以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車両用構造部材1の構成例を示す部分断面図である。車両用構造部材1は、主に自動車等の車両のフレーム構造を構成する部材として用いられる。車両用構造部材1は、例えば、自動車のフロントサイドメンバ、リアサイドメンバに該当する。フロントサイドメンバは、後端部を構成するフロントサイドメンバリア、および当該後端部よりも前側の部分を構成するフロントサイドメンバフロントを含む。リアサイドメンバは、後端部を構成するリアサイドメンバリア、および当該後端部よりも前側の部分を構成するリアサイドメンバフロントを含む。また車両用構造部材1は、例えば、自動車のピラーを含む。ピラーは、例えば、フロントピラー(Aピラー)、センターピラー(Bピラー)、リアピラー(Cピラー、Dピラー)が該当する。また、当該車両用構造部材は、例えば、フロアレインフォースメント、フロアクロスメンバ、バンパーレインフォースメント、クラッシュボックス、サイドシル、ルーフサイドレール、ルーフセンターレインフォースメント、トンネル等が該当する。また、車両用構造部材1は、自動車のみならず、他の車両および自走可能な機械にも適用可能である。他の車両および自走可能な機械には、例えば、二輪車両、バスまたは牽引車等の大型車両、トレーラー、鉄道車両、建設機械、鉱山機械、農業機械、一般機械、および船舶等が含まれる。
図1に示すように、車両用構造部材1は、骨格部材10および充填部材50を備える。
なお、図1〜図8に示される方向V(V1、V2)は、骨格部材10の外方を示す。
骨格部材10は、長手方向に延びる壁部20を有する構造部材である。骨格部材10は、いわゆるフレーム形状を有しており、複数の壁部20により構成される。骨格部材10は、中空の閉断面構造を有してもよいし、U字状等の開放断面構造を有してもよい。また、骨格部材10の長手方向に直交する断面の形状は特に限定されない。例えば、骨格部材10の断面形状は、矩形断面であってもよいし、円形断面であってもよい。骨格部材10の断面形状の具体例については後述する。
また、骨格部材10の壁部20には、少なくとも1つの壁穴21が設けられる。壁穴21の加工方法、並びに壁穴21の数および形状は特に限定されない。
充填部材50は、第1補強部材の一例である。本実施形態に係る充填部材50は、例えば発泡樹脂材からなる硬質の発泡充填部材である。より具体的には、充填部材50は、骨格部材10の内側に設置された後に、化学変化により硬化する充填部材である。
充填部材50は、骨格部材10の内側に設置されると、壁部20の内壁面20Aに密着するように配設される。充填部材50のうち内壁面20Aに密着する部分を第1充填部分51と称する。例えば、第1充填部分51は、骨格部材10の内側に発泡樹脂を導入することにより形成される。このとき、第1充填部分51は内壁面20Aと当接面51aにおいて密着する。なお、第1充填部分51は、第1補強部分の一例である。
また、充填部材50は、骨格部材10の内側のみならず、壁穴21を貫通して、壁部20の外壁面20Bに密着するように配設される。充填部材50のうち外壁面20Bに密着する部分を第2充填部分52と称する。例えば、第2充填部分52は、骨格部材10の内側に発泡樹脂を導入し、発泡した当該発泡樹脂が骨格部材10の内側から壁穴21を貫通して外側に膨出することにより形成される。このとき、第2充填部分52は外壁面20Bと当接面52aにおいて密着する。なお、第2充填部分52は、第2補強部分の一例である。
さらに、充填部材50のうち、壁穴21に密着して設けられる部分を第3充填部分53と称する。すなわち、充填部材50は、第1充填部分51と、第2充填部分52と、第3充填部分53とにより一体に成形されるものである。第1充填部分51と第2充填部分52とは、第3充填部分53を介して接続されている。なお、第3充填部分53は、第3補強部分の一例である。
なお、充填部材50のうち第2充填部分52は、骨格部材10の内側に充填された充填部材が壁穴21を貫通して骨格部材10の外側に漏れ出たものである。例えば、第2充填部分52は、壁穴21の断面視において、壁穴21の穴縁端22から距離pの範囲において壁部20と密着して設けられている。第2充填部分52の外壁面20Bへの密着性を十分得るためには、距離pは、例えば、5mm以上であることが好ましい。
かかる構成によれば、充填部材50が骨格部材10の壁部20に設けられた壁穴21を貫通して壁部20の両面に密着する。そうすると、充填部材50は壁穴21に機械的に引っ掛けられるので、充填部材50が壁部20に係止される。この場合、充填部材50が壁部20から脱落するか否かは、充填部材50の壁部20に対する接着力ではなく、充填部材50の引張強度により決まる。一般的に、充填部材50の接着力よりも充填部材50の引張強度の方が顕著に高いので、充填部材50は壁部20から容易に脱落しにくくなる。
図2は、本実施形態に係る車両用構造部材1による作用の一例を示す部分断面図である。車両用構造部材1の構成において、骨格部材10の長手方向に対して衝突荷重が作用したとする。この場合、例えば、図2に示すように、骨格部材10の外方(図中の方向V)に突出するような座屈が壁穴21の近傍の変形位置BPで生じ、壁部20が骨格部材10の内方に折れ曲がろうとする作用がかかったとする。なお、本明細書において内方とは、図中の方向Vの反対方向であり、骨格部材10の重心側の方向を意味する。
ここで、充填部材50は、壁穴21を貫通して第1充填部分51と接続する第2充填部分52により壁部20に係止されている。そのため、例えば、壁部20が骨格部材10の内方に折れ曲がろうとしても、第1充填部分51が第2充填部分52に追従するので、第1充填部分51が壁部20に拘束された状態が維持される。
そうすると、骨格部材10の内側における充填部材50の壁部20に対する接着力が十分確保されていなくても、充填部材50は壁部20から容易に脱落しにくくなる。これにより、車両衝突により壁部20に面外変形を生じさせる力が作用しても、充填部材50が骨格部材10の壁部20に密着した状態を維持することができる。したがって、これにより、充填部材50の第1充填部分51が壁部20の面外方向への変形を拘束するので、壁部20の面外変形を抑制することができる。すなわち、充填部材50が車両用構造部材1の衝突安全性能に安定して貢献することが可能となる。
なお、第1充填部分51と第2充填部分52とを接続する第3充填部分53は、密に充填されていることが好ましい。なぜなら、これらが密に充填されることで、壁穴21の軸に垂直方向における充填部材50のずれを抑制し、充填部材50の剥離防止に貢献するからである。また、第1充填部分51と第2充填部分52とを接続する第3充填部分53は、必ずしも壁穴21に密に充填されていなくともよい。例えば、第3充填部分53は、壁穴21の穴縁端22と密着していなくてもよい。この場合においても、第1充填部分51と第2充填部分52とが接続されていれば、充填部材50が骨格部材10に係止されている状態が実現される。また、充填部材50の内部は、必ずしも密に充填されていなくてもよい。
また、本実施形態では、第1補強部材は充填部材50により実現されるが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、第1補強部材は複数の部材により実現されてもよい。より具体的には、第1補強部材のうち、第1補強部分は発泡樹脂により形成される充填部材により形成され、第2補強部分および第3補強部分は、充填部材とは異なる部材により形成されてもよい。この場合、第3補強部分と第1補強部分とは、発泡樹脂の硬化の際に接合されてもよい。
(変形例)
次に、本実施形態の変形例について説明する。
図3は、本実施形態の第1の変形例に係る車両用構造部材1Aの構成例を示す部分断面図である。図3に示すように、本変形例に係る車両用構造部材1Aを構成する骨格部材10Aの壁部20には、複数の壁穴21が設けられている。また、充填部材50は、これらの壁穴21を貫通して、壁部20の内壁面20Aおよび外壁面20Bに密着して設けられている。すなわち、充填部材50は、壁部20の内壁面20Aに密着する第1充填部分51と、複数の壁穴21の各々の位置において壁部20の外壁面20Bに密着する複数の第2充填部分52と、複数の壁穴21の各々に密着して設けられ第1充填部分51と複数の第2充填部分52とを接続する第3充填部分53とにより構成される。
かかる構成により、充填部材50が貫通する壁穴21の数に応じて、充填部材50を壁部20に係止する部分が増加する。これにより、壁部20に対して充填部材50をより強固に固定することが可能となる。
また、かかる構成により、壁部20の折れ曲がろうとする方向に関わらず、充填部材50を壁部20に追従させることができる。図4は、本変形例に係る車両用構造部材1Aによる作用の一例を示す部分断面図である。車両用構造部材1Aの構成において、骨格部材10Aの長手方向に対して衝突荷重が作用したとする。この場合、例えば、図4に示すように、骨格部材10Aの内方(図中の方向Vの反対方向)に突出するような座屈が壁穴21の近傍の変形位置BPで生じ、壁部20が骨格部材10Aの外方に折れ曲がろうとする。
