以下、図面を参照して本実施の形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態における画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。図2は、本実施の形態における画像形成装置1の制御系の主要部を示す。
本実施の形態の画像形成装置1は、用紙Sとして長尺紙または非長尺紙を使用し、当該用紙Sに画像を形成する。
本実施の形態において、長尺紙は、一般に良く用いられるA4サイズ、A3サイズ等の用紙よりも搬送方向の長さが長い枚葉紙であり、機内の給紙トレイユニット51a〜51cに収容できない長さを有する。以下、単に「用紙」という場合、長尺紙および非長尺紙の両方が含まれ得る。
画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙に二次転写することにより、トナー像を形成する。
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60、および制御部100等を備える。
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
制御部100は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部100は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙にトナー像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿またはコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21および操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部100の制御下で、記憶部72内の階調補正データ(階調補正テーブルLUT)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示す。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415等を備える。
感光体ドラム413は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
制御部100は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度(線速度)で回転させる。
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。これにより、感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
現像装置412は、例えば二成分現像方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるクリーニング部材等を有する。ドラムクリーニング装置415は、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーをクリーニングブレードによって除去する。
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
中間転写ベルト421は、無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
中間転写ベルト421、バックアップローラー423Bおよび二次転写ローラー424により形成される二次転写ニップは、本発明の「転写部」に対応する。
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の一次転写ローラー422と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
その後、用紙が二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙に二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙の二次転写ローラー424と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙に静電的に転写される。トナー像が転写された用紙は定着部60に向けて搬送される。
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接するベルトクリーニングブレード等を有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。
定着部60は、用紙の定着面側に配置される定着面側部材を有する上側定着部60A、用紙の定着面の反対の面側に配置される裏面側支持部材を有する下側定着部60B、及び加熱源60C等を備える。定着面側部材に裏面側支持部材が圧接されることにより、用紙を狭持して搬送する定着ニップが形成される。
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙を定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙にトナー像を定着させる。定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52および搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a〜51cには、坪量(剛度)やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53a等の複数の搬送ローラー、用紙の両面に画像形成するための両面搬送経路等を有する。レジストローラー対53aは、本発明の「用紙搬送部材」に対応する。
