[第1実施形態]
以下、フードロック装置のケーブル組付構造の第1実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。
図4に示すように、車両1におけるエンジンルーム2の上側には、そのエンジンルーム2を開閉すべく上下動することが可能なエンジンフード3が設けられている。また、車両1におけるエンジンルーム2の前側(図4の紙面と直交する方向の手前側)には、四角枠状をなすラジエータサポート4が設けられている。同ラジエータサポート4においては、その上部が合成樹脂材料によって形成されており、上部以外の部分が金属材料によって形成されている。そして、ラジエータサポート4の上部には、エンジンフード3を閉じ位置(図4の二点鎖線)で固定したり同固定を解除したりするためのフードロック装置5が取り付けられている。
図3及び図5はそれぞれ、フードロック装置5を車両1の前方側から見た状態、及び、後方側から見た状態を示している。同装置5は、ラジエータサポート4の上部に対し取り付けられるベースプレート6を備えている。ベースプレート6には、上下方向に延びるとともに上方に向けて開口する切り欠き部7が形成されている。この切り欠き部7における対向する内面の間隔は、上方に向かうほど長くされている。一方、エンジンフード3(図3)の下面におけるベースプレート6の切り欠き部7に対応する部分には、下方に突出するストライカ8が設けられている。そして、ストライカ8は、エンジンフード3を開いた状態から閉じ位置に移動させたとき、上記ベースプレート6における切り欠き部7の内部に進入するようになる。
図3に示すように、ベースプレート6の正面側(車両1の前方側)には、同ベースプレート6と平行な板状のキャッチ9が設けられている。このキャッチ9は、ベースプレート6の切り欠き部7に対するストライカ8の進入を許容するとともに、切り欠き部7内からのストライカ8の抜き出しを禁止するためのものである。キャッチ9は、ベースプレート6に対しピン10周りに回転可能に支持されている。キャッチ9は、切り欠き部7の幅方向(図3及び図5の左右方向)両側のうちの一方側に位置するレバー部11と、もう一方側に位置するアーム部12と、を備えている。アーム部12の上端部には、レバー部11側に向けて鉤状に曲がった部分であるフック部13が設けられている。このフック部13の上端面は、レバー部11側に向かうほど下方に位置するように傾斜する傾斜面となっている。
キャッチ9は、ピン10を中心とする回転方向において、フック部13がベースプレート6における切り欠き部7の上端の開口を閉塞する位置に、スプリング14の付勢力によって保持されている。そして、開いた状態のエンジンフード3を閉じ位置に向けて下方に移動させると、エンジンフード3のストライカ8がキャッチ9のフック部13の上端面に当接する。更に、ストライカ8は、フック部13をスプリング14の付勢力に抗して切り欠き部7の上端の開口が解放される方向に押し、フック部13の端部と切り欠き部7の内面との間から同切り欠き部7の内部に進入する。このように切り欠き部7の内部にストライカ8が進入した後、フック部13(キャッチ9)は、スプリング14の付勢力によって元の位置に戻る。
一方、閉じ位置にあるエンジンフード3を開くときには、同エンジンフード3の閉じ位置での固定を解除した状態のもと、キャッチ9のレバー部11を操作してフック部13が切り欠き部7の上端の開口を解放するようキャッチ9をピン10周りに回転させる。このときのキャッチ9の回転はスプリング14の付勢力に抗して行われる。なお、切り欠き部7の上端の開口が解放されていないときには、切り欠き部7の内部にあるストライカ8の上方への抜き出しがフック部13によって禁止される。上述したように切り欠き部7の上端の開口を解放した後、言い換えればキャッチ9の回転によりフック部13を切り欠き部7の開口と重ならない位置まで変位させた後、エンジンフード3を持ち上げることによりストライカ8が切り欠き部7から上方に抜き出される。これによりエンジンフード3が開いた状態とされる。
ちなみに、エンジンフード3を開いた後、上述したキャッチ9のレバー部11の操作をやめると、切り欠き部7の上端の開口がフック部13により閉塞される位置まで、キャッチ9がスプリング14の付勢力によってピン10周りに回転する。
図5に示すように、フードロック装置5には、車両のエンジンフード3(図3)を閉じ位置で固定したり同固定の解除を行ったりするロック機構15が設けられている。また、同装置には、上記ロック機構15を操作するための操作ケーブル16が車両の幅方向に延びるように設けられている。なお、操作ケーブル16においては、ケーブルアウタ17の内部をワイヤ18が通過しており、且つ、同ワイヤ18におけるケーブルアウタ17から突出している部分の先端部に球状の連結部19が設けられている。この連結部19は、操作ケーブル16のワイヤ18と上記ロック機構15とを繋ぐためのものである。
