JP6906713B2 - 真珠養殖用材料、挿核方法及び真珠養殖用材料組成物 - Google Patents

真珠養殖用材料、挿核方法及び真珠養殖用材料組成物 Download PDF

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Description

本開示は、真珠養殖用材料、挿核方法及び真珠養殖用材料組成物に関する。
養殖真珠は、真珠を生産し得る母貝の体内に、外套膜の組織片(以下、「外套膜ピース」ともいう。)及び真珠核を挿入(以下、「挿核」ともいう。)し、真珠核の表面に真珠質を分泌させる真珠袋を形成させて、真珠核の表面に真珠層が形成することにより作製できる。
特に、挿核は、他種の貝殻を球状に削った核を母貝の体内に挿入するため、異物による生体防御反応が母貝の大きな負担となり、挿核の良否が、その後の母貝の死亡率や、真珠の品質(シミ又はキズの有無)を左右する重要なプロセスと言われている。
母貝の生体と異物である核との適合性を改善して、貝の生残率や良質な真珠の比率を改善する目的で、各種の生体材料;ペプチド、フィブロネクチン、キトサン、ポリ乳酸などでコーティングした核が開示されている。
例えば、核表面に、コラーゲン、ゼラチン及びこれらの化学的誘導体からなる群より選ばれた1種又は2種以上の混合物の被膜を、厚さ0.005μm以上で有することを特徴とする真珠養殖用の核が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、真珠貝に無毒であり、且つカルシウム結晶よりも拒絶性の弱い細胞足場性有機物質(例えばフィブロネクチン、フェチュイン)で養殖用核の表面を被覆してなることを特徴とする真珠養殖用核が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、真珠養殖用母貝の外套膜切片の処理に使用される真珠養殖用細胞賦活剤であって、分子中にArg−Gly−Asp配列を有し、かつ細胞接着活性並びに細胞賦活活性を有する人工のポリペプチドを含有することを特徴とする真珠養殖用外套膜細胞賦活剤が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
また、表面が正電荷を帯びたことを特徴とする真珠核が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
得られた真珠の表面にシミ及びキズが少ない良質な真珠を得ることを目的として、様々な技術が提案されている。
例えば、良質の外套膜ピースを確保可能とするとともに、養殖真珠の質をさらに高める養殖方法として、ピース貝の外套膜から得られる外套膜ピースと真珠核とを母貝に移殖して真珠を養殖する真珠の養殖方法において、上記外套膜ピースとして、上記外套膜の上皮組織から上皮細胞を分離し、この分離した上皮細胞を生体外で人工培養したものを用いるようにしたことを特徴とする真珠の養殖方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
母貝に無害で、かつ拒絶性が少なく、歩留まりが大幅に向上し得る真珠養殖用核として、真珠養殖のために母貝に挿入される核であって、上記核が、真珠養殖用の母貝の廃貝殻を微細粉砕し、焼結し成形したものを特徴とする真珠養殖用核が開示されている(例えば、特許文献6参照)。
真珠養殖用貝類に対して母貝仕立てを行い、真珠核を挿入して養成し、次いで生成した養殖真珠を取り出す養殖真珠の製造方法において、上記母貝仕立ての後であって上記真珠核を挿入する前に、上記真珠核より密度の小さい核を挿入し、所定期間の養成後に上記の密度の小さい核を抜き出すことを特徴とする養殖真珠の製造方法が開示されている(例えば、特許文献7参照)。
特許文献1:特開平2−203724号公報
特許文献2:特開平1−148135号公報
特許文献3:特開2006−304628号公報
特許文献4:国際公開第2015/033972号
特許文献5:特開平5−236848号公報
特許文献6:特開2006−296274号公報
特許文献7:特開平11−56161号公報
しかしながら、特許文献1〜7に記載の技術では、良質な真珠の得率は十分に高いとはいえず、良質な真珠の得率を向上させるための新たな養殖技術が未だ求められている。
上記に鑑み、本開示に係る一実施形態が解決しようとする課題は、得られる真珠の真珠層が厚く、良質な真珠の得率を向上させる真珠養殖用材料、挿核方法又は真珠養殖用材料組成物を提供することである。
上記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 真珠核及び外套膜よりなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、
上記真珠核及び外套膜よりなる群から選ばれる少なくとも1つが、エンドトキシン量10EU/g以下であるタンパク質を含有する、真珠養殖用材料。
<2> 上記真珠核又は外套膜の表面積における上記タンパク質の被覆量が、20pg/mm以上である、上記<1>に記載の真珠養殖用材料。
<3> 上記エンドトキシン量が、2.5EU/g以下である、上記<1>又は<2>に記載の真珠養殖用材料。
<4> 上記タンパク質が、コラーゲンのアミノ酸配列の少なくとも一部を含む、上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の真珠養殖用材料。
<5> 上記コラーゲンのアミノ酸配列が、I型コラーゲンα1のアミノ酸配列である、上記<4>に記載の真珠養殖用材料。
<6> 上記真珠核及び外套膜よりなる群から選択される少なくとも1つが、1個以上のアミノ酸で分離されていてもよいGXYトリプレットの繰り返し配列、及び1個以上のRGDモチーフを含み、かつ、多分散度が20未満であるタンパク質を含む、上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の真珠養殖用材料。
<7> ゲル浸透クロマトグラフィー法による上記タンパク質の重量平均分子量が、30kDa〜200kDaである、上記<1>〜<6>のいずれか1つに記載の真珠養殖用材料。
<8> 上記タンパク質が、遺伝子組み換え体酵母由来のタンパク質を含む、上記<1>〜<7>のいずれか1つに記載の真珠養殖用材料。
<9> 上記<1>〜<8>のいずれか1つに記載の真珠養殖用材料を含む、真珠養殖用材料組成物。
<10> 真珠が取り出された母貝の真珠袋に上記<1>〜<8>のいずれか1つに記載の真珠養殖用材料を用いて真珠核を挿入する方法。
<11> 上記<10>に記載の方法により挿核された母貝を用いて、真珠を作製する方法。
本開示に係る一実施形態によれば、得られる真珠の真珠層が厚く、良質な真珠の得率を向上させ得る真珠養殖用材料、挿核方法又は真珠養殖用材料組成物が提供される。
以下において、本開示に係る内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示に係る代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
