JP6915218B2 - 繊維強化樹脂製歩廊 - Google Patents

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本発明は、橋梁の保守点検を行うための検査路等に用いられる繊維強化樹脂製歩廊に関する。
高速道路や鉄道の橋梁には、一般に、定期的な点検や破損部分の修理を行うための検査路が付設されている。この検査路を構成する歩廊は、従来では鋼製のものが多かったが、近年では、鋼製のものに比べて大幅な軽量化が図れ、設置作業がしやすく、表面処理を施さなくても耐久性・耐食性が確保できる繊維強化樹脂(FRP)製のものが使用されるようになってきている。
上記のような繊維強化樹脂製歩廊(以下、「FRP製歩廊」とも称する。)は、通常、主桁と、主桁の長手方向の複数個所に立設される支柱と、主桁の長手方向に延びる状態で支柱に取り付けられる手摺とを備え、その主桁、支柱および手摺がそれぞれFRPで形成されている。そして、その主桁は、複数のFRP製部品を一体化したものが多い。
例えば、特許文献1に開示されている歩廊(橋梁検査路構造)の主桁(デッキプレート)は、裏板と、表板と、左右両側の側面を形成する断面コの字状の形材と、裏板と表板との間の幅方向中央に配される断面コの字状の形材とを、それぞれFRPで形成して、その部品どうしを接着剤で接合したものである。
また、特許文献2には、構造物の点検、修理等に使用される歩廊の主桁(足場板)として、断面矩形のFRP製パイプを複数本並べ、その上下面にFRP板を積層し、その外周を樹脂含浸繊維で巻き込み、さらにその最外周を傷付き防止用の金属製の薄板で覆った板状体を用いることが開示されている。
実用新案登録第3128947号公報 特許第3367788号公報
しかしながら、上記特許文献1、2に開示されているようなFRP製歩廊では、主桁の部品点数が多いため、主桁の製作までの部品管理が煩雑となるし、主桁製作時にも部品を一体化するのに時間と手間がかかるという問題がある。しかも、主桁の部品どうしを接着したり(特許文献1)、樹脂含浸繊維で巻き込んだり(特許文献2)して一体化しているので、使用中に主桁が製作時の一体化状態を保持できなくなって変形や破損を生じることがないように、主桁全体としての強度を確保するための設計および製作を慎重に行う必要があり、この点でも設計・製作に時間と手間がかかる。
そこで、本発明は、主桁の部品点数が少なく、かつ主桁の強度を確保しやすいFRP製歩廊を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するため、本発明は、主桁と、前記主桁の長手方向の複数個所に立設される支柱と、前記主桁の長手方向に延びる状態で前記支柱に取り付けられる手摺とを備え、少なくとも前記主桁が繊維強化樹脂で形成されている繊維強化樹脂製歩廊(FRP製歩廊)において、前記主桁は、表面部と裏面部と両側面部とからなる中空の板状をなし、幅方向の少なくとも1箇所に前記表面部と裏面部との間で長手方向に延びるリブを有している一体成形品である構成を採用した。
すなわち、FRP製の主桁として、内部にリブを有する中空板状の一体成形品を用いることにより、複数の部品を一体化した主桁を用いる場合に比べて、主桁の部品点数を減らすことができ、主桁全体としての強度の確保も容易に行えるようにしたのである。
ここで、前記支柱が前記主桁の側面部に締結部材で締結されており、前記主桁は、前記裏面部のうち、少なくとも前記側面部と支柱との締結部の近傍に開口が設けられている構成を採用すれば、支柱の主桁側面部への締結作業が容易になる。
また、前記主桁の表面部が、その表面の幅方向中心を頂点とし、幅方向両側へ向かって下る勾配を有している構成とすれば、このFRP製歩廊を屋外に設置した場合に、雨水等が主桁上に残留することなく幅方向両側へ滑り落ち、作業者が主桁上で足を滑らせにくいようにすることができる。
