JP6912805B2 - カルボニル化合物捕集剤、それを含むサンプラー及びカルボニル化合物の測定方法 - Google Patents
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Description
大気中のカルボニル化合物の濃度を測定する方法として、従来、カルボニル化合物を2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(以下、DNPHという場合がある。)で誘導体化し、分析する方法がある。しかしながら、カルボニル化合物の中でも、特にアクロレイン等の不飽和カルボニル化合物は、反応性の高い共役二重結合を有しており、この共役二重結合は、不飽和カルボニル化合物とDNPHとの脱水縮合物であるヒドラゾン誘導体にも含まれている。そのため、このヒドラゾン誘導体が、未反応のDNPHや他のヒドラゾン誘導体と容易に反応してしまい、アクロレイン等の不飽和カルボニル化合物を正確に定量することは困難を極める。
捕集工程で捕集される気体試料としては、大気中のカルボニル化合物を含む気体であれば特に限定はされない。大気中のカルボニル化合物としては、具体的には、アクロレイン、クロトンアルデヒド、メタクリルアルデヒド、2−メチル−2−ブテナール、プロピオンアルデヒド、trans−2−ヘキセナール、2,6−ノナジエナール、trans−2−ノネナール及びベンズアルデヒド等の不飽和カルボニル化合物、並びにホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、2−ブタノン、i−ブチルアルデヒド、ブチルアルデヒド、シクロヘキサン、i−バレルアルデヒド、バレルアルデヒド、o,m,p−トルアルデヒド、ヘキサナール、2,5−ジメチルベンズアルデヒド、ヘプタナール、o−フタルアルデヒド、オクタナール、デカナール、ノニルアルデヒド及びグルタルアルデヒド等のその他のカルボニル化合物が挙げられる。
気体試料に含まれるカルボニル化合物は、上記の通り、サンプラーの収納部に収納されたカルボニル化合物捕集剤に吸着され、誘導体となって捕集される。捕集された捕集試料を抽出する方法としては、特に限定されず、例えばサンプラーの一端から他端へ抽出溶媒を通過させればよい。
抽出工程によって抽出された抽出試料を分析する方法としては、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等の公知の方法が挙げられる。これらの方法によって、抽出試料中の誘導体を定量することによりカルボニル化合物量を定量測定することができる。
分析値の校正及びサンプラーの性能評価に用いるアクロレイン標準ガスは、以下の手順により調製した。市販の気体試料捕集用200Lサンプリングバッグに、湿度約30%の空気を2L/分の速度で注入した。サンプリングバッグ中に約50Lの純空気が注入された時点で、1.1μLのアクロレインをT字管を用いて気流中に混入した。T字管はセプタム付きのガラス管である。シリンジ等でガラス管内に液体試料を注入し、必要に応じて炉でガラス管を加熱することでこの試料を気化させることができる。本実施例では、アクロレインの分解を防ぐため、加熱は行わず室温でアクロレインを気化させた。サンプリングバッグ中の気体が200Lに達するまで引き続き純空気を注入し、アクロレイン濃度0.2ppmのアクロレイン標準ガスを得た。
高速液体クロマトグラフは、Agilent製高速液体クロマトグラフ(HPLC)システム(Compact LC 1120)を用いた。分離カラムには、ZORBAX Bonus−RP(100mm×3.0mm,Agilent製)を用いた。カラム温度は35℃、検出に用いる波長の範囲は300〜500nmとした。サンプル量の注入量は5μLとした。溶離液にはアセトニトリルと水を用いた。送液条件はグラジェントモード{アセトニトリル(40%→50%→80%→40%)、水(60%→50%→20%→60%)}で0.35mL/分とした。
まず、カルボニル化合物を捕集する捕集剤を以下の手順により作製した。再結晶工程により純度を高めた2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)0.6g及び硫酸76.9mgをアセトニトリル200mLに溶解し、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル0.2mgを純水200mLに溶解したものを混合して捕集補助剤含有DNPH溶液を調製した。担体であるシリカゲルは、予め酸洗浄を行い、ロータリーエバポレータを用いて85℃で1時間減圧し、水分を完全に除去した。このシリカゲル200gに先ほどの捕集補助剤含有DNPH溶液を加え、撹拌した。40℃の水浴下、再びロータリーエバポレータを用いてこの混合物から溶媒を留去し、乾燥させて、カルボニル化合物用誘導体化剤0.3質量%、捕集補助剤0.0001質量%、硫酸0.04質量%が担持された捕集補助剤含有DNPHシリカゲルを得た。この捕集補助剤含有DNPHシリカゲル350mgをRO水で10mL抽出したところ、pHは5であった。この捕集補助剤含有DNPHシリカゲル350mgをポリエチレン管(柴田科学製アクティブガスチューブケース)に充填し、サンプラーを作製した。作製したサンプラーは、分析に用いるまで4℃で保管した。
