JP6918195B2 - 免震構造 - Google Patents

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本発明は、免震構造に関する。
建物の上部構造体(例えば上部架構)と下部構造体(例えば基礎)の間の免震層に免震装置を設置して免震構造とし、地震時の振動を免震構造にて減衰もしくは吸収することにより、地震力を上部構造体に可及的に伝達させない免震建物が建設されている。免震構造は、上部構造体の例えば柱の直下に配設される免震装置により形成されるのが一般的であり、この免震装置には、積層ゴム一体型の免震装置や、球面滑り装置や平面滑り装置等の滑り免震装置などがある。上記する免震装置は、地震による建物振動の振動態様を水平方向に長周期化させ、建物に作用する地震力を低減することを目的としている。
上記する免震装置の中で球面滑り装置を適用する場合、従来は、他の免震装置を併用せずに、球面滑り装置のみを単体で用いて免震構造を形成することが一般的である。そのため、復元力特性の調整に際して、両面滑り免震装置(所謂ダブルペンデュラム方式の球面滑り装置)では、上沓及び下沓の滑り面の曲率やスライダーの上下の滑り面の曲率、さらには摩擦係数を調整することにより、剛塑性のバイリニアを調整している。さらに、トリリニアの復元力特性とする際には、上下に外側上沓及び外側下沓を配置し、これら外側上沓及び外側下沓の間に、内側上沓及び内側下沓とスライダーを配置した、所謂トリプルペンデュラム方式の球面滑り装置を適用しているが、トリプルペンデュラム方式の免震装置は構造が複雑になるといった課題を有している。
また、特定の地震波に共振しないように二次剛性の周期調整を要する場合があるが、球面滑り装置ではその固有周期が上沓及び下沓の曲率により一義的に決定されることから、自由な調整が難しいといった課題もある。
以上のことから、構造が複雑でなく、また、球面滑り装置の構成を変更することなく、トリリニアの復元力特性を形成することにより、摩擦係数を増大させて地震力の減衰性を高め、かつ免震層の過大な変形を抑制できる免震構造の開発が望まれている。
ここで、特許文献1には、免震設計上の自由度が高い免震構造が提案されている。具体的には、下部構造物と上部構造物との間に積層ゴム支承と球面滑り支承が配置された免震構造であり、積層ゴム支承と球面滑り支承は、下部構造物と上部構造物が横荷重を受けて相対移動する際に、いずれも水平変位するように並列に配置されている。
特開2016−138592号公報
特許文献1に記載の免震構造は、上部構造物による鉛直荷重を、積層ゴムと球面滑り支承が50%ずつ分担して支持する免震構造である。このことを前提として、地震時の横荷重を受けた際に、球面滑り支承が水平変位と同時に鉛直変位することにより、積層ゴム支承の分担鉛直荷重を球面滑り支承に徐々に移行させるようにしている。この積層ゴム支承の分担鉛直荷重の球面滑り支承への移行に伴い、球面滑り支承が単体の場合に比べて、初期のせん断力係数を低減できるとしている。
しかしながら、上部構造物による鉛直荷重を、積層ゴム支承と球面滑り支承が50%ずつ分担して支持する免震構造とすることから、このように双方の免震装置に荷重分担させるための免震層における双方の配置設計には多大な手間を要し、配置施工に際しても、双方の免震装置の位置決めを精緻に行う必要があることから多大な施工手間を要する。また、そもそも積層ゴム支承は球面滑り支承の鉛直変位に追随できないことから、実際には、球面滑り支承単体の復元力特性に比べて、優れた復元力特性の免震構造が形成されるかについては疑問の余地がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、構造が複雑でなく、また、球面滑り装置の構成を変更することなく、トリリニアの復元力特性を形成することにより、摩擦係数を増大させて地震力の減衰性を高め、かつ免震層の過大な変形を抑制できる免震構造を提供することを目的としている。
前記目的を達成すべく、本発明による免震構造の一態様は、