ロック機構15は、ベースプレート6の背面側(車両1の後方側)に位置する第1ラッチ20及び第2ラッチ21を備えている。これら第1ラッチ20及び第2ラッチ21は、ベースプレート6と平行となる板状に形成されている。ベースプレート6における切り欠き部7の幅方向両側のうち、一方の片側には第1ラッチ20の上下方向の中央部がピン23周りに回転可能に支持されており、もう一方の片側には第2ラッチ21の上下方向の中央部がピン24周りに回転可能に支持されている。
第1ラッチ20の上端部には第2ラッチ21側に向けて突出する湾曲突出部26が形成されているとともに、第2ラッチ21の上端部には第1ラッチ20側に向けて突出する湾曲突出部27が形成されている。これら湾曲突出部26,27は、厚さ方向(図5の紙面と直交する方向)に重なることにより、ベースプレート6における切り欠き部7の上端の開口を閉塞している。なお、湾曲突出部26の上端面は第2ラッチ21に向かうほど下方に位置する円弧状に形成されており、湾曲突出部27の上端面は第1ラッチ20に向かうほど下方に位置する円弧状に形成されている。
第1ラッチ20における上下方向の中央部であってピン23周りにおける第2ラッチ21側の部分には、凹部20aが形成されている。一方、第2ラッチ21における上下方向の中央部であってピン24周りにおける第1ラッチ20側の部分には、上記凹部20a内に挿入されて同凹部20aと噛み合う凸部21aが形成されている。従って、第1ラッチ20をピン23周りに回転させると、凹部20aと凸部21aとの噛み合いを通じて、第2ラッチ21がピン24周りに上記第1ラッチ20とは逆の方向に回転する。
そして、第1ラッチ20と第2ラッチ21とが湾曲突出部26,27同士を互いに離間させる方向に回転することにより、ベースプレート6における切り欠き部7の上端の開口が解放される。また、第1ラッチ20と第2ラッチ21とが湾曲突出部26,27同士を互いに接近させる方向に回転することに基づき、それら湾曲突出部26,27が厚さ方向に重なることにより、ベースプレート6における切り欠き部7の上端の開口が閉塞される。
ベースプレート6には、第1ラッチ20及び第2ラッチ21の上側と車両1の幅方向両側(図5の左右両側)とを囲むようにばね22が取り付けられている。このばね22における第1ラッチ20及び第2ラッチ21の上側に位置する部分は、車両1の幅方向に延びて切り欠き部7における第1ラッチ20及び第2ラッチ21の湾曲突出部26,27とキャッチ9のフック部13との間の部分を通過している。そして、ばね22において、一方の端部はベースプレート6の壁面6aに接しており、もう一方の端部はベースプレート6に取り付けられたスイッチ28に接している。
図6に示すように、第1ラッチ20及び第2ラッチ21の下端部はそれぞれ、ベースプレート6の下方において同ベースプレート6よりも車両1の前方側に突出している。第1ラッチ20の下端部には、操作ケーブル16におけるワイヤ18の先端の連結部19が係止される第1係止部25が設けられている。更に、第1ラッチ20の下端部は上記スプリング14に繋がっており、そのスプリング14の付勢力によって第1ラッチ20がその湾曲突出部26を第2ラッチ21の湾曲突出部27に対し接近させる方向に回転するよう付勢されている。
なお、上記スプリング14は、図3に示すように、第1ラッチ20の下端部であってベースプレート6の下側に位置する部分と、キャッチ9におけるベースプレート6の上側に位置する部分とを繋ぐように設けられている。これにより、キャッチ9に対する付勢と第1ラッチ20に対する付勢とを、共通のスプリング14によって実現することが可能になる。
開いた状態のエンジンフード3を閉じる際には、フードロック装置5のロック機構15が図6に示す状態のもとで、エンジンフード3が閉じ位置に向けて下方に移動される。これにより、エンジンフード3のストライカ8が、第1ラッチ20の湾曲突出部26と第2ラッチ21の湾曲突出部27とをスプリング14の付勢力に抗して押し広げ、ベースプレート6の切り欠き部7の内部であって湾曲突出部26,27よりも下側の部分に進入する。このとき、ストライカ8は、ばね22を図5に二点鎖線で示すように弾性変形させるため、そのばね22の付勢力を上方に向けて受けるようになる。
また、ストライカ8が上述したように切り欠き部7に進入すると、スプリング14の付勢力によって第1ラッチ20及び第2ラッチ21が元の位置(図5の位置)に戻される。これにより、第1ラッチ20及び第2ラッチ21の湾曲突出部26,27同士が厚さ方向に重なり、ストライカ8がベースプレート6の切り欠き部7の内部であって湾曲突出部26,27よりも下側の部分から上方に抜け出すことが禁止される。その結果、エンジンフード3(ストライカ8)が閉じ位置で固定される。なお、このときには、ばね22が上述したように弾性変形することにより、そのばね22の端部がスイッチ28から離れた状態となる。
