JP6920062B2 - 子宮内膜病変における幹細胞治療 - Google Patents

子宮内膜病変における幹細胞治療 Download PDF

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Description

(関連出願)
本出願は、2014年6月17日に出願された米国仮特許出願第62/013,121の35U.S.C§119(e)の下での利益を主張し、当該出願の内容全体が、ここで参考として援用される。
(発明の分野)
本発明は、一般に、子宮内膜再生を誘導し、アッシャーマン症候群および子宮内膜萎縮のような子宮内膜病変を処置するための自己由来CD133+骨髄幹細胞(BMDSC)の使用に関する。
(発明の背景)
生殖可能年齢の女性において、子宮内膜のうちの2層は、区別され得る:(i)子宮腔に隣接する機能的層、および(ii)子宮筋層に隣接しかつ上記機能的層の下にある基底層。上記機能的な層は、以前の月経周期の第1の部分の間の、月経の終了の後に構築される。増殖は、エストロゲンによって誘導され(月経周期の卵胞期)、この層における後の変化は、黄体に由来するプロゲステロンによって生じる(黄体期)。それは、胚の着床および成長に最適な環境を提供するように適応される。この層は、月経の間に完全に脱落する。対照的に、上記基底層は、上記月経周期の間のいかなるときにも脱落しない。各月経周期における全身性の卵巣ステロイド変化の下でのヒト子宮内膜の再生は、その主要な機能のためのこの器官の準備(すなわち、着床しつつある胚盤胞を迎え入れる(host)ための子宮内膜の着床ウインドウを発生させ、妊娠が起こることを可能にする)に必須である。従って、各月経周期に伴う子宮内膜機能的層の全ての細胞区画の補充は、正常な生殖機能に必須である。
アッシャーマン症候群(AS)は、反復性のもしくは攻撃的な掻爬術および/または子宮内膜炎によって引き起こされる子宮内膜の破壊が存在する状態である。それは、子宮腔癒着症および多くの領域における機能的子宮内膜の非存在に伴う子宮腔の消滅を生じる。この疾患を有し、同様に萎縮性子宮内膜(<4mm)を有する女性は、不妊、月経不順(無月経、過少月経、および再発性妊娠損失(recurrent pregnancy loss)を含む)にしばしば悪戦苦闘している。現在では、これら子宮内膜病変に関する具体的処置は存在しない。従って、これら病変を処置するための安全かつ有効な治療を開発することは未だに必要である。
(発明の要旨)
本開示は、少なくとも部分的に、自己由来CD133+骨髄由来幹細胞(BMDSC)が自己由来の機能的子宮内膜の新規生成をもたらす血管形成を再生し得るという発見に関する。よって、本開示の局面は、子宮内膜再生を誘導するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、上記方法は、自己由来CD133+骨髄由来幹細胞(BMDSC)の有効量を、子宮内膜再生が必要な被験体の子宮動脈へと投与して、子宮内膜再生を誘導することを包含する。
いくつかの実施形態において、上記被験体は、アッシャーマン症候群もしくは子宮内膜萎縮を有することが既知である。いくつかの実施形態において、上記被験体は、ホルモン処置に抵抗性である子宮内膜萎縮を有する。いくつかの実施形態において、上記被験体は、1回もしくはこれより多く、胚着床に以前失敗したことがある。いくつかの実施形態において、上記自己由来CD133+ BMDSCは、上記被験体の骨髄から末梢血へとBMDSCを動員するための薬剤を上記被験体に投与すること;およびCD133+ BMDSCを上記被験体の末梢血から単離することによって調製される。いくつかの実施形態において、BMDSCを動員するための上記薬剤は、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)である。いくつかの実施形態において、上記自己由来CD133+ BMDSCは、抗CD133抗体を使用するアフェレーシスによって、上記被験体の末梢循環から単離される。いくつかの実施形態において、上記CD133+ BMDSCは、カテーテルを介して上記子宮動脈へと投与される。いくつかの実施形態において、上記CD133+ BMDSCは、上記被験体の子宮螺旋細動脈へと投与される。
本開示のいくつかの局面は、子宮内膜再生を誘導するための方法を提供し、上記方法は、自己由来CD133+骨髄由来幹細胞(BMDSC)を、子宮内膜再生が必要な被験体から単離すること;および上記単離されたCD133+ BMDSCの有効量を、上記被験体の子宮動脈へと投与して、子宮内膜再生を誘導することを包含する。
いくつかの実施形態において、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)は、上記自己由来BMDSCを単離する前に上記被験体に投与される。いくつかの実施形態において、上記自己由来CD133+ BMDSCは、抗CD133抗体を使用するアフェレーシスによって、上記被験体の末梢循環から単離される。いくつかの実施形態において、上記CD133+ BMDSCは、カテーテルを介して上記子宮動脈へと投与される。いくつかの実施形態において、上記CD133+ BMDSCは、上記被験体の子宮螺旋細動脈へと投与される。いくつかの実施形態において、上記被験体は、アッシャーマン症候群もしくは子宮内膜萎縮を有することが既知である。いくつかの実施形態において、上記被験体は、ホルモン処置に抵抗性である子宮内膜萎縮を有する。いくつかの実施形態において、上記被験体は、1回もしくはこれより多く、胚着床に以前失敗したことがある。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
子宮内膜再生を誘導するための方法であって、該方法は、
自己由来CD133 骨髄由来幹細胞(BMDSC)の有効量を、子宮内膜再生が必要な被験体の子宮動脈へと投与して、子宮内膜再生を誘導すること
を包含する、方法。
(項目2)
前記被験体は、アッシャーマン症候群もしくは子宮内膜萎縮を有することが既知である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記被験体は、ホルモン処置に抵抗性である子宮内膜萎縮を有する、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記被験体は、1回もしくはこれより多く、胚着床に以前失敗したことがある、項目1〜3のいずれか1項に記載の方法。
(項目5)
前記自己由来CD133 BMDSCは、
前記被験体に、該被験体の骨髄から末梢血へとBMDSCを動員するための薬剤を投与すること;および
CD133 BMDSCを該被験体の末梢血から単離すること、
