JP6911681B2 - 吸着材及び標的物質の精製方法 - Google Patents

吸着材及び標的物質の精製方法 Download PDF

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Description

本発明は、吸着材及びそれを用いた標的物質の精製方法に関する。
タンパクや抗体のような生体分子を標的物質としたアフィニティ精製は、アフィニティ吸着材への標的物質の吸着、非吸着成分の洗浄、溶離液による標的物質の吸着材からの回収工程からなる。吸着材としては、リガンドとして、例えばプロテインA等を用いた例が知られている。このとき、溶離液としては、強酸や強塩基のような過酷なpHの溶液又は高塩濃度の溶液を用いる。これは、アフィニティリガンドや標的物質のイオン化状態を変え、電荷反発によりアフィニティリガンドと標的物質の間の相互作用を弱める必要があるためである。しかし、強酸や強塩基のような過酷なpH環境では、しばしば生体分子は不安定であり、精製された標的物質が劣化するリスクがある。このようなリスクを回避するため、温和なpH環境にて標的物質を精製可能な低刺激応答型アフィニティ吸着材の開発が求められている。
このような低刺激応答型アフィニティ吸着材としては、リガンドとして、遺伝子組換えによって弱酸を用いた外部刺激に応答するタンパク(プロテインA変異体等)を用いる手法(特許文献1、2)が報告されている。
しかし、前記に記したタンパクは、遺伝子組換えであるため高価格であることや、標的物質の吸着時に用いるアルカリ性溶液(pH8程度)に対し溶媒耐性が高くないことから実用的な吸着材とはなりにくい。
また、外部刺激として温度を用いた吸着材では、温度を印加するための装置やプロセスを吸着材にあわせて開発する必要があるため、実際の既存材料への置き換えは困難である。また、温度刺激に対するリガンド応答の可逆性にも問題があり、実用的な吸着材とはなりにくい。
低刺激応答型アフィニティ吸着材として、この他にも、温度に変わり、pH変化に応答する低分子化合物を吸着部位として用いた低コストな吸着材が報告されている(特許文献3)が、このような吸着材は、標的物質と特異的に相互作用を示すタンパクを用いた吸着材と比較して標的物質の吸着容量が低い。
国際公開第2008/143199号 国際公開第2014/003176号 特表平10−500615号公報
前記でも述べたように、プロテインA等のタンパクを用いた吸着材は、pH2程度の強酸を用いてタンパクや抗体等の標的物質を精製する。その際、強酸処理のため標的物質が凝集体を形成したり、プロテインAそのものが溶出する。それらが医薬品に混入することで副作用リスクが高まってしまう。また、pH変化に応答する低分子化合物を用いた吸着材では標的物質の吸着容量が十分ではなかった。よって、本発明は、プロテインA等のタンパクに変わる材料を用いることにより、低コスト且つ弱刺激で標的物質を精製することで医薬品の副作用リスクを低減でき、さらに標的物質の吸着容量が高い吸着材、及びこの吸着材を用いた標的物質の精製方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明の吸着材は、弱刺激で標的物質を回収可能な特定の低分子化合物を吸着部位に用い、これを複数のアミノ基を有する高分子に導入し、この吸着部位が導入された高分子を担体に固定化したものであることを特徴とする。
本発明の吸着材は、遺伝子組換えタンパクを用いないため、低コストで製造可能である。また、本発明の吸着材は、弱刺激で標的物質の精製が可能であることから、標的物質の凝集体形成を抑制でき、医薬品の副作用リスクを低減できる。また、本発明の吸着材は、標的物質の吸着容量が高い。
前記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
図1は、本発明の吸着材の一実施形態の模式図である。
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更及び修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
本発明の吸着材は、担体と、担体に固定化された刺激応答性高分子とを含む。刺激応答性高分子は、複数のアミノ基を有する高分子(以下、単に高分子とも記載する)に、標的物質を吸着する吸着部位(以下、単に吸着部位とも記載する)が導入されたものである。刺激応答性高分子が官能基としてのアミノ基及び吸着部位を有することにより、吸着材は、外部環境の変化によって標的物質と相互作用を示し、標的物質を吸着し、さらには標的物質を脱離する。
図1に本発明の吸着材の一実施形態の模式図を示す。図1に示すように、吸着材10は、担体5と、担体5に固定化された刺激応答性高分子1とを含む。刺激応答性高分子1は、複数のアミノ基を有する高分子2に、標的物質4を吸着する吸着部位3が導入されたものである。なお、図1において、高分子の電荷の状態について一例を示したが、高分子は、外部環境によって様々な電荷の状態となり得る。
本発明の吸着材は、前記の成分を備えることにより、特に、刺激応答性高分子が、複数のアミノ基及び複数の吸着部位を有することにより、外部環境の変化によって標的物質と吸着部位間での物理的な相互作用が変化する。そして、刺激応答性高分子の電荷及び物理的な相互作用が変化することで、標的物質と相互作用する吸着部位の周辺環境が変化し、その結果、標的物質と吸着部位の相互作用の強さが変化し、標的物質が吸着又は脱離する。