一方、エンジンフード3の閉じ位置での固定を解除する際には、厚さ方向に重なる湾曲突出部26,27同士が離れるよう第1ラッチ20及び第2ラッチ21をスプリング14(図6)の付勢力に抗して回転させる。その結果、切り欠き部7の内部であって湾曲突出部26,27よりも下側の部分にあるストライカ8(図5)が、ばね22(図5の二点鎖線)の付勢力により上記部分よりも上方に抜き出され、それによってエンジンフード3の閉じ位置での固定が解除される。なお、このときにはばね22が元の位置(図5の実線)に戻り、そのばね22の端部がスイッチ28に接した状態となる。このスイッチ28は、ばね22の端部の接触の有無により、エンジンフード3(ストライカ8)が閉じ位置で固定されているか、あるいは同固定が解除されているかを検出するためのものである。
次に、操作ケーブル16をフードロック装置5に取り付けるためのケーブル組付構造について詳しく説明する。
図1に示すように、フードロック装置5のロック機構15に取り付けられた操作ケーブル16、及び、同装置5における操作ケーブル16の周辺構造を示している。図1から分かるように、ラジエータサポート4におけるロック機構15よりも車両1の前方側の部分には、ケーブル支持台29が設けられている。このケーブル支持台29における第2ラッチ21の下端部の近傍に位置する部分には、車両1の幅方向において第1ラッチ20の下端部に設けられている第1係止部25に対応して位置する板状の第2係止部30が形成されている。
操作ケーブル16におけるワイヤ18の先端の連結部19は、第1係止部25における第2係止部30とは反対側の部分に位置する当接面34に当接している。これにより、操作ケーブル16の連結部19が第1係止部25に対し係止されている。また、操作ケーブル16のワイヤ18における連結部19に繋がる部分は、第1係止部25に車両1の前方側から後方側に延びて上記当接面34と重なるように形成されているスリット36を通過している。このスリット36は、車両1の前方側の部分ほど上方に位置するように傾斜している。
図2は、図1のロック機構15及びケーブル支持台29を上方から見た状態を示している。図2に示すように、ケーブル支持台29の上記第2係止部30には、操作ケーブル16においてワイヤ18が突出するケーブルアウタ17の先端部が係止されている。詳しくは、板状の第2係止部30には上方に開口する凹所37が形成されており、その凹所37にケーブルアウタ17の先端部が挿入される。そして、凹所37の底部及び内側部がケーブルアウタ17の先端部外周に形成された溝17aに嵌め込まれることにより、操作ケーブル16のケーブルアウタ17の先端部が第2係止部30に係止される。そして、このようにケーブルアウタ17の上記先端部が第2係止部30に係止されることにより、その先端部が操作ケーブル16の延びる方向について移動しないよう位置決めされる。
操作ケーブル16は、車両1の運転席まで延びて同運転席に設けられている操作レバーに繋がっている。そして、フードロック装置5(図3)によるエンジンフード3の閉じ位置での固定を解除する際には、運転席の上記操作レバーの操作に基づき、操作ケーブル16のワイヤ18が操作レバー側に引っ張られる。これにより、ワイヤ18の先端の連結部19と繋がっている第1ラッチ20がスプリング14(図6)の付勢力に抗してピン23周りに回転し、その第1ラッチ20の回転に基づいてロック機構15によるエンジンフード3の閉じ位置での固定が解除される。また、操作レバーの操作を通じて上記ワイヤ18の引っ張りをやめると、ロック機構15によるエンジンフード3の閉じ位置での固定が可能となる。
図1及び図2に示すように、ラジエータサポート4に設けられたケーブル支持台29の車両1の前方側の端部は、ロック機構15の第1係止部25及び第2係止部30を車両1の前方側に対し遮蔽する遮蔽部29aとなっている。なお、図3には、遮蔽部29a(二点鎖線)と第1係止部25及び第2係止部30との位置関係が示されている。上述したようにケーブル支持台29(ラジエータサポート4)に遮蔽部29aを設けるのは、次の理由による。すなわち、ラジエータサポート4にフードロック装置5(ベースプレート6)を取り付けた状態のとき、車両1の前方側からは操作ケーブル16のワイヤ18に触れられないようにする。これにより、車両1の外部からのワイヤ18の操作によってエンジンフード3の閉じ位置での固定が解除されることがないようにされる。
図1及び図2に示すように、ケーブル支持台29における遮蔽部29aよりも車両1の後方側の部分には、第1ガイド部31、ガイド面32、及び第2ガイド部33が形成されている。