によって調製される、項目1〜4のいずれか1項に記載の方法。
(項目6)
BMDSCを動員するための前記薬剤は、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)である、項目1〜5のいずれか1項に記載の方法。
(項目7)
前記自己由来CD133 BMDSCは、抗CD133抗体を使用するアフェレーシスによって前記被験体の末梢循環から単離される、項目5〜6のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
前記CD133 BMDSCは、カテーテルを介して前記子宮動脈へと投与される、項目1〜8のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記CD133 BMDSCは、前記被験体の子宮螺旋細動脈へと投与される、項目1〜8のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
子宮内膜再生を誘導するための方法であって、該方法は、
自己由来CD133 骨髄由来幹細胞(BMDSC)を、子宮内膜再生が必要な被験体から単離すること;および
該単離されたCD133 BMDSCの有効量を、該被験体の子宮動脈へと投与して、子宮内膜再生を誘導すること
を包含する方法。
(項目11)
顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)は、前記自己由来BMDSCを単離する前に前記被験体へと投与される、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記自己由来CD133 BMDSCは、抗CD133抗体を使用するアフェレーシスによって前記被験体の末梢循環から単離される、項目10〜11のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
前記CD133 BMDSCは、カテーテルを介して前記子宮動脈へと投与される、項目10〜12のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
前記CD133 BMDSCは、前記被験体の子宮螺旋細動脈へと投与される、項目10〜13のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
前記被験体は、アッシャーマン症候群もしくは子宮内膜萎縮を有することが既知である、項目10〜14のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
前記被験体は、ホルモン処置に抵抗性である子宮内膜萎縮を有する、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記被験体は、1回もしくはこれより多く、胚着床に以前失敗したことがある、項目10〜16のいずれか1項に記載の方法。
本発明の限定の各々は、本発明の種々の実施形態を包含し得る。従って、いずれか1つの要素もしくは要素の組み合わせを含む本発明の限定の各々が、本発明の各局面に含まれ得ることは、認識される。本発明は、構築の詳細および以下の説明に示されるかもしくは図面の中で図示される構成要素の配置へのその適用に限定されない。本発明は、他の実施形態が可能であり、種々の方法で実施もしくは実行され得る。また、本明細書で使用される語法および用語法は、説明目的であって、限定とみなされないものとする。「含む、包含する(including)」、「含む、包含する(comprising)」、もしくは「有する(having)」、「含む、包含する、含有する(containing)」、「含む、包含する(involving)」および本明細書中のこれらのバリエーションの使用は、その後に列挙される項目およびその均等物ならびにさらなる項目を包含することが意味される。
図1は、研究デザインを示す模式図(A)および図1Aに示される事象のタイムライン(B)である。
図2は、非侵襲性放射線医学を介して、子宮動脈から、上記CD133+細胞が位置する螺旋細動脈までのプローブの経路を示す血管造影である。
図3は、自己由来BMSC処置の前、該処置の3〜6ヶ月後および9ヶ月後の、萎縮性子宮内膜を有する1名の患者の子宮腔の子宮鏡検査を示す。
図4は、自己由来BMSC治療の前および3ヶ月後の、この研究に含まれる萎縮性子宮内膜/アッシャーマン症候群を有する6名の患者における子宮内膜厚を示す。
図5は、自己由来BMSC処置の前および該処置の3ヶ月後の、平均+SD子宮内膜厚を示す。
図6は、処置前の(pretreatment)基底状態と比較して、自己由来BMSC治療の3ヶ月後に得られる子宮内膜容積の改善を実証する3D超音波画像を示す。
図7A〜7Bは、術前および術後の子宮鏡検査画像を示す。幹細胞治療前(ファーストルック)、および幹細胞治療の2〜3ヶ月後(セカンドルック)および4〜6ヶ月後(サードルック)の、アッシャーマン症候群(図7A)もしくは子宮内膜萎縮(図7B)を有する患者における子宮鏡検査の所見。子宮内膜癒着の重症度は、米国不妊学会(American Fertility Society)分類に従って等級分けされた。 図7A〜7Bは、術前および術後の子宮鏡検査画像を示す。幹細胞治療前(ファーストルック)、および幹細胞治療の2〜3ヶ月後(セカンドルック)および4〜6ヶ月後(サードルック)の、アッシャーマン症候群(図7A)もしくは子宮内膜萎縮(図7B)を有する患者における子宮鏡検査の所見。子宮内膜癒着の重症度は、米国不妊学会(American Fertility Society)分類に従って等級分けされた。
図8A〜8Iは、組織分析を示す。自己由来細胞治療の前(図8A)、該治療の3ヶ月後(図8B)および6ヶ月後(図8C)の、患者7の子宮内膜における成熟血管の検出に関する免疫組織化学結果。α−sma+、CD31+陽性細胞は、成熟血管を同定する(20×)。図8Dは、α−sma染色に関する陽性コントロールとして使用されるヒト子宮筋層を、およびCD31に関する陽性コントロールとして使用されるヒト扁桃を示す(図8E)。図8Fは、一次抗体の非存在から生じる陰性コントロールを示す。図8Gは、図8Cにおいて同定された血管の詳細な写真を示す(40×)。図8Hにおいて、細胞治療の前、ならびに3ヶ月後および6ヶ月後の8名の患者の成熟血管の総数の動力学が示され、これは、時間感受性新血管形成効果(neoangiogenic effect)を示す。図8Iは、処置の前ならびに該処置の3ヶ月後および6ヶ月後の合計成熟血管の平均±SEMの統計分析を示す。 図8A〜8Iは、組織分析を示す。自己由来細胞治療の前(図8A)、該治療の3ヶ月後(図8B)および6ヶ月後(図8C)の、患者7の子宮内膜における成熟血管の検出に関する免疫組織化学結果。