JP6909456B2 - 意匠部材の取付け構造 - Google Patents
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Description
図1の乗物用シート2は、乗物室内に配置される乗物内装品であり、シートクッション4と、シートバック6と、ヘッドレスト8を有する。これらシート構成部材は、各々、シート骨格をなすシートフレーム(4F,6F,8F)と、シート外形をなすシートパッド(4P,6P,8P)と、シートパッドを被覆するシートカバー(4S,6S,8S)を有する。そしてシートクッション4の後部には、シートバック6の下部が起倒可能に連結されているとともに、起立状態のシートバック6の上部には、ヘッドレスト8が配設されている。
各シートカバー4S,6S,8Sは、図1を参照して、それぞれシートの意匠面を構成する面材であり、複数の表皮ピースを縫合して構成されている。そして各シートカバー4S,6S,8Sの適所には、各々、隣り合う表皮ピースを縫い合わせることで形成されている縫目SEW1〜SEW4が設けられており、これら各縫目から対応する意匠部材10A〜10Dが露出している(意匠部材の詳細は後述)。例えばシートバック6では、左側の天板サイド部6bとカマチ部6cの間に設けた縫目SEW1から意匠部材10Aが露出している。また右側の天板サイド部6bとカマチ部6cの間に設けた縫目SEW2からも意匠部材10Bが露出している。またシートクッション4では、左側の天板サイド部4bとカマチ部4cの間に設けた縫目SEW3から意匠部材10Cが露出している。また右側の天板サイド部4bとカマチ部4cの間に設けた縫目SEW4からも意匠部材10Dが露出している。
縫目SEW1は、図1及び図2を参照して、一対の表皮ピース(第一表皮ピースSP1,第二表皮ピースSP2)の縫い合わせ部分であり、シート上下方向に線状に延びている。第一表皮ピースSP1は、左側の天板サイド部6bを構成する縦長とされた略矩形の表皮ピースであり、その左縁には、図2に示すように第一縫い代部31が設けられている。また第二表皮ピースSP2は、左側のカマチ部6cを構成する縦長とされた略矩形の表皮ピースであり、その右縁には、図2に示すように第二縫い代部32が形成されている。そして第一縫い代部31と第二縫い代部32が、本発明の「縫目において縫い合わせられている表皮部分」に相当する。なお各表皮ピースの素材は特に限定しないが、典型的には布帛(織物,編物,不織布)や皮革(天然皮革,合成皮革)で構成できる。
意匠部材10Aは、図1を参照して、縫目SEW1の延びている方向に長尺とされた帯状の部材であり、図2を参照して、露出部11と介装部12を有している(各部の構成は後述)。そして本実施例の意匠部材10Aは、露出部11と介装部12を一体で有する可撓性を備えた押出成形品である。ここで意匠部材10Aの素材は、適度な可撓性を有している素材であればよく、後述する介装部12においてミシン針(図示省略)を刺通し可能な素材であることが望ましい。この種の素材として、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン系樹脂を例示でき、なかでも車両を想定した場合に好適な耐熱性を備えたポリウレタン樹脂が素材として望ましい。
露出部11は、図2を参照して、実質的に意匠部材10Aの意匠性に寄与する部位であり、意匠部材10Aの固定状態においては縫目SEW1から意匠面側に露出している。この露出部11(本体)は、縫目SEW1に沿って配置されている筒状の部位であり、図3を参照して、横断面視においては径寸法L1の略円形状をなしている。そして露出部11の表面は、押出時にかかるせん断力によって、微細な凹凸が生じるなどして粗くなりがちである。そこで本実施例では、見栄え向上の観点から、図2に示すようにアンダーコート層14aと意匠部14bとトップコート層14cとをこの順で露出部11に設けている。
アンダーコート層14aは、図2及び図3を参照して、適度な可撓性を備えた樹脂層であり、露出部11を覆うように設けることができる。この種のアンダーコート層14aの素材として、可撓性に優れている樹脂を例示でき、例えば(メタ)アクリル樹脂とポリイソシアネート化合物とを反応させてなるウレタン(メタ)アクリレートを例示できる。そしてアンダーコート層14aの表面は、押出成形された露出部11の表面に比して凹凸の少ない滑らかな面とされている。ここでアンダーコート層14aや露出部11の表面の滑らかさ(又は粗さ)の程度は、例えば「JIS B 0601」に準拠して測定される算術平均粗さRaで規定できる。そしてアンダーコート層14aの表面の算術平均粗さRaは、露出部11(特に一般的な手法で押出成形された工業製品としての露出部)の表面の算術平均粗さRa未満に設定され、例えば100nm以下に設定できる。このようにアンダーコート層14aの表面の算術平均粗さRaを100nm以下に設定することで、後述するように意匠部材10Aがより確実に所望の金属調の外観を呈することとなる。
