以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<<1.中空の部材の適用対象>>
本発明の一実施形態に係る中空の部材は、様々な構造部材として利用可能である。本明細書では、その一例として、一実施形態に係る中空の部材が、車両用構造部材として車両用フレームに利用される場合について説明する。以下では、車両用フレームを、単にフレームと記載する。
図1は、本実施形態に係るフレームの適用対象について説明するための自動車の概要構成図である。図1に示す一般的な自動車等の車両1000に設けられる車体は、フロント構造(FRONT)、リア構造(REAR)、およびキャビン構造(CABIN)に分別することができる。
フロント構造およびリア構造は、「クラッシャブルゾーン」とも呼ばれ、車両に対する衝撃を吸収して緩和する機能(衝撃吸収機能)を担っている。クラッシャブルゾーンは、車両衝突時に衝突エネルギにより圧潰される。すなわち、車両衝突時に、キャビンに搭乗する乗員の安全を確保するために、フロント構造およびリア構造は、衝突により生じるエネルギ(衝突エネルギ)を吸収する構造であることが要求される。したがって、フロント構造およびリア構造を構成するフレームは、衝突時に曲げや潰れが生じた際においても衝突エネルギを吸収することが求められる。当該フロント構造およびリア構造に用いられるフレームは、例えば、フロントサイドメンバ、リアサイドメンバ、バンパーレインフォースメント、およびクラッシュボックス等である。フロントサイドメンバは、後端部を構成するフロントサイドメンバリア、および当該後端部よりも前側の部分を構成するフロントサイドメンバフロントを含む。リアサイドメンバは、後端部を構成するリアサイドメンバリア、および当該後端部よりも前側の部分を構成するリアサイドメンバフロントを含む。
一方で、キャビン構造は、「セーフティゾーン」とも呼ばれ、車両衝突時において当該車両に搭乗している乗員の安全を確保する機能(乗員保護機能)を担っている。すなわち車両衝突時に、乗員の安全を確保するために、キャビン構造は、衝撃力に対して潰れにくい構造であることが要求される。したがって、キャビン構造を構成するフレームは変形しにくく、かつ、高い耐荷重性能を有することが求められる。当該キャビン構造に用いられるフレームは、例えば、フロントピラー(Aピラー)、センターピラー(Bピラー)、リアピラー(Cピラー、Dピラー)、フロントピラーロア(Aピラーロア)、サイドシル、ルーフレール、クロスメンバ、およびトンネル等である。
ところで、車両の衝突安全性能の維持と軽量化とを両立させるために、車体構造を形成する構造材(例えば鋼板)の高強度化および薄肉化が進められている。上記のフロント構造、リア構造およびキャビン構造を構成するフレームについても、薄肉化された高強度鋼板に置き換えることが進められている。置き換えには、衝突エネルギ吸収量および耐荷重性能の少なくともいずれかが、従来のフレームと同等になることが求められる。高強度鋼板により形成されるフレームの板厚は、従来の鋼板により形成されるフレームよりも薄くすることが可能である。これにより、高強度フレームの衝突性能を従来フレームと同等に維持しつつ、フレームの重量を低減させることができると考えられている。
しかし、薄肉化されたフレームに対して長手方向に衝突が生じた場合、フレームが曲げられたときにフレームの断面変形が大きくなると、フレームについて想定されていた衝突安全性能を確保できなくなる可能性があることを、本発明者らは見出した。フレームの板厚が薄いほど座屈は発生することが多い。
図129は、薄肉化されたフレーム900の断面形状の変化の一例を示す断面図である。図129に示すように、フレーム900の長手方向(Y軸方向)に衝突荷重が加えられ、フレーム900に曲げが生じると、底壁部900aが面外方向に膨らみ、かつ、側壁部900bが面外方向に撓むように変形する(断面形状901)。なお、底壁部900aが曲げ内側である。さらに曲げが進展すると、底壁部900aおよび側壁部900bの面外方向への変形がさらに進む。その結果、フレーム900は座屈する。座屈したフレーム900の断面形状902は、当初の断面形状から大幅に逸脱する。
また、図130は、薄肉化されたフレーム910の断面形状の変化の他の例を示す断面図である。図130に示すように、フレーム910の長手方向(Y軸方向)に衝突荷重が加えられ、または底壁部910aの面に垂直方向に衝突荷重が加えられ、フレーム910に曲げが生じると、底壁部910aが凹み、かつ、側壁部910bが撓むように変形する(断面形状911)。なお、底壁部910aが曲げ内側である。さらに曲げが進展すると、底壁部910aおよび側壁部910bが面外方向に更に変形する。その結果、フレーム910は座屈する。座屈したフレーム910の断面形状912は、当初の断面形状から大幅に逸脱する。図129および図130に示したような座屈がフレーム900(910)に生じると、断面が偏平に潰れる。このような変形を断面潰れという。
構造材の曲げ剛性は構造材の板厚に依存する。フレームの板厚が従来よりも薄くなると、フレームを構成する面が面外変形しやすくなる。その結果、フレームの曲げ剛性が低下する。すなわち、図129および図130に示したような、フレームの曲げ変形が生じやすくなる。フレームが断面変形すると、フレームの高さ(厚さ)が徐々に小さくなるため、曲げ剛性は徐々に小さくなる。そして曲げ変形が進み、座屈が生じると急激に曲げ剛性が低下する。座屈の結果、フレームの耐荷重性能は、設計した値よりも極端に低くなる。そのため、当該フレームが従来有する衝突安全性能が低減してしまう。つまり、単に高強度鋼板を用いてフレームを薄肉化することにより車体の軽量化を図るだけでは、フレームの断面変形あるいは座屈により、想定されていた衝突安全性能を確保できない可能性がある。
フレームの内部空間に充填部材を充填すると、フレームの断面変形を抑制することができる。しかしながら、充填部材を充填すると、荷重入力時のエネルギ吸収量は向上するが、フレームの重量を増加させてしまう。そこで、本発明者らは、荷重入力時に曲げ変形を誘起する曲げ誘起部を設け、当該曲げ誘起部に充填部材を配置することで、荷重入力時のエネルギ吸収量を高い質量効率で向上させることが可能な中空の部材に想到した。フレームに充填部材が配置されると、配置された場所は、充填部材により厚みが増すので、曲げ剛性が高められる。曲げ誘起部が優先して面外変形するため、曲げ誘起部に充填部材を配置することが効果的な充填部材の配置になる。本発明によれば、フレームが面外変形し座屈に至るまでの間、曲げ誘起部に配置された充填部材がフレームの剛性を高めた結果、フレームは粘り強くエネルギ吸収する。また、重量増加につながる充填部材の量も抑えることができる。以下、本発明の一実施形態に係る中空の部材について説明する。
以下では、本発明の一実施形態に係る中空の部材が車両用構造部材として適用される場合を例に説明する。この場合、荷重とは例えば衝突荷重である。また、荷重入力時のエネルギ吸収量とは、衝突荷重が入力された時のフレームによる衝突エネルギの吸収量である。衝突エネルギの吸収量を向上させることは、衝突安全性能を向上させることを意味する。
<<2.第1の実施形態>>
第1の実施形態は、第2の金属板に密着して、曲げ誘起部に樹脂材が配置される形態である。
<2.1.フレームの構成>
図2は、本発明の第1の実施形態に係るフレーム1の一例の概略構成を示す斜視図である。本明細書におけるフレーム1は、中空の部材の一例である。なお、当該中空の部材は、例えば、自動車のフロントサイドメンバ、リアサイドメンバに使用される。フロントサイドメンバは、後端部を構成するフロントサイドメンバリア、および当該後端部よりも前側の部分を構成するフロントサイドメンバフロントを含む。リアサイドメンバは、後端部を構成するリアサイドメンバリア、および当該後端部よりも前側の部分を構成するリアサイドメンバフロントを含む。また当該中空の部材は、自動車のピラーにも使用される。ピラーは、例えば、フロントピラー(Aピラー)、センターピラー(Bピラー)、リアピラー(Cピラー、Dピラー)、フロントピラーロア(Aピラーロア)を含む。また、当該中空の部材は、フロアレインフォースメント、フロアクロスメンバ、バンパーレインフォースメント、サイドシル、ルーフサイドレール、ルーフセンターレインフォースメント、クラッシュボックス、トンネル等にも使用できる。また、当該中空の部材は、自動車のみならず、他の車両および自走可能な機械にも適用可能である。他の車両および自走可能な機械には、例えば、二輪車両、バスまたは牽引車等の大型車両、トレーラー、鉄道車両、建設機械、鉱山機械、農業機械、一般機械、航空機および船舶等が含まれる。
本実施形態に係るフレーム1は、第1の構造部材2、第2の構造部材3、レインフォースメント4、および充填部材5を備える。本実施形態に係る中空部材10は、第1の構造部材2、および第2の構造部材3により形成される。図3は、本実施形態に係る中空部材10の一例のY軸方向に直交する断面を示す断面図である。以下、図2および図3を参照しながら、本実施形態に係るフレーム1の構成について説明する。
本実施形態に係る第1の構造部材2は、長尺状の中空部材10を形成する構造部材の一例であり、ハット型の断面形状を有する。図2および図3に示すように、第1の構造部材2は、長手方向(Y軸方向)に延びる底壁部2a、側壁部2b、2b、フランジ部2c、2c、および稜線部2d、2d、2e、2eを有する。
側壁部2bは、底壁部2aのZ軸方向(幅方向)の両端から起立して設けられる。側壁部2bと底壁部2aとにより成される角度は、略垂直に限らず部材の設計に応じて適宜設定される。また、稜線部2dは、底壁部2aと側壁部2bとの境界となる部分である。
フランジ部2cは、側壁部2bの底壁部2aに対し反対側の端部からZ軸方向に沿って外側に起立して設けられる。フランジ部2cと側壁部2bのなす角度は部材の設計に応じて適宜決めればよい。また、稜線部2eは、側壁部2bとフランジ部2cとの境界となる部分である。
本実施形態に係る第2の構造部材3は、上記中空部材10を第1の構造部材2とともに形成する構造部材の一例である。第2の構造部材3は板状の部材である。図3に示すように、第2の構造部材3は、天壁部3a、および接合部3c、3cを有する。
天壁部3aは、第1の構造部材2の底壁部2aに対向する部分である。また、接合部3cは、第1の構造部材2のフランジ部2cに対して当接し、フランジ部2cと接合される部分である。つまり、天壁部3aは、第2の構造部材3における一対の稜線部2eとのそれぞれの接続部分の間に存在する領域に相当する部分である。また、接合部3cは、第2の構造部材3における稜線部2eとフランジ部2cの端部とに挟まれるフランジ部2cの領域に当接する部分である。
本実施形態に係る中空部材10は、フランジ部2cと接合部3cとが接合されることにより、第1の構造部材2と第2の構造部材3とにより形成される。このとき、図3に示すように、中空部材10は閉断面を有する。この閉断面は、底壁部2aと、一対の側壁部2b、2bと、天壁部3aにより形成される。なお、フランジ部2cと接合部3cとの接合方法は特に限定されない。例えば、当該接合方法は、レーザー溶接、アーク溶接、スポット溶接等の溶接でもよいし、リベットまたはボルト締結等の機械接合でもよいし、接着剤やろう付けによる接着でもよい。本実施形態では、フランジ部2cと接合部3cは、スポット溶接により接合される。
なお、中空部材10の有する閉断面の形状は略多角形である。ここで、略多角形とは、複数の線分で近似表現することが可能である閉じた平面図形を意味する。例えば、図3に示した閉断面は、4つの線分(底壁部2a、側壁部2b、天壁部3aに相当)および4つの頂点(稜線部2d、2eに相当)からなる略四角形である。この略四角形は、矩形、台形等を含む。
また、中空部材10が有する閉断面の形状が略四角形以外の略多角形である場合であっても、本明細書において、当該中空部材10は、底壁部2a、一対の側壁部2b、2bおよび天壁部3aにより形成されるものとして説明する。中空部材10の有する閉断面の形状の例については後述する。
中空部材10は、上記説明したように閉断面構造を有してもよいし、U字状等の開放断面構造を有していてもよい。また、中空部材10の長手方向に直交する断面の形状は特に限定されない。例えば、中空部材10の断面形状は、矩形断面であってもよいし、円形断面であってもよい。
本実施形態に係る中空部材は、金属部材の一例である。本実施形態に係る第1の構造部材2および第2の構造部材3は、例えば鋼板等の金属板により形成される。本実施形態に係る第1の構造部材2および第2の構造部材3は、第1の金属板の一例である。軽量化の観点から両構造部材の板厚はバス等の大型の車両で多く用いられるフレーム構造では、板厚は2.3mm以下が好ましく、通常のサイズの車両で多く用いられるモノコック構造車両では板厚は1.8mm以下であることが好ましく、バイク等の小型車両では板厚は1.4mm以下であることが好ましい。更に、本発明の観点では、これら板厚の比較的薄い金属板に曲げ誘起部を設けると、曲げ誘起部で他の箇所より優先して面外変形を発生させることができる。また、本実施形態に係る第1の構造部材2および第2の構造部材3の強度は特に限定されない。ただし、両構造部材の引張強度は780MPa以上であることが好ましい。また、両構造部材の引張強度は980MPa以上であることがさらに好ましい。なぜなら、中空部材を構成する金属部材は、曲げ誘起部において最も高い引張応力が付与される表面に配置されるからである。引張強度の低い部材は降伏強度も低い。降伏強度が低いと面外変形が生じたとき、容易に中空部材が塑性変形してしまう。塑性変形が進むと、中空部材が座屈する。
図2に戻り、フレーム1の構成要素について説明する。レインフォースメント4は、図2に示すように、中空部材10の内側に配置される。レインフォースメント4は、図2に示すように、主面部4aおよび接合部4bを有する。本実施形態に係る主面部4aは、底壁部2aおよび天壁部3aに対向するように、レインフォースメント4は配置される。
また、本実施形態に係る接合部4bは、側壁部2bに接合される。これにより、主面部4aが一対の側壁部2b、2b間を架け渡すように設けられる。そうすると、中空部材10に衝撃が加わった際にレインフォースメント4が一対の側壁部2b、2bの変形を抑えるので、中空部材10の断面変形を抑制することができる。なお、接合部4bと側壁部2bとの接合方法は特に限定されない。例えば、当該接合方法は、フランジ部2cと接合部3cとの接合と同様に特に限定されない。本実施形態では、接合部4bと側壁部2bは、スポット溶接により接合される。また、レインフォースメント4は、充填部材5の配置領域を区切るためのしきい板としての機能も有する。
本実施形態に係るレインフォースメント4は、第2の金属板の一例である。本実施形態に係るレインフォースメント4は、例えば鋼板等の金属板により形成される。また、レインフォースメント4を形成する材料は、プラスチック、炭素繊維、合金板または複合材であってもよい。
なお、本実施形態に係るレインフォースメント4の中空部材10の内部における具体的な配置位置については後述する。
本実施形態に係る充填部材5は、樹脂材である。充填部材5は、ウレタン系、エポキシ系又はその他の任意の樹脂から成る。充填部材5は、ウレタン系の樹脂であれば、最大300MPa程度、エポキシ系の樹脂であれば、最大3000MPa程度のヤング率で、形成可能である。充填部材5は、例えば発泡樹脂からなる硬質の発泡充填部材であってもよい。発泡樹脂は、中空部材10の内側に充填された後に、化学変化により硬化して、充填部材5が形成される。充填部材5のヤング率は、20MPa以上であることが好ましい。充填部材5のヤング率は、充填部材5を形成する樹脂の密度に応じて変化させることができる。ただし、樹脂の密度が高いほど樹脂の成形が難しくなるので、充填部材5のヤング率は、最大でも300〜400MPaであることが好ましい。
なお、本実施形態に係る充填部材5の中空部材10の内部における具体的な配置位置については後述する。
また、本実施形態に係る中空部材10には、屈曲部6Aおよび6Bが設けられる。屈曲部6は、中空部材10が屈曲する部分である。すなわち、屈曲部6とは、中空部材10の断面の重心に沿って定義される重心の軌跡の長手方向における曲率半径が260mm以下である部分である。図4は、中空部材10の断面の重心の軌跡を可視化した模式図である。図4に示すように、中空部材10の断面の重心の軌跡C1は、屈曲部6Aおよび6Bにおいて屈曲している。
屈曲部6は、詳しくは後述するが、曲げ誘起部の一例である。このような屈曲部6を備える中空部材10は、例えば第1の構造部材2および第2の構造部材3の一部が屈曲する形状にプレス成形を行い、これらの構造部材を組み立てることにより得られる。このような屈曲部6は、フレーム1が適用される車両の構造に応じて適宜設けられる。すなわち、フレーム1には車両の構造に応じて曲げ変形が許容される箇所があり、その箇所に屈曲部6が設けられる。曲げ変形が許容される箇所は、当該箇所でフレーム1が曲げ変形しても、曲がったフレーム1が乗員及び重要部品に接触しない箇所が例示される。中空部材10に設けられる屈曲部6の数は特に限定されず、上述したように車両の構造に応じて適宜決定される。
曲げ誘起部は、中空部材10の長手方向の一部に設けられる。中空部材10に曲げ誘起部が形成された場合、長手方向への衝突によって曲げ誘起部において曲げ変形が生じる。例えば、図4に示すように、かかる屈曲部6Aおよび6Bの曲率半径RAおよびRBの少なくともいずれかが260mm以下であれば、中空部材10は、衝突荷重の入力時に、上記曲率半径の条件を満たす屈曲部6Aおよび6Bのうちの少なくともいずれかにおいて曲げ変形が生じる。この曲げ変形に必要なエネルギは衝突によるエネルギから供給される。すなわち、中空部材10の曲げ変形により衝突エネルギを吸収することができる。この曲げ誘起部を中空部材10に設けることにより、衝突により生じる中空部材10の曲げ起点を設定することができる。そのため、中空部材10の想定外の曲げによるキャビンへの衝撃を回避することができるので、キャビンの安全性を維持することができる。
さらに、レインフォースメント4が中空部材10を内側から支えるように、中空部材10の曲げ誘起部の内側に設けられる。これにより、中空部材10の衝突時の断面変形を抑制し、衝突に対する耐荷重性を高めることができる。ゆえに、衝突安全性能を高めることができる。
なお、底壁部2aのZ軸方向の長さは、側壁部2bのX軸方向の長さ以上であることが好ましい。これにより、中空部材10のZ軸方向に係る断面二次モーメントがX軸方向に係る断面二次モーメントよりも大きくなる。そのため、中空部材10に衝突荷重が入力された際に、底壁部2aおよび天壁部3aが屈曲しやすくなる。
以下、本実施形態に係るフレーム1の内部における、レインフォースメント4および充填部材5の配置の一例について説明する。なお、上述した曲げ誘起部は屈曲部6に限られない。曲げ誘起部の具体例については後述する。
(充填部材およびレインフォースメントの配置)
図5は、本実施形態に係るフレーム1の一例のZ軸方向に直交する断面における断面図である。なお、図5に示す断面図は、図2に示したI−I切断線における中空部材10の断面図に相当する。図5に示すように、中空部材10には2つの屈曲部6Aと6Bがある。屈曲部6Aは、底壁部2aが曲げ内側となるように、底壁部2a方向に屈曲する。屈曲部6Bは、天壁部3aが曲げ内側となるように、天壁部3a方向に屈曲する。これらの屈曲部6A、6Bは、フレーム1における曲げ誘起部に相当する。
本実施形態に係る充填部材5A、5Bは、それぞれレインフォースメント4の主面部4aに密着して配置される。図5に示した例では、充填部材5Aは、底壁部2aに対向する部分に設けられている。また、充填部材5Bは、天壁部3aに対向する部分に設けられている。
なお、図5に示すフレーム1に関して付された各寸法の記号の定義は以下の通りである。本実施形態に係る中空部材10の長さLFLは、例えば数百mm程度である。
LFL:中空部材10のY軸方向(長手方向)の長さ。
DFL1:中空部材10の衝突側の端部におけるX軸方向の断面寸法。
DFL2:中空部材10の他端部におけるX軸方向の断面寸法。
LR:レインフォースメント4の長手方向の長さ。
SFL:屈曲部6の長手方向前後における第2の構造部材3のオフセット長さ。
LFMA、LFMB:充填部材5Aおよび5BのY軸方向の長さ。
図6および図7は、図5に示したフレーム1のII−II切断線およびIII−III切断線における断面図である。図6に示すように、充填部材5Aは、底壁部2aと、主面部4aと、一対の側壁部2bとにより形成される空間7Aにおいて、主面部4aに密着して配置されている。なお、詳しくは後述するが、充填部材5Aは、少なくとも主面部4aに密着するように配置されればよい。例えば、充填部材5Aは、必ずしも空間7A側に配置されなくてもよい。より具体的には、充填部材5Aは、レインフォースメント4に対する空間7Aの反対側の空間において、主面部4aに密着して配置されてもよい。また、図7に示すように、屈曲部6Bにおいて、充填部材5Bは、天壁部3aと、主面部4aと、一対の側壁部2bとにより形成される空間7Bにおいて、主面部4aに密着して配置されている。なお、充填部材5Bは、充填部材5Aの例と同様に、必ずしも空間7Bに配置されなくてもよい。より具体的には、充填部材5Bは、レインフォースメント4に対する空間7Bの反対側の空間において、主面部4aに密着して配置されてもよい。
図6を参照しながら、充填部材5Aによる作用および効果について説明する。まず、充填部材5Aは、レインフォースメント4の主面部4aに密着して配置されている。充填部材5Aが主面部4aに密着(好ましくは接着)することにより、主面部4aの面外変形に対する抵抗が高くなる。これにより、フレーム1への衝突荷重が入力されて屈曲部6Aにおいて折れ曲げが生じた場合に、レインフォースメント4にかかるZ軸方向の圧縮応力に起因して生じ得る主面部4aの面外変形を抑制し、レインフォースメント4の座屈を抑制することができる。したがって、レインフォースメント4は、当該衝突荷重の入力による側壁部2bの変形を抑制できるので、中空部材10の閉断面の断面変形も抑制される。ゆえに、フレーム1の衝突安全性能をより確実に発揮させることができる。
また、図6を参照すると、充填部材5Aは、屈曲部6における底壁部2aの部分の内面に密着して配置されている。充填部材5Aがかかる位置に密着(好ましくは接着)して配置されることにより、屈曲部6Aにおける底壁部2aの面外変形に対する抵抗が高くなる。これにより、フレーム1への衝突荷重が入力されて屈曲部6Aにおいて折れ曲げが生じた場合に、当該折れ曲げが生じた位置における底壁部2aの面外変形を抑制することができる。したがって、中空部材10の閉断面の断面変形が充填部材5Aにより直接的に抑制される。ゆえに、フレーム1の衝突安全性能をより高めることができる。
さらに、図6に示した例では、充填部材5Aは、主面部4aと底壁部2aとを連結している。ここで連結とは、充填部材5Aが主面部4aと底壁部2aとをまたいでそれぞれに密着して配置されることを意味する。フレーム1への衝突荷重が入力されて屈曲部6Aにおいて折れ曲げが生じた場合に、主面部4aと底壁部2aとにおける面外変形は、それぞれ相対する方向に生じる。ここで、主面部4aと底壁部2aとを充填部材5Aによって連結することにより、充填部材5Aが、主面部4aおよび底壁部2aのそれぞれの変形により受ける力を相殺することができる。これにより、主面部4aの面外変形を単に抑制するだけではなく、面外変形を生じさせる力そのものを減じることができる。よって、フレーム1の衝突安全性能をより高めることができる。
また、図6に示した例では、充填部材5Aは、レインフォースメント4と側壁部2bとに連続して密着して配置されている。つまり充填部材5Aは、主面部4aと側壁部2bとを接続する接続部分4cの内側に密着して配置されている。フレーム1への衝突荷重が入力されて屈曲部6において折れ曲げが生じた場合に、接続部分4cに高い応力が発生し、接続部分4cにおいて局所的に塑性変形が生じる。充填部材5Aが接続部分4cに密着(好ましくは接着)して配置されることにより、接続部分4cにおいて生じる局所的な塑性変形を抑制することができる。これにより、フレーム1の衝突安全性能をより効果的に高めることができる。
また、図6に示した例では、充填部材5Aは、底壁部2aと側壁部2bとに連続して密着して配置されている。つまり充填部材5Aは、稜線部2dの内側に密着して配置されている。上述した接続部分4cにおける塑性変形と同様に、フレーム1への衝突荷重が入力されて屈曲部6Aにおいて折れ曲げが生じた場合に、稜線部2dにおいて局所的に塑性変形が生じる。そのため、充填部材5Aがかかる位置に密着(好ましくは接着)して配置されることにより、稜線部2dにおいて生じる局所的な塑性変形を抑制することができる。これにより、フレーム1の衝突安全性能をより効果的に高めることができる。
図6に示した例では充填部材5Aは稜線部2dおよび接続部分4cの全ての内側に密着して配置されている。これに限らず、稜線部2dまたは接続部分4cの少なくともいずれかの内側に充填部材5Aが配置されていれば、衝突安全性能の向上は発揮される。
ここで、充填部材5のヤング率が高いほど、充填部材5による上述した塑性変形の抑制効果が高まる。しかしながら、充填部材5のヤング率を高めるには、高密度で樹脂を成形することが要される。即ち、充填部材5のヤング率を高めると、充填部材5の単位体積当たりの質量は増大する。本実施形態では、断面変形が発生する場所、すなわち断面変形を抑制すべき場所を屈曲部6又はその周囲に限定することができる。このため、断面変形する場所を見越して充填部材5を配置すべき場所も限定することができる。即ち、本実施形態では、充填部材5の高ヤング率化に伴う重量増加を軽減することが可能である。このように、本実施形態では、高い質量効率で衝突安全性能を向上させることが可能である。
以上、充填部材5Aの配置によりもたらされる作用および効果について説明した。なお、上述した作用および効果は、図7に示したような、天壁部3aと主面部4aとの間に充填される充填部材5Bについても同様に発揮される。
このように、本実施形態に係るフレーム1においては、曲げ誘起部である屈曲部6の内側にレインフォースメント4が設けられ、充填部材5がレインフォースメント4に密着して配置される。かかる構成により、フレーム1への衝突荷重の入力の際にレインフォースメント4の面外変形を抑制し、レインフォースメント4の座屈を抑制することができる。これにより、レインフォースメント4によって中空部材10の断面形状が維持されるため、中空部材10の断面変形を抑制することができる。したがって、車体の軽量化を図るために中空部材10およびレインフォースメント4の板厚を小さくする場合においても、フレーム1の衝突安全性能を維持することができる。
