JP6919799B2 - 車両用転動装置 - Google Patents
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Description
・保持器に切欠きが形成されているため、保持器の強度が低下する。
・軸受の使用中に外方部材の軌道面に対して保持器の突起部が衝突を繰り返すと、突起部が摩耗してしまい、軌道面と突起部との間に油膜を形成できずトルクが増大する。
本発明の車両用転動装置では、前記増ちょう剤は、ウレア基を有する化合物を含むことが好ましい(請求項3)。
本発明の車両用転動装置では、前記基油の−30℃における動粘度が、5000mm2/s以下であることが好ましい(請求項5)。
本発明の車両用転動装置では、前記複数の第一の転動体がそれぞれ玉であり、前記複数の第二の転動体がそれぞれ玉であることが好ましい(請求項9)。
図1は、本発明の一実施形態に係るハブユニット1を示す断面図である。なお、図1の左右方向をハブユニット1の軸方向といい、図1の左側を軸方向の外側、右側を軸方向の内側という。
本発明の車両用転動装置の一例としてのハブユニット1は、例えば、自動車の車輪を車体側の懸架装置に対して回転自在に支持するものである。ハブユニット1は、転がり軸受2を含む。転がり軸受2は、軌道輪部材であるハブシャフト3を含む。ハブシャフト3は、円環状のフランジ部4を含む。この実施形態のハブシャフト3は機械構造用炭素鋼で形成されている。ハブシャフト3は、例えば、熱間鍛造により形成されている。
内側軌道部材13は、ハブシャフト3と、内輪12とを含む。ハブシャフト3は、大径部9と、小径部7とを備える。内輪12は、ハブシャフト3の小径部7の外周面7aに密接するように挿嵌される。内輪12は、外周面に第一の内側軌道(転走面)13aを備える。ハブシャフト3は、外周面に第二の内側軌道(転走面)13bを備える。
複数の第一の転動体(玉)14aは、第一の内側軌道13aと第一の外側軌道11aとの間に転動可能に配設される。複数の第二の転動体(玉)14bは、第二の内側軌道13bと第二の外側軌道11bとの間に転動可能に配設される。
内輪12、複数の第一の転動体14a、および、複数の第二の転動体14bは、高炭素クロム軸受鋼で形成されている。内輪12、複数の第一の転動体14a、および、複数の第二の転動体14bは、焼入れ焼戻しが施されている。外側軌道部材11は、機械構造用炭素鋼で形成されている。ハブシャフト3、および、外側軌道部材11は、第二の内側軌道13b、第一の外側軌道11a、および、第二の外側軌道11bに誘導加熱による焼入れ(高周波焼入れ)が施されている。
詳しくは、内側軌道部材13は、外周面に第一の内側軌道13aと第二の内側軌道13bとを有する。外側軌道部材11は、内周面に第一の外側軌道11aと第二の外側軌道11bとを有する。複数の第一の転動体14aは、第一の内側軌道13aと第一の外側軌道11aとの間に転動可能に配設される。複数の第二の転動体14bは、第二の内側軌道13bと第二の外側軌道11bとの間に転動可能に配設される。
図2を参照する。図2は、複数の第一の転動体14aを第一の内側軌道13aと第一の外側軌道11aとの間に配置し、かつ、複数の第二の転動体14bを第二の内側軌道13bと第二の外側軌道11bとの間に配置した状態を示す。このときの内側軌道部材13と外側軌道部材11と複数の第一の転動体14aと複数の第二の転動体14bとの位置を第一の位置とする。
図5および図6において、フランジ部4は、その周方向に所定間隔をあけて形成された複数(この実施形態では5個)の肉厚部21を有している。各肉厚部21は、軸方向の内側の端面が隆起するように形成されているとともに、図6の正面視において径方向に放射状に延びて形成されている。また、各肉厚部21は、内側軌道部材13の中心軸13cを中心とする円の接線方向に所定の幅W(以下、接線方向幅Wという)を有している。
グリースGは、基油、増ちょう剤および添加剤を含有している。本発明においては、グリースGが基油として合成油を含有し、かつ基油の40℃における動粘度が20〜50mm2/sであり、前記添加剤は、りん系化合物、カルシウム系化合物および炭化水素系ワックスを含むことが必須条件である。以下に示すグリースGの組成は、上記必須条件を満たす組成の一例であり、上記必須条件を満たしていれば、グリースGの組成を適宜変更してもよい。
また、基油の含有量は、グリースG全量に対して、好ましくは、85〜95質量%である。であり、より好ましくは88〜92質量%である。
ジイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、飽和および/または不飽和の直鎖状、または分岐鎖の炭化水素基を有するジイソシアネートが挙げられ、具体的には、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート(HDI)等が挙げられる。また、脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。また、芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、芳香族ジイソシアネートが使用され、さらに好ましくは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が使用される。
そして、混合アミンとジイソシアネートは、種々の方法と条件下で反応させることができる。増ちょう剤の均一分散性が高いジウレアが得られることから、基油中で反応させることが好ましい。また、反応は、混合アミンを溶解した基油中に、ジイソシアネートを溶解した基油を添加して行ってもよいし、ジイソシアネートを溶解した基油中に、混合アミンを溶解した基油を添加して行ってもよい。これらの反応における温度および時間は、特に限定されず、通常のこの種の反応と同様でよい。反応開始温度は、混合アミンの揮発性から、25℃〜100℃が好ましい。反応温度は、混合アミンおよびジイソシアネートの溶解性、揮発性の点から、60℃〜170℃が好ましい。反応時間は、混合アミンとジイソシアネートの反応を完結させるという点と製造時間短縮による効率化の点から0.5〜2.0時間が好ましい。
また、増ちょう剤の含有量は、グリースG全量に対して、好ましくは、5〜15質量%であり、より好ましくは8〜12質量%である。
りん系化合物としては、亜リン酸エステル(ホスファイト)、リン酸エステル(ホスフェート)、およびこれらのエステルとアミン、アルカノールアミンとの塩等が挙げられ、好ましくは、アミンホスフェートが使用される。アミンホスフェートとしては、例えば、ターシャリーアルキルアミン-ジメチルホスフェート、フェニルアミン-ホスフェート等が挙げられる。
[化3]
[R4−SO3]2Ca・・・(B)
(式中、R4はアルキル基、アルケニル基、アルキルナフチル基、ジアルキルナフチル基、アルキルフェニル基または石油高沸点留分残基を示す。前記アルキルまたはアルケニルは、直鎖または分岐であり、炭素数は2〜22である。R4としては、R4の中のアルキル基の炭素数が好ましくは6〜18、より好ましくは8〜18、とりわけ好ましくは10〜18であるアルキルフェニル基が好ましい。)
一般式(B)で示される化合物のうち、好ましくは、塩基価(JIS K 2501に準拠)が50〜500mgKOH/gであり、より好ましくは300〜500mgKOH/gである過塩基性カルシウムスルホネートが使用される。過塩基性カルシウムスルホネートであれば、強固な被膜が摺動部表面に形成でき、剥離寿命を向上させることができる。過塩基性カルシウムスルホネートは、カルシウムスルホネートと炭酸カルシウムとを含む。
また、炭化水素系ワックスとしてポリエチレンワックスが使用される場合、その含有量は、グリースG全量に対して、好ましくは、0.05〜5質量%であり、より好ましくは、0.5〜2質量%である。
以上、ハブユニット1によれば、グリースGの基油の40℃における動粘度が20〜50mm2/sであるため、第一および第二の転動体14a,14bの回転トルクを低減することができる。したがって、第一の転動体14aと、第二の転動体14bと、外側軌道11a,11bと、内側軌道13a,13bとの間の第一の長さL1から第三の長さL3を引いた値と、第二の長さL2から第四の長さL4を引いた値と、の合計である隙間(アキシアル隙間)の負の値の絶対値を大きくしても回転トルクを比較的小さく抑えておくことができる。そのため、ハブユニット1の回転トルクの増大を抑えながら、剛性を向上させることができる。また、アキシアル隙間の負の値の絶対値を大きくすることによって、フレッチング性も向上させることができる。
例えば、上記の実施形態では、(複列)玉軸受によって構成された転がり軸受2にグリースGが封入された例を説明したが、グリースGが封入される軸受は、転動体として玉以外のものが使用された円錐ころ軸受等、他の転がり軸受であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
・実施例1および比較例1
<グリースの準備>
