JP6924390B2 - 鉄ニッケル合金微粒子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄ニッケル合金微粒子及びその製造方法に関する。
ハイブリッド自動車の高性能化に伴い、パワーコントロールユニット(PCU)の小型・高出力化が期待されている。そのためには、インダクタやトランスといった受動素子も小型・高出力化していく必要がある。受動素子の小型化には、透磁率及び飽和磁化が高い磁性体を用い、高周波数で動作する素子が有効である。しかしながら、受動素子を高い周波数で動作させると、受動素子のコアに用いる磁性体の損失(鉄損)が大きくなるという問題があった。この鉄損は渦電流損失とヒステリシス損失とからなり、渦電流損失は磁性体の粒径を小さくすることによって低減することができ、ヒステリシス損失は磁性体の保磁力を小さくすることによって低減することができる。このため、受動素子のコアに用いる磁性体としては、高い透磁率及び飽和磁化を有し、低い保磁力を有する磁性体が望ましい。
高い透磁率を有する磁性体としてはパーマロイ(鉄ニッケル合金)が知られている。中でも、ニッケル原子の含有率が約78at%であり、不規則相からなる鉄ニッケル合金は、磁歪定数と結晶磁気異方性定数の両方が0に近くなるため、高透磁率かつ低保磁力を示す磁性体として知られている。しかしながら、従来の方法で製造された、ニッケル原子の含有率が約78at%の鉄ニッケル合金は、飽和磁化が低いという問題があった。また、ニッケル原子の含有率が約78at%の鉄ニッケル合金は、規則相の結晶磁気異方性定数が大きいため、このような規則相が不規則相に混在すると、保磁力が大きくなるという問題があった。そこで、従来の鉄ニッケル合金の製造方法では、結晶磁気異方性定数が大きい規則相が混在しにくくなるように、熱処理後に急冷して規則−不規則変態点を素早く通過させることが行なわれていた。しかしながら、鉄ニッケル合金微粒子においては、ナノサイズ効果によって粒子のエネルギー状態が高くなり、規則−不規則変態点がバルクの鉄ニッケル合金に比べて低くなるため、従来の鉄ニッケル合金の冷却条件では、急冷しても規則−不規則変態点を素早く通過させることができずに不規則相に規則相が混在し、保磁力を十分に低減することが困難であった。
また、特開2018−184650号公報(特許文献1)には、平均粒子径が5〜30nmであり、全原子量に対するリン原子の含有率が2〜7at%であり、鉄原子とニッケル原子との合計量に対する鉄原子の含有率が10〜30at%(すなわち、ニッケル原子の含有率が70〜90at%)であり、FeNi相とfcc−FeNi相とが特定の比率にあるリン化合物被覆鉄ニッケル微粒子が開示されている。このリン化合物被覆鉄ニッケル微粒子は高い飽和磁化を示すものの、保磁力が必ずしも十分に低いものではなかった。
さらに、従来の方法で製造された鉄ニッケル合金は、ニッケル原子の含有率が約78at%より大きくても小さくても鉄損が増大する(O.E.Buckleyら(非特許文献1))。このため、従来の方法によって、ニッケル原子の含有率が約78at%より小さく、高い飽和磁化と低い保磁力を示す鉄ニッケル合金微粒子を得ることは困難であった。
特開2018−184650号公報
O.E.Buckleyら、Phys.Rev.、1925年、第26巻、第261ページ
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、高い飽和磁化と低い保磁力とを示す鉄ニッケル合金微粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ニッケルの含有率が57〜66at%の鉄ニッケル合金微粒子に、200〜600℃の温度で熱処理を施した後、少なくとも200℃までは徐冷することによって、ほぼ規則相からなる鉄ニッケル合金微粒子が得られ、この鉄ニッケル合金微粒子が高い飽和磁化と低い保磁力を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の鉄ニッケル合金微粒子は、平均粒子径が1〜100nmであり、鉄原子とニッケル原子との合計量に対するニッケル原子の含有率が57〜66at%であり、粉末X線回折測定により求められる格子定数が3.58Å以下であり、飽和磁化が20emu/g以上であり、保磁力が5Oe以下であることを特徴とするものである
また、本発明の鉄ニッケル合金微粒子の製造方法は、ニッケル含有化合物を含有する有機溶媒中において、前記ニッケル含有化合物を還元せしめて、ニッケル微粒子を形成させる工程と、
前記ニッケル微粒子と鉄含有化合物とを含有し、沸点が280℃以上であり、かつ、還元力を有する有機溶媒中又は還元剤を含有する有機溶媒中において、280〜350℃の温度で前記鉄含有化合物を還元せしめて、鉄原子とニッケル原子との合計量に対するニッケル原子の含有率が57〜66at%となるように、前記ニッケル微粒子に鉄原子を導入して鉄ニッケル合金微粒子を形成させる工程と、
前記鉄ニッケル合金微粒子に、還元ガス雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中、200〜600℃の温度で熱処理を施す工程と、
前記熱処理後の鉄ニッケル合金微粒子を、少なくとも前記熱処理時の温度から200℃までの間は15℃/分以下の降温速度で冷却して、請求項1又は2に記載の鉄ニッケル合金微粒子を得る工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
