JP6916022B2 - 鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体とその製造方法、並びに、ペースト - Google Patents
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Description
従来の技術に係る電磁波吸収体用の材料には、電磁波の入射角度や周波数が設計に対して厳密に合致しない場合、電磁波の吸収がほとんどゼロになるという課題があった。これに対し、ε酸化鉄は、電磁波の入射角度や周波数の値が設計から少し外れても、広い周波数範囲及び電磁波入射角度で電磁波吸収能を発揮する。この為、広範囲の条件下において電波吸収性能を有する磁性材料として、電波吸収体設計の観点において自由度の増大をもたらすものと考えられる(特許文献3参照)。
一方、本発明者らは、鉄サイトの一部がM元素で置換されたε酸化鉄(本発明において「置換型ε酸化鉄」と記載する場合がある。)にさらなる改良を加えれば、上述した磁気特性を生かしたより高性能な電波吸収体を初めとして、多様な磁気材料に応用することが出来るものと考えた。
ところが、本発明者らの知見によれば、上述したε酸化鉄粉体や置換型ε酸化鉄粉体は、粗大且つ強く凝集した凝集体で構成されている。その結果、当該電波吸収膜の膜厚の微調整が困難であることが確認された。そこで、当該置換型ε酸化鉄粉体を電波吸収体等へ適用するには、当該粗大且つ強く凝集した凝集体を、粒子径が小さく且つ粒子径の分布がシャープな状態へ粉砕する必要があると考えられた。
鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体であって、
鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粒子の造粒体によって構成されており、
前記粉体の、マイクロトラック粒度分布測定によって測定される体積基準による粒度が、累積50%粒子径D50≦75μm、且つ、(累積90%粒子径D90−累積10%粒子径D10)/累積50%粒子径D50≦2.0を満たし、
マイクロトラック粒度分布測定によって測定される前記粉体の体積基準による粒度において、体積平均径(MV)が、1μm以上100μm以下である、鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体である。
第2の発明は、
前記鉄以外の金属元素がガリウム、アルミニウム、インジウム、チタン、錫、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、亜鉛の中から選択される少なくとも一種から構成されている、第1の発明に記載の鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体である。
第3の発明は、
前記鉄以外の金属元素がガリウム、アルミニウム、インジウムの中から選択される少なくとも一種から構成されている、第1の発明に記載の鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体である。
第4の発明は、
鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素Mで置換されたε酸化鉄粉体に含まれるSi含有量が、Si/(Fe+M)で表されるモル比で0.001以上0.3以下である、第1〜第3の発明のいずれかに記載された鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体である。
第5の発明は、
鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体の製造方法であって、
シリコン酸化物で被覆された、鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄のスラリーとアルカリ水溶液とを混合して前記シリコン酸化物を除去する工程と、
前記シリコン酸化物が除去された、鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄のスラリーをスプレードライヤーで乾燥させることにより、鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粒子の造粒体を得る造粒体製造工程と、を備える鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体の製造方法である。
第6の発明は、
前記鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄のスラリーの固形分濃度を70質量%以下とする、第5の発明に記載の鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体の製造方法である。