α−sma+、CD31+陽性細胞は、成熟血管を同定する(20×)。図8Dは、α−sma染色に関する陽性コントロールとして使用されるヒト子宮筋層を、およびCD31に関する陽性コントロールとして使用されるヒト扁桃を示す(図8E)。図8Fは、一次抗体の非存在から生じる陰性コントロールを示す。図8Gは、図8Cにおいて同定された血管の詳細な写真を示す(40×)。図8Hにおいて、細胞治療の前、ならびに3ヶ月後および6ヶ月後の8名の患者の成熟血管の総数の動力学が示され、これは、時間感受性新血管形成効果(neoangiogenic effect)を示す。図8Iは、処置の前ならびに該処置の3ヶ月後および6ヶ月後の合計成熟血管の平均±SEMの統計分析を示す。 図8A〜8Iは、組織分析を示す。自己由来細胞治療の前(図8A)、該治療の3ヶ月後(図8B)および6ヶ月後(図8C)の、患者7の子宮内膜における成熟血管の検出に関する免疫組織化学結果。α−sma+、CD31+陽性細胞は、成熟血管を同定する(20×)。図8Dは、α−sma染色に関する陽性コントロールとして使用されるヒト子宮筋層を、およびCD31に関する陽性コントロールとして使用されるヒト扁桃を示す(図8E)。図8Fは、一次抗体の非存在から生じる陰性コントロールを示す。図8Gは、図8Cにおいて同定された血管の詳細な写真を示す(40×)。図8Hにおいて、細胞治療の前、ならびに3ヶ月後および6ヶ月後の8名の患者の成熟血管の総数の動力学が示され、これは、時間感受性新血管形成効果(neoangiogenic effect)を示す。図8Iは、処置の前ならびに該処置の3ヶ月後および6ヶ月後の合計成熟血管の平均±SEMの統計分析を示す。
図9は、研究デザインを示す。ASもしくはEAの子宮鏡検査による再確認および等級付けを、増殖相において1名の外科医が行った。BMDSC動員を、G−CSF注射によって誘導し、5日後に、CD133+細胞を、末梢血からアフェレーシスを介して単離し、直ぐに、インターベンショナルラジオロジーによって螺旋動脈へと注入した。セカンドルックおよびサードルック子宮鏡検査を行って、幹細胞処置後に子宮腔を評価した。次いで、上記患者は、妊娠しようと試みるように要請された。
(発明の詳細な説明)
本発明は、少なくとも部分的に、自己由来幹細胞治療を使用して子宮内膜再生を誘導する新たな治療アプローチの発見に基づく。特に、本出願は、自己由来CD133+骨髄由来幹細胞(BMDSC)が自己由来機能的子宮内膜の新規生成をもたらす血管形成を再生し得るという知見に基づく。BMDSCは、種々の子宮内膜細胞区画(間質、腺上皮、および内腔上皮)における非造血細胞の供給源であることが公知であったものの、BMDSCの亜集団(複数可)が子宮内膜の修復を促進することは公知ではなかった。本出願は、子宮内膜再生を誘導し、アッシャーマン症候群および子宮内膜萎縮のような子宮内膜変性と関連する病変を処置するために安全かつ有効な細胞ベースの治療を提供する。
ヒトの子宮は、子宮内膜および子宮筋層といわれる外側の平滑筋層から主になる。上記ヒト子宮内膜の機能的層は、女性の生殖可能年数の間に増殖、分化および脱落という月に1回のサイクルを行う非常に再生性の組織である。循環するエストロゲンおよびプロゲステロンのレベルの変動は、ヒト子宮内膜のこの劇的なリモデリングを組織化する。子宮内膜再生はまた、分娩および子宮内膜切除の後に起こる。上記基底層からの子宮内膜再生は、上記機能的層の置き換え、続いて、月経および分娩の間のその剥離に寄与する。しかし、上記子宮内膜は、エストロゲンに応答できない可能性があり、ある種の病変、例えば、アッシャーマン症候群および子宮内膜の萎縮では再生しない可能性がある。このような被験体は、異常な子宮内膜増殖を経験し得、不妊になり得る。
アッシャーマン症候群(AS)(もしくはフリッチュ症候群)は、子宮内腔の拡張掻爬術と最も頻繁に関連する子宮内膜の癒着および/もしくは線維症によって特徴付けられる状態である。多くの他の用語が、以下を含む状態および関連した状態を記載するために使用されてきた:子宮腔癒着症(IUA)、子宮/子宮頸管閉鎖症、外傷性子宮萎縮、硬化性子宮内膜、子宮内膜硬化症、および子宮内癒着(intrauterine synechiae)。子宮内膜基底層への外傷(例えば、流産後、もしくは出産の後に、または医療中絶のために実行される拡張掻爬術(D&C)後の)は、子宮腔を種々の程度まで消滅させ得る癒着を生じる子宮内瘢痕の発生をもたらし得る。極端には、腔全体が瘢痕化および閉塞され得る。比較的瘢痕が少ないとしても、子宮内膜は、エストロゲンに応答できない可能性があり、被験体は、続発性の月経不順(例えば、無月経、過少月経、もしくは希発月経)を経験し得、不妊になり得る。ASはまた、他の骨盤手術(帝王切開術、類線維腫の除去(筋腫摘出)が挙げられる)から、および他の原因(例えば、IUD、骨盤照射、住血吸虫症および性器結核)から生じ得る。性器結核に由来する慢性子宮内膜炎は、発展途上国における重症の子宮腔癒着症(IUA)の重要な原因であり、処置しがたい子宮腔の完全な消滅をしばしば生じる。
子宮鏡検査は、ASの診断の常套手段である。ソノヒステログラフィーもしくは子宮卵管造影による画像化は、瘢痕形成の程度を明らかにする。重症度の程度に依存して、ASは、不妊、反復性の流産、閉じ込められた血液による疼痛、および将来の産科の合併症を生じ得る。処置されないままであれば、癒着から生じる経血の流れの閉塞は、いくらかの場合には、子宮内膜症をもたらし得る。
子宮内膜萎縮では、子宮内膜は、低いエストロゲンレベルの結果として薄くなりすぎる。萎縮性とみなされるためには、子宮内膜厚は、経膣的超音波スキャンで4〜5mm未満の厚みでなければならない。子宮体 対 子宮頸管比はまた、低下する傾向にあり、1:1に近くなり得る。MRIはまた、超音波で観察されるものに類似の子宮内膜厚の低下を明らかに示し得る。子宮内膜萎縮を引き起こし得る要因としては、長期の経口避妊、低エストロゲン状態(卵巣機能不全)およびタモキシフェンの使用が挙げられる。
本発明の一局面によれば、子宮内膜再生を誘導するための方法が提供される。上記方法は、自己由来CD133+骨髄由来幹細胞(BMDSC)の有効量を、子宮内膜再生が必要な被験体の子宮動脈へと投与して子宮内膜再生を誘導することを包含する。
本発明の一局面によれば、子宮内膜再生を誘導するための方法が提供される。上記方法は、自己由来CD133+骨髄由来幹細胞(BMDSC)を、子宮内膜再生が必要な被験体から単離すること;および上記単離されたCD133+ BMDSCの有効量を、上記被験体の子宮動脈へと投与して、子宮内膜再生を誘導することを包含する。
