JP6920059B2 - 吸収性物品 - Google Patents

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Description

本発明は、吸収性物品に関する。
使い捨ておむつ、失禁パッド及び生理用ナプキンなどの各種の吸収性物品においては、吸収した排泄物から生ずる臭気が知覚されないようにする目的で、該吸収性物品に香料を施して臭気をマスキングすることがしばしば行われている。マスキングの効果を高めるためには、香料の香りを強くする必要があるが、香料の香りが強すぎると、着用者や他者の気分を悪くさせることがある。
香料によるマスキング効果を高める目的で、香料は一般に吸収性物品における吸収体に施されることが多い。しかし、吸収体に吸収された尿等の排泄物が香料と混ざり合うことで別の臭いが発生し、香料によるマスキング効果が低下する場合がある。
吸収性物品に吸収保持された排泄物から生ずる臭気を抑制する他の技術として、特許文献1には、表面シートとして使用する不織布に防臭剤を塗布ないし含浸させることが記載されている。特許文献2には、吸収性物品の表面シートを構成する、消臭剤を配合した穴あきフィルムで形成することが記載されている。
特開平3−309937号公報 特開2001−276117号公報
特許文献1及び2に記載の技術は、臭気をある程度は抑制できるものの、香気を生ずるものではないので、臭気のマスキング効果が奏されるものではない。
したがって本発明の課題は、賦香された吸収性物品の改良にあり、更に詳しくは排泄物の吸収に起因して生じる臭気を香料によって効果的に抑制し得る吸収性物品を提供することにある。
本発明は、表面シートと、裏面シートと、両シート間に配置された吸収体とを有する吸収性物品であって、
前記表面シートは、その肌対向面側が凹凸構造を有しており、該凹凸構造における凸部の頂部を形成する頂部域と、凹部の底部を形成する底部域と、該頂部域及び該底部域の間に位置する側部域とを有し、
前記頂部域に香料を含む吸収性物品を提供するものである。
本発明によれば、排泄物の吸収に起因して生じる尿臭等の臭気を、香料によって効果的に抑制し得る吸収性物品が提供される。
図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態を示す長手方向中央域における幅方向に沿った厚み方向断面図である。 図2は、図1に示す吸収性物品における肌対向面側の要部を拡大して示す一部破断斜視図である。 図3は、図2における要部拡大模式図である。 図4(a)は、目的の臭い分子が嗅覚受容体を活性化させる機序を示す模式図であり、図4(b)は、嗅覚受容体アンタゴニズムによって、目的の臭い分子に対する受容体の活性化が阻害される機序を示す模式図である。 図5は、本発明の吸収性物品に用いられる表面シートの別の実施形態を示す斜視図である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には本発明の吸収性物品の一実施形態が示されている。同図は、吸収性物品の長手方向中央域(つまり着用状態における着用者の股下部)における幅方向に沿った厚み方向断面図である。図1に示すとおり、吸収性物品10は、肌当接面を形成する液透過性の表面シート2、液不透過性の裏面シート3、及びこれら両シート2,3間に介在された吸収体4を具備する。液不透過性は、液難透過性を含む。吸収性物品10は、縦長の形状を有し、図1における紙面と直交する方向である長手方向、及び幅方向Yを有している。長手方向は、吸収性物品10を着用したときの着用者の前後方向と一致し、幅方向Yは、吸収性物品10の平面視において、長手方向Xと直交する方向である。吸収性物品10は、これを長手方向に沿って見たとき、中央域と、該中央域から前後方向に延出する前方域及び後方域を有している。
表面シート2及び裏面シート3は、吸収体4の周縁から延出した部分が、吸収性物品10の周縁部7において互いに接合されている。吸収性物品10の裏面シート3側の面(非肌当接面)には、吸収性物品10の具体的な用途に応じて、粘着剤層(図示せず)が設けられていてもよい。粘着剤層は、吸収性物品10の着用状態において、該吸収性物品10を、下着や別の吸収性物品に固定するために用いられる。肌当接面は、吸収性物品又はその構成部材における、着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌当接面は、吸収性物品又はその構成部材における、着用時に着用者の肌側とは反対側(通常、下着側)に向けられる面である。
