JP6924602B2 - 熱硬化性組成物、硬化物、電磁波シールドフィルム及びその製造方法、並びに電磁波シールドフィルム付きプリント配線板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
[2] 前記固体である化合物(1)が下記式(1a)で表される化合物である、[1]に記載の熱硬化性組成物。
[3] 前記液体である化合物(1)が下記式(1b)で表される化合物である、[1]に記載の熱硬化性組成物。
[4] 前記固体である化合物(1)が下記式(1a−1)で表される化合物である、[1]に記載の熱硬化性組成物。
[5] 前記液体である化合物(1)が下記式(1b−1)で表される化合物である、[1]に記載の熱硬化性組成物。
[6] 黒色着色剤をさらに含む、[1]〜[5]の何れか一項に記載の熱硬化性組成物。
[7] 導電性粒子をさらに含む、[1]〜[5]の何れか一項に記載の熱硬化性組成物。
[8] 下記式(2)で表される化合物の群から選ばれる1種以上をさらに含む、[1]〜[7]の何れか一項に記載の熱硬化性組成物。
[9] 溶剤をさらに含む、[1]〜[8]の何れか一項に記載の熱硬化性組成物。
[10] [1]〜[9]のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物の硬化物。
[11] 絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層に隣接する金属薄膜層と、前記金属薄膜層の前記絶縁樹脂層とは反対側に隣接する接着剤層とを有する電磁波シールドフィルムであって、前記絶縁樹脂層及び前記接着剤層のうち少なくとも一方が、[1]〜[9]の何れか一項に記載の熱硬化性組成物又は[10]に記載の硬化物である、電磁波シールドフィルム。
[12] 前記接着剤層が異方導電性接着剤層である[11]に記載の電磁波シールドフィルム。
[13] 基板の少なくとも片面にプリント回路が設けられたプリント配線板と、前記プリント配線板の前記プリント回路が設けられた側の表面に隣接する絶縁フィルムと、前記接着剤層が前記絶縁フィルムに隣接するように設けられた[11]又は[12]に記載の電磁波シールドフィルムと、を有する、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板。
[14] [11]に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法であって、前記熱硬化性組成物を基材フィルムに塗布してなる塗膜を加熱することによって、任意の程度まで硬化させることにより、前記絶縁樹脂層及び前記接着剤層のうち少なくとも一方を形成する工程を有する、電磁波シールドフィルムの製造方法。
[15] [11]に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法であって、前記絶縁樹脂層と、前記金属薄膜層と、前記接着剤層とをこの順で積層し、加熱及び加圧するラミネート処理を施すことによって、前記絶縁樹脂層と前記金属薄膜層の接着、及び前記金属薄膜層と前記接着剤層の接着のうち、少なくとも一方の接着を行う工程を有する、電磁波シールドフィルムの製造方法。
[16] [13]に記載の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の製造方法であって、前記プリント配線板の前記絶縁フィルムの表面に、前記電磁波シールドフィルムの前記接着剤層が接触するように重ね、これらを圧着することによって、前記絶縁フィルムの表面に前記接着剤層を接着する圧着工程を有する、製造方法。
[17] 前記圧着工程において圧着する際に、前記絶縁樹脂層及び前記接着剤層を加熱しながらプレスする、[16]に記載の製造方法。
[18] 前記圧着工程の後で、前記絶縁樹脂層及び前記接着剤層をさらに加熱することによって、前記熱硬化性組成物を硬化させる硬化工程を有する、[16]又は[17]に記載の製造方法。
前記式(1a)中、R2は水素原子又は任意の置換基であり、リン原子に結合したフェニル基にR2が結合して環を形成していてもよい。
前記式(1b)中、R2は水素原子又は任意の置換基であり、リン原子に結合したフェニル基にR2が結合して環を形成していてもよく;R3は水酸基及びカルボキシル基のうち少なくとも一方を1つ以上有する任意の置換基である。
本発明の電磁波シールドフィルム及び電磁波シールドフィルム付きプリント配線板は、難燃性が向上している。
本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法によれば、金属薄膜層に絶縁樹脂層又は接着剤層を接着するラミネート処理の回数を低減することができる。
本発明の電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板の製造方法によれば、本発明に係る熱硬化性組成物の熱プレス時にも速やかに硬化するので、熱プレスによって電磁波シールドフィルムをFPCに貼り付ける際に、熱硬化性組成物の成分の溶出を抑制することができる。これにより、形成する絶縁樹脂層及び接着剤層の接着力や厚みの制御がより容易となる。
「エポキシ」とは、炭素鎖によって結合されている2原子の炭素と結合する−O−原子団に対する基名である。
「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基の総称である。
「等方導電性接着剤層」とは、厚さ方向および面方向に導電性を有する導電性接着剤層を意味する。
「異方導電性接着剤層」とは、厚さ方向に導電性を有し、面方向に導電性を有しない導電性接着剤層を意味する。
「面方向に導電性を有しない導電性接着剤層」とは、表面抵抗が1×104Ω以上である導電性接着剤層を意味する。
粒子の平均粒子径は、粒子の顕微鏡像から30個の粒子を無作為に選び、それぞれの粒子について、最小径および最大径を測定し、最小径と最大径との中央値を一粒子の粒子径とし、測定した30個の粒子の粒子径を算術平均して得た値である。導電性粒子の平均粒子径も同様である。
フィルム(離型フィルム、絶縁フィルム等)、塗膜(絶縁樹脂層、導電性接着剤層等)、金属薄膜層等の厚さは、顕微鏡を用いて測定対象の断面を観察し、5箇所の厚さを測定し、平均した値である。
貯蔵弾性率は、測定対象に与えた応力と検出した歪から算出され、温度または時間の関数として出力する動的粘弾性測定装置を用いて、粘弾性特性の一つとして測定される。
表面抵抗は、石英ガラス上に金を蒸着して形成した、2本の薄膜金属電極(長さ10mm、幅5mm、電極間距離10mm)を用い、この電極上に被測定物を置き、被測定物上から、被測定物の10mm×20mmの領域を0.049Nの荷重で押し付け、1mA以下の測定電流で測定される電極間の抵抗である。
