JP6923790B2 - 最適化装置及び最適化装置の制御方法 - Google Patents

最適化装置及び最適化装置の制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、最適化装置及び最適化装置の制御方法に関する。
現在の社会ではあらゆる分野で情報処理が行われている。これらの情報処理はコンピュータ等の演算装置を用いて行われており、様々なデータを演算、加工し、意味のある結果を得ることにより、予測、決定、制御等が行われる。これらの情報処理の1つの分野として最適化処理があり重要な分野となっている。例えばある処理を行う場合に必要な資源やコストを最小化したり、その効果を最大化する解を求める問題等である。これらの問題が非常に重要であるのは明らかであろう。
最適化問題の代表的なものとして線形計画問題がある。これは複数の連続変数の線形和で表される評価関数を、線形和で表される制約条件の下で最大化または最小化する変数の値を求めるものであり、製品の生産計画等様々な分野で利用されている。この線形計画問題には単体法や内点法といった優れた解法が知られており、何十万以上の変数を持つ問題でも効率的に解くことができる。
一方最適化問題には、変数が連続値ではなく離散的な値を取るものも多く知られている。例えば、複数の都市を順番に回り元に戻るときの最短経路を求める巡回セールスマン問題や、ナップザックに異なる品物を詰めるときその価値の和が最大となるような組み合わせを求めるナップザック問題等が挙げられる。このような問題は、離散最適化問題、組合せ最適化問題等と呼ばれ、最適解を得るのが非常に難しいことが知られている。
離散最適化問題を解くのが難しい最大の原因は、各変数が離散値しか取れないため、評価関数が改善される方向に変数を連続的に変化させることで最適解に到達させるという手法が使えないことである。そして本来の最適値を与える変数の値(最適解、大域解)以外に、局所的に評価関数の極値を与える値(極小(大)解、局所解)が非常に多数存在することである。このため最適解を確実に得るにはしらみつぶしのような方法を取らざるを得ず、計算時間が非常に長くなる。離散最適化問題には計算量理論でNP(Non-deterministic Polynomial)困難問題と呼ばれる、最適解を求めるための計算時間が問題の大きさ(すなわち変数の数)に対して指数的に増加すると予想される問題が多い。上記巡回セールスマン問題やナップザック問題もNP困難問題である。
以上述べたように、離散最適化問題の最適解を確実に求めることは非常に困難である。このため実用上重要な離散最適化問題にはその問題に固有な性質を利用した解法が考え出されている。上記のように多くの離散最適化問題では厳密解を得るには指数関数的に増大する計算時間がかかると予想されるため、実用的な解法の多くは近似解法であり、最適解ではないものの評価関数の値が最適値に近い値となる解を得ることができるものである。
これらの問題に特化した近似解法に対して、問題の性質を用いることなく解くため広範囲な問題を扱える近似解法も知られている。これらはメタヒューリスティックな解法と呼ばれ、疑似焼き鈍し法(シミュレーテッド・アニーリング法、SA法)、遺伝的アルゴリズム、ニューラルネットワーク等が挙げられる。これらの方法は、問題の性質をうまく利用した解法よりは効率が悪い可能性があるが、厳密解を得る解法よりは高速に解を得ることが期待できる。
本発明はこのうち疑似焼き鈍し法に関するものである。
疑似焼き鈍し法はモンテカルロ法の一種であり、乱数値を用いて確率的に解を求める方法である。以下では最適化したい評価関数の値を最小化する問題を例に説明し、評価関数の値をエネルギーと呼ぶことにする。最大化の場合は、評価関数の符号を変えればよい。
各変数に離散値の1つを代入した初期状態からはじめ、現在の状態(変数の値の組み合わせ)から、それに近い状態(例えば1つの変数だけ変化させた状態)を選び、その状態遷移を考える。その状態遷移に対するエネルギーの変化を計算し、その値に応じてその状態遷移を採択して状態を変化させるか、採択せずに元の状態を保つかを確率的に決める。エネルギーが下がる場合の採択確率をエネルギーが上がる場合より大きく選ぶと、平均的にはエネルギーが下がる方向に状態変化が起こり、時間の経過とともにより適切な状態へ状態遷移することが期待できる。そして最終的には最適解または最適値に近いエネルギーを与える近似解を得られる可能性がある。もし、これを決定論的にエネルギーが下がる場合に採択、上がる場合に不採択とすれば、エネルギーの変化は時間に対して広義単調減少となるが、局所解に到達したらそれ以上変化が起こらなくなってしまう。上記のように離散最適化問題には非常に多数の局所解が存在するために、状態が、ほとんど確実にあまり最適値に近くない局所解に捕まってしまう。したがって、採択するかどうかを確率的に決定することが重要である。
疑似焼き鈍し法においては、状態遷移の採択(許容)確率を次のように決めれば、時刻(反復回数)無限大の極限で状態が最適解に到達することが証明されている。
(1)状態遷移に伴うエネルギー変化(エネルギー減少)値(−ΔE)に対して、その状態遷移の許容確率pを次の何れかの関数f()により決める。
Figure 0006923790
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ここでTは温度値と呼ばれるパラメータで次のように変化させる。
(2)温度値Tを次式で表されるように反復回数tに対数的に減少させる。
Figure 0006923790
ここでTは初期温度値であり問題に応じて十分大きくとることが望ましい。
(1)の式で表される許容確率を用いた場合、十分な反復後に定常状態に達したとすると、各状態の占有確率は熱力学における熱平衡状態に対するボルツマン分布にしたがう。そして、高い温度から徐々に下げていくとエネルギーの低い状態の占有確率が増加するため、十分温度が下がるとエネルギーの低い状態が得られるはずである。この様子が材料を焼き鈍したときの状態変化とよく似ているため、この方法は疑似焼き鈍し法と呼ばれるのである。このとき、エネルギーが上がる状態遷移が確率的に起こることは、物理学における熱励起に相当する。
上記のように疑似焼き鈍し法では、反復回数を無限に取れば最適解が得られるが、現実には有限の反復回数で解を得る必要があるため、最適解を確実に求めることはできない。また上の式では温度の下がり方が非常にゆっくりであるため、有限時間では十分に温度が下がらない。したがって実際の疑似焼き鈍し法では対数的な温度変化ではなくより早く温度を下げることが多い。
図14に疑似焼き鈍し法による最適化装置の概念的構成を示す。ただし、下記説明では、状態遷移の候補を複数発生させる場合についても述べているが、本来の基本的な疑似焼き鈍し法は遷移候補を1つずつ発生させるものである。
最適化装置10には、まず現在の状態S(複数の状態変数の値)を保持する状態保持部11がある。また、複数の状態変数の値の何れかが変化することによる現在の状態Sからの状態遷移が起こった場合の、各状態遷移のエネルギー変化値{−ΔE}を計算するエネルギー計算部12がある。そして、最適化装置10には、温度値Tを制御する温度制御部13、状態変化を制御するための遷移制御部14がある。
遷移制御部14は、温度値Tとエネルギー変化値{−ΔE}と乱数値とに基づいて、エネルギー変化値{−ΔE}と熱励起エネルギーとの相対関係によって複数の状態遷移の何れかを受け入れるか否かを確率的に決定するものである。
遷移制御部14をさらに細分化すると、遷移制御部14は、状態遷移の候補を発生する候補発生部14a、各候補に対して、そのエネルギー変化値{−ΔE}と温度値Tから状態遷移を許可するかどうかを確率的に決定するための可否判定部14bを有する。さらに、可となった候補から採用される候補を決定する遷移決定部14c、及び、確率変数を発生させるための乱数発生部14dを有する。
