JP2017037069A - 分離剤及びその製造方法、並びに当該分離剤を用いた標的分子の分離方法及びクロマトグラフィー用カラム - Google Patents

分離剤及びその製造方法、並びに当該分離剤を用いた標的分子の分離方法及びクロマトグラフィー用カラム Download PDF

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Abstract

【課題】選択性が高く分離効率が良好な、アフィニティ吸着性を有するリガンドを固定した分離剤を提供する。【解決手段】架橋合成高分子からなる多孔性粒子と、前記多孔性粒子に共有結合で結合したアフィニティ吸着性を有するリガンドとを有する分離剤であって、前記架橋合成高分子からなる多孔性粒子が、官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位を2種以上含む重合体で構成され、水銀圧入法で測定される細孔容積が0.4mL/g以上1.5mL/g以下、水銀圧入法で測定される細孔半径(最頻度半径)が100Å以上1000Å以下、水銀圧入法で測定される比表面積が30m2/g以上200m2/g以下、かつ、水分含有率が55重量%以上90重量%以下、である分離剤。【選択図】なし

Description

本発明は、クロマトグラフィー用充填剤に好適に用いられる分離剤に関するものであり、中でもタンパク質等の生体高分子に対して高い選択性を有する分離剤、及びその製造方法、並びに当該分離剤を用いた分離方法、及びクロマトグラフィー用カラムに関する。
タンパク質等の生体高分子の研究・開発において、それらの吸着・分離・精製にはクロマトグラフィーが多く用いられている。特に、これらのタンパク質等と親和力のあるリガンドを担体上に結合した固定相を用いるアフィニティクロマトグラフィーが、標的分子に対する選択性が高く、高い収率で高速かつ高純度な分離・精製等が可能となり、注目されている。
従来提案されている担体としては、シリカ等の無機系担体にアフィニティ官能基のいずれかのリガンドを結合したもの(例えば、特許文献1、2)があるが、このような無機系担体は流通される溶離液の液性によっては耐久性が劣ることがあった。
一方、特許文献3には、特定の粒子径と細孔直径を有する合成高分子の多孔性粒子に、アフィニティ吸着性を有するリガンドを共有結合により固定化した分離剤が、特に抗体に対して、高い選択率で分離・吸着性能を示すことが開示されている。
また、特許文献4には、水酸基を含有しエポキシ基を含有しない架橋性ビニル単量体およびエポキシ基含有非架橋性ビニル単量体、あるいは水酸基とエポキシ基とを含有する架橋性ビニル単量体、を含むビニル単量体の重合体からなる多孔性粒子、前記多孔性粒子に結合したリガンド、ならびに開環エポキシ基を有するアフィニティクロマトグラフィー用充填剤が、タンパク質の動的結合容量が高く、圧力特性にも優れることが開示されている。
特開2009−31277号公報 米国特許4308254号 特開2012−018135号公報 国際公開2011/125673号パンフレット
しかしながら、従来品は一般に、水分含有量もしくは空孔率の大きいものが吸着量に優れているとされていて、例えば合成高分子の多孔性粒子を重合法で製造する際の多孔質化溶媒の添加量を増やすことで、水分含有量もしくは空孔率の大きな樹脂が得られてきたが、強度がよくないという問題があった。特に、乾燥工程に耐久性があり乾燥細孔物性を測定可能なほど強度が良好で、かつ含水状態では空孔率が高く、水分含有量の大きいアフィニティ分離剤は無かった。
例えば、特許文献3に記載の発明では、細孔径、細孔容積、比表面積などの指標で示される細孔分布が比較的幅広いため、目的とする抗体の吸着量や分離性、選択率の面で依然として改良の余地があった。また、従来の吸着剤においては吸着量が増大するにつれて吸着剤の強度は下がる傾向があるため、吸着量の大きな領域において強度面で優れた合成高分子をベースとするアフィニティ分離剤が期待されていた。
また、特許文献4に記載の発明では、水酸基を含有するモノマーが構成要素になっているため、ポリマー骨格中の水分含量が高くなる傾向にあり、機械的強度としては改良の余地が存在する。また、水酸基を含有するモノマーを水溶液中での懸濁重合に使用する場合、該モノマーは一般に水への分配性が大きいので、重合反応時の分散安定性が低く、収率が低くなるという問題点がある。また、重合反応時の分散安定性の向上策として疎水性の高い溶媒を多孔質化剤として選択する方法も存在するが、この方法では多孔質化剤の選択で制約があるため、細孔分布の制御面で制約がある。
また、水銀圧入法による細孔物性測定は、圧力をかけて水銀を開孔部に侵入させる方法であり、数MPaから数百MPaの高圧がかかるため、強度の良好な多孔性物質しか測定出来ない方法である。空孔率が高く、水分含有量が高い多孔性粒子のうち、強度の小さいものを水銀圧入測定に供すると、途中で圧入が出来なくなる現象が観察される。これは水銀の圧力により多孔性粒子が破壊されるためと考えられ、水銀圧入法で細孔物性が測れるかどうかは強度が良好かどうかの判別指標にもなっている。
また、水銀圧入法の測定の前に、多孔性粒子を乾燥させる必要があるが、空孔率が高く、水分含有量が高い多孔性粒子のうち強度の小さいものはこの乾燥工程で樹脂の収縮、破砕が起こる問題がある。また、アフィニティ分離剤の工業的な生産のためには、乾燥して分級する工程が必須であるので、乾燥した状態で強度の良好な多孔性粒子が期待されていた。
したがって、合成高分子をベースとするアフィニティクロマトグラフィー用充填剤としては、乾燥工程に耐久性があり乾燥細孔物性評価に耐えられる強度を有するとともに、含水状態では空孔率が高く、水分含有量の大きいアフィニティ分離剤、つまり、動的吸着容量や圧力特性の一層向上したアフィニティ分離剤が期待されていた。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、吸着量の大きな領域において強度面で優れ、動的吸着容量や圧力特性の向上した、アフィニティ吸着性を有するリガンドを固定した分離剤及びその応用技術に関するものである。
本願発明者らが鋭意研究を行なった結果、特定の架橋性合成高分子粒子から構成され、アフィニティ吸着性を有するリガンドを共有結合により固定化した分離剤が特定の細孔容積、細孔半径(最頻度半径)、水分含有率、を有することで、吸着量の大きな領域において強度面で優れ、動的吸着容量や圧力特性の向上した、アフィニティ吸着性を有するリガンドを固定した分離剤を得られることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] 架橋合成高分子からなる多孔性粒子と、前記多孔性粒子に共有結合で結合したアフィニティ吸着性を有するリガンドとを有する分離剤であって、
前記架橋合成高分子からなる多孔性粒子が、官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位を2種以上含む重合体で構成され、
水銀圧入法で測定される細孔容積が0.4mL/g以上1.5mL/g以下、
水銀圧入法で測定される細孔半径(最頻度半径)が100Å以上1000Å以下、
水銀圧入法で測定される比表面積が30m2/g以上200m2/g以下、かつ、下記の測定方法で測定される水分含有率が55重量%以上90重量%以下、である分離剤。
[水分含有率の測定方法]
直径3cmのガラスフィルター上に検体樹脂(分離剤)を10g入れ、100mmHg以下の減圧条件で水を濾別しそのまま減圧を5分間継続する。得られたケーキを0.9g以上1.1g以下の範囲になるように精秤し、精秤したケーキを乾燥機で恒量まで乾燥させたときの減量とから水分含有率を算出する。
[2] 架橋合成高分子からなる多孔性粒子と、前記多孔性粒子に共有結合で結合したアフィニティ吸着性を有するリガンドとを有する分離剤であって、
前記架橋合成高分子からなる多孔性粒子が、官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位を2種以上含む重合体で構成され、
水銀圧入法で測定される細孔半径(最頻度半径)が100Å以上1000Å以下、
水銀圧入法で測定される比表面積が30m2/g以上200m2/g以下、かつ、下記の測定方法で測定される水分含有率が55重量%以上90重量%以下、である分離剤。
[水分含有率の測定方法]
直径3cmのガラスフィルター上に検体樹脂(分離剤)を10g入れ、100mmHg以下の減圧条件で水を濾別しそのまま減圧を5分間継続する。得られたケーキを0.9g以上1.1g以下の範囲になるように精秤し、精秤したケーキを乾燥機で恒量まで乾燥させたときの減量とから水分含有率を算出する。
[3] 下記の測定方法で測定される空孔率が70%以上である前記[1]または[2]に記載の分離剤。
[空孔率の測定方法]
測定対象の分離剤を内径1cm、長さ30cmのガラスカラムに充填し、液体クロマトグラフ(LC)で水を0.5mL/minで通液する。分子量分布500万〜4000万のデキストラン試薬の0.1%水溶液、及びエチレングリコール試薬の1%水溶液を調製し、それぞれ0.1mLを前記ガラスカラムに注入し、それぞれの溶出時間を測定する。それらの溶出時間から、下記式により空孔率を求める。
(空孔率)=((エチレングリコール溶出体積)−(デキストラン溶出体積))/((カラム容積)−(デキストラン溶出体積))
[4] 平均粒子径が1μm以上1000μm以下、である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の分離剤。
[5] 前記多孔性粒子とリガンドとが直鎖のスペーサーを介して固定化されている前記[1]〜[4]のいずれかに記載の分離剤。
