1に示すように、基材1上に、水酸化マグネシウムと、結着剤とを含むバインダー層2と、塩基性物質を含む塩基性物質層3と、還元剤と、酸化還元性色素とを含む酸化還元性色素層4とが前記基材1側から当該順序で積層されている。当該酸素検知剤は、食品や医薬品等が収容された容器包装内の雰囲気(以下、「被酸素検知雰囲気」と称する。)中の酸素量の変化を酸化還元性色素の色調変化により視認可能としたものである。本実施の形態の酸素検知剤では、上記塩基性物質層3と、上記酸化還元性色素層4の二層により酸素検知機能を発現させるものとした。しかしながら、本件発明に係る酸素検知剤は基材1上に上記バインダー層2を介して、雰囲気中の酸素の有無によって色調を変化させる酸化還元性色素や、当該還元性色素を還元状態に保つ還元剤などを含む酸素検知組成物からなる酸素検知層が設けられていればよく、本実施の形態のように酸素検知組成物を構成する各成分を複数層に分けて配置してもよいし、酸素検知組成物を構成する全成分を一層に配置してもよく、その具体的な構成は特に限定されるものではない。以下、各層について説明する。なお、以下において、塩基性物質層3と酸化還元性色素層4の二層のことを酸素検知層と称する場合がある。
(1)基材1
本件発明において、基材1は特に限定されるものではないが、例えば、紙製基材1、樹脂製基材1等を用いることができ、その形状は特に限定されるものではない。特に、フィルム状、包装袋状、包装容器状等各種形状に成型された紙製容器包装材又は樹脂製容器包装材を基材1とすることが好ましい。当該本件発明に係る酸素検知剤は、基材1の表面に、例えば、上記酸素検知層を形成するためのインキ状組成物を塗布又は印刷により形成することができる。そのため、容器包装材を基材1とすることで、印刷法等により酸素検知機能付容器包装材を簡易に得ることができる。
また、本件発明に係る酸素検知剤において、上記基材1は透明樹脂基材1であることがさらに好ましい。透明樹脂基材1上にバインダー層2を介して酸素検知層を設けることで、透明樹脂基材1側から、酸化還元性色素の色調変化を視認することができる。そのため、当該酸素検知剤を用いる際に、基材1側が被酸素検知雰囲気に面するようにすれば、被酸素検知雰囲気内の食品や医薬品等の被保存品と酸化還元性色素等の酸素検知組成物の構成成分との接触を防止することができる。
透明樹脂基材1として、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等からなる樹脂基材1を用いることができる。基材1を介して、被酸素検知雰囲気中の酸素の有無を検知するには、当該基材1は酸素透過性を有することが求められる。そのため、酸素透過量の少ないポリエステル、ポリアミド等からなる透明樹脂基材1を用いる場合は、透気性を確保しつつ、防水性、防油性を担保できる程度のごく微小の孔を有する有孔透明樹脂基材1を用いることが好ましい。このような透明樹脂基材1について、より具体的には、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンとしては低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレンとしては無延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)等を用いることができる。これらの合成樹脂フィルムは単層フィルムのみならず、異なる材質のフィルムを積層した積層フィルムとして用いてもよい。
本件発明に係る酸素検知剤では、ポリエステル等の疎水性基材1を用いたときでも、次に説明するバインダー層2を介して、塩基性物質層3及び酸化還元性色素層4の二層からなる酸素検知層を基材1に密着性よく設けることができる。なお、本実施の形態では、主として、透明樹脂基材1を用いた場合を例に挙げて、本件発明に係る酸素検知剤について説明する。しかしながら、上述したとおり、本件発明において基材1は特に限定されるものではなく、透明樹脂基材1に限らず、不透明な樹脂基材1を用いてもよいし、紙製基材1であってもよい。なお、基材1の酸素検知層が設けられる側の面には親水処理が施されていてもよい。
(2)バインダー層2
次に、バインダー層2について説明する。バインダー層2は、水酸化マグネシウムと結着剤とを含む層である。当該バインダー層2は、水酸化マグネシウム微粒子と、結着剤との混合物からなり、結着剤内に水酸化マグネシウム微粒子が分散されてなることが好ましい。微粒子状の水酸化マグネシウムを結着剤に分散させることにより、当該バインダー層2は白色を呈する。基材1上に白色層を設けることにより、酸化還元性色素の色調変化を鮮明に視認可能とすることができる。