一回の反復における動作は次のようなものである。まず、候補発生部14aは、状態保持部11に保持された現在の状態Sから次の状態への状態遷移の候補(候補番号{Ni})を1つまたは複数発生する。エネルギー計算部12は、現在の状態Sと状態遷移の候補を用いて候補に挙げられた各状態遷移に対するエネルギー変化値{−ΔE}を計算する。可否判定部14bは、温度制御部13で発生した温度値Tと乱数発生部14dで生成した確率変数(乱数値)を用い、各状態遷移のエネルギー変化値{−ΔE}に応じて、上記(1)の式の許容確率でその状態遷移を許容する。そして、可否判定部14bは、各状態遷移を受け入れるか否か(以下状態遷移の可否という場合もある)を示す遷移可否{fi}を出力する。許容された状態遷移が複数ある場合には、遷移決定部14cは、乱数値を用いてランダムにそのうちの1つを選択する。そして、遷移決定部14cは、選択した状態遷移の遷移番号Nと、遷移可否fを出力する。許容された状態遷移が存在した場合、採択された状態遷移に応じて状態保持部11に記憶された状態変数の値が更新される。
初期状態から始めて、温度制御部13で温度値を下げながら上記反復を繰り返し、一定の反復回数に達したり、エネルギーが一定の値を下回る等の終了判定条件が満たされたとき、動作が終了する。最適化装置10が出力する答えは終了時の状態である。ただし、実際には有限の反復回数では温度値が0にならないため、終了時においても状態の占有率はボルツマン分布等で表される分布を持っており、必ずしも最適値やよい解になっているとは限らない。したがって、反復の途中でこれまでに得られたエネルギーが最低の状態を保持し、最後にそれを出力するのが現実的な解法となる。
図15は候補を1つずつ発生させる通常の疑似焼き鈍し法における遷移制御部、特に可否判定部のために必要な演算部分の構成例の回路レベルのブロック図である。
遷移制御部14は、乱数発生回路14b1、セレクタ14b2、ノイズテーブル14b3、乗算器14b4、比較器14b5を有する。
セレクタ14b2は、各状態遷移の候補に対して計算されたエネルギー変化値{−ΔE}のうち、乱数発生回路14b1が生成した乱数値である遷移番号Nに対応するものを選択して出力する。
ノイズテーブル14b3の機能については後述する。ノイズテーブル14b3として、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等のメモリを用いることができる。
乗算器14b4は、ノイズテーブル14b3が出力する値と、温度値Tとを乗算した積(前述した熱励起エネルギーに相当する)を出力する。
比較器14b5は、乗算器14b4が出力した乗算結果と、セレクタ14b2が選択したエネルギー変化値である−ΔEとを比較した比較結果を遷移可否fとして出力する。
図15に示されている遷移制御部14は、基本的に前述した機能をそのまま実装するものであるが、(1)の式で表される許容確率で状態遷移を許容するメカニズムについてはこれまで説明していないのでこれを補足する。
許容確率pで1を、(1−p)で0を出力する回路は、2つの入力A,Bを持ち、A>Bのとき1を出力し、A<Bのとき0を出力する比較器の入力Aに許容確率pを、入力Bに区間[0,1)の値をとる一様乱数を入力することで実現することができる。したがってこの比較器の入力Aに、エネルギー変化値と温度値Tにより(1)の式を用いて計算される許容確率pの値を入力すれば、上記の機能を実現することができる。
すなわちfを(1)の式で用いる関数、uを区間[0,1)の値をとる一様乱数とするとき、f(ΔE/T)がuより大きいとき1を出力する回路で、上記の機能を実現できる。
このままでもよいのであるが、次のような変形を行っても同じ機能が実現できる。2つの数に同じ単調増加関数を作用させても大小関係は変化しない。したがって比較器の2つの入力に同じ単調増加関数を作用させても出力は変わらない。この単調増加関数としてfの逆関数f−1を採用すると、−ΔE/Tがf−1(u)より大きいとき1を出力する回路でよいことがわかる。さらに温度値Tが正であることから−ΔEがTf−1(u)より大きいとき1を出力する回路でよい。図15中のノイズテーブル14b3はこの逆関数f−1(u)を実現するための変換テーブルであり、区間[0,1)を離散化した入力に対して次の関数の値を出力するテーブルである。
Figure 0006923790
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遷移制御部14には、判定結果等を保持するラッチやそのタイミングを発生するステートマシン等も存在するが、図15では図示を簡単にするため省略されている。
図16は、従来例における遷移制御部の動作フローを示す図である。動作フローは、1つの状態遷移を候補として選ぶステップ(S1)、その状態遷移に対するエネルギー変化値と温度値と乱数値の積の比較で状態遷移の可否を決定するステップ(S2)、状態遷移が可ならばその状態遷移を採用し、否ならば不採用とするステップ(S3)を有する。
上記の説明からある程度想像できると思われるが、疑似焼き鈍し法は汎用的で非常に魅力的ではあるが、温度をゆっくり下げる必要があるため計算時間が比較的長くなってしまうという問題がある。さらにその温度の下げ方を問題に合わせて適切に調節することが難しいという問題もある。これは図17を用いて次のように説明することができる。
初期値から最適解や近似解に至る状態遷移の経路には近似度のよくない局所解が多数存在する。これらの局所解から十分早く脱出するには、十分な熱励起が可能な高い温度が必要となる。しかし高い温度ではボルツマン分布におけるエネルギーの広がりが大きいため、最適解やエネルギーの低いよい近似解(以下ではよい解と呼ぶ)と、エネルギーの比較的高い近似度の悪い局所解(以下悪い解と呼ぶ)の占有確率の差が小さい。このため局所解を早く脱出できても行く先は多数ある悪い解に分散されてしまい、よい解にたどり着く確率は非常に小さい。よい解の占有確率を増やすには、悪い解とのエネルギー差に比べ、熱励起のエネルギーが十分に小さくなるような低温が必要である。しかしこの場合熱励起のエネルギーが小さいため、経路の途中のエネルギーの山を越えることができる確率が非常に低くなってしまい、状態変化がほとんど起こらない。したがって、ある程度山を越えることができ、占有確率に少し差のつけられる中間温度をゆっくりと経過させることで、徐々によい解の占有確率を増やしていく必要がある。もし温度の下げ方が遅すぎると有限時間ではあまり温度が下がらないため、最終的によい解の占有確率が上がらない。逆に速く下げすぎると、局所解を脱出する前に温度が下がってしまい、悪い解に捕まったままになってしまう。したがって温度が下がるほどその変化の割合を十分小さくし、その温度におけるボルツマン分布に近づくまで十分待たなければならない。
このように本来の疑似焼き鈍し法では、温度による熱励起だけで局所解からの脱出を図るため、温度をゆっくり下げるとともに、温度の下げ方を問題に応じて適切に調節することが望ましい。
なお、原画像と認識すべきサンプル画像を入力としその認識を実行する画像処理手順の生成、評価を繰り返すことで手順を探索する際、擬似焼き鈍し法と、一度探索した解を再評価しないためのタブーリストとを用いる技術があった(例えば、特許文献1参照)。
また、温度制御やエネルギー変化の算出を行う機能をもつボルツマンマシンを実装する技術があった(例えば、特許文献2、非特許文献1参照)。
特開2005−258609号公報 特開2001−250102号公報
Christian R. Schneider et.al., "Analog CMOS Deterministic Boltzmann Circuits" JSSC, VOL.28, No.8, pp.907-914, AUGUST 1993