第1ガイド部31は、第1係止部25における車両1の前方側に位置しており、操作ケーブル16(二点鎖線)における連結部19のワイヤ18側の部分と当接することにより、その連結部19を車両1の幅方向について位置決めするものである。この第1ガイド部31は、第1係止部25に向けて車両1の後方側に延びており、第1係止部25に近づくほど下方に位置するよう傾斜している。ちなみに、第1係止部25のスリット36は、第1ガイド部31の傾斜態様と同様の態様で傾斜しており、第1ガイド部31における車両1の後方側への延長線上に位置している。
第2ガイド部33は、第2係止部30における車両1の前方側に位置しており、操作ケーブル16(二点鎖線)のケーブルアウタ17の溝17aに挿入されることにより、ケーブルアウタ17を車両1の幅方向について位置決めするものである。この第2ガイド部33は、第2係止部30に向けて車両1の後方側に延びており、第2係止部30に近づくほど下方に位置するよう傾斜している。
ガイド面32は、第1係止部25と第2係止部30との間の部分における車両1の前方側に位置している。このガイド面32は、操作ケーブル16のワイヤ18における連結部19とケーブルアウタ17との間の部分が、第1係止部25と第2係止部30との間の部分に向けて移動するようガイドするものである。すなわち、操作ケーブル16のワイヤ18における連結部19とケーブルアウタ17との間の部分をガイド面32に接触させつつ、操作ケーブル16を車両1の後方側に移動させることにより、ワイヤ18の上記部分が上述したようにガイドされる。このガイド面32も、第1ガイド部31及び第2ガイド部33と同様、車両1の後方側の部分ほど下方に位置するよう傾斜している。
次に、本実施形態におけるフードロック装置5のケーブル組付構造の作用について説明する。
フードロック装置5のベースプレート6がラジエータサポート4に取り付けられた状態では、第1係止部25及び第2係止部30がラジエータサポート4に設けられたケーブル支持台29の遮蔽部29aによって車両1の前方側に対し遮蔽される。このため、操作ケーブル16は、ラジエータサポート4に取り付けられたフードロック装置5に対し、次のように組み付けられる。
すなわち、操作ケーブル16が車両1の幅方向に延びるように配置され、その状態で操作ケーブル16が図2に二点鎖線で示されるように遮蔽部29aを避けて同遮蔽部29aと第1係止部25及び第2係止部30との間に移動される。そして、操作ケーブル16の連結部19におけるワイヤ18と繋がる部分が第1ガイド部31に当接されることにより、その連結部19が車両1の幅方向に対し位置決めされる。更に、第2ガイド部33を操作ケーブル16におけるケーブルアウタ17の溝17aに挿入することにより、そのケーブルアウタ17の先端部が車両1の幅方向について位置決めされる。
その後、操作ケーブル16が車両1の後方側に移動されることにより、上記連結部19が第1ガイド部31によって第1係止部25までガイドされる。また、このときには操作ケーブル16のワイヤ18におけるケーブルアウタ17と連結部19との間の部分が、ガイド面32によって第1係止部25と第2係止部30との間の部分までガイドされる。更に、このときには上記ケーブルアウタ17の先端部が、第2ガイド部33によって第2係止部30まで車両1の後方側にガイドされる。
そして、上記連結部19が第1ガイド部31によって第1係止部25までガイドされると、操作ケーブル16のワイヤ18における連結部19に繋がる部分が第1係止部25のスリット36に挿入される。これにより、上記連結部19が第1係止部25の当接面34に対応して位置する。一方、操作ケーブル16におけるケーブルアウタ17の先端部が第2ガイド部33によって第2係止部30までガイドされた後、第2係止部30の凹所37にケーブルアウタ17の先端部が挿入される。
そして、上記凹所37の底部及び内側部がケーブルアウタ17の先端部外周に形成された溝17aに嵌め込まれると、操作ケーブル16のケーブルアウタ17の先端部が第2係止部30に係止される。その結果、ケーブルアウタ17の上記先端部がケーブル支持台29(第2係止部30)によってラジエータサポート4に係止されるようになる。また、ケーブルアウタ17の上記先端部が第2係止部30に係止された後、操作ケーブル16のワイヤ18によって連結部19が引っ張られると、同連結部19が第1係止部25の当接面34に当接して第1係止部25に対し係止される。
上述したように操作ケーブル16をフードロック装置5に組み付けることにより、その組み付けが車両1の幅方向に延びる操作ケーブル16の車両1の前後方向についてのスライド移動を通じて実現される。このため、上記組み付けの際に操作ケーブル16を水平方向に90°回転させる等、同操作ケーブル16を水平方向に大きく回転させなくてもよくなり、そうした移動量の大きい動きに伴って操作ケーブル16の組み付け作業の作業性が悪化することを抑制できる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)フードロック装置5に操作ケーブル16を組み付ける際、その組み付け作業の作業性が悪化することを抑制できる。
