JP6910173B2 - ジチオカーボネート化合物およびこれを用いた樹脂組成物 - Google Patents

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本発明は、ジチオカーボネート化合物および樹脂組成物に関し、詳しくは、エポキシ樹脂に適用しても、エポキシ樹脂組成物の粘度が上昇しにくい新規なジチオカーボネート化合物およびこれを用いた樹脂組成物に関する。
エポキシ樹脂は、アミン類、カルボン酸類、フェノール類、メルカプタン類等と反応し、架橋剤として使用されており、塗料、注型材、接着剤、土木建築等、幅広い分野に使用されている。
一般的に、エポキシ樹脂を用いた樹脂組成物は、安価で接着力が高く、物性が良好な硬化物を得ることができるが、さらなる接着力や透明性、耐候性等の機能を付与するために、エポキシ樹脂と様々な材料を添加する技術が盛んに行われている。
例えば、特許文献1では、アクリル系のモノマーにビスフェノールA(BPA)型ジチオカーボネート化合物を併用することにより、屈折率、可視光透過率、鉛筆硬度が良好なハードコート剤が提供されている。この方法で使用されたBPA型ジチオカーボネート化合物の5員環であるジチオカーボネート環は、特許文献2のように、アミン等と反応し得る環であり、カーボネート結合、またはジチオカーボネート結合は、アクリル樹脂やチオウレタン化合物の硬化系中における、活性水素を有する水酸基やカルボキシル基等の官能基と水素結合をすることにより、硬化物の強度を向上させたり、基材との密着性を向上させたりする効果があることが知られている。
特開2014−162890号公報 特開平08−302010号公報
しかしながら、このBPA型ジチオカーボネート化合物は常温で固形の化合物である。また、一般的に広く使用されているBPA型エポキシ樹脂等は粘度が高いものであり、このようなエポキシ樹脂に、上記ジチオカーボネート化合物を適用した場合には、樹脂組成物の粘度が上がってしまい、作業性の面で満足のいくものではなかった。
そこで、本発明の目的は、エポキシ樹脂に適用しても、エポキシ樹脂組成物の粘度が上昇しにくい新規なジチオカーボネート化合物およびこれを用いた樹脂組成物を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、作業性や硬化性が良好でありながら、エポキシ樹脂組成物に透明性や接着性を付与するのに好適な、ポリシクロペンタジエン骨格を有するジチオカーボネート化合物を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のジチオカーボネート化合物は、下記一般式(1)、
Figure 0006910173
(一般式(1)においてRは水素原子またはメチル基を表し、nは0〜20の数を表す。)で表されることを特徴とするものである。
本発明のジチオカーボネート化合物においては、nは0または1であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、本発明のジチオカーボネート化合物と、エポキシ樹脂と、硬化剤と、を含むことを特徴とするものである。
本発明によれば、エポキシ樹脂に適用しても、エポキシ樹脂組成物の粘度が上昇しにくい新規なジチオカーボネート化合物およびこれを用いた樹脂組成物を提供することができる。本発明の効果は、ポリシクロペンタジエン骨格を有するジチオカーボネート化合物によるものであり、本発明のジチオカーボネート化合物を用いた樹脂組成物は、透明性が高く、接着性も良好でありながら、作業性、硬化性にも優れ、塗料、注型材、電気・電子部品の接着剤、繊維の表面処理剤等、広範囲の用途に使用することができる。
ジチオカーボネート化合物1のH−NMRを示す図である。
以下、本発明のジチオカーボネート化合物について詳細に説明する。
本発明のジチオカーボネート化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
Figure 0006910173
ここで、一般式(1)においてRは水素原子またはメチル基を表し、nは0〜20の数を表す。一般式(1)において、粘度がより低く、エポキシ樹脂との混和性が良好であるという点で、nは0または1であることが好ましく、nが0であることがより好ましい。
なお、本発明のジチオカーボネート化合物は、後述するポリシクロペンタジエン骨格含有ジオールの製造方法や反応条件によって、一般式(1)で表されるnの値が異なる化合物が混合した組成物が得られる。本発明においては、単品であっても混合物であってもよいが、nの値が大きい化合物は粘度が高くなり、作業性において問題が生じることもあるので、本発明においては、nの値が0の化合物の質量が、ジチオカーボネート化合物の混合物の総量に対して、95質量%以上であることが好ましい。
一般式(1)において、硬化剤との反応性が良好であり、均一に硬化できるということと、原料の入手が容易であるという観点から、Rは水素原子であることが好ましい。
本発明のジチオカーボネート化合物の製造方法については、特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(2)で表される反応により得ることができる。
Figure 0006910173
一般式(2)においてRは水素原子またはメチル基を表し、nは0〜20の数を表す。
すなわち、ポリシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ化合物に、二硫化炭素を、触媒および必要に応じて溶媒を併用して、例えば、0〜150℃にて、1〜50時間反応させることにより得ることができる。