なお、図5に示したレインフォースメント4は一の部材により形成され、屈曲部6における底壁部2aおよび天壁部3aのそれぞれに対向するように設けられているが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、レインフォースメント4は、屈曲部6等の曲げ誘起部における底壁部2aまたは天壁部3aに対向して複数設けられてもよい。また、レインフォースメント4は、中空部材10の長手方向に沿って全体的に設けられてもよい。つまり、レインフォースメント4は、曲げ誘起部の内側に設けられていれば、レインフォースメント4の中空部材10の長手方向における位置および長さは特に限定されない。
<2.2.充填部材の配置例>
以上、本実施形態に係る充填部材5Aおよび5Bの配置について説明した。なお、充填部材5の配置は、図6および図7に示した例に限定されない。以下、充填部材5の他の配置例について説明する。
(第1の配置例)
第1の配置例では、レインフォースメント4に密着して配置した充填部材510により、レインフォースメント4の面外変形を抑制する。レインフォースメント4の面外変形を抑制できれば、レインフォースメント4がつながる壁部(例えば側壁部2b)の面外変形を抑制できる。その結果中空部材10の断面変形を抑制できる。
図8は、本実施形態に係る充填部材の第1の配置例を説明するためのフレーム1の断面図である。なお、図8に示す断面図は、図5に示したフレーム1のII−II切断線におけるフレーム1の断面に相当する。
図8に示すように、充填部材510は、主面部4aの底壁部2aに対向する面の中央部分に密着(好ましくは接着)して配置されている。かかる配置により、上述したように、主面部4aの面外変形に対する抵抗を大きくすることができる。つまり、充填部材510が主面部4aの一部だけに密着して配置されることによっても、レインフォースメント4の面外変形を抑制し、レインフォースメント4の座屈を抑制することができる。すなわち、中空部材10の断面変形を抑制する効果を十分に得ることができる。したがって、要求される衝突安全性能を確保することが可能であれば、図8に示したように、充填部材510が主面部4aの一部だけに配置されてもよい。これにより、充填部材510の充填量が少なくなるので、充填部材510のコストおよびフレーム1の重量を低く抑えることができる。
なお、充填部材510の配置位置は、上述したように、主面部4aの底壁部2aに対向する側に限られない。例えば、図8に示した充填部材510は、主面部4aの天壁部3aに対向する側に設けられてもよい。つまり、レインフォースメント4に充填部材510が密着して配置されていれば、充填部材510の主面部4aにおける配置面は特に限定されない。
(第2の配置例)
第2の配置例では、レインフォースメント4とレインフォースメント4に対向する壁部(例えば底壁部2a)とを充填部材511がつなぐ。充填部材511を介してレインフォースメント4とレインフォースメント4に対向する壁部が互いを拘束するため、レインフォースメント4とレインフォースメント4に対向する壁部との面外変形を抑制できる。更に、レインフォースメント4の面外変形を抑制できるため、レインフォースメント4がつながる壁部の面外変形も抑制できる。その結果、中空部材10の断面変形を抑制できる。
図9は、本実施形態に係る充填部材の第2の配置例を説明するためのフレーム1の断面図である。なお、図9に示す断面図は、図5に示したフレーム1のII−II切断線におけるフレーム1の断面に相当する。
図9に示すように、充填部材511は、主面部4aの中央部分と底壁部2aの中央部分とを連結するように、各部分に密着(好ましくは接着)して配置されている。かかる配置により、上述したように、レインフォースメント4および底壁部2aの面外変形をより効果的に抑制することができる。この場合、図9に示したように、充填部材511が主面部4aの一部および底壁部2aの一部のみを連結しても、中空部材10の断面変形を抑制する効果を十分に得ることができる。したがって、要求される衝突安全性能を確保することが可能であれば、図9に示したように、充填部材511が主面部4aおよび底壁部2aの一部だけを連結するように配置されてもよい。これにより、充填部材511の充填量が少なくなるので、充填部材511のコストおよびフレーム1の重量を低く抑えることができる。
また、充填部材511の配置位置は、上述したように、主面部4aと底壁部2aとの間に限られない。例えば、図9に示した充填部材511は、主面部4aと天壁部3aとの間に配置され、主面部4aと天壁部3aとを連結してもよい。また、レインフォースメント4の主面部4aが側壁部2bに対向するように設けられている場合、充填部材511は、いずれかの側壁部2bと主面部4aとを連結してもよい。つまり、レインフォースメント4に充填部材511が密着して配置されていれば、充填部材511による連結対象となる部分は特に限定されない。
なお、第1の配置例および第2の配置例に示した充填部材5の主面部4a(および底壁部2a)のZ軸方向における配置位置については特に限定されない。しかし、曲げモーメントを受ける主面部4aのたわみ量が最も大きくなる主面部4aの中央部分に充填部材5が密着して配置されることが好ましい。更に主面部4a上の充填部材5の幅は、主面部の幅の20%以上であることが望ましい。30%以上であれば更に望ましい。これにより、レインフォースメント4の弾性変形によりレインフォースメント4に衝突エネルギが付勢されることを防ぐことができる。レインフォースメント4に衝突エネルギが付勢されると、衝突時の曲げによるエネルギ吸収が阻害されるためである。
また、図8および図9に示したように、充填部材5は必ずしも空間7Aを密に充填するように配置されなくてもよい。充填部材5は少なくともレインフォースメント4の主面部4aに密着して配置されていれば、レインフォースメント4による中空部材の断面変形を抑制する効果が発揮される。充填部材5の空間7Aにおける充填量および配置位置は、要求されるフレーム1の衝突安全性能およびフレーム1の重量、並びに充填部材5による充填コスト等に基づいて、適宜調整され得る。また、充填部材5は必ずしも空間7Aに設けられなくてもよい。すなわち、充填部材5は、中空部材10の空間のうち、空間7Aとは異なる側の空間に配置されてもよい。
(第3の配置例)
第3の配置例では、レインフォースメント4とレインフォースメント4がつながる壁部とを充填部材512がつなぐ。レインフォースメント4とレインフォースメント4がつながる壁部とが充填部材512で拘束されるため、レインフォースメント4とレインフォースメント4がつながる壁部とがなす角が固定される。その結果、中空部材10の断面変形を抑制できる。
図10は、本実施形態に係る充填部材の第3の配置例を説明するためのフレーム1の断面図である。なお、図10に示す断面図は、図5に示したフレーム1のII−II切断線におけるフレーム1の断面に相当する。
図10に示すように、充填部材512は、主面部4a、底壁部2a、および一対の側壁部2bにより囲まれて形成される空間7Aに、主面部4aおよび底壁部2a、および一対の側壁部2bに密着(好ましくは接着)するように配置されている。また、充填部材512は、その内部に空洞512aを有する。これにより、レインフォースメント4および中空部材10の変形を抑制させる効果を高めつつ、充填部材512の充填量を抑制することができる。なお、図10に示した充填部材512は、レインフォースメント4に密着して配置されていれば、他の壁部との密着の有無、および充填量は特に限定されない。
<<3.第2の実施形態>>
第2の実施形態は、金属部材の底壁又は天壁の少なくともいずれかの内面に密着して、曲げ誘起部に樹脂材が配置される形態である。
<3.1.フレームの構成>
(フレームの構成要素)
図11は、本発明の第2の実施形態に係るフレーム1の一例の概略構成を示す斜視図である。図11に示すように、本実施形態に係るフレーム1は、第1の構造部材2、第2の構造部材3、および充填部材5(5A、5B)を備える。本実施形態に係る中空部材10は、第1の構造部材2および第2の構造部材3により形成される。図11に示したフレーム1の構成は、レインフォースメント4を有しない点および充填部材5の配置を除き、第1の実施形態について図2〜図4を参照して説明した通りである。以下、本実施形態に係るフレーム1の内部における、充填部材5の配置の一例について説明する。
(充填部材の配置)
図12は、本実施形態に係るフレーム1の一例のZ軸方向に直交する断面を示す断面図である。なお、図12に示す断面図は、図11に示したIV−IV切断線における中空部材10の断面図に相当する。図12に示すように、中空部材10には、底壁部2aが曲げ内側となる方向に屈曲する屈曲部6A、および天壁部3aが曲げ内側となる方向に屈曲する屈曲部6Bが設けられている。本実施形態に係る充填部材5Aおよび5Bは、図11および図12に示すように、底壁部2a又は天壁部3aにおける屈曲部6Aおよび屈曲部6Bが設けられた部分の内面に密着して配置される。これらの屈曲部6は、フレーム1における曲げ誘起部に相当する。
なお、図12に示すフレーム1に関して付された各寸法の記号の定義は以下の通りである。
LFL:中空部材10のY軸方向(長手方向)の長さ。
DFL1:中空部材10の衝突側の端部におけるX軸方向の断面寸法。
DFL2:中空部材10の他端部におけるX軸方向の断面寸法。
SFL:屈曲部6の長手方向前後における第2の構造部材3のオフセット長さ。
LFMA、LFMB:充填部材5Aおよび5BのY軸方向の長さ。
図13は、図12に示したフレーム1のV−V切断線における断面図である。また、図14は、図12に示したフレーム1のVI−VI切断線における断面図である。図13に示すように、充填部材5Aは、底壁部2aの内面に密着(好ましくは接着)して配置される。この底壁部2aの内面は、屈曲部6Aの曲げ内側部分に相当する。特に、図13に示すように、充填部材5Aは、底壁部2aの中央部分の内面に密着して配置される。また、図14に示したように、充填部材5Bは、天壁部3aの内面に密着して配置される。この天壁部3aの内面は、屈曲部6Bの曲げ内側部分に相当する。
かかる配置により、フレーム1の曲げ圧縮に起因する面外方向への力が底壁部2aに負荷された場合に、底壁部2aの中央部分の変形が充填部材5Aにより拘束される。これにより、底壁部2aの面外変形を抑制することができる。すなわち、フレーム1に衝突荷重が入力された際に、充填部材5Aが配置された部分における中空部材10の面外変形を抑制することができる。これにより、フレーム1の断面変形が抑制されるので、フレーム1の耐荷重性能を高めることができる。ゆえに、フレーム1の軽量化を図りつつ、衝突安全性能を高く維持することができる。
なお、充填部材5AのX軸方向の肉厚aについては特に限定されず、当該肉厚aは、フレーム1に要求される耐荷重性能および重量に応じて適宜設定される。充填部材5Aの肉厚aを制御するために、例えば、不図示のレインフォースメント等の板材が中空部材10の内側に設けられてもよい。また、充填部材5Aの配置位置を定める側壁部からの距離b1およびb2についても特に限定されない。ただし、底壁部2aの中央部分の内面に充填部材5Aを密着して配置させることにより、底壁部2aの面外変形を効率的に抑制することができる。更に、底壁部2a上の充填部材5Aの幅は、底壁部2aの幅の20%以上であることが望ましい。30%以上であれば更に望ましい。また、距離b1およびb2は同値であることが好ましい。また、距離b1およびb2の大きさは、フレーム1に要求される耐荷重性能および重量に応じて適宜設定される充填部材5AのX軸方向の肉厚に応じて決定される。
図14では、充填部材5Bは天壁部3a上に配置される。充填部材5Bは天壁部3a上に配置される以外は図13と同じである。但し、天壁部3a上の充填部材5Bの幅は、閉断面内の天壁部3aの幅の20%以上であることが望ましい。30%以上であれば更に望ましい。
なお、本発明において密着とは、隙間なく接して配置されることを意味する。特に密着のうち、互いを拘束する接着が最も好ましい。互いを拘束しない場合でも、中空部材10を形成する少なくともいずれかの壁部が面外変形するのを充填部材5が抑制する効果が発揮される。例えば、図129および図130に示したような断面形状の変化が本実施形態に係るフレーム1に生じるとする。充填部材5が底壁部2aまたは天壁部3aの少なくともいずれかの内面に接着されている場合、底壁部2aまたは天壁部3aが面外変形すると、充填部材5も当該内面の面外変形に追従する。そのため、充填部材5による底壁部2aまたは天壁部3aの面外変形の抑制効果が顕著に発揮される。また、充填部材5と底壁部2aまたは天壁部3aの少なくともいずれかの内面とが互いに拘束せずに密着して配置される場合、底壁部2aまたは天壁部3aが面外変形すると、充填部材5と当該内面とが部分的に離隔する場合も存在する。しかし、当該内面が面外変形した場合においても、充填部材5の少なくとも一部とは接した状態となる。したがって、充填部材5と当該内面とが互いに拘束せずに密着している状態であっても、充填部材5による底壁部2aまたは天壁部3aの面外変形の抑制効果は十分発揮される。
ここで、充填部材5のヤング率が高いほど、充填部材5による上述した塑性変形の抑制効果が高まる。しかしながら、充填部材5のヤング率を高めるには、高密度で樹脂を成形することが要される。即ち、充填部材5のヤング率を高めると、充填部材5の単位体積当たりの質量は増大する。本実施形態では、断面変形が発生する場所、すなわち断面変形を抑制すべき場所を屈曲部6又はその周囲に限定することができる。このため、断面変形する場所を見越して充填部材5を配置すべき場所も限定することができる。即ち、本実施形態では、充填部材5の高ヤング率化に伴う重量増加を軽減することが可能である。このように、本実施形態では、高い質量効率で衝突安全性能を向上させることが可能である。
以上、充填部材5Aの配置、並びに当該配置による作用および効果について説明した。なお、上述した作用および効果は、図14に示すような、屈曲部6Bの内側に配置される充填部材5Bによっても同様に発揮される。
このように、本実施形態に係るフレーム1においては、曲げ誘起部である屈曲部6の内側に含まれる底壁部2aの内面に充填部材5Aが密着して配置され、屈曲部6Bの内側に含まれる天壁部3aの内面に充填部材5Bが密着して配置される。かかる構成により、フレーム1に衝突荷重が入力された際において、フレーム1の曲げ圧縮を起因として生じる底壁部2aおよび天壁部3aの面外変形を抑制することができる。これにより、衝突によるフレーム1の断面潰れを抑制することができる。したがって、車体の軽量化を図るために中空部材10の板厚を小さくする場合においても、質量密度の低い充填部材5を上述したような部分に配置することにより、フレーム1の重量をさほど増加させずにフレーム1の耐荷重性能を高く維持することができる。すなわち、例えば、曲げ誘起部におけるフレーム1の容易な折れ曲げを防ぐことができる。
<3.2.充填部材の配置例>
以上、本実施形態に係る充填部材5Aおよび5Bの配置について説明した。なお、充填部材5の配置は、図11〜図14に示した例に限定されない。以下、充填部材5の他の配置例について説明する。
以下の第1の配置例〜第4の配置例では、側壁部2bの端部と底壁部2aあるいは天壁部3aを充填部材がつなぐ。すなわち、稜線部2dあるいは稜線部2eに隣接して充填部材が配置される。充填部材は、側壁部2bと底壁部2aあるいは天壁部3aとのなす角が変化するのを抑制する。すなわち、充填部材は稜線部2dあるいは稜線部2eの変形を抑制する。その結果、中空部材10の断面変形を抑制できる。
(第1の配置例)
図15は、本実施形態に係る充填部材の第1の配置例を説明するためのフレーム1の断面図である。なお、図15に示す断面図は、図12に示したフレーム1のV−V切断線におけるフレーム1の断面に相当する。
図15に示すように、本配置例に係る充填部材520は、側壁部2bと底壁部2aとに連続して密着(好ましくは接着)して配置されている。つまり充填部材520は、稜線部2dの内側に密着して配置されている。フレーム1への衝突荷重が入力されて屈曲部6Aにおいて折れ曲げが生じるときに、稜線部2dにおいて局所的に塑性変形が生じる。この塑性変形により側壁部2bの面外方向への倒れが促進されてしまう。そのため、充填部材520がかかる位置に密着して配置されることにより、稜線部2dにおいて生じる局所的な塑性変形を抑制することができる。これにより、側壁部2bの面外方向への倒れを抑制することができる。したがって、フレーム1の断面変形をより効果的に抑制することができる。
なお、充填部材520の肉厚aは、フレーム1に要求される耐荷重性能および重量に応じて適宜設定される。
また、図12に示したフレーム1のVI−VI切断線におけるフレーム1の断面に対しても、図15に示す充填部材の配置を同様に適用することができる。この場合、充填部材520は、天壁部3aの内面および稜線部2eの内側に密着して配置される。
(第2の配置例)
図16は、本実施形態に係る充填部材の第2の配置例を説明するためのフレーム1の断面図である。なお、図16に示す断面図は、図12に示したフレーム1のV−V切断線におけるフレーム1の断面に相当する。
本配置例に係る充填部材521aおよび521bは、稜線部2dのそれぞれの内側に局所的に密着(好ましくは接着)して配置される。かかる配置により、稜線部2dにおいて生じる局所的な塑性変形を抑制することができる。これにより、側壁部2bの面外方向への倒れを低減させることができる。したがって、フレーム1の断面変形を抑制することができる。また、図16に示した例では、充填部材521aおよび521bが稜線部2dの内側に局所的に密着して配置されるので、フレーム1の重量をほとんど増加させずに、フレーム1の断面変形を抑制することができる。
(第3の配置例)
また、本実施形態に係る充填部材は、稜線部2dの少なくともいずれか一方の内側に局所的に密着(好ましくは接着)して配置されてもよい。図17は、本実施形態に係る充填部材の第3の配置例を説明するためのフレーム1の断面図である。なお、図17に示す断面図は、図12に示したフレーム1のV−V切断線におけるフレーム1の断面に相当する。
図17に示すように、本配置例に係る充填部材521cは、稜線部2dの一方の内側に局所的に密着して配置される。これにより、充填部材521cが配置された稜線部2dにおいて生じる局所的な塑性変形を抑制することができる。また、充填部材の充填量を少なくできるので、フレーム1の重量を増加させずに済ませることができる。
図16および図17に示した充填部材の配置例によれば、底壁部2aの面外変形だけではなく、稜線部2dの局所的な塑性変形を抑制することができる。なお、充填部材を稜線部2dの一方または両方のいずれかの内側に設けるかについては、フレーム1に要求される衝突安全性能および重量に応じて決定することが好ましい。また、充填部材521a、521bおよび521cのZ軸方向の肉厚a(a1、a2)およびX軸方向の肉厚c(c1、c2)は、適宜設定される。
また、充填部材は、底壁部2aの中央部分の内面および稜線部2dの内側にそれぞれ別々に密着して配置されてもよい。充填部材の各々が底壁部2aの中央部分の内面および稜線部2dの内側に密着して配置されていれば、フレーム1の断面変形を抑制する効果が十分得られる。
また、図12に示したフレーム1のVI−VI切断線におけるフレーム1の断面に対しても、図16および図17に示す充填部材の配置を同様に適用することができる。この場合、充填部材521a〜521cは、稜線部2eの内側に密着して配置される。
また、充填部材は、稜線部2dの内側だけではなく、側壁部2bの内面に密着して配置されていてもよい。図18および図19は、本実施形態に係る充填部材の第2の配置例および第3の配置例の各変形例を説明するためのフレーム1の断面図である。図18および図19に示すように、充填部材522a、522bおよび522cは、稜線部2dの内側だけではなく、側壁部2bの内面に密着して配置されてもよい。さらに、充填部材522a、522bおよび522cは、稜線部2eの内側に密着して配置されてもよい。これにより、フレーム1の耐荷重性能を、図16および図17に示した配置例と比較して、同等以上とすることができる。なお、充填部材522a、522bおよび522cの肉厚a(a1、a2)は、フレーム1に要求される耐荷重性能および重量に応じて適宜設定される。
(第4の配置例)
図20は、本実施形態に係る充填部材の第4の配置例を説明するためのフレーム1の断面図である。なお、図20に示す断面図は、図12に示したフレーム1のV−V切断線におけるフレーム1の断面に相当する。
図20に示すように、本配置例に係る充填部材523は、底壁部2a、および一対の側壁部2bの内面に連続して密着(好ましくは接着)して配置される。側壁部2bでは、フレーム1の曲げにより、面外方向への倒れが生じやすい。図20に示した配置によれば、側壁部2bの内面にも充填部材523が密着して配置されるので、充填部材523が側壁部2bの面外変形を抑制することが可能となる。フレーム1において曲げが生じても、充填部材523により側壁部2bの面外方向への倒れが抑制されるので、フレーム1の断面変形を抑制しつつ、フレーム1の圧潰による衝突エネルギの吸収を行うことができる。すなわち、フレーム1の耐荷重性能のみならず、フレーム1の衝突エネルギの吸収特性を向上させることができる。
なお、図20に示した充填部材523は、一対の側壁部2bと底壁部2aとに連続して密着して配置されているが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、充填部材523は、一対の側壁部2bおよび底壁部2aの内面に、それぞれ別々に密着して配置されてもよい。また、充填部材523は、一対の側壁部2bのいずれかと底壁部2aとに連続して密着して配置されてもよい。すなわち、Y軸方向に直交する断面において、充填部材523がL字状に設けられてもよい。つまり、充填部材523が一対の側壁部2bのいずれかと底壁部2aとにそれぞれ設けられていれば、フレーム1の耐荷重性能のみならず、フレーム1の衝突エネルギの吸収特性を向上させることができる。充填部材の配置位置および充填量については、フレーム1に要求される衝突安全性能および重量に応じて適宜設定され得る。また、図20に示した充填部材523の肉厚a1、a2およびa3も、適宜設定され得る。
また、図12に示したフレーム1のVI−VI切断線におけるフレーム1の断面に対しても、図20に示す充填部材の配置を同様に適用することができる。この場合、充填部材523は、一対の側壁部2bと天壁部3aとに連続して密着して配置される。
なお、図13〜図20に示した本実施形態に係る充填部材の配置については、屈曲部や穴部等により実現される曲げ誘起部を有さない中空部材により形成されるフレームに対しても適用することができる。例えば、図11に示すフレーム1に屈曲部が設けられない場合、充填部材5は中空部材10の底壁部2aおよび天壁部3aに、中空部材10の長手方向に沿って設けられてもよい。これにより、衝突時において底壁部2aまたは天壁部3aが曲げ内側となるような折れ曲げがフレーム1に生じたとしても、フレーム1の断面変形を抑制することができる。すなわち、屈曲させないことが望ましい方向に対応する中空部材10の内面に充填部材5を密着して配置させることにより、少なくとも当該方向に対するフレーム1の折れ曲げを抑制することができる。
<<4.第3の実施形態>>
第3の実施形態は、金属部材の一対の側壁部の少なくともいずれかの内面に密着して、曲げ誘起部に樹脂材が配置される形態である。
<4.1.フレームの構成>
(フレームの構成要素)
図21は、本発明の第3の実施形態に係るフレーム1の一例の概略構成を示す斜視図である。図21に示すように、本実施形態に係るフレーム1は、第1の構造部材2、第2の構造部材3、および充填部材5(5A、5B)を備える。本実施形態に係る中空部材10は、第1の構造部材2および第2の構造部材3により形成される。図21に示したフレーム1の構成は、レインフォースメント4を有しない点および充填部材5の配置を除き、第1の実施形態について図2〜図4を参照して説明した通りである。以下、本実施形態に係るフレーム1の内部における、充填部材5の配置の一例について説明する。
(充填部材の配置)
図22は、本実施形態に係るフレーム1の一例のZ軸方向に直交する断面を示す断面図である。なお、図22に示す断面図は、図21に示したVII−VII切断線における中空部材10の断面図に相当する。図22に示すように、中空部材10には、底壁部2aが曲げ内側となる方向に屈曲する屈曲部6A、および天壁部3aが曲げ内側となる方向に屈曲する屈曲部6Bが設けられている。これらの屈曲部6は、フレーム1における曲げ誘起部に相当する。本実施形態に係る充填部材5Aおよび5Bは、図21および図22に示すように、側壁部2bにおける屈曲部6Aおよび屈曲部6Bが設けられた部分の内面に密着して配置される。
なお、図22に示すフレーム1に関して付された各寸法の記号の定義は以下の通りである。
LFL:中空部材10のY軸方向(長手方向)の長さ。
DFL1:中空部材10の衝突側の端部におけるX軸方向の断面寸法。
DFL2:中空部材10の他端部におけるX軸方向の断面寸法。
SFL:屈曲部6の長手方向前後における第2の構造部材3のオフセット長さ。
LFMA、LFMB:充填部材5Aおよび5BのY軸方向の長さ。
図23は、図22に示したフレーム1のVIII−VIII切断線における断面図である。図23に示すように、充填部材5Aは、側壁部2bの内面に密着(好ましくは接着)して配置される。なお、充填部材5Bにおいても同様に、図22に示したフレーム1のIX−IX切断線における断面において、充填部材5Bは、側壁部2bの内面に密着して配置される。
かかる配置により充填部材5Aが側壁部2bを拘束するので、側壁部2bの面外変形を抑制することができる。すなわち、フレーム1に衝突荷重が入力された際のフレーム1の曲げ変形において、充填部材5Aが配置された側壁部2bの面外方向への倒れを抑制することができる。したがって、フレーム1の曲げ変形後においてもフレーム1の断面変形が抑制されるので、フレーム1の衝突エネルギの吸収特性を高めることができる。また、充填部材5Aの配置が衝撃吸収に貢献する箇所に限られているため、中空部材が重くなることも無い。