上部構造体と下部構造体の間の免震層において、球面滑り装置とダンパー装置が並列配置されていることを特徴とする。
本態様によれば、免震層に球面滑り装置とダンパー装置が並列配置されていることにより、球面滑り装置とダンパー装置の有する各バイリニアの復元力特性が合成されたトリリニアの復元力特性を有し、球面滑り装置は上部構造体を構成する柱や壁の直下に配置され、一般に鉛直荷重を支持しないダンパー装置は自由な位置に配置できることから、配置設計と配置施工に際して手間がかからず、また、球面滑り装置とダンパー装置の並列配置故に構造が複雑でない免震構造を形成できる。このように、球面滑り装置とダンパー装置が並列配置されてなる免震装置を、本明細書では、「並列免震装置」と称する。
ここで、「球面滑り装置とダンパー装置が並列配置されている」形態には、免震層において球面滑り装置とダンパー装置が平面的に離れた位置に配置されている形態や、球面滑り装置を構成する上沓と下沓の側面同士をダンパー装置が繋ぐことにより、球面滑り装置とダンパー装置が並列で一体とされている形態の双方が含まれる。また、「免震層」は、上部構造体である建物本体と、下部構造体である基礎の間の基礎免震層(基礎免震における免震層)の他、上部構造体である建物の上部架構が途中で上下に分割された、上方上部架構(例えば屋根架構)と下方上部架構(例えば基礎と屋根架構の間の立ち上がり架構)の間の中間免震層(中間免震における免震層)の双方が含まれる。
球面滑り装置は、下沓と上沓がともに曲率を備えた滑り面を有し、上下に曲率を備えた滑り面を有するスライダーを有していることから、免震構造が地震時の水平荷重を受けた際には、スライダーを介して下沓と上沓が相互に水平変位し、曲率を備えた滑り面上をスライダーが滑ることに起因して球面滑り装置は全体として鉛直方向に変位する。積層ゴム支承型の免震装置と異なり、ダンパー装置は、球面滑り装置の鉛直方向変位に追随することができ、従って、地震時の水平荷重が作用した際に、球面滑り装置とダンパー装置の双方のバイリニアの復元力特性を合成することができる。この合成により形成された免震構造の有するトリリニアの復元力特性によれば、例えば球面滑り装置が単体の場合のバイリニアの復元力特性に比べて摩擦係数を増加させることができ、地震力(応答加速度や応答せん断力)の減衰性能が高められる。さらに、ダンパー装置の剛性が付与されることにより、球面滑り装置が単体の場合のバイリニアの復元力特性における球面滑り装置の変形量と同程度の変形量に留めることができ、従って過大な水平変形が生じる恐れもない。
また、トリリニアの復元力特性を有する並列免震装置(を有する免震構造)の形成に際して、球面滑り装置を構成する上沓と下沓の滑り面の曲率を変更したり、上沓と下沓の平面寸法を大きくする等の加工の必要がない。すなわち、球面滑り装置に対して、ダンパー装置の剛性が付与されることにより、単体の球面滑り装置により形成される免震構造の限界変形量に対して、限界変形量の小さな免震構造を形成できる。
さらに、積層ゴム支承型の免震装置は温度依存性が大きいが、球面滑り装置もダンパー装置も温度依存性が小さいことから、例えば低温地域において好適であり、豪雪地域の積雪による荷重変化に対しても免震性能が変化し難い。
また、本発明による免震構造の他の態様において、前記球面滑り装置は、上沓及び下沓と、これらの間を摺動するスライダーとを有し、
前記ダンパー装置は、U型ダンパーであり、
前記上沓及び前記下沓を、上下方向もしくは上下斜め方向に配設された複数の前記U型ダンパーが繋いでいることを特徴とする。
本態様によれば、上沓と下沓の各側面を上下方向もしくは上下斜め方向に配設された複数のU型ダンパーが繋ぐことにより、球面滑り装置とU型ダンパーが相互に並列配置されて一体化された並列免震装置を形成することができるため、双方が離れて並列配置される形態と比較して、免震層への免震装置の設置場所を低減でき、このことにより、設置施工性が良好になり、設置場所に施工されるフーチング等の数が低減できることから施工コストの低減に繋がる。