上記触媒としては、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等のアルカリ金属塩;塩化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム等のアルカリ土類金属塩;リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等のアンモニウム塩;トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第三級アミン類;ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロオクタンおよびピリジン等の環状アミン類;テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の四級アンモニウム塩類;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩類;酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸銅、酢酸鉄等の金属酢酸塩類;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物;テトラブチルホスホニウムクロリド等のホスホニウム塩類;テトラブチル錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫オクトエート等のルイス酸等が挙げられる。これらの中でも、反応性が良好であるという点で、アルカリ金属塩が好ましく、臭化リチウムが特に好ましい。
上記触媒の使用量としては、反応性と触媒を使用するコストとのバランスの観点から、ポリシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ化合物中のエポキシ基数1当量に対して、0.01〜1当量であることが好ましく、0.02〜0.1当量であることがより好ましい。
上記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒等が挙げられる。これらの中でも、原料の溶解性と反応性が良好であるという点から、エーテル系溶媒が好ましく、テトラヒドロフランが特に好ましい。
上記溶媒の使用量としては、反応性と生産効率とのバランスの観点から、ポリシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ化合物100質量部に対して、10〜2000質量部であることが好ましく、100〜1000質量部であることが好ましい。
上記二硫化炭素の使用量としては、対応するポリシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ化合物のエポキシ基数1当量に対して、1〜10当量であることが好ましく、1.1〜5当量であることがより好ましく、1.2〜2当量であることが更に好ましい。
上記ポリシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ化合物は、ポリシクロペンタジエン骨格含有ジオールに過剰のエピクロルヒドリン、またはメチルエピクロルヒドリンに溶解した後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下に、必要に応じてテトラアルキルアンモニウム塩のような触媒を用いて、20〜150℃、好ましくは30〜80℃の範囲で1〜10時間反応させる方法が挙げられる。この際のアルカリ金属水酸化物の使用量は、ポリシクロペンタジエン骨格含有ジオールの水酸基1当量に対して、0.8〜1.5当量、好ましくは0.9〜1.2当量の範囲である。また、エピクロルヒドリン、またはメチルエピクロルヒドリンの使用量は、ポリシクロペンタジエン骨格含有ジオールの水酸基1当量に対し、1.5〜30当量、好ましくは2〜15当量である。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリン、またはメチルエピクロルヒドリンを留去し、濾過工程により無機塩を除去し、ポリシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ化合物を得ることができる。
上記ポリシクロペンタジエン骨格含有ジオールは、特表2013−525567号公報等に記載の公知の方法で得ることができる。すなわち、シクロペンタジエンをDiels−Alder反応により、反応させた後、ヒドロホルミル化、還元反応を経て製造することができる。
ポリシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ化合物のうち、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ化合物は、市販のものを用いることができ、例えば、アデカレジンEP−4088S、アデカレジンEP−4088L(何れも(株)ADEKA製)を挙げることができる。
本発明のジチオカーボネート化合物は、25℃で粘調の液状化合物である。従って、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等と混合した場合に、容易に混合することができ、作業性の面で好適な化合物である。
本発明のジチオカーボネート化合物は、エポキシ樹脂、硬化剤と組み合わせて配合することにより、エポキシ樹脂組成物を得ることができる。得られたエポキシ樹脂組成物は、常温、若しくは加熱硬化させることにより、透明性が高く、基材に対する密着性が良好な硬化物を得ることができる。