なお、本発明の鉄ニッケル合金微粒子の製造方法によって、高い飽和磁化と低い保磁力とを示す鉄ニッケル合金微粒子が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の鉄ニッケル合金微粒子の製造方法においては、ニッケルの含有率が57〜66at%の鉄ニッケル合金微粒子に還元ガス雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中で熱処理を施した後、少なくとも200℃までは徐冷している。熱処理後の鉄ニッケル合金を規則−不規則変態点付近の温度で徐冷すると、ほぼ規則相からなる鉄ニッケル合金が得られるが、上述したように、鉄ニッケル合金微粒子においては、ナノサイズ効果によって粒子のエネルギー状態が高くなり、規則−不規則変態点がバルクの鉄ニッケル合金に比べて低くなるため、少なくとも200℃まで徐冷することによって、ほぼ規則相からなる鉄ニッケル合金微粒子を得ることが可能となる。また、ニッケルの含有率が57〜66at%の鉄ニッケル合金微粒子に熱処理を施して徐冷すると、結晶磁気異方性定数が0に近い規則相が形成される。このように、本発明の鉄ニッケル合金微粒子の製造方法により得られる鉄ニッケル合金微粒子は、ほぼ規則相からなるものであるため、高い飽和磁化を示し、また、このとき形成される規則相が0に近い結晶磁気異方性定数を有するものであるため、低い保磁力を示すと推察される。
本発明によれば、高い飽和磁化と低い保磁力とを示す鉄ニッケル合金微粒子を得ることが可能となる。
還元熱処理後に徐冷することによって得られたFe−Ni合金ナノ粒子と飽和磁化との関係を示すグラフである。 還元熱処理後に徐冷することによって得られたFe−Ni合金ナノ粒子と保磁力との関係を示すグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
〔鉄ニッケル合金微粒子〕
先ず、本発明の鉄ニッケル合金微粒子について説明する。本発明の鉄ニッケル合金微粒子は、鉄(Fe)とニッケル(Ni)との合金からなる微粒子であり、ニッケル原子の含有率は鉄原子とニッケル原子との合計量に対して57〜66at%である。ニッケル原子の含有率が前記範囲内にある鉄ニッケル合金微粒子は、高い飽和磁化と低い保磁力とを示す。一方、ニッケル原子の含有率が前記下限未満になると、鉄ニッケル合金微粒子が酸化されやすく、鉄ニッケル合金微粒子の飽和磁化が低くなる。他方、ニッケル原子の含有率が前記上限を超えると、規則相の結晶磁気異方性定数が大きくなり、鉄ニッケル合金微粒子の保磁力が高くなる。このようなニッケル原子の含有率の下限としては、鉄ニッケル合金微粒子の飽和磁化が高くなるという観点から、59at%以上が好ましく、61at%以上がより好ましい。また、ニッケル原子の含有率の上限としては、鉄ニッケル合金微粒子の保磁力が低くなるという観点から、65at%以下が好ましく、64at%以下がより好ましい。なお、ニッケル原子の含有率は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法により組成分析を行うことによって求めることができる。
また、本発明の鉄ニッケル合金微粒子の平均粒子径は1〜100nmである。平均粒子径が前記範囲内にある鉄ニッケル合金微粒子は、超常磁性現象が発現するため、高い飽和磁化と低い保磁力とを示す。一方、鉄ニッケル合金微粒子の平均粒子径が前記下限未満になると、鉄ニッケル合金微粒子が酸化されやすく、鉄ニッケル合金微粒子の飽和磁化が低くなる。他方、鉄ニッケル合金微粒子の平均粒子径が前記上限を超えると、鉄ニッケル合金微粒子における渦電流損失の抑制が困難となり、鉄損が大きくなる。鉄ニッケル合金微粒子の平均粒子径の上限としては、渦電流損失がより抑制されるとともに、保磁力がより低くなるため、ヒステリシス損失もより抑制されるという観点から、50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましい。なお、鉄ニッケル合金微粒子の平均粒子径は、鉄ニッケル合金微粒子の透過型電子顕微鏡写真(TEM像)において、無作為に抽出した100個の鉄ニッケル合金微粒子の粒子径(外接円の直径)を測定し、それらを算術平均することによって求めることができる。
さらに、本発明の鉄ニッケル合金微粒子の格子定数は3.58Å以下である。鉄ニッケル合金微粒子においては、規則相の格子定数が不規則相の格子定数に比べて小さいため、鉄ニッケル合金微粒子全体の格子定数が小さいほど、鉄ニッケル合金微粒子中の規則相の割合が多いことを示している。格子定数が前記範囲内にある鉄ニッケル合金微粒子は、規則相の割合が不規則相に比べて多く、高い飽和磁化と低い保磁力とを示す。一方、鉄ニッケル合金微粒子の格子定数が前記上限を超えると、不規則相の割合が多くなるため、結晶磁気異方性定数が大きくなり、保磁力が高くなる。なお、鉄ニッケル合金微粒子の格子定数は、X線回折(XRD)スペクトルを測定することによって求めることができる。
また、本発明の鉄ニッケル合金微粒子においては、その表面の少なくとも一部が酸化防止膜や絶縁膜で被覆されていてもよい。酸化防止膜で被覆することによって、鉄ニッケル合金微粒子の飽和磁化の低下を抑制することができる。このような酸化防止膜は鉄ニッケル合金微粒子を調製する際に形成することができる。また、絶縁膜で被覆することによって、成形体を形成した場合にナノ粒子間を絶縁して渦電流損失を抑制することができる。このような絶縁膜は鉄ニッケル合金微粒子を用いて成形体を作製する際に形成することができる。前記酸化防止膜としては有機物からなる被膜が挙げられ、前記有機物としては、脂肪酸、アルキルアミン、有機リン化合物等のモノマー;ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ゼラチン等のポリマーが挙げられる。また、前記絶縁膜としては、シリコーン樹脂、有機リン酸化合物等の有機物からなる被膜;シリカ、アルミナ、スピネルフェライト等の無機物からなる被膜が挙げられる。
このような本発明の鉄ニッケル合金微粒子は、高い飽和磁化と低い保磁力とを示すものであり、具体的には、飽和磁化が20emu/g以上であることが好ましく、30emu/g以上であることがより好ましく、また、保磁力が5Oe以下であることが好ましく、3Oe以下であることがより好ましい。