本開示において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、「ペプチド」とは、2個以上のアミノ酸がペプチド結合により結合して形成される化合物の総称をいう。
本開示において、「ポリペプチド」とは、10個以上のアミノ酸がペプチド結合して形成される化合物の総称をいう。アミノ酸が10個以上である場合、「ペプチド」と「ポリペプチド」とは、同義的に使用することができる。
本開示において、「タンパク質」とは、分子量が5000以上のポリペプチドをいう。分子量が5000以上の場合、「タンパク質」と「ポリペプチド」とは、同義的に使用することができる。
本開示において、タンパク質の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、Da(ダルトン)を単位として表される。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、Shodex Asahipak GS−620 7G−p 内径7.5mm 長さ50cm(昭和電工(株)製)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(「GPC」、又は、「ゲル浸透クロマトグラフィー」とも称する場合がある。)分析装置(HLC−8220GPC、東ソー(株)製)により、溶媒;100mMリン酸緩衝液(pH=6.9)、示差屈折計により検出し、標準物質としてプルランを用いて換算した分子量である。
本開示において、「タック性」とは、真珠養殖用材料を挿核する際の作業性との関係で使用される「粘着性」又は「ベタつき」を意味する。
本開示において、「真珠の巻き」とは、真珠層の厚さを意味し、真珠層は単層であっても、多層であってもよい。真珠層の厚さは、真珠の断面の厚みから測定してもよい。真珠層の厚さは、収穫した真珠の質量から養殖前の真珠核の質量を差し引いた値により確認することができ、この値が大きいほど、真珠層が厚いことを示す。また、真珠層が厚いほど、真珠の巻きが優れると言える。
本開示において、「白色度」は、真珠養殖に従事していた専門家が目視で判断し求められるが、測定機器を用いて求めることもできる。
本開示において、「良質な真珠」とは、少なくとも上記「真珠層が厚い」ことを満たす真珠を示す。
本開示において、「シミ」とは、真珠外表面の全体の色と比較して、青色、灰色、又は、茶色に呈した部位を指す。本開示において、「キズ」とは、真珠の表面に形成された突起及びくぼみを指す。
(真珠養殖用材料)
本開示に係る真珠養殖用材料は、真珠核及び外套膜よりなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、上記真珠核及び外套膜よりなる群から選ばれる少なくとも1つがエンドトキシン量10EU/g以下であるタンパク質(以下、「低エンドトキシンタンパク質」ともいう。)を含有する。
低エンドトキシンタンパク質を含有する真珠核及び/又は外套膜を含む真珠養殖用材料を用いて真珠養殖を行った場合、真珠の巻きが厚い良質な真珠の得率を向上させることができる。また、白色度の高い良質な真珠の得率を向上させることができる。
真珠養殖は、一般に、真珠を生産し得る母貝の体内に、外套膜の組織片(外套膜ピース)及び真珠核を母貝の生殖巣内に外科的に挿入し、上記組織片が核の周囲を覆い「真珠袋」を形成させ、真珠袋を形成する上記外套膜の上皮細胞から分泌物が分泌されることにより、真珠核の表面に真珠層を形成させて真珠を作製する方法である。
特に、挿核は、貝の体内に、異物である他種の貝殻を球状に削った真珠核を挿入する手術であり、母貝にとっての大きな負担である。この挿核技術の良否が、挿核その後の貝の死亡率、得られる真珠のシミ及びキズの有無等の真珠の品質を左右するため、挿核は重要なプロセスと言われている。
真珠のシミ及びキズは、真珠核と真珠層との間の有機物に起因するものであり、シミ及びキズの原因として、例えば、真珠袋に血球、生殖細胞等の色素をもつ組織片が内包されること、炎症を起こした上皮細胞が分泌した有機物質に由来することなどが言われている。(恒星社厚生閣刊、淡路雅彦・古丸明・松原大輔 編「真珠研究の最前線 高品質真珠生産への展望」p33)
貝の生残率及び良質な真珠の比率を改善する目的で、貝の生体と異物である真珠核との間の生体的な適合性を改善すると期待できる物質(例えば、ペプチド、フィブロネクチン、キトサン、ポリ乳酸)で真珠核を被覆(コーティング)すること(例えば、特許文献2参照)、炎症反応の原因の一つと考えられるバクテリアを殺菌するために上記コーティングに抗生物質を添加する技術(例えば、特許文献1参照)等が提案されている。上記技術により真珠品質は改良されるが、そのレベルは十分ではなく、広く使用されてはいなかった。
発明者らは、真珠核と貝の生体との適合性を更に高めるために、バクテリアから放出されて殺菌後も残留し、生体内に入ったときに異物反応の誘因となるエンドトキシンに着目した。エンドトキシンはグラム陰性菌の細胞壁を構成するリポ多糖であり、哺乳類の血中に極微量でも入ることで、発熱等の種々の生体反応を引き起こすことが知られているが、貝等の軟体動物へ影響について明確な報告は知られていない。
発明者らは、エンドトキシンを可能な限り低減したタンパク質で被覆(コーティング)された核及び/又は外套膜を挿核に用いたところ、真珠の巻きが厚く、より価値が高い良質な真珠の得率の向上を見出した。また、真珠のシミ及びキズが減少するのみならず、白色度が更に高い良質な真珠の得率が向上されやすいことを見出した。
上記効果が得られる理由は明確ではないが、仮説としては以下のように推察される。
エンドトキシンを低減したタンパク質で被覆(コーティング)された核及び/又は外套膜を挿核に用いると、母貝と真珠核との適合性が高められることにより(1)真珠袋が早期に形成され、真珠層の形成が早期に開始されるので、巻きが厚くなり、真珠品質が向上すると推察される。(2)免疫反応が抑制されて形成された真珠袋では、外套膜の組織片から分泌される炭酸カルシウム等、真珠層を形成に用いられる分泌物の分泌効率が向上するため巻きが厚くなり、真珠品質が向上すると推察される。
加えて、母貝と真珠核との適合性が高められることにより真珠袋が早期に形成され、生殖細胞が真珠層に巻き込まれる確率を減少しシミ及びキズが低減されやすいと推察される。また、免疫反応が抑制されて形成された真珠袋では、メラニン色素等の有機物質が発生しにくくシミが減りやすいと推察される。
以下、本開示に係る真珠養殖用材料を構成する各構成について、以下に説明する。
<<タンパク質>>
本開示に係る真珠養殖用材料は真珠核及び外套膜を含み、真珠核及び外套膜よりなる群から選ばれる少なくとも1つが、エンドトキシン量10EU/g以下であるタンパク質(低エンドトキシンタンパク質)を含有する。
低エンドトキシンタンパク質を含有する真珠核及び外套膜よりなる群から選ばれる少なくとも1つを用いて真珠養殖を行った場合、真珠層が厚い良質な真珠の得率を向上させることができる。