本明細書で使用される場合、「被験体」は、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、ヒト、および非ヒト霊長類が挙げられるが、これらに限定されない全ての哺乳動物を包含する。いくつかの実施形態において、上記被験体は、女性である。
子宮内膜再生の必要性のある被験体は、子宮内膜がエストロゲンに応答して再生せず、薄い子宮内膜裏打ちを有する被験体である。このような被験体はしばしば、異常な子宮内膜増殖を経験し、不妊になる。子宮内膜裏打ちの最適な厚みは、10〜15mmの間であり、女性の月経周期の21日目あたりでの着床のときにその最大厚に達する。いくつかの実施形態において、処置の必要性のある被験体は、5mm未満、4mm未満、3mm未満、2mm未満もしくは1mm未満である、着床のときの子宮内膜厚を有する。いくつかの実施形態において、上記被験体は、出血の流れおよび持続時間の減少によって特徴付けられる月経不順(無月経、過少月経、もしくは希発月経)および/または再発性妊娠損失を有する。いくつかの実施形態において、上記被験体は、アッシャーマン症候群もしくは子宮内膜萎縮を有することが既知である。いくつかの実施形態において、上記被験体は、ホルモン処置に抵抗性である子宮内膜萎縮を有する。いくつかの実施形態において、上記被験体は、1回もしくはこれより多く、胚着床に以前失敗したことがある。
骨髄由来幹細胞(BMDSC)は、組織修復および種々の器官および組織の再生への外因性の供給源として寄与することが示された。ヒトおよびマウスの子宮内膜では、BMDSCはまた、種々の子宮内膜細胞区画(間質、腺上皮、および内腔上皮)における非造血細胞の供給源である。それらは、主には子宮内膜の間質区画の細胞(endometrial stromal compartment cell)の形成に、およびよりはるかに低い程度には、子宮内膜の腺上皮および内腔上皮区画に寄与する。
BMDSCは、造血幹細胞(HSC)、および間葉幹細胞(MSC)を含む。しかし、BMDSCのどの亜集団(複数可)が子宮内膜の修復を促進するかは、未知であった。
本出願の発明者らは、ヒトにおいて、外科手術およびカテーテル送達システムを介して子宮動脈へと送達されるCD133骨髄由来幹細胞が子宮内膜再生を誘導する能力を初めて実証した。自己由来の循環するCD133 BMDSCを、以前の骨髄動員後に単離し、その同じ患者の子宮の螺旋細動脈へと再移植した。上記CD133 BMDSCは、自己由来機能的子宮内膜の新規生成をもたらす血管形成を再生する。CD133は、ヒトおよび齧歯類においてProminin 1(PROM1)としても公知の糖タンパク質である。それは、膜突起に位置し、成体幹細胞(ここでは、それは分化を抑制することによって幹細胞特性を維持することにおいて機能すると考えられる)上でしばしば発現される5回膜貫通コレステロール結合タンパク質である。
本発明のCD133 BMDSCは、初代幹細胞に由来してもよいし、樹立された幹細胞株に由来してもよい。いくつかの実施形態において、幹細胞は、胚性幹細胞、成体幹細胞、臍帯血幹細胞、体細胞性幹細胞、骨髄もしくは動員された骨髄幹細胞であり得る。好ましい実施形態において、上記幹細胞は、成体幹細胞である。
いくつかの実施形態において、上記CD133 BMDSCは、上記被験体に、BMDSCを上記被験体の骨髄から末梢血へと動員するための薬剤を投与すること;上記被験体の末梢血からCD133BMDSCを単離することによって調製される。いくつかの実施形態において、上記幹細胞動員薬剤は、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、およびプレリキサフォル(AMD3100)からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、上記幹細胞動員薬剤は、G−CSFである。
いくつかの実施形態において、上記自己由来CD133 BMDSCは、抗CD133抗体を使用するアフェレーシスといわれるプロセスによって上記被験体の末梢循環から単離される(例えば、Sovalat H, Scrofani M, Eidenschenk A, Pasquet S, Rimelen V, Henon P. Identification and isolation from either adult human bone marrow or G−CSF−mobilized peripheral blood of CD34(+)/CD133(+)/CXCR4(+)/ Lin(−)CD45(−) cells, featuring morphological, molecular, and phenotypic characteristics of very small embryonic−like (VSEL) stem cells. Exp Hematol. 2011 Apr;39(4):495−505(それらの内容全体は、それらの全体において本明細書で援用される)を参照のこと)。アフェレーシス(これは、当該分野で周知のプロセスである)とは、血液がドナー被験体から引き抜かれ、その構成要素へと分離され、そのうちのいくらかは保持され(例えば、幹細胞集団)、その残りは上記ドナー被験体への輸血によって戻されるプロセスまたは手順をいう。アフェレーシスは、全血供血(whole blood donation)より長くかかる。全血供血は、血液を集めるのに約10〜20分間かかる一方で、アフェレーシス献血(apheresis donation)は、約1〜2時間かかり得る。アフェレーシス産物とは、アフェレーシスのプロセスから集められる細胞の異種集団をいう。
いくつかの実施形態において、上記CD133 BMDSCは、抗CD133抗体を使用して単離されたBMDSCから単離される。いくつかの実施形態において、上記CD133 BMDSCは、上記CD133 BMDSCが少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、99.9%もしくは100%純粋になるまで、抗CD133抗体を使用して選択される。いくつかの実施形態において、上記CD133 BMDSCは、少なくとも95%、98%、99%、99.9%もしくは100%純粋である。
CD133 BMDSC、もしくはこのような細胞を含む治療用組成物の、子宮内膜再生が必要な被験体への投与は、例えば、移植(transplantation)、移植(implantation)(例えば、上記細胞自体の、もしくはマトリクス−細胞組み合わせの一部としての上記細胞の)、注射(例えば、子宮動脈へと直接)、注入、カテーテルを介した送達、または細胞治療を提供することに関して当該分野で公知の任意の他の手段によって達成され得る。一実施形態において、上記細胞は、動脈内カテーテル法によって送達される。子宮動脈のカテーテル法手順は、広く記載されてきており、子宮筋腫の塞栓術において使用されてきた(Ravina JH, Herbreteau D, Ciraru−Vigneron N, et al. Arterial embolisation to treat uterine myomata. Lancet 1995;346(8976):671−2(その内容全体は、それらの全体において本明細書に援用される)。