この場合、単に充填部材50を壁部20の内壁面20Aにのみ密着させていた場合、壁部20が骨格部材10の外方に折れ曲がろうとすることにより、充填部材50が壁部20の内壁面20Aから剥離してしまう。しかしながら、充填部材50は複数の壁穴21を貫通して接続する第2充填部分52の各々により複数の壁穴21に係止されている。そうすると、図4に示した例では、壁部20が外側に折れ曲がろうとしても、第1充填部分51が第2充填部分52に追従するので、第1充填部分51が壁部20に拘束された状態が維持される。
そうすると、車両衝突により骨格部材10Aに対して内側に面外変形を生じさせる力が作用しても、充填部材50が骨格部材10Aの壁部20に密着した状態を維持することができる。したがって、これにより、充填部材50の第1充填部分51が壁部20の面外方向への変形を拘束するので、壁部20の面外変形を抑制することができる。すなわち、充填部材50が車両用構造部材1Aの衝突安全性能に安定して貢献することが可能である。
図5は、本実施形態の第2の変形例に係る車両用構造部材1Bの構成例を示す部分断面図である。図5に示すように、本変形例に係る充填部材50の第1充填部分51は、骨格部材10Aの壁部20の稜線部23の内側に配設されている。また、壁部20の稜線部23を挟んで両側には、それぞれ壁穴21が設けられている。充填部材50は、これらの壁穴21を貫通して、壁部20の内壁面20Aおよび外壁面20Bに密着して設けられている。
骨格部材10Bの壁部20が面外変形すると、稜線部23において局所的に塑性変形が生じる。この塑性変形により壁部20の面外方向への倒れが促進されてしまう。そこで、稜線部23の内側に充填部材50を密着させて配置することにより、稜線部23において生じる局所的な塑性変形を抑制することができる。
また、充填部材50を上述した構成により壁部20に固定することにより、稜線部23において生じる塑性変形に起因して充填部材50が壁部20から脱落することを防ぐことができる。したがって、壁部20の面外変形をより確実に抑制することができる。
なお、壁部20に設けられる壁穴21の数は特に限定されない。壁穴21が複数壁部20に設けられることにより、充填部材50の第1充填部分51と第2充填部分52とを接続する箇所が増える。そうすると、壁部20の変形により第1充填部分51と第2充填部分52とが引っ張られるが、その接続部分である第3充填部分53の数が多ければ、1つあたりの接続部分の負荷が分散される。よって、壁穴21の数を増やすことにより、充填部材50の壁部20に対する固定力を増すことができる。ただし、壁穴21の数を増やすことにより、骨格部材10の剛性が低下し得る。そのため、壁穴21の数や設置位置は、設計に応じて適宜決めればよい。
図6は、本実施形態の第3の変形例に係る車両用構造部材1Cの構成例を示す部分断面図である。図6に示すように、壁穴21Aの穴縁端22Aは、壁部20よりも骨格部材10Cの内方に位置する。具体的には、壁部20は、壁穴21Aの近傍において骨格部材10Cの内方に向かって傾斜する傾斜部24を備えている。
ここで、図6に示すように、充填部材50は、傾斜部24に食い込まれるように、かつ、壁部20の内側および外側に密着して配置されている。第2充填部分52は、壁部20の外壁面20Bのうち、傾斜部24の傾斜面24Aに密着して設けられている。
かかる構成により、第2充填部分52の外側面52bと壁部20の外壁面20Bとは面一の関係とすることができる。そうすると、充填部材50が壁部20の内側から壁穴21Aを貫通して外側に膨出しても、壁部20の外壁面20Bが平坦となる。したがって、充填部材50の膨出による他部材との干渉が生じなくなる。そのため、車両用構造部材1の取扱いが容易となる。なお、かかる第2充填部分52は、例えば、骨格部材10Cの内側に発泡樹脂を導入し、発泡した当該発泡樹脂が骨格部材10Cの内側から壁穴21Aを貫通して外側に膨出した部分を切除することにより得られる。また、第2充填部分52のうち壁部20の外壁面20Bよりも外側に膨出する部分は、切除されなくてもよい。
また、図6に示すように、充填部材50は傾斜部24を覆うように傾斜部24に密着しているので、傾斜部24によってアンカーボルトのように充填部材50と壁部20とを固定する機能が発揮される。したがって、充填部材50が壁部20により強固に固定される。
図7は、本実施形態の第4の変形例に係る車両用構造部材1Dの構成例を示す部分断面図である。図7に示すように、本変形例においても、壁穴21Bの穴縁端22Bは、壁部20よりも骨格部材10Dの内方に位置する。具体的には、壁部20は、壁部20の外側から内側に向かって穴縁端22Bが突出する突出部25を備えている。すなわち、壁穴21はバーリング穴である。かかるバーリング穴は、例えば、公知のバーリング加工により形成される。
ここで、図7に示すように、充填部材50は、突出部25に食い込まれるように、かつ、壁部20の内側および外側に密着して配置されている。第2充填部分52は、壁部20の外壁面20Bのうち、突出部25の外表面25Aに密着して設けられている。
かかる構成により、上記の第3の変形例と同様に、第2充填部分52の外側面52bと壁部20の外壁面20Bとは面一の関係とすることができる。そうすると、充填部材50が壁部20の内側から壁穴21Bを貫通して外側に膨出しても、壁部20の外壁面20Bが平坦となる。したがって、充填部材50の膨出による他部材との干渉が生じなくなる。なお、第2充填部分52のうち壁部20の外壁面20Bよりも外側に膨出する部分は、切除されなくてもよい。
また、図7に示すように、充填部材50は突出部25を覆うように突出部25に密着しているので、突出部25によってアンカーボルトのように充填部材50と壁部20とを固定する機能が発揮される。したがって、充填部材50が壁部20により強固に固定される。
図8は、本実施形態の第5の変形例に係る車両用構造部材1Eの構成例を示す部分断面図である。図8に示すように、本変形例に係る壁部20には、壁部20よりも骨格部材10Eの内方に窪んだ窪み部26が設けられる。そして、壁穴21Cは、窪み部26の内部に設けられる。
ここで、図8に示すように、充填部材50は、窪み部26に食い込まれるように、かつ、壁部20の内側および外側に密着して配置されている。第2充填部分52は、壁部20の外壁面20Bのうち、窪み部26の外表面26Aに密着して設けられている。
かかる構成により、上記の第3の変形例および第4の変形例と同様に、第2充填部分52の外側面52bと壁部20の外壁面20Bとは面一の関係とすることができる。そうすると、充填部材50が壁部20の内側から壁穴21Cを貫通して外側に膨出しても、壁部20の外壁面20Bが平坦となる。したがって、充填部材50の膨出による他部材との干渉が生じなくなる。なお、第2充填部分52のうち壁部20の外壁面20Bよりも外側に膨出する部分は、切除されなくてもよい。
また、図8に示すように、充填部材50は窪み部26を覆うように窪み部26に密着しているので、窪み部26によってアンカーボルトのように充填部材50と壁部20とを固定する機能が発揮される。したがって、充填部材50が壁部20により強固に固定される。
なお、上記の第3の変形例〜第5の変形例に係る壁穴21の近傍の壁部20の形状は、互いに組み合わされてもよい。例えば、壁部20に窪み部が設けられ、当該窪み部の内部に壁穴が設けられ、さらに当該壁穴に対してバーリング加工が成されてもよい。
<2.第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態として、上述した第1の実施形態に係る骨格部材および充填部材の構成を適用させた、車両用構造部材100の具体的な構成について説明する。
図9は、本発明の第2の実施形態に係る車両用構造部材100の一例の概略構成を示す斜視図である。
本実施形態に係る車両用構造部材100は、第1の構造部材2、第2の構造部材3、レインフォースメント4、および充填部材5を備える。本実施形態に係る中空部材110は、骨格部材の一例であり、第1の構造部材2および第2の構造部材3により形成される。なお、本実施形態に係る中空部材110は、図9に示すような閉断面構造を有してもよいし、他の実施形態においては、骨格部材は、U字状等の開放断面構造を有していてもよい。また、中空部材110の長手方向に直交する断面の形状は特に限定されない。例えば、中空部材110の断面形状は、矩形断面であってもよいし、円形断面であってもよい。中空部材110の断面形状の変形例については後述する。
また、図10は、本実施形態に係る中空部材110のY軸方向に直交する断面を示す断面図である。以下、図9および図10を参照しながら、本実施形態に係る車両用構造部材100の構成について説明する。