真珠層が厚い良質な真珠の得率をより向上させる観点から、エンドトキシン量としては、8EU/g以下であることが好ましく、6EU/g以下であることがより好ましく、2.5EU/g以下であることが更に好ましく、エンドトキシンを実質的に含まないことが特に好ましい。
本開示に係る真珠養殖用材料における真珠核及び外套膜は、エンドトキシン量が10EU/gを超えるタンパク質を更に含有してもよい。
本明細書において「EU/g」とは、エンドトキシンの定量単位を表し、米国薬局方で定められた標準エンドトキシンの生物活性をもとに定められた値を意味し、エンドトキシン1EU/ml≒0.1ng/mlを示す。
本開示においてエンドトキシン量は、ライセート試薬(リムスル試薬)(製品名;「PYROGENTTM−5000」、LONZA社製)を用いたカイネティック比濁法による測定を行い、定量することができる。
良質な真珠の得率をより向上させる観点から、本開示に係る真珠養殖用材料は、エンドトキシン量10EU/g以下であるタンパク質を含有する真珠核を含むことが好ましい。
真珠核及び外套膜に含まれるタンパク質のエンドトキシン量を10EU/g以下とする方法としては、特に制限はなく、原料となる天然ゼラチン等のタンパク質に含まれるエンドトキシンを、例えば、吸着法、限外ろ過等の公知の方法を用いて、低減及び除去してもよい。
また低エンドトキシンタンパク質は、遺伝子組み換え体真核生物由来のタンパク質であってもよい。低エンドトキシンタンパク質は、エンドトキシンが存在しない環境下でタンパク質が得られる観点から、エンドトキシンを含む可能性がある天然のゼラチン等のタンパク質から精製した低エンドトキシンタンパク質よりも、遺伝子組み換え体真核生物由来のタンパク質であることが好ましい。
遺伝子組み換え体真核生物の宿主としては、酵母菌、カイコ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、昆虫細胞が挙げられるが、高生産株の取得及び大量生産系の構築が比較的容易である観点から、酵母菌であることが好ましい。
真珠核及び外套膜において、真珠核及び外套膜の表面の少なくとも一部が低エンドトキシンタンパク質により被覆されていればよい。
良質な真珠の得率をより向上させる観点から、真珠核又は外套膜の全表面積に対する低エンドトキシンタンパク質の被覆割合(被覆率)としては、好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上であり、更に好ましくは40%以上であり、特に好ましくは50%以上であり、最も60%以上であり、極めて好ましくは65%以上である。真珠核又は外套膜の表面全体が低エンドトキシンタンパク質で被覆されていてもよい。
本開示に係る真珠養殖用材料が含む真珠核及び外套膜は、良質な真珠の得率をより向上させる観点、真珠核又は外套膜の全表面積に対するタンパク質の被覆量が、20pg/mm以上であることが好ましく、50pg/mm〜10000pg/mmであることがより好ましく、50pg/mm〜500pg/mmが更に好ましい。
真珠核又は外套膜の表面積における低エンドトキシンタンパク質の被覆量は、真珠核又は外套膜の表面の低エンドトキシンタンパク質を溶解及び加水分解したのち、加水分解により得られたタンパク質に含まれるアミノ酸の量を液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS:Liquid Chromatography Mass Spectrometry)で定量し、タンパク質を被覆していない真珠核又は外套膜を加水分解処理によって得られたアミノ酸との差により、求める。
より詳細には、下記の方法により求めることができる。
(1)表面タンパク質の溶出
例えば、10個の真珠核又は外套膜を用意し、10mL程度の20℃の水に真珠核又は外套膜を浸漬し18時間静置して、養殖材料サンプル溶液を調製する。
(2)表面タンパク質の加水分解
養殖材料サンプル溶液を遠心エバポレーターで濃縮し、6mol/L(N)塩酸1mLを加え再溶解させ、110℃、22時間静置する。
(3)タンパク質の再溶解
上記6mol/L(N)塩酸を窒素ガスに通して揮発させた後、更に0.02mol/L(N)希塩酸0.2mLを更に加える。
(4)液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)によるアミノ酸の定量
液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)装置(Waters社製、UPLC/MS(SQD))を用いて、以下の条件でサンプル中に含まれるアミノ酸を定量し、ブランク核又は外套膜(低エンドトキシンタンパク質を含まない真珠核又は外套膜)におけるアミノ酸量との差を求める。
カラム:Imtakt社 intrade amino acid 75
MS エレクトロスプレー(ESI)(ポジティブモード)
定量するアミノ酸の種類は、タンパク質の種類により適宜選択することができ、低エンドトキシンタンパク質として、製品名;セルネスト(富士フイルム(株)製)を用いた場合には、プロリン(Pro)を定量することが好ましい。
本開示に係る真珠核及び外套膜に低エンドトキシンタンパク質を含有させる方法(以下、「コーティング方法」ともいう。)としては、例えば、後述のした真珠養殖用材料組成物の溶液(以下、「コーティング液」ともいう。)を調製し、公知のコーティング方法により真珠核又は外套膜にコーティングすればよい。
コーティング方法としては、特に制限はなく、例えば、真珠核又は外套膜をコーティング液中に浸漬する方法、真珠核又は外套膜の表面にコーティング液をスレーする方法、コーティング液を含ませたブラシで真珠核又は外套膜の表面をコーティングする方法等が挙げられる。
上記コーティング液中に含まれる低エンドトキシンタンパク質の濃度は、特に制限はなく、例えば、コーティング液の全質量に対して、0.0001質量%〜1質量%であることが好ましく、より好ましくは0.0005質量%〜0.5質量%であってもよい。
本開示に係る真珠養殖用材料に含まれる低エンドトキシンタンパク質は、凍結乾燥した凍結乾燥体であってもよい。低エンドトキシンタンパク質が凍結乾燥体である場合、後述の賦活剤と共に凍結乾燥された凍結乾燥体であることが好ましい。
本開示に係る真珠養殖用基材に含まれる低エンドトキシンタンパク質は、コラーゲンのアミノ酸配列の少なくとも一部を含むことが好ましく、コラーゲンのコラーゲンドメイン(すなわち、三本鎖へリックスを形成するドメイン、以下、単に「コラーゲンドメイン」ともいう。)のアミノ酸配列を含むことがより好ましい。
上記コラーゲンドメインには、1個以上のアミノ酸で分離されていてもよい後述のGXYトリプレットの繰り返し配列、及び1個以上のRGDモチーフも包含される。
低エンドトキシンタンパク質のアミノ酸配列全長に対して、コラーゲンのアミノ酸配列(例えば、配列番号1のアミノ酸配列)由来の領域が占める領域の割合(総割合)は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが特に好ましく、90%以上であることがより最も好ましく、95%以上であることが極めて好ましい。