第7の発明は、
前記鉄以外の金属元素がガリウム、アルミニウム、インジウム、チタン、錫、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、亜鉛の中から選択される少なくとも一種から構成されている、第5または第6の発明に記載の鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体の製造方法である。
第8の発明は、
前記鉄以外の金属元素がガリウム、アルミニウム、インジウムの中から選択される少なくとも一種から構成されている、第5または第6の発明に記載の鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体の製造方法である。
第9の発明は、
前記鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体をさらに解砕する解砕工程を備える、第5〜第8の発明のいずれかに記載の鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体の製造方法である。
第10の発明は、
前記解砕工程がピンミルを用いて行うものである、第9の発明に記載の鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体の製造方法である。
第11の発明は、
前記シリコン酸化物を除去する工程において、鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素Mで置換されたε酸化鉄粉体に含まれるシリコン酸化物の量が、Si/(Fe+M)で表されるモル比で0.001〜0.3となるようにシリコン酸化物を除去することを特徴とする、第5〜第10の発明のいずれかに記載の鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体の製造方法である。
第12の発明は、
第1〜第4の発明のいずれかに記載の、鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体を含むペーストである。
本発明に係る置換型ε酸化鉄は、ε酸化鉄を構成する鉄サイトの鉄元素の一部が、鉄以外の金属元素であるM元素で置換されたものである。
当該M元素としては、生成する置換型ε酸化鉄の結晶構造を安定に保つ観点から、2価の金属、4価の金属、3価の金属を用いることが好ましい。さらに、2価の金属としては、Co、Ni、Mn、Cu,Znから選択される1種以上のM元素、4価の金属としてはTi、Sn、3価の金属としてはIn、Ga、Al、から選択される1種以上のM元素を、好ましい例として挙げることが出来る。
尤も、熱的安定性を向上させる観点から、2価または4価のM元素も用いて、3価のM元素と伴に置換した置換型ε酸化鉄はより好ましい。一方、2価および4価のM元素で置換した置換型ε酸化鉄は、熱的安定性に優れ、磁性粒子の常温における保磁力を高く維持出来るが、ε酸化鉄と同じ空間群の単一相がやや得にくい。
そして、2価、3価および4価のM元素を用いて構成された置換型ε酸化鉄は、上述の特性のバランスが最も良く取れたもので、耐熱性、単一相の得易さ、保磁力の制御性に優れるものである。
尚、後述する本発明に係る鉄サイトの一部がM元素で置換されたε酸化鉄粉体の製造方法は、上述したいずれの置換タイプに係る置換型ε酸化鉄粉体についても適用可能である。
一方、本発明者らの知見によれば、特にε酸化鉄粒子の保磁力と電波吸収量のピーク位置(いずれの周波数の電磁波を吸収するか)とについては、強い相関性があることが確認されている。
従って、M元素の添加量を適切に制御することにより、本発明に係る置換型ε酸化鉄粒子の保磁力を適切に制御すれば、所望の電波を選択的に吸収することが可能になる。
本発明に係る置換型ε酸化鉄粉体は、所定の粒度を有する置換型ε酸化鉄粒子の造粒体で構成され、当該造粒体は一次粒子である置換型ε酸化鉄粒子から構成されている。即ち、(鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素Mで置換された)置換型ε酸化鉄粒子の造粒体とは、一次粒子である置換型ε酸化鉄粒子を集合させて、所定の大きさの二次粒子径となるように造粒した粒子のことである。
具体的には、マイクロトラック粒度分布測定において測定される体積基準の粒度において、累積50%粒子径D50≦75μm、且つ、(累積90%粒子径D90−累積10%粒子径D10)/累積50%粒子径D50≦2.0の構成を有する置換型ε酸化鉄粉体である。さらに、マイクロトラック粒度分布測定において測定される粒度において、体積平均径(MV)が1μm以上100μm以下である置換型ε酸化鉄粉体である。