より詳細には、刺激応答性高分子の電荷が変化すると、高分子全体の親水性やコンフォメーションが変化すると考えられる。刺激応答性高分子は、アミノ基を複数個有しており、好ましくは電荷が少ない状態でも親水性である。刺激応答性高分子は、電荷が多い状態ではより親水性であり、電荷が少ない状態ではより疎水性である。刺激応答性高分子の電荷が多い状態では、官能基はより電荷を有した状態であり、この電荷を有する部位どうしの電荷反発により、高分子主鎖は伸長した状態になりやすく(図1の左図)、一方、電荷が少ない状態では、電荷反発が小さいため、高分子主鎖は比較的収縮した状態になりやすい(図1の右図)。
また、吸着部位が疎水性の場合には、疎水性である標的物質との間で物理的な相互作用、すなわち疎水性相互作用を示す。
本発明の吸着材(図1参照)の推定される吸着・脱離メカニズムを以下に説明する。刺激応答性高分子の電荷が多い状態では、水中で官能基はより電荷を有した状態であり、電荷を有した部位どうしの電荷反発により、刺激応答性高分子の高分子は比較的伸長した状態となる。このとき、刺激応答性高分子に導入されている吸着部位が疎水性の場合、親水性の刺激応答性高分子と疎水性の吸着部位との相互作用は比較的弱いため、吸着部位は標的物質を吸着する。そして、外部環境の変化によって、刺激応答性高分子の電荷が少なくなると、高分子の疎水性が増大するため、吸着部位が疎水性の場合、刺激応答性高分子と吸着部位の相互作用が強くなる方向に平衡が移動し、結果として吸着部位と標的物質の吸着が弱くなり、標的物質が吸着部位から脱離する。ある条件で刺激応答性高分子の電荷が少ない状態では、刺激応答性高分子の高分子主鎖は、電荷反発が小さいため比較的収縮した状態になっている。
外部環境の変化は、刺激応答性高分子の電荷及び吸着部位と標的物質間での相互作用を変化させることができるものであれば特に限定されずに、例えば、吸着材が接触している溶液の塩濃度、誘電率、pH及び温度等の変化が挙げられる。例えば、塩濃度が変化すると静電遮蔽効果が変化し、溶媒や溶質の種類の変化により誘電率が変化し、また、pHが変化すると電荷の平衡移動が起こり、これらによって電荷密度が変化する。外部環境の変化は、好ましくは、吸着材が接触している溶液の塩濃度、温度、誘電率及びpHの変化であり、塩濃度の変化及びpHの変化がより好ましい。これらの外部環境の変化を組み合わせてもよい。外部環境の変化により刺激応答性高分子の電荷密度及び吸着部位と標的物質間での相互作用が変化し、標的物質が吸着又は脱離することから、本発明の吸着材は、外部環境の変化に応答性の吸着材であり、例えば、外部環境の変化がpHの変化である場合には、吸着材はpH応答性吸着材となり、外部環境の変化が塩濃度、誘電率又は温度の変化である場合には、それぞれ、塩濃度応答性、誘電率応答性又は温度応答性吸着材となる。
外部環境の変化による刺激応答性高分子の電荷密度の変化に起因するコンフォメーション変化は、標的物質と吸着部位の相互作用の強さを変化させて、吸着特性を変化させることができる程度の変化であればよい。これは、例えば外部環境の変化が、吸着材が接触している溶液のpHの変化である場合、pH2〜12の変化であり、より好ましくはpH7〜11の変化である。具体的には、吸着材が接触している溶液のpHをpH7〜8からpH9〜10程度へと変化させることが好ましい。
刺激応答性高分子は、複数のアミノ基を有する高分子に標的物質を吸着する吸着部位が好ましくは複数個導入されたものである。吸着部位は、複数のアミノ基を有する高分子のアミノ基と結合している。刺激応答性高分子において、好ましくは、複数のアミノ基を有する高分子のアミノ基の一部が吸着部位と結合している。
吸着部位は、吸着する標的物質に応じて選ぶことができる。本発明では、刺激応答性高分子の電荷密度の変化を利用し刺激応答性高分子のコンフォメーション変化により標的物質の吸着・脱離を制御するため、吸着部位は、刺激応答性高分子の電荷密度の変化による物性の変化を受けやすいことが好ましく、親水性の刺激応答性高分子に対して疎水性の吸着部位が好ましい。
本発明の吸着材において、吸着部位は低分子化合物に由来する部位であり、式(I)、(II)及び(III)の基
Figure 0006911681
(式中、
Lは、複数のアミノ基を有する高分子のアミノ基と吸着部位との結合部位であり、
及びZ10は、互いに独立して、S、SCH 、NH、NCH、O、CH又はCRであり、但しR及びRの少なくとも一方は水素ではなく、
〜Z、Z11〜Z15は、互いに独立して、N、NCH 、CH又はCRであり、Z〜Zの少なくとも1つ、Z〜Zの少なくとも1つ、又はZ10〜Z15の少なくとも1つは、CH、CR、CH又はCRではなく、
、R、Rは、互いに独立して、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アシル、シクロアルキル、カルボキシル、アミノ、アリールオキシ、アルコキシ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ又はシアノである)
から選ばれる少なくとも1つの基である。
本明細書において、「アルキル」は、特定の数の炭素原子を含む、直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。アルキルは、例えばC1〜20アルキルであり、好ましくはC1〜10アルキルであり、より好ましくはC1〜5アルキルである。
本明細書において、「アリール」は、6〜15の炭素原子数を有する芳香族基を意味する。好適なアリールとしては、限定するものではないが、例えばフェニル、ナフチル及びアントリル(アントラセニル)等のC6〜15アリールを挙げることができる。