吸収体4は、例えば吸収性コアと、該吸収性コアの周囲を被覆する被覆シートとを備えている。吸収性コアは、パルプ繊維を始めとする各種の吸水性繊維から構成されている。あるいは吸収性コアは、水を吸収して膨潤し且つ水を保持する性質を有するヒドロゲル材料からなる高吸収性ポリマーから構成されている。吸収性コアが、吸水性繊維及び高吸収性ポリマーの双方を含んでいてもよい。被覆シートは液透過性のシートからなる。被覆シートとしては、例えば各種の不織布に親水化処理を施したものや、ティッシュペーパーなどを用いることができる。
吸収体4は、上述した吸収性コアと被覆シートとを備えた構成の他に、吸収性シートから構成されていてもよい。吸収性シートとしては、例えば繊維材料及び高吸収性ポリマーを含むシートが用いられる。吸収性シートとしては、湿潤状態の高吸収性ポリマーに生じる粘着力や別に添加した接着剤や接着性繊維等のバインダーを介して、構成繊維間や構成繊維と高吸収性ポリマーとの間を結合させてシート状としたもの等を好ましく用いることができる。また、吸収性シートとして、特開平8−246395号公報記載の方法にて製造された吸収性シート、気流に乗せて供給した粉砕パルプ及び高吸収性ポリマーを堆積させた後、接着剤(例えば酢酸ビニル系の接着剤、PVA等)で固めた乾式シート、紙や不織布の間にホットメルト接着剤等を塗布した後、高吸収性ポリマーを散布して得られた吸収性シート、スパンボンド又はメルトブロー不織布製造工程中に高吸収性ポリマーを配合して得られた吸収性シート等を用いることもできる。
裏面シート3の形成材料としては、吸収性物品の裏面シートに従来使用されている各種のもの等を特に制限なく用いることができ、例えば、液不透過性又は撥水性の樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布とのラミネートシート等を用いることができる。
表面シート2は、その肌対向面側が凹凸構造を有している。つまり表面シート2の肌対向面側には凸部と凹部とが形成されている。詳細には、図1及び図2に示すとおり、表面シート2の肌対向面側には、凸部としての一方向に延びる筋状の凸条部13及び凹部としての一方向に延びる筋状の凹条部14が幅方向に交互に配された凹凸構造が形成されている。表面シート2は、その凹条部14において、隣接する下側シート6と接合部14sにおいて接合されており、凸条部13は表面シート2と下側シート6との間で中空構造を有している。
下側シート6は、例えば、表面シート2と吸収体4との間に配された、熱可塑性樹脂の繊維の集合体からなるセカンドシートであり得る。熱可塑性樹脂の繊維の集合体としては、一般に不織布を用いることができる。セカンドシートに代えて、下側シート6として、吸収体4を構成する吸収性コアを被覆する被覆シートを用いてもよい。
表面シート2は、図2に示すとおり、構成繊維11どうしの交点を熱融着して形成された融着部を複数備えた不織布である。この不織布としては、例えばエアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、メルトブローン不織布などを始めとして、吸収性物品の技術分野においてこれまで用いられてきたものと同様のものを特に制限なく用いることができる。また、表面シート2においては、図2に示すとおり、凸条部13及び凹条部14が延びる「一方向」は、吸収性物品10の長手方向Xと同方向である。
図2に示す表面シート2の厚み方向の断面を示す模式図である図3に示すとおり、表面シート2は、表裏両面a,bの断面形状がともに厚み方向(Z方向)の上方(肌当接面側)に向かって凸状をなす複数の凸条部13と、隣り合う凸条部13,13どうしの間に位置する凹条部14とを有している。凹条部14は、表裏両面a,bの断面形状がともに表面シート2の厚み方向(Z方向)の上方に向かって凹状をなしている。言い換えれば、凹条部14は、表裏両面a,bの断面形状がともに表面シート2の厚み方向(Z方向)の下方(非肌当接面側)に向かって凸状をなしている。そして、複数の凸条部13は、それぞれ、表面シート2のX方向に連続して延びており、複数の凹条部14も、表面シート2のX方向に連続して延びる溝状をなしている。凸条部13及び凹条部14は、互いに平行であり、X方向に直交するY方向に沿って交互に配されている。