〔鉄ニッケル合金微粒子の製造方法〕
次に、本発明の鉄ニッケル合金微粒子の製造方法について説明する。本発明の鉄ニッケル合金微粒子の製造方法は、
ニッケル含有化合物を含有する有機溶媒中において、前記ニッケル含有化合物を還元せしめて、ニッケル微粒子を形成させる工程(ニッケル微粒子形成工程)と、
前記ニッケル微粒子と鉄含有化合物とを含有し、還元力を有する有機溶媒中又は還元剤を含有する有機溶媒中において、前記鉄含有化合物を還元せしめて、前記ニッケル微粒子に鉄原子を導入して鉄ニッケル合金微粒子を形成させる工程(鉄ニッケル合金微粒子形成工程)と、
前記鉄ニッケル合金微粒子に、還元ガス雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中、熱処理を施す工程(熱処理工程)と、
前記熱処理後の鉄ニッケル合金微粒子を徐冷して、前記本発明の鉄ニッケル合金微粒子を得る工程(冷却工程)と、
を含む方法である。
(ニッケル微粒子形成工程)
このニッケル微粒子形成工程においては、先ず、ニッケル含有化合物を含有する有機溶媒を調製する。また、ニッケル含有化合物を含有する有機溶媒にホスフィンを混合することによって、平均粒子径の小さい(好ましくは1〜50nm、より好ましくは1〜30nm)ニッケル微粒子や鉄ニッケル合金微粒子を得ることができる。
前記ニッケル含有化合物としては、ニッケルを含有する化合物であれば特に制限はないが、用いる有機溶媒に対する溶解性に優れたものであることが好ましい。このようなニッケル含有化合物としては、例えば、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル及びそれらの水和物等の無機ニッケル含有化合物、ニッケルを含む錯体が挙げられる。ニッケルを含む錯体としては、例えば、酢酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、テトラクロロニッケル(II)酸テトラエチルアンモニウム、テトラブロモニッケル(II)酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサアンミンニッケル(II)塩化物、ジニトロテトラアンミンニッケル(II)、テトラシアノニッケル(II)酸カリウム一水和物、ヘキサニトロニッケル(II)酸カリウムバリウム、トリス(エチレンジアミン)ニッケル(II)硫酸塩、ビス(エチレンジアミン)ジアクアニッケル硝酸塩、エチレンジアミンテトラアクアニッケル(II)硫酸塩一水和物、ジニトロ(エチレンジアミン)ニッケル(II)、ビス(N,N−ジメチルエチレンジアミン)ニッケル(II)過塩素酸、ビス(2,3−ジメチル−2,3−ジアミノブタン)ニッケル(II)ヨウ化物、ビス(ペルクロラト)テトラピリジンニッケル(II)、アセチルアセトナート(ニトラト)(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)ニッケル(II)等が挙げられる。
ホスフィンとしては特に制限はないが、用いる有機溶媒に対する溶解性に優れたものであることが好ましい。このようなホスフィンとしては、例えば、トリアルキルホスフィン(例えば、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン)、トリシクロアルキルホスフィン(例えば、トリシクロヘキシルホスフィン)、トリアリールホスフィン(例えば、トリフェニルホスフィン)、及びそれらの酸化物等が挙げられる。
有機溶媒としては、ニッケル含有化合物及びホスフィンを溶解できる有機溶媒であれば特に制限はないが、還元力を有する有機溶媒が好ましい。また、還元力のない有機溶媒であっても還元剤を添加することによって使用することができる。還元力を有する有機溶媒としては、アミノ基又はヒドロキシ基を有する常温で液体であるものが挙げられ、より具体的には、オレイルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、トリ(デシル)アミン、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。また、還元力のない有機溶媒としては、反応性のある官能基を有しない常温で液体のものが挙げられ、より具体的には、オクタデセン、ジオクチルエーテル、ジデシルエーテル、ジフェニルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。さらに、還元剤としては、ジオール、アミン、ボロヒドリド等が挙げられ、より具体的には、ヘキサデカンジオール、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素カリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム、テトラメチルアンモニウムボロヒドリド、テトラエチルアンモニウムボロヒドリド、テトラブチルアンモニウムボロヒドリド、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、トリオクチルアミン、トリ(デシル)アミン、トリドデシルアミン等が挙げられる。このような還元剤の添加量としては特に制限はないが、ニッケル微粒子形成後の洗浄回数を少なくし、ニッケル微粒子の酸化を抑制するという観点から、ニッケルイオンの当量以上50倍当量以下(より好ましくは10倍当量以下)が好ましい。