レジストローラー対53aは、制御部100の制御の下、用紙Sの幅方向における位置を補正する。具体的には、レジストローラー対53aに用紙Sが挟持されると、レジストローラー対53aが幅方向に移動して用紙Sを移動させるレジスト揺動の制御が行われることにより、用紙Sの幅方向における位置が補正される。かかるレジスト揺動の制御内容については後述する。
レジストローラー対53aは、用紙Sの幅方向における位置を補正した後、当該用紙Sがレジストローラー対53aを通過し終わる前、すなわち用紙Sの搬送途中で離間して、移動する前の位置に戻される。そして、レジストローラー対53aは、用紙Sの後端が通過した後、再度圧着される。
また、レジストローラー対53aにおける用紙Sの搬送速度は、制御部100の制御の下、バックアップローラー423Bと二次転写ローラー424とにより形成される二次転写ニップにおける用紙Sの搬送速度よりも速く設定される。
用紙搬送方向におけるレジストローラー対53aの下流側で二次転写ニップの上流側には、ラインセンサー54が配置されている。ラインセンサー54は、光電変換素子をライン状に配置したセンサーであり、用紙Sの幅方向の一方の端部(以下、側端という)を検出して、用紙Sの片寄り(基準位置からのずれ)を検知する役割を担う。
給紙トレイユニット51a〜51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aにより、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。
そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。なお、両面印刷時には、第一面への画像形成が行われた用紙Sは、両面搬送経路を通って表裏が反転された後、第二面にトナー像が二次転写および定着された後、排紙部52により機外に排紙される。
ところで、画像形成装置では、レジストローラーから二次転写ニップを経て定着ニップに至るまでのアライメントのずれによって、用紙の搬送方向が副走査方向に曲がってしまう現象(副走査曲がり)が発生する問題がある。かかる副走査曲がりは、上記のアライメントのずれの他、耐久等によりローラーの用紙幅方向(副走査方向)における両端側の径に差異(前奥差)がある場合にも発生しやすい。また、搬送方向のサイズが長い長尺紙は、上記の影響を受けやすいため、副走査曲がりが顕著に発生する。かかる副走査曲がりは二次転写ニップで転写される画像のずれや歪み等による画像不良を引き起こすことから、副走査曲がりを抑制する技術が求められている。
かかる問題に対して、従来は、ラインセンサーの読み値を用いて、すなわち該センサーで検知される用紙の幅方向端部位置を監視しながらレジストローラー対53aを揺動動作させ、リアルタイムで副走査曲がりを矯正する制御を行うものもある。かかる従来のレジスト揺動制御について、図3を参照して説明する。
図3は、用紙Sとして長尺紙を搬送する場合の従来のレジスト揺動の制御を説明する図であり、用紙の搬送方向を矢印Yで、ラインセンサー54で検知される用紙の基準端の位置を点線で、レジストローラー対53aの揺動方向を矢印Xで、各々示す。
図3Aは、転写ニップを形成するバックアップローラー423Bに用紙S(長尺紙)の先端が突入した後に用紙Sの後端側が左側に曲がった例を示している。この場合、制御部100は、用紙Sの曲がった方向および量をラインセンサー54の出力信号から検知し、かかる検知結果から、レジストローラー対53aの揺動方向および量を算出する。そして、制御部100は、かかる算出値に従って、図3Bに示すように、レジストローラー対53aを用紙搬送方向Yと直交するX方向に揺動させる制御を行う。
しかしながら、かかる従来のレジスト揺動制御によれば、用紙Sの搬送方向長さが長くなるほど、二次転写ニップ突入後におけるレジストローラー対53aの揺動動作を繰り返し行う必要があることから(図3B参照)、ラインセンサー54の照射時間が長くなり、ラインセンサー54の寿命が短くなる問題がある。
他方、副走査曲がりは、上述のように、アライメントや各ローラーの前奥差など、各々の機械における個体差によって、曲がり方や曲がり量が変わってくるが、画像形成装置1を部屋等に設置した後は、大きく崩れることは無く、各々の機械において一定の曲がり方や曲がり量になる。本発明者らは、かかる知見に基づいて種々の実験を行った結果、副走査曲がりの矯正を行うために、常にラインセンサー54による検知を行う必要は無く、予め定められた固定値(プリセット値)でレジストローラー対53aを揺動させることで、良好な効果が得られることを見出した。
その一方、固定値によるレジスト揺動は、基本的に、用紙Sの副走査曲がりが一定になることを前提とするものであり、実際の用紙搬送では若干の搬送バラツキが生じる場合があり、固定値だけのレジスト揺動制御では、かかる搬送バラツキにまで対応することは容易でないと考えられる。
そこで、本実施の形態では、制御部100は、レジストローラー対53aの揺動態様(動作内容)を規定するプリセット値を用いたレジスト揺動制御を行うとともに、画像形成条件に応じた所定タイミングで、プリセット値を補正する処理を行う。かかるプリセット値の補正処理は、用紙Sに対するプリセット値を用いたレジスト揺動の制御中に、ラインセンサー54により当該用紙Sの側端部の位置すなわち位置ずれ量を検出し、検出された位置ずれ量に基づいて行う。
まず、本実施の形態におけるレジスト揺動制御およびプリセット値の概要について説明する。本実施の形態では、制御部100は、ラインセンサー54を基本的に使用せず、用紙S上の画像の位置が正しくなるようなレジストローラー対53aの揺動態様を規定するプリセット値を用いて、レジスト揺動制御を行う。すなわち、制御部100は、上記のプリセット値を用いて、用紙Sを用紙搬送方向と直交する幅方向に揺動させるように、レジストローラー対53aを制御する。
ここで、プリセット値は、用紙Sがレジストローラー対53aによるニップ(レジストニップ)に突入された後から当該用紙Sがレジストニップを抜けるまでの、レジストローラー対53aの揺動動作の内容を設定するための値である。
したがって、プリセット値は、用紙Sの搬送方向先端が二次転写ニップに到達する前、および二次転写ニップに突入された後のいずれか一方または両方の状態におけるレジストローラー対53aの揺動態様が規定され得る。