(2)連結部19を第1係止部25に係止すべく操作ケーブル16を車両の後方側にスライド移動させる際、上記連結部19が第1ガイド部31に沿ってガイドされるだけでなく、操作ケーブル16のワイヤ18もガイド面32に沿ってガイドされる。従って、上記連結部19を第1係止部25に係止するための操作ケーブル16の車両1の後方側へのスライド移動を安定して行うことができる。
(3)連結部19を第1係止部25に係止すべく操作ケーブル16を車両の後方側にスライド移動させる際、操作ケーブル16のケーブルアウタ17の先端部が第2ガイド部33によって車両1の幅方向について位置決めされる。そして、操作ケーブル16の上記スライド移動の際には、ケーブルアウタ17の先端部が第2ガイド部33に沿ってガイドされつつ上記スライド移動が行われる。従って、操作ケーブル16の連結部19を第1係止部25に係止するための同操作ケーブル16のスライド移動を安定して行うことができる。
(4)第1ガイド部31、ガイド面32、及び第2ガイド部33は、第1係止部25に近づくほど、言い換えれば車両1の後方側に向かうほど、下方に位置するよう傾斜している。このため、操作ケーブル16(ケーブルアウタ17、ワイヤ18、連結部19)を上述したようにガイドしつつ第1係止部25側(車両1の後方側)にスライド移動させる際、そうしたスライド移動を操作ケーブル16に作用する重力に逆らわずに行うことができる。従って、操作ケーブル16を上述したようにガイドしつつ、第1係止部25側(車両1の後方側)にスライド移動させることが容易になる。
[第2実施形態]
次に、フードロック装置のケーブル組付構造の第2実施形態について、図7〜図15を参照して説明する。なお、この実施形態においては、主にロック機構の構造、及び、ケーブル支持台周辺の構造が第1実施形態と異なっている関係から、それら異なっている部分についてのみ詳しく説明し、他の部分については第1実施形態と同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
図7及び図8はそれぞれ、本実施形態のフードロック装置5を車両1の前方側から見た状態、及び、後方側から見た状態を示している。図7に示すように、同装置5のキャッチ9は、スプリング38によってベースプレート6と繋がれており、そのスプリング38の付勢力によってフック部13がベースプレート6における切り欠き部7の上端の開口を閉塞する位置に保持されている。
図9及び図10はそれぞれ、フードロック装置5を車両1の後方側且つ上方側から見た状態、並びに、同装置5におけるロック機構41及びその周辺を分解した状態で示している。上記ロック機構41は、車両1の幅方向に延びるように設けられている操作ケーブル16によって操作される。
図10に示すように、ロック機構41は、ベースプレート6の背面側(車両1の後方側)に位置するポール42、ラッチ43、及び固定プレート44を備えている。これらポール42、ラッチ43、及び固定プレート44は、ベースプレート6と平行となる板状に形成されている。ベースプレート6における切り欠き部7の幅方向両側のうち、一方の片側にはポール42がピン23周りに回転可能に支持されており、もう一方の片側にはラッチ43がピン24周りに回転可能に支持されている。そして、ピン23とピン24とは、上記ポール42及び上記ラッチ43をベースプレート6との間に挟む上記固定プレート44によって繋がれている。
図11に示すように、ポール42においては、その上端部がピン23によって回転可能に支持されている。ポール42の下端部には、操作ケーブル16におけるワイヤ18の先端の連結部19が係止される第1係止部45が設けられている。更に、ポール42の下端部は、スプリング46を介してベースプレート6に繋がっており、そのスプリング46によってラッチ43側に付勢されている。一方、ラッチ43においては、その上下方向の中央部がピン24によって回転可能に支持されている。ラッチ43の下端部は、スプリング47を介してベースプレート6に繋がっており、そのスプリング47によってポール42側に付勢されている。また、ラッチ43におけるベースプレート6の切り欠き部7と重なる部分には、ポール42に対し接近離間する方向に延びる切り欠き部48が形成されている。
ポール42とラッチ43とは、ベースプレート6の切り欠き部7の近傍で互いに接触しており、それら接触する部分には互いに噛み合う段部42a,43aが形成されている。そして、ポール42をスプリング46の付勢力に抗してピン23周りに回転させると、段部42a,43aの噛み合いが解除されるため、ラッチ43がスプリング47の付勢力によってピン24周りに図12に示すように回転する。その結果、ラッチ43の切り欠き部48における開口端が、ベースプレート6の切り欠き部7の内部において上方を向くようになる。なお、このようにラッチ43が回転した後、ポール42はスプリング46の付勢力によって元の位置に戻される。