上記のように局所解からの脱出に長い時間がかかってしまうことが疑似焼き鈍し法の計算時間が長くなる大きな要因である。また、一旦、局所解からの脱出に向けた状態遷移が行われる場合でも、一度の状態遷移では状態が局所解から抜け切れず、元の状態に戻ってしまう可能性もあり、局所解からの脱出に長い時間がかかる1つの要因となっている。
1つの側面では、本発明は、最適化問題の計算時間を短縮する、最適化装置及び最適化装置の制御方法を提供することを目的とする。
1つの実施態様では、最適化装置は、エネルギーを表す評価関数に含まれる複数の状態変数の値をそれぞれ保持する状態保持部と、前記複数の状態変数の値の何れかが変化することに応じて状態遷移が起こる場合、前記エネルギーの変化値を複数の状態遷移のそれぞれに対して計算するエネルギー計算部と、温度を示す温度値を制御する温度制御部と、前記温度値と前記変化値と熱励起に関係する乱数値とに基づいて、前記変化値と熱励起エネルギーとの相対関係によって前記複数の状態遷移の何れかを受け入れるか否かを確率的に決定する際、前記変化値にオフセット値を加えるとともに、前記エネルギーが極小となる局所解における前記オフセット値を、前記エネルギーが極小ではない場合と比較して大きくなるように制御するとともに、前回発生した状態遷移を示す第1の遷移情報を保持し、保持した前記第1の遷移情報の第1のデコード結果に基づいて、現在の状態遷移候補のうち第1の状態遷移を禁止する遷移制御部と、を有する。
また、1つの実施形態では、最適化装置の制御方法が提供される。
1つの側面では、本発明は、最適化問題の計算時間を短縮できる。
第1の実施の形態の最適化装置における遷移制御部の一例を示す図である。 第1の実施の形態の最適化装置における遷移制御部の動作フローを示す図である。 遷移禁止回路を有さない遷移制御部を示す図である。 比較例の遷移制御部を用いた場合の状態遷移の一例の様子を示す図である。 第1の実施の形態の遷移制御部を用いた場合の状態遷移の一例の様子を示す図である。 第2の実施の形態の最適化装置における遷移制御部の回路構成の一例を示す図である。 パルス信号の発生の状態遷移の一例を示す状態遷移図である。 パルス信号を発生する論理回路の真理値表の一例を示す図である。 パルス信号を発生するステートマシンの一例を示す図である。 第3の実施の形態の最適化装置における遷移制御部の回路構成の一例を示す図である。 図3、図6及び図10の遷移制御部を用いて実現される疑似焼き鈍し法のソフトウェアシミュレーション結果の一例を示す図である。 第4の実施の形態の最適化装置における遷移制御部の回路構成の一例を示す図である。 第5の実施の形態の最適化装置における遷移制御部の回路構成の一例を示す図である。 疑似焼き鈍し法による最適化装置の概念的構成を示す図である。 従来例における遷移制御部、特に可否判定部のために必要な演算部分の構成例の回路レベルのブロック図である。 従来例における遷移制御部の動作フローを示す図である。 疑似乱数法における状態の占有確率の概念を示す図である。
以下、発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の最適化装置における遷移制御部の一例を示す図である。以下、図1の遷移制御部20は各状態変数の値の変化を全て状態遷移の候補とするものとして説明するが、各状態変数の値の変化の一部のみを状態遷移の候補とすることも可能である。また、以下の説明では、熱励起のために用いる乱数値を、各遷移候補に対して独立とするが、いくつかの状態遷移の候補に対して共通としてもよい。
遷移制御部20は、図15に示した遷移制御部14と同様の機能を実現する回路部分(熱励起エネルギー生成部21、比較器22、セレクタ23)に加えて、オフセット加算回路24、オフセット制御回路25、遷移禁止回路26を有する。なお、図1では、図15に示した遷移制御部14のような乱数値を発生する回路については図示が省略されている。
熱励起エネルギー生成部21は、遷移候補ごとに独立の乱数値{ui}を、前述した逆関数f−1(u)の値に変換するノイズテーブル(記憶部)を有する。さらに熱励起エネルギー生成部21は、ノイズテーブルが出力する値に温度値Tを乗算した積を、メトロポリス法またはギブス法における熱励起エネルギーとして出力する。
オフセット加算回路24は、状態遷移に伴うエネルギー変化値(−ΔE)にオフセット値yを加える機能を有する。図1の例では、オフセット加算回路24は、減算器24aである。このため、図1の例では、エネルギー変化値(−ΔE)にオフセット値yを加える代わりに、遷移候補ごとに生成された熱励起エネルギーから、オフセット値yを減ずる構成となっているがどちらでも同じである。
オフセット制御回路25は、局所解(エネルギーが極小となる解)におけるオフセット値yを、局所解ではないときに比べて大きくなるように制御する。図1の例では、オフセット制御回路25は、リセット端子Rを有する累算器25aである。累算器25aは、リセット端子Rに入力される遷移可否fが、状態遷移を許容することを示すとき(つまり状態遷移が生じるとき)には、オフセット値yを0にする。また、累算器25aは、入力端子と、クロック端子を有する。累算器25aは、遷移可否fが、状態遷移を許容しないことを示すとき(つまり状態遷移が生じないとき)には、クロック端子に図示しないパルス信号が入力されるたびに、オフセット値yに入力端子に入力されるオフセット増分値Δyを加えていく。
なお、図示しないパルス信号は、例えば、後述するステートマシンによって供給される。オフセット増分値Δyは、例えば、図示しないレジスタに記憶されている。
比較器22は、オフセット加算回路24の出力値(減算器24aが出力する減算結果)と、その出力値に対応したエネルギー変化値{−ΔE}とを比較することで各状態遷移を受け入れるか否か(各状態遷移の可否)を示す判定結果である遷移可否{fi}を出力する。なお、この比較器22の動作は、複数の状態遷移のそれぞれに対して計算されたエネルギー変化値{−ΔE}とオフセット値yとの和のそれぞれと、複数の乗算(熱励起エネルギー)とのそれぞれとの比較結果を出力することに相当する。
遷移禁止回路26は、直近の(前回発生した)状態遷移を示す遷移情報(遷移番号N)を保持し、保持した遷移番号Nのデコード結果に基づいて状態遷移(直近の状態に戻る状態遷移)を禁止する。図1の例では、遷移禁止回路26は、各状態遷移を受け入れるか否かを示す複数の判定結果である遷移可否{fi}のうち、前回の状態遷移を示す遷移情報に対応する遷移可否を、状態遷移を受け入れないことを示す値にした遷移可否{fia}を出力する。これにより、同じ状態変数が続けて変化することがなくなり、直近の状態に戻る状態遷移が発生しない。
セレクタ23は、乱数値を用いて、複数の状態遷移の何れか1つをランダムに選択し、遷移可否{fia}に基づいて、選択した状態遷移を受け入れるか否かを示す遷移可否fを出力する。また、セレクタ23は、選択した状態遷移を示す遷移番号Nを出力する。以下、遷移可否fが1である場合には、その状態遷移が許容されたことを示し、遷移可否fが0である場合には、その状態遷移が許容されないことを示す。
以下、上記のような遷移制御部20の動作例を説明する。
前述した各反復において、熱励起エネルギー生成部21は、状態遷移の候補の数と等しい独立な一様乱数である乱数値{ui}を受け、ノイズテーブルを用いて逆関数f−1(u)の値に変換を行う。そして熱励起エネルギー生成部21は、変換で得られた値に共通の温度値Tを乗算することにより、メトロポリス法またはギブス法における熱励起エネルギーを生成する。
遷移候補ごとに生成された熱励起エネルギーから、減算器24aによって、累算器25aが出力するオフセット値yが減ぜられ、比較器22で、減算器24aが出力する各減算結果と、エネルギー変化値{−ΔE}とが比較される。比較器22は、比較結果に基づいて、各状態遷移の可否を示す遷移可否{fi}を出力する。