結着剤は、基材1と酸素検知層を構成する各成分とを密着させるための成分である。後述するように、本件発明に係る酸素検知剤は、各層の構成成分を含む水系溶媒に溶解又は分散させた水性インク状組成物を基材1上に塗布又は印刷する方法により製造することができる。基材1が疎水性の透明樹脂基材1である場合、当該基材1上に直接水性インク状組成物を塗布又は印刷すると、基材1に対する当該水性インク状組成物の濡れ性が悪く、基材1上に当該水性インク状組成物を均一な厚みで塗布又は印刷することが困難になる。しかしながら、本件発明によれば、当該バインダー層2を基材1上に設けることで、基材1表面の上記水性インク状組成物の濡れ性を改善することができる。
そのため、水性インク状組成物をバインダー層2の表面に均一な厚みで良好に塗布又は印刷することが可能になり、基材1上にバインダー層2を介して密着性のよい塩基性物質層3及び酸化還元性色素層4を設けることができる。従って、酸化還元性色素を基材1上の発色領域全域に均一に分布させることができ、色ムラのない全面均一な発色を実現することができる。
ここで、結着剤として水溶性樹脂を用いることが好ましい。水溶性樹脂として、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル酸系樹脂などの他、水酸基等の親水基が導入された各種の変性樹脂などを挙げることができる。水溶性樹脂を結着剤とすることで、バインダー層2を形成する際に水を溶媒として用いることができる。酸素検知剤の製造工程において、有機溶媒を用いる工程があると、残存した有機溶媒が保存容器内で揮発して食品や医薬品に付着する恐れがある。水溶性樹脂を結着剤として用いれば、有機溶媒を用いる必要がないため、上記のような恐れがなく好ましい。
また、酸化還元性色素の酸化還元反応に伴う色調変化は、水を媒体とした系で行われる。結着剤として水溶性樹脂を含む当該バインダー層2を設けることにより、酸化還元性色素の酸化還元反応に要する水分を基材1上に保持しやすくすることができる。そのため、従来と異なり、含水性の基材1や多孔質シリカ等の担持体を用いずとも、疎水性の基材1上に変色応答性のよい酸素検知剤を実現することができる。特に、ポリビニルアルコールは分子構造中に含まれる水酸基の割合が高いため、ポリビニルアルコールを結着剤として用いれば、上記酸化還元反応に要する水分をバインダー層2内に保持しやすく、迅速な変色応答性を有する酸素検知剤を得ることができる。
一方、水溶性樹脂を結着剤として用いた場合、バインダー層2上に水性インク状組成物を塗布又は印刷した際に、バインダー層2内の水溶性樹脂が水性インク状組成物に含まれる水に溶解する恐れがある。しかしながら、本件発明では、バインダー層2内に水酸化マグネシウムを分散させることで、水酸化マグネシウムを含まない場合と比較すると、酸化還元性色素の酸化還元反応を良好に行わせることができ、良好な変色応答性が得られることから、バインダー層の保水性が向上するものと考えられる。また、バインダー層2の表面に水性インク状組成物を塗布又は印刷したときも、バインダー層2を構成する水溶性樹脂が水性インク状組成物に含まれる水に溶解することを防止する効果が期待できる。
なお、バインダー層2の保水性を高めるという観点から、例えば、グリセリンを含む構成としてもよい。グリセリン含有量が多くなると、バインダー層を固化することが困難になる。そのため、グリセリン含有量はバインダー層の固化を妨げない量に適宜調整する必要がある。
(3)塩基性物質層3
本実施の形態の酸素検知剤では、無酸素雰囲気下において酸化還元性色素を還元状態に保持するための還元剤として還元性糖類を用いる。還元性糖類は水溶液中で開環し、還元性基を有するアルデヒドが開環体となる。しかしながら、この開環体は中性水溶液中では酸化還元性色素の還元剤としては作用せず、アルカリ条件下にした場合に酸化還元性色素に対する還元剤として作用する。従って、還元性糖類により酸化還元性色素を還元するには、塩基性物質(アルカリ剤)が必要になる。そこで、本実施の形態の酸素検知剤は、塩基性物質を含む塩基性物質層3を基材1上に設ける。