本発明のFRP製歩廊は、上述したように、FRP製の主桁として、内部にリブを有する中空板状の一体成形品を用いたものであるから、複数の部品を一体化した主桁を用いたものに比べて、主桁の部品点数が少なく、主桁の強度も確保しやすい。
実施形態のFRP製歩廊の側面図 図1のFRP製歩廊の正面図 aは図1のIII−III線に沿った断面の主桁付近を拡大して示す縦断面図、bはaの主桁の要部拡大縦断面図 図3の断面の付近を下方から見た斜視図 図3(a)に対応して主桁の変形例を示す縦断面図
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。このFRP製歩廊は、図1および図2に示すように、主桁1と、主桁1の長手方向の複数個所で主桁1の両側に立設される支柱2と、主桁1の長手方向に延びる状態で支柱2に取り付けられる複数の手摺3とからなるもので、その主桁1、各支柱2および各手摺3がそれぞれ繊維強化樹脂(FRP)で形成されている。
前記主桁1は、図2、図3(a)および図4に示すように、表面部11と裏面部12と両側面部13、13とからなる中空の板状をなし、その幅方向の複数箇所に表面部11と裏面部12との間で長手方向に延びるリブ14を有している一体成形品であり、引抜成形によって製作されたものである。ここで、引抜成形は、長手方向に強化繊維を配置するのに適した成形方法で、長手方向に大きい強度を発現するものであるので、この主桁1も長手方向に大きい強度を有している。また、主桁1の表面部11は、図3(a)、(b)に示すように、その表面の幅方向中心を頂点とし、幅方向両側へ向かって下る角度θの勾配を有している。
前記各支柱2は、図1乃至図4に示すように、2つの帯状部21、22からなる断面L字状の部材であり、その一方の帯状部21の外側面の下端部が主桁1の側面部13に当接する状態で、ボルトとナットからなる締結部材4によって主桁側面部13に締結されている。
そして、図3(a)および図4に示すように、主桁1の裏面部12には、主桁1の側面部13と各支柱2との締結部の近傍にそれぞれ矩形の開口15が設けられ、この開口15を利用して支柱2の主桁側面部13への締結が行えるようになっている。
前記各手摺3は、図1、図2および図4に示すように、丸パイプ状の部材であり、主桁1の長手方向に並ぶ複数の支柱2の他方の(主桁側面部13と直交する方の)帯状部22を貫通する状態で、鉛直方向に3段(上段、中段、下段)配置されている。そのうち、上段の手摺3は、剛性確保のために、中段および下段の手摺3よりも大径のものが用いられており、各支柱2貫通位置の前後をそれぞれ固定具5で支柱2に固定されている。一方、中段および下段の手摺3は、主桁1の長手方向の両端部に配置された支柱2にのみ、その支柱2の貫通位置の前後を固定具5で固定されている。
このFRP製歩廊は、上記の構成であり、FRP製の主桁1として、内部にリブ14を有する中空板状の一体成形品を用いているので、複数の部品を一体化した主桁を用いた従来のものに比べて、主桁の部品点数が少ない。したがって、主桁1については、製作までの部品管理が不要で、製作も一度の引き抜き加工のみでよく、時間や手間がかからない。しかも、構造および製作工程が比較的単純なので、強度を確保するための設計や製作段階での管理がしやすく、この点でも生産性に優れたものとなっている。
また、主桁1の表面部11は、その表面の幅方向中心を頂点とし、幅方向両側へ向かって下る勾配を有しているので、このFRP製歩廊を屋外に設置した場合に、雨水等が主桁1上に残留することなく幅方向両側へ滑り落ち、作業者が主桁1上で足を滑らせにくいようになっている。