また、プリセット値は、レジストローラー対53aの用紙幅方向への移動量を示す値が含まれる。かかる値は、移動の方向により、例えば、右方向の移動は正値、左方向の移動は負値で示される。
また、プリセット値は、レジストニップへの用紙Sの突入開始後においてレジストローラー対53aが用紙幅方向に移動するタイミング(揺動タイミング)を示す値が含まれる。かかる揺動タイミングは、一枚の用紙Sに対して複数設定されることができる。一枚の用紙Sに対して揺動タイミングが複数設定される場合、各タイミング間のインターバルは任意に設定されることができる。ここで、揺動タイミングは、レジストローラー対53aが幅方向への移動を行う時期(時間)を示す値であり、言い換えると、レジストローラー対53aが幅方向に移動する際の、レジストニップにより搬送された用紙S上の先端からの距離を表す値である。
そして、プリセット値は、揺動タイミングの各々におけるレジストローラー対53aの用紙幅方向における移動量を示す値が含まれる。ここで便宜のため、揺動タイミングを揺動ポイントと言い換えると、かかるプリセット値によれば、用紙Sがレジストニップに突入された後にレジストローラー対53aを揺動させるN個(N=1以上)の揺動ポイント(図3中のY方向の位置)が設定され、各揺動ポイント毎に移動の方向および移動量が規定される。
すなわち、プリセット値は、用紙Sがレジストニップに突入された後の揺動ポイント(Y方向への搬送距離)毎の、レジストローラー対53aの用紙幅方向(X方向)への移動量を規定する。総じて、プリセット値は、レジストローラー対53aの用紙幅方向への移動量を、用紙Sの搬送方向における全長に亘って規定する値が含まれる。
本実施の形態では、プリセット値をこのような構成とすることにより、各揺動ポイントにおけるレジストローラー対53aの移動量を可変とすることができ、用紙Sの先端側と後端側とでレジストローラー対53aの移動量を変えることができる。
一般に、用紙Sは、その搬送方向長さが長くなるほど、画像形成装置1の各ユニットのアライメントの影響が大きくなり、後端側のずれが大きくなる。このような場合、用紙Sの先端側の揺動ポイントではレジストローラー対53aの移動量を比較的小さくし(例えば1mm)、用紙Sの後端側の揺動ポイントではレジストローラー対53aの移動量を相対的に大きくする(例えば3mmとする)ようにプリセット値を設定することにより、直線的な紙送りを実現することができる。
また、用紙Sが長尺紙の場合、用紙先端が二次転写ニップに突入された後も用紙後端が給紙部(手差し給紙トレイなど)に残っている場合がある。このような場合、搬送経路部53のアライメントずれによって用紙が曲がりやすいという問題がある。したがって、このような長尺紙に対するレジスト揺動制御では、二次転写ニップに突入された後の揺動動作が重要となる。
このような場合、本実施の形態では、プリセット値として、用紙Sの先端が二次転写ニップに突入された後におけるレジストローラー対53aの動作内容(揺動態様)に重点を置いて規定するとよい。この場合、用紙先端が二次転写ニップに突入された後のレジストローラー対53aの揺動動作を固定値で実施することで、用紙搬送方向におけるずれ量を補正することができ、長尺紙の長さ方向の形状を矯正して、長尺紙を直線的に搬送することができるようになる。
さらに、プリセット値は、各揺動ポイントにおいて、レジストローラー対53aを移動させる移動速度を示す値が含まれ得る。この移動速度の値は、等速とされることができ、または加減速度を有することもできる。
本実施の形態では、このようにレジストローラー対53aの揺動態様を示す種々の値がプリセット値(固定値)に含まれる。また、後述のように、レジストローラー対53aの適切な揺動態様(揺動動作内容)は、用紙Sの種類などの画像形成条件によって異なるものとなる。これらを考慮すると、プリセット値は、1または複数のテーブルに登録し、かかるテーブルに登録された各値を制御部100が適宜読み出してレジスト揺動の制御を行うことが好ましい。プリセット値が登録されるテーブルのさらなる構成については後述する。
以下、図4のフロー図を参照して、本実施の形態のレジスト揺動制御の概要を説明する。
図4に示すように、本実施の形態のレジスト揺動制御では、印刷(プリント)ジョブの開始に際し、制御部100は、プリセット値すなわち予め定められた固定値を読み出して、レジストローラー対53a(以下、「揺動ローラー」とも言う。)の動作内容(すなわち移動の量、タイミング、速度など)を設定する。かかる固定値の読み出しや動作内容の設定は、用紙Sが揺動ローラーに突入するまでの任意の時期に行うことができる。そして、制御部100は、用紙Sが揺動ローラーに突入した後に、設定された内容で揺動ローラーを用紙Sの搬送方向と直交する幅方向に移動させるように制御を行う。
次に、図5のフロー図を参照して、1枚の長尺紙に対してレジスト揺動を複数回行う場合の本実施の形態の制御内容を説明する。
図5に示すように、本実施の形態のレジスト揺動制御では、印刷(プリント)ジョブが開始すると、制御部100は、プリセット値すなわち予め定められた固定値を読み出して、揺動ローラーの複数回(N回)分の揺動量、揺動するタイミング、揺動の速度等を、各々設定する。かかる固定値の読み出しや揺動動作の設定は、1回目の揺動については長尺紙が揺動ローラーに突入するまでの任意の時期に行うことができ、2回目からN回目までの揺動については当該揺動制御が開始されるまでの任意の時期に行うことができる。そして、制御部100は、長尺紙が揺動ローラーに突入すると、1回目の揺動について設定された内容で揺動ローラーを用紙Sの搬送方向と直交する幅方向に移動させるように制御し、2回目からN回目までの揺動についても、各々設定された内容で揺動ローラーを用紙Sの搬送方向と直交する幅方向に移動させるように制御する。
このように、プリセット値を用いてレジスト揺動を行う本実施の形態によれば、揺動ローラー(レジストローラー対53a)の揺動態様を予め決めておき、意図したところで意図した量だけ揺動ローラーを移動させる制御を行う。かかるレジスト揺動制御を行う本実施の形態によれば、ラインセンサー54の検知結果に依存することなく、用紙Sの副走査曲がりを矯正することが可能となる。