塩基性物質として、例えば、アルカリ金属塩を用いることができ、特に、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩を用いることが好ましい。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物を用いることもできるが、これらは強塩基であるため還元性糖類の褐変反応を生じやすくする。そのため、弱塩基であるアルカリ金属の炭酸塩を用いることがより好ましい。また、本実施の形態の酸素検知剤では、酸素検知層を塩基性物質層3と酸化還元性色素層4との二層構造とし、酸化還元性色素層4に還元性色素を含ませる構成とすることにより、還元性色素の褐変反応をより生じにくくすることができる。
(4)酸化還元性色素層4
本実施の形態の酸素検知剤では、酸化還元性色素層4は、還元剤と、酸化還元性色素とを含む。
酸化還元性色素は、還元剤により還元される色素であって、酸化状態と還元状態とで呈色を可逆的に変化させる色素である。この様な色素として、メチレンブルー、ニューメチレンブルー、フェノサフラニン、ラウスバイオレット、メチレングリーン等があげられる。例えば、メチレンブルーの場合、被酸素検知雰囲気が脱酸素状態の場合、還元型の構造(ロイコメチレンブルー)となり、無色を呈する。一方、被酸素検知雰囲気が有酸素状態の場合、メチレンブルーは酸化型の構造となり青色を呈する。
還元剤として、還元性糖類を用いることができる。具体的には、D−マンノース、D−グルコース、D−フラクトース、D−エリスロースおよびD−アルトロース等の単糖類、マルトース、ラクトース等の還元性二糖類、マルトトリオース、セロトリオース、マンニノトリオースおよびバノース等の還元性三糖類を用いることができる。これらの中でも、特に、反応性が高く、酸化還元性色素に対する還元力が高いという観点から、還元性二糖類及び還元性三糖類に比して単糖類を用いることが好ましい。また、単糖類の中でも、D−グルコースをより好ましく用いることができる。D−グルコースは且つ、純度の高い(例えば、純度99%以上の)製品を市場で安価に容易に入手することができるためである。なお、還元剤として還元性糖類以外にもアスコルビン酸などを用いることもできる。
なお、本実施の形態の酸素検知剤は、例えば、基材1上に文字或いは記号等の所定の形状の発色領域にのみ、バインダー層2、塩基性物質層3、酸化還元性色素層4を設け、酸素の有無によって所定の形状の発色領域の色調を変化させることにより、酸素の有無を視認可能にすることを意図している。例えば、メチレンブルー、フェノサフラニン等の還元状態で無色を呈する色素を用いれば、被酸素検知雰囲気に酸素が存在する場合のみ、文字或いは記号等が現れるようにすることができる。
しかしながら、本件発明に係る酸素検知剤は、錠剤状やシート状に形成された従来のタイプの酸素検知剤のように、酸素検知層に還元剤によって還元されない色素を添加し、被酸素検知雰囲気中の酸素の有無によって、異なる色を呈するようにしてもよい。例えば、酸化還元性色素として、メチレンブルーを用いる場合、酸素検知層に食紅を添加することが考えられる。その場合、被酸素検知雰囲気が脱酸素状態の場合は、酸素検知層は食紅により赤色を呈し、被酸素検知雰囲気が有酸素状態の場合は酸素検知層は青〜青紫色を呈する。このように、被酸素検知雰囲気中の酸素の有無によって呈色を変化させてもよい。
(5)第二の基材5
以上説明した本実施の形態の酸素検知剤は、他の形態として、例えば、図2に示すように、酸化還元性色素層4側を第二の基材5に密着させて使用してもよい。第二の基材5は、上述した基材1と同様のものを用いることができる。第二の基材5として、例えば、脱酸素剤の包装材、食品や医薬品の包装材などを用いることができる。
この際、酸化還元性色素層4の表面に接着剤層を設け、酸素検知剤をシール状に加工しておけば、所定の大きさに切り出された酸素検知剤を脱酸素剤の包装材、食品や医薬品等の包装材に簡易に貼付することができる。このようにシール状に加工された酸素検知剤を用いれば、脱酸素剤と酸素検知剤とを一体化した製品を簡易に製造することができる。また、食品や医薬品等の包装材に当該酸素検知剤を予め貼付しておけば、食品や医薬品を包装する際に、酸素検知剤を包装容器内に封入する手間を削減することができる。
2.酸素検知剤の製造方法
次に、本件発明に係る酸素検知剤の製造方法の実施の形態を説明する。本件発明に係る酸素検知剤の製造方法は、雰囲気中の酸素の有無を酸化還元性色素の色調変化により検知可能とした酸素検知剤の製造方法であって、基材1上に、水酸化マグネシウムと、結着剤とを含むバインダー層2を形成する工程と、前記バインダー層2上に、雰囲気中の酸素の有無によって色調を変化させる酸化還元性色素を含む酸素検知層を形成する工程とを備えることを特徴とする。