U型ダンパー(U型ダンパーロッド)は鋼製であり、U型ダンパーロッドの塑性化によって地震エネルギーを吸収する。U型ダンパーロッドは、地震時の正負交番の変位振幅をロッドの高さで除すことにより算定されるせん断変形角にて基準化でき、多様な繰り返し性能で多様なサイズの減衰ダンパーを提供することができる。U型ダンパーは、U型に湾曲した湾曲部がロッドの延出方向に変位するようにして変形する。この変形の際には、塑性変形時に歪みが最大となる点を水平変位量の変化に応じてロッド内で移動させることにより、ロッドの歪みを局部的に集中させることなく、ロッド全体を有効に利用して地震エネルギーを吸収もしくは減衰する優れた鋼製ダンパーである。
ここで、「上下方向に配設される」とは、U型ダンパーが鉛直方向に配設されて上沓と下沓の各側面を繋ぐことを意味しており、一方で「上下斜め方向に配設される」とは、U型ダンパーが、上沓と下沓の各側面を鉛直方向と水平方向の間の斜め方向に寝た状態に配設され、上沓と下沓の各側面を繋ぐことを意味している。
また、本発明による免震構造の他の態様において、前記球面滑り装置は、上沓及び下沓と、これらの間を摺動するスライダーとを有し、
前記ダンパー装置は、U型ダンパーであり、
前記上沓の上面と前記下沓の下面にそれぞれ、上ベースプレートと下ベースプレートが配設され、
前記上ベースプレート及び前記下ベースプレートを、複数の前記U型ダンパーが繋いでいることを特徴とする。
本態様によれば、球面滑り装置を構成する上沓の上面と下沓の下面にそれぞれ配設されている、上ベースプレートと下ベースプレートを複数のU型ダンパーが繋ぐことにより、球面滑り装置とU型ダンパーが相互に並列配置されて一体化された並列免震装置を形成することができる。
また、本発明による免震構造の他の態様において、前記ダンパー装置は、U型ダンパーであり、
前記免震層にある前記球面滑り装置を跨いで、前記上部構造体及び前記下部構造体を、複数の前記U型ダンパーが繋いでいることを特徴とする。
本態様によれば、球面滑り装置を上下で挟む上部構造体と下部構造体をU型ダンパーが繋ぐことにより、一般の球面滑り装置に一切の加工を加えることなく、相互に並列配置されている球面滑り装置とU型ダンパーが実質的に一体化された並列免震装置を形成することができる。基礎免震の場合は、免震ピットに施工されて球面滑り装置が載置される下方フーチング(下部構造体の一例)と、地中梁同士を繋ぐ上方フーチング(上部構造体の一例)の双方をU型ダンパーが繋ぐ形態が挙げられる。
また、本発明による免震構造の他の態様は、前記免震層において、前記球面滑り装置と前記ダンパー装置が離れた位置に並列配置されていることを特徴とする。
本態様によれば、球面滑り装置とダンパー装置が平面的に離れた位置に並列配置されていることにより、例えば、大地震時に球面滑り装置が大きく変位した際に、球面滑り装置とダンパー装置が相互に干渉する危険性を解消することができる。U型ダンパーに代表されるダンパー装置は、一般に上部構造体からの鉛直荷重を受けず、地震時の水平荷重の一部を負担する。従って、上部構造体の鉛直荷重の全部を支持する球面滑り装置が、上部構造体を構成する柱や壁の直下に配設されることになり、ダンパー装置は、免震層において自由な位置に配設することができる。このように、鉛直荷重を支持せず、免震層における自由な位置に配設できる点において、上部構造体からの鉛直荷重を支持する積層ゴム支承型の免震装置とダンパー装置は大きく相違する。
以上の説明から理解できるように、本発明の免震構造によれば、構造が複雑でなく、また、球面滑り装置の構成を変更することなく、トリリニアの復元力特性を形成することにより、摩擦係数を増大させて地震力の減衰性を高め、かつ免震層の過大な変形を抑制できる免震構造を提供することができる。
第1実施形態に係る免震構造を備えた免震建物の一例の側面図である。 第1実施形態に係る免震構造を形成する一体並列免震装置の一例の平面図である。 図2のIII−III矢視図であって、一体並列免震装置の一例の側面図である。 第1実施形態に係る免震構造を形成する一体並列免震装置の他の例の平面図である。 図5のV−V矢視図であって、一体並列免震装置の他の例の側面図である。 第1実施形態に係る免震構造を形成する一体並列免震装置のさらに他の例の平面図である。 図6のVII−VII矢視図である。 第1実施形態に係る免震構造を形成する一体並列免震装置のさらに他の例の平面図である。 図8のIX−IX矢視図である。 並列免震装置の復元力特性を示す変位−摩擦係数グラフの一例である。 第2実施形態に係る免震構造を備えた免震建物の一例の側面図である。