コラーゲンの由来としては、特に制限はなく、任意の生物種由来であってよい。2以上の生物種に由来するコラーゲンであってもよい。コラーゲンの由来としては、例えば、魚(テラピア)、ウシ、ブタ、ヒト等が挙げられる。
コラーゲンは、上記のとおり牛皮、ブタ皮又は魚皮等に含まれている天然コラーゲンであってもよいが、水等の溶媒には不溶性であることが好ましい。このため、コラーゲンを抽出した場合、例えば、タンパク質加水分解酵素の使用、加熱によるゼラチン化等の処理が求められるので、得られるコラーゲンの分子量分布は幅広い。また通常、市販ゼラチンは、数万〜数百万の分子量分布を有しているため、天然のコラーゲンを一般的な方法で抽出しても、多分散度が20未満となる可能性は低い。
本開示に係る一実施形態においては、低エンドトキシンタンパク質は、牛皮、ブタ皮、又は魚皮に由来する天然のコラーゲン源から抽出したコラーゲンを、サイズ排除クロマトグラフィーなどの分画方法を使用して、特定の分子量範囲にあるタンパク質分子のみを分離精製することにより得たものを使用してもよい。
本開示に係る他の実施形態においては、低エンドトキシンタンパク質は、後述のGXYトリプレットの繰り返し配列を含み、1個以上のRGDモチーフを含むタンパク質の遺伝子を導入した組換え細胞により生産させることで得ることができる。この場合、低エンドトキシンタンパク質の遺伝子を導入する宿主細胞としては、大腸菌等の細菌の細胞、S.Cervisiaeなどの酵母の細胞、又はカイコなどの昆虫の細胞を用いることができるが、エンドトキシン量を低減する観点から、酵母細胞であることが好ましく、低エンドトキシンタンパク質は、遺伝子組み換え体酵母由来のタンパク質であることがより好ましい。
発現ベクターは、宿主と導入するタンパク質のサイズに応じて適切なベクターを公知のベクターから選択して用いればよい。組換え細胞により生産させた場合には、分子量の均一性の高いタンパク質を得ることができる。
コラーゲンの型としては、特に制限はなく、任意の型のコラーゲンであってよい。例えば、コラーゲンとしては、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、VI型コラーゲン、VII型コラーゲン、VIII型コラーゲン、IX型コラーゲン、X型コラーゲン、XI型コラーゲン、XII型コラーゲン、XIII型コラーゲン、XIV型コラーゲン、XV型コラーゲン、XVI型コラーゲン、XVII型コラーゲン、XVIII型コラーゲン、XIX型コラーゲン、XX型コラーゲン、XXI型コラーゲン、XXII型コラーゲン、XXIII型コラーゲン、XXIV型コラーゲン、XXV型コラーゲン、XXVI型コラーゲン、XXVII型コラーゲン、又はXXVIII型コラーゲンなどが挙げられる。
上記コラーゲンのアミノ酸配列は、そのコラーゲンを構成する複数種のポリペプチドのうちの任意の亜型のアミノ酸配列であってよい。例えば、I型コラーゲンの場合、I型コラーゲンα1鎖のアミノ酸配列又はI型コラーゲンα2鎖のアミノ酸配列であってよく、V型コラーゲンの場合、V型コラーゲンα1鎖のアミノ酸配列、V型コラーゲンα2鎖のアミノ酸配列又はV型コラーゲンα3鎖のアミノ酸配列であってよい。
中でも、天然コラーゲンであれば入手性から、遺伝子組み換えコラーゲンであれば製造実績から、コラーゲンのアミノ酸配列は、I型コラーゲンのアミノ酸配列であることが好ましく、I型コラーゲンα1鎖のアミノ酸配列であることがより好ましい。
低エンドトキシンタンパク質は、好ましくは、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、より好ましくは、配列番号1のアミノ酸配列から構成されるポリペプチドである。
真珠核又は外套膜が含有する低エンドトキシンタンパク質は、1種のポリペプチドであってよく、2種以上のポリペプチドの組み合わせであってもよい。
なお、配列番号2で示すヒトI型コラーゲンα1鎖のアミノ酸配列は1464アミノ酸の全長中RGD配列は2箇所(745位〜747位及び1093位〜1095位)しか含んでいない。ヒトI型コラーゲンα1鎖のアミノ酸配列を元に作製したタンパク質を本開示に係るタンパク質として用いる場合、RGD配列の個数を上記で述べた好ましい範囲に変更することで、より好ましい細胞接着促進能を有するタンパク質が得られる。
また、分子の両端に存在し、コラーゲン分子間の会合に寄与するテロペプチドを除去することにより、分子間の会合が抑制され、挿核時の作業性がいっそう向上すると考えられる。
上記観点から、本開示に係る真珠養殖用材料に含まれる低エンドトキシンタンパク質は、例えば、配列番号2のアミノ酸における、745位のArg〜747位のAspを含む20アミノ酸長〜60アミノ長の領域を複数(好ましくは4個〜20個、より好ましくは6個〜16個)含むものであってもよい。この場合、複数の領域の各々は同じであっても異なって(つまり745位〜747位のRGD周辺の領域では重複するが境界点は異なる)いてもよく、直接接していても間に1つ以上の他のアミノ酸残基が挟まっていてもよい。
各々の領域は、それぞれ独立に、722位のGly〜755位のGlyの領域を含む34アミノ酸長〜50アミノ酸長の領域であることが好ましい。また、組換え細胞内での発現効率、水への溶解性、及び潮解の抑制の点から、全アミノ酸長は200アミノ酸長〜800アミノ酸長であることが好ましく、300アミノ酸長〜600アミノ酸長であることがより好ましい。
より具体的には、本開示に係る真珠養殖用材料に含まれる低エンドトキシンタンパク質は、配列番号1で表されるタンパク質であってもよい。このタンパク質は、配列番号2における745位のArg〜747位のAspを含む数十アミノ酸程度の領域を12個含む571アミノ酸長のタンパク質である。
低エンドトキシンタンパク質を構成するタンパク質は、1個以上のアミノ酸で分離されていてもよいGXYトリプレットの繰り返し配列、及び1個以上のRGDモチーフを含み、多分散度が20未満であることが好ましい。
−GXYトリプレット−
本開示において「GXYトリプレット」とは、N末端側からC末端側にかけて「G(グリシン)」、「X(G以外の任意のアミノ酸)」、及び「Y(G以外の任意のアミノ酸)」の3個のアミノ酸が存在するアミノ酸配列の単位を示す。
ここで「X」及び「Y」は、それぞれ独立に、G以外の任意のアミノ酸を示す。「X」及び/又は「Y」は、「P(プロリン)」及び/又は「4−ヒドロキシプロリン」であることが好ましい。
本開示に係るタンパク質のアミノ酸配列全長に対して、GXYトリプレットが占める領域の割合(総割合)は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが特に好ましく、90%以上であることが最も好ましく、95%以上であることが極めて好ましい。