上記エポキシ樹脂としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の多核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、ジシクロペンタジエンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシルプロパン(水素化ビスフェノールA)、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族または脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類およびグリシジルメタクリレートの単独重合体または共重合体;N,N−ジグリシジルアニリン、ビス(4−(N−メチル−N−グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン、N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)−4−(2,3−エポキシプロポキシ)−2−メチルアニリン、N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)−4−(2,3−エポキシプロポキシ)アニリン、N,N,N’,N’−テトラ(2,3−エポキシプロピル)−4,4’−ジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物があげられる。また、これらのエポキシ樹脂は末端イソシアネートのプレポリマーによって内部架橋されたもの、あるいは多価の活性水素化合物(多価フェノール、ポリアミン、カルボニル基含有化合物、ポリリン酸エステル等)で高分子量化したものでもよい。これらのエポキシ樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂類、ポリアミン類、潜在性硬化剤、および酸無水物類が挙げられる。
上記フェノール樹脂類としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリスフェニロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮合ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮合ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(フェノール骨格、トリアジン環および1級アミノ基を分子構造中に有する化合物)、およびアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核およびアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
上記ポリアミン類としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジイソプロピルアミノエチルアミン、N,N−ジアリルアミノエチルアミン、N,N−ベンジルメチルアミノエチルアミン、N,N−ジベンジルアミノエチルアミン、N,N−シクロヘキシルメチルアミノエチルアミン、N,N−ジシクロヘキシルアミノエチルアミン、N−(2−アミノエチル)ピロリジン、N−(2−アミノエチル)ピペリジン、N−(2−アミノエチル)モルホリン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)−N’−メチルピペラジン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジイソプロピルアミノプロピルアミン、N,N−ジアリルアミノプロピルアミン、N,N−ベンジルメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジベンジルアミノプロピルアミン、N,N−シクロヘキシルメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジシクロヘキシルアミノプロピルアミン、N−(3−アミノプロピル)ピロリジン、N−(3−アミノプロピル)ピペリジン、N−(3−アミノプロピル)モルホリン、N−(3−アミノプロピル)ピペラジン、N−(3−アミノプロピル)−N’−メチルピペリジン等の、3級アミンと1級アミンおよび/または2級アミンを有するアミン化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン等の脂肪族ポリアミン;イソホロンジアミン、メンセンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン等の脂環式ポリアミン;m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、トリレン−2,4−ジアミン、トリレン−2,6−ジアミン、メシチレン−2,4−ジアミン、メシチレン−2,6−ジアミン、3,5−ジエチルトリレン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトリレン−2,6−ジアミン等の単核ポリアミン;ビフェニレンジアミン、4,4−ジアミノジフェニルメタン、2,5−ナフチレンジアミン、2,6−ナフチレンジアミン等の芳香族ポリアミン;2−アミノプロピルイミダゾール等のイミダゾール等が挙げられる。
上記潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド型、イミダゾール型、ポリアミン型化合物等の、室温でエポキシ樹脂と混合した時に、混合物の粘度変化や物性変化が小さい潜在性硬化剤が挙げられる。