本明細書において、「アルケニル」は、前記アルキルの1個以上のC−C単結合が二重結合に置換された基を意味する。好適なアルケニルは、限定するものではないが、例えばC2〜20アルケニルであり、好ましくはC2〜10アルケニルであり、より好ましくはC2〜5アルケニルである。
本明細書において、「アルキニル」は、前記アルキルの1個以上のC−C単結合が三重結合に置換された基を意味する。好適なアルキニルは、限定するものではないが、例えばC2〜20アルキニルであり、好ましくはC2〜10アルキニルであり、より好ましくはC2〜5アルキニルである。
本明細書において、「アラルキル」(アリールアルキル)は、前記アルキルの水素原子の1個が前記アリールに置換された基を意味する。好適なアラルキルは、限定するものではないが、例えばベンジル、1−フェネチル及び2−フェネチル等を挙げることができる。
本明細書において、「アシル」は、式:−C(O)R(Rは、例えば前記のアルキル、アリール、アルケニル、アルキニルである)の構造を有する基を意味する。
本明細書において、「シクロアルキル」は、特定の数の炭素原子を含む炭素環式基であり、例えばC3〜20シクロアルキルであり、好ましくはC3〜10シクロアルキルであり、より好ましくはC3〜8シクロアルキルである。
本明細書において、「アミノ」は、−NR(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アラルキル又はシクロアルキルである)で表される基を意味する。
本明細書において、「アリールオキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記アリールに置換された基を意味する。好適なアリールオキシは、限定するものではないが、例えばフェノキシ、ビフェニルオキシ、ナフチルオキシ及びアントリルオキシ(アントラセニルオキシ)等のC〜C15アリールオキシを挙げることができる。
本明細書において、「アルコキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記アルキルに置換された基を意味する。好適なアルコキシは、限定するものではないが、例えばC1〜20アルコキシであり、好ましくはC1〜10アルコキシであり、より好ましくはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等のC1〜5アルコキシである
本明細書において、「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を意味する。
前記で説明した基は、1個若しくは複数個の置換基で置換されていてもよく、置換基としては、特に限定されずに例えば前記のアルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アシル、シクロアルキル、カルボキシル、アミノ、アリールオキシ、アルコキシ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ又はシアノが挙げられる。
式(I)、(II)、(III)において、Lは、複数のアミノ基を有する高分子のアミノ基と吸着部位とが結合した部位である。Lは、例えばアミド結合(−CONH−)、ウレタン結合(−NHCOO−)、尿素結合(−NHCONH−)、チオ尿素結合(−NHCSNH−)、スルホンアミド結合(−SONH−)、アミドエステル結合(−COONH−)等の結合を含む部分であり、アミド結合を含む部分が好ましい。Lは、より好ましくはアミド結合と置換又は非置換アルキレン基とを含む部分であり、特に好ましくはアミド結合とC〜C非置換アルキレン基とからなる部分である。
結合部位Lにおいて、複数のアミノ基を有する高分子のアミノ基と吸着部位との結合は、例えば、アミド結合、ウレタン結合、尿素結合、チオ尿素結合、スルホンアミド結合、アミドエステル結合等である。
式(I)において、好ましくはZ〜Zの1つ、2つ又は3つは、CH、CR、CH又はCRではなく、すなわち、S、SCH 、NH、NCH、O、N又はNCH であり、より好ましくはZ〜Zの1つ又は2つは、CH、CR、CH又はCRではなく、すなわち、S、SCH 、NH、NCH、O、N又はNCH である。
式(II)において、好ましくはZ〜Zのうち1つがNであり、その他はすべてCHであり、より好ましくはZ〜ZのうちZ又はZがNであり、その他はすべてCHである。式(II)において、好ましくは、Lは−CHCONH−である。この場合、結合部位−CHCONH−において、−CHCO−部分は吸着部位に由来する部分であり、−NH−部分は複数のアミノ基を有する高分子のアミノ基に由来する部分である。すなわち、この基は、(吸着部位の残りの部分)−CHCONH−(複数のアミノ基を有する高分子の残りの部分)の構造である。好ましい実施形態では、式(II)において、Z〜Zのうち1つがNであり、その他はすべてCHであり、Lは−CHCONH−である。より好ましい実施形態では、式(II)において、Z〜ZのうちZ又はZがNであり、その他はすべてCHであり、Lは−CHCONH−である(吸着部位1)。
式(III)において、好ましくはZ10はSであり、Z11〜Z14はそれぞれCHであり、Z15はNである。式(III)において、より好ましくはZ10はSであり、Z11〜Z14はそれぞれCHであり、Z15はNであり、Lは−CHCONH−(吸着部位2)若しくは−(CHCONH−(吸着部位3)である。
吸着部位は、好ましくは式(II)又は式(III)の基であり、より好ましくは前記の吸着部位1、2又は3であり、標的物質吸着能が高いという観点から吸着部位2である。
