JP6690972B2 - 玉縁及び玉縁を備えた乗物内装品 - Google Patents
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Description
図1の乗物用シート2は、乗物室内に配置される乗物内装品であり、シートクッション4と、シートバック6と、ヘッドレスト8を有する。これらシート構成部材は、各々、シート骨格をなすシートフレーム(4F,6F,8F)と、シート外形をなすシートパッド(4P,6P,8P)と、シートパッドを被覆するシートカバー(4S,6S,8S)を有する。そしてシートクッション4の後部には、シートバック6(詳細後述)の下部が起倒可能に連結されているとともに、起立状態のシートバック6の上部には、ヘッドレスト8が配設されている。
シートバック6においては、シートパッド6Pが、枠状のシートフレーム6F(図示省略)上に配置されてシートカバー6Sで被覆されている。ここでシートパッド6Pは、シート外形をなす正面視で略矩形の部材であり、ポリウレタンフォーム(密度:10kg/m3〜60kg/m3)等の発泡樹脂で形成できる。このシートパッド6Pには、図1を参照して、シート幅方向における中央に、相対的に凹み状とされた天板メイン部6aが形成されている。また天板メイン部6aの左方と右方には、各々、相対的に着座側に突出する天板サイド部6bと、シート側面を形成するカマチ部6cが形成されている。
またシートカバー6Sは、本発明の表皮に相当する面材であり、図1を参照して、複数の表皮ピース(第一表皮ピースSP1〜第六表皮ピースSP6)を袋状に縫合することで形成されている。第一表皮ピースSP1と第二表皮ピースSP2は天板メイン部6aを被覆する表皮ピースである。また第三表皮ピースSP3は、左側の天板サイド部6bを被覆する表皮ピースであり、第四表皮ピースSP4は、左側のカマチ部6cを被覆する表皮ピースである。また第五表皮ピースSP5は、右側の天板サイド部6bを被覆する表皮ピースであり、第六表皮ピースSP6は、右側のカマチ部6cを被覆する表皮ピースである。なおシートカバー6Sの裏面にも図示しない表皮ピースが設けられている。また天板メイン部6a及び天板サイド部6b(着座面)を覆う各表皮ピースの裏面には、図2を参照して、ポリウレタンラミなどのパッド材6SPを適宜取付けることができる。
本実施形態においては、一対の玉縁10A,10Bが略同一の基本構成を有することから、以下に、左側の玉縁10Aを一例にその詳細を説明する。この玉縁10Aは、玉縁部10aを備えている。玉縁部10aは、図2及び図3を参照して、可撓性を備えた断面略円形の線状部材であり、脚部11と、後述する芯材12を有し、さらに着色領域A1と無着色領域A2に区分けされている。脚部11は、玉縁部10aから突出する平板状の部位であり、図3を参照して、玉縁部10aの延長方向に沿って一体的に設けられている。そして脚部11の延長方向には、自由端から玉縁部10a側に延びる切欠き部11aが適宜の間隔で複数設けられており、これら各切欠き部11aによって脚部11の曲がり変形を助長することができる。なお脚部11の厚み寸法は、玉縁部10aの直径よりも小さくされており、図2を参照して、シートカバー6Sに玉縁10Aが取付けられた状態では、意匠面から突出する玉縁部10aにて脚部11が隠されるように配置されている。
芯材12は、図3及び図4を参照して、玉縁部10aの延長方向に長尺な線状の部材であり、玉縁部10aの無着色領域A2に埋設状に一体化されている。そしてシートカバー6Sに玉縁10Aが取付けられた状態においては、図2を参照して、この芯材12の前側から左右両側にかけての部分が無着色領域A2で覆われており、無着色領域A2を通じて芯材12の存在を目視で確認可能である。ここで玉縁部10aと芯材12の一体化の手法は特に限定しないが、例えば芯材12を、押出成形された直後の玉縁部10aで包みこむことにより、これらを一体化することができる。そして芯材12は、後述するカバリング材と片撚材と諸撚材のいずれかで構成することができ、本実施形態においては、図4に示す諸撚材20にて芯材12が構成されている。この諸撚材20は、後述するように、図4に示すように複数の片撚材22a〜22cで構成されており、さらに個々の片撚材22a〜22cは、図5に示すように複数のカバリング材24a〜24eで構成されている。
諸撚材20は、図4を参照して、後述する複数の片撚材22a〜22cが撚り合わされた状態とされている線材である。この諸撚材20は、撚り構造の安定化の観点から、後述する各片撚材22a〜22cとは逆向きの撚りが施されていることが好ましく、例えば複数のS撚された各片撚材22a〜22cをZ撚することで形成でき、また逆に複数のZ撚された各片撚材22a〜22cをS撚することで形成できる。ここで諸撚材20における片撚材同士の撚り回数(撚数)は特に限定しない。また諸撚材20中の片撚材の数は特に限定しないが、片撚材の数が3以上であると、玉縁部10aをどの角度から見ても諸撚材20が似通った外観を呈するため、玉縁部10aの見栄えが向上することとなる。さらに片撚材を増やして充填率を高めることで諸撚材20の撚り構造が安定するため、構造安定化の観点からも片撚材の数が3以上であることが望ましい。
