JP6920131B2 - 減圧乾燥装置 - Google Patents
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Description
この特許文献1の乾燥装置の溶媒捕集部は、基板の表面とほぼ平行に配置された金属製の捕集プレートを有し、該捕集プレートには貫通開口が形成されている。また、特許文献1の乾燥装置は、乾燥処理が終了した後、捕集プレートで捕集した溶媒を、再度気化させて捕集プレートから脱離させるための溶媒脱離装置を備えている。さらに特許文献1の乾燥装置は、上述の捕集プレートの温度を調節するためにペルチェ素子等からなる温度調整装置を有する。
なお、本装置の処理対象の基板に塗布される溶液は、溶質と溶媒からなり、減圧乾燥処理の対象となる成分は主に溶媒である。溶媒に含まれる有機化合物としては、高沸点のものが多く、例えば、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(1,3-dimethyl-2-imidazolidinone、沸点220℃、融点8℃)、4−tert-ブチルアニソール(4-tert-Butylanisole、沸点222℃、融点18℃)、Trans−アネトール(Trans-Anethole、沸点235℃、融点20℃)、1,2−ジメトキシベンゼン(1,2-Dimethoxybenzene、沸点206.7℃、融点22.5℃)、2−メトキシビフェニル(2-Methoxybiphenyl、沸点274℃、融点28℃)、フェニルエーテル(Phenyl Ether、沸点258.3℃、融点28℃)、2−エトキシナフタレン(2-Ethoxynaphthalene、沸点282℃、融点35℃)、ベンジルフェニルエーテル(Benzyl Phenyl Ether、沸点288℃、融点39℃)、2,6−ジメトキシトルエン(2,6-Dimethoxytoluene、沸点222℃、融点39℃)、2−プロポキシナフタレン(2-Propoxynaphthalene、沸点305℃、融点40℃)、1,2,3−トリメトキシベンゼン(1,2,3-Trimethoxybenzene、沸点235℃、融点45℃)、シクロヘキシルベンゼン(cyclohexylbenzene、沸点237.5℃、融点5℃)、ドデシルベンゼン(dodecylbenzene、沸点288℃、融点-7℃)、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン(1,2,3,4-tetramethylbenzene、沸点203℃、融点76℃)等を挙げることができる。これらの高沸点有機化合物は、2種以上が組み合わされて溶液中に配合されている場合もある。
天板12は、側壁部11の上側の開口を塞ぐと共に、溶媒捕集部30を支持する。溶媒捕集部30の支持構造については後述する。
遮断部材14については後述する。
溶媒捕集網31は、溶媒捕集部材の一例であり、ステンレスやアルミ、銅、金といった金属材料等の熱伝導性の良い材料から形成される。より具体的には、例えば、溶媒捕集網31は、鋼板を冷間切延することにより製造されるエキスパンドメタルから構成される。溶媒捕集網31は、1枚のエキスパンドメタルから構成されてもよいが、本例では、複数枚のエキスパンドメタルを水平方向に並べて構成されるものとする。
溶媒捕集網31を構成するエキスパンドメタル31aはそれぞれ、角筒状の枠体32に溶接等により固定される。枠体32の外側に設けられた耳部32aを、天板12から下方向に延出する脚部33に、ネジ等を用いて固定することにより、エキスパンドメタル31aすなわち溶媒捕集網31が天板12に支持される。
なお、枠体32や脚部33はステンレス等の金属材料から成る。
また、枠体32や脚部33は基板Wとは溶媒捕集網31を間に挟んで反対側に位置している。したがって、溶媒捕集網31が基板W側においてその全面が均一に露出しているので、基板Wから溶媒捕集網31の方向への気化した溶媒の流れは枠体32や脚部33には阻害されない。ただし、気化した溶媒の流れをより均一にするためには、枠体32や脚部33の体積は小さいことが好ましい。
排気装置40は、真空ポンプから構成され、具体的には、ターボ分子ポンプとドライポンプとが例えば上流側からこの順に直列に接続されて構成される。この排気装置40は、底板13の中心付近すなわち基板Wの中心付近の下部に配設されている。
排気管41の排気口13aと排気装置40との間の部分には自動圧力制御バルブ(APC(Adaptive Pressure Control)バルブ)42が設けられている。減圧乾燥装置1では、排気装置40の真空ポンプを作動させた状態で、APCバルブ42の開度を調節することにより、減圧排気の際のチャンバ10内の真空度を制御することができる。