また、図23に示した例では、充填部材5Aは、側壁部2bと底壁部2aとに連続して密着して配置されている。つまり充填部材5Aは、稜線部2dの内側に密着して配置されている。フレーム1への衝突荷重が入力されて屈曲部6Aにおいて折れ曲げが生じるときに、稜線部2dにおいて局所的に塑性変形が生じる。この塑性変形により側壁部2bの面外方向への倒れが促進されてしまう。そのため、充填部材5Aがかかる位置に密着して配置されることにより、稜線部2dにおいて生じる局所的な塑性変形を抑制することができる。これにより、側壁部2bの面外方向への倒れを抑制することができる。したがって、フレーム1の衝突エネルギの吸収特性をより効果的に高めることができる。
また、図23に示したように、充填部材5Aは、側壁部2bと天壁部3aとに連続して密着して配置されてもよい。これにより、稜線部2eにおいて生じる局所的な塑性変形を抑制することができる。この結果、中空部材10の断面変形を抑制でき、フレーム1の衝突安全性能をより高めることができる。充填部材5Aは、図23に示したように、稜線部2dまたは2eの少なくともいずれかの内側に密着して配置されることが好ましい。このとき、屈曲部6Aは底壁部2aを曲げ内側となる方向に屈曲している。曲げ内側では、フレーム1の曲げにより圧縮方向に力が作用することにより、稜線部における塑性変形が生じやすい。そのため、充填部材5Aは、底壁部2aと側壁部2bとの境に存在する稜線部2dの内側に少なくとも密着して配置されていることがさらに好ましい。
また、図23に示した例では、図面に向かって上側の側壁部2bの内面に充填部材5Aが配置されているが、下側の側壁部2bの内面に配置されてもよい。また、充填部材5Aの肉厚aについては特に限定されず、当該肉厚aは、フレーム1に要求される衝突エネルギの吸収特性および重量に応じて適宜設定される。充填部材5Aの肉厚aを制御するために、例えば、不図示のレインフォースメント等の板材が中空部材10の内側に設けられてもよい。
なお、本発明において密着とは、隙間なく接して配置されることを意味する。特に密着のうち、互いを拘束する接着が最も好ましい。互いを拘束しない場合でも、中空部材10を形成する少なくともいずれかの壁部が面外変形するのを充填部材5が抑制する効果が発揮される。例えば、図129および図130に示したような断面形状の変化が本実施形態に係るフレーム1に生じるとする。充填部材5が側壁部2bの内面に接着されている場合、側壁部2bが面外変形すると、充填部材5も当該内面の面外変形に追従する。そのため、充填部材5による側壁部2bの面外変形の抑制効果が顕著に発揮される。また、充填部材5と側壁部2bの内面とが互いに拘束せずに密着して配置される場合、側壁部2bが面外変形すると、充填部材5と当該内面とが部分的に離隔する場合も存在する。しかし、当該内面が面外変形した場合においても、充填部材5の少なくとも一部とは接した状態となる。したがって、充填部材5と当該内面とが互いに拘束せずに密着している状態であっても、充填部材5による側壁部2bの面外変形の抑制効果は十分発揮される。
ここで、充填部材5のヤング率が高いほど、充填部材5による上述した塑性変形の抑制効果が高まる。しかしながら、充填部材5のヤング率を高めるには、高密度で樹脂を成形することが要される。即ち、充填部材5のヤング率を高めると、充填部材5の単位体積当たりの質量は増大する。本実施形態では、断面変形が発生する場所、すなわち断面変形を抑制すべき場所を屈曲部6又はその周囲に限定することができる。このため、断面変形する場所を見越して充填部材5を配置すべき場所も限定することができる。即ち、本実施形態では、充填部材5の高ヤング率化に伴う重量増加を軽減することが可能である。このように、本実施形態では、高い質量効率で衝突安全性能を向上させることが可能である。
以上、充填部材5Aの配置、並びに当該配置による作用および効果について説明した。なお、上述した作用および効果は、屈曲部6Bの内側に配置される充填部材5Bによっても同様に発揮される。
このように、本実施形態に係るフレーム1においては、曲げ誘起部である屈曲部6の内側に含まれる側壁部2bの内面に充填部材5が密着して配置される。かかる構成により、フレーム1に衝突荷重が入力され、フレーム1に曲げ変形が生じた際において、側壁部2bの面外変形を抑制することができる。これにより、フレーム1が折れ曲がった後においてもフレーム1の断面潰れを抑制することができる。したがって、車体の軽量化を図るために中空部材10の板厚を小さくする場合においても、質量密度の低い充填部材5を上述したような部分に配置することにより、フレーム1の重量をさほど増加させずにフレーム1の衝突エネルギの吸収特性を高く維持することができる。
なお、図21および図22に示した例では、屈曲部6Aおよび6Bにそれぞれ充填部材5Aおよび5Bが別々に設けられていたが、1つの充填部材5が、屈曲部6Aおよび6Bに跨って設けられていてもよい。つまり、充填部材5は、少なくとも曲げ誘起部の内側に含まれる側壁部2bに密着して設けられていれば、中空部材10の長手方向における充填部材5の配置位置およびサイズ等は特に限定されない。
<4.2.充填部材の配置例>
以上、本実施形態に係る充填部材5Aおよび5Bの配置について説明した。なお、充填部材5の配置は、図21〜図23に示した例に限定されない。以下、充填部材5の他の配置例について説明する。
下記の第1の配置例と第2の配置例では、側壁部2bに密着して配置された充填部材530a又は531aにより、側壁部2bの面外変形を抑制する。その結果フレーム1の断面変形を抑制できる。
(第1の配置例)
図24は、本実施形態に係る充填部材の第1の配置例を説明するためのフレーム1の断面図である。なお、図24に示す断面図は、図22に示したフレーム1のVIII−VIII切断線におけるフレーム1の断面に相当する。
図24に示すように、本配置例に係る充填部材530aおよび530bは、一対の側壁部2bの内面のそれぞれに密着(好ましくは接着)して配置されている。かかる配置により、側壁部2bのそれぞれの面外変形を抑制し、側壁部2bの面外方向への倒れを防止することができる。すなわち、一の側壁部2bに対して一の充填部材を配置するよりも、フレーム1の断面変形をより確実に抑制することができるので、フレーム1の衝突エネルギの吸収特性をより向上させることができる。さらに、充填部材530aおよび530bは、稜線部2dおよび2eのそれぞれの内側に密着して配置されている。そのため、各稜線部における塑性変形を抑制することができ、フレーム1の断面変形をさらに抑制することができる。
ただし、充填部材530aおよび530bをフレーム1に設けることによりフレーム1の全体の重量が増加する。そのため、充填部材を側壁部2bの一方または両方の内面に設けるかについては、フレーム1に要求される衝突安全性能および重量に応じて決定することが好ましい。また、充填部材530aの肉厚a1および530bの肉厚a2は、適宜設定される。
なお、図22に示したフレーム1のIX−IX切断線におけるフレーム1の断面に対しても、図24に示す充填部材の配置を同様に適用することができる。
(第2の配置例)
図25は、本実施形態に係る充填部材の第2の配置例を説明するためのフレーム1の断面図である。なお、図25に示す断面図は、図22に示したフレーム1のVIII−VIIIにおけるフレーム1の断面に相当する。
図25に示すように、本配置例に係る充填部材531aおよび531bは、一対の側壁部2bの内面のそれぞれの中央部に密着(好ましくは接着)して配置される。このように、稜線部2dおよび2eのいずれの内側に充填部材531aおよび531bが配置されていなくても、側壁部2bのそれぞれの面外変形を抑制し、側壁部2bの面外方向への倒れを局所的に防止することができる。したがって、フレーム1の衝突エネルギの吸収特性を向上させることができる。
また、図25に示した例においては、側壁部2bのそれぞれの内面に充填部材531aおよび531bが密着して配置されているが、側壁部2bのいずれか一方の内面にのみ充填部材が配置されてもよい。充填部材を側壁部2bの一方または両方の内面に設けるかについては、フレーム1に要求される衝突安全性能および重量に応じて決定することが好ましい。また、充填部材531aの肉厚a1および531bの肉厚a2、側壁部2b上における充填部材531aの天壁部3aからの距離b1およびb3、並びに底壁部2aからの距離b2およびb4は、適宜設定され得る。
なお、上述したように、側壁部2bの面外方向への倒れは、稜線部2d(2e)の塑性変形に起因する。そのため、側壁部2bの内面に密着して配置される充填部材5は、稜線部2d(2e)の内側にも密着して配置されることが好ましい。これにより、充填部材によるフレーム1の断面変形の抑制効果をより高めることができる。
なお、図22に示したフレーム1のIX−IX切断線におけるフレーム1の断面に対しても、図25に示す充填部材の配置を同様に適用することができる。
以上、第1の配置例および第2の配置例について説明した。下記の第3の配置例〜第5の配置例では、側壁部2bと側壁部2bがつながる底壁部2aとに充填部材が密着して配置される。稜線部2dが充填部材で拘束されるため、稜線部2dの変形が抑制される。その結果、フレーム1の断面変形を抑制できる。
(第3の配置例)
図26は、本実施形態に係る充填部材の第3の配置例を説明するためのフレーム1の断面図である。なお、図26に示す断面図は、図22に示したフレーム1のVIII−VIIIにおけるフレーム1の断面に相当する。
図26に示すように、本配置例に係る充填部材532は、一対の側壁部2b、および底壁部2aの内面に連続して密着(好ましくは接着)して配置される。このとき、屈曲部6Aは底壁部2aを曲げ内側となる方向に屈曲しているので、充填部材532は、屈曲部6Aの曲げ内側部分に配置されることとなる。曲げ内側である底壁部2aでは、フレーム1の曲げにより圧縮方向に力が作用することにより面外変形が生じやすい。図26に示した配置によれば、底壁部2aの内面にも充填部材532が密着して配置されるので、充填部材532が底壁部2aの面外変形を抑制することが可能となる。これにより、高い衝突荷重がフレーム1に作用しても、フレーム1の断面潰れを抑制することができる。すなわち、フレーム1の衝突エネルギの吸収特性のみならず、フレーム1の耐荷重性能を向上させることができる。
なお、図26に示した充填部材532は、一対の側壁部2bと底壁部2aとに連続して密着して配置されているが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、充填部材532は、一対の側壁部2bおよび底壁部2aの内面に、それぞれ別々に密着して配置されてもよい。また、充填部材532は、一対の側壁部2bのいずれかと底壁部2aとに連続して密着して配置されてもよい。すなわち、Y軸方向に直交する断面において、充填部材532がL字状に設けられてもよい。つまり、充填部材532が一対の側壁部2bのいずれかと底壁部2aとにそれぞれ設けられていれば、フレーム1の衝突エネルギの吸収特性のみならず、フレーム1の耐荷重性能を向上させることができる。充填部材の配置位置および充填量については、フレーム1に要求される衝突安全性能および重量に応じて適宜設定され得る。また、図26に示した充填部材532の肉厚a1、a2およびa3も、適宜設定され得る。
また、図22に示したフレーム1のIX−IX切断線におけるフレーム1の断面に対しても、図26に示す充填部材の配置を同様に適用することができる。この場合、充填部材532は、一対の側壁部2bと天壁部3aとに連続して密着して配置される。
(第4の配置例)
図27は、本実施形態に係る充填部材の第4の配置例を説明するためのフレーム1の断面図である。なお、図27に示す断面図は、図22に示したフレーム1のVIII−VIIIにおけるフレーム1の断面に相当する。
図27に示すように、本配置例に係る充填部材533aおよび533bは、稜線部2dのそれぞれの内側に局所的に密着(好ましくは接着)して配置される。かかる配置により、稜線部2dにおいて生じる局所的な塑性変形を抑制することができる。これにより、側壁部2bの面外方向への倒れを低減させることができる。したがって、フレーム1の断面変形を抑制し、フレーム1の衝突エネルギの吸収特性を高くすることができる。また、図27に示した例では、充填部材533aおよび533bが稜線部2dの内側に局所的に密着して配置されるので、フレーム1の重量をほとんど増加させずに、フレーム1の断面変形を抑制することができる。
(第5の配置例)
また、本実施形態に係る充填部材533cは、稜線部2dの少なくともいずれか一方の内側に局所的に密着(好ましくは接着)して配置されてもよい。図28は、本実施形態に係る充填部材の第5の配置例を説明するためのフレーム1の断面図である。なお、図28に示す断面図は、図22に示したフレーム1のVIII−VIIIにおけるフレーム1の断面に相当する。
図28に示すように、本配置例に係る充填部材533cは、稜線部2dの一方の内側に局所的に密着して配置される。これにより、充填部材533cが配置された稜線部2dにおいて生じる局所的な塑性変形を抑制することができる。また、充填部材の充填量を少なくできるので、フレーム1の重量を増加させずに済ませることができる。
図27および図28に示した充填部材の配置例によれば、側壁部2bの面外変形だけではなく、稜線部2dの局所的な塑性変形を抑制することができる。したがって、図25に示した第2の配置例と比較して、側壁部2bの面外方向への倒れをより効果的に防止することができる。
なお、充填部材を稜線部2dの一方または両方のいずれかの内側に設けるかについては、フレーム1に要求される衝突安全性能および重量に応じて決定することが好ましい。また、充填部材533a、533bおよび533cのZ軸方向の肉厚a(a1、a2)およびX軸方向の肉厚c(c1、c2)は、適宜設定される。
また、充填部材は、稜線部2dの内側だけではなく、底壁部2aの内面に密着して配置されていてもよい。図29は、本実施形態に係る充填部材の第4の配置例および第5の配置例の変形例を説明するためのフレーム1の断面図である。図29に示すように、充填部材534は、稜線部2dの内側だけではなく、底壁部2aの内面に密着して配置されてもよい。これにより、フレーム1の衝突エネルギの吸収特性を、図27および図28に示した配置例と比較して、同等以上とすることができる。なお、充填部材534の肉厚aの大きさは、フレーム1に要求される衝突安全性能および重量に応じて適宜設定される。
また、図22に示したフレーム1のIX−IX切断線におけるフレーム1の断面に対しても、図27〜図29に示す充填部材の配置を同様に適用することができる。この場合、充填部材533a、533b、533cおよび534は、稜線部2eの内側(充填部材534については、さらに天壁部3aの内面)に密着して配置される。
<<5.第4の実施形態>>
第4の実施形態は、金属部材を形成する第1の金属板に設けられた穴部を貫通して、曲げ誘起部に樹脂材が配置される形態である。
第1〜第3の実施形態において説明したように、フレーム1に設けられた曲げ誘起部に充填部材5を配置することで、荷重入力時のエネルギ吸収量を向上させることが可能である。しかしながら、フレーム1に曲げ変形が生じた場合、当該フレーム1が面外変形し易くなる。そうすると、充填部材5のフレーム1への接着力が不充分な場合、フレーム1の変形の程度によっては、充填部材5がフレーム1の内壁から剥がれてしまうおそれがある。
図131は、充填部材925が配設されたフレーム920の構成例を示す部分断面図である。図131に示すように、フレーム920の壁部922の内壁面922Aには、充填部材925が密着して配置されている。ところが、図132に示すように、壁部922が変形位置BPにおいて面外変形しようとすると、充填して硬化した充填部材925の接着力が不充分であれば、壁部922の変形により充填部材925が内壁面922Aから剥がれてしまう可能性がある。この場合、充填部材によるフレームの壁部の変形の抑制効果が充分に発揮されず、想定される衝突性能を達成することが困難となる。
そこで、本実施形態では、充填部材5が衝突安全性能に安定的に貢献することが可能な技術を提供する。
<5.1.第1の例>
図30は、本発明の第4の実施形態に係るフレーム100の一例の構成例を示す部分断面図である。
図30に示すように、フレーム100は、中空部材110および充填部材50を備える。
なお、図30〜図37に示される方向V(V1、V2)は、中空部材110の外方を示す。
本実施形態に係る中空部材110は、上述した金属部材の一例である。具体的には、中空部材110は、長手方向に延びる壁部20を有する構造部材である。中空部材110は、いわゆるフレーム形状を有しており、複数の壁部20により構成される。本実施形態に係る壁部20は、上述した第1の金属板の一例である。中空部材110は、中空の閉断面構造を有してもよいし、U字状等の開放断面構造を有してもよい。また、中空部材110の長手方向に直交する断面の形状は特に限定されない。例えば、中空部材110の断面形状は、矩形断面であってもよいし、円形断面であってもよい。
また、中空部材110の壁部20には、少なくとも1つの壁穴21が設けられる。壁穴21の加工方法、並びに壁穴21の数および形状は特に限定されない。本実施形態に係る壁穴21は、穴部の一例である。
充填部材50は、上述した樹脂材の一例である。充填部材50は、ウレタン系、エポキシ系又はその他の任意の樹脂から成る。充填部材5は、ウレタン系の樹脂であれば、最大300MPa程度、エポキシ系の樹脂であれば、最大3000MPa程度のヤング率で、形成可能である。充填部材50は、例えば発泡樹脂材からなる硬質の発泡充填部材であってもよい。発泡樹脂は、中空部材110の内側に設置された後に、化学変化により硬化する。充填部材50のヤング率は、20MPa以上であることが好ましい。充填部材50のヤング率は、充填部材50を形成する樹脂の密度に応じて変化させることができる。ただし、密度が高いほど成形が難しくなるので、充填部材50のヤング率は、最大でも300〜400MPaであることが好ましい。
充填部材50は、中空部材110の内側に設置されると、壁部20の内壁面20Aに密着するように配設される。充填部材50のうち内壁面20Aに密着する部分を第1充填部分51と称する。例えば、第1充填部分51は、中空部材110の内側に発泡樹脂を導入することにより形成される。このとき、第1充填部分51は内壁面20Aと当接面51aにおいて密着する。なお、第1充填部分51は、第1補強部分の一例である。
また、充填部材50は、中空部材110の内側のみならず、壁穴21を貫通して、壁部20の外壁面20Bに密着するように配設される。充填部材50のうち外壁面20Bに密着する部分を第2充填部分52と称する。例えば、第2充填部分52は、中空部材110の内側に発泡樹脂を導入し、発泡した当該発泡樹脂が中空部材110の内側から壁穴21を貫通して外側に膨出することにより形成される。このとき、第2充填部分52は外壁面20Bと当接面52aにおいて密着する。なお、第2充填部分52は、第2補強部分の一例である。
さらに、充填部材50のうち、壁穴21に密着して設けられる部分を第3充填部分53と称する。すなわち、充填部材50は、第1充填部分51と、第2充填部分52と、第3充填部分53とにより一体に成形されるものである。第1充填部分51と第2充填部分52とは、第3充填部分53を介して接続されている。なお、第3充填部分53は、第3補強部分の一例である。
なお、充填部材50のうち第2充填部分52は、中空部材110の内側に充填された充填部材が壁穴21を貫通して中空部材110の外側に漏れ出たものである。例えば、第2充填部分52は、壁穴21の断面視において、壁穴21の穴縁端22から距離pの範囲において壁部20と密着して設けられている。第2充填部分52の外壁面20Bへの密着性を十分得るためには、距離pは、例えば、5mm以上であることが好ましい。
かかる構成によれば、充填部材50が中空部材110の壁部20に設けられた壁穴21を貫通して壁部20の両面に密着する。そうすると、充填部材50は壁穴21に機械的に引っ掛けられるので、充填部材50が壁部20に係止される。この場合、充填部材50が壁部20から脱落するか否かは、充填部材50の壁部20に対する接着力ではなく、充填部材50の引張強度により決まる。一般的に、充填部材50の接着力よりも充填部材50の引張強度の方が顕著に高いので、充填部材50は壁部20から容易に脱落しにくくなる。
図31は、本実施形態に係るフレーム100による作用の一例を示す部分断面図である。フレーム100の構成において、中空部材110の長手方向に対して衝突荷重が作用したとする。この場合、例えば、図31に示すように、中空部材110の外方(図中の方向V)に突出するような座屈が壁穴21の近傍の変形位置BPで生じ、壁部20が中空部材110の内方に折れ曲がろうとする作用がかかったとする。なお、本明細書において内方とは、図中の方向Vの反対方向であり、中空部材110の重心側の方向を意味する。
ここで、充填部材50は、壁穴21を貫通して第1充填部分51と接続する第2充填部分52により壁部20に係止されている。そのため、例えば、壁部20が中空部材110の内方に折れ曲がろうとしても、第1充填部分51が第2充填部分52に追従するので、第1充填部分51が壁部20に拘束された状態が維持される。
そうすると、中空部材110の内側における充填部材50の壁部20に対する接着力が十分確保されていなくても、充填部材50は壁部20から容易に脱落しにくくなる。これにより、車両衝突により壁部20に面外変形を生じさせる力が作用しても、充填部材50が中空部材110の壁部20に密着した状態を維持することができる。したがって、これにより、充填部材50の第1充填部分51が壁部20の面外方向への変形を拘束するので、壁部20の面外変形を抑制することができる。すなわち、充填部材50がフレーム100の衝突安全性能に安定して貢献することが可能となる。
なお、第1充填部分51と第2充填部分52とを接続する第3充填部分53は、密に充填されていることが好ましい。なぜなら、これらが密に充填されることで、壁穴21の軸に垂直方向における充填部材50のずれを抑制し、充填部材50の剥離防止に貢献するからである。また、第1充填部分51と第2充填部分52とを接続する第3充填部分53は、必ずしも壁穴21に密に充填されていなくともよい。例えば、第3充填部分53は、壁穴21の穴縁端22と密着していなくてもよい。この場合においても、第1充填部分51と第2充填部分52とが接続されていれば、充填部材50が中空部材110に係止されている状態が実現される。また、充填部材50の内部は、必ずしも密に充填されていなくてもよい。
(変形例)
次に、充填部材50の構成の変形例を説明する。
図32は、本実施形態の第1の変形例に係るフレーム100Aの構成例を示す部分断面図である。図32に示すように、本変形例に係るフレーム100Aを構成する中空部材110Aの壁部20には、複数の壁穴21が設けられている。また、充填部材50は、これらの壁穴21を貫通して、壁部20の内壁面20Aおよび外壁面20Bに密着して設けられている。すなわち、充填部材50は、壁部20の内壁面20Aに密着する第1充填部分51と、複数の壁穴21の各々の位置において壁部20の外壁面20Bに密着する複数の第2充填部分52と、複数の壁穴21の各々に密着して設けられ第1充填部分51と複数の第2充填部分52とを接続する第3充填部分53とにより構成される。
かかる構成により、充填部材50が貫通する壁穴21の数に応じて、充填部材50を壁部20に係止する部分が増加する。これにより、壁部20に対して充填部材50をより強固に固定することが可能となる。
また、かかる構成により、壁部20の折れ曲がろうとする方向に関わらず、充填部材50を壁部20に追従させることができる。図33は、本変形例に係るフレーム100Aによる作用の一例を示す部分断面図である。フレーム100Aの構成において、中空部材110Aの長手方向に対して衝突荷重が作用したとする。この場合、例えば、図33に示すように、中空部材110Aの内方(図中の方向Vの反対方向)に突出するような座屈が壁穴21の近傍の変形位置BPで生じ、壁部20が中空部材110Aの外方に折れ曲がろうとする。
この場合、単に充填部材50を壁部20の内壁面20Aにのみ密着させていた場合、壁部20が中空部材110の外方に折れ曲がろうとすることにより、充填部材50が壁部20の内壁面20Aから剥離してしまう。しかしながら、充填部材50は複数の壁穴21を貫通して接続する第2充填部分52の各々により複数の壁穴21に係止されている。そうすると、図33に示した例では、壁部20が外側に折れ曲がろうとしても、第1充填部分51が第2充填部分52に追従するので、第1充填部分51が壁部20に拘束された状態が維持される。
そうすると、車両衝突により中空部材110Aに対して内側に面外変形を生じさせる力が作用しても、充填部材50が中空部材110Aの壁部20に密着した状態を維持することができる。したがって、これにより、充填部材50の第1充填部分51が壁部20の面外方向への変形を拘束するので、壁部20の面外変形を抑制することができる。すなわち、充填部材50がフレーム100Aの衝突安全性能に安定して貢献することが可能である。
図34は、本実施形態の第2の変形例に係るフレーム100Bの構成例を示す部分断面図である。図34に示すように、本変形例に係る充填部材50の第1充填部分51は、中空部材110Aの壁部20の稜線部23の内側に配設されている。また、壁部20の稜線部23を挟んで両側には、それぞれ壁穴21が設けられている。充填部材50は、これらの壁穴21を貫通して、壁部20の内壁面20Aおよび外壁面20Bに密着して設けられている。
中空部材110Bの壁部20が面外変形すると、稜線部23において局所的に塑性変形が生じる。この塑性変形により壁部20の面外方向への倒れが促進されてしまう。そこで、稜線部23の内側に充填部材50を密着させて配置することにより、稜線部23において生じる局所的な塑性変形を抑制することができる。
また、充填部材50を上述した構成により壁部20に固定することにより、稜線部23において生じる塑性変形に起因して充填部材50が壁部20から脱落することを防ぐことができる。したがって、壁部20の面外変形をより確実に抑制することができる。