本実施形態においては、各片撚材22a〜22cが略同一の基本構成を有することから、図5を参照して、特定の片撚材22aを例にその詳細を説明する。この片撚材22aは、後述する複数のカバリング材24a〜24eが一方向に撚り合わされた状態とされている線材であり、カバリング材同士の撚り方向はS撚りでもよくZ撚りでもよい。なお片撚材22aの撚り方向は、撚り構造の安定化の観点から、後述するカバリング材24a〜24eの鞘部25bの撚り方向とは逆の撚り方向であることが好ましい。また片撚材22aにおけるカバリング材同士の撚り回数は特に限定しない。また片撚材22a中のカバリング材の数は特に限定しないが、カバリング材を増やして充填率を高めることで片撚材22aの撚り構造が安定するため、カバリング材の数が3以上であることが望ましく5以上であることが更に望ましい。
本実施形態においては、各カバリング材24a〜24eが略同一の基本構成を有することから、図6を参照して、特定のカバリング材24aを例にその詳細を説明する。このカバリング材24aは、諸撚材20の最小単位となる線材であり、玉縁部10aの延長する方向に長尺な芯部25aと、芯部25aの周りに配置される鞘部25bを有している。ここで芯部25aの素材は特に限定しないが、植物系又は動物系の天然繊維製の糸材、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる合成繊維製の糸材、金属や各樹脂からなるワイヤ材やケーブル材を例示でき、これら糸材等を複数又は単数用いることができる。さらに芯部25aとして、蓄光材の混入された糸材や、光ファイバなどの発光可能なケーブル材を使用することで、カバリング材24a自体を発光させる構成とすることができる。そして芯部25aの断面形状は、鞘部25bを巻装可能である限り特に限定しないが、典型的には鞘部25bに比べて扁平性に劣る概ね円状や楕円状や多角状である。
図1及び図2を参照して、複数の表皮ピースを縫合してシートカバー6Sを形成する。このとき例えば図2を参照して、第三表皮ピースSP3と第四表皮ピースSP4を重ね合わせながら、これらの縫い代部MS3,MS4の間に左側の玉縁10Aの脚部11を介装する。この状態で両表皮ピースの縫い代部MS3,MS4同士を縫合することで、第三表皮ピースSP3と第四表皮ピースSP4を縫合しつつ、これらの間に玉縁10Aを共縫いして取付けることができる。そして両表皮ピースSP3,SP4を、両縫い代部MS3,MS4を基点として面状となるように展開させる。こうすることで玉縁10Aの玉縁部10aを、各縫い代部MS3,MS4においてシートカバー6Sの意匠面をなす表面から突出させて外部に露出させておくことができる。また同様の手順にて第五表皮ピースSP5と第六表皮ピースSP6に右側の玉縁10Bを配設することができる。つぎにシートカバー6Sを裏返したのち、この裏返されたシートカバー6Sを、シートパッド6Pに被せながら徐々に元に戻していく。こうしてシートカバー6Sでシートパッド6Pを被覆することで乗員の着座が可能となり、さらにシートカバー6Sの左右の外縁に、対応する玉縁10A,10Bを配置することができる。
そして上述の構成においては、シートカバー6Sの被覆作業時や乗員の着座時等に、シートカバー6Sに外力がかかるなどして各玉縁10A等の玉縁部10a等が曲がり変形することがある。このとき図2を参照して、芯材12が、玉縁部10a等の曲がり変形に追従できず玉縁部10a等から剥離することで、シートの見栄えが悪化することが懸念されていた。すなわち芯材12が剥離した部分においては、玉縁部10a等と芯材12の間に空気層が形成される。この空気層は、典型的に玉縁部10a等に比して屈折率が小さく光が反射されやすいため、剥離した芯材12の周りが白く見える(白化する)などして見栄えが悪くなる。
実施形態2では、実施形態1の構成部材とほぼ同一の基本構成を備える構成については、対応する符号を付す等して詳細な説明を省略する。本実施形態では、図7を参照して、乗物としての車両(図示省略)において、乗物内装品としてのドアトリム部30の表皮30Sに本発明を適用した例を説明する。このドアトリム部30は、正面視で略矩形とされたボード状の部材であり、車両ボデー側のドアインナパネル(図示省略)に対して車室内側(図7の紙面手前側)から取付けられる。そしてドアトリム部30は、本体部32と、この本体部32の車室内側に配設されたオーナメント部34及びアームレスト部36を有している。オーナメント部34は、前後方向に長尺な略矩形の部材で構成されており、本体部32の上部側に配設されている。なおオーナメント部34の前部の下部側は、本体部32に対して段差状となるように凹んでいる。またアームレスト部36は、車室内に突出する前後に長尺な略直方体状の部材であり、オーナメント部34の後部下方に配設されている。