第1の構造部材2は、長尺状の中空部材110を形成する構造部材の一例であり、ハット形の断面形状を有する。図9および図10に示すように、第1の構造部材2は、長手方向(略Y軸方向)に延びる底壁部2a、側壁部2b、2b、フランジ部2c、2c、および稜線部2d、2d、2e、2eを有する。底壁部2aおよび側壁部2bは、壁部の一例である。図10に示す第1の構造部材2は、その形状からハット材ともいう。
側壁部2bは、底壁部2aのZ軸方向(幅方向)の両端から起立して設けられる。図10に示すように、側壁部2bは、底壁部2aとの角度が90度以上、120度以下の範囲内で設けられることが衝突性能の観点から好ましい。また、稜線部2dは、底壁部2aと側壁部2bとの境界となる部分である。
フランジ部2cは、側壁部2bの底壁部2aに対し反対側の端部からZ軸方向に沿って外側に起立して設けられる。図10に示すように、フランジ部2cは、側壁部2bと略垂直の角度を成して設けられることが多い。ただし、フランジ部2cと側壁部2bとが接続する部分については、これに限らず部材の設計に応じて適宜決めればよい。また、稜線部2eは、側壁部2bとフランジ部2cとの境界となる部分である。
第2の構造部材3は、中空部材110を第1の構造部材2とともに形成する構造部材の一例であり、板状の部材である。第2の構造部材3はハット材の開口部を塞ぐことからクロージングプレートともいう。図10に示すように、第2の構造部材3は、天壁部3a、および接合部3c、3cを有する。天壁部3aは、壁部の一例である。
天壁部3aは、第1の構造部材2の底壁部2aに対向する部分である。また、接合部3cは、第1の構造部材2のフランジ部2cに対して当接し、フランジ部2cと接合される部分である。つまり、天壁部3aは、第2の構造部材3における一対の稜線部2eとのそれぞれの接続部分の間に存在する領域に相当する部分である。また、接合部3cは、第2の構造部材3における稜線部2eとフランジ部2cの端部とに挟まれるフランジ部2cの領域に当接する部分である。
本実施形態に係る中空部材110は、第1の構造部材2のフランジ部2cと第2の構造部材3の接合部3cとが接合されて形成される。このとき、図10に示すように、中空部材110は閉断面を有する。この閉断面は、底壁部2aと、一対の側壁部2b、2bと、天壁部3aにより形成される。なお、フランジ部2cと接合部3cとの接合方法は特に限定されない。例えば、当該接合方法は、溶接、リベット、ボルト締結、接着、またはヘム加工による接合等であってもよい。本実施形態では、フランジ部2cと接合部3cは、スポット溶接により接合される。
なお、中空部材110の有する閉断面の形状は略多角形である。ここで、略多角形とは、複数の線分で近似表現することが可能である閉じた平面図形を意味する。例えば、図10に示した閉断面は、4つの線分(底壁部2a、側壁部2b、天壁部3aに相当)および4つの頂点(稜線部2d、2eに相当)からなる略四角形である。この略四角形は、例えば、矩形および台形等を含む。
また、本実施形態に係る中空部材110の有する閉断面の形状が略四角形以外の略多角形である場合であっても、本明細書において、中空部材110は、底壁部2a、一対の側壁部2b、2bおよび天壁部3aにより形成されるものとして説明する。中空部材110の有する閉断面の形状の例については後述する。
なお、本実施形態に係る第1の構造部材2および第2の構造部材3は、例えば鋼板等の金属板により形成されることが好ましい。また、衝突性能の観点から両構造部材の板厚はバス等の大型の車両で多く用いられるフレーム構造では、2.3mm以下が好ましく、通常のサイズの車両で多く用いられるモノコック構造車両では1.8mm以下であることが好ましく、バイク等の小型車両では1.4mm以下であることが好ましい。両構造部材の板厚が大きい場合、衝突荷重の入力による中空部材110の折れ曲げ箇所における当該構造部材の面外変形が生じにくいため、本発明により得られる効果は小さい。また、両構造部材の板厚が大きい場合、中空部材の軽量化を達成することが困難である。また、本実施形態に係る第1の構造部材2および第2の構造部材3の強度は特に限定されない。ただし、軽量化により低減し得る中空部材の全体的な強度を補うために、両構造部材の引張強度は780MPa以上であることが好ましい。また、両構造部材の引張強度は980MPa以上であることがさらに好ましい。
図9に戻り、車両用構造部材100の構成要素について説明する。本実施形態に係るレインフォースメント4は、第2補強部材の一例である。レインフォースメント4は、図9に示すように、主面部4aおよび接合部4bを有する。主面部4aは、底壁部2aと天壁部3aに対向したまま車両用構造部材100の長手方向(Y軸方向)に延びる。他の実施形態においては、主面部4aは、一対の側壁部2bに対向するように設けられてもよい。また、主面部4aは、必ずしも中空部材110を形成する各壁部に対向させて設けられなくてもよい。例えば、底壁部2aと側壁部2bの間にレインフォースメント4が配置されてよい。
また、本実施形態に係る接合部4bは、側壁部2bに接合される。これにより、主面部4aが一対の側壁部2b、2b間を架け渡すように設けられる。そうすると、中空部材110に衝突荷重が加わった際にレインフォースメント4が一対の側壁部2b、2bを拘束するので、中空部材110の断面変形を抑制することができる。なお、接合部4bと側壁部2bとの接合方法は特に限定されない。例えば、当該接合方法は、溶接、リベット、ボルト締結、接着、またはヘム加工による接合等であってもよい。本実施形態では、接合部4bと側壁部2bは、スポット溶接により接合される。また、レインフォースメント4は、充填部材5の配置領域を区切るためのしきい板としての機能も有する。
本実施形態に係るレインフォースメント4は、例えば鋼板等の金属板により形成されることが衝突性能の観点から好ましい。レインフォースメント4の板厚は、バス等の大型の車両で多く用いられるフレーム構造では、2.3mm以下が好ましく、通常のサイズの車両で多く用いられるモノコック構造車両では1.8mm以下であることが好ましく、バイク等の小型車両では1.4mm以下であることが好ましい。レインフォースメント4の板厚が大きい場合、上述したように、衝突荷重の入力による中空部材110の折れ曲げ箇所におけるレインフォースメント4の面外変形が生じにくいため、本発明により得られる効果は小さい。また、レインフォースメント4の板厚が大きい場合、中空部材の軽量化を達成することが困難である。また、軽量化による中空部材の強度の低減を補うために、レインフォースメント4の引張強度は100MPa以上であることが好ましい。また、レインフォースメント4を形成する材料は、プラスチック、炭素繊維、合金板または複合材であってもよい。
なお、本実施形態に係るレインフォースメント4の中空部材110の内側における具体的な配置位置については後述する。
本実施形態に係る充填部材5は、上述した第1補強部材の一例である。本実施形態に係る充填部材5は、例えば発泡樹脂材からなる硬質の発泡充填部材である。より具体的には、充填部材5は、中空部材110の内側に設置された後に、化学変化により硬化する充填部材である。また、充填部材5の代わりに、第1補強部材として他の補強部材が用いられてもよい。この場合、第2補強部材であるレインフォースメント4のヤング率が第1補強部材のヤング率よりも大きい、または同一である第1補強部材が用いられることが好ましい。例えば、本実施形態に係る充填部材5のヤング率は、本実施形態に係るレインフォースメント4のヤング率の約1000分の1である。
なお、本実施形態に係る充填部材5の中空部材110の内側における具体的な配置位置については後述する。
また、本実施形態に係る中空部材110には、屈曲部6Aおよび6Bが設けられる。屈曲部6は、中空部材110が屈曲する部分である。すなわち、屈曲部6とは、中空部材110の断面の重心により形成される中心軸の長手方向における曲率半径が260mm以下である部分である。図11は、本実施形態に係る中空部材110の中心軸を可視化した模式図である。図11に示すように、中空部材110の中心軸C1は、屈曲部6Aおよび6Bにおいて屈曲している。
屈曲部6は、詳しくは後述するが、曲げ誘起部の一例である。車両用構造部材100が変形する際に曲がることが予測される箇所を曲げ誘起部という。このような屈曲部6を備える中空部材110は、例えば第1の構造部材2および第2の構造部材3の一部が屈曲するようにプレス成形を行い、これらの構造部材を組み立てることにより得られる。このような屈曲部6は、車両用構造部材1が適用される車両の構造に応じて適宜設けられる。中空部材110に設けられる屈曲部6の数は特に限定されず、上述したように車両の構造に応じて適宜決定される。すなわち、中空部材110に屈曲部6が設けられない場合も存在する。