表面シート2は、図4に示すとおり表面シート2を厚み方向Zに沿って断面視したとき、頂部域13a、底部域13b、及びこれらの間に位置する側部域13cとから構成される。頂部域13a、底部域13b及び側部域13cは、表面シート2のX方向に連続して延びている。頂部域13a、底部域13b及び側部域13cは、表面シート2を厚み方向Zに沿って断面視したとき、表面シート2のZ方向の厚みを三等分して、厚み方向Zの上方の部位を頂部域13a、中央の部位を側部域13c、下方の部位を底部域13bとして区別する。凸条部13の頂部は、頂部域13aから形成されている。凹条部14の底部は、底部域13bから形成されている。側部域13cは、頂部域13a及び底部域13bの間に位置している。
表面シート2は、側部域13cの繊維密度又は底部域13bの繊維密度が、頂部域13aの繊維密度よりも低くなっている。繊維密度とは、表面シート2の厚み方向に沿う断面における単位面積当たりの繊維の本数のことである。したがって、側部域13c又は底部域13bは、頂部域13aに比べて繊維の本数が少ない(繊維間距離が大きい)、疎な領域になっている。このことに起因して、側部域13c又は底部域13bは、頂部域13aに比べて通気性が高くなっている。その結果、吸収性物品10は、その装着状態において、凹条部14に沿って空気が流通するとともに、凸条部13において、側部域13c又は底部域13bを通じて、凸条部13と直交する方向に空気が流通する。このように、吸収性物品10は、肌対向面側において長手方向X及び幅方向Yのいずれの方向にも空気が流通する構造になっているので、肌対向面側における通気性が良好で、着用状態での蒸れが起こりにくいものとなる。しかも、表面シート2からなる凸条部13と凹条部14とが交互に形成されているので、吸収性物品10の着用状態において、表面シート2の凹凸構造が着用者の動作に追従しやすく、肌あたりが良好である。
頂部域13aでの繊維密度(D13a)に対する側部域13cの繊維密度(D13c)、又は頂部域13aでの繊維密度(D13a)に対する底部域13bでの繊維密度(D13b)の比率(D13c/D13a,D13b/D13a)は、好ましくは0.15以上0.9以下、更に好ましくは0.2以上0.8以下である。具体的に、表面シート2の繊維密度の値は、頂部域13aでの繊維密度(D13a)は、好ましくは90本/mm以上200本/mm以下、更に好ましくは100本/mm以上180本/mm以下である。また、底部域13bでの繊維密度(D13b)は、好ましくは80本/mm以上200本/mm以下、更に好ましくは90本/mm以上180本/mm以下である。また、側部域13cの繊維密度(D13c)は、好ましくは30本/mm以上80本/mm以下、更に好ましくは40本/mm以上70本/mm以下である。繊維密度の測定方法は以下のとおりである。
〔頂部域13a、底部域13b及び側部域13cでの繊維密度の測定方法〕
フェザー剃刀(品番FAS‐10、フェザー安全剃刀(株)製)を用いて表面シート2を厚み方向Zに沿って切断する。頂部域13aでの繊維密度に関しては、表面シートの切断面の厚みをZ方向に三等分した際の上方の部位である頂部域13aを、走査電子顕微鏡を用いて拡大観察(繊維断面が30〜60本程度計測できる倍率に調整;150〜500倍)し、一定面積当たり(0.5mm程度)の前記切断面によって切断されている繊維の断面数を数える。次に1mm当たりの繊維の断面数に換算し、これを頂部域13aでの繊維密度とする。測定は3箇所行い、平均してそのサンプルの繊維密度とする。同様に、底部域13bでの繊維密度に関しては、表面シートの切断面の厚みをZ方向に三等分した際の下方の部位を測定して求める。同様に、側部域13cの繊維密度に関しては、表面シートの切断面の厚みをZ方向に三等分した際の中央の部位を測定して求める。なお、走査電子顕微鏡としては、日本電子(株)社製のJCM−5100(商品名)を用いる。
凸条部13及び凹条部14からなる表面シート2の凹凸構造は、吸収性物品10の幅方向Yにおける中央域に少なくとも形成されていることが好ましい。これによって、着用者の肌と最も当接しやすい部位に凹凸構造を設けることができるので、上述した蒸れ防止の効果や、着用者の動作への追従効果が確実に発揮される。特に、表面シート2は、周縁部7(図1参照)よりも内側の領域の全域に凹凸構造を有していることが、これらの効果が一層顕著なものとなる点から好ましい。