[6] 湿潤状態での見掛密度が500g/L以上1000g/L以下である前記[1]〜[5]のいずれかに記載の分離剤。
[7] 前記官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位が、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位と、ビニル基を少なくとも2つ以上有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位とを含む前記[1]〜[6]のいずれかに記載の分離剤。
[8] 分離剤1リットルあたりのリガンドの固定化密度が1gより大きい前記[1]〜[
7]のいずれかに記載の分離剤。
[9] リガンドが、免疫グロブリンの一部と特異的に結合する前記[1]〜[8]のいずれかに記載の分離剤。
[10] リガンドが、プロテインA、プロテインG、プロテインL、及びこれらの機能性変異体から選択される1種以上である前記[1]〜[9]のいずれかに記載の分離剤。
[11] 前記[1]〜[10]のいずれかに記載の分離剤の製造方法であって、
官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位を2種以上含む重合体で構成され、
水銀圧入法で測定される細孔容積が0.4mL/g以上1.5mL/g以下、かつ、
水銀圧入法で測定される細孔半径(最頻度半径)が100Å以上1000Å以下、
である架橋合成高分子からなる多孔性粒子に、アフィニティ吸着性を有するリガンドを共有結合で固定化する工程を、有することを特徴とする分離剤の製造方法。
[12] 前記架橋合成高分子からなる多孔性粒子をマイナス20℃以上プラス60℃以下の温度で減圧乾燥し、乾燥状態で分級する工程を含む前記[11]に記載の分離剤の製造方法。
[13] リガンドを共有結合で固定化する前に、前記架橋合成高分子からなる多孔性粒子を40体積%以上98体積%以下のエタノール水溶液で洗浄滅菌し、滅菌状態を維持した容器内でリガンドの固定化工程を実施する前記[11]または[12]に記載の分離剤の製造方法。
[14] 以下の工程(a)及び工程(b)を含む標的分子の分離方法。
(a)標的分子を含む溶液を前記[1]〜[10]のいずれかに記載の分離剤に接触させて、標的分子を分離剤に吸着させる工程
(b)前記[1]〜[10]のいずれかに記載の分離剤から標的分子を溶離する工程
[15] 標的分子が、免疫グロブリンの少なくとも一部又はこれらの化学変性物である前記[14]に記載の方法。
[16] 標的分子が、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体又はこれらの化学変性物である前記[14]または[15]に記載の方法。
[17] 標的分子が、免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部を含む融合タンパク質又はこれらの化学変性物である前記[14]〜[16]のいずれかに記載の方法。
[18] 前記[1]〜[10]のいずれかに記載の分離剤を含み、少なくとも1つの容器を備えるクロマトグラフィー用カラム。
本発明によれば、吸着量の大きな領域において強度面で優れ、動的吸着容量や圧力特性の向上した、アフィニティ吸着性を有するリガンドを固定した分離剤を得られる。
以下に記載する例示物等は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、これらの内容に限定されるものではない。また、本明細書で「(メタ)アクリル」という表記は、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
〔1.分離剤〕
本発明の分離剤は、架橋合成高分子からなる多孔性粒子と、前記多孔性粒子に共有結合で結合したアフィニティ吸着性を有するリガンドとを有する分離剤であって、前記架橋合成高分子からなる多孔性粒子が、官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位を2種以上含む重合体で構成され、特定の比表面積、細孔半径(最頻度半径)、及び水分含有率、要すれば特定の細孔容積を有する分離剤である。
本発明の分離剤は、水銀圧入法で測定される比表面積、及び細孔半径(最頻度半径)、要すれば細孔容積、が以下に説明するように特定の範囲であることに特徴がある。なお、水銀圧入法は、圧力をかけて水銀を開孔部に侵入させ、圧力値と対応する侵入水銀体積とを用いて、円柱状と仮定した細孔の径をWashburnの式から算出する方法であり、セラミックス成形体について規定されたJIS R1655を準用することができる。
本発明の分離剤は、湿潤状態で高い空孔率を有するとともに、乾燥状態で水銀ポロシメーターにより0.06MPaから410MPaの範囲で細孔物性が測定できる強度を有することに特徴がある。一方で、空孔率が高く、水分含有量が高い従来の分離剤では、同様の測定を実施すると水銀の圧力により多孔性粒子が破壊されることにより、途中で圧入が出来なくなる現象が観察され、乾燥状態で水銀ポロシメーターにより0.06MPaから410MPaの範囲で細孔物性が測定できない。
本発明の分離剤は、上記特徴的な構成を有することにより、吸着量の大きな領域において強度面で優れ、動的吸着容量や圧力特性が向上し、優れたアフィニティ吸着性を有する。本発明の分離剤が、吸着量の大きな領域において強度面で優れ、動的吸着容量や圧力特性の向上する理由は、未だ定かではないが、以下のように推察される。
架橋合成高分子からなる多孔性粒子と、当該多孔性粒子に共有結合で結合したアフィニティ吸着性を有するリガンドとを有する分離剤では、乾燥状態に比べて含水状態では、分離剤における架橋合成高分子からなる多孔性粒子の全体が膨張するとともに細孔も膨張する傾向にある。したがって、乾燥状態の比表面積、細孔半径、及び細孔容積が小さい樹脂(架橋合成高分子からなる多孔性粒子)がアフィニティ分離剤には適しているものと考えられる。また、乾燥状態での比表面積、細孔半径、及び細孔容積の小さい樹脂のほうが樹脂骨格の量が多くなるので強度的には有利になる。また、製造段階において、乾燥工程を経ることにより微細細孔の再構築がなされる。したがって、含水状態での拡散が良好かつ強度面でも強化されたアフィニティ分離剤が得られるものと推察される。
なお、本明細書において、「湿潤状態(水湿潤状態)」とは、水中でスラリー状に懸濁している多孔性粒子や分離剤粒子から、粒子間に存在する大過剰の水を取り除いた状態である。この状態においては、粒子表面に付着している水分、粒子細孔内に存在する水分、および、粒子骨格内に存在する水分を含んだ状態である。具体的には、ガラスフィルターや濾過フィルター上に樹脂スラリーを流し込み減圧濾過により水を切るような操作を実施後の状態をいう。もしくは、ヌッチェに濾紙やメッシュフィルターを敷いて、その上に樹脂スラリーを流し込み、減圧濾過で水を切る操作でも良い。もしくは加圧濾過、自然濾過により水を切っても良い。あるいは、遠心分離機に濾布をセットして濾布上で水を切る操作を実施後の状態でも良い。または、粒子スラリーをスピンカラムに入れた後遠心分離機で水を切る操作を実施後の状態をいう。または、「イオン交換樹脂・合成吸着剤マニュアル」、改訂4版、3章、イオン交換樹脂の性能試験法、p.131−132記載のように、樹脂の遠心分離により付着水分を除去して水分を測定する方法も適用できる。いずれの方法においても、一定の湿潤状態にするためには、一定の水切り条件に設定すると良い。
本明細書において、「乾燥状態」とは、多孔性粒子や分離剤の外側および細孔内に水を含まない状態である。具体的には、減圧乾燥器や水分測定器、凍結乾燥機などを用いて細孔内の水を十分除去できる条件で乾燥操作を実施後の状態をいう。この乾燥操作を実施後、多孔性粒子や分離剤に含まれていた水分は除去され、恒量に達した状態にあることをいう。
以下、水銀圧入法で測定される比表面積、細孔半径、及び細孔容積は、いずれも乾燥状態で測定した値についての説明である。
分離剤の水銀圧入法で測定される細孔容積は、0.4mL/g以上1.5mL/g以下であることが好ましく、より好適には、0.7mL/g以上1.2mL/g以下である。更に好適には、0.7mL/g以上1.0mL/g以下である。細孔容積が下限値以上であると吸着対象物質の拡散性が向上し吸着量が向上する点で好ましく、細孔容積が上限値以下であると分離剤の強度が維持できる点で好ましい。
分離剤の水銀圧入法で測定される細孔半径(最頻度半径)は、100Å以上1000Å以下であり、好適には100Å以上700Å以下、更に好適には100Å以上500Å以下である。細孔半径(最頻度半径)がこの範囲より小さい場合、分離対象のタンパク質等が粒子の細孔中に入りにくくなり、結果的に吸着量が低下することとなる。一方、細孔半径(最頻度半径)がこの範囲を超えて大きくなると、細孔内部に吸着に寄与しない空間ができてしまい、やはり吸着量が低下することになり、更に分離剤粒子の機械的な強度も低下する。
また、分離剤の水銀圧入法で測定される比表面積が、30m2/g以上200m2/g以下であり、70m2/g以上100m2/gであることがより好ましい。水銀圧入法で測定される比表面積がこの範囲より小さい場合、リガンドの固定に必要な細孔内の面積が不足し、リガンドが充分固定化できず、吸着量の低下につながる。また、吸着対象物質が吸着し得る面積が小さくなるため、吸着量が低下することとなる。一方、比表面積がこの範囲を超えて大きくなると、細孔の内部へ吸着対象物質が行き渡るまでに時間がかかるようになるので、動的吸着容量が低下するようになる。また、比表面積がこの範囲を超えて大きくなると、細孔表面のうちリガンドで被覆されない面積が増えることとなるので、疎水吸着や、非特異吸着が起こりやすくなり、吸着対象物質の回収率が低下する問題も生じる。