バインダー層2及び酸素検知層は上述したとおりであり、本実施の形態では酸素検知層を上記塩基性物質層3と酸化還元性色素層4の二層構造とする点についても上述したとおりである。
以下、各層の形成方法を具体的に説明する。
(1)バインダー層2
まず、バインダー層2形成溶液を基材1上に所定の厚みになるようにバーコーター等を用いて塗布、乾燥させる。バインダー層2形成溶液は、溶媒に結着剤を溶解させ、当該溶媒に水酸化マグネシウムを分散させることにより調製することができる。結着剤と、水酸化マグネシウムとの混合比(質量混合比)は、結着剤量(固形分)を100としたとき、水酸化マグネシウムを100〜2000とすることが好ましく、400〜1500とすることがより好ましく、600〜1200とすることがさらに好ましい。結着剤としては、上述したとおり、水溶性樹脂、特にポリビニルアルコールを用いることが好ましい。このとき、溶媒として水を用いることが好ましい。なお、バインダー層2形成溶液の粘度は、基材1上に塗布する際の作業性を鑑みて適宜調整することが好ましい。
但し、結着剤として用いる樹脂の重合度等によっても上記結着剤と水酸化マグネシウムの混合比の好ましい範囲は変動するため、上述の混合比に限らず、適宜調整することができる。
バインダー層2形成溶液を基材1上に塗布後、乾燥させても一定量の水分が保持される。例えば、結着剤としてポリビニルアルコールを用いた場合、ポリビニルアルコールの質量の5%〜15%程度の質量の水分が保水されると考えられる。なお、上述したとおり、バインダー層2の保水性を高めるという観点から、グリセリンを含む構成としてもよい。但し、バインダー層2形成溶液中のグリセリン含有量が大きくなると、バインダー層2形成溶液塗布後に乾燥させてもバインダー層2が固化しない。そのため、グリセリンを添加する場合、ポリビニルアルコール(質量)に対して、5質量%以下とすることが好ましい。
(2)塩基性物質層3
次に、塩基性物質層3形成溶液を、上記と同様にして、バインダー層2上に塗布し、乾燥させる。塩基性物質層3形成溶液において、塩基性物質濃度は0.5質量%〜3.5質量%であることが好ましく、1.0質量%〜3.0質量%であることがより好ましい。なお、塩基性物質濃度等は、酸化還元性色素層4に含まれる還元性糖類の含有量等に応じて適宜適切な値に調整することが好ましい。溶媒として水を用いる。塩基性物質は、上述したとおり、アルカリ金属塩を用いることができ、特に、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩を用いることが好ましい。
(3)酸化還元性色素層4
次に、酸化還元性色素層4形成溶液を、上記と同様にして、塩基性物質層3上に塗布し、乾燥させる。酸化還元性色素層4形成溶液は、溶媒としての水に、還元剤を溶解させ、酸化還元性色素を溶解又は分散させることにより調製することができる。上述したとおり、還元剤としては、還元性糖類を用いることが好ましく、特に、D−グルコースを用いることが好ましい。
酸化還元性色素層4形成溶液において、酸化還元性色素濃度は、0.1質量%〜3.0質量%とすることが好ましく、0.3質量%〜2質量%とすることがより好ましく、0.5質量%〜1.5質量%とすることがさらに好ましい。
酸化還元性色素形成溶液において、還元剤は、酸化還元性色素を還元状態に保持するために十分な量であればよく、酸化還元性色素の含有量に応じて適宜調整することができる。D−グルコースを還元剤として用いる場合、1質量%〜25質量%程度であることが好ましく、3質量%〜20質量%程度であることが好ましく、5質量%〜15質量%程度であることがより好ましい。
なお、酸化還元性色素層4形成溶液は、上述した水性インク状組成物に相当する。印刷法により、当該酸化還元性色素層4形成溶液をインクとして、基材1上に所定の文字や記号を印刷する場合、当該酸化還元性色素層4形成溶液の溶媒として、水と共にエタノールを用いてもよい。エタノールは揮発性がよいため、基材1上(正確には塩化性物質層上)に、当該酸化還元性色素層4形成溶液を印刷したときに、溶媒成分を速やかに揮発させることができる。この場合、酸化還元性色素層4形成溶液にグリセリンを必要に応じて添加してもよい。グリセリンを添加することにより、水溶媒中に酸化還元性色素を良好に分散させることができる。そのため、例えば、当該酸化還元性色素溶液をインクとして、インクジェットプリンタ等により、基材1上に所定の文字や記号を印刷する際に、酸化還元性色素が沈殿して、インク吐出部の目詰まり等が生じるのを防止することができる。また、酸化還元性色素の沈殿を抑制するため、ポリビニルアルコールやグリセリン脂肪酸エステルなどを界面活性剤として必要に応じて少量添加してもよい。