遮断部材14は、図1(A)に示すように、前述の通り天板12から下方に延在しており、すなわち、天板12から連続している。また、遮断部材14は、溶媒捕集網31の側端と側壁部11との間、すなわち、溶媒捕集網31を遮るように配設され、具体的には、溶媒捕集網31の側端とチャンバ10の側壁との間を遮るように配設されている。より具体的には、載置台20とチャンバ10の側壁との間の、排気装置40に通ずる隙間10aの上方に位置する。
遮断部材14は、例えば、溶媒捕集網31と同様に、ステンレスやアルミ、銅、金といった金属材料等の熱伝導性の良い材料から成る板状部材で構成される。
遮断部材14の厚さは薄く例えば0.05mmである。遮断部材14は、このように薄いため、1m2当たりの熱容量が例えば286J/Kと低い。遮断部材14の1m2当たりの熱容量は286J/K以下であることが好ましい。
また、遮断部材14の1m2当たりの熱容量は、実際に使用している溶媒捕集網31のもの以下であることが好ましい。なお、後述するように、溶媒捕集網31は、板厚が0.05mm、開口率が80%のとき、その単位面積当たりの熱容量が106J/K・m2であり、板厚が0.2mm、開口率が60%のとき、その単位面積当たりの熱容量が850J/K・m2である。
さらに、遮断部材14は、例えば、図1(B)に示すように、溶媒捕集網31の側方全周を覆う。
この減圧排気の際、断熱膨張によりチャンバ10内の気体は冷却される。このようにチャンバ10内の気体が冷却されたとしても、基板Wの温度は、該基板Wの熱容量が大きいこと等から、室温の23℃からほとんど変化しない。しかし、熱容量が小さい溶媒捕集網31の温度は、チャンバ10内の冷却された気体により冷却され、低下する。具体的には、ドライポンプでの減圧排気が完了しチャンバ10内の圧力が10Paとなった時点では、図3(B)に示すように、溶媒捕集網31の温度は例えば8〜15℃まで低下する。
なお、図4の点P1に示すように、ドライポンプでの減圧排気終了時のチャンバ10内の圧力10Paは、基板Wの温度である23℃における溶媒Sの飽和蒸気圧より大きいため、ドライポンプでの減圧排気の終了時点でも蒸発速度は大きくない。
また、溶媒捕集網31の温度は、基板W上の溶媒Sの蒸発が完了するまでの間、各時点でのチャンバ10内の圧力における溶媒Sの露点以下に維持される。
また、基板W上の溶媒Sの蒸発が完了してから溶媒捕集網31の温度がその時点のチャンバ10の圧力における溶媒の露点以上となるまでの時間は、20秒以上であることが好ましい。基板W上の溶媒Sは蒸発開始から約10秒で乾燥が完了するため、溶媒捕集網31は少なくとも10秒以上、望ましくは20秒以上をかけて徐々に乾燥することが好ましい。20秒よりも短いと、溶媒捕集網31に吸着された溶媒が気化したときに該気化した溶媒により、基板W上の乾燥した塗布膜が溶けたり、気化した溶媒が基板Wに吸着されたりしてしまうおそれがあるからである。
さらに、減圧乾燥装置1では、溶媒捕集網31の乾燥時間のさらなる短縮のため、上述のように、溶媒捕集網31の温度が、蒸発が完了した時から5分以内に、その時点での圧力における露点以上とされる。
上述の説明では、溶媒捕集網31は単位面積当たりの熱容量が例えば372J/K・m2とした。しかし、溶媒捕集網31の単位面積当たりの熱容量は、上述のものに限られず、排気によるチャンバ10内の断熱膨張により該溶媒捕集網31の温度が低下すると共にチャンバ10等からの輻射熱により該溶媒捕集網31の温度が上昇すればよい。したがって、溶媒捕集網31の単位面積当たりの熱容量は106〜850J/K・m2以下であればよい。なお、溶媒捕集網31の板厚が0.05mm、開口率が80%のときの単位面積当たりの熱容量が106J/K・m2であり、溶媒捕集網31の板厚が0.2mm、開口率が60%のときの単位面積当たりの熱容量が850J/K・m2である。
熱流体解析(CFD:Computational Fluid Dynamics)では、排気による強制対流、気体の温度差による自然対流のみを考慮し、輻射による温度変化については考慮しなかった。これは、輻射の高温源となる天板12や載置台20の温度は室温でほぼ一定であり低く、対流伝熱に比べて十分小さく無視できるためである。
さらに、溶媒捕集網はSUSであるものとした。つまり、溶媒捕集網の熱伝導率などの物性値にはSUSのものを用いた。また、溶媒捕集網の開口率は65%とし、厚さは0.1mmとした。