一方で、分離剤の比表面積は窒素吸着法で測定することもできる。分離剤の窒素吸着法で測定される比表面積が、30m2/g以上200m2/g以下であり、70m2/g以上100m2/gであることがより好ましい。窒素吸着法で測定される比表面積がこの範囲より小さい場合、リガンドの固定に必要な細孔内の面積が不足し、リガンドが充分固定化できず、吸着量の低下につながる。また、吸着対象物質が吸着しうる面積が小さくなるため、吸着量が低下することとなる。一方、比表面積がこの範囲を超えて大きくなると、細孔の内部へ吸着対象物質が行き渡るまでに時間がかかるようになるので、動的吸着容量が低下するようになる。また、比表面積がこの範囲を超えて大きくなると、細孔表面のうちリガンドで被覆されない面積が増えることとなるので、疎水吸着や、非特異吸着が起こりやすくなり、吸着対象物質の回収率が低下する問題も生じる。
窒素吸着法により測定される比表面積の値は、水銀圧入法の測定範囲よりも小さな細孔(例えば100Å以下の領域)の比表面積をカバーする指標でもある。したがって、この指標が大きすぎると、微細な細孔の量も多いということになる。微細な細孔の量が極端に多すぎると、分子量の大きなタンパク質(例えば抗体)が拡散できないので、分子量の大きなタンパク質の吸着剤向けには好ましくない。ただし分子量の小さなタンパク質の吸着剤向けには適する場合もある。
分離剤は、下記の測定方法で測定される空孔率が70%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上である。空孔率が下限値以上であると細孔の量が増加し吸着対象物質の拡散性が増加して吸着量も増加する点で好ましく、細孔容積が上限値以下であると分離剤の強度を犠牲にすることなく吸着対象物の拡散性が良好で吸着量が大きい分離剤が得られる点で好ましい。
水銀法や窒素吸着法で分析される細孔容積は乾燥状態での細孔量の指標であるのに対し、空孔率は、水湿潤状態での細孔量を示す指標なので、空孔率はユーザーが実際に分離剤として使用する際の細孔量と直接関連する。そのため空孔率が下限値以上であると実使用時の吸着対象物質の拡散性が増加して吸着量も増加する点で好ましく、細孔容積が上限値以下であると分離剤の強度を犠牲にすることなく実使用時の吸着対象物質の拡散性が良好で吸着量が大きい分離剤が得られる。
[空孔率の測定方法]
測定対象の分離剤を内径1cm、長さ30cmのガラスカラムに充填し、液体クロマトグラフ(LC)で水を0.5mL/minで通液する。分子量分布500万〜4000万のデキストラン試薬の0.1%水溶液、及びエチレングリコール試薬の1%水溶液を調製し、それぞれ0.1mLを前記ガラスカラムに注入し、それぞれの溶出時間を測定する。それらの溶出時間から、下記式により空孔率を求める。
(空孔率)=((エチレングリコール溶出体積)−(デキストラン溶出体積))/((カラム容積)−(デキストラン溶出体積))
なお、これらの細孔の径、細孔の総容積、比表面積、空孔率等の物性は、用いる重合性単量体の種類・量や、重合時の水と単量体との量比、あるいは重合に際して重合に不活性な有機溶媒を反応系中に所定量共存させ、その種類や量を制御することによって調整することができる。更に、重合開始剤の種類・量によっても調整が可能である。
また、本発明の分離剤において、担体である架橋合成高分子からなる多孔性粒子の細孔物性は、リガンドの固定の有無で有意に変化しない。そのため、本発明において、リガンド固定化前の架橋合成高分子からなる多孔性粒子の細孔物性と、リガンド固定化後の架橋合成高分子からなる多孔性粒子(すなわち、分離剤)の細孔物性とは、同一とみなす。
また、本発明に係る分離剤は、下記の「水分含有率の測定方法」で測定される水分含有率が55重量%以上90重量%以下であり、好適には65重量%以上75重量%以下である。水分含有率が、この範囲より小さい場合、吸着量が低くなったり、細孔内の拡散性が低下したり、分離剤自体の疎水性が増加して非特異吸着が大きくなったりという問題が生じる。一方、この範囲を超えて大きくなると、分離剤の強度が低下し、分離剤の破砕が起こったり、カラムに充填したときに圧密化が起こってカラムが通液できなくなったりする。
[水分含有率の測定方法]
直径3cmのガラスフィルター上に検体樹脂(分離剤)を10g入れ、100mmHg以下の減圧条件で水を濾別しそのまま減圧を5分間継続する。得られたケーキを0.9g以上1.1g以下の範囲になるように精秤し、精秤したケーキを乾燥機で恒量まで乾燥させたときの減量とから水分含有率を算出する。水分含有率の具体的な評価方法について、実施例にて後述する。
本発明の分離剤の平均粒子径は、1μm以上、1000μm以下であることが好ましい。より好ましい平均粒子径は、用いる充填用カラムの用途や大きさにもよるが、5μm以上、700μm以下であり、更に好ましい平均粒子径は10μm以上、500μm以下で
ある。平均粒子径がこの範囲より小さいと、カラムに充填して通液した時の圧力損失が大きくなり、そのため通液速度をあまり高くできず、分離処理の生産性が低下する。一方、この範囲を超えて平均粒子径が大きいと、カラムの効率が低下し、吸着量や分離性能が低下する。なお、分離剤の粒子径は、担体である多孔性粒子の粒子径で実質的に決定される。
分離剤の平均粒子径は、既知の方法で測定することができる。例えば、光学顕微鏡にて、100個以上の粒子径を測定し、その分布から体積メジアン径を算出することで平均粒子径が得られる。粒子径分布の幅の指標である均一係数は、通常小さい方がカラムに充填して通液する時の圧力損失が小さくなり好ましい。均一係数が大きくなると、カラムへの充填効率は高くなるものの、圧力損失が大きくなる傾向にある。
本発明の分離剤は、多孔性粒子とリガンドとが直鎖のスペーサーを介して固定化されていることが好ましい。スペーサーについては、分離剤の製造方法と併せて後述する。
本発明の分離剤は、湿潤状態での見掛密度が500g/L以上1000g/L以下であることが好ましい。湿潤状態での見掛密度が500g/L未満であると、分離剤の強度が低下し、分離剤の破砕が起こったり、カラムに充填したときに圧密化が起こってカラムが通液できなくなったりする。また、1000g/Lを超えると、分離剤の粒内拡散性が低下して動的吸着容量が低下したり、分離剤の疎水性が増加して非特異吸着が増加したりする問題がある。
分離剤1リットルあたりのリガンドの固定化密度が1gより大きいことが好ましい。またその上限は特に限定されないが、通常50g/L以下である。リガンドの固定化密度が1g/L未満では抗体の吸着量が低下し、分離剤の効率が低くなる。一方、50g/Lを超えてリガンドを固定しても、リガンドの利用効率が低くなる。
本発明の分離剤の抗体吸着量は5mg/mL(樹脂)以上である。より好ましい抗体吸着量は10mg/mL(樹脂)以上、更に好ましくは20mg/mL(樹脂)以上、特に好ましくは40mg/mL(樹脂)以上である。なお、「mL(樹脂)」は、乾燥樹脂の体積を示す。
このような高い吸着量を達成するためには、例えば、リガンドの固定化密度を調整する、細孔直径を調整する、平均粒子径を調整する、アフィニティ吸着性を有するリガンドの種類を選択する、などの方法があり、必要に応じてこれらの方法を2つ以上組み合わせてもよい。これらの物性の好適範囲は上述の通りである。
抗体吸着量の測定方法は、分離剤を水湿潤状態として1体積部をチューブに秤取し、これに50体積部のマウスポリクローナルIgG水溶液(和光純薬(株)製試薬を濃度2.5mg/mLに希釈したもの)もしくはヒトガンマグロブリン水溶液(和光純薬試薬、もしくはグロブリン筋注を濃度2.5mg/mLに希釈したもの)を加えて室温で3〜5時間攪拌しIgGを吸着させる。吸着前後の上澄み液の吸光度を測定し、別途作成した検量線より抗体吸着量を決定する。
マウスポリクローナル抗体吸着量やヒトガンマグロブリン吸着量が小さいと、目的とするヒト抗体の吸着量も低下するものと考えられている。
以下、本発明の分離剤を構成する多孔性粒子及びリガンドについて説明する。
<1−1.多孔性粒子>
本発明の分離剤で用いられる多孔性粒子(以下、「本発明に係る多孔性粒子」、又は単に「多孔性粒子」と記載する場合がある。)は、官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位を2種以上含む重合体で構成される。
本発明に係る多孔性粒子は、リガンドを固定する担体であり、クロマトグラフィーの使
用条件における耐久性と機械的強度を有する。また、共有結合によってアフィニティ吸着性を有するリガンドを共有結合で固定化できるための反応性官能基を有している。
本発明の多孔性粒子における架橋合成高分子は、分離時の水媒体との親和性が高く、選択率向上に有効な(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の構成単位を含むことが好ましい。なお、以下で説明する各構造単位の重量割合は原料として用いられる各化合物の重量割合に基づいて定められるものとする。
本発明に係る多孔性粒子における架橋合成高分子の構成単位に相当する反応性官能基付与性を有する重合性単量体としては、アフィニティ吸着性を有するリガンドを共有結合で固定化できるような反応性官能基そのものを有する(メタ)アクリル系単量体か、又はこのような反応性官能基を有する化合物(リンカー)と反応可能な官能基を有する(メタ)アクリル系単量体があり、本発明にはそのいずれも使用可能である。
このアフィニティ吸着性を有するリガンドを共有結合で固定化できる反応性官能基としては、リガンドの結合部位に相当する官能基の種類に応じて選択すればよいが、例えばリガンドがプロテインAのようなアミノ基を有するリガンドである場合、このアミノ基と共有結合可能な官能基としては、エポキシ基、カルボキシル基などが挙げられる。中でも反応性の点から、エポキシ基が好ましい。
このようなエポキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、4,5−エポキシブチル(メタ)アクリレート、9,10−エポキシステアリル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有単量体などが挙げられる。
本発明に係る多孔性粒子における架橋合成高分子は、多孔性粒子に架橋構造を付与するために、重合反応時に重合可能な官能基を分子中に複数個有する多官能性単量体由来の構造単位を有していてもよい。
このような多官能性単量体としては、例えばジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等の芳香族ポリビニル化合物、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、グリセロールジ(メタ)アクリル酸エステル等のポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリカルボン酸ポリビニルエステル類、ポリカルボン酸ポリアリルエステル類、ポリオールポリビニルエーテル類、ポリオールポリアリルエーテル類、ブタジエン、メチレンビスアクリルアミド、イソシアヌル酸トリアリル等のポリビニル化合物が挙げられ、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、などが挙げられる。
この中でもビニル基を少なくとも2つ以上有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体は好適な多官能性単量体の一つである。
また、多孔性粒子における架橋合成高分子は、上述の単量体以外の単量体(以下、「その他の単量体」と記載する。)由来の構造単位を含んでいてもよい。その他の単量体の割合は、本発明の効果を損なわない範囲で決定される。
その他の単量体として、例えば、スチレン系単量体としては、スチレン、エチルスチレン、メチルスチレン、ヒドロキシスチレン、クロロスチレン等の単量体;(メタ)アクリル系単量体として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)
アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリロニトリルのようなニトリル類などが例示できる。
また、上述の(メタ)アクリレート以外の架橋性単量体として、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、4−エポキシ−1−ブテンなどが挙げられる。
多孔性粒子を構成する架橋合成高分子における、多官能性単量体、例えば、ビニル基を少なくとも2つ以上を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の構成単位の割合が、架橋合成高分子全量を100重量%として、10重量%以上70重量%以下であることが好ましく、15重量%以上65重量%以下であることがより好ましく、40重量%以上60重量%以下であることが最も好ましい。当該構成単位の割合が10重量%未満であると、細孔が十分に形成されずに吸着量が低くなったり、細孔内の拡散性が低下したりする。また、70重量%を超えると、分離剤自体の疎水性が増加して非特異吸着が大きくなったり、細孔が小さくなって拡散性が低下したり、リガンドと結合させる単量体単位の割合が減るためにリガンド結合量が十分に稼げなくなったりする問題がある。
本発明に係る架橋合成高分子において好適な官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位は、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位(以下、「構成単位(a)」と記載する場合がある。)と、ビニル基を少なくとも2つ以上有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位(以下、「構成単位(b)」と記載する場合がある。)とを含むものである。
このような構成単位(a)と構成単位(b)の割合は、「重合体を構成する官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体の合計重量」に対して、好適には
構成単位(a):90重量%以上30重量%以下、
構成単位(b):10重量%以上70重量%以下、
であり、より好適には、
構成単位(a):60重量%以上40重量%以下、
構成単位(b):40重量%以上60重量%以下、
である。
なお、「重合体を構成する官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体の合計重量」は、官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構造単位を2種以上含む重合体が、構成単位(a)及び構成単位(b)のみからなる場合には、「エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体(a)」と「ビニル基を少なくとも2つ以上有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体(b)」の合計重量である。
また、構成単位(a)及び構成単位(b)以外に、他の構造単位を含む場合は、「エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体(a)」、「ビニル基を少なくとも2つ以上有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体(b)」及び「他の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体」の合計重量である。
<1−2.リガンド>
本発明に用いられるリガンドはアフィニティ吸着性を有するものである。
このようなリガンドとしては、プロテインA、プロテインG、プロテインL及びこれらの機能性変異体、各種抗体、レクチン類、もしくはこれらの疑似ペプチドリガンド類が挙げられるが、タンパク質に親和性のある生化学活性を有する物質で固定化可能なものであれば特に限定されない。
これらの中でも、リガンドとしてプロテインA、プロテインG、プロテインL及びこれらの機能性変異体から選択される1種以上が抗体の分離に用いる際の選択率が高く好ましい。なお、抗体の分離を主目的とする場合、リガンドとしては免疫グロブリンの一部と特
異的に結合可能なものが好ましい。
〔2.分離剤の製造方法〕
本発明の分離剤は、上述のアフィニティ吸着性を有するリガンドを、架橋構造を有する合成高分子からなる多孔性粒子に共有結合で固定化することにより製造される。
(2−1)架橋合成高分子からなる多孔性粒子の製造方法
本発明の分離剤に係る架橋合成高分子からなる多孔性粒子を得るための方法は、例えば、特公昭58−058026号公報や、特開昭53−090911号公報に開示されているような方法を用い、上述の架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(及びその他の単量体)を、懸濁重合や乳化重合させることによって行うことができる。原料となる単量体については、架橋合成高分子の構造単位として上述したため、ここでの説明を省略する。また、これらの単量体の重合における使用量は、多孔性粒子を構成する架橋合成高分子における構造単位が目的とする割合になるように調整される。
好適な単量体の種類や割合等についても架橋合成高分子の構造単位として上述したため、ここでの説明を省略する。
特に平均粒径1μm以上1000μm以下の架橋合成高分子からなる多孔性粒子を形成できる点で、例えば特開平1−54004号公報に記載されているような、懸濁重合法により製造することが好ましい。
架橋合成高分子からなる多孔性粒子の物性(細孔の径、細孔の総容積、比表面積、空孔率等)は、用いる原料単量体の種類・量や、重合方法の種類、重合の操作条件、その他を調節すること等により、適宜制御することができる。
例えば、多孔性粒子の平均粒径は、懸濁重合の操作条件、例えば、上記の各種原料単量体の種類・量の選択、乳化剤及び/又は保護コロイド剤の種類・量の選択、及び撹拌の強度(撹拌回転数等)、その他を調節すること等により、適宜制御することができる。
架橋合成高分子からなる多孔性粒子の細孔の径や細孔の総容積、比表面積、空孔率等は、用いる重合性単量体の種類・量や、重合時の水と単量体との量比、あるいは重合に際して重合に不活性な有機溶媒(多孔質化剤)を反応系中に所定量共存させ、その種類や量を制御することによって調整することができる。更に、重合開始剤の種類・量によっても調整が可能である。例えば、重合時の水と単量体との量比としては、架橋合成高分子の原料となる単量体の総量を100重量部とした時に、通常、400〜2000重量部であり、500〜1500重量部が好ましく、800〜1450重量部が最も好ましい。