また、プリセット値を用いたレジスト揺動制御によれば、ラインセンサー54を稼働せずにレジスト揺動を行えることから、ラインセンサー54のライフ問題を解決することができる。
また、本実施の形態によれば、転写時の画像が用紙Sに合うようにプリセット値が設定されることにより、用紙Sの幅方向における所望の位置の画像を得ることができる。
加えて、本実施の形態の画像形成装置1では、両面印刷のジョブ実行時であっても、用紙Sにおける同一側面部が基準位置(図3の点線参照)に設定されるため、個々の用紙Sにおける外形のバラつき、曲がりやうねり等の個体差の影響が抑制される。
さらに、本実施の形態によれば、従来のレジスト揺動制御のようにラインセンサー54によって用紙Sの側端部の検知を行う必要が無くなるので、用紙Sがレジストローラー対53aに突入した後、用紙Sの先端がラインセンサー54を通過する前から用紙Sを揺動させることが可能となる。したがって、本実施の形態によれば、用紙Sを揺動させる態様の幅が広がる。
他方、上述のように、固定値によるレジスト揺動は、基本的に、用紙Sの副走査曲がりが一定になることを前提とするものであり、実際の用紙搬送では若干の搬送バラツキが生じるおそれがあり、固定値だけのレジスト揺動制御では、かかる搬送バラツキにまで対応することは容易でないと考えられる。
そこで、本実施の形態では、制御部100は、画像形成条件に応じた所定タイミングで、プリセット値によるレジスト揺動の制御中に用紙Sの側端の位置ずれをラインセンサー54で測定し、かかる測定結果を、後の用紙Sの印刷時に反映させる。
すなわち、制御部100は、ラインセンサー54の測定結果により、プリセット値によるレジスト揺動制御において、実際に用紙Sが直線的に搬送されているかを検査し、この結果、意図していた値と大きく乖離するようであれば、プリセット値を補正して後の用紙Sの印刷時に適用(フィードバック)する。
かかる位置ずれの測定および補正等の処理は、画像形成条件に応じた所定タイミングで実行され、かかる実行のタイミングないし条件は、ユーザーが任意に設定することができる。概して、上記の位置ずれ測定および補正等の実行タイミングは、プリセット値の信頼性やラインセンサー54のライフ等を考慮した頻度(インターバル)に設定されることが望ましい。
次に、ラインセンサー54により用紙Sの側端の位置ずれを測定する方法について説明する。
(第1の測定方法)
第1の測定は、用紙Sの搬送方向における全長に亘る側端の位置ずれをラインセンサー54で測定するものである。この場合、制御部100は、ラインセンサー54の測定結果から、レジスト揺動中の用紙Sの側端の位置ずれの量を求め、当該ずれ量に応じた補正値を決定する。また、制御部100は、プリセット値に規定された揺動タイミング(用紙Sの揺動ポイント)が複数(N個)ある場合、揺動ポイントの各々において、位置ずれ量を求め、補正値を決定する。制御部100は、決定された補正値をレジストローラー対53aの揺動量に適用するようにプリセット値を補正する。
かかる補正にあたり、制御部100は、ラインセンサー54により測定された用紙Sの側端のずれ量をそのままプリセット値に加えてもよいし、当該ずれ量に予め定められた係数を掛けた値をプリセット値に加えてもよい。
また、制御部100は、上記ずれ量に基づく補正値を、用紙Sの先端側と後端側とで変えるようにプリセット値に反映させてもよい。一般に、用紙Sの搬送方向長さが長くなるほど、画像形成装置1内の各ユニットのアライメントの影響を受けて、用紙Sの後端側における側端の位置ずれが大きくなる。このため、制御部100は、上記ずれ量に基づいて、用紙Sの先端側の揺動量よりも後端側の揺動量が大きくなるように、各揺動ポイントにおける補正値を決定して、決定した補正値をプリセット値に適用する。このような処理を行うことで、画像転写時における紙送りをより直線的にすることができる。
総じて、補正後のプリセット値で規定されるレジストローラー対53aの1つの揺動ポイントに対する揺動量は、補正前のプリセット値で規定されるレジストローラー対53aの揺動量と比較して、多くなる場合、少なくなる場合、等しくなる場合、のいずれもあり得る。
さらに、制御部100は、レジストローラー対53aの揺動タイミングすなわち用紙S上の揺動ポイントを適宜追加するようにプリセット値を補正してもよい。
他方、ラインセンサー54により測定された用紙Sの側端のずれ量が無い場合または極めて小さい場合、制御部100は、プリセット値の補正を行わない。プリセット値を補正するか否かのずれ量の基準値については、ユーザーが任意に設定することができる。
上述した第1の測定は、用紙Sの搬送方向における全長に亘ってラインセンサー54を稼働させることから、以下に説明する第2および第3の測定方法よりもラインセンサー54の動作時間が相対的に長くなる。
従って、ラインセンサー54のライフを重視する観点からは、第1の測定を実行する頻度(所定タイミング)として、例えば、印刷ジョブ開始時の最初の1枚目の用紙S、画像形成装置1の電源を起動した後の1枚目の用紙S、などに設定することが考えられる。また、給紙トレイの上方の用紙Sと下方の用紙Sとでは、アライメントの状態が異なる場合があるため、多数の用紙S印刷する印刷ジョブの場合、所定枚数毎に第1の測定を実行するように設定してもよい。他にも例えば、画像形成装置1内の温湿度センサー(図示せず)の検出値が示す温湿度が通常値から大きく乖離している場合など、プリセット値の信頼性が低下し得る状況となった場合に第1の測定を実行するように設定することができる。他にも、第1の測定は、プリセット値の信頼性が低下し得る種々の状況(画像形成条件)下で実行するように設定することができる。
(第2の測定方法)
第2の測定は、用紙Sの搬送方向における2箇所の側端の位置ずれをラインセンサー54で検出して、斜行すなわち用紙Sの傾きを測定するものである。