中空部材110に曲げ誘起部が形成された場合、長手方向への衝突によって曲げ誘起部において曲げ変形が生じる。例えば、図11に示すように、かかる屈曲部6Aおよび6Bの曲率半径RAおよびRBの少なくともいずれかが260mm以下であれば、中空部材110は、衝突荷重の入力時に、上記曲率半径の条件を満たす屈曲部6Aおよび6Bのうちの少なくともいずれかにおいて曲げ変形が生じる。この曲げ変形に必要なエネルギが衝突によるエネルギから供給される。すなわち、中空部材110の曲げ変形により衝突エネルギを吸収することができる。この曲げ誘起部を中空部材110に設けることにより、衝突により生じる中空部材110の曲げ起点を設定することができる。そのため、中空部材110の想定外の曲げによるキャビンへの衝撃を回避することができるので、キャビンの安全性を確保することができる。
また、本実施形態に係るレインフォースメント4は、中空部材110を内側から支えるように、中空部材110の曲げ誘起部(例えば屈曲部6)の内側に設けられる。これにより、中空部材110の衝突時の断面変形を抑制し、衝突に対する耐荷重性を高めることができる。ゆえに、衝突安全性能を総合的に高めることができる。
なお、上述した曲げ誘起部は屈曲部6に限られない。曲げ誘起部の具体例については後述する。
また、図9に示すように、中空部材110の曲げ誘起部である屈曲部6において、中空部材110の底壁部2aとレインフォースメント4との間には、充填部材5が配置されている。さらに、図9に示すように、屈曲部6近傍において、底壁部2aには壁穴21が設けられており、充填部材5は、壁穴21を貫通し、底壁部2aの内壁面に密着する第1充填部分51と、底壁部2aの外壁面に密着する第2充填部分52とを備える構成となっている。
以下、充填部材5に関する構成および作用について、図12〜図14を参照しながら説明する。
図12は、本実施形態に係る車両用構造部材100の一例のZ軸方向に直交する断面における断面図である。なお、図12に示す断面図は、図9に示した中空部材110のXII−XII切断線における車両用構造部材100の断面に相当する。図12に示すように、中空部材110には、長手方向に沿って屈曲部6A、6Bが設けられている。屈曲部6Aは、底壁部2aが曲げ内側となる方向に屈曲して設けられている。また、屈曲部6Bは、天壁部3aが曲げ内側となる方向に屈曲して設けられている。
本実施形態に係る充填部材5は、レインフォースメント4の主面部4aに密着して配置される。図12に示した例では、充填部材5Aは、屈曲部6Aにおいて、底壁部2aに密着して設けられている。また、充填部材5Bは、屈曲部6Bにおいて、天壁部3aに密着して設けられている。
また、屈曲部6A近傍において、底壁部2aには壁穴21が設けられており、レインフォースメント4の主面部4aには穴41Aが設けられている。充填部材5Aは、壁穴21および穴41Aを貫通し、底壁部2aの両面および主面部4aの両面に密着して設けられている。詳細には、充填部材5Aは、底壁部2aの内壁面とレインフォースメント4の主面部4aの第1の面40aとに密着する第1充填部分51Aと、底壁部2aの外壁面に密着する第2充填部分52Aと、壁穴21に密着して設けられ第1充填部分51Aと第2充填部分52Aとを接続する第3充填部分53Aと、主面部4aの第2の面40bに密着する第4充填部分54Aと、穴41Aの内側に設けられ第1充填部分51Aと第4充填部分54Aとを接続する第5充填部分55Aと、により構成される。
同様に、屈曲部6B近傍において、天壁部3aには壁穴31が設けられており、レインフォースメント4の主面部4aには穴41Bが設けられている。充填部材5Bは、壁穴31および穴41Bを貫通し、天壁部3aの両面および主面部4aの両面に密着して設けられている。詳細には、充填部材5Bは、天壁部3aの内壁面とレインフォースメント4の主面部4aの第2の面40bとに密着する第1充填部分51Bと、天壁部3aの外壁面に密着する第2充填部分52Bと、壁穴31に密着して設けられ第1充填部分51Bと第2充填部分52Bとを接続する第3充填部分53Bと、主面部4aの第1の面40aに密着する第4充填部分54Bと、穴41Bの内側に設けられ第1充填部分51Bと第4充填部分54Bとを接続する第5充填部分55Bと、により構成される。
図13および図14は、図12に示した車両用構造部材100のXIII−XIII切断線およびXIV−XIV切断線における断面図である。図13に示すように、充填部材5Aは、底壁部2aと、主面部4aと、一対の側壁部2bとにより形成される空間7Aにおいて、底壁部2aおよび主面部4aに密着して配置されている。
底壁部2aには壁穴21が設けられ、主面部4aには穴41Aが設けられている。充填部材5Aは、空間7Aの各壁面に密着する第1充填部分51Aと、底壁部2aの外壁面に密着する第2充填部分52Aおよび主面部4aの第2の面40bに密着する第4充填部分54Aとが、壁穴21および穴41Aを貫通して接続されている。これにより、充填部材5Aは、底壁部2aと主面部4aとの双方に係止される。
そうすると、例えば、車両用構造部材1への衝突荷重が入力されて屈曲部6Aにおいて折れ曲げが生じる場合、車両衝突により底壁部2aおよび主面部4aに面外変形を生じさせる力が作用する。この場合、底壁部2aと主面部4aが互いに遠ざかる方向に変形しようとし、充填部材5Aには引張の力が作用する。このような状態であっても、充填部材5Aは底壁部2aおよび主面部4aに拘束されるので、充填部材5Aが底壁部2aおよび主面部4aに密着した状態を維持することができる。したがって、充填部材5Aによる底壁部2aおよびレインフォースメント4の面外変形を抑制することができる。
また、充填部材5Aが底壁部2aおよび主面部4aの継手としての能力を発揮するので、主面部4aおよび底壁部2aのそれぞれの変形により受ける力を相殺することができる。これにより、主面部4aの面外変形を単に抑制するだけではなく、面外変形を生じさせる力そのものを減じることができる。よって、車両用構造部材100の衝突安全性能をより高めることができる。
また、図13に示した例では、充填部材5Aの第1充填部分51Aは、稜線部2dや接続部分4cの内側に密着して配置されている。そのため、稜線部2dや接続部分4cにかかる局所的に高い応力による塑性変形を、より確実に抑制することができる。よって、車両用構造部材100の衝突安全性能をより高めることができる。
また、図14に示すように、屈曲部6Bにおいて、充填部材5Bは、天壁部3aと、主面部4aと、一対の側壁部2bとにより形成される空間7Bにおいて、天壁部3aおよび主面部4aに密着して配置されている。充填部材5Bの配置の変形例は、上述した充填部材5Aの配置の変形例と同様である。
上述した作用および効果は、図14に示したような、天壁部3aと主面部4aとの間に充填される充填部材5Bについても同様に発揮される。
なお、図13および図14に示した例では、壁穴21、31は底壁部2aおよび天壁部3aに設けられるとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、壁穴21は、側壁部2bまたは稜線部2d、2eに設けられてもよい。かかる場合であっても、充填部材5のうち側壁部2bや稜線部2d、2eの外側に膨出する部分がこれらの外壁面に密着するように設けられていれば、充填部材5が中空部材110の各壁部に密着した状態を維持することができる。
このように、本実施形態に係る車両用構造部材100においては、曲げ誘起部である屈曲部6の内側にレインフォースメント4が設けられる。また、充填部材5は、中空部材110の壁部およびレインフォースメント4に設けられた穴を貫通して、これらの両面に密着して配置される。これにより、車両用構造部材100への衝突荷重の入力の際においても、充填部材5は、中空部材110およびレインフォースメント4のいずれからも脱落せず、これらに拘束された状態を維持することができる。そうすると、充填部材5による中空部材110の壁部およびレインフォースメント4の面外変形を抑制することができる。これにより、充填部材5が車両用構造部材100の衝突安全性能に安定して貢献することができる。
また、充填部材5は、レインフォースメント4にのみ密着して配置されてもよい。例えば、図13および図14に示した空間7A、7Bが大きく、充填部材5が空間7Aおよび7Bを横断して底壁部2aまたは天壁部3aとレインフォースメント4との双方に密着して配置することが困難である場合、充填部材5は、レインフォースメント4にのみ密着されて配置されてもよい。この場合、レインフォースメント4には図1〜図8に示したような穴が設けられ、充填部材5が当該穴を貫通してレインフォースメント4の両面に密着して配置される。そうすると、車両用構造部材100への衝突荷重の入力の際においても、充填部材5は、レインフォースメント4から脱落せず、レインフォースメント4に拘束された状態を維持することができる。
なお、図12に示したレインフォースメント4は一の部材により形成され、屈曲部6における底壁部2aおよび天壁部3aのそれぞれに対向するように設けられているが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、レインフォースメント4は、屈曲部6等の曲げ誘起部における底壁部2aまたは天壁部3aに対向して複数設けられてもよい。また、レインフォースメント4は、中空部材110の長手方向に沿って全体的に設けられてもよい。つまり、レインフォースメント4は、曲げ誘起部の内側に設けられていれば、レインフォースメント4の中空部材110の長手方向における位置および長さは特に限定されない。