なお、壁部20に設けられる壁穴21の数は特に限定されない。壁穴21は、稜線部23を挟んだ壁部20それぞれに設けられていることが望ましい。そうすると、稜線部23の角が開くように中空部材110Bが面外変形することを、抑制できる。壁穴21が複数の壁部20に設けられることにより、充填部材50の第1充填部分51と第2充填部分52とを接続する箇所が増える。そうすると、壁部20の変形により第1充填部分51と第2充填部分52とが引っ張られるが、その接続部分である第3充填部分53の数が多ければ、1つあたりの接続部分の負荷が分散される。よって、壁穴21の数を増やすことにより、充填部材50の壁部20に対する固定力を増すことができる。ただし、壁穴21の数を増やすことにより、中空部材110の剛性が低下し得る。そのため、壁穴21の数や設置位置は、設計に応じて適宜決めればよい。
図35は、本実施形態の第3の変形例に係るフレーム100Cの構成例を示す部分断面図である。図35に示すように、壁穴21Aの穴縁端22Aは、壁部20よりも中空部材110Cの内方に位置する。具体的には、壁部20は、壁穴21Aの近傍において中空部材110Cの内方に向かって傾斜する傾斜部24を備えている。
ここで、図35に示すように、充填部材50は、傾斜部24に食い込まれるように、かつ、壁部20の内側および外側に密着して配置されている。第2充填部分52は、壁部20の外壁面20Bのうち、傾斜部24の傾斜面24Aに密着して設けられている。
かかる構成により、第2充填部分52の外側面52bと壁部20の外壁面20Bとは面一の関係とすることができる。そうすると、充填部材50が壁部20の内側から壁穴21Aを貫通して外側に膨出しても、膨出部を除去して壁部20の外壁面20Bが平坦とすることが可能になる。したがって、充填部材50の膨出による他部材との干渉が生じなくなる。そのため、フレーム100の取扱いが容易となる。なお、かかる第2充填部分52は、例えば、中空部材110Cの内側に発泡樹脂を導入し、発泡した当該発泡樹脂が中空部材110Cの内側から壁穴21Aを貫通して外側に膨出した部分を切除することにより得られる。他に、発泡樹脂が固まる前に外壁面20Bに沿って壁穴21Aに蓋をして、外壁面20Bより飛び出した発泡樹脂を押し込んでもよい。また、他部材との干渉等の切除する理由が無ければ、第2充填部分52のうち壁部20の外壁面20Bよりも外側に膨出する部分は、切除されなくてもよい。
また、図35に示すように、充填部材50は傾斜部24を覆うように傾斜部24に密着しているので、傾斜部24によってアンカーボルトのように充填部材50と壁部20とを固定する機能が発揮される。したがって、充填部材50が壁部20により強固に固定される。
図36は、本実施形態の第4の変形例に係るフレーム100Dの構成例を示す部分断面図である。図36に示すように、本変形例においても、壁穴21Bの穴縁端22Bは、壁部20よりも中空部材110Dの内方に位置する。具体的には、壁部20は、壁部20の外側から内側に向かって穴縁端22Bが突出する突出部25を備えている。すなわち、壁穴21はバーリング穴である。かかるバーリング穴は、例えば、公知のバーリング加工により形成される。
ここで、図36に示すように、充填部材50は、突出部25に食い込まれるように、かつ、壁部20の内側および外側に密着して配置されている。第2充填部分52は、壁部20の外壁面20Bのうち、突出部25の外表面25Aに密着して設けられている。
かかる構成により、上記の第3の変形例と同様に、第2充填部分52の外側面52bと壁部20の外壁面20Bとは面一の関係とすることができる。つまり、充填部材50が壁部20の内側から壁穴21Bを貫通して外側に膨出しても、壁部20の外壁面20Bを平坦にすることができる。そうすれば、充填部材50の膨出による他部材との干渉が生じなくなる。他に、発泡樹脂が固まる前に外壁面20Bに沿って壁穴21Bに蓋をして、外壁面20Bより飛び出した発泡樹脂を押し込んでもよい。なお、第2充填部分52のうち壁部20の外壁面20Bよりも外側に膨出する部分は、他部材との干渉等の切除する理由が無ければ、切除されなくてもよい。
また、図36に示すように、充填部材50は突出部25を覆うように突出部25に密着しているので、突出部25によってアンカーボルトのように充填部材50と壁部20とを固定する機能が発揮される。したがって、充填部材50が壁部20により強固に固定される。
図37は、本実施形態の第5の変形例に係るフレーム100Eの構成例を示す部分断面図である。図37に示すように、本変形例に係る壁部20には、壁部20よりも中空部材110Eの内方に窪んだ窪み部26が設けられる。そして、壁穴21Cは、窪み部26の内部に設けられる。
ここで、図37に示すように、充填部材50は、窪み部26に食い込まれるように、かつ、壁部20の内側および外側に密着して配置されている。第2充填部分52は、壁部20の外壁面20Bのうち、窪み部26の外表面26Aに密着して設けられている。
かかる構成により、上記の第3の変形例および第4の変形例と同様に、第2充填部分52の外側面52bと壁部20の外壁面20Bとは面一の関係とすることができる。つまり、充填部材50が壁部20の内側から壁穴21Cを貫通して外側に膨出しても、壁部20の外壁面20Bを平坦にすることができる。そうすれば、充填部材50の膨出による他部材との干渉が生じなくなる。他に、発泡樹脂が固まる前に外壁面20Bに沿って窪み部26に蓋をして、外壁面20Bより飛び出した発泡樹脂を押し込んでもよい。なお、第2充填部分52のうち壁部20の外壁面20Bよりも外側に膨出する部分は、他部材との干渉等の切除する理由が無ければ、切除されなくてもよい。
また、図37に示すように、充填部材50は窪み部26を覆うように窪み部26に密着しているので、窪み部26によってアンカーボルトのように充填部材50と壁部20とを固定する機能が発揮される。したがって、充填部材50が壁部20により強固に固定される。
なお、上記の第3の変形例〜第5の変形例に係る壁穴21の近傍の壁部20の形状は、互いに組み合わされてもよい。例えば、壁部20に窪み部が設けられ、当該窪み部の内部に壁穴が設けられ、さらに当該壁穴に対してバーリング加工が成されてもよい。更に、窪み部26の代わりに壁部20に別の部品を取り付けてもよい。別の部品の要件は、充填部材50と噛み合う凹凸部あるいは突出部を備えること、壁部20の壁穴の周辺かつ中空部材110の内部に中空部材110に固定して配置されること、である。例えば、壁部20に壁穴を設け、ナットをねじ穴と壁穴と同軸上にして中空部材110の内部に接合して配置してもよい。この場合、ねじ穴の凹凸が充填部材50とかみ合って、充填部材を固定することができる。また、ナットの六角形状により充填部材50がナットの周りを回転することを抑止できる。
<5.2.第2の例>
次に、本実施形態の第2の例として、上述した第1の例に係る中空部材110および充填部材50の構成を適用させた、フレーム1の具体的な構成について説明する。
図38は、本発明の第4の実施形態に係るフレーム1の一例の概略構成を示す斜視図である。図38に示すように、本実施形態に係るフレーム1は、第1の構造部材2、第2の構造部材3、レインフォースメント4、および充填部材5を備える。本実施形態に係る中空部材10は、第1の構造部材2、および第2の構造部材3により形成される。
図38に示したフレーム1の構成は、充填部材5が第1の例において説明した充填部材50の構成を有する点を除き、第1の実施形態について図2〜図4を参照して説明した通りである。詳しくは、図38に示すように、中空部材10の曲げ誘起部である屈曲部6において、中空部材10の底壁部2aとレインフォースメント4との間には、充填部材5が配置されている。さらに、図38に示すように、屈曲部6近傍において、底壁部2aには壁穴21が設けられており、充填部材5は、壁穴21を貫通し、底壁部2aの内壁面に密着する第1充填部分51と、底壁部2aの外壁面に密着する第2充填部分52とを備える構成となっている。
以下、充填部材5に関する構成および作用について、図39〜図41を参照しながら説明する。
図39は、本実施形態に係るフレーム1の一例のZ軸方向に直交する断面における断面図である。なお、図39に示す断面図は、図38に示した中空部材10のXII−XII切断線におけるフレーム1の断面に相当する。図39に示すように、中空部材10には、長手方向に沿って屈曲部6A、6Bが設けられている。屈曲部6Aは、底壁部2aが曲げ内側となる方向に屈曲して設けられている。また、屈曲部6Bは、天壁部3aが曲げ内側となる方向に屈曲して設けられている。
本実施形態に係る充填部材5は、レインフォースメント4の主面部4aに密着して配置される。図39に示した例では、充填部材5Aは、屈曲部6Aにおいて、底壁部2aに密着して設けられている。また、充填部材5Bは、屈曲部6Bにおいて、天壁部3aに密着して設けられている。
また、屈曲部6A近傍において、底壁部2aには壁穴21が設けられており、レインフォースメント4の主面部4aには穴41Aが設けられている。充填部材5Aは、壁穴21および穴41Aを貫通し、底壁部2aの両面および主面部4aの両面に密着して設けられている。詳細には、充填部材5Aは、底壁部2aの内壁面とレインフォースメント4の主面部4aの第1の面40aとに密着する第1充填部分51Aと、底壁部2aの外壁面に密着する第2充填部分52Aと、壁穴21に密着して設けられ第1充填部分51Aと第2充填部分52Aとを接続する第3充填部分53Aと、主面部4aの第2の面40bに密着する第4充填部分54Aと、穴41Aの内側に設けられ第1充填部分51Aと第4充填部分54Aとを接続する第5充填部分55Aと、により構成される。
同様に、屈曲部6B近傍において、天壁部3aには壁穴31が設けられており、レインフォースメント4の主面部4aには穴41Bが設けられている。充填部材5Bは、壁穴31および穴41Bを貫通し、天壁部3aの両面および主面部4aの両面に密着して設けられている。詳細には、充填部材5Bは、天壁部3aの内壁面とレインフォースメント4の主面部4aの第2の面40bとに密着する第1充填部分51Bと、天壁部3aの外壁面に密着する第2充填部分52Bと、壁穴31に密着して設けられ第1充填部分51Bと第2充填部分52Bとを接続する第3充填部分53Bと、主面部4aの第1の面40aに密着する第4充填部分54Bと、穴41Bの内側に設けられ第1充填部分51Bと第4充填部分54Bとを接続する第5充填部分55Bと、により構成される。
図40および図41は、図39に示したフレーム1のXIII−XIII切断線およびXIV−XIV切断線における断面図である。図40に示すように、充填部材5Aは、底壁部2aと、主面部4aと、一対の側壁部2bとにより形成される空間7Aにおいて、底壁部2aおよび主面部4aに密着して配置されている。
底壁部2aには壁穴21が設けられ、主面部4aには穴41Aが設けられている。充填部材5Aは、空間7Aの各壁面に密着する第1充填部分51Aと、底壁部2aの外壁面に密着する第2充填部分52Aおよび主面部4aの第2の面40bに密着する第4充填部分54Aとが、壁穴21および穴41Aを貫通して接続されている。これにより、充填部材5Aは、底壁部2aと主面部4aとの双方に係止される。
そうすると、例えば、フレーム1への衝突荷重が入力されて屈曲部6Aにおいて折れ曲げが生じる場合、車両衝突により底壁部2aおよび主面部4aに面外変形を生じさせる力が作用する。この場合、底壁部2aと主面部4aが互いに遠ざかる方向に変形しようとし、充填部材5Aには引張の力が作用する。このような状態であっても、充填部材5Aは底壁部2aおよび主面部4aに拘束されるので、充填部材5Aが底壁部2aおよび主面部4aに密着した状態を維持することができる。したがって、充填部材5Aは、底壁部2aおよびレインフォースメント4の面外変形を抑制することができる。
また、充填部材5Aが底壁部2aおよび主面部4aの継手としての能力を発揮するので、主面部4aおよび底壁部2aのそれぞれの変形により受ける力を相殺することができる。これにより、主面部4aの面外変形を単に抑制するだけではなく、面外変形を生じさせる力そのものを減じることができる。よって、フレーム1の衝突安全性能をより高めることができる。
また、図40に示した例では、充填部材5Aの第1充填部分51Aは、稜線部2dや接続部分4cの内側に密着して配置されている。そのため、稜線部2dや接続部分4cにかかる局所的に高い応力による塑性変形を、より確実に抑制することができる。よって、フレーム1の衝突安全性能をより高めることができる。
また、図41に示すように、屈曲部6Bにおいて、充填部材5Bは、天壁部3aと、主面部4aと、一対の側壁部2bとにより形成される空間7Bにおいて、天壁部3aおよび主面部4aに密着して配置されている。充填部材5Bの配置は、上述した充填部材5Aの配置と同様である。
上述した作用および効果は、図41に示したような、天壁部3aと主面部4aとの間に充填される充填部材5Bについても同様に発揮される。
なお、図40および図41に示した例では、壁穴21、31は底壁部2aおよび天壁部3aに設けられるとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、壁穴21は、側壁部2bまたは稜線部2d、2eに隣接する壁部に設けられてもよい。かかる場合であっても、充填部材5のうち側壁部2bの外側に膨出する部分がこれらの外壁面に密着するように設けられていれば、充填部材5が中空部材10の各壁部に密着した状態を維持することができる。
ここで、充填部材5のヤング率が高いほど、充填部材5による上述した塑性変形の抑制効果が高まる。しかしながら、充填部材5のヤング率を高めるには、高密度で樹脂を成形することが要される。即ち、充填部材5のヤング率を高めると、充填部材5の単位体積当たりの質量は増大する。本実施形態では、断面変形が発生する場所、すなわち断面変形を抑制すべき場所を屈曲部6又はその周囲に限定することができる。このため、断面変形する場所を見越して充填部材5を配置すべき場所も限定することができる。即ち、本実施形態では、充填部材5の高ヤング率化に伴う重量増加を軽減することが可能である。このように、本実施形態では、高い質量効率で衝突安全性能を向上させることが可能である。
このように、本実施形態に係るフレーム1においては、曲げ誘起部である屈曲部6の内側にレインフォースメント4が設けられる。また、充填部材5は、中空部材10の壁部およびレインフォースメント4に設けられた穴を貫通して、これらの両面に密着して配置される。これにより、フレーム1への衝突荷重の入力の際においても、充填部材5は、中空部材10およびレインフォースメント4のいずれからも脱落せず、これらに拘束された状態を維持することができる。そうすると、充填部材5による中空部材10の壁部およびレインフォースメント4の面外変形を抑制することができる。これにより、充填部材5がフレーム1の衝突安全性能に安定して貢献することができる。
また、充填部材5は、レインフォースメント4にのみ密着して配置されてもよい。例えば、図40および図41に示した空間7A、7Bが大きく、充填部材5が空間7Aおよび7Bを横断して底壁部2aまたは天壁部3aとレインフォースメント4との双方に密着して配置することが困難である場合、充填部材5は、レインフォースメント4にのみ密着されて配置されてもよい。この場合、レインフォースメント4には図30〜図37に示したような穴が設けられ、充填部材5が当該穴を貫通してレインフォースメント4の両面に密着して配置される。そうすると、フレーム1への衝突荷重の入力の際においても、充填部材5は、レインフォースメント4から脱落せず、レインフォースメント4に拘束された状態を維持することができる。
なお、図39に示したレインフォースメント4は一の部材により形成され、屈曲部6における底壁部2aおよび天壁部3aのそれぞれに対向するように設けられているが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、レインフォースメント4は、屈曲部6等の曲げ誘起部における底壁部2aまたは天壁部3aに対向して複数設けられてもよい。また、レインフォースメント4は、中空部材10の長手方向に沿って全体的に設けられてもよい。つまり、レインフォースメント4は、曲げ誘起部の内側に設けられていれば、レインフォースメント4の中空部材10の長手方向における位置および長さは特に限定されない。
<<6.曲げ誘起部の例>>
次に、中空部材10に設けられる曲げ誘起部の例について説明する。上記の各実施形態では、曲げ誘起部である屈曲部6について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。曲げ誘起部は2つの特徴の少なくとも片方を備えている。
第1の特徴は、中空部材10の軸方向に垂直な断面の全塑性モーメントが周囲に比べ低下する特徴である。かかる特徴を有する部分においては、中空部材10の曲げが誘起される。より具体的には、長手方向で中空部材10のうち全塑性モーメントが相対的に小さい部分については、当該部分において屈曲が生じる。この特徴を備えた曲げ誘起部を、全塑性モーメント変化部という。例えば、異強度部は全塑性モーメント変化部である。
第2の特徴は、中空部材10の軸方向に沿った稜線あるいは面が、軸方向に沿って屈曲、断絶、又は肉厚変化等の形状変化する特徴である。この特徴を備えた曲げ誘起部を形状変化部という。例えば、中空部材10の面(例えば、底壁部2a、側壁部2b、又は天壁部3a等)に設けられた穴部、凹部、凸部、および板厚変化部は、形状変化部である。
曲げ誘起部は、第1の特徴および第2の特徴の両方を備えることが多い。また、片方の特徴しか備えない場合、曲げ誘起部は形状変化部であることが多い。なぜなら、形状変化部は中空部材10が曲がる方向を誘導できるからである。中空部材10の長手方向のうち、曲げ誘起部に該当する領域の長手方向に垂直な断面の中には、形状変化部がある。中空部材10が曲がる際、形状変化部が座屈するため、形状変化部の配置により中空部材10が曲がる方向を誘導できる。自動車の骨格部材に本発明を採用する場合、中空部材10が曲がる方向は予め決められる。中空部材10が曲がる方向の先には乗員及び重要部品が無いことが要求される。故に、曲げ誘起部は少なくとも形状変化部の特徴を備えることが望ましい。曲げ誘起部が全塑性モーメント変化部の特徴を備えた場合、中空部材10の長手方向で全塑性モーメント変化部と同じ場所にある小さな形状変化部でも機能する。このため、曲げ誘起部は全塑性モーメント変化部と形状変化部の両方の特徴を備えることが望ましい。
(穴部)
穴部は、全塑性モーメント変化部と形状変化部の特徴を兼ね備える。図42は、一実施形態に係る中空部材に設けられる穴部の例を説明するためのフレーム1の断面図である。図42に示すように、底壁部2aには穴部60が設けられている。穴部60が設けられた部分における中空部材10の全塑性モーメントは、穴部60が設けられた部分の前後(中空部材10の長手方向についての)における部分の中空部材10の全塑性モーメントよりも低い。また、穴部60で面(底壁部2a)の一部が断絶しているため曲げこわさが低い。したがって、図42に示す衝突荷重Fが中空部材10に入力された場合、フレーム1は、穴部60が設けられた部分において、穴部60が曲げ内側となるように屈曲する。そのため、レインフォースメント4は少なくとも穴部60が設けられた底壁部2aに対向する位置に設けられ、充填部材5はレインフォースメント4に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力により穴部60の近傍において屈曲が生じた場合に、レインフォースメント4の面外変形を抑制し、レインフォースメント4の座屈を抑制することができる。
なお、図42に示した例では、底壁部2aの穴部60が設けられた部分に充填部材5が配置されていたが、本発明はかかる例に限定されない。図43は、一実施形態に係る穴部に対向して設けられる充填部材の変形例を説明するためのフレーム1の断面図である。図43に示すように、穴部60の内側の空間には充填部材5が配置されなくてもよい。これにより、穴部60における底壁部2aの屈曲変形をより確実に行うことが可能である。なお、以下に示す他の曲げ誘起部の例においても同様に、曲げ誘起部の近傍の空間に充填部材5を配置させないようにすることで、曲げ誘起部における屈曲変形をより確実に行うことが可能となる。
ここで、図42および図43では、第1の実施形態および第4の実施形態の第2の例のように、フレーム1がレインフォースメント4を有する場合の穴部の例が示されている。他の例として、図44および図45に、フレーム1がレインフォースメント4を有さない場合の穴部の例を示す。
図44は、一実施形態に係る中空部材に設けられる穴部の例を説明するためのフレーム1の断面図である。図44に示したフレーム1は、第2の実施形態に係るフレーム1である。図44に示すように、底壁部2aには穴部60が設けられている。穴部60が設けられた部分における中空部材10の全塑性モーメントは、穴部60が設けられた部分の前後(中空部材10の長手方向についての)における部分の中空部材10の全塑性モーメントよりも低い。また、穴部60で面(底壁部2a)の一部が断絶しているため曲げこわさが低い。したがって、図44に示す衝突荷重Fが中空部材10に入力された場合、フレーム1は、穴部60が設けられた部分において、穴部60が曲げ内側となるように屈曲する。すなわち、中空部材10の長手方向において、中空部材10のうち穴部60が設けられた部分が、中空部材10に設けられる曲げ誘起部となる。そのため、充填部材5は、少なくとも穴部60が設けられた部分における底壁部2aの内面に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力により穴部60の近傍において屈曲が生じた場合に、フレーム1の面外変形を抑制し、フレーム1の耐荷重性能を高く維持することができる。
図45は、一実施形態に係る中空部材に設けられる穴部の例を説明するためのフレーム1の断面図である。図45に示したフレーム1は、第3の実施形態に係るフレーム1である。図45に示すように、底壁部2aには穴部60が設けられている。穴部60が設けられた部分における中空部材10の全塑性モーメントは、穴部60が設けられた部分の前後(中空部材10の長手方向についての)における部分の中空部材10の全塑性モーメントよりも低い。また、穴部60で面(底壁部2a)の一部が断絶しているため曲げこわさが低い。したがって、図45に示す衝突荷重Fが中空部材10に入力された場合、フレーム1は、穴部60が設けられた部分において、穴部60が曲げ内側となるように屈曲する。すなわち、中空部材10の長手方向において、中空部材10のうち穴部60が設けられた部分が、中空部材10に設けられる曲げ誘起部となる。そのため、充填部材5は、少なくとも穴部60が設けられた部分における側壁部2bの内面に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力により穴部60の近傍において屈曲が生じた場合に、フレーム1の面外変形を抑制し、フレーム1の衝突エネルギの吸収特性を高く維持することができる。
また、穴部の形状および配置については、上述した例に限られない。図46〜図49は、一実施形態に係る中空部材に設けられる穴部の他の例を示す模式図である。図46に示すように、円形の穴部60aが底壁部2aに設けられてもよい。また、図47に示すように、複数の穴部60bが底壁部2aに設けられてもよい。この場合、例えば、複数の穴部60bが、中空部材10Aの長手方向に横切る方向に並んで設けられてもよい。この場合、衝突荷重の入力時において、穴部60bが曲げの起点として、中空部材10Aが底壁部2a側に曲げ変形されやすくなる。
また、図48に示すように、中空部材10Aの長手方向に横切る方向に延在する穴部60cが底壁部2aに設けられてもよい。この場合、衝突荷重の入力時において、穴部60cが曲げの起点として、中空部材10Aが底壁部2a側に曲げ変形される。なお、穴部60cの形状は、図48に示す角丸矩形に限定されず、あらゆる形状であってもよい。
なお、上述した中空部材10Aの長手方向に横切る方向は、図46〜図48に示すような、中空部材10Aの長手方向に直交する方向に限定されない。例えば、穴部60が設けられた部分の面において、中空部材10Aの長手方向と当該横切る方向とのなす角が、45度以上90度以下であることが好ましい。これにより、安定した曲げ変形を誘起させることができる。
また、穴部60の設けられる部分は底壁部2aに限られない。例えば、側壁部2bや天壁部3aに穴部60が設けられてもよい。また、穴部60が設けられた部分に対向する部分には、穴部60等が設けられないことが好ましい。例えば、穴部60が底壁部2aに設けられた場合、天壁部3aには別の穴部60の曲げ変形を誘起する部分は設けられないことが好ましい。衝突荷重の入力時に、穴部60が設けられた側に曲げ変形を誘起するためである。
また、図49に示すように、穴部60dが稜線部2dに設けられてもよい。これにより、中空部材10Aのうち長手方向で穴部60dが設けられた部分の全塑性モーメントが顕著に低下するので、穴部60dが設けられた部分を曲げの起点とする曲げ変形をより確実に誘起することができる。
なお、第4の実施形態において上記説明した壁穴21も、曲げ誘起部の一例として捉えられてもよい。
(凹部)
穴部は、全塑性モーメント変化部と形状変化部の特徴を兼ね備える。図50は、一実施形態に係る中空部材に設けられるビード部の例を説明するためのフレーム1の断面図である。なお、ビード部61は、一実施形態における凹部の一例である。図50に示すように、底壁部2aにはビード部61が設けられている。ビード部61が設けられた部分における中空部材10の全塑性モーメントは、ビード部61が設けられた部分の前後(中空部材10の長手方向についての)における部分の中空部材10の全塑性モーメントよりも低い。また、凹部が潰れて曲げの起点になりやすい。したがって、図50に示す衝突荷重Fが中空部材10に入力された場合、フレーム1はビード部61が設けられた部分において、ビード部61が曲げ内側となるように屈曲する。そのため、レインフォースメント4は少なくともビード部61が設けられた底壁部2aに対向する位置に設けられ、充填部材5はレインフォースメント4に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力によりビード部61の近傍において屈曲が生じた場合に、レインフォースメント4の面外変形を抑制し、レインフォースメント4の座屈を抑制することができる。
ここで、図50では、第1の実施形態および第4の実施形態の第2の例のように、フレーム1がレインフォースメント4を有する場合の凹部の例が示されている。他の例として、図51および図52に、フレーム1がレインフォースメント4を有さない場合の穴部の例を示す。