ここで玉縁部の構成(形状,寸法,配置位置など)は適宜変更可能である。例えば変形例1のドアトリム部30Aは、図11を参照して、実施形態2のドアトリム部30と同様に、表皮31Sと、本体部32Aと、オーナメント部34Aと、アームレスト部36Aを有している。そしてこのドアトリム部30Aにおいては、正面視で略逆U字状とされた大型の玉縁10Hが、オーナメント部34Aの前辺と上辺と後辺に沿って配設されている。この大型の玉縁10Hは、大型の玉縁部10hを有しており、大型の玉縁部10hは、オーナメント部34Aの前辺と上辺の角部と、上辺と後辺の角部でそれぞれ屈曲している。そして大型の玉縁部10hは、図12を参照して、図11に示す本体部32Aの上縁を覆う上縁表皮ピースSP12と、オーナメント部34Aを覆う表皮ピースSP13の間に配設されている。そして本変形例においても、大型の玉縁部10hの見栄えを極力損なうことなく、対応する部材に応じた適切な屈曲形状で配設できる。
以下、本実施形態を試験例に基づいて説明するが、本発明は試験例に限定されない。なお後述の[表1]に、実施例1のカバリング材(芯部,鞘部)の詳細を示し、[表2]に、実施例1〜実施例4の芯材の詳細を示す。
また[表2]を参照して、実施例2では、実施例1の8本のカバリング材を撚り合わせた片撚材を作成し、さらに片撚材を3本撚り合わせた諸撚材を芯材として使用し、その他の条件は、実施例1と同一に設定した。また実施例3では、実施例1の片撚材を芯材として使用し、その他の条件は、実施例1と同一に設定した。また実施例4では、実施例2の片撚材を芯材として使用し、その他の条件は、実施例1と同一に設定した。
比較例1では、芯材として縫製用のPET仮撚糸を使用し、その他の条件は、実施例1と同一に設定した。また比較例2では、芯材として別の縫製用のPET仮撚糸を使用し、その他の条件は、実施例1と同一に設定した。
玉縁部を180°に折り曲げたのち、玉縁部を通して芯材の様子を目視で確認した。そして白化を確認できなかった場合には「◎」、うっすらと白化したように見られた場合には「○」、白化をはっきりと確認できた場合には「×」と評価した。
[表3]を参照して、比較例1及び2では玉縁部の白化がはっきり確認できた。これとは異なり実施例1〜実施例4では玉縁部の白化が確認できなかった。この結果は、芯材の外周側が凹凸状とされており、この凹凸状の部分がアンカーとして機能することで、玉縁部に対する芯材の剥離を極力回避できたためと考えられる。このため本実施例によれば、玉縁部の曲がり変形時において、玉縁部に対する芯材の剥離を極力回避できることがわかった。また実施例1及び3の玉縁部においては、玉縁部をどの角度から見ても芯材が似通った外観を呈しており、見栄えが良いことが分かった。これは芯材としての諸撚材において、3本以上の片撚材が撚り合わされているためと考えられる。
4 シートクッション
6 シートバック
8 ヘッドレスト
6F シートフレーム
6P シートパッド
6a 天板メイン部
6b 天板サイド部
6c カマチ部
6S シートカバー
SP1〜SP13 表皮ピース
MS3,MS4 縫い代部
SEW 縫合線
6SP パッド材
10A〜10H 玉縁
10a〜10h 玉縁部
11 脚部
11a 切欠き部
12 芯材
20 諸撚材
22a〜22c 片撚材
24a〜24e カバリング材
25a 芯部
25b 鞘部
30 ドアトリム部
30S ドアトリム部の表皮
32 本体部
34 オーナメント部
36 アームレスト部
A1 玉縁部の着色領域
A2 玉縁部の無着色領域
Claims (4)
- 可撓性を備えた線状の玉縁部を備え、前記玉縁部が、前記玉縁部に埋設状に一体化されている線状の芯材を有するとともに、前記芯材の存在が前記玉縁部を通して目視で確認可能である玉縁において、
前記芯材が、前記玉縁部の延びる方向に長尺な芯部と前記芯部の周りにスパイラル状に巻装されている鞘部とを有するカバリング材を備えるとともに、前記鞘部が、前記芯部とは異なる断面形状を備え、
前記芯材が、複数の前記カバリング材が一方向に撚り合わされた状態とされている片撚材を有するとともに、複数の前記片撚材が一方向とは逆向きに撚り合わされた状態とされている諸撚材で構成されている玉縁。 - 前記鞘部が、前記芯部よりも扁平な断面形状を備えている請求項1に記載の玉縁。
- 意匠面をなす表皮と、前記意匠面から露出している請求項1又は2に記載の玉縁とを備える乗物内装品。
- 前記乗物内装品が乗物用シートであるとともに、前記表皮としてのシートカバーが、シート外形をなすシートパッドに被覆されている請求項3に記載の乗物内装品。
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