本発明にかかるニッケル微粒子形成工程においては、先ず、前記ニッケル含有化合物を含有する有機溶媒を調製する。このとき、前記ホスフィンを混合してもよい。ホスフィンを混合する場合のホスフィンとニッケル原子とのモル比(ホスフィン/ニッケル原子)としては0.1〜1.5が好ましい。ホスフィン/ニッケル原子が前記範囲内にあると、平均粒子径が小さい(好ましくは1〜50nm、より好ましくは1〜30nm)ニッケル微粒子や鉄ニッケル合金微粒子を得ることができる。一方、ホスフィン/ニッケル原子が前記下限未満になると、ニッケル微粒子や鉄ニッケル合金微粒子の平均粒子径が大きくなったり、リン化合物からなる被膜が絶縁層として機能しにくくなる傾向にある。その結果、鉄ニッケル合金微粒子における渦電流損失を抑制することが困難となる傾向にある。他方、ホスフィン/ニッケル原子が前記上限を超えると、熱処理時に、リン原子と鉄ニッケル合金微粒子中のニッケル原子とが容易に反応するため、リン化合物からなる被膜が絶縁層として機能せず、鉄ニッケル合金微粒子における渦電流損失を抑制することが困難となる傾向にある。また、ニッケル微粒子や鉄ニッケル合金微粒子の平均粒子径が小さくなり、リン化合物からなる被膜が絶縁層として十分に機能して、鉄ニッケル合金微粒子における渦電流損失を十分に抑制することが可能となるという観点から、ホスフィン/ニッケル原子としては、0.2〜1.3が好ましく、0.3〜1.2がより好ましい。
前記ニッケル含有化合物を含有し、必要に応じてさらに前記ホスフィンを含有する有機溶媒の調製方法としては特に制限はなく、例えば、前記有機溶媒に前記ニッケル含有化合物を添加し、必要に応じてさらに前記ホスフィンを添加して、溶解及び/又は分散させる方法が挙げられる。
次に、このようにして調製した、前記ニッケル含有化合物を含有し、必要に応じてさらに前記ホスフィンを含有する有機溶媒中において、前記還元力を有する有機溶媒又は前記還元剤の還元力を利用して前記ニッケル含有化合物を還元せしめる。これにより、ニッケル微粒子が形成される。また、前記ホスフィンを用いた場合には、その表面の少なくとも一部にリン化合物からなる被膜を備えるニッケル微粒子が形成される。
前記ニッケル含有化合物の還元温度としては、160〜300℃が好ましく、180〜260℃がより好ましい。前記還元温度が前記下限未満になると、前記ニッケル含有化合物の還元反応が十分に進行しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ニッケル微粒子が粒成長しすぎて、所望の大きさのニッケル微粒子を得ることが困難となる傾向にある。前記ニッケル含有化合物の還元時間としては、10〜360分間が好ましく、15〜180分間がより好ましい。また、このような還元処理は、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
このようにして形成される前記ニッケル微粒子の平均粒子径としては1〜100nmが好ましく、1〜50nmがより好ましく、1〜30nmが特に好ましい。ニッケル微粒子の平均粒子径が前記下限未満になると、ニッケル微粒子の酸化を抑制することが困難となり、得られる鉄ニッケル合金微粒子の飽和磁化等の磁気特性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる鉄ニッケル合金微粒子における渦電流損失を抑制することが困難となる傾向にある。なお、ニッケル微粒子の平均粒子径は、ニッケル微粒子の透過型電子顕微鏡写真(TEM像)において、無作為に抽出した100個のニッケル微粒子の粒子径(外接円の直径)を測定し、それらを算術平均することによって求めることができる。
(鉄ニッケル合金微粒子形成工程)
この鉄ニッケル合金微粒子形成工程においては、先ず、前記ニッケル微粒子形成工程で得られたニッケル微粒子と鉄含有化合物とを含有する有機溶媒を調製する。前記鉄含有化合物としては、鉄を含有する化合物であれば特に制限はないが、用いる有機溶媒に対する溶解性に優れたものであることが好ましい。このような鉄含有化合物としては、例えば、塩化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、及びそれらの水和物等の無機鉄含有化合物、鉄を含む錯体が挙げられる。鉄を含む錯体としては、例えば、酢酸鉄、鉄アセチルアセトナート、テトラクロロ鉄(II)酸テトラエチルアンモニウム、テトラクロロ鉄(III)酸テトラエチルアンモニウム、ビス(スルフィド)テトラニトロシル二鉄(2−)ナトリウム八水和物、トリス(スルフィド)ヘプタニトロシル四鉄酸(1−)アンモニウム一水和物、ヘキサアンミン鉄(II)臭化物、テトラキス(チオフェノラト)鉄(II)酸テトラフェニルホスホニウム、テトラキス(2,3,5,6−テトラメチルフェノラト)鉄(III)酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、ペンタシアノアンミン鉄(II)酸ナトリウム三水和物、ペンタシアノアンミン鉄(III)酸ナトリウム三水和物、ペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウム二水和物、ペンタシアノニトロ鉄(II)酸カリウム一水和物、テトラシアノ(エチレンジアミン)鉄(II)酸ナトリウム三水和物等が挙げられる。
鉄ニッケル合金微粒子形成工程で用いられる有機溶媒は、沸点が280℃以上(好ましくは300℃以上)の高沸点有機溶媒である。有機溶媒の沸点が前記下限未満になると、前記鉄含有化合物を還元せしめる際の温度を高くすることができず、前記鉄含有化合物の還元反応が十分に進行しない。