以下、各実施形態に係る免震構造について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
[第1実施形態に係る免震構造と、免震構造を備える免震建物]
はじめに、図1乃至図10を参照して、第1実施形態に係る免震構造と、免震構造を形成する複数例n並列免震装置について説明する。ここで、図1は、第1実施形態に係る免震構造を備えた免震建物の一例の側面図である。また、図2及び図3は、第1実施形態に係る免震構造を形成する一体並列免震装置の一例を説明する図であり、図4及び図5は、第1実施形態に係る免震構造を形成する一体並列免震装置の他の例を説明する図であり、図6及び図7と図8及び図9はそれぞれ、第1実施形態に係る免震構造を形成する一体並列免震装置のさらに他の例を説明する図である。
図示例の免震建物70は、地盤Gを掘削することにより形成される免震ピット60を地表面下に備え、免震ピット60と免震建物70の間の免震層65に並列免震装置50を備えている建物であり、免震層65に配設される複数の並列免震装置50により免震構造100が形成されている。
免震ピット60は、鉄筋コンクリート製のピット底盤61と、ピット底盤61に連続して周囲の地盤Gの土圧や土水圧に抗する擁壁62とを有する。ピット底盤61の上面のうち、上部架構75を構成する柱76に対応する位置には下方フーチング63(下部構造体の一例)が上方に突設されており、下方フーチング63の上面に並列免震装置50が載置されている。擁壁62と端部の並列免震装置50との間には、例えば大地震の際に並列免震装置50を介して上部架構75と擁壁62が衝突しない程度の隙間Sが設けられている。
並列免震装置50は、球面滑り装置10とダンパー装置20が並列配置されることにより形成され、並列免震装置50の上面には、上部架構75の下端に設けられている鉄筋コンクリート製の下部構造体71が配設されている。下部構造体71は、格子状に配設された地中梁72と、格子状の各地中梁72の格点に設けられている上方フーチング73(上部構造体の一例)とを有し、並列免震装置50の上面に上方フーチング73が配設されている。ここで、上部架構75は、S造(鉄骨造)、RC造(鉄筋コンクリート造)、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)のいずれであってもよい。
上方フーチング73の直上には上部架構75を構成する柱76が立設しており、従って、上部架構75による鉛直荷重は、柱76を介し、上方フーチング73を介して並列免震装置50に載荷される。
第1実施形態に係る免震構造100を形成する並列免震装置50は、球面滑り装置10とダンパー装置20が一体となっている一体並列免震装置であり、この一体並列免震装置には様々な形態が存在する。以下、図2乃至図9を参照して、それぞれの形態の一体並列免震装置について説明する。
まず、図2及び図3に示す一体並列免震装置50は、球面滑り装置10を構成する上沓11と下沓15の側面を、上下方向(もしくは鉛直方向)に配設された複数のU型ダンパー20(ダンパー装置の一例)が繋いでいる。
球面滑り装置10は、上沓11と、下沓15と、上沓11及び下沓15の間で摺動するスライダー18とを有する。上沓11と下沓15はいずれも、平面視矩形(図示例は正方形)の板材であり、溶接鋼材用圧延鋼材(SM490A、B、C、もしくはSN490B、C、もしくはS45C)等から形成されている。上沓11の下面と下沓15の上面にはそれぞれ、曲率を有する滑り面12、16が設けられており、この滑り面12,16には、ステンレス製の滑り板(図示せず)が固定されている。また、上沓11と下沓15には、滑り板の外周において、スライダー18の脱落を防止するためのストッパーリング17が固定されている。