また、架橋合成高分子の原料となる単量体を、多孔質化剤の共存下で重合することにより、より細孔物性に優れた多孔性粒子を得ることができる。多孔質化剤としては、トルエン、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、4−メチル−2−ペンタノン、酢酸ブチル、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、クロロベンゼン、2−オクタノン、酢酸エチル、フタル酸エステル類、1,2-ジクロロプロパン、ジクロロメタン等が挙げられる。なかでも、架橋度を低くしても細孔容積や比表面積を大きくできることから、シクロヘキサノール、2,6−ジメチル―4−ヘプタノン、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノン、2−オクタノン、フタル酸エステル類、等の脂肪族系の多孔質化剤であることが好ましく、特に架橋合成高分子の架橋度が低い場合には2−オクタノン、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノン、2,6−ジメチル―4−ヘプタノン、酢酸エチルがより好ましい。
なお、多孔質化剤の配合量としては、架橋合成高分子の原料となる単量体の総量を100重量部とした時に、多孔質化剤の配合量は、通常、80〜300重量部であり、90〜260重量が好ましく、120〜230重量部が最も好ましい。
特に、用いる多孔質化剤の種類によっては架橋剤として働く多官能性単量体の量(架橋度)の好ましい範囲が存在する。
芳香族系多孔質化剤の場合は、重合時の相分離が良好なため、細孔が形成されやすく、架橋度が低くても細孔容積が充分で比表面積や水分含有量、空孔度の良好な多孔性粒子を得ることが出来る。原料となる単量体の合計重量に対する多官能性単量体の割合で示される架橋度の好適な範囲は10重量%以上90重量%以下、より好ましくは40重量%以上70重量%以下である。
一方、脂肪族多孔質化剤の場合は、単量体と多孔質化剤、ならびに重合で生成する架橋合成高分子と多孔質化剤との相溶性が良好である。この場合、細孔を発達させる手段として、架橋剤の量が少ない場合には多孔質化剤の量は少なめに設定し、緩やかに相分離を進行させると良い。一方、架橋度が高い場合には、多孔質化剤の量を増やすことで、発達した細孔の多孔質架橋粒子を得ることが出来る。
芳香族系の多孔質化剤、また、脂肪族系の多孔質化剤、それぞれに好適な架橋度、ならびに、好適な多孔質化剤の添加量がある。
芳香族系多孔質化剤を使う場合、架橋度50重量%以上70重量%以下が好ましく、その場合の多孔質化剤の添加量の好適範囲は、架橋合成高分子の原料となる単量体の総量を100重量部とした時に、150重部以上200重量部以下である。
脂肪族系多孔質化剤を使う場合、架橋度10重量%以上40重量%以下の領域では、多孔質化剤の添加量の好適範囲は、架橋合成高分子の原料となる単量体の総量を100重量部とした時に、100重量部以上150重量部以下である。この場合、架橋度のより好適な範囲は20重量%以上40重量%以下である。
脂肪族系多孔質化剤を使う場合、架橋度40重量%以上70重量%以下の領域では、多孔質化剤の添加量の好適範囲は、架橋合成高分子の原料となる単量体の総量を100重量部とした時に、150重量部以上300重量部以下である。
さらに、重合開始剤の種類・量を選択することにより、より細孔物性に優れた多孔性粒子を得ることができる。重合開始剤としては、t−ブチルハイドロパーオキシド、過酸化ジベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、ADVNと略すことがある。)、ジメチル=2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(以下、MAIBと略すことがある。)等が挙げられる。なお、重合開始剤の配合量としては、架橋合成高分子の原料となる単量体の総量を100重量部とした時に、重合開始剤の配合量は、通常、0.01〜3重量部であり、0.1〜2重量が好ましく、0.3〜1.5重量部が最も好ましい。
架橋合成高分子からなる多孔性粒子は、重合反応の後に、マイナス20℃以上プラス60℃以下の温度で減圧乾燥し、乾燥状態で分級して製造することが好ましい。このような処理を行う利点としては、重合工程由来、洗浄工程由来で残存する溶媒成分や単量体成分などの揮発性不純物を除去できる点、又、減圧乾燥では乾燥温度を高く設定しなくて良いため、多孔性粒子の反応性官能基の分解を抑制できる点が挙げられる。また、湿潤分級の問題点としては、リガンド結合用の多孔性粒子の分級には水からの汚染を避けるため高純度の水を大量に消費する点、また、100μm以下の粒子を篩い分けする際には篩いの目詰まりが起こりやすく生産性が低い問題点があるが、乾燥分級の利点としては篩いを使用しない風簸分級法が適用でき、工業スケールでの大量製造に向いている。一方、従来の常圧乾燥法では、乾燥する際に粒子同士が付着しやすく、その後の分級工程で付着粒子がほぐれる時に粒子表面が剥離する問題が生じることがある。減圧乾燥では乾燥温度を高く設定しなくて良いため、そのような付着粒子の表面剥離現象は軽減される。水分含有量が高い多孔性粒子や、空孔率の大きな多孔性粒子、乾燥時に細孔容積が小さくなる多孔性粒子、また、(メタ)アクリル酸エステル系のような比較的強度の低い多孔性粒子において、上述の問題はとくに顕著に見られることがあるので、減圧乾燥のような緩やかな乾燥方法での乾燥を経て分級する方法が好ましい。
(2−2)リガンドの固定化
多孔性粒子へのリガンドの固定化方法は、特に制限はないが、以下のような方法(第1の態様、第2の態様)が好適である。
本発明の分離剤の製造方法の第1の態様は、架橋合成高分子粒子に反応性官能基付与性を有する重合性単量体を共重合等の形で取り込ませておいた上で、この反応性官能基と、リガンドの有する官能基とを直接反応させる方法である。
本発明の分離剤の製造方法の第2の態様は、架橋合成高分子の構成成分の有する官能基及び前記リガンドの有する官能基とそれぞれ反応可能な官能基を分子内にそれぞれ1個以上有する低分子又は高分子化合物を介して結合させる方法が用いられる。なお、本明細書において、上述の「架橋合成高分子の構成成分の有する官能基及びリガンドの有する官能基とそれぞれ反応可能な官能基を分子内にそれぞれ1個以上有する低分子又は高分子化合物」を、「スペーサー」と称す。
例えばプロテインAのようなアミノ基を有するリガンドを固定化する場合、第1の態様の方法としては、架橋合成高分子にエポキシ基、カルボキシル基などのアミノ基と共有結合を形成する官能基を含有させておき、これとプロテインAを直接反応させて固定化する方法が例示できる。
また、第2の態様の方法としては、スペーサーとしてアミノ酸(アミンカルボン酸)類を用い、そのアミノ基部位と架橋合成高分子のエポキシ基とを反応させた上で、他の末端のカルボキシル基によってプロテインAのアミノ基と反応させる方法や、スペーサーとしてジアミンやジオールと(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル等のジグリシジル化合物を逐次的に用いて、架橋合成高分子のエポキシ基とジアミン又はジオールの一方の末端を結合させ、他の末端にジグリシジル化合物の一方のエポキシ基を結合させて、残る末端のエポキシ基をプロテインAと結合させる方法などが挙げられる。
なお、上記方法でスペーサーの一部の成分として用いられるジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類が挙げられ、ジオールとしては、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオールやポリエチレングリコール類が挙げられる。
スペーサーとしてはリガンドとの反応性や固定化時の架橋合成高分子粒子との立体障害
の関係を考慮すると、直鎖状の構造を有していることが好ましい。分岐鎖状の構造のスペーサーを用いると、立体障害が大きくなって、リガンドと抗体とのアフィニティ結合の形成を抑制するためか、吸着量が低下する傾向となる。
分離対象となる抗体の選択性には、架橋合成高分子粒子の細孔内部に結合するプロテインA等のリガンドの細孔壁からの距離が関係するものと考えられているが、第1の態様の方法では架橋合成高分子を製造する段階で、共重合させる単量体反応性官能基付与性を有する重合性単量体の種類によって上記距離が決まってしまうのに対して、第2の態様の方法ではスペーサーの種類や組み合わせを選ぶことによって、リガンドの固定化段階で上記距離の調整ができる点、好ましい方法である。
リガンドの固定化反応に際しては、例えばプロテインA等を水溶液として上記エポキシ基等の反応性官能基を有する多孔性粒子上に供給し、反応を行わせる。
固定化反応の温度は常温〜30℃程度が好ましい。温度が高くなるとプロテインA等が不活性化することがあり、一方温度が低いと反応に長時間を要することとなる。
上述の通り、リガンドの固定化密度は、分離剤1リットル当たり1gより大きいことが好ましい。またその上限は特に限定されないが、通常50g/L以下である。
リガンドの固定化を行う官能基(例えばエポキシ基)の含有量は、樹脂1mL当たり0.01〜100μ(エポキシ)当量であることが好ましい。この値が、0.01μ当量未満ではリガンドの固定量が少なくなるとともに、リガンドの固定が弱体化してリガンドの脱離・脱落が起きることがある。一方、この含有量が100μ当量を超えて多くなると、リガンドの易動性が阻害されるためか、抗体吸着量が低下する傾向となる。
より好ましい固定化密度としては、樹脂1mL当たり0.05〜50μ(エポキシ)当量が挙げられる。
なお、末端基としてエポキシ基を持つスペーサーを有する多孔性粒子に含まれるエポキシ基の含有量は以下のようにして測定できる。
多孔性粒子5gを水湿潤状態でフラスコに量りとり、1Mのチオ硫酸ナトリウム水溶液を100mL添加する。フラスコを密栓し、100rpmで5時間撹拌し、発生したNaOHをフェノールフタレイン指示薬を用いて、0.1Nの塩酸で滴定する。
生成したNaOH量に基づいて樹脂(多孔性粒子)のエポキシ基含有量を算出する。