図51は、一実施形態に係る中空部材に設けられるビード部の例を説明するためのフレーム1の断面図である。図51に示したフレーム1は、第2の実施形態に係るフレーム1である。なお、ビード部61は、一実施形態における凹部の一例である。図51に示すように、底壁部2aにはビード部61が設けられている。ビード部61が設けられた部分における中空部材10の全塑性モーメントは、ビード部61が設けられた部分の前後(中空部材10の長手方向についての)における部分の中空部材10の全塑性モーメントよりも低い。また、凹部が潰れて曲げの起点になりやすい。したがって、図51に示す衝突荷重Fが中空部材10に入力された場合、フレーム1はビード部61が設けられた部分において、ビード部61が曲げ内側となるように屈曲する。すなわち、中空部材10の長手方向において、中空部材10のうちビード部61が設けられた部分が、中空部材10に設けられる曲げ誘起部となる。そのため、充填部材5は、少なくともビード部61が設けられた部分における底壁部2aの内面に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力によりビード部61の近傍において屈曲が生じた場合に、フレーム1の面外変形を抑制し、フレーム1の耐荷重性能を高く維持することができる。
図52は、一実施形態に係る中空部材に設けられるビード部の例を説明するためのフレーム1の断面図である。図52に示したフレーム1は、第3の実施形態に係るフレーム1である。なお、ビード部61は、一実施形態における凹部の一例である。図52に示すように、底壁部2aにはビード部61が設けられている。ビード部61が設けられた部分における中空部材10の全塑性モーメントは、ビード部61が設けられた部分の前後(中空部材10の長手方向についての)における部分の中空部材10の全塑性モーメントよりも低い。また、凹部が潰れて曲げの起点になりやすい。したがって、図52に示す衝突荷重Fが中空部材10に入力された場合、フレーム1はビード部61が設けられた部分において、ビード部61が曲げ内側となるように屈曲する。すなわち、中空部材10の長手方向において、中空部材10のうちビード部61が設けられた部分が、中空部材10に設けられる曲げ誘起部となる。そのため、充填部材5は、少なくともビード部61が設けられた部分における側壁部2bの内面に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力によりビード部61の近傍において屈曲が生じた場合に、フレーム1の面外変形を抑制し、フレーム1の衝突エネルギの吸収特性を高く維持することができる。
なお、凹部の形状および配置については、上述した例に限られない。図53〜図56は、一実施形態に係る中空部材に設けられる凹部の他の例を示す模式図である。ここでいう凹部とは、エンボスやビードなどの、中空部材10Bの底壁部2a等に設けられる窪み部分を意味する。図53に示すように、円形の凹部61aが底壁部2aに設けられてもよい。
また、図54に示すように、複数の凹部61bが底壁部2aに設けられてもよい。この場合、例えば、複数の凹部61bが、中空部材10Bの長手方向に横切る方向に並んで設けられてもよい。この場合、衝突荷重の入力時において、複数の凹部61bが曲げの起点として、中空部材10Bが底壁部2a側に曲げ変形されやすくなる。
また、図55に示すように、中空部材10Bの長手方向に横切る方向に延在するビード部61cが底壁部2aに設けられてもよい。この場合、衝突荷重の入力時において、ビード部61cが曲げの起点として、中空部材10Bが底壁部2a側に曲げ変形される。なお、ビード部61cの形状は、図55に示す角丸矩形に限定されず、あらゆる形状であってもよい。
なお、上述した中空部材10Bの長手方向に横切る方向は、図55に示すような、中空部材10Bの長手方向に直交する方向に限定されない。例えば、凹部61が設けられた部分の面において、中空部材10Bの長手方向と当該横切る方向とのなす角が、45度以上90度以下であればよい。
また、凹部61の設けられる部分は底壁部2aに限られない。例えば、側壁部2bや天壁部3aに凹部61が設けられてもよい。また、凹部61が設けられた部分に対向する部分には、凹部61等が設けられないことが好ましい。例えば、凹部61が底壁部2aに設けられた場合、天壁部3aには別の凹部61の曲げ変形を誘起する部分は設けられないことが好ましい。衝突荷重の入力時に、凹部61が設けられた側に曲げ変形を誘起するためである。
また、図56に示すように、凹部61dが稜線部2dに設けられてもよい。これにより、中空部材10Bのうち長手方向で凹部61dが設けられた部分の全塑性モーメントが顕著に変化するので、凹部61dが設けられた部分を曲げの起点とする曲げ変形をより確実に誘起することができる。
上述したような凹部61を設ける場合、凹部61の形態は特に限定されないが、凹部61は以下に示す形態を有することが好ましい。例えば、中空部材10Bが高強度鋼板により形成される場合、成型性の観点から、図57に示すように、凹部61の深さDd(凹部61が設けられた部分の面611と凹部61の底612との間における、平面に直交する方向の長さ、図57参照)は、中空部材10Bの板厚の3倍以上であることが好ましい。また、中空部材10Bの長手方向における凹部61の縁613同士の距離Ld(図57参照)は、50mm以下であることが好ましい。
図58は、一実施形態に係る中空部材に設けられる凹部の他の例を示す模式図である。図58に示すように、中空部材10Bの長手方向に延在する凹部61e、61fが、中空部材10Bの長手方向に沿って並んで設けられている。凹部61eと凹部61fにおいて凹部の縁に長手方向に沿って稜線がある。この場合、中空部材10Bのうち、長手方向における凹部61eと凹部61fとの間の部分610で曲げが生じる。長手方向における凹部61eと凹部61fとの間の部分610において稜線が断絶しているからである。すなわち、長手方向における凹部61eと凹部61fとの間の部分610は形状変化部である。なお、この場合においても、中空部材10Bが高強度鋼板により形成される場合、成型性の観点から、凹部61e、61fの深さDdは、中空部材10Bの板厚の3倍以上であることが好ましい。また、当該部分610には、凹部、後述する凸部、薄肉部または異強度部等が形成されていてもよい。
なお、凹部61eおよび凹部61fは、図58に示すように、必ずしも直列に並んでいなくてもよい。また、凹部61eおよび凹部61fは、必ずしも中空部材10Bの長手方向に延在していなくてもよい。例えば、凹部61eおよび凹部61fが設けられた部分の面において、中空部材10Bの長手方向と凹部61eおよび凹部61fの延在方向とのなす角は、0度以上45度以下であればよい。
(凸部)
凸部は、形状変化部の特徴を備える。図59は、一実施形態に係る中空部材に設けられる凸部の例を説明するためのフレーム1の断面図である。図59に示すように、底壁部2aには凸部62が設けられている。凸部62が設けられた部分は形状変化部である。図59に示す衝突荷重Fが中空部材10に入力された場合、中空部材10の長手方向における凸部62の縁8aまたは8bの少なくともいずれかにおいて、凸部62が曲げ内側となるように屈曲する。そのため、レインフォースメント4は少なくとも凸部62並びに凸部62の前後の領域8aおよび8bに対向する位置に設けられ、充填部材5はレインフォースメント4に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力により凸部62の近傍において屈曲が生じた場合に、レインフォースメント4の面外変形を抑制し、レインフォースメント4の座屈を抑制することができる。
ここで、図59では、第1の実施形態および第4の実施形態の第2の例のように、フレーム1がレインフォースメント4を有する場合の凸部の例が示されている。他の例として、図60および図61に、フレーム1がレインフォースメント4を有さない場合の穴部の例を示す。
図60は、一実施形態に係る中空部材に設けられる凸部の例を説明するためのフレーム1の断面図である。図60に示したフレーム1は、第2の実施形態に係るフレーム1である。図60に示すように、底壁部2aには凸部62が設けられている。凸部62が設けられた部分は形状変化部である。図60に示す衝突荷重Fが中空部材10に入力された場合、中空部材10の長手方向における凸部62の前後の縁8aまたは8bのうち、最も全塑性モーメントが低くなる部分において、凸部62が曲げ内側となるように屈曲する。すなわち、中空部材10の長手方向において、中空部材10のうち凸部62およびその前後の縁8aおよび8bを含む部分が、中空部材10に設けられる曲げ誘起部となる。そのため、充填部材5は、少なくとも凸部62およびその前後の縁8aおよび8bが設けられた部分における底壁部2a内面に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力により凸部62の近傍において屈曲が生じた場合に、フレーム1の面外変形を抑制し、フレーム1の耐荷重性能を高く維持することができる。
図61は、一実施形態に係る中空部材に設けられる凸部の例を説明するためのフレーム1の断面図である。図61に示したフレーム1は、第3の実施形態に係るフレーム1である。図61に示すように、底壁部2aには凸部62が設けられている。凸部62が設けられた部分は形状変化部である。図61に示す衝突荷重Fが中空部材10に入力された場合、中空部材10の長手方向における凸部62の前後の縁8aまたは8bのうち、最も全塑性モーメントが低くなる部分において、凸部62が曲げ内側となるように屈曲する。すなわち、中空部材10の長手方向において、中空部材10のうち凸部62およびその前後の縁8aおよび8bを含む部分が、中空部材10に設けられる曲げ誘起部となる。そのため、充填部材5は、少なくとも凸部62およびその前後の縁8aおよび8bが設けられた部分における側壁部2b内面に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力により凸部62の近傍において屈曲が生じた場合に、フレーム1の面外変形を抑制し、フレーム1の衝突エネルギの吸収特性を高く維持することができる。
なお、凸部の形状および配置については、上述した例に限られない。図62〜図65は、一実施形態に係る中空部材に設けられる凸部の他の例を示す模式図である。ここでいう凸部は、例えば、中空部材10の加工等により実現される。すなわち、かかる凸部は、中空部材10Cを構成する鋼板の一部を変形させて設けられるものであってもよい。図62に示すように、円形の凸部62aが底壁部2aに設けられてもよい。
また、図63に示すように、複数の凸部62bが底壁部2aに設けられてもよい。この場合、例えば、複数の凸部62bが、中空部材10Cの長手方向に横切る方向に並んで設けられてもよい。この場合、衝突荷重の入力時において、中空部材10Cの長手方向における複数の凸部62bの前後の領域のいずれかが曲げの起点として、中空部材10Cが底壁部2a側に曲げ変形されやすくなる。
また、図64に示すように、中空部材10Cの長手方向に横切る方向に延在する凸部62cが底壁部2aに設けられてもよい。この場合、衝突荷重の入力時において、中空部材10Cの長手方向における凸部62cの前後の領域のいずれかが曲げの起点として、中空部材10Cが底壁部2a側に曲げ変形される。なお、凸部62cの形状は、図64に示す角丸矩形に限定されず、あらゆる形状であってもよい。
なお、上述した中空部材10Cの長手方向に横切る方向は、図64に示すような、中空部材10Cの長手方向に直交する方向に限定されない。例えば、凸部62が設けられた部分の面において、中空部材10Cの長手方向と当該横切る方向とのなす角が、45度以上90度以下であればよい。
また、凸部62の設けられる部分は底壁部2aに限られない。例えば、側壁部2bや天壁部3aに凸部62が設けられてもよい。また、凸部62が設けられた部分に対向する部分には、凸部62等が設けられないことが好ましい。例えば、凸部62が底壁部2aに設けられた場合、天壁部3aには別の凸部62等の曲げ変形を誘起する部分は設けられないことが好ましい。衝突荷重の入力時に、凸部62が設けられた側に曲げ変形を誘起するためである。
また、図65に示すように、凸部62dが稜線部2dに設けられてもよい。これにより、中空部材10Cのうち長手方向で凸部62dが設けられた部分で稜線が断絶するので、凸部62dが設けられた部分を曲げの起点とする曲げ変形をより確実に誘起することができる。
上述したような凸部62を設ける場合、凸部62の形態は特に限定されないが、凸部62は以下に示す形態を有することが好ましい。例えば、中空部材10Cが高強度鋼板により形成される場合、成型性の観点から、図66に示すように、凸部62の高さHd(凸部62が設けられた部分の面621と凸部62の頂622との間における、平面に直交する方向の長さ、図66参照)は、中空部材10Cの板厚の3倍以上であることが好ましい。また、中空部材10Cの長手方向における凸部62の縁623同士の距離Ld(図66参照)は、50mm以下であることが好ましい。
図67は、一実施形態に係る中空部材に設けられる凸部の他の例を示す模式図である。図67に示すように、中空部材10Cの長手方向に延在する凸部62e、62fが、中空部材10Cの長手方向に沿って並んで設けられている。凸部62e、62fにおいて凸部の縁に長手方向に沿って稜線がある。この場合、中空部材10Cのうち、長手方向における凸部62eと凸部62fとの間の部分620で曲げが生じる。長手方向における凸部62eと凸部62fとの間の部分620において稜線が断絶しているからである。すなわち、長手方向における凸部62eと凸部62fとの間の部分620は形状変化部である。なお、この場合においても、中空部材10Cが高強度鋼板により形成される場合、成型性の観点から、凸部62e、62fの高さ(Hd)は、中空部材10Cの板厚の3倍以上であることが好ましい。また、当該部分620には、上述した凹部、凸部または後述する薄肉部もしくは異強度部等が形成されていてもよい。
なお、凸部62eおよび凸部62fは、図67に示すように、必ずしも直列に並んでいなくてもよい。また、凸部62eおよび凸部62fは、必ずしも中空部材10Cの長手方向に延在していなくてもよい。例えば、凸部62eおよび凸部62fが設けられた部分の面において、中空部材10Cの長手方向と凸部62eおよび凸部62fの延在方向とのなす角は、0度以上45度以下であればよい。
(板厚変化部・薄肉部)
板厚変化部・薄肉部は、全塑性モーメント変化部と形状変化部の特徴を兼ね備える。図68は、一実施形態に係る中空部材に設けられる板厚変化部の一例を示す模式図である。ここでいう板厚変化部とは、中空部材10Dの長手方向において板厚が変化する部分を意味する。図68に示すように、中空部材10Dは、第1板厚部111および第2板厚部112を備える。第1板厚部111は中空部材10Dの端部側に設けられ、第2板厚部112は、中空部材10Dの長手方向に沿って第1板厚部111と連続して設けられる。第1板厚部111と第2板厚部112との間では、鋼板の板厚が異なる。板厚の大小関係については特に限定されないが、中空部材10D全体の曲げ剛性の確保の観点から、第2板厚部112の板厚が第1板厚部111の板厚よりも大きいことが好ましい。
この場合、図68に示すように、第1板厚部111と第2板厚部112との境目の部分が板厚変化部113となる。この板厚変化部113において中空部材10Dの長手方向での全塑性モーメントが変化する。また板厚変化部113は形状変化部でもある。すなわち、板厚変化部113が曲げ誘起部に相当する。したがって、衝突荷重が中空部材10Dに入力された場合、フレーム1は板厚変化部113において屈曲する。そのため、充填部材5は少なくとも板厚変化部113が設けられた底壁部2a又は板厚変化部113が設けられた部分における側壁部2bに密着して配置される。フレーム1がレインフォースメント4を有する場合、レインフォースメント4は少なくとも板厚変化部113が設けられた底壁部2aに対向する位置に設けられ、充填部材5はレインフォースメント4に密着して配置されることが望ましい。これにより、衝突荷重Fの入力により板厚変化部113の近傍において屈曲が生じた場合に、レインフォースメント4の面外変形を抑制し、レインフォースメント4の座屈を抑制することができる。
また、曲げ誘起部は、例えば、薄肉部により実現されてもよい。図69は、一実施形態に係る中空部材に設けられる薄肉部の一例を示す模式図である。図69に示すように、底壁部2aには、中空部材10Dの長手方向前後において、他の部分よりも相対的に板厚が薄い薄肉部114が設けられている。薄肉部114を含む部分における中空部材10の全塑性モーメントは、薄肉部114が設けられた部分の前後(中空部材10Dの長手方向についての)における部分の中空部材10Dの全塑性モーメントよりも低い。薄肉部114は全塑性モーメント変化部と形状変化部の両方の特徴を備えている。すなわち、中空部材10Dのうち薄肉部114が設けられた部分が曲げ誘起部に相当する。したがって、衝突荷重が中空部材10Dに入力された場合、フレーム1は薄肉部が設けられた部分において、薄肉部が曲げ内側となるように屈曲する。
かかる板厚変化部を有する中空部材10Dは、例えば、切削、プレス、およびテーラードブランクからなる被加工板により形成されてもよい。かかる被加工板は、溶接線を有するテーラーウェルドブランク(Tailor Welded Blank;TWB)であってもよい。また、上記被加工板は、圧延ロールにより板厚を異ならせて設けられるテーラーロールドブランク(Tailor Rolled Blank;TRB)であってもよい。TWBにおいては、板厚変化部における差厚は0.2mm以上とすることが可能である。また、TRBにおいては、部材長手方向当たりの板厚変化部における板厚変化量は、0.1mm/100mm以上とすることが可能である。
(異強度部・強度変化部)
異強度部と強度変化部は、全塑性モーメント変化部の特徴を備える。異強度部は、中空部材10の長手方向で中空部材10の降伏強度が変化する部分である。例えば、中空部材10の長手方向で降伏強度が変化する部分においては、周囲に比べ全塑性モーメントが小さい箇所がある。すなわち、異強度部は全塑性モーメント変化部である。従って、当該箇所で中空部材10の塑性変形が誘起される。強度変化部は、中空部材10の長手方向で中空部材10の降伏強度が変化する境界部分である。すなわち、強度変化部は全塑性モーメント変化部である。
図70は、一実施形態に係る中空部材に設けられる異強度部の例を説明するためのフレーム1の断面図である。図70に示すように、底壁部2aには異強度部63が設けられている。異強度部63は、例えば、中空部材10に対して部分的に溶接、焼き入れまたは焼き戻し等の熱処理等を行うことにより設けられる。異強度部63が設けられた部分における中空部材10の降伏強度は、異強度部63が設けられた部分の前後(中空部材10の長手方向についての)における部分の中空部材10の降伏強度とは異なる。したがって、図70に示す衝突荷重Fが中空部材10に入力された場合、異強度部63または異強度部63の近傍において、異強度部63が曲げ内側となるように屈曲する。この屈曲は、異強度部63または異強度部63の近傍の領域が塑性変形することにより生じる屈曲である。そのため、レインフォースメント4は少なくとも異強度部63または異強度部63の近傍の領域に対向する位置に設けられ、充填部材5はレインフォースメント4に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力により異強度部63または異強度部63の近傍において屈曲が生じた場合に、レインフォースメント4の面外変形を抑制し、レインフォースメント4の座屈を抑制することができる。
ここで、図70では、第1の実施形態および第4の実施形態の第2の例のように、フレーム1がレインフォースメント4を有する場合の異強度部の例が示されている。他の例として、図71および図72に、フレーム1がレインフォースメント4を有さない場合の穴部の例を示す。
図71は、一実施形態に係る中空部材に設けられる異強度部の例を説明するためのフレーム1の断面図である。図71に示したフレーム1は、第2の実施形態に係るフレーム1である。図71に示すように、底壁部2aには異強度部63が設けられている。異強度部63は、例えば、中空部材10に対して部分的に溶接、焼き入れまたは焼き戻し等の熱処理等を行うことにより設けられる。異強度部63が設けられた部分における中空部材10の降伏強度は、異強度部63が設けられた部分の前後(中空部材10の長手方向についての)における部分の中空部材10の降伏強度とは異なる。したがって、図71に示す衝突荷重Fが中空部材10に入力された場合、異強度部63または異強度部63の近傍において、異強度部63が曲げ内側となるように屈曲する。すなわち、中空部材10の長手方向において、中空部材10のうち異強度部63を含む部分が、中空部材10に設けられる曲げ誘起部となる。この屈曲は、異強度部63または異強度部63の近傍の領域が塑性変形することにより生じる屈曲である。そのため、充填部材5は、少なくとも異強度部63の近傍を含む部分における底壁部2aの内面に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力により異強度部63の近傍において屈曲が生じた場合に、フレーム1の面外変形を抑制し、フレーム1の耐荷重性能を高く維持することができる。
図72は、一実施形態に係る中空部材に設けられる異強度部の例を説明するためのフレーム1の断面図である。図72に示したフレーム1は、第3の実施形態に係るフレーム1である。図72に示すように、底壁部2aには異強度部63が設けられている。異強度部63は、例えば、中空部材10に対して部分的に溶接、焼き入れまたは焼き戻し等の熱処理等を行うことにより設けられる。異強度部63が設けられた部分における中空部材10の降伏強度は、異強度部63が設けられた部分の前後(中空部材10の長手方向についての)における部分の中空部材10の降伏強度とは異なる。したがって、図72に示す衝突荷重Fが中空部材10に入力された場合、異強度部63または異強度部63の近傍において、異強度部63が曲げ内側となるように屈曲する。すなわち、中空部材10の長手方向において、中空部材10のうち異強度部63を含む部分が、中空部材10に設けられる曲げ誘起部となる。この屈曲は、異強度部63または異強度部63の近傍の領域が塑性変形することにより生じる屈曲である。そのため、充填部材5は、少なくとも異強度部63の近傍を含む部分における側壁部2bの内面に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力により異強度部63の近傍において屈曲が生じた場合に、フレーム1の面外変形を抑制し、フレーム1の衝突エネルギの吸収特性を高く維持することができる。
なお、異強度部の配置については、上述した例に限られない。図73、図74は、一実施形態に係る中空部材に設けられる異強度部の他の例を示す模式図である。ここでいう異強度部は、中空部材10Eを形成する被加工板に対する溶接または熱処理等により実現される。
図73に示すように、中空部材10Eの長手方向に対する断面周方向に沿って異強度部120が設けられている。この場合も、中空部材10Eのうち異強度部120が設けられた部分が曲げ誘起部に相当する。したがって、衝突荷重が中空部材10Eに入力された場合、フレーム1は異強度部120が設けられた部分において、異強度部120が曲げ内側となるように屈曲する。
なお、かかる異強度部は、例えば、図74に示したように、底壁部2a等、中空部材10Eの断面を構成する壁部の少なくともいずれかに部分的に設けられてもよい。かかる場合においても、衝突荷重が中空部材10Eに入力された場合、フレーム1は異強度部121が設けられた部分において、異強度部121が曲げ内側となるように屈曲する。
また、曲げ誘起部は、例えば、強度変化部により実現されてもよい。図75は、一実施形態に係る中空部材に設けられる強度変化部の一例を示す模式図である。図75に示すように、中空部材10Eは、第1強度部122および第2強度部123を備える。第1強度部122は中空部材10Eの端部側に設けられ、第2強度部123は、中空部材10Eの長手方向に沿って第1強度部122と連続して設けられる。第1強度部122と第2強度部123との間では、鋼板の降伏強度が異なる。降伏強度の大小関係については特に限定されないが、中空部材10E全体としての曲げ剛性の確保の観点から、第2強度部123の降伏強度が第1強度部122の降伏強度よりも大きいことが好ましい。
この場合、図75に示すように、第1強度部122と第2強度部123との境目の部分が強度変化部124となる。この強度変化部124において中空部材10Eの長手方向での降伏強度が変化する。すなわち、強度変化部124が曲げ誘起部に相当する。したがって、衝突荷重が中空部材10Eに入力された場合、フレーム1は強度変化部124において屈曲する。
(組み合わせ)
なお、屈曲部を有する中空部材において、屈曲部の曲げ内側部分に上記の例に示した穴部等の曲げを誘起させるための部分がさらに設けられてもよい。図76は一実施形態に係る中空部材に設けられる屈曲部および穴部の組み合わせの例を説明するためのフレーム1の断面図である。図76に示すように、中空部材10には屈曲部6Aが設けられ、底壁部2aの曲げ内側部分6Aaには穴部64が設けられる。レインフォースメント4は少なくとも曲げ内側部分6Aaおよび穴部64に対向する位置に設けられ、充填部材5はレインフォースメント4に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力により、屈曲部6Aにおいて中空部材10をより確実に屈曲させることができる。
ここで、図76では、第1の実施形態および第4の実施形態の第2の例のように、フレーム1がレインフォースメント4を有する場合の異強度部の例が示されている。他の例として、図77および図78に、フレーム1がレインフォースメント4を有さない場合の穴部の例を示す。
図77および図78は、一実施形態に係る中空部材に設けられる屈曲部および穴部の組み合わせの例を説明するためのフレーム1の断面図である。図77に示したフレーム1は、第2の実施形態に係るフレーム1である。図78に示したフレーム1は、第3の実施形態に係るフレーム1である。図77および図78に示すように、中空部材10には屈曲部6Aが設けられ、底壁部2aの曲げ内側部分には穴部64が設けられる。充填部材5は屈曲部6Aにおける底壁部2a又は側壁部2bの内面に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力により、屈曲部6において中空部材10をより確実に屈曲させることができる。