図6〜図8に示すように、シミュレーション結果によれば、減圧乾燥装置Mでは、下方から排気されるにも関わらず、チャンバの側壁M1に沿って上昇気流が生じている。これは、チャンバの側壁M1により暖められた気体が上昇することにより生じているものと考えられる。また、チャンバの側壁M1に沿って天板M2まで上昇した気体は、減圧乾燥装置Mの中央に向けて天板M2に沿って移動するがほとんど移動せず、溶媒捕集網Nの上部の領域M3に溜まる。これにより、溶媒捕集網Nの端部の上部の領域M3において気体の温度が他の領域に比べて高くなっている。
このシミュレーション結果により、溶媒捕集網Nの端部の上部に領域M3に位置する気体の温度が他の領域に比べて高くなっていることによって溶媒捕集網Nの端部の温度が高くなり、その結果、基板Wを均一に乾燥できないことが知見された。
遮断部材14は、前述のように、天板12から下方に延在し該天板12から連続しており、また、溶媒捕集網31の側端と側壁部11との間に配設され、具体的には、溶媒捕集網31の側端とチャンバ10の側壁との間であって、載置台20とチャンバ10の側壁との間の、排気装置40(図1参照)に通ずる隙間10aの上方に位置する。
また、遮断部材14の1m2当たりの熱容量を、溶媒捕集網31の1m2当たりの熱容量以下とすることにより、遮断部材14の方が溶媒捕集網31に比べてより容易に冷却されやすくなるため、遮断部材14の温度により溶媒捕集網31の冷却が抑制されるのを防ぐことができる。
図1の例の遮断部材14は、溶媒捕集網31の側方全周を覆っていたが、図7の例の遮断部材14は、載置台20上の基板Wの各辺に対向するように設けられた4つの部材を有し、各部材は連結されておらず、基板Wの角部の側方は覆わない構成である。
この構成では、基板Wの角部の上方に位置する溶媒捕集網31の角部は、前述のチャンバ10の側壁に沿った上昇気流により冷却されにくいが、基板Wの角部の乾燥速度は速い。そのため、この構成であっても、基板を均一に乾燥することができる。
また、遮断部材14は、本例では天板12から垂直に垂下していたが、垂下方向は垂直に限らず、例えば、その下端に向かうにつれて、溶媒捕集網31からの水平方向の距離が徐々に増加していくように垂下してもよい。
10…チャンバ
11…側壁部
12…天板
13…底板
13a…排気口
14…遮断部材
20…載置台
30…溶媒捕集部(基板乾燥用捕集部)
31…該溶媒捕集網
31…溶媒捕集網
31a…エキスパンドメタル
32…枠体
32a…耳部
33…脚部
40…排気装置
42…APCバルブ
50…赤外線放射体
50…当該赤外線放射体
70…別の溶媒捕集部(枯らし用捕集部)
Claims (9)
- 排気口が底板に設けられ、溶液が塗布された基板を収納するチャンバと、該チャンバ内において該チャンバの天板と前記基板との間に設けられ、前記基板から気化した前記溶液中の溶媒を一時的に捕集する、1m2当たりの熱容量が850J/K以下の溶媒捕集部材と、を備え、前記チャンバ内で前記基板上の溶液を減圧状態で乾燥させる減圧乾燥装置において、
前記チャンバの天板から下方に向けて延在し且つ前記天板から連続し、前記溶媒捕集部材の側端と前記チャンバの側壁との間を遮るように配設された遮断部材を備える、ことを特徴とする減圧乾燥装置。 - 前記遮断部材の下端は、前記溶媒捕集部材の下端より下側に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載の減圧乾燥装置。
- 前記遮断部材の下端と前記溶媒捕集部材の下端との鉛直方向の距離は1cm以上である、ことを特徴とする請求項2に記載の減圧乾燥装置。
- 前記基板の側端と前記遮断部材との水平方向の距離は1cm以上である、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の減圧乾燥装置。
- 前記遮断部材は、1m2当たりの熱容量が286J/K以下である、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の減圧乾燥装置。
- 前記遮断部材の1m2当たりの熱容量は、前記溶媒捕集部材の1m2当たりの熱容量以下である、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の減圧乾燥装置。
- 前記溶媒捕集部材は、網状部材から構成される溶媒捕集網である、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の減圧乾燥装置。
- 前記溶媒捕集網は、開口率が60%以上80%以下である、ことを特徴とする請求項7に記載の減圧乾燥装置。
- 前記基板から前記溶媒捕集部材までの距離は、前記基板から前記チャンバの天板までの距離の40%以上60%以下である、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の減圧乾燥装置。
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