なお、製造される分離剤を無菌プロセス向けの分離剤として無菌状態で製出するためには、リガンドを共有結合で固定化する前に、前記架橋合成高分子からなる多孔性粒子を40体積%以上98体積%以下のエタノール水溶液で洗浄滅菌し、滅菌状態を維持した容器内でリガンドの固定化工程を実施することが好ましい。又、洗浄滅菌のための薬剤としては、エタノール以外に各種有機溶媒も使用することができ、エタノール以外の薬剤の例としては、メタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、ホルマリン水溶液、アセトン、ギ酸、酢酸が挙げられる。また、過酸化水素水や次亜塩素酸塩水溶液、重曹水、炭酸ナトリウム水溶液、食塩水、アルカリ水溶液(水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化カルシウム)のように、一般に用いられる洗浄滅菌剤を用いることができる。上記の薬剤はそれぞれ任意の割合で混合して使用可能である。洗浄温度は、任意の温度で実施可能であり、2℃〜50℃が好ましく、あまりに高い温度で行うと分離剤の分解を併発する恐れがある。また、凍結する温度では分離剤の破砕が起こり得る。なお、洗浄滅菌工程は、リガンドを固定化する後に実施してもよいが、高濃度のエタノールで洗浄するとリガンド活性が低下し、分離剤の性能に悪影響を及ぼす恐れがある。また、その他の薬剤での洗浄においてもリガンド固定化後に行うとリガンド劣化の問題があるので、リガンド固定化前に行い、その後は滅菌状態を維持した環境下で後工程を行うほうが好ましい。
前記架橋合成高分子からなる多孔性粒子をリガンドを共有結合で固定化する前に滅菌する方法としては、リガンドを固定化する以前の反応工程で滅菌状態にして、滅菌状態を維持したままリガンドの固定化工程へ移る方法も好ましく用いられる。リガンドを固定化する以前の反応工程としては、スペーサー導入の工程が挙げられ、その工程においてアルカリ触媒を使用するケースがあり、その反応液中のアルカリ濃度は0.1モル/Lから10モル/Lにもなることがあり、その反応液中で該多孔性粒子が滅菌される。その際に添加するアルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、また、炭酸ナトリウムや重曹のような物質も用いることが出来る。このスペーサー導入工程の反応時間は通常0.1〜100時間であり、好ましくは0.1〜5時間である。温度は凍結しない温度が好ましく、5℃〜200℃、好ましくは10℃〜50℃である。該工程で水酸化ナトリウムなどの水酸化物を用いる場合、水溶液もしくはアルコール溶液が好ましく、該水酸化物の溶解する液体が好ましい。該水酸化物を水溶液とする場合のアルカリ濃度の範囲は、0.1モル/Lから10モル/Lであり、より好ましくは0.5モル/Lから5モル/Lである。この範囲を超えると、該多孔性粒子の加水分解や劣化が起こることがある。
(2−3)後処理
また、上記のように固定化反応を行った後、多孔性粒子側に残存する反応性官能基は、後処理により不活性化しておくことが好ましい。不活性化せずに残った反応性官能基は、徐々にプロテインA等のリガンドの活性基と反応し、分離剤の吸着容量を低下させたり、選択率を悪化させたりする場合がある。
このような後処理としては、例えば反応性官能基としてエポキシ基を例に取れば、エタノールアミン等のアミン類の水溶液と反応させて不活性化する方法が例示できる。このときのエタノールアミンの濃度やpH等の処理条件は、特に制限されるものではないが、通常、濃度0.1〜5モル/L、pH7〜14の条件で実施することができる。この範囲の条件とすることで、エタノールアミンの反応速度が実用的な範囲となり、またプロテインAの失活も抑えられるので好ましい。さらに好ましい処理条件は濃度1〜2モル/L、pH8〜9の条件である。
リガンド固定化反応後の分離剤、または固定化反応に加えて後処理を加えた分離剤は、未反応物を除去するために水で洗浄するのが好ましい。洗浄に際しては、酸性の洗浄水と塩基性の洗浄水とを交互に用いて洗浄することがより好ましい。このとき、pH0〜5の緩衝液とpH8〜15の緩衝液との2種類を交互に用いて洗浄すると過剰のプロテインA等の除去と、固定化されたプロテインAの活性化を行うことができてさらに好ましい。
洗浄に使用することができる緩衝液としては、酸性緩衝液としては、塩酸/塩化カリウム、酒石酸、クエン酸、グリシン、ギ酸、酢酸、コハク酸、リン酸、またはそれらの塩が、塩基性緩衝液としては、トリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ジエタノールアミン、ホウ酸、アンモニア、炭酸、またはそれらの塩を含むものが使用できる。
使用する緩衝液のイオン強度は、0.001M〜10Mが好ましく、より好ましいイオン強度は0.01M〜2Mである。この範囲のイオン強度の緩衝液を使用すると、固定化されたプロテインAの失活を少なくすることができるので好ましい。また用いる緩衝液には、塩化ナトリウムや塩化カリウムのような塩を含有していてもよい。これらの塩が存在すると過剰のプロテインA等の除去と、固定化されたプロテインAの活性化を効果的に行うことができて好ましい。塩化ナトリウムや塩化カリウムの濃度は通常0.1〜2M、好ましくは0.5〜1Mである。
得られた分離剤は、そのまま使用する場合を除いて一時的に保管される。保管時の媒体としては、濃度1〜50重量%のエタノール水溶液を用いるのが好ましい。エタノールの濃度をこの範囲とすることで、固定化されたプロテインAの失活を少なくすることができる。
また、架橋構造を有する合成高分子の多孔性粒子を用いた上記分離剤を該保管媒体中で保管した時に、該分離剤の膨潤度が適切になり、かつ該分離剤に対する保管媒体への親和性が良好である。したがって細菌類の繁殖が抑制する効果や細孔内に固定されたプロテインAの保存安定性が良くなる効果が発現するので好ましい。より好ましいエタノールの濃度は10〜30重量%、さらに好ましい濃度は15〜25重量%である。
〔3.分離の対象物及び分離方法〕
本願発明の分離剤は、リガンドが、タンパク質、特に抗体にアフィニティ吸着性を有するため、タンパク質、特に抗体を標的分子としたアフィニティ分離剤として、これらの分離に好適に使用することができる。
標的分子の分離処理は、以下の工程(a)および工程(b)を含むように行うのが好ましい。すなわち、本発明の標的分子の分離方法は、以下の工程(a)および工程(b)を含む分離方法である。
(a)標的分子を含む溶液を上記の分離剤に接触させて、標的分子を分離剤に吸着させる工程
(b)前記標的分子を吸着した分離剤から該標的分子を溶離する工程
このような方法により、上記のような各種タンパク質を選択性良く分離することが可能である。
標的分子として、免疫グロブリンの少なくとも一部又はこれらの化学変性物が挙げられ、免疫グロブリンがモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体が好ましい。中でも、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部を含む融合タンパク質もしくはその化学変性物が、より好ましい標的分子である。
このような分離処理に際しては、上記の本発明の分離剤を充填材として含み、少なくとも1つの容器を備えた液体クロマトグラフィー用カラムが好ましく用いられる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
なお、略号としては、以下のものを用いた。
MIBC:4−メチル−2−ペンタノール
MIBK:4−メチル−2−ペンタノン
ADVN:2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)
MAIB:ジメチル=2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)
≪評価・評価方法≫
[測定・評価方法]
<細孔容積、細孔半径(最頻度半径)>
水湿潤状態の多孔性粒子を、減圧乾燥器で約10〜100mmHg下、50℃にて3〜24時間乾燥させ、得られた乾燥状態の多孔性粒子を用い、島津製作所製水銀ポロシメーターで試料の細孔容積、細孔半径(最頻度半径)を測定した。細孔容積、細孔半径をそれぞれ縦軸、横軸とした細孔の分布を示すヒストグラムにより、細孔容積の合計が最も多い部分の細孔半径を最頻度半径とした。なお、多孔性粒子の細孔物性はリガンドの固定の有無で有意に変化しないため、本発明の分離剤において、多孔性粒子の細孔容積、細孔半径(最頻度半径)と分離剤の細孔容積、細孔半径(最頻度半径)とは、同一とみなす。
<比表面積(Hg)>
水銀圧入法による比表面積は、水湿潤状態の多孔性粒子を、減圧乾燥器で約10〜100mmHg下、50℃にて3〜24時間乾燥させ、得られた乾燥状態の多孔性粒子を用い、島津製作所製水銀ポロシメーターにより0.06MPaから410MPaの範囲で測定を行った。圧力値と対応する侵入水銀体積とを用いて、円柱状と仮定した細孔の比表面積をWashburnの式に基づいて算出した。なお、多孔性粒子の細孔物性はリガンドの固定の有無で有意に変化しないため、本発明の分離剤において、多孔性粒子の比表面積と分離剤の比表面積とは、同一とみなす。
<比表面積(N2)>
窒素吸着法による比表面積は、水湿潤状態の多孔性粒子を、減圧乾燥器で約10〜100mmHg下、50℃にて3〜24時間乾燥させ、得られた乾燥状態の多孔性粒子を用い、比表面積計(島津製作所製 フローソーブ2300)により、該多孔性粒子の乾燥重量あたりの比表面積を測定した。なお、多孔性粒子の細孔物性はリガンドの固定の有無で有意に変化しないため、本発明の分離剤において、多孔性粒子の比表面積と分離剤の比表面積とは、同一とみなす。
<水分含有率>