上記酸無水物類としては、無水ハイミック酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水メチルハイミック酸、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸−無水マレイン酸付加物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、および水素化メチルナジック酸無水物等が挙げられる。
これらの硬化剤の中では、カーボネート環、ジチオカーボネート環との反応性が良好であるという点で、ポリアミン類が好ましい。
本発明のジチオカーボネート化合物は、上記ポリアミンと反応させることにより、チオウレタン結合を有するポリチオウレタン樹脂を得ることができる。ポリチオウレタン樹脂は、光学特性や基材に対する密着性に優れたものである。一般的にポリチオウレタン樹脂は、分子内にメルカプト基を少なくとも2つ有するポリチオール類と、トリレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネート類と反応させることにより得ることができる。しかしながら、ポリイソシアネート類は、その蒸気を吸入したり、皮膚に接触させたりする場合等に、人体に悪影響を及ぼす可能性のある、毒性の高い化合物もあることで知られている。本発明のジチオカーボネート化合物を用いたポリチオウレタン樹脂は、毒性の高いポリイソシアネート類を使用せずに得ることができるため、人体、環境面においても好適な材料であると言える。さらに本発明のジチオカーボネート化合物は液状であるため、ポリアミン類と容易に混合、反応させることができ、作業性の面でも良好な材料である。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例等において%は、特に記載が無い限り質量基準である。
[実施例1]
<ジチオカーボネート化合物の合成>
撹拌子を備えた500mLナスフラスコに、アデカレジンEP−4088L(ジシクロペンタジエンジメタノールのエポキシ化物、エポキシ当量:165g/eq.、(株)ADEKA製)を37.3g、無水テトラヒドロフランを250mL、臭化リチウムを1.5g(0.017mol)加え、25℃にて撹拌を行い、均一に溶解させた。その後、二硫化炭素を21mL(0.348mol)添加し、25℃にて24時間反応させた。反応後、溶媒を減圧除去し、トルエンを150mL、飽和食塩水を100mL加えて分液抽出を3回繰り返した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過、溶媒を減圧除去し、粘調黄色のジチオカーボネート化合物1(一般式(1)において、Rが水素原子、nが0の化合物)を得ることができた。
得られたジチオカーボネート化合物1をH−NMR(測定装置:JNM EX−400、日本電子(株)製、測定溶媒:重クロロホルム)で測定を行った。図1にジチオカーボネート化合物1のH−NMRを示す。
[実施例2]
<樹脂組成物1の調製>
500mLのディスポカップに、アデカレジンEP−4100E(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、(株)ADEKA製、エポキシ当量:190g/eq.)を100g、ジチオカーボネート化合物1を32g、ジェファーミン(登録商標)D−230(ポリエーテル型ポリアミン、ハンツマン製)を47g加え、スパチュラにて25℃、5分間撹拌を行い、樹脂組成物1を得た。樹脂組成物1の粘度は、E型粘度計で測定したところ、25℃で20,700mPa・sであった。
樹脂組成物1の硬化性を調べるために、示差走査熱量測定用のパンに、樹脂組成物1を5mg測量し、示差走査熱量計(DSC6220ASD−2、セイコーインスツル(株)製)により、10℃/分の昇温条件で加熱させ、発熱のピークトップ温度を測定した。結果を表1に示す。
[比較例1]
<樹脂組成物2の調製>
500mLのディスポカップに、アデカレジンEP−4100Eを100g、ジェファーミン(登録商標)D−230を32g加え、スパチュラにて25℃、5分間撹拌を行い、樹脂組成物2を得た。樹脂組成物2の粘度は、E型粘度計で測定したところ、25℃で580mPa・sであった。得られた樹脂組成物2を、樹脂組成物1と同様に発熱のピークトップ温度を測定した。結果を表1に示す。
[比較例2]
<樹脂組成物3の調製>
500mLのディスポカップに、アデカレジンEP−4100Eを100g、下記式(3)で示されるBPA型ジチオカーボネート化合物を32g、ジェファーミン(登録商標)D−230を47g加え、スパチュラで、25℃にて、樹脂組成物3が均一になるように撹拌を行おうとしたが、BPA型ジチオカーボネート化合物が固形であることもあり、混合が困難であり、結果として、BPA型ジチオカーボネート化合物を溶解させることができなかった。
Figure 0006910173
Figure 0006910173
本発明のジチオカーボネート化合物を用いた樹脂組成物1(実施例2)は、本発明のジチオカーボネート化合物を用いない樹脂組成物2(比較例1)と比べると、ピークトップ温度が低く、より低い温度で硬化反応が進行していることがわかった。

Claims (3)

  1. 下記一般式(1)、
    Figure 0006910173
    (一般式(1)においてRは水素原子またはメチル基を表し、nは0〜20の数を表す。)で表されることを特徴とするジチオカーボネート化合物。
  2. nが0または1である請求項1記載のジチオカーボネート化合物。
  3. 請求項1または2に記載のジチオカーボネート化合物と、エポキシ樹脂と、硬化剤と、を含むことを特徴とする樹脂組成物。
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