実施例1のグリースとして、基油が合成油であり、かつ基油の40℃における動粘度が30mm2/sであり、基油の−30℃における動粘度が2450mm2/sであるグリースを準備した。このグリースは、グリース全量基準で基油を85質量%、増ちょう剤となるウレアを11質量%、過塩基性カルシウムスルホネートを2質量%、アミンホスフェートを1質量%および炭化水素系ワックスを1質量%含有する。なお、過塩基性カルシウムスルホネートは、Chemtura Corpration社製「BRYTON C−400C」であり、一般式(B)のR4中のアルキル部分の炭素数が主に10〜16である過塩基性のアルキルベンゼンスルホン酸のカルシウム塩(塩基価:405)である。この中には、アルキル部分の炭素数が10〜16で無いものや構造が特定できないアルキルベンゼンスルホン酸のカルシウム塩も含まれる。過塩基性カルシウムスルホネートは、カルシウムスルホネートと炭酸カルシウムとを含む。アミンホスフェートはR.T.Vanderbilt社製のVanlube 672である。炭化水素系ワックス(ポリエチレンワックス)は、クラリアントジャパン株式会社社製のLICOWAX PE 190 POWDERである。用いた基油は、PAO(40℃における動粘度:30mm2/s)とエステル油(ペンタエリスリトールエステル 40℃における動粘度:30mm2/s)とを質量比90:10で混合したものである。また、用いたウレアは、脂環式アミン(シクロヘキシルアミン)と脂肪族アミン(ステアリルアミン)とをモル比87.5:12.5で混合してモル比100とし、モル比50のジイソシアネート(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)と反応させたものである。
<転がり軸受の組立て>
上記グリースが封入される転がり軸受2を、図1の構成に従って組み立てた。組み立ての際、内輪12の内周面に対するハブシャフト3のかしめ部8のかしめ量を調節することによって第一および第二の転動体14a,14bに加えられる予圧を調節した。これにより、実施例1および比較例1のそれぞれについて、第一の長さL1から前記第三の長さL3を引いた値と、前記第二の長さL2から前記第四の長さL4を引いた値と、の合計であるアキシアル隙間(内部隙間)が−0.025mm、−0.04mm、−0.055mmおよび−0.08mmの転がり軸受2を作製した。なお、実施例1としては、下記剛性値の測定のため、第一の長さL1から前記第三の長さL3を引いた値と、前記第二の長さL2から前記第四の長さL4を引いた値と、の合計であるアキシアル隙間(内部隙間)が−0.03mm、−0.05mm、−0.06mm、0.08mmおよび−0.1mmの転がり軸受も作製した。
<評価>
(1)軸受(回転)トルクの測定
実施例1および比較例1の各転がり軸受を、回転速度800rpm、ラジアル荷重5.65kN、室温の条件下で回転させ、回転1h後のトルク値を測定した。結果を図7に示す。図7に示すように、内部隙間が同じ値では、実施例1の軸受(▲)が比較例1の軸受(●)に比べて回転トルクが約40%程度低減できることがわかった。
(2)剛性値の測定
実施例1の各転がり軸受に対して、互いに同条件でタイヤ接地点位置にアキシアル荷重を加えてモーメント荷重を負荷し、内外輪の相対傾き角を測定した。
Claims (9)
- 外周面に第一の内側軌道と第二の内側軌道とが形成された内側軌道部材と、内周面に第一の外側軌道と第二の外側軌道とが形成された外側軌道部材と、
前記第一の内側軌道と前記第一の外側軌道との間に転動可能に配設された複数の第一の転動体と、前記第二の内側軌道と前記第二の外側軌道との間に転動可能に配設された複数の第二の転動体と、
前記内側軌道部材と前記外側軌道部材との間に形成される環状空間を軸方向の両端から密封する2つのシール部材と、
前記環状空間内に封入され、前記第一の内側軌道の転走面、前記第一の外側軌道の転走面、および、前記複数の第一の転動体の転動面、ならびに、前記第二の内側軌道の転走面、前記第二の外側軌道の転走面、および、前記複数の第二の転動体の転動面、とに配置されたグリースとを含み、
前記内側軌道部材の中心軸とを含む断面において、
前記複数の第一の転動体を前記第一の内側軌道と前記第一の外側軌道との間に配設し、かつ、前記複数の第二の転動体を前記第二の内側軌道と前記第二の外側軌道との間に配設したときの、前記内側軌道部材と前記外側軌道部材と前記複数の第一の転動体と前記複数の第二の転動体の位置を第一の位置としたとき、前記第一の転動体と前記第一の内側軌道とは第一の呼び接触点で接触し、前記第一の転動体と前記第一の外側軌道とは第二の呼び接触点で接触し、前記第二の転動体と前記第二の内側軌道とは第三の呼び接触点で接触し、前記第二の転動体と前記第二の外側軌道とは第四の呼び接触点で接触し、
