JP6911729B2 - 回転電機のステータコイル - Google Patents

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本発明は、回転電機のステータコイル、特に導体セグメントのリード部の構成に関する。
従来、平角導線からなるU字状の導体セグメントを多数、ステータコアのスロットに挿通し、ステータコアの端面から突出した導体セグメントのリード部の端部同士を接合することで形成された回転電機のステータコイルが知られている(例えば特許文献1参照)。
特開2014−161212号公報
導体セグメントは、導体の周囲に絶縁層が被膜されて構成される。ステータコイルを形成する際には、U字状の導体セグメントをステータコアのスロットに挿通した後、導体セグメントのリード部をステータコアの端面に向かって曲げ加工してリード部に屈曲部を形成し、その後、リード部の端部同士を接合する。
曲げ加工した際、リード部の屈曲部の内周側の絶縁層が圧縮されるため、内周側の絶縁層の密着力が低下し、絶縁層が剥がれる虞がある。それにより、ステータコイルの絶縁性が低下する虞がある。
本発明の目的は、複数の導体セグメントを用いて形成されるステータコイルにおいて、絶縁性の低下を抑制することである。
本発明の回転電機のステータコイルは、環状のヨークと、前記ヨークの内周面から径方向内方に突出した複数のティースと、前記各ティースの間に形成されたスロットとを有するステータコアに巻回されたステータコイルであり、導体に絶縁層が被膜された導体セグメントを複数、前記スロットに挿通し、前記ステータコアの端面から突出した前記導体セグメントのリード部を曲げ加工し、前記リード部の端部同士を接合することで形成された回転電機のステータコイルであって、前記曲げ加工によって形成された前記リード部の屈曲部の内周側の絶縁層に、前記導体に達しない深さで切欠きが設けられており、前記曲げ加工によって、前記切欠きの内部空間が狭くなるように、前記切欠きの内壁面が互いに向かって近づいている、ことを特徴とする。
本発明によれば、リード部の屈曲部の内周側の絶縁層に導体に達しない深さで切欠きが設けられているため、曲げ加工により屈曲部の内周側の絶縁層が圧縮されることを抑制することができる。そのため、内周側の絶縁層の剥がれを抑制でき、ステータコイルの絶縁性の低下を防ぐことができる。
ステータコイルを形成する工程の手順を示すフローチャートである。 導体セグメントの断面図である。 導体セグメントに切欠きを形成する方法の一例を示す図である。 切欠きが形成された導体セグメントの側面図である。 U字状の導体セグメントをステータコアのスロットへ挿通する様子を示す模式図である。 ステータコアの断面図である。 ステータコイルが形成されたステータの斜視図である。 曲げ加工によりリード部の屈曲部が形成される様子を示す側面図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る回転電機のステータコイルは、多数のU字状の導体セグメントをステータコアのスロットに挿通し、ステータコアの端面から突出した導体セグメントのリード部を曲げ加工し、リード部の端部同士を順次接合することで形成される。回転電機は、ステータコイルが巻装されたステータコアを有するステータと、ステータの内周側に設けられたロータとを備える。回転電機は、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車などの電動車両に搭載されて電動機および発電機として使われる。
ここで、本実施形態に係る回転電機のステータコイルの形成方法について説明する。図1は、ステータコイルを形成する工程の手順を示すフローチャートであり、S100〜S104が導体セグメントを形成する工程の手順であり、S106〜S110がそれを複数用いたステータコイルを形成する工程の手順である。本実施形態のステータコイルは、曲げ加工によって形成されるリード部の屈曲部の内周側の絶縁層に切欠きが設けられる特徴を有しており、以下、図1のフローを説明しながら、それについて詳しく説明する。
まず、図1のS100で、1つの導体セグメントを構成する長さで切り出された直線状の導体セグメントに切欠きを形成する。図2は、導体セグメント10の断面図である。図2に示すように、導体セグメント10は、断面矩形の導体18の周囲を絶縁層20で被覆した導線(平角導線)である。導体18は、導電率の高い銅等の金属であり、絶縁層20は、絶縁性を有するポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエステル等である。切欠きは、図2に示す導体セグメント10の外側の4つの面のうち、導体セグメント10のリード部が曲げ加工された際に内周側となる面の絶縁層20に形成される。