なお、本明細書において、マイクロトラック粒度分布測定装置により測定される体積基準での累積50%粒子径のことをD50と、マイクロトラック粒度分布測定装置により測定される体積基準での累積90%粒子径のことをD90と、マイクロトラック粒度分布測定装置により測定される体積基準での累積10%粒子径のことをD10と、記載することがある。
また、当該置換型ε酸化鉄粒子を球状とみなしたとき、算出される平均一次粒子径より算出される一次粒子体積は500nm3以上250,000nm3以下であることが好ましい。
置換型ε酸化鉄粉体の製造方法について、(1)置換型ε酸化鉄粒子の製造、(2)置換型ε酸化鉄粉体の製造、(3)置換型ε酸化鉄粉体のさらなる解砕、の順に説明する。
置換型ε酸化鉄粒子の製造について、〔1〕前駆体の合成、〔2〕シリコン酸化物による被覆、〔3〕熱処理、〔4〕アルカリ可溶成分除去、の順に説明する。
出発原料として、3価の鉄含有物質(例えば、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(III)、塩化鉄(III)等が好ましい。)を用意する。また鉄サイトの一部がM元素で置換された結晶の骨格を形成する置換型ε酸化鉄を得る為に、M元素含有物質(この場合も、M元素の硫酸塩、硝酸塩、塩化物等が好ましい。)を用意する。
尚、本発明において、金属元素名に付記されたローマ数字は、当該金属元素の価数を示している。
但し、AはCo、Ni、Mn、Cu、Znから選択される1種以上の2価のM元素、BはTi、Snから選択される1種以上の4価のM元素、CはIn、Ga、Alから選択される1種以上の3価のM元素である。そして、0<x<1、0<y<1、0<z<1、好ましくは0<x+y+z<1である。
但し、AはCo、Ni、Mn、Cu、Znから選択される1種以上の2価のM元素、BはTi、Snから選択される1種以上の4価のM元素である。そして、0<x<1、0<y<1、好ましくは0<x+y<1である。
但し、BはTi、Snから選択される1種以上の4価のM元素、CはIn、Ga、Alから選択される1種以上の3価のM元素である。そして、0<y<1、0<z<1、好ましくは0<y+z<1である。
但し、CはIn、Ga、Alから選択される1種以上の3価のM元素である。そして、0.05≦z<1である。
まずxおよびyは、0<x<1、0<y<1の範囲にて任意の数値を取ることが可能である(但し、後述するZを含めて0<x+y+z<1であることが好ましい。)。尤も、2価、3価および4価のM元素を用いて構成された置換型ε酸化鉄としての電波吸収性能を考えると、2価、3価および4価のM元素を用いて構成された置換体の磁性粒子の保磁力を、無置換のε酸化鉄の保磁力からはある程度、変化させる必要があるとも考えられる。この場合は、0.01≦x≦0.2、0.01≦y≦0.2とすることが好ましい。
次にzも、x、yと同様に0<z<1の範囲にて任意の数値を取ることが可能である。尤も、保磁力制御の観点および単一相の得易さの観点から、0<z≦0.5の範囲とすることが好ましい。
以上説明したように、本発明に係る2価、3価および4価のM元素を用いて構成された置換型ε酸化鉄の磁性粒子は、yまたはx、およびyの値を制御することにより、常温で高い保磁力を維持することが可能である。さらに、x、yおよびzの値を制御することにより、保磁力を所望の値に制御することが可能である。
その際、原料溶液を撹拌した状態とし、その液中に中和剤溶液を徐々に滴下する手法が好適に採用される。撹拌の強度は、必ずしも強撹拌とする必要はない。但し、あまりに撹拌が弱いと両液の混合が不十分となって、ε酸化鉄結晶を合成させることの出来る前駆体が得られ難くなる。そのような弱い撹拌状態は、所謂「混合」が不十分な状態であるので、本発明でいう「撹拌混合状態」には相当しない。
そして、当該中和反応が進行すると原料溶液は赤褐色に変化する。当該変色から、ここで合成される前駆体は、水酸化鉄(III)を主体としたものであると考えられる。
中和剤添加の終了後、前駆体を含むスラリーを撹拌しながら5分〜24時間保持することで、前駆体のスラリーが得られる。
上述の工程を経て製造された前駆体の粉末を、そのままの状態で熱処理に供しても、ε酸化鉄結晶が生成し難いことが知見された。
そこで、予めアルカリに対して可溶性を有する成分、例えば、シリコン酸化物にて前駆体の粒子を被覆した状態としてから、熱処理工程に供することが好ましい。
当該添加方法の具体的手法は、公知のゾル−ゲル法と同様とすれば良い。
前駆体の粒子をシリコン酸化物にて被覆するための反応時間は、例えば4時間以上を確保することが好ましく、1日程度撹拌状態を維持することがより好ましい。