また、GXYトリプレットは、低エンドトキシンタンパク質のアミノ酸配列の全長にわたって繰り返されていてもよい。
低エンドトキシンタンパク質において、GXYトリプレットが存在する場合、生体親和性が高いコラーゲンタンパク質に類似した構造を有する。このため、低エンドトキシンタンパク質を含有する真珠核及び外套膜からなる群から選択される少なくとも1つを挿核した場合に良質な真珠の得率が向上することになると考えられる。
本開示において「GXYトリプレット」は、GXYトリプレットの間にアミノ酸を含まずに直列的に連結していてもよく、GXYトリプレットの間に1個以上のアミノ酸が含まれていてもよい。好ましくは、「GXYトリプレット」は、GXYトリプレットの間にアミノ酸を含まずに直列的に連結している。
−RGDモチーフ−
本開示において、「RGDモチーフ」とは、N末端側からC末端側にかけて「R(アルギニン)」、「G(グリシン)」、及び「D(アスパラギン酸)」の3個のアミノ酸が存在するモチーフを示す。「RGDモチーフ」は、細胞接着に関与することから、例えば、低エンドトキシンタンパク質を含有する真珠核を挿核した場合、真珠核の表面に対する外套膜細胞の伸展が促進され、シミ等の少ない良質な真珠が生成されると考えられる。
なお、タンパク質との関係において使用される「モチーフ」とは、機能的又は構造的に特徴を有するアミノ酸配列をいう。
低エンドトキシンタンパク質において、「RGDモチーフ」は、1個〜100個含まれてよく、好ましくは5個〜75個含まれてよく、より好ましくは10個〜50個含まれてよく、更に好ましくは10個〜25個含まれてよい。
また、低エンドトキシンタンパク質を構成するアミノ酸10個〜100個に対して、「RGDモチーフ」が1個の割合で含まれていることが好ましく、低エンドトキシンタンパク質を構成するアミノ酸20個〜75個に対して、「RGDモチーフ」が1個の割合で含まれていることがより好ましく、低エンドトキシンタンパク質を構成するアミノ酸30個〜60個に対して、「RGDモチーフ」が1個の割合で含まれていることが更に好ましく、低エンドトキシンタンパク質の構成アミノ酸45個〜55個に対して「RGDモチーフ」が1個の割合で含まれていることがより好ましい。
RGDモチーフが低エンドトキシンタンパク質に上記範囲で含まれることにより、細胞接着促進能が高まり、良質な真珠の得率に寄与することができる。
「GXYトリプレット」と「RGDモチーフ」とは、重畳的に存在し得る。すなわち、GXYトリプレットの1番目のGは、RGDモチーフの2番目のGであってもよい。
低エンドトキシンタンパク質の重量平均分子量は、好ましくは30kDa(キロダルトン)〜200kDaであり、より好ましくは30kDa〜100kDaであり、更に好ましくは40kDa〜75kDaであり、特に好ましくは50kDa〜60kDaである。 低エンドトキシンタンパク質の重量平均分子量が上記範囲内であると、水に対する良好な溶解性と吸湿による潮解の抑制とのバランスに優れる。
低エンドトキシンタンパク質の数平均分子量は、水に対する良好な溶解性と吸湿による潮解の抑制とのバランスに優れる観点から、好ましくは15kDa〜100kDaであり、より好ましくは20kDa〜80kDaであり、更に好ましくは30kDa〜60kDaであり、特に好ましくは40kDa〜50kDaである。
−多分散度−
低エンドトキシンタンパク質の多分散度は、良質な真珠の得率を更に向上させ、又、挿核時の操作性に優れる観点から、20未満であることが好ましく、より好ましくは10未満であり、更に好ましくは5未満であり、特に好ましくは2未満である。
低エンドトキシンタンパク質の多分散度が上記範囲であると、母貝中で真珠核と外套膜組織との間の生体組織レベルでの相互作用を均等にし、良質真珠の得率が更に向上すると考えられる。また、上記相互作用において、極性親水基同士の結合よりも、分子間相互作用による結合が優先的に形成されるので、タック性の主因である空気中の水分の吸湿を阻害し、挿核時の操作性により優れると考えられる。
本開示において多分散度とは、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で割った値(Mw/Mn)を意味する。
<真珠核>
本開示に係る真珠養殖用材料は真珠核を含む。真珠核は、一般的に、外套膜と共に母貝中に挿核されることにより、外套膜の上皮細胞から炭酸カルシウムを主成分とする分泌されて、真珠核の表面に真珠層が形成される。
真珠核の材料としては、真珠核の表面に真珠層が形成されれば特に制限はなく、淡水二枚貝である、ガマノセガイ属(Genus Lamprotula)、ピッグトウ貝(Fusconaia flava)、ニガーヘッド貝(Fusconaia ebenus)等が挙げられる。また、真珠核の材料として、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の樹脂、ガラス、石英、炭酸カルシウム等のセラミックスなどを材料としてもよい。
真珠核の大きさ(最大径)としては、目的とする真珠のサイズに応じて適宜選択すればよく、例えば4mm〜10mmであってもよい。
真珠核の形状としては、特に制限はなく、球状、半球状、楕円形状、繭形状、円盤状、星型状、涙型状、不定形状等であってもよい。
<外套膜>
本開示に係る真珠養殖用材料は外套膜を含む。外套膜は、貝の外套膜小片(以下、「外套膜ピース」とも称される場合がある。)であり、真珠核と共に母貝中に挿核されることにより、外套膜の上皮細胞から炭酸カルシウムを主成分とする分泌されて、真珠核の表面に真珠層を形成する。
外套膜の作製に用いられる貝としては、特に制限はなく、アコヤ貝、マベ貝、白蝶貝、黒蝶貝、巻貝;エゾアワビ、コンク貝、ピンクガイ、ダイオウイトマキボラ、ハルカゼヤシガイ等、淡水貝;イケチョウガイ、ヒレイケチョウガイ、カラスガイ等が挙げられる。 外套膜は、母貝と同じ種の貝に由来するものであってもよいし、母貝とは異なる種の貝に由来するものであってもよい。
本開示において「母貝とは異なる種の貝」とは、母貝の種と分類学上の種が異なる貝だけでなく、母貝と分類学上は同一分類であるが品種又は系統が異なる貝も「母貝とは異なる種の貝」に包含される。
母貝と異なる種の貝に由来する外套膜(以下、「異種外套膜」ともいう。)を用いる場合、母貝と異種外套膜の組み合わせとしては、例えば、母貝がアコヤ貝であり、異種外套膜がマベ貝である組み合わせ、母貝がアコヤ貝であり、異種外套膜が上記巻貝である組み合わせ、母貝がアコヤ貝であり、異種外套膜が、上記淡水貝である組み合わせ等が挙げられる。
本開示に係る真珠養殖用材料を挿核する母貝の種類としては、特に制限はなく、外套膜の作製に用いられる貝と同様の貝が挙げられ、いずれの貝も好適に用いることができる。
外套膜の大きさは、真珠核のサイズに応じて適宜選択すればよく、例えば、2mm〜4mm角(2mm×2mm〜4mm×4mm)程度の大きさであってもよい。
(真珠核を挿核する方法)
本開示に係る真珠核を挿入する方法は、真珠が取り出された母貝の真珠袋に本開示に係る真珠養殖用材料を用いて真珠核を挿入(以下、「再挿核」ともいう場合がある。)する方法であってもよい。