意匠層14bは、図2及び図4を参照して、露出部11の見栄えを向上させる金属蒸着層であり、アンダーコート層14a上に設けることができる。この種の金属蒸着層に用いられる金属として、インジウム、金、銀、銅、白金、アルミニウム、パラジウム、ロジウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、錫などの金属(これらの合金及び金属酸化物を含む)を例示できる。なかでも相対的に軟らかいインジウム(In)は、意匠層14bに適度な可撓性を持たせることができるため、意匠層14bに含ませる金属として好ましい。ここでインジウムとして、インジウムを単独で用いる場合のほか、酸化インジウム、錫やガリムウなどの他金属との合金(インジウム合金)を用いることができる。
そして金属蒸着層である意匠層14bの形成手法として、真空蒸着やスパッタリングなどの物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)を例示できる。例えば図4を参照して、真空蒸着などの物理蒸着によってインジウムを気化させて図3に示すアンダーコート層14aに付着させることで、比較的薄く柔らかい金属蒸着層としての意匠層14bを形成することができる。そして相対的に凹凸の少ない滑らかな表面を備えたアンダーコート層14aに金属蒸着層である意匠層14bを設けることにより、意匠部材10Aが所望の金属調の外観を呈する(例えば金属光沢が付与される)こととなる。ここで意匠層14bとしての金属蒸着層の厚さは特に限定しないが、典型的には0.1nm〜1000nmであり、好ましくは1nm〜500nmの厚さであり、さらに好ましくは10nm〜100nmの厚さである。
トップコート層14cは、図2を参照して、適度な可撓性を備えた層であり、意匠層14bを覆うようにシートカバー6Sに設けることができる。このトップコート層14cは、光透過性を備えた透明又は半透明の層であり、このトップコート層14cを通して意匠層14bの存在を目視で確認できる。この種のトップコート層14cの素材として、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン系樹脂を例示できる。なかでも好適な耐熱性を備えて黄変しにくいポリウレタン樹脂や、強度に優れて破断しにくいアクリル樹脂がトップコート層14cの素材として望ましく、特にアンダーコート層14aと同種のウレタン(メタ)アクリレートを好適に用いることができる。またトップコート層14cの素材として、擦傷や打痕傷などの傷を受けにくく、さらに打痕傷が自然に修復される自己修復性能を備えた素材を用いることが好ましい。この種の自己修復性能を備えた素材として、アクリル系やウレタン系の架橋構造を有する樹脂を例示でき、この種の素材では、素材自身の復元力により、打痕傷によってできた凹みが自然に元にもどりやすいことが知られている。そしてトップコート層14cの形成手法として、アンダーコート層14aの形成手法で例示の手法を例示でき、さらにトップコート層用組成物として、ナトコ社製の商品名:自己治癒(登録商標)クリアーNo.100を用いることができる。
介装部12は、図2を参照して、実質的に意匠部材10Aの意匠性に寄与しない部位である。この介装部12は、露出部11に一体化された略矩形の平板状の部位であり、意匠部材10Aの固定状態においては、縫目SEW1に介装されて固定されている。そして図3を参照して、介装部12の厚み寸法L2は、介装部12の素材を考慮してミシン針を刺通し可能であれば特に限定しない。本実施例においては、介装部12の露出を極力抑える観点から、介装部12の厚み寸法L2を露出部11の径寸法L1よりも小さく設定している。また介装部12においては、アンダーコート層14aと意匠層14bとトップコート層14cを設けてもよく設けなくともよい。例えば図2を参照して、各層14a〜14cを露出部11に隣接する介装部12の一部にのみ設けることで、後述する表皮部分に対する介装部12の縫着箇所となるインステッチ部40の形成箇所を露出させておく。こうすることでインステッチ部40の形成に伴う各層14a〜14cの破損(例えばインステッチ部からの張引による層同士の剥離)を好適に回避することができる。なお介装部12の長手方向には、自由端から露出部11側に延びる切欠き部(図示省略)が適宜の間隔で複数設けられており、これら各切欠き部によって介装部12の曲がり変形を助長することができる。