前記工程により得られたスラリーから、シリコン酸化物を被覆した前駆体を固形分として分離し、その後、酸化雰囲気下での熱処理に供するが、当該熱処理前に、洗浄、乾燥の工程を行うことが好ましい。
熱処理の際の酸化雰囲気としては大気が利用できる。前駆体からε酸化鉄への相変化は、概ね700〜1300℃の熱処理温度範囲で起こりうる。但し、過剰に温度が高いと不純物結晶であるα−Fe2O3結晶の混在が多くなり易くなる。そこで、熱処理温度は900〜1200℃とすることが好ましく、950〜1150℃がより好ましい。
熱処理時間は0.5〜10時間程度の範囲で調整可能であるが、2〜5時間の範囲で良好な結果が得られ易い。
得られた置換型ε酸化鉄粒子の表面を被覆しているシリコン酸化物はアルカリ可溶性成分であることから、当該シリコン酸化物をアルカリ水溶液中で除去する。
これは、シリコン酸化物で被覆された前駆体を熱処理に供すると、得られた置換型ε酸化鉄粒子はシリコン酸化物に被覆されたままのものとなり、このままでは磁性粉末としての取り扱い性に劣るからである。具体的には、多量のシリコン酸化物で被覆されたままの置換型ε酸化鉄粒子は、液中や高分子基材中での分散性が必ずしも良好ではなく、またε−Fe2O3結晶本来の磁気特性が十分に引き出せないからである。
このようにシリコン酸化物を残すことで、置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリー中における置換型ε酸化鉄粒子の分散性が改善し、置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーをスプレードライヤーに供給するまでの流路内における凝集、沈降、付着が抑制され、安定したスラリー濃度での供給が可能となる。この結果、スプレードライヤーでの乾燥後に粒子径が小さく、かつ、粒度の揃った置換型ε酸化鉄粉体が得られやすい。
以上のように、アルカリ水溶液により置換型ε酸化鉄粒子の表面を被覆しているシリコン酸化物を溶解することで、置換型ε酸化鉄のスラリーが得られる。なお、置換型ε酸化鉄粒子の表面を被覆しているシリコン酸化物を溶解させた後に、置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーの純水洗浄を行ってもよい。この純水洗浄とは、置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーに溶解しているシリコン酸化物のアルカリ金属塩などの濃度を低減させることであり、限外濾過など公知の方法を採用することができる。
スプレードライヤーを用いて、得られた置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーを乾燥させると同時に、造粒をも行うことによって置換型ε酸化鉄粉体を製造する。
前記スラリー中において、置換型ε酸化鉄粒子の粒子間距離を確保した状態で乾燥させることで、乾燥後の前記粒子間の凝集を抑制することが可能となる。このようにスプレードライヤーによる乾燥方法を採用することで、二次粒子径が小さくかつ当該二次粒子径の分布がシャープな、置換型ε酸化鉄粉体を得ることができる。
スプレードライ法を用いた場合、アトマイザーディスクの回転数はスラリーを供給する速度やドライヤーの送風量、チャンバー容量にもよるが、好ましくは15000rpm以上、より好ましくは17500rpm以上とする。アトマイザーディスクの回転数が大きいほど、置換型ε酸化鉄粒子を含むスラリーの液滴径を小さくできるため、二次粒子径の小さい置換型ε酸化鉄粉体が得られやすい。乾燥用熱風温度は、噴霧乾燥後、造粒される粒子に水分が残らない温度が好ましい。具体的には、入り口温度で150〜200℃、出口温度は60℃以上が好ましい。
上述した本発明に係る置換型ε酸化鉄粉体は、勿論そのままで、電波吸収体等へ適用可能である。尤も、当該置換型ε酸化鉄粉体を構成する造粒体は、軽い解砕処理でも解砕することができる。そこで、当該置換型ε酸化鉄粉体をさらに解砕した後、新たな置換型ε酸化鉄粉体を得る構成は、当該粉体の粒度をより小さくすることができ、電波吸収体における電波吸収膜の膜厚がより薄い場合にも膜厚の微調整が可能となるため、好ましい構成である。
なお、本発明においては、上述したさらなる解砕手段により得られた置換型ε酸化鉄粉体も、本発明に係る置換型ε酸化鉄粉体に含めるものである。
以上より得られた本発明に係る置換型ε酸化鉄粉体と、バインダーと、特性を調整する添加物と、必要に応じて溶剤とを混合して、本発明に係る置換型ε酸化鉄粒子を含むペーストを得ることができる。
当該観点から例えば、シリカゾル、アルミナゾル、セメント、石膏、水ガラスを挙げることが出来る。
例えば、置換型ε酸化鉄粉体と、上述した樹脂または絶縁性の無機バインダーとを混合し、遊星ミル、ホモジナイザー、ボールミル、3本ロール、ニーダー、超音波処理等の分散処理方法等を用いて、本発明に係る置換型ε酸化鉄粉体を含むペーストを製造出来る。