上記CD133 BMDSCは、上記被験体の子宮動脈へと投与され得る。これら動脈は、子宮へと血液を供給する。いくつかの実施形態において、上記CD133+ BMDSCは、上記被験体の子宮螺旋細動脈へと投与される。螺旋動脈は、月経周期の黄体期の間に子宮の子宮内膜へと血液を一時的に供給する小動脈である。これら動脈は、エストロゲンおよびプロゲステロンに対して非常に感受性であり、子宮内膜の機能的層を貫通し、成長し、その内部に分岐し、非常に異なりかつ特有のパターンを示す。
上記CD133 BMDSCは、有効量で投与される。「有効量」とは、所望の生物学的応答(すなわち、子宮内膜再生を誘導すること)を誘起するために十分な量をいう。有効量は、ASもしくは子宮内膜萎縮と関連した1もしくはこれより多くの症状を遅らせるか、低減するか、阻害するか、改善する(ameliorate)か、もしくは逆転する(reverse)ために必要なその量を含む。いくつかの実施形態において、このような用語は、以下に言及する:
・上記CD133BMSC幹細胞処置後の月経の再開;
・子宮内膜厚の増大;(子宮内膜厚は、子宮内膜腔の底において子宮筋層の上限から下限までの長さとして測定される)。例えば、上記増大は、子宮底において長軸方向の膣超音波によって測定される、ホルモン補充療法(HRT)でこれまで得られた最大厚の50%の増大であり得る(4〜6mmのvgr);
・新規子宮内膜形成の子宮鏡検査によるおよび組織学的な証拠;ならびに/または
・これら患者における胚配置(embryo placement)後の生児出生率(live−birth rate)、妊娠および着床率に関する再構築された子宮内膜の機能性。
いくつかの実施形態において、少なくとも4500万個のCD133 BMDSCは、上記被験体へと注入される。いくつかの実施形態において、少なくとも5000万個、5500万個、6000万個、6500万個のCD133 BMDSCが、上記被験体へと注入される。
有効量は、慣用的方法を使用して、当業者によって決定され得る。いくつかの実施形態において、有効量は、処置されている状態における任意の改善を生じる量である。当業者は、例えば、インビトロおよび/もしくはインビボの試験、ならびに/または化合物投与量の他の知見に基づいて使用するために、治療剤の適切な用量および範囲を決定し得る。被験体に投与される場合、上記治療剤の有効量は、当然のことながら、処置されている特定の疾患;疾患の重症度;個々の患者パラメーター(年齢、身体的状態、サイズおよび重量が挙げられる)、現在の処置、処置の頻度、ならびに投与様式に依存する。これら因子は、当業者に周知であり、慣用的な実験のみで対処され得る。いくつかの実施形態において、最大用量が使用される(すなわち、妥当な医学的判断に従う最高の安全な用量)。
本発明は、以下の実施例によってさらに例証され、実施例は、さらなる限定として決して解釈されないものとする。本出願全体を通じて引用される参考文献(学術文献、発行された特許、公開された特許出願、および同時係属中の特許出願が挙げられる)の全ての内容全体は、明示的に参考として援用される。
(実施例1)
(材料および方法)
(デザイン)
以下は、Hospital Clinico de Valencia(Spain)のIRBによって承認され、Spanish Ministry of Healthによって資金援助(Ref EC 11−299)された、難治性ASを有する16名の患者における実験的な非対照研究である。BMDSC動員を、顆粒球−CSF(G−CSF)(4日間の間に5mg/kg/12時間 sc)を使用して行った。7日後に、末梢血アフェレーシスとCD133+細胞の単離を、行った。次いで、自己由来CD133+細胞を、非侵襲性放射線医学介入によって、2.5 Fマイクロカテーテルを使用して子宮動脈を介して、螺旋細動脈へと送達した。子宮内膜腔状態を、幹細胞介入の、ならびに該介入の3ヶ月後、6ヶ月後および9ヶ月後に、子宮鏡検査、膣超音波、および組織学を介して評価した。
(患者および方法)
(包含基準)
少なくとも7回手術で以前処置された難治性アッシャーマン症候群、または再発性着床不全を伴うホルモン処置に抵抗性の子宮内膜萎縮(<4mm)と診断された16名の患者を、上記研究に含めた。全ての患者は、世界中の彼らのそれぞれの医師に付託されて、Spanish Ministry of Healthによって支援を受けた臨床実験研究に参加した。患者の年齢は、20〜45歳齢の範囲に及び、全て、正常な肝機能、心機能および腎機能を有した。自然の周期において、もしくはホルモン補充療法(HRT)後に月経による出血がないことを確認した。精神医学的病理、HIV、B型肝炎もしくはC型肝炎、および梅毒がないこと、ならびに上記研究に参加する意志があることもまた確認した。
(排除基準)
患者を、末梢静脈へのアクセスがない場合、または彼らが脾腫を有した場合には、上記研究から排除した。
(方法論)
(1.骨髄幹細胞(BMSC)動員)
動員手順を開始するために、以下の条件を満たした:
・上記患者に、上記手順について情報を与え、上記動員の少なくとも24時間前に同意書を与えた。
・相当する医学的評価を、関連する補完的触診(exploration)とともに行い、BMSC再収集に責任のある医師が確認した。
・関連する血清学的試験結果(HIV、HBcAg、HBsAg、HCV、梅毒)を利用可能になった。
・静脈を評価して上記手順に彼らが適切であることを決定した。
次いで、末梢血へのBMSC動員を、G−CSF(5mcg/kg sc 12時間ごと)によって4日間誘導した。
(2.BMSC再収集)
上記BMSC再収集を、末梢静脈を使用して従来のアフェレーシス手順によって行った。上記CD133細胞の陽性選択を、3回の洗浄およびCD133細胞のその後の選択の適用による、Hospital Clinico Universitarioによって承認されたPO−7610−02プロトコルに従って行った。第1に、上記細胞を洗浄し、モノクローナル抗体とともにインキュベートし、次いで、それらをさらに2回洗浄し、最後に、CD133選択を受けさせた。
上記選択手順を、最大3時間にわたって、または少なくとも5000万個のCD 133細胞が集められるまで行った。
(3.動脈内カテーテル法による子宮螺旋細動脈へのCD133+細胞移植)