ここで、本件発明に係る酸素検知剤の製造方法では、基材1上に上記バインダー層2を設けるため、基材1がポリエステル等の疎水性基材1であっても、塩基性物質層3形成溶液(水溶液)や、酸化還元性色素層4形成溶液(水溶液)の濡れ性が良好であり、バインダー層2上に塩基性物質層3や酸化還元性色素層4を密着性よく形成することができる。従って、例えば、印刷法により、所定の文字や形状の発色領域にのみ、水性インク状組成物を塗布(吐出)させた場合にも、滲みを防ぐことができる。また、当該方法で製造した酸素検知剤は、上述したとおり、酸化還元性色素の色調変化を鮮明に視認可能とすることができると共に良好な変色応答性を得ることができる。さらに、本件発明に係る酸素検知剤の製造方法によれば、各層形成溶液の溶媒を全て水とすることができ、有機溶媒を用いる必要がないため、酸素検知剤中に残存した有機溶媒が保存容器内で揮発して食品や医薬品に付着するといった問題が生じず好ましい。
なお、酸化還元性色素層4を形成した後、当該酸化還元性色素層4上に接着層を形成し、上述した第二の基材5に密着させてもよいのは勿論である(図2参照)。
以下、実施例及び比較例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に制限されるものではない。
以下の工程により、2.5cm×3cmの大きさのポリエチレンテレフタレート製の透明フィルム基材(PETフィルム)上に、バインダー層、塩基性物質層、酸化還元性色素層を形成して、実施例1の酸素検知剤とした。
(1)バインダー層形成工程
バインダー層形成工程では、バインダー層形成溶液として、平均重合度3500のポリビニルアルコール(1級試薬/和光純薬工業株式会社製 163−16355)を用いて、5質量%の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製した。この5質量%のポリビニルアルコール水溶液に水酸化マグネシウムを添加した。このとき、5質量%のポリビニルアルコール水溶液と、水酸化マグネシウムの混合比が、質量比で7:3になるようにした。なお、ポリビニルアルコール(固形分)と水酸化マグネシウムとの混合比は、質量比で100:857である。
以上のように調製したバインダー層形成溶液をバーコーターを用いて、上記基材上に塗布した。バインダー層形成溶液塗布後、ドライヤーにより乾燥させて、バインダー層とした。なお、バインダー層形成溶液を塗布するために用いたバーコーターは、第一理化株式会社製の番線No.2(膜厚4.58μm)を用いた。
(2)塩基性物質層形成工程
塩基性物質層形成工程では、水10.0gに、炭酸ナトリウムを0.15g溶解させて、炭酸ナトリウム濃度1.48%の塩基性物質層形成液を調製した。この塩基性物質層形成溶液をバインダー層上に、バーコーターを用いて、上記と同様にして塗布した。その後、ドライヤーにより乾燥させて、塩基性物質層とした。
(3)酸化還元性色素層形成工程
酸化還元性色素層形成工程では、水25.0gに、エタノール5.0gを混合し、水エタノール混合溶媒とした。当該混合溶媒に、酸化還元性色素としてメチレンブルーを0.3g、還元剤としてD−グルコースを5.0g添加して混合した。メチレンブルー濃度は、0.85質量%、D−グルコース濃度は14.16質量%である。この酸化還元性色素層形成溶液を塩基性物質層上に、バーコーターを用いて、上記と同様にして塗布した。その後、ドライヤーにより乾燥させ、酸化還元性色素層とした。
(4)その後、塗布面を裏返して、脱酸素剤(パウダーテック株式会社製:ワンダーキープ(登録商標)LP−100)の表面に酸化還元性色素層側を密着固定し、透明樹脂基材側を視認面とした。そして、透明樹脂基材に8個×11列のピンホールを開け、実施例1の酸素検知剤とした。
実施例2では、透明樹脂基材として、2軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)を用いたことを除いて、実施例1と同様にして酸素検知剤を作製した。
実施例3では、透明樹脂基材として、厚みが60μmのOHPフィルム(株式会社クイックアート製 BFSA4C)を用いたことを除いて、実施例1と同様にして酸素検知剤を作製した。OHPフィルムは、吸水処理が施されたPETフィルムである。
比較例
[比較例1]