吸収性物品10においては、表面シート2における頂部域13a、すなわち凸条部13の頂部に香料が含まれている。凸条部13の頂部は、吸収性物品10の着用状態において着用者の身体に直接に触れる部材なので、該頂部と着用者の身体との接触に起因する摩擦によって、凸条部13の頂部に含まれている香料が揮散しやすい。香料の揮散は、着用者の体温によって促進される。その結果、吸収性物品10に吸収保持された液から生じる臭気に先んじて香料が香るようになり、臭気が知覚されづらくなる。
しかも表面シート2は、凸条部13及び凹条部14を備えた凹凸の立体構造を有しているので尿臭がこもりづらい。しかも、凹凸構造に起因して、吸収性物品10の着用状態において表面シート2と着用者の肌との間に空間が生じ、香料の拡散性が向上する。凸条部13が中空構造であると、通気性が向上することに起因して、香料の拡散性も向上する上、中空の空間に香料が充満することで、尿臭が揮発しづらくなる。その上、表面シート2の側部域13c又は底部域13bが、頂部域13aに比べて通気性が高くなっていることに起因して、吸収性物品10の装着状態において、凹条部14に沿って空気が流通するとともに、凸条部13において、側部域13c又は底部域13bを通じて、凸条部13と直交する方向に空気が流通しやすいので、このことによっても香料の拡散性が向上する。
表面シート2は、その長手方向に沿って見たとき、中央域と、該中央域から前後方向に延出する前方域及び後方域とに区分される。表面シート2に形成された凸条部13は、表面シート2の前方域から後方域までの長手方向の全長にわたって存在していることが好ましい。その場合、香料は、表面シート2の後方域における頂部域13aに含まれていることが好ましい。表面シート2のうち、着用者の肌と最も接触しやすい領域は後方域であることから、該後方域における頂部域13aに香料が含まれていることで、該頂部と着用者の身体との接触に起因する摩擦によって、香料が一層揮散しやすくなる。
特に、表面シート2の後方域だけでなく、前方域における頂部域13aにも香料が含まれていると、該頂部と着用者の身体との接触に起因する摩擦が一層生じることによって、香料が更に一層揮散しやすくなる。
先に述べたとおり、表面シート2は、その凹条部14において、隣接する下側シート6と接合部14sにおいて接合されており、凸条部13は表面シート2と下側シート6との間で中空構造を有している。そのことに起因して、吸収性物品10の着用状態において凸条部13に着用者の体圧が加わったとしても、中空構造が確実に維持され、それによって香料の揮散性が維持される。
表面シート2の頂部域13aに香料を含ませる方法としては、例えば、使用される香料を適当な溶媒(例えば水、エタノール、低分子炭化水素類、多価アルコール類、液体LPGガス、ジメチルエーテル等)に希釈したものや原液そのものを、凸条部13に塗布、噴霧又は含浸させて塗工する方法等が挙げられる。なお、本発明においては、香料を含む部位を頂部域13aに限定する意図はなく、少なくとも頂部域13aに香料を含むことを必須とするものである。したがって、頂部域13a以外の部位、例えば側部域13cや底部域13bに香料を含むことは何ら妨げられない。更に、吸収性物品10における表面シート2以外の部位に香料を含むことも何ら妨げられない。
本発明で用いられる香料としては、大気圧下で香気を大気中に蒸散し得るものであればよく、常温常圧の環境下で、その香気を知覚し得る通常の香料を特に制限なく用いることができ、当該技術分野において従来用いられてきたものと同様のものも用いることができる。例えば、香料としては、沸点が約250℃以下の高揮発性香料成分、又は沸点が約250〜約300℃の中揮発性香料成分が好ましく用いられる。
前記高揮発性香料成分としては、例えばアニソール、ベンズアルデヒド、酢酸ベンジル、ベンジルアルコール、ギ酸ベンジル、酢酸イソボルニル、シトロネラール、シトロネロール、酢酸シトロネリル、パラシメン、デカナール、ジヒドロリナロール、ジヒドロミルセノール、ジメチルフェニルカルビノール、ユーカリプトール、1−カルボン、ゲラニアール、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、ゲラニルニトリル、酢酸ネリル、酢酸ノニル、リナロール、エチルリナロール、酢酸リナリル、フェニルエチルアルコール、α−ピネン、β−ピネン、γ−ピネン、α−ヨノン、β−ヨノン、γ−ヨノン、α−テルピネオール、β−テルピネオール、酢酸テルピニル、テンタローム等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記中揮発性香料成分としては、例えばアミルシンナムアルデヒド、ジヒドロジャスモン酸メチル、サリチル酸イソアミル、β−カリオフィレン、セドレン、セドリルメチルエーテル、桂皮アルコール、クマリン、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、イソオイゲノール、γ−メチルヨノン、ヘリオトロピン、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸シス−3−ヘキセニル、フェニルヘキサノール、ペンタライド等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