母貝に真珠を形成させる方法としては、特に制限はなく、一般的な真珠の養殖方法で形成させてもよく、後述の人工的な環境で形成させてもよい。
本開示に係る真珠核を挿入する方法は、例えば、試験管内又は反応器内、細胞培養液中等のin vitroの系で真珠を形成させ、この真珠を取り出した母貝の真珠袋に挿核する方法にも適用できる。この場合、真珠を取り出す母貝と、再挿核する母貝とが、同一種であってもよいし、異なっていてもよい。
本開示に係る真珠核を挿入する方法において、母貝としては、特に制限はなく、既述の外套膜の作製に用いられる貝が挙げられる。また、再挿核する母貝としては、特に制限はなく、アコヤ貝、シロチョウ貝、クロチョウ貝等の海水貝のほか、ヒレイケチョウ貝等の淡水貝が挙げられ、いずれの貝に対しても好ましく適用できる。
また、本開示に係る真珠を作製する方法は、本開示に係る再挿核方法により挿核された母貝を用いて、真珠を作製する方法であってもよい。
真珠を作製する方法としては、特に制限はなく、通常の真珠の養殖方法により真珠を作製してもよいし、人工的な環境、例えば、試験管内又は反応器内、細胞培養液中等のin vtroの系で作製してもよい。
また本開示に係る真珠養殖用材料の一実施態様としては、エンドトキシン量10EU/g以下であるタンパク質を含まない外套膜を、本開示に係る真珠養殖用材料を用いて母貝に挿核してもよい。
<真珠養殖用材料組成物>
本開示に係る真珠養殖用材料組成物は、本開示に係る真珠養殖用材料を含む。本開示に係る真珠養殖用材料組成物を用いて真珠養殖を行うことにより、良質な真珠の得率を向上させることができる。
真珠養殖用材料組成物の形状としては、特に制限はなく、液状であってもよく、固体状であってもよく、半固形状であってもよい。
本開示に係る真珠養殖用材料組成物は、本開示に係る効果を損なわない範囲において、賦形剤、溶剤、NaCl等の無機塩、緩衝剤;HEPES、PBS等、増粘剤、pH調整剤、安定剤、光吸収剤、抗生物質;ペニシリン系化合物、セフェム系化合物、マクロライド系化合物、テトラサイクリン系化合物、ニューキノロン系化合物等、着色剤;フェノールレッド、エオシン等の添加剤を含んでいてもよい。
上記溶剤としては、特に制限はなく、水、アルコール化合物、大豆油、オリーブ油等の動植物油、鉱物油、及び合成油などが挙げられる。
これらの中でも、低エンドトキシンタンパク質に対する相溶性に優れる観点から、溶剤としては、水が好ましい。
上記賦形剤としては、特に制限はなく、マルトース、イノシトール、マンニトール、ラクトース、スクロース、トレハロースなどの糖化合物、フェニルアラニン等のアミノ酸化合物、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、及び、ステアリン酸マグネシウム等の有機酸塩などが挙げられる。
真珠養殖用材料組成物の形状が固体状である場合、適宜選択した適切な溶解液に低エンドトキシンタンパク質を溶解させた後、真珠核及び外套膜から選択される少なくとも1つをコーティングしたものであってもよい。
上記溶解液としては、例えば、生理食塩液、各種緩衝液、グルコース、イノシトール、マンニトール、ラクトース等の糖類溶液、及びエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール化合物が好ましい。
また、本開示に係る真珠養殖用材料組成物に含まれる低エンドトキシンタンパク質が、凍結乾燥体である場合、真珠養殖用材料組成物は、適当な溶解液、例えば、滅菌水、生理食塩液、ブドウ糖液、電解質溶液、又はアミノ酸溶液等の液体を更に含むことが好ましい。
本開示に係る真珠養殖用材料組成物に含まれる成分としては、エンドトキシン量が低減された成分であることが好ましい。
以下、本開示を実施例により更に具体的に説明するが、本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
コーティング溶液1〜7について下記のように調製した。以下で使用したcellnest ヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチド(製品名;セルネスト、富士フイルム(株)製、凍結乾燥体)のエンドトキシン量は、既述のエンドトキシン量の測定方法(LONZA社の「PYROGENTTM-5000」;カイネティック比濁法)における検出限界値以下(2.5EU/g以下)であった。
以下で使用したcellnest ヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチド(以下、単に「コラーゲン様ペプチド」ともいう。)は、ヒトI型コラーゲンα1鎖から、細胞接着性の高いRGD配列を含む部位を4パターンのフラグメントに切り出して連結させたものをさらに3つ連結した構造を有する。より具体的には、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有し、GXYトリプレットが繰り返される571個のアミノ酸から構成され、12個のRGDモチーフを含む。
また、以下で使用したコラーゲン様ペプチドの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、多分散度(Mw/Mn)、及び粘度は、以下の方法に従って測定した。
cellnest ヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチド(富士フイルム(株)製)の水溶液を(凍結標品については解凍後)、40℃で30分加熱して完全にコラーゲン様ペプチドを溶解させたのち、水溶液中のタンパク質の濃度が0.2質量%となるように100mMのリン酸緩衝液で希釈し、その後0.45μmフィルター濾過してサンプル溶液を調製した。
上記サンプル溶液を、高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析装置(製品名;HLC−8220GPC、東ソー(株)製)を用いて下記の条件下で測定し、プルラン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求め、得られた重量平均分子量及び数平均分子量から多分散度(Mw/Mn)を算出した。結果は以下のとおりであった。
重量平均分子量(Mw);56,494
数平均分子量(Mn);48,787
多分散度(Mw/Mn);1.16
−GPC測定条件−
カラム:Shodex Asahipak GS−620 7G−p 内径7.5mm 長さ50cm(昭和電工(株)製)
溶離液:100mMリン酸緩衝液(pH=6.9)
流速:サンプル:1.0mL/min、リファレンス:0.1mL/min
カラム温度(設定):40℃
注入量:100μL
検出器:RI/UV (210nm)
分子量較正用のタンパク質:プルラン(昭和電工(株)製 Shodex P−82)
<<コーティング溶液1の調製>>