遷移禁止回路26は、遷移可否{fi}のうち、前回変化した状態変数に対応した遷移可否が可となっている場合には、その状態遷移を否とした遷移可否{fia}を出力する。セレクタ23は、乱数値を用いて、複数の状態遷移の何れか1つをランダムに選択し、選択した状態遷移の遷移可否{fia}を遷移可否fとして出力する。状態遷移が可である場合には遷移可否fは1となり、状態遷移が否である場合には、遷移可否fは0となる。また、セレクタ23は、選択した状態遷移を示す遷移番号Nを出力する。
オフセット値yは、遷移可否fが1のとき、累算器25aによって0にリセットされる。遷移可否fが0のとき、累算器25aは、オフセット値yにオフセット増分値Δyを加算することで、現在の状態における滞在時間に対してオフセット値yが単調増加するように制御する。
全ての状態遷移が候補として挙げられ、局所解でないときほぼ1回の反復で状態遷移が起こることを考慮すると、オフセット増分値Δyは、滞在時間が数回程度になったとき局所解からの脱出に必要なエネルギーになるように定めるのがよいと考えられる。
図2にこの状態遷移の可否判定のための動作フローをまとめる。
動作フローは、比較器22による上記の処理によって各状態遷移の可否を示す遷移可否{fi}を出力するステップ(S10)、遷移禁止回路26による直近の状態に戻る状態遷移を否とした遷移可否{fia}を出力するステップ(S11)を有する。さらに、動作フローは、セレクタ23による複数の状態遷移の何れか1つをランダムに選択する処理ステップ(S12)、選択した状態遷移が可ならばその状態遷移を採用し、オフセット値yをクリアし、否ならば不採用とし、オフセット値yを増加するステップ(S12)を有する。
このほかの動作は通常の疑似焼き鈍し法と同じでよい。
以下、上記のようなオフセット加算回路24とオフセット制御回路25と遷移禁止回路26を有する遷移制御部20による効果を説明する前に、遷移禁止回路26を有さない遷移制御部を比較例として説明する。
(比較例)
図3は、遷移禁止回路を有さない遷移制御部を示す図である。
遷移制御部20aは、図1に示した遷移禁止回路26を有していない。そのため、比較器22が出力した遷移可否{fi}がそのままセレクタ23に供給されている。
ただし、遷移制御部20aは、前述したオフセット加算回路24とオフセット制御回路25とを有していることにより、以下のような効果が得られる。
現在の状態が局所解に捕まってなかなか脱出できない状態にあるとき、全ての状態遷移に対するエネルギー変化値は大きな正の値である。このときの各状態遷移に対する許容確率はメトロポリス法であってもギブス法であっても、以下の式4−1,4−2に示すように、ほぼ指数関数で表される。
Figure 0006923790
Figure 0006923790
全ての状態遷移の可否判定において、エネルギー変化値{−ΔE}にオフセット値yを加えて判定を行うとすると、全ての状態遷移の許容確率は以下の式5のようになり、全ての状態遷移の許容確率が同じ倍率ey/Tで大きくなることがわかる。
Figure 0006923790
前述のように、全ての状態遷移の許容確率の相対比を保ったまま許容確率の絶対値を増大することができれば、その後の状態遷移の分岐比を変化させることなく、局所解での滞在時間を短縮することができる。そのため、オフセット値yを用いることで局所解からの脱出促進が期待できる。しかしこのオフセット値yを適切に制御しなければ、加速効果が十分ではなかったり、収束性を悪化させてしまったりする可能性がある。
まず、現在の状態が局所解でないときには、エネルギーの下がる状態遷移があるため、遷移確率は指数関数では近似できない。このためオフセット値yがあると分岐比を変えてしまう。このため局所解でないときは、オフセット値yは0であるか十分小さいことが望ましい。
また現在の状態が局所解であるときのオフセット値yが一定の値であると加速効果はあるものの必ずしも十分でない。状態遷移に伴うエネルギーの増加が大きいものばかりであるとオフセット値yを与えても遷移確率は非常に小さいままである。オフセット値yを与えてもなかなか局所解を脱出できない場合には、さらに大きなオフセット値yを用いることが望ましい。
これを解決するため、図1のオフセット制御回路25は、状態遷移が起こらないときオフセット値yを少しずつ増やし、状態遷移が起こった場合に、オフセット値yを0にリセットする構成となっている。
状態が局所解に留まっていると次第にオフセット値yが大きくなるため、いつかは必ず脱出することができる。また、状態が局所解でないときは状態遷移に伴うリセットが頻繁に起こるためオフセット値yは0または小さい値であり、分岐比に大きな影響を及ぼさないようにすることが可能となる。
オフセット増分値Δyも適切に選ぶことが望ましい。オフセット増分値Δyを大きくした方が局所解から早く脱出できる。しかしあまり大きくすると、局所解でないときも必ずしも毎回状態遷移が起こるとは限らないためオフセット値yの影響を受ける可能性がある。また、局所解においても比較的エネルギーの増加が少なく許容確率が高くなるべき状態遷移が候補に挙がる前にオフセット値yが大きくなってしまい、分岐比が正しい値からずれてしまう可能性がある。分岐比に大きな影響を及ぼさないためには、局所解における平均滞在時間が局所解でないときの平均滞在時間の数倍程度になるようにするのがよいと思われる。
以上のことからオフセット増分値Δyを適切に選べば、収束性に悪影響を及ぼすことなく局所解での滞在時間を短縮することが可能となり、最適化の計算時間の短縮が可能となることがわかる。
しかしながら、オフセット加算回路24とオフセット制御回路25により、局所解からの脱出が促進され、局所解からの脱出に向けた状態遷移が行われる場合でも、一度の状態遷移では局所解から抜け切れず、元の状態に戻ってしてしまう可能性がある。
図4は、比較例の遷移制御部を用いた場合の状態遷移の一例の様子を示す図である。縦軸はエネルギーを示し、横軸は状態(各状態変数の値の組み合わせ)を示している。
多くの最適化問題では、図4に示すように、状態が局所解から脱出して最適解へ向かうために、エネルギーが高くなる方向に複数回の状態遷移を行う必要がある。比較例の遷移制御部20aを用いた場合、エネルギーが高くなる方向への状態遷移が起こりやすくなるが、一旦状態遷移が起こることでオフセット値yが0にリセットされるため、それ以上はエネルギーが高くなる方向への状態遷移が促進されない。そのため、たいていの場合、一旦高いエネルギーに上がった状態は、すぐに元の状態に戻ってしまう。その結果、状態が、ポテンシャルの山を乗り越えて最適解に到達するためには非常に長い時間がかかってしまう可能性がある。
図5は、第1の実施の形態の遷移制御部を用いた場合の状態遷移の一例の様子を示す図である。縦軸はエネルギーを示し、横軸は状態(各状態変数の値の組み合わせ)を示している。
図1の遷移制御部20では、上記の遷移禁止回路26の機能によって、図4に示すように直近の状態に戻る状態遷移が禁止されるため、状態は、現在の状態にとどまるか(状態遷移が起こらない)、エネルギーが高くなる方向へ状態遷移するかの何れかになる。
これにより、遷移制御部20を用いることで、比較例の遷移制御部20aを用いた場合よりも、局所解から脱出しやすくなり、最適化問題の計算時間を短縮できる。なお、擬似焼き鈍し法において、ある状態遷移を禁止するようにした場合、収束性を簡単に証明できる条件を満たさなくなるが、必ずしも収束性が悪くなるわけではない(後述のソフトウェアシミュレーションによる検証を参照)。
なお、図1の例では、遷移禁止回路26は、比較器22とセレクタ23の間に設けられているが、これに限定されず、セレクタ23の後段に設けてもよい。その場合、遷移禁止回路26は、遷移番号Nが前回の遷移番号Nと同じ場合には、遷移可否fを0にすることで、直近の状態に戻る状態遷移を禁止する。
ただ、図1のように遷移禁止回路26は、比較器22とセレクタ23の間に設けることで、遷移確率が下がることを抑制できる。遷移禁止回路26をセレクタ23の後段に設けた場合、遷移番号Nが前回の遷移番号Nと同じであるときには遷移可否fが0になり、何れの状態変数の状態遷移も生じなくなるためである。