以上より得られた本発明に係る置換型ε酸化鉄粉体を含むペーストを用いて、本発明に係る電波吸収膜や電波吸収体を容易に製造することができる。
この場合、本発明に係る電波吸収体へは、必要に応じて添加物を添加することが出来る。
具体的には、本発明の効果を低下させない範囲で、公知の添加物、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、珪藻土等の補強性充填剤、酸化鉄、酸化セリウム等の耐熱剤、顔料、耐熱性向上剤、酸化防止剤、離型剤、加工助剤、接着性付与剤などを例示することが出来る。また、導電膜の比誘電率を調整する等の目的で、カーボンナノチューブや黒鉛などの炭素などを添加することが出来る。
本発明に係る置換型ε酸化鉄の評価方法について、(1)置換型ε酸化鉄粒子の造粒体の形態、(2)平均粒子径、粒度分布、(3)細孔容積の測定、(4)高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP)による組成分析、の順に説明する。
本発明に係る置換型ε酸化鉄造粒体の形態は、電界放出形走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 S−4700形)像により、倍率60,000倍にて確認した。
本発明に係る置換型ε酸化鉄粉体の平均粒子径および粒度分布は、マイクロトラック・ベル社製のマイクロトラック粒度分析装置で測定した。なお、測定時の溶媒としては純水を用いた。
本発明に係る置換型ε酸化鉄粉体の細孔容積は、水銀圧入装置(Micrometitics Instrument Corporation社製のAutoPore IV 9500型)を用いて、0.3〜0.5gの置換型ε酸化鉄粉体試料へ、を水銀圧入法適用して測定した。
本発明に係る置換型ε酸化鉄粉体の組成分析を行った。当該組成分析には、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(アジレントテクノロジー製ICP−720ES)を使用した。
200L反応槽を用い、純水145.45kg、純度99.7%硝酸第二鉄(III)9水和物15.36kg、Ga濃度13.20%の硝酸ガリウム(III)溶液6.32kgを、大気雰囲気下30℃の条件下、撹拌羽根により機械的に撹拌しながら混合し混合溶液とした。この混合溶液中におけるM元素イオンのモル比は、Fe:Ga=1.52:0.48である。
得られたスラリー4kgを、ディスク型スプレードライヤー(大川原加工機株式会社製L−12型スプレードライヤー)を用いて噴霧し、乾燥と造粒とを同時に行った。そして、置換型ε酸化鉄粒子の造粒体で構成されている、実施例1に係る置換型ε酸化鉄粉体を得た。なお、噴霧条件は、入口温度200℃(このとき、出口温度は55〜75℃程度)、ディスク回転数20000rpm、スラリーの供給速度は140g/minとした。
当該実施例1に係る置換型ε酸化鉄粉体における、細孔の累積細孔容積を図3に示すチャートにおいて太破線を用いて記載し、径が20nmφ以下の細孔の累積細孔容積を図4に示すチャートにおいて太破線を用いて記載した。
また、「Si/(Fe+M)」で表されるモル比は、0.017であった。
実施例1に係る置換型ε酸化鉄粉体に対してピンミルによる解砕処理を行って、実施例2に係る置換型ε酸化鉄粉体を得た。
当該実施例2に係る置換型ε酸化鉄粉体のSEM写真を図2に示す。
当該実施例2に係る置換型ε酸化鉄粉体における、細孔の累積細孔容積を図3に示すチャートにおいて実線を用いて記載し、径が20nmφ以下の細孔の累積細孔容積を図4に示すチャートにおいて実線を用いて記載した。
実施例1と同様の操作を行って、洗浄後スラリーを得た。
得られた洗浄後スラリーを、110℃24時間、大気雰囲気の箱形乾燥機中にて乾燥した後に、瑪瑙乳鉢を用いて粉砕し、比較例1に係る置換型ε酸化鉄粉体を得た。
当該比較例1に係る置換型ε酸化鉄粉体のマイクロトラック粒度分布測定の結果から、従来の乾燥方法を採用すると、置換型ε酸化鉄粒子が粗大な凝集体を形成してしまうことが判明した。
当該比較例1に係る置換型ε酸化鉄粉体における、累積細孔容積を図3に示すチャートにおいて細破線を用いて記載し、径が20nmφ以下の細孔の累積細孔容積を図4に示すチャートにおいて細破線を用いて記載した。
Claims (12)
- 鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体であって、
鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粒子の造粒体によって構成されており、
前記粉体の、マイクロトラック粒度分布測定によって測定される体積基準による粒度が、累積50%粒子径D50≦75μm、且つ、(累積90%粒子径D90−累積10%粒子径D10)/累積50%粒子径D50≦2.0を満たし、