また、このような高沸点有機溶媒としては、還元力を有するものが好ましいが、還元力のないものであっても還元剤を添加することによって使用することができる。還元力を有する高沸点有機溶媒としては、グリセリン(沸点290℃)、ジオクチルアミン(沸点298℃)、テトラエチレングリコール(沸点328℃)、オレイルアミン(沸点349℃)、トリオクチルアミン(沸点367℃)、ペンタエチレングリコール(沸点380℃)、ヘキサエチレングリコール(沸点400℃)、トリ(デシル)アミン(沸点430℃)等が挙げられる。また、還元力のない高沸点有機溶媒としては、ジオクチルエーテル(沸点287℃)、オクタデセン(沸点306℃)、ジデシルエーテル(沸点340℃)等が挙げられる。さらに、還元剤としては、ヘキサデカンジオール、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素カリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム、テトラメチルアンモニウムボロヒドリド、テトラエチルアンモニウムボロヒドリド、テトラブチルアンモニウムボロヒドリド、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、トリオクチルアミン、トリ(デシル)アミン、トリドデシルアミン等が挙げられる。このような還元剤の添加量としては特に制限はないが、鉄ニッケル合金微粒子形成後の洗浄回数を少なくし、鉄ニッケル合金微粒子の酸化を抑制するという観点から、鉄イオンの当量以上50倍当量以下(より好ましくは10倍当量以下)が好ましい。
本発明にかかる鉄ニッケル合金微粒子形成工程においては、先ず、前記ニッケル微粒子と前記鉄含有化合物とを含有し、還元力を有する高沸点有機溶媒又は還元剤を含有する高沸点有機溶媒を調製する。このとき、得られる鉄ニッケル合金微粒子において、鉄原子とニッケル原子との合計量に対するニッケル原子の含有率が57〜66at%となるように前記ニッケル微粒子と前記鉄含有化合物とを混合する。ニッケル原子の含有率が前記範囲内となるように前記ニッケル微粒子と前記鉄含有化合物とを混合することによって、高い飽和磁化と低い保磁力とを示す鉄ニッケル合金微粒子が得られる。一方、ニッケル原子の含有率が前記下限未満になると、鉄ニッケル合金微粒子が酸化されやすく、鉄ニッケル合金微粒子の飽和磁化が低くなる。他方、ニッケル原子の含有率が前記上限を超えると、規則相の結晶磁気異方性定数が大きくなり、鉄ニッケル合金微粒子の保磁力が高くなる。このようなニッケル原子の含有率の下限としては、鉄ニッケル合金微粒子の飽和磁化が高くなるという観点から、59at%以上が好ましく、61at%以上がより好ましい。また、ニッケル原子の含有率の上限としては、鉄ニッケル合金微粒子の保磁力が低くなるという観点から、65at%以下が好ましく、64at%以下がより好ましい。
前記ニッケル微粒子と前記鉄含有化合物とを含有する高沸点有機溶媒の調製方法としては特に制限はなく、例えば、前記高沸点有機溶媒に前記ニッケル微粒子と前記鉄含有化合物とを添加して溶解及び/又は分散させる方法が挙げられる。
次に、このようにして調製した、前記ニッケル微粒子と前記鉄含有化合物とを含有し、還元力を有する高沸点有機溶媒中又は還元剤を含有する高沸点有機溶媒中において、前記還元力を有する高沸点有機溶媒又は前記還元剤の還元力を利用して前記鉄含有化合物を還元せしめる。これにより、前記ニッケル微粒子に鉄原子が導入され、鉄ニッケル合金微粒子が形成される。また、前記ニッケル微粒子として、その表面の少なくとも一部にリン化合物からなる被膜を備えるニッケル微粒子を用いた場合には、その表面の少なくとも一部にリン化合物からなる被膜を備える鉄ニッケル合金微粒子が形成される。
前記鉄含有化合物の還元温度は、280〜350℃である。前記還元温度が前記下限未満になると、前記鉄含有化合物の還元反応が十分に進行せず、所望のニッケル原子含有率を有する鉄ニッケル合金微粒子が得られない。他方、前記還元温度が前記上限を超えると、ニッケル原子とリン原子とが反応するため、所望の鉄ニッケル合金微粒子が得られない。また、前記鉄含有化合物の還元反応を十分に進行させるという観点から、前記鉄含有化合物の還元温度としては300〜350℃が好ましい。前記鉄含有化合物の還元時間としては、10〜720分間が好ましく、15〜360分間がより好ましい。また、このような還元処理は、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
このようにして形成される前記鉄ニッケル合金微粒子の平均粒子径としては1〜100nmが好ましく、1〜50nmがより好ましく、1〜30nmが特に好ましい。鉄ニッケル合金微粒子の平均粒子径が前記下限未満になると、鉄ニッケル合金微粒子が酸化されやすく、鉄ニッケル合金微粒子の飽和磁化が低くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、鉄ニッケル合金微粒子における渦電流損失の抑制が困難となり、鉄損が大きくなる傾向にある。なお、鉄ニッケル合金微粒子の平均粒子径は、鉄ニッケル合金微粒子の透過型電子顕微鏡写真(TEM像)において、無作為に抽出した100個の鉄ニッケル合金微粒子の粒子径(外接円の直径)を測定し、それらを算術平均することによって求めることができる。
(熱処理工程)
この熱処理工程においては、前記鉄ニッケル合金微粒子形成工程で得られた鉄ニッケル合金微粒子に、還元ガス雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中で熱処理を施す。これにより、鉄ニッケル合金微粒子中の規則相の割合が多くなり、主として規則相からなる鉄ニッケル合金微粒子が得られる。
前記熱処理の温度は200〜600℃である。前記熱処理の温度が前記下限未満になると、規則相が十分に形成されず、鉄ニッケル合金微粒子の保磁力が高くなる。他方、前記熱処理の温度が前記上限を超えると、鉄ニッケル合金微粒子同士が凝集して粒径が増大し、鉄ニッケル合金微粒子における渦電流損失の抑制が困難となり、鉄損が大きくなる。また、鉄ニッケル合金微粒子同士の凝集を抑制し、規則相を十分に形成させるという観点から、前記熱処理の温度としては、200〜400℃が好ましく、200〜350℃がより好ましい。また、前記熱処理の時間としては、15〜720分間が好ましく、30〜360分間がより好ましい。
前記還元ガス雰囲気としては、水素ガス雰囲気、水素−窒素混合ガス雰囲気、水素−アルゴン混合ガス雰囲気等が挙げられる。このような還元性混合ガス雰囲気における水素の割合としては特に制限はないが、還元性混合ガス全体に対して75〜100%又は1〜4%が好ましく、80〜90%又は1〜3%がより好ましい。水素の割合が前記範囲外になると、爆発燃焼が起こる場合がある。また、不活性ガス雰囲気としては、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等が挙げられる。