香料としては、前述の高揮発性及び中揮発性香料成分以外に、あるいはこれら香料成分に加えて更に、バラ香調、ラベンダー香調、ジャスミン香調、イランイラン香調を有する香料を含有した香料組成物を用いることもできる。斯かる香料組成物としては、例えば、ネロール、ラバンジュロール、ジャスマール、シクロピデン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、香料には、前述した香料組成物の単体、及び天然精油や調合ベースのように、「複数の香料によって構成される香料素材が組み合わされたもの(香料組成物)で、溶剤によって希釈・調整されたもの」が含まれる。例えば、香料として、バラ、ラベンダー、ジャスミン、イランイラン様香気を有する香料を含有する香料組成物を用いることができる。
特に、香料は、尿臭成分に起因するヒトの嗅覚受容体の活性化を阻害する物質(以下、この物質のことを「アンタゴニスト香料」とも言う。)を含むことが好ましい。アンタゴニストとは、結合部位を奪い合うことで作用を阻害する競合的拮抗薬のことであり、アンタゴニスト香料とは、図5(a)に示すとおり、結合部位が嗅覚受容体20である場合に、目的の臭い分子21が嗅覚受容体20に結合して該受容体20が活性化して臭い情報が伝達されるときに、図5(b)に示すとおり、目的の臭い分子21と他の分子22をともに適用することにより、当該他の分子22によって目的の臭い分子21に対する受容体の活性化を阻害し、結果的に個体に認識される臭いを抑制するために用いられる当該他の分子のことである。つまり、アンタゴニスト香料を用いることで、嗅覚受容体アンタゴニズムによる臭いの抑制を達成することができる。このように、アンタゴニスト香料を用いることで、該アンタゴニスト香料自体の香気が強くなくても、高い尿臭の抑制効果が発現する。
嗅覚受容体アンタゴニズムによる臭いの抑制は、同様に他の分子を用いる手段であっても、芳香剤による消臭のように、目的の臭いを香料の香気によって隠蔽(マスキング)する手段とは区別される。嗅覚受容体アンタゴニズムによる臭いの抑制の一例は、アンタゴニスト等の嗅覚受容体の活性化を阻害する物質を使用するケースである。特定の臭いをもたらす臭い分子の受容体にその活性化を阻害する物質を適用すれば、当該受容体の当該臭い分子に対する活性化が阻害されるため、最終的に個体に知覚される臭いを抑制することができる。
尿臭成分としては、p−クレゾール及び2−メトキシ−4−ビニルフェノールが代表的なものとして知られている。これらの物質の臭いを嗅覚受容体アンタゴニズムによって抑制することが、効果的な臭気の抑制の点から好ましい。p−クレゾール及び2−メトキシ−4−ビニルフェノールは、放尿又は採尿後時間が経った尿又は飛び散って乾燥した尿から発せられる臭い、あるいは使用後放置した吸収性物品から発せられる尿の臭いの代表的なものである。
本明細書において、「尿臭」とは、好適には、放尿又は採尿後時間が経った尿から発せられる臭いである。例えば、本明細書における「尿臭」は、飛び散って乾燥した尿の臭い又は使用後放置した吸収性物品から発する尿の臭いであり得る。また好適には、本明細書における「尿臭」は、βグルクロニダーゼ処理された尿又はその抽出物の臭いである。
特に、アンタゴニスト香料は、ヒトの嗅覚受容体としてのOR9Q2、OR10G4、OR10G7又はOR2W1の活性化を阻害する物質のいずれかであることが好ましい。これによって尿臭成分に対する活性が一層抑制され、最終的に個体に知覚される臭いを更に一層抑制することができる。これらの嗅覚受容体のうち、OR9Q2又はOR2W1にアンタゴニスト香料を適用することで、p−クレゾールに対して特異的に臭いの抑制効果が発揮される。また、OR10G4又はOR10G7にアンタゴニスト香料を適用することで、2−メトキシ−4−ビニルフェノールに対して特異的に臭いの抑制効果が発揮される。