マイクロトラック粒度分布測定によって測定される前記粉体の体積基準による粒度において、体積平均径(MV)が、1μm以上100μm以下である、鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体。 - 前記鉄以外の金属元素がガリウム、アルミニウム、インジウム、チタン、錫、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、亜鉛の中から選択される少なくとも一種から構成されている、請求項1に記載の鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体。
- 前記鉄以外の金属元素がガリウム、アルミニウム、インジウムの中から選択される少なくとも一種から構成されている、請求項1に記載の鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体。
- 鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素Mで置換されたε酸化鉄粉体に含まれるSi含有量が、Si/(Fe+M)で表されるモル比で0.001以上0.3以下である、請求項1〜3のいずれかに記載された鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体。
- 鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体の製造方法であって、
シリコン酸化物で被覆された、鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄のスラリーとアルカリ水溶液とを混合して前記シリコン酸化物を除去する工程と、
前記シリコン酸化物が除去された、鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄のスラリーをスプレードライヤーで乾燥させることにより、鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粒子の造粒体を得る造粒体製造工程と、を備える鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体の製造方法。 - 前記鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄のスラリーの固形分濃度を70質量%以下とする、請求項5に記載の鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体の製造方法。
- 前記鉄以外の金属元素がガリウム、アルミニウム、インジウム、チタン、錫、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、亜鉛の中から選択される少なくとも一種から構成されている、請求項5または6に記載の鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体の製造方法。
- 前記鉄以外の金属元素がガリウム、アルミニウム、インジウムの中から選択される少なくとも一種から構成されている、請求項5または6に記載の鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体の製造方法。
- 前記鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体をさらに解砕する解砕工程を備える、請求項5〜8のいずれかに記載の鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体の製造方法。
- 前記解砕工程がピンミルを用いて行うものである、請求項9に記載の鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体の製造方法。
- 前記シリコン酸化物を除去する工程において、鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素Mで置換されたε酸化鉄粉体に含まれるシリコン酸化物の量が、Si/(Fe+M)で表されるモル比で0.001〜0.3となるようにシリコン酸化物を除去することを特徴とする、請求項5〜10のいずれかに記載の鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の、鉄サイトの一部が鉄以外の金属元素で置換されたε酸化鉄粉体を含むペースト。
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