直径3cmのガラスフィルター上に検体樹脂(多孔性粒子)を10g入れ、100mmHg以下の減圧条件で水を濾別しそのまま減圧を5分間継続した。得られたケーキを0.9g以上1.1g以下の範囲になるように精秤し、精秤したケーキを乾燥機で恒量まで乾燥させたときの減量(乾燥後の秤量値および乾燥前の秤量値)とから水分含有率を算出した。なお、多孔性粒子の細孔物性はリガンドの固定の有無で有意に変化しないため、本発明の分離剤において、多孔性粒子の水分含有量と分離剤の水分含有量とは、同一とみなす。
<SEC空孔率>
測定対象の検体樹脂(多孔性粒子)を内径1cm、長さ30cmのガラスカラムに充填し、LC装置で水を0.5mL/minで通液した。分子量分布500万〜4000万のデキストラン(シグマ製試薬)の0.1%水溶液、また、エチレングリコール(和光純薬)の1%水溶液を0.1mL、カラムに注入し、それぞれの溶出時間を測定した。それらの溶出時間から、下記式により空孔率を求め、パーセントに換算した。
(空孔率)=((エチレングリコール溶出体積)−(デキストラン溶出体積))/((カラム容積)−(デキストラン溶出体積))
なお、多孔性粒子の細孔物性はリガンドの固定の有無で有意に変化しないため、本発明の分離剤において、多孔性粒子のSEC空孔率と分離剤のSEC空孔率とは、同一とみなす。
<平均粒子径>
試料の平均粒子径は、水湿潤状態の多孔性粒子を分級した時に使用したふるい目の目開きで表示した。例えば、32μm目開きのふるいを用いて32μm以上の大きさの粒子を集め、その後53μm目開きのふるいを通し、結果として32μm以上53μm以下の粒子を得た。このときの平均粒子径を32−53μmと表示した。
<10%圧縮強度>
水湿潤状態の多孔性粒子を、減圧乾燥器で約10〜100mmHg下、50℃にて3〜24時間乾燥させ、得られた乾燥状態の分離剤を再度水に漬けて水湿潤状態にした後、島津微小圧縮試験装置(MCT−W500型)、圧子50μm板、負荷速度2.4mN/secで平均粒径30−60μmの粒子を選び、圧縮試験を行った。なお、多孔性粒子の細孔物性はリガンドの固定の有無で有意に変化しないため、本発明の分離剤において、多孔性粒子の10%圧縮強度と分離剤の10%圧縮強度とは、同一とみなす。
<湿潤状態見掛密度>
湿潤状態の多孔性粒子3〜5グラムを採取しその質量を記録し、これを定量的に水で25mL容量のメスシリンダーに流し込み、樹脂(多孔性粒子)面が落ち着いたところで樹脂(多孔性粒子)体積を読み取った。湿潤状態の多孔性粒子の質量を樹脂体積で割って、湿潤状態見掛密度を算出した。
なお、多孔性粒子の湿潤状態見掛密度はリガンドの固定の有無で有意に変化しないため、本発明の分離剤において、多孔性粒子の湿潤状態見掛密度と分離剤の湿潤状態見掛密度とは、同一とみなす。
<リガンド固定化密度>
リガンド固定化密度は、プロテインA等を水溶液として上記エポキシ基等の反応性官能基を有する多孔性粒子上に供給して反応を行わせる際に、反応前後の上澄み液のプロテインAの濃度をHPLCまたは吸光度法で定量することにより、決定した。
<SBC(静的結合容量)>
直径3cmのガラスフィルター上に検体樹脂(分離剤)を10g入れ、100mmHg以下の減圧条件で水を濾別しそのまま減圧を5分間継続した。得られた検体樹脂0.03mLを秤取し、2.5mg/mLのヒトガンマグロブリン溶液(和光純薬社製)を1.5mL加え、室温で3〜5時間振盪し、上澄み液を採取した。上澄液の280nm吸光度測定(UV−1800(島津製作所社製))により吸着前後のガンマグロブリン濃度を定量し、その差に基づいて分離剤へのガンマグロブリン静的結合容量(SBC)を算出した。
なお、SBCは26以上を合格とし、表中に○で示した。
<IgG吸着量>
得られた分離剤を水湿潤状態で1体積部をチューブに秤取した。これに50体積部のヒトガンマグロブリン水溶液(和光純薬試薬、もしくはグロブリン筋注を濃度2.5mg/mLに希釈したもの)を添加して室温で3〜5時間攪拌し、吸着前後の上澄み液の吸光度を測定することにより抗体吸着量を定量し、分離剤の体積あたりに換算した。
(実施例1)
[分離剤の調製]
<架橋合成高分子からなる多孔性粒子の形成(重合工程)>
ポリビニルアルコール(日本合成化学製)を溶解し2重量%とした水1000重量部中に、グリシジルメタクリレート(和光純薬製)50重量部、エチレングリコールジメタクリレート(和光純薬製)50重量部,2,2’―アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1重量部(和光純薬製)、及びトルエン(和光純薬製)150重量部の混合物を室温下で加え、撹拌して懸濁状態とした。このとき、撹拌速度を調整して液滴の平均直径が約50μmになるようにした。この懸濁液を70℃に昇温し、3時間反応させた。冷却後、得られた架橋合成高分子からなる多孔性粒子を水洗後、メタノール洗浄し、乾燥、分級して目的とする多孔性粒子を得た。この多孔性粒子の細孔物性(細孔半径、細孔容積、比表面積)を乾燥状態で測定した。また、得られた粒子を水湿潤状態にして、水分含有量、空孔率、平均粒径および湿潤状態見掛密度を測定した。
<スペーサーの導入>
この多孔性粒子を水湿潤状態とし、10%硫酸水溶液に浸漬して50℃5時間加熱し、開環中間体を得た。得られた開環中間体を、水湿潤状態で100重量部あたり、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(長瀬ケムテックス製)50重量部を加え、アルカリ触媒を添加して、該開環中間体の水酸基末端への付加反応を行い、末端基としてエポキシ基を持つスペーサーを有する多孔性粒子を調製した。
<プロテインAの固定化>
上記で得られたスペーサーを有する多孔性粒子を水湿潤状態で5重量部秤取し、これに5%プロテインA水溶液を樹脂1リットルあたり300グラム添加し、23℃で22時間反応させ、処理後の多孔性粒子を水で十分洗浄した。反応前後の上澄み液のプロテインAの濃度から、プロテインAの固定量を算出した。
次いで、プロテインAが固定化された多孔性粒子を、pH=9に調整した2−アミノエタノール水溶液(和光純薬製)を添加して1夜放置して、未反応エポキシ基の不活性化を行った。処理後の樹脂を十分に水洗し、実施例1の分離剤を得た。この分離剤について、SBC、リガンド固定化密度、IgG吸着量、分離処理の評価を行った。
実施例1の組成を表1、評価結果を表2にまとめて示す。なお、表2において、「−」表記部分は未測定である。
(実施例2〜9、比較例1〜3)
仕込み組成および重合工程でのポリビニルアルコールを溶解した水の量およびモノマーの合計量を表1のとおり、変更したのと、実施例9では5%プロテインA使用量を樹脂1リットルあたりで500グラムにした以外は、実施例1と同様にして、プロテインAが固定化された実施例2〜9及び比較例1〜3の分離剤を得た。
実施例2〜9及び比較例1〜3の分離剤の組成を表1、評価結果を表2にまとめて示す。なお、表2において、「−」表記部分は未測定である。
<分離処理>
得られた任意の分離剤を、水湿潤状態としてカラムの内容積の50%相当分(0.5体積部)充填した。これに濃度0.5mg/mLのマウスポリクローナルIgG抗体を含む抗体混合物の水溶液(20mMリン酸緩衝液、pH7)を10%破過点まで流通させた。その後カラムを純水で洗浄した後、0.1Mクエン酸水溶液(pH3)を通して溶離させた。
その結果、マウスポリクローナルIgG抗体のみを含む溶液を得ることができ、この抗体を分離精製することができることを確認した。
この結果より、本実施例及び比較例で得られた分離剤は、いずれも抗体の分離精製能を有することがわかる。
<分離剤の強度評価>
(実施例4、6、比較例1)
実施例4、6、比較例1と同じ仕込み組成で重合した架橋合成高分子からなる多孔性粒子を用いて、押し潰し強度を評価するため10%圧縮強度を測定した。5粒の平均の10%圧縮時の強度を10%圧縮強度とし、結果を表3に示す。
実施例4、6の10%圧縮強度は、比較例1と比べて良好な強度であったことから、本発明での分離剤が良好な強度であることが示された。
<市販樹脂の水銀圧入法細孔物性測定による強度評価、空孔率及び水分含量評価>
(参考例1)
市販の高水分含量プロテインA固定化樹脂であるバイオラッド社製UNOSphere−SUPRA(マクロ多孔質重合体ビーズ)をガラスフィルター上で水切りし、この水湿潤状態の分離剤を、減圧乾燥器で約10〜100mmHg下、50℃にて5時間乾燥させ、得られた乾燥状態の分離剤を用い、島津製作所製水銀ポロシメーターで試料の細孔容積、細孔半径(最頻度半径)を測定したが、24psia(約0.17MPa)で水銀圧入が終了し、樹脂の強度が低く細孔物性測定は出来なかった。
また、水分含有量測定のため、ガラスフィルター上に検体樹脂(分離剤)を10g入れ、100mmHg以下の減圧条件で水を濾別しそのまま減圧を5分間継続し、得られたケーを0.9g以上1.1g以下の範囲になるように精秤し、精秤したケーキを乾燥機で恒量まで乾燥させたときの減量とから水分含有率を算出したところ、78%であった。
結果を表3に示す。
(参考例2)
市販の高水分含量かつ高空孔率のアクリル系ポリマー母体のプロテインA固定化樹脂である東ソー社製AF−rProteinA−HC−650Fを用いて、参考例1と同様の方法で水銀法細孔物性測定を行なったが、991psia(約6.8MPa)で水銀圧入が終了し、樹脂の強度が低く細孔分布の測定は出来なかった。
一方、空孔率の測定のため、該樹脂を内径1cm、長さ30cmのガラスカラムに充填し、液体クロマトグラフ(LC)で水を0.5mL/minで通液し、分子量分布500万〜4000万のデキストラン試薬の0.1%水溶液、及びエチレングリコール試薬の1%水溶液を調製し、それぞれ0.1mLを前記ガラスカラムに注入し、それぞれの溶出時間を測定した。それらの溶出時間から、下記式により空孔率を求めたところ、84%であった。