曲げ誘起部の組み合わせは図76に示した例に限られず、上記に示した曲げ誘起部の例を複数組み合わせることにより、曲げ誘起部における中空部材10の屈曲をより確実に生じさせることができる。例えば、上述した屈曲部、凹部、凸部、穴部、板厚変化部、薄肉部、異強度部および強度変化部の少なくとも2つ以上の組み合わせにより、曲げ誘起部が実現されてもよい。特に、曲げ誘起部のうち、形状変化部と全塑性モーメント変化部の組み合わせは、小さな形状変化部を機能させ、所望の方向に中空部材10を曲げるために有用である。
なお、図42、図43、図50、図59、図70、図76に示したレインフォースメント4の設置位置は、曲げ誘起部の内側のみであるが、本発明はかかる例に限定されない。少なくとも曲げ誘起部の内側に設けられていれば、レインフォースメント4の長手方向の長さおよび設置位置は特に限定されない。フレーム1に要求される衝突安全性能および重量等に応じて、レインフォースメント4のサイズ、材質および設置位置は適宜調整される。
(曲げ誘起部の他の例)
また、中空部材10に効果的な曲げ誘起部が設けられない場合であっても、レインフォースメント4に屈曲部、凹部、凸部、穴部、板厚変化部、薄肉部、異強度部および強度変化部が設けられれば、レインフォースメント4の屈曲部、凹部、凸部、穴部、板厚変化部、薄肉部、異強度部および強度変化部が曲げ誘起部になる。しかしながら、レインフォースメント4に曲げ誘起部が設けられても、中空部材10の曲げ誘起部に比べ、同じ条件であれば、曲げ誘起部としての効果は得られにくい。なぜなら、レインフォースメント4は中空部材10の内部にあるため、曲げ変形挙動への影響が小さいからである。
故に、中空部材10に設けられた曲げ誘起部が主要な曲げ誘起部として扱われる。また、中空部材10に曲げ誘起部が設けられず、レインフォースメント4に凹部、凸部、穴部、板厚変化部、薄肉部、異強度部および強度変化部があれば、それらが曲げ誘起部とみなされる。
この場合、例えば、屈曲部については、中空部材10とレインフォースメント4とを合わせた断面(すなわち、充填部材5を除くフレーム1の断面)の重心により形成される長手方向に沿った重心の軌跡の曲率半径が260mm以下である部分が、曲げ誘起部となる屈曲部とみなされる。
さらに、レインフォースメント4に上述したような構成に基づく曲げ誘起部が設けられていない場合であっても、レインフォースメント4の端部が曲げ誘起部になることもある。なぜなら、フレーム1の長手方向において、レインフォースメント4の有無により全塑性モーメントが変化するからである。図79は、一実施形態に係る中空部材10の内側にレインフォースメント4を長手方向に離間して並設した構成例を示すフレーム1の断面図である。例えば、図79に示すように、レインフォースメント4を長手方向に離間して配置した場合、部材の長手方向のレインフォースメント4の端部の位置に充填部材5を配置すれば、部材の変形を緩和することができる。このように、充填部材5を除くフレーム1の全塑性モーメントが長手方向で変化する部分が、曲げ誘起部とみなされる。
以上の様に、長手方向の曲げ誘起部を特定できる。更に、長手方向の曲げ誘起部の中で、長手方向に垂直な断面内で曲げ誘起部を定義する必要があれば、次のようにみなす。曲げ誘起部が形状変化部である場合、形状変化部が断面内の曲げ誘起部である。曲げ誘起部が屈曲部である場合、重心から長手方向に沿った重心の軌跡の湾曲の中心に向かう方向が、中空部材10が曲がる方向である。中空部材10の断面の外周部のうち、重心と重心の軌跡の湾曲の中心とを結ぶ線と交わる箇所を、断面内の曲げ誘起部とみなす。
<<7.中空部材の閉断面の形状の例>>
中空部材10の有する閉断面の形状の例について説明する。図80は、本発明の他の実施形態に係る中空部材10の第1の例の長手方向に直交する断面を示す断面図である。図80に示すように、中空部材10の閉断面は、X軸について対称な略六角形の形状を有する。このうち、第1の構造部材2のX軸方向に略直交する部分において、4つの頂点2d、2d、2f、2fが存在する。ここで、頂点2dの内角ang1が頂点2fの内郭ang2より小さい場合、頂点2dが稜線部2dとして定義される。すなわち、頂点2f、2fを含む、一対の稜線部2dに挟まれる部分が、底壁部2aと定義される。
図81は、本発明の他の実施形態に係る中空部材10の第2の例の長手方向に直交する断面を示す断面図である。図81に示すように、第1の構造部材2および第2の構造部材30は、ハット型の断面形状を有する。すなわち、中空部材10は、ハット型の断面形状を有する2つの構造部材により形成される。この場合、第1の構造部材2の側壁部2bおよび第2の構造部材30の側壁部30bは、第1の構造部材2の稜線部2eと第2の構造部材30の稜線部30eとを介して、連続した一つの側壁部(連続側壁部)として定義される。すなわち、中空部材10の閉断面は、底壁部2aと、一対の連続側壁部と、底壁部30a(天壁部に相当)により形成される。
また、中空部材10、および中空部材10の有する閉断面の形状は、図3、図80および図81に示した例に限定されない。中空部材10の有する閉断面の形状が略多角形であり、当該閉断面を形成する底壁部、一対の側壁部および天壁部に相当する部分が定義できれば、本発明に係る技術は中空部材10に対して適用可能である。例えば、中空部材は、U字形の断面形状を有する2つの構造部材を、開口部分が対向するように重ねあわせることにより得られる閉断面を有する中空部材であってもよい。また、中空部材は、円管に対してハイドロフォーミングまたは曲げ加工等を行うことにより形成される中空部材であってもよい。
また、中空部材10の有する閉断面の形状が略多角形以外の任意の形状であっても、本発明に係る技術は中空部材10に対して適用可能である。図82は、本発明の他の実施形態に係る中空部材10の第3の例の長手方向に直交する断面を示す断面図である。図82に示すように、中空部材10は、円形の断面形状を有する第3の構造部材9により形成される。中空部材10は、長手方向に延びる円管である。
第3の構造部材9は、第1の金属板の一例である。第3の構造部材9は、例えば鋼板等の金属板により形成される。第3の構造部材9の強度は特に限定されない。ただし、軽量化により低減し得るフレームの全体的な強度を補うために、第3の構造部材9の引張強度は780MPa以上であることが好ましい。また、第3の構造部材9の引張強度は980MPa以上であることがさらに好ましい。
なお、図82では、ひとつの構造部材により中空部材10が形成される例を示したが、2以上の構造部材が互いに接合されることで中空部材10が形成されてもよい。また、中空部材10の断面形状は、真円であってもよいし、楕円であってもよい。
<<8.充填部材の配置範囲>>
第1〜第4の実施形態において説明したように、充填部材5は、樹脂材の一例であり、フレーム1の曲げ誘起部に対応する箇所に配置される。以下では、曲げ誘起部と充填部材5の配置範囲の具体例について説明する。
・第1の観点
まず、図83〜図91を参照して、フレーム1(中空部材10)をZ軸方向から見たときの充填部材5の配置範囲について説明する。なお、以下の説明では、フレーム1の長手方向(Y軸方向)を「長手方向Y」と称し、フレーム1の高さ方向(X軸方向)を「高さ方向X」と称し、フレーム1の幅方向(Z軸方向)を「幅方向Z」と称する場合もある。
(屈曲部の具体例1)
図83は、フレーム1に設けられた曲げ誘起部(屈曲部)と充填部材5の具体例を示す。図83に示すように、フレーム1の底壁部2aに、曲げ誘起部として、湾曲状の屈曲部6aが設けられている。この屈曲部6aは、フレーム1の底壁部2aが長手方向Yに沿って曲線状に湾曲した領域であり、当該屈曲部6aの位置でフレーム1の曲げ変形が誘起される。
充填部材5は、フレーム1の屈曲部6aの内側に、底壁部2aの内面に密着して設けられる。充填部材5は、屈曲部6aの長手方向Yの全体及びその周辺部分の底壁部2aを覆うように配置されており、充填部材5の長手方向Yの両端部5E1、5E2はそれぞれ、屈曲部6aの長手方向Yの両端部6aE1、6aE2よりも長手方向Yの外側に延出している。この充填部材5の延出部分の長手方向Yの長さを延出長LPと称する。図83に示すように、一側の延出長LPは、充填部材5の長手方向Yの一側端部5E1と、屈曲部6aの長手方向Yの一側端部6aE1との間の距離に相当する。同様に、他側の延出長LPは、充填部材5の長手方向Yの他側端部5E2と、屈曲部6aの長手方向Yの他側端部6aE2のとの間の距離に相当する。図83に示す例では、両側の延出長LP、LPは同一であるが、いずれか一方の延出長LPが他方の延出長LPより長くてもよい。
そして、上記充填部材5の延出長LPがフレーム1(中空部材10)の断面高さHの2分の1以下となる範囲内で、当該充填部材5は、屈曲部6a(曲げ誘起部)の全体及びその周辺の底壁部2aを覆うように配置されることが好ましい。つまり、LP≦H/2であることが好ましい。これにより、フレーム1に対して荷重が入力された時に、屈曲部6a(曲げ誘起部)及び充填部材5によるエネルギ吸収量を高い質量効率で向上できる。さらに、フレーム1のうち屈曲部6a(曲げ誘起部)から離隔した部分では、当該エネルギ吸収特性が低いが、上記のようにLP≦H/2とすることにより、当該離隔部分に充填部材5を無駄に配置しなくてすむので、充填部材5の配置に伴うフレーム1の不必要な重量増加を抑制できる。
(屈曲部の具体例2)
図84は、フレーム1に設けられた曲げ誘起部(屈曲部)と充填部材5の別の具体例を示す。図84に示すように、フレーム1の底壁部2aに、曲げ誘起部として、角型の屈曲部6bが設けられている。この屈曲部6bは、フレーム1が所定位置で角型に折れ曲がった部分である。屈曲部6bの長手方向Yの両側の底壁部2aは平面状であり、これら平面状の底壁部2aが角度を成して交わる稜線部分が屈曲部6bを構成する。当該屈曲部6bの折れ曲がり位置でフレーム1の曲げ変形が誘起される。
充填部材5は、フレーム1の屈曲部6bの内側に、底壁部2aの内面に密着して設けられる。充填部材5は、屈曲部6bの全体及びその周辺部分の底壁部2aを覆うように配置されており、充填部材5の長手方向Yの両端部5E1、5E2はそれぞれ、屈曲部6bから長手方向Yの両側に、延出長LP、LPだけ延出している。図84に示すように、一側の延出長LPは、充填部材5の長手方向Yの一側端部5E1と、屈曲部6bとの間の距離に相当する。同様に、他側の延出長LPは、充填部材5の長手方向Yの他側端部5E2と、屈曲部6bとの間の距離に相当する。図84に示す例では、両側の延出長LP、LPは同一であるが、いずれか一方の延出長LPが他方の延出長LPより長くてもよい。
そして、上記充填部材5の延出長LPがフレーム1(中空部材10)の断面高さHの2分の1以下となる範囲内で、充填部材5が配置される(LP≦H/2)。これにより、図84に示す屈曲部6bの例でも、上記図83の例の屈曲部6aの場合と同様な効果が得られる。
ここで、図85および図86を参照して、中空部材10の断面高さHについて説明する。
図85は、中空部材10の一例を示す断面図であり、当該中空部材10の長手方向Xに直交する断面を示している。図85に示すように、中空部材10は、ハット型の断面形状を有する第1の構造部材2と、平板状の第2の構造部材3とからなる。第1の構造部材2は、底壁部2aと、底壁部2aの幅方向Zの両側に設けられる一対の側壁部2b、2bと、側壁部2b、2bの端部にそれぞれ設けられる一対のフランジ部2c、2cと、稜線部2d、2d、2e、2eとを有する。一対の側壁部2b、2bの長さは、互いに等しい。第2の構造部材3は、上記底壁部2aに対向して配置される天壁部3aと、上記フランジ部2c、2cに対して接合される一対の接合部3c、3cとを有する。
ここで、中空部材10の断面高さHとは、中空部材10の長手方向Yに直交する断面において、中空部材10の高さ方向Xの最大長である。即ち、断面高さHとは、中空部材10の曲げ変形時に内側となる面(曲げ内側面)と、当該面に対向する面(曲げ外側面)との間の距離のうち、最大の距離をいう。図85に示す中空部材10の例においては、天壁部3aが曲げ内側面に相当し、底壁部2aが曲げ外側面に相当する。そして、天壁部3aと底壁部2aは相互に対向し、かつ相互に平行である。したがって、図85の例の中空部材10の断面高さHは、天壁部3aの外壁面と、天壁部3aに対向する底壁部2aの外壁面との間の高さ方向Xの距離である。
図86は、中空部材10の別の例を示す断面図であり、当該中空部材10の長手方向Xに直交する断面を示している。図86に示す中空部材10の例においても、上記図85の例と同様に、天壁部3aが曲げ内側面に相当し、底壁部2aが曲げ外側面に相当する。一方、図86に示す中空部材10の例においては、第1の構造部材2の底壁部2aと第2の構造部材3の天壁部3aは、相互に平行ではなく、相互に交差する方向に配置されている。したがって、図86の例の中空部材10の断面高さHは、天壁部3aの外壁面と底壁部2aの外壁面との間の高さ方向Xの距離のうち最大の距離、即ち、天壁部3aの外壁面と、稜線部2dの位置における底壁部2aの外壁面との間の距離である。
(穴部の具体例)
図87は、フレーム1に設けられた曲げ誘起部(穴部)と充填部材5の具体例を示す。図87に示すように、フレーム1の底壁部2aに、曲げ誘起部として、穴部60が設けられている。この穴部60は、フレーム1の底壁部2aに貫通形成された開口である。YZ平面視において、穴部60の形状は、例えば、幅方向Zに延びる縦長の長方形状が好適であるが、その他にも、矩形状、多角形状、円形状、楕円形状など任意の形状であってもよい。当該穴部60でフレーム1の曲げ変形が誘起される。
図87に示すように、充填部材5は、フレーム1の穴部60の内側に、当該穴部60の周辺の底壁部2aの内面に密着して設けられる。充填部材5は、穴部60の全体及びその周辺部分の底壁部2aを覆うように配置されている。充填部材5の長手方向Yの両端部5E1、5E2はそれぞれ、穴部60の長手方向Yの両端部60E1、60E2よりも長手方向Yの両側に、延出長LP、LPだけ延出している。延出長LP、LPはそれぞれ、充填部材5の長手方向Yの一側端部5E1又は他側端部5E2と、穴部60の一側端部60E1又は他側端部60E2との間の距離に相当する。前述したように、両側の延出長LP、LPは同一であってもよいし、いずれか一方の延出長LPが他方の延出長LPより長くてもよい。また、上記と同様に、LP≦H/2となる範囲内で、充填部材5が配置される。これにより、図87に示す穴部60の例でも、上記図83の例の屈曲部6aの場合と同様な効果が得られる。
(凹部の具体例)
図88は、フレーム1に設けられた曲げ誘起部(凹部)と充填部材5の具体例を示す。図88に示すように、フレーム1の底壁部2aに、曲げ誘起部として、凹部61が設けられている。この凹部61は、フレーム1の底壁部2aの一部が内側に向けて陥没形成された部分である。YZ平面視において、凹部61の形状は、例えば、幅方向Zに延びる縦長の長方形状が好適であるが、その他にも、矩形状、多角形状、円形状、楕円形状など任意の形状であってもよい。当該凹部61でフレーム1の曲げ変形が誘起される。
図88に示すように、充填部材5は、フレーム1の凹部61の内側に、底壁部2aの内面に密着して設けられる。充填部材5は、凹部61の全体及びその周辺部分の底壁部2aを覆うように配置されており、充填部材5の長手方向Yの両端部5E1、5E2はそれぞれ、凹部61の長手方向Yの両端部61E1、61E2よりも長手方向Yの両側に、延出長LP、LPだけ延出している。延出長LP、LPはそれぞれ、充填部材5の長手方向Yの一側端部5E1又は他側端部5E2と、凹部61の一側端部61E1又は他側端部61E2との間の距離に相当する。前述したように、両側の延出長LP、LPは同一であってもよいし、いずれか一方の延出長LPが他方の延出長LPより長くてもよい。また、上記と同様に、LP≦H/2となる範囲内で、充填部材5が配置される。これにより、図88に示す凹部61の例でも、上記図83の例の屈曲部6aの場合と同様な効果が得られる。
(凸部の具体例)
図89は、フレーム1に設けられた曲げ誘起部(凸部)と充填部材5の具体例を示す。図89に示すように、フレーム1の底壁部2aに、曲げ誘起部として、凸部62が設けられている。この凸部62は、フレーム1の底壁部2aの一部が外側に向けて突出形成された部分である。YZ平面視において、凸部62の形状は、例えば、幅方向Zに延びる縦長の長方形状が好適であるが、その他にも、矩形状、多角形状、円形状、楕円形状など任意の形状であってもよい。当該凸部62でフレーム1の曲げ変形が誘起される。
図89に示すように、充填部材5は、フレーム1の凸部62の内側に、底壁部2aの内面に密着して設けられる。充填部材5は、凸部62の全体及びその周辺部分の底壁部2aを覆うように配置されており、充填部材5の長手方向Yの両端部5E1、5E2はそれぞれ、凸部62の長手方向Yの両端部62E1、62E2よりも長手方向Yの両側に、延出長LP、LPだけ延出している。延出長LP、LPはそれぞれ、充填部材5の長手方向Yの一側端部5E1又は他側端部5E2と、凸部62の一側端部62E1又は他側端部62E2との間の距離に相当する。前述したように、両側の延出長LP、LPは同一であってもよいし、いずれか一方の延出長LPが他方の延出長LPより長くてもよい。また、上記と同様に、LP≦H/2となる範囲内で、充填部材5が配置される。これにより、図89に示す凸部62の例でも、上記図83の例の屈曲部6aの場合と同様な効果が得られる。
(板厚変化部・薄肉部の具体例)
図90は、フレーム1に設けられた曲げ誘起部(板厚変化部)と充填部材5の具体例を示す。図90に示すように、フレーム1の底壁部2aに、曲げ誘起部として、板厚変化部113が設けられている。この板厚変化部113は、鋼板の板厚が異なる第1板厚部111と第2板厚部112との境目の部分であり、例えば、幅方向Zに直線状に設けられる。当該板厚変化部113でフレーム1の曲げ変形が誘起される。
図90に示すように、充填部材5は、フレーム1の板厚変化部113の内側に、底壁部2aの内面に密着して設けられる。充填部材5は、板厚変化部113の全体及びその周辺部分の底壁部2aを覆うように配置されており、充填部材5の長手方向Yの両端部5E1、5E2はそれぞれ、板厚変化部113よりも長手方向Yの両側に、延出長LP、LPだけ延出している。延出長LP、LPはそれぞれ、充填部材5の長手方向Yの一側端部5E1又は他側端部5E2と、板厚変化部113との間の距離に相当する。前述したように、両側の延出長LP、LPは同一であってもよいし、いずれか一方の延出長LPが他方の延出長LPより長くてもよい。また、上記と同様に、LP≦H/2となる範囲内で、充填部材5が配置される。これにより、図90に示す板厚変化部113の例でも、上記図83の例の屈曲部6aの場合と同様な効果が得られる。
(異強度部・強度変化部の具体例)
図91は、フレーム1に設けられた曲げ誘起部(異強度部)と充填部材5の具体例を示す。図91に示すように、フレーム1の底壁部2aに、曲げ誘起部として、異強度部63が設けられている。この異強度部63は、フレーム1の底壁部2aの強度が部分的に低下した部分であり、例えば、幅方向Zに延びる帯状に設けられる。当該異強度部63でフレーム1の曲げ変形が誘起される。
図91に示すように、充填部材5は、フレーム1の異強度部63の内側に、底壁部2aの内面に密着して設けられる。充填部材5は、異強度部63の全体及びその周辺部分の底壁部2aを覆うように配置されており、充填部材5の長手方向Yの両端部5E1、5E2はそれぞれ、異強度部63の長手方向Yの両端部63E1、63E2よりも長手方向Yの両側に、延出長LP、LPだけ延出している。延出長LP、LPはそれぞれ、充填部材5の長手方向Yの一側端部5E1又は他側端部5E2と、異強度部63の一側端部63E1又は他側端部61E2との間の距離に相当する。前述したように、両側の延出長LP、LPは同一であってもよいし、いずれか一方の延出長LPが他方の延出長LPより長くてもよい。また、上記と同様に、LP≦H/2となる範囲内で、充填部材5が配置される。これにより、図91に示す異強度部63の例でも、上記図83の例の屈曲部6aの場合と同様な効果が得られる。
以上、第1の観点から、各々の曲げ誘起部の例における充填部材5の配置範囲について説明した。
充填部材5は、少なくとも曲げ誘起部に配置されることで、曲げ誘起部により誘起される曲げ変形時に生じるフレーム1の断面変形を抑制し、フレーム1の耐荷重性能を高く維持することができる。さらに、充填部材5は、曲げ誘起部及びその周辺部分を覆うように配置されることで、曲げ誘起部により誘起される曲げ変形時に生じるフレーム1の面外変形をより抑制し、フレーム1の耐荷重性能をより高く維持することができる。よって、荷重入力時のフレーム1のエネルギ吸収量をより向上させることができる。
加えて、曲げ誘起部から又は曲げ誘起部の端部からの充填部材5の延出長LP、LPが、フレーム1(中空部材10)の断面高さHの2分の1以下となる範囲内で(LP≦H/2)、充填部材5は、曲げ誘起部の長手方向Yの全体及びその周辺部分を覆うように配置される。これにより、フレーム1の衝突安全性能の向上効果が低い範囲には充填部材5が配置されなくなる。したがって、充填部材5の配置に伴うフレーム1の不必要な重量増加を軽減することが可能である。このように、LP≦H/2を満たすように、充填部材5を配置することで、荷重入力時のエネルギ吸収量を高い質量効率で向上させることができる。
・第2の観点
続いて、図92〜図94を参照して、フレーム1(中空部材10)をX軸方向から見たときの充填部材5の配置範囲について説明する。
図92は、X軸方向から見たときのフレーム1の具体例を示す平面図である。図92に示した例では、フレーム1に、曲げ誘起部として穴部60cが設けられている。穴部60cは、上記図48を参照して説明したように、中空部材10の底壁部2aにおいて、幅方向Zに沿って延びる縦長の略長方形状に設けられる。
充填部材5は、穴部60cにおいて、中空部材10に密着して設けられている。詳しくは、充填部材5は、長手方向Yにおいて、穴部60cの全部と、穴部60cの端部60cE1又は端部60cE2を越えて穴部60cの周辺部分の底壁部2aに至るまでの範囲にわたって配置されている。充填部材5のうち、穴部60cの端部60cE1又は端部60cE2を越える部分は、底壁部2aの内面に密着して配置されている。また、充填部材5は、幅方向Zにおいて、穴部60cの全部、及び穴部60cの端部60cE3又は端部60cE4を越えて、穴部60cの周辺部分の底壁部2aに至るまでの範囲にわたって配置されている。充填部材5のうち、穴部60cの端部60cE3又は端部60cE4を越える部分は、底壁部2aの内面に密着して配置されている。
図92に示した例では、充填部材5は、穴部60cの全部を覆うように配置される。そのため、穴部60cにおける長手方向Yのいずれの領域で屈曲が生じる場合であっても、少なくとも充填部材5が配置された領域において曲げ変形が生じる。したがって、穴部60cにおける長手方向Yのいずれの領域で屈曲が生じる場合であっても、フレーム1の面外変形を抑制し、フレーム1の耐荷重性能を高く維持することができる。よって、荷重入力時のフレーム1のエネルギ吸収量を向上させることができる。
図93は、X軸方向から見たときのフレーム1の別の具体例を示す平面図である。穴部60cは、中空部材10の底壁部2aにおいて、幅方向Zに沿って延びる縦長の略長方形状に設けられる。この穴部60cは、図93に示したフレーム1における曲げ誘起部に相当する。
充填部材5は、穴部60cの一部を覆うように、中空部材10の底壁部2aの内面に密着して設けられている。詳しくは、充填部材5は、長手方向Yにおいて、穴部60cの長手方向Yの一側部分(領域601)を覆い、他側部分(領域602)を覆わないように配置され、かつ、穴部60cの長手方向Yの一方の端部60cE1を越えて底壁部2aに至るまでの範囲にわたって配置されている。充填部材5のうち、穴部60cの端部60cE1を越える部分は、底壁部2aの内面に密着して配置されている。一方で、充填部材5は、幅方向Zにおいて、穴部60cの全部(領域601)を覆い、かつ、穴部60cの端部60cE3又は端部60cE4を越えて底壁部2aに至るまでの範囲にわたって配置されている。充填部材5のうち、穴部60cの端部60cE3又は端部60cE4を越える部分は、底壁部2aの内面に密着して配置されている。
図93に示した例では、充填部材5は、穴部60cの長手方向Yにおける一部(領域601)に配置され、穴部60cの他の一部(領域602)に配置されない。少なくとも領域602に充填部材5が配置されないので、充填部材5の配置に伴うフレーム1の重量増加を軽減することができる。一方で、領域602は、充填部材5が配置されないので、充填部材5によるフレーム1の変形に対する抵抗効果が得られない。従って、領域602は、領域601と比較して屈曲しやすい。ここで、領域602の近傍である領域601に充填部材5が配置されている。したがって、領域602で屈曲が生じる場合に、領域601に配置された充填部材5は、かかる屈曲に伴い生じるフレーム1の面外変形を、屈曲が生じる部分の近傍で抑制することができる。他方、領域601で屈曲が生じる場合には、充填部材5は、当該部分におけるフレーム1の面外変形を抑制することができる。このように、穴部60cにおける長手方向Yのいずれの領域で屈曲が生じる場合であっても、フレーム1の面外変形を抑制し、フレーム1の耐荷重性能を高く維持することができる。よって、荷重入力時のフレーム1のエネルギ吸収量を向上させることができる。
図94は、X軸方向から見たときのフレーム1の別の具体例を示す平面図である。穴部60cは、中空部材10の底壁部2aにおいて、幅方向Zに沿って延びる縦長の略長方形状に設けられる。この穴部60cは、図94に示したフレーム1における曲げ誘起部に相当する。
充填部材5は、穴部60cの一部を覆うように、中空部材10の底壁部2aの内面に密着して設けられている。詳しくは、充填部材5は、穴部60cの幅方向Zの中心部分(領域603)を覆い、幅方向Zの両側部分(領域604、604)を覆わないように配置されている。また、充填部材5は、穴部60cの長手方向Yの端部60cE1又は端部60cE2を越えて、穴部60cの周辺部分の底壁部2aに至るまでの範囲にわたって配置されている。充填部材5のうち、穴部60cの端部60cE1又は端部60cE2を越える部分は、底壁部2aの内面に密着して配置されている。