具体的には、用紙Sにおける揺動ポイントが複数(N個)ある場合、制御部100は、ラインセンサー54により測定され得る用紙Sの側端のずれ量のうち、(N−1)個目の揺動ポイントとN個目(すなわち最後)の揺動ポイントにおける側端ずれ量から用紙Sの傾きを算出する。そして、制御部100は、該算出値を後の用紙SのN個目の揺動ポイントに反映させるように、プリセット値を補正する。
より詳細には、制御部100は、用紙Sの(N−1)個目の揺動ポイントとN個目(最後)の揺動ポイントがラインセンサー54を通過するタイミングでラインセンサー54をオンにして、これら2箇所の揺動ポイントにおける用紙Sの側端のずれ量を測定する。そして、制御部100は、(N−1)個目の揺動ポイントとN個目の揺動ポイントにおけるずれ量の差分を、(N−1)個目およびN個目の揺動ポイント間の距離で除算することにより、用紙Sの斜行度(傾き量)を算出する。続いて、制御部100は、算出された用紙Sの傾き量に基づいて、後の用紙Sに対する最後(N個目)の揺動ポイントにおける揺動量を補正することによって、プリセット値を補正する。
このように、用紙Sの搬送方向における2箇所の揺動ポイントの位置ずれを測定してプリセット値を補正する処理は、ラインセンサー54の使用時間が比較的短くなることから、上述した第1の測定よりも頻繁に行うことができる。例えば、用紙Sが長尺紙の場合、用紙後端側における側端の位置ずれが生じやすいことから、制御部100は、長尺紙1枚毎にかかる測定および補正を行うとよい。
また、用紙Sの搬送のバラつきから、予め設定されたプリセット値(固定値)を用いてレジスト揺動を行うと、揺動量が足りないまたは多すぎる等の誤差が発生するおそれがある。特に、長尺紙の後端側では、このような誤差が発生しやすい。このような誤差発生の可能性を考慮して、用紙Sの側端の位置ずれをより高精度に補正するために、制御部100は、以下のような第3の測定および補正の処理を行ってもよい。
(第3の測定方法)
第3の測定は、用紙Sの搬送方向における1箇所の側端の位置ずれをラインセンサー54で測定するものである。具体的には、制御部100は、用紙Sにおける揺動ポイントが複数(N個)ある場合、予め設定されたm個目(mはN以下)の揺動ポイントでレジストローラー対53aを揺動動作させる直前のタイミングでラインセンサー54をオンにして、用紙Sの側端の位置ずれを測定する。そして、制御部100は、測定された位置ずれ量から、後の用紙Sに対するm個目の揺動ポイントにおける揺動量を補正することによって、プリセット値を補正する。ここで、mの値は、揺動量の誤差の発生しやすい揺動ポイントを選択して設定するとよい。
(第4の測定方法)
同様に、第4の測定も、用紙Sの搬送方向における1箇所の幅方向位置ずれをラインセンサー54で測定するものである。すなわち、制御部100は、用紙Sにおける揺動ポイントが複数(N個)ある場合、上述したm個目の揺動ポイントでレジストローラー対53aを揺動動作させた直後のタイミングでラインセンサー54をオンにして、用紙Sの側端の位置ずれを測定する。そして、制御部100は、測定された位置ずれ量から後の用紙Sに対するm個目の揺動ポイントにおける揺動量を補正することによって、プリセット値を補正する。
上述した第3の測定および第4の測定では、ラインセンサー54により測定された用紙Sの位置ずれの量は、レジストローラー対53aの揺動動作時のものではない。したがって、制御部100は、第3の測定または第4の測定に基づいてプリセット値の補正を行う場合、用紙Sの位置ずれの量に所定の係数(α)を掛けた値を補正値とし、かかる補正値を後の用紙Sに対するm番目の揺動ポイントの揺動量に適用すればよい。
或いは、制御部100は、第3の測定と第4の測定の両方を行い、測定された2箇所の位置ずれ量の平均値を補正値とし、かかる補正値を後の用紙Sに対するm番目の揺動ポイントの揺動量に適用してもよい。さらに、制御部100は、第2の測定も行って、かかる第2,第3および第4の測定結果から、後の用紙Sに対するm番目の揺動ポイントに適用する補正値を決定してもよい。
上述した第2の測定と同様に、第3の測定および第4の測定では、ラインセンサー54の使用時間を比較的短くできることから、上述した第1の測定よりも頻繁に行うことができる。例えば、用紙Sが長尺紙の場合、用紙後端側における側端の位置ずれが生じやすいことから、制御部100は、長尺紙1枚毎にかかる測定および補正を行うとよい。
(第5の測定方法)
さらに、ラインセンサー54のライフを重視する観点からは、制御部100は、以下の制御を行ってもよい。すなわち、制御部100は、レジストローラー対53aの揺動によって用紙Sが揺動されるタイミングでラインセンサー54をオンにして、揺動ポイントのみにおける用紙Sの側端のずれ量を測定し、当該ずれ量に応じた揺動ポイント(複数ある場合は各揺動ポイント)の補正値を決定する。制御部100は、決定された補正値をレジストローラー対53aの揺動量に適用するようにプリセット値を補正する。他の点は上述した第1の測定の手法と同様である。
このような制御を行うことにより、用紙Sの搬送方向の全域における位置ずれを測定する場合と比べて、ラインセンサー54の使用時間を短くすることができ、また、プリセット値の誤差等を簡易的に検査し補正することができる。
また、制御部100は、決定された補正値または補正後のプリセット値(補正値が適用されたプリセット値)を、次の印刷ジョブ実行の際あるいは電源オフ後に再び電源オンにした後の印刷時(以下、後の印刷ジョブという)にも利用できるようにするために、記憶部72に保存する。ここで、補正値のみが記憶部72に保存された場合、プリセット値の補正、すなわちプリセット値に対する補正値の適用は、後の印刷ジョブの実行時に行ってもよい。
このように、ラインセンサー54の測定に基づく印刷ジョブ実行中の用紙Sの位置ずれの情報を、レジスト揺動制御の補正値(すなわち揺動の目標値)としてプリセット値にフィードバックすることによって、プリセット値によるレジスト揺動制御をより高精度に行うことができる。
以下、プリセット値が登録されるテーブルに関して、より詳しく説明する。