なお、遷移禁止回路26は、前回変化した状態変数の変化だけでなく、前々回(またはそれ以前)に変化した状態変数の変化についても禁止するようにしてもよい。
ところで、本実施の形態の最適化装置は、上記のように疑似焼き鈍し法を実現する図14の遷移制御部14に図1に示したような新たな要素を加えることにより、計算時間の短縮を図るものである。その他の部分には何ら変更を加えなくてよい。したがって、現在の状態に対して許されうる状態遷移の集合や、状態遷移に伴うエネルギーの変化を与える関数形やその計算方法等にはまったく依存せずに、上記のような遷移制御部20を有する最適化装置を適用することができる。したがって、これらの部分の具体的な回路構成等については詳しく説明しない。
ただし、最適化するエネルギーがイジングモデルで表される場合の疑似焼き鈍し法について、また、それとほとんど等価であるボルツマンマシンにおける最適化において、遷移候補の発生及び状態遷移に伴うエネルギーの変化の計算法を簡単に説明する。
イジングモデルは、お互いに相互作用を行うN個のスピンからなる系を表すモデルであり、各スピンsは±1の2値をとる。系のエネルギーは、以下の式6で表される。
Figure 0006923790
式6において、Ji,jは、スピンsとスピンs間の相互作用係数を示し、hは、系のバイアス値である外部磁場係数を示す。
現在の状態から次の状態への状態遷移の候補は、1つのスピンの反転であり、N通り存在する。したがって遷移候補としては反転する1つのスピン番号または複数のスピンの番号の集合を発生させればよい。
そしてi番目のスピン反転に伴うエネルギーの変化は、以下の式7で表される。
Figure 0006923790
ここで、以下の式8のFは、ローカルフィールド(局所場)値と呼ばれ、各スピンの反転によるエネルギー変化の割合を表している。
Figure 0006923790
状態遷移を許容するかどうかはエネルギーの変化で決まるため、基本的にはエネルギーそのものを計算せずにローカルフィールド値からエネルギーの変化を計算すれば十分である。出力として得られた最低エネルギーに対する状態を用いる場合には、ローカルフィールド値からエネルギーの変化を計算しそれを累算していくことでエネルギーを求めることができる。
さらに、
Figure 0006923790
であるから、ローカルフィールド値を行列演算により毎回計算し直す必要はなく、状態遷移に伴って反転のあったスピンによる変化分だけ加算すればよい。このため、図14に示した状態保持部11は、N個のスピンの値を保持するNビットレジスタと加算器、排他的論理和回路等の比較的簡単な演算回路を用いて実現できる。
また、ニューラルネットワークに用いられるボルツマンマシンは、状態変数が(0,1)の2値をとることを除いてイジングモデルの疑似焼き鈍し法と同じである。このためほとんど同様の構成とすることができる。エネルギー、エネルギーの変化値、ローカルフィールド値は、以下の式10、式11、式12のように表せる。
Figure 0006923790
Figure 0006923790
Figure 0006923790
なお、ボルツマンマシンではイジングモデルのスピンに相当するものをニューロンと呼ぶことが多いが簡単のため以下ではスピンと呼ぶ。
上記のようにイジングモデルを用いた疑似焼き鈍し法とボルツマンマシンを用いた疑似焼き鈍し法は同等であり、お互いに相互変換できるので、以下では論理回路の0,1と対応の付けやすいボルツマンマシンを想定して説明を行う。
なおボルツマンマシン(及びイジングモデルの疑似焼き鈍し法)においては、状態遷移に伴い変化する状態変数は1つだけであり、それに対するエネルギー変化値はローカルフィールド値を用いて予め計算しておくことができる。したがって以下の実施の形態では予め計算しておいたエネルギー変化値を遷移候補の発生に応じて選択する形式の実装を例に説明している。しかしながら、ボルツマンマシンでないときは、複数の状態変数が変化する遷移を考える場合もあるため、遷移候補の発生後に必要なエネルギー変化値を計算するような実装が有利になる場合もある。
(第2の実施の形態)
図6は、第2の実施の形態の最適化装置における遷移制御部の回路構成の一例を示す図である。図1に示した遷移制御部20と同じ要素については同一符号が付されている。図6の遷移制御部30は、基本的に図1の遷移制御部20と同じであるが、累算器31と、遷移禁止回路32が、回路レベルで示されている。
なお、図6でも、乱数値を発生する回路については図示が省略されている。以下、図6の遷移制御部30は各状態変数(以下ビットという)の変化(ビット反転(スピンの値の変化))を全て状態遷移の候補とするものとして説明するが、各ビット反転の一部のみを状態遷移の候補とすることも可能である。また、以下の説明では、熱励起のために用いる乱数値を、各遷移候補に対して独立とするが、いくつかの状態遷移の候補に対して共通としてもよい。
累算器31は、加算器31a、セレクタ31b、レジスタ31cを有する。
加算器31aは、オフセット増分値Δyと、レジスタ31cが出力するオフセット値yとを加算した和を出力する。
セレクタ31bは、遷移可否fが1であるとき、0を選択して出力し、遷移可否fが0であるとき、加算器31aが出力する加算結果を選択して出力する。
レジスタ31cは、クロック端子に供給されるパルス信号に同期して、セレクタ31bが出力する値を取り込み、オフセット値yとして出力する。
加算器31aとレジスタ31cのビット幅は、適切に設定される。ビット幅は、エネルギー変化値(−ΔE)のビット幅と同程度でよい。例えば相互作用係数のビット幅を16、スピン数を1024とした場合、エネルギー変化値(−ΔE)は最大27ビットとなるのでこのビット幅を用いれば十分である。実際にはこれより少なくても十分である場合がほとんどである。熱励起エネルギー生成部21が有するノイズテーブルの出力のビット幅もエネルギー変化値(−ΔE)のビット幅と同程度以下でよい。
レジスタ31cのクロック端子に供給されるパルス信号は、回路動作における反復動作をコントロールするステートマシンより供給され、1回の反復における状態遷移の可否が確定した後に、一度だけアクティブになるように制御される。
可否判定とその後に続く各パラメータの更新に必要なクロック信号のサイクル数は可否判定結果に依存して変化するため、パルス信号もこのサイクル数に合うように発生される。
以下では、状態の更新があった場合は5サイクル、なかった場合は1サイクルで次の反復に入る場合を例としてパルス信号の発生方法の説明を行う。
図7は、パルス信号の発生の状態遷移の一例を示す状態遷移図である。
図7に示すように、0〜4の5つの状態間で、状態遷移が行われる。状態0のとき、遷移可否fが0である場合、パルス信号が発生される。この場合、状態0からの状態遷移は行われない。状態0のとき、遷移可否fが1である場合、状態1に状態遷移する。図7において、D.C.は、ドントケアを示している。つまり、状態1からは、遷移可否fの値によらずクロック信号CLKに同期して、状態2、状態3、状態4へと状態遷移し、状態0へと戻る。そして状態4から状態0に戻る際に、パルス信号が発生される。
このような状態遷移を実現するためのステートマシンは、以下の真理値表を満たす回路とすればよい。
図8は、パルス信号を発生する論理回路の真理値表の一例を示す図である。
また、図9は、パルス信号を発生するステートマシンの一例を示す図である。
ステートマシン40は、3ビットフリップフロップ41、インクリメント回路42、AND回路43、セレクタ44、AND回路45,46を有している。図8の真理値表は、各状態の3ビットフリップフロップ41の出力値Q1,Q2,Q3と、入力値D1,D2,D3の関係を示すものである。
3ビットフリップフロップ41には、インクリメント回路42が出力する3ビットの値のうち、上位2ビット([d0:d1])と、セレクタ44が出力する値が、入力値D1〜D3として供給される。3ビットフリップフロップ41は、クロック信号CLKに同期したタイミングで、入力値D1〜D3を取り込み、出力値Q1〜Q3として出力する。