開いた状態のエンジンフード3を閉じる際には、フードロック装置5のロック機構41が図12に示す状態のもとで、エンジンフード3が閉じ位置に向けて下方に移動される。これにより、エンジンフード3のストライカ8がベースプレート6の切り欠き部7の内部に進入するようになる。その後、ストライカ8が更に下方に移動してラッチ43の切り欠き部48の内部に進入することにより、エンジンフード3が閉じ位置に到達する。この状態のもと、ラッチ43がストライカ8によって更に下方に押されると、図11に示すように段部42a,43aが互いに噛み合う位置まで、同ラッチ43がスプリング47の付勢力に抗して回転する。そして、段部42a,43aが互いに噛み合うことにより、スプリング47の付勢力が作用する方向についてのラッチ43の回転が規制される。このときには、ラッチ43の切り欠き部48の開口端は、ベースプレート6の切り欠き部7の内側面によって閉塞される。その結果、切り欠き部48内のストライカ8がベースプレート6の切り欠き部7の内部から上方に抜け出すことが禁止されるため、エンジンフード3(ストライカ8)が閉じ位置で固定されるようになる。
一方、エンジンフード3の閉じ位置での固定を解除する際には、上述したようにポール42をスプリング46の付勢力に抗してピン23周りに回転させることにより、図12に示すようにラッチ43を回転させる。このようにラッチ43を回転させることにより、同ラッチ43の切り欠き部48における開口端が、ベースプレート6の切り欠き部7の内部において上方を向くようになる。その結果、ラッチ43における切り欠き部48の内部のストライカ8を、その切り欠き部48の開口端から上方に抜き出すことができるようになり、それによってエンジンフード3の閉じ位置での固定が解除される。
次に、操作ケーブル16をフードロック装置5に取り付けるためのケーブル組付構造について詳しく説明する。
図11に示すように、ポール42における車両1の幅方向(図11の左右方向)の側方には、ケーブル支持台49が設けられている。このケーブル支持台49は、ラジエータサポート4(図7)に取り付けられている。また、ケーブル支持台49は、ポール42の第1係止部45よりも車両1の前方側(図11の紙面と直交する方向の奥側)に位置して上下方向及び車両1の幅方向に延びる板状の遮蔽部49aを備えている。更に、図10に示すように、ケーブル支持台29において、遮蔽部49aにおける車両1の後方側の面には、車両1の後方側に突出するとともに水平方向に延びるガイドプレート49b、及び、車両1の後方側に突出するとともに上下方向に延びる板状の第2係止部50が形成されている。
上記第2係止部50は、操作ケーブル16におけるケーブルアウタ17の先端部を係止するためのものであって、図11に示すように車両1の幅方向においてポール42の第1係止部45に対応して位置している。図10に示すように、この第2係止部30には車両1の前方側に向けて開口する凹所57が形成されており、その凹所57にケーブルアウタ17の先端部が挿入される。そして、凹所57の底部及び内側部がケーブルアウタ17の先端部外周に形成された溝17aに嵌め込まれることにより、操作ケーブル16のケーブルアウタ17の先端部が第2係止部30に係止される。このようにケーブルアウタ17の先端部が第2係止部30に係止されることにより、その先端部が操作ケーブル16の延びる方向(車両1の幅方向)に移動しないよう位置決めされる。
操作ケーブル16におけるワイヤ18の先端の連結部19は、第1係止部45(図9)における第2係止部50とは反対側の部分に位置する当接面54に当接する。これにより、操作ケーブル16の連結部19が第1係止部45に対し係止される。また、操作ケーブル16のワイヤ18における連結部19に繋がる部分は、第1係止部45に車両1の前方側から後方側に延びて上記当接面54と重なるように形成されているスリット53を通過する。そして、車両1の運転席に設けられている操作レバーの操作に基づき、上記連結部19がワイヤ18によって引っ張られると、図12に示すようにポール42がスプリング46の付勢力に抗してピン23周りに回転する。
図10に示すように、ケーブル支持台49における上記遮蔽部49aは、ガイドプレート49bよりも上方に突出しており、第1係止部45及び第2係止部50を車両1の前方側に対し遮蔽している。なお、この遮蔽部49aによる第1係止部45及び第2係止部50の遮蔽態様を図7に示す。このように遮蔽部49aで第1係止部45及び第2係止部50を車両1の前方側に対し遮蔽することにより、車両1の外部からのワイヤ18の操作を通じてエンジンフード3の閉じ位置での固定が解除されることは抑制される。