図94に示した例では、充填部材5は、穴部60cの幅方向Zにおける一部(領域603)に配置され、穴部60cの他の一部(領域604)に配置されない。少なくとも領域604に充填部材5が配置されないので、充填部材5の配置に伴うフレーム1の重量増加を軽減することができる。一方で、充填部材5は、穴部60cの長手方向Yの全部を占める領域603に配置されている。そのため、穴部60cにおける長手方向Yのいずれの領域で屈曲が生じる場合であっても、少なくとも充填部材5が配置された領域603において曲げ変形が生じる。したがって、穴部60cにおける長手方向Yのいずれの領域で屈曲が生じる場合であっても、フレーム1の面外変形を抑制し、フレーム1の耐荷重性能を高く維持することができる。よって、荷重入力時のフレーム1のエネルギ吸収量を向上させることができる。
・第3の観点
続いて、図95〜図98を参照して、フレーム1(中空部材10)をY軸方向から見たときの充填部材5の配置範囲について説明する。なお、以下では一例として、中空部材10の断面形状が円形又は楕円である場合について説明する。図95〜図98はそれぞれ、Y軸方向に直交する断面におけるフレーム1及び充填部材5の具体例を示す断面図である。
図95に示した例では、中空部材10の断面形状は円形である。充填部材5は、図示しない曲げ誘起部(例えば、穴部60)において中空部材10の内面に密着して配置されている。充填部材5は、中空部材10の内面に密着する円弧状の密着面501と、中空部材10の内面に接触しない湾曲状の解放面502と、から成る。充填部材5は、中空部材10の断面において、中空部材10の境界19よりも、曲げ誘起部のある側(例えば、穴部60が形成された側)に配置されることが望ましい。更に、解放面502が境界19を超えない範囲に充填部材5が配置されることが望ましい。
なお、境界とは、断面の曲げ方向の高さを半分に分割する面である。換言すると、断面において曲げ方向の高さの中心で定義される面である。境界19は曲げ変形時にかかる応力が概ねゼロである面である。曲げ変形時にかかる応力がゼロである面を曲げの中立面と定義すると、曲げの中立面と境界19は厳密には異なる。曲げの中立面と境界19が一致しないのは、次の理由による。構造材の圧縮と引張の剛性が異なること、構造材の板厚がどれも同じとは限らないこと、充填部材5がある側が変形しにくく中立面が充填部材5側に移動すること、曲げ変形が軸方向に圧縮又は引張の変形も伴うこと、等である。しかし、曲げの中立面と境界19とが大きく乖離することはないので、境界19を曲げの中立面とみなす。なお、曲げ方向は断面の重心から曲げ誘起部に向かう方向である。中空部材10は、曲げ誘起部で座屈し、屈曲するからである。一つの断面に複数の曲げ誘起部がある場合、曲げ方向はそれぞれの曲げ誘起部の曲げのベクトルを合わせた方向である。曲げのベクトルの大きさは、曲げ誘起部の種類、位置、大きさ等によって変化する。例えば、曲げ誘起部が小さい場合、その曲げ誘起部による曲げのベクトルは小さい。実際の中空部材10の設計では曲げたい箇所で確実に座屈するよう曲げ誘起部を設けるので、最も大きな曲げ誘起部を一つか二つ考慮すれば、曲げ方向は推定できる。例えば、ある面を曲げる場合、当該面の両側の稜線に曲げ誘起部を設ける。この場合、稜線に設けられた二つの曲げ誘起部を見れば、曲げ方向が重心から当該面に向かう方向であることは容易にわかる。
充填部材5のヤング率は中空部材10を構成する金属板に比べ低い。従って、充填部材5は、応力が付与されると容易に変形する。この充填部材5が中空部材10の変形を抑制するのは、中空部材10のうち、圧縮応力を付与された箇所が面外変形するのを抑制するからである。すなわち、充填部材5が中空部材10の面外変形を阻害するからである。故に、充填部材5は中空部材10の変形時に圧縮変形する面に密着して配置されることが効果的である。更に、充填部材5の質量対効果の観点では、全ての充填部材5は、中空部材10の変形時に圧縮変形する面に密着して配置されることが最も望ましい。中空部材10の変形時に圧縮変形する面とは、中空部材10の境界19よりも、曲げ誘起部のある側の面(中空部材10を構成する金属板)である。
このことから、充填部材5は、中空部材10の曲げ誘起部のある断面において、断面の重心から曲げ誘起部に向かう方向で定義される断面の高さ方向で断面を2等分する境界19より曲げ誘起部のある側に密着して配置されることが望ましい。
図96に示した例では、中空部材10の断面形状は楕円である。充填部材5は、図示しない曲げ誘起部において中空部材10の内面に密着して配置されている。充填部材5は、中空部材10の内面に密着する湾曲状の密着面503と、直線状の解放面504と、から成る。充填部材5は、中空部材10の断面において、中空部材10の境界19よりも曲げ内側に配置される。つまり、解放面504が境界19を超えない範囲に充填部材5が配置される。
図97に示した例では、中空部材10の断面形状は円形である。充填部材5は、図示しない曲げ誘起部において中空部材10の内面に密着して配置されている。充填部材5は、中空部材10の内面に密着する円弧状の密着面505と、一対の直線状の第1の解放面506、507と、円弧状の第2の解放面508と、から成る。充填部材5は、中空部材10の断面において、中空部材10の境界19よりも曲げ内側に配置される。つまり、第1の解放面506及び507が境界19を超えない範囲に充填部材5が配置される。
図98に示した例では、中空部材10の断面形状は円形である。充填部材5は、図示しない曲げ誘起部において中空部材10の内面に密着して配置されている。壁穴21は、中空部材10の図示しない曲げ誘起部の近傍に設けられている。充填部材5は、上記第4の実施形態において説明したように、壁穴21を貫通して中空部材10に密着する。詳しくは、充填部材5は、中空部材10の内壁面に密着する第1充填部分51と、中空部材10の外壁面に密着する第2充填部分52と、壁穴21に密着して設けられ第1充填部分51と第2充填部分52とを連結する第3充填部分53と、を備える。充填部材5は、中空部材10の断面において、中空部材10の境界19よりも曲げ内側に配置される。つまり、第1充填部分51が境界19を超えない範囲に充填部材5が配置される。
図95〜図98に示したように、充填部材5は、中空部材10の断面において、中空部材10の境界19よりも曲げ誘起部により誘起される曲げ内側に配置される。境界19は、曲げ変形時にかかる応力がゼロであり、境界19付近は曲げ変形時にかかる応力が少ない。そのため、境界19では中空部材10に面外変形が生じにくい。充填部材の配置範囲が境界19よりも曲げ内側に限定されることで、少なくとも境界19よりも曲げ外側の、面外変形が生じにくい境界19付近の領域に、充填部材5が配置されなくなる。したがって、充填部材5による衝突安全性能の質量効率を維持することができる。他方、図129および図130を参照すると、曲げ外側よりも曲げ内側の方が大きな面外変形が生じている。そのため、充填部材5を中空部材10の境界19よりも曲げ内側に配置することで、曲げ内側で生じる大きな面外変形を効果的に抑制することが可能となる。このようにして、フレーム1の衝突安全性能を高い質量効率で向上させることができる。
<<9.実施例>>
次に、本発明の実施例について説明する。
<9.1.第1の実施形態に関する実施例>
本発明の効果を確認するために、以下で説明する実施例では、レインフォースメントおよび充填部材によるフレームの衝突安全性能の向上効果について検証した。なお、以下の実施例は本発明の効果を検証するために行ったものに過ぎず、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
本発明者らはレインフォースメントおよび充填部材によるフレームの衝突安全性能の向上効果について検証するために、シミュレーションを用いて、各種フレームの衝突エネルギ吸収量(Energy Absorption;E.A.(kJ))に対する衝突時のストロークSt(mm)を算出した。ストロークStとは、図5に示すように、フレーム1の衝突側の端面を起点とする、衝突物体の移動量を示す。つまり、同一のE.A.に対してストロークStが短いほど、衝突安全性能が高いと言える。
本実施例におけるサンプルとして、従来のフレーム(参考例1)、本実施形態に係る中空部材10のみにより構成されるフレーム(比較例1)、本実施形態に係る中空部材10の内側にレインフォースメント4のみが設けられたフレーム(比較例2)、本実施形態に係る中空部材10の内側に隙間なく充填部材5のみが設けられたフレーム(比較例3)、および本実施形態に係る中空部材10の内側にレインフォースメント4および接着して固定された充填部材5が設けられたフレーム(実施例1)を用意した。なお、参考例1、各比較例および実施例1における中空部材10の内側におけるレインフォースメント4、充填部材5および屈曲部6の配置位置は、図5、図6および図7に示す配置位置と同一である。図5、図6および図7に示す構成から、充填部材5が除かれたものが比較例2であり、レインフォースメント4が除かれたものが比較例3、レインフォースメント4および充填部材5の両方が除かれたものが参考例1および比較例1である。
なお、本実施例において用いられた各フレームの各寸法(図5参照)は、以下の通りである(単位はmm)。
LFL=500
DFL1=70
DFL2=90
LR=240
SFL=60
LFMA=70
LFMB=70
各フレームに関するパラメータは下記表1のとおりである。
また、第1の構造部材、第2の構造部材およびレインフォースメントはいずれも鋼板により形成されている。また、充填部材の材質はポリウレタン(ヤング率=100MPa)である。
各サンプルに係るフレームの長手方向における端部に衝突荷重を入力し、衝突物体のストロークに対するE.A.について算出した。また、衝突シミュレーション後の比較例2および実施例1に係るフレームの屈曲部における断面形状について比較を行った。
まず、衝突シミュレーション後の比較例2および実施例1に係るフレームの屈曲部における断面形状について説明する。図99および図100は、比較例2および実施例1に係るフレームの屈曲部における断面形状の衝突シミュレーション前後の変化を示す図である。図99に示すように、比較例2に係るフレーム1のレインフォースメント4の主面部4aにおいてX軸方向に面外変形し、座屈が生じている。また、底壁部2a、側壁部2bおよび稜線部2dにおいてもそれぞれ面外変形が生じている。そのため、中空部材10の断面形状が大きく変化している。これは、主面部4aが面外変形することにより、レインフォースメント4による中空部材10の断面変形の抑制効果が失われたためであると考えられる。
一方、図100に示すように、実施例1に係るフレーム1のレインフォースメント4の主面部4aにおいて面外変形は生じていない。また、中空部材10の断面形状は衝突前後において変化していない。これは、レインフォースメント4に密着して配置された充填部材5Aによりレインフォースメント4の面外変形を抑制する効果が発揮されているためであると考えられる。したがって、レインフォースメント4による中空部材10の断面変形の抑制効果が発揮されていると考えられる。
次に、衝突物体のストロークに対するE.A.についての算出結果について説明する。図101は、各サンプルに係るフレームの、ストロークStに対するE.A.を示すグラフである。各サンプルに係るフレームは、E.A.=14kJにおいてほぼ完全に座屈する。また、図102は、各サンプルに係るフレームのE.A.=14kJに対するストロークSt14kJを示すグラフである。図102に示すように、実施例1に係るフレームのストロークSt14kJは、他の比較例に係るフレームのストロークSt14kJよりも小さい。さらに、参考例1と比較すると、実施例1に係るフレームの重量が約30%低いにもかかわらず、フレームのストロークSt14kJが同等の水準であることが示された。
また、図101に示すように、実施例1に係るフレームのストロークStの増加に対するE.A.の増加率が、他の比較例に係るフレームと比較して大きいことが示された。これは、衝突荷重の入力による屈曲部におけるフレームの断面形状が維持されていることにより、断面形状の変化が生じている他のフレームよりも衝突エネルギ吸収量が大きくなるためと考えられる。
図103は、比較例1に係るフレームのストロークSt14kJに対する、比較例2、比較例3および実施例1に係るフレームのストロークSt14kJの改善代を示すグラフである。図103に示すように、実施例1に係るフレームのストロークSt14kJの改善代は、比較例2に係るフレームのストロークSt14kJの改善代および比較例3に係るフレームのストロークSt14kJの改善代の和よりも大きい。この結果から、レインフォースメントに対して充填部材を密着して配置させることにより、レインフォースメントによるフレームの断面形状の変化の抑制を、より効果的に実現できることが明らかとなった。
本実施例より、実施例1に係るフレームでは、衝突荷重の入力によるフレームの断面形状の変化を抑制することができる。これにより、軽量化が施されたフレームにおいても、衝突安全性能を確保することが可能となることが示された。
<9.2.第2の実施形態に関する実施例>
本発明の効果を確認するために、以下で説明する実施例では、充填部材5によるフレームの衝突安全性能の向上効果について検証した。なお、以下の実施例は本発明の効果を検証するために行ったものに過ぎず、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。また、各実施例に係る充填部材については、特に区別しない限り、「充填部材5」と称して説明する。
本発明者らは充填部材5によるフレームの衝突安全性能の向上効果について検証するために、シミュレーションを用いて、同一の衝突荷重に対する各種フレームの最大荷重Lmax(kN)を算出した。最大荷重Lmaxとは、フレーム1に対して衝突荷重Fが入力された際のフレーム1に関する荷重−ストローク曲線における最大の荷重値を意味する。つまり、同一の衝突荷重に対して最大荷重Lmaxが大きいほど、耐荷重性能が高く、すなわち、衝突安全性能が高いと言える。
本実施例においては、図12に示すフレーム1の屈曲部6Aおよび6Bの内側に充填部材5を所定の部分に密着して配置させ、当該フレーム1の長手方向における端部に対して不図示の衝突体を衝突させた。これにより、衝突荷重Fがフレーム1に対して入力される。衝突荷重Fの入力後における当該衝突体の最大荷重Lmaxを各実施例および参考例について解析し、結果について検討した。
まず本実施例の試験条件について示す。本実施例において用いられたフレーム1の各寸法(図12参照)は、以下の通りである(単位はmm)。
LFL=500
DFL1=70
DFL2=90
SFL=60
LFMA=70
LFMB=70
また、第1の構造部材2の板厚は2.0mmであり、第1の構造部材2の強度は780MPaである。また、第2の構造部材3の板厚は1.5mmであり、第2の構造部材3の強度は690MPaである。また、フレーム1の重量は、3.63kgである。
各実施例に係る屈曲部6Aにおける充填部材5の配置は以下の通りである。括弧内の数値は、充填部材5の肉厚および配置位置に関する値である。
実施例1:図13に示す配置(a=10mm、b1=15mm、b2=15mm)
実施例2:図15に示す配置(a=10mm)
実施例3:図15に示す配置(a=3mm)
実施例4:図15に示す配置(a=30mm)
実施例5:図15に示す配置(a=50mm)
実施例6:図16に示す配置(a1、a2、c1、c2=10mm)
実施例7:図17に示す配置(a、c=10mm)
実施例8:図18に示す配置(a1、a2=10mm)
実施例9:図19に示す配置(a=10mm)
実施例10:図20に示す配置(a1、a2、a3=10mm)
実施例1〜8に係る充填部材5は底壁部2aの内面(および稜線部2dの内側)に密着して配置されている。一方、屈曲部6Bにおいては、当該実施例に係る充填部材5は、X方向に反転し、天壁部3aの内面(および稜線部2eの内側)に密着して配置されている。例えば、屈曲部6Bにおいて、実施例1は図14の配置になっている。また、実施例9および10に係る充填部材5は、屈曲部6Bにおいても、底壁部2aおよび天壁部3aの内面に密着して配置される。
ここで、充填部材5の密度は176kg/m3とし、充填部材5のヤング率および降伏応力は100MPaおよび2.1MPaとした。
また、参考例においては、フレーム1には充填部材5が設けられない。
表2に、各実施例および参考例に係るフレーム1の総重量および充填部材5の重量を示す。
フレーム1の端部に対して衝突する衝突体の重量は201kgとし、フレーム1の端部に衝突する際の当該衝突体の速度は12m/sとした。
各実施例および参考例に係る充填部材5の重量、フレームの最大荷重量Lmax、および荷重改善率IL(kN/g)を表3に示す。なお、最大荷重量Lmaxとは、フレームが衝突荷重に対して耐え得る荷重である。また、荷重改善率ILとは、参考例に係るフレームの最大荷重と、一の例に係るフレームの最大荷重との差を、当該一の例に係るフレームに設けられた充填部材5の重量(g)で除した値である。すなわち、荷重改善率ILは、充填部材5による耐荷重性能の質量効率を示す値である。
実施例1と実施例2とを比較すると、最大荷重量Lmaxについては同一の結果を示したが、荷重改善率ILについては実施例1の方が良い結果を示した。したがって、充填部材5を底壁部2a(天壁部3a)の中央部分に配置することにより、耐荷重性能に関する充填部材5の質量効率を向上させることができる。したがって、車両の軽量化をより進めることが可能となる。
実施例2〜5を比較すると、充填部材5の肉厚aを増加に応じて、最大荷重量Lmaxおよび荷重改善率ILの双方がより向上する結果が示された。したがって、フレームに要求される衝突安全性能に応じて底壁部2a(天壁部3a)の内面に配置される充填部材5の充填量を調整することにより、適切な耐荷重性能を確保しつつ、車両の軽量化を達成することができる。
実施例6および8、並びに実施例7および9を比較すると、最大荷重量Lmaxについて、実施例8および9の方が良い結果を示した。したがって、側壁部2bの内面に充填部材5を密着して配置させることにより、単に稜線部2d(2e)の内側に充填部材5を密着して配置させるよりも、フレーム1の耐荷重性をさらに高めることができる。
実施例10については、高い最大荷重量Lmaxが得られた。このことから、充填部材5を底壁部2a(天壁部3a)のみならず、稜線部2d(2e)および側壁部2bに連続的に密着して配置することにより、フレーム1の衝突エネルギの吸収特性を向上させるだけではなく、フレーム1の耐荷重性能もさらに向上させることができる。
以上、上記実施例に示したように、充填部材5を主として底壁部2a(天壁部3a)の内面に密着して配置することにより、薄肉化されたフレーム1の耐荷重性能を高く維持することが可能である。
<9.3.第3の実施形態に関する実施例>
本発明の効果を確認するために、以下で説明する実施例では、充填部材5によるフレームの衝突安全性能の向上効果について検証した。なお、以下の実施例は本発明の効果を検証するために行ったものに過ぎず、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。また、各実施例に係る充填部材については、特に区別しない限り、「充填部材5」と称して説明する。
本発明者らは充填部材5によるフレームの衝突安全性能の向上効果について検証するために、シミュレーションを用いて、同一の衝突エネルギ吸収量(Energy Absorption:E.A.)に対する各種フレームのストロークSt(mm)を算出した。ストロークStとは、図22に示すように、フレーム1の衝突側の端面を起点とする、衝突体の移動量を示す。つまり、同一の衝突エネルギ吸収量に対してストロークStが短いほど、衝突エネルギの吸収特性が高く、すなわち、衝突安全性能が高いと言える。
本実施例においては、図22に示すフレーム1の屈曲部6Aおよび6Bの内側に充填部材5を所定の部分に密着して配置させ、当該フレーム1の長手方向における端部に対して不図示の衝突体を衝突させた。これにより、衝突荷重Fがフレーム1に対して入力される。衝突荷重Fの入力後における当該衝突体の最大ストロークStmaxを各実施例および参考例について解析し、結果について検討した。
まず本実施例の試験条件について示す。本実施例において用いられたフレーム1の各寸法(図22参照)は、以下の通りである(単位はmm)。
LFL=500
DFL1=70
DFL2=90
SFL=60
LFMA=70
LFMB=70
また、第1の構造部材2の板厚は2.0mmであり、第1の構造部材2の強度は780MPaである。また、第2の構造部材3の板厚は1.5mmであり、第2の構造部材3の強度は690MPaである。また、フレーム1の重量は、3.63kgである。
各実施例に係る屈曲部6Aにおける充填部材5の配置は以下の通りである。括弧内の数値は、充填部材5の肉厚および配置位置に関する値である。
実施例1:図23に示す配置(a=10mm)
実施例2:図24に示す配置(a1、a2=10mm)
実施例3:図25に示す配置(a1、a2=10mm、b1〜b4=15mm)
実施例4:図26に示す配置(a1〜a3=10mm)
実施例5:図27に示す配置(a1、a2、c1、c2=10mm)
実施例6:図28に示す配置(a、c=10mm)
実施例7:図29に示す配置(a=10mm)
実施例8:図29に示す配置(a=3mm)
実施例9:図29に示す配置(a=30mm)
実施例10:図29に示す配置(a=50mm)
実施例4〜10に係る充填部材5は底壁部2aの内面(および稜線部2dの内側)に密着して配置されている。一方、屈曲部6Bにおいては、当該実施例に係る充填部材5は、X方向に反転し、天壁部3aの内面(および稜線部2eの内側)に密着して配置されている。
ここで、充填部材5の密度は176kg/m3とし、充填部材5のヤング率および降伏応力は100MPaおよび2.1MPaとした。
また、参考例においては、フレーム1には充填部材5が設けられない。
表4に、各実施例および参考例に係るフレーム1の総重量および充填部材5の重量を示す。
フレーム1の端部に対して衝突する衝突体の重量は201kgとし、フレーム1の端部に衝突する際の当該衝突体の速度は12m/sとした。
各実施例および参考例に係る充填部材5の重量、フレームに対する衝突体の最大ストロークStmax、およびストローク改善率ISt(mm/g)を表5に示す。なお、最大ストロークStmaxとは、図22に示すように、フレーム1の衝突側の端面を起点とする、所定のE.A.を有する衝突物体がフレーム1に衝突した後のフレーム1の長手方向における最大の移動量を示す。また、ストローク改善率IStとは、参考例に係るフレームの最大ストロークと、一の例に係るフレームの最大ストロークとの差を、当該一の例に係るフレームに設けられた充填部材5の重量(g)で除した値である。すなわち、ストローク改善率IStは、充填部材5による衝突エネルギの吸収特性の質量効率を示す値である。
また、実施例1と実施例2とを比較すると、最大ストロークStmaxについては実施例2の方が良い結果を示したが、ストローク改善率IStは同一であった。したがって、フレームに要求される衝突安全性能に応じて側壁部2bの内面に配置される充填部材5の充填量を調整することにより、適切な衝突エネルギの吸収特性を確保しつつ、車両の軽量化を達成することができる。
また、実施例1と実施例3とを比較すると、実施例1の方が充填部材5の重量が小さく、かつ、最大ストロークStmaxが小さいという結果が得られた。また、実施例5および6に示すように、稜線部2dの内側にのみ配置させる場合においても、高いストローク改善率Istが得られた。このことから、充填部材5を稜線部2d(2e)の内側に密着して配置することにより、フレーム1の衝突エネルギの吸収特性をより効果的に向上させることができることが示された。
また、実施例4については、最も低い最大ストロークStmaxが得られた。このことから、フレーム1の衝突安全性能を最大限高めるためには、充填部材5を側壁部2bの内面のみならず、底壁部2a(天壁部3a)の内面、および稜線部2d(2e)の内側に密着して配置することが好ましいことが示された。
また、実施例7、9および10と実施例6とを比較すると、最大ストロークStmaxについて、実施例7、9および10の方が良い結果を示した。したがって、底壁部2a(天壁部3a)の内面に充填部材5を密着して配置させることにより、単に稜線部2d(2e)の内側に充填部材5を密着して配置させるよりも、衝突時のストロークをさらに減少させることができる。
以上、上記実施例に示したように、充填部材5を主として側壁部2bの内面に密着して配置することにより、薄肉化されたフレーム1の衝突エネルギの吸収特性を高く維持することが可能である。
<9.4.第4の実施形態に関する実施例>
本発明の効果を確認するために、以下で説明する実施例では、上記実施形態に係る充填部材(例えば、樹脂材)の中空部材(例えば、金属部材)に対する密着性の向上効果について検証した。なお、以下の実施例は本発明の効果を検証するために行ったものに過ぎず、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
本発明者らは、充填部材の中空部材に対する密着性の向上効果について検証するために、十字引張試験によるCTS(Cross Tension Strength:十字剥離強さ)を評価した。より詳細には、本試験では、実施例および比較例ごとに十字引張試験片を準備し、これらについて引張試験を行い、その継手強度であるCTSを評価した。継手強度の大小が、充填部材の中空部材に対する密着性の大小に対応する。
図104は、実施例1および実施例2に係る十字引張試験に用いられるサンプルの構成を示す上面図である。また、図105は、実施例1に係るサンプルの構成を示す側方断面図である。図104および図105に示すように、実施例1に係るサンプルは、第1試験片101および第2試験片102との間に充填部材50を充填して硬化させることにより第1試験片101および第2試験片102を接合した、十字引張試験片である。また、第1試験片101および第2試験片102の中心には、壁穴103、104が設けられている。壁穴103、104の直径は、それぞれ22mmである。
充填部材50の一部は、かかる壁穴103、104から膨出し、第1試験片101および第2試験片102の外壁面に密着する第2充填部分52となる。また、第1試験片101および第2試験片の内壁面に密着する第1充填部分51と第2充填部分52とは、壁穴103、104に密着して設けられる第3充填部分53により接続される。すなわち、充填部材50は、第1試験片101および第2試験片102に、接着力により、および機械的に係止されて接合された状態である。