図3は、導体セグメント10に切欠きを形成する方法の一例を示す図である。図3に示すように、複数のローラ12と、1つの突起付きローラ14とを備える切欠き形成装置17を用意する。導体セグメント10をローラ12及び突起付きローラ14で搬送する過程で、突起付きローラ14の突起16(図では誇張して描かれている)で導体セグメント10に切欠きを形成する。なお、ここででは、1つの導体セグメントを構成する長さで切り出された導体セグメント10に切欠きを形成したが、切り出される前の長い導体セグメントに切欠きを形成した後に、1つの導体セグメントを構成する長さに切り出すようにしてもよい。
図4は、切欠き22が形成された導体セグメント10の側面図であり、内部の導体18が破線で示されている。図4に示すように、切欠き22は、導体18に達しない深さで絶縁層20に形成される。切欠き22の位置は、曲げ加工する際に、曲げられる部分(屈曲部)の内周側となる位置である。
次に、図1のS102で、導体セグメント10の端部の絶縁層を剥離する。これは、導体セグメント10をステータコアに組み付けた後に、導体セグメント10の端部(リード部の端部)同士を電気的に接合するためである。
次に、S104で、導体セグメント10をU字状に折り曲げる。図5には、U字状に折り曲げられた導体セグメント10が示されている。以上説明した図1のS100〜S104が、導体セグメントの形成工程である。
次に、S100〜S104の工程で形成された導体セグメントを複数用いてステータコイルを形成する工程(S106〜S110)について説明する。S106で、複数のU字状の導体セグメント10の各々の2つの脚をステータコアのスロットへ挿通する。図5には、1つのU字状の導体セグメント10の2つの脚26をステータコア28のスロットへ挿通する様子が示されている。なお、図5では、ステータコア28は小さく描かれている。図6は、ステータコア28の断面を示す断面図である。図6に示すように、ステータコア28は、環状のヨーク34と、ヨーク34の内周面から径方向内方に突出し周方向に間隔において配置された複数のティース36と、各ティース36の間に形成されたスロット38とを有する。ステータコア28は電磁鋼板を積層することで形成されている。ステータコア28の予め定められた2つのスロット38に、導体セグメント10の2つの脚26を、図5のようにステータコア28の軸方向下側から挿通する。これを多数の導体セグメント10について行う。
次に、図1のS108で、導体セグメント10をスロットに挿通することで、ステータコア28の端面から突出した部分であるリード部を、ステータコア28の周方向に曲げ加工する。曲げ加工により、リード部がステータコア28の端面に向かうように屈曲部が形成される。そして、S110で、ステータコア28の径方向に隣接する、対応する導体セグメントのリード部の端部同士を溶接等により電気的に接合する。図7は、導体セグメントのリード部の端部同士が接合されてステータコイル32が形成された後のステータ27の斜視図である。図7において、ステータコア28の上側端面から突出した導体セグメント10の部分がリード部42であり、ステータコア28の下側端面から突出した導体セグメント10の部分が反リード部44である。なお、図7に示すステータコイル32は、曲げ加工により、リード部42がステータコア28の端面に向かうように屈曲部46(図7のAで示した部分)が形成されると共に、リード部42の端部側においてリード部42が上側に向かうように屈曲部(端部側屈曲部48)が形成されるものである。
ここで、曲げ加工によるリード部42の屈曲部46の形成についてより詳しく説明する。図8は、曲げ加工によりリード部42の屈曲部46が形成される様子を示す側面図である。図8に示すように、切欠き22が形成された直線状のリード部42が、切欠き22が形成された部分を内周側として曲げ加工され、屈曲部46が形成される。この際、曲げ加工した後にリード部42がスプリングバックすることを見越して、リード部42を所望の曲げ角度よりも大きく曲げる(オーバーベンドする)。このようにリード部42がオーバーベンドされた際には、図8の下側に示すように、屈曲部46の内周側の半径は非常に小さくなる。しかし、本実施形態では、切欠き22が屈曲部46の内周側に形成されているため、内周側の絶縁層20が圧縮されることがない。すなわち、切欠き22が形成されていない場合には、内周側の絶縁層20が圧縮されて、その密着力が低下し、絶縁層20が剥がれてしまう虞があるが、本実施形態ではそれが防がれている。