吸着部位は、式(I)、(II)、(III)の基に対応する化合物を複数のアミノ基を有する高分子と反応させることによって該高分子に導入できる。吸着部位は、好ましくは高分子の側鎖に導入される。吸着部位を導入するために用いられる化合物は、式(I)、(II)、(III)の基に対応する化合物であって、高分子のアミノ基と結合可能な部分を有するものであれば特に限定されない。このような化合物としては、例えばアミド結合を形成するためのカルボキシル基、アズラクトン基、イミダゾール基、シアノエステル基、エポキシ基や、アセチル基、アセトキシ基、アクリロイル基、アルコキシ基を有する化合物もしくはカルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、尿素結合を形成するためのイソシアネート基を有する化合物、チオ尿素結合を形成するためのイソチオシアネート基を有する化合物、スルホンアミド結合を形成するための塩化スルホニル基を有する化合物、アミドエステル結合を形成するためのオキサゾリン基を有する化合物等が挙げられる。吸着部位を導入するために用いられる化合物として、具体的には、メルカプトイミダゾール、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトテトラゾールやメルカプトチアジアゾールが挙げられる。より具体的には、ベンゾチアゾール−2−酢酸、4−メルカプトベンゾチアゾール−2−酢酸エチル、5−メルカプトベンゾチアゾール−2−酢酸エチル、2−メルカプトチアゾール、3−(ベンゾチアゾール−2−イルチオ)プロパン−1−スルホン酸ナトリウム、2−メルカプト−6−ニトロベンゾチアゾール、3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸、2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、N−メチル−2−メルカプトイミダゾールなどが挙げられる。吸着部位1に対応するピリジルチオ酢酸(2−ピリジルチオ酢酸、4−ピリジルチオ酢酸)、吸着部位2に対応する2−ベンゾチアゾリルチオ酢酸、吸着部位3に対応する3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸が好ましく、2−ベンゾチアゾリルチオ酢酸がより好ましい。
刺激応答性高分子における吸着部位の導入量は、複数のアミノ基を有する高分子中に含まれるアミノ基の官能基数に対して5%以上であれば十分であるが、吸着材の高い吸着特性の観点から、好ましくは50%以上である。本発明において、吸着材における吸着部位の導入量は、H−NMRにて1分子あたりの刺激応答性高分子内に導入された吸着部位を求め、その後担体上に固定化した刺激応答性高分子量を同定すること、すなわち1分子当たりの吸着部位導入率(量)と1mL担体上に固定化された刺激応答性高分子量の積によって求められる。
また、刺激応答性高分子は、複数のアミノ基を有する高分子と、吸着部位を導入するための化合物を、高分子:吸着部位を導入するための化合物が1:0.01〜10のモル比で、好ましくは1:0.1〜5のモル比で、より好ましくは1:0.1〜2のモル比で反応させることで得られる。
複数のアミノ基を有する高分子は、官能基として複数のアミノ基を有するもの(ポリアミン)であればよいが、アミノ基以外の他の官能基を有していてもよい。このような官能基としては、特に限定されずに、例えば、イミノ基、各種含窒素芳香族基(ピロール基、イミダゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、オキサゾリル基、チアゾリル基及びトリアゾリル基等)、グアニジル基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、ボロン酸基、ホスホリル基、ホスフィニル基、シリケート基及びそれらの誘導体の基等を上げることができる。他の官能基は、1種類のみを用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
複数のアミノ基を有する高分子は、デンドリマーであってもよい。複数のアミノ基を有する高分子としては、例えば、ポリリジン(α−ポリリジン、ε−ポリリジン)、ポリエチレンイミン(直鎖ポリエチレンイミン、分岐ポリエチレンイミン)、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、並びにそれらを部分構造として有する誘導体及び共重合体等が挙げられるが、ε−ポリリジン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン又はそれらを部分構造として含む高分子が好ましく、より多くの吸着部位を導入できるという観点から、ε−ポリリジンがより好ましい。
複数のアミノ基を有する高分子の重量平均分子量は、通常1000〜100000であり、好ましくは1000〜6000である。本発明において、複数のアミノ基を有する高分子の平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した重量平均分子量をいう。
複数のアミノ基を有する高分子と吸着部位の組み合わせとしては、吸着材の高い標的物質吸着特性の観点から、ε−ポリリジン、ポリエチレンイミン又はポリアリルアミンと、前記の吸着部位1、2又は3の各組み合わせが好ましく、ε−ポリリジンと、前記の吸着部位1、2又は3の各組み合わせ、ポリエチレンイミン又はポリアリルアミンと、前記の吸着部位3の各組み合わせがより好ましい。