インクリメント回路42は、3ビットフリップフロップ41が出力する3ビットの出力値Q1〜Q3を+1する。例えば、出力値Q1〜Q3が、“001”(つまりQ1=Q2=0、Q3=1)である場合、インクリメント回路42は、“010”を出力する。
AND回路43は、出力値Q1〜Q3の各ビットの論理レベルを反転した値を入力し、それらの論理積を出力値として出力する。
セレクタ44の一方の入力端子には、インクリメント回路42が出力する3ビットの値の最下位ビット(d2)が供給され、他方の入力端子には、遷移可否fが供給される。そして、セレクタ44は、AND回路43の出力値が1であれば、遷移可否fを出力し、AND回路43の出力値が0であれば、d2を出力する。
AND回路45は、出力値Q1〜Q3の3ビット([q1:q3])の各ビットの論理レベルを反転した値を入力し、それらの論理積を出力値として出力する。
AND回路46は、クロック信号CLKと、AND回路45が出力する出力値との論理積を、パルス信号として出力する。
以上のようなステートマシン40でパルス信号を生成することができる。
図6の遷移禁止回路32は、遷移番号Nを保持する保持部の一例であるレジスタ32aと、デコーダ32bと、遷移禁止部32cを有する。
レジスタ32aは、図示しないクロック信号に同期したタイミングで、セレクタ23が出力する遷移番号Nを取り込んで記憶し、出力する。遷移番号Nが0〜1024である場合には、レジスタ32aのビット幅は、10ビットである。なお、以下では、セレクタ23が出力する遷移番号Nと区別するために、レジスタ32aが出力する遷移番号を遷移番号Np1と表記する。
デコーダ32bは、レジスタ32aが出力する遷移番号Np1をデコードして、n個のビットのうち、遷移番号Np1に対応したビットの遷移可否{fia}を0にするためのデコード信号を出力する。
遷移番号N,Np1が0〜1024である場合には、デコーダ32bは、1024ビットのデコード信号を出力する。例えば、デコーダ32bは、1024ビットのうち、遷移番号Np1に対応したデコード信号のビットを0とし、デコード信号のその他のビットを1とする。
遷移禁止部32cは、デコード信号に基づいて、遷移番号Np1に対応したビットの遷移可否{fia}を0にする。図6の例では、遷移禁止部32cは、インバータ32ca1,32ca2,…,32can、AND回路32cb1,32cb2,…,32cbnを有する。インバータ32ca1〜32canとAND回路32cb1〜32cbnのそれぞれは、n個のビットのそれぞれに対応して設けられている。例えば、インバータ32ca1、AND回路32cb1は、n個のビットのうち1番目のビットに対応付けられている。AND回路32cb1の一方の入力端子には、1番目のビットの遷移可否{fi}が入力され、他方の入力端子には、1番目のビットの遷移可否{fia}を0または1にするためのデコード信号がインバータ32ca1を介して入力される。AND回路32cb1の出力信号は、1番目のビットの遷移可否{fia}として出力される。
以下、遷移禁止回路32の動作例を説明する。
セレクタ23が前回出力した遷移番号Nが2である場合、レジスタ32aは遷移番号Np1として2を出力する。このとき、デコーダ32bは、インバータ32ca1〜32canのうち、インバータ32ca2に1を供給し、その他には0を供給する。これにより、AND回路32b2の出力信号は、今回比較器22から出力される遷移番号N=2に対応したビットの遷移可否{fi}の値によらず、0となる。このため、遷移番号N=2の状態遷移は続けて発生しない。これにより、同じビットが続けて変化することがなくなり、直近の状態に戻る状態遷移が発生しない。
遷移制御部30のその他の動作については、第1の実施の形態の遷移制御部20と同じであり、第2の実施の形態の最適化装置は、第1の実施の形態の最適化装置と同様の効果を有する。
(第3の実施の形態)
図10は、第3の実施の形態の最適化装置における遷移制御部の回路構成の一例を示す図である。図6に示した遷移制御部30と同じ要素については同一符号が付されている。
第3の実施の形態の最適化装置における遷移制御部50は、図6に示した遷移制御部30と異なり、前回遷移したビットの遷移だけでなく、前々回に遷移したビットの遷移についても禁止する遷移禁止回路51を有する。
遷移禁止回路51は、レジスタ51a1,51a2、デコーダ52b1,52b2、遷移禁止部52cを有する。
レジスタ51a1は、図示しないクロック信号に同期したタイミングで、セレクタ23が出力する遷移番号Nを取り込んで記憶し、遷移番号Np1として出力する。レジスタ51a2は、図示しないクロック信号に同期したタイミングで、レジスタ51a1が出力する遷移番号Np1を取り込んで記憶し、遷移番号Np2として出力する。遷移番号N,Np1,Np2が0〜1024である場合には、レジスタ51a1,51a2のビット幅は、10ビットである。
デコーダ52b1は、レジスタ51a1が出力する遷移番号Np1をデコードして、n個のビットのうち、その遷移番号Np1に対応したビットの遷移可否{fia}を0にするためのデコード信号を出力する。デコーダ52b2は、レジスタ51a2が出力する遷移番号Np2をデコードして、n個のビットのうち、その遷移番号Np2に対応したビットの遷移可否{fia}を0にするためのデコード信号を出力する。
遷移番号N,Np1,Np2が0〜1024である場合には、デコーダ52b1,52b2は、1024ビットのデコード信号を出力する。例えば、デコーダ52b1は、1024ビットのうち、遷移番号Np1に対応したデコード信号のビットを0とし、デコード信号のその他のビットを1とする。また、デコーダ52b2は、1024ビットのうち、遷移番号Np2に対応したデコード信号のビットを0とし、デコード信号のその他のビットを1とする。
遷移禁止部52cは、デコーダ52b1,52b2が出力するデコード信号に基づいて、遷移番号Np1,Np2に対応したビットの遷移可否{fia}を0にする。
図10の例では、遷移禁止部52cは、インバータ52ca1,52ca2,…,52can,52cb1,52cb2,…,52cbn、AND回路52cc1,52cc2,…,52ccnを有する。インバータ52ca1〜52can,52cb1〜52cbnとAND回路52cc1〜52ccnのそれぞれは、n個のビットのそれぞれに対応して設けられている。例えば、インバータ52ca1,52cb1、AND回路52cc1は、n個のビットのうち1番目のビットに対応付けられている。AND回路52cc1の3つの入力端子の1つ目には、1番目のビットの遷移可否{fi}が入力される。AND回路52cc1の3つの入力端子の2つ目には、デコーダ52b1が出力し、1番目のビットの遷移可否{fia}を0または1にするためのデコード信号が、インバータ52ca1を介して入力される。AND回路52cc1の3つの入力端子の3つ目には、デコーダ52b2が出力し、1番目のビットの遷移可否{fia}を0または1にするためのデコード信号が、インバータ52cb1を介して入力される。AND回路52cc1の出力信号は、1番目のビットの遷移可否{fia}として出力される。
以下、遷移禁止回路51の動作例を説明する。
セレクタ23が前回出力した遷移番号Nが2であり、セレクタ23が前々回出力した遷移番号Nが1である場合、レジスタ51a1は遷移番号Np1として2を出力し、レジスタ51a2は遷移番号Np2として1を出力する。このとき、デコーダ52b1は、インバータ52ca1〜52canのうち、インバータ32ca2に1を供給し、その他には0を供給する。また、デコーダ52b2は、インバータ52ca1〜52canのうち、インバータ32ca1に1を供給し、その他には0を供給する。これにより、AND回路52cc1,52cc2の出力信号は、比較器22が出力する遷移番号N=1,2に対応したビットの遷移可否{fi}の値によらず、0となる。このため、遷移番号N=2の状態遷移は続けて発生しないとともに、2つ前の状態遷移(遷移番号N=1の状態遷移)も発生しない。