また、支柱2は断面L字状の部材を用い、その一方の帯状部21の外側面の下端部を主桁側面部13に当接させてボルトとナットからなる締結部材4で締結するようにするとともに、主桁1の裏面部12のうち、主桁側面部13と各支柱2との締結部の近傍に開口15を設けているので、支柱2の主桁側面部13への締結作業が容易なうえ、断面矩形の支柱を用いる場合よりも軽量化が図れる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、主桁1は、図5に示す変形例のように、上述した実施形態のものよりも高さのあるものを用いることもできる。また、その表面部は、滑り止めのために、実施形態のような勾配をつけるほか、表面に滑り止め塗装を施すようにしてもよい。
そして、実施形態では、主桁1の裏面部12に支柱2の主桁側面部13への締結作業を容易にするための開口15を設けたが、その開口は主桁の長手方向全長にわたるスリット状に形成することもできる。開口をスリット状にすれば、主桁の引き抜き加工の際に同時に形成されるので、主桁製作をさらに効率よく行えるようになる。一方、実施形態のような個別の開口を設ける場合は、主桁の補強のために、支柱の主桁への締結作業が完了した後に開口を閉塞してもよいし、開口を開閉する蓋を取り付けるようにしてもよい。
また、支柱は、実施形態のように断面L字状の部材を用いることが好ましいが、断面H字状の部材や断面矩形の部材を用いることもできる。
また、手摺は、実施形態では、3段すべてをFRP製としたが、上段のみを鋼等の金属製としてもよい。上段の手摺をFRPよりも剛性の高い材質のものとすれば、実施形態のようにFRP製とした場合に比べて、手摺のたわみが少なくなるので、支柱の本数を減らすことができ、支柱の主桁への締結作業の負荷を少なくすることができる。また、実施形態では、3段のうちの中段および下段を主桁の長手方向両端部の支柱のみで固定するようにしたが、中下段も上段と同じくすべての支柱貫通位置の前後で固定するようにしてもよい。
そのほか、主桁の側方に、点検や修理に使用する器具等の主桁からの落下を防止するためのFRP製の落下防止板(爪先板)を設けることもできる。
1 主桁
2 支柱
3 手摺
4 締結部材
5 固定具
11 表面部
12 裏面部
13 側面部
14 リブ
15 開口
21、22 帯状部

Claims (3)

  1. 主桁と、前記主桁の長手方向の複数個所に立設される支柱と、前記主桁の長手方向に延びる状態で前記支柱に取り付けられる手摺とを備え、少なくとも前記主桁が繊維強化樹脂で形成されている繊維強化樹脂製歩廊において、
    前記主桁は、表面部と裏面部と両側面部とからなる中空の板状をなし、幅方向の少なくとも1箇所に前記表面部と裏面部との間で長手方向に延びるリブを有している一体成形品であり、
    前記支柱は、2つの帯状部からなる断面L字状の繊維強化樹脂で形成されている部材であり、その一方の帯状部の外側面の下端部が前記主桁の側面部に当接する状態で締結部材によって前記主桁の側面部に締結されており、
    前記手摺は、前記支柱の他方の帯状部を貫通する状態で配置されていることを特徴とする繊維強化樹脂製歩廊。
  2. 主桁と、前記主桁の長手方向の複数個所に立設される支柱と、前記主桁の長手方向に延びる状態で前記支柱に取り付けられる手摺とを備え、少なくとも前記主桁が繊維強化樹脂で形成されている繊維強化樹脂製歩廊において、
    前記主桁は、表面部と裏面部と両側面部とからなる中空の板状をなし、幅方向の少なくとも1箇所に前記表面部と裏面部との間で長手方向に延びるリブを有している一体成形品であり、
    前記支柱は、2つの帯状部からなる断面L字状の部材であり、その一方の帯状部の外側面の下端部が前記主桁の側面部に当接する状態で締結部材によって締結されており、
    前記主桁は、前記裏面部のうち、少なくとも前記側面部と支柱との締結部の近傍に開口が設けられていることを特徴とする繊維強化樹脂製歩廊。
  3. 前記主桁の裏面部の開口が矩形であることを特徴とする請求項2に記載の繊維強化樹脂製歩廊。
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