本発明の第一態様は、エポキシ基含有化合物の1種以上と、下記式(1)で表される化合物(1)の群から選ばれる2種以上とを含み、前記2種以上のうち、少なくとも1種が25℃、1気圧で固体であり、且つ、少なくとも1種が25℃、1気圧で液体である、熱硬化性組成物である。
化合物(1)のR1、R2及びR3の1価の置換基としては、例えば、芳香族基、炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、ハロゲン等が挙げられる。前記アルキル基のメチレン基の1つ以上が、酸素原子同士が結合する場合を除いて、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−O−C(=O)−、−NH−、又は−S−によって置換されていてもよい。
前記芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。前記芳香族基は、炭素数1〜3の連結基を介在してリン原子又は酸素原子に結合していてもよい。
化合物(1a)のR2の1価の置換基としては、前述した化合物(1)のR2と同じ置換基を例示できる。
上記好適な置換基を有する化合物(1a)は、25℃、1気圧で固体となり易く、熱硬化性組成物を速やかに硬化させ、硬化時に成分の一部が流出することを抑制し、設計通りの厚みを有する絶縁樹脂層及び接着剤層を容易に形成することができる。
化合物(1b)のR2の1価の置換基としては、前述した化合物(1)のR2と同じ置換基を例示できる。
上記好適な置換基を有する化合物(1b)は、25℃、1気圧で流動性の高い液体となり易く、熱硬化性組成物における分散性に優れるとともに、硬化度の低下を生じることが抑制されており、接着性により優れた絶縁樹脂層及び接着剤層を容易に形成することができる。
上記範囲の下限値以上であると、熱プレス時においてもより速やかに硬化し、前記熱硬化性組成物の成分の一部が形成する硬化物から流出することをより抑制することができる。
上記範囲の上限値以下であると、接着性がより向上し、比較的穏やかなラミネート処理によって充分な接着力をより容易に得ることができる。
前記熱硬化性組成物に含まれるエポキシ基含有化合物は、2つ以上のエポキシ基を有する化合物であることが好ましく、2つ以上のエポキシ基を有する樹脂(エポキシ樹脂)であることがより好ましく、樹脂の少なくとも両末端にそれぞれエポキシ基を有するエポキシ樹脂であることがさらに好ましい。
上記の好適なエポキシ基含有化合物であると、前記熱硬化性組成物の硬化収縮が少なく、接着力を高め、金属に対する優れた接着性を有する接着剤層を容易に形成することができる。
前記熱硬化性組成物に含まれるエポキシ基含有化合物は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
前記エポキシ基含有化合物としては、エポキシ基の1価の結合手にメチレン基が結合したグリシジル基を有するグリシジル基含有化合物が好ましい。
具体的なエポキシ樹脂としては、ヒドロキシフェニル基を2つ有するビスフェノールとエピクロルヒドリンとの縮合反応によって得られるエポキシ樹脂が挙げられ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等を例示できる。その他、例えば、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂等を挙げることができる。
上記下限値以上であると、エポキシ基含有化合物と反応する化合物(1)の量が増え、熱硬化性組成物を速やかに硬化させ、硬化物の難燃性、硬度、接着力をより高めることができる。
上記上限値以下であると、熱硬化性組成物の硬化速度が適度となり、硬化物の硬度が均一となり易く、硬度が過度に高くなったり過度に低くなったりすることを抑制できる。
前記熱硬化性組成物が化合物(1)以外の硬化剤を含有する場合、化合物(1)とエポキシ基含有化合物の含有比率は上記の範囲外であっても構わない。
上記下限値以上であると、エポキシ基含有化合物と反応する化合物(1)の量が増え、熱硬化性組成物を速やかに硬化させ、硬化物の難燃性、硬度、接着力をより高めることができる。
上記上限値以下であると、熱硬化性組成物の硬化速度が適度となり、硬化物の硬度が均一となり易く、硬度が過度に高くなったり過度に低くなったりすることを抑制できる。
前記熱硬化性組成物には、その硬化を阻まない範囲で、任意成分として、前記エポキシ基含有化合物及び化合物(1)以外の添加剤の1種以上を含んでいてもよい。
添加剤としては、例えば、導電材、着色剤、充填材、溶剤、硬化剤、硬化促進剤、低応力化剤等が挙げられる。
前記熱硬化性組成物中の化合物(2)は、エポキシ基含有化合物のエポキシ基と、化合物(2)が有する水酸基又はカルボキシル基の活性水素基とが熱によって反応し、硬化剤として機能する。また、化合物(2)を含むことにより、前記熱硬化性組成物の硬化物の金属に対する接着性を向上させることができる。
前記式(2a)及び前記式(2b)中、ベンゼン環に結合する任意の1つ以上の水素原子は、任意の置換基によって置換されていてもよい。
前記式(2)中、m=1且つn=1の場合を除いて、(−L2−COOH)基のカルボキシル基の水素原子は、炭素数1〜10の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基によって置換され、カルボン酸エステルを形成していてもよい。
mが2以上である場合、複数のL1は互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
nが2以上である場合、複数のL2は互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
2,3−ジヒドロキシ安息香酸(2−ピロカテク酸)、2,4−ジヒドロキシ安息香酸(β−レゾルシン酸)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(ゲンチジン酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸(γ−レゾルシン酸)、3,4−ジヒドロキシ安息香酸(プロトカテク酸)、3,5−ジヒドロキシ安息香酸(α−レゾルシン酸)、3,6−ジヒドロキシ安息香酸、オルセリン酸等のジヒドロキシ安息香酸及びその誘導体;
3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸(ガリック酸)、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸(フロログルシノールカルボン酸)等のトリヒドロキシ安息香酸及びその誘導体;