(冷却工程)
この冷却工程においては、前記熱処理後の鉄ニッケル合金微粒子を徐冷する。徐冷する温度範囲は、少なくとも前記熱処理時の温度から200℃までの間であり、それ以下の温度範囲においても徐冷してもよい。前記熱処理後の鉄ニッケル合金微粒子を前記温度範囲において徐冷することによって、鉄ニッケル合金微粒子中の規則相の割合が更に多くなり、ほぼ規則相からなる鉄ニッケル合金微粒子が得られる。
徐冷時の降温速度は15℃/分以下である。徐冷時の降温速度が前記上限を超えると、不規則相の割合が多くなり、鉄ニッケル合金微粒子の保磁力が高くなる。また、鉄ニッケル合金微粒子中の規則相の割合が確実に多くなるという観点から、徐冷時の降温速度としては10℃/分以下が好ましく、5℃/分以下がより好ましい。
このようにして得られる、ほぼ規則相からなる鉄ニッケル合金微粒子の格子定数は3.58Å以下である。格子定数が前記範囲内にある鉄ニッケル合金微粒子は、規則相の割合が不規則相に比べて多く、高い飽和磁化と低い保磁力とを示し、具体的には、飽和磁化が20emu/g以上であることが好ましく、30emu/g以上であることがより好ましく、また、保磁力が5Oe以下であることが好ましく、3Oe以下であることがより好ましい。一方、鉄ニッケル合金微粒子の格子定数が前記上限を超えると、不規則相の割合が多くなるため、結晶磁気異方性定数が大きくなり、保磁力が高くなる。なお、鉄ニッケル合金微粒子の格子定数は、X線回折(XRD)スペクトルを測定することによって求めることができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(調製例1)
オレイルアミン480mmolにニッケルアセチルアセトナート(Ni(acac))60mmolを添加し、さらにトリオクチルホスフィン(TOP)48mmolを添加した後、窒素雰囲気中、130℃で30分間保持し、さらに220℃で60分間保持してNiナノ粒子を得た。このNiナノ粒子をアセトン及びヘキサンで洗浄し、遠心分離により回収した後、真空乾燥した。
(実施例1)
先ず、オレイルアミン280mmolに、調製例1で得られたNiナノ粒子(TOP/Ni=0.8)0.76g及び鉄アセチルアセトナート(Fe(acac))7mmolを添加した後、窒素雰囲気中、130℃で30分間保持し、さらに320℃で60分間保持して反応を行い、Fe−Ni合金ナノ粒子を得た。このFe−Ni合金ナノ粒子をアセトン及びヘキサンで洗浄し、遠心分離により回収した後、真空乾燥した。
得られたFe−Ni合金ナノ粒子の組成分析を行った。Fe、Ni、Pの分析は誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置(株式会社リガク製「CIROS 120EOP」)を用いてICP発光分析法により行い、Cの分析は炭素・硫黄分析装置(株式会社堀場製作所製「EMIA−920V」)を用いて酸素中燃焼−赤外線吸収法により行い、Oの分析は酸素・窒素分析装置(株式会社堀場製作所製「EMGA−820」)を用いて不活性ガス中融解−赤外線吸収法により行い、Nの分析は酸素・窒素分析装置(株式会社堀場製作所製「EMGA−820」)を用いて不活性ガス中融解−熱伝導度検出法により行なった。その結果を表1に示す。
Figure 0006924390
表1に示した結果に基づいて、Fe原子とNi原子との合計量に対するNi原子の含有率を算出したところ、63at%であった。
次に、前記Fe−Ni合金ナノ粒子100mgを管状炉に入れ、H(200ml/分)/Ar(800ml/分)の混合ガス流通下、250℃で3時間保持して還元熱処理を行った。その後、混合ガスの流通を止めて管状炉を封止し、空冷ファンを停止した状態で管状炉内の温度が50℃以下になるまで自然冷却(徐冷)した。このとき、250℃から200℃までの間の降温速度は10℃/分であった。
徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子の組成分析を、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製「PS3520UVDD II」)により行ったところ、前記Fe−Ni合金ナノ粒子中のFe原子とNi原子との合計量に対するNi原子の含有率は63at%であった。また、徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子のX線回折(XRD)スペクトルをX線回折測定装置(株式会社リガク製「Ultima−IV」)により、CuKαをX線源とし、管電圧40kV、管電流40mAの条件で測定し、格子定数を求めたところ、3.547Åであった。
さらに、徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子株式会社製「JEOL−2000EX」)を用いて加速電圧200kVで観察し、得られたTEM像において、無作為に抽出した100個のFe−Ni合金ナノ粒子の粒子径(外接円の直径)を測定し、それらの平均値(平均粒子径)を求めたところ、16nmであった。また、徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子の飽和磁化及び保磁力を、振動試料型磁力計(VSM、東英工業株式会社製「VSM−3S−15」)により、室温、最大磁場10kOeの条件で測定したところ、飽和磁化は37.05emu/gであり、保磁力は2.62Oeであった。
(実施例2)
調製例1で得られたNiナノ粒子の量を0.88gに変更した以外は実施例1と同様にして、Fe−Ni合金ナノ粒子を調製し、さらに、このFe−Ni合金ナノ粒子に還元熱処理を施した後、自然冷却(徐冷)した。
徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子の組成分析を実施例1と同様にして行ったところ、前記Fe−Ni合金ナノ粒子中のFe原子とNi原子との合計量に対するNi原子の含有率は66at%であった。また、徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子のXRDスペクトルを実施例1と同様にして測定し、格子定数を求めたところ、3.553Åであった。
さらに、徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子の平均粒子径を実施例1と同様にして求めたところ、16nmであった。また、徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子の飽和磁化及び保磁力を実施例1と同様にして測定したところ、飽和磁化は37.83emu/gであり、保磁力は4.39Oeであった。
(実施例3)
調製例1で得られたNiナノ粒子の量を0.59gに変更した以外は実施例1と同様にして、Fe−Ni合金ナノ粒子を調製し、さらに、このFe−Ni合金ナノ粒子に還元熱処理を施した後、自然冷却(徐冷)した。
徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子の組成分析を実施例1と同様にして行ったところ、前記Fe−Ni合金ナノ粒子中のFe原子とNi原子との合計量に対するNi原子の含有率は57at%であった。また、徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子のXRDスペクトルを実施例1と同様にして測定し、格子定数を求めたところ、3.577Åであった。
さらに、徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子の平均粒子径を実施例1と同様にして求めたところ、17nmであった。また、徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子の飽和磁化及び保磁力を実施例1と同様にして測定したところ、飽和磁化は22.38emu/gであり、保磁力は1.45Oeであった。
(比較例1)
調製例1で得られたNiナノ粒子の量を1.50gに変更した以外は実施例1と同様にして、Fe−Ni合金ナノ粒子を調製し、さらに、このFe−Ni合金ナノ粒子に還元熱処理を施した後、自然冷却(徐冷)した。
徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子の組成分析を実施例1と同様にして行ったところ、前記Fe−Ni合金ナノ粒子中のFe原子とNi原子との合計量に対するNi原子の含有率は77at%であった。また、徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子のXRDスペクトルを実施例1と同様にして測定し、格子定数を求めたところ、3.545Åであった。
さらに、徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子の平均粒子径を実施例1と同様にして求めたところ、16nmであった。また、徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子の飽和磁化及び保磁力を実施例1と同様にして測定したところ、飽和磁化は48.00emu/gであり、保磁力は12.0Oeであった。
(比較例2)
調製例1で得られたNiナノ粒子の量を1.00gに変更した以外は実施例1と同様にして、Fe−Ni合金ナノ粒子を調製し、さらに、このFe−Ni合金ナノ粒子に還元熱処理を施した後、自然冷却(徐冷)した。
徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子の組成分析を実施例1と同様にして行ったところ、前記Fe−Ni合金ナノ粒子中のFe原子とNi原子との合計量に対するNi原子の含有率は69at%であった。また、徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子のXRDスペクトルを実施例1と同様にして測定し、格子定数を求めたところ、3.558Åであった。
さらに、徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子の平均粒子径を実施例1と同様にして求めたところ、17nmであった。また、徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子の飽和磁化及び保磁力を実施例1と同様にして測定したところ、飽和磁化は40.00emu/gであり、保磁力は9.00Oeであった。
(比較例3)
調製例1で得られたNiナノ粒子の量を0.43gに変更した以外は実施例1と同様にして、Fe−Ni合金ナノ粒子を調製し、さらに、このFe−Ni合金ナノ粒子に還元熱処理を施した後、自然冷却(徐冷)した。
徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子の組成分析を実施例1と同様にして行ったところ、前記Fe−Ni合金ナノ粒子中のFe原子とNi原子との合計量に対するNi原子の含有率は49at%であった。また、徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子のXRDスペクトルを実施例1と同様にして測定し、格子定数を求めたところ、3.573Åであった。
さらに、徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子の平均粒子径を実施例1と同様にして求めたところ、18nmであった。また、徐冷後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子の飽和磁化及び保磁力を実施例1と同様にして測定したところ、飽和磁化は3.90emu/gであり、保磁力は0.65Oeであった。