遷移制御部50のその他の動作については、第1の実施の形態の遷移制御部20と同じであり、第3の実施の形態の最適化装置は、第1の実施の形態の最適化装置と同様の効果を有する。さらに、第3の実施の形態の最適化装置は、上記のような遷移禁止回路51を用いることで、直近の状態に戻る遷移だけでなく、前々回に遷移したビットの状態遷移についても禁止されるため、より新しい状態遷移の発生が促進される。
なお、上記では、前回遷移したビットの遷移と、前々回に遷移したビットの遷移についても禁止する遷移禁止回路51を設けた例を示したが、前々回より前に遷移したビットの遷移についても禁止するようにしてもよい。そのような遷移禁止回路は、レジスタやデコーダ等を適宜増やすことで実現可能である。
図11は、図3、図6及び図10の遷移制御部を用いて実現される疑似焼き鈍し法のソフトウェアシミュレーション結果の一例を示す図である。最適化する問題は32都市の巡回セールスマン問題をイジングモデル(ボルツマンマシン)により定式化したものである。横軸は反復回数、縦軸は最適解到達率(最適解が得られた割合)[%]を表している。
結果60は、図3の遷移制御部20aを用いたときの、反復回数と最適解到達率との関係を示し、結果61は、図6に示した遷移制御部30を用いたときの、反復回数と最適解到達率との関係を示す。また、結果62は、図10に示した遷移制御部50を用いたときの、反復回数と最適解到達率との関係を示す。
図11から、図3に示した比較例の遷移制御部20aを用いた場合よりも、図6に示した第2の実施の形態の遷移制御部30を用いた場合のほうが、早く最適解に達することがわかる。また、図10に示した第3の実施の形態の遷移制御部50を用いた場合、さらに早く最適解に達することがわかる。
(第4の実施の形態)
図12は、第4の実施の形態の最適化装置における遷移制御部の回路構成の一例を示す図である。図1に示した遷移制御部20と同じ要素については同一符号が付されている。
第4の実施の形態の最適化装置における遷移制御部70は、図1に示した遷移制御部20と異なり、比較器22とセレクタ23の間ではなく、セレクタ23の後段に設けられた遷移禁止回路71を有する。
遷移禁止回路71は、遷移番号Nを保持する保持部の一例であるレジスタ71a、XOR(排他的論理和)回路部71b、AND回路71cを有する。
レジスタ71aは、図示しないクロック信号に同期したタイミングで、セレクタ23が出力する遷移番号Nを取り込んで記憶し、遷移番号Np1として出力する。遷移番号N,Np1が0〜1024である場合には、レジスタ71aのビット幅は、10ビットである。
XOR回路部71bは、図6のデコーダ32bと同様の機能を実現するものであり、レジスタ71aが出力する遷移番号Np1に対応したビットの遷移可否fを0にするための信号(デコード信号に相当する)を出力する。XOR回路部71bは、レジスタ71aが出力する遷移番号Np1が、今回セレクタ23が出力する遷移番号Nと一致している場合には、0を出力し、両者が異なっている場合には1を出力する。XOR回路部71bは、例えば、レジスタ71aの入出力の各ビットのXOR結果を出力する複数の2入力XOR回路と、複数のXOR結果の論理和を出力するOR回路を用いて実現できる。
なお、以下では、遷移制御部70が出力する遷移可否fと区別するために、セレクタ23が出力する遷移可否を遷移可否fiと表記する。
AND回路71cは、図6の遷移禁止部32cと同様の機能を実現するものであり、XOR回路部71bが出力する信号に基づいて、遷移番号Np1に対応したビットの遷移可否fを0にする。AND回路71cの一方の入力端子には、セレクタ23が出力する遷移可否fiが入力され、他方の入力端子には、XOR回路部71bが出力する信号が入力される。AND回路71cの出力信号は、遷移可否fとして遷移制御部70から出力される。
以下、上記のような遷移制御部70の動作例を説明する。
前述した各反復において、熱励起エネルギー生成部21は、状態遷移の候補の数と等しい独立な一様乱数である乱数値{ui}を受け、ノイズテーブルを用いて逆関数f−1(u)の値に変換を行う。そして熱励起エネルギー生成部21は、変換で得られた値に共通の温度値Tを乗算することにより、メトロポリス法またはギブス法における熱励起エネルギーを生成する。
遷移候補ごとに生成された熱励起エネルギーから、減算器24aによって、累算器25aが出力するオフセット値yが減ぜられ、比較器22で、減算器24aが出力する各減算結果と、エネルギー変化値{−ΔE}とが比較される。比較器22は、比較結果に基づいて、各状態遷移の可否を示す遷移可否{fi}を出力する。
セレクタ23は、乱数値を用いて、複数の状態遷移の何れか1つをランダムに選択し、選択した状態遷移の遷移可否{fi}を遷移可否fiとして出力する。遷移が可である場合には遷移可否fiは1となり、遷移が否である場合には、遷移可否fiは0となる。また、セレクタ23は、選択した状態遷移を示す遷移番号Nを出力する。
遷移禁止回路71において、XOR回路部71bは、セレクタ23から前回と同じ遷移番号Nが出力された場合には0を出力し、AND回路71cは、遷移可否fとして0を出力し、前回と同じビットが変化することを禁止する。つまり、直近の状態に戻る遷移が禁止される。
遷移制御部70のその他の動作については、第1の実施の形態の遷移制御部20と同じである。第4の実施の形態の最適化装置は、第1または第2の実施の形態の最適化装置と比べて、遷移確率は下がるものの、直近の状態に戻る遷移が禁止されるので、第1または第2の実施の形態の最適化装置と同様の効果が得られる。さらに、第4の実施の形態の最適化装置は、図12に示すように遷移禁止回路71を、図6に示したような遷移禁止回路32よりもシンプルな構成とすることができるため、回路規模を削減できる。
(第5の実施の形態)
図13は、第5の実施の形態の最適化装置における遷移制御部の回路構成の一例を示す図である。図12に示した遷移制御部70と同じ要素については同一符号が付されている。
第5の実施の形態の最適化装置における遷移制御部80は、図12に示した遷移制御部70と異なり、前回遷移したビットの遷移だけでなく、前々回に遷移したビットの遷移についても禁止する遷移禁止回路81を有する。
遷移禁止回路81は、レジスタ81a1,81a2、XOR回路部81b1,81b2、AND回路81cを有する。
レジスタ81a1は、図示しないクロック信号に同期したタイミングで、セレクタ23が出力する遷移番号Nを取り込んで記憶し、遷移番号Np1として出力する。レジスタ81a2は、図示しないクロック信号に同期したタイミングで、レジスタ81a1が出力する遷移番号Np1を取り込んで記憶し、遷移番号Np2として出力する。遷移番号N,Np1,Np2が0〜1024である場合には、レジスタ81a1,81a2のビット幅は、10ビットである。
XOR回路部81b1は、レジスタ81a1が出力する遷移番号Np1に対応したビットの遷移可否fを0にするための信号を出力する。XOR回路部81b1は、N=Np1の場合に0を出力し、N=Np1ではない場合に1を出力する。
XOR回路部81b2は、レジスタ81a2が出力する遷移番号Np2に対応したビットの遷移可否fを0にするための信号を出力する。XOR回路部81b2は、N=Np2の場合に0を出力し、N=Np2ではない場合に1を出力する。
AND回路81cは、XOR回路部81b1,81b2が出力する信号に基づいて、遷移番号Np1,Np2に対応したビットの遷移可否fを0にする。AND回路81cの3つの入力端子の1つ目には、セレクタ23が出力する遷移可否fiが入力される。AND回路81cの3つの入力端子の2つ目には、XOR回路部81b1の出力信号が入力され、3つ目には、XOR回路部81b2の出力信号が入力される。AND回路81cの出力信号が、遷移制御部80が出力する遷移可否fとなる。