メリロト酸、フロレト酸、ウンベル酸、コーヒー酸、フェルラ酸、シナピン酸等のヒドロキシケイヒ酸及びその誘導体;
5−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシテレフタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸等の、1つ以上のヒドロキシ基を有する芳香族ジカルボン酸及びその誘導体;等が挙げられる。
前記熱硬化性組成物に含まれる化合物(2)は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
上記下限値以上であると、エポキシ基含有化合物と反応する化合物(2)の量が増え、熱硬化性組成物の硬化物の硬度、接着力をより高めることができる。
上記上限値以下であると、熱硬化性組成物の硬化速度が適度となり、硬化物の硬度が均一となり易く、硬度が過度に高くなったり過度に低くなったりすることを抑制できる。
上記下限値以上であると、エポキシ基含有化合物と反応する化合物(2)の量が増え、熱硬化性組成物の硬化物の硬度、接着力をより高めることができる。
上記上限値以下であると、熱硬化性組成物の硬化速度が適度となり、硬化物の硬度が均一となり易く、硬度が過度に高くなったり過度に低くなったりすることを抑制できる。
導電性粒子の好適な平均粒子径は後述するように、例えば、0.1μm以上50μm以下程度が挙げられる。
前記熱硬化性組成物の溶媒を除いた固形分の総質量に対する導電性粒子の含有量としては、例えば、1質量%以上50質量%以下が挙げられ、10質量%以上30質量%以下が好ましい。この範囲であると、後述する導電性接着剤層を容易に形成することができる。
前記熱硬化性組成物の溶媒を除いた固形分の総質量に対する低応力化剤の含有量としては、その種類にもよるが、例えば、10質量%以上80質量%以下が挙げられ、30質量%以上70質量%以下が好ましい。この範囲であると、可とう性が良好な硬化物を容易に形成することができる。
前記熱硬化性組成物の溶媒を除いた固形分の総質量に対する着色剤の含有量としては、その種類にもよるが、例えば、1%以上30%以下が挙げられ、5%以上20%以下が好ましい。
上記の範囲であると充分に着色できるので、離型フィルムと識別可能な絶縁樹脂層を容易に形成することができる。
本発明の第一態様の熱硬化性組成物は、例えば、溶剤、前記エポキシ基含有化合物、前記2種以上の化合物(1)、添加剤等を適宜配合し、ボールミル、ブレンダー等を用いた常法によって混合することにより調製することができる。
本発明の熱硬化性組成物に含まれる化合物(1)は、その硬化物の燃焼温度において難燃剤として機能する。この化学的な機構の詳細は未解明であるが、従来のリン酸トリフェニルと同様の機構により、燃焼時に化合物(1)が難燃性のチャーを形成して、硬化物の燃焼が抑制されると考えられる。
本発明の熱硬化性組成物に含まれる前記2種以上の化合物(1)のうち、25℃、1気圧で固体である化合物(1)は、難燃性を有するとともに、熱硬化性組成物が硬化する際の硬化剤として機能し、速やかに硬化させることに資する。この化学的な機構の詳細は未解明であるが、化合物(1)のリンに結合した活性な水素が、熱によってエポキシ基と反応し、化合物(1)がエポキシ基含有化合物に付加して、硬化度を高めると考えられる。
本発明の熱硬化性組成物に含まれる前記2種以上の化合物(1)のうち、25℃、1気圧で液体である化合物(1)は、難燃性を有するとともに、熱硬化性組成物中の分散性に優れ、その硬化物中の分布も均一になり、その硬化物や塗膜の硬度を低下させ難い。さらに、液体であるので基材に対する接着性が向上しており、比較的穏やかなラミネート処理によってその硬化物を含む層を、金属薄膜層等の基材に対して充分に接着することができる。
本発明の第二態様は、第一態様の熱硬化性組成物の硬化物である。硬化物の硬化の程度は、Bステージよりも未硬化に近い状態、Bステージ化(半硬化)した状態、完全硬化した状態のいずれでもよい。
硬化物の実施形態の一例として、例えば、基材の表面に塗布された熱硬化性組成物が硬化してなる塗膜が挙げられる。
前記塗膜の前記基材に対する接着性は優れるので、前記塗膜は接着剤層として有用である。また、前記基材が金属製である場合には、前記塗膜に前記化合物(2)が含まれていると、その金属表面に対する接着性がより優れる。このため、前記塗膜は後述する電磁波シールドフィルムの金属薄膜層に積層する絶縁樹脂層及び接着剤層として優れた接着性を発揮する。
前記塗膜の膜厚は特に制限されず、例えば、1μm以上100μm以下が挙げられる。
硬化物を得る際の加熱の温度は、前記反応が生じる温度以上であればよく、室温以上であることが好ましく、反応制御を容易にする観点から、50〜200℃、1分以上24時間以下の加熱条件で硬化させることが好ましい。
硬化反応は、1回の加熱で完全に硬化させてもよいし、複数回の加熱でBステージを経て段階的に硬化させてもよい。
本発明の第二態様の硬化物は、前記エポキシ基含有化合物及び前記2種以上の化合物(1)を含有するので、硬化時に接触していた基材に対して優れた接着性を発揮する。また、化合物(1)を含有するので、難燃性にも優れる。
本発明の第三態様は、絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層に隣接する金属薄膜層と、前記金属薄膜層の前記絶縁樹脂層とは反対側に隣接する接着剤層とを有する電磁波シールドフィルムであって、前記絶縁樹脂層及び接着剤層のうち少なくとも一方が、第二態様の硬化物である、電磁波シールドフィルムである。
以下、図面を参照して説明するが、図面における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なっていることがある。
電磁波シールドフィルム1は、絶縁樹脂層10と;絶縁樹脂層10に隣接する金属薄膜層22と;金属薄膜層22の絶縁樹脂層10とは反対側に隣接する接着剤層24と;絶縁樹脂層10の金属薄膜層22とは反対側に隣接する第1の離型フィルム30と;接着剤層24の金属薄膜層22とは反対側に隣接する第2の離型フィルム40とを有する。
第2の実施形態の電磁波シールドフィルム1は、接着剤層26が等方導電性接着剤層26である例である。
絶縁樹脂層10は、電磁波シールドフィルム1をフレキシブルプリント配線板の表面に設けられた絶縁フィルムの表面に貼着し、第1の離型フィルム30を剥離した後には、金属薄膜層22の保護層となる。
硬化剤としては、熱硬化性樹脂の種類に応じた公知の硬化剤が挙げられる。