(比較例4)
実施例1と同様にしてFe−Ni合金ナノ粒子を調製し、このFe−Ni合金ナノ粒子を、還元熱処理を施さずにそのまま使用した。
還元熱処理を施していない前記Fe−Ni合金ナノ粒子の組成分析を実施例1と同様にして行ったところ、前記Fe−Ni合金ナノ粒子中のFe原子とNi原子との合計量に対するNi原子の含有率は63at%であった。また、還元熱処理を施していない前記Fe−Ni合金ナノ粒子のXRDスペクトルを実施例1と同様にして測定し、格子定数を求めたところ、3.590Åであった。
さらに、還元熱処理を施していない前記Fe−Ni合金ナノ粒子の平均粒子径を実施例1と同様にして求めたところ、16nmであった。また、還元熱処理を施していない前記Fe−Ni合金ナノ粒子の飽和磁化及び保磁力を実施例1と同様にして測定したところ、飽和磁化は43.05emu/gであり、保磁力は7.78Oeであった。
(比較例5)
実施例1と同様にしてFe−Ni合金ナノ粒子を調製し、さらに、このFe−Ni合金ナノ粒子に還元熱処理を施した。その後、H(200ml/分)/Ar(800ml/分)の混合ガスを流通させ、空冷ファンも稼働させた状態で、管状炉内の温度が50℃以下になるまで冷却した。このとき、250℃から200℃までの間の降温速度は32℃/分であった。
冷却後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子の組成分析を実施例1と同様にして行ったところ、前記Fe−Ni合金ナノ粒子中のFe原子とNi原子との合計量に対するNi原子の含有率は63at%であった。また、冷却後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子のXRDスペクトルを実施例1と同様にして測定し、格子定数を求めたところ、3.586Åであった。
さらに、冷却後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子の平均粒子径を実施例1と同様にして求めたところ、16nmであった。また、冷却後の前記Fe−Ni合金ナノ粒子の飽和磁化及び保磁力を実施例1と同様にして測定したところ、飽和磁化は40.11emu/gであり、保磁力は6.81Oeであった。
〔Ni原子の含有率と飽和磁化及び保磁力との関係〕
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた結果に基づいて、徐冷後のFe−Ni合金ナノ粒子中のNi原子の含有率と飽和磁化及び保磁力との関係を求めた。それらの結果を図1及び図2に示す。
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたFe−Ni合金ナノ粒子は、いずれも格子定数が3.58Å以下であり、主として規則相(FeNi相)からなるものであると考えられる。しかしながら、図1及び図2に示したように、Ni原子の含有率が57〜66at%のFe−Ni合金ナノ粒子(実施例1〜3)は、飽和磁化が20emu/g以上、保磁力が5Oe以下のものであったが、Ni原子の含有率が57at%未満のFe−Ni合金ナノ粒子は、飽和磁化が20emu/g未満のものであり、Ni原子の含有率が66at%を超えるFe−Ni合金ナノ粒子は、保磁力が5Oeを超えるものであることがわかった。
また、Ni原子の含有率が63at%のFe−Ni合金ナノ粒子であっっても、還元熱処理を施さなかった場合(比較例4)及び15℃/分を超える降温速度で冷却した場合(比較例5)には、保磁力が5Oeを超えることがわかった。これは、還元熱処理を施さなかったり、15℃/分を超える降温速度で冷却したりした場合には、得られたFe−Ni合金ナノ粒子の格子定数が3.58Åを超過しており、Fe−Ni合金ナノ粒子中に規則相(FeNi相)と不規則相とが混在していたためと考えられる。
以上説明したように、本発明によれば、高い飽和磁化と低い保磁力とを示す鉄ニッケル合金微粒子を得ることが可能となる。したがって、本発明の鉄ニッケル合金微粒子は、自動車のPCU等に使用するインダクタやトランスといった受動素子等の材料として有用である。

Claims (2)

  1. 平均粒子径が1〜100nmであり、
    鉄原子とニッケル原子との合計量に対するニッケル原子の含有率が57〜66at%であり、
    粉末X線回折測定により求められる格子定数が3.58Å以下であり、
    飽和磁化が20emu/g以上であり、
    保磁力が5Oe以下である
    ことを特徴とする鉄ニッケル合金微粒子。
  2. ニッケル含有化合物を含有する有機溶媒中において、前記ニッケル含有化合物を還元せしめて、ニッケル微粒子を形成させる工程と、
    前記ニッケル微粒子と鉄含有化合物とを含有し、沸点が280℃以上であり、かつ、還元力を有する有機溶媒中又は還元剤を含有する有機溶媒中において、280〜350℃の温度で前記鉄含有化合物を還元せしめて、鉄原子とニッケル原子との合計量に対するニッケル原子の含有率が57〜66at%となるように、前記ニッケル微粒子に鉄原子を導入して鉄ニッケル合金微粒子を形成させる工程と、
    前記鉄ニッケル合金微粒子に、還元ガス雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中、200〜600℃の温度で熱処理を施す工程と、
    前記熱処理後の鉄ニッケル合金微粒子を、少なくとも前記熱処理時の温度から200℃までの間は15℃/分以下の降温速度で冷却して、請求項に記載の鉄ニッケル合金微粒子を得る工程と、
    を含むことを特徴とする鉄ニッケル合金微粒子の製造方法。
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