比較例1として、バインダー層を形成する際に、水酸化マグネシウムを用いなかったことを除いて、実施例1と同様にして酸素検知剤を作製した。
[比較例2]
比較例2では、バインダー層形成工程において、水酸化マグネシウムに代えて、水酸化アルミニウムを用いた。バインダー層形成溶液における5質量%のポリビニルアルコール水溶液と、水酸化アルミニウムの混合比は8:2とした。なお、ポリビニルアルコール(固形分)と水酸化アルミニウムとの混合比は、質量比で100:500である。また、酸化還元性色素層形成工程において、水10.0gに、エタノール5.0gを混合し、水エタノール混合溶媒とした。当該混合溶媒に、酸化還元性色素としてメチレンブルーを0.1g、還元剤としてD−グルコースを1.0g添加した。また、界面活性剤として、平均重合度が500のポリビニルアルコールを0.05g添加した。これらを混合して、メチレンブルー濃度0.62質量%、D−グルコース濃度は6.19質量%の酸化還元性色素形成液を調製した。これらのバインダー層形成溶液及び酸化還元性色素層形成溶液を用いて、バインダー層及び酸化還元性色素層を形成したことを除いて、実施例1と同様にして、酸素検知剤を作製した。
[比較例3]
比較例3では、透明樹脂基材として、実施例2と同じOPPフィルムを用いたことを除いて、比較例2と同様にして酸素検知剤を作製した。
[比較例4]
比較例4では、透明樹脂基材として、実施例3と同じOHPフィルムを用いたことを除いて、比較例2と同様にして酸素検知剤を作製した。
[評価]
1.評価方法
(1)密着性、色ムラ
基材に、バインダー層、塩基性物質層及び酸化還元性色素層を形成した後の状態を目視により確認し、これらの層の基材に対する密着性及び色ムラの有無を確認した。
(2)変色応答性
各実施例及び各比較例で作製した脱酸素剤と一体化された酸素検知剤を幅150mm、長さ200mmの塩化ビニリデンコートナイロンポリエチレン袋に入れて、密封し、35℃の恒温槽中に12時間保管した。そして、開封後経時に伴う当該酸素検知剤の呈色の変化を目視で確認すると共に、反射スペクトルを測定し、そのピーク強度の変化を確認した。なお、反射スペクトルの測定には、日本分光株式会社製の紫外可視分光光度計 V−570を用いた。
(3)繰り返し利用性
実施例1と同様にして作製した酸素検知剤を、幅150mm、長さ200mmの塩化ビニリデンコートナイロンポリエチレン袋に、脱酸素剤(パウダーテック株式会社製:ワンダーキープ(登録商標)LP−100)と共に入れて、密封し、35℃の恒温槽中に12時間保管した。その後開封し、開封後5分後、10分後、30分後における当該酸素検知剤の呈色の変化を確認した。酸素検知剤の呈色変化がなくなるまで、酸素雰囲気下で放置した酸素検知剤を、再び、新たな脱酸素剤と共に上記袋に入れ、上記と同様の手順で酸素検知剤の呈色変化を確認することを繰り返し行った。繰り返し回数を9回とした。
2.評価結果
(1)密着性及び色ムラ
まず、実施例1と比較例1の酸素検知剤について述べる。実施例1の酸素検知剤において、バインダー層はポリビニルアルコールと水酸化マグネシウムとを含む。実施例1の酸素検知剤では、ポリエチレンテレフタレート製基材の表面に、各層を密着性よく形成することができ、酸化還元性色素層の発色も良好で色ムラも観察されなかった。一方、比較例1の酸素検知剤において、バインダー層はポリビニルアルコール水溶液のみを用いて形成した。すなわち、バインダー層には水酸化マグネシウムが含まれない。比較例1の酸素検知剤では、ポリエチレンテレフタレート製基材の表面に、各層を形成することはできたものの、酸化還元性色素層等を均一な厚みで形成することが困難であったのか、或いは、密着性が不足しているのか、脱酸素前において色ムラが観察された。
比較例2は、バインダー層として、水酸化マグネシウムに代えて、水酸化アルミニウムを含む。バインダー層に水酸化アルミニウムを添加することにより、比較例1と比較すると、塩基性物質層及び酸化還元性色素層の密着性は良好であり、色ムラも少なかった。しかしながら、バインダー層に水酸化マグネシウムを含む実施例1の酸素検知剤と比較すると、密着性が低く、色ムラも観察された。
実施例2及び実施例3の酸素検知剤は、基材の材質が異なる以外は実施例1と同様に製造されたものである。いずれも各基材上に密着性よく各層を形成することができたことから、バインダー層をポリビニルアルコールと水酸化マグネシウムとを含む構成とすることにより、PETフィルム、OPPフィルムなどの吸水性を有さない基材を用いた場合も、当該基材上に水性インク状に調製した酸化還元性色素層形成溶液等を用いて印刷タイプの酸素検知剤を製造可能であることが確認された。