それらの単離の24時間後、自己由来CD133細胞を、15〜30ccの生理食塩水溶液中に希釈し、次いで、螺旋動脈へと注入した。細胞を、滅菌シリンジを介して容器の中へと集めて、それらの注入前に放射線医学部門へと持って行った。少なくとも4500万個の細胞を注入した。
子宮動脈のカテーテル法手順は広く記載されてきており、子宮筋腫の塞栓術において使用されてきた。この手順の必要とされる放射線医学設備は、放射線外科用Cアームもしくは超音波スキャンを備える血管造影室であった。簡潔には、セルディンガー法を使用して総大腿動脈へのアクセスを得た後、4Fカテーテルを、動脈の中に配置し、コブラカーブ2およびTerumoガイド0.035インチを有する血管造影用カテーテルを使用して、両方の内腸骨動脈(hypogastric artery)にカテーテル挿入するために使用した。マイクロカテーテル2.5 Fを、上記コブラカテーテルを介してガイド0.014インチとともに配置し、子宮動脈に、上向きの屈曲(ascendant curve)までもしくは上記マイクロカテーテルがその最も遠位のレベルに達するまで、カテーテル挿入する。いったん上記カテーテルが安定し、その位置をチェックしたら、上記CD133+ BMSCを、生理食塩水懸濁物において注入した。細胞注射のためのカテーテルの直径は、500〜600ミクロンであり、15ccを灌流した。
介入の後、上記患者は一晩入院させ、翌日に合併症なしで退院した。
(応答基準)
この技術は、子宮内膜に起因する再発性着床不全のためにARTを受けている患者において胚着床を可能にし得る機能的子宮内膜を再構築するために、CD133 BMSCを使用してアッシャーマン症候群もしくは子宮内膜萎縮に罹患している患者において子宮内膜血管性ニッチを再配置することを目的とする。従って、以下のインジケーターを、成功裡の処置と考えた:
・月経転帰。月経は、上記CD133BMSC処置の後に再開しなければならない。
・子宮内膜厚の増大。これまでHRTで得られた最大厚のうちの最小50%が、子宮底において縦軸方向の(longitudinal axis)膣超音波によって測定された(4〜6mmのvgr)。
・形成される新規子宮内膜の子宮鏡検査によるおよび組織学の証拠。
・これら患者における胚移植(embryo replacement)後の生児出生率、妊娠および着床率に関する上記再構築された子宮内膜の機能性。
(結果)
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これは、ASにおいて血管内に適用されるこの特異的幹細胞処置を使用する最初の症例集積研究である。ASの発生率は、不妊女性のうちの2〜22%の間で変動する。
G−CSFは、自己由来および同種異系ドナーの両方において、BMSC動員のための最も一般的に使用されるサイトカインである。この製品は、一般に十分に耐容性がある。しかし、5mcg/kg/日より高い用量の投与は、上記症例のうちの50%超において骨筋の疼痛(osteomuscular pain)をもたらすことが示された。これが起こる場合、パラセタモールは、G−CSFの投与を維持しながら、鎮痛剤として投与されるべきである(500mg/8時間)。他のより頻度の低い観察される合併症は、以下である:悪心および嘔吐、片頭痛、ならびに不眠症。各症例において、対症療法が施されるべきである。一般に、上記症状は、G−CSFの投与の中止後3〜4日間で消失するが、無力症の感覚は、最後の用量から最大2週間まで続き得る。最後に、健常なドナーにおける脾臓破裂は、G−SCFの投与と関連付けられてきた。この事実に起因して、腹部スキャンは、左下肋部に疼痛を示す全ての患者において行われるべきである。それらの症例において検出される脾腫の後には、G−CSFの即座の懸濁物が続くべきである。いかなる関連する症状もなしでのアルカリホスファターゼおよびLDHの高レベルは、しばしば検出される。白血球増多症は、極めて一般的であり、値は、通常70×10/L未満である。
(実施例2)
(研究参加者)
米国不妊学会分類に基づく難治性アッシャーマン症候群(AS)(N=11)、もしくは子宮内膜萎縮(N=5)のいずれかと診断された16名の患者(30〜45歳齢の範囲)に、上記研究に参加するように要請した。重症のアッシャーマン症候群もしくは子宮内膜萎縮のより以前の診断を確認し、増殖相において子宮鏡検査を行った。ASと診断された患者を、子宮癒着のAFS分類に従って分類し、子宮内膜生検を得た。全ての患者は、彼らの自然な周期の間にもしくはホルモン補充療法(HRT)後、ほとんどもしくは全く月経による出血を経験しなかった。上記研究に参加する要件は、以下を包含した:正常な肝機能、心機能、および腎機能、HIV、B型肝炎もしくはC型肝炎、梅毒ならびに精神医学的病理がないこと、上記研究を完了する意志があること。末梢静脈アクセスがないかまたは脾腫がある場合に、患者を排除した。
(BMDSC動員および単離)
BMDSCの動員を、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)の薬理学的投与によって誘導した(−4日目、−3日目、−2日目および−1日目に10μg/kg/日)。G−CSFは、自己由来および同種異系ドナーの両方においてこの目的のために広く使用されるサイトカインである。上記注射の5日後、CD133細胞の単離を、CobeSpectra分離器(Terumo BCT, Lakewood, CO)を使用して末梢静脈を経るアフェレーシスを介して単離した。2〜3個のサンプルを、患者毎に加工処理し、CD133+細胞の陽性選択を、CliniMACS(登録商標)システム(Miltenyi Biotec GmbH, Bergisch Gladbach, Germany)を使用して確立されたプロトコルに従って得た。上記選択を、5000万個の細胞が得られるまで、上記収集の3時間以内に行った。単離されたCD133細胞を、15〜30ccの生理食塩水の中へ希釈し、螺旋細動脈への送達のために放射線医学部門へと滅菌シリンジの中に入れて輸送した。
(BMDSCの送達)
成功裡のCD133単離後に、患者を、HCUの放射線医学部門に付託し、ここで動脈内カテーテル法を行って、線維腫の塞栓術のために使用する技術を使用して子宮内膜幹細胞ニッチへと上記細胞を送達した。セルディンガー法を使用して総大腿動脈に近づき、ここで4 F導入器は、血管造影用カテーテルカーブおよびガイドTerumo(0.035インチ)で両方の内腸骨動脈のカテーテル法を可能にした。後者のカテーテルを介して、ガイド(0.014インチ)付きの2.5 Fマイクロカテーテルを導入して、子宮動脈から上記マイクロカテーテルが到達できる最も遠位の螺旋細動脈へとカテーテル挿入した(図9)。いったん上記カテーテル位置が安定しかつ確認された後、上記選択されたCD133+細胞の生理食塩水懸濁物のうちの15cc(42〜200×10細胞、平均123.56×10±57.64を含む)を、各子宮動脈を通って螺旋細動脈へと注射した。