次に、大気サンプリングポンプMP−Σ100HNII型(柴田科学製)を用いて、サンプラー内にアクロレイン標準ガス1Lを通気させた。所定量のガスが通気した後、サンプラーの両端をただちに密栓し、4℃で保管した。24時間経過後、アセトニトリル(5mL)を流して抽出液を得た。この抽出液をただちに高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて分析した。
4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルの量を2.0mgに変えたこと以外は実施例1と同様にして、カルボニル化合物用誘導体化剤0.3質量%、捕集補助剤0.001質量%、硫酸0.04質量%が担持された捕集補助剤含有DNPHシリカゲルを用いた実施例2に係るサンプラーを作製した。このサンプラーを使用し、実施例1と同様にして抽出液を得て、抽出液を実施例1と同じ条件で分析した。
4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルの量を20mgに変えたこと以外は実施例1と同様にして、カルボニル化合物用誘導体化剤0.3質量%、捕集補助剤0.01質量%、硫酸0.04質量%が担持された捕集補助剤含有DNPHシリカゲルを用いた実施例3に係るサンプラーを作製した。このサンプラーを使用し、実施例1と同様にして抽出液を得て、抽出液を実施例1と同じ条件で分析した。
捕集補助剤非含有DNPH溶液を調整するために、アセトニトリルの量を400mLに変え、さらに4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル20mgを純水200mLに溶解したものを混合せずに、DNPH溶液を調製した。それ以外は実施例1と同様にして、捕集補助剤を含有せず、カルボニル化合物用誘導体化剤0.3質量%、硫酸0.04質量%が担持されたDNPHシリカゲルを用いた比較例1に係るサンプラーを作製した。このサンプラーを使用し、実施例1と同様にして抽出液を得て、抽出液を実施例1と同じ条件で分析した。
実施例1について硫酸を307.6mgに変更しその他は同様の条件にし、カルボニル化合物用誘導体化剤0.3質量%、捕集補助剤0.0001質量%、硫酸0.15質量%が担持された捕集補助剤含有DNPHシリカゲルを得た。この捕集補助剤含有DNPHシリカゲル350mgをRO水で10mL抽出したところ、pHは4.5であった。この捕集補助剤含有DNPHシリカゲルを用いて比較例2に係るサンプラーを作製した。このサンプラーを使用し、実施例1と同様にして抽出液を得て、抽出液を実施例1と同じ条件で分析した。
結果について、図2乃至4を参照しながら説明する。
なお、各データ群において、DNPH−A(下記式(1)、以下AC−D1)は、アクロレインとDNPHとが脱水縮合することにより生成したヒドラゾン誘導体を表し、DNPH−A−DNPH(下記式(2)、以下AC−D2)は、AC−D1に未反応のDNPHが付加した生成物を表す。
12 収納部
14 カルボニル化合物捕集剤
16 流入部
18 流出部
Claims (3)
- (A)カルボニル化合物用誘導体化剤と、
(B)2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル及び4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルのうち一以上のニトロキシド誘導体である捕集補助剤と、
(C)酸触媒とが担持された担体を含み、
前記(C)酸触媒の濃度が、0.01〜0.1質量%であることを特徴とするカルボニル化合物捕集剤。 - 請求項1記載のカルボニル化合物捕集剤と、
該カルボニル化合物捕集剤を収納可能な収納部と、
該収納部内に気体を流入可能な流入部と、
前記収納部内の気体を流出可能な流出部と、
を含むことを特徴とするサンプラー。 - 大気中のカルボニル化合物を定量測定する方法であって、
気体試料を請求項2記載のサンプラーに捕集する捕集工程と、
前記捕集工程で得られた捕集試料を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で得られた抽出試料を分析する分析工程と、
を有することを特徴とするカルボニル化合物の測定方法。
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