本発明において、特に好ましく用いられるアンタゴニスト香料としては、例えばOR9Q2に結合し得る以下の化合物が挙げられる。これらの化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
・3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパナール(Bourgeonal)
・3,7,11−トリメチルドデカ−1,6,10−トリエン−3−オール(Nerolidol)
・メチルセドリルケトン(1−[(1S,2R,5R,7S)−2,6,6,8−tetramethyltricyclo[5.3.1.01,5]undec−8−en−9−yl]ethanone;Acetyl cedrene)
・1−(2−tert−ブチルシクロヘキシル)オキシブタン−2−オール(Ambercore)
・2,2,7,7−テトラメチルトリシクロ[6.2.1.01,6]ウンデカン−5−オン(iso−Longifolanone)
本発明においてアンタゴニスト香料として、OR2W1に結合し得る以下の化合物も好ましく挙げられる。
・(3R,3aS,6S,7R,8aS)−Octahydro−6methoxy−3,6,8,8,−tetramethyl−1H−3a,7−methanoazulene(Methyl Cedryl Ether)
本発明においてアンタゴニスト香料として、OR10G4に結合し得る以下の化合物も好ましく挙げられる。
・5−メチル−2−(1−メチルエチル)−フェノール(Thymol)
本発明においてアンタゴニスト香料として、OR10G7に結合し得る以下の化合物も好ましく挙げられる。
・2−メチルウンデカナール(Aldehyde C−12 MNA)
・Benzoin Siam
上述したOR9Q2アンタゴニスト香料、OR2W1アンタゴニスト香料、OR10G4アンタゴニスト香料及びOR10G7アンタゴニスト香料は、これまで香料素材として知られていたが、これらの嗅覚受容体に対するアンタゴニスト作用を有することや、p−クレゾール臭を始めとする尿臭を選択的に抑制する機能があることは知られていなかった。本発明において香料は、上述した化合物より選択される少なくとも1種を有効成分とするアンタゴニスト香料であることが好ましい。
上述した各種の嗅覚受容体に対するアンタゴニスト香料は、いずれも市販のものを購入して使用することができる(「合成香料 化学と商品知識」増補改訂版、印藤元一著、化学工業日報社、 2005年3月発行を参照)。例えば、OR9Q2アンタゴニスト香料は、Firmenich S. A.,Givaudan S. A.,International Flavors & Fragrances Inc.,SIGMA−ALDRICH Corporation、高砂香料工業株式会社、花王株式会社などから入手することが可能である。あるいは、化学合成によって、該市販品と同一物質又はそれを含む組成物を製造することが可能である。
また、本発明の吸収性物品において、香料の含有量は特に制限されず、所望の消臭性能や吸収性能等に応じて適宜設定することができる。例えば、吸収性物品1枚当たり0.5mg以上100mg以下の香料を含むことができる。 特に、香料としてアンタゴニスト香料を用いた場合には、0.1mg以上50mg以下程度の比較的少ない含有量としても、十分な尿臭抑制効果が得られる点で好ましい。
本発明の適用の対象となる吸収性物品は、ヒトの排泄物を吸収保持するために用いられる各種の製品を広く包含する。例えばベビー用及び大人用の使い捨ておむつ、軽失禁用の失禁パッド、大人用の使い捨ておむつの内側に配置して使用される補助パッド、生理用ナプキン及びパンティライナなどが挙げられるが、これらに限られない。
また前記実施形態は、表面シートの肌対向面側に形成された凹凸構造が、筋状の凸条部13及び凹条部14が幅方向に交互に配されたものから構成されていたが、凹凸構造はこれに限らない。例えば図5に示すとおり、表面シート2に、散点状に凸部13’を配置することができる。詳細には、表面シート2においては、その面内における一方向Aに沿って凸部13’と凹部14’とを交互に配置することができる。これとともに、A方向に直交するB方向に沿って凸部13’と凹部14’とを交互に配置することができる。図5に示す実施形態においては、凸部13’の頂部を形成する頂部域に香料が含まれている。また、図5に示す実施形態においては、四方向に形成された側部域の少なくも一方向の側部域の繊維密度又は凹部14’の底部を形成する底部域の繊維密度が、前記頂部域の繊維密度よりも低くなっていることが好ましい。