着色剤およびフィラーのいずれか一方または両方としては、耐候性、耐熱性、隠蔽性の点から、顔料またはフィラーが好ましく、プリント回路の隠蔽性、意匠性の点から、黒色顔料、または黒色顔料と他の顔料もしくはフィラーとの組み合わせがより好ましい。
絶縁樹脂層10は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。
絶縁樹脂層10の厚さは、0.1μm以上30μm以下が好ましく、0.5μm以上20μm以下がより好ましい。絶縁樹脂層10の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、絶縁樹脂層10が保護層としての機能を十分に発揮できる。絶縁樹脂層10の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム1を薄くできる。
導電層20としては、絶縁樹脂層10に隣接する金属薄膜層22と、導電層20において絶縁樹脂層10とは反対側の最表層となる導電性接着剤層(異方導電性接着剤層24または等方導電性接着剤層26)とを有する導電層(I);または等方導電性接着剤層26のみからなる導電層(II)が挙げられる。導電層20としては、電磁波シールド層として十分に機能できる点から、導電層(I)が好ましい。
金属薄膜層22は、金属の薄膜からなる層である。金属薄膜層22は、面方向に広がるように形成されていることから、面方向に導電性を有し、電磁波シールド層等として機能する。
導電性接着剤層は、少なくとも厚さ方向に導電性を有し、かつ接着性を有する。
導電性接着剤層としては、厚さ方向に導電性を有し、面方向には導電性を有さない異方導電性接着剤層24、または厚さ方向および面方向に導電性を有する等方導電性接着剤層26が挙げられる。導電層(I)における導電性接着剤層としては、導電性接着剤層を薄くでき、導電性粒子の量が少なくなり、その結果、電磁波シールドフィルム1を薄くでき、電磁波シールドフィルム1の可とう性がよくなる点からは、異方導電性接着剤層24が好ましい。導電層(I)における導電性接着剤層としては、電磁波シールド層として十分に機能できる点からは、等方導電性接着剤層26が好ましい。
導電性接着剤層を構成する前記熱硬化性組成物の硬化の程度は特に制限されず、未硬化状態、Bステージ化された状態、完全硬化状態のいずれであってもよい。
導電性接着剤層を構成する前記硬化物は、Bステージよりも未硬化に近い状態、Bステージ化された状態、完全に硬化した状態のいずれであってもよい。
熱硬化性の等方導電性接着剤層26は、例えば、導電性粒子26bを含む熱硬化性組成物26aによって構成される。
前記熱硬化性組成物は、必要に応じて前記化合物(1)以外の難燃剤を含んでいてもよい。
前記熱硬化性組成物は、導電性接着剤層の強度を高め、打ち抜き特性を向上させるために、セルロース樹脂、ミクロフィブリル(ガラス繊維等)を含んでいてもよい。
前記熱硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。
第1の離型フィルム30は、絶縁樹脂層10や導電層20のキャリアフィルムとなるものであり、電磁波シールドフィルム1のハンドリング性を良好にする。第1の離型フィルム30は、電磁波シールドフィルム1をプリント配線板等に貼り付けた後には、絶縁樹脂層10から剥離される。
着色剤およびフィラーのいずれか一方または両方としては、絶縁樹脂層10と明確に区別でき、熱プレスした後に第1の離型フィルム30の剥がし残しに気が付きやすい点から、絶縁樹脂層10とは異なる色のものが好ましく、白色顔料、フィラー、または白色顔料と他の顔料もしくはフィラーとの組み合わせがより好ましい。
粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。
粘着剤のガラス転移温度は、−100〜60℃が好ましく、−60〜40℃がより好ましい。
第2の離型フィルム40は、導電性接着剤層を保護するものであり、電磁波シールドフィルム1のハンドリング性を良好にする。第2の離型フィルム40は、電磁波シールドフィルム1をプリント配線板等に貼り付ける前に、導電性接着剤層から剥離される。
離型フィルム本体42は、着色剤、フィラー等を含んでいてもよい。
離型フィルム本体42の厚さは、5μm以上500μm以下が好ましく、10μm以上150μm以下がより好ましく、25μm以上100μm以下がさらに好ましい。
離型剤としては、公知の離型剤を用いればよい。
電磁波シールドフィルム1の厚さ(離型フィルムを除く)は、5μm以上50μm以下が好ましく、8μm以上30μm以下がより好ましい。離型フィルムを含まない電磁波シールドフィルム1の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、第1の離型フィルム30を剥離する際に破断しにくい。離型フィルムを含まない電磁波シールドフィルム1の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板を薄くできる。
本発明の第四態様は、第三態様の電磁波シールドフィルムの製造方法である。
本態様の第一実施形態は、第一態様の熱硬化性組成物を基材フィルムに塗布してなる塗膜を加熱することによって、任意の程度まで硬化させることにより、前記絶縁樹脂層及び前記接着剤層のうち少なくとも一方を形成する工程を有する、前記電磁波シールドフィルムの製造方法である。
上記の方法に代えて、第1の離型フィルムに前記絶縁樹脂層を形成し、第2の離型フィルムに前記接着剤層及び前記金属薄膜層をこの順で形成し、前記金属薄膜層に前記絶縁樹脂層を貼り付けるように前記第2の離型フィルムに前記第1の離型フィルムを載置する方法も例示できる。
前記ラミネート処理の加熱温度及び圧力の条件は、後で詳述する工程(c3)における条件が好ましい。
本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法にあっては、前記2種以上の化合物(1)が前記絶縁樹脂層及び前記接着剤層の少なくとも一方に含まれているので、前記2種以上の化合物(1)を含む前記絶縁樹脂層、前記接着剤層の前記基材フィルムに対する接着性が優れており、比較的穏やかなラミネート処理によって、容易に接着することができる。この結果、電磁波シールドフィルムの製造効率を向上させることができる。
以下、より詳細に、本発明にかかる電磁波シールドフィルムの製造方法を例示する。
工程(a):必要に応じて、キャリアフィルムの表面に金属薄膜層を設ける工程。
工程(b):キャリアフィルムの表面に設けられた金属薄膜層の表面に絶縁樹脂層を設ける工程。
工程(c):キャリアフィルムを金属薄膜層から剥離し、金属薄膜層の絶縁樹脂層とは反対側の表面に接着剤層を設ける工程。
工程(x):第1の離型フィルムの表面に絶縁樹脂層を設ける工程。