一方、比較例2〜比較例4を比較すると、OHPフィルムを基材として用いた比較例4の酸素検知剤は、比較例2及び比較例3の酸素検知剤と比較すると、バインダー層に水酸化マグネシウムに代えて、水酸化アルミニウムを添加したときも、酸化還元性色素層を薄く、密着性よく形成することができた。OHPフィルムは、PETフィルムの表面に吸水処理が施されたものである。基材の吸水性が他の基材(PETフィルム/OPPフィルム)よりも高いため、酸化還元性色素層を基材上に密着性よく形成できたものと考えられる。
(2)反射スペクトル
図3及び図4に、実施例1及び比較例1の酸素検知剤について測定した反射スペクトルを示す。実施例1の酸素検知剤は、脱酸素前、青紫色を呈し、波長588nm及び波長663nmの位置にピークが現れた。密封された袋内で脱酸素剤と共に12時間保管された後、図3fに示すように可視光領域の吸光度は約0.01となり、白色(バインダー層の色)を呈した。一方、脱酸素前の同位置におけるピーク強度は約6.0であった。密封袋を開封後、5分経過後のピーク強度は約1.0であり、脱酸素前のピーク強度の約15%であった。また、開封30分後のピーク強度は約3.0であり、脱酸素前のピーク強度の約50%であった。開封1時間後の同位置のピーク強度は約5.0であり、脱酸素前の約80%であった。雰囲気中の酸素を検知して5分後には目視で分かる程度に発色していることから、良好な変色応答性を確保することができることが確認された。
これに対して、比較例1の酸素検知剤は、脱酸素前は青色を呈し、波長610nm及び波長664nmの位置にピークが現れた。密封された袋内で脱酸素剤と共に12時間保管された後、図fに示すように可視光領域の吸光度は約0.01となり、無色を呈した。一方、脱酸素前の同位置におけるピーク強度は約8.0であった。密封袋を開封後、5分経過後のピーク強度は約0.07であり、開封30分後のピーク強度は約0.3であり、開封1時間後の同位置のピーク強度は約0.6であった。酸素雰囲気下に置かれた後1時間経過しても、脱酸素前の10%以下のピーク強度しか示さず、実施例1の酸素検知剤と比較すると変色応答性が低いことが確認された。
次に、図5に、比較例2の酸素検知剤について測定した反射スペクトルを示す。比較例2の酸素検知剤は、脱酸素前、青色を呈し、波長606nm及び波長666nmの位置にピークが現れた。密封された袋内で脱酸素剤と共に12時間保管された後、図5fに示すように可視光領域の吸光度は約0.01となり、白色(バインダー層の色)を呈した。一方、脱酸素前の同位置におけるピーク強度は約9.0であった。密封袋を開封後、5分経過後のピーク強度は約1.0であり、脱酸素前のピーク強度の約15%であった。また、開封30分後のピーク強度は約2.0であり、脱酸素前のピーク強度の約22%であった。比較例1と比較すると、比較例2の酸素検知剤の変色応答性は改善されているものの、実施例1と比較すると変色応答性は低く、酸化還元性色素の酸化還元反応を迅速に行わせるために十分な条件(保水量、pH等)が不足しているものと考えられる。
なお、図3〜図5に示す反射スペクトルは、上述したとおり、2つの波長位置にピークを有する。長波長側のピークはメチレンブルーの単量体のピークを示し、概ね663nm〜666nmに現れる。一方、短波長側のピークはメチレンブルーの量体のピークを示し、そのピーク位置はメチレンブルーの濃度が高くなるにつれ、すなわちピーク強度が高いほど、短波長側にシフトしていることが確認される。メチレンブルーの濃度が高くなると、3量体や4量体などの凝集体が生じやすくなる。そのため、ピーク位置のシフトが観察されるものと考えられる。
なお、バインダー層形成溶液を調製する際に、水酸化マグネシウムに代えて、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを用いて、実施例1と同様にして酸素検知剤の製造を試みた。しかしながら、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを用いた場合は、還元剤として用いたD−グルコースの褐変反応が生じ、酸化還元色素層が茶褐色を呈する他、酸化還元性色素を還元型に維持することが困難であった。そのため、実用性のある酸素検知剤を得ることは困難であった。また、酸化マグネシウムを用いた場合は、ポリビニルアルコール水溶液に酸化マグネシウムを添加するとバインダー層形成溶液が直ちにゲル化し、基材上にバインダー層形成溶液を薄く均一に塗布することが困難であった。