一方、スライダー18は、曲率を有する上下の滑り面19を備え、略円柱状を呈している。また、スライダー18は、溶接鋼材用圧延鋼材(SM490A、B、C、もしくはSN490B、C、もしくはS45C)等から形成され、面圧60N/mm2(60MPa)程度の耐荷強度を有している。
スライダー18の上下の滑り面19には、少なくともPTFEを素材とする摩擦材(図示せず)が取り付けられている。摩擦材は二重織物により形成され、二重織物は、PTFE繊維と、PTFE繊維よりも引張強度の高い繊維(高強度繊維)とにより形成される。ここで、「PTFE繊維よりも引張強度の高い繊維」としては、ナイロン6・6、ナイロン6、ナイロン4・6などのポリアミドやポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルやパラアラミドなどの繊維を挙げることができる。また、メタアラミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ガラス、カーボン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、LCP、ポリイミド、PEEKなどの繊維を挙げることができる。また、さらに、熱融着繊維や綿、ウールなどの繊維を適用してもよい。その中でも、耐薬品性、耐加水分解性に優れ、引張強度の極めて高いPPS繊維が望ましい。尚、少なくともPTFEを素材とする摩擦材としては、二重織物以外のPTFE繊維を含む織物でもよく、また、PTFEのみを素材とする摩擦材、PTFEと他の樹脂の複合素材からなる摩擦材、PTFEを素材とする摩擦材と他の樹脂を素材とする摩擦材との積層構造の摩擦材などであってもよい。
平面視正方形の上沓11及び下沓15のそれぞれの対応する四つの隅角部を、上下方向に配設されたU型ダンパー20が繋いでいる。より具体的には、上沓11及び下沓15のそれぞれの隅角部に鋼製の取り付け片30が固定され、上下の取り付け片30に対してU型ダンパー20の上下端がボルト35にて接合される。
U型ダンパー20は、上下の直線ロッド22と、当該上下の直線ロッド22に連続して所定の曲率を備える曲線ロッド21とにより形成されている。
図3に明りょうに示すように、球面滑り装置10の側方にU型ダンパー20が並列配置され、双方がボルト接合されることにより、一体並列免震装置50が形成される。
図1に戻り、免震層65における複数組みの下方フーチング63と上方フーチング73の間に一体並列免震装置50が配設されることにより、免震構造100が形成される。
次に、図4及び図5に示す一体並列免震装置50Aは、球面滑り装置10を構成する上沓11と下沓15の側面を、上下斜め方向に配設された複数のU型ダンパー20A(ダンパー装置の一例)が繋いでいる。
平面視正方形の上沓11及び下沓15のそれぞれの対応する四つの側面を、上下斜め方向に配設されたU型ダンパー20Aが繋いでいる。より具体的には、上沓11及び下沓15のそれぞれの側面に鋼製の取り付け片30Aが所定の斜め角度で固定され、上下の取り付け片30Aに対してU型ダンパー20Aの上下端がボルト35にて接合される。
U型ダンパー20Aの性能は、板厚と全長によって決定され、全長は曲線ロッド21の曲率に左右されることから、所定の曲率を備えたU型ダンパー20Aは自ずと一定以上の高さを有することになる。一方、球面滑り装置10を構成する上沓11と下沓15の間の高さがU型ダンパー20Aの高さよりも低い場合、U型ダンパー20Aを上下方向(鉛直方向)に配設する形態では、U型ダンパー20Aを上沓11と下沓15の双方の側面に接続できない。
このような場合に、図示する一体並列免震装置50Aのごとく、U型ダンパー20Aを上下斜め方向に配設することにより、U型ダンパー20Aの鉛直高さを実質的に低くしながら、上沓11及び下沓15の双方の側面にU型ダンパー20Aを繋ぐことが可能にある。