複数のアミノ基を有する高分子への吸着部位の導入は、該高分子を担体に固定化する前及び後のいずれに行ってもよい。すなわち、吸着部位を高分子に導入し、その後、吸着部位が導入された高分子を担体に固定化してもよく、あるいは、吸着部位を有さない高分子を担体に固定化した後で、固定化した高分子に吸着部位を導入してもよい。
標的物質は、吸着部位に吸着し得る物質であれば特に限定されないが、例えば、タンパク、生体分子、細胞、ウイルス及びナノ粒子等が挙げられ、抗体が好ましい。抗体としては特に限定されずに免疫グロブリン等が挙げられる。
担体は、多孔質及び非多孔質のいずれの形状であってもよい。担体の形状としては、例えば、板状、ビーズ(粒子)状、不織布や織物等の繊維状、膜状、モノリス状及び中空糸状等が挙げられる。また、担体は、コアシェル構造のものであってもよい。
担体は、例えば多糖類、合成樹脂、無機化合物及びそれらの複合材料を含む材料を有する。多糖類は、架橋された多糖類であってもよい。多糖類又は架橋された多糖類としては、例えば、アガロース、架橋アガロース、疎水化アガロース及びセルロース等が挙げられる。合成樹脂としては、例えば、アクリル樹脂(例えばポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリグリシジルアクリレート、ポリグリシジルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリシロキサン及びポリフッ化エチレン等が挙げられる。無機化合物としては、シリカ、金属酸化物(例えばアルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄等)、フェライト、ハイドロキシアパタイト及びシリケート等が挙げられる。担体は、多糖類、架橋された多糖類、合成樹脂、シリカ又は金属酸化物を有することが好ましく、多糖類又は架橋された多糖類を有することがより好ましい。なお、担体は、これらの材料を少なくとも担体表面に有していればよく、すなわち、担体表面が、多糖類、架橋された多糖類、合成樹脂、シリカ又は金属酸化物、好ましくは多糖類又は架橋された多糖類を有するコアシェル構造のものであってもよい。よって、担体又は担体表面が、多糖類、架橋された多糖類、合成樹脂、シリカ又は金属酸化物を有するものが好ましく、多糖類又は架橋された多糖類を有するものがより好ましい。
担体表面は、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、エポキシ基、エステル基等の反応性基によって修飾されていてもよく、刺激応答性高分子をより多く導入でき、すなわち吸着部位をより多く導入できるという観点からカルボキシル基が好ましい。また、担体表面は、刺激応答性高分子以外の化合物によって修飾されていてもよい。例えば、担体表面は、標的物質の非特異的な吸着を防止するブロッキングや、刺激応答性高分子の配向性を制御する表面修飾や、担体の分散性又は吸着性を改質する修飾等が行われていてもよい。
本発明の吸着材は、複数の刺激応答性高分子を担体に固定化することで製造できる。刺激応答性高分子は、好ましくは、共有結合を介して担体に結合させることにより、担体に固定する。すなわち、一実施形態において、本発明の吸着材は、刺激応答性高分子と担体とが共有結合を介して結合している。吸着部位は、複数のアミノ基を有する高分子を担体に固定化する前及び後のいずれに導入してもよい。すなわち、吸着部位を複数のアミノ基を有する高分子に導入し、その後、吸着部位が導入された高分子を担体に固定化してもよく、あるいは、吸着部位を有さない複数のアミノ基を有する高分子を担体に固定化した後で、固定化した高分子に吸着部位を導入してもよい。
刺激応答性高分子と担体が共有結合を介して結合している場合、この共有結合は、例えば、刺激応答性高分子中のアミノ基等の官能基を用いて形成してもよい。この場合、共有結合を形成する担体の表面の官能基と、刺激応答性高分子中の官能基との組み合わせとして、例えば、エポキシ基とアミノ基、エステル基(例えば、カルボン酸のNHSエステル)とアミノ基、アミノ基とカルボキシル基との組み合わせ等が挙げられる。共有結合の形成は、担体に刺激応答性高分子の溶液又は懸濁液を接触させることで行うことができる。縮合反応により共有結合を形成する場合(例えば、アミノ基とカルボキシル基を用いる場合等)、縮合剤(例えば、DMT−MMやEDC等)の存在下で反応を行うことが好ましい。
本発明は、前記の吸着材を用いる標的物質の精製方法にも関する。標的物質の精製方法は、前記の吸着材に、標的物質を含む溶液を接触させる工程と、その後、前記の外部環境の変化を印加する工程とを含む。本発明は、標的物質を吸着材に吸着して、該標的物質を精製することもできるし、不要物質を標的物質として吸着材に吸着して、目的物質を精製することもできる。後者の場合、例えば、標的物質を細胞膜上の不要分子として細胞を精製することができ、また、標的物質をウイルスやナノ粒子の表面の不要分子として該ウイルスやナノ粒子を精製することができる。
標的物質を含む溶液を吸着材に接触させる工程では、溶液中の標的物質が吸着材に吸着する。標的物質の吸着材への吸着は、刺激応答性高分子の電荷密度を、吸着部位と標的物質が吸着するように適宜設定することで達成できる。好ましくは、電荷密度をより高くすることで標的物質を吸着部位に吸着させることができる。
標的物質を含む溶液は、水を溶媒とした緩衝液とすることが好ましい。
標的物質を含む溶液を吸着材に接触させる際のpHは、標的物質、吸着部位及び高分子の各物性に依存して選ぶことができるが、標的物質の吸着に有利なpHを選ぶことが望ましく、例えばpH2〜8であり、好ましくはpH7〜8である。