上述のように、プリセット値は、用紙Sの幅方向の位置が転写ニップにより転写される画像に合うようなレジストローラー対53aの揺動態様すなわち、揺動の量、タイミング、速度などの動作内容を規定するものである。
他方、用紙Sの幅方向の位置が転写ニップにより転写される画像に合うレジストローラー対53aの好ましい動作内容は、用紙Sの種類(例えば、長さ、幅、表面の光沢度、坪量(剛度)、など)によって異なるものと考えられる。
例えば、一般に、用紙Sの搬送方向の長さが長いほど、レジストローラー対53aを揺動させる回数(図5で上述したNの数)を増やす必要がある。また、ローラー径の前奥差が大きい場合、用紙Sの幅が大きいものほど、かかる径差による影響が大きいものと考えられる。また、用紙Sの光沢度の高いものと低いものとでは、ローラー対で挟まれながら搬送される際の滑りやすさが異なる(前者の方が滑りやすい)ため、同一サイズの用紙であっても、揺動の量や速度などを変える必要があり得る。用紙Sの坪量(剛度)が異なる場合も同様であり、この問題点については後述する。
したがって、テーブルは、プリセット値が用紙Sの種類(長さ、幅、表面の光沢度、坪量、など)毎に登録されるテーブル構造とする。この場合、制御部100は、印刷ジョブの実行に際し、用紙Sの種類や使用する給紙トレイユニット(51a〜51c)を定めたユーザー設定情報から、搬送する用紙Sの種類を特定し、該特定された用紙Sの種類に対応するプリセット値をテーブルから読み出して、上述したレジスト揺動の制御を行う。
また、用紙Sの種類は上記のように多岐に亘るため、プリセット値が登録されるテーブルは、紙種に応じて設ける、すなわち上述した用紙Sの種類毎に設けるとよい。この場合、制御部100は、印刷ジョブの実行に際し、上記ユーザー設定情報から搬送する用紙Sの種類を特定し、該特定された用紙Sの種類に対応するテーブルに登録されたプリセット値を読み出して、上述したレジスト揺動の制御を行う。また、上述のようにプリセット値が補正される場合、制御部100は、当該用紙Sの種類に応じて設けられたテーブルに登録されたプリセット値を補正し、当該テーブルを更新する。
また、上述のように、異なる給紙トレイユニット51a〜51cには異なる種類の用紙Sが収容され、他方、用紙Sが長尺紙の場合には手差し給紙トレイから給紙される。したがって、テーブルは、プリセット値が給紙トレイ毎に登録される構成としてもよい。同様に、プリセット値が登録されるテーブルは、給紙トレイ毎に設けられることができる。
この場合、制御部100は、印刷ジョブの実行に際し、上述のユーザー設定情報から使用する給紙トレイを特定し、該特定された給紙トレイに対応するプリセット値を、対応するテーブルから読み出して、上述したレジスト揺動の制御を行う。また、上述のようにプリセット値が補正される場合、制御部100は、当該用紙Sについて使用された給紙トレイに対応するテーブルに登録されたプリセット値を補正し、当該テーブルを更新する。
また、同一種類の用紙Sであっても、画像形成装置1の設置環境、典型的には温湿度条件が異なれば、実際に発生する画像位置ずれの態様(ずれ量やずれる方向など)が異なることが考えられる。言い換えると、用紙Sの幅方向の位置が転写ニップにより転写される画像に合うレジストローラー対53aの好ましい動作内容は、温度および湿度によって異なるものと考えられる。このため、テーブルは、プリセット値が画像形成装置1の周囲の温湿度に応じて登録される構成としてもよい。同様に、プリセット値が登録されるテーブルは、画像形成装置1の周囲の温湿度に応じて設けられること、例えば温湿度の数値範囲毎に設けられることができる。
この場合、制御部100は、印刷ジョブの実行に際し、図示しない機内の温湿度センサーの検出値から温度および湿度を特定し、該特定された温度および湿度に対応するプリセット値を対応するテーブルから読み出して、上述したレジスト揺動の制御を行う。また、上述のようにプリセット値が補正される場合、制御部100は、当該用紙Sの印刷時の温度および湿度に応じて設けられたテーブルに登録されたプリセット値を補正し、当該テーブルを更新する。
また、同一種類の用紙Sであっても、両面が白紙の状態の用紙S(すなわち用紙Sの表面に画像形成する場合)と、既に片面に画像が形成されている用紙S(すなわち用紙Sの裏面に画像形成する場合)とでは、実際に発生する画像位置ずれの態様(ずれ量やずれる方向など)が異なることが考えられる。言い換えると、用紙Sの幅方向の位置が転写ニップにより転写される画像に合うレジストローラー対53aの好ましい動作内容は、用紙Sの第1面目(表面)と第2面目(裏面)とでは異なるものと考えられる。
このため、テーブルは、プリセット値が用紙Sの表面用と裏面用に各々登録されるテーブル構成としてもよい。また、プリセット値が登録されるテーブルは、用紙Sの表裏に応じて設けられる、すなわち用紙Sの表面用と裏面用とで各々設けられる構成としてもよい。
この場合、制御部100は、両面印刷のジョブを実行するに際し、用紙Sの表面の印刷を行う際に、対応するテーブルから表面用のプリセット値を読み出して上述したレジスト揺動の制御を行う。また、制御部100は、用紙Sの裏面の印刷を行う際に、対応するテーブルから裏面用のプリセット値を読み出して、上述したレジスト揺動の制御を行う。また、上述のようにプリセット値が補正される場合、制御部100は、当該用紙Sの印刷時の表裏面に応じて設けられたテーブルに登録されたプリセット値(すなわち表面用または裏面用のいずれか一方)を補正し、当該テーブルを更新する。
また、同一種類の用紙Sであっても、カバレッジが高い場合と低い場合とでは、実際に発生する画像位置ずれの態様(ずれ量やずれる方向など)が異なることが考えられる。言い換えると、用紙Sの幅方向の位置が転写ニップにより転写される画像に合うレジストローラー対53aの好ましい動作内容は、カバレッジすなわち用紙Sに形成される画像の印字率によって異なるものと考えられる。