<3.曲げ誘起部の例>
次に、中空部材110に設けられる曲げ誘起部の例について説明する。上記の実施形態では、曲げ誘起部である屈曲部6について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、屈曲部を有さない中空部材(例えば、長手方向において略直線状に延びる中空部材を含む)においては、穴部、凹部、凸部、板厚変化部、および異強度部等が設けられた部分が、曲げ誘起部としての機能を実現する。穴部、凹部、凸部、および板厚変化部のいずれかが設けられた部分は、中空部材110の長手方向で中空部材110の断面係数が変化する部分である。中空部材110の長手方向で断面係数が変化する部分においては、同一の曲げモーメントにより中空部材110に生じる曲げ応力が変化するので、当該部分において中空部材110の曲げが誘起される。より具体的には、長手方向で中空部材110のうち断面係数が相対的に小さい部分については、当該部分における曲げ応力が相対的に大きくなるので、当該部分において屈曲が生じる。また、長手方向で中空部材110のうち断面係数が相対的に大きい部分については、当該部分の中空部材110の長手方向の前後における領域を含む部分の断面係数が相対的に小さくなる。したがって、当該領域と上記断面係数が相対的に大きい部分との境界部分において屈曲が生じる。
また、異強度部は、中空部材110の長手方向で中空部材110の降伏強度が変化する部分である。中空部材110の長手方向で降伏強度が変化する部分においては、当該部分における中空部材110の塑性変形が誘起される。例えば、長手方向で中空部材110のうち降伏強度が相対的に小さい部分については、当該部分における塑性変形が中空部材110において最初に生じるため、当該部分において屈曲が生じる。また、長手方向で中空部材110のうち降伏強度が相対的に大きい部分については、当該部分の中空部材110の長手方向の前後における領域を含む部分の降伏強度が相対的に小さくなる。したがって、当該領域と上記降伏強度が相対的に大きい部分との境界部分において屈曲が生じる。
なお、以下に示す曲げ誘起部の例では、中空部材110の内側にレインフォースメント4が設けられている場合を説明するが、かかる曲げ誘起部は、中空部材110の内側にレインフォースメント4が設けられていない場合でも適宜設けられる。
(穴部)
図15は、本実施形態に係る中空部材110に設けられる穴部60の例を説明するための車両用構造部材の断面図である。図15に示すように、底壁部2aには穴部60が設けられている。穴部60が設けられた部分における中空部材110の断面係数は、穴部60が設けられた部分の前後(中空部材110の長手方向についての)における部分の中空部材110の断面係数よりも低い。したがって、図15に示す衝突荷重Fが中空部材110に入力された場合、車両用構造部材100は、穴部60が設けられた部分において、穴部60が曲げ内側となるように屈曲する。そのため、レインフォースメント4は少なくとも穴部60が設けられた底壁部2aに対向する位置に設けられ、充填部材5はレインフォースメント4に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力により穴部60の近傍において屈曲が生じた場合に、レインフォースメント4の面外変形を抑制することができる。
なお、図15に示した例では、底壁部2aの穴部60が設けられた部分に充填部材5が配置されていたが、本発明はかかる例に限定されない。図16は、本実施形態に係る穴部60に対向して設けられる充填部材5の変形例を説明するための車両用構造部材100の断面図である。図16に示すように、穴部60の内側の空間には充填部材5が配置されなくてもよい。これにより、穴部60における底壁部2aの屈曲変形をより確実に行うことが可能である。なお、以下に示す他の曲げ誘起部の例においても同様に、曲げ誘起部の近傍の空間に充填部材5を配置させないようにすることで、曲げ誘起部における屈曲変形をより確実に行うことが可能となる。
また、穴部の形状および配置については、上述した例に限られない。図17〜図20は、本実施形態に係る中空部材に設けられる穴部の他の例を示す模式図である。図17に示すように、円形の穴部60aが底壁部2aに設けられてもよい。また、図18に示すように、複数の穴部60bが底壁部2aに設けられてもよい。この場合、例えば、複数の穴部60bが、中空部材110Aの長手方向に横切る方向に並んで設けられてもよい。この場合、衝突荷重の入力時において、穴部60bが曲げの起点として、中空部材110Aが底壁部2a側に曲げ変形やすくなる。
また、図19に示すように、中空部材110Aの長手方向に横切る方向に延在する穴部60cが底壁部2aに設けられてもよい。この場合、衝突荷重の入力時において、穴部60cが曲げの起点として、中空部材110Aが底壁部2a側に曲げ変形される。なお、穴部60cの形状は、図19に示す角丸矩形に限定されず、あらゆる形状であってもよい。
なお、上述した中空部材110Aの長手方向に横切る方向は、図17〜図19に示すような、中空部材110Aの長手方向に直交する方向に限定されない。例えば、穴部60が設けられた部分の面において、中空部材110Aの長手方向と当該横切る方向とのなす角が、45度以上90度以下であることが好ましい。これにより、安定した曲げ変形を誘起させることができる。
また、穴部60の設けられる部分は底壁部2aに限られない。例えば、側壁部2bや天壁部3aに穴部60が設けられてもよい。また、穴部60が設けられた部分に対向する部分には、穴部60等が設けられないことが好ましい。例えば、穴部60が底壁部2aに設けられた場合、天壁部3aには別の穴部60の曲げ変形を誘起する部分は設けられないことが好ましい。衝突荷重の入力時に、穴部60が設けられた側に曲げ変形を誘起するためである。
また、図20に示すように、穴部60dが稜線部2dに設けられてもよい。これにより、中空部材110Aのうち長手方向で穴部60dが設けられた部分の断面係数が顕著に低下するので、穴部60dが設けられた部分を曲げの起点とする曲げ変形をより確実に誘起することができる。
なお、図17〜図20に示した穴部60は、本発明の一実施形態に係る壁穴21の機能を有していてもよい。すなわち、充填部材5は、曲げ誘起部として設けられた穴部60を貫通して、中空部材110の壁部20(例えば底壁部2a)の両面に密着して配置されてもよい。また、曲げ誘起部としての穴部60は、充填部材5を中空部材110に拘束させるための壁穴21と異なるものであってもよい。
(凹部)
図21は、本実施形態に係る中空部材に設けられるビード部の例を説明するための車両用構造部材100の断面図である。なお、ビード部61は、本実施形態における凹部の一例である。図21に示すように、底壁部2aにはビード部61が設けられている。ビード部61が設けられた部分における中空部材110の断面係数は、ビード部61が設けられた部分の前後(中空部材110の長手方向についての)における部分の中空部材110の断面係数よりも低い。したがって、図21に示す衝突荷重Fが中空部材110に入力された場合、車両用構造部材100はビード部61が設けられた部分において、ビード部61が曲げ内側となるように屈曲する。そのため、レインフォースメント4は少なくともビード部61が設けられた底壁部2aに対向する位置に設けられ、充填部材5はレインフォースメント4に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力によりビード部61の近傍において屈曲が生じた場合に、レインフォースメント4の面外変形を抑制することができる。
なお、凹部の形状および配置については、上述した例に限られない。図22〜図25は、本実施形態に係る中空部材に設けられる凹部の他の例を示す模式図である。ここでいう凹部とは、エンボスやビードなどの、中空部材110Bの底壁部2a等に設けられる窪み部分を意味する。図22に示すように、円形の凹部61aが底壁部2aに設けられてもよい。
また、図23に示すように、複数の凹部61bが底壁部2aに設けられてもよい。この場合、例えば、複数の凹部61bが、中空部材110Bの長手方向に横切る方向に並んで設けられてもよい。この場合、衝突荷重の入力時において、複数の凹部61bが曲げの起点として、中空部材110Bが底壁部2a側に曲げ変形されやすくなる。
また、図24に示すように、中空部材110Bの長手方向に横切る方向に延在するビード部61cが底壁部2aに設けられてもよい。この場合、衝突荷重の入力時において、ビード部61cが曲げの起点として、中空部材110Bが底壁部2a側に曲げ変形される。なお、ビード部61cの形状は、図24に示す角丸矩形に限定されず、あらゆる形状であってもよい。