外部環境の変化を印加する工程では、刺激応答性高分子はアミノ基を複数個有するため、外部環境の変化を印加することで、該高分子の電荷密度が変化し、吸着材から標的物質が脱着する。外部環境の変化としては、前記の変化を用いることができ、例えば、吸着材が接触している溶液の塩濃度、温度、誘電率(溶質及び溶媒の種類)又はpHの変化等であり、好ましくは塩濃度又はpHの変化である。外部環境の変化が、吸着材が接触している溶液のpHの変化である場合、pH2〜12の外部環境の変化を印加することが好ましく、pH9〜10の外部環境の変化を印加することがより好ましい。具体的には、吸着材が接触している溶液のpHをpH7〜8からpH9〜10程度へと変化させることが好ましい。このように、本発明の吸着材を用いた標的物質の精製方法では、弱刺激で標的物質を精製することができる。
一実施形態において、標的物質の精製方法は、吸着材が充填されたカラムを用いて実施される。従来の強酸を利用する吸着材では、過度なpH変化によって、脱離した標的物質が、凝集体を形成したり、吸着材の一部がリーチングを生じる。それらが医薬品に混入することで、医薬品の副作用が高まる。本発明の吸着材は、マイルドなpH変化により標的物質を吸着又は脱離するため、そのようなリスクは少ない。
本発明の吸着材を充填したカラムを用いる精製方法は、その特性を活かす観点から、低いpHで分解や凝集体生成が発生する対象に適用することが好ましい。また、溶出された標的物質が中性に近いpH領域の緩衝液に溶解した状態で得られるため、中和工程を必要とせず次の精製プロセスに適用できる。
別の実施形態において、標的物質の精製方法は、吸着材を懸濁液の状態で用いて実施される。従来の溶解度の変化を利用する温度応答性の吸着材では、温度変化によって、疎水性が増大して分散性が低下し、懸濁状態の吸着材が凝集、壁面に付着、界面に局在化等するリスクが高いが、本発明の吸着材は、温度変化に伴う溶解度の変化を標的物質の吸着又は脱着に利用していないため、そのようなリスクはほぼない。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
1.刺激応答性高分子の合成
<刺激応答性高分子1>
複数のアミノ基を有する高分子としてε−ポリリジン(EPL)を用い、吸着部位としてメルカプトベンゾチアゾール酢酸(MBTA、2−ベンゾチアゾリルチオ酢酸)を導入した。なお、MBTAは、下記構造を有する、抗体吸着能を有するチオフィリック系の化合物である。
Figure 0006911681
EPL(一丸ファルコス社製、ポリリジン10)の水/DMF溶液にMBTA(0.7当量)及び脱水縮合剤の4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)(1.2当量)を加え、室温で3時間撹拌し、EPLのアミノ基とMBTAのカルボキシル基との反応によりアミド結合を形成することで、EPLにMBTAを導入した。得られた反応液に塩酸を加えて酸性とし、THFにより透析し、生じた沈殿を濾別した後に凍結乾燥することで刺激応答性高分子1を固体として得た。
<刺激応答性高分子2>
複数のアミノ基を有する高分子としてε−ポリリジン(EPL)を用い、吸着部位としてメルカプトベンゾチアゾールプロパン酸(MBT、3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸)を導入した。なお、MBTは、下記構造を有する、抗体吸着能を有するチオフィリック系の化合物である。
Figure 0006911681
EPLの水/DMF溶液にMBT(0.7当量)及びDMT−MM(1.2当量)を加え、室温で3時間撹拌し、EPLのアミノ基とMBTのカルボキシル基との反応によりアミド結合を形成することで、EPLにMBTを導入した。得られた反応液に塩酸を加えて酸性とし、THFにより透析し、生じた沈殿を濾別した後に凍結乾燥することで刺激応答性高分子2を固体として得た。
<刺激応答性高分子3>
複数のアミノ基を有する高分子としてε−ポリリジン(EPL)を用い、吸着部位として4−ピリジルチオ酢酸(PyS)を導入した。なお、PySは、下記構造を有する、抗体吸着能を有するチオフィリック系の化合物である。
Figure 0006911681
EPLの水/DMF溶液にPyS(0.7当量)及びDMT−MM(1.2当量)を加え、室温で3時間撹拌し、EPLのアミノ基とPySのカルボキシル基との反応によりアミド結合を形成することで、EPLにPySを導入した。得られた反応液に塩酸を加えて酸性とし、THFにより透析し、生じた沈殿を濾別した後に凍結乾燥することで刺激応答性高分子3を固体として得た。
<刺激応答性高分子4>
複数のアミノ基を有する高分子として分岐ポリエチレンイミン(PEI)を用い、吸着部位としてメルカプトベンゾチアゾールプロパン酸(MBT)を導入した。
PEI(Aldrich社製)/DMF溶液にMBT(0.7当量)及びDMT−MM(1.2当量)を加え、室温で5時間撹拌し、PEIのアミノ基とMBTのカルボキシル基との反応によりアミド結合を形成することで、PEIにMBTを導入した。得られた反応液に塩酸を加えて酸性とし、THFにより透析し、生じた沈殿を濾別した後に凍結乾燥することで刺激応答性高分子4を固体として得た。
<刺激応答性高分子5>
複数のアミノ基を有する高分子としてポリアリルアミン(PAA)を用い、吸着部位としてメルカプトベンゾチアゾールプロパン酸(MBT)を導入した。