以下、遷移禁止回路81の動作例を説明する。
セレクタ23が前回出力した遷移番号Nが2であり、セレクタ23が前々回出力した遷移番号Nが1である場合、レジスタ81a1は遷移番号Np1として2を出力し、レジスタ81a2は遷移番号Np2として1を出力する。XOR回路部81b1は、セレクタ23が今回出力する遷移番号Nが、N=Np1=2である場合には0を出力する。また、XOR回路部81b2は、セレクタ23が今回出力する遷移番号Nが、N=Np2=1である場合には0を出力する。
このため、セレクタ23が今回出力する遷移番号Nが、1または2である場合には、遷移可否fiの値によらず、AND回路81cが出力する遷移可否fは0となる。このため、遷移番号N=2の状態遷移は続けて発生しないとともに、2つ前の状態遷移(遷移番号N=1の状態遷移)も発生しない。
遷移制御部80のその他の動作については、第4の実施の形態の遷移制御部70と同じであり、第5の実施の形態の最適化装置は、第4の実施の形態の最適化装置と同様の効果を有する。さらに、第の実施の形態の最適化装置は、上記のような遷移禁止回路81を用いることで、直近の状態に戻る遷移だけでなく、前々回に遷移したビットの状態遷移についても禁止されるため、より新しい状態遷移の発生が促進される。
なお、上記では、前回遷移したビットの遷移と、前々回に遷移したビットの遷移についても禁止する遷移禁止回路81を設けた例を示したが、前々回より前に遷移したビットの遷移についても禁止するようにしてもよい。そのような遷移禁止回路は、レジスタやデコーダ等を適宜増やすことで実現可能である。
以上、実施の形態に基づき、本発明の最適化装置及び最適化装置の制御方法の一観点について説明してきたが、これらは一例にすぎず、上記の記載に限定されるものではない。
20 遷移制御部
21 熱励起エネルギー生成部
22 比較器
23 セレクタ
24 オフセット加算回路
25 オフセット制御回路
26 遷移禁止回路

Claims (7)

  1. エネルギーを表す評価関数に含まれる複数の状態変数の値をそれぞれ保持する状態保持部と、
    前記複数の状態変数の値の何れかが変化することに応じて状態遷移が起こる場合、前記エネルギーの変化値を複数の状態遷移のそれぞれに対して計算するエネルギー計算部と、
    温度を示す温度値を制御する温度制御部と、
    前記温度値と前記変化値と熱励起に関係する乱数値とに基づいて、前記変化値と熱励起エネルギーとの相対関係によって前記複数の状態遷移の何れかを受け入れるか否かを確率的に決定する際、前記変化値にオフセット値を加えるとともに、前記エネルギーが極小となる局所解における前記オフセット値を、前記エネルギーが極小ではない場合と比較して大きくなるように制御するとともに、前回発生した状態遷移を示す第1の遷移情報を保持し、保持した前記第1の遷移情報の第1のデコード結果に基づいて、現在の状態遷移候補のうち直近の状態に戻る状態遷移である第1の状態遷移を禁止する遷移制御部と、
    を有することを特徴とする最適化装置。
  2. 前記遷移制御部は、
    メトロポリス法またはギブス法で表され、前記乱数値に応じた前記複数の状態遷移の許容確率を示す関数の逆関数の複数の値のそれぞれと、前記温度値とを乗算した複数の積で表される前記熱励起エネルギーを出力する熱励起エネルギー生成部と、
    前記複数の状態遷移のそれぞれに対して計算された前記変化値と、前記オフセット値とを加算した複数の和のそれぞれと、前記複数の積のそれぞれとの比較結果に相当する複数の値で表される、前記複数の状態遷移のそれぞれを受け入れるか否かの複数の第1の判定結果を出力する比較器と、
    前記第1のデコード結果に基づいて、前記複数の第1の判定結果のうち、前記第1の遷移情報に対応する前記第1の状態遷移を除いたものを受け入れることを示す複数の第2の判定結果を出力する遷移禁止回路と、
    前記複数の状態遷移のうち何れか1つの状態遷移を示す遷移情報を出力するとともに、前記複数の第2の判定結果に基づいて、前記1つの状態遷移を受け入れるか否かを示す値を出力するセレクタと、
    を有することを特徴とする請求項1に記載の最適化装置。
  3. 前記遷移禁止回路は、前記第1の遷移情報を保持する保持部と、前記保持部に保持された前記第1の遷移情報をデコードした前記第1のデコード結果を出力するデコーダと、前記第1のデコード結果に基づいて前記複数の第2の判定結果を出力する遷移禁止部と、
    を有することを特徴とする請求項に記載の最適化装置。
  4. 前記遷移制御部は、
    メトロポリス法またはギブス法で表され、前記乱数値に応じた前記複数の状態遷移の許容確率を示す関数の逆関数の複数の値のそれぞれと、前記温度値とを乗算した複数の積で表される前記熱励起エネルギーを出力する熱励起エネルギー生成部と、
    前記複数の状態遷移のそれぞれに対して計算された前記変化値と、前記オフセット値とを加算した複数の和のそれぞれと、前記複数の積のそれぞれとの比較結果に相当する複数の値で表される、前記複数の状態遷移のそれぞれを受け入れるか否かの複数の第1の判定結果を出力する比較器と、
    前記複数の状態遷移のうち何れか1つの状態遷移を示す遷移情報を出力するとともに、前記複数の第1の判定結果に基づいて、前記1つの状態遷移を受け入れるか否かを示す値とを出力するセレクタと、
    前記遷移情報が前記第1の遷移情報と一致する場合に、前記1つの状態遷移である前記第1の状態遷移を受け入れないことを示す値を出力する遷移禁止回路と、
    を有することを特徴とする請求項1に記載の最適化装置。
  5. 前記遷移禁止回路は、前記第1の遷移情報を保持する保持部と、前記第1の遷移情報と、前記セレクタが出力した前記遷移情報とが一致しているか否かを示す前記第1のデコード結果を出力する排他的論理和回路部と、前記第1のデコード結果に基づいて、前記遷移情報と前記第1の遷移情報とが一致する場合に、前記第1の状態遷移を受け入れないことを示す前記値を出力する論理積回路と、
    を有することを特徴とする請求項に記載の最適化装置。
  6. 前記遷移制御部は、前回より前に発生した第2の状態遷移を示す第2の遷移情報を保持し、保持した前記第2の遷移情報の第2のデコード結果に基づいて前記の状態遷移の遷移元の状態へ戻る状態遷移を禁止する、
    ことを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の最適化装置。
  7. 最適化装置の制御方法において、
    前記最適化装置が有する状態保持部が、エネルギーを表す評価関数に含まれる複数の状態変数の値をそれぞれ保持し、
    前記最適化装置が有するエネルギー計算部が、前記複数の状態変数の値の何れかが変化することに応じて状態遷移が起こる場合、前記エネルギーの変化値を複数の状態遷移のそれぞれに対して計算し、
    前記最適化装置が有する温度制御部が、温度を示す温度値を制御し、
    前記最適化装置が有する遷移制御部が、前記温度値と前記変化値と熱励起に関係する乱数値とに基づいて、前記変化値と熱励起エネルギーとの相対関係によって前記複数の状態遷移の何れかを受け入れるか否かを確率的に決定する際、前記変化値にオフセット値を加えるとともに、前記エネルギーが極小となる局所解における前記オフセット値を、前記エネルギーが極小ではない場合と比較して大きくなるように制御するとともに、前回発生した状態遷移を示す第1の遷移情報を保持し、保持した前記第1の遷移情報の第1のデコード結果に基づいて、現在の状態遷移候補のうち直近の状態に戻る状態遷移である第1の状態遷移を禁止する、
    ことを特徴とする最適化装置の制御方法。
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