以上説明した図1のフローによって、回転電機のステータコイルが形成される。このようにステータコイルが形成されるので、曲げ加工によって形成されたリード部42の屈曲部46の内周側の絶縁層20に、導体18に達しない深さで切欠き22が設けられる。次に、本実施形態の回転電機のステータコイルの作用効果について説明する。
以上説明した本実施形態の回転電機のステータコイルによれば、導体セグメント10の曲げられる部分(屈曲部)の内周側に切欠きを設けて曲げ加工が行われるので、屈曲部46の内周側の絶縁層20の圧縮を防ぐことができる。これにより、絶縁層20が剥がれることを防ぐことができ、ステータコイルの絶縁性の低下を抑制することができる。換言すれば、屈曲部46の内周側の絶縁層20に切欠き22を設けることで、屈曲部46の曲げ角度をより大きくする(屈曲部46の内周側半径をより小さくする)ことができ、リード部42をステータコア28の端面により近づけることができる。これにより、ステータコイルのステータコア28の端面から突出した部分であるコイルエンドの体格を小さくすることができ、回転電機を小型化することができる。
また、以上説明した本実施形態の回転電機のステータコイルは、切欠き22が、導体18に達しない深さで絶縁層20に形成されている。切欠き22を導体18に達する深さまで形成した場合には、導体18が外部に露出してステータコイルの絶縁性が低下し、切欠き22が伸展して導体セグメント10が破断する虞があるが、本実施形態のステータコイルはそれが防がれている。
以上説明した実施形態の回転電機のステータコイルは、リード部42をステータコア28の端面に向かうようにする屈曲部46の内周側の絶縁層に切欠き22を形成した。しかし、切欠き22を、導体セグメント10のその他の曲げられる部分(U字状に折り曲げられる部分や、図7の端部側屈曲部48)の内周側の絶縁層20に設けてもよい。このようにすれば、導体セグメント10のその他の曲げられる部分の内周側の絶縁層20の圧縮も防ぐことができる。
また、以上説明した実施形態の切欠きは三角形状であったが、切欠きは、四角形状(凹み形状)や台形状でもよい。また、屈曲部46の内周側の絶縁層に、櫛歯のような複数の切欠きを形成してもよい。屈曲部46の内周側の絶縁層を薄肉にできればよく、絶縁層の加工形態は限定されない。
また、以上説明した実施形態の切欠き22は、図3に示した突起付きローラ14で形成した。しかし、切欠き22は、その他の方法で形成されてもよく、例えば、レーザー加工や機械加工、薬品によるエッチングにより形成されてもよい。
また、以上説明した実施形態では、導体セグメント10のリード部42をオーバーベンドさせて曲げ加工を行った。しかし、曲げ加工は、オーバーベンドさせずに行ってもよい。曲げ加工の方法は、以上説明したものに限定されず、例えば、導体セグメント10のリード部42をダイスとパンチで挟んで圧縮することにより行われるものであってもよい。
10 導体セグメント、12 ローラ、14 突起付きローラ、16 突起、17 切欠き形成装置、18 導体、20 絶縁層、22 切欠き、26 脚、27 ステータ、28 ステータコア、32 ステータコイル、34 ヨーク、36 ティース、38 スロット、42 リード部、44 反リード部、46 屈曲部、48 端部側屈曲部。

Claims (1)

  1. 環状のヨークと、前記ヨークの内周面から径方向内方に突出した複数のティースと、前記各ティースの間に形成されたスロットとを有するステータコアに巻回されたステータコイルであり、
    導体に絶縁層が被膜された導体セグメントを複数、前記スロットに挿通し、前記ステータコアの端面から突出した前記導体セグメントのリード部を曲げ加工し、前記リード部の端部同士を接合することで形成された回転電機のステータコイルであって、
    前記曲げ加工によって形成された前記リード部の屈曲部の内周側の絶縁層に、前記導体に達しない深さで切欠きが設けられており、
    前記曲げ加工によって、前記切欠きの内部空間が狭くなるように、前記切欠きの内壁面が互いに向かって近づいている、
    回転電機のステータコイル。
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