図13〜図15はそれぞれ、ケーブル支持台49を下方且つ車両1の後方側から見た状態、ケーブル支持台49を車両1の幅方向についての側方から見た状態、及び、ケーブル支持台49を上方から見た状態を示している。
ケーブル支持台49のガイドプレート49bにおいて、車両1の幅方向(図15の左右方向)についての第1係止部45側の端部は、操作ケーブル16の連結部19を第1係止部25に向けて移動するようガイドするガイド部51となっている。ガイド部51は、第1係止部45における車両1の前方側に位置しており、且つ、操作ケーブル16における連結部19のワイヤ18側の部分と当接することによって同連結部19を車両1の幅方向について位置決めするものである。このガイド部51は、第1係止部25に向けて車両1の後方側に延びている。
ケーブル支持台49におけるガイドプレート49bの上面は、操作ケーブル16のワイヤ18における連結部19とケーブルアウタ17との間の部分を第1係止部25と第2係止部30との間の部分に向けて移動するようガイドするガイド面52となっている。このガイド面52は、第1係止部45と第2係止部50との間の部分における車両1の前方側に位置するとともに、図14に示されるように第1係止部45のスリット53に対応する高さ位置に存在している。そして、操作ケーブル16のワイヤ18における連結部19とケーブルアウタ17との間の部分を上記ガイド面52に接触させつつ、操作ケーブル16を車両1の後方側(図14の左側)に移動させることにより、ワイヤ18の上記部分が上述したようにガイドされる。
フードロック装置5におけるベースプレート6の下端部のうち、ケーブル支持台49のガイド面52の上方に位置する部分には、第1係止部45側(車両1の後方側)に向けて突出するフランジ55が形成されている。このフランジ55は、ベースプレート6の下端部から第1係止部45におけるスリット53の内部にまで突出しており、且つ、ポール42の回転時に同スリット53内での干渉が生じないよう同ポール42の回転方向に沿って図13に示すように湾曲している。更に、フランジ55は、上記ガイド面52と対向する上方対向面55aを有している。この上方対向面55aとガイド面52との間の距離は、車両1の前方側から第1係止部45側に向かうほど短くなるとともに、第2係止部50側から第1係止部45側に向かうほど短くなるようにされている。
次に、本実施形態におけるフードロック装置5のケーブル組付構造の作用について説明する。
フードロック装置5のベースプレート6がラジエータサポート4に取り付けられた状態では、第1係止部45及び第2係止部50がラジエータサポート4に設けられたケーブル支持台49の遮蔽部49aによって車両1の前方側に対し遮蔽される。このため、操作ケーブル16は、ラジエータサポート4に取り付けられたフードロック装置5に対し、次のように組み付けられる。
すなわち、操作ケーブル16が車両1の幅方向に延びるように配置され、その状態で操作ケーブル16が図14に二点鎖線で示されるように遮蔽部49aを避けて同遮蔽部49aと第1係止部45及び第2係止部50との間に移動される。そして、図15に二点鎖線で示されるように、操作ケーブル16の連結部19におけるワイヤ18と繋がる部分がガイド部51に当接されることにより、その連結部19が車両1の幅方向に対し位置決めされる。
その後、操作ケーブル16が車両1の後方側(図15の下側)に移動されることにより、上記連結部19がガイド部51によって第1係止部45までガイドされる。また、このときには操作ケーブル16のワイヤ18におけるケーブルアウタ17と連結部19との間の部分が、ガイド面52によって第1係止部45と第2係止部50との間の部分までガイドされる。そして、上記連結部19がガイド部51によって第1係止部45までガイドされると、操作ケーブル16のワイヤ18における連結部19に繋がる部分が、第1係止部45のスリット53に挿入される。これにより、上記連結部19が第1係止部25の当接面34に対応して位置する。
一方、操作ケーブル16におけるケーブルアウタ17の先端部は第2係止部50の凹所57に挿入される。そして、上記凹所37の底部及び内側部がケーブルアウタ17の先端部外周に形成された溝17aに嵌め込まれると、操作ケーブル16のケーブルアウタ17の先端部が第2係止部50に係止される。その結果、ケーブルアウタ17の上記先端部がケーブル支持台49(第2係止部50)によってラジエータサポート4(図7)に係止されるようになる。また、ケーブルアウタ17の上記先端部が第2係止部50に係止された後、操作ケーブル16のワイヤ18によって連結部19が引っ張られると、同連結部19が第1係止部45の当接面54に当接して第1係止部45に対し係止される。