なお、上述した中空部材110Bの長手方向に横切る方向は、図24に示すような、中空部材110Bの長手方向に直交する方向に限定されない。例えば、凹部61が設けられた部分の面において、中空部材110Bの長手方向と当該横切る方向とのなす角が、45度以上90度以下であればよい。
また、凹部61の設けられる部分は底壁部2aに限られない。例えば、側壁部2bや天壁部3aに凹部61が設けられてもよい。また、凹部61が設けられた部分に対向する部分には、凹部61等が設けられないことが好ましい。例えば、凹部61が底壁部2aに設けられた場合、天壁部3aには別の凹部61の曲げ変形を誘起する部分は設けられないことが好ましい。衝突荷重の入力時に、凹部61が設けられた側に曲げ変形を誘起するためである。
また、図25に示すように、凹部61dが稜線部2dに設けられてもよい。これにより、中空部材110Bのうち長手方向で凹部61dが設けられた部分の断面係数が顕著に変化するので、凹部61dが設けられた部分を曲げの起点とする曲げ変形をより確実に誘起することができる。
上述したような凹部61を設ける場合、凹部61の形態は特に限定されないが、凹部61は以下に示す形態を有することが好ましい。例えば、中空部材110Bが高強度鋼板により形成される場合、成型性の観点から、図26に示すように、凹部61の深さDd(凹部61が設けられた部分の面611と凹部61の底612との間における、平面に直交する方向の長さ、図26参照)は、中空部材110Bの板厚の3倍以上であることが好ましい。また、中空部材110Bの長手方向における凹部61の縁613同士の距離Ld(図26参照)は、50mm以下であることが好ましい。
図27は、本実施形態に係る中空部材に設けられる凹部の他の例を示す模式図である。図27に示すように、中空部材110Bの長手方向に延在する凹部61e、61fが、中空部材110Bの長手方向に沿って並んで設けられてもよい。この場合、中空部材110Bのうち、長手方向における凹部61eと凹部61fとの間の部分610で曲げが生じる。すなわち、中空部材110Bのうち、凹部61e、61fが設けられた部分と、凹部61eと凹部61fとの間の部分610とでは断面係数が異なるので、衝突荷重の入力時において、当該部分610を曲げの起点として曲げ変形が生じる。なお、この場合においても、中空部材110Bが高強度鋼板により形成される場合、成型性の観点から、凹部61e、61fの深さDdは、中空部材110Bの板厚の3倍以上であることが好ましい。また、当該部分610には、凹部、後述する凸部、薄肉部または異強度部等が形成されていてもよい。
なお、凹部61eおよび凹部61fは、図27に示すように、必ずしも直列に並んでいなくてもよい。また、凹部61eおよび凹部61fは、必ずしも中空部材110Bの長手方向に延在していなくてもよい。例えば、凹部61eおよび凹部61fが設けられた部分の面において、中空部材110Bの長手方向と凹部61eおよび凹部61fの延在方向とのなす角は、0度以上45度以下であればよい。
(凸部)
図28は、本実施形態に係る中空部材に設けられる凸部の例を説明するための車両用構造部材100の断面図である。図28に示すように、底壁部2aには凸部62が設けられている。凸部62が設けられた部分における中空部材110の断面係数は、凸部62が設けられた部分の前後(中空部材110の長手方向についての)における部分の中空部材110の断面係数よりも高い。したがって、図28に示す衝突荷重Fが中空部材110に入力された場合、中空部材110の長手方向における凸部62の前後の領域8aまたは8bの少なくともいずれかにおいて、凸部62が曲げ内側となるように屈曲する。この領域8aおよび8bは、Y軸方向における、中空部材110の断面係数の変化が生じる領域である。そのため、レインフォースメント4は少なくとも凸部62並びに凸部62の前後の領域8aおよび8bに対向する位置に設けられ、充填部材5はレインフォースメント4に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力により凸部62の近傍において屈曲が生じた場合に、レインフォースメント4の面外変形を抑制することができる。
なお、凸部の形状および配置については、上述した例に限られない。図29〜図32は、本実施形態に係る中空部材に設けられる凸部の他の例を示す模式図である。ここでいう凸部は、例えば、中空部材110の加工等により実現される。すなわち、かかる凸部は、中空部材110Cを構成する鋼板の一部を変形させて設けられるものであってもよい。図29に示すように、円形の凸部62aが底壁部2aに設けられてもよい。
また、図30に示すように、複数の凸部62bが底壁部2aに設けられてもよい。この場合、例えば、複数の凸部62bが、中空部材110Cの長手方向に横切る方向に並んで設けられてもよい。この場合、衝突荷重の入力時において、中空部材110Cの長手方向における複数の凸部62bの前後の領域のいずれかが曲げの起点として、中空部材110Cが底壁部2a側に曲げ変形されやすくなる。
また、図31に示すように、中空部材110Cの長手方向に横切る方向に延在する凸部62cが底壁部2aに設けられてもよい。この場合、衝突荷重の入力時において、中空部材110Cの長手方向における凸部62cの前後の領域のいずれかが曲げの起点として、中空部材110Cが底壁部2a側に曲げ変形される。なお、凸部62cの形状は、図31に示す角丸矩形に限定されず、あらゆる形状であってもよい。
なお、上述した中空部材110Cの長手方向に横切る方向は、図31に示すような、中空部材110Cの長手方向に直交する方向に限定されない。例えば、凸部62が設けられた部分の面において、中空部材110Cの長手方向と当該横切る方向とのなす角が、45度以上90度以下であればよい。
また、凸部62の設けられる部分は底壁部2aに限られない。例えば、側壁部2bや天壁部3aに凸部62が設けられてもよい。また、凸部62が設けられた部分に対向する部分には、凸部62等が設けられないことが好ましい。例えば、凸部62が底壁部2aに設けられた場合、天壁部3aには別の凸部62等の曲げ変形を誘起する部分は設けられないことが好ましい。衝突荷重の入力時に、凸部62が設けられた側に曲げ変形を誘起するためである。
また、図32に示すように、凸部62dが稜線部2dに設けられてもよい。これにより、中空部材110Cのうち長手方向で凸部62dが設けられた部分の断面係数が顕著に変化するので、凸部62dが設けられた部分を曲げの起点とする曲げ変形をより確実に誘起することができる。
上述したような凸部62を設ける場合、凸部62の形態は特に限定されないが、凸部62は以下に示す形態を有することが好ましい。例えば、中空部材110Cが高強度鋼板により形成される場合、成型性の観点から、図33に示すように、凸部62の高さHd(凸部62が設けられた部分の面621と凸部62の頂622との間における、平面に直交する方向の長さ、図33参照)は、中空部材110Cの板厚の3倍以上であることが好ましい。また、中空部材110Cの長手方向における凸部62の縁623同士の距離Ld(図33参照)は、50mm以下であることが好ましい。
図34は、本実施形態に係る中空部材に設けられる凸部の他の例を示す模式図である。図34に示すように、中空部材110Cの長手方向に延在する凸部62e、62fが、中空部材110Cの長手方向に沿って並んで設けられてもよい。この場合、中空部材110Cのうち、長手方向における凸部62eと凸部62fとの間の部分620で曲げが生じる。すなわち、中空部材110Cのうち、凸部62e、62fが設けられた部分と、凸部62eと凸部62fとの間の部分620とでは断面係数が異なるので、衝突荷重の入力時において、当該部分620を曲げの起点として曲げ変形が生じる。なお、この場合においても、中空部材110Cが高強度鋼板により形成される場合、成型性の観点から、凸部62e、62fの深さは、中空部材110Cの板厚の3倍以上であることが好ましい。また、当該部分620には、上述した凹部、または後述する薄肉部もしくは異強度部等が形成されていてもよい。
なお、凸部62eおよび凸部62fは、図34に示すように、必ずしも直列に並んでいなくてもよい。また、凸部62eおよび凸部62fは、必ずしも中空部材110Cの長手方向に延在していなくてもよい。例えば、凸部62eおよび凸部62fが設けられた部分の面において、中空部材110Cの長手方向と凸部62eおよび凸部62fの延在方向とのなす角は、0度以上45度以下であればよい。
(板厚変化部・薄肉部)
また、底壁部2aには曲げ誘起部を実現する構成として板厚変化部が設けられてもよい。図35は、本実施形態に係る中空部材に設けられる板厚変化部の一例を示す模式図である。ここでいう板厚変化部とは、中空部材110Dの長手方向において板厚が変化する部分を意味する。図35に示すように、中空部材110Dは、第1板厚部111および第2板厚部112を備える。第1板厚部111は中空部材110Dの端部側に設けられ、第2板厚部112は、中空部材110Dの長手方向に沿って第1板厚部111と連続して設けられる。第1板厚部111と第2板厚部112との間では、鋼板の板厚が異なる。板厚の大小関係については特に限定されないが、中空部材110D全体の曲げ剛性の確保の観点から、第2板厚部112の板厚が第1板厚部111の板厚よりも大きいことが好ましい。