前記内側軌道部材の中心軸から第一の呼び接触点までの半径を第一の半径とし、前記内側軌道部材の中心軸から第二の呼び接触点までの半径を第二の半径とし、前記内側軌道部材の中心軸から第三の呼び接触点までの半径を第三の半径とし、前記内側軌道部材の中心軸から第四の呼び接触点までの半径を第四の半径とし、
前記複数の第一の転動体の全てを前記第一の内側軌道と前記第一の外側軌道との間に配設することなく、かつ、前記複数の第二の転動体の全てを前記第二の内側軌道と前記第二の外側軌道との間に配設することなく前記第一の位置と同じ位置に前記内側軌道部材と前記外側軌道部材を配置したときの、前記内側軌道部材の中心軸から前記第一の半径と平行な径方向に前記第一の半径と同じ距離である第一の内側軌道の第一の仮想接触点と前記内側軌道部材の中心軸から前記第二の半径と平行な径方向に前記第二の半径と同じ距離である第一の外側軌道の第二の仮想接触点とを結ぶ第一の線分の前記内側軌道部材の中心軸に平行な長さを第一の長さとし、前記内側軌道部材の中心軸から前記第三の半径と平行な径方向に前記第三の半径と同じ距離である第二の内側軌道の第三の仮想接触点と前記内側軌道部材の中心軸から前記第四の半径と平行な径方向に前記第四の半径と同じ距離である第二の外側軌道の第四の仮想接触点とを結ぶ第二の線分の前記内側軌道部材の中心軸に平行な長さを第二の長さとし、
前記内側軌道部材と前記外側軌道部材とを配設することなく、前記第一の位置と同じ位置に前記複数の第一の転動体と前記複数の第二の転動体とを配置したときの、前記内側軌道部材の中心軸から前記第一の半径と平行な径方向に前記第一の半径と同じ距離である第一の転動体の表面の第五の仮想接触点と前記内側軌道部材の中心軸から前記第二の半径と平行な径方向に前記第二の半径と同じ距離である第一の転動体表面の第六の仮想接触点とを結ぶ第三の線分の前記内側軌道部材の中心軸に平行な長さを第三の長さとし、前記内側軌道部材の中心軸から前記第三の半径と平行な径方向に前記第三の半径と同じ距離である第二の転動体の表面の第七の仮想接触点と前記内側軌道部材の中心軸から前記第四の半径と平行な径方向に前記第四の半径と同じ距離である第二の転動体の表面の第八の仮想接触点とを結ぶ第四の線分の前記内側軌道部材の中心軸に平行な長さを第四の長さとし、
前記第一の長さは前記第三の長さよりも短く、前記第二の長さは前記第四の長さよりも短く設定されており、
前記グリースは、基油、増ちょう剤および添加剤を含有しており、
前記基油として合成油を含有し、かつ前記基油の40℃における動粘度が20〜50mm2/sであり、
前記添加剤は、りん系化合物、カルシウム系化合物および炭化水素系ワックスを含み、
前記カルシウム系化合物は、過塩基性カルシウムスルホネートであり、
前記過塩基性カルシウムスルホネートの塩基価が、50〜500mgKOH/gであり、
前記過塩基性カルシウムスルホネートの含有量が、前記グリースの0.05〜5質量%であり、
前記炭化水素系ワックスは、ポリエチレンワックスであり、
前記ポリエチレンワックスの含有量が、前記グリースの0.05〜5質量%である、車両用転動装置。 - 前記第一の長さから前記第三の長さを引いた値と、前記第二の長さから前記第四の長さを引いた値と、の合計の範囲が、−0.06mm〜−0.1mmである、請求項1に記載の車両用転動装置。
- 前記増ちょう剤は、ウレア基を有する化合物を含む、請求項1または2に記載の車両用転動装置。
- 前記基油の−30℃における動粘度が、5000mm2/s以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用転動装置。
- 前記りん系化合物は、アミンホスフェートであり、
前記アミンホスフェートの含有量が、前記グリースの0.05〜5質量%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両用転動装置。 - 前記合成油は、合成炭化水素油およびエステル油からなる混合油であり、
前記エステル油の割合が、前記混合油の5〜15質量%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両用転動装置。 - 前記ウレア基を有する化合物の含有量が、前記グリースの5〜15質量%である、請求項3、請求項4、および請求項3または4を引用する請求項5〜7のいずれか一項に記載の車両用転動装置。
- 前記複数の第一の転動体がそれぞれ玉であり、前記複数の第二の転動体がそれぞれ玉である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の車両用転動装置。
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