工程(y):絶縁樹脂層の表面に金属薄膜層を設ける工程。
工程(z):金属薄膜層の表面に接着剤層を設ける工程。
(工程(a))
キャリアフィルムとしては、基材層と、基材層の表面に設けられた粘着剤層とを有するものが挙げられる。
基材層の樹脂材料としては、第1の離型フィルム30の基材層32の樹脂材料と同様なものが挙げられる。
粘着剤層の粘着剤としては、公知の粘着剤を用いればよい。
金属薄膜層の表面に絶縁樹脂層を設ける方法としては、例えば、金属薄膜層の表面に光硬化性組成物を塗布し、溶剤を含む場合は乾燥させた後、光(紫外線等)を照射して半硬化または硬化させる方法が挙げられる。
絶縁樹脂層の表面に第1の離型フィルムを設ける方法としては、絶縁樹脂層の表面に、基材層と粘着剤層とを有する第1の離型フィルムを、絶縁樹脂層と粘着剤層とが接するように貼り付ける方法;絶縁樹脂層の表面に粘着剤層を設けた後、粘着剤層の表面に第1の離型フィルムの基材層を貼り付けることによって、絶縁樹脂層の表面に第1の離型フィルムを設ける方法等が挙げられる。
工程(c)においては、第2の離型フィルムの表面に接着剤層を設けた接着剤層付き第2の離型フィルムを、金属薄膜層の絶縁樹脂層とは反対側の表面に、金属薄膜層と接着剤層とが接するように貼り付けてもよく;金属薄膜層の表面に接着剤層を直接設けてもよい。また、金属薄膜層の表面に接着剤層を設けた後、接着剤層の表面に第2の離型フィルムを貼り付けてもよい。
以下、図1に示す第1の実施形態の電磁波シールドフィルム1を製造する方法について、図3および図4を参照しながら説明する。
図3に示すように、基材層102と離型剤層104とを有するキャリアフィルム100の離型剤層104側の表面に、金属を蒸着して金属薄膜層22を設ける。
図3に示すように、金属薄膜層22の表面に、黒色着色剤(不図示)を含む絶縁樹脂層形成用塗工液(本発明の第一態様の熱硬化性組成物)を塗布し、加熱しながら乾燥させて、絶縁樹脂層10を設ける。
図3に示すように、絶縁樹脂層10の表面に、基材層32と粘着剤層34とを有する第1の離型フィルム30を、絶縁樹脂層10と粘着剤層34とが接するように貼り付ける。
図4に示すように、基材層42と離型剤層44とを有する第2の離型フィルム40の離型剤層44側の表面に、接着剤24aと導電性粒子24bと溶剤とを含む接着剤層形成用塗工液(本発明の第一態様の熱硬化性組成物)を塗布し、加熱しながら乾燥させて、異方導電性接着剤層24(接着剤層24)を設ける。このようにして、接着剤層付き第2の離型フィルムを得る。
図4に示すように、工程(b2)で得られた積層体において、キャリアフィルム100を金属薄膜層22から剥離する。このようにして、絶縁樹脂層および金属薄膜層付き第1の離型フィルムを得る。
図4に示すように、絶縁樹脂層および金属薄膜層付き第1の離型フィルムと、接着剤層付き第2の離型フィルムとを、金属薄膜層22と異方導電性接着剤層24とが接するように貼り合わせ、必要に応じて加熱して絶縁樹脂層及び接着剤層を硬化させ、電磁波シールドフィルム1を得る。
上記ラミネート処理における加熱温度としては、例えば50〜100℃が好ましい。
上記ラミネート処理における圧力としては、例えば100kPa(0.1MPa)以下が好ましく、0.1kPa以上20kPa以下がより好ましく、1kPa以上10kPa以下がさらに好ましい。
上記ラミネート処理における加熱及び加圧の時間としては、例えば10秒以上30分以下が好ましく、30秒以上10分以下がより好ましい。
上記の好適な加熱温度、圧力、処理時間でラミネート処理することにより、金属薄膜層22と異方導電性接着剤層24を充分な接着力で容易に接着することができる。
本発明にかかる電磁波シールドフィルム1にあっては、絶縁樹脂層10及び異方導電性接着剤層24の少なくとも一方が第一態様の熱硬化性組成物によって形成されているため、難燃性に優れる。また、その製造時においては、比較的穏やかな条件のラミネート処理によって、絶縁樹脂層10、異方導電性接着剤層24の金属薄膜層22に対する充分な接着力を容易に得ることができる。
また、前記熱硬化性組成物が前記化合物(2)を含有していれば、金属薄膜層22に対する絶縁樹脂層10、異方導電性接着剤層24の接着力がより高まり、離型フィルムを剥離する際に、金属薄膜層22と絶縁樹脂層10又は異方導電性接着剤層24とが剥離することが防止されている。
例えば、第2の離型フィルムは、導電性接着剤層の表面のタック性が少ない場合は、離型剤層の代わりに粘着剤層を有していてもよい。または、第2の離型フィルムを省略しても構わない。
第2の離型フィルムは、離型フィルム本体の離型性が高い場合は、離型剤層を有さず、離型フィルム本体のみからなるものであってもよい。
絶縁樹脂層は、2層以上であってもよい。2層以上の絶縁樹脂層を有する場合、何れか1層以上の絶縁樹脂層が本発明の第一態様の熱硬化性組成物によって形成されていることが好ましい。
図5は、本発明の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の一実施形態を示す断面図である。
電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板2は、フレキシブルプリント配線板50と、絶縁フィルム60と、第1の実施形態の電磁波シールドフィルム1とを備える。
フレキシブルプリント配線板50は、ベースフィルム52の少なくとも片面にプリント回路54が設けられたものである。
絶縁フィルム60は、フレキシブルプリント配線板50のプリント回路54が設けられた側の表面に設けられる。
電磁波シールドフィルム1の異方導電性接着剤層24は、絶縁フィルム60の表面に接着され、かつ硬化されている。また、異方導電性接着剤層24は、絶縁フィルム60に形成された貫通孔(図示略)を通ってプリント回路54に電気的に接続されている。
電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板2においては、第2の離型フィルム40は、異方導電性接着剤層24から剥離されている。
貫通孔のある部分を除くプリント回路54と金属薄膜層22との離間距離は、絶縁フィルム60の厚さと異方導電性接着剤層24の厚さの総和とほぼ等しい。離間距離は、30μm以上200μm以下が好ましく、60μm以上200μm以下がより好ましい。離間距離が30μmより小さいと、信号回路のインピーダンスが低くなるため、100Ω等の特性インピーダンスを有するためには、信号回路の線幅を小さくしなければならず、線幅のバラツキが特性インピーダンスのバラツキとなって、インピーダンスのミスマッチによる反射共鳴ノイズが電気信号に乗りやすくなる。離間距離が200μmより大きいと、電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板2が厚くなり、可とう性が不足する。