cellnest ヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチド;100mg(製品名;セルネスト、富士フイルム(株)製、凍結乾燥体)に注射用水(光製薬(株)製)を添加して、0.1%のコーティング水溶液1を調製した。なお、cellnest ヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を有する。
<<コーティング溶液2の調製>>
cellnest ヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチド;100mg(製品名;セルネスト、富士フイルム(株)製、凍結乾燥体)に対し、注射用水(光製薬社製)、エンドトキシン〔(一財)医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団製 日本薬局方に記載の標準品エンドトキシン〕を添加して、上記リコンビナントペプチドのエンドトキシン量が5EU/gである0.1質量%のコーティング水溶液2を調製した。
<<コーティング溶液3の調製>>
上記コーティング溶液2の調製において、エンドトキシン〔(一財)医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団製 日本薬局方に記載の標準品エンドトキシン〕を表1に記載の添加量に変更した以外は、上記コーティング溶液2と同様にして、上記リコンビナントペプチドのエンドトキシン量が10EU/gである0.1質量%のコーティング水溶液3を調製した。
<<コーティング溶液4の調製>>
上記コーティング溶液2の調製において、エンドトキシン〔(一財)医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団製 日本薬局方に記載の標準品エンドトキシン〕を表1に記載の添加量に変更した以外は、上記コーティング溶液2と同様にして、上記リコンビナントペプチドのエンドトキシン量が30EU/gである0.1質量%のコーティング水溶液4を調製した。
<<コーティング溶液5の調製>>
上記コーティング溶液2の調製において、エンドトキシン〔(一財)医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団製 日本薬局方に記載の標準品エンドトキシン〕を表1に記載の添加量に変更した以外は、上記コーティング溶液2と同様にして、上記リコンビナントペプチドのエンドトキシン量が100EU/gとしたである0.1質量%のコーティング水溶液5を調製した。
<<コーティング溶液6の調製>>
上記コーティング溶液2の調製において、エンドトキシン〔(一財)医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団製 日本薬局方に記載の標準品エンドトキシン〕を表1に記載の添加量に変更した以外は、上記コーティング溶液2と同様にして、上記リコンビナントペプチドのエンドトキシン量が1,000EU/gである0.1質量のコーティング水溶液6を調製した。
<<コーティング溶液7の調製>>
上記コーティング溶液2の調製において、エンドトキシン〔(一財)医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団製 日本薬局方に記載の標準品エンドトキシン〕を表1に記載の添加量に変更した以外は、上記コーティング溶液2と同様にして、上記リコンビナントペプチドのエンドトキシン量が10,000EU/gである0.1質量のコーティング水溶液7を調製した。
<<コーティング核1の作製>>
上記で調製したコーティング液1に、洗浄及び滅菌処理した直径2.3分(約7mm)サイズの無処理核(真珠核)を完全に浸し、37℃で2時間振盪撹拌を行った。ついで、金属製ザル(16メッシュ)で濾過した後、温度25℃、湿度55%の雰囲気下、24時間乾燥させることにより、コーティング核1を作製した。
上記のコーティング核1の表面に被覆されているリコンビナントペプチド量を以下の方法で測定した結果、339pg/mmであった。
−リコンビナントペプチドの被覆量の測定方法−
(1)表面タンパク質の溶出
少なくとも10個の真珠核又は外套膜を用意し、10mL程度の水に真珠核又は外套膜を浸漬し18時間静置して、養殖材料サンプル溶液を調製した。
(2)表面タンパク質の加水分解
養殖材料サンプル溶液に6mol/L(N)塩酸を1mL加えて、110℃、22時間静置した。
(3)タンパク質の再溶解
6mol/L(N)塩酸を窒素ガスに通して揮発させた後、更に0.02mol/L(N)希塩酸0.2mLを更に加えた。
(4)LC/MSによるアミノ酸の定量
LC/MS(型番;UPLC/MS(SQD)、Waters社製)を用いてプロリンを定量し、ブランク核(低エンドトキシンタンパク質を含まない真珠核)の差を求め、事前に作製しておいた検量線からペプチド量をもとめて、1mm当たりの被覆量を求めた。
<<コーティング核2〜7の作製>>
上記コーティング核1の作製において、コーティング液1を上記コーティング液2〜7に変更した以外は、コーティング核1と同様にしてコーティング核2〜7を作製した。
(実施例1−1〜1−3及び比較例1−1〜1−5)
上記で作製したコーティング核1〜7を用いて以下の養殖実験をそれぞれ行った。収穫した真珠について下記(1)〜(3)の評価を行い、評価結果を表1に記載した。
〔養殖実験〕
1群約140個のアコヤ貝母貝(天然貝 2歳)を用意し、上記で作製したコーティング核と、外套膜と、を用いて、挿核養殖を行った。挿核養殖8ヶ月後に母貝より核を抜き出し、真珠を収穫した。
(1)製品真珠得率
収穫した真珠を真珠養殖に従事していた専門家が目視で1級品、2級品及び不良球を選別した。なお、1級品及び2級品である真珠は良質真珠であり、商品として許容し得るレベルである。
収穫珠数に対する選別された1級品及び2級品の真珠数の比率を「収穫珠数に対する製品率(製品率1)」とした。また、挿核数に対する選別された1級品及び2級品の真珠数の比率を「収挿核数に対する製品率(製品率2)」とした。製品率1及び製品率2の値が大きいほど、製品真珠得率が良好である。
(2)真珠層の厚さ(巻き)
収穫した真珠の質量から事前に測定しておいた養殖前の真珠核の質量を差し引いて、形成された真珠層の質量をそれぞれ求め、真珠層の平均質量を求めた。真珠層の平均質量の値が大きいほど、真珠層が厚く、「巻き」に優れる。
(3)白色度
白色度は、上記(1)で選別された1級品の真珠のみを用いて評価した。1級品の真珠と基準珠とを上記(1)の専門家が目視で白色度を比較して、以下の基準に基づき、1級品の真珠ごとに評価し、それぞれの評価値の平均値を求め白色度とした。白色度の値が大きいほど、白色度に優れる。
−評価基準−
1:真珠の外観が青みがかったクリーム色であり、宝飾品に加工するためには漂白処理および調色が必要なレベルである。
2:真珠の外観がクリーム色であり、宝飾品に加工するためには漂白処理が必要だが、調色は不要なレベルである。
3:真珠の外観がごく淡いクリーム色であり、宝飾品に加工するために漂白処理、調色とも不要なレベルである。