この場合、図35に示すように、第1板厚部111と第2板厚部112との境目の部分が板厚変化部113となる。この板厚変化部113において中空部材110Dの長手方向での断面係数が変化する。すなわち、板厚変化部113が曲げ誘起部6に相当する。したがって、衝突荷重が中空部材110Dに入力された場合、車両用構造部材100は板厚変化部113において屈曲する。そのため、レインフォースメント4は少なくとも板厚変化部113が設けられた底壁部2aに対向する位置に設けられ、充填部材5はレインフォースメント4に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力により板厚変化部113の近傍において屈曲が生じた場合に、レインフォースメント4の面外変形を抑制することができる。
また、曲げ誘起部6は、例えば、薄肉部により実現されてもよい。図36は、本実施形態に係る中空部材に設けられる薄肉部の一例を示す模式図である。図36に示すように、底壁部2aには、中空部材110Dの長手方向前後において、他の部分よりも相対的に板厚が薄い薄肉部114が設けられている。薄肉部114を含む部分における中空部材110の断面係数は、薄肉部114が設けられた部分の前後(中空部材110Dの長手方向についての)における部分の中空部材110Dの断面係数よりも低い。すなわち、中空部材110Dのうち薄肉部114が設けられた部分が曲げ誘起部6に相当する。したがって、衝突荷重が中空部材110Dに入力された場合、車両用構造部材100は薄肉部が設けられた部分において、薄肉部が曲げ内側となるように屈曲する。
かかる板厚変化部を有する中空部材110Dは、例えば、切削、プレス、およびテーラードブランクからなる被加工板により形成されてもよい。かかる被加工板は、溶接線を有するテーラーウェルドブランク(Tailor Welded Blank;TWB)であってもよい。また、上記被加工板は、圧延ロールにより板厚を異ならせて設けられるテーラーロールドブランク(Tailor Rolled Blank;TRB)であってもよい。TWBにおいては、板厚変化部における差厚は0.2mm以上とすることが可能である。また、TRBにおいては、部材長手方向当たりの板厚変化部における板厚変化量は、0.1mm/100mm以上とすることが可能である。
(異強度部・強度変化部)
図37は、本実施形態に係る中空部材に設けられる異強度部の例を説明するための車両用構造部材100の断面図である。図37に示すように、底壁部2aには異強度部63が設けられている。異強度部63は、例えば、中空部材110に対して部分的に溶接、焼き入れまたは焼き戻し等の熱処理等を行うことにより設けられる。異強度部63が設けられた部分における中空部材110の降伏強度は、異強度部63が設けられた部分の前後(中空部材110の長手方向についての)における部分の中空部材110の降伏強度とは異なる。したがって、図37に示す衝突荷重Fが中空部材110に入力された場合、異強度部63または異強度部63の近傍において、異強度部63が曲げ内側となるように屈曲する。この屈曲は、異強度部63または異強度部63の近傍の領域が塑性変形することにより生じる屈曲である。そのため、レインフォースメント4は少なくとも異強度部63または異強度部63の近傍の領域に対向する位置に設けられ、充填部材5はレインフォースメント4に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力により異強度部63または異強度部63の近傍において屈曲が生じた場合に、レインフォースメント4の面外変形を抑制することができる。
なお、異強度部の配置については、上述した例に限られない。図38、図39は、本実施形態に係る中空部材に設けられる異強度部の他の例を示す模式図である。ここでいう異強度部は、中空部材110Eを形成する被加工板に対する溶接または熱処理等により実現される。
図38に示すように、中空部材110Eの長手方向に対する断面周方向に沿って異強度部120が設けられている。この場合も、中空部材110Eのうち異強度部120が設けられた部分が曲げ誘起部6に相当する。したがって、衝突荷重が中空部材110Eに入力された場合、車両用構造部材100は異強度部120が設けられた部分において、異強度部120が曲げ内側となるように屈曲する。
なお、かかる異強度部は、例えば、図39に示したように、底壁部2a等、中空部材110Eの断面を構成する壁部の少なくともいずれかに部分的に設けられてもよい。かかる場合においても、衝突荷重が中空部材110Eに入力された場合、車両用構造部材100は異強度部121が設けられた部分において、異強度部121が曲げ内側となるように屈曲する。
また、曲げ誘起部6は、例えば、強度変化部により実現されてもよい。図40は、本実施形態に係る中空部材に設けられる強度変化部の一例を示す模式図である。図40に示すように、中空部材110Eは、第1強度部122および第2強度部123を備える。第1強度部122は中空部材110Eの端部側に設けられ、第2強度部123は、中空部材110Eの長手方向に沿って第1強度部122と連続して設けられる。第1強度部122と第2強度部123との間では、鋼板の降伏強度が異なる。降伏強度の大小関係については特に限定されないが、中空部材110E全体としての曲げ剛性の確保の観点から、第2強度部123の降伏強度が第1強度部122の降伏強度よりも大きいことが好ましい。
この場合、図40に示すように、第1強度部122と第2強度部123との境目の部分が強度変化部124となる。この強度変化部124において中空部材110Eの長手方向での降伏強度が変化する。すなわち、強度変化部124が曲げ誘起部6に相当する。したがって、衝突荷重が中空部材110Eに入力された場合、車両用構造部材100は強度変化部124において屈曲する。
(組み合わせ)
なお、屈曲部を有する中空部材において、屈曲部の曲げ内側部分に上記の例に示した穴部等の曲げを誘起させるための部分がさらに設けられてもよい。図41は本実施形態に係る中空部材に設けられる屈曲部および穴部の組み合わせの例を説明するための車両用構造部材100の断面図である。図41に示すように、中空部材110には屈曲部6Aが設けられ、底壁部2aの曲げ内側部分6Aaには穴部64が設けられる。レインフォースメント4は少なくとも曲げ内側部分6Aaおよび穴部64に対向する位置に設けられ、充填部材5はレインフォースメント4に密着して配置される。これにより、衝突荷重Fの入力により、屈曲部6において中空部材110をより確実に屈曲させることができる。
曲げ誘起部の組み合わせは図41に示した例に限られず、上記に示した曲げ誘起部の例を複数組み合わせることにより、曲げ誘起部における中空部材110の屈曲をより確実に生じさせることができる。例えば、上述した屈曲部、凹部、凸部、穴部、板厚変化部、薄肉部、異強度部および強度変化部の少なくとも2つ以上の組み合わせにより、曲げ誘起部が実現されてもよい。
なお、図15、図16、図21、図28、図37、図41、図42に示したレインフォースメント4の設置位置は、曲げ誘起部の内側のみであるが、本発明はかかる例に限定されない。少なくとも曲げ誘起部の内側に設けられていれば、レインフォースメント4の長手方向の長さおよび設置位置は特に限定されない。車両用構造部材100に要求される衝突安全性能および重量等に応じて、レインフォースメント4のサイズ、材質および設置位置は適宜調整される。
(曲げ誘起部の他の例)
また、中空部材110に効果的な曲げ誘起部が設けられない場合であっても、レインフォースメント4に屈曲部、凹部、凸部、穴部、板厚変化部、薄肉部、異強度部および強度変化部が設けられれば、レインフォースメント4の屈曲部、凹部、凸部、穴部、板厚変化部、薄肉部、異強度部および強度変化部が曲げ誘起部になる。しかしながら、レインフォースメント4に曲げ誘起部が設けられても、中空部材110の曲げ誘起部に比べ、同じ条件であれば、曲げ誘起部としての効果は得られにくい。なぜなら、レインフォースメント4は中空部材110の内部にあるため、断面係数への影響が小さいからである。
故に、中空部材110に設けられた曲げ誘起部が主要な曲げ誘起部として扱われる。また、中空部材110に曲げ誘起部が設けられず、レインフォースメント4に凹部、凸部、穴部、板厚変化部、薄肉部、異強度部および強度変化部があれば、それらが曲げ誘起部とみなされる。
この場合、例えば、屈曲部については、中空部材110とレインフォースメント4とを合わせた断面(すなわち、充填部材5を除く車両用構造部材1の断面)の重心により形成される長手方向に沿った中心軸の曲率半径が260mm以下である部分が、曲げ誘起部となる屈曲部とみなされる。