フレキシブルプリント配線板50は、銅張積層板の銅箔を公知のエッチング法により所望のパターンに加工してプリント回路(電源回路、グランド回路、グランド層等)としたものである。
銅張積層板としては、ベースフィルム52の片面または両面に接着剤層(図示略)を介して銅箔を貼り付けたもの;銅箔の表面にベースフィルム52を形成する樹脂溶液等をキャストしたもの等が挙げられる。
接着剤層の材料としては、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
接着剤層の厚さは、0.5μm以上30μm以下が好ましい。
ベースフィルム52としては、耐熱性を有するフィルムが好ましく、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルムがより好ましく、ポリイミドフィルムがさらに好ましい。
ベースフィルム52の表面抵抗は、電気的絶縁性の点から、1×106Ω以上が好ましい。ベースフィルム52の表面抵抗は、実用上の点から、1×1019Ω以下が好ましい。
ベースフィルム52の厚さは、5μm以上200μm以下が好ましく、屈曲性の点から、6μm以上25μm以下がより好ましく、10μm以上25μm以下がより好ましい。
プリント回路54(信号回路、グランド回路、グランド層等)を構成する銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられ、屈曲性の点から、圧延銅箔が好ましい。
銅箔の厚さは、1μm以上50μm以下が好ましく、18μm以上35μm以下がより好ましい。
プリント回路54の長さ方向の端部(端子)は、ハンダ接続、コネクター接続、部品搭載等のため、絶縁フィルム60や電磁波シールドフィルム1に覆われていない。
絶縁フィルム60(カバーレイフィルム)は、絶縁フィルム本体(図示略)の片面に、接着剤の塗布、接着剤シートの貼り付け等によって接着剤層(図示略)を形成したものである。
絶縁フィルム本体の表面抵抗は、電気的絶縁性の点から、1×106Ω以上が好ましい。絶縁フィルム本体の表面抵抗は、実用上の点から、1×1019Ω以下が好ましい。
絶縁フィルム本体としては、耐熱性を有するフィルムが好ましく、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルムがより好ましく、ポリイミドフィルムがさらに好ましい。
絶縁フィルム本体の厚さは、1μm以上100μm以下が好ましく、可とう性の点から、3μm以上25μm以下がより好ましい。
接着剤層の材料としては、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、ポリオレフィン等が挙げられる。エポキシ樹脂は、可とう性付与のためのゴム成分(カルボキシ変性ニトリルゴム等)を含んでいてもよい。
接着剤層の厚さは、1μm以上100μm以下が好ましく、1.5μm以上60μm以下がより好ましい。
本発明の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板は、例えば、下記の工程(d)〜(g)を有する方法によって製造できる。
工程(d):プリント配線板のプリント回路が設けられた側の表面に、プリント回路に対応する位置に貫通孔が形成された絶縁フィルムを設け、絶縁フィルム付きプリント配線板を得る工程。
工程(e):工程(d)の後、絶縁フィルム付きプリント配線板と、第2の離型フィルムを剥離した本発明の電磁波シールドフィルムとを、絶縁フィルムの表面に導電性接着剤層が接触するように重ね、これらを熱プレスすることによって、絶縁フィルムの表面に導電性接着剤層を接着し、かつ導電性接着剤層を、貫通孔を通ってプリント回路に電気的に接続し、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板を得る工程。
工程(f):工程(e)の後、第1の離型フィルムが不要になった際に第1の離型フィルムを剥離する工程。
工程(g):必要に応じて、工程(e)と工程(f)との間、または工程(f)の後に異方導電性接着剤層を本硬化させる工程。
図6に示すように、フレキシブルプリント配線板50に、プリント回路54に対応する位置に貫通孔62が形成された絶縁フィルム60を重ね、フレキシブルプリント配線板50の表面に絶縁フィルム60の接着剤層(図示略)を接着し、接着剤層を硬化させることによって、絶縁フィルム付きフレキシブルプリント配線板3を得る。フレキシブルプリント配線板50の表面に絶縁フィルム60の接着剤層を仮接着し、工程(g)にて接着剤層を本硬化させてもよい。
接着剤層の接着および硬化は、例えば、プレス機(図示略)等による熱プレスによって行う。
図6に示すように、絶縁フィルム付きフレキシブルプリント配線板3に、第2の離型フィルム40を剥離した電磁波シールドフィルム1を重ね、熱プレスすることによって、絶縁フィルム60の表面に異方導電性接着剤層24が接着され、かつ異方導電性接着剤層24が、貫通孔62を通ってプリント回路54に電気的に接続された電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板2を得る。
熱プレスの時間は、20秒以上60分以下が好ましく、30秒以上30分以下がより好ましい。熱プレスの時間が前記範囲の下限値以上であれば、絶縁フィルム60の表面に異方導電性接着剤層24が容易に接着される。熱プレスの時間が前記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板2の製造時間を短縮できる。
図6に示すように、第1の離型フィルムが不要になった際に、絶縁樹脂層10から第1の離型フィルム30を剥離する。
工程(e)における熱プレスの時間が20秒以上10分以下の短時間である場合、工程(e)と工程(f)との間、または工程(f)の後に異方導電性接着剤層24の本硬化を行うことが好ましい。
異方導電性接着剤層24の本硬化は、例えば、オーブン等の加熱装置を用いて行う。
加熱時間は、15分以上120分以下であり、30分以上60分以下がより好ましい。加熱時間が前記範囲の下限値以上であれば、異方導電性接着剤層24を十分に硬化できる。加熱時間が前記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板2の製造時間を短縮できる。
加熱温度(オーブン中の雰囲気温度)は、120℃以上180℃以下が好ましく、120℃以上150℃以下がより好ましい。加熱温度が前記範囲の下限値以上であれば、加熱時間を短縮できる。加熱温度が前記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム1、フレキシブルプリント配線板50等の劣化等を抑えることができる。