PAA(Aldrich社製)/DMF溶液にMBT(0.7当量)及びDMT−MM(1.2当量)を加え、室温で5時間撹拌し、PAAのアミノ基とMBTのカルボキシル基との反応によりアミド結合を形成することで、PAAにMBTを導入した。得られた反応液に塩酸を加えて酸性とし、THFにより透析し、生じた沈殿を濾別した後に凍結乾燥することで刺激応答性高分子5を固体として得た。
刺激応答性高分子1〜5について、その組成及び吸着部位導入率を以下の表1に示す。表1において、吸着部位については、吸着部位の導入に用いた原料化合物を記載している。吸着部位導入率は、複数のアミノ基を有する高分子のアミノ基量に対し吸着部位により占有された割合を示し、H−NMR測定によって求めた。
Figure 0006911681
2.吸着材の調製
<実施例1>
THF/水混合溶液を溶媒として適用し、刺激応答性高分子1の1重量%溶液を調製した。この刺激応答性高分子1の溶液と、カルボキシル基を表面に有するセファロース(架橋アガロース)担体(GEヘルスケア社製、CM Sepharose 4 Fast Flow)とDMT−MM(10当量)とから得られた懸濁液を室温で一晩振盪させ、THF/水混合溶媒にて洗浄し、刺激応答性高分子1が担体に固定化された実施例1の吸着材を得た。
<実施例2〜5>
刺激応答性高分子1に代えて刺激応答性高分子2〜5をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にして、刺激応答性高分子2〜5が担体に固定化された実施例2〜5の吸着材を得た。
<実施例6>
ビーズ担体の効果を確認するため、THF/水混合溶液を溶媒として適用し、刺激応答性高分子1の1重量%溶液を調製し、この刺激応答性高分子1の溶液と、NHSエステル基を表面に有するセファロース担体(GEヘルスケア社製、NHS Sepharose 4 Fast Flow)とから得られた懸濁液を室温で一晩振盪させ、THF/水混合溶媒にて洗浄し、刺激応答性高分子1が担体に固定化された実施例6の吸着材を得た。
<実施例7>
担体として、多孔質構造を有するポリスチレン粒子(PS粒子)を架橋アガロースで被覆しカルボキシル基を表面に有する担体(東ソー製、TOYOPEARL AF−Carboxy−650)を用いた以外は実施例6と同様にして、刺激応答性高分子1が担体に固定化された実施例7の吸着材を得た。
<実施例8>
担体として、カルボキシル基を表面に有するアクリル樹脂粒子の担体を用いた以外は実施例6と同様にして、刺激応答性高分子1が担体に固定化された実施例8の吸着材を得た。
<実施例9>
水を溶媒として適用し、5重量%水溶液に調整したEPLと、カルボキシル基を表面に有するセファロース担体と、DMT−MM(10当量)とから得られた懸濁液を室温で一晩振盪させ、担体表面上にEPLを固定化した。水で洗浄後、THF/水混合溶液を溶媒として適用し、EPLが固定化された担体と、MBT(1.2当量)と、DMT−MM(10当量)とを混合し、混合液を室温で終夜撹拌した。反応後、THF/水混合溶媒にて洗浄し、担体上に固定化されたEPLにMBTが導入された実施例9の吸着材を得た。
<比較例1>
水を溶媒として適用し、エチレンジアミン(EDA)(10当量)と、カルボキシル基を表面に有するセファロース担体と、DMT−MM(10当量)とから得られた懸濁液を室温で一晩振盪させ、担体表面上にEDAを固定化した。これを水で洗浄後、THF/水混合溶液を溶媒として適用し、EDAが固定化された担体と、MBT(1.2当量)と、DMT−MM(10当量)とを混合し、混合液を室温で終夜撹拌した。反応後、THF/水混合溶媒にて洗浄し、担体上に固定化されたEDAにMBTが導入された比較例1の吸着材を得た。
実施例1〜9及び比較例1の吸着材について、刺激応答性高分子の組成、担体の種類(担体(表面)材質/官能基)及び担体の官能基密度を表2に示す。表2において、吸着部位については、吸着部位の導入に用いた原料化合物を記載している。
Figure 0006911681
3.評価
<試験例1>
実施例1〜9及び比較例1の吸着材について、標的物質吸着特性をカラム中で測定した。ここでは標的物質の代表的な例としてヒト免疫グロブリンG(IgG)を適用し評価を実施した。
具体的には、実施例1〜9及び比較例1の吸着材をそれぞれカラムに充填し、1重量%の所定のヒトIgGを含むpH7.4のPBS緩衝液(リン酸5mM又は30mM、塩化ナトリウム37.5mM)を10mL通液し、カラムから溶出される溶液内のヒトIgG濃度をモニタリングし、溶液中の濃度減少分から吸着材の標的物質吸着容量を算出した。その結果を表2に示す。
表2より、実施例1〜9の吸着材は、いずれも、高分子部位を有さない比較例1の吸着材よりも標的物質吸着容量が大きかった。吸着部位が異なる実施例1〜3の吸着材において、吸着部位がメルカプトベンゾチアゾール酢酸(MBTA)由来の部位である実施例1の吸着材は、吸着部位がそれぞれメルカプトベンゾチアゾールプロパン酸(MBT)及びピリジルチオ酢酸(PyS)である実施例2及び3の吸着材と比較して標的物質吸着容量が大きかった。このことから、MBTA、MBT、PySの中でMBTAがヒトIgG吸着能がより高い吸着部位であることが示された。また、高分子部位が異なる実施例2、4及び5の吸着材では、標的物質吸着容量に大きな差はなかったが、これらの高分子部位は分岐構造の有無によりその構造の嵩高さが異なるため、刺激応答性高分子が担体に導入された量は異なる可能性があり、すなわち、吸着材中の標的物質の量は異なっている可能性がある。