さらに、レインフォースメント4に上述したような構成に基づく曲げ誘起部が設けられていない場合であっても、レインフォースメント4の端部が曲げ誘起部になることもある。なぜなら、車両用構造部材100の長手方向において、レインフォースメント4の有無により断面係数が変化するからである。図42は、本実施形態に係る中空部材110の内側にレインフォースメント4を長手方向に離間して並設した構成例を示す車両用構造部材100の断面図である。例えば、図42に示すように、レインフォースメント4を長手方向に離間して配置した場合、部材の長手方向のレインフォースメント4の端部の位置に充填部材5を配置すれば、部材の変形を緩和することができる。このように、充填部材5を除く車両用構造部材100の断面係数が長手方向で変化する部分が、曲げ誘起部とみなされる。
<4.中空部材の閉断面の形状の例>
中空部材110の有する閉断面の形状の例について説明する。図43は、本発明の他の実施形態に係る中空部材110の第1の例の長手方向に直交する断面を示す断面図である。図43に示すように、中空部材110の閉断面は、X軸について対称な略六角形の形状を有する。このうち、第1の構造部材2のX軸方向に略直交する部分において、4つの頂点2d、2d、2f、2fが存在する。ここで、頂点2dの内角ang1が頂点2fの内郭ang2より小さい場合、頂点2dが稜線部2dとして定義される。すなわち、頂点2f、2fを含む、一対の稜線部2dに挟まれる部分が、底壁部2aと定義される。
図44は、本発明の他の実施形態に係る中空部材110の第2の例の長手方向に直交する断面を示す断面図である。図44に示すように、第1の構造部材2および第2の構造部材30は、ハット形の断面形状を有する。すなわち、中空部材110は、ハット形の断面形状を有する2つの構造部材により形成される。この場合、第1の構造部材2の側壁部2bおよび第2の構造部材30の側壁部30bは、第1の構造部材2の稜線部2eと第2の構造部材30の稜線部30eとを介して、連続した一つの側壁部(連続側壁部)として定義される。すなわち、中空部材110の閉断面は、底壁部2aと、一対の連続側壁部と、底壁部30a(天壁部に相当)により形成される。
また、中空部材110、および中空部材110の有する閉断面の形状は、図10、図43および図44に示した例に限定されない。中空部材110の有する閉断面の形状が略多角形であり、当該閉断面を形成する底壁部、一対の側壁部および天壁部に相当する部分が定義できれば、本発明に係る技術は中空部材110に対して適用可能である。例えば、中空部材は、U字形の断面形状を有する2つの構造部材を、開口部分が対向するように重ねあわせることにより得られる閉断面を有する中空部材であってもよい。また、中空部材は、円管に対してハイドロフォーミングまたは曲げ加工等を行うことにより形成される中空部材であってもよい。
次に、本発明の実施例について説明する。本発明の効果を確認するために、本実施例では、上記実施形態に係る充填部材の骨格部材に対する密着性の向上効果について検証した。なお、以下の実施例は本発明の効果を検証するために行ったものに過ぎず、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
本発明者らは、充填部材の骨格部材に対する密着性の向上効果について検証するために、十字引張試験によるCTS(Cross Tension Strength:十字剥離強さ)を評価した。より詳細には、本試験では、実施例および比較例ごとに十字引張試験片を準備し、これらについて引張試験を行い、その継手強度であるCTSを評価した。継手強度の大小が、充填部材の骨格部材に対する密着性の大小に対応する。
図45は、実施例1および実施例2に係る十字引張試験に用いられるサンプルの構成を示す上面図である。また、図46は、実施例1に係るサンプルの構成を示す側方断面図である。図45および図46に示すように、実施例1に係るサンプルは、第1試験片101および第2試験片102との間に充填部材50を充填して硬化させることにより第1試験片101および第2試験片102を接合した、十字引張試験片である。また、第1試験片101および第2試験片102の中心には、壁穴103、104が設けられている。壁穴103、104の直径は、それぞれ22mmである。
充填部材50の一部は、かかる壁穴103、104から膨出し、第1試験片101および第2試験片102の外壁面に密着する第2充填部分52となる。また、第1試験片101および第2試験片の内壁面に密着する第1充填部分51と第2充填部分52とは、壁穴103、104に密着して設けられる第3充填部分53により接続される。すなわち、充填部材50は、第1試験片101および第2試験片102に、接着力により、および機械的に係止されて接合された状態である。
図47は、実施例2に係るサンプルの構成を示す側方断面図である。図47に示すように、実施例2に係るサンプルは、第1試験片201および第2試験片202との間に充填部材50を充填して硬化させることにより第1試験片201および第2試験片202を接合した、十字引張試験片である。また、実施例1と同様に、実施例2に係る第1試験片201および第2試験片202の中心には、壁穴203、204が設けられている。壁穴203、204にはバーリング加工が施されており、壁穴203、204の穴縁端は、互いに対向する方向に突出している。壁穴203、204のバーリング加工後の直径は、それぞれ22mmである。
充填部材50の一部は、かかる壁穴203、204から膨出し、第1試験片201および第2試験片202の外壁面に密着する第2充填部分52となる。また、第1試験片201および第2試験片の内壁面に密着する第1充填部分51と第2充填部分52とは、壁穴203、204に密着して設けられる第3充填部分53により接続される。すなわち、充填部材50は、第1試験片201および第2試験片202に、接着力により、および機械的に係止されて接合された状態である。
図48は、比較例に係るサンプルの構成を示す側方断面図である。図48に示すように、比較例に係るサンプルは、第1試験片901および第2試験片902との間に充填部材50を充填して硬化させることにより第1試験片901および第2試験片902を接合した、十字引張試験片である。なお、比較例に係る第1試験片901および第2試験片902の中心には、壁穴は設けられていない。したがって、充填部材50は、第1試験片901および第2試験片902に接着力のみにより接合された状態である。
各実施例および比較例に用いた第1試験片、第2試験片および充填部材の特性およびサイズは以下の通りである。
−第1試験片、第2試験片
引張強度:1180MPa
サイズ :幅50mm、長さ150mm、厚さ1.4mm
表面処理:合金化溶融亜鉛めっき
−充填部材
材質:ポリウレタン
厚さ:10mm
また、各実施例および比較例の第1試験片および第2試験片の両端側には、引張試験時にこれらを引張方向に引っ張るための治具を固定するための固定穴(直径20mm)が設けられている。
十字引張試験では、各実施例および比較例に係るサンプルを1mm/minの速度で引っ張り、最大荷重(N)を計測した。なお、各実施例および比較例に係るサンプル数はそれぞれ2とした。
図49は、十字引張試験により計測された各サンプルの最大荷重を示すグラフである。なお、実施例1−1および実施例1−2のグラフは実施例1に係るサンプルの試験結果の各々を示す。また、実施例2−1および2−2のグラフは実施例2に係るサンプルの試験結果の各々を示す。また、比較例1および比較例2のグラフは比較例に係るサンプルの試験結果の各々を示す。
図49に示すように、実施例1および実施例2に係るサンプルの最大荷重は、比較例に係るサンプルの最大荷重よりも顕著に大きいことが示された。この結果から、充填部材を骨格部材に相当する試験片に単に接着させるよりも、充填部材を当該試験片の両面に密着させて当該試験片に係止させることで、試験片に高負荷が与えられても、充填部材が試験片に密着した状態を維持することができることが示された。
また、実施例1と実施例2とを比較すると、実施例2に係るサンプルの最大荷重が実施例1に係るサンプルの最大荷重よりも大きいことが示された。この結果から、バーリング加工された壁穴の穴縁端に充填部材が食い込まれるように設けられることで、試験片と充填部材との継手強度をより高くすることができることが示された。
以上、上記実施例に示したように、充填部材を骨格部材に相当する試験片に設けられた穴に貫通させて当該試験片の両面に密着させることで、試験片に高負荷が与えられても、充填部材は試験片から容易に脱落しにくくなる。このことから、壁穴を介して充填部材を骨格部材に係止する構成とすることにより、充填部材を骨格部材に密着した状態を維持させることが可能となる。すなわち、衝突荷重により骨格部材に面外変形を生じさせ得る負荷が与えられても、充填部材が車両用構造部材の衝突安全性能に安定して貢献することが可能である。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。