Figure 0006906713
<<コーティング外套膜1〜7の作製>>
上記調製でしたコーティング液1に対し、2mm角(2mm×2mm)に切断した外套膜ピースを25℃で1分間完全に浸し、コーティング外套膜1を作製した。
また、上記コーティング液1をコーティング液2〜7に変えた以外は、コーティング外套膜1の作製と同様にて、コーティング外套膜2〜7を作製した。
得られたコーティング外套膜1〜7と、無処理核と、を用いて、実施例1−1と同様の養殖実験を行った。コーティング外套膜1〜3を用いた養殖実験では、実施例1−1と同様に、得られた真珠は、真珠層が厚く、巻きに優れていた。また、白色度も優れていた。
一方、コーティング外套膜4〜7を用いた養殖実験では、比較例1−1と同様に、得られた真珠は、真珠層の厚み及び、白色度に劣っていた。
また、コーティング核1とコーティング外套膜1をと組み合わせて、実施例1−1と同様の養殖実験を行ったところ、実施例1−1と同様に、得られた真珠は、真珠層が厚く、巻きが優れていた。また、白色度にも優れていた。
<<コーティング溶液21の調製>>
cellnest ヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチド;2,000mg(製品名;セルネスト、富士フイルム(株)製、凍結乾燥体)に注射用水(光製薬(株)製)を添加して、1質量%のコーティング水溶液21を作製した。
<<コーティング溶液22の調製>>
cellnest ヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチド;100mg(製品名;セルネスト、富士フイルム(株)製、凍結乾燥体)に注射用水(光製薬(株)製)を添加して、0.025質量%のコーティング水溶液22を作製した。
<<コーティング溶液23の調製>>
cellnest ヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチド;100mg(製品名;セルネスト、富士フイルム(株)製、凍結乾燥体)に注射用水(光製薬(株)製)を添加して、0.0125質量%のコーティング水溶液23を作製した。
<<コーティング溶液24の調製>>
cellnest ヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチド;100mg(製品名;セルネスト、富士フイルム(株)製、凍結乾燥体)に注射用水(光製薬(株)製)を添加して、0.0625質量%のコーティング水溶液24を作製した。
<<コーティング核21〜24の作製>>
上記コーティング核1の作製において、コーティング液1の代わりにコーティング液21〜24を用いた以外は、コーティン核1と同様にしてコーティング核21〜24を作製した。得られたコーティング核21〜24の表面に被覆されているリコンビナントペプチド量を上記方法と同様の手順に従い測定した。コーティング核21〜24におけるリコンビナントペプチドの被覆量は、以下のとおりであった。
コーティング核21のリコンビナントペプチドの被覆量;20,130pg/mm
コーティング核22のリコンビナントペプチドの被覆量;147pg/mm
コーティング核23のリコンビナントペプチドの被覆量;83pg/mm
コーティング核24のリコンビナントペプチドの被覆量;29pg/mm
(実施例2−1〜2−4)
上記で作製したコーティング核21〜24を用いて、実施例1−1と同様の方法で養殖実験を行い、収穫した真珠を用いて、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表2に記載した。
Figure 0006906713
表1及び表2に記載の結果から、本開示に係る真珠養殖用材料は、比較例の真珠養殖用材料に比べて、得られた真珠の真珠層が厚く、すなわち、「巻き」に優れることが明らかである。また、本開示に係る真珠養殖用材料は、比較例の真珠養殖用材料に比べて、「白色度」に優れ、挿核数及び収穫珠数に対する製品数の割合(製品率)が高い。本開示に係る真珠養殖用材料を用いて真珠養殖した場合、良質な真珠が得られる。
2018年10月12日に出願された日本国特許出願第2018−193668号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び、技術規格は、個々の文献、特許出願、及び、技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (11)

  1. 真珠核及び外套膜よりなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、
    前記真珠核及び外套膜よりなる群から選ばれる少なくとも1つが、エンドトキシン量10EU/g以下であるタンパク質を含有する、真珠養殖用材料。
  2. 前記真珠核又は外套膜の表面積における前記タンパク質の被覆量が、20pg/mm以上である、請求項1に記載の真珠養殖用材料。
  3. 前記エンドトキシン量が、2.5EU/g以下である、請求項1又は請求項2に記載の真珠養殖用材料。
  4. 前記タンパク質が、コラーゲンのアミノ酸配列の少なくとも一部を含む、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の真珠養殖用材料。
  5. 前記コラーゲンのアミノ酸配列が、I型コラーゲンα1のアミノ酸配列である、請求項4に記載の真珠養殖用材料。
  6. 前記真珠核及び外套膜よりなる群から選択される少なくとも1つが、1個以上のアミノ酸で分離されていてもよいGXYトリプレットの繰り返し配列、及び1個以上のRGDモチーフを含み、かつ、多分散度が20未満であるタンパク質を含む、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の真珠養殖用材料。
  7. ゲル浸透クロマトグラフィー法による前記タンパク質の重量平均分子量が、30kDa〜200kDaである、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の真珠養殖用材料。
  8. 前記タンパク質が、遺伝子組み換え体酵母由来のタンパク質を含む、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の真珠養殖用材料。
  9. 請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の真珠養殖用材料を含む、真珠養殖用材料組成物。
  10. 真珠が取り出された母貝の真珠袋に請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の真珠養殖用材料を用いて真珠核を挿入する方法。
  11. 請求項10に記載の方法により挿核された母貝を用いて、真珠を作製する方法。
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