このため、テーブルは、プリセット値が用紙Sに形成する画像のカバレッジに応じて登録される構成としてもよい。同様に、プリセット値が登録されるテーブルは、用紙Sに形成する画像のカバレッジに応じて設けられること、例えばカバレッジの数値範囲毎にテーブルを設けることとしてもよい。一例として、カバレッジ100%〜80%、カバレッジ79%〜60%、カバレッジ59%〜40%、カバレッジ39%〜20%、カバレッジ19%〜0%による20%単位で、各々異なったプリセット値を登録するテーブルを設ける。同様に、プリセット値が登録されるテーブルは、カバレッジの数値範囲毎に各々設けられることができる。また、カバレッジの数値範囲は、他にも種々の範囲とすることができる。
この場合、制御部100は、印刷ジョブの実行に際し、入力画像データからカバレッジを用紙S毎に特定し、該特定されたカバレッジに対応するプリセット値を対応するテーブルから読み出して、上述したレジスト揺動の制御を行う。また、上述のようにプリセット値が補正される場合、制御部100は、当該用紙Sに形成された画像のカバレッジに対応するテーブルに登録されたプリセット値を補正し、当該テーブルを更新する。
上述したプリセット値の要素のうち、レジストローラー対53aを幅方向に移動させる移動速度は、ユーザー等によって値を的確に設定変更するために熟練が必要となることが考えられ、このため、かかる移動速度の設定値がデフォルト値のまま、あるいは空白になることがあり得る。
他方、用紙Sが二次転写ニップに突入した後にレジストローラー対53aを揺動動作させると、レジストローラー対53aおよび二次転写ニップ間で、用紙Sが捩れるようなループが発生し、転写ニップで転写される画像のズレが生じる場合がある。特に、用紙Sが坪量すなわち剛度の高い厚紙の場合、かかるループ発生に起因する画像のズレが生じやすい。このような場合、レジストローラー対53aの揺動速度を下げることで、転写ニップで転写される画像のズレが抑制されることが多い。
このような実情を考慮すると、制御部100は、レジストローラー対53aの揺動速度を、用紙Sの種類、特に坪量(剛度)に応じて変えるように制御することが望ましい。このため、プリセット値のうち、レジストローラー対53aの揺動速度を規定するテーブルを独立して設け、かかるテーブルに、用紙Sの種類、特に坪量(剛度)に対応したレジストローラー対53aの揺動速度を登録してもよい。
このように、プリセット値は、用紙Sの種類や画像形成装置1の設置環境などの画像形成条件によって変える必要がある。また、他にも種々の個別的な条件により、プリセット値の微調整等を行う必要性があり得る。例えば、上述のようにプリセット値が登録されるテーブルが紙種毎に設けられる場合、すなわち紙種毎に異なるプリセット値が適用できる場合であっても、使用される用紙Sの銘柄が異なる場合、副走査曲がりの態様が変わる場合があり得る。
したがって、プリセット値は、ユーザー、管理者、サービスマンなど(以下、ユーザー等という)によって任意に書き換えられるように構成されることが望ましい。このため、制御部100は、操作表示部20の表示部21に、操作部20によってプリセット値の変更設定を行うためのプリセット値変更設定画面(図示せず)を表示し、操作部20の入力に応じて、プリセット値を更新する制御を行う。かかるプリセット値変更設定画面では、プリセット値が登録された上述の種々のテーブルを選択できるようにして、テーブル毎にプリセット値の変更設定を行えるようにするとよい。また、代替的または付加的に、制御部100は、プリセット値変更設定画面をPCなどの外部装置の表示部に表示し、かかる外部装置の操作入力部の入力に応じてプリセット値を更新する制御を行ってもよい。
上述のような制御を行うことにより、操作パネル上などで、ユーザー等が任意の時期にプリセット値を変更設定できるようになる。
なお、設定されたプリセット値は、他にも、例えば二次転写ニップの構成部材の耐久(摩耗状態)など、種々の要因によって、誤差すなわち修正する必要が生じ得る。本実施の形態では、上述したラインセンサー54を用いた種々の測定によって得られた用紙Sの側端のずれや傾き量の情報をレジスト揺動制御の補正値(揺動の目標値)としてプリセット値にフィードバックすることで、かかるプリセット値の誤差を吸収することができる。
また、制御部100は、以下のような自動調整モードの制御を行うことにより、プリセット値が登録されるテーブルを自動で設定(生成)または修正(更新)するようにしてもよい。
ここで、自動調整モードでは、制御部100は、ラインセンサー54をオンの状態にして、同じ種類の用紙Sを所定の枚数(例えば20枚)だけ転写ニップおよび定着部60に通紙する。このとき、制御部100は、各用紙Sをカバレッジ0%の白紙状態で通紙する或いは検査用のトナー画像を形成するように各部を制御する。
また、制御部100は、画像形成条件(用紙Sの種類等)に対応するプリセット値が登録されたテーブルが無い場合、レジスト揺動の制御を行わずに、所定枚数(20枚)分の用紙Sの通紙に対するラインセンサー54の検知結果(すなわち通紙中の用紙Sの幅方向端部の基準位置からのずれ量)を記録する。そして、制御部100は、かかるラインセンサー54の検知結果に応じて、かかる用紙Sに対応するプリセット値(揺動タイミング、揺動量など)が登録されるテーブルを設定する。
他方、用紙Sの種類等に対応するプリセット値が登録されたテーブルが有る場合、制御部100は、当該プリセット値に従ったレジスト揺動の制御を行って、所定枚数(20枚)分の用紙Sの通紙に対するラインセンサー54の検知結果を記録する。そして、制御部100は、かかるラインセンサー54の検知結果に応じて、かかる用紙Sに対応するテーブルのプリセット値(揺動タイミング、揺動量など)を補正する。
このような自動調整の制御を行うことで、画像形成装置1の組み立て工程や、画像形成装置1の納入後におけるサービスマンによる調整作業の際に行われた機械監査のバラつきや、機器毎の特有の癖などを補正することができる。
以下、画像形成装置1におけるレジストローラー対53aひいては用紙Sの揺動制御に関する動作の一例について説明する。図6は、画像形成装置1における揺動制御の動作例の一例を示すフローチャートである。図6に示す処理は、用紙Sが長尺紙である場合の制御の一例であり、印刷ジョブの実行において、画像形成される用紙Sの一枚毎に実行される。この例では、プリセット値として、用紙S(長尺紙)の先端が二次転写ニップに突入された後のレジストローラー対53aの動作内容が規定されており、また、上述した第1の測定を行うように設定された場合を仮定する。