図106は、実施例2に係るサンプルの構成を示す側方断面図である。図106に示すように、実施例2に係るサンプルは、第1試験片201および第2試験片202との間に充填部材50を充填して硬化させることにより第1試験片201および第2試験片202を接合した、十字引張試験片である。また、実施例1と同様に、実施例2に係る第1試験片201および第2試験片202の中心には、壁穴203、204が設けられている。壁穴203、204にはバーリング加工が施されており、壁穴203、204の穴縁端は、互いに対向する方向に突出している。壁穴203、204のバーリング加工後の直径は、それぞれ22mmである。
充填部材50の一部は、かかる壁穴203、204から膨出し、第1試験片201および第2試験片202の外壁面に密着する第2充填部分52となる。また、第1試験片201および第2試験片の内壁面に密着する第1充填部分51と第2充填部分52とは、壁穴203、204に密着して設けられる第3充填部分53により接続される。すなわち、充填部材50は、第1試験片201および第2試験片202に、接着力により、および機械的に係止されて接合された状態である。
図107は、比較例に係るサンプルの構成を示す側方断面図である。図107に示すように、比較例に係るサンプルは、第1試験片931および第2試験片932との間に充填部材50を充填して硬化させることにより第1試験片931および第2試験片932を接合した、十字引張試験片である。なお、比較例に係る第1試験片931および第2試験片932の中心には、壁穴は設けられていない。したがって、充填部材50は、第1試験片931および第2試験片932に接着力のみにより接合された状態である。
各実施例および比較例に用いた第1試験片、第2試験片および充填部材の特性およびサイズは以下の通りである。
−第1試験片、第2試験片
引張強度:1180MPa
サイズ :幅50mm、長さ150mm、厚さ1.4mm
表面処理:合金化溶融亜鉛めっき
−充填部材
材質:ポリウレタン
厚さ:10mm
また、各実施例および比較例の第1試験片および第2試験片の両端側には、引張試験時にこれらを引張方向に引っ張るための治具を固定するための固定穴(直径20mm)が設けられている。
十字引張試験では、各実施例および比較例に係るサンプルを1mm/minの速度で引っ張り、最大荷重(N)を計測した。なお、各実施例および比較例に係るサンプル数はそれぞれ2とした。
図108は、十字引張試験により計測された各サンプルの最大荷重を示すグラフである。なお、実施例1−1および実施例1−2のグラフは実施例1に係るサンプルの試験結果の各々を示す。また、実施例2−1および2−2のグラフは実施例2に係るサンプルの試験結果の各々を示す。また、比較例1および比較例2のグラフは比較例に係るサンプルの試験結果の各々を示す。
図108に示すように、実施例1および実施例2に係るサンプルの最大荷重は、比較例に係るサンプルの最大荷重よりも顕著に大きいことが示された。この結果から、充填部材を中空部材に相当する試験片に単に接着させるよりも、充填部材を当該試験片の両面に密着させて当該試験片に係止させることで、試験片に高負荷が与えられても、充填部材が試験片に密着した状態を維持することができることが示された。
また、実施例1と実施例2とを比較すると、実施例2に係るサンプルの最大荷重が実施例1に係るサンプルの最大荷重よりも大きいことが示された。この結果から、バーリング加工された壁穴の穴縁端に充填部材が食い込まれるように設けられることで、試験片と充填部材との継手強度をより高くすることができることが示された。
以上、上記実施例に示したように、充填部材を中空部材に相当する試験片に設けられた穴に貫通させて当該試験片の両面に密着させることで、試験片に高負荷が与えられても、充填部材は試験片から容易に脱落しにくくなる。このことから、壁穴を介して充填部材を中空部材に係止する構成とすることにより、充填部材を中空部材に密着した状態を維持させることが可能となる。すなわち、衝突荷重により中空部材に面外変形を生じさせ得る負荷が与えられても、充填部材が車両用構造部材の衝突安全性能に安定して貢献することが可能である。
<9.5.充填部材の配置範囲に関する実施例>
本発明の効果を確認するために、以下で説明する実施例では、充填部材5によるフレームの衝突安全性能の向上効果について検証した。なお、以下の実施例は本発明の効果を検証するために行ったものに過ぎず、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。また、各実施例に係る充填部材については、特に区別しない限り、「充填部材5」と称して説明する。
本発明者らは充填部材によるフレームの衝突安全性能の向上効果について検証するために、シミュレーションを用いて、同一のストロークSt(mm)に対する各種フレームのエネルギ吸収量(Energy Absorption;E.A.(kJ))を算出した。ストロークStとは、図109に示す、フレーム1の衝突側の端面を起点とする、衝突体の移動量を示す。つまり、同一のストロークStに対するE.A.が高いほど、衝突安全性能が高いと言える。
図109は、一実施形態に係る実施例のシミュレーション設定を説明するための図である。図109に示すように、本実施例に係るフレーム1は、ハット型の断面形状の第1の構造部材2と板状の第2の構造部材3とから成り、閉断面形状を有する。更に、フレーム1は、内部にレインフォースメント4を有する。また、底壁部2aの一領域69に曲げ誘起部が設けられている。各々の実施例では、フレーム1の曲げ誘起部が設けられた領域69の内面に密着して、充填部材5が配置される。図109に示した延出長LPは、充填部材5のうち曲げ誘起部の端部を曲げ誘起部の長手方向(Y軸方向)の外側に延出する部分の長さである。本シミュレーションでは、長手方向前後の各々の延出長LPは同値であるものとした。
第1の構造部材2、第2の構造部材3およびレインフォースメント4は、いずれも鋼板により形成されている。第1の構造部材2の板厚は1.4mmであり、第1の構造部材2の強度は1180MPaである。第2の構造部材3の板厚は1.4mmであり、第2の構造部材3の強度は1180MPaである。レインフォースメント4の板厚は0.5mmであり、レインフォースメント4の強度は270MPaである。充填部材5のヤング率は100MPaであり、降伏応力は2.1MPaである。また、中空部材10の断面高さHは、72mmである。
なお、各実施例および各参考例において用いられた曲げ誘起部の種類、および延出長LPは、以下の通りである(寸法の単位はmm)。
実施例1:凹部、LP=0
実施例2:凹部、LP=9
実施例3:凹部、LP=18
実施例4:凹部、LP=36(断面高さHの2分の1に相当)
実施例5:凹部、LP=93
実施例6:板厚変化部、LP=0
実施例7:板厚変化部、LP=9
実施例8:板厚変化部、LP=18
実施例9:板厚変化部、LP=36(断面高さHの2分の1に相当)
実施例10:板厚変化部、LP=93
参考例1:凹部、充填部材なし
参考例2:板厚変化部、充填部材なし
本発明者らは、各実施例および各参考例に係るフレームの長手方向における両端部を固定して、500mm/sの等速で40mmストロークの圧縮曲げを付与した。そして、各実施例および各参考例における、ストロークに対するE.A.について算出した。また、シミュレーションによる変形前後の各実施例および各参考例に係るフレーム1の図109に示したXV−XV切断線における断面形状について比較を行った。
図110は、実施例1〜実施例5および参考例1の変形前後の断面図の一覧表を示す図である。図110では、上段左から右にかけて順に、参考例1、実施例1および実施例2の変形前後の断面図が示されており、下段左から右にかけて順に、実施例3、実施例3および実施例5の変形前後の断面図が示されている。代表として、実施例2の変形前のフレーム1の断面図にのみ符号が付されている。
図111は、実施例1〜実施例5および参考例1の、参考例1のエネルギ吸収量を1とした場合のエネルギ吸収量の比率である吸収エネルギ比を示すグラフである。本グラフの横軸は延出長LPであり、縦軸は吸収エネルギ比である。グラフにおける各プロットは、左から順に実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、および実施例5に相当する。
図111を参照すると、実施例1〜実施例5の吸収エネルギ比は1を超えている。したがって、充填部材5を配置することによりエネルギ吸収量が向上し、衝突安全性能は向上する。
実施例1と実施例2〜実施例5とを比較すると、実施例2〜実施例5の吸収エネルギ比は、実施例1の吸収エネルギ比よりも大きい。したがって、充填部材5が曲げ誘起部のみに配置されるよりも、充填部材5が曲げ誘起部の長手方向両側の周辺部分を覆うように配置される方が、吸収エネルギ比は大きくなり、衝突安全性能は向上する。
実施例1と実施例2、実施例2と実施例3、実施例3と実施例4、の各々を比較すると、延出長LPが長くなるほど吸収エネルギ比が増加している。したがって、延出長LPが長いほど、エネルギ吸収量が増加し、衝突安全性能を向上させることができる。
実施例4と実施例5とを比較すると、延出長LPが増加しても吸収エネルギ比は増加していない。実施例4における延出長LPは、中空部材10の断面高さHの2分の1に相当する。したがって、延出長LPが中空部材10の断面高さHの2分の1を超えると、延出長LPを長くしても衝突安全性能は向上しない。この点、延出長LPが中空部材10の断面高さHの2分の1となる範囲内に充填部材5を配置することにより、衝突安全性能の向上に寄与しない無駄な充填部材5を配置しなくてすむ。したがって、延出長LPが中空部材10の断面高さHの2分の1となる範囲内に充填部材5を配置することにより、高い質量効率で衝突安全性能を向上させることができる。
図112は、実施例6〜実施例10および参考例2の変形前後の断面図の一覧表を示す図である。図112では、上段左から右にかけて順に、参考例2、実施例6および実施例7の変形前後の断面図が示されており、下段左から右にかけて順に、実施例8、実施例9および実施例10の変形前後の断面図が示されている。代表として、実施例7の変形前のフレーム1の断面図にのみ符号が付されている。
図113は、実施例6〜実施例10および参考例2の、参考例2のエネルギ吸収量を1とした場合のエネルギ吸収量の比率である吸収エネルギ比を示すグラフである。本グラフの横軸は延出長LPであり、縦軸は吸収エネルギ比である。グラフにおける各プロットは、左から順に実施例6、実施例7、実施例8、実施例9、および実施例10に相当する。
図113を参照すると、実施例6〜実施例10の吸収エネルギ比は1を超えている。したがって、充填部材5を配置することによりエネルギ吸収量が向上し、衝突安全性能は向上する。
実施例6と実施例7〜実施例10とを比較すると、実施例7〜実施例10の吸収エネルギ比は、実施例6の吸収エネルギ比よりも大きい。したがって、充填部材5が曲げ誘起部のみに配置されるよりも、充填部材5が曲げ誘起部の長手方向両側の周辺部分を覆うように配置される方が、吸収エネルギ比は大きくなり、衝突安全性能は向上する。
実施例6と実施例7、実施例7と実施例8、実施例8と実施例9、の各々を比較すると、延出長LPが長くなるほど吸収エネルギ比が増加している。したがって、延出長LPが長いほど、エネルギ吸収量が増加し、衝突安全性能を向上させることができる。
実施例9と実施例10とを比較すると、延出長LPが増加しても吸収エネルギ比は増加していない。実施例9における延出長LPは、中空部材10の断面高さHの2分の1に相当する。したがって、延出長LPが中空部材10の断面高さHの2分の1を超えると、延出長LPを長くしても衝突安全性能は向上しない。この点、延出長LPが中空部材10の断面高さHの2分の1となる範囲内に充填部材5を配置することにより、衝突安全性能の向上に寄与しない無駄な充填部材5を配置しなくてすむ。したがって、延出長LPが中空部材10の断面高さHの2分の1となる範囲内に充填部材5を配置することにより、高い質量効率で衝突安全性能を向上させることができる。
以上、上記実施例に示したように、充填部材5を曲げ誘起部の長手方向両側の周辺部分を覆うように配置することにより、衝突安全性能を向上させることができる。さらに、延出長LPが中空部材10の断面高さHの2分の1となる範囲内に充填部材5を配置することにより、高い質量効率で衝突安全性能を向上させることができる。
<9.6.全塑性モーメント変化部に関する実施例>
以下の実施例では、曲げ誘起部として機能する全塑性モーメント変化部について検証した。全塑性モーメント変化部が曲げ誘起部として機能するとは、全塑性モーメント変化部において曲げ変形が誘起されることを指す。なお、以下の実施例は、曲げ誘起部として機能する全塑性モーメント変化部を検証するために行ったものに過ぎず、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
本発明者らは、曲げ誘起部として機能する全塑性モーメント変化部について検証するために、シミュレーションを用いて、強度変化部における全塑性モーメントの変化度合いが異なる複数の中空部材に曲げ変形を生じさせた。そして、本発明者らは、強度変化部の位置と曲げ変形が生じた位置との関係が、強度変化部における全塑性モーメントの変化度合いに応じてどのように変わるかを検証した。
以下、図114及び図115を参照しながら、本実施例のシミュレーション設定を説明する。
図114は、一実施形態に係る実施例の中空部材の平面図である。本実施例に係る中空部材810は、ハット型の断面形状の第1の構造部材812と板状の第2の構造部材813とから成り、閉断面形状を有する。図114では、第1の構造部材812は、第2の構造部材813のX軸方向奥側に、すなわち第2の構造部材813の裏側に隠れて位置し、ハット型の断面形状の開口部分はX軸方向手前側を向いている。第2の構造部材813は、X軸方向手前側に位置し、Z軸方向を短手方向とし、Y軸方向を長手方向としている。第1の構造部材812のZ軸方向の両端部は、第2の構造部材813のZ軸方向の両端部と当接しており、当該当接部分において第1の構造部材812と第2の構造部材813とが接合されている。図114に示すように、中空部材10は、第1強度部814および第2強度部815を備える。第1強度部814は、中空部材10の長手方向の左端810a側に設けられる。第2強度部815は、中空部材10の長手方向の右端810b側に、第1強度部814と連続して設けられる。第1強度部814と第2強度部815との間で鋼板の降伏強度が異なる場合、第1強度部814と第2強度部815との境目の部分が強度変化部816となる。この強度変化部816において中空部材10の長手方向での降伏強度が変化する。
図115は、各実施例及び参考例に係る中空部材810の全塑性モーメント比率の長手方向の変化を示すグラフである。図115では、中空部材810の左端810aを基準(すなわち、1.0)として、左端810aから右端810bにかけての全塑性モーメント比率の変化が示されている。全塑性モーメント比率は、対象箇所の全塑性モーメントの値を、全塑性モーメントの基準値で除算することにより、算出される。図115では、中空部材810の左端810aの全塑性モーメントの値を基準値として、全塑性モーメント比率が算出される。全塑性モーメント比率が1.0から変化する位置が、強度変化部816の位置である。図115に示すように、参考例では、中空部材810の長手方向の位置に関わらず、全塑性モーメント比率が変化しない。すなわち、参考例では、第1強度部814と第2強度部815とで全塑性モーメントが同一である。これに対し、実施例1では、中空部材810の左端810a側と右端810b側の間で全塑性モーメント比率が段階的に変化しており、右端810b側の全塑性モーメント比率は0.9である。実施例2では、中空部材810の左端810a側と右端810b側の間で全塑性モーメント比率が段階的に変化しており、右端810b側の全塑性モーメント比率は0.95である。実施例3では、中空部材810の左端810a側と右端810b側の間で全塑性モーメント比率が段階的に変化しており、右端810b側の全塑性モーメント比率は約1.11である。
ここで、強度変化部816の全塑性モーメント比率を定義する。強度変化部816の全塑性モーメント比率は、強度変化部816における変化前後の全塑性モーメントの値のうち、小さい方の値を、大きい方の値で除算することにより、算出される。かかる定義によれば、各実施例および参考例の、強度変化部816の全塑性モーメント比率は、以下の通りである。
参考例:1.0
実施例1:0.90
実施例2:0.95
実施例3:0.90
本発明者らは、各実施例および参考例に係る中空部材810の長手方向における両端部810aおよび810bに、互いに対向する方向に衝突荷重Fを入力することで、中空部材810を長手方向に圧縮し、曲げ変形を生じさせた。以下、図116〜図120を参照しながら、シミュレーション結果を説明する。
図116は、参考例に係る中空部材810Aの曲げ変形が生じた領域を示す図である。図116に示すように、曲げ変形は、中空部材810Aの右端810bに近い位置にある領域817Aにおいて生じている。図117は、実施例1に係る中空部材810Bの曲げ変形が生じた領域を示す図である。図117に示すように、曲げ変形は、中空部材810Bの強度変化部816に近い位置にある領域817Bにおいて生じている。図118は、実施例2に係る中空部材810Cの曲げ変形が生じた領域を示す図である。図118に示すように、曲げ変形は、中空部材810Cの右端810bに近い位置にある領域817Cにおいて生じている。図119は、実施例3に係る中空部材810Dの曲げ変形が生じた領域を示す図である。図119に示すように、曲げ変形は、中空部材810Dの強度変化部816に近い位置にある領域817Dにおいて生じている。
図120は、各実施例及び参考例に係る中空部材810の全塑性モーメント比率の長手方向の変化および曲げ変形が生じた位置を示すグラフである。図120に示すように、実施例1および実施例3では、全塑性モーメント比率が1.0から変化する位置(すなわち、強度変化部816の位置)付近の位置にある領域817Bおよび817Dにおいて曲げ変形が生じている。このことから、実施例1および実施例3では、強度変化部816が曲げ誘起部として機能していることが分かる。一方で、実施例2では、全塑性モーメント比率が1.0から変化する位置から離れた位置にある領域817Cにおいて曲げ変形が生じている。このことから、実施例2では、強度変化部816が曲げ誘起部として機能していないことが分かる。また、参考例では、全塑性モーメント比率は1.0のまま変化せず、実施例2と同様の位置にある領域817Aにおいて曲げ変形が生じている。つまり、強度変化部816の全塑性モーメント比率が0.95以上の場合、強度変化部816が曲げ誘起部として機能しない。一方で、強度変化部816の全塑性モーメント比率が0.9の場合、強度変化部816が曲げ誘起部として機能する。このことから、強度変化部816の全塑性モーメント比率が0.9以下である場合に、強度変化部816を曲げ誘起部として機能させることができる、と言える。
以上、上記実施例に示したように、強度変化部816の全塑性モーメント比率が0.9以下である場合に、全塑性モーメント変化部を曲げ誘起部として機能させることができる。換言すると、変化前後で全塑性モーメントの値が10%以上減少する全塑性モーメント変化部は、曲げ誘起部として機能することができる。
<9.7.充填部材のヤング率に関する実施例>
以下の実施例では、フレームの衝突安全性能を十分に向上させることが可能な充填部材のヤング率について検証した。なお、以下の実施例は、充填部材のヤング率を検証するために行ったものに過ぎず、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
本発明者らは、フレームの衝突安全性能を十分に向上させることが可能な充填部材のヤング率について検証するために、シミュレーションを用いて、充填部材のヤング率が異なる複数のフレームに衝突荷重を付与し、反力及びストロークを算出した。以下、図121〜図125、および表6を参照しながら、本実施例のシミュレーション設定を説明する。
図121は、一実施形態に係る実施例のフレームの側面図である。本実施例に係るフレーム820は、ハット型の断面形状の第1の構造部材822と板状の第2の構造部材823とから成り、閉断面形状を有する。図121では、第1の構造部材822のハット型の断面形状の開口部分はX軸方向−側を向いている。第2の構造部材823は、Z軸方向を短手方向とし、Y軸方向を長手方向としている。第1の構造部材822のZ軸方向の両端部は、第2の構造部材823のZ軸方向の両端部と当接しており、当該当接部分において第1の構造部材822と第2の構造部材823とが接合されている。図121に示すように、フレーム820は、長手方向(Y軸方向)に湾曲する屈曲部826Aおよび826Bが設けられている。屈曲部826Aおよび826Bは、フレーム820の曲げ誘起部である。フレーム820の長手方向の長さは500[mm]である。なお、フレーム820は、レインフォースメントを備えていない。
図122は、図121に示したフレーム820の平面図である。図123は、図122に示したフレーム820のA1−A1切断線における断面図である。図124は、図122に示したフレーム820のA2−A2切断線における断面図である。図123および図124に示すように、フレーム820の内側には、充填部材825が隙間なく配置されている。また、充填部材825は、フレーム820の内面に接着されている。フレーム820の断面高さは、第1の構造部材822の底壁部822aと第2の構造部材823の天壁部823aとの距離として定義される。図123に示すように、A1−A1切断線における断面の断面高さは、70[mm]である。図124に示すように、A2−A2切断線における断面の断面高さは、110[mm]である。
下記の表6に、参考例および各実施例の、第1の構造部材822および第2の構造部材823の板厚、充填部材825の密度、ヤング率および降伏応力、ならびにフレーム820の総重量(天板821を除く)および充填部材825の重量を示す。表6に示すように、参考例には充填部材825が配置されていない。また、各実施例の充填部材825のヤング率は、実施例1では10MPa、実施例2では20MPa、実施例3では40MPa、実施例4では100MPaである。なお、本実施例に係る充填部材825の密度と、降伏応力およびヤング率との関係は、図125に示すグラフの通りである。
本発明者らは、各実施例および参考例に係るフレームの長手方向における一方端部(Y軸方向+側)を固定して、もう一方端部(Y軸方向−側)からフレームに、図121および図122に示す蓋状の天板821を、初速12[m/s]で衝突させた。そして、本発明者らは、各実施例および参考例における、変形挙動を観察し、反力及びストロークを算出した。以下、図126〜図128を参照しながら、シミュレーション結果を説明する。
図126は、各実施例および参考例の変形挙動の一覧を示す図である。図126では、上段から下段にかけて順に、参考例、実施例1、実施例2、実施例3および実施例4の変形挙動が示されている。各段の左側はフレーム820の変形後の様子が示されており、右側はフレーム820のひずみ量の分布が示されている。図126の各段左側に示された、各実施例および参考例に係るフレーム820の変形後の様子をみると、充填部材825のヤング率が高いほど、大きく変形している。図126の各段右側に示された、各実施例および参考例に係るフレーム820のひずみ量をみると、充填部材825のヤング率が高いほど、変形する領域が広く、且つひずみ量が大きくなっている。これらから、充填部材825のヤング率が高いほど、フレーム820は、より広い領域で変形していることが分かる。フレーム820は、衝突エネルギを変形エネルギとして変形することで、衝突エネルギを吸収する。つまり、充填部材825のヤング率が高いほど、フレーム820は、より多くの領域に分散して衝突エネルギを吸収している。したがって、充填部材825のヤング率が高くなるほど、衝突エネルギが一点に集中しにくくし、座屈を生じにくくすることができる。また、いずれもZ字状に変形しており、充填部材825による変形モードの大きな変化はないことが分かる。
図127は、各実施例および参考例の変形時の反力及びストロークを示すグラフである。各実施例および参考例のいずれの場合も、ストロークがゼロ付近である始めは反力が最も高く、ストロークが増加するにつれて反力が増減しながら小さくなっていく。その後、反力が一時的に増加した後、反力が急減しゼロになる。また、各実施例および参考例のいずれの場合も、反力が急減するタイミングでストロークが減少し始め、一部の変形が元に戻る。各実施例および参考例の各々のグラフを比較すると、充填部材825のヤング率が高いほど、同一のストロークにおける反力が高い。つまり、フレーム820は、充填部材825のヤング率が高いほど、粘り強く変形することができる。また、各実施例および参考例の各々のグラフを比較すると、充填部材825のヤング率が高いほど、最終的なストロークが短い。つまり、フレーム820は、充填部材825のヤング率が高いほど、短いストロークで衝突エネルギを吸収することができる。
図128は、各実施例および参考例の衝突エネルギ吸収量(Energy Absorption;E.A.(kJ))を示すグラフである。図128では、左から右にかけて順に、参考例、実施例1、実施例2、実施例3および実施例4のE.A.が示されている。E.A.の向上率は、算出対象のE.A.の値を、基準とするE.A.の値で除算することで、算出されるものとする。参考例を基準としたE.A.の向上率は、実施例1が6%であり、実施例2が15%であり、実施例3が31%であり、実施例4が65%である。このように、充填部材825のヤング率が高いほど、E.A.は向上する。フレームが十分な衝突安全性能を発揮するためには、E.A.の向上率は10%以上であることが好ましい。つまり、充填部材825のヤング率は、20MPa以上であることが好ましい。
以上、上記実施例に示したように、充填部材のヤング率が高いほど、座屈が生じにくくなり、粘り強く変形し、且つ短いストロークで衝突エネルギを吸収することができる。すなわち、充填部材のヤング率が高いほど、フレームの衝突安全性能は向上する。また、充填部材のヤング率が20MPa以上であれば、フレームは十分な衝突安全性能を発揮することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。