以上説明した電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板2の製造方法にあっては、電磁波シールドフィルム1を用いているので、熱プレスによる接着の際に、絶縁樹脂層10及び異方導電性接着剤層24から成分の一部が流出することが抑制されており、硬化後の難燃性にも優れる。
また、製造後の電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板2にあっては、電磁波シールドフィルム1を備えているため、難燃性に優れる。さらに、上記熱硬化性組成物が前記化合物(2)を含有していれば、金属薄膜層22に対する絶縁樹脂層10、異方導電性接着剤層24の接着力がより高まり、第1の離型フィルム30を剥離する際に、金属薄膜層22と絶縁樹脂層10又は異方導電性接着剤層24とが剥離することが防止されている。
本発明の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板は、プリント配線板と、プリント配線板のプリント回路が設けられた側の表面に隣接する絶縁フィルムと、導電層が絶縁フィルムに隣接し、かつ導電層が絶縁フィルムに形成された貫通孔を通ってプリント回路に電気的に接続された本発明の電磁波シールドフィルムを有するものであればよく、図示例の実施形態に限定はされない。
例えば、フレキシブルプリント配線板は、裏面側にグランド層を有するものであってもよい。また、フレキシブルプリント配線板は、両面にプリント回路を有し、両面に絶縁フィルムおよび電磁波シールドフィルムが貼り付けられたものであってもよい。
フレキシブルプリント配線板の代わりに、柔軟性のないリジッドプリント基板を用いてもよい。
第1の実施形態の電磁波シールドフィルム1の代わりに、第2の実施形態の電磁波シールドフィルム1等を用いてもよい。
絶縁樹脂層形成用塗工液(光硬化性組成物)として、(メタ)アクリロイル基を有する化合物の溶液(亜細亜工業社製、EXCELATE RUA−054、アクリルポリマーアクリレート、固形分:73質量%、溶剤:酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン)の100gに、光ラジカル重合開始剤(BASF社製、イルガキュア(登録商標)184)の1.71g、黒色染料(オリエント化学工業社製、ORIPACS(登録商標)B−20、アゾ化合物クロム錯体)を添加したものを用意した。
図3に示すように、キャリアフィルムの表面に金属薄膜層を設けた積層体(東レKPフィルム社製、ケーピーセデュース(登録商標)、離型層付き銅箔、銅箔厚さ:0.5μm、銅箔表面抵抗:0.015Ω、PET厚さ:50μm)の金属薄膜層の表面に、絶縁樹脂層形成用塗工液を#4のバーコーターを用いて塗布した。塗膜を100℃で1分間乾燥した後、400mJの紫外線を照射して、金属薄膜層の表面に絶縁樹脂層(厚さ:10μm、表面抵抗:1.0E+12Ω以上)を設けた。
絶縁樹脂層の表面に、第1の離型フィルム(パナック社製、パナプロテクト(登録商標)GN、粘着フィルム、粘着力:0.49N/cm、PET厚さ:75μm)を、絶縁樹脂層と粘着剤層とが接するように貼り付け、積層体を得た。
第2の離型フィルム(パナック社製、パナピール(登録商標)SM−1、離型フィルム、PET厚さ:50μm)の離型剤層側の表面に、接着剤層形成用塗工液をコンマコーターを用いて25μmの厚さで塗布した。塗膜を100℃で1分間乾燥して、異方導電性接着剤層(厚さ:10μm、表面抵抗:1.0E+12Ω以上Ω)を設け、接着剤層付き第2の離型フィルムを得た。
工程(b2)で得られた積層体において、キャリアフィルムを金属薄膜層から剥離し、絶縁樹脂層および金属薄膜層付き第1の離型フィルムを得た。
絶縁樹脂層および金属薄膜層付き第1の離型フィルムと、接着剤層付き第2の離型フィルムとを、金属薄膜層と異方導電性接着剤層とが接するように95℃、5kPaの圧力でラミネートし、電磁波シールドフィルムを得た。このラミネートによる接着の際、接着が不十分である場合には再度ラミネート処理を施し、十分に接着するまでのラミネートの回数を測定した。この結果を表1に示す。
厚さ25μmのポリイミドフィルム(絶縁フィルム本体)の表面に絶縁性接着剤組成物を、乾燥膜厚が25μmになるように塗布し、接着剤層を形成し、絶縁フィルム(厚さ:50μm)を得た。プリント回路のグランドに対応する位置に貫通孔(孔径:150μm)を形成した。
フレキシブルプリント配線板に絶縁フィルムを熱プレスにより貼り付けて、絶縁フィルム付きフレキシブルプリント配線板を得た。
絶縁フィルム付きフレキシブルプリント配線板に、第2の離型フィルムを剥離した電磁波シールドフィルムを重ね、ホットプレス装置(折原製作所社製、G−12)を用い、熱盤温度:180℃、荷重:3MPaで1分間熱プレスし、絶縁フィルムの表面に異方導電性接着剤層を接着した。この時、絶縁フィルムの接着面の周辺を観察し、電磁波シールドフィルムの異方導電性接着剤層の成分(接着剤成分)が流れ出していないかを確認した。この結果を表1に示す。
絶縁樹脂層から第1の離型フィルムを剥離して、電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板を得た。得られた電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板を150℃で1時間乾燥して絶縁樹脂層及び異方導電性接着剤層を硬化した。
作製した電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板について、下記の方法により、燃焼試験を実施した。この結果を表1に示す。
(燃焼試験)
垂直に保持した試料の下端に10秒間ガスバーナーの炎を接炎させ、電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板が燃え続ける時間を測定した。この時間が短いほど、難燃性が高いことを示す。
前記固形リン化合物(HCA、三光社製)の配合を1.45gに変更し、前記液状リン化合物(M-Ester、三光社製)の配合を4.35gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板を得た。ラミネートの回数を測定した結果と、熱プレス時の接着剤成分の溶出の有無を観測した結果と、燃焼試験の結果を表1に示す。
前記固形リン化合物(HCA、三光社製)の配合を4.35gに変更し、前記液状リン化合物(M-Ester、三光社製)の配合を1.35gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板を得た。ラミネートの回数を測定した結果と、熱プレス時の接着剤成分の溶出の有無を観測した結果と、燃焼試験の結果を表1に示す。