次に、図6及び図7に示す一体並列免震装置50Bは、球面滑り装置10を構成する上沓11の上面と下沓15の下面にそれぞれ、平面視矩形(図示例は正方形)の上ベースプレート40Aと下ベースプレート40Bが配設され、上ベースプレート40Aと下ベースプレート40Bのそれぞれの対応する側面同士を、U型ダンパー20が繋いでいる。
上ベースプレート40Aと下ベースプレート40Bに対して、U型ダンパー20の端部がボルト35を介して接続される。図示を省略するが、免震層65に一体並列免震装置50Bが配設された際に、上ベースプレート40Aの上面に上方フーチング73の下面が当接され、下ベースプレート40Bの下面に下方フーチング63の上面が当接される。
次に、図8及び図9に示す一体並列免震装置50Cは、球面滑り装置10を構成する上沓11の上面と下沓15の下面にそれぞれ、下方フーチング63と上方フーチング73の間に球面滑り装置10が配設され、球面滑り装置10を跨いで、下方フーチング63と上方フーチング73を複数のU型ダンパー20が繋いでいる。
取り付け片30Bの端部にはフランジ片31が固定され、フランジ片31が下方フーチング63や上方フーチング73の側面にボルト35を介して固定されており、対応する上下の取り付け片30Bに対してU型ダンパー20の端部がボルト35を介して接続されている。
一体並列免震装置50Cは、球面滑り装置10とU型ダンパー20が直接接続されるものではないが、図9からも明らかなように、球面滑り装置10とU型ダンパー20が実質的に一体とされた並列免震装置であることから、一体並列免震装置に含むものとする。
次に、図10を参照して、一体並列免震装置50、50A,50B,50Cの復元力特性について説明する。ここで、図10は、並列免震装置の復元力特性を示す変位−摩擦係数グラフの一例である。
図10において、点線は球面滑り装置の復元力特性を示すグラフであり、一点鎖線はダンパー装置(U型ダンパー)の復元力特性を示すグラフであり、実線は、双方の復元力特性が合成された一体並列免震装置の復元力特性を示すグラフである。
球面滑り装置10は、上沓11と下沓15がともに曲率を備えた滑り面12、16を有し、上下に曲率を備えた滑り面19を有するスライダー18を有していることから、免震構造100を構成する各一体並列免震装置50乃至50Cが地震時の水平荷重を受けた際には、スライダー18を介して上沓11と下沓15が相互に水平変位し、曲率を備えた滑り面12,16上をスライダー18が滑ることに起因して球面滑り装置10は全体として鉛直方向に変位する。積層ゴム支承型の免震装置と異なり、ダンパー装置20,20Aは、球面滑り装置10の鉛直方向変位に追随することができ、従って、地震時の水平荷重が作用した際に、球面滑り装置10とダンパー装置20,20Aの双方のバイリニアの復元力特性を合成することができ、図示例のトリリニアの復元力特性を形成できる。
図10において、地震時の水平荷重が作用した際に、一体並列免震装置50乃至50Cでは、摩擦係数:μ0までは変位せず、μ0を超えた段階で地震時の水平荷重に対して一体並列免震装置50乃至50Cの減衰性能が発揮される。そして、一体並列免震装置50乃至50Cの有するトリリニアの復元力特性に沿って、地震時の水平荷重を低減する。
図示例のトリリニアの復元力特性によれば、例えば球面滑り装置10が単体の場合のバイリニアの復元力特性に比べて、摩擦係数をμ2からμ3に増加させることができ、地震力(応答加速度や応答せん断力)の減衰性能が高められる。さらに、ダンパー装置20、20Aの剛性により、一体並列免震装置50乃至50Cの変形量を、球面滑り装置10が単体の場合のバイリニアの復元力特性における球面滑り装置10の変形量と同程度の変形量に留めることができ、従って過大な水平変形が生じる恐れもない。
また、トリリニアの復元力特性を有する免震構造100の形成に際して、球面滑り装置10を構成する上沓11と下沓15の滑り面12,16の曲率を変更したり、上沓11と下沓15の平面寸法を大きくする等の加工の必要がない。すなわち、球面滑り装置10に対して、ダンパー装置20,20Aの剛性が付与されることにより、単体の球面滑り装置10により形成される免震構造の限界変形量に対して、限界変形量の小さな免震構造を形成できる。仮に限界変形量が大きい場合、球面滑り装置を構成するスライダーの高さと径の比率も大きくなり、スライダーの径を大きくする必要が生じることから好ましくない。