(追跡)
全ての患者に、細胞治療を受けさせた後に、ホルモン補充療法(ProgylutonTM, Bayer, Berlin, Germany)を与えた。子宮内膜腔の状態を、診断的な子宮鏡検査、膣超音波、および組織学によって評価して、細胞治療の前、該治療の2ヶ月後、3ヶ月後、および6ヶ月後の子宮内膜厚および子宮内膜癒着の存在もしくは非存在を決定した。次いで、患者に、ARTを受けて受胎を試みるように要請した(図9)。
(子宮内膜免疫組織化学)
血管形成を、抗ヒトCD31(Dako, Glostrup, Denmark)と二次Alexaヤギ抗マウス488、およびマウス抗ヒトα−sma−Cy3(Sigma−Aldrich, MO, EEUU)を使用して、パラフィン切片においてCD31およびα−sma−Cy3免疫組織化学によって評価した。スライドを、DAPI(Invitrogen, CA, EEUU)で対比染色した。陽性コントロールは、CD31についてはヒト扁桃およびα−smaについては子宮筋層を含んだ。スライドを、蛍光Nikon Eclipse 80i顕微鏡の下で試験した。3つの別個の20×視野を使用して、ImageJ Softwareによって、面積あたりの全血管形成を分析した。データを、細胞治療の前、ならびに該治療の3ヶ月後および6ヶ月後の、あらゆる患者の特異的値として示す。
(統計分析)
統計分析を、SPSS 17.0ソフトウェア(IBM, MD, USA)を使用して行った。対応のあるサンプルt検定を使用して、全成熟血管の計数において観察された差異を分析した。両側検定において得られるp値≦0.05を、統計的有意とみなした。
(結果)
2名の患者を、一方の症例ではCD133+細胞(<4000万個)の不十分な動員に起因して、および他方の症例では末梢静脈アクセスがないことに起因して、上記研究から最初に排除した。合計16名の患者が上記プロトコルを完了した。大きな合併症は報告されなかった。
患者を、難治性ASの診断に伴って研究に付託した(N=11)(表3)。上記患者の月経歴から、2名の患者において無月経が、および9名の患者において僅かな出血(scant spotting)が明らかになった。ASの原因は、外傷性拡張掻爬術(D&C)(N=9)、子宮鏡検査による筋腫摘出(N=1)、および説明不能(N=1)であった。以前に試みた修復的外科的(reparative operative)子宮鏡検査の平均数は、2であった。いずれの患者も、外科的処置にも関わらず、彼女の子宮内膜状態の有意な改善を報告しなかった。3名の患者がASグレードIIIとして分類され、4名の患者がグレードII+EAとしてスコア付けされ、2名の患者がグレードIIとして分類され、1名の患者がASグレードIとして分類された(図7A)。細胞治療の前にHRTの高用量で達成した最大子宮内膜厚は、4.3mm±0.74(2.7〜5mmの範囲)であった(表3)。
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この研究に登録したEAおよび着床不全を有する患者(N=5)(表4)は、無月経(N=3)もしくは僅かな出血(N=2)という以前の月経歴を有した。この原因は、以前のD&C(N=1)、説明不能(N=1)、レボノルゲストレルIUDの使用(N=1)、早発卵巣不全(N=1)、および以前の子宮鏡検査による筋腫摘出(N=1)であった。試みられた以前の修復的外科的子宮鏡検査の平均数は、2であった。重症の子宮内膜萎縮を、全ての症例において観察した(図7B)。細胞治療の前にHRTの高用量で達した最大子宮内膜厚は、4.2mm±0.8(2.7〜5mmの範囲)であった(表4)。
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(幹細胞治療後の子宮内膜再構築)
自己由来CD133 BMDSC治療後に、月経周期は、EAを有する1名を除いて、全16名の患者においてHRTで再開した。しかし、月経の継続時間および強度(使用されるパッドの数によって評価されるとおり)は、細胞治療後の1ヶ月目において平均5.06日(範囲は3〜7日間)から6ヶ月目において2.12日(範囲は1〜3日間)へと徐々に減少した(補足図1A)。経血容積はまた、6ヶ月目において1日あたり平均2.68(範囲は1〜5)から1.5(範囲は1〜4)個のパッドへと減少した。
細胞治療の2ヶ月後、3ヶ月後および6ヶ月後に行った子宮の観察から、子宮内膜および子宮腔の改善が明らかになった(表3および表4;図7)。具体的には、ステージIII ASと診断された全ての患者は、ステージIへと改善した一方で、ステージIIに罹患した2名の患者のうちの1名は、完全に正常化した子宮内膜腔を示し、他方はステージIに改善した。その残りの患者(ステージIと最初に診断された)は、表3に示されるように定性化スコアに関して改善した。観察された最大の術後子宮内膜厚は、6.7mmであった(範囲は3.1〜12mm)(表3,図7A)。EA群において、正常な子宮内膜を、5名の患者のうちの4名において細胞治療後に観察した(表4;図7B)。細胞治療後に得た最大子宮内膜厚は、5.7mmであった(範囲は5〜12mm)(表4)。
形成された成熟血管の総数は、細胞治療の前、ならびに該治療の3ヶ月後および6ヶ月後に行われたCD31およびα−smaの共局在によって、8名の患者において評価した(図8)。血管形成の漸増は、処置の3ヶ月後に観察された(患者4、5、7、12、および13)一方で、成熟血管の一貫した数が、他方で観察された(患者6、9、および10)(図8H)。上記実験の開始時点(コントロールといわれる)とCD133+細胞での特定の処置の3ヶ月後との間で結果を比較するために、上記データの相応する平均およびSEMを調べた。全成熟血管(CD31+/α−sma+)の増大した数を、処置の3ヶ月後の患者において観察した(p=0.021)。これら結果は、6ヶ月後に徐々に減少するASおよびEAを有する患者において自己由来のCD133+細胞注射後に特徴的な新血管形成(neoangiogenesis)を示唆する(図8I)。
上記再構築された子宮内膜の機能性を、自己由来CD133+BMDSC治療後に妊娠する意志のある患者の生殖転帰によって評価した(表3および表4)。2名の患者は、それぞれ、細胞治療の2ヶ月後および4ヶ月後に自然に妊娠し、継続妊娠(患者15)を、および前期破水に起因して第17週の間に流産(患者7)を生じた。6名の妊娠陽性を13の胚移植後に得、3名は生化学的妊娠、1名は流産後に評価された染色体異常の胚に起因して第9週において流産、1名は子宮外妊娠、および1名は継続妊娠(患者12)を生じた。1症例において、胚の全てにおける染色体異常に起因して胚移植を取りやめ(患者8)、別の症例では、細胞治療の失敗に起因して移植を行わなかった(患者14)。