(空孔率)=((エチレングリコール溶出体積)−(デキストラン溶出体積))/((カラム容積)−(デキストラン溶出体積))
また、水分含有量測定のため、ガラスフィルター上に検体樹脂(分離剤)を10g入れ、100mmHg以下の減圧条件で水を濾別しそのまま減圧を5分間継続し、得られたケーを0.9g以上1.1g以下の範囲になるように精秤し、精秤したケーキを乾燥機で恒量まで乾燥させたときの減量とから水分含有率を算出したところ、75%であった。
結果を表3に示す。
実施例1〜9の各サンプルについて参考例1と同様の方法で水銀法細孔物性測定を行なったところ約59,500psia(410MPa)まで水銀圧入が進行し細孔分布の測定が問題なく実施できた。このことから、本発明の分離剤が従来の分離剤と比較して高い強度を有することが示された。
<洗浄滅菌処理後の生菌数の評価>
グリシジルメタクリレートとエチレングリコールジメタクリレートとを懸濁重合して得た多孔質架橋共重合ポリマー(細孔容積1.2mL/g、細孔半径(最頻度半径)391Å、水銀法比表面積65m2/g)を反応器へ仕込み、湿潤状態で5%硫酸に浸漬し50℃、5時間反応させた。続いて、実施例と同様の方法でスペーサー導入工程を行い、その時の水酸化ナトリウム水溶液の濃度は1.3モル/L、温度は25℃、反応時間は1時間であった。スペーサー導入工程を通じて滅菌された多孔性粒子を1重量部秤取し、55体積%エタノール水溶液を振りかけ洗浄して滅菌した反応器に投入し、55体積%エタノール水溶液を3重量部添加し1時間撹拌した。撹拌した後、水溶液のみを減圧濾過で吸い出し、滅菌反応器内で滅菌された多孔性粒子層を得た。その滅菌雰囲気下でプロテインAの固定化を実施例1と同様に行い、プロテインAが固定化された分離剤を得た。そのスラリー液1体積部をとり、ソイビーン寒天培地20体積部を滅菌シャーレに入れ混合した後蓋をして30℃で5日放置後のコロニー数をカウント、そのカウント数から樹脂体積当たりの生菌数を算出したところ、生菌数はゼロであった。
本発明のタンパク質分離剤は特に抗体に対する高い選択率で分離・吸着性能を示し、かつ強度と耐久性に優れており、特に医薬・診断分野における実用上の価値は高い。

Claims (18)

  1. 架橋合成高分子からなる多孔性粒子と、前記多孔性粒子に共有結合で結合したアフィニティ吸着性を有するリガンドとを有する分離剤であって、
    前記架橋合成高分子からなる多孔性粒子が、官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位を2種以上含む重合体で構成され、
    水銀圧入法で測定される細孔容積が0.4mL/g以上1.5mL/g以下、
    水銀圧入法で測定される細孔半径(最頻度半径)が100Å以上1000Å以下、
    水銀圧入法で測定される比表面積が30m2/g以上200m2/g以下、かつ、下記の測定方法で測定される水分含有率が55重量%以上90重量%以下、であることを特徴とする分離剤。
    [水分含有率の測定方法]
    直径3cmのガラスフィルター上に検体樹脂(分離剤)を10g入れ、100mmHg以下の減圧条件で水を濾別しそのまま減圧を5分間継続する。得られたケーキを0.9g以上1.1g以下の範囲になるように精秤し、精秤したケーキを乾燥機で恒量まで乾燥させたときの減量とから水分含有率を算出する。
  2. 架橋合成高分子からなる多孔性粒子と、前記多孔性粒子に共有結合で結合したアフィニティ吸着性を有するリガンドとを有する分離剤であって、
    前記架橋合成高分子からなる多孔性粒子が、官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位を2種以上含む重合体で構成され、
    水銀圧入法で測定される細孔半径(最頻度半径)が100Å以上1000Å以下、
    水銀圧入法で測定される比表面積が30m2/g以上200m2/g以下、かつ、下記の測定方法で測定される水分含有率が55重量%以上90重量%以下、であることを特徴とする分離剤。
    [水分含有率の測定方法]
    直径3cmのガラスフィルター上に検体樹脂(分離剤)を10g入れ、100mmHg以下の減圧条件で水を濾別しそのまま減圧を5分間継続する。得られたケーキを0.9g以上1.1g以下の範囲になるように精秤し、精秤したケーキを乾燥機で恒量まで乾燥させたときの減量とから水分含有率を算出する。
  3. 下記の測定方法で測定される空孔率が70%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の分離剤。
    [空孔率の測定方法]
    測定対象の分離剤を内径1cm、長さ30cmのガラスカラムに充填し、液体クロマトグラフ(LC)で水を0.5mL/minで通液する。分子量分布500万〜4000万のデキストラン試薬の0.1%水溶液、及びエチレングリコール試薬の1%水溶液を調製し、それぞれ0.1mLを前記ガラスカラムに注入し、それぞれの溶出時間を測定する。それらの溶出時間から、下記式により空孔率を求める。
    (空孔率)=((エチレングリコール溶出体積)−(デキストラン溶出体積))/((カラム容積)−(デキストラン溶出体積))
  4. 平均粒子径が1μm以上1000μm以下、であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の分離剤。
  5. 前記多孔性粒子とリガンドとが直鎖のスペーサーを介して固定化されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の分離剤。
  6. 湿潤状態での見掛密度が500g/L以上1000g/L以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の分離剤。
  7. 前記官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位が、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位と、ビニル基を少なくとも2つ以上有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位とを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の分離剤。
  8. 分離剤1リットルあたりのリガンドの固定化密度が1gより大きいことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の分離剤。
  9. リガンドが、免疫グロブリンの一部と特異的に結合することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の分離剤。
  10. リガンドが、プロテインA、プロテインG、プロテインL、及びこれらの機能性変異体から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の分離剤。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の分離剤の製造方法であって、
    官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位を2種以上含む重合体で構成され、
    水銀圧入法で測定される細孔容積が0.4mL/g以上1.5mL/g以下、かつ、
    水銀圧入法で測定される細孔半径(最頻度半径)が100Å以上1000Å以下、
    である架橋合成高分子からなる多孔性粒子に、アフィニティ吸着性を有するリガンドを共有結合で固定化する工程を、有することを特徴とする分離剤の製造方法。
  12. 前記架橋合成高分子からなる多孔性粒子をマイナス20℃以上プラス60℃以下の温度で減圧乾燥し、乾燥状態で分級する工程を含むことを特徴とする請求項11に記載の分離剤の製造方法。
  13. リガンドを共有結合で固定化する前に、前記架橋合成高分子からなる多孔性粒子を40体積%以上98体積%以下のエタノール水溶液で洗浄滅菌し、滅菌状態を維持した容器内でリガンドの固定化工程を実施することを特徴とする請求項11または12に記載の分離剤の製造方法。
  14. 以下の工程(a)及び工程(b)を含むことを特徴とする標的分子の分離方法。
    (a)標的分子を含む溶液を請求項1〜10のいずれか1項に記載の分離剤に接触させて、標的分子を分離剤に吸着させる工程
    (b)請求項1〜10のいずれか1項に記載の分離剤から標的分子を溶離する工程
  15. 標的分子が、免疫グロブリンの少なくとも一部又はこれらの化学変性物であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
  16. 標的分子が、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体又はこれらの化学変性物であることを特徴とする請求項14または15に記載の方法。
  17. 標的分子が、免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部を含む融合タンパク質又はこれらの化学変性物であることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の分離剤を含み、少なくとも1つの容器を備えることを特徴とするクロマトグラフィー用カラム。
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