以上詳述した本実施形態によれば、第1実施形態における(1)及び(2)の効果に加え、以下に示す効果が得られるようになる。
(5)連結部19を第1係止部45に係止させるべく操作ケーブル16を第1係止部45側(車両1の後方側)にスライド移動させる際、ワイヤ18における連結部19とケーブルアウタ17の端部との間の部分が上方にずれようとする場合がある。しかし、上記ワイヤ18をガイドするガイド面52の上方には、ベースプレート6におけるフランジ55の上方対向面55aが位置しているため、その上方対向面55aによって上記ワイヤ18が上方にずれることは抑制される。
(6)ガイド面52と上方対向面55aとの間の距離は、車両1の前方側から第1係止部45側に向かうほど短くなるようにされている。このため、操作ケーブル16を第1係止部45側に上述したようにスライド移動させる際、ワイヤ18における連結部19とケーブルアウタ17の端部との間の部分を、第1係止部45と第2係止部50との間の部分に移動させやすくなる。
(7)ガイド面52と上方対向面55aとの間の距離は、第2係止部50側から第1係止部45側に向かうほど短くなるようにもされている。操作ケーブル16を第1係止部45側に上述したようにスライド移動させる際には、作業者がケーブルアウタ17の端部付近を持って上記スライド移動を行うため、ワイヤ18におけるケーブルアウタ17付近は上下に変動しやすい。しかし、そのように変動するワイヤ18における連結部19とケーブルアウタ17の端部との間の部分を、上記ガイド面52と上記上方対向面55aとによって、第1係止部45と第2係止部50との間の部分に移動するようにガイドすることができる。
(8)第1係止部45側への操作ケーブル16の上述したスライド移動に伴い、ワイヤ18がガイド面52と上方対向面55aとによってガイドされつつ、第1係止部45と第2係止部50との間の部分にスライド移動する。その際、上方対向面55aを有するフランジ55が第1係止部45のスリット53内まで突出しているため、ワイヤ18における連結部19に繋がる部分が、簡単にスリット53に挿入されるようになる。更に、そのようにワイヤ18における上記部分がスリット53に挿入されることにより、連結部19が第1係止部45における当接面54に対応して位置する。そして、操作ケーブル16におけるケーブルアウタ17の端部を第2係止部50に係止した状態で、ワイヤ18によって上記連結部19が第2係止部50側に引っ張られると、同連結部19が第1係止部45の当接面54に当接して第1係止部45に係止される。従って、第1係止部45に対する上記連結部19の係止が、操作ケーブル16のワイヤ18であって上記連結部19と繋がる部分によって阻害されることはない。
(9)ベースプレート6のフランジ55は、図13に示すようにポール42の回転方向に沿うように湾曲している。このため、ベースプレート6に対するポール42の回転時、同ベースプレート6のフランジ55が、ポール42における第1係止部45のスリット53内で干渉することは抑制される。
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・第1実施形態において、第1ガイド部31、ガイド面32、及び第2ガイド部33は必ずしも傾斜している必要はない。
・第1実施形態において、ガイド面32を省略したり、第2ガイド部33を省略したりしてもよい。
・第1実施形態において、第2係止部30をケーブル支持台29に形成する代わりに、ベースプレート6に対し取り付け又は固定されるものとしてもよい。この場合、操作ケーブル16のケーブルアウタ17は、ラジエータサポート4に取り付けられるベースプレート6を介して、第2係止部30によってラジエータサポート4に対し係止されることになる。
・第2実施形態において、フランジ55は必ずしも第1係止部45のスリット53内まで突出している必要はない。フランジ55がスリット53内まで突出していない場合、フランジ55をポール42の回転方向に沿うように湾曲させる必要はない。
・第2実施形態において、ガイドプレート49bのガイド面52とフランジ55の上方対向面55aとの間の距離については、必ずしも車両1の前方側から第1係止部45側に向かうほど短くなるようにされている必要はない。
・第2実施形態において、ガイドプレート49bのガイド面52とフランジ55の上方対向面55aとの間の距離については、必ずしも第2係止部50側から第1係止部45側に向かうほど短くなるようにされている必要はない。
・第2実施形態において、第2係止部30をケーブル支持台49に形成する代わりに、ベースプレート6に対し取り付け又は固定されるものとしてもよい。この場合、操作ケーブル16のケーブルアウタ17は、ラジエータサポート4に取り付けられるベースプレート6を介して、第2係止部50によってラジエータサポート4に対し係止されることになる。