更に前記実施形態では、凸条部13や凸部13’が中空構造を有していたが、これに代えて、凸条部13や凸部13’はその内部が繊維で満たされた中実構造であってもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
〔実施例1及び2〕
吸収性物品として、花王株式会社の軽失禁パッド50ccタイプ(商品名:ロリエさらピュア50cc)を用いた。この吸収性物品の表面シートは、図2及び図3に示す構造を有するものであった。
香料として以下の表1に示すものを用いた。この香料を、前記の表面シートにおける頂部域の位置に塗布した。塗布は、吸収性物品の全長にわたって該頂部にのみ行った。
〔比較例1及び2〕
比較例1として、各実施例と同構造の吸収性物品において、吸収性コアに香料を含んでいるものを用いた。また、比較例2として、表面シートに凹凸構造を有さないフラットな構造のシートを用い、吸収性コアに香料を含んでいるものを用いた。その他は各実施例と同様の吸収性物品を用いた。各比較例における香料の塗布量は、各実施例とすべて同じとした。
〔評価〕
各実施例及び各比較例の吸収性物品に人尿を各20g注入し、尿臭を官能で評価した。以下の6段階で評価を行い、3名の評価者による評価の平均値を求めた。その評価結果を以下の表1に示す。
1:尿臭がしない
2:尿臭がほとんどしない
3:尿臭が弱くする
4:尿臭がする
5:尿臭が楽にする
6:尿臭が強くする
Figure 0006920059
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例の値は3未満となり、各比較例に比べて、臭気の抑制効果が高いことが分かる。
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
6 下側シート
10 吸収性物品
11 構成繊維
13 凸条部
13a 頂部域
13b 底部域
13c 側部域
14 凹条部
14s 接合部

Claims (6)

  1. 表面シートと、裏面シートと、両シート間に配置された吸収体とを有する吸収性物品であって、
    前記表面シートは、その肌対向面側が凹凸構造を有しており、該凹凸構造における凸部の頂部を形成する頂部域と、凹部の底部を形成する底部域と、該頂部域及び該底部域の間に位置する側部域とを有し、
    前記頂部域に香料を含み、
    前記香料が、3,7,11−トリメチルドデカ−1,6,10−トリエン−3−オール、1−[(1S,2R,5R,7S)−2,6,6,8−tetramethyltricyclo[5.3.1.0 1,5 ]undec−8−en−9−yl]ethanone、1−(2−tert−ブチルシクロヘキシル)オキシブタン−2−オール、2,2,7,7−テトラメチルトリシクロ[6.2.1.0 1,6 ]ウンデカン−5−オン、(3R,3aS,6S,7R,8aS)−Octahydro−6methoxy−3,6,8,8,−tetramethyl−1H−3a,7−methanoazulene、5−メチル−2−(1−メチルエチル)−フェノール、2−メチルウンデカナール、又はBenzoin Siamである、吸収性物品。
  2. 前記凸部が中空構造を有している請求項1に記載の吸収性物品。
  3. 前記表面シートが中央域と、該中央域から前後方向に延出する前方域及び後方域を有し、前記後方域における前記凹凸構造の前記頂部域に前記香料を含む請求項1又は2に記載の吸収性物品。
  4. 前記前方域における前記凹凸構造の前記頂部域に前記香料を含む請求項3に記載の吸収性物品。
  5. 前記表面シートは、前記凸部は長手方向に延びる筋状の凸条部であり、前記凹部は長手方向に延びる筋状の凹条部であり、該凸条部と該凹条部とが幅方向に交互に配された前記凹凸構造を有し、前記凹条部において、隣接する下側シートと接合されている請求項1ないし4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
  6. 前記側部域の繊維密度又は前記底部域の繊維密度が、前記頂部域の繊維密度よりも低くなっている請求項1ないし5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
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