実施例1及び9では、高分子に吸着部位を導入するタイミングが異なるが、吸着部位を高分子に導入した後で担体に固定化した実施例1は、高分子を担体に固定化した後で吸着部位を導入した実施例9と比較して標的物質吸着容量が大きかった。このことから、吸着部位を高分子に導入するタイミングは、吸着材の高い標的物質吸着容量を達成するためには、高分子を担体に固定化する前が好ましいことが示された。
担体が異なる実施例1及び6〜8の吸着材において、実施例1の吸着材の標的物質吸着容量が最も大きかった。これらの吸着材では、担体の材質、官能基の種類や官能基密度が異なることにより、吸着材に導入された吸着部位の量が異なっていると推測される。
試験例1の結果を鑑み、実施例1の吸着材を適用することで、より多くの標的物質の吸着を示すことが分かった。
<試験例2>
代表例として実施例1の吸着材を適用し、標的物質のヒトIgGの回収率をカラム中で測定した。
実施例1の吸着材が充填されたカラムに、1重量%の所定のヒトIgGを含むpH7.4のPBS緩衝液(リン酸5mM又は30mM、塩化ナトリウム37.5mM)を10mL通液し、カラムから溶出される溶液内のヒトIgG濃度をモニタリングし、溶液中の濃度減少分からヒトIgG吸着容量を算出した。ヒトIgGが吸着したカラムに、pH10.5に調整した炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウムの混合溶媒(40mM)を、0.5mL/分の流速で通液し、カラムに吸着したヒトIgGを回収した。その後、ゲルクロマトグラフィー(GPC)にて回収したヒトIgGの純度を評価した。溶出したヒトIgGの回収率は90%以上、純度は99%以上を上回った。
本明細書に列挙した本発明の態様は単なる典型例としてのものであり、これらの総ての変更及び改質は、添付の請求の範囲によって定義されるように、本発明の範囲内にあることを意図するものである。
10 吸着材
1 刺激応答性高分子
2 複数のアミノ基を有する高分子
3 吸着部位
4 標的物質
5 担体

Claims (12)

  1. 担体と、担体に固定化された、吸着材が接触している溶液のpHの変化に応答性であるpH応答性高分子とを含む吸着材であって、pH応答性高分子が、複数のアミノ基を有する高分子に標的物質を吸着する吸着部位が導入されたものであり、吸着部位が、式(I)、(II)及び(III)の基
    Figure 0006911681
    (式中、
    Lは、複数のアミノ基を有する高分子のアミノ基と吸着部位との結合部位であり、
    及びZ10は、互いに独立して、S、SCH 、NH、NCH、O、CH又はCRであり、但しR及びRの少なくとも一方は水素ではなく、
    〜Z、Z11〜Z15は、互いに独立して、N、NCH 、CH又はCRであり、Z〜Zの少なくとも1つ、Z〜Zの少なくとも1つ、又はZ10〜Z15の少なくとも1つは、CH、CR、CH又はCRではなく、
    、R、Rは、互いに独立して、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アシル、シクロアルキル、カルボキシル、アミノ、アリールオキシ、アルコキシ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ又はシアノである)
    から選ばれる少なくとも1つの基であり(但し、複数のアミノ基を有する高分子に、式(I)、(II)及び(III)の基から選ばれる少なくとも1つの基に加えて、以下の化合物A、B又はC
    Figure 0006911681
    が導入されたものを除く)
    吸着材が、外部環境の変化によって標的物質を吸着・脱離し、外部環境の変化が、吸着材が接触している溶液のpHをpH7〜8からpH9〜11へと変化させることである、前記吸着材。
  2. 吸着部位が、Z10がSであり、Z11〜Z14がそれぞれCHであり、Z15がNであり、Lが、複数のアミノ基を有する高分子のアミノ基と吸着部位との結合部位である、式(III)の基である、請求項1に記載の吸着材。
  3. 吸着部位が、Z〜Zのうち1つがNであり、その他はすべてCHであり、Lが−CHCONH−である式(II)の基、又はZ10がSであり、Z11〜Z14がそれぞれCHであり、Z15がNであり、Lが−CHCONH−若しくは−(CHCONH−である式(III)の基である、請求項1に記載の吸着材。
  4. 複数のアミノ基を有する高分子が、ε−ポリリジン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン又はそれらを部分構造として含む高分子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸着材。
  5. 担体が、多糖類、架橋された多糖類、合成樹脂、シリカ又は金属酸化物を有する、請求項1に記載の吸着材。
  6. 担体が、多糖類又は架橋された多糖類を有する、請求項5に記載の吸着材。
  7. pH応答性高分子と担体とが共有結合を介して結合している、請求項1に記載の吸着材。
  8. 標的物質が、タンパク、生体分子、細胞、ウイルス又はナノ粒子である、請求項1に記載の吸着材。
  9. 標的物質が抗体である、請求項に記載の吸着材。
  10. 請求項1に記載の吸着材に標的物質を含むpH7〜8の溶液を接触させる工程と、
    請求項1に記載の外部環境の変化を印加する工程と
    を含む、標的物質の精製方法。
  11. 請求項1に記載の吸着材が充填されたカラムを用いる、請求項10に記載の精製方法。
  12. 請求項1に記載の吸着材を懸濁液の状態で用いる、請求項10に記載の精製方法。
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