図示する免震構造100によれば、トリプルペンデュラム方式の免震装置等、構造が複雑な免震装置を適用しないことから、構造が複雑でなく、また、球面滑り装置10の構成を変更することなく、トリリニアの復元力特性を形成することにより、摩擦係数を増大させて地震力の減衰性を高め、かつ免震層65の過大な変形を抑制することができる。
[第2実施形態に係る免震構造と、免震構造を備える免震建物]
次に、図11を参照して、第2実施形態に係る免震構造の一例について説明する。ここで、図11は、第2実施形態に係る免震構造を備えた免震建物の一例の側面図である。
図示する免震構造100Aは、免震層65において、球面滑り装置10とダンパー装置20Aが平面的に離れた位置に並列配置されている、分散並列免震装置50Dを有する点において、免震構造100と相違する。
分散並列免震装置50Dを構成するダンパー装置20Bは、上下のベースプレート25に対して複数のダンパーロッド24が接続されることにより形成される。例えば、平面視正方形の上下のベースプレート25の四つの側面同士、もしくは四つの隅角部同士を、四つのダンパーロッド24がボルトを介して繋ぐことによりダンパー装置20Aが形成される。
図11にて明りょうに示すように、上部架構75の鉛直荷重を支持する球面滑り装置10は、上部架構75を形成する柱76の直下に配設される。一方、ダンパー装置20Aは、上部架構75の鉛直荷重を支持せず、地震時の水平荷重の一部を負担する。従って、球面滑り装置10とともに所望のトリリニアの復元力特性が得られる数のダンパー装置20Aを、免震層65の自由な位置に配設することができる。尚、分散並列免震装置50Dも、一体並列免震装置50等と同様に、図10に示すトリリニアの復元力特性を有する。
図示する免震構造100Aによっても、トリプルペンデュラム方式の免震装置等、構造が複雑な免震装置を適用しないことから、構造が複雑でなく、また、球面滑り装置10の構成を変更することなく、トリリニアの復元力特性を形成することにより、摩擦係数を増大させて地震力の減衰性を高め、かつ免震層65の過大な変形を抑制することができる。
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
10:球面滑り装置
11:上沓
12:滑り面
15:下沓
16:滑り面
17:ストッパーリング
18:スライダー
19:滑り面
20,20A,20B:ダンパー装置(U型ダンパー)
21:曲線ロッド
22:直線ロッド
24:ダンパーロッド
25:ベースプレート
30,30A,30B:取り付け片
35:ボルト
40A:上ベースプレート
40B:下ベースプレート
50,50A,50B,50C:並列免震装置(一体並列免震装置)
50D:並列免震装置(分散並列免震装置)
60:免震ピット(下部構造体)
61:ピット底盤
62:擁壁
63:下方フーチング
65:免震層
70:免震建物
71:下部構造体
72:地中梁
73:上方フーチング
75:上部架構
76:柱
100,100A:免震構造
G:地場
S:隙間

Claims (2)

  1. 上部構造体と下部構造体の間の免震層において、該上部構造体からの鉛直荷重を支持する球面滑り装置と、該鉛直荷重を支持しないダンパー装置が並列配置されており、
    前記球面滑り装置は、上沓及び下沓と、これらの間を摺動するスライダーとを有し、
    前記ダンパー装置は、U型ダンパーであり、
    前記上沓及び前記下沓の各側面を、複数の前記U型ダンパーが繋いでいることを特徴とする、免震構造。
  2. 前記上沓及び前記下沓の各側面を、鉛直方向と水平方向の間の斜め方向に寝た状態に配設された複数の前記U型ダンパーが繋いでいることを特徴とする、請求項1に記載の免震構造。
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