一方、水酸化マグネシウムの場合、水酸化マグネシウムをポリビニルアルコールに添加しても、バインダー層形成溶液が直ちにゲル化することはなく、バインダー層形成溶液を基材上に薄く塗布するに十分な作業性を確保することができた。また、バインダー層形成溶液を乾燥させる際にポリビニルアルコールのみを用いる場合と比較すると、バインダー層が早く固化する。このことから、恐らく、バインダー層に水酸化マグネシウムを添加することで、ポリビニルアルコールの架橋密度が幾分高くなり、酸化還元性色素の酸化還元反応を良好に行わせるために十分な保水量を確保しつつ、基材と、塩基性物質層及び酸化還元性色素層とを密着させるための接着層としての機能を果たすものと考えられる。
また、基材上にバインダー層を介して酸素検知層を形成する際に、上記実施の形態及び本実施例で説明したように、塩基性物質層をバインダー層上に形成した後、当該塩基性物質層上に酸化還元性色素層を形成することで、変色応答性及び発色の良好な酸素検知剤を得ることができた。これに対して、バインダー層上に、塩基性物質、還元剤及び酸化還元性色素を全て含む一層の酸素検知層を形成した場合、酸素検知層を二層構造とした場合と比較すると、変色応答性及び発色の点で不十分であった。これは、塩基性物質層内に還元剤(D−グルコース)を含ませた場合、還元性糖類の褐変反応が生じることが変色応答性及び発色が低下する原因の一つとして考えられる。一方、上記実施の形態及び本実施例で説明したように、塩基性物質層を塩基性物質のみを含む層とし、当該塩基性物質層上に還元剤を含む酸化還元性色素層を形成することで、還元剤(D−グルコース)の褐変反応を抑制することができ、良好な変色応答性及び発色の良好な酸素検知剤を得ることができた。
さらに、基材上に塩基性物質層及び酸化還元性色素層を密着性よく形成することができるという観点からは、OHPフィルムがPETフィルム、OPPフィルムと比較してより良好であった。しかしながら、より鮮明な色調変化と迅速な変色応答性が得られるという観点からは、基材としてはPETフィルムを用いることが最も好ましいことが確認された。
(3)繰り返し利用性
実施例1の酸素検知剤の呈色変化を9回繰り返し確認したところ、図6に示すように、実施例1の酸素検知剤は9回目においても、恒温漕に12時間保管した後、酸素検知剤は白色を呈し、メチレンブルーが還元型構造を取ることが確認された。また、9回目においても開封後、酸素検知剤が酸素雰囲気下に置かれると、酸素検知剤は経時と共に青色が濃くなっていき、30分経過後の呈色は、1回目のときと同程度になった。このことから、実施例1の酸素検知剤は、複数回繰り返し使用しても、劣化することなく、雰囲気中の酸素の有無を検知することができることが分かった。
本件発明によれば、鮮明な色調変化と良好な変色応答性を確保しつつ、疎水性基材の表面であっても密着性のよい酸素検知剤及び当該酸素検知剤の製造方法を提供することができる。

Claims (6)

  1. 基材上に、
    水酸化マグネシウムと、結着剤であるポリビニルアルコールとを含むバインダー層と、
    雰囲気中の酸素の有無によって色調を変化させる酸化還元性色素を含む酸素検知層と、
    が前記基材側から当該順序で積層されたことを特徴とする酸素検知剤。
  2. 前記酸素検知層は、
    塩基性物質を含む塩基性物質層と、
    還元剤と、前記酸化還元性色素とを含む酸化還元性色素層と、
    が前記バインダー層上に前記基材側から当該順序で積層された二層構造を有する請求項1に記載の酸素検知剤。
  3. 前記基材は、透明樹脂基材である請求項1又は請求項2に記載の酸素検知剤。
  4. 前記塩基性物質は、炭酸ナトリウムである請求項に記載の酸素検知剤。
  5. 前記還元は、還元性糖類である請求項に記載の酸素検知剤。
  6. 雰囲気中の酸素の有無を酸化還元性色素の色調変化により検知可能とした酸素検知剤の製造方法であって、
    基材上に、水酸化マグネシウムと、結着剤であるポリビニルアルコールとを含むバインダー層を形成する工程と、
    前記バインダー層上に、雰囲気中の酸素の有無によって色調を変化させる酸化還元性色素を含む酸素検知層を形成する工程と、
    を備えることを特徴とする酸素検知剤の製造方法。
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