前記固形リン化合物(HCA、三光社製)を添加せず、前記液状リン化合物(M-Ester、三光社製)の配合を5.8gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板を得た。ラミネートの回数を測定した結果と、熱プレス時の接着剤成分の溶出の有無を観測した結果と、燃焼試験の結果を表1に示す。
前記固形リン化合物(HCA、三光社製)の配合を5.8gに変更し、前記液状リン化合物(M-Ester、三光社製)を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板を得た。ラミネートの回数を測定した結果と、熱プレス時の接着剤成分の溶出の有無を観測した結果と、燃焼試験の結果を表1に示す。
前記固形リン化合物(HCA、三光社製)と前記液状リン化合物(M-Ester、三光社製)とを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板を得た。ラミネートの回数を測定した結果と、熱プレス時の接着剤成分の溶出の有無を観測した結果と、燃焼試験の結果を表1に示す。
比較例1の電磁波シールドフィルムは、固形の化合物(1)を含有していないので、熱プレス時に接着剤成分が流出した。
比較例2の電磁波シールドフィルムは、液状の化合物(1)を含有していないので、ラミネート処理による充分な接着力が得られるまでのラミネート処理の回数が多かった。
比較例3の電磁波シールドフィルムは、いずれの化合物(1)も含有していないので、ラミネート処理による充分な接着力が得られるまでのラミネート処理の回数が多く、熱プレス時に接着剤成分が流出し、難燃性も低かった。
以上の結果は、固形の化合物(1)及び液状の化合物(1)を併用することにより、優れた難燃性、製造効率及び製造歩留りが得られることを示している。
2 電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板、
3 絶縁フィルム付きフレキシブルプリント配線板、
10 絶縁樹脂層、
22 金属薄膜層、
20 導電層、
24 異方導電性接着剤層、
24a 熱硬化性組成物(接着剤)、
24b 導電性粒子、
26 等方導電性接着剤層、
26a 熱硬化性組成物(接着剤)、
26b 導電性粒子、
30 第1の離型フィルム、
32 基材層、
34 粘着剤層、
40 第2の離型フィルム、
42 基材層、
44 離型剤層、
50 フレキシブルプリント配線板、
52 ベースフィルム、
54 プリント回路、
60 絶縁フィルム、
62 貫通孔、
100 キャリアフィルム、
102 基材層、
104 離型剤層。
Claims (14)
- エポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂であるエポキシ基含有化合物の1種以上と、
25℃、1気圧で固体である下記式(1a−1)で表される化合物と、
25℃、1気圧で液体である下記式(1b−1)で表される化合物と、
下記式(2)で表される化合物の群から選ばれる1種以上とを含む、熱硬化性組成物。
- 黒色着色剤をさらに含む、請求項1に記載の熱硬化性組成物。
- 導電性粒子をさらに含む、請求項1に記載の熱硬化性組成物。
- 溶剤をさらに含む、請求項1〜3の何れか一項に記載の熱硬化性組成物。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物の硬化物。
- 絶縁樹脂層と、
前記絶縁樹脂層に隣接する金属薄膜層と、
前記金属薄膜層の前記絶縁樹脂層とは反対側に隣接する接着剤層と
を有する電磁波シールドフィルムであって、
前記絶縁樹脂層及び前記接着剤層のうち少なくとも一方が、請求項1に記載の熱硬化性組成物の硬化物である、電磁波シールドフィルム。 - 前記接着剤層が請求項3に記載の熱硬化性組成物の硬化物であり、かつ異方導電性接着剤層である、請求項6に記載の電磁波シールドフィルム。
- 前記絶縁樹脂層が請求項2に記載の熱硬化性組成物の硬化物である、請求項6に記載の電磁波シールドフィルム。
- 基板の少なくとも片面にプリント回路が設けられたプリント配線板と、
前記プリント配線板の前記プリント回路が設けられた側の表面に隣接する絶縁フィルムと、
請求項6〜8の何れか一項に記載の電磁波シールドフィルムと、
を有する、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板であり、
前記電磁波シールドフィルムが有する前記接着剤層が前記絶縁フィルムに隣接するように設けられた、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板。 - 請求項6に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法であって、
前記熱硬化性組成物を基材フィルムに塗布してなる塗膜を加熱することによって、任意の程度まで硬化させることにより、前記絶縁樹脂層及び前記接着剤層のうち少なくとも一方を形成する工程を有する、電磁波シールドフィルムの製造方法。 - 請求項6に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法であって、
前記絶縁樹脂層と、前記金属薄膜層と、前記接着剤層とをこの順で積層し、加熱及び加圧するラミネート処理を施すことによって、前記絶縁樹脂層と前記金属薄膜層の接着、及び前記金属薄膜層と前記接着剤層の接着のうち、少なくとも一方の接着を行う工程を有する、電磁波シールドフィルムの製造方法。 - 請求項9に記載の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の製造方法であって、
前記プリント配線板の前記絶縁フィルムの表面に、前記電磁波シールドフィルムの前記接着剤層が接触するように重ね、これらを圧着することによって、前記絶縁フィルムの表面に前記接着剤層を接着する圧着工程を有する、製造方法。 - 前記圧着工程において圧着する際に、前記電磁波シールドフィルムが有する前記絶縁樹脂層及び前記接着剤層を加熱しながらプレスする、請求項12に記載の製造方法。
- 前記圧着工程の後で、前記電磁波シールドフィルムが有する前記絶縁樹脂層及び前記接着剤層をさらに加熱することによって、前記熱硬化性組成物の硬化物である層をさらに硬化させる硬化工程を有する、請求項12又は13に記載の製造方法。
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