図2を参照して、シートカバー6Sの形成に際して、第一表皮ピースSP1の第一縫い代部31と第二表皮ピースSP2の第二縫い代部32をインステッチ部40で縫い合わせる。そしてこれら両縫い代部31,32の縫い合わせ箇所である縫目SEW1を形成するとともに、この縫目SEW1に意匠部材10Aを介装して固定する。このとき本実施例では、意匠部材10Aを、縫目SEW1において縫い合わせられている第一縫い代部31と第二縫い代部32に介装部12だけを縫付けることによって、シートカバー6Sに固定することができる。すなわち第一表皮ピースSP1と第二表皮ピースSP2を縫い合わせるに際して、第一縫い代部31と第二縫い代部32の間に予め介装部12を介装しておく。この状態で第一縫い代部31と第二縫い代部32をインステッチ部40で縫い合わせることにより、介装部12が、インステッチ部40によって両縫い代部31,32に共縫いされて縫付けられる。こうして両縫い代部31,32に、インステッチ部40を利用して介装部12を縫付けることで、意匠部材10Aを固定するための部材を別に設ける必要がないため、部品点数の削減に資する構成とされている。そして第一表皮ピースSP1と第二表皮ピースSP2を、インステッチ部40を基点として面状に広げることでシートカバー6Sを形成し、両表皮ピースSP1,SP2の間に設けられた縫目SEW1から露出部11を突出させておく。
そして図1を参照して、各シートカバー4S,6S,8Sを、対応するシートパッドに被せることで、各シートカバー4S,6S,8Sにてシートの意匠面が構成される。そして各意匠部材10A〜10Dが、人目につきやすいシートカバー部分に配置される。このとき図2を参照して、露出部11のアンダーコート層14a上に金属蒸着層である意匠層14bが設けられており、この意匠層14bの存在が、トップコート層14cを通して目視で確認できるため、意匠部材10A等の意匠性がより向上している。そしてアンダーコート層14aの滑らかな表面に金属蒸着層である意匠層14bを設けることにより、意匠部材10A等が所望の金属調の外観を呈する(例えば金属光沢が付与される)こととなる。さらにトップコート層14cによって意匠層14bが保護されているため、乗員の着座動作や乗降動作時などにおいて乗員との摩擦によって意匠層14bが剥離することが防止又は低減されている。
実施例2では、実施例1の構成部材とほぼ同一の基本構成を備える構成については、対応する符号を付す等して詳細な説明を省略する。本実施例では、図5を参照して、相対的に短尺な各意匠部材20A〜20Eを用いている点が実施例1と異なっている。そして各シートカバー4S,6S,8Sの適所には、各々、隣り合う表皮ピースを縫い合わせることで形成されている縫目SEW1〜SEW6が設けられており、これら各縫目の一部から対応する意匠部材20A〜20Eが露出している(図5では、便宜上、縫目SEW3の図示を省略する)。
4 シートクッション
6 シートバック
8 ヘッドレスト
4S,6S,8S シートカバー(本発明の表皮)
4a,6a 天板メイン部
4b,6b 天板サイド部
4c,6c カマチ部
10A〜10D 意匠部材
11 露出部
12 介装部
14a アンダーコート層
14b 意匠層
14c トップコート層
20A〜20E 実施例2の意匠部材
21 露出部
22 介装部
31 第一縫い代部(本発明の縫目において縫い合わせられている表皮部分)
32 第二縫い代部(本発明の縫目において縫い合わせられている表皮部分)
SP1 第一表皮ピース
SP2 第二表皮ピース
SEW1〜SEW6 縫目
Claims (3)
- シート幅方向における中央部分をなす天板メイン部と、前記天板メイン部のシート幅方向の側方に位置する天板サイド部と、シート側面をなすカマチ部とを備えた乗物用シートの意匠面を構成する表皮から露出可能な露出部と、前記露出部に一体化されている介装部とを有し、前記介装部が、前記表皮の縫い合わせ部分である縫目に介装されて固定されている状態で、前記露出部の少なくとも一部が前記縫目から意匠面側に露出可能である意匠部材の取付け構造において、
前記露出部に、アンダーコート層と、金属蒸着層である意匠層と、トップコート層がこの順で積層状態とされて設けられており、
前記アンダーコート層の表面が、前記露出部の表面に比して凹凸の少ない滑らかな面であるとともに、前記意匠層の存在が前記トップコート層を通して目視で確認可能であって、前記露出部と前記アンダーコート層と前記トップコート層がウレタン結合を有する樹脂を含んで構成されており、
前記意匠部材が、前記天板メイン部と、前記天板メイン部と前記天板サイド部の間と、前記天板サイド部と前記カマチ部の間との少なくとも一つの箇所に取付けられる意匠部材の取付け構造。 - 前記意匠層が、インジウムを含んでいる請求項1に記載の意匠部材の取付け構造。
- 前記介装部が、前記縫目において縫い合わせられている表皮部分に縫付け可能とされている請求項1又は2に記載の意匠部材の取付け構造。
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