(考察)
組織学的観点から、ASは、子宮内膜幹細胞に、および従って、組織機能に影響を及ぼす線維性組織による、子宮内膜間質の置換に相当する。腺は、ホルモン刺激に一般に非応答性である不活性な立方−円柱上皮(cubo−columnar epithelium)によって通常置き換えられ、子宮内膜幹細胞のニッチ、従って、組織機能に影響を及ぼす子宮内膜構造の完全な消失を引き起こす。ASの発見後最初の50〜60年の間に、研究者らは、上記状態の有病率、原因、および病理に焦点を当てた。内視鏡検査の出現とともに、上記状態の診断および処置のための新たな方法が開発された;しかし、技術の進歩にも関わらず、上記AS症例のうちの約50%は、今日でも、包括的治癒がない。
ここでは、子宮内膜幹細胞ニッチを特異的に標的化する幹細胞治療の最初の例が記載される。定常状態条件下で、循環EPC(cEP)は、循環中の細胞のうちのわずか0.01%を表す。従って、罹患した器官における直接注入と合わせたcEPの動員を計画した。自己由来CD133 BMDSCを、G−CSFでの動員後に単離し、次いで、非侵襲性の放射線医学的手順を使用して、患者の子宮の螺旋細動脈へと再導入した。CD133BMDSCは、血管形成を再生し、子宮内膜増殖を誘導し、自己由来の再構築された子宮内膜の生成をもたらす。CD133 BMDSCは、非造血適用での再生医療に関する臨床試験において近年探索されてきた。
主要目的は、子宮内膜の再構築であり、月経の再開によって最初に評価した。これは、本発明者らの患者の16名のうちの15名において起こった。月経の継続時間および強度は、細胞治療の6ヶ月後に徐々に低下したが、幹細胞治療は、子宮内膜形態において即座の差異を生じた。子宮腔の子宮鏡検査による可視化、膣超音波によって測定される子宮内膜厚、および免疫組織化学を介した新血管形成は、子宮内膜の有効であるが一時的異な再構築と一致した。二次的な目的は、受胎を試みることによって、再構築された子宮内膜の機能性を試験することであった。ARTの使用でのいくつかの自然妊娠が、細胞治療の後に達成され、上記研究で観察された2例の流産は、子宮内膜機能性に関連しなかった。
細胞生着は、主要な関心事であった。なぜならIRBは、上記注射した細胞を追跡するために、超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPIO)でのCD133+BMDSCの標識を許容しないからである。代わりに、アッシャーマン症候群のマウス免疫不全実験モデルを、この目的のために利用した。この研究に関与する患者の100万個のCD133+ BMDSCのアリコートを、さらなる特徴付けのために使用し、Lgr5+ 細胞およびアルデヒドデヒドロゲナーゼ1(ALDH1)活性についてアッセイしたところ、75.72±8% Lgr5+ 細胞および77.45±7.81% ALDH1活性(それぞれ、幹細胞および前駆細胞状態を同定する)を生じた。別の100万個の細胞アリコートを、50μg/mL Molday ION Rhodamine Bとともに18時間インキュベートしたところ、全ての実験において97%より高い標識効率を生じた。次いで、SPIO標識細胞を、尾静脈もしくは子宮内注射を介してアッシャーマン症候群の免疫不全マウスモデルに注射した。細胞生着を、プルシアンブルー染色を使用して細胞内鉄沈着の同定によって検出したところ、CD133+BMDSCが外傷を受けた子宮内膜の子宮内膜血管の周りに主に生着したことが明らかにされた。
以前の症例報告は、骨髄に由来するCD9、CD40、およびCD90細胞の自己由来幹細胞単離および子宮内膜腔へのそれらの配置でASを処置する陽性の結果を示した一方で、別の症例報告は、特徴付けされていない単核幹細胞を子宮内膜下ゾーンへとニードルで直接配置することを記載した。両症例報告は、送達される細胞のタイプおよび標的化される幹細胞ニッチにおいて異なる。
本研究は、CD133 BMDSC自己由来細胞治療が妊娠する意志のある難治性ASおよびEAを有する患者を処置するにあたって有用であることを実証する。
参考文献
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本発明の種々の改変は、本明細書で示され、記載されたものに加えて、前述の説明から当業者に明らかになり、添付の特許請求の範囲の範囲内に入る。本発明の利点および目的は、本発明の各実施形態によって必ずしも包含されない。

Claims (8)

  1. アッシャーマン症候群または子宮内膜萎縮の処置を必要とする被験体におけるアッシャーマン症候群または子宮内膜萎縮の処置において使用するための、単離された自己由来CD133+骨髄由来幹細胞(BMDSC)を含む組成物であって、前記組成物が前記被験体の子宮動脈へと投与されることを特徴とし、前記被験体がホルモン処置に抵抗性である子宮内膜委縮を有する、組成物。
  2. 前記被験体が1回またはこれより多く、胚着床に以前失敗したことがある、請求項1に記載の使用のための組成物。
  3. 前記単離された自己由来CD133+BMDSCは、前記被験体の骨髄から末梢血へとBMDSCを動員するための薬剤を前記被験体に投与した後に前記被験体の末梢血から単離される、請求項1または2に記載の使用のための組成物。
  4. BMDSCを動員するための前記薬剤が顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)である、請求項に記載の使用のための組成物。
  5. 前記組成物がカテーテルを介して子宮動脈へと投与されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  6. 前記組成物が前記被験体の子宮螺旋細動脈へと投与されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  7. 前記自己由来CD133+BMDSCはアフェレーシスによって、前記被験体の前記末梢血から単離され、前記アフェレーシスは抗CD133抗体を使用して行われる、請求項のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  8. 前記組成物が少なくとも4500万個のCD133+BMDSCを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
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