印刷ジョブの実行時に、制御部100は、印刷ジョブのユーザー設定情報から、印刷しようとする用紙Sの種類(長さ、幅、坪量(剛度)、など)の情報を取得する(ステップS100)。ここで、制御部100は、上述したカバレッジなどの他の画像形成条件の情報を付加的に取得してもよい。
ステップS120において、制御部100は、取得された画像形成条件(この例では用紙Sの種類)に対応するテーブルに登録されているプリセット値を読み出して、レジストローラー対53aの揺動動作(揺動態様)に関する上述した各値を設定する。
ステップS140において、制御部100は、予め設定された所定タイミングであるか否により、ラインセンサー54による測定を実行するか否かを決定する。この例では、所定タイミングは、印刷ジョブ開始時の最初の1枚目の用紙Sに設定されているものとする。
そして、制御部100は、ラインセンサー54による測定を実行する場合(ステップS140、YES)にはラインセンサー54をオンにして(ステップS160)、用紙Sの側端の位置(位置ずれ)の測定を開始して、ステップS180に移行する。
他方、制御部100は、ラインセンサー54による測定を実行しない場合(ステップS140、NO)、すなわち印刷しようとする用紙Sが印刷ジョブの2枚目以降の用紙Sである場合、ステップS180に処理をスキップする。
ステップS180において、制御部100は、上述したプリセット値に従ったレジスト揺動制御を行う。具体的には、ステップS180において、制御部100は、用紙Sの先端が二次転写ニップに突入すると、ステップS120で設定された値すなわちプリセット値に従ってレジストローラー対53aの揺動制御を実行する。かかる制御により、二次転写ニップに突入した用紙Sに対して、プリセット値に従った幅方向の移動量、タイミング、速度、回数等で、レジストローラー対53aが揺動し、かかる揺動とともに用紙Sが幅方向に揺動する。
ここで、ラインセンサー54による測定を実行している場合(ステップS140、YES)、制御部100は、ラインセンサー54の出力をモニタリングして用紙Sの側端の位置ずれ量の情報をメモリ(RAM103等)に一時記憶しながら、プリセット値に従った上述のレジスト揺動制御を行う。
続いて、制御部100は、当該用紙Sに対してラインセンサー54による測定を実行したか否かを判定し(ステップS200)、実行した場合(ステップS200、YES)はステップS220に移行し、実行しなかった場合(ステップS200、NO)はステップS240に処理をスキップする。
ステップS220において、制御部100は、ラインセンサー54による測定結果に基づいて、プリセット値により揺動させた各揺動タイミング(揺動ポイント)における基準位置(図3中の点線参照)とのずれ量を求め、当該ずれ量に応じた補正値を決定する。そして、制御部100は、決定された補正値をプリセット値に適用し、かかるプリセット値をメモリ(記憶部72)に保存することにより、当該プリセット値が登録されるテーブルを更新する。かかる処理により、用紙Sの先端が二次転写ニップに突入された後におけるレジストローラー対53aの揺動量が補正(更新)されるように、プリセット値および該プリセット値が登録されているテーブルが書き換えられる。
次に、制御部100は、印刷ジョブが終了したか否かについて判定する(ステップS240)。かかる判定の結果、印刷ジョブが終了していない場合(ステップS240、NO)、制御部100は、ステップS100に戻り、次の用紙Sに対するレジストローラー対53aの揺動制御および画像形成等の印刷処理を行う。したがって、印刷ジョブの2枚目以降の用紙Sに対するレジストローラー対53aの揺動制御(ステップS180)では、上記ステップS220で更新されたテーブルに登録されたプリセット値を用いたレジスト揺動の制御が行われる。
なお、他の例として、印刷ジョブの2枚目以降の用紙S(長尺紙)に対して、上述した第2、第3、第4の測定を行う設定となっている場合には、ステップS160およびステップS220の処理が実行される(ステップS140、S200で各々YES)。この場合、長尺紙の1枚毎に、最後(N個目)の揺動ポイントにおけるレジストローラー対53aの揺動量が更新されるように、プリセット値および当該プリセット値が登録されているテーブルが更新される。
他方、印刷ジョブが終了した場合(ステップS240、YES)、制御部100は、上述した一連の処理を終了する。
かかる処理を行う本実施の形態によれば、プリセット値(固定値)によるレジスト揺動をよりきめ細やかに実行することができ、実際の用紙搬送における搬送バラツキに対応した高精度なレジスト揺動制御ひいては用紙Sの位置ずれ補正を実現することができる。
総じて、本実施の形態によれば、アライメントのずれや各ローラーの幅方向における径の差などに起因する用紙Sの副走査曲りを、ラインセンサー54の使用を抑えつつ補正することが出来る。したがって、本実施の形態によれば、副走査方曲がりに起因する画像ずれ等の発生を防止することができる。
上述した実施の形態では、中間転写ベルト421を用いて印刷する画像を用紙Sに二次的に転写させる転写部を備えた画像形成装置の例を説明した。他方、上記実施の形態は、印刷する画像を用紙Sに一次的に転写させる転写方式の画像形成装置(例えばモノクロプリンタなど)に対しても、同様に適用されることができる。
上述した実施の形態では、二次転写ニップの上流側に設けられ制御部100により揺動制御される用紙搬送部材がレジストローラー対53aである場合を説明した。他の例として、用紙搬送部材は、例えば、レジストローラー対53a以外のローラー、用紙搬送ガイド、などが付加的または代替的に適用されることができる。
上述した実施の形態では、用紙Sとして枚葉紙を使用する場合を説明した。他方、上記実施の形態は